故郷のかたまりのような男 車寅次郎 久美子さんの悲しみと寅の悲しみとの違い
この物語は「寅さんが外国へ行く!」ということで話題になった。
本当のことを言うと、私はあの寅が外国に行ったからと言って、活躍できるなんて思わない。
ホームシックになって帰ってくるのがオチだと思う。
日本全国、どこへ行っても人気者だからといって、外国でも通用するかと言えば、そんなに甘くはない。
だから、このウイーンでの寅は迷子の子供のようにうろうろしていたと言ってもいいだろう。
満男も言っていたが、ウイーンと寅は似合わない。
現地で深く知り合ったのも同じ日本人ばかり。
それでもちょっとせつなさがこみ上げてきたシーンはあった。
それは、十年近く日本に帰っていない久美子さんの孤独と望郷の念が露出する場面だ。
久美子さんは、ドナウ川のほとりで寅のことをこう言う。
「寅さんって『故郷のかたまり』みたいな人」
寅は実は少年期からすでに故郷を捨てた男。だからいつも胸に
懐かしい故郷の想いを秘めて旅をしている。
故郷にどっぷりつかっている人であったならば、ああはならない。
故郷と自分が一体化しているので故郷を想わなくていいからだ。
故郷に帰れないからこそ、故郷のかたまりに見える。
寅の心の中にある江戸川の風景。
久美子さんの故郷も長良川のほとり。
その寅の心と久美子さんの望郷の念がシンクロしたのだ。
「何かわけがあったのか?こんな遠い国へ来たのは…」
この言葉は、日本を離れて十数年、こんな地の果てに隠遁して暮らす私の
望郷の念ともシンクロして、目頭が熱くなってしまった。
故郷に帰りたくても帰れないあの久美子さんの
ぼろぼろ流した涙は、異国に長く住んでいる私の涙でもあった。
久美子さんだって、マダムだってどこかで自分の青春期まで育った日本が恋しいのだ。
帰りたいに決まっている。しかし実際に日本に自分の人生の続きはそこにはなにもないことも知っている。
心はじっくり休まるだろうが、それだけなのだ。自分の生きる場は辛くともウイーンにあると自覚し、また戻っていくのだろう。
私も、日本を離れ遠くインドネシアのバリ島に二十年も住んできた。
毎年のように日本に帰ってはいるが、バリ島でないと出来ない仕事もある。
バリ島でないと描けない絵もある。モチーフのことではない。空気というか風というかその土地の持つ力というものがある。
久美子さんはただたんに意地を張って故郷に戻らないのではないだろう。
ウイーンが持っているある種の不思議な魔力にひきつけられているのは疑う余地はない。
それにもかかわらずホームシックになる。
ここに人間の決定的な哀れさがある。
坂口兵馬にとってはハレの、憧れのウイーンであり、舞踏会であり、芸術の都なのかもしれないが、
久美子さんにとっては生き抜くリアルな日常の娑婆なのである。
だからとにかく今回の寅は足が地についていない。寅にとってあのウイーンは生き抜く娑婆ではないのだ。
ウイーンでは、風を切って歩く旅人でもなく渡世人でもない寅は輝きようがないのである。
だいたい、寅は故郷を捨ててはいない。自分でも言ってうように一年の中だけでもしょっちゅう帰っている。
久美子さんやマダムは決して帰らない。ひょっとして一生もう日本へは帰らないかもしれない。
この決意の差は決定的に大きい。
どちらが偉いとか良いとかでは決してない。生きざまが違う。ただそれだけだが、
やはり異国で異邦人として生涯生き抜く人々の心は、どんなに幸せそうな事を言っても、
いつの時代でも辛そうで孤独そうで、どこか痛々しい。そしてしびれるくらい後ろ姿がカッコよくもある。
波乱の生涯を最後はソ連で終えた岡田嘉子さんを思い出てしまう。
とは言え、物語序盤の東北での寅。
こちらのほうは正真正銘日本の田舎であるから実にサマになっていてカッコいい。
くりはら田園鉄道で坂口兵馬の自殺未遂に立ちあってしまった寅は、兵馬と共に行動をともにし、
しびれる言葉で兵馬のかたくなで病的な心を解きほぐしていく。
兵馬「どういう方なんでしょうか」
寅「そうよな、まあ、一言で言って旅人。
家業でいうと渡世人といったところかな」
兵馬「旅人かあ…いいなあ〜〜
寅「ははは、いいことばっかりはありやぁしねえよ。
でもこらしょうがねえや、な、テメエが好きで入った道だから」
兵馬「あなたにとってなんでしょうか生きがいというのは」
寅「そうさなあ、…旅先で、ふるいつきてェようないい女と巡り逢うことさ、フフフ」
兵馬「これからどちらへ」
寅「まだ決めてない決めてない」
兵馬「いつ決めるんでしょうか」
寅「えー…、そうさなあ…これから宿を出て、それから吹く風に聞いてみるさ」
兵馬「風に聞くか、いいなあ…」
兵馬の質問にことごとくカッコいい切り返しをする寅。
なんとも渋いシーンだが、ここに私はこのシリーズの衰退が見えるのだ。
初期や中期の作品であれば、その言葉を言わさないで、物語の中の起承転結で実践し、
それを見る観客が、結果としてそう感じる方向に持っていったはずである。
何の物語の高揚もないまま、そんなに名言集のように寅に説明されても、私などはちょっと引いてしまいがちになる。
確かに今までの数々の名場面があるので、大失敗はしていないが、やはり、そういうセリフは物語の中で
身につまされて、しみじみ観客自身が感じたい感覚なのだ。
しかし、それでも、あのみちのくでの二人の奇妙な出会いとおかしな進展は面白いと言えば面白い。
自殺騒動からウイーンに行くまでの駆け引き、ウイーンでのブザマな寅、久美子さんの悲しみ、寅の失恋、解き放たれた寅の旅立ち
と、名将山田監督はアイデアがカラカラになりながらも毎度のことながらなんとか歯を食いしばってアベレージまで持っていくのである。
当たり前のことだが
山田洋次が原作を書き、演出をし、渥美清と倍賞千恵子が主役を演じる。
これが面白くないわけがない。
お金を払ってみる価値はやはりあるのだ。
■第41作「寅次郎心の旅路」全ロケ地解明
全国寅さんロケ地:作品別に整理
それでは第41作「寅次郎心の旅路」
本編 簡単ダイジェスト版をどうそお楽しみください。
旅館 松楓荘
宮城県 本吉郡志津川町黒崎99-2
志津川湾に面する海岸にある安宿という設定。
秋の長雨。
露天が出せずに安宿に篭っている寅たち。
風邪を引いて咳をしながらさくらからの手紙を読んでいる。
さくらのナレーション
『お兄ちゃん、ハガキありがとう。
この手紙がお兄ちゃんの手元に届くかどうか心配しながら書いています。
風邪をひいたんだって?今年の風邪はしつこいから気をつけなきゃだめよ。
お兄ちゃんは薄着だし、外食が多いから栄養が行き届かないし、どうしても
風邪をひきやすくなるのよ。
私たちはみんな元気。
心配事と言えば満男の入学試験です。毎晩遅くまでがんばってます。
お兄ちゃんも合格を祈ってやってね。
今度はいつ帰るの。桜の咲く頃、それとも若葉の頃、みんなで首を長くして
待ってるわ。それじゃ、体大事にね。さくら』
宿の女中さん役でいきなり谷よしのさんが登場!
今回は台詞も多い。
谷さん「持ってきてやったよ、煎じ薬」
寅「あ」
谷さん「これ飲んで暖かくして寝ると、汗がパーッと出て、すぐ治るから」
寅「ありがとうよ」
谷さん「ちょっと苦いけどね」
寅「うん」
谷さん「ほんとによく降るねえ」と言いながら去っていく。
寅「ああ」と空を見る。
ポンシュウや出川さんが花札をしている。
寅「あーあ…、栄養つけろったって、肝心のものがなけりゃ、どうしようもないじゃないか、な…」
封筒の中に一万円札が!
取り出し、じっと見つめている寅。
ポンシュウが酒が飲めると喜ぶが寅は怒って
寅「堅気の女が汗水たらして働いた金だぞ、てめえらみたいなヤクザもんの酒代に
してたまるか!バカ!ったく…」
とお湯に溶かした煎じ薬を飲んだ瞬間、「プハー!!」と吐き出し
寅「あー!苦い!苦いじゃねえかバカヤロ!」とポンシュウに八つ当たり(^^;)
タイトルイン
男はつらいよ 寅次郎心の旅路
大高森から眺めた「松島」
島巡りの観光船になぜか乗っている寅とポンシュウ。
ポンシュウが人違いの目にあって
若い女性に背中に手を置かれる。
そのあとなんと腕を組まれて、
嬉しいのか、なんだか分からなくなって、鼻の下を長くしてしまうが、
途中でその女性が恋人でなくポンシュウだと気づいて大騒ぎ(^^;)
恋人である男性がもう一度現れて、またまた大騒ぎ。
笑っている寅。
松島 瑞厳寺でバイをする寅たち。
小刀で仲間を脅して遊ぶ寅。
通勤電車で揺られている兵馬が映しだされる。
変わって
柴又 さくらの家
これは二番目の家。
■葛飾区東金町6丁目 葛西神社裏交差点近く。
意外に散歩先生の自宅に近い。
これは一番目の家が総武線の高架計画にひかかってしまったので
ロケ地を引っ越した結果、なんと北にある常磐線を越えてしまったのだ。
おまけに台所のあり方が見ての通り左右逆。
でも、大船セットでもきちんと台所は逆にしていたのは偉い。(あたりまえか^^;)
前の家は電車の高架になるので立ち退き。
もちろん、映画の設定的には同じ場所、同じ家ということ
どうやら満男は浪人して、予備校に通っているようだ。
満男はややだらけ気味。
満男は電車に揺られて予備校に通っているが
こういう暮らしが一生続くことにうんざりしている。
脚本の第2稿の時点では、
満男はさくらと一緒に大学に合格発表を見に行ったシーンがある。
〇〇大学構内
掲示板に合格者の名簿が貼り出されている。
大勢の受験者に混じってボンヤリ名簿を眺めている満男。
その後ろにさくらが佇んでいる。
二人の表情にありありと読み取れる落胆の色。
満男振り返り、さくらの顔をチラリと見て歩き出す。
ものも言わずその後に続くさくら。
歓声を上げるグループのそばを通って二人が歩いていく。
決定稿では↑のシーンは削除。
満男、食卓で朝食を食べながら
満男「羨ましいなあ〜って…」
さくら「誰が?」
満男「伯父さんだよ、だって伯父さんはそういう生き方を否定したんだろ」
さくら「何言ってんの?伯父さんは否定したんじゃなくて、
否定されたのよ世の中に」んな…身も蓋もない言い方。。((( ヾ(^^;)
満男「…」
さくら「あんたもそうなりたいの?
いつまでも一人前扱いされないで
兄妹や親戚に心配ばっかりかけて、そんな生き方がどこがいいの?」
満男「冗談だよ」とスタコラ逃げていく。
代々木駅前
交差点で代々木ゼミナールに通うために歩いている満男達の姿
一方
坂口兵馬は会社の会議中にノイローゼ状態になっていく。
砂糖壺の中にコーヒーを入れ、かき混ぜる兵馬(TT)
柴又 とらや 夕闇の頃
茶の間の上がり框でぶつぶつぼやいている社長
おいちゃん「消費税の文句なら政府に言ってくれよ」
社長の言い訳によると『生きるのさえ面倒臭くになった』 … らしい(^^;)
第32作における博の大投資は効果なかったのかい?博に頼むから元金だけでも返してやってくれ。
そんな時、寅から電話、
博は満男が入試に落ちてしまったことを伝える。
『捲土重来』という言葉を使って寅に説明していた博だが、寅は分からんだろうなあ。。。
けんどじゅうらいと博は言っていたが、「けんどちょうらい」と呼ぶことの方が多い。どちらでも○。
重複・・じゅうふく、ちょうふく と同じ。
とらやからの帰り道 さくらと博
江戸川土手
江戸川土手を自転車を押しながら
博「どっか旅行でもしたいなあ…」
さくら「どこに?」
博「金貯めて、ヨーロッパでも行くか」寅は行きますよ〜〜(^^)
さくら「フフフ、無理よ、満男が大学出るまでは」
ところ変わって
宮城県 くりはら田園鉄道線
2007年に廃止。
『鴬沢駅』から西に600メートル
かわいい車両がのんびり走っている。
線路脇で疲れた表情で座っている坂口兵馬。
こんな遠くまではるばるやって来たんだねえ。。。
一方車内では…
車掌を呼び止め乗越することを伝える寅。
笹野高史さん扮する車掌さん。
車掌「はい、どちらまでいらっしゃいますか?」
寅「さて…どっちのほう行ったらいいかなあ」
車掌「え」
寅「疲れがスーっと抜けるような温泉でさ、
女将さんが優しくって、酒が旨くって、
どっかこのへんにそんな気の利いた温泉ねえかい?フフ」
車掌さん、羨ましそうに
車掌「そんなとこあったら私も休みとって行きてえなあ〜〜。
ストレスが多いからこの仕事も」
その時、急ブレーキ!!!
事件現場は鴬沢駅から西に600メートル地点。
例のノイローゼになったサラリーマン坂口兵馬が
このローカル線「くりはら田園鉄道」で自殺を図ったのだ!
しかし幸運なことに
間一髪あと30センチ!のところで電車は止まる。
『ウイーンの森の物語』のBGMとともに
みちのく卸売りセンター、ヨーロッパ家具展示会宣伝軽四がヨタヨタ通る。
スピーカーから
『まいど〜〜、お引き立ていただいてぇえ〜おります。
みちのく卸売センターは、日頃のご愛顧にこたえて
ヨーロッパ家具大バーゲンセールをおこないます。
円高で輸入品がぐっとお安くなりました。』
寅は兵馬を起こしながら
寅「おい、死にぱぐっちゃったなあ…、え、
またそのうちやりやあいいや、な。
立てられるか?よし、おう立った立った、
おう、つかまってつかまって」
相手を責めるのでなく、相手に逃げ場を与えてやるこの語りは、
人の悲しみを知っている寅だけが言える優しさだった。
笹野さんの薄い髪の毛をつかみながら
立ち上がり電車に乗せられる兵馬。(^^;)
そして電車はまた走っていくのだった。
ヨーロッパ家具販売「みちのく卸売りセンター」の軽四からスピーカーが流れ続けている
『ああ〜〜〜なたの暮らしにハイセンスな香りを。
ヨーロッパの家具大バーゲンセール』
この声役の女の子、ギャラちょっとでももらったのかなあ…(((^^;)
電車の中
車掌寅に
車掌「あのー、まことに恐れ入りますがお客さん、目撃者ということで、
警察まで一緒に来ていただけますか?」
寅「オレがか?…ああいいよ。オレはどーせ暇だから」
車掌、ほっとしている。
寅、前に座っている女子高生たちに
寅「なあ、姉ちゃん、暇って顔してるだろオレ、フフフ」
ゲラゲラ笑う3人組の女子高生。
栗沢警察署
待っている寅と車掌。
寅は車掌を誘って、温泉宿に付き合わせる。
鳴子温泉字新屋敷 付近 花園旅館
ナイトパブ『ローマン』の斜め向かい
宮城県 大崎市 鳴子温泉 字 新屋敷
寅たちの部屋
風呂から帰ってくる寅
事情を聞く寅
寅「なんか辛いことでもあったのか?え?会社の上役にいびられるとか、
家庭のゴタゴタだとか」
兵馬、青い顔して
兵馬「僕…病気なんです…」
寅ビビって
寅「う‥うつ、うつるの??」(((^^;)
兵馬「いえ、時々死にたくなりまして」(((((((((^^;)
寅は、頭に効く温泉だから、しばらくここの温泉に浸かることを勧める。
兵馬は明日は会社に行かないと、と不自由な心のままでいる。
そんな兵馬に寅は
寅「おい、おまえがいないと会社潰れちゃうのか?」
兵馬「そんなことありませんけど」
寅「だったらいいじゃないか」と言ってお風呂に行くことを勧める。
寅「桶にね、お湯を汲んで、
何杯も何杯も、こうやってかける…。
わかったな、うん」
名言だねえ…。この作品で一番の名言だ。
そう言われて、兵馬は少しリラックスしたようだった。
兵馬「はい」
寅「じゃあ行って来い!」
兵馬「はい」
寅あとで独り言。
寅「あ〜あ、何も死ぬまでガツガツガツガツ
働くこたあないんだ。ねえ。
黙ってたっていつか死ぬんだから」
で、その夜は車掌さんも入れて芸者さんたちと大騒ぎ。
兵馬もウインナワルツで大はしゃぎ。
一緒にワルツを踊っているのはお馴染み田中リカさん、このシリーズの中では
欠かせない女性。
笹野さん、なぜ夜になっても車掌さんの格好でカラオケで
「浪花しぐれ「桂 春団治」歌って騒いでるの?
着替えないのかなあ((^^;)
車掌「♪
酒も呑めなきゃ 女も抱けぬ
そんな どアホは死になされ この世は呑ん兵衛が
引き受けた あの世はあんたに まかせたぜ
男浮名の エー 春団治〜〜
【浪花しぐれ 桂春団治】 京山幸枝若 歌
作詞:渋谷 郁男作曲:村沢良介
酒も呑めなきゃ 女も抱けぬ
そんな どアホは死になされ この世は呑ん兵衛が
引き受けた あの世はあんたに まかせたぜ
男浮名の エー 春団治
兵馬に酒をどんどん飲ませている寅。
翌朝
ローマンが見える路地の突き当たりに「花園旅館」
帳場では、兵馬が全費用をカード払い。
寅の部屋
兵馬はかなりすっきりした顔になっている。
窓の外は明らかに『絵』(^^;)
兵馬は寅のお陰でリラックスできたと言う。
兵馬「固く縮こまった心が柔らかく溶けていくというか」
兵馬は聞く
兵馬「いったいあなたはどういう方なんでしょうか?」
寅「どういう方って…、まあ一言で言って『旅人』
稼業で言うと『渡世人』と言ったところかな」
兵馬「旅人かあ…いいなあ〜〜」
寅「ははは、いいことばっかりはありやぁしねえよ。
でもこらしょうがねえや、な、テメエが好きで入った道だから」
兵馬「あなたにとってなんでしょうか生きがいというのは」
寅「そうさなあ、…
旅先で、ふるいつきてェようないい女と巡り逢うことさ、フフフ」
寅「あ〜あ、うんこしてこよ」
兵馬は寅のあとを一緒に金魚のフンのようにつきまといはじめる。
兵馬「これからどちらへ」
寅「まだ決めてない決めてない」
兵馬「いつ決めるんでしょうか」
寅「えー…、そうさなあ…これから宿を出て、
それから吹く風に聞いてみるさ」
兵馬「風に聞くか、いいなあ…」
まあ、この一連のシーンの二人のやり取りの豊富なこと。
中身の濃い会話や渋い語りがポンポン出てくる。
これを会話の充実と考えるのが妥当だとは思うが、
ふと、もうひとつの考えが頭をよぎる。
物語の最初にこのように一気にカッコいいセリフでトントンと寅と言う人間を
説明してしまうということはある意味、作品の物語と乖離してしまう危険性が出てくるのではないか…。
初期の頃や十作台の物語にこのようなカッコいいセリフや語りは、
あるにはあるが、物語の中でタイミングよくバランスよく語られていた。
最初にまず物語がある。そして物語の中で観客は寅の生き様を見て
自然にそういうふうに寅を見ていくのだ。
決して言葉で言い切ってはいけないような気がする。
ふくらみのある物語のなかでこそ言葉は生きることは自明である。
まあ、それでもそれはそれとして、何はともあれ、
寅のこの一連のセリフはなかなかよかった。
宿を出て…
陸羽東線(りくうとうせん)線路脇
宿を出てこの次に兵馬は行きたいところがあるという。
兵馬「少し遠いんです、ウイーンです」
寅「ああ、湯布院か…あれは遠いなあ」
兵馬「いえ、ウイ―ン!なんです」
寅「うん、湯布院だろ、九州のな、知ってるよ、遠いよやっぱり」
ホテル扇屋( 鳴子温泉字新屋敷38-1)
旅館みすず
旅館幸楽
『ウイーンの森の物語』をスピーカーで鳴らしながら
みちのく卸売りセンターの軽四が近づいてくる。
【円高につき、高級輸入家具お買得】
展示会会場は『商工会会場』 ナンバー90-90
それに乗せてもらう寅たち。
東京 柴又 題経寺 境内
二天門のところにイッセー尾形さんがやって来て
独特の雰囲気を振りまいてとらやに向かう。
とらや 店
とらやに来るなり寅のパスポートを見せて欲しいと言い出す。
さくら「パスポート??誰の??」ねえ((^^;)
と、さくらは???
イッセーさんの言うぶんには、一昨年の夏競輪で万車券を取って
ハワイに行こうということになって、その時に取得したらしい。
第4作でも競馬で万馬券が当たってハワイに行くことになったが
全く同じ話だね、こりゃ。
おばちゃん思い出したように
おばちゃん「そういえば、預かってたよ、その…パス…なんとかってーの」
おばちゃんだって第4作で、
おいちゃんや寅ともども一度はちゃんとパスポート取得してますよ。
探し出したパスポートを見てイッセーさんクスクス笑い。
なんと帽子!をかぶって、かつ斜め取り!、かつ笑ってる!。
普通は絶対写真取り直しだ(^^;)
どうやら、みんなの知らない間に兵馬が寅の分も含めてウイーン旅行の
段取りをしてしまったようだ。 あちゃあ〜〜〜。
寅が外国へ行くとしたらこれで二回目。
一度目は第24作の宣伝でアメリカアリゾナへ。
しかし本編ではもちろん行っていないので、本編としては初めてのこと。
いつものように、早口でどんどんまくしたてて、
さっさと店を出て行くイッセーさんだった。
これはは第38作の医者と同じキャラ。
とらや 茶の間 夜
みんなでKLMのチケットを見ていろいろ話し合っている時に
なんと寅がそっと帰ってくる。寅が夜帰ってくるのは極めて異例!
さくらは寅に気づかないでパスポートの写真見ながらクスクス笑っている。
寅も背後から眺めて一緒に笑っている。バカ(^^;)
みんなひとしきり寅の存在に『うわーっ』て驚いて、
すぐに事の次第を寅に問いただす。
寅は4月の終わりのあの兵馬との出会いを誇張&脚色を交えて事細かく話すのだった。
この時さくらたちに寅は兵馬のことを「お面かぶったような男」などと表現するのだが、
さくらはこの後ずっと兵馬の話題が出るたびに坂口さんとは言わないで顔に手をやって↓
ジェスチャー入りで寅の真似してしつこく「お面かぶったような人」と言っていた(^^;)
さくら「お兄ちゃんはウイーンがどんなとこかわかってんの?」
寅「温泉場だろ??」 しつこい… ヾ(^^;)
みんな一斉にあきれかえる。
そこで、博や満男はウイーンが遠い異国であることを説明したり、
寅がくれた地球儀のおもちゃを見せて、位置をわからせようとするが
「結構近いじゃないか」と地球儀を指さして言ってしまう寅だった。
ポンシュウはついこないだ外国行ったそうだが、日本語が通じるところだった。
寅の場合は全く通じないところ。
寅はみんなに言われて「行かない方がいいか…」と言い出し始める。
満男「そうだよ。伯父さん、ウイーンなんて似合わないよ、音楽の都だよ」
寅とりあえず頷く(^^;)
博「そうだなあ、モーツアルトの音楽なんて興味ないでしょ?」
寅「そーですねえ〜、モーツアルトは…興味ないね」だって(((^^;)
で、結局断ることに。
ところが...
翌日 とらや 茶の間
翌日兵馬がやって来て、寅が
【浪人している満男の家庭教師&朝日印刷の帳簿チェック】と
いうことでウイーン行きを断ると、
突如裏切られたショックから兵馬の病気がぶりかえし…
兵馬は突然
兵馬「あ〜〜〜〜ン、あ〜〜〜〜〜〜ン」と発作が始まる。
薬を飲む兵馬
寅は声の出どこをキョロキョロ探し、兵馬だと分かると、びっくり&ビビる。
真っ青な顔をして立ち上がりおろおろ。
兵馬「寅さんも、僕を裏切るんだ…。
サヨナラ… あ〜〜〜〜〜〜〜ン」柄本さんようやるわ(^^;)
と立ち去ろうとする。
寅が行かないのなら自分も行かないといい切る兵馬。
再び自殺でもしそうな勢いだったので
寅、ビビって、
寅「待て待て、よし!オレ行くよ。安心しろ!オレ行くから!な」と、なだめごまかす。
で、兵馬の自殺を恐れた寅はとりあえず寅も成田に行くことに。
さくら「成田から、電話ちょうだいね」
寅、しょぼくれて、
寅「な、さくら、人にはなまじ親切にするもんじゃないな、
オレこれから個人主義でいくかんね」とキッパリ。
よく知ってたな【個人主義】なんて言葉(^^;)
さくらの家 夜
さくらは夜遅くまで寅からの連絡を待っているが、
全く連絡がない。。。
おっと…さくらのパジャマ姿が映る。((^^))
ようやく翌日寅から電話がかかってくる。
ところが!な、なんと寅が電話していたのは経由地である
オランダアムステルダムのスキポール空港だったのだ!
さくらはここでも坂口さんとは呼ばないで
「お面被ったような人」としつこく言っている(^^;)
さくら、どうも声の様子が遠いので
さくら「ねえお兄ちゃん!今どこから電話してるの?」
オランダ アムステルダム スキポール空港
寅は空港スッタフの男性に
寅「え?どこ、ここどこ??」
男性「スキポール空港です」
寅「え?」
男性「スキポール空港です」
寅「スキッポだってさ」(^^;)
こうして寅はウイーンに飛び立ってしまったのだった。
さくらは「もしかしたら行っちゃったのかしらヨーロッパに…。まさかあ…」
機内で兵馬は寅に嘘をついて日本に帰る飛行機だと言う。 そんなわけないって…ゞ(^^;)
旅立ってから 4日後
柴又 とらや(くるまや) 店
雨が降っている。
みんな、寅があのあと遠い異国の地でどうなったか
わからなくて食欲も出ない。
そんな時、旅行帰りの青森県の福士という男性が訪ねてくる。
このシリーズではすっかりお馴染みの『じん弘さん』
じん弘とハッピーどんかん で、
ピンポン球に棒を付けた「インチキピンポン」のコントで浅草松竹演芸場で
活躍していたじん弘さん。ダウンタウンヒーローズやキネマの天地にも出演していたコメディアンさんだ。
第37作「青い鳥」などで、
じん弘さんが大洋ホエールズの帽子を被ってそしてあのたっぷり感のある口髭で出てくると
もうそれだけでなぜだか可笑しい。空気が違うのである(^^)
じん弘さん扮する人々はちょっとがさつだが実に人が良い。
先程書いた第37作「幸福の青い鳥」で看板屋の親父さんを
なんともいえない味わいのある東北弁で演じていた。
人が良いだけでなく、あの東北弁をもったりと操りながらも、
なかなか洞察力も鋭く持っているところが心憎いのだ。
圧巻はこの第41作。
寅がトイレットペーパー汚い字で書いたさくら宛のメモを、
ウイーンから青森まで帰る途中でわざわざ柴又まで来て
とらやへ持って来てさくらに手渡すのである(TT)
この時の身振り手振りのじん弘さんのアリアは笑った(^^)
あんな人普通はいないよ、お人好し〜…って心底思った。
しかし、あれこそじん弘さんの真骨頂なのである。
あのキャラは笹野さんではちょっと違うし、すまけいさんもずれる。
やはりあれはまさにじん弘の世界なのである。
第39作では、寅やポンシュウたちと一緒にバイをしていた。
第42作「ぼくの伯父さん」でも歌の中で茨城県袋田温泉の「袋田駅長」として登場。
イッセ―尾形さん扮するおじいさんと、寅を仲直りさせる役をしていた。
福士「あのー、こちらね、寅さんと言う人の家ですか?」
頷く三平ちゃん。
福士「あ〜〜、…探した探した、なんたってね…、はあ〜…」
さくら「あのー、何か??」
福士「私、あのー福士というもんだけれども、ヨーロッパツアーの帰りで、
さっき成田に着いたんですけども、今夜の汽車で青森さ、
もどねばならねぇんです」
実はねえ、ツアーの最後はウイーンでねえ、
土産買いに街歩いてたらね、上のほうから『おーい、お前日本人かァ〜』
って聞いたもんですから、
私あんた上見たら、まあ〜、建物の2階から、ハァチマキ
した男が首ィ出してるんです」この言い方笑える(^^;)
私が、『そーだよーっ』て言ったら、ね。
『すまねえけれども、この手紙をオレの実家に届けてくれーっ』て
これこれ…、
あー、これこれ、これをね、ポ―ンと
投げてよこしたんですよ、はい。
わたくしがね、『どこだ、お前の実家は〜』って聞きましたらねえ、
『京成電車柴又駅で降りて、寅のウチはどこだと言やあ、
すぐ分かるからァ〜』滅茶苦茶や(^^;)
乱暴な話でしょう〜、よっぽど断ろうと思ったんですけどねえ。
わたしもまあ…、ちっ、人がいいからねえぇ〜…」
ほんとほんと凄いお人好し〜(^^;)
呟くじん弘さん、最高の表情でした。うまいなあ〜〜。
さくら、『トイレットペーパーの字』を見て顔がほころぶ。
さくら「ほんとにご迷惑をおかけいたしました」とお礼。
さくら「三平ちゃん、おビール差し上げて」
福士「あ、ビールすか…奥さん、そ…」まんざらでもない顔(^^;)
さくら、おいちゃん、おばちゃんに、トイレットペーパーの殴り書きを見せて大喜び(^^)
さくら「おいちゃんおばちゃん、お兄ちゃん無事だったわ!
ほら、ウイーンにいるって!」
う〜ん、このトイレットペーパーを広げて見せるカット、
さくらが映っている時間が長すぎ。2秒長い。間が持たない。
おいちゃんとおばちゃんがこの手紙を読んでいる時間を考えて長く映しているのだろうか?
とにかくこの間は観客には飽きる。
脚本第2稿までは、このじん弘さんのシーンは存在しない。
そのかわり、なんと兵馬の母親がとらやに訪ねてきて、兵馬と寅は無事ウイーンに
着いて観光をしていることを報告していた。
兵馬を救ってくれた寅のことを感謝している様子だった。
ここからウイーンロケ。
ウイーンの森。
ヨハン・シュトラウスの「ウイーンの森の物語」が流れる。
街のシンボル 聖シュテファン寺院がまず映って…
シュテファン寺院近くのケルントナー通りのわき道
クルーガー通り。
ホテル・ツア・ウイーナー・シュターツオーパー
これは寅たちが宿泊しているプチホテル。
典型的なBiedermeierスタイル
国立オペラハウス(国立歌劇場)にちなんで付けられた名前。
旅情報によると↓
このホテル、ケルントナー通りからすぐそこで、思わず立ち止まる外観。
部屋はバスタブがなく、シャワーのみ。
ザッハーの近くで待ち歩きに便利。
建物の前面のデザインが面白い。
部屋は狭いがツインでも2万円弱で泊まれる。
名前が示すように、国立オペラハウス、王宮、シュテファン寺院等にすぐ。
ビジネス、観光共に街に出てゆくのに理想的な位置。
ホテルの特徴は、スタッフが、
観光旅行や、美術館、劇場のチケットのインフォメーションなどを提供。
ブルク庭園
モーツアルト像
モーツアルト アイネ・クライネ・ナハトムジーク第一楽章が流れる。
花壇の花はト音記号の形に咲くように植えられている。
もともとはオペラ座裏の「カフェ・モーツァルト」前に建っていた
(カフェの名の由来もこの像があったことによる)が、
1945年の空襲で消失、戦後場所を遷して建て直されたもの。
寅はモーツアルト像の前でもしらけている寅に失望。
兵馬「あ〜〜。こんな人連れて来るんじゃなかったなあ…」だって(^^;)
兵馬は舞い上がって寅をベンチで待たせて、ウイーン美術史博物館に一人で行ってしまう。
ベンチに座るマダムにせんべいをやって人生を語り合う。
マダム、しみじみと
マダム「人生は辛いものよ…」現地の貫禄マダムが言うと説得力あるなあ…
一言。
リンクを挟んですぐ外にあるのが、
ウイーン美術史博物館
ブリューゲルを観る兵馬
「雪中の狩人(冬)」(1565年)
この12カ月シリーズの推定6枚のうち3枚はここ美術史美術館にあって、
残りの2枚はNYとプラハにある。
「バベルの塔」(1563年)
塔の進捗状況を視察に来ているニムロデ王らがいる。
右の画像では工事中の人や建築材を運ぶ人の描写など非常に細かい。
北方ルネッサンスの鬼才、ピーテル.ブリューゲルは
塗り重ねによる硬質感と透明感が素晴らしい。それらも凄いが、
なによりも彼の人間を見る目があまりにも鋭い。
しかし、この博物館には私の大好きなベラスケスの王女マルガリータやレンブラントの自画像がある。
しかし本当のことを言えば絵画でウイーンといえば世紀末芸術の『エゴン・シーレ』だ。
私の恩師である坂崎乙郎先生はこの『エゴン・シーレ』を徹底的に研究し、評価していた。
(平凡社ライブラリーから復刊)
このブルク庭園の門の前で久美子さんに出会う寅。
久美子さんが寅を自分のツアー客だと間違えて
久美子さん「早く」って言ってしまう。
すべてはこの久美子さんの「早く」から間違いが始まった(^^;)
そうなれば、目がハートの寅は何の理由もなくついて行くのは当たり前(^^;)
バスの前でニコニコ笑っている寅を見て、
ついかまってしまう久美子さん。
久美子さん「どうなさったんですか?お連れの方とはぐれたんですか?」
こうなると蟻地獄のように寅のペースに乗ってしまう。
寅の唯一のドイツ語
寅ニコニコ笑って「ダンケ!」
結局寅は久美子さんのツアーバスに乗せられて、
あれこれ質問されるはめに(^^;)
ウイーン市内の名所を次々にバスは回っていく。
この時歌われている歌はなんて言うのだろう??
どなたか知ってる方教えてください(^^)ゞ
ユーゲントスティル(フランスではアールヌーボー)の様式
フランス・ベルギーのアール・ヌーボーに対応する言葉で、
ドイツで刊行された美術雑誌『ユーゲント』に由来した
ドイツ圏の世紀末芸術のこと。
ユーゲントスティル、分離派の建造物
カールスプラッツ地下鉄駅
(建築家オットーワーグナーの傑作)
黄金の玉葱 (黄金のキャベツという人もいる)
セセッション(分離派会館)
シェーンブルン宮殿
シェーンブルン宮殿に久美子さんたちは入っていく。
寅も一応トボトボついて行く。
「美しい泉」という意味で、フランスのヴェルサイユ宮殿をしのぐ宮殿を目指して、
17世紀末から18世紀半ばまでかかって造られた。
早口でツアー客に説明していく久美子さん。
久美子さんが途中で中断したシェーンブルン宮殿の名前の由来の説明↓。
マティアス帝が狩猟の時に、シェーンブルン(美しい泉)を発見したこと、だそうだ。
全部で1,441室
ここの一部(召使いたちの部屋)は実は賃貸住宅として貸し出されている。
年間入場数150万人。更に公園と動物園や行事での集客数520万人を合計すると
年間には670万人が訪れる。外壁は金を塗ろうとしたところ、マリア・テレジアが財政の状況を考慮し、
黄金に近い黄色にした、これをテレジア・イエローと言う。
またバスに乗って
市内観光
ウイーン国立歌劇場を通る。
Wiener Staatsoper ヴィーナー シュターツオーパー
久美子さんは市内の主なホテルを並べて寅に聞いていくが
寅「日本語に訳すと今何しゃべってるんですか?」
久美子さん「あ、もう〜〜〜」って、笑ってしまう。
後ろの人たちもクスクス
そのころ、
兵馬はモーツアルト像の場所まで戻ってくるが当然寅はいない。
あせって外に捜しに行く兵馬。
聖シュテファン寺院
ウイーン市内からウイーンの森までを一望できる聖シュテファン寺院。
リンクの中心に位置し、世界遺産(「ウィーン歴史地区」)にも登録されている。
12世紀から3世紀以上もの年月を費やして建てられたオーストリア最大のゴシック寺院。
「シュテッフル」と呼ばれる137メートルの高さの南塔は14世紀に造られたもので、
この寺院の目印になっている。(高さでは世界第3位)現存で最古の部分は
正面入り口にある13世紀建造の後期ロマネスク様式の門。
高さ61メートルの北塔は鐘楼で、内部にはオーストリア最大の鐘「プムメリン」が置かれている。
これは17世紀末期に敗退したトルコ軍が置き去りにしていった大砲などを溶かして造ったもの。
ほかに歴代皇帝たちの内臓が納められた地下のカタコンベがある。
寺院の裏手にはモーツァルトが「フィガロの結婚」を作曲したといわれる「フィガロハウス」がある。
ウイーンは、聖シュテファン寺院以外にも
ウイーンの森 、シェーンブルン宮殿 、ショプロン ドナウ河とバッハウ渓谷、
ハプスブルク ベルベデーレ宮殿 、ホーフブルク宮殿 、ミラベル庭園、 国立オペラ座 、
美術史博物館など見所満載の街。
久美子さんは北塔に登り、ツアー客相手にプラター公園(遊園地)の大観覧車
はるか向こうに見えるウイーンの森もドナウ川をせかせかと説明。
【寅のホテルとその近場のロケ地案内】
インターコンチネンタル.ウイーン ロビー
で、ようやくツアー客たちは
宿泊宿だった「インターコンチネンタル.ウイーン」のロビー&レセプションに
たどり着く。どうやらこのあと空港に向かうようだ。
久美子さんにここで待つように言われた寅も、疲れてウトウト寝ている。
ツアー客の中に関敬六さんがいる!!。
久美子さんは仕方なく昔から困った時にはお世話になっている
命の恩人である資産家の未亡人「マダム」に手伝ってもらうことに。
淡路恵子&竹下景子コンビの黄金コンビ。
この二人はもちろん第38作「知床慕情」のコンビのまま、横ずらししたもの。
街のカフェ
久美子さんと寅がカフェで待っているとマダムがやって来る。
寅「私、東京は葛飾柴又の車寅次郎と申します」
マダム驚いて
マダム「あら、私金町よ!」
寅も驚いて
寅「え!?、あ、じゃあ、と、隣町だあ!」
マダム「懐かしい…」
マダム「子供時分会ったことがあるんじゃない?帝釈天の境内で」
寅ニコニコ
マダム「見たような気がするこの方」忘れにくい顔だからね(^^;)
寅「オレもいっぱい見られたような気がする、この方」上手い、座布団一枚(^^)
3人とも爆笑(^^;)
寅「懐かしいなあ〜」
で、久美子さんは仕事に戻り、
マダムは寅が食事に手をつけていないことに気づく。
寅はウイーンの食事がまったくあわないようで食べれないのだった。
寅「こういうのは苦手で、
どっちかというと熱い番茶と、焼いたおにぎりみてえなのが食いてーなあ」一日も早く日本帰れよ(^^;)
マダム「そんなの、うち来たらすぐできるわよ」
寅「あ、そうなの」
マダム「うち来る?」
寅「行こう行こう、すぐ行こう!」
寅のこの発言「行こう行こう、すぐ行こう」は
大船にあった松竹テーマパーク『鎌倉シネマワールド』の宣伝に使われた。
一方、その頃兵馬は寅を探すがどこにもいない。
ホテル・ツア・ウイーナー・シュターツオーパー
夜になって、へとへとの兵馬のもとにようやく寅から電話があり
寅「フフフ、今、美しいご婦人のお宅でね、シャケの茶漬けをいただいてます♪」と、お気楽な声
兵馬「なにが茶漬けですか!一日中探して歩いたんですよ!」と怒って切ってしまう。
とは言え、この旅行最大のメインイベントである舞踏会への準備は怠らない兵馬だった。
兵馬曰く
兵馬「なんであんな男連れて来たのかな、しかもこっちが金まで出して!
…やっぱり病気だったんだな…フフフ」
と、ある意味病気が治り、今ではすっかり元気な兵馬だった。
大きなマダムの屋敷
玄関に入っていく久美子さん。
マダムの部屋。
まだ寅が部屋にいた。
久美子さん寅が部屋にいることも知らずに
久美子さん「ねえ、どうした?あの不思議な日本人」
寅、隣の部屋で
寅「へへへ、不思議って、ハハハ」←このセリフに限っては渥美さんの素が入っていた。
久美子さん「あら!」
寅「フフフ、お帰りなさい、フフフ」
久美子さん「あ、ここにいらしたんですか、フフ」
マダム「あんまり話が楽しいんで引き止めてたのよ、ね」
久美子さん「わかりました?ホテルの名前」
寅「マダムがあちこち電話してくれてて、すぐわかりました。
今、相棒のところへ安心するように電話入れたばっかりです」
久美子さん「よかった。さすがおばさんねえ」
寅は久美子さんとマダムの出会いを聞く。
久美子のテーマが流れる
3年前の雪の降る日…
久美子さん「あの冬は仕事がなくて…、おまけに病気して、
とうとう最後にはパンを買うお金もなくなってね、
もうどうにでもなれってリンク通りって道を歩いていたら
あのおばさんが…、毛皮来て向こうから歩いて来たの。
私『すいません、お金貸してください』って、いきなり言っちゃったの…フフ」
寅、神妙な顔になって
寅「そうしたら、マダムなんて答えたんだい?」
久美子さん「『ついておいで』って…」
寅「へえ〜…」
久美子「フフ…、この家で、ちょうどここで、こんなご馳走食べさせてくれて、
そのあとで、『いくらいるの?』って…、そう言ってくれたの」
寅「へえ…、マダムらしいなあ…」
久美子さん「ね」
寅「へえ…」
寅「寒い雪の夜にばったりねえ…」
そういえば寅も、その昔、山形の雪の舞い落ちる寒河江で、
お金がすっからかんで、腹すかせて、もうダメだと、思った時に
お雪さんに助けられたっけなあ…。
その恩を寅は決して忘れず、15年間お金を送り続けたのだった。
久美子さん「ほら!今日あなたと会った道よー」
寅「?」
久美子さん「モーッアルトの銅像の前。あの道をリンク通って言うの、知ってる?」
寅「あ、あー、あそこのところ」
寅はモーッアルトと上野公園の西郷隆盛の銅像を比べだす。
大笑いの久美子さんとマダム。
いつまでも笑っている久美子さん。
マダム「初めて見たわ、この子がこんな楽しそうに笑うの」
マダムの亡くなったご主人は表向きはお酒の輸入商だったが、
実は国際スパイだったようだ。
マダム「死んだあとでわかったんだけどね」
オーソンウエルズそっくりのご主人の顔写真が映る。
第三の男のテーマが一瞬だけ流れる。
マダム「寅さん、なんのお商売」
寅「ええ、まあ、表向きは行商人ってことになってますけれど、
本当はスパイみたいなもんですよ、私も、フフフ」
みんなで大爆笑。
マダム「フフフ、へんなスパイ」うまいうまい(^^)
寅はここらでおいとまをしようとする。
久美子さん「どうやって帰るの?」
寅「ええ、どうってことありません。そのへんの駅から電車に乗って
柴又で降ります。それじゃ、ごめんなすって」
犬がついて行く。
マダムと久美子さん顔を見合わせて呆然。
寅、すごすご戻って来て
寅「…へへへへ…ここなんてとこだったっけ??」
久美子さんたち笑いながら
久美子さん「ウイーンよ、フフフ」
寅「ハハハ、そうかそうかそうか、うん、
日本と間違えちゃった、へへへ、はあ〜あ」
結局、ウイーンにまで行って、日本人とだけ親しくなってるんだよな。
寅なりに現地に関わって欲しかった気はする。
ま、それじゃ、お客さんがたくさん入る映画になりにくいんだろうけどね。
ウイーンを舞台にはしているが、よくよく見れば日本社会。
ホーフブルグ王宮 舞踏会場
あのマリーアントワネットも、仮面舞踏会をここで行った。
入場券は40ユーロ。一般の人も購入できる。
この券(男性用)にも記載されているが、男性はフロックコート、スモーキング、
ディナージャケット等正装が義務付けられている。
この券だけあれば舞踏会に参加することができる。
入場券の他にの他に休憩場所としての座席の確保(予約制)があれば、さらに楽しめる。らしい(^^;)
兵馬たちのホテルからなんとか徒歩圏。
兵馬がブリューゲルを見ていたウイーン美術史博物館の道向う。
柱のそばで正装をして踊りを見ている兵馬。
踊ることはかなわなくてもその雰囲気だけでも味わいたいと思っているようだ。
「女性から申し込みを」と呼びかけが入った。
「美しき青きドナウ」が流れる。
一人の女性が兵馬のところへ歩み寄ってきて
女性「踊ってくださる?」きた〜〜〜〜\(^^)/
兵馬、驚いて、思わず自分の後ろを振り向き、
他に男性がいるのではないかと思う。
兵馬「ヤ?」(私ですか)
女性「ヤ」
兵馬嬉しくて「ヤ」
結構兵馬の踊はどうに入っている。
日本で長年レッスン受けてきたなこりゃ(^^)
女性、踊りながら
女性「日本の方?」
兵馬「ヤ」
女性「ダンスお上手ね」
夢ごこちの兵馬。
おそらく彼の人生の頂点(^^)
第8作「寅次郎恋歌」を思い出す。
「華やかな舞踏会で胸の開いたドレスを着てダンスを踊ることだったのよ」
博の母親の叶わぬ夢…。
兵馬ァ〜、よかったなあ!(TT)
深夜 兵馬のホテルのそば
そのあと車でホテルのそばまで送ってもらって、
彼女の手にキスをする兵馬。
女性「パパー(さようなら)」
兵馬「パパー(さようなら)」
お互いにさよならを言い続ける二人だった。
夢見る兵馬は、ホテルまでワルツを口ずさみながら
踊って帰ってくる。
白壁に大きく映る兵馬の影。
第三の男のアレンジ(^^)
ちょっとだけ第三の男の曲
ホテル・ツア・ウイーナー・シュターツオーパー
ホテルで寝そべっている寅
兵馬「♪パパパパ、パッパッパ〜〜」
寅は入って来た兵馬に言い訳するが兵馬は先程までの
夢のようなできごとのイメージを崩されたくないので、
一人にしてほしいと下にひとりでバーに飲みに行くのだった。
一人残される寅。
窓の外では、町流しの男たちが歌を歌っている。
一人寝そべる寅。
いい歌だ。心にしみいる。
ウイーンのシーンの中でこの静かな夜のひと時が一番好き。
しかし私にはこの歌の題名がわからない。
オーストリア民謡だと思うのだが…。
どなたかこのストリートでギターとアコーディオンで歌っていた
あの歌の名前をご存じないでしょうか?
ご存じの方メールください。
翌朝
白いシュトロエンに乗ってドナウ川まで
ドライブに行く久美子さんと寅。
ベンチに座りながらしみじみと
寅「どこの川の流れも同じだなあ…。
流れ流れてどこかの海に注ぐんだろ」
久美子さん「北海という海にねえ」
寅「ああ」
寅「その海をずーーっとい行くと、
オレの故郷の、江戸川へ繋がるわけだァ…」
久美子さん「寅さんは、その江戸川のほとりで育ったの?」
寅「そうよ」
久美子さん「そう」
寅「うん」
久美子さん「私も川のほとりで育ったのよ」
寅「ほー…、久美ちゃんの故郷はどこだい?」
久美子さん「岐阜、長良川のほとり」
寅「あー、そらいいとこだあ〜」
そういえば、同じ竹下景子さん主演の第38作「知床慕情」のラストは
長良川のほとりだったなあ…
久美子さん「きっとそのせいね、水を見ると気持ちが落ち着くのは…」
寅、久美子さんを見ながら
寅「帰りてえだろ故郷に」
久美子さん「…」
下を向いてしまう。
久美子のテーマが流れる
寅「何かわけがあったのか…?」
久美子さん「…」
寅「こんな遠い国へ来たのは」
久美子さん「喧嘩したの。私気が短いから」
寅「誰と?」
久美子さん「会社と」
寅小さく「ほー…」
久美子さん「東京に出て大きな会社で働いてたの。
日本人なら誰だって知ってる会社よ。
嫌なことばっかりでね」
船が通って行く。
久美子さん「同じ職場で好きな人ができたんだけど、
結婚したら会社やめなけりゃいけないって言うの。そんな規則ないのよ」
小さく頷く寅。
久美子さん「でも習慣だからそうしてくれって…。
聞かない時には考えがあるって…陰険な言い方で脅かすの」
寅「…」
久美子さん「私絶対戦ってやろうと思ってたら、
ある日、彼が…
『お願いだからやめてくれ』って、『自分の将来に差し支えるから』って…。
悔しくて悔しくて私…、みんなやめちゃったの会社も彼も。
そして退職金と貯金持ってヨーロッパ来ちゃった。
あてなんかなんにもなかったんだけどね」
寅「辛いことがあったんだろうな、今まで…」
久美子「4年目から5年が辛かった…。それも冬…」わかるわかる…(TT)
外国での一人暮らしは最初の3年は勢いで乗りきれる。
しかし4年目からの数年間は素面に戻り、倦怠がはじまっていくのだ。
殆どの人達はこの4年目から10年目の間のどこかで日本に帰っていく。
10年目を過ぎると今度はその土地との生涯の縁を感じ始める。
そしてその後は何年住んでいるかということを考えなくなり、
逆に日本にも愛着を持ちながら異国で暮らせるようになる。
久美子さん、寅を見て
久美子さん「寒いのよ、冬は。街に出るのも人に会うのも嫌になってね…。
なんども死のうと思った…」
寅「どうして帰らなかったんだい?飛行機代くらい親から工面できなかったのかあ」
久美子さん「悔しいじゃないの」
寅「なにが?」
久美子さん「ほら見ろ、偉そうな口効いたって、
やっぱり女は駄目なんだなんて言われるの」
寅「んー、偉いもんだねえ」
別の場所に移動する二人。
シュトロエンのドアを開けて
久美子さん「どうして?」
寅「恥ずかしいけどね、オレなんか旅先で風邪ひいて、
宿屋のせんべえ布団にくるまって寝てるとね、
無性に故郷が恋しくなって、涙なんか出てきちゃったりするんだよ」
久美子さん「それでも帰らないの?」
寅「え?、いやまあ、嘘言ってもしょうがねえからね、
このさい本当のこと言っちゃいますけど、私はしょっちゅう帰ってます。え、
ですから、出たり入ったり出たり入ったりしてますから、ハハハ」
しょうがねえやつ ε-(ーдー)ハァ〜ァ
久美子さん大笑い。
寅「今でもすぐに帰りたいですよ」
と車に乗り込んでいく。
一方兵馬は
昨夜のダンスの彼女(テレーゼ)のパン屋を訪ねる。
テレーゼの働くパン屋前 BACKEREI VALENA
彼女は驚き感激する。
兵馬は花束をプレゼント。
兵馬「この美しい花を美しいあなたへ」
喜ぶ彼女。
でも以後途中なのでこれでお別れ。
兵馬の頬にキスをする彼女。
兵馬「テレーゼ!」
立ち止まる彼女
兵馬「あなたの幸せを祈っています」
彼女「ありがとう」と満面の笑み。
舞い上がった兵馬はポールにおでこを当ててしまうギャグ。
あ、この映画は「喜劇」でしたね(^^;)
坂口兵馬、生涯で最も高揚した日々。
一方 寅と久美子さん
またもやドナウ川横の小道を歩いている。
ウイーン版御前様にあいさつする寅。
美しき青きドナウを長く口ずさむ久美子さん。
寅、川を眺めながら、腕を汲んでいる。
観光汽船が汽笛を鳴らして通って行く。
寅は川の流れを見ながら歌を歌っている。
寅「♪あれ〜〜を〜〜、ごらんと
指差す〜かあ〜た〜あ〜に〜〜、とくりゃあ。
♪利根の〜流れの〜お、流れえ〜月い〜〜、てねえ、
♪昔わ〜ろお〜て〜、眺めた〜つ〜き〜も〜〜」
大利根月夜
作詞 藤田まさと, 作曲 長津義司
歌 田端義夫
1あれを御覧と 指差す方に
利根の流れを ながれ月
昔笑うて ながめた月も
今日は 今日は涙の 顔で見る.
2 愚痴じゃなけれど 世が世であれば
殿のまねきの 月見酒
男平手と もてはやされて
今じゃ 今じゃ浮世を 三度笠.
久美子さん、クスクス。
寅「ヘヘヘ」と笑って
寅「なんだかこの歌これちょっとあわないねえ、ねえ」
久美子さん「そうねえ、フフフ」
寅「ねえ」
久美子さん「美しき青きドナウじゃなきゃね」
寅「ああ、そうだね」
久美子さん「寅さんって不思議な人ね」
寅「不思議?あ、そうかね、
オレはとても常識的な人間だと思っているけどね」
久美子さん「故郷の塊みたい」
寅「へえ〜…」
久美子さん「寅さんと会った日の晩、故郷の夢見ちゃったの」
寅「ほう」
久美子さん「私が、トランクガラガラ引っ張って故郷(いなか)のウチ帰るのね」
頷く寅。
久美子さん「玄関開けて 『ただいまー』って言うと、
長ーい廊下の向こうから去年死んだおばあちゃんが
腰かがめて、泳ぐような手つきで出てきてね。
『久美子、よう帰ったねー、』って言うの」
頷く寅。
久美子さん「私を一番かわいがってくれて、
ウチ飛び出した時にこの指輪くれてね」
寅「んー」と頷きつつ指輪に触れる。
久美子「『困った時はこれを売るんだよ』って
言ってくれたおばあちゃんなの。
私、『帰って来たよ、帰って来たよ』って…言って…
オンオン泣くのね…」
哀しみの
久美子のテーマが流れる。
この曲は名曲
目を真っ赤にして泣いてしまう久美子さん。
寅「久美ちゃん…帰ろう。な。
意地なんかはることはないよ」
と、帰郷を勧める寅だった。
久美子さんは帰っても仕事なんかないし、勝手なこと言って飛び出してきあから
親兄弟をあてに出来ないと、悲観的なことを言うが
そうは言ってもやはり望郷の念は止み難く、
心はめいっぱいになっている久美子さんでもあった。
寅は仕事の口添えは、オレが手伝うと言うが…。
泣き続ける久美子さんだった。
一方
東京 柴又 とらや
寅からの絵葉書がようやく舞い込む。
さくら「あらいやだ、お兄ちゃんからだわ」
さくら、思わず笑って
さくら「ハロー、だって、フフフ」
おばちゃん「ええー?」
さくら「ハロー、みんな元気か、遠い異国の空から
みんなの幸せを祈っている。
ウイーンにて 寅」
みんなは、いい気なもんだねと半ば呆れている。
社長「ヨーロッパか…、どーせオレは死ぬまで行けやしないんだ。
カレンダーでも見て我慢しよ、あ〜あ…」
別に用もないのだったら外国なんか行く必要はないぞ社長(ーー)
とらや台所の壁になぜか偶然か
「シェーンブルン宮殿」のカレンダーが掛かっている。
そこからカメラは同じアングルの本物の宮殿に入っていく。
ウイーン シェーンブルグ宮殿
写真を撮って舞い上がる兵馬だが、寅はしらけている。
記念撮影も、寅は邪魔ばかりして、兵馬とミニコント。
一方 久美子さんは…
レストランで、ドリンクを頼むツアー客。
注文をとっている久美子さん。
その中にまたもや関敬六さんがいる。なぜ?
先日みんなでコンチネンタルホテルから空港に向かったのではなかったのか!?
久美子さん「『アイシュペナー』が日本で言うウインナーコーヒーのことです」とみんなに説明。
口々にいろいろ注文
関さんも後ろ姿で「お姉さん、紅茶」と手を上げる。
ウィーンには、ミルクを使った様々なコーヒーがあるが、日本のウインナコーヒーと一番近いのは、
「一頭立ての馬車」という意味の「アインシュペンナー(Einspaenner)」。
このコーヒーの名前の由来は、オペラ座近くの馬車だまりでお客さんが来るのを
待っていた御者たちの間で人気があったためだそうだ。
英語にするならばホイップクリーム入りのコーヒー、
「コーフィー ウィズ ホイップトゥ クリーム(coffee with whipped cream)」ということになる。
ちなみに
ブラウナーはミルク入りコーヒー、
メランジュは泡立てミルク入りコーヒー。
リヒテンシュタイン美術館そば
リヒテンシュタイン美術館そばの九十九折階段を上がっていく久美子さん。
恋人のヘルマンのアパートに行く。
初めて会った思い出の 街のカフェ
ウイーンに来てすぐに久美子さんがこのカフェで財布をなくして困っていたら、
声をかけてくれたのがヘルマンだったのだ。
久美子さんは恋人のヘルマンに、日本に戻ることを告げる。
ヘルマンはショックを受けるも、久美子さんの気持ちを尊重するとつい言ってしまう。
しかし、あきらかに悲しみを我慢しているヘルマンだった。
このあたりは第48作の満男を思い出す。
自分の気持を抑えて彼女の人生を尊重するのだ。
しかし、実は女性はそんな配慮を求めているのではなく
男性に「そんなことやめろ」と強く言って欲しいのだ。
若いヘルマンにはその女心が見えていない。
ドナウ川畔
ドナウ川畔を歩きながらまだ迷っている久美子さん。
モーツァルト
ディベルティメントK136 2楽章
ヴァィオリンを弾くヘルマン。
なんと彼はヴァイオリニストなのだ。
マダムの家
で、結局迷ったあげくその夜マダムの家で帰国することを告げる。
しかしマダムは、本当に愛しているなら
どうしてヘルマンに『帰るな』と言わせなかったのか。と怒る。
マダム「本当はヘルマンにそう言って欲しかったんだろ」んだ(−−)
久美子さん「……」
マダム「そんなこともできないでどうして愛してるって言えるの」
マダム「おばさんの亭主はね、私が日本に帰りたいと思ったら、
ピストルを持ち出して『お前を殺してオレも死ぬ』と言ったわ。
その一言で私決めたの。一生この街で暮らそうって」
久美子さん「後悔してない?」
マダム「してない。
あんんたたちみたいな中途半端な状態だったら、
そら、帰るしかないわね」
久美子さん「…」
久美子さんはおばあちゃんの指輪でお金を貸して欲しいと頼む。
マダムは「そんなものいらないよ」と餞別代わりにお金を出してやる。
と、お金を出してやるマダム。
帰りの片道チケットはせいぜい当時高くても日本円で15万円以下だろうに。
久美子さんってほんとうに貯金無しなんだね。生活ギリギリなのか…。
冬はウイーンは寒いから観光業の仕事が無いんだろうね。
とは言うものの
久美子さんが帰国してしまうことが悲しくて涙が出てしまうマダムだった。
で、マダムは、急遽寅たちと一緒に日本に帰りたいと言う久美子さんの気持ちを考えて
寅の部屋に電話をする。
ホテル・ツア・ウイーナー・シュターツオーパー
ちょうど寅は日清カップヌードルを今まさに食べようとしているところだった。
寅もあんなもの食べるんだね。
寅死んだような低い声で
寅「ハロ〜〜〜」(^^;)
マダムが久美子さんも一緒に日本に帰るので一緒に
連れていってくれと頼むのだった。
久美子さんも電話に出て
久美子さん「寅さんの言うとおりにするわ、
よろしくお願いします」
内心久美子さんと一緒に日本に帰れるので大喜びの寅だった。
しかし、実は…
この時点でもまだ久美子さんの心は揺らいでいたのだが…。
一方
酒場で大騒ぎしてみんなとワイワイ歌を歌い遊んでいる兵馬。
脚本第2稿の段階では、
兵馬と一緒になんと寅も酒場で飲んでいる設定。
酒場で陽気にはしゃぐ兵馬を見て、「病気治ったな」とささやく寅だった。
しかし決定稿ではこの部分は削除。
後日…
国際空港に向かう寅と兵馬、そしてマダムと久美子さん。
ウィーン・シュベヒャート空港
久美子さんがいよいよマダムと別れを惜しんでいるまさにその時
ヘルマンがタクシーを降りて、走ってくる。
みんな何事かと驚く。
ヘルマン「クミ!!クミ!!」
抱き合う二人。
ヘルマン「クミ!!行っちゃダメだ!僕は君を絶対離さない!!」
呆然とその光景を見ている寅。
ヘルマンは空港スタッフに
ヘルマン「この人は飛行機に乗りませんから!」と強い目で訴える。
久美子さんはヘルマンの強い態度に感動し、
遂に心を決めるのだった。
久美子さん「ヘルマン、わかったわ、あなたの言う通りにする」と言い。
ヘルマンは久美子さんを抱き上げ、二人はキスをする。
呆然と見ている寅。
久美子さんは寅に近づき…
久美子さん「寅さん、ごめんなさい、私…私帰れなくなった」
メインテーマが流れる。
寅「そうか…あの男が好きなんだな」
久美子さん「すいません…。あとで手紙書くから…飛行機に乗って…」
寅「わかった。よくわかった」
ヘルマンに向かって
寅「おい、外人の青年、久美ちゃんのことを
幸せにしろよ、もし泣かせるようなことがあったら
このオレが承知しねえぞ」
ヘルマン「Yah」なぜか分かるんだね、寅の顔と口調で。
寅「よし!」
寅はカラ元気で久美子さんとマダムに別れを言い立ち去る。
とは言うものの、
大ショックでよろけてこけてしまう寅だった。
結局寅は間接的にふられたような虚脱感のもとに
帰国の途につくこととなってしまった。
その後
東京 柴又 題経寺
源ちゃんが水撒き
御前様の縁側 おみやげの小さな人形をもらって
御前様「ほー、こりゃかわいい、寅にとお礼を言ってください」
さくらは帰国後、魂が抜けたような寅を評して
さくら「ウイーンに言ったなんて嘘で夢でも見てたんじゃないかって」
御前様「まあ。。。もともと寅の人生そのものが夢みたいなもんですから」
さくら「そうですね。
だとしたらいつ覚めてくれるんでしょうね…」
でもさくら、「夢から覚めたってお兄ちゃんは幸せとは限らない」って
「ハイビスカスの花」で言ってたよね。
この御前様の発言自体も同じく第25作「ハイビスカス」のアレンジ。
とらや 茶の間
みんなで寅にウイーンの土産話しを聞きたがるが
寅は無関心で何も話そうとしない。
ウインナーコーヒー、ウインナワルツ、ハムのウインナー、全部興味なし、
美味かったもの→「鮭茶漬け」
遠出は一度きり。
寅「一ぺん出たよ、車に乗って」
さくら「どこに?」
寅「広い道を車でずーっと行ったらな、大きなこういう川のところへ出たなあ…」
「美しき青きドナウ」のBGM
博「ドナウだ。そう言いませんでしたか」
寅「あ、確かにそう言ったな」
さくら「美しき、青きドナウね…」気持ちはわかるがただのきれいな川だよ ゞ(^^;)
博「それからどうしました?」
それからは、ドナウ川の畔にも御前様がいて、団子屋があってと…
柴又と同じようなことしか言わない寅だった。
さくら「それじゃ、柴又と同じじゃないの」
寅「地球中、どこ行ったって同じでしょうそりゃ」
さすが旅人寅、そのとおり!(^^)
博「それが結論ですか」
寅「そう、いずこも同じ」
おいちゃん、妙に納得している。
社長「なんだ。。ウイーンで美人と会った話が出るかと思ったよ。
は…、つまんねえ」
ほんとは会ったんだよ社長 ヾ(^^)
寅「悪かったね、社長」
みんなちょっと失望して仕事に戻る。
少しは元気になった寅は、一息ついて
旅に出ることにー。
帝釈天 参道
さくらと参道を歩く寅。
途中で会った満男が送る。
別れ際に「ダンケ」とつい言ってしまって、
「やっぱり本当にウイーンへ行ったんだな」って笑う寅だった。
夏真っ盛り
蝉の声
満男が工場に「お面被ったような人」が来たことを知らせる。
とらや 茶の間
兵馬は寅へのお礼とたくさんの写真を届けに来たのだった。
兵馬が写した写真の中に久美子さんがたくさん写っていた。
寅の失恋の一部始終を紙芝居のようにマメに連続的に写した兵馬だった。
あり得ないって ゞ(^^;))
う〜ん、山田監督らしくないなあ…、この運びは。
物語の経過を回想する時に、こういう説明的で、安直な演出はちょと考えもの。
それとも、この連続写真がギャグ的にうけると思ったのだろうか。これはギャグとして面白くないと思う。
さくら、はっと気づいて、
さくら「そういえば…こないだ、ウチに来てた絵葉書…。
その方久美子さんと言いませんでした?」
と、アムステルダムからの絵葉書(運河と跳ね橋)を博に見せるさくら。
さくらのテーマが流れる。
久美子さんのハガキ
久美子さんのナレーション
オランダ アムステルダム ブラウの跳ね橋
跳ね橋の前でツアー観光のサポートをしている久美子さん。
Mr.Torajiro Kruma
7−7−3 Sibamata
Katusika-ku
Tokyo
Japan
久美子さんの声
寅さん
蒸し暑い日本の夏をいかがお過ごしですか。
柴又の皆さんはお元気ですか。
故郷のかたまりのような寅さんにお会いして
私がもらったものは故郷よりもっとすばらしい愛でした。
まもなくヘルマンと新しい生活に入ります。
どんなにつらいことがあっても私は耐えていくつもりです。
本当にありがとう。
仕事先のオランダにて、 久美子
そのころ寅は―
伊豆 内浦 氣多神社の夏祭り
カバンをポンシュウと一緒にバイする寅。
山田監督は伊豆の海が大好き。
第16作、第24作のラストもこの付近。
何度もロケに使っている。
寅「オーストラリアはウイーン製バッグ!」
ポンシュウ「ヨーロッパ!ヨーロッパだよ!」
消費税おまけ。
男子高校生A「おっちゃん、おっちゃん、ウイーンはさ、オーストリアの首都じゃろが」
男子高校生B「オーストラリアは、カンガルーの国じゃ」
寅「そういうこともありました昔は、ね、
若い男が理屈を言うと女にもてない!な!」と、切り返す寅。 さすがだね(^^)
と女子高生達の方を見て笑い飛ばす。
大笑いしている女子高生達。
寅「やけのやんぱち日焼けのナスビ、
色は黒くて食いつきたいが
あたしゃ入れ歯で歯が立たないよ!ときた!」
晴天の正月風景
氣多神社の鳥居と旗
海の向こうに富士山が映って
終
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