バリ島.吉川孝昭のギャラリー内 


第1作 男はつらいよ

1973年12月26日封切り







6月28日『松村達雄おいちゃん』名場面集

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切なく響く『別れの曲』                りつ子さんの心のパトロン 車寅次郎



第12作「私の寅さん」はなんと観客動員数が48作中242万人で最高である。どういう理由でそうなったのだろう?
当時トップ女優でかつフランスに住みモダンな自立する女優だった岸恵子と寅次郎の取り合わせが新鮮だったのだろうか。
第11作「忘れな草」で相当盛り上がっってきたことも弾みになったともいえる。

この作品は前半はマドンナが出てこないが、さくらたちとらや一同の九州旅行(飛行機で!)が盛り込まれていて、そのあたりの寅との絡み
が非常によくできている。この部分だけでも1作品分の見ごたえがあるともいえる。

前半と後半、どちらがメインか分からないほどである。特に旅行から帰ってくるさくらたちを迎えるために料理を作り、ご飯を炊き、風呂を
沸かすこの時の寅の気持ちはなんともいえない温かみがあり、48作中でも忘れがたい場面だ。いつもは旅先から帰ってきた寅をとらやの
人々が温かく迎え入れるが今回は逆の状況が何とも新鮮で、今までと違った寅の一面を見せてもらって楽しかった。それにしても
あの寅がよくも何日もひとりで留守番をしたものだ。留守番中の寅と、さくらやおいちゃんたちの電話のやり取りや源ちゃん、タコ社長たちとの
やり取りが実に愉快で面白い。これぞ喜劇と言う場面だ。

またこの第12作はマドンナが絵描きさんで登場する。私と同じ仕事なので、彼女の言葉の中に随分共感する言葉が多かったが、
なかでも「本当に自分が気に入った作品は売りたくないものなのよ。かといって気に入らない作品っていうのはますます売りたくない
でしょう。と、言っても、売らなきゃ食べていかれないしね」というジレンマは全くその通りだと身に染みた。第17作でさらさらっと落書き
描いて寅に7万円で売らせた池ノ内青観に聞かせてやりたいセリフだった(^^;)

第11作のリリーといい、このりつ子さんといい、そして次の第13作の歌子さんといい、山田監督は『自立する女性』の姿をテーマの中心に
置いて制作している。このシリーズが第11作あたりから新しい風が吹き始めているのが手にとるように分かる。

ただ、マドンナのキャラクター作りという意味ではリリーや歌子さんなどと比べてちょっとあっさりしてはいる、というか、いかにも岸恵子さん
イメージのキャラだったのでリリーの時のような意外性はなかった。しかし、見ごたえのある前半部分があるのであわせ技1本!!っていう
ところか。岸恵子さんといい、飛行機での九州旅行といい、快活な明るい作品に仕上がっている。
ラスト近く、寅とりつ子の最後の会話の場面で流れるショパンのピアノ曲「別れの曲」は今でも切なく私の胸に残り、忘れることができない。




■第12作「私の寅さん」ロケ地解明

全国ロケ地:作品別に整理







本編



今回も夢の話から


字幕:その頃、未曾有の大飢饉に葛飾郡柴又村の民は苦しんでいた。

村人泣きながら「うう…神も仏もあるものか…南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」江戸川に飛び込む。
柴又の村民と言えども「南無妙法蓮華経」ばかりではないのだな…(^^;)

さくら、家から出てきてかじかんだ手を擦る。井戸から水を汲んでいると

享楽的に騒ぎながら前を通る一団がいる。悪徳商人やらせたら日本一
吉田義夫さんだ!!。

悪徳商人「この道は暗いなあ…。柴又村は死に絶えたか!灯りも見えやしねえや!」
太鼓もちのタコ「そりやあ、ありませんよ、だあ様。  なにしろ だあ様が日本中の菜種油を
全部買い占めちゃったんですからね、貧乏人どもはランプひとつつけられませんのよ!」
「そうか!ハハハ」

芸者「近頃はお米もひどい値上がり」
芸者「それに化粧紙もぉー!」
タコ「それもみんな、このだあ様が買占めよ!」
一同「悪いお方!ハハハ」
源ちゃんさくらに近づいて提灯で顔を見て「はっ!」
源ちゃん「だあ様!こいつは車寅次郎の妹です!」
「謀反人の寅次郎?」
「あーら、おそろしや…」
「なあるほど…こいつは
謀反人の寅次郎...



                  




一同「あーら、おそろしや」
悪徳商人「なーるほど…こいつは国賊の妹らしいや。憎憎しいツラしてるじゃねえか」
と、ステッキでさくらの顎を持ち上げる。
さくら、振り払いながら
さくら「なんだい!あんちゃんのどこが悪いんだい。あんちゃんはみんなのために正しいことしただけなんだ」
悪徳商人「吼えたことたたくな!寅次郎が捕まってみろ!絞首刑だぞ!」
さくら、耐え切れずに、お前なんか死んでしまえ!!と雪を投げる。
悪徳商人「このアマ!」
と悪徳商人たちに蹴られ、ステッキで打ちのめされる。
タコの太鼓もち止めに入るが、蹴散らしてステッキで打ち続ける。

そのとき
待てえ!」の声

BGM大きく盛り上がって

悪徳商人「てめえは誰だ!」
寅「この面体よもや見忘れではなかろう」←このセリフだけでもう面白い(^^;)
と布を取って顔を見せる。
悪徳商人「く、車寅次郎…」

一同 恐れおののく
寅「よくも私達一家にむごい仕打ちをしてくれたな。飢えに苦しむ柴又の民衆に変わって天罰を与える!!」
ピストルを構える寅次郎
一同驚いて逃げようとするが
悪人ばら!江戸川の露と消えろ!!
と悪徳商人にピストルを命中させる。
取巻き連中退散!

タコと源ちゃん、江戸川にドボーン!と飛び込む。

寅次郎振り返り

寅「さくらー!

さくら泣きながら「お兄ちゃん!

抱き合って「可哀想に…辛かったろうな…」

柴又の村人が「寅次郎様!」「ありがとうございます」と寄ってくる
「柴又の皆さん!もう大丈夫です。ここにわが同士は立ち上がった!」
村人達「わー!!!」
川向こうで火が上がり、寅次郎の同志達の怒涛の歓声が聞こえてくる。

寅「見よ!!あのひんがしの空の黎明を!


           


BGM大いに盛り上がって


「あー!!柴又の村にも遂に平和がやって来たのだ!」

と感動のもとに夢は終る。




ふと、目を覚ます寅次郎。連絡船のなかである。



汽笛「ボーーーーッ!
おい、学生さん、ここどこだい?


「サカイです」


寅「サカイ!そりゃいけねえや」

女子学生A「ちょっと、あんたのカバンじゃない?」
上学生B「おじさーん!おじさーん!ちょっと待ってよー!おじさーん!」



寅振り向く


女子学生「カバーン!カバーン!」
男子学生「カバン間違っっとるバイ!」←九州だ!

(天草の
松島港あたり)



女子学生B「あたしのカバーン!」←T.Mのイニシャル。

渥美さん、ニタニタ笑いながら振り向く。←渥美さんこれ素で笑ってるよ(^^)



寅、間違いに気づいて


寅「おーい!おい!ちょっとまってくれよ!止まれ止まれ!
 
ちょっと回って来い!



普通間違わんって ヾ(^^;)




                    







タイトル



                     



男(赤文字)はつらいよ(黄色文字)私の寅さん(白文字)
バックはお馴染み江戸川土手

口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。



   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


   ♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら こんな苦労も
   こんな苦労もかけまいに かけまいに♪




子供達がサイクリングしている江戸川土手を寅がまた帰ってきた。



子供達がタモでトンボを捕っているのを寅が手伝うのだが

例によってカップルの女性のあたまにトンボが止まり
タモを頭に被せてしまう。というミニコント



                    






柴又参道

帝釈天参道をさくらがデパートの紙袋を山ほど持ってとらやへ向かって歩いている。
水色
が入ったストライプで
お馴染みの『
三越デパート



                    



ちょっと買物疲れの感じ。


さくら「満男、ただいま」

満男「おかえりなさーい」

おばちゃん「ごくろうさん。デパート混んでたろう」

さくら「もうくたびれてくたびれて」

さくら「おばちゃんなんか冷たいものちょうだい」

おばちゃん「あいよ」

おいちゃん「おかえり」

さくら「シャツMでよかった?」


おいちゃん頷いて、「さるまたはLだよ」
←わかるわかる大きめだと蒸れないで気持ちいいよね。


さくら「そんなもの買ってこないわよ

さくら「さてと」

おばちゃん、さくらの近くにジュース置いて「あいよ」

おばちゃん「たいへんだったろう、買物沢山で」

さくら「これが洗面袋…」




                     





                     




↑この三越の赤で描かれた模様に白地の文字が
入った包装紙は、 1950年にクリスマス用として登場して以来、
現在まで使われている伝統柄。
これを画家猪熊弦一郎がデザインしたことは有名。
そしてこの包装紙の中にある「mitsukoshi」というローマ字の
筆記体を書いたのは今はアンパンマンの漫画家になっている
やなせたかしさんらしい。
当時は三越宣伝部にグラフィックデザイナーとして
勤務していたという。



さくら「歯磨きもかってきちゃったバーゲンで安かったから」

さくら「あ、これこれ、おいちゃん旅行カバン」

おいちゃん「おう」

さくら「高かったわよ」

さくら「これね、満男の靴、すぐはかしてみて
←本人がいないで靴を買うのはちょっと危険。
靴を買うときは必ず本人の足と合わせることが基本。



おばちゃん「あー、いいよ」

さくら「これなんだったかな?…あ、そうか」っと下に置く。

さくら「これがおいちゃんのシャツと博さんの靴下ねー」

おばちゃん「あ、私の
白髪染め買ってきてくれた?」

さくら「
800円」もしたわよー。

おばちゃん「あ、そおお」

さくら「
お菓子いろいろ買ってきちゃったわよ安かったから。
それじゃ中学生の修学旅行だよ。(^^;)

これが満男の寝巻
さくら「
あーあー、もうお財布空っぽ

←実は、今回の旅行は全部さくらと博のおごり。



おばちゃん「ねえ、私新しい足袋2足しかないんだけど間に合うかしらね」

さくら「大丈夫よたった
3泊の旅行じゃない」


おばちゃん「
そんなこと言ったってお前あたしゃねえ、
   
箱根より西へ行くのは初めて
 なんだからね


↑おばちゃん、
第3作で伊勢の温泉宿に
夫婦で行ったこと忘れてるよ!(^^;)




おばちゃん「あら、満男!いい靴だよ!ほら!ほーら、ちょっと履いてごらん」
さくら「おいちゃん、これ、セーター買って来た。ちょっと見て。」
おいちゃん「あい…」
さくら「どうしたのよ冴えない顔して…」

おばちゃん「
ちょっとあんた、具合でも悪いんじゃないのかい。変だよ、さっきから

おいちゃん「
今ー、お寺に旅行安全のお祈りに行っておみくじ引いたんだよ。そしたら、これだよ…
さくら「あら!
…やーねえ…」

おばちゃん「
旅行…どうだって?

さくら
旅行…旅行差し控えるべしまあ…


おいちゃん「
なんだかオレは嫌な予感がするんだよー…



タコ社長やってきて

社長「よお、さくらさんいいもん買ってきたよ
『九州旅行案内』

さくら「どうもすいません」

社長「なんだい、どうかしたの?元気がないねー」

さくら「いえねー、さっきおいちゃんがお寺に行って
おみくじ引いてきたら凶がでたんでみんなでガックリしてんの」

社長「フフ…なんだバカバカしいこんなの信じる奴あるかい…」

おばちゃん「あらあ、
帝釈様のおみくじって当たることあんだよ」

おいちゃん「
特に悪いことはな…
いいことはあんまりあたんねえけど…

おいおい、そんなおみくじあるのか?(^^;)



さくら「
おばちゃん…そう言えばそろそろお兄ちゃん帰ってくる頃だもんね…

社長「
そうか…寅さんか…

おばちゃん「
どうする?あたしたちの留守中に帰ってきたりしたらさー…


大丈夫だよ。『
待ち人来たらず

おばちゃん「うまいうまい…フフフ」

おいちゃん「
まあしょうがねえや。万が一の時は社長面倒見てやってくれよ

社長「
いやだよ!オレ!冗談じゃねえよ!

おばちゃん「あら、どうして…」
社長 「
1時間や2時間のお守ならするけどね。
3日も4日も
もちゃしないよ


おばちゃん「
だってあんたさっき留守中のことは引き受けるから
       安心していって来いって言ったじゃないのよ



寅登場!店先で覗いてまたスッと向こうへ


社長「
他のことは何でも聞くからそれだけは勘弁してくれよ。

おいちゃん「
なんだいその口の利き方は、
昨日や今日の付き合いじゃねんだぞ!

何もガキを預かるって訳じゃねえんだよ。
立派な大人なんだよあいつだって


↑かばってるようでかばってないぞ!(^^;)


社長「
冗談じゃないよ。あいつ預かるくらいならね、
  
あんた、赤ん坊預かった方がよっぽど楽だよ

寅、店先に戻ってきて
耳ダンボにして聞いている。


おいちゃん怒って、「なんだとこのやろう!」っと物を投げつける。

さくら「おいちゃん…」と、止める。

おいちゃん「
さくら!おまえ、兄貴の悪口言われて腹たたないのか!?

おばちゃん「
そうだよ、いくら長い付き合いだってね、
      身内の悪口なんて言ってもらいたくないね


社長「そう、刺々しくなるなよ」

おいちゃん「
いいよ、てめえなんかに頼まねえや!帰れタコ!

社長「
タコとは何だタコとは」

おいちゃん「タコで悪いか!」

社長「
悪いよ。オレはね、
  今度寅の奴が帰ったら言ってやろうと思ってんだ。

  オレにはねちゃんと
梅太郎って
  名前があるんだってな!



寅、タコの真横まで来ている



寅「
タコで上等すぎるよ!他になんとお呼びしますか!?




                    



タコ社長もさくらたちも寅が
突然現れたのでギョッとしてビックリ

寅「
このやろう、オレの悪口ばっかり言ってやがって!

社長、あせって「そんなことない…」

寅「
なんだおめえ、他人のうちにずうずうしく入り込みやがってなんだよ!
  帰れタコ、帰れってんだよ!帰れ!
」っと追い出す。


寅「
バカヤロウ、茹蛸みたいに真っ赤になりやがって、ハハハ、
ナァ、フフフ、まあ、利巧じゃねえけどもさ、
悪気のねえやつだからさおいちゃんも勘弁してやってくれよ。な



おいちゃん「お、いいい…う、ううん…」とつぶやく

ニコニコ笑いながら

寅「
で、なんだい、もめた原因ってのは?

死んでも言えない(^^;)


さくら、
九州旅行の本隠しながら

さくら「
う、うん、たいしたことじゃないの…

寅「ん?ははそうか、おいちゃん、どっちにしても減らず口が多いからねっ」

おばちゃん「フフ、うん」と言いつつ心配そうにおいちゃんを見る。

寅「お、何だお前
よそ行き着てるね。あ!どっかへおまえ出かけようとしたのを
俺が帰ってきて、出バナをくじいたんじゃねえか?」

さくら「
そんなことないわよ。今買物から帰ってきたとこ

おばちゃん「そうそうそう」と
そそくさと買物袋を片付ける
さくらもそのへんに置いてある
買物を端に追いやる

寅「
あ、そうか?そうか、うん、
  あ、オレノことだったら気使うことねえんだよ。
  オレはおばちゃんのんね、
  手料理ご馳走なるだけで十分なんだから



おばちゃん、微笑んで「そうかい」

寅「フフ…」
一同 苦笑い

なぜかこのあたりでさくらが飲んでいたジュースが
いきなり半分近くに減っていた。
小道具の消えもの担当の人しっかり頼んます(^^;)



寅「
夜汽車ってのは疲れるねえ…

おばちゃん「
そうだろうねえ…

寅「
2,3時間寝かしてもらおうかなあ…

微妙〜な緊張感が漂う(^^;)


おばちゃん「あ、いいよ」

寅「
2階で

おばちゃん「
うん
寅、お土産置いて、立ち上がり「
わさび漬け

おばちゃん、わさび漬けを拝んで「ありがとう」


微妙〜ぉな緊張感がまたまた漂う(^^;)

寅「あ、おいちゃん」

おいちゃん「おう?」

寅「
2階は誰にも貸してねえな?

ちょっとまだなにか疑っている寅。
なかなかカンが鋭い


おいちゃん「
いやいやいやいいや

寅「
そうかい、うん。せいぜい長くて3、4日の逗留だから。な

にこっと笑って2階へ上がって行く。

2階から寅の声「
あーあ、やっぱり家が一番いいや!

3人下で絶望的な表情をして考え込む。


源ちゃん、寺の鐘を撞く
「ゴ〜ン!」


工場内



社長「やあ、みんなご苦労さん!お疲れ様!」

ひょっとしてこの工場お寺の鐘の音で労働時間決めてるのかなあ?
そうだとしたら源ちゃん責任重大。

博「それじゃみんな!明日から4日間旅行に行かせてもらいます。留守中よろしく頼みます

工員「いってらっしゃーい」

工員B「お土産頼みますよ」

博「
餞別

工員B「はい」っと
写植の文字を手のひらに乗せる工員
「ハハハ」
博「ハハハ、これが餞別かぁ。ハハハ」
一同「ハハハハ」



とらや

寅機嫌よく鼻歌歌いながら風呂に入っているらしい。

寅「
♪アラ〜、パンツが
うーらーダーヨ!…♪


おいおい、こんな歌あるのかよ?(^^;)

だいたい寅は「フンドシ」派のはず



博帰ってくる。

さくら「おかえんなさい」

おばちゃん「ごくろうさま」

博「
どうした?兄さんに話したのか?


さくら、首を振る。

おいちゃん「
どういうフウに切り出すか
      これがなかなか難しくってな…なんかいい知恵ないかい?



博、頷きながら「…」

おばちゃん「
ねえ、いっそのこと2,3日旅行延ばしたら?

さくら「
そーんなことできないわよ。切符だって買ってあるんだし旅館の予約だって…

おじちゃん「
とにかく、さくら、こういうのはおまえの役なんだからお前から話せよ、な

さくら「
いやだなあ…私


寅、風呂のガラス戸がラットあけて

寅「
あー!いい風呂だった!

寅が風呂から出てくる珍しい場面。



寅「お!博!ご苦労様」っと座敷に座る。


とらや一同この後どうする!?
誰が猫の首、いや、寅の首に
鈴をつけるのか!?






寅、料理見て「なんだよおばちゃんダメだよ」

おばちゃん「何がどうして?」

寅「
ごちそう作ってさー、
 だからオレ気使うなって言ったじゃないか、え、

明日っからはね、いつもと同じお惣菜でいいからな。

明日から旅行でいない…で、一同緊張する。

寅のおばちゃんの料理に対する気遣いは「忘れな草」の
ピアノ騒動直前と同じ。
やはり、今回も完全に
『嵐の前の超静けさ』って言う感じか(^^;)




寅「
オレおばちゃんの芋の煮っ転がし大好きなんだから、なあ、さくら、ね

さくら「うんそうね…」とうなづく

寅「
おいちゃん、しばらくだったねー、まあ、1杯いこ、はいはいはい

おいちゃん、
ふがふがおうおう…

おいちゃん
さくら、なんか話があったんじゃないのか…

さくら、ちょっと戸惑っている。

、笑いながら
なんだい?おまえアンちゃんになんか話があるの?

なに?なに?

さくら「話というよりお願いがあるんだけど…」

寅「金か金はだめだよ、あんちゃんわさび漬けかっちゃったから

一同 「ハハハハ」

さくら「
お金じゃなくてね、…」  

おいちゃんのほうを見ながらなかなか言い出せない。

寅「なんだ?」

さくら「
実は…あたしたちね…」なかなか言い出せない。

寅「
あ、…お前たち夫婦なんかあったのか?
 性格の不一致
か!?

博「
いやいや、さくらといろいろ相談してですね、
 紙の値上がりで工場も暇だし…ええ…



タコ社長裏からやってくる。みんなそれに気づいていない。


寅「
あ!!おまえ裏の工場辞めようって言うんだな!
 それはいけないよ!
 そんなことをしたらあのタコが可哀想だぞ!え、

 お前が辞めるなんてことを聞いたらな、タコは泣くよ、
 オレゃとてもタコが泣くとこなんか辛くて見ていられねえな…


タコ後ろで目がすでにうるうるになっている。

博「いやいや兄さん、あの…

寅「それやいけねえ…」

タコ社長に気づいてそちらを見る。

寅「えー…?お、なんだい」

社長「
ありがとう寅さん、寅さんの気持ちオレ嬉しいよ


とハンカチで涙を拭く


話がずれてるよ社長。(^^;)




                  



寅「何いってんだいおいおいおいみんな顔が合ったんだから

  パッと飲もうよ上がれ上がれ上がれ」

社長、神妙な顔して、


社長「
博さん、…給料のことはね、オレいつも考えて
  悪いと思ってんだよ…


博「
いえ、ち、違うんですよ…さっきの話まだ…

社長 「

寅「
さっきの話」と社長に言う←全く分かってない


御前様現れる。


おばちゃん「あ、御前様」

一同座りなおして礼

御前様「
みなさんこんばんは

寅「
どうも御前様ご無沙汰いたしまして…寅でございます

御前様「
おー、寅 帰って来てたのかぁー

寅「
へい
御前様「
そらーぁ、とらやさんも
 都合が良かったね

←この「
ぃ」は熊本弁
寅「えへ、へ
御前様「
留守番ができて←出たあ〜!!


おいちゃん「
え、ええ…え、まあ、…あの…

寅、はっとして、おいちゃんをじっと見ている


御前様「
明日の朝旅立ちと聞いたので
    ほんの気持ちだがお弁当代にでも



おばちゃん「あーこれはこれはありがとうございます。どうも」


一同頭を下げて恐縮する


寅だけ呆然として目がうつろ。

寅の首に鈴をつけたのは
御前様でしたー!!!
(@@;)/

普通はタコ社長がこういう役を引き受けているんだが…。


御前様「
これは旅行安全のお守り。気は心というからね


第4作「新 男はつらいよ」で寅たちがハワイに出発する時に同じく御前様が
「餞別」を「気は心」と言いながら渡していた。


おばちゃん「どうもありがとうございます」と
拝んで受け取る。


御前様「じゃ、道中仲良く楽しい旅をな」

寅、怒りがふつふつ湧いてきている。

御前様「

寅「
はい!←上ずった猫なで声、演技丸出し。

御前様「
ちゃんと、留守番するんだよ

はい!←もうまったくの演技

御前様「いいね。それじゃ、これで」

一同「どうもありがとうございました」

おばちゃん「ほんとにもうわざわざ恐れいります」と店先までおくる




寅、全てを察して、ブス

味噌汁のお椀をいじりいじりしまくる。


おいちゃん「
えー…っとまあ、そーいう訳なんだよ…寅

寅おわんに「
はぁー.。

と、お椀に息吹きかけてふきんで拭きながら


寅「
どこ行くのぉー?

↑嫌味たっぷり&動揺たっぷり



みんなで一斉に
「九州←合唱か(^^;)


おばちゃん間髪いれずに「
私達1回も行ったことないもんだからね


気使うねェー!おばちゃん




                   




寅「
はあ〜〜〜〜〜…
と、お椀にまた息吹きかけて


いつ帰ってくんだイ

↑また嫌味たっぷり&動揺たっぷり






さくら「
あの…3泊4日の旅行だからすぐ帰るわよ結構長い(^^;)


寅茶碗「
はあーとお椀に息吹きかけて


寅「
ジャ、あした特急で行くンダ

↑またまた嫌味たっぷり&動揺たっぷり




博「
いや、汽車じゃないんですよ

寅「
ハァァァとお椀にまた息吹きかけて

寅「
汽車に乗らないの
じゃ歩いて行くのか

九州まで


またまたまた嫌味テンコ盛り(−−;)


飛行機なんですがね一応


寅、ショックで茶碗の腹でふきんを
「カクッ」っと滑らせる。

さくら一瞬それを見て顔真っ青(><;)


さくら「
あの…あたし達一度も
  飛行機に乗ったことがないもんだから、
  こんな時にでもと思ってね…




第25作「ハイビスカスの花」でさくらは飛行機に
一度も乗ったことないって言ってたが
この九州旅行でみんな乗ってるぞ。
そういえば第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」
でもさくらと博と満男は北海道へ
飛行機で行った。
寅に至っては飛行機でウイーンにまで
行ってしまう。




踏み切りの音「カンカンカンカン…」





社長「
寅さん二人で留守番してさのんびりやろう。なあ



電車の警報音「ブオォー…」


寅「
ハ〜と座りなおす。



寅「
わかったよ…。ね、皆さん親切な方々
だってことはよーく分かったよ…。
昼間帰ってきた時どーも
様子がおかしいと思ったんだ。
なるほどねェ〜…


寅「
家族そろってあしたっからから楽しい旅行に出る、
その前の日に俺が帰ってきた。

寅ちゃん元気かいなんて
作り笑いなんて浮かべやがって

ほんとは腹ん中で『
はあーやな時にやなヤツが帰ってきた』と
そう思っていたんでしょう




博「
兄さんそりゃ誤解だ

寅、ちゃぶ台を叩いてお銚子倒す

だったらなんでだったらなんではなっから
 スッと言わないんだい!それを!


寅ちゃんせっかく帰ってきてくれたのに残忍だったねェー。
明日みんなでもって旅行に行くんだよ


なぜそう言ってくれないんだい
だったらオレだって
そうかい、せいぜいみんなで楽しんできなよ』
財布の中から
五千円札の一枚でもスッと出して
みんなに餞別だよ
と渡せたものを!
なんだい!みんなでコソコソまるで悪いことでも
するみたいに!

オレはそんなに
厄介者か!
ああ!!そうだそうだおりゃあどうせ
疫病神よ!!

ヘン!
九州だって?上等だよ全く!!
飛行機か!
結構だねエ!!

結構毛だらけ猫灰誰毛お知りの周りは
糞だらけだい!


さくら「
お兄…!


おばちゃん「そんな…」エーン、オイオイと、泣く。

タコ社長、慰める


寅、怒りながらも「5千円」と見栄を張るところが
いじらしい。



どっちみちどう転んでも、なにをやってもこうなることは
決まっている。これは「ハイビスカスの花」の水元公園
あやめ見物騒動の時も同じような展開で、さくらたちは
寅に気を使い、寅はどっちにしろ、ゴネル。
「最初から正直に言ってくれ」という寅の言葉は実際は
本心ではない。やっぱりそれはそれで最初からストレートに
言われても寂しいものだ。
つまり、普段からうすうす自分がこの家で厄介者だとわかっている
寅にとって、寅を仲間はずれにするような行動をとることは、いくら
言い訳をしても寅が怒りまくる結末は必然だ
ったのだろう。

まあ、もっとも、美しいマドンナがこの時寅の目の前に現れたら
話は別だが。




さくら
お兄ちゃん聞いてちょうだい。

あたしはねこの家を
まるで自分のうちみたいにわがままいって暮らしてきたし
おいちゃんもおばちゃんもあたしのこと自分の娘みたいに
思ってきてくれたわ。

あたしがちっちゃいとき両親無くしてもちっとも哀しい思い
なんかしないですんだのはこのおいちゃんとおばちゃんの
おかげなのよねえ、

それはおにいちゃんだって同じ気持ちでしょ。
こんどの旅行はね、そのお礼の気持ちなの


さくらちょっと涙ぐんでいる。

さくら博さんが気持ちよく賛成してくれたからできたんだけど

ほんとはね、…ほんとは…あたしと
お兄ちゃんがしなくちゃいけないこと
だったのよ。そう思わない?



             


さくらのテーマ流れる。



おいちゃん
さくら、もういいよ、寅だって同じ気持ちだ…。なあ、寅


おいちゃん、寅の目を見て、そして下を向く。

さくら、泣いている。

寅「……


寅、立ち上がって2階に上がっていく。



さくら「お兄ちゃん」

博、さくらを誘って2階に上がっていく。


社長
いいねえ…実の娘じゃあ…
  ああはいかねえな…
と、しんみりする。

↑人の世の機微を垣間見た社長の意味ある
発言だった。こういうセリフが山田監督の
持ち味なんだよね。



社長の娘の声
おとうちゃん!早くお風呂に入ってよ!
←これは「あけみ」でしょうか?

タコ社長には娘が2人いる。(第6作)



社長
あーよ!それじゃ、まあ、元気で行っといで。
あとのことはまあ、何とかオレが引き受けっから
↑これは心強い

おいちゃん
「頼むよ社長。な」

満男向こうでマンガ本読んでいる


社長の娘とうちゃん!聞こえテンの!?

社長
「はい!はい!行くよ!

博たち下りて来る


おいちゃん「どうだった?」
「なんとか…」

さくら
「留守番するって…」
おいちゃん、何度も頷いてホッとしている。




翌早朝

『従業員慰安の為、九月二十八日より十月一日まで
勝手ながら休ませて頂きます。店主 』


誰もいない静かなカーテンの閉められたとらやの店の中
雀の鳴き声


朝ごはんを用意したテーブルに置手紙。

寅さんへ、行って参ります。
留守番をくれぐれもお願いします。
今夜、宿から電話します。

叔父、叔母、博、さくら、満男


寅、起きたてで下りてきて、腹巻に手を入れながら

あ、あぁ〜あ〜ぁ。よく寝た寝た。はー!
 おばちゃん!腹空いたい!めしめしー!!
 おばちゃーん!


置手紙に気づいて、手にとって


なんでい、行っちまったのか…←寂しそう

「あ〜あ、あ〜」とあくびをしてひとり寂しく
テーブルの前に胡座をかく寅でした。


        

せっかくひさびさに帰ってきたのに
ついてないね寅。



飛行機が大分空港に着陸

全日空ジェット

別府.大分直行専用特急バス
別府まで400円.大分まで500円
空港特急(別府、大分)44−92

おいちゃん「
、これかい?←おいちゃん、博のこと呼び捨て。いつもは博さん


                          


博「
ええ
おばちゃん「ああ…」
さくら「どうしたの?」
おばちゃん「今日は保険の集金の日なんだけれど寅ちゃん渡してくれただろうかね?」
さくら「大丈夫よ。わたしがちゃんとお金預けてきたから」
おばちゃん「でも…」
おばちゃん「大丈夫よ」

ホーバーボート行きのバスに乗る。
ホーバーボートに乗りながら
おいちゃん「へーえ、たいしたもんだなー!海の上を自動車が走るんだからんあー」
どうしてホーバーボートが自動車なんだろう???

大分空港のある国東半島から
大分駅の近くまで25分でいける
ホーバーボート!が港から出ている
(料金は現在2750円 高い!)

イギリスの電気技術者クリストファ・コッカレルという人が、自分の
ボートのスピードを上げようと、最大の障害となる水の抵抗を減らすため
いろいろな工夫をして、ついに艦体自体を水面から浮かせることを考えついた。
ホーバーは高速気流を水面または地面と艇体との間に送り込んで、
その押し上げる力を利用して艇体を持ち上げている。
そして飛行機同様、プロペラの力で前に進む。
水は空気に比べて、約1,000倍の密度があるが、その抵抗を
ほとんど受けないホーバークラフトは、普通の船に比べて
大幅なスピードアップが可能。
現在就航中の水中翼船のスピードは時速60km程度といわれているが、
ホーバークラフトは水中翼船の2〜3倍の
スピードが原理的に可能らしい。


大分ホーバーフェリーは、1970年に誕生して以来、現在国内唯一の
ホーバークラフト運航会社として、大分空港から大分市内を
本船と同型の105人乗り大型艇3隻、75人乗り小型艇2隻
(いずれも三井造船製)の合計5隻で旅客輸送している。



「ええ」と言いながらカメラにフジフィルムを入れるために
プラスチックケースを口にくわえる博←うん、いるいるそういう人(^^;)





一同
高崎山に猿を見に行く
只今700匹」という掲示板

標高625mの高崎山は古くからのニホンザルの棲息地として知られる。
現在2000頭を超えるサルがA群、B群、C群のグループをつくっている。
それぞれボスがおり、サルの社会がつくられている


凄い出店と人ごみ


さくら「あら!いた。満男、見て御覧お猿さん!」
係りの人のアナウンス
「高崎山には3つのグループがありまして、今出ているのはBグループですね。
だいたい、午前中はボスザル以下700匹が…」

さくら
博さん!キャメラキャメラ!←昔は「キャメラ」って言ったんですね!
博「どれ?」
さくら「ほら、あれあれ」
博「ハハハ、よく食うなあいつ
おばちゃん「ねえ、寅ちゃんちゃんとお昼食べてるかしら
猿の行動から寅を連想するのが面白い(^^)


おいちゃん「食べなくたって死にやしねえよ!←ごもっとも!

アナウンス「ボスザルは餌をみんなが無事に食べてるか、お互いに喧嘩していないか監視しています。
みなさんの家庭もそうでしょうが平和に仲良く暮らしていくってことは、なかなかむずかしいもんですね。
どこの社会にも必ずひとりや二人のけものがいます。

おいちゃんとさくら顔を見合わせて寅のことを思う。←すぐ反応!

向こうの岩の上ごらん下さい。


                    


アナウンスあいつはいつものけものにされているから
   性格が凶暴です。ああ言う猿にはあまり
   近づかない方がいいですね。
   この間も子供さんが引っかかれて大騒ぎしました。


くるぞくるぞと思わせてしっかり来た
!!
寅の横顔があののけ者猿とかさなるように映し出される。



                






とらや縁側

「ああ〜〜あっ」とあくびをして縁側にくそ面白くない顔で座って豆を食べている寅

社長と工員塀の向こうから縁側を覗いて
いまね、近寄らない方がいいよ。僻みっぽくなってるからね
どこまでも高崎山の猿に寅を関連付ける山田監督でした(^^;)


杖立温泉に夕方遅く着く。(のちにとらやの茶の間でさくらが回想)

スクリーンに見える細長い看板「くきた旅館」「ふくみ旅館」「ひごや旅館」、
さくらたちが歩いている時に見える「かねいし旅館」等々
全て現在も杖立温泉で営業中!


杖立温泉の由来
杖立という名の由来については、この地を訪れた弘法大師空海が温泉の効能感銘し、持っていた竹の杖を
立ててみたところ、節々から枝や葉が生えてきたのがその名の由来だそうだ。
また杖をついて湯治にやってくる病人や老人も、帰るころには杖を忘れるという、温泉の霊験をたたえる
由来もあるといわれている。



山水荘

宿の部屋でさくらに肩を揉んでもらっている
おばちゃん「あーあ、飛行機に乗って、温泉に乗って、ご馳走食べて、
ほんとに言うことないよ」
さくら「上げ膳下げ膳でね」
おばちゃん「極楽だよ  さくらちゃん、ありがとう」

おいちゃん、疲れきってテーブルにうつ伏せになって寝ている

博、風呂から戻ってきて「あー、いい湯だった!おじさん、風引かないかな?」
おばちゃん「ほっときゃいいんだよ、疲れた疲れたって文句ばっかり言ってさ」
おばちゃん「ねえ,見てごらん、高崎山にこんな猿いなかったかい?」
さくら「いたいた、みんなが一生懸命餌食べてるのに1っぴきだけなんにもしないで目つぶってんの」
博「あ、ハハ!ボス猿?」
おいちゃん、むくっと起きる。←猿そっくり
一同「ハハハハ」
おばちゃん「でも、可笑しかったねー、あの仲間っぱずれの猿さ、」
さくら「うん」
おばちゃん「寅ちゃんそっくり
一同「ハハハ」
さくら「そうだ…私お兄ちゃんに
  電話しないといけないだった…。
  8時過ぎた?


博「とっくだよ」
さくら、電話器のところまで行って、「もしもし東京お願いします
←昔は長距離電話はこうなんだよな


おいちゃん、また寝てゴツッ!っとテーブルに頭ぶつける。←ミニギャグ

657−4105です。はい。お願いします。

さくら「今ごろ…どうしてるかしらね」

博「あー、社長と一緒に一杯やってんじゃないか?」
おばちゃん「そんなとこだね」
おいちゃん「あ!!いけね!」
博「どうしたんです?」
おいちゃん「オレのジョニアカ隠すの忘れちゃったよ!」
博「あ!そりゃダメだ!もう飲まれてますよ、ハハハ」

アン畜生〜!
←決め付けて勝手に怒るおいちゃん(^^;)




リーン リーン 


さくら「もしもし…はい」

ちょっと一拍置いて

さくら「もしもし!お兄ちゃん!?ア…」

寅、電話の向こうで怒鳴りながら

寅「なんだよ!おまえ!
 今晩電話するってからよ。オレは
 日が暮れるまえから
ずっと電話機の前で
 座って待ってたんだぞー


かなり酔っ払って顔が赤い

源ちゃん、座敷でジョニアカのカラビン持っている。

さくら「ごめんごめんなんか変わりない?」


寅「おおありだよ!いっぱいあるよ!
泥棒が入ったぞ!有り金残らず
持ってかれちゃったからな!
それからな!裏の工場タコんとっから
火が出てこのへん丸焼けだ
あと東京は大震災でもって全滅だよ!!

       


口先とはいえ大東京全滅まで演出した寅の姿に、
待ちわびた膨大な時間が伺える。



さくら「
いやねえ、変な冗談言わないでヨ、もしもしもしもし、
   あたしたちみんな元気でね楽しい旅行続けてるわよ。



「あーそうかい。それは上等だよ!
 こっちは糞面白くねえからねー、ヤケザケよ!

 えー、ちょっとおいちゃん呼べおいちゃん呼べよ


さくら「はいはい」

さくら「おいちゃんちょっと代わってくれって

受話器から寅の声が飛び出して「
おいちゃ〜〜〜ん〜!!!


さくら、寅が怒ってるって仕草(角をはやしている)をみんなにする。


おいちゃん「もしもしー」
寅「あ、ははーおいちゃん、まだ生きてたかおい。

ぶすっとするおいちゃん
寅、嬉しそうに「あのねー、おいちゃんのジョニアカみんな飲んじゃった!!!

おいちゃん「みんな飲んだー!??

寅「そう!」

おいちゃん「だってお前まだ3分の2残ってたぞ!」

寅「あれはタコが半分の飲みました

おいちゃん「あの野郎…おい!そこに社長いねえのかよ

寅「ははー!タコはゆだって帰りました←上手い!

さくら「おいちゃ…」(さくら電話代の事を言いかける


寅「あは!おいちゃんもういいよ
 おまえもういいよちょっとおばちゃんだせよおばちゃんだせよ


おばちゃん「あ、はい。もしもしあたしだよ


(源ちゃんが後ろで寅の方をしみじみと見ている)

寅「あ、おばちゃんかい?」

おばちゃん「うん」

寅「どうだい?楽しくやってるか?」
おばちゃん「うんおかげさまでねー、あたしゃもう天国に居るよな気持ちだよ

おばちゃん、さっき極楽って言ってたぞ(^^;)

寅「ああそうかいそりゃよかったな」

おばちゃん「うん。フフ…(嬉しそう)これもね
さくらちゃんや博さん
寅さんのお陰なんだよほんとにありがとう


(とりあえず寅の名前も入れるところがいいねー。)


寅「いや、あのう、あ、博をな…ちょっと呼んでくれよ」

さくら「え?あ、はい博さん」

さくら「博さん、博さんちょっと電話電話

博「よっし…!」

さくら「早く早く」

寅「早くでろー

博「ああもしもし僕です」

(博、パアーっと早口で言う)

寅「おお、ほお、博!」

博「はい」

寅「お前元気でやってるか?」

博「はい」

寅「うんそうか」
(さくら博に無声音で『もう長いから早く(切って)』と言う」
寅「今回はよ、どうも老い先短い老夫婦を本当に喜ばしてくれてどうも有りありがトッ!」

おばちゃん満男に『満男早くこっち来なさい』と言って
電話口に来るよう手招きしてる


↑このあと満男の出番なので
おばちゃん先回りしてるのかな?

でも中村はやと君気づかないで
下向いて遊んでいる!やばいぞ!



博「いえいえとんでもありませんあの…それじゃね兄さんあのー、長くなりますからこの辺で…」

寅「そうそう…っておい!ちょっと待ておい!」

博「えっ?」

寅「なんだ長くなるって今話したばかりじゃねえか」

寅「一応家族全部電話口に出させろお前ェ…!」←くだを巻く


ここで中村はやと君、
ようやく思い出してすぐにその場を発ち
たぶんスタッフの方で出番待ち!!


寅「お、ん!まだ残ってるだろ、おい、あ、」

博「えっ?」

満男満男、満男出せ満男←満男君出番です!

満男!?

(博エッ!?また??と言う感じで顔をしかめる)

さくら「満男」

おばちゃん「ほら満男はやくはやく!もしもしって」

博「じゃ、ちょっとだけですよちょっと待ってください」

さくら「もしもしって」

満男「おじちゃんもしもし

寅「あ、満男!元気ですか?

満男「元気ー←かわいい

寅「あーいいねえ」

さくら満男の近くで「おみやげ買ってくるからねーって←満男をコントロール


満男「お土産買って帰るからね
 じゃーバイバイ
 おならブーだ
←満男最高!!


博も「じゃぁバイバイ、おならブーだ」の部分を
満男の耳元で一緒にささやいて手伝っていました(^^;)

皆さんこれは見逃してはなりませぬ!




                 



さくらたち「あら、あっははは…!

さくら、しっかりと受話器を置く。

寅「おならブーか…生意気なこといいやがって…
ズッ、、、感無量で(鼻をすする)
満男には弱い寅伯父さんでした(^^)






黄色い葉が茅葺の家に舞い落ちて秋の風情の熊本


ヘンデルの「水上の音楽」第一組曲が流れる

朝もやの中を観光バスが下城の大銀杏(小国町)の下を通り過ぎていく
熊本県内最大の銀杏で国の天然記念物。
少し離れた国道からもよく見える大きなもの。

さくら「ほら、おばちゃん見える?阿蘇山よ。煙が見えるでしょう

おばちゃん、うわの空

さくら「ねえ、どーしたのよ?気分でも悪いの?

おばちゃん「ゆんべ、寅ちゃんが火の不始末をして家が焼けちゃった夢見たんだよ。大丈夫かね

さくら、ちょっとぶすっとして

さくら「いい加減にしてよおばちゃん、もう

おばちゃん「あ、ごめんよ…ちょっとあんた、
浅間山
だってさ、きれいだね
←言わないよそれ(^^;)

おいちゃん、むくっと起きる

さくら「阿蘇よ


おばちゃん「あ、そ…」

↑でた〜〜〜〜!おばちゃん『おやぢギャグ』



必ずいる、阿蘇山でこれ言う奴!!(^^;)

密かに後ろの席で博にうけていたことを見逃してはならない


                   

草千里の休憩所






山深い鄙びた阿蘇の温泉宿

栃木(とちのき)温泉 小山旅館


宿の下で川魚を釣って喜ぶ博。


なんと博の浴衣に「小山旅館」の文字が!↓

                  





さくらと満男喜ぶ

博「おじさん おばさん 釣れましたよ!」

さくら「こっち見てこっち見て」

おいちゃん、おばちゃん宿の2階から「パチパチ」

おいちゃん「あー、いいなあ昔は日本中こんなふうだったんだろうなあ」

おばちゃん「そうねえ、寿命が延びるようだねー」





とらや


寅、イライラしながら電話のほうを見ている。

タコ社長「おー、寅さんよ、ほら、いきなよ、」と酔っ払いながら酒を注ぐ

リ-ンリーン

あ、っと寅、すばやく電話を取る。

寅「はいはい、そうです。おやじ?留守だよ。おかみも留守。いつ帰ってくる?知らないよ!」
ガチャン!!

社長「そう、イライラするなよ。向こうは旅先なんだからさ飯食ったり、
   風呂入ったりでね、忘れることぐらいあるよ」


寅酔っ払い顔で赤い

寅「お前は他人だからそういう冷たい事が言えるんだ。
 肉親だったらそんなこと言えるか?
 どうしたんだろうなー?
 怪我でもしたんじゃねえか? 

 
まして阿蘇の温泉は谷深くだし
 
あそこの道だって崖だろう。
 そこをタクシーで…
もしおっこったらどうなるんだ?
 交通事故だぞ!
 みんな死んじまうじゃねえか。



社長「そうと決まったわけじゃないだろ?」



寅「お前は何が根拠でそんなこと…」


とカッとなって掴みかかる、

リーンリーン

寅「はいはい、そうそうです」


寅「やいさくら!何で今ごろ電話して来るんだよ!
心配で心配でいても立ってもいられなかったんだぞ
ひょっとしたらみんな自動車事故で死んでしまってよ、
葬式出す事まで考えたんだぞ!ばかやろう!
何かというとすぐ葬式出したがる寅でした(^^;)
てめえたちにはね、待つ身というものがね、
どんなに辛いものか
わからねえんだよー!

↑ぶつぶつぶつぶつすねる寅


さくらビックリして、受話器を耳から外してみんなに聞かせながら


さくら、どうしたものか戸惑っている。

寅「黙ってないでなにか返事しろよ、おい!おい!聞こえないのか!? 

おいちゃん、さくらと代わってやる。

おいちゃん「聞こえてるよォー、みんな無事だから安心しろ

寅「安心しろ?よくいう事をぬけぬけと言えるな、
  おいオレに安心させたかったらなんで早く電話しないんだよ!


ここから左右(左寅 右おいちゃん)の同時中継

こういうのってこのシリーズでは極めて珍しい技法

おいちゃん「分かった分かった 
     謝る謝る…それじゃ、寅これで切るからな



寅「おいおい!待てよ!切るってまだなんにも話してねえじゃないか


おいちゃん「みんな無事だって事が分かりゃいいだろ


寅「え!?」
おいちゃん「こっちゃ九州なんだから電話代が高くつくんだよ。
    昨夜だって
2800円も払ったんだぞー。




昨日の電話は3分30秒だった。
それで2800円は高すぎ!!1分800円!!(@@;)
当時は遠距離は高かったのか?宿からの電話は
割増料金かなり取られるのか?それにしても…
いまだと、だいたい高くても500円くらいか。


寅、怒って「わかったわかった、はい分かりました、
   そうか、おいちゃんはそういうケチな男か

   はい、わたくしはケチな叔父貴を持って
   幸せ者ですよ!



おいちゃん「なんだとこのやろう!

寅「おめえのケチは有名じゃねえか!
とらやの
ケチだんごって知らねえのかい!?




第6作「純情篇」でもこのパターンがあった↓
なんべんでも言ってやる!近所のガキどもはみんな言ってるぜ、
とらやの団子はね、ハナクソ団子だってよ!!ハハッハ!」
「くそー!!ヤロー!!テメエー!」揉み合いになる




おいちゃん「やい!寅!てめえ!言って言いことと悪いことがあるんだぞ
     えへへへ、面白いねえ、ケチおやじ怒ったね。一人前に!


さくらも博も後ろではらはら、


おいちゃん「ちきしょうー悔しいな!!この野郎!
     
てめえがそばにいたらぶん殴ってやるよ!


さくらたちうしろで「おいちゃん、そんなの言わないで」と止める


寅「いいねー、ぶってちょうだい!
 どこ?どこ?
どッから殴るんだい!?
 殴ってくれ殴ってくれよ!!←電話だからね(^^;)

おいちゃん「てめえなんか
   出て行きやがれ!!ってんだ!
←電話だって(^^;)

さくらたち「おいちゃん」


博「相手は電話なんですから←言える言える!!


寅「いいやがったな この野郎!!


おいちゃん「えー!!」


寅「てめえ!出てけ!!?
 それを言ったらおしまいだぞ!
←電話だけどね(-_-;)¶


                   


おいちゃん「あー!おしまいだよ!おめえ!←電話だよ!(^^;)

さくらたち「いいかげんにしなさい」ととめる

寅「よおし!出てってやるからな!てめえ!
 あとでもって後悔したってきかねえぞ!今畜生!
←電話…(^^;)
 ガチャン!と電話切る


寅「さくら!止めるな!
 止めるな!さくら!


と言いつつ外に出て行こうとするが、はっと誰もいないことに気づく。


寅我に帰り振り返って、ぼーっとしてしまう。


タコ社長がぼーっと茶の間に座っている。

寅、つつつ、と歩いて2階に上がってしまう。

社長「哀れで見ちゃいられねえな…」 と、首を振りながら酒を飲む



                     



寅はやっぱり寂しいのだ。遠く旅先で一人でいるのは
当たり前だし、覚悟もある、それにある意味自由な
気楽さもある。しかしわざわざ自分の故郷に帰ってきて、
こういう侘しさを味わうのは、実は人は何倍もつらい
のである。寅にとって故郷とは家族がいつもいて自分を
迎えてくれる場所なのだ。それがどんなに勝手でわがままな
幻想であろうが、うすうす厄介者扱いされると分かって
いようがだ。人というものはそういうものだと思う。
誰しも故郷なくしては生きてはいけないのだ。




熊本城下を観光バスが走っている。

バスガイドが前で喋っている。

窓から一瞬「大劇」という看板のビルが見るが、熊本在住の
寅さんマニアの熊寅さんによると当時は画期的な娯楽センター
だったらしい。今でも1階の(ゲーム)パチンコ店は健在。
当時2階以上には映画館やボーリング場、最上階には
ユニオンスクウェアというしゃれた大型パブレストランがあったそうだ。


清正公は豊臣秀吉とまた従兄弟にあたるお方で秀吉公と
同じ名古屋の方です。
皆様は加藤清正と申しますと真っ先に
退治を連想されると思います

「虎」
に反応しておばちゃん前を向く

おいちゃん「
…?←頭の中『寅』のことでいっぱい(^^;)

博「
虎退治

おいちゃん「な〜んだ」


ガイド「
朝鮮征伐の際に行軍中の清正公の前に竹薮からぬっと現れました大きな虎…





熊本城公園で


博、二人を説得している

博「どうですかねえ…せっかくここまで来たんだし、
 海をわたって
雲仙に行って温泉につかって、
 そうすればまた、気分も晴れますよ



おいちゃんとおばちゃんは予定を切り上げて今日、柴又に帰りたいと言い出したのだ。


九州最大である熊本城は、加藤清正によって、天正16年(1588)に築かれた。
城郭は周囲9km、広さはおよそ98万平方メートル(東京ドームのおよそ21倍)で、
その中に3つの天守、49の櫓、18の櫓門、29の城門を持つ、豪壮雄大な構えだった。
なかでも「
武者返し」と呼ばれる、美しい曲面に仕上げられた高石垣は有名。
一度も落城されたことがなかったという。




                   


おばちゃん「でもねー・・・」
さくら「予約だってしてあるんだから、とってもいいところよー。」
↑当日キャンセルは普通チャージがかかるんだよね。


おばちゃん「そうだろうねー。でも私達、ここまできただけで十分幸せ
    なんだよねえ、おまえさん


おいちゃん「そうなんだよ。そして家電話するだろう、そうすると、あいつはまた
    、なんだかんだって言いやがってそいつを考えるともううんざりなんだよ。


おばちゃん「よかったら、あんたたちだけ行ってこないかい?
     あたしたちこっから…


さくら「そんなわけにはいかないわよ←それじゃ、あべこべだよね。

おいちゃんあくび
さくら「困ったなー」

さくら「ねえ、どうする?」
博「うん」

遠くからツアーガイドの声「この石垣は武者返しと言われ、堅固で独特の勾配で有名でございます。


おいちゃんもおばちゃんも寅のことが気になるのは、
寅が電話でギャ-ギャ-わめく、っていうのもあるが、
やはり寅のもとへはやく帰ってやりたいっていう
優しい気持ちがあるんだよね。






その日の午後。柴又 とらや前参道


源ちゃんがジャンプしてさくらたちが帰ってきたか駅の方を見て確かめている。


                    



このとき、なんとあの
お千代さんの美容院店『アイリス』

がとらやのすぐ斜め前に見える!
こんな近くにあったのか!

                       

                       



それではなぜお千代さんは寅に会いにこない!!?
あ〜…一話完結だとなかなか割り切れない (ーー;)
 



源ちゃん「兄貴、まだ帰ってきまへんで

とら、鉢巻して


寅「、何してんだろうなおいちゃんたちは遅いなー
 よし!おまえ、あのー、風呂場の湯加減見てくれ、な


源ちゃん「へい」

寅「うん」

てきぱきと、茶碗などが置かれたテーブルを拭く。

タコ社長おう!炊けた炊けた、寅さん、飯が炊けたよ!

社長エプロン姿割烹着
(後ろで結ばずにずれかかっている)


寅「あ、そうかい、ごくろうさんじゃ
お新香だしてくれ。

社長「、」

寅「そこの流しにでてるからよ」

社長「おう!←リズムがいい!

見事な包丁さばきで漬物の千切りを
トントントントンっと
切っていく社長!すごい


太宰さん、昔レストランかなにかで修行してたのだろうか?
料理が趣味だとか?それともこのためにもう特訓したのか?


寅「長旅から帰ってくるとシャケの切り身かなんかでお茶漬けをさらさらっと
食いてえからなあー!

↑ちゃんとシャケの切り身も焼いてあった。凄い!料理上手の社長が焼いたのかな?




                    


寅「あ!お新香はな、たっぷり出しておいて
 やってくれよ!!
←いいねえ〜


社長、白菜の漬物をしぼって、切り始める。


寅「旅館の飯ってのは味気なくっていけねえや。
 長い旅してるとほんとお新香がくいてえーからなー

←これも寅の経験から来る実感


っと座布団を人数分敷く

寅「お、源公!ヤカンにな!お湯を沸かしといてくれぃ!

源ちゃん「へい」

立ち上がって

寅「さてと、部屋の中は片付いたぁー!


茶の間の上がり口に座って

寅「あーあ、久しぶりの長旅から帰ってきて家の中が
 カッ散らかってると気分が悪いからなー、なあ、社長


白菜切りながら社長「 んー!

寅「いずれそのうちにその入り口からおいちゃん、
 おばちゃん、さくらがよ、
 こんな大きな荷物を抱えて、
 あーあー、くたびれたくたびれた、

 家が一番いいよー

 なんて言って帰ってくるんだよねー




              



社長電気ガマのスイッチ上げる。
あれ?さっき炊けたんじゃないの???


寅「そのときの、この迎える言葉ってのが大切だな。
「あ、お帰り疲れたろう?
さあ、上がって上がって」ねー!

熱い番茶に、
ちょっと厚めに切った羊羹のひとつも添えて出す。

ホッと一息いれたところで、
「風呂が沸いてますよ」っと手を差し出す。

長旅の疲れを、すっと落とす。出てくる。

心のこもった昼飯が待っている。ねー!
温かいご飯!しゃけの切り身 山盛りのお新香 
「どうだい、旅は楽しかったかい…?」
たとえこれがつまらない話でも「面白いねー」って
聞いてやらなきゃいけない。

長旅をしてきた人は
優しくむかえてやらなきゃナー…





しんみり

長い寅のアリアでした。
寅はいつもみんなにこのような出迎えをして欲しいんだね。
今度は逆の立場なので、ここぞとばかりに自分のしてほしいことを
さくらたちにしてやっている。でも、寅っていつも突然帰ってくるし、さくらたちの
日常生活だって予定というものがあるから今回の騒動のように
なかなかうまくいかないのは当たり前なんだけどね。



源ちゃん「
兄貴帰って来た!みな、帰ってきたで!!

寅、すっとんで土間まで行く

源ちゃん、もう一度「兄貴、帰ってきたで」

寅「
ほ、ほんとか?

よ、よし、お前ちょっとヤカンニお湯沸かして!…
ふ、風呂、風呂焚け、風呂焚けって言ってんだよお前っ
と、せかす

↑源ちゃん、さっき全部もうやってあるって(^^;)

緊張してあわてふためく寅

指でいろいろチェックして

「よし!あるな!」っと風呂のほうへ




みんな帰ってくる。


さくら「ただいまー
おいちゃん「
帰ったよー!!

みんな店のいすに座ってお土産の紙袋たくさん置く

社長「おかえりー


さくら「どうもいろいろお世話様でした」

社長「楽しかった?

博「お陰さまで」

おばちゃん、すごく嬉しそうに腰掛けて
あー、やれやれどっこいしょっと、あー、
やっぱり家がいちばんいいねー

っとみんなで顔を見合わせ笑いあう


寅の予想通りの展開!




               




おいちゃん「おい、寅どおしたんだよ、寅
←おいちゃんずっと九州から寅のことばかり考えている。

社長「あー、いるよ」


さくら「お兄ちゃんー」っと台所の方に歩いていく

社長がおいちゃんたちに事の仔細を身振り手振りを交えて説明する



さくら台所まで来て「あら?どーしたのこれ?

っとシャケの切り身の皿とお新香の皿を持つ。





さくら急いでお風呂に行き

さくら「おばちゃん…

おばちゃん座ったまま「んー?」

さくら、風呂場に行き驚く

寅が下を向いてお湯をかき回している

さくら「お兄ちゃんただいま…

っと寅のそばまで行き背中に手を触れる

寅「
うん

台所で炊飯器の蓋を取って
ごはんができてることに気づくおばちゃん

さくら「お風呂も沸かしといてくれてたの

寅、下を向いてかき混ぜながら「早く入れよ←照れる寅

さくら、「ねえ」っとみんなを呼ぶ

おいちゃん「寅!いま帰ったよー!」と駆け寄ってくる。

おばちゃん「ただいま!たいへんだったね寅ちゃん!

博「ただいまかえりましたよ!

社長「寅さーんみんな帰ってきたぞー!!


寅の服の袖がお湯で濡れているのに
気づき袖を捲くってあげようとするさくら。

寅、照れて払いのける

さくらってこういうところに気がつくんだよな。
いつも思うが、
こういうシーンがこのシリーズを支えている。



博、さくらに「おいどうした?

源ちゃん窓を開けて寅を覗く
寅源ちゃんのほうを見ないでお湯を源ちゃんにかける。



←ギャグをやっぱり入れる山田監督でした(^^;)

さくらにもお湯が少しかかり、さくらちょっとびっくり

博、満男に向かって「おじさんただいまって」

満男「ただいまー、寅さん
おじさんと言わずに寅さんといったのは中村はやと君のアドリブか!?



寅「おかえり」っと、微妙に照れる


テレまくって無口にかき混ぜっぱなし

おばちゃん「どうしたの?」っと
小声でさくらに言った後

さくらはおばちゃんのほうを向き、
おばちゃんは事情がわかって微笑む。

おいちゃんも博も寅を見つめている。


いいねー、
このときみんなの表情!




                 



さくら少しほほえんだあと、
寅の気持ちに胸を打たれ、
寅を見つめ続ける




このシリーズ屈指の名場面

前の晩の究極の寂しさから一転して最高の至福に変わった寅
こんな寅の至福の顔も、こんな嬉しそうなさくらの顔もめったに
見られない。この場面は地味だが、寅のことをきっかけにとらやの
人々の気持ちがひとつになるなんともいえない優しい空気漂う場面だ。
男はつらいよ屈指の名場面だと断言できる。







とらやの茶の間

ハハハとみんなの笑い顔


寅、タコの飾り物ものブラブラさせながら、

寅「なに、何があったのか?え?何?」


さくら、笑いながら

さくら杖立温泉だったっけ、
   おいちゃんがねお風呂から
  びっくりしたような顔してあがってきてさ



おばちゃん「そうそうそう」


さくら『さくら、この温泉は混浴だぞ、気をつけろ』、って、でもいやなの、
あとで調べたら
女湯入ってたの!←気づけよな、おいちゃん!

みんな笑い転げている


社長
上手いことやってやがる←社長の本音(^^;)

おいちゃん
「バカー」

寅、笑いながら「え?」

おいちゃんババアの団体が入ってたんだよ」←あちょ〜〜(−−;)

おばちゃん
それで青い顔して帰ったきたんだよ←青くなるよ、そら

ほんとうですか!?

おいちゃん尻にタテジマのような…

↑このセリフ脚本に無いぞおいちゃん。アドリブか!?(^^;)

一同、大笑い



さくらとおばちゃん笑い転げている



タコ社長
「それじゃ、タコの干物タコの鉛筆、どうもありがとう。お休み」
さくら、いくらなんでもそのお土産はすごいね。



                    




あ、社長、今日はどうもありがとう
社長「あ、いやいや」
ご苦労さん

寅「そうかおいちゃん、
 色っぽいことしてきたな、
 おい!えー!」
 じゃあまた、そのあとすぐに覗きに言ったんだろ!



一同ハハハハ!←盛り上がっている

社長裏庭に出て、冷静な顔して



社長「
あーあ、これでめでたしめでたしか


社長さん何日も大変だったね〜
ご苦労様でした!!m(_ _)m


遠くで笑い声が茶の間から聞こえてくる





翌日 題経寺境内



寅と御前様がいる。

御前様「するとなんだな…お前が留守番したのも無駄じゃなかったわけだなぁ…」

寅「肉親のありがたみがよく分かりました。
それに老い先短いこれ以上迷惑かけたくないと決心しました」

御前様「それは偉い、よくそこまで決心した」

寅はそれまでにも「望郷篇」「夢枕」をはじめいろいろ改心しているが
ほどなくもとの渡世人に戻ってしまう。今回はどうなるのだろうか。



寅、ほうきを持ち「は、あ、やります」

御前様「竜造さんたちもこれでお喜びだろう」

寅「はい」

御前様「
よかった、ほんとうによかった


御前様そのつど改悛した寅を
信じてあげている。
ここがこのお方の偉いところだ。




っと、指を絡ませて合わせる。


                    




八百屋(八百満)で

おばちゃん「でもねー、いつまで続いてくれるかねー」

おかみ「大丈夫だよ、寅さんもいい年なんだもの」

おばちゃん「そうだね、そろそろ気がついてもらわないと」

たまねぎを4個計りに乗せる

でも、第8作「寅次郎恋歌」でこの八百満のおかみさん
『あんまり勉強しないと寅さんみたいになっちゃうよ』って
言ってるところさくらに聞かれちゃってるんだけど…(^^;)






とらや、裏庭


寅が鼻歌を歌いながら花に水をやっている。
題経寺の鐘 ゴーン
「あー、今日も暮れていくか…」

工員達の声「今日はどこ行くよ…」
「あ、もし!労働者階級の皆様
  今日一日本当に労働ご苦労さん!ねえ!


花の水やり続ける。

工場の壁に看板

朝日印刷 各種印刷一般(657)3168
チョークで「労働者団結せよ」






穏やかな柴又の夕暮れ景色の中
さくらのバラード」のメロディが流れる。

さくらのバラード


山田洋次 作詞   山本直純 作曲

倍賞千恵子 歌


江戸川に雨が降る
渡し舟も今日は休み
兄のいない静かな町
どこに行ってしまったの
今頃何してるの
いつもみんな待っているのよ
そこは晴れているかしら
それとも冷たい雨かしら
遠くひとり旅に出た
私のお兄ちゃん

どこかの街角でで見かけた人はいませんか
ひとり旅の私のお兄ちゃん

さくらのセリフ
『いつもそうなのよ いつも
さくら、しあわせに暮らせよって

もう帰らないって
あの時言ったけど…』

そこは晴れているかしら
それとも冷たい雨かしら
遠くひとり旅に出た
私のお兄ちゃん


どこかのお祭りで見かけた人はいませんか
ひとり旅の私のお兄ちゃん


この名曲は「葛飾立志篇」の夢のシーンで西部劇風の
替え歌として登場。
ついに↑のオリジナルバージョンは本編では登場せず。
わずかにサントラCDに入っているのみ。
この曲はもっと世に出るべき!

それにしても、この曲の倍賞さんのセリフの部分では
いつも目が潤んでしまう。

さくらたちのアパート

さくら、ミシン仕事しながら

さくら「
ご近所の評判もいいし、
  おいちゃんもおばちゃんも幸せだし、
  それはそれで結構なことなんだけどね。でもなんだか…


博、ジャンパーの袖の部分縫いながら

喧嘩もしない恋もしない兄さんなんか
兄さんらしくないって言いたいんだろ



さくら「ふふ…何してるの?」っと博の繕い物代わってやる

「でも、大丈夫だよ。そのうちきっと何か始まる

さくら「
それ、慰めてるつもり?

「う…ん」
満男、博に乗っかってくる。
満男手でテレビをつけようとする。
が、届かない。





江戸川土手

寝転んでいる文彦

顔に「
小説新潮」かぶせている。

さくらと満男土手の上を買い物帰りに散歩

よくよく聴いてみるとさくらが
「どんぐりころころ」の
歌の1番をなんと全部歌っている!!


さくら、歌う♪どんぐりころころ 
   どんぶりこ
   お池にはまって
さあ大変.
   どじょうが出てきて 
   こんにちは
   
ぼっちゃん いっしょに 遊びま…
   おー寒い寒い!



                      


と満男を後ろから抱く


↑なぜかこのシーン好きなんだよね。(^^;)ゝ



青木存義作詞・梁田貞作曲


どんぐりころころ どんぶりこ
お池にはまって さあ大変
どじょうが出て来て 今日は
ぼっちゃん一緒に 遊びましょう

どんぐりころころ よろこんで
しばらく一緒に 遊んだが
やっぱりお山が 恋しいと
泣いてはどじょうを 困らせた


文彦、さくらをじーと見ている。

さくら、気づいて「いやらしいわね…」とつぶやいて
怖くなって早歩きでとらやに戻ろうとする。
文彦慌ててアタタタ…と土手を滑り落ちる
文彦「ちょ。。ちょっと…」

さくら小走りで帝釈天の参道をとらやの方へ、
文彦がさくらを追いかけるところでなんと
あの
ロークが見える!
貴子さん今でもいるのかな
!?
              

                      


この12作は、お千代さんのアイリスと
貴子さんのロークの両方がチラッと見えて
得した気分でうれしいな(^^)


ちなみに実はこのロークはそうとうあとあとまでも営業をしていた。




とらや



さくら「ちょっと、おばちゃん」

おばちゃん「何どうしたの?」

さくら「変な男なのよー、私の後ずっとつけてくるの…」

「えっ!?」っと店先のほうを覗いて

痴漢だよきっと…


おばちゃん
寅ちゃん!さくらちゃんがね!
 痴漢に襲われちゃったんだよ!
↑出ました!!またまたおばちゃんの早とちりギャグ!襲われてないよ!

さく
そんなんじゃないわよ、襲われちゃったなんて

第15作「相合い傘」でリリーがバスを降りた後酔っ払い客が近寄って来てさくらに
触ろうとするがリリーがそいつらの横っ面思いっきりひっぱたいて事なきを得たこと
はある。あの時のリリー迫力があった…。


文彦、店先にやってきてちょこっと頭を下げる。

さくら
柱に張り付いている

寅裏からかなづちもってやってきて

「どこだどこだ」かなづち置いて

ぺっぺっっと手につばをつけながら

てめえか!このやろう!」っとずんずん前に進む

文彦「違う違う」

寅に服つかまえられながら「
僕だよ




                




僕ってどこの僕だ!
 日本中に僕はいっぱいいるんだ!
このやろう!」

文彦寅次郎君、分かんないのか、寅次郎君

寅次郎君?…あ!

コホコホむせている。
「お前デベソか…」

文彦「そうだよ。あー苦しい…」

「そうかあ、久しぶりに会ったらおまえ立派になったって言いたいけど

なんだい、
おまえ今痴漢やってるの?

文彦「おいおい変あこと言っちゃ困るよ。
  いや、さっき土手のとこで君の妹さんらしき人に会ったからね、
  声かけたら逃げ出したんだよ。それで追いかけてきた…」

あー、そうかそうか。おばちゃん、さくらオレの小学校の時の
  友達で、
デベソ…おまえ本名なんだっけ?

文彦柳、柳文彦だよ

「柳だって」

おばちゃん「えーえーえー、柳病院のおぼっちゃん。まあまあどうも」

文彦「どうもしばらくです」


この時とらやのおしながきと値段が見える。

今回は冷蔵庫も第11作同様オーソドックスに「雪印

草団子  120円
茶めし   120円
おでん  150円
焼き団子 80円
くず餅   100円
こがね餅  80円
ところ天  100円
磯乙女   80円
あんみつ 120円
みつ豆   120円

コーラ  60円
ジュース 60円

ソーダ水 50円


ちなみに第9作「柴又慕情」では下↓のようになっていた。


冷蔵庫は「ペプシ」


磯乙女50円  茶飯100円  焼き団子50円  
アイスクリーム50円   赤飯100円 
黄金餅50円  あんみつ100円





おばちゃん
「ほんとうに」
文彦、さくらの方見てあのー…さっきはどうもごめんなさい。やっぱり僕の記憶に間違いなかったんだな
「そりゃそうだよ、おまえさくらに惚れてたじゃないか」
文彦「
そうなんだよ
おばちゃん「
さくらちゃん覚えてないだろうね幼稚園だったから

さくら、少し赤くなって、下を向く。

ほらー、覚えてるだろう、金持ちの倅でいつも石鹸の匂いプンプン
プンプンさせてさー、真っ白な毛糸のセーター着て、  
そのくせびしょびしょに泣いてばっかりいたんだこいつ


文彦よく君に泣かされたもんな

何言いやがんでい

さくらほんとうにどうも失礼しました。、さ、どうぞ

おばちゃんささ、どうぞ、おぼっちゃん

ささ、おぼっちゃんどうぞ


一同ハハハ

文彦「しかしこの家全然変わってませんねえ〜
もう古くてガタガタよ。地震が来たらイチコロよ。
「オレの部屋行こうか」
文彦「お?君の部屋な
「あるよ、2階だよ。さくらお茶くれよ、あ、ビールのがいいや。何か適当にみつくろってくれや」

階段上りながら

文彦「おい君今何やってんだい」

「オレは地道な暮らしだよ」

文彦
「地道な暮らしか」

「おまえは?」

文彦「おー、オレも地道な暮らしよ」

このあたりからシナリオにないので
おそらく二人のアドリブかも。



階段の上あたりで

おー、地道に痴漢やってるのか

文彦「よくそれ言われんだよ」

「おまえ、目つきがね、痴漢みたいな目つきしてんだよ」

文彦おまえは目がないからいいじゃないか

「オレやわかりゃしねえよ、ハハ」

「おまえ痔持ちって感じするもんね」(地道とかけてるのかな?

文彦「ハハハハ!!」

2階でふたり笑い合っている。

タコ社長階段上りながらとらやの2階を見ている。
今だから笑えるけどよあの時は真っ青だったんだよな
俺たちは手と足を結んで.。。。

ハハハハ!
と笑い転げている文彦
文彦
アー!可笑し

下でおいちゃんとさくら上を見ている。

おいちゃん
さくら、今何やってんだ、柳さんとこの倅は?」
さくら「テレビドラマ書いてるんだって」
おばちゃんじゃあ、偉い人なのかい
出た〜!おばちゃんのやみくも崇め癖。

第10作で岡倉先生、第16作作で田所教授の時なんかも同じこと言っていた。


おいちゃん
「偉いわけねえかねえじゃねえか。あんなすっとんきょうな声だして」
さくら「何か…よろめきドラマとかそんなつまらないものばかり書いているんだって
自分でそう言って笑ってるの。…変な人。ほんとにお金持ちだったの?」

「よろめきドラマ」って「不倫もの」っていうような意味らしいです(^^;)


おばちゃん、頷く

おいちゃん
そーだよ!柳病院の院長先生って言えば大変なインテリでな!油絵描いたり、バイオリン弾いたりな、
       そら大変な人だったんだ。


おばちゃんほんとに欲のない人でね、
      終戦後のなにもない時にただみたいな値段で治療してくれたんだよ。

      で、とうとう病院は潰れちゃってさ…
      今お屋敷後だけが残ってるんだよ。
      確か、あ、娘さんが住んでるって、ね
、」

おいちゃんまあ、どっちみち親父が偉えってのはさ、考えものだよな

親が立派な人の場合、子供達は何かと比べられたり、
プレッシャーを感じたりしながら成長していかなくてはならない。
まあ、たいていの場合劣等感が強い人になりがち。


寅と文彦笑いながら下りてくる
「ハハハ!チンポコが真っ赤になるくらい風呂で洗いっこしちゃいけねえよな」←どういう話題だ(^^;)
文彦「どうもごちそう様でした
「おばちゃん、オレ、こいつんち、ちょっと遊びに行ってくらぁ、うん。
文彦「あ、おれんちじゃない、妹んちだって言ったじゃない」

おまえほんとに妹いたのか

文彦いたじゃないキリギリスみたいなのが

おまえに似てるの、え?

文彦、「どうも」って御礼をして店先へ
文彦似てないよ
あ、そうじゃあ見られるな
文彦「ハハハ」

寅「
亭主持ちか
文彦「
オールドミス←懐かしい言葉(^^;)
寅「
兄弟そろって売れ残りだな
文彦「またまた〜ハハ」





柴又の西


中川土手
を一升瓶担いで歩く二人。


                      



笑いながら寅「よーおくそんなこと覚えてたなあ〜ほんとに覚えてるの・」
遠くの工場のサイレン


りつ子の家  葛飾区新宿(にいじゅく)(もともとは病院兼お屋敷だった)

表札は消えて読めない
もんのところに小さく『柳りつ子』
看板がぶら下がっている
デッサン、油絵教えます
ポストに夕刊

寅りつ子のアトリエで不思議そうに油絵のチューブを握っている

大型チューブの白(
WINSOR.NEWTON社か?)をつい捻り出してしまう。

テーブルの上には
ポピーオイルリンシードオイル、筆洗油、小さな平筆
文彦しょうがねえな女所帯は、徳利もねえんだよ」
いいよいいよ
文彦さあ、いこういこうっと酒をコップについで
文彦再会を祝して乾杯しよう
「おう!乾杯」
ふたりともぐぐっと飲んで
あ〜!!
あ〜〜!
っとソファにもたれかかる。


しかし、あれだなあおまえの妹どういうタイプだったかな。
  え?
思い出せないなー

文彦んー、あいつは病気ばかりして寝てばかりだったからなあ〜
   だから今でもキリギリスみたいに痩せちゃうんだ」

あ、そう…
その分、肉がおまえのほうに移ってるからおまえぶくぶく太っていいじゃねえか
文彦何言ってやがんだい、ハハハ!


文彦あ、そういやいたねー…音楽の先生にキリギリスっての

寅、ポンと膝たたいていたいた女の先生!

文彦綺麗な先生だったな〜

廊下なんかですれ違うとプ―ンといい匂いがしてな

文彦「そうそう」

文彦
今の娘と違って厚化粧しないけど、目は大きいし、まつげは長いしな…
   綺麗な指でピアノ引いている姿なんてな、どことなく、
   こう…寂しそうでオレなんかうっとりしたもんだよな


いたいた!キリギリス…

文彦おい、おまえ覚えてるか?おまえ音楽の時間にものすごく怒られただろう

え、どんなことだっけ

文彦ほら…♪柱のキズはキリギリ〜ス…

寅も思い出して一緒に

♪ 五月五日のキリギリス〜ち〜ま〜き〜食べ食べ
キリギリス〜測ってくれたキリギリス〜





                    




文彦はあ〜、あの綺麗な先生が怒ったっけなー


背くらべ
中山晋平 詩/海野厚



柱のきずは おととしの
五月五日の 背くらべ
粽(ちまき)たべたべ 兄さんが
測って(はかって)くれた 背のたけ
きのうくらべりゃ 何のこと
やっと羽織(はおり)の 紐(ひも)のたけ


柱に凭れりゃ(もたれりゃ) すぐ見える
遠いお山も 背くらべ
雲の上まで 顔だして
てんでに背伸(せのび)していても
雪の帽子を ぬいでさえ
一は(いちは)やっぱり 富士の山


いやあ、まいっちゃったよ…あん時なァ…立たされちゃってよ!
 帰っていいとは言ってくれないし、
 そのうち日が暮れてだんだん心細くなってくる
しさ
 もう面倒くさいから帰っちゃおうかなってそう思った時な、入り口からス…っと

 キリギリスが入ってきたんだよ。で、何て言ったと思う?



文彦
もう帰っていいって言ったのか


寅「
いや、オレには何も言わずにピアノの前にスッと座ってな。
 静かあ〜〜にピアノを弾きながら歌いだしたんだよ、いい声で


文彦「何を歌ったんだよ

♪柱のキズはキリギリ〜ス 
 五月五日のキリギリス〜ってなあ…



寅「オレ、なんだか先生の顔見て
 「ヘヘへ…」って笑ったんだけどね
 先生は悲しそうな顔して歌ってんだな・・・。
 そしたらオレも哀しくなっちゃってよ。

 もうそんなことしないから
 歌止めてくれって言おうと思ったんだけれど…
 何かこう…声が出なくなっちゃってねえ…、
 で、しまいには、おいおいおいおい大声を出して
 泣いちゃったってよー。




寅のような、やんちゃ坊主にとってこういうタイプの先生は戸惑うことが多いんだろう。
さんざん夕暮れ時まで待たしたあげく、はっきり怒ったりしないで悲しい顔でピアノを
弾くって、教育的効果を狙っているとは思えないが、その意外性のある行動は結果的には
とても強いインパクトを持っている。ひとりで待たされた小さな子供はその非日常的な現実に
耐えられないだろう。寅が泣いてしまうのは私に言わせれば、意外でもなくある意味当然だ。
しかし、それほどにもこの音楽の先生は寅の悪戯に傷ついたっていうことなのかもしれない。
教育的な狙いや配慮を超えたところに起こるドラマはしばしば小さな子供の心に強い
思い出となって残ることがある。いい意味でも悪い意味でも。
おそらくこの先生はとてもか細い繊細な神経の持ち主だったんだろう。幸い寅にとっては
ほろ苦くもいい方の思い出となっているようである。それは、最後は、その先生から滲み出る
人柄が寅の心を柔らかくしたのかもしれない。なにはともあれよかった…。



文彦へ〜、そんなことあったのか。。。


どうして、あんないい先生にあんなことやったかねー

寅筆持ってパレットでぐにゅぐにゅいじる。←不吉な予感(^^;)

文彦
それや、やっぱり、惚れてたからだよ


冗談言っちゃいけないよ。惚れてるなんて!」ッと照れながら

ピョンピョン筆をキャンバスに付ける←わわわ…

あ!いけない!くっついちゃったよ!(@@;)/ひえ〜〜〜!!

文彦
あー…まずいなあ〜

消しゴムないか消しゴム←油性の絵の具だよ寅(^^;)

文彦
消しゴムったって

寅、
で「よし、一応ちょっとこれで、

文彦あー、まあ、待て待て

文彦、指に唾つけて
絵の具をのばそうとする。
当然ますます広がる。
↑だから油性だから唾つけても意味ないって(^^;)

文彦
あー、まずいな…

持ってきなよ」←油性だから全くダメだって(^^;)

文彦
水じゃ…



ちなみにこの絵は見たところとりあえず表面が乾いているのでラッキーだった。
もし乾いていない状態だったとしたら、もう完全にアウト。作者が描き直すしかない。
しかし、乾いてさえいればあとは『ペトロールオイル』や『テレピンオイル』などの
揮発油を布などに湿らせて拭き取っていく。
この際気をつけなくてはならないのはペトロールによって薄まった絵の具を
広がらせないで取って行くことである。
この絵はバックが白なので特に赤色は目立つ。ひょっとしたらそうとう多くの
ペトロールで薄めて丁寧に拭き取っても僅かに赤の色が残ってしまう可能性がある。
その場合は完全にペトロ―ルが揮発してから、作者本人が加筆するしかないであろう。
まあ、もっともこの絵は静物画でかつ、モチーフがこの部屋のものなので加筆は可能だ。
これが風景画や人物画、だったらちょっと厄介なことになった。
また、作者が亡くなっていたりすると、かなり厄介なことになっただろう。



「いじんないでさ」と
せかした弾みに手についていた絵の具がまたまたキャンバスについてしまう。


文彦あー!!押すから
  こんなになっちゃうじゃないか
←泥沼(^^;)


「だって、おまえが手…」文彦の手についた絵の具寅の袖に付く



                      




文彦「だめだよこれ…


りつ子の声

何してんの!?




                       




何か拭くもの…

りつ子愕然として

どうしたの?これ…



これはタダではすまないぞ。
どうするんだ、寅





りつ子走りよってくる


文彦「ごめんな…ちょっと冗談からこんなことになっちゃったんだ

りつ子「兄さん冗談でこんなことするの?

文彦「あ、すまんすまん
りつこキャンバスにそっと手を当てて声を震わせ

ひどいわ…←分かる分かる(^^;)



りつ子のテーマ


文彦「あっ、これ俺の友達のだよ。
ほら、あのー帝釈天の所のほらとらやのさ。な?
」」


寅「あのーそれ俺がやっちゃったんだけどね
 さっき筆持ってる時になんとんく当たっちゃって
 よくあるだろうそういうこと…


りつ子、呆然と絵を見て
誰だか知らないけど黙って他人の家に
上がりこんでこんなひどい事を…帰ってください!


寅「何ィ!


文彦「いいって帰ろう帰ろ

寅「待て待てよ…え?こいつがねおれに来てくれ来てくれって
 無理やりオレのこと引っ張ってきたんだよそうだろう?
 だったらオレ客じゃねえか
 客に帰れってのはないじゃないかよ
」」
 

りつ子「お客がどうしてこんなことしたのよ


寅「いや、だからさはずみだって
 言ってるじゃないか今さ!




                    



りつ子「はずみ!?あのねえ!

文彦「おいちょっとやめなさいりつ子…」

りつ子「兄さんここはねわたしの大事な仕事場なのよ。
  そこにずかずか入り込んできて
  大事なカンバスにこんないたずらまでされて

  あたしはね兄さん、
  魂が汚されたみたいな気持ち
になってんのよ。

  そんなことそこにいるさんなんかに
  分かりやしないんでしょ
↑分かる分かる(^^;)


寅「…?

文彦「いやこれじゃないだよ

りつ子「そんなことどっちだっていいわよ←どっちでもよくはない(^^;)

文彦「おい、いいから」

寅「おいデベソ、
 
おまえ女にこんな言葉使わせといていいのかいおい!
 女ってのはもうちょっと大人しくしたらどうなんだい
 その方が女らしくてかわいいぞ!」

 わーっ、超男尊女卑(^^;)

りつ子そんなこと誰が決めたの!←お!強気

決まってんだよ!

りつ子
誰が決めたのよ!

昔っから決まってんだよ!!(▼▼メ)


            


文彦、寅に飛ばされる
りつ子そお!熊さんが決めたの!
寅「熊じゃないって言ったろう!!


りつ子「じゃあ、カバ!!

四角けりゃなんでもいいのか??


寅「カバァ!?

文彦「おいやめろ」
寅「なんでいこのキリギリス野郎


りつ子「あら?それ悪口のつもり?
   あのねえ私むかしっからキリギリスで通ってんのよ
   それ知らないんでしょ
カバさん



文彦「おいやめなさい」

寅「てめえ!この野郎!」

文彦食い止める

寅「てめえ男だったらな三つ四つぶったくってやんだよ

文彦「悪かった謝るよ


寅「女だから勘弁してやりゃあ…

りつ子「兄さんどうして謝るのよ!

文彦、一転寅の方指差して
文彦「そうだよお前悪いんだよ←上手い!(^^;)


寅「てめえがだらしねえんだよ!この野郎!
文彦、また飛ばされる
このあたり前武さんいい味出していて上手いねえ!

寅、雪駄履いて

何でぇ畜生!おらァ帰るぞ!止めるな!
←さくらじゃないんだから(^^;)


りつ子「止めやしないわよ←だから言わんこっちゃない。(~_~;)
寅「憎たらしい女だなあ… 
ワアアアアァーーー!嫌だ!畜生!

噴火(@@;)




♪「背比べ」の曲ハーモニカとギターで流れる



寅、門を出て


「なんだよ女だからって手加減したらいい気になりやがって」

小学生が前を通る
寅、夕暮れの土手を歩きながら「畜生!」
パカーン!(空き缶をける)
寅「馬鹿野郎!畜生!アッ痛いッああ!
 かあー痛いぇ!かはあ!おっつ!あ痛い!



いくら寅でもさすがにキャンバスに絵の具つけたらダメだよね。
しかし、この場合本当は文彦が一番よくない。寅は招かれる
ままに後ろからついてっただけ。
私なら絵の具や油が置いてある部屋には人を入れない。
アトリエで酒を飲むのも危ないこと。酔いが回ると何がおこるか
わからない。お屋敷なんだから他の部屋を使うべきだったね。






りつ子のアトリエ


文彦「いやあお前も大変な女だなァびっくりしたよ」

りつ子ペインティグナイフで汚れた部分を取っている。

りつ子「だって仕方がないじゃないこんなひどい事するんだもん…」←文彦が悪いんだって

文彦「いや、今日は悪かったじゃ、おれもう帰るわ」

文彦「あ、それからね俺こないだちょっと入ったんだ置いていくわ」とイーゼルに1万円〜2万円置く。

↑絵が思うように売れないときこういう援助は涙が出るくらい
ほんとありがたい。分かるなあ〜〜。
(TT)


文彦役の前田武彦さん、ちょっと気弱な、でもとても温かい
お兄さん役を見事に演じていた。彼の演技はとても自然体で
この映画全体のイメージを柔らかくしていた。さすがだね。



文彦「それからさ…
  あいつの事許してやってくれよ、
  本当はいい奴なんだよ



りつ子「ご飯食べていかないの?」

文彦「うんまた今度にするあ、そうそう、
   それからねあいつ熊じゃないよ。
寅次郎。いいね

りつ子「うん←お、素直(^^;)


文彦「じゃあ(咳をする)」








夜  とらや茶の間




おばちゃん「寅ちゃんご飯だよ!みんな待ってんだから早くおいでよ」

満男「寅ちゃんご飯だよー←かわいい )^o^(

おばちゃん「ねえ(おばちゃん満男に)
おいちゃん「どうしたのかな寅の奴」
さくら「帰って来てからずっと不機嫌なのよねー。
なんかあったのかしら」
寅来る
おばちゃん「さ、食べましょ。寅ちゃん、あんたの好きなお芋の煮っ転がし
↑なんとなく満男と同じ扱いのニュアンス(^^;)
おばちゃんにとっては満男も寅も一緒。


おばちゃん「…さ」

一同「いただきます」

寅「…」

満男「いただきまーす

おばちゃん「はいお利口ね」

おいちゃん「あーそうだな」


おいちゃん、新聞読みながら
おい満男。上野の動物園でな
カバの赤ちゃんが生まれたんだってさ

←出た〜〜!!


満男「ふうーん」

おばちゃん「じゃ満男今度つれてってもらわなくちゃね」

さくら「満男カバちゃん好きだもんね

おいちゃん「カバの赤ちゃんもやっぱり四角い顔してんのかな
←また出た(^^;)


さくら「そりゃそうよ」
おばちゃん「ほら満男蒲焼カバ食べないのかい←しつこい!!(-_-;)
おいちゃん「うん?カバカバってお前今日はカバづくしだな
←駄目押しですねこりゃ(* ̄▽ ̄)


おばちゃん「え?いやハハハハハハ!」

寅「うるせえな!食事時ぐらい静かにできないのかい!
 朝から晩までペチャクチャペチャクチャ
 よくもそんなに喋ることがあるよまったく





                   




さくら「お兄ちゃん」

寅「なんだい」

さくら「柳さんの家でなんかあったの?

寅「あるわけねえじゃねえか何でそんな事聞くんだよ

さくら「だって帰ってきてからずっと不機嫌なんだもん

寅「不機嫌?俺のどこが不機嫌なんだよ

おいちゃん「決して上機嫌じゃねえよ←言えてる。

おいちゃん「当たりめえだよおいちゃんみたいに極楽トンボじゃねえんだ。
      朝から晩までヘラヘラしてられるかい 馬鹿みたいに


おいちゃん、味噌汁飲んで「あー美味し、美味し

おいちゃん平常心&嫌味(^^;)
さすが慣れっこだね〜!
おいちゃんのほうが一枚上手。
いいねー、この演出。

寅、おいちゃん見てムカァ〜〜

さくら「そうねお兄ちゃん悩みが多いから
  いつも深刻な顔してるもんね

↑さくらも結構言いますねー!


寅「何だいさくらお前どうして
 そう嫌味な物の言い方するんだえ?
 俺に
恨みつらみでもあるのか



さくら「そんなものある分けないじゃない。 ね、(満男に)


おばちゃん「ちょっといい加減にしてよせっかくみんなで
    楽しくご飯食べようと思ってんのにさ


寅「ああそうだよ。おいちゃん悪いんだよ←どこが?



おいちゃん、口もぐもぐしながら

おら悪くないちっとも悪くない
↑おいちゃん濡れ衣(^^;)でもやっぱり平常心&慣れっこ
いいねー、この演出も!

おばちゃん「満男いい子だよね←超あてつけ(^^;)

題経寺の鐘ゴォーン…←これでもか!

寅「チェッ鐘までうるせえ!おら寝るぞ←末期症状…(-_-;)


土間へ出る

タコ「お?今晩はもうお開きか?

寅「死ねタコ クソして寝ろい!

鐘「ゴォーン…



2階に上がりガタン!サッ!(障子を蹴散らして帽子を飛ばし)


寅「あーあ」
座った机が倒れゴテ!ガコン!

寅「あっ痛ッアイチチチチ…あー痛ェ

まあ、とりあえず寝てください ε=( ̄。 ̄;A 






りつ子のアトリエ



ガラス戸の外から夜遅くまで一心に絵を描いてるりつ子が見える。




りつ子のテーマ



翌日昼 とらや


満男「おばちゃんただいま」

おばちゃん「おかえりー」

さくら「ごめん遅くなっちゃって博さん待った?」

博「いやそうでもない」

さくら「はいお弁当

おばちゃん「もうお昼ぐらいあたしが作ってやんのにさー変な気使う子だねー

さくら「だってきりがないものそんな甘えちゃ

↑こういうとこ、さくらってケジメをきちんとつけるんだよね。


毎日のことだからね、たまには弁当にしないとね。
いつかの夕飯の時もさくら同じこと言っていた。
親子じゃないしね…。
やっぱり気心が知れてるとはいえケジメだよね。



電話が鳴る「リーンリーン


博「はい」(博旅行の写真をさくらに渡す


さくら「写真できた←さくら嬉しそう )^o^(

私の小さいころは写真ができるまで長いときは4日ほど待たされたものだ。
それゆえ見るときの喜びもひとしおだった。
さくら、満男に見せながら「満男見てご覧、ほら。お父さん写ってるよ」と、喜んでいる。




おばちゃん「はいはいとらやでございますがは?
   ああはあまあこりゃ、
   あのいつぞやは寅がお邪魔をいたしたそうで。
   はい。え?今から?あ、はい、
   どうぞどうぞはいあ、あの…今どちらから?
   あ、さようでございますかそいじゃああの参道まっすぐ
   おおいでいただけばすぐ分かりますですがはい。
   お待ち申しております。…はい


いつぞやって昨日だよ!おばちゃん ヾ(^^;)


おばちゃん「ちょっとさくらちゃん大変だよ

おばちゃん「寅さん!
暖簾くぐってもう一度階段の上へ「寅ちゃん!

なぜ寅さん寅ちゃん???

寅、上から「おーう

おばちゃん「柳さんの妹さんが見えるってよ」

さくら「本当?

博「絵を描いてるって人かい?」←博、さくらの持ってきた牛乳開けている。

さくら「うん

博「ふーん」

寅、階段から急いで下りてきて

寅「なにしにくんだ何しに?

おばちゃん「知らないよそんな事

寅「え?誰か!ちょっと電話して断れよ、
今ここきてもらっちゃ迷惑だってな!


おばちゃん「そんな事言ったって今 おておてお寺から…
←おばちゃん大慌て(^^;)

寅「お寺から来た時どうして断らなかったんだよ!

おばちゃん「だってェ…

寅「じゃ今こっちへ移動してきてる状態か?←人間じゃないみたい(^^;)

おばちゃん「うんそうだよ

寅「どういうつもりだ…ちょっとどけよ

と、さくらをどけて前へでる。

さくら「なに怒ってんだろうお兄ちゃんどうしたの一体?


寅「しょうがねえや!
 おばちゃんあの女が来ても茶なんか出すなよ



おばちゃん「うん←おいおい、おばちゃん返事しちゃってるぞ ヾ(^^;)
寅「さくらお前もヘラヘラヘラヘラ笑い声出すな知らん振りしろ知らん振り!」
さくら「どうしたのよ?」
寅「どうしたもこうしたもねえよ。
 昔っからな女だてらに
 こんな、絵なんか描くやつに
 ろくな女なんかいねえんだい


 ←あんまりだよ…(TT)
 寅、絵を描く真似する



さくら「そんなむちゃくちゃな

寅「そういう事に相場は決まってるんだよ
←決まってない決まってない(^^;)


博「まあまあ兄さん落ち着いてください落ち着いて・・

寅「うるせえなお前黙れっつうの!←聞く耳なし(^^;)


「オラァああの女が来たってな
オレはこの敷居から一歩だって
入れやしねえぞ!

おらあこう言ってやるよ!
何がいやだからったってな

インテリ女便所のナメクジくらい
嫌な物はねえんだい!

吐き気がすらあ!
ここはてめえ見てえな
女の来る所じゃねえんだい!

とっとと出てけ!!

さくら!
もってこいって言ったら
すっと
もってこい!
味噌なんか持ってくるな!
俺はその塩カッと掴んで
野郎の顔めがけてパッ!…ぁ!」



        


便所のナメクジはさすがに
どなたもたぶん嫌い(~_~;)
それにしても48作中マドンナに会うのを
これだけ嫌ったのはこの12作以外にない。

博たち、りつ子に気づく

りつ子
あーら!熊さん

↑りつ子のこの明るい笑顔で
寅の怒りは1億光年彼方まで
一気に吹き飛ぶ(^。^;)


5秒前までのあの激怒は何なんだあ!?
りつ子さんもまた名前間違えてるぞ!!


いえ、寅です..
←もう一瞬の間に機嫌がよくなっている寅でした。

りつ子「えっ!あーごめんまた間違えちゃった
 
寅さん昨日は本当にごめんなさい






りつ子のテーマ流れる

寅「いえ

りつ子「あたしねえちょっと嫌なことがあった後なもんで
  ついあんなひどい事を…ほんとうにごめんなさい




さくら、何事かと「何の事?」おばちゃんに尋ねる
博、絵を描く真似をする

博は何も事情を知らないのにさすがに瞬時に何か事情を
察したようだ。鋭すぎる洞察力。ほんとかね(^^;)



                   



寅「いえ…ささささどうぞどうぞ入って下さい。おばちゃん!

↑一歩も入れないとか、塩撒くとか、
どの口で言ってたんでしょう ┐(-。ー;)




おばちゃん「あ?

寅「ほらデベソんとこの妹さんだよ

おばちゃん「あ、まあようこそいらっしゃいました

りつ子「柳りつ子ともしますどうぞよろしく」

おばちゃん「こちらこそ」


寅「おいパカーッと口開いて
 あほみたいにバカ!


↑普通そうなるってあれだけ怒って騒いで、
あげくにこれだもんなあ…(~_~;)



さくら「あの妹のさくらです←さくら口に手を当て、一応気にしながら

りつ子「あら」

寅「後ろにいるのは亭主の博です」

博「どうも…」

寅「みんな田舎者ばかりそろってて…さ、上がってください」

りつ子「あの…これ庭に咲いてた花なんだけど
   どうぞ
熊さん



寅「あ…寅と申します


りつ子「…ッ」とうつむく。



りつ子さんいいかげんに名前覚えなよ。数あるマドンナの中で
ここまで寅の名前を覚えなかった人はあなただけ。
「車寅次郎…いい名前だね」と言ったリリーと好対照。
でも美人だからいいか。許しま〜す。(〃⌒∇⌒)ゞ


とらや 茶の間


ハハハ!

りつ子「あの時はびっくりしたでしょう」
寅「
え?何が?←しらばっくれる寅
りつ子「だから私が凄い勢いで怒った時」
さくら「そんなに怒ったんですか?」
りつ子「そうなの、それが
ひどいこと言っちゃったの。恥ずかしくて言えないくらいね」

りつ子「ね、
寅さん、じゃない、熊さんだ。じゃない!寅さんだ!
一同ハハハハ
寅「そうだったかなあ…オレどうも物覚えが悪いからねー、覚えてね―なー←嘘つけ(−−;)


                     



りつ子「うそ、覚えてないわけないわよー」

寅「まあ、
そんなこと気にしない気にしない

↑ついさっきまでず〜と気にしてた。(^^;)

寅「おばちゃん、できたらこっちへ早く持ってきなよ
テーブルにはにぎり寿司が置いてある。
おばちゃん「もうほんとにこんな有り合わせのものしかなくて」
りつ子「お詫びに伺ったのにすっかりご馳走になっちゃって…」
おいちゃん「こんなものお口に合わないでしょう」

りつ子「とんでもない、私本当のこと言うとねお料理全然できないの.
   …このお芋ほんとに美味しいわ


さくら「おばちゃんのご自慢」

寅もなんにも作れない。
唯一歌子ちゃんにインスタントコーヒー作って出してたけど、
飲めた代物じゃなかった。博は「せんぶり」飲んでる顔してた。

それに比べてタコ社長の上手なこと(^^)
おばちゃんのご自慢はこの他にヌカ漬けもあることが
9作「柴又慕情」で分かっている。


おばちゃん「他に取り得がないんですよ」
りつ子「これってどうやって煮るんですか?」

おばちゃん「
あ、それはね、お芋をね、前の晩皮付きのままね…

寅おもちゃのプラスチック刀振り回しながら

寅「おばちゃんすぐその気になるんだから、
りつ子さんはねお世辞で褒めてんだよ、すぐその気になるんだから」

おいちゃん「そうそう、いつも
贅沢なもの食べていらっしゃるんだよ」

りつ子「
とんでもない、私独り暮らしでしょ、
だから仕事に熱中するとついご飯食べるの忘れちゃって…
それで夜中にお腹空いて
パンにお砂糖ザット振り掛けてインスタントコーヒーで
パッと流し込んじゃうなんてしょっちゅうよ


おいちゃん「あー、そりゃいけません」

寅「そんなことしているから痩せちゃうんだよ
キリギリスみたいに
おいちゃん
ウハハハ

おばちゃん、おいちゃんを止める。←おいちゃん素直(^^;)

さくら「でも、時々お兄さんのお家に遊びにいらしたりして」

おばちゃん「その時家庭料理を」

寅「あー、だめだめ、あいつ
チョンガーだもんね」

りつ子「ほんとにしょうがない兄貴ねー」

寅「
あんたも苦労するねー、
ああいう兄貴を持つと。ずっと独りなの?



そういうこと言ってるとあとで
自分の首しめるぞ寅(^^;)



りつ子「
一度結婚したんだけどね、すぐ別れちゃったの

寅「
ね!飽きっぽいんだよ

寅「
しょうがない奴だなー
←それはあんただ(^^;)

おいちゃん「
ッァ〜〜〜よく言うよ…と指差す

寅「
え〜←しらを切る寅

おいちゃん手でダメだし

このへんの静かな攻防が面白い!


さくら「
あ、あのテレビドラマを書いてらっしゃるんですって?←なんとか話題をそらすさくら

りつ子「ええ。父は医者にしたかったんですけどね反抗して文学部を出て」

寅「あいつ文学部だったのか」

りつ子「うん。小説を書きたかったんでしょうけど・・・
    なんて言うのかなあ甘やかされて育っちゃったから
    結局は何をやってもダメなのね」

寅「
そうだろうね

りつ子「
もう年もあんまり若くないのに
  そらあたしだって兄が
  ちゃんとした家庭を持ってくれたら
  どんなにか心強いだろうなーと
  思うこともあるんだけど・・・でももうダメでしょうね


寅、自分が自分の首を絞めていたことにこのへんで気づき、
おもちゃの刀を振り回し、下へ埋もれる
(^^;)


おばちゃん「ご心配ですねえ」

さくら寅を気にする

さくら「
あ、 でもどっか優しそうな感じの方でしたわ

さくらたいへんだねえ(T T;)


りつ子「
そうかしらそう言えばそんなところもあるかしらね

と、寅に振る

、さくらに
そうあいつ優しいんだようんあいつ優しいとこあるよな?

もう完全に自己同一化。


さくらうなずく。

りつ子「時々だけどね

寅「うん」

りつ子「まとまったお金が入ったりすると
  あたしの所へふら〜っとやってきて、
 『おい、小遣いやろうか?

 なんてね一万円札を二、三枚
 置いていったりするんですよ



おいちゃん「ほー!一万円をー!
←これ見よがしの声(^^;)


おばちゃん「へっえ〜ぇ
←おばちゃんもこれ見よがし(><;)



おいちゃん「二、三枚も・・・!←さらに強調(--;)

おばちゃん「ね!←トドメ(^^;)/


寅切腹マネ。「あッ〜!ブツッばらばらばら・・・

ぶしゅっ!(首まで刀)
←寅やられました(>◇< ;)



                          



りつ子「・・・?

さくら、寅のそのしぐさ見て

そう言えばお兄ちゃんも時々お小遣いくれるわね

さくら、それって自滅への加速だよ!
金額が
ケタ2つ違うんだから。
とはいうものの「続.男はつらいよ」では一度5千円札を
寅はさくらにあげたこともあった。
ただし、そのお金は「望郷篇」の時、さくらが
寅に北海道への旅費だと言って返している。

りつ子「あ、そう〜
さくら「ええ

寅、首切りの体制から生き返って起き上がる。

寅「ああ、そんなこともあるたまにな、
よく覚えてるねえ?よく覚えてる


ああ〜金額が…( ̄. ̄;)


おいちゃん「寅の場合は5百円札
   一、二枚だもんな


寅「悪かったな悪かったねオレだって好きで
 五百円札
と付き合ってんじゃないんだよ
そんときなかったからしょうがないじゃないか
←あったためしなし(^^;)


おいちゃん「なに言ってやがんだい←マジでいきりたって


寅「なんだい」

おいちゃん「いい年してお前5百円札の
    一枚や二枚ガキの小遣い・・・!



寅「旅してる人間がしょっちゅう金があるわけねえじゃねえか

さくら、おばちゃん、寅たちをなだめる。

りつ子「いいなあ…だけど

さくらわらいながら「どうして?

りつ子「だってとっても優しいお兄さんじゃない?」と寅を見る。


寅「いやア 優しいお兄さんだなんて…
 
貧しい兄ですよ。
 さ、どうぞ食べてください食べて


一同にも寅「ほら食べろたべろ食べろ 食べろよ」

おばちゃん「さアさ どうぞ」
寅おもちゃの刀で寿司を取ろうとする
おばちゃん「何やってんのよ」
寅「え?あハー」とポイっと後ろへ。

おいちゃん満男が見せる絵を見て「おーかけたかなー?うん」


りつ子「あのね寅さん


寅「うん?


りつ子あのねと耳に口を近づける




                     



寅びびってさけてしまうか かわや? 」

りつ子「え?

寅「トイレでしょ?



りつ子「違うわよ


とさらに口を近づけるがまた寅が顔をくねらせてよける
この時の渥美さんの表情はコミカルで可愛い!

寅「おか お金ですか?


りつ子「やだなアお芋の煮付けが美味しいから
   おかわりしてもいい?って聞いてるんじゃない



寅「は!なんだお芋か!

りつ子「うーん…」

おばちゃんもおいちゃんも大笑い

寅「正面からばあーっときたから
 なんだと思っちゃって



りつ子「嫌だわ

寅「お芋持ってきます」と土間へ

りつ子「恥ずかしい」

おばちゃん「さあどうぞどうぞ遠慮なく召し上がってください」

寅「おいさくら、煮物おかわりだ」

寅「どうだいいい人だろ

さくら「うん」

寅「当たり前だよお前絵描く人に
悪い人なんかいやしねえよ
←よく言うよほんとに。


『昔っからな女だてらにこんな絵なんか描くやつに
ろくな女なんかいねえんだい』
って言ってたのはどこのどなた様だ?(−−;)


さくら「そうね」

寅「早くしろ早く」

後ろで大笑い

寅「へへへなんだい?またオレの悪口言ってんだろおい

おいちゃん「寅は色男だってさ

寅「またまたまたー!」

おばちゃん「いないと寂しいんですよ←いいねー、おばちゃん。



台所の黒板
衛生協会 20日 午後四時
田中(368)6259
お寺 明日9時まで 赤飯30箱






江戸川土手


夕焼けをバックにりつ子を見送る寅とさくら手を振ってる



おっと!さっきまでとらやでスカートをはいていたさくらがなぜかこの時はズボンにはきかえている。

わずか数時間で!なぜだ!?
洗い物の時に何かをこぼしてしまったのか、
はたまた満男がオイタをして汚れてしまったのか…。
晩秋の夕方は冷えるからズボンにはきかえたのか。

たぶんちょっとこの日の夕方は風が強く肌寒いからさくらはとらやにいつも置いているズボンに
はきかえてから外に出たんだろうね。

さすが!演出が細かい!…と、いうことにしましょ(^^;)




       
   スカート                     ズボン
             



なお、この、さくらのスカートからズボンへの早変わりを発見したのは、私ではなく
『男はつらいよ』をこよなく愛するスーパー寅マニアである私の尊敬する『寅福』さんという方である。

このサイトでもリンクを貼ってある月虎さんが運営する「
男はつらいよSNS」内で
いつも頻繁にやり取りをさせていただいているのだが、彼には実にさまざまな刺激をもらい、
頷くことしきりである。
深い洞察力をお持ちであるにもかかわらず、とても謙虚な心も同時に持たれている稀有な方だ。








柴又 帝釈天


上海軒 から工員とタコ社長出てくる。

朝日印刷の工員たちが社長へ「社長したごちそうさまでした」

社長「いやいや ちょっと足りないだろ」

工員「いやー」と言いながらつまようじでシーシーしながら工場の方向へ
そこへ後ろから画商の一条がくる「あ、君、 ちょっと伺いますがとらやってのはすどこですか」
工員「すぐそこです」
園田佛具店 園田正信  フジカラーフイルム たばこ




とらや 

おばちゃん「お待ちどうさまでした」と一折客へ。

社長、とらやに入ってきて「おばちゃん、お客さんだよ」
おばちゃん「あ、そう」


画商の一条が入ってくる。



一条「お邪魔します

おばちゃん「いらっしゃいまし」

おいちゃん「いらっしゃい」

一条「あの僕、柳りつ子さんの知り合いのものなんですが
  お宅へ電話したら、なんかこちらの店で待つように言われましたんで
  しばらく待たしていただきます



おばちゃん「あー!どうぞどうぞ」と椅子を引きながらおいちゃんと目を合わす

一条「どうもすみません」と座り、

「ア・・・あれですね東京にもこういうところがあるんですね 」とたばこを取り出す

おばちゃん「あ、はあ」

一条「りつ子さんは時々ここに見えるんですか?」

おばちゃん「ええ」

一条「そうですか」とたばこに火をつける

一条「草団子・・・なるほど←草団子がどうして「なるほど」なんだ?


おいちゃん、りつ子がくるとびっくりしてふりむく

りつ子「あら、いらしてたの?ごめんなさいお待たせしちゃって

一条「いや僕も今来たとこ」

りつ子「あ、そう」
りつ子「あ、おじさんおばさんこないだはどうも」
おいちゃん「こりゃどうも」
おばちゃん「こちらこそ今お団子でもお持ちします」
りつ子「すみません」
りつ子「久しぶりねー、ジョーさん←一条だから「ジョー」か
一条「ほんとうに」
タコ社長暖簾の後ろから見ている。
りつ子「あいかわらずお忙しいの?」
一条「えー、貧乏暇なしなんですね」
りつ子「あら、おっしゃるわね」

社長、おいちゃんに「えらいことになったねー

りつ子が男と話してるともうみんなあきらめはじめるのが面白い。
社長「寅さん、どこにいるんだい?」
おいちゃん「でかけてるよ」
おいちゃん「だからな、こういう時に限って
    鼻歌かなんか歌いながら
    帰ってきやがるんだよあいつは


↑これはもう映画をご覧の皆様に
予告してるようなもんですね(^^;)



おいちゃん「二人にばったり出会う。←親指と小指立てて
やつはこれよ、←泣くマネ
それで一巻の終わり←指を突き出し回す

社長「今回は早かったねー!←タコ社長寅の恋愛を娯楽にしてる感あり
おいちゃん「あーいやだいやだ

寅「♪ごーがつ、いつかーのーせーくーらーべ〜〜←おいちゃん的中

社長とおいちゃんうわっと目をつぶる

寅、入ってきて
「おばちゃん団子行って来たよ!」
←お!48作中寅が店の配達をしたのはほとんどない。
だからこれは超珍しい店の手伝い!機嫌いいねえ!


一条「今日ね」とりつ子に話しかける
寅「
うん←寅が呼応して反応してしまうのが可笑しい。
一条「実は…」
寅、りつ子に初めて気づき「あっ、りつ子さん来てたんですか
りつ子「こないだはどうも、あ、」
寅「さ!どうぞどうぞ!」と茶の間に招こうとする


                   



りつ子「あのー、こちら、
  私の仕事の上でのお友達の一条さん、お金持ちなの



一条「なにを言ってるんですか、 初めまして


寅、すべてを一瞬に悟って
ガクットうなだれて、隣に座ってしまう。


一条ちょっと寅を気にする。寅気づかない。

おばちゃん、悲しそうな顔して調理場へ

一条「実はね、今日は僕の話を…


寅が至近距離で
まだ座ってじ〜っと見ている。
ほとんど意識がない(^^;)


間が合って…(この間が絶妙!
一条と寅顔を見合わせる
一条「あの…
一条「失礼ですが、僕たちふたりっきりで話したいんですが…
寅「は。。。←意識朦朧(^^;)

りつ子「ごめんなさい、寅さん…
寅「え?
寅「はい
ようやく状況が把握できて、立ち上がり

哀愁のギター演奏の「背くらべ」流れる

ふらふらになりながら階段でガタガタとコケル寅でした。

おばちゃん悲しげにどうする?
おいちゃん「なるようにしかなんねえだろ。
あいつきっと旅に出るぞ。でも止めねえほうがいいよ

おいちゃん「そのほうがあいつの身のためだ
おいちゃんの考えることは無駄がないねえ(^^)

社長「そうそう、傷は浅いほうがいいよ
おばちゃんもう泣いている



2階でカバンに物を詰めている寅

白い棒状のものはなんと『啖呵バイ』の叩き棒!
は〜〜とため息をつきながら服を入れる



店の中

一条「そりゃあ、僕も画商ですから金儲けはします。でもあなたは…別なんだ。
あなたへの投資がまるまる赤字になってもそれは僕は僕は満足なんですよ。その分他で儲けますから…。
りつ子「うん、私もジョーさんの気持ちはよく分かってるわよ」
一条「じゃあ、どうして承諾してくれないんですか」
りつ子、下を向いて困っている.
沈黙の時間

たとえりつ子がこの画商を嫌っていても、すぐに断ることが
できないのだ。これは絵描きなら誰でも経験しているだろう。
霞を食べて生きていくことができない以上、やはり絵を売らなくては
ならないことは厳しい現実だ。
りつ子はたとえそれが画商が下心見え見えでも売らねばならない
こともあるだろう。だからこそ、相性のいい画商さんやパトロンとの
出会いがあるかないかがその絵描きの運命のカギを握っている。



清掃車の音楽が聞こえてくる。

さくら、満男と買物から帰ってきて店先から一条を見て立ち尽くす。
やっぱり兄思いのさくらだね。失恋の予感があるのだろう。
一条、しばし考えて、りつ子の肩に手を回して←ほう…そういうことかい(−−;)
一条「じゃあ、こうしましょう。2,3日考えていただいて、それからもう一度ってことで。
りつ子「ええ…」
一条「じゃ、僕はこれで」
りつ子「どうもすいませんでした」
一条千円札置いて、「おじゃましました」
こういう時は正式に注文をして、少しは食べて、その後にお金を置くべき。
これじゃおばちゃん受け取りにくいよ。食べもの屋で待ち合わせする以上
注文するのが礼儀。


おばちゃん「どうもお構いもしませんで。」

りつ子店先のさくらに気づいて「こんにちは」
さくら、小さく「こんにちは」
一条「僕はここで」
りつ子「いいの」と帝釈天のほうを指差し二人で行く。

さくら心配そうに暖簾をくぐり、「ねえ、誰なの?今の人」
おばちゃん「それがね」
おいちゃん「しっ!」


寅、階段を下りてくる。


さくら「お兄ちゃん、どこいくの?

寅「さくら、博と仲良くやれよ。
 アンちゃん旅に出るからよ



さくら「どうして?

おいちゃん後ろで『りつ子さんに男が現れて、寅がショックで
泣いて旅に出る』というパントマイムをする。
松村さんの可笑しさ
が爆発(^^)/


寅「何も聞くな、わけは聞くなよ←聞かなくても分かるよ(^^;)

寅、振り向いて、おいちゃんのパントマイムの「泣き」部分を見て。
寅「おいちゃんまで泣くこたぁねえよ。なあ…

ちょうど泣きの部分でよかったねおいちゃん。寅にバレないで。


写真左から @りつ子さんと男が来て。 A仲良く話してて
        Bその時に寅がかち合っちゃって C四角い顔がお陀仏で D泣きの涙
                



              ↓ で、このように泣いているわけです。(^^;)

                





おばちゃんだけ、本気で泣いている。
おばちゃんにとってわが子同然だもんね。このころのおばちゃんの
キャラクターは初期の頃とだいぶ違ってきている。これは寅次郎の
気質や扱われ方の変化と呼応している。


寅「考えてみりゃオレも長逗留が過ぎたぜ。ここらあたりが潮時よ
このセリフはラストの方でもう一度くり返される。

おいちゃん「うん、また来いよな。元気でな」
さくら「お兄ちゃん…お兄ちゃん!

寅「さくら、しばらくおめえには会えねえかも知れねえが
アンちゃんたとえどんなに遠く離れてもお前たちの幸せを
きっと祈ってるよ


え?もうこの話終わりですか?


りつ子おもいっきり走ってとらやに戻ってきて
りつ子「あー!行っちゃった、行っちゃった!
さくらさーん、見た?あの男!嫌な奴なの!
もォ〜っ、だいっ嫌い!!



寅、急に『この世の極楽顔』に変化!
さくら、唖然…この場面、予告編ではさくらもにこっと笑っている
みんなの予想大外れェ〜!!

                 



寅「おばちゃんよ!は〜!腹すいた!
さあ!みんなで仲良くご飯食べよう!!
秋は腹がすくなあ〜!


↑よくもまあ、これだけ露骨に変われるなあ。
まあ、いつものことですが ┐(‐‐;)


この寅起死回生のあと腹めちゃ減りパターンは第6作「純情篇」第8作「恋歌」でも
出てくる、寅のおなじみのパターンだ。
特に「純情篇」では物凄い回復力でご飯をめちゃ食いしていた。
物を食べるシーンがあまり好きでなかった渥美さんが
あそこまでイッキ食いをしたのは後にも先にもあの時だけ。



りつ子「どうしたの?寅さん、ご飯食べてないの?
まあ、そうとるよね、普通は(^^;)


さくr「いえ…」と少し照れる。さくらもちょっとほっとしている
おいちゃん、寅の方見てカア〜〜!!っと嘆き声。
おばちゃん、うるうる。


さくらとおいちゃんの反応の違いも見ていて面白いが、
おばちゃんの反応が第8作あたりと随分変わってきているのも
見逃せない。第8作あたりまではどちらかというとおいちゃんの
感覚に近いものがあったがこの作品ではおいちゃんとは
独立して「親ばか」ぶりが目立つようになった。




りつ子関口フランスパン店でバケットを買っている。

店員「ロールパンとバケットですね」
ええ
寅、一緒についてきている。
寅「寅、絵描くのも大変だね。何かと物入りで」
りつ子「そうなの、キャンバスでも、絵の具でもどんどん値上がりしちゃうんですのもの。
寅「でも、上手く描ければ、さっきの商売人が買ってくれるんだろう」
↑画商のことを商売人という寅っていいセンスしてる。

りつ子「うん。 でもね、ほんとに自分の気に入った作品って
売りたくないもんなのよ
←これは痛いほど分かる(^^;)
寅「はあ〜〜…
りつ子「かといって、気に入らない作品ってのは
ますます売りたくないでしょ

↑これは大体の場合売ってしまう。
なぜならほとんどの絵描きさんは
自分の絵のひとつひとつにどこかしら愛着があるから、
ちょっと上手くいかなくてもそれなりにいい作品だと
思ってしまうからだ。
自分に厳しくできる人というのは
古今東西僅かである。


じゃあ、全然売れねえじゃないか
りつ子「といっても、売らなきゃ食べていかれないしね…」←不変の真実
りつ子
おいくら?
店員さん、なぜか無言???←なぜ!??
りつ子「あ、いけない、
お財布持ってくんの忘れちゃったかしら?
寅「ん?あーいーよ!オレが払う。イクラだい?」
りつ子「あ、いいの!寅さん」
店員、「210円です」←ここでようやく喋る
寅「いいんだいいんだ。210円な。はい」と5百円札を出す。←少額には強い寅でした(^^;)
りつ子「ごめんなさいねー」
寅「いいんだよ。いいんだよ」
りつ子「今度お会いした時お返しするわ」
寅「いいんだよ。そんなこと心配するよりいい絵を描けよ
こういうこと言われると絵描きはそれはもうとても嬉しい。



                    



りつ子「ありがとう、とっても嬉しいわ
りつ子「寅さんは私のパトロンね
寅「パトロン?

芸術家に経済的援助する人をパトロンと言う。
パトロンpatronは「父」であり、男の人に使う。
語源はラテン語の(父)paterから。

りつ子「そう!パトロォン!フフ…
寅「ヘヘ







中川に架かる中川橋のたもと






後記 2009年1月8日 追加


この、りつ子さんと寅が別れた橋は、
いつもお世話になっている寅友の寅福さんの綿密な
調査によってこのたび解明されたのだ。

『中川橋』と、言って、柴又の西、中川に架かった橋である。
つまりりつ子さんは中川沿い葛飾区新宿町あたりに
住んでいると考えていいだろう。





りつ子「いいわ、もうこのへんで。お家の方によろしく。また遊びに着てね

そんなこと言っちゃうと寅って毎日でも来るよ。
しらね‐よ、オリゃ…(−−;)



りつ子「さよなら


寅「さよなら!!


憧れの顔でりつ子の後姿を見つめる寅

りつ子「さよなら、私のパトロン!


寅「さよなら!


中川土手沿いの道を歩いて行くりつ子。





210円ごときでパトロンと言われた寅。これはラッキーだ!
安くついた(^^)/
でも、ほんとうのところ、
寅の「そんなことを心配するよりいい絵を描けよ」と
いう言葉が嬉しかったんだね。これは分かる!











とらや 夜


さくら、編物している。博,本を持っている。

寅「財布を忘れたなんて言ってるけれど、本当はあの人は
パンを買うお金すら持っていないんだよ
ニコニコ笑顔を見せて何の苦労も無い顔をしているけれども、
実はあの細い体で明日のパンにも、ことかくような貧しさと
闘っているんだなあ…。なにしろ芸術家だからなあ…


寅違うって、ただ単に財布忘れただけだってヾ(^^;)
まあもっとも、苦しい生活には違いないけどね。
自分を貫けばあたりまえのこと。別に自慢することでも
卑下することでもない。淡々と清貧を貫けばいいのだろう。


おいちゃん「するとなにか、芸術家ってのはみんな貧しいのか…
寅「決まってるじゃないか!そんなこと〜
おばちゃん「お金持ちだって中にはいるだろう?

おばちゃんの言うようになかには
「池ノ内青観」や「加納作次郎」のようなお金持ちもいる。
寅は池ノ内青観には「絵を売っぱらってるからこんな
大きな屋敷に住めるんだろうが!」
加納作次郎には「茶碗焼いただけではこんな家には
住めねえな。何か悪いことでもしたんだろう」
って言ってた。痛烈な批判だね。当たらずとも遠からず。



寅「そんなのは芸術家じゃないのォ!
社長「でもねえ、今時絵なんかずいぶん高いんだよ
寅「タコは横から口出すなよ!おまえなんかに芸術が分かるか
寅「いいか、自分の気に入った作品は人に渡したくない。
ましてや気に入らない作品を売るわけはない。
だから金が全然入らない
指で輪を作ってお金マーク

出ました!寅のそのまま受け売り発言。「りんどうの花」に
代表されるようにどこかで聞いてきた話を
そのまんまとらやの茶の間でしゃべるパターン。
このシリーズのいたるところで見られる。


寅「これが芸術家ですよ。わかるかさくら
さくら、少し笑いながら「
そうねー.。。私は芸術家じゃないからよくわからないけど…
でも…
とっても気に入ったスーツ縫い上げた時なんか、ちょっとお客さんに
渡したくないなんて時あるわね




博「いつかのお千代さんのスーツなんかそうだったなあ。
君いつまでもぶら下げて眺めてたじゃないか


さくら「そうそうあん時そうだったわ
寅「そう!さくらおまえ芸術家だよ

確かにひょっとしてさくらが縫い上げたお千代さんのコートは
りつ子さんの絵よりも感覚的な美しさがあるかもしれない。




                      




さくら笑って「フフフ、どうもありがと
おいちゃん「しかしオレはわかんねえなー。そりゃ、お釈迦売りたくないってのは分かるよ。
でもまあ、よくできた団子だったら、おおいばりで売るねー
おいちゃんいい感覚だねー!こういう感覚は文化を作る。

寅「だからとらやの団子は芸術じゃねえじゃねえか
おいちゃん、笑いながら「いやあ、芸術じゃなくて結構だけどなあ〜
↑芸術じゃない方が美味いよきっと(^^)


社長「じゃあ、寅さん、芸術家ってのはね、何で食ってくの?←霞

寅「決まってるだろ、お前みたいな金持ちがね、
どうぞお使いください
って、全部差し上げるんだよ


社長「冗談じゃないよォ、こっちだってね、食うのが精一杯だよ。
そんなことしたらね、こっちが食えなくなっちゃうよ

ただでさえ「毎日首くくりてえ」って言ってるのにな(^^;)

寅「食う食う食う食うって食うことばっかり、おまえちょっと食いすぎだよ
社長「しょうがねえよ俺は食うことだけが楽しみなんだから
寅、あきれて、「あ〜〜、いやだね〜〜、なんというかこの貧しい生き方
おいちゃん「だけどな、寅、え、早い話が
人間食うために生きてるんだぜ


おばちゃん「そうだよ
寅「とても話し合えないなあ、この連中とは。なあ、博
こういう時は絶対博に振る寅です(^^;)

博、本読みながら「そうですねえ
寅、その本をスッと取り上げて、自分が読んでるふりをする。
博「確かに食っていくってことは大変なんですよね、
この世の中じゃ…

社長大きく頷く←ここぞとばかりに(^^:)
博「でもね、人間が生きるってことはそれだけじゃ決してない・・
そうですよ、だからこそりつ子さんみたいな人が必要なんですよ
つまり、芸術家がね


寅「そうそう」と指す

社長「それどういう事?
博「ん…だから美しい音楽を聴いたり
素晴らしい絵をみて感動するためにだって
僕たちは生きてるんじゃないですか


寅「そうだよ博おまえいいこと言うねそういう事はこの本で覚えるの?
山田監督、博がいいこといった直後にコロッと笑わせてくれます


博「そういう訳じゃないですけどねとにかくもっともっといろんな事に
人間は喜びを感じてるはずですよ。まあ例えばですね…

さくら「うん、ほらおいちゃんの盆栽だってなそうだわね
博「うんそうそう
おばちゃん「こうやってみんなで楽しく話すこともね
博「そうですよ
おいちゃん「寅が恋をするのもそうか?
寅一瞬博と顔を見合せてテレながら馬鹿野郎!



                      




博「いや笑い事じゃ無いですよ、
 その通りですよ。
兄さんが美しい人に恋をする。
これは兄さんが
人間として生きてる事の証ですよ。
そうでしょ兄さん



寅「いやよせよお前まじめくさって・・・しらけるよ

博「そうですよ

寅「いやそりゃそうだそりゃそうだそりゃそうだね・・・
なるほどな
人間の証
そうかじゃ今夜はこのへんでお開きという事にして
博これちょっと貸してくれよな。
いい言葉があったら覚えよ




寅、本なんか読まないだろうが(^^;)
ほんと形だけなんだから…




さくら「おやすみなさい」
おばちゃ「おやすみ」
寅「あ、お休み」
おいちゃん「おやすみ」
寅階段上がりながら「人間の証ね



社長「人間の証か…

列車の汽笛「ぽー」




社長「腹減ったな。茶漬けでも食うか。おやすみ。
社長「♪なにを〜くよくよォ〜♪
おばちゃん「お休み」
博「おやすみ」
お休み
おやすみなさい
ハハハ
博「何も分かってないな
ハハハ


人間は確かに博の言うようにパンのみで生きているわけではない。
しかし、この競争社会、高度消費社会の渦に巻き込まれながら
生きている我々にもう一度自分の人生を冷静にかえりみて、
個人的な感覚を大事にしていくことを実践するとすれば、時として
社会の弱者になることにもなる。逆に言うとわき目もふらず社会で
戦うということは時として個人的な時間をも奪っていく。
自分を貫いているりつ子は絵画教室の先生をしてもまだ十分には
食べてはいけないだろう。
りつ子の苦しみが痛いほど分かる。
また、このとらやの老夫婦のような堅気の静かな人生を、垣間見る
ことによって資本主義社会の泥の中で生きる私たちは「足るを知る」
ということを教わるのだろう。



啖呵バイ 浅草 仲見世

ここに積み出しましたるこの書籍、神田は六法どうという本屋が
僅か30万円の税金で投げ出した品物、教育資料の一端として
お持ちになったら
いかがでしょう。ただし、本日は、この私が
みなさまの
パトロンになったつもり、特別サービス。


                            



浅草観光連盟 浅草松坂屋


 源ちゃんいつものように『サクラ』
少年マガジン。少年サンデー 


特別サービス!しかし、 ただというわけにはいかない。
なぜかというと私の故郷には女房子供が腹をすかして
待っている。そこでだ!

角は一流デパート
赤木屋、白木屋、黒木屋で、
紅、白粉つけたお姉さんから

くださいちょうだいでいただきますと
千や二千はくだらない品物
今日はそれだけ
くださいとは言わない!


おいおい、漫画雑誌の古本だからせいぜい50円くらいだよ(^^;)




中川沿いにさくらが満男と一緒に
新宿3丁目のりつ子の家に向かっている。





さくら「恥ずかしいなあ…満男の絵なんか見せるの…


寅「そんな事というなよ素人の癖に
こいつの絵だってちゃんとした専門家に見せれば
立派な芸術家になるかもしれねえぞ

↑ただりつ子に会いたいだけ( ̄▽ ̄;)

このパターン。第8作ではロークにさくらを連れて行く寅。
第14作「子守歌」で赤ん坊をダシに
マドンナに会いに行く寅がいた。



寅「なあ、満男←分からんて(^^:)
満男「うん←とりあえず返事。


りつ子のアトリエ


りつ子「楽しいわ、これ。色彩も豊富でとってもきれい。全体におおらかで
のびのびしてるし、それにね、ほら、子供の割りに、人間の形が良く掴めてるの
この顔はー、誰の顔?


                            


満男「寅さんの顔←これは描きやすい!(´▽`)
りつ子「寅さんの顔!
ハハハ

寅「でーなんですかね、こいつは芸術になれますね?
さくら「お兄ちゃん…

寅「だってそれお前が聞きたいって来たんだろう?
だからここへ来たんじゃないか
←よく言うよ┐(~ー~;)┌

さくら寅をにらむ

りつ子「そんなこといったって早いわよねー、まだ満男君。今のうちは好きな絵を
どんどん描いてればいいのよ〜。」
りつ子「子供の絵ってのはそんなこと何にも考えなくて描くから値打ちがあるのよ」

大人の絵描きも結局は同じ。
「あじさいの恋」の加納作次郎はこう言ってます。
「あのな、こんなええもん作りたい、とか、人に褒められたいって
考えてるうちは、ろくなもんでけんわ」



寅「あ、そうでしょうね…お前早いよ芸術家なんて考えるのは。
そんなこと考えんなよ
←ダハー!!(@Д@;;
さくら小声で「自分が言ったくせに←さくら怒!(¬¬メ)
満男に「考えるなお前も←なにも考えてません。
りつ子「これに好きな絵を描いてください」
寅「はいはいはい。何描こうかな。
さくら「お兄ちゃんじゃないわよ」
りつ子「満男君よね」

さて、じゃあコーヒーにする、それとも紅茶がいいかしら

りつ子「あ、あたしがしますわ←さくら一応『客』なんだけどな




ショパン 前奏曲 作品28の15「雨だれ」が流れる。



台所でりつ子「殺風景でしょう」
さくら「そんなことないわ。とっても素敵…」
さくら「私一度でいいからこんな部屋に住んでみたいわぁ
さくら額に入った絵を見て
さくら「あら、いい絵ねー」
りつ子「好き?」
さくら「え、ええ」
りつ子「この人ね10年位前にアメリカに行っちゃったんだけどなんだかとっても有名になっちゃったみたい。」
さくら「へえ〜。いいわねぇー、絵を描いていらっしゃるなんて羨ましいわ
りつ子「どうして?」
さくら「だって夢よ。絵描きさんなんて。←ちょっと少女趣味的発想かな(^^;)
あたしね、小さい頃図工が好きで、大きくなったら絵描きさんになろうとなんて。。。」
りつ子「ほんと?」

さくら、紅茶のティーバック入れながら、「でもね、中学に入ったら音楽が好きになってね。
今に声楽家になろうかなって。。
←さくら、歌上手いよね〜!

寅、むこうでスケッチブックに何か落書きしている。

さくら「ふふふそのうちお勤めするようになってしまって、今度は素敵な芸術家
と結婚しようかな、なんて思っているうちにね


寅横やり「貧しい印刷工の妻になっちゃったかぁ!
さくら「うるさい!ん!」と笑う
りつ子も笑って
りつ子「でもね…あたしこの頃さくらさんみたいな人見てるととても
羨ましいなって思うことあるのよ

↑ま、あるよな、そういうことはあるよ。うん。
りつ子さん絵のことで迷いがあると見た。(ーдー)y┛~~~~



さくら「どうして?」
りつ子「昔はこういうことなかったんだけどなあ。。。
りつ子「どうしてかしら?」
寅横やり「年だよ!!←わ!言っちゃったよ!(@@;)
安楽椅子で落書き描きながら
りつ子「寅さん!
寅「はいはい←このリアクションは好き!


りつ子「あら、何描いてるの?見せて
りつ子「みせてよ〜〜
寅「とても人に見せれるものじゃないから
↑見せられない代物って一体・・・ゞ( ̄∇ ̄;)

と大笑いしながら逃げ回る
りつ子、追いかける「みせてよー」

さくらとりつ子に追い詰められついに見せるトラ
さくら「お兄ちゃん、ねえ」
寅「見せる見せる」

シューベルトの「鱒」がピアノで流れる

寅階段にちょっと上がって
寅「はいこれ!
りつ子「なに、それ?」
寅「キリギリスとラッキョが話してるんだよ!
ハハハ

りつ子「らっきょ!?とさくらを指差しながら笑う。



                            



さくら笑いながらうなずく


↑ラッキョといえば第10作「夢枕」でもお千代坊とさくらをなんだいこの店は漬物屋か?
えーっ、ラッキョが2個そろって何の相談してるんだよ。
ほんとやるほうもやるほうだし、やらせるほうも
やらせるほうだよ。髪の毛なんかやらないでおでこ削ったらいいじゃ
ないか、以上!ハハハ!!
とも言ってた。\(▽ ̄; )



さくら「ちょっと」と笑いながらスケッチブックをとりあげようとする
寅スッと避けながら大笑い。

さくら空振りして勢い余ってりつ子とぶつかる

さくら「ごめんなさい」
りつ子「ハハハ」

満男階段で寅にまとわりついている。

寅絵を指差して
おいおい、
ラッキョラッキョ!ハハハハ!


寅絵を指差して「キリギリスキリギリス!ハハハハ!

一同大笑い







中川風景 向こうに西念寺の屋根が見える。



シューベルトの「鱒」


夕方りつ子が土手で中川風景をスケッチしている。
向こうに見えるのは



寅と源ちゃんも近くで遊んでいる。

近くの子供たちが見に来る。

源ちゃん走ってきて、「おい、あっちいけあっちいけ」と追い払う

寅遠くから「邪魔しない邪魔しない

源ちゃんをこずいて土手に突き落として遊ぶ寅。
上がってこようとする源ちゃんの頭を細枝でパシッ!

寅「ヤーッ!ハハ←もぐら叩きか!?(Θ_Θ;)
りつ子も笑う

寅後ろからゆっくり近づきちらちらと絵を見る。
りつ子も気づき笑う


後ろでにこにこいつまでも見ている寅
この時の渥美さんの仕草はチャップリンそのもの
なんともいえない可愛い仕草。






                         



至福の時







江ノ電沿線  りつ子の恩師の家

2012年6月20日にロケ地判明!

江ノ電の「稲村ガ崎駅」降りてすぐ西側

神奈川県鎌倉市稲村ガ崎3丁目7ー11

現在レストラン「海菜寺(うなじ)」がある。


骨董の器を手にとって見ている恩師

奥さん「近頃は夏なんか大変なのよこの辺。車がブーブーブーブー
一晩中ですものねー。」
りつ子「そうでしょうねー。あそこにあんな大きなドライブインができちゃって」



                         



「そうなの」
富士山が見えなくなったよ、あのお陰で」
「後ろの山ご覧になったりつ子さん、みんな分譲地になってしまって
昔は、紅葉の頃は良かったわよねえ。。。」
りつ子「ええ」

奥さん「ちょっとあなた」
恩師「うん?」
奥さん「ほんとどっかへ引っ込みましょうよ。もっと小さいうちでもいいから」
恩師「面倒だよ
奥さん「無精者だからね
恩師「そのうち死ぬよ。排気ガスで河原崎国太郎さん、反骨精神旺盛な恩師を好演。
奥さん「またそんなこと。。。二言目にはこうなんだから」

リーンリーン

はいはい

奥さん「不便な家ねぇー。はいはい」 と、廊下を小走りに

リーン

遠くで「もしもし…」

りつ子「先生、こないだ私、安藤さんの個展見てまいりました」

恩師「そう、よかっただろう」
りつ子「はい、びっくりしました」
恩師「彼はなかなかいいよ」
りつ子、うなずきながら「あたし…時々女ってやっぱりだめなんだな…ってそう思いました
恩師「女だっていい絵描きはいるよ
りつ子「ええ…
りつ子は恩師に自分の現在の苦悩を聞いてもらいに
来たのではないだろうか。


恩師「どう、君今夜どっかでご飯食べよう。家内も連れて」
りつ子「でも先生、私はもうそろそろ…」
恩師「用でもあんの?」
りつ子「ええ、ちょっと…」
恩師「そう、無理には引き止めないけど…」
恩師「そうだ。三田君、三田良助、

りつ子うなずく

恩師「あの男近々に結婚するらしいね。
りつ子「三田さんが.。。」
恩師「こないだ、ここへ来てそんなこと言ってた」
りつ子「それで…相手の方は…←気になるのだね
恩師「金持ちの娘らしいよ
↑結婚相手のこの部分をいきなり強調する所がこの恩師さん、面白い。
ま、すなわち
逆玉だね。これで一生絵が描けるね三田良助さん。
うらやましい…(−−;)

りつ子「へぇ〜←動揺が見え隠れ
恩師「まあ、あの男らしいけどね
↑もともとそう言う雰囲気があったということか。計算高いというか
要領がいいタイプなんだろうが、ではどうしてそんな男に
りつ子さんが惚れていたのだろうか。顔やスタイルが好みだったとか。
人の世の男女の縁というものは、第三者には、はかり難い。

「あじさいの恋」でもかがりさんの恋い慕う男が金持ちの令嬢と
結婚する話があったが[ものつくり]をする人は、しばしばこのような
結婚を望む。それほどにも自分の好きな道を歩むということは
経済的にも厳しい道になることが多いのであろう。


りつ子のテーマゆっくり流れる


雨に濡れたビワの木




江ノ電が通る。



孤独と失望にさいなまれながら、家からの長い階段を下っていく
りつ子の複雑な表情をカメラが超望遠で追っていく。
辛そうな背中が長く映される。


このあとりつ子は少し寝込んでしまうが、りつ子の場合は
この失恋だけが原因ではない。自分の画業の行き詰まりや
年齢のこと、収入のことなどが複雑に絡み合い、自分を支え
きれない状態になってしまった気がする
。自分の今までの
物語を再構築しないといけない時期に来ているのだろう。
このあたりが正念場だ。雨上がりの階段を下りるりつ子の
背中の孤独は私には痛いほど理解できる。「女もつらい」のだ。



                            







とらや 

文彦がとらやでさくらたちに相談。

さくら「じゃあ2日間ほとんど何も食べないで」

文彦「ええ…」
文彦「僕がお粥T作ってやったんですけどね」
文彦「それもひとくちかふたくちですね」
さくら「熱は?」
文彦「熱はないんですけどねえ」
文彦「なんとなく体がだるくて時々こう…
はあ〜、…なんてため息をついてたりなんかしてねー


このあと実は寅が「恋の病」になってしまうがそのとき
おばちゃんが電話でさくらに全く同じことを言います。
(^^;)

おばちゃん「ご心配ですね、おぼっちゃんも…」
文彦「ぼっちゃんはこまるなおばさん…」

おばちゃん「あ…フフフ」








東京都葛飾区新宿2丁目3番地付近



        




りつ子の家への道

寅と源ちゃんでかいお見舞い持ってりつ子さんの家へ向かう
お見舞いに『車寅次郎』の名前。


シューベルトの「鱒」が流れる。

寅、源ちゃんが差し出す鏡を身ながら身づくろい。
寅「大丈夫か?」
源ちゃん、胸のハンカチを直したりする。
寅、源ちゃんからお見舞い受け取って入っていく。
寅「行け行け、おまえ」と源ちゃんを帰す。
源ちゃん「ヒヒヒ!」と笑って寅を見送る。
源ちゃんて、いつもこうして寅を手伝い、寅をバカにもする。

近所の少年達も寄って、来て興味津々。

本人は真面目に身づくろいしているのだがどこか滑稽で
なぜか哀しい気持ちになってしまう。







後記 2009年1月8日

上でも書いたように、熱烈な男はつらいよのファンであり、
寅友である寅福さんの粘り強い研究によって、
この柳邸が中川沿いの新宿地区にあったことがわかった。

そこでストリートビューで、めぐってみると、川沿いの
坂道を降りてすぐの家が↓の家だった。
この家かどうかは実は確かではないが、似ている感じだ。





       →       







またまた後記


2009年1月16日の寅福さんの実地調査によりますと、『柳邸』は
この上の一見似ている家ではなく、もうひとつ50メートルほど中川大橋寄りの、
坂道を下りた赤い屋根の住宅(写真参照↓)さんだったらしい。
もっと詳しく知りたい方は私のリンクのページにも紹介している
寅福さんのサイトをご覧ください。



下の写真↓は寅福さんが実地調査に行かれた時のものを拝借させていただきました。


         








寅、源ちゃんに「何笑ってるんだよ、おまえ。
     行けよおまえ!早く帰れよ!
」と追い払う。


寅、子供達にも「何見てんだ!

子供達ピュ−っと逃げる。


寅、庭に入ってきてりつ子を見つけニコッと笑い、手を上げる。

寅に気づいて喜ぶりつ子

ガラス戸を開けて迎える。

寅「寝てないの?

りつ子「うん、今日はね、少し調子がいいの
寅「ふ〜ん
りつ子「上がって
寅「うん

寅「オレ、ここでいいから。あ、こんなもんだけど、フルーツ食うかい?
↑「くだもの」と言わず横文字! Σ(・ロ・)

りつ子「わあ!すごい!わあ!重たい!」と持ってよろける
確かに馬鹿でかい(^^;)

「遥かなる山の呼び声」で民子の入院先へ虻田が見舞いを持ってきたときも重そうに
杉山とく子さんが「ひえ〜」って悲鳴あげてたっけ。


寅「ハハハ」

りつ子「どうもありがとう」

寅「いいえ」

寅「長居してもなんだから、じゃこれで
↑早いよ!まだ、1分もたってないぞ!?( ; ̄▽)ノ

りつ子「だって今来たばかりじゃない、ね、もうちょっといてよ…。はい、お座布団。座って

寅「はい、それじゃちょっと」

りつ子と顔見合って寅「ヘヘへ
りつ子「寅さん、来てくれたの←嬉しそう
寅「ええ、なんか具合悪いって聞いたからね」
りつ子「どうもありがとう」
寅「いいえ」

小鳥のさえずりが聞こえる

りつ子「ああ、いいお天気」

ぼうっと空を見上げるふたり

りつ子「兄から聞いたの?私が寝込んでるってこと」

寅「ん、そう」

りつ子「なんて言ってた?

寅、イチョウの葉っぱ持ちながら(イチョウの木が庭にあるのか!?

寅「えー?なんだか、腹は痛くないようだし、熱はないようだし、なんだかわかんないって、フフ…」

りつ子「フフフ

寅「本当はどこ悪いんだ




                 






りつ子、ちょっと迷いながら、「寅さんにだけ本当のこと言っちゃおうかしら。。。

寅「え?

寅のイチョウの葉っぱ取り上げてりつ子「秘密よ。誰にも言わないでね

寅「いや、言わないよ

そりつ子「あたしね…失恋しちゃったの…
↑言っていいのか?そんなこと…

これは寅にとっては本当はショック。つまり、りつ子がこういうことを
寅にしゃべるってことは寅に恋心を持っていないことが分かって
しまうわけから。しかしりつ子が「失恋」したということは、まだ寅の
入り込む余地は残されているということでもある。
こういうのって複雑〜。


りつ子のテーマゆっくり流れる

寅はっと驚いて、りつ子をじっと見る

りつ子「だけど相手の人が悪いんじゃないのあたしの
片想いだったのよ。バカみたいいい年して


寅、じっと下を向き黙っている←やはり、ちょっとショック

りつ子「キリギリスの片想いなんて可笑しいでしょ?
ね、可笑しいでしょ?フフフ


と、寅の腕を揺らす

寅「え、うん、可笑しい可笑しい、笑っちゃうな…
キュウリも食えないで痩せちゃうもんね


りつ子「そう!ハハハハ

寅「ハハハ

りつ子、下を向きながら「フフフ」

表情から伺うにはまだ失恋の傷は癒えていないようである。

寅、元気を出させようと

寅「あ!蝶々
↑グットタイミング!(*゜▽゜)/
りつ子「え?」と寅を見る




             





寅「ほらほら、蝶々蝶々」と庭へ歩いていく

りつ子「どこどこ?」

寅「ほら、蝶々…
あ〜!

椅子に乗って「ほら、あ!」

りつ子「手で採れないわよ寅さん」

りつ子「あっち行っちゃったほら



                  



寅、右の方を向く

りつ子「あ、ごめんなさい!こっちだ!

と今度は逆の方を指差す

寅、笑ってりつ子を見るおどけている表情が実にいい!
↑りつ子、気持ちがちょっと
柔らかくなったかな。(゜ー゜*)



渥美さん結構このコント楽しんでいる

また、りつ子「あっちあっち、あそこ!」と右の方を指差す

寅走っていき「あいたたた」

りつ子「ははは」 と笑い転げる

寅向こうで「あ〜痛ェ」

こういうときの寅っていつも大活躍。
人の心を温かくしてくれるんだよね。
最も印象的に思い出すのは第18作「純情詩集」で
不治の病の綾さんを笑わせる寅の姿。
綾さんはあの時幸せそうだった。





とらや

おばちゃんがさくらと電話
おばちゃん「うちに帰ってきたらね、ものも言わずに2階へ上がっちゃってそれっきり寝込んじゃったんだよ」


さくらのアパート

さくら、電話「あら…どうしちゃったのかしら…」

さくら「食欲はどうなの・」

おばちゃん「あたしがお粥作ってやったらねひとくちか
ふたくち…。熱はないんだよ。ただなんとなく
体がだるくてね。時々ね、
は〜〜なんて情けないため息ついたりして


↑これじゃ文彦がりつ子のことでとらやに来て言ってたことと
全く同じだよ。
(~-~;)


2階で寝ている寅

お粥、みかん、牛乳
みかんは少し食べてあるのかな


題経寺の鐘 ゴ〜ン

寅「はア〜あ〜〜あ〜。。。←ある意味重症(^^;)

第6作「純情篇」、夕子さんへの「恋の病」も凄かったが
あの時以来の重症。




さくらのアパート

博「まず間違いないな。恋の病だよ。医者呼んだって治らないぞ
っと自分の食べた食事のかたづけをし始める。
↑経験者は語る
第10作「夢枕」では、寅が、岡倉先生の「恋煩い」をピタッと当てていた。



さくら「ねえ、恋をすると本当に病気みたいになっちゃう?

博「そりゃなるさ、ちょうど肺病にでも
なった感じだな。。。胸のあたりがこう…、
やめた…バカバカしい。フッ…

↑よっ経験者!でも、さくらの前で言うのはハズカシ!!(´∀`)

さくら、気づき、ちょっと照れて博のほう向いて笑っている。
でも兄のことも気になる表情



数日後 帝釈天参道

川千屋の前を歩いていくりつ子

りつ子「お兄ちゃんどうしちゃったの・心配でかけ出して来ちゃった」

うなぎやさんで買物してるさくら
さくら「どうもすいません」

さくら「満男」
と満男の手を引く

斜め向かいに立花屋煎餅店。そのうえに「大関とらや」の看板
右端にアイリスの赤いひさしが僅かに見える。


なんと柴又屋の看板が左に見える。
黄緑の例の小さい旗も左に。
ここはほんとは「とらや」のはず!
映ってしまっているぞ。(OoO;)




                   




さくら「あのー、りつ子さんの方はもう大丈夫なんですか」

りつ子「ええあたしの方はもう大丈夫なの」



とらやの二階

さくら「お兄ちゃん、入るわよ」手に花をいけた花瓶を持っている

さくら、りつ子に「どうぞ

寅向こうを向いて寝ている

さくら「お兄ちゃんお起きて、ねえ

りつ子「いいの

寅目を開いて「あ〜。。。!とりつ子を見て驚く

寅「あ〜あ〜、さくら…
さくら「え?
寅「お前の顔までりつ子さんに見えるよ
↑やばいよ!本人だよ(¬д¬;)


さくら、りつ子を見てドギマギ

寅「この手の病気はこうなると相当重いんだよな..
↑何回やっても免疫つかない寅でした。 

さくら「ちょっとお兄ちゃん

寅「あ〜あ〜、りつ子さんは今ごろ
何してんだろう。。。


↑全部聞かれてる!もうダメポ ヾ(ーー; )

りつ子下を向いて考え込んで…

りつ子「寅さん…あたしよ…

寅「あ〜あ、声までりつ子さんによく似てるよ
↑もうだめだ… (>< ;)




                   





寅「あれ!?
りつ子「お見舞いに来たの
寅「何だ〜、りつ子さん来てたのかぁ…、オレさくらの奴だと思ってたよ
さくら「私もいるわよ
寅くるっとさくらの方へ首を回して「あ!ビックリした〜〜ん、ふたりもいたのかぁ〜
まだ意識朦朧、起きろよ。

寅「何がなんだかわからなくなっちゃったよ…と目をつぶる
さくら「ね!しっかりしてよお兄ちゃん、いやねえ
りつ子「あたし、あんまりお邪魔しても悪いから、これで失礼します

寅にこれだけ露骨に言われるとそりゃ居辛いよねえ…

寅「ん…?
りつ子「寅さんはやくよくなってね、それじゃ、どうも…
りつ子立ち去って行く

さくら、焦って「ねえ、お花頂いたのよ
寅「あ。。。え!?…あ!もしもし!
↑寅、ようやくマジで目が醒めたな…もう遅いよ…( ̄△ ̄;)

すぐ手を伸ばして呼び止めようとするがもう間に合わない

二人下りて来る

おばちゃん「あら、もうお帰りですか?」

りつ子「ええ…」と靴を履く

タコ社長「♪お医者さんでも〜草津の…〜♪。
おばちゃん、大変だねえ!
寅さん恋の病で寝込んじゃったって
言うじゃねねえか


↑やはり、この男が駄目押し!
これですべては終った…(− −;)
/~~~


おばちゃん、ギョ!

社長「オレはねえ、たぶんその。。。りつ子に気づいて唖然





                 





社長「ちゃい、ちゃい、ちゃ…ちゃいます 
違います違います
と手を横に振りまくる。
さくらもりつ子を見てどうしていいか分からない。

りつ子下を向いて「ごめんなさい」
と足早に走り去ってゆく


社長、口に人差し指を当て呆然と見送り

さくら「りつ。。。」と追いかけようとする

社長、真っ青な顔になってさくらを引きとめ「さくらさん!オレ!←何を言っても無駄(− − ;)

ドドドドと地響きを立て寅が走り下りて来
人差し指を立て目が完全に
戦闘態勢
に入っている


社長「違う違う違う!!←違わないって(^^;)
社長に突進する寅
さくら、倒れながらよけ、柱に頭ぶつけてしまう←あぶないよさくら!
おばちゃん後ろからさくらをフォロー

社長、裏庭まで逃げながら「ごめんなさい!ごめんなさい!
ごめんなさい!ごめんなさい!


社長、ドアがなぜか開かない「おい!開けてくれ開けてくれ!
開けてくれ開けてくれ!


寅、両手に唾をつけて万全の態勢
社長「開けろ!開けろ!もうやられるね(‐−)
寅、社長の襟首ワシつかみにして思いっきり後ろに倒そうとする
社長「あや!ごめんなさい!堪忍してくらはい!!
誰か!イチチチ!

寅「ノワッチ!!と社長を投げ飛ばす
寅「チキショウ!殺してやる!
社長、振り回されながら助けて!助けてくれ!!
さくらとおばちゃん止めに入る
さくら「やめなさい!やめなさい!」
全員の声が入り乱れて、かつ、工員も止めに入って、誰が何行ってるか分からない状態。
寅、社長の首絞める。
社長、苦しくてを出しながらごめんなさい!悪かった!
おばちゃん「およしよ!
さくら「お兄ちゃんおよしなさい!博さん!!
工員たち「あー!」「博さーん!
寅「畜生!このやろう!殺してやる!

↑以上をほぼ同時にしゃべってました(^^;)



                    




ようやく工員達に羽交い絞めにされて
寅「殺せー!!チキショウ!!
殺せーェ!!チキショウァ!!

さくら半泣き
工員「博さァーん!!」

寅とタコ社長のケンカの中でもこのときの暴れ方はベスト3には
入る凄いもの。というか、社長やられっぱなし。(そりゃそうだ)

寅にとってはいつものタコ社長とのケンカとはわけが違う。
自分が冷やかされたなら、ここまで怒らない。りつ子の目の前で
自分の気持ちを暴露されたのだ。これは、恥辱以外の
なにものでもない。寅の最後のセリフ「チキショウ!殺せ―!」は
分かる気がする。これはやっぱり恥ずかしいよな寅。





りつ子のアトリエ

秋の虫が鳴く

寅が描いたスケッチブックの絵『キリギリスとラッキョ』を見ながら考え込むりつ子

深く静かにため息をつく







江戸川土手と青空

「背比べ」のハーモニカ演奏

寅、土手に寝転がり考え込んでいる。

遠くから文彦と源ちゃんが来る。
文彦「やあこんな所にいたのかやあ心配しちゃったよ病気だなんて結うから」と土手を下りてくる。
文彦「・・・いやちょっとオッよいしょはあーあー。腹が出ると苦しいやショボくれてねえで酒でも飲みなよ。うーん」とカップ酒を出す。
文彦「これでも飲んでさ、いやなことすっかり忘れなよ な、なあ」と酒でゆすると起きてくる寅
寅「忘れろ?何忘れるんだ?



                  



文彦つまみを出す
文彦「いろいろさ・・・さ、飲みなよあ、ああ!」
それを寅がはねのけカップ酒割れる
文彦「あ〜あ何てことするんだよ…せっかくのお前慰めようと思って買ってきた酒をさ・・・何だ」
寅「お前さっきから気にらることばっかり言うなあ、慰めるって
なんだいお前ここへ何しに来たんだ!

文彦「決まってんじゃないか・・りつ子のことだよ」
寅「りつ子さんがどうしたんだい。
誰が
りつ子さんに惚れてるってんだい
冗談言うと承知しねえぞ

文彦「フ・・自分で言ってやがる
寅「なに!
文彦「いやいやいや惚れてなきゃ惚れてないでそれでいいんだよ・・
うん。もともとたいした女じゃないよあんなキリギリスみたいな。な

と言いながらカップを空け飲もうとする。
寅「この野郎!たとえ兄貴だろうとなりつ子さんの
悪口は承知しねえぞ!
」と文彦のコップを叩き落とす。
文彦「おい、おい!」
寅「手前ブッこんでやる
文彦「おいやめろバカ」
寅「うるせえ!この野郎!」
文彦「キチガイだぞお前・・おい
源ちゃん「兄貴 やめとけ」
寅「どけ」源ちゃん下に落ちていく
源ちゃん「あっあ〜あ〜あー!
文彦逃げる。
寅「待て逃げんのか!この野郎!アッ!…バ・バカ野郎!ッタク!」と寅も土手ですべる
源ちゃん土手の一番下まで転げ落ちてる。







りつ子の庭(アトリエが見える)

隣からピアノの音が聞こえる

りつ子スープとパンを食べてる。
質素な食事である。

寅、少し迷いながらも庭に入ってりつ子のアトリエを見る。

りつ子寅に気がつく
りつ子の表情も、寅が見舞いに来てくれた先日よりも少しニュアンスが違っている感じ。
りつ子ガラス戸を開けて「こんばんは
寅「ちょっとその辺まで来たもんだから食事中じゃ悪いねえ・・・また来るよ
りつ子「ううん、いいのちっとも構わないの、さ上がってちょうだい」とガラス戸をさらに開ける。
寅「本当にいいのかね
りつ子「大丈夫よ。さあ
寅「あちょっと、俺ここでいいよすぐ帰るからね
りつ子「そお・・
寅「うん




                  




寅は何を思ってりつ子の家を再度訪ねたのだろうか。
先日の病気見舞いの時の浮ついた気持ちとはうって変わって、
変に冷静でちょっと暗い表情の寅。
自分の気持ちは、もうりつ子は知ってしまっている。
だから、りつ子の自分への気持ちを確かめに来たのだろうか…。
それとも…


りつ子「そんなに遠慮しなくたっていいのに…

寅、少し硬くなっている

りつ子何かを言いいたげ

ショパンの別れの曲が流れる



ショパン(1810-1849)
ショパン(Frederic Francois Chopin)は1810年
3月1日、ポーランドのワルシャワ近郊で生まれる。
1831年パリに出るが、これから1835年までが彼の活動のピークで、
この時期リストと親しくなってしばしば一緒にステージを務めていく。
また、故郷の元恋人コンスタンツィアのことを想い出しながら
書いたという練習曲3番ホ長調(通称別れの曲)が出来たのも、この時期といわれている。

曲名の由来は、ショパンの生涯を描いた1934年の
ドイツ映画「別れの曲(Abschiedswalzer,英題=Farewell Waltz)」
のテーマ曲で「別れの曲」の通称もこの映画から生まれた。



1836年秋彼は自分の人生に大きな影響を与える人物と出会う。
「愛の妖精」で有名な作家のジョルジュ・サンド。彼女との恋は12年間続いた。
小品「小犬のワルツ」はこの時期の作品。これはサンドの家の中で彼女の愛犬が
走り回っている様子を描いたものといわれている。
サンドと完全に別れたのが1848年の2月。
1849年の夏には結核の病状が重くなりそして10月17日死去。享年39歳。


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第3番ホ長調Op.10-3 通称「別れの曲」
ホ長調の甘美な第一主題はあまりにも有名。ショパンはこの旋律について、
フランツ・リストに「これほど美しい旋律を今まで書いたことがない」と言ったといわれている。
その甘美な旋律の印象が先行して、この曲が「練習曲」であることを知らない人も多い。




二人とも黙っている


あの音楽はなんて言う音楽ですか

りつ子「あれは別れの曲

寅「別れの曲ね。やっぱり旅人(たびにん)の
曲でございましょうかね



りつ子「そうかもしれないわね


叙情感あふれるこの場面はこの作品で最も美しいカットである。



テレビ版の最終回でもこのセリフがあったがこの言葉の意味は、
テレビ版では、より深い。



テレビ版のほうは、散歩先生の娘さんの冬子
(テレビ版では夏子でなく冬子)の家に最後の別れのために
訪れた時このピアノ曲が部屋で流れていて、
上の会話が繰り広げられる。

冬子の方がりつ子より『寅を大事に思う心』があった。
寅に寄り添う心があった。りつ子は自分の人生を中心において
寅のことを考えているが、冬子は寅の人生を大事に思ってもいる。
りつ子は精神的に寅から優しさを与えられていたが、
冬子は寅に与え、寅から与えられの気持ちの行き来が存在した。
だからこそ、寅の気持ちになり涙を流してしまうのだ。

第12作のこのシーンは
この作品のクライマックスで、心が切なくなるが、
テレビ版の同じシーンは、それをも越える二人の強い結びつきを
感じさせる歴史的名シーンにまでなっている。

テレビ版の最終回はレンタルビデオ屋にある。
もしくはネットでレンタル落ちが手にはいる場合もある。
とにかくテレビ版のこのシーンは一見の価値あり。




静かだが緊張した場面が続いていく。



                      





りつ子「私…
寅「え?
りつ子「とっても困ってるの…
「困る」って言い方ちょっときついな。

寅、小さく頷く

りつ子「私今まで絵のことだけ考えてきたし
これからも…そんなふうにして生きていたいのよ。
だから…おんなとしては中途半端なの。
お台所のことも出来ないし…
子供だって満足には育てられないだろうし…」
だけど、女だからとっても嬉しいの、寅さんの気持ちは。
私だって寅さんのこと大好きなんだもん。



寅、目だけちょっと照れる。

りつ子「だけど…やっぱり困るのよ…
わたし、寅さんには何もかも包み隠さず話せるいい友達で…
これからもづっと…いてほしいのよ。


寅、ちょっと笑いながら「もういいよ。よく分かるよあんたの言うことは。

りつ子「そうかしらあたし話せば話すほど自分の考えてることとは
違うこと言ってるみたいな気がするんだけど…


寅「大丈夫だよ、そんなことないと思うよ。
だけど
あんた誤解しちゃってるよ。
俺は惚れたとかハレタとかそんなふうに
あんたのこと
考えたことないよ。

今までずーっと友達だったし、これからだってそうだよ。





                      



寅は、自分の心も落ち着かせ、かつ、りつ子に余計な気苦労をさせない
ためにあえて「あんた」という言葉を連発している。この言葉は他人どうしの
場合、相手との距離をとって話す時によく使う言葉。優しいがちょっと距離を
おく感じもある。寅はなるべく冷静さを装い、客観性を言葉に持たせようと
して、このように言ったのだろう。寅のりつ子への思いやりがこのような言い回し
をさせたのだと思う。



りつ子「本当?
本当のわけないだろ寅の顔見りゃわかるだろそんなこと。

寅「ああ、ほんとだよ。安心しなよ。

と言いつつもちょっと顔に陰が走る。

りつ子もなんだかやはり気まずさが取れない様子

別れの曲が続いている

りつ子ピアノの方を見て…ちょっと間が合って

りつ子「熱い紅茶入れてくる」と笑って台所の方へ
寅、ちょっと頷く

ひとりになった寅の表情は硬く重い。




                      





りつ子の断わりの一番の理由はこれからも自由に絵を描いていきたいからと
いうものだったが、それではもし三田良介なる人物がりつ子に求愛していたら
どういう反応をし、どういう風な結果になっていたのだろうか。





とらや 

二階への階段の下に寅の雪駄


外は風が強い

おいちゃんとおばちゃん雪駄を見ている
おばちゃんの顔哀しげ


おばちゃん、二階を覗く

犬の鳴き声

店の引き戸を開ける音

さくらが入ってくる。

さくら「ねーえ、どうしたの?お兄ちゃんが…。

おばちゃん「なんだかさっぱりわかんないんだよ。
      黙って帰ってきて2階へ上がったきりウントモスンとも。


おいちゃん「なんかあったに違いねえんだよ。さくら、様子を見てこいよ。

さくら階段を見上げる





寅、ゆっくり階段を下りて来る

寅「お、さくら来ていたのか…

さくら「どこ行くのお兄ちゃん
寅「うん

寅「2,3日のつもりがつい長逗留しちまって迷惑かけたね

おばちゃん「何言ってんだよ

寅「人間潮時ってものがあらァ
おいちゃんおばちゃん体大事にしてくれよ

一条が来た時と同じセリフ

おいちゃん「ちょちょちょっと寅」

寅、のれんの向こうで「さくら

さくら「ん?
店の方へ来て
さくら「ねえ、なんかあったの?

消防自動車の音「ウゥ〜」

寅「オレはりつ子さんにすっかり迷惑かけちまったらしいよ。



                        




さくら「どうして?

寅「あの人にはなあ、
余計な心配とか気苦労なんか
させちゃいけねえんだよ。
そんなこと考えてたら
美しい絵なんか描けねえもんな。
分かるだろうおめえにも。



りつ子の今後の絵のあり方に寅との思い出が
大きく影響していくと思う。
だからりつ子にとっては
とても意味のある日々だった気がする。


頷きながらさくら「分かる


寅「それから、これは俺からの頼みなんだけれども
あの人は芸術家だから貧乏なんだよ。



寅「おめえ時々行って、
もしあの人が
コーシーパン浸して
食ってるようなことしてたら、
簡単でいいからなんか温かくって栄養になるようなもの
作ってやってくんねえか。頼むよ



寅のこのような温かな気持ちが
りつ子をして「
私の寅さん」と
言わしめるのであろう。


つまりこの言葉は『私の恋人』というような
甘ったるいものではなく自分の絵を心底応援してくれる
もっと大きな存在である『パトロン 寅』の意味合いが濃い。

しかし皮肉にも寅はおそらくりつ子さんの絵そのものに
興味があるわけではない。そこがちょっと哀しい。


さくら「うん


うんといってまた下を向く


男はつらいよのテーマ静かに小さく流れる


寅「お前博と仲良くやれよ な、 じゃ…

さくら「お兄ちゃん  せめてお正月までいられないの?

寅「フッ、そうもいかねえだろう、
 正月に向かって俺たちは掻き入れだよ。
 いくら寒いからったって
 コタツにぬくぬくつかってるようじゃ
 お天道様のバチが当たるよ



入り口のガラス戸まで歩いて、さくらの方を振り返り


寅「そこが渡世人のつれえところよ



                      




と強い風の中肩を丸めて寂しそうに去っていく。
寅の孤独があらわになって痛々しい。




さくら「お兄ちゃん!



                      




さくらなんとも寂しげな目で寅を見つめている横顔
これも名シーンだ。

このシーンは第8作「恋歌」のラストの別れとよく似ている

さくらマフラーに手を当てて下を向いてしまう。


おいちゃんおばちゃんも下を向いてどうすることもできない。









中川土手の道


鳥が鳴いている

さくらとりつ子が川を見て立っている

鳥が鳴きながら飛んで行く

りつ子「いつまでもいい友達でいたかったのに…





                       





さくら、りつ子の方をむく

りつ子歩き始めながら「バカね寅さん…

これはりつ子の寅に対する愛惜の念が滲み出る言葉だった。



さくら、なんて言っていいのか分からない。


子供達が土手でスケッチしている。


満男の手を引いてさくらがりつ子と一緒に歩いていく







正月  


空に凧がいっぱい

帝釈天も初詣で賑わっている

とらや「寅年」の大きな紙を表の戸に貼ってある



そうか!この年(1973年)は寅年だったんだ!
そういう縁起を担ぐ意味でも
多くのお客さんがこの作品を観たのかも知れない。



                      




さくら「いらっしゃいませ
おめでとうございます」

客「おでんあります?」
おばちゃん「はい、ありますよ!」

凄くこんでいる。実に賑やかなとらやさん。

社長新年の挨拶に来ている

博「おじさん、社長です」

おいちゃん「イヤー社長、おめでとう。」

社長「明けましておめでとうございます」
作年中はいろいろとお世話になって
今年も一つなにぶんよろしくどうぞ」

おいちゃん「いやーいやーこちらこそ」

さくら笑いながら走ってくる。

さくら「ちょっとちょっと笑っちゃダメよ笑っちゃッ
と言いながら自分がもうすでに笑っている。(^^;)


おばちゃん「何恥ずかしがってんのよ、ほら」

源ちゃん暖簾をくぐって台所へ来る

なんとネクタイ姿しかも
ピンクのカーディガン
、しかも紫腹巻丸見え!

源ちゃんニタニタ笑って「あけましておめでとうございます
さくら笑いを我慢して挨拶「ほめでと(^^;)

源ちゃん「あのう…旧年中は…あのう…ヘヘへ

後ろで、おばちゃん吹いてしまっている

源ちゃん「今年も…ヘヘへへ

さくらも社長も博も下を向いて笑っている

おいちゃん「しかし
馬子にも衣装とはよく言ったものだな!

みんな我慢が限界を越え大爆笑!

博「誰かと思ったよ」
さくら「もう、いやねえ源ちゃん」っと笑い続ける←別にいやなことしてない(^^;)



源ちゃんおいちゃんにそっと「夏物です

おいちゃん「夏物!?あちょ!(^^;)



                         





一同さらに大爆笑

特にさくらが止まらない。
おいちゃんの肩でヒーヒー笑っている


源ちゃん「あのーこれ」っと紫腹巻から袋出す


さくら完全に笑い声のまま「なにこれ」


源ちゃん「お年玉。満男くんに

一同急に尊敬の眼差し
さくら「あらー
社長驚いて「たいしたもんだ
おいちゃん「寅よりはましだよ。
さくら「ありがとう
おばちゃん「まあ、どうもありがとう
博「ありがとう
社長「源ちゃん、いいよ!

さくら仏間にいる満男に「源ちゃんがお年玉くれたのよ
あら、ダメよこれ大事なおはがきなんだから」

さくら「はい、源ちゃんにお礼言ってらっしゃいありがとうって。ね

満男「源ちゃんありがとう!

一同「はーいえらいえらい

さくら、りつ子から来た絵葉書を読み返している。



表の絵葉書の写真はなぜだかマドリッド市内。
これはぜひトレドの絵葉書にして欲しかった。
切手は紛れもなくスペインのもの。スタンプが
押していない気がするが…。切手の方にだけは
スタンプが押してあるのでおそらく使用済み切手を
貼っったのだろう。


VIA AEREA   PAR AVION
 (ラテン語とフランス語で航空郵便葉書の意味)
スペイン語だとP0R AVION



                     



りつ子の声のナレーション

スペインの古都トレドでこのハガキを書いています。
これが着く頃は日本はもうお正月でしょうね
おめでとう なつかしいとらやのみなさん、
私は元気で絵の勉強を続けていますからご安心ください。
寅さん。
私の寅さんはどうしていますか。
まだ旅先でしょうか。

スペインにて           りつ子



実際のこのハガキの文面は映像をストップモーションで
止めて読んでみるとこうだった。


スペインの古都トレドでこのハガキを書いています。
これが着く頃は日本はもうお正月でしょうね
おめでとう みなさん、私は元気で絵の勉強を続けています。
でも、なつかしい柴又やとらやのみなさんのことを
思い出さない日はありません。
寅さん。
私の寅さんはどうしていますか。
まだ旅先でしょうか。

スペインにて           りつ子



ナレーションと文面が若干違うところが面白い。

りつ子はそうとうお金には困っていたはずである。それにもかかわらず、
なぜ、日本円がまだまだ国際的には相当安い1973年にスペインに長期の絵の
勉強に行けたのだろう。確かにスペインはフランスなどと比べると物価は
安いが飛行機代やホテル代はそんなに安くない。ましてや長期滞在となると、
そうとうの出費がかさむ。絵を2枚や3枚売っただけではできないことだ。

考えられる一番のお金の出どことしては、

@一条以外の人でりつ子の絵を応援してくれている画商がいて絵を相当の数
預かってくれて、かつ、半分くらい先払いしてくれた。

A父親から譲り受けたりつ子の住んでる土地を担保に銀行からお金を
借りた。(文彦も承諾)

B一条にしかたなく絵をまとまった枚数売った。りつ子さえ、我慢すれば
これは容易いこと。(しかし後に危険が伴う)

以上3つのどれかだと思う。私としては@がベスト。それができないのならせめてAで
あって欲しい。Bは一番安直だが、一条が見返りを期待する可能性が高いので
あとでいやなことがおこるだろう。りつ子もそれは十分知っているだろうからなるべく
避けたいところ。

どなたか、たぶんこうなんじゃないかっていうご意見のある方がいらっしゃれば
お手数ですがメールいただければ嬉しいです。



りつ子の声にかぶさるように阿蘇山の噴火口の近くで
バイをする寅の声が聞こえ、阿蘇山の煙が見える




阿蘇山火口付近 身代不動前


(倍賞さんたちの九州ロケに渥美さんも一緒に行ったんだね)。

『平和祈願阿蘇不動尊』のはたがひらめく


こんな怖いところで普通バイしないよなあ…。
私もむか〜し高校の修学旅行でここは行った。怖かったっす(^^;)



                      



寅「新年あけましておめでとうございます。阿蘇山初春興行と
いたしましていかがでございましょう。

あなたの今年の運勢をいわうこの寅の絵!ね!どうぞ!

お近くによって見てやってください。
虎は死して皮残す。人は死んで名を残す。
私とて絵心のない人間ではない。
自分の一番好きな絵はだれにも売る渡したくない
増して気に入らない絵は売りたいわけがない
いっそのこと我が家の庭にある土蔵の中に全部仕舞っておきたい。
だがわたくしにも生活というものがある
故郷(くに)にはかわいい女房子供が口をあけて待っている



りつ子が描いた寅の笑い顔のデッサンが映る。
大きく
非売品と書いてある。

MON TORA(モン.トラ)『私の寅さん』
RITZU←サイン

と署名

                      



今回の作品で多くのりつ子の絵がスクリーンに出てきたが、
この寅の笑い顔のデッサンが一番好き。美術担当さん
頑張って描いたんだね。実際は写真を見て描いている
からちょっと薄っぺらいが、実に渥美さんの表情が生きている。
これととても似たものが柴又の「寅さん記念館」に展示して
あるが、実は別の作品。作者さんはおそらく同じ人。
第12作で使われたこのデッサンの方がいい出来だ。


ところでこのデッサンはいつ描かれたんだろう。寅の生き生き
した表情から考えて、寅がお見舞いを持ってりつ子の家を
訪ねた時が一番可能性がある。
その次の可能性はその前にさくらと一緒に訪れた時かな…。



啖呵バイ


寅「
東京では1枚が1000円が2000円下らない芸術品だが。
ポン!浅野匠かみじゃないけど腹切ったつもりだ。よーし!
まず まがった数字が一つ
物の始まりが一ならば国の始まりは大和の国
島の始まりが淡路島。ね!
泥棒の始まりが石川の五右衛門ならバクチ打ちの始まりが
熊坂の長範!続いてマケちゃおう二つ!ね!
兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ。日光結構東照宮。
憎まれ小僧が世に憚る
仁木の弾正 お芝居の上での憎まれ役と来た!



男はつらいよのテーマ盛り上がっていく



                      



寅「続いた数字が三!三三六ぽで引け目がない
産で死んだが三島のお千、
四谷赤坂麹町チャラチャラ流れる御茶ノ水粋な
姐ちゃんたちしょんべん!



阿蘇の噴火口が大きく映し出される



                      


                      








キャスト


渥美清 (車寅次郎)
倍賞千恵子 (さくら)
岸恵子 (柳りつ子)

松村達雄 (車竜造)
三崎千恵子 (車つね)
前田吟 (諏訪博)

太宰久雄 (社長)
笠智衆 (御前様)
前田武彦 (柳文彦)
中村はやと (諏訪満男)
佐藤蛾次郎 (源公)

津川雅彦 (画商一条)
河原崎国太郎 (りつ子の恩師)
葦原邦子 (りつ子の恩師夫人)
吉田義夫 (親分)
長谷川敏英 (印刷工)
羽生昭彦 (印刷工)
村上猛 (印刷工)
木村賢治 (印刷工)
後藤泰子 (八百屋さん)
門久小百合 (バスガイド)




スタッフ

監督 : 山田洋次
製作 : 島津清
原作 : 山田洋次
脚本 : 山田洋次 / 朝間義隆
企画 : 高島幸夫 / 小林俊一
撮影 : 高羽哲夫
音楽 : 山本直純
美術 : 佐藤公信
編集 : 石井巌
録音 : 中村寛
スクリプター : 堺謙一
助監督 : 五十嵐敬司
照明 : 青木好文


上映時間 107分
動員数 241万9000人 (48作中一番)
配収 10億4000万円



今回の更新は1月9日でした。
今回で第12作「私の寅さん」は完結しました。
次回からは第13作「
寅次郎恋やつれ」です。
更新は1月15日ごろの予定です。



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