バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第13作 男はつらいよ
1974年8月3日封切り
6月28日『松村達雄おいちゃん』名場面集
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「浴衣きれいだね…」ただそのひと言に込めた思い。
遂に第13作「恋やつれ」である。この作品は第9作の続篇だ。同一マドンナの続篇を作るということは、観客が第9作を観ている
という前提に立っている。これは山田監督の大変な自信の表れだと思う。柴又慕情を観た人は必ずこの作品を観るだろう、という
確信が無ければ怖くてできない。それくらいこのシリーズがいよいよ世の中に広まってきたということだろう。
歌子ちゃんは実は48作以降でも作られる予定だったらしい。なんと吉永小百合さん3度目の登場となるはずだった。観たかった(TT)
山田監督にとってリリーと歌子ちゃんは特別な存在だったのだろう。ある意味この2人はこのシリーズの大きなテーマをそれぞれに
背負ったキャラクターだったことがこの『同一人物の続篇設定』で分かる。歌子ちゃんの場合はリリーのような「放浪と定住」のテーマ
というよりは第12作で表現した「女性の自立の問題」がさらに進化したかたちで突きつけられることになる。人が働くということはお金の
ためだけではない、幸せとはなんだろうか。という難しいが根本的なテーマをひとりの普通の女性が悩みながらも考えぬき、決断し、
その現場に飛び込んでいく話だ。
『先のことはどうなるか誰にも分からない。今自分がやっていることが正しいかとか幸せかなどと考える余裕はない。ただいつ日か
そのころのことを振り返って、あの日々は幸せだった。と心からそう言えるようになれたら…。』と、彼女は働きながら考えていくのである。
寅次郎の惚れたハレタも楽しいが、マドンナが真摯に人生に立ち向かう姿もこのシリーズのなかでなんら不自然ではなく同居できる
テーマなのだ。
吉永小百合さんは第9作のときよりもいっそう美しく、演技もより集中力があったように思う。第9作から続いている甘く優しい
歌子のテーマ曲は今回も吉永さんを温かく包み込んでいた。これほどマドンナと曲のイメージがピタッっと一致するものはなかなかない。
山本直純さんの名曲。これ以外ではリリーのテーマ曲と、千代のテーマ曲も名曲だ。
そして第9作から解決できていない問題である「父娘の葛藤」もさらに一歩進んで表現している。お互いが歩み寄ることの難しさ、
そして歩み寄る勇気の尊さを、かなりの比重で描いている。歌子ちゃんと父親がとらやで泣き崩れるシーンはこのシリーズの屈指の
名場面だと言えよう。
また、この作品がおいちゃん役最後の作品となった松村達雄さん。父と娘の和解を見て喜びのあまりくしゃくしゃに泣きはらした松村さんの
顔がとても印象的で、あの名場面を一層忘れがたいものにしていた。あれは松村さんのキップのいい強い演技がポイントだった。
また、この作品では実は歌子ちゃん以外にもうひとりマドンナが登場する。これもきわめて珍しいパターンだ。温泉津(ゆのつ)で知り合った
絹代さんである。この絹代さんの話は、夢の部分や、ラストの部分、そして歌子ちゃんとの再会の部分に全て関連している。本当は絹代さん
の話だけでも一話作れるのでは、と思うので、あんなにさっさと失恋させてちょっともったいないような気がした。しかし、ふたつのハラハラが
楽しめてまあ、それはそれでよしとしよう。
絹代さんとは結婚まで考え、そしてさくらとタコ社長をお供につけたあげく失恋したのだから、大掛かりだ。その直後に歌子ちゃんと会うのだが、
短い間にふたりともにあからさまな恋をするとしたらさすがに無理があるし、面白くもない。 ということは設定的に寅は今回は絹代さんに恋をし、
結婚まで考え、歌子ちゃんには恋心は心の奥に押さえて、彼女の自立を応援し、見守った。といえよう。「無私、無償の、人間としての大きな愛情」
とでも言えばいいのかもしれない。
このような心を寅が持ちえたのも第9作という土台があったからだ。歌子ちゃんに惚れ、失恋し、別れたあの第9作のそのはてにようやく持ちえた
「無償の人間愛」。2作品同一マドンナの意味がここにある。この感情の芽生えはその後このシリーズの大きな財産になっていった。
それに今回は先ほども書いたように第9作から続いている父親との和解の問題があり、その問題の解決後も歌子ちゃんは最終的には大島の
養護施設にすぐに働きに行くのである。彼女のあまりにも真摯な自立への苦悩の中からは浮ついた恋愛話、結婚話などは出る隙さえも無い。
再婚による幸せなど全く考えないで自立したひとりの人間としての幸せをまず選んだ歌子ちゃんはとても魅力的で輝いていた。
そして、ラスト付近。唯一、あの花火の夜の歌子ちゃんを見つめる寅の目だけが、この物語が「恋の物語」だったのだと私に思い出させてくれる。
そして、だからこそよけいに、彼女の後姿に向かって「浴衣きれいだね…」とそっとつぶやいた寅の言葉が胸にいつまでも切なく残るのだとも思う。
こんな純粋で少年のように穢れが無い言葉を寅からつぶやかれたマドンナはこのシリーズの中ではたして他にいただろうか。私は記憶に無い。
■第13作「寅次郎恋やつれ」ロケ地解明
全国ロケ地:作品別に整理
今回も夢から入る。
桜の花が満開の海岸
階段から相模湾を望む。
晴れた日は富士山と江ノ島を望める。
ロケ地は、横須賀市長井にある熊野神社
♪金襴緞子の帯しめながら〜のメロディが流れる。
花嫁人形
蕗谷虹児 作詞
杉山長谷夫 作曲
金襴緞子の 帯しめながら
花嫁御寮は なぜ泣くのだろ
文金島田に 髪結いながら
花嫁御寮は なぜ泣くのだろ
あねさんごっこの 花嫁人形は
赤い鹿の子の 振袖着てる
泣けば鹿の子の たもとが切れる
涙で鹿の子の 赤い拡にじむ
泣くに泣かれぬ 花嫁人形は
赤い鹿の子の 千代紙衣裳
タコ社長夫妻が仲人をして、花嫁道具を持った人々が階段を上がっていく。
寅次郎が結婚をするらしいのだ。
この夢は本編への橋渡し的な役目を果たしている。
タコ社長の奥さんはいつもの水木涼子さん
第1作「さくらの結婚式」、第6作「社長の茶の間」、第33作「アケミの結婚式」、
にも水木涼子さん同じ役でしっかり登場。
階段の上に上がりきると、なんとそこはとらや。
さすが夢だ。なかなか幻想的
寅、店のテーブルで下を向いて座っているさくらを見つけて
寅「さくら!」
うつ向いて哀しげなさくら
はっと寅に気づき、寅を見る。
寅「さくら、アンちゃんとうとう嫁さんもらったぞ!ほら、この人だ」
花嫁さん「お姉さま はじめまして」っと頭を下げる。←どこの誰か全くわからない??
寅「どうした!おいちゃん、おばちゃん!?」
さくら、黙っている。
寅「何かあったのか?」
さくらが寅に何か言おうとしたその時博が
博「兄さん!遅かった!」
寅「ええ!?」
三味線ペペペペぺ…ペンペン
寅「そうか、じゃあおいちゃん達は!」
博「去年の秋、ふとしたはやり病で枕を並べるように二人とも…」
ベンベン
博「兄さん、なぜ、なぜ、もっと早く帰ってきてくれなかっった!?」
さくら、泣く
寅、走って茶の間へ
ペンペンペンペンペン
博「兄さん!」
戸を開けるとそこは茶の間でなくなんと秋の風吹く墓場。
源ちゃんがほうきで地面の落ち葉を掃いている。
う〜む、シュールリアリズム!(− ー;)
カラス カア〜カア〜カア〜カア〜
源ちゃん寅を見て手を合わせて拝む。
土葬の墓には『車竜造の墓(竜造菩薩}』 『車つね(つね菩薩)』の文字が見える。
おいちゃんそういえば第5作「望郷篇」でも夢の中で死んでたなあ…(^^;)
シューマンの トロイメライが流れる。
寅「おいちゃんおばちゃんオレだよ!分かるかい、寅次郎が帰って来たんだよ。
今度はひとりじゃねえんだよ。嫁さん連れて帰って来たんだ。オレが帰ってくるたんびに早く
嫁もらえ早く所帯を持てって心配してたじゃねえか。だから嫁さんもらったんだよ。」
さくらと博後ろに来ている。
寅「おいちゃんとおばちゃんの喜ぶ顔が見てえと思って。それなのに…うう…
どうして死んだんだ。なんで死んじまったんだよ。」
ゥう。。。と泣きじゃくる
寅さくらの方へ寄りかかって泣く
さくら「お兄ちゃん」
反対側の博のほうへも寄りかかって泣き
「兄さん、しっかりして…」
またさくらの方へもたれかかって泣き、うずくまって泣き崩れる。
さくら「お兄ちゃん、…お兄ちゃん…」
電車の音が聞こえてくる
電車の中で寝ている寅
寅、隣のおばさんにもたれかかっている。
おばさん嫌がって跳ね除ける。
このおばさんは、テレビ版で寅の産みの親を演じた個性派武智豊子さん
反対側に寄りかかって今度はおじさんのほうへ。
おじさんにも嫌がられる。こちらもほとんどの作品でおなじみ吉田義夫さん
武智豊子
明治41年生。小柄な身体としゃがれ声を売り物に女エノケンと称された超個性派。
自分の一座も昭和13年に6月に江東劇場にて旗揚げしている。
戦後は女優として様々な映画、テレビドラマに活躍した。昭和60年没。
両方に押されて寅ようやくふにゃふにゃと目を覚ます。
電車の音が鉄橋を渡っていることを寅に分からせる。
寅「あ!!江戸川か!?あ〜〜鉄橋だこれ」
寅「あは!おじさん、柴又乗り越しちゃったよ!アハハハ」
おじさん、ブスッ
寅「お姉ちゃん、柴又乗り越しちゃったよ!アハハ…」←「お姉ちゃん」って言うか(^^;)
おばさん、ブスッ
車内アナウンス「次は国府台(こうのだい)、国府台でございます」
寅、ブスッとして口尖らせながら「戻りゃいいんだ戻りゃ!」
↓
島根の温泉津(ゆのつ)からは普通は、山陰線で出雲まで行き、
出雲から横浜までは11時間かかる「寝台特急出雲」に乗る。
しかし、寅の気質からしてそういう長距離の「寝台特急」に乗る
とも思えないので、ルートはもっと複雑になり、もっと疲れる。
ローカルな夜汽車で疲れきってついうとうとしたんだろう。
それで、京成高砂駅で「京成金町線」に乗り換える所を
そのまま国府台まで行ってしまったわけだ。国府台で下りた後は
千葉県側を江戸川沿いにず〜っと歩いて里見公園の横を通って
『矢切りの渡し』まで行き、江戸川を渡って帝釈天に行き、
門に登って提灯付けしている源ちゃんをつかまえて、かばん持ち
させてとらやに到着ということかな。
タイトル
男(赤文字)はつらいよ(黄色文字)寅次郎恋やつれ(白文字)
バックは今回も第12作同様お馴染み江戸川土手
口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
目方で男が売れるなら こんな苦労も
こんな苦労もかけまいに かけまいに♪
寅が矢切りの渡しに乗って千葉から柴又へ帰ってくる。
このように寅が矢切りの渡しを使う場面は少なからずあるがなかなか情緒が
あって好き。ゆっくり江戸川沿いを歩いて矢切りの渡しまで行き、
渡し舟をあえて使って帰郷の雰囲気を味わいたいという気持ちはよく分かる。
第1作で2回、第11作、第13作、第38作、第42作、と
合計6回、寅は矢切の渡しに映画の中で乗っている。
江戸川河川敷ではラジコン飛行機を飛ばしている青年がいて寅が興味を持つ。
寅、例のごとくちょっかい出してラジコンのツマミいじって、困らせたり、カップルにぶつかって、自分のでかい
温泉津からのお土産とカップルのかばん間違えたりするミニコント。
帝釈天 参道近く
満男がおもちゃ屋さんの店先でおもちゃを見ている。
さくら、後ろから歩いてきて「ダメダメ」
満男「買ってー」
さくら「ダァ〜メッ」←この言い方面白い。
源ちゃん、門に登って提灯吊るしている。
このあとすぐ寅と出会うことになる源ちゃん。
木屋の提灯、川千屋の提灯。
この2つの店は羽振りがいいからね。
とらや
満男「ただいまー」
さくら「こんにちはー」
おばちゃん「おかえり〜」
さくら、ちょっと笑って「いつも暇ねえ、このお店は」
おばちゃん「あら、言うねえー、さっきまで忙しかったんだよ」
おいちゃん寝巻姿でボー
さくら「何よおいちゃん今ごろ起きたのォ〜」
おばちゃん「なんだか知らないけど、
明け方変な夢見て寝付かれなかったんだってさ」
おいちゃん「変な夢じゃねえよ。いい夢だよ」
さくら「おばちゃん、陽がさして来たから布団干しとくね」
おばちゃん「あー、すまないね」
さくら、布団片付けながら「ねー、どんな夢見たの?」
おいちゃん「寅の奴が帰えーって来たんだよ」
さくら笑って「フフ…お兄ちゃん元気だった?」
おいちゃん「それが、いつもと違ってさ元気いっぱいでなんだか
幸せそうな顔してさ、ズカズカっと
俺のところへ来てこう言いやがったんだ。
『おいちゃんよ、長い間心配かけたけど結婚したよ』って」
さくら、笑って「あらあら」←この反応いいね〜!
その間も布団干したり片付けたりしている
おいちゃん「まあ〜オレそれ聞いたらオレゃ胸がいっぱいになっちまってさー。
そりゃー良かったなって一言言ったら、あとは涙よ。」
さくら「フフフ…それで?」
おいちゃん「そしたら、あいつに起こされちゃった」
さくら「ハハ!」←このちょっと過激気味の反応もいいね〜
まあそれにしても今回はしょっぱなから『結婚』の夢続きだね、
これはなんかあるぞと、いやでも思わせる山田演出!
おばちゃん、テーブル拭きながら「だってさー、寝ながらしくしく泣いてるんだもんこの人」
さくら「いや〜ね」
おいちゃん、ハッとして「おい!」
さくら「え?」
おいちゃん「夢枕って言うけど、まさかそれじゃねえだろうな」
これじゃ寅が死んだことになってしまう?(^^;)
おばちゃん、やめろ、というしぐさ。
さくら「嫌なこと言わないで」
おいちゃん「でもさ、おまえの親父が死んだとき夢枕に出たんだぜ」
さくら、座って「本当?」
おいちゃん「おう!」
おばちゃん「白い着物着てね枕もとに立ったんだってよ、あんたのおとっつあん」
と言いながら幽霊のかっこうするおばちゃんってお茶目(^^;)
↓
さくら「へぇ〜」
おいちゃん「オレが何か用かい?って言ったらね、寅とさくらのことは
よろしく頼む。特に寅の奴は生まれつきバカだから心配で仕方ねえ
って哀しそうにそう言ってさ…す〜っと消えちまったんだよ」
さくらおいちゃんの肩揉んでいる。
ところでこの、おいちゃんの発言から考えて、長男さんは
お父さんの前に死んだんだということか。
そうでないとすると夢枕の父親は長男の名前も出すはず。
長男はかなりの「若死に」だったんだなあ…。
この秀才の長男さん、第1作のオープニングのナレーションと
さくらが持ってる家族写真で出てきたきりで、一度たりとも
48作品の話題にしっかりのぼることは無かった。寅の留守中の
とらやの中でさえ、ほとんど聞いたことがなかった。謎のお方だ。
さくらや老夫婦は彼の思い出がないのか?
おいちゃん「目が醒めたら汗びっしょりよ。う〜ん」
さくら「そんなことがあったの?」
おいちゃん「うん」
おばちゃん「お兄さん、未だに成仏できないでいるんじゃないかねえ・・」
おいちゃん「おりゃあ寅の奴を甘やかし過ぎたのがいけねえんだよなあ」
寅が家出する時実の父親は、まだ元気だった。
それゆえ、寅はおいちゃんに育てられたわけではない。
寅は父親とさくらのお母さんに育てられたのだ。
三十後半になってようやく故郷に戻ってくるので、
おいちゃんのせいではない。しかし、ここ数年は、寅は
おいちゃんたちの影響下にあるのも確か。
満男「バーバ」←おばちゃんのことを「バーバ」と呼んでいる!
おばちゃん「なあに?」
さくら「すいません心配かけて」
おいちゃん「何いってんだいお前、へへ…」
満男「げんこつ山のたぬきさんおっぱい飲んでねんねして抱っこして
おんぶしてジャンケンポイ!」かわいい〜(^0^)
ねんねして ジャンケンポイ!
玄関で寅と源ちゃんがパッと姿をあらわすがすぐにくらます。
おいちゃん「カアーーー!帰ってきたよ!あのバカ!
つね知らん顔しとけ知らん顔」
おばちゃん「あいよ」
おいちゃん「こうやってまた甘やかしちまうんだよなァ…」
寅っていつもこう。
長らくのご無沙汰でちょっと照れてるんだよね。分かる気がする。
女子高生の団体が店先に入ろうとする。
女子高生たち「あっちあっちのほう行く・・・」なぜ!?(‐ ‐ ;)
寅と源ちゃん後ろについて来たのでまた目立つ
寅「あっちの方・・・」とまた行きかける。
さくら「お兄ちゃん!」
寅「え!?あ〜〜!あ、なんだいこの家だよ
あんまりごぶたさしたんで家忘れちゃったよ。はは・・どう?みんな元気?」
さくら「うん」
おばちゃん「あ、お帰り」
さくら、おいちゃんに「お兄ちゃんよ」
↑おいちゃん笑って振り向いたら寅もう通り過ぎてて
また振り向いて、松村さんミニギャグ(^^;)
おいちゃん「お、おう、寅か!へへ、へへ」
寅「どうしたい元気ねえじゃなねえか」
おいちゃん「うーん俺も年だからな」と四つんばいで歩いてくる。
寅「そんな威勢の悪いこと言ってもらっちゃ困るよおいまだまだ長生きしてくれよ死なれちゃ
困るんだからな俺は」と言って源ちゃんへ
寅「おう!ちょっとそれかせ。これ土産だけどみんなで分けてくれ」どん!とデカイ包み
さくら「え?」
社長「おう寅さんじゃないか」
寅「おう社長どうしたい不景気なつらして相変わらず営業は不信か」
48作中、タコ社長はついに一度も快調なことは無かった
社長「ひどいんだ」
寅「ヘヘへヘ・・」
さくら包みを開けてビックリ
さくら「あらー!」
おばちゃん「まああ」
さくら「おいちゃん見てこれ」
おいちゃん「あーこら豪勢だ」
↑確かに今回は駅前の土産とは相当レベルが違うよな。
ところで寅の土産のここまでの最高記録は第4作、
ワゴンタイガー(万馬券)で儲けた100万円かな?
まあ結局はハワイに行けなかったけど・・・。
その後この記録を塗り替えた土産が「あじさいの恋」の
『加納作次郎作、打薬窯変三菜碗(うちぐすりようへんさんさいわん)』と
「旅と女と寅次郎」の『京はるみの付けていたエメラルド指輪』
おばちゃん「あら!まあ〜!美味しそうなお魚!」
と昆布や干し魚の真空パックを手に持つ。
さくら「どうしたのこれお兄ちゃん」
寅「女将が持たしてくれたんだよ」
マドンナが女将!?第3作の二の舞か!?
さくら「女将ってどこの・・?」さくら、ドキリ!
寅「旅館のよ」
さくら「どこの旅館?」
寅「温泉津(ゆのつ)」
さくら「温泉津って?」←分からんよね普通。
寅「島根県よ」
社長「島根県て言うと・・・」←知ってろよそれは (;´▽`)
寅「鳥取の向こうだ」
社長「鳥取という…とぉ・・・」←だめだこりゃ
おいちゃん「島根のこっちだよ」←意味ねえ〜 (  ̄□ ̄;)
寅「そうそう」
さくら目をパチクリさせて「じゃあお兄ちゃん、島根県の温泉津って所の旅館にいたの?」
寅「そう、温泉旅館だ」
店先に来た女性客の声「ごめんください」
寅「はいはい」と返事。
客「お団子下さい」
寅おばちゃんにどうぞと言う合図
おばちゃん「あ、はい。どうもずいません」
客「五百円のを一つ下さい」
おばちゃん「あはいはい」
さくら「その温泉で何してたの?」
さくら不安げ。もしそこで働いていたなら、
近くに必ずマドンナが…。
寅のアリア『温泉津番頭篇』
寅「朝、目が覚める。
耳元で波の音がパシャパシャパシャパシャ」
波の音がパシャパシャパシャパシャ
寅「雨戸をカラッと開けるパアァー!っと
一面目にしみる様な青い海。
これが日本海だ。なあ社長」←社長は分からないよ(^^;)
パアァー!っと一面目にしみる様な青い海
社長、口をポカーンっと開ける←この反応最高!
寅「ああ、今日一日ももいいお天気でありますように。
新鮮な空気を胸いっぱいすーーっと深く吸った時、
下から女中さんの声が聞こえる」
ああ、今日一日ももいいお天気でありますように
寅「『番頭さん朝ごはんですよ』」
番頭さん朝ごはんですよ
おいちゃん「なんだいお前番頭やってたのか」
温泉津の「後楽旅館」で働いていた。 本編ではそのシーンはカット。
寅「そうだよ。『あいすぐ行くよ』そう答えておいて
ポンポンポンっと布団をたたむ。
トントントントントーンと階段を下りて
ガラッと湯殿の戸を開けてザブーンっと朝風呂に入る」
(布団の仕草が特に絶品!)
ポンポンポンっと布団をたたむ
トントントントントーン階段を下りて
ガラッ湯殿の戸を開けて
寅「身も心もさっぱりした所で朝ごはんですよ。さっきまで
生きていたイカの刺身!ね!
こんなどんぶり山盛りだしょうがをパラッとかけて
醤油をツルツルッとたらし一気にパアーッと食っちまう。
あとはアジのたたきに新鮮な卵」
社長、パブロフの原理で唾を飲む
醤油をツルツルッとたらし
寅「これで朝ごはんをたっぷり頂いて、さあ仕事ですよ、ね!
女将のいたわりの声『ご苦労さんだね番頭さん』
リュウマチババアの声を後にして、
まず土間をパッパッパッと掃いちゃう。
打ち水をサッとして表の道路まで出てサッと水を撒く。
そこへ近所の女がスッと通りかかる。
『お、お絹ちゃんこれからお出かけかい?』『ええそうよ』
『そうかい気をつけてなケガをしないように』『はいどうもありがとう』
『じゃいっといで』『行ってきます』
そんな所で午前中は終るかなァ・・・」
『じゃいっといで』
さくらが『リュウマチババア』の部分で
ホッとするところがなんともいいねえ−。
しかし、起きてからまだ1時間半ぐらいしかたってないぞ。
ほとんど仕事してねぇ〜 (- − ;) 」〜〜〜
社長「で、午後はどうなる?」←タコ社長指を突き出して乗りに乗っている。
寅「うーん、午後はまあ、海岸の散歩かね」楽なもんだ・・( ̄ω ̄;)
社長「ほう」
寅「うーん海ってのはいくら見ても見飽きねえからなあさくら」
さくら「あ、そうね」
寅「うん、寄せては帰す波の音ザブーンってねえ。
俺ァ昔から不思議なんだけどさあ、どうして風も無いのに波が
ああやって立つかな、あれはきっと沖のほうでね誰かが
こんな大きな洗濯板でワリワリワリワリこうやって
オレ波立ているんじゃねえかなって
そういったらさお絹ちゃんがね、
『寅ちゃんっておもしろいこと
言うわねホホホホ・・・』
『ハハハハハ・・・』『ホホホ・・』『ハハハ・』」
↑もうここで一同ドッキリ!さくら不安げ。
源ちゃん「ガハハハ・・」
満男「キャハハ・・キャハ・・」
寅「『ホホホホホ・・・』あ!俺忘れ物してた!おいちゃんにね」
っと思いっきり源ちゃん顔にカバンのフタを当てる。
カバンの当たる音「ガゴッ!」源ちゃんのけぞる
↑痛い!これは痛い!(≧0≦ ;)
満男「キャハ!キャハ!」っと満男にウケまくり!
さくら「大丈夫?」
大丈夫の分けないって(TT)
何回リハーサルしたんだろう?
源ちゃん、役とはいえ「源ちゃんもつらいよ」だね。
寅「温泉津の焼き物。あいよ!」
おいちゃん「いいのかいそんなものもらって・・あら!」
おばちゃん「まあ〜安くないよ。どうもありがとう」
おばちゃんは、高い物や偉い人には弱い
寅「いいんだよいいんだよ。ふ」
寅「お絹さん所でね焼いてんだよ、うん。」
さくらたち、それ聞いていよいよ不安。
あ、源公お前にもなにか土産な・・ねえな…フッフッフッ、
せんべい。これ余ってるな」
↑源ちゃんそんなに嫌がってない(^^;)
源ちゃん、鼻に手を当ててる。痛そう。
さくら「あのねお兄ちゃん、ちょっと質問なんだけど」
寅「なんだい?」
さくら「お絹さんってどう言う人」
←やはりさくら、ポイントは外さないね。
寅「えっ」
寅「・・・お絹・・?絹代ちゃんか…
それはほらつまりー・・・まあいいじゃねえかよそりゃあ」
でました名前!!
この「絹代ちゃんか…」のひと言に寅の気持ちが現れている。
相手に対する柔らかな気持ちがよく出ていた。
寅「そうゆうことは、ね!」バシャン!
っと勢いよくカバンを閉めて源ちゃんひっくり返り
せんべいが空中に浮き落としてしまう。
寅「いずれ晩飯の時にでも発表すると言うことにして、
おばちゃん夜汽車で疲れちゃったい二、三時間上で
休ましてくれや、な!」
おばちゃん「あ、いいよ」
寅「さくら」
さくら「え?」
寅「御前様にわかめかなんか持ってってくれな、
社長おまえもなんか好きなもんあったらもっていきな」
社長「あ〜、どうもどうも」
寅「源公今日はご苦労さん」と階段に上がる
寅「あ、さくらあのー・・今晩博な、
忘れずに呼んどいてくんねえか大事な発表もあるし…。
アー疲れたなあ〜。思ったより疲れたな」←意味ありげ
社長早くも間に受けて体を乗り出してくる!
おいちゃんポケ〜!しかし正気に戻り、
「オッ!オイ!ハア夢見てんじゃないだろうな
俺な。あのー今寅何て言った?」
↑おいちゃん冷静さを完全に失ってる。正夢か!?
さくら「いや、お絹さんてどういう人って聞いたら今夜発表するって」
おいちゃん「ほんとにそう言ったのか!?」
さくら「うん」
おいちゃん「本当か!!」
さくら「本当よ」←さくらも同じ穴のムジナ
おばちゃん「ちょっとどうする!?」首をぷりぷり振りながらあたふた。
テンポのいいメインテーマ流れる
おいちゃん「落ち着け落ち着け!そいじゃあ最初ッからな順序どうり話してみろよ
そのおきぬさんてのは何してんだい?娘か!?」
落ち着けよおいちゃん ヽ(´〜`; )
とらやご一同、超希望的観測と
現実がごちゃ混ぜ状態で進行中
朝日印刷
社長、走って入ってきて「大変だい大変だい!おい博さん!
寅さん帰ってきてな今夜重大発表するってよ」
↑おーい、”大事な発表”だよ。
博「エッ!重大発表!?」←もう顔が喜んでる・・・
社長「おめでたい話らしいんだよ!」うわ!Σ(・0・;)
社長「あー忙しくなってきた!」←仕事しろよな。(-_-#)
光ファィバーなみの速さを持つ柴又限定の社長の伝達能力。
題経寺(帝釈天)境内
さくら御前様に温泉津のお土産を渡しに行く。
さくら「御前様、先ほど兄が帰ってきまして…」
御前様「ん、今これに聞いたとこじゃが、
嫁さんが決まったそうだねぃ〜」
さくら「いえ、まだ決まったってわけじゃないんですけど…」
御前様「ん?」
源ちゃん知らん顔
さくら「源ちゃん!あっちこっちで言いふらさないでちょうだい!」
源ちゃんピュ―って逃げる。
ってなこと言いながらさくらももうその気に
なっているような…。ていうか、さくらはいつでも
寅の恋愛話や結婚話に関しては盲目的。
でもそこがいいんだなあ〜。なんだか愛しいよね。
第7作「奮闘篇」などでもその傾向が顕著。
八百満
八百満のおかみさん「よかったねー、あんたも安心だねー、これで」
っと白菜を計りに乗せる。
瞬く間に言いふらす柴又の人々。(^^;)
前回の第12作でも八百満のおかみさんとおばちゃんこの手の会話してた。
あん時は「玉葱」だったかな。もっともあの時は結婚でなく心をいれかえ
改悛したということだったが。
おばちゃん「ありがとう」←まだなにも決まってないって ヽ(^^:)
客「いい人だといいねー。」
おばちゃん「そうなんだよ。なにしろねー、まだ顔も見てないからねー」
っとキュウリを選んでいる。
おばちゃん「あ、三河屋さん!あとでビール1ダース持って来てぇー!」
あー!おばちゃん、可愛い寅のことになるともうどうにも
止まらない!って感じ。知らねーよ、オレは。
観客も含めて、マドンナの顔まだ見てないぞ。
どうなってるんだ、こりゃ?
夜 帝釈天
鐘を撞く源ちゃん
ゴ〜ン
とらや茶の間
(カメラは暗い店から遠く茶の間全体を撮っている)
暗い中、茶の間と台所をカメラを引いて撮影することによって、
何か起こりそうな緊張感のある場面になっている。
みんな、寅の登場を今か今かと待っているのだ。
さくらとおばちゃんとても嬉しそうに料理盛り付けている。
こういう時間って幸福なんだよね。もうすぐなにかいいことがある。
その直前の至福ってやつかなあ。
さくらとおばちゃん、「ウフフフ」←つい、陽気になっちゃってる。
さくらとおばちゃんのこの笑い声聞いだけで、
もう切なくなってくるよ。ほんとにいいことあればいいけどね。
博工場から戻ってきて「遅くなっちゃった」
さくら「あ、おかえんなさい」
博「お、ご馳走だなあ…。これ社長から前祝だって、フフフ」っと日本酒
さくら「え〜」
ゴ〜ン
おいちゃん「見ぃろよ、この夫婦茶碗」源ちゃん物凄く気が早い(^^;)
博「おお…」
おいちゃん「源ちゃんがな、わざわざお祝いに持って来てくれたんだぜ」
へ〜っと博も手にとって眺める。
おばちゃん「それと、このウイスキーねえ、前祝だって御前様が」
御前様も寅のことになると、結構盲目的なとこあるかも(^^;)困ったァ〜!
博「へー、御前様が?まるで結婚式だなあ、ちょっと早すぎませんかね、ハハ」
『ちょっと早い』どころじゃないよ博、
柴又中誰も疑ってないよこれじゃ。おーこわ(^^;)
一同「フフフ」
タコ社長入ってきて、「はい!みなさん、おめでとうございました!」
っと両手を広げる。
さくら、照れながらも、「社長さん、お酒、どうもすいませんでした」
このようなさくらの発言聞くたびに胸が締め付けられるよ、ほんと。
やっぱり疑ってないんだね。
社長「いやーハハハ」
社長「それよりまだかい、重大発表は?」
さくら「もういいんじゃない?」
冷静を装っているが、さくらが実はその重大発表を
一番聞きたがっているんだよね。
いままで苦労したからね〜
おばちゃん「そうだねえ」
おいちゃん「社長、上がれ上がれ」
珍しく社長が座敷に上がってみんなと一緒に過ごす。
さくら「お兄ちゃん、お兄ちゃァ〜ん、ご飯の支度できたわよ〜」
社長「いよいよ、真打の登場か!」
真打(しんうち)
御神刀を作るとき、あらかじめ二本、或いは複数本作るのが昔は通例で、
その中で一番出来が良い物を『真打』(しんうち)と言い、残りは『影打』として、
死蔵したり他人に譲ったりしたそうだ。
現在は落語家の世界でよく使われ、もっとも上手な落語家に与えられる名称。
いわゆる一人前とされる肩書き。
「師匠」と呼ばれ、弟子を取ることもできるようになる。
また高座に上がる順番も最後のとりになり、大ネタを掛けられるようにもなる。
真打の昇進の際は、大がかりな披露目興行などを行う。
寅の場合、落語の「真打」と同じ使い方で待ちに待った本命の人、という意味。
一同「ハハハ」
寅の下りて来る音
社長「お!」と言って拍手。みんなも笑いながら拍手。
ここまでの長いシーンを一貫して暗い店内からのアングルで
押し通してた。ある種独特の緊張感をもたせるための演出。
ぱっと画面が変わって寅がうちわを持って
階段をニコニコ下りて来る。
みんな大歓迎 .拍手
寅「よ!博」
博「元気でやってるか」
博「なにか、就職がお決まりになったそうで、よかったですね」
さすが博、そっちのほうから入っていくか。
徐々に核心へと…って言う感じだね(^^)
寅「ハッハ〜、ありがとう、あ、どうも」と博にビールを注がれる。
おいちゃん「それじゃいいか、それじゃな、
寅の就職と健康を祝って、な、乾杯!」
一同「カンパーイ!!」
寅「どうもどうもどうも」
寅「あー、美味い!」
一同「フフフ…」
こわ〜い約2秒の沈黙
なんとなく一同また「フフフ」「ヘヘへ」
寅二コーッと笑って、うちわパタパタ
極度の緊張感がとらやの茶の間を支配
博「あの兄さん」
寅「なんだい?」
博「この度はおめでとうございます」
寅「何が?」
社長「またまたー!!ハハハ!」
さくら「ほら、お兄ちゃん、昼間お絹さんっていう人のことで
あとで発表するって言ったじゃない」
寅「え…、あ、そぉお?そんなこと言ったっけかなあ…」
さくら「ねえ、どこの人?」さっき聞いただろ・・・
おばちゃん「山陰の人かい?」
社長「島根」
さくら「あ、そうか」←この時、さくらが頭に手を当てるのがいい!
博「年はいくつですかね、年は?」
おいちゃん、力んで「美人か!?」出た!(^^;)
おばちゃん「またあんたはすぐそういうこと気にするんだから」
↑確かに!「いい女だなあ!」や「色っぽい!」やら色々言ってる。
博「おじさん顔の事なんか聞いたらまずいですよ」
おばちゃん「何言ってやがんだい大事なことなんだぞ!」←おいちゃんにはな。
おばちゃん「だいたい女っていうとすぐ美人かどうか気にするんだからね」
↑ということは、おいちゃんに気に入られたおばちゃんは美人だ。
さくら「それじゃ、話が進まないわ」
博「写真かなんかないですか、写真があるといいんですけどね」
博も『美人か否か』に感心アリ?
さくら「お兄ちゃん、島根県の人なの?、ねえ」
おいちゃん「ほんとは美人だろ!?」
おいちゃんの「美人か!?」から、おいちゃんの
「ほんとは美人だろ!」までみんながほぼ一斉に
ごちゃ混ぜで言葉を飛び交わせていた。
寅はずっと黙って、背中だけが映っているのが
なんとも可笑しかった。
社長「いや〜!ま、待った待ったァ〜!
それじゃあさ、寅さんも答えようがないよ。」と割って入る。
寅、うちわで、顔の半分かくして逃げ腰。
社長「誰か代表を決めて質問しなきゃ。代表…」
っと指で見渡して、「代表だ代表」っと博を指す。
おいちゃん「そうだ、博おまえやれ」
博「あ、そうですか…、それじゃあ僕から。。」
寅、顔隠したまま
博「まず。。、名前はなんですか?」
さくら「お絹さん」
寅「そう、絹代さんっていうんだよ」
博「あー、そりゃいい名前だなあ…」
↑悪い名前ってあるか?
おいちゃん「メモしてメモして」
寅、うちわで隠した顔からおいちゃんのほうをチラッと見る。
さくらがメモ帳をとり、おばちゃんが消しゴム付き鉛筆をさくらに渡す。
博「絹代さんはいくつですか?」
寅「そうねえ…三十五か六、そのあたりじゃないかな」
博「初婚ですか、それとも再婚?」
寅「子供が二人いるよ」
博「すると死に別れ?」
寅「…違う」寅、また顔半分隠す。
社長「じゃあ、生き別れか?」社長の大好きなネタ「離婚」「失恋」「不倫」・・等
寅「今から三年前に上方に仕事に出たまま行方知れずよ」
社長「そうかあ…蒸発っていう奴だな」
おいちゃん「よくあるやつだよ」
博、うなずく
社長「かわいそうになァ…、残った二人の子を抱えて健気に働いてるってわけか」
寅「そうよ、細い体で薪しょったり、泥をこねたり、なりふり構わず真っ黒けになって
働いてるんだ。そのくせ、人には優しい心の持ち主だからなあ…。
誰だって悪く言う人がいるわけやねえ」
一同納得して、黙る
博「兄さん…その人を幸せにしてあげなくちゃいけませんよ」
社長、頷く
寅「ありがとう」
おばちゃん「寅ちゃんにピッタリの人みたいだねえ…」
さくらほっとしながら下を向いて「うん」と微笑む
さくら、油断するな、まだ決まってないぞ…
寅「なあさくら、オレももうそろそろ惚れたハレタの年じゃねえしなァ。」
社長、頷く
寅「ここらあたりで所帯を持つんだったら、まず何よりも、さくらやおばちゃんや
おいちゃん、博にたちに気に入ってもらえる人が一番だとそう思う。
それでオレはこのことを一時も早くみんなに知らせようと思って休暇を貰って
帰って来たんだよ」
さくら「そうだったの」
おばちゃん、感無量で「よかったね、さくらちゃん。いつかはこういう日が
来るんじゃないかと夢に見てたんだよ」目がウルウル
おいちゃん「よかった、ほんとによかったよ。みんなで乾杯しよう。それじゃ!」
博「兄さんの幸せのために」
寅「ありがとう」
一同「カンパーイ」
おいちゃん「あ、そうだ、兄貴に報告しなくっちゃ」っと仏間に。
何かというと兄貴だ、「平造さんが…」とか言って死んだ親父さんのこと言うけど
死んだお母さんのことはどうでもいいのかな?長男さんには報告しないのだろうか?
社長「で、どうする?これから」
博「さくら、一度兄さんと一緒に会いにいったらどうだ?」
おいちゃん、仏壇の戸開けながら「そうだ、それがいい。そうしろ」
社長「そうだ、オレも行けるんだよ、近く大阪に行く用時があるんだから」
博「そうでしたね」
おばちゃん「社長さんが一緒だったらさくらちゃんも心強いよ」
さくら「そうね」
寅「社長、いろいろとすまねな。」
社長「いや、いいんだいいんだ。
でね、式のさ、日取りなんかはどうなってる?」
と手帳をひろげて、黄色いめがねをかける。
寅「何の式?」
博「結婚式ですよ」
寅「…?…あ、式? ああ、そんなのはまだだよ」
社長「あ、そうか結納が先か、おばちゃん、消しゴム」1ランクダウン(^^;)
さくら「絹代さんとはどんな相談してるの?そういうことは」
寅「いや、別に…」←とらや一同に暗雲が…
さくら「でも…約束はちゃんとしてるんでしょ」
社長「婚約か..」と手帳に書く。2ランクダウン(--;)
寅「約束って?」
さくら「結婚のよ」
寅「あ〜…、それは、まだだ…」
一同唖然。3ランクダウン(_ _;)
博、気を取り直し
博「しかし、なんというか、お互いの間に
暗黙の心の触れ合いとでも言うか…」
形式にこだわらず、心の内面を探る博。粘るねえ〜
寅「???なんだいそれは?」←だろうね。
社長「早い話しがさ、暗い所で手を握るとかさ」分かりやすすぎ(^^;)
寅「バカヤロウ、てめえじゃあるまいしそんなことするかい」
バシッとうちわで社長を叩く。
博「しかし、例えば、第三者を通しての
好意の確認とか…」←分からんってそれじゃ(^^;)
寅「わかんないわかんないよ」と首をふりふり
さくら「でも二人っきりで散歩くらいはしたことあるんでしょ…?」
↑もうこうなると『最低ライン』だけは確保したいさくら(TT)
寅「二人っきりで会ったことなんかないよ」
あ〜あ〜あ〜(T T;)/~~~
↑最低ラインを遂に切った・・・
博「じゃあ、なんですか、絹代さんとの
間にはなにもないんですか、まだ!?」
さすがの博も声のトーンが変わる。
寅「当たり前だろ、おまえ」←よく言うよ…
さくら、愕然として「ほんとに!?なんにも!?」
さくら超ショック。。。。(T T)
みんながついに事実を知った瞬間だった
寅「うるせえな!しつっこいんだよ、おまえたちは」
とまわりを睨みつける。
寅、社長のほう見て「なんだよ」っとそっぽむく。
間があって
社長、手帳放り投げて、「なーんだぃ、ちっ」と脱力。
↓
おいちゃん、仏壇の前で、「お粗末な重大発表だったね…」
さくら、うつむいて頭抱えている。(T T)
さくら可哀想…
寅「なんだよ、何が気にいらねえんだよ」
さくら「そうじゃないのよ、あの、絹代さんとの間にね、
もう少し進んだ話があるんじゃないかって
私たちが勝手に思い込んでたもんだから…」
そうなんだよね。超希望的観測がこの場を支配していた。
寅「だから、オレが言ったじゃねえか、まず何よりも
お前たちが気に入ってくれるかどうか
それを確かめるために帰ってきたんだって」
↑まず何よりも絹代さんの
気持ちだよ普通は!(^^;)
さくら「うん」
おいちゃん「だから、早い話がお前のいつもの岡惚れなんだろ、
そんならそれと最初から言ってくれりやあね、
別の相談だってあったんだよ。」
っと満男のおもちゃの青い刀を持って自分の肩をトントン。
おいちゃん、当たらずとも遠からず。
社長「うん、そうそう」
寅「そうそう?何だお前他人の家へノコノコ上がりこんできて
お前どこのどなた様なんだ。え?」
↑寅逆ギレ!
社長「何を言うんだよ」
寅「あっ、なんだお前さんタコか」
さくら「お兄ちゃん」
社長「タコとは何だよタコとは」
寅「何でい!」
おいちゃん「寅!お前が悪い謝れ」
寅「冗談言っちゃあいけねえ何で俺がタコに謝るの」
社長「この野郎!」
おばちゃん「寅ちゃんちょっとあんた、そら言いすぎだよ」
寅「何だよ」
おばちゃん「いつだってね、このタコちゃんは
あんたのことを」出た〜!おばちゃんワールド!
社長「タァァーコちゃん!?
おばちゃんまで俺のことをそんな!」
おばちゃん慌てて、口を手で隠す
寅「アハハハ!こらおもしれえや!」
おばちゃん「ごめんなさい」
おいちゃん笑ってる
社長「うるさいなてめえ!」社長、寅を突き飛ばす。
満男「ハッハー!」
おばちゃん「ちょっとおよしよ」
博「社長社長やめて下さい」
寅「畜生!てめえ!」っと殴りかかろうとするが
寅、博とさくらに止められる。
さくら「やめてねえやめてみんなやめてよ!
私がねお兄さんと一緒に絹代さんに会いに行くわ。
ね?お兄ちゃんそれでいいでしょ?」
おばちゃん「そうだよ」
寅「うるせいてめえなんかに世話になるかい!この野郎!」
と手をほどこうとしてさくらを押し倒す(><;)
おいちゃん「よくもさくらに手ェかけやがったな!」
寅、うちわをお膳に叩きつける!
さくら「きゃあ!何すんのよおにいちゃん」
寅「何だよ!」
博「兄さんやめてくださいよ」
おいちゃん「よっし!!」っと
おもちゃの刀抜いて3回寅に面を打つ!
みんな入り乱れての大乱闘。
博「兄さん!」
さくら「お兄ちゃんやめなさい」
おばちゃん「ちょっとあんたおよしよちょっと」
寅「あ、てめえ!結婚前の体に傷つけやがったな!
ダアアー!」
っと、刀をもぎとり一発おいちゃんに胴を打つ
寅「ダァー!」と博にも胴!
博「あっ痛っ!」
大立ち回り
寅社長の方を向き、「ダアア!」と肩を打ち、
その後おいちゃんに再度「ダアア!」 胴!
おいちゃんも鞘を使って応戦!
寅「クアア!」と羽交い絞めの博を振り落とす!
さくらとおばちゃん庭へ出ていく。
庭先
おばちゃん「ちょっと!誰かー!誰か来てよ!」
さくら、社長が廊下から落ちそうになってるのを見て、走って行って
さくら「あ!あー!ああ!あ〜!!うわあ!」
っと前のめりで社長を押さえるが落っこちてしまう。
場外転落
おばちゃん「ちょっと誰か〜〜〜!早くー!」
社長庭に落ちる。障子に穴が開く。
山陰線 車内
琴ヶ浜(ことがはま)と松ヶ鼻が見える海岸を通過する汽車。
メインテーマ曲が流れてる
寅「よ、ねえちゃんよ。カニ弁三つくれよ お茶も三つな。ここのカニ弁うまいんだよ
もっとも向こういったらよ新鮮な魚たらふく食わしてやるからな
社長、夜はいいとこ案内するよ俺開拓しといたからへへへ」
気楽だねえ〜、旅行じゃないんだからさ。さくらの気持ちも考えろよな。
車内販売員「はい」
寅「あいよ」
販売員「1,290円です」とお茶を渡す。←口を開けずにしゃべってる!(腹話術!!)
寅「あいよ1,290円ね・・」と指をなめて財布を見るが500円札しか入ってない。
さくら達を気にしながら腹巻の中を見る。←どこにもないって(^^;)
さくら、ちょっとあきれてハンドバックかからお金を出そうとすると
社長が代わりに出すと手をふる。
さくら、悪いと思い、遠慮しようとするが
社長、いいからいいからって言う意思表示。←こういう時は太っ腹。さすが。
社長「いくら?」
いつもいつも500円札しか入っていないって、普通ないよな(^^;)
今、かに寿司(駅弁)は1つ 980円
温泉津駅
寅「よ、駅長しばらく。あっ、これね、俺んちの裏の社長なんだ。こちら駅長。いつも世話になんてんだ
よろしく頼むよ、な。」
駅長さん本物だ!
社長「始めまして」
寅「あ、おい、さくらこれにいつも世話になってるからなよろしく言っといてくれ、たのむぞ」
社長「よろしくお世話様になります」と名刺を渡す←駅長に名刺渡してどうするんだ?
駅長、恐縮して敬礼
さくら「あ、どうも兄がお世話になってます」
駅長、また恐縮して敬礼(堅気の人っていい味出すよな)
寅「おいおいいいだろいいだろその辺で来い来い」
タクシーが町なかを走ってる。
メインテーマ曲流れる
さくら「静かでいい町ねお兄ちゃん」
寅「そう思うかお前」
さくら「うん」
寅「それよりよとりあえずあの旅館についてひとッ風呂浴びてくつろぐかなッ。じゃ、な・・」と指を刺して
行き先を言おうとする。
さくら「いや、でも絹代さんって言う人に会わなくちゃ」
社長「そうだよ」
寅「会う?そらまあ会ってもいいけどさいるかなあ」
寅「おおあれあれほら左手に見えるの俺の旅館よそれそれそれだよ。へへ・・
旅館『後楽』で働いていた寅。
後楽の前を通る。
向かいは『湯元 薬師湯』
ほんとうはこの後楽で番頭として働く寅のロケがあったのだ。
(芸者が通る。タクシーの寅を見て)」
芸者「寅さーん」
寅「よオ!へへへ」
駅長さんや芸者さんの反応から寅がこの町で実に
馴染んでいたことがよくわかる。
さくら「ねえ絹代さんの働いてる窯場って遠いの?」
寅「すぐそこだよ・・でもいるかなァ・・いないんじゃないかな・・いないよ」
寅すでにもうかなり弱気
タクシー窯場に入ってくる
タクシー止まる
絹代が働く窯場 焼き物の里 大窯場
社長車から出て「いい所だねこりゃあここで働いてるのか?絹代さんは」
ほんとなかなか雰囲気のある場所。ロケハンの人頑張ったね
寅、窯場の坂の上を見る
絹代の息子「ね、ねえ母ちゃん・・」
絹代「ダメダメ」
息子「母ちゃん・・」
絹代「母ちゃん疲れてんだから」
息子「ねえ・・」
絹代のテーマ流れる
絹代の方へズームイン
絹代「いつまでもグズグズ言ってる子だゃーい嫌い」
と前掛けで汗をぬぐってあげる
↑この言い方気に入りました。いつまでも耳に残る。
寅、遠くから見て「さくら、あ、あの人だよ・・」
絹代「さ、家に帰ってな」と息子に。
ふと、寅に気がつく
寅「お絹さん」
絹代、眺めて、驚いて「ああー!寅さん!」
絹代「ウフフフ!」と笑いながら背負ってた蒔を
落として急いで嬉しそうに走りよってくる!
さくらもタコ社長も絹代の過激な行動にこれは!?っと
少し驚いて見ている。
絹代「寅さん!」
寅「うん!」
絹代「あのね」
寅「うん」
絹代「主人がね」
寅「うん」
絹代「主人がおととい帰ってきたですよ!ハアハア・・
あんまり突然で私もビックリしてしもうて。
でも思うたより元気にしとうてね。
あ…、いろいろご心配かけてすみませんでした。」
と頭を下げる。
寅、一瞬「…」ちらっとさくらを見て…
寅「そうか・・そりゃ本当によかったな」
絹代「すぐ寅さんに知らせよう思うたら、なんか東京の方に
帰っとんさるとかで」
寅「うんうん、うん、あのちょっと用事きたもんだから」
絹代「ええ」
寅「あの、妹のさくらだい」
絹代「あれ妹さん。まァ…どうも」
さくら「兄がお世話になりました」
絹代「いやー、あこっちこそ寅さんには大変お世話になりまして」
寅「いやーお世話だなんてそんなもんとんでもねえ」
絹代「あもこっちには何か御用でも」
寅「うん温泉場行っていみてえって言うんで連れてきたんだけれども
何にもねえだろここは」
タコ社長、取り出した名刺をまたしまって、
まったく寅たちのほうを見ないで、
下を向き、ハンカチで汗を拭いている。
分かる分かるその気持ち
絹代「マア・・ハハ」
さくら「いい所よとっても」
絹代「アハハ・・あの、お茶でもどうぞ」
寅「いやいや」
絹代「すぐしたくしますけん!」
絹代のテーマ流れる。
さくら「良かったねお兄ちゃん…」
寅「良かった…フフ…良かったよ」なんともいえぬ寅の顔
さくら、そんな寅のことを気遣い、複雑な気持ちで
向こうに歩いていく寅を見ている。辛いね…
この絹代さんは、なぜ、こんなにも明るく笑えるのだろうか?
おととい帰ってきた3年蒸発夫をたった2日間で許し、
何のわだかまりもなく一緒に住んでいるのだろうか。
その夫が別の場所で過ごした空白の3年間を
どう思っているのだろうか?
とらや
博、電話で「そうか・・見事にふられたもんだな・・で、兄さん今何してるんだい?」
旅館『後楽』 付近 旅館 さくらの部屋
さくら「うん社長さんと夕方お酒のみに行ったヤケ酒でしょ」
遠くからドンチャン騒ぎが聞こえる
社長、さくらの部屋に入ってきて「さくらさん」
さくら「ちょっと待って・・はい」
社長「あー酔っ払っちゃったもう」
さくら「もう終ったの?」
社長「まだまだ財布とりにきたんだよ。すまないけどね家に電話してね
変わったことないか聞いといてくれよ」
当たり前だがタコ社長の家にも電話があったんだな。
さくら「はい」
寅、遠くから「社長!こら早く来いよ 何してんだよ」
社長「ああ!今行くよ!」
さくら「すいませんね」
社長「覚悟してます今夜は」
社長優しいよね。何だかんだ言っても心が大きい。こういうとこ大好き
寅「早く来いよおい!飲むぞー!今日は夜明し飲むからな」もうそうとう出来上がっている。
寅、いい飲み屋を開拓したって言ってたけど
まさかこんな使い方をするとは…
さくら「聞こえた?」
博「うん大体想像はつくよそれで明日帰るのかい?」
列車の汽笛「ピーー・・・ゴトゴト・・」
博「それじゃあこっちで時間調べて迎えに行くよ。うん、気をつけてな」
おばちゃん「やっぱりダメだったのかい…?」哀しい.…
博「社長に借りが出来ちゃったなァ…」
おばちゃん満男に服着せてる。
おばちゃん「ハァ・・・」(T T)
とらやさん、源ちゃんの夫婦茶碗どうするんだろう…
温泉津 旅館『後楽』 付近 早朝
雀の声が鳴いて、薄く霧がかかってる。船のエンジン音
さくら寝ている。←さくらの寝顔は珍しい!
倍賞さんって寝る演技も上手い!!
なかなかこういう風には寝れませんよ。
置手紙。亀の置物で止めてある。
『さくら、俺は一足先に旅に出る。お前気をつけて帰れよ。
わざわざ遠くまで引っ張り出してわるかったな 兄より』
簡単な言葉だが寅の気持ちが伝わってくるね。(T T)
温泉津駅 ホーム
社長「しかし絹代さんって人よさそうな人だったな
あんな人が寅さんの嫁さんなら(アーア・・・とあくび)
さくらさんも安心なんだろうなァ・・・アーア・・・」
さくら「疲れたでしょうごめんなさいね社長さんには何と・・・」
社長「それを言うなって大阪にどうせ用があるんだから
もともと俺だってそう期待はしてねえんだよ」
と錠剤を飲む(二日酔いの薬か胃腸薬?)
社長って、心が温かいね。どうして博がこの社長の工場を辞めないのか分かる気がしたよ…。
駅向こうの中学校の校庭からブラスバンドの演奏が聞こえてくる
ドイツのマーチ「旧友」を演奏。
マーチを100曲以上作ったドイツのカール.タイケが作曲
『旧友 Alte Kameraden』と名づけられたこの曲は
彼が25歳の時、1889年の楽曲。
行進曲《旧友》は、タイケの代表作であるだけでなく、
世界的に最も有名なドイツの軍隊行進曲だ。
日本でも野球中継や、パレード、コンクールなどで頻繁に使用される。
第38作「知床慕情」のラストにもこの『旧友』は使われている。
岐阜第一高校のブラスバンドが演奏し、行進していた。
さくらぼんやり黙って見ている。
さくらがじっとブラスバンドを見ている横顔が長く映し出される。
列車が入ってくる。
列車に乗る直前にもさくら、ブラスバンドの音楽をちらっと見る。
発車の合図「ブゥーー・・・」
ブラスバンドの演奏が続く
さくらはなぜ、ブラスバンドの演奏をあんなにも見、そして聴いていたのだろうか。
柴又でのすったもんだの大騒動のあげく、タコ社長にも手伝ってもらっての、
温泉津入り。そしていきなりの失恋。寅の置手紙。
過去、色々な場所に寅を迎えに行き、気疲れしたさくらだが、このような失望感を
感じて現地を離れることはなかった。
心の置き所がないのは寅ばかりではない。さくらも今回ばかりは心をどう整理して
いいのか分からないのである。
なにをやっても上手くいかない兄の恋愛。虚脱感を伴ないながら空白の時間を
さまよう心にふと、拙いが穢れのない子供達の演奏が入ってくる。自分もその
幼き日々、音楽が好きで、歌うことが好きで、無心に好きなことだけを考えていた
時代があったことがふと蘇ってきたのだろう。兄のこと、自分たちの幼き日のこと、
かつての自分の夢、そのようなものがあの音とあの子供達の姿ともに頭の中を
駆け抜けていったのかもしれない。そして、僅かだが心が潤い、慰められて
いったのだろう。
これがプロの演奏ではダメなのである。
無心で演奏する子供達だからこそ心に入り込んでくることもあるのだ。
あのしばしの空白の時間はさくらには意味のある時間だったと思う。
俯瞰は浅利海岸
その後
石見福光の海岸
温泉津を出て『釜野』と『福光』の
間にあるトンネルを抜けると
石見福光(いわみふくみつ)の美しい浜辺に出る。
絹代のテーマ曲ゆっくり流れる
福光海岸の波打ち際で海をぼんやり見ている寅の横顔が寂しい。
海沿いの寂しい道を歩く寅
益田市 大浜 大日霊神社
大日霊神社(おおひるめじんじゃ)と読む。
大浜港の西へ突き出た亀島の頂に祀られた神社である。
『大浜はその昔、先祖により良港として拓かれ、
里や漁の安全を祈って約1300年前に創立された宮。
参道の階段は当時から「宮ヶ段」と呼んでいた。
波浪や災いが起きたとき、亀島の頂きが煌々と光り、
これを頼って船を漕ぎ出すと皆が救われたという。
ある夜、偶々亀島頂上が光っていたので行ってみると、
頂きには一面の霊鏡があり、これを奉った。』
大日霊神社 縁日での啖呵バイ
ピンク色のうさぎ型の風船が空に飛んでゆく。
お面が売られている。
花火
寅、傘を売っている。
寅「泥棒の始まりが石川の五右衛門ならバクチ打の始まりは
熊坂の長半ね!どう!
続いた数字が二だ!日光結構東照宮、憎まれ小僧が世に
ハバかる、日揮の弾正お芝居での憎まれ役!
ねっ!はい!まかった数字が三だ、ほら、ね!」
寅「三三六歩で引け目がない産で死んだか三島のお千
お千ばかりがおなごじゃないよ京都は極楽寺坂の門前で、
かの有名な小野小町が・・・」
遠くに蒸気機関車が煙をモウモウと出しながら走っていく
山口線は今でもSLを走らせていることでも有名。
囃子や太鼓が響く。
益田市 安富橋 (吊り橋)
長い長いつり橋 を寅がゆっくり渡って行く。
この吊り橋は長い間飯田吊り橋だと思っていたが
私のサイトをご覧になっている「さすらいのサラリーマン」さんからの
ご連絡で「安富橋」であることがわかった。
現在の安富橋
ちなみに飯田橋は↓。 コンクリートの柱の上部デザインが違う。
津和野
津和野町(つわのちょう)島根県の南西に位置し、津和野藩城下町。
SL山口号の終着駅のある町で、美しい町並みで有名
津和野川に掛かる橋の上を列車が通っていく。
味自慢 御食事所 食堂 すさや
殿町通りのすぐそば
うどんを食べる寅の寂しい背中
店のおばちゃん「はい お茶」
おなじみ谷よしのさん
うなづく寅「うん」
テレビから流れてる桜田淳子の『三色すみれ』
この歌は桜田淳子の初期の中ではしっとりとした歌。
三色すみれ
作詞:阿久悠、作曲:中村泰士、編曲:あかのたちお
1974年2月25日発売。
手を出せば散りそうなそんな花びらを
大切に胸に抱く愛の三色すみれ
忘れませんあの日のこと
はじめてのくちづけにめまいがしたわたし
そして聞いたあのささやき
「この花の思い出は二人だけの秘密」
「この花が届いたらすぐに駈けておいで」と
何日か過ぎたのに届けられないの
待ちこがれ泣いている愛の三色すみれ
忘れたのねわたしのこと
いじらしい片想い誰に言えばいいの
信じてるあの約束
「この花は君のため咲いている」と言った
「この花を見かけたら思い出す」と言った
忘れませんあの日のこと
はじめてのくちづけにめまいがした私
そして聞いたあのささやき
「この花の思い出は二人だけの秘密」
「この花が届いたらすぐに駈けておいで」と
なると巻きを箸で「ペッ」っと端に寄せる。
嫌いなんだねえネリモノと渦巻き模様。
店先から女性(歌子)の声、店の中に向かって「こんにちは」
寅、箸を持った方の手でそのままお茶を飲む
歌子寅気づかず、寅の後ろを通り過ぎ調理場へ向かって
歌子「こんにちは、図書館の鈴木ですけど」
店のおばちゃん、調理場から声だけの出演 「はーい、なんかね?」
歌子「いつもすいませんけどこのポスター表に貼らして下さい」
寅、近くでちょっとうるさいと思いながら、
しかし、どこかで聞き覚えのある声。
寅、ふと食べる動きが止まる。
店のおばちゃんまたもや声だけの出演
「はーん、どうぞどうぞ、今度のはなんかね?」 この声は谷よしのさんの声ではない!
歌子「文化講演会なんです。お店の中にも貼っていいかしら?」
寅、歌子のほうを何気なく見る。
はっとして…
あの懐かしい面影がそこに。
店のおばちゃん調理場からずっと声だけ
「どうぞどうぞどこへでも貼ってゃんさい」
この声はネイティブな方言なので
津和野での撮影時に「すさや」さんで
店主のおばさんに声だけエキストラ出演でやってもらったんだろうね。
出演しているのは谷さんだけど声は現地の人。
歌子、店を見渡そうとして、寅に目が行く。
じっと見つめている寅。
寅を見つめる歌子。
しばし、見つめ合う二人。
寅、だんだん確信と喜びの表情に変わっていき、
遂に、寅「はー!」
と、笑って歌子を見る。
歌子、微笑み、感動を押さえきれないようすで、
目をじっと合わせたまま静かに横に座る。
寅、満面の笑みで、軽く唾を飲み込み
寅「歌子ちゃんじゃねえかぁ」
歌子、静かに,優しく 「寅さんね…」
寅、最高の笑顔で「うん」
歌子、信じられない顔で、そして感動しながら
歌子「どうしたの?どうしてこんなとこにいるの?
歌子は微笑みながらも寅への視線は眩しいほど強い。
会いたかったのだろう。誰よりも寅に会いたかったのだ。
寅「どうしてって、オレは旅の途中よ」
歌子「私、びっくりした…」と感極まり、泣いてしまう。
「私、びっくりした…」
歌子にとって寅は自分の人生の扉を大きく開けてくれた
大切な人。忘れるわけがない。そして今歌子は更に人生の
大きな岐路に立たされているのだ。
この涙は、彼女の今背負っている悲しみの重さが暗示されていて
とても切ないシーン。
寅はこの時点で歌子の涙のわけは知らないで、懐かしさでいっぱい。
店のおばさん、「ごめんなさい」と横を通って出前に行く。
寅「あー…、そうかあれからもう2年にもなるかぁ〜」
歌子小さな声で「そうね」
寅「うん」
寅「ずっと元気だった?」
歌子「ええ」
寅「あれ…?多治見にいたんじゃなかったの?
なんでまたこんなところに?」
歌子「ここね、」
寅「うん」
歌子「彼の実家があるの…」声が静か
寅、うどんつつきながら
寅「あー、そうかそうかそうか歌子ちゃん、
あの、芸術家の青年と結婚したんだったっけな」
歌子頷く
寅「で、どう、彼と仲良くやってるかい?」
歌子、下を僅かにむいて「…」 (カメラは歌子の斜め後ろ)
寅「ん?」
歌子の顔が映って
歌子、寅を見つめて、そして下を向き
小さな声で「彼ね…」
寅、ニコッと笑って「うん、彼、どうしたぃ?」
歌子「死んだの……去年の秋…病気でね」
寅の背中「…」
歌子、寅を見て僅かに微笑み、そして下を向く。
下を向いた歌子の顔は深い悲しみの色
歌子のテーマ流れる。(『去年の秋…病気でね』のセリフと重なるように)
長い沈黙
カメラは食堂の窓の外、高い位置から遠く撮っている。
窓から小さく映る黙ったままの二人。どう声をかけていいか
分からないで、ただ気持ちだけ寄り添う寅。
地味だがとても印象深いシーン。ショックを受ける寅のアップを
狙っていかないところが山田.高羽コンビらしく、味わい深い。
近くの労働者たち入ってくる。
「こんちは!おばさん、…おらんのかいね、お茶貰うで」
美しい町並みの向こうに津和野カトリック教会の屋根が見える。
ゆったりと歌子のテーマが流れ続ける
元津和野藩の藩校「養老館」内にある町立図書館
寅、その入り口前で歌子を待っている。
殿町通りに面して藩校養老館がある。。門の左側は元の剣術道場で、民俗資料館.
門の右側は元の槍術道場で、今は歌子の勤めている町立図書館(2万4000冊)
歌子「お待ちどうさま、早びきさせてもらっちゃった。」
自転車を押して寅と一緒に出てゆく歌子
藩校横のお堀を大きな鯉が悠々と泳いでいる。
津和野川のほとりのベンチに座っている寅
歌子、しゃがんで当時のことを話す。
歌子「多治見のお医者さんは入院させた方がいいっておしゃったんだけど
彼がどうしてもいやだって言い張って、何度もそのことで喧嘩してるうちに
お金は無くなるし、病気はどんどん悪くなるし、たまりかねて、実家に手紙出して、
来てもらって…、無理やり汽車に押し込むようにして…この町の病院に
入院させてね。すぐ手術したんだけど…手遅れだったの…
歌子、タンポポの種を「フッ」っと息を吹いて飛ばす。
寅、じっと聞いている。
歌子「お医者さんは好きなようにさせたほうがいいって言うし、退院させてね、
彼が子供の頃から暮らしていたお部屋を、病室にしたの…。
庭先に大きな柿の木があって、あの柿の実はとっても甘くて美味しいから
一番先に歌子に食べさせるんだって…、そう言ってたんだけど、結局…
その柿の実がまだ赤くなりきらないうちに…(嗚咽に変わっていく)
寅「あんたも辛い思いをしたんだねえ…」
歌子泣き続ける。
川の向こうから幼稚園児たちが「めだかの学校」を歌いながら橋を渡ってくる。
「♪めだかーのがっこうはー、かぁーわーのーなかー。
そーっとのぞいてみてごらん。そーっとのぞいてみてごらん。
みんなでおゆうぎしているよ。みんあでおゆうぎしているよ〜」
見るともなくそれらの風景を見る寅と歌子
寅、歌子の横に並ぶようにしゃがんで、
寅「それから、この町に住むようになったんだね」
教会の鐘が鳴る。
歌子「一度は東京に帰ろうかと思ったんだけれど、色々みんなに
お世話になったりしてそうもいかなくってね…。
それに…正圀さんのお墓もここにあるし…」っと立ち上がる。
ところで…
おっと!スタッフの録音マイクが!端っこに映ってる〜〜〜〜〜(TT)
お宝映像でした(^^)
丘の上にある津和野のバス停
津和野交通(小郡−津和野)
トンビが『ピ〜ヒョロロ』っと鳴いている。
眼下に町や鉄道が見える。
ゆっくりと歌子のテーマ流れる。
ガードレールに軽く腰をかけている寅
歌子、そっと寅を見、
そして少しまた下を向き…
歌子「寅さんに会えて嬉しかった…。とっても嬉しかった。」
歌子の発言は柴又慕情の時からいつも真剣。
常にギリギリの心で真正直に生きているから言葉に気持ちが入る。
だからこそこの何気ないこの言葉に胸が締め付けられる。
沈黙の後
寅「オレ……もしなんだったら…この町にあと2、3日
泊まってってもいいんだけどなあ…」
寅は歌子の気配から彼女が自分を今必要としていることを
察したのだろう。寅にとってはとても思い切った言葉だった。
歌子、首を振りながら「いいのよ、」
寅「え?」
歌子「私のためにそんなことさせちゃ悪いわ…」
この言葉のニュアンスは「ほんとはいてほしい」と
いう感じ。寅は、このことを分かったのだろうか。
歌子「寅さん旅の途中なんでしょ?…」
寅「…」
歌子「これから山口へ行って…、それからどこへ?」
寅、ゆっくりと「うん、まあ、山陽路から、
広島、呉、三原、尾道。」
歌子うなづく
寅、ちょっと上を見上げながら「それから、取って返して、
下関、小倉、博多、唐津…」
歌子「いいわねえ…、私もそんな旅したいなあ…」
歌子の「いいわねえ…私もそんな旅したい」という言葉は哀しかった…。
この渥美さんのセリフ、ただ単に地名を言っていくだけなんだけれど、
この時のセリフ回しと表情は強烈に印象に残っている。誰もが憧れる放浪の旅。
しかし、寅の孤独もその中に見え隠れしている。渥美さんは、あの短いセリフの中に
見事にそれを表現していた。この何気ないセリフは、ある意味このシリーズの
名セリフのひとつだと思う。短いが『寅のアリア』のひとつと言ってもいい。
歌子は閉塞感を抱えている。そのことを無意識に訴えている。
もちろん歌子の表層意識には表れていないので、
歌子自身にはっきりとした自覚はないかもしれない。
路線バスの警笛が聞こえて来る。遠くにバスが見える。
歌子、バスを見て僅かに怯えた目をする。
しかし寅には見えない。
あの目を見るたびにこの時の彼女の決定的な孤独を
感じる。なんとも哀しい目だ。
寅もあまりにも名残が惜しい。これでいいのか、このまま簡単に
別れてしまっていいのか、という思いでいっぱいになる。
寅、思い切って聞く。
寅「歌子ちゃん」
歌子「え?」
寅「今、幸せかい?」
歌子、言葉に詰まりながら
歌子「…ええ」と頷く。
寅「なにか困ったことないかね」
歌子、かなり間があって
歌子、下を向き、「いいえ…」
歌子のこの返答も何かを訴えかけている。
空気を読むのが天才的に上手い寅だが、
突然のことでいろいろ躊躇してしまっているのだろう。
自分がここに長居することで迷惑が歌子にかかるかも
しれないとも考えてしまっているのだろうか…。
バスが目の前にやって来てドアが開く。
歌子の目が、寅に何かを
訴えかけているが、寅は気づかない…。
いや、気づいているがどうすることも出来ないのだろう。
ドアのところで
寅「もし何かあったら葛飾柴又のとらやに
訪ねて来な、悪いようにはしないから」
歌子、顔が少し明るくなり、しっかりと頷く。
この寅の言葉が
歌子の運命を大きく変えていく。
自動扉が閉まって、バスが歌子から遠ざかっていく。
いつまでもいつまでも手を振り続ける歌子。
それに答えるように寅もバスの最後部から手を振り続ける。
姿が消え入りそうになってもまだ手を大きく振る歌子のその
心は寅の心に突き刺さったはず。
点のように小さく見える歌子の姿はあまりにも寂しく、哀しげだった。
この長いシリーズの中でも屈指の名場面のひとつだと思う。
寅はこの時、歌子の内なる願いを完全には読み取れなかった。
やはりそこには夫を失ったばかりの歌子への遠慮があったのだろう。
しかし歌子は人生の大きな岐路に立っている。
最後は、寅がいようがいまいが自分の決断で飛び出すしかないのだ。
大切なのは最初の第一歩。見る前に飛ばねばならない。
あの「柴又慕情」での、正圀との結婚を決めた題経寺の夜のように、
最初の第一歩をもう一度自分で決断するしかない。
それは、さくらも博も、寅でさえ関与できない、厳しい人生の決断なの
だろう。
しかしそれでも、何かのきっかけは必要だ。それが寅のあの言葉
「もし何かあったら葛飾柴又のとらやに訪ねて来な、悪いようには
しないから」だった。真っ暗な部屋にほんの少し光が射した瞬間だった。
夕暮れ時 正圀の実家
歌子自転車を降りて、伝統的な民家(酒蔵)に入っていく。
ここは津和野の古い酒蔵さん
ロケは古橋酒造さんと橋本酒造で行なわれた。
この酒蔵さんへはわが寅友の小手寅さんが2012年10月に未踏峰登頂されている。
詳しい内容は小手寅さんのHPに。
男はつらいよ 関西のロケ地巡り
http://kotetora.sakura.ne.jp/
歌子「ただいま」
テレビ「昨日朝鮮の北部にあった高気圧は今日は移動性となって中心を…」
歌子「遅くなりました」
姑「おかえり」
歌子「お義姉様は?」
姑「和子は婦人会があって遅うなるけえ、晩ご飯のしたくはあんたにして欲しい
っと言うとりましたよ」
歌子「はい」
姑「3時ごろ、図書館に電話をしたら、あんた早引きしたそうやの…
歌子「ええ」
歌子の部屋
イタリア、中国などの国を紹介したシリーズ本
在りし日の正圀と歌子の写真、
エプロンをして台所に向かう歌子
姑さんが夕飯を作るってことはしないのだろうか。自分も食べるんだから、
歌子が帰ってくるのを待ってないで自分がすればいい。ちょっと
因習を感じる。この場面を見る限りでは歌子は息苦しそう。
それにしてもどうして夫の四十九日が終った後もずるずると夫の実家に
残っているのだろうか?それなりに大きな子供がいて自分自身も
何年も夫やその実家の人々と暮らして来たのであれば話は別で、
そのまま住み続けることもよく分かるが、歌子と夫はわずか1年ほど
結婚生活を多治見で送っただけで、津和野の夫の実家とは、この1年
ほどの仲。この縁が薄い家でこの先、まだ若い歌子が何年も暮らして
いくなんてことは、極めて不自然だと思うのは私だけだろうか?
歌子は、「みんなにお世話になったから、東京に行くわけには行かなくて…」
というようなことを言っていたが、子供がいないのに、歌子がこの家に残って
お互いになにがいいのだろうか?ひょっとして、この実家の方々って、
歌子を「便利な労働力(お手伝いさん)」として見てる部分が少しあるのだろうか?
柴又参道
竹やー竿竹ー竹やー竿竹ー
とらや 茶の間
おばちゃん「ねえ社長さん知ってる?松の湯の一番上の娘さんさ旦那さん死んだんだって?」
社長とおいちゃん将棋を指してる社長完璧に知ってる顔でうなずく
社長「そうなんだよね子供二人抱えてね」
おばちゃん「ねえ〜あんなきれいな人がさー」
社長「色白でどこか不幸せな感じで寅さん好みだねあの娘も」
さくらちょっと振り向く。
社長「どうかね寅さんとこれ悪い話じゃないよあの娘なら寅さんきっと気に入るよなあ竜造さん」
おいちゃん「バカ!こっちが気に入るかどうかじゃないんだよ。
向こう様が寅を気に入ってくれるかどうが問題なんだよ」
↑もう何度か出てきたし、このあとの作品でも時々出てくるセリフ。
大抵はおいちゃんが言うけれど、時々寅本人が言うこともある。
社長「なるほど、そらそうだな・・へへ」
おいちゃん「王手」
社長「あ、ちょっとまった」
おいちゃん「待ったなしってさっきお前言ったじゃないか・・・」
社長「今別の話してた・・」
踏み切りの音チンチンチン・・・ガガガ・・
さくらふと店先を見る
さくら、寅に気づいて、思わずじっと見つめる。
さくら「お兄ちゃん…」
寅、小さく「よお、さくら」
寅「よぉ、さくら」
さくら喜んで「はァ!おいちゃんおばちゃんおにいちゃん帰ってきた!!」
社長「ええ!?本当かい!?」
おばちゃん「あら、お帰り」
おいちゃん「よお寅お帰りー」
さくら「お帰りなさいお兄ちゃん」
おばちゃん「どうしたんだいえー?」
おいちゃん「へへへ・・」
おばちゃん「しょんぼりそんなところに座り込んじまって」
おいちゃん「寅、少しやつれてんじゃないかい?」
社長「顔色もよくないぞ」
さくら「ほんとどこか具合でも悪いの?」
寅「おばちゃん」
おばちゃん「ん?」
寅「すまねえが…水をいっぱいやってくんねえか」
おばちゃん「あ。悪かったね気づかないで」と調理場へ急いでいく
さくら「ね、お兄ちゃん何かあったの?」
寅「今日は何日になるんだろうなぁ…」
さくら「ね?」
社長「25日だ」と腕時計を見る
さくら「25日。5月の」
寅「そうか…あれからもう10日もたってるのか」
結局寅は、博多、小倉、唐津あたりは行かなかったんだね。どうもこうも歌子のことが
気になってしょうがなかったに違いない。
おいちゃん「あれから・・?」
おばちゃん「はいよ」と水をコップに注いで来る
寅「ありがとう」
音をたてて水を飲む
ヅッ・・ヅッッ・・ヅッヴ・・ヅッ…ク・・ゴクッ
寅「はァ〜」 コト…。ガクッと下を向く
寅「・・実はなさくら」
さくら「うん」
寅「歌子ちゃんに…会ったよ」
さくら「歌子ちゃん?・・!まアー」
社長「誰だい?歌子ちゃんって?」
おいちゃん「豆腐屋の娘だろ」 寅、露骨に嫌な顔(^^;)
おばちゃん「ちがうよあれは節子さんだよ
さくら「歌子ちゃんてのはね・・」
社長「わかった津軽の娘さん」
さくら「あれは秋子さん」
↑さくら、それはないよ。花子ちゃんは何日もとらやで暮らし、
最後はさくらも津軽に会いに行ったじゃないか。
あれだけ縁があった娘のことは普通は間違わないよ。
おばちゃん「ちがうよ、秋子さんは幼稚園の先生だよ」
寅、話が噛み合わないので嫌がっている(^^;)
社長「ごめん花子ちゃんだ津軽の娘は」
寅、いつまでも歌子ちゃんに辿り着かないのでイライラ(^^;)
おいちゃん「うるせえな名前なんかどうだっていいじゃねえか
ようするに寅の惚れた娘のことだろ・・そうだろな、寅な」
寅、ドン!とテーブルを叩いて
寅「なんていう言い方をすんだよ情けねえなおいちゃんは本当にィ〜」
さくら「ごめんなさいねお兄ちゃん・・あの歌子さんてさ、ほら、
小説家のお嬢さんでお父さんが結婚をどうしても許してくれなくて
とうとう家飛び出しちゃった人」
一同「あ〜・・」
忘れな草でも「春子先生」のことをおばちゃんが「秋子先生」と
言っているのを誰も訂正していなかった。そして今度はさくらにまで
言わせ、おばちゃんもそのまま。山田監督はどうして繰り返し
『春子』を『秋子』に変えたいんだろうか?考えられる最大の理由は
あまり厳密にしたくないということなんじゃないだろうか。なんだか
よく分からない理由だが、なんとなく曖昧にしたいんだと思う。
寅「そうなんだよさくらおらその歌子ちゃんにバッタリ出会ったのさ」
さくら「どこで」
寅「津和野の町でよ」
おばちゃん「津和野・・?」
社長「え??津和野って何県だ?」
シュミレーション: 「島根県」「島根県というと…?」
「山口の隣だよ」「山口っていうと…?」「島根の向こうだよ」
っとなるのは目に見えているので、おいちゃんすぐに止めに入る(^^;)
おばちゃん首をふる
おいちゃん「タコ黙ってろバカ!」
さくら「で、歌子さん元気だった?」
寅「それがな。」
寅、さくらの手をとり、座らせ
寅「さくら驚くなよお前」
さくら「うん」
寅「歌子ちゃんの亭主な。去年の秋に・・死んだよ」
さくら「えーッ」
一同 驚く…
社長「亭主って何してた人?」
おいちゃん「タコはタコ壷に入ってろよお前がいたんじゃ
話が進まねえんだよ!」
社長「・・・!!(怒)」と、裏の工場(タコ壺)へ戻る(^^;)
裏庭
工員A「社長、寅さん帰ってきたらしいですね」
社長「・・そうらしいね(憎)」
と思いっきり板戸を蹴る。
工員B「あ!イタッ!!」
工員C「へへへッ」
社長「今は休み時間か!」
工員B「チェッ!」っと板戸を蹴る。
工員C「イテッ・・クッ」
社長「もたもたしてるな早くしろ!」
とらや
寅「オレァ心の冷てェ人間よ なぁ、さくら。
薄情者といわれようと人非人(にんぴにん)と
言われようと仕方がねえよ」
↑人非人(にんぴにん)って…(^^;)
(1)人であって人でない者。ひどい仕打ちや悪事をする者をののしっていう語。人でなし。
(2)人でありながら人と認められないもの。
「此一門にあらざらむ人は皆―なるべし/平家
1」
さくら「どうして」
寅「だってそうじゃなえかあの歌子ちゃんはな大切な亭主にも
死に別れて意地の悪い姑ババア(おばちゃんを指差す寅)
↓
と陰険な小姑(さくらを指差す寅)にはさまれて
↓
不幸せな日々を過ごしているんですよ。
その歌子ちゃんを俺は津和野の町にたった一人ぼっち置いて
来ちゃったんだ。あーあー…あの子はオイラを怨んでるだろうな
『心の冷たい人ね私がこんなに助けてと
手を差し伸べているのに、にっこり笑って
バスで行ってしまったわ 』
心の冷たい人ね…
そうじゃねえんだよ歌子ちゃん。オレだってどんなに傍にいて
やりたかったか・・。
オレだってどんなに…
『ねえもっと傍にいて…』なぜ一言そう言って
くれなかったんだよ・・」
自分の妄想に完全に入り込んでいる。あかんわこりゃ(^^;)
おいちゃん「寅、少し疲れてるんじゃねえか?」重症だよ、(^^:)
さくら「そ、そうね、とにかく二階行って少し休みましょう」
おばちゃん「そうだね」
おいちゃん「そうしようそうしよう」
寅、おばちゃんとさくらに抱きかかえられながら奥へ
寅「あ、ありがとう・・しかし俺がこうやってみんなに優しくされてる時に
ああ、あの歌子さんは…」 こりゃ大変だ ┐(-。ー;)┌
さくら「わかった、その話はまた後でね」
おばちゃん「今ね、温かいおうどん作って持ってってやるからね」
おいちゃん「卵を2つ落としてな」←芸が細かいおいちゃん
寅「ナルト巻き要らないよ。あの渦見ると目が回るから」
おばちゃん「わかったわかった、あのじゃ鳥のダシにするから、ねッそれならいいだろ」
おいちゃん「は〜あー…」
題経寺の鐘
ゴォーン
源ちゃんが打ってる。
とらや二階 寅の部屋
寅、窓を見ながら「ハァ・・」
題経寺の鐘 ゴォーン
とらや 茶の間
満男下向いてなんかして遊んでいる。
博「歌子さんも大変な苦労をしてる訳だなあ・・」
おばちゃんさくらから晩ごはんのおかずを受け取りながら
おばちゃん「でも旦那様の実家ってのは大きなお家なんだろう?」
おいちゃん「そりゃそうだよ食うや食わずってわけじゃねえんだから
そう言う意味じゃ・・幸せかも知れねえよ」
おばちゃん「大家の若奥様で納まっていられるものね」←甘い!
おいちゃん、おばちゃん、それは変だよ。歌子ちゃんの夫は
もう死んでいるんだよ。それも結婚後たった1年で。
若奥様どころの話じゃないよ、この場合。
苗字を元の高見に戻すかどうかはもう少し先で考えるとして、
とりあえず半年以上経ったんだからその家を出た方がいいに決まってるよ。
博「いや、食うに困らないからと言ってそれで歌子さんが幸せかと言うとそれは違いますよ」
おばちゃん「おや、どうして」
博「つまり女性としてと言うかあるいは人間として生きていく張り合いとでも言うのかなあ・・
それが歌子さんにとってなんなのか」
さくら、トマトを持ってきながら、「ほら、日本には未亡人なんて言う嫌な言葉がるじゃないの」
おいちゃん「ヘッヘエェ・・・未亡人サロンってやつかァ〜」
さくら、キッと睨んで「おいちゃん」
おいちゃん下品 ┐(-。ー;)┌
博「歳を取った人ならともかくまだ若い歌子さんがそんな肩書きを付けられて
今の時代を人間らしく生きていくって言うのは大変ですよ」んだんだ(− −)
さくら「そうねえひと事じゃないわねえ・・」
おいちゃん「だからと言ってさ寅がいくら心配したってどうにもなるもんじゃないだろうそりゃあ」
博「そんなに心配してましたか」
おいちゃん「してましたかなんてもんじゃないよ。
げっそりやつれちゃってさ
エラなんか、こう出っ張っちゃって、なア」
とおばちゃんの方を向く
おばちゃん「ああ言うのを昔は恋やつれって言ったんだよ」
出ましたタイトル!
博「恋やつれか・・・なるほどねえ・・」
しかしほんとは今回の寅はただの恋やつれではないんだけどね。
歌子に対して何の力にもなれなかったことへの後悔や自分への叱責も
含めた感情。もちろんあの美しい歌子ちゃんの面影が忘れられないってのは
大きいけど。
おいちゃん「しかし考えてみれば羨ましい話だぞォ。できる事なら
恋でやつれてみてえよこっちも」
↑おいちゃんの本音。寅さんフアンたちの本音(^^;)ゝ。
「忘れな草の」リリーの本音でもある。
さくらに結構受けている。「フフフ!」
一同「ハハハ・・!」
おいちゃん「お前ン所の社長なんかどうだ、え?税金やつれじゃねえか
可哀想にお前・・」またの名を「税務署やつれ」
博笑いながら「僕は労働やつれか」とトマトを食べる
おばちゃん「ハハハハ・・あたし達はお団子やつれハハハ・・」
↑なんか楽そうな『やつれ』だな(^^;)
おいちゃん「さくらは兄ちゃんのこと心配して寅やつれ」
おばちゃん「上手い上手い!ハハハハハ!」
一同大笑い
さくら、手で口を押さえるほど笑ってる
寅がカバンを持って階段を下りてくる。
さくら足音に気づき振り向いて
さくら「ねえ、どうしたカバンなんか持って?」
おばちゃん「あ、あの晩ご飯、晩ご飯だよ。さァ・・」
とら「・・・他人の不幸をあざ笑うような家庭で飯なんか食えるかい!」
博「兄さん僕たちはそんなことでしてたん・・」
寅「黙れ!!労働者やつれに何がわかる!
オレは行くぞ!」
さくら「お兄ちゃんどこ行くの?」
寅「津和野よ」
さくら「津和野?」
寅「二度とここへは帰ってこないよ。津和野のどこかの町外れで
俺はあの不幸せな歌子さんの生涯を
見守って暮らすつもりだ」相変わらず極端だねえ〜(^^;)
さくら「お兄ちゃん・・・」
寅「これが一生の見納めだぞみんなもここらで心改めて深く反省して
まともな人間になってくれ! あばよ!」何度言ったことか(^^;)
寅店先へ
さくら「ね、お兄ちゃん」
電話リリリ−ン リリリ−ン
さくら、後ろから前へ出て寅を引きとめようとするが寅振り払って出て行く。
おばちゃん「はいはいとらやでございます。
あ、えッ!?歌子さん!?」
おいちゃん「エェッ?」
おばちゃんさくらに「歌子さんからだよ!」
さくら受話器を取ろうとするが、はっ!として、
寅を呼び戻しに道に出て叫ぶ。
さくら「お兄いちゃあ〜〜ん!!
歌子さんから電話よォ!」(手を口に当てて叫ぶ)
おばちゃん「あ、ちょっとお待ちくださいまし・・」
さくら、
必死で手招きをし、\(*0*; \)
前を通り過ぎるお坊さんに静かに2回お辞儀。( _ _ )
もう一度必死で手招き。\(*0*; \)
このさくらの緩急のリズムいいねえ〜
寅,ドドドドドド!!と超スピードで
転がるように戻ってくる。ε=ε=( *゜0゜)
さくら、店先でかばんを持とうとするがそのスピードに
ついていけず受け取りそこなう。惜しい!!
寅、さらに店先から電話口まで怒濤の
つっこみ!
受話器持ってた重たいおばちゃんも
ドーン!っと押されて彼方にふっとぶ!(><;)
予告編ではさらにおばちゃん
ふっとばされていた。
寅、すばやく受話器左手で握って
寅「アッ・・ハアハアハア・・もしもし、もしもし うん 歌子ちゃん?
この時渥美さん電話を左手で受け取り、話しながら
右手に持ち替える。このアドリブは心の高揚が出ていて実に上手い!
左 右
→
予告編では持ち替えずに最初から右手。
は、オレ、オレ寅です。
いや―ァア よく電話をしてくれたねえ・・うん、
いやね、あれから別れちゃってさ、とっても気にしていたんだよ。
うん・・うん?今、うん
柴又の駅・・・(立ち上がって)柴又の駅ィ!!?
駅に来てんの!?何で早くそれを言わないんだよ!
行こ行うか行こ行こうか!?オレ迎えに、
え?うん。いや・・ハ・・ホラ、あそこ真っ直ぐ来て
スッと右、右、行こ行こうか!?
来る?来られる、うん、じゃ、ほか寄らないで
まっすぐ来て、はい、うん!」と受話器を置く。
寅「さくら!歌子さんがもうすぐここへ来るってよ!」と指を指す。
寅の思いが通じたのだろうか、それとも歌子の思いが
通じたのだろうか。縁とはこんなものかもしれない。
こんなに寅が喜んで、はしゃいで気持ちが高揚した電話は
48作中これが一番だ。
後ろを振り返って
寅「おいちゃんおばちゃん何ボヤっとしてるんだよホラ」
おいちゃんおばちゃん、おろおろ。
寅「さくら、さくら!」
さくら、背後から「何!?」さくらもなぜか焦ってつい大声で対応
寅、ビックリしてもう一度振り返り「オオ、ホ、ほら・・あの・・お前」
さくら「お茶・・」さくらも急ぐ
寅「そうそうお茶すぐ入れて・・おい、おばちゃん
ボケーっとしてないで料理をすぐ作る料理を」
おばちゃん「あ、はいよ」
寅「おいちゃんそこで持ってバカみたいに口あげてるんじゃないよ
歌子さんこれから長旅で疲れて帰ってくるんだから、
二階へスッと行って布団をサッと敷いてやる。いいね!」
寅「おい博!風呂沸かせ風呂!
風呂!熱く沸かしてね、よし!・・」と一斉に指示を下す。
みんな、あたふた。
寅の『帰ってくる』って表現いいねえ…、
歌子は懐かしいとらやに帰ってくるんだね。
なんとなく第12作「私の寅さん」での九州旅行帰りのさくらたちを
迎える寅を、思い出した。歌子と自分をダブらしている。寅もそうして欲しいんだよね。
寅「歌ちゃんここに来るからね・・アッ!!大切な事忘れてた」
ここですでに満男が来る準備←早い!!
満男,顔がもうはしゃいでいる。いいねえ〜中村はやと君!(●⌒∇⌒●)
あっ!
寅「チョッとすいません、みなさんチョッとここに集まってください。
チョッとここに集まってください・・
(とても、高揚しながら唾を飲み込み)
寅「みなさんも先刻ご承知のとおり
歌子さんはごく最近夫を亡くされました。
だからまかり間違っても
夫とか彼とかダァ〜リンとか旦那とか
その類のことは一切口走んないで下さい。
分かったねことにお前は女だから。そうださくらお前の
亭主は死んだことにしろ!博、お前は即刻死ね!」
ダァ〜リンとか
もう何度か出てきて
この後も時々出てくるお馴染み「禁句ギャグ」
「続男はつらいよ」では「おかあさん」の類はダメ!
「夢枕」では「坊や」「倅(せがれ)」「息子」はダメ!
「噂の寅次郎」では「離婚」はダメ!
「かもめ歌」では「すべる、落ちる」はダメ!
さくら「そんなお兄ちゃん無茶苦茶な・・」
寅「黙れ未亡人!」誰がやねん(^^;)
博「兄さん落ち着いて・・」
寅「黙れっつうの!!」
一同「あ!あ〜あ、」博後ろに張り倒される
おばちゃん、博とぶつかり、おいちゃんによろけ倒れる
おいちゃん、おばちゃんを抱きかかえて「ォお、イヤ、あぶナ・・」
寅「何をやってんだよおいちゃんもおばちゃんも
そんな所でイチャイチャイチャイチャするなよ!」
イチャイチャイチャイチャ(^^;)
おいちゃん、思いっきりおばちゃんを切り離す。
おばちゃんあたふた状態(^^;)よお!御両人!
寅「いいか、もっと歌子さんに気を使え!気を使え!」
テンション急に落ちて
もうそろそろ来てもいいんだよなぁ・・あン!?
そうだ駅前のパチンコ屋にいる質の悪い不良に…」
妄想(− −;)またテンション上がって
あぁ!いけネエ!!よおし!」止まらん(^^;)
さくら「お兄ちゃん!」
寅、道に出て行った刹那、歌子とすれ違う。
歌子「???」
寅ドッドド!と急転回!
歌子「こんばんは」」
さくら「こんばんは」
歌子「あの今ね・・」
寅、にこーっと笑って歌子の前に
カニの横歩き&ガリ股立ち。
寅「アハッ!歌子ちゃん!アーッ!あんまり急いでいったんで
見違えちゃったよ!うん、うん」
これ以上ないってくらいの笑顔とハシャギ。
渥美さんの独壇場!
歌子「寅さん、こんばんは」
寅「うん」
歌子「あたし・・・来ちゃった」
このシーンを待っていた…(T T)
寅さんフアンならこの歌子の目を生涯忘れることはないだろう。
あたし… 来ちゃった
歌子のテーマが流れる(「うん、」の時に流れ始める)
寅「うん、よく来た。よく来たよ・・」
この寅の声はとても優しい。
もう歌子のテーマがぴったしの場面。
このシーンは目が潤む。
マドンナと再会して寅がこんなにも心底嬉しく優しい顔をしたのは
この「恋やつれ」の歌子以外では「奮闘篇」の花子、
そして、リリーくらいのもの。それぞれ繋がりの深さが分かる。
歌子「・・みなさん」
おいちゃん「はい」
歌子「突然来てすみません」
一同「いらっしゃい」
さくら「本当にひさしぶりねえ」
歌子「いろいろありがとうございました」柴又慕情 参考
寅「いいからいいからそんな堅苦しいあいさつは抜きにしてさア
ちょっと上がって、ほら上がってもらって」
とらや一同「どうぞ・・」
歌子「でもみなさんお元気そうで」
寅「あー元気元気全部元気ですよ。ね、
ずーっとそろってるからハハ」さっきまでやつれてた(^^;)
寅、ちょっと向こうを見て
寅「おいあれどうしたい、博は」
さくら「え?」←寅が博に「死ね」って言ったから戸惑う。
寅「『え?』じゃないよお前の亭主だよ・・、
バカお前の旦那」
寅「お・・(夫)!!…」
しまった!と目をつぶる。←梅干顔(><;)
寅「アァ…!そうか!
お前の亭主は死んだんだ!」
ここで歌子のテーマが終わる
!!……
歌子真顔で驚いて「えっ、本当!?」真に受けるところが歌子だね
おいちゃん、歌子に冗談と手を振る
寅、胡散臭い顔して「本当本当!!」
博「いや、いますよ」
歌子「アラ!」
寅「このたびは本当にご愁傷様でございました。うん」
さくら「お兄ちゃん」
寅「なんだいあんたあんた誰、あーッ!博!アハ!」指差して
さくら「お兄ちゃんちょっと」
寅「こう言う冗談するんですよ、こいつは・・」
おいちゃん「寅!」
さくら「お兄ちゃん」
寅じゃないよ!お前死んだのにどうして」
あたふたボテッと後ろに倒れる寅
おいちゃん「寅しっかりしろ!」
博「静めてください気を!気を!」
寅「お前風呂洗え!お前はね」意味不明(^^;)
おばちゃん「寅ちゃんチョッと」
博、押されて尻餅をつき足バタバタ(^^;)
倒れた後の手だけがチラチラ映る。
さくら、寅を押さえながら歌子に「冗談だからね」って伝えてる。
寅「死んだ気になって風呂洗いなさい」
とスクリーンに迫ってくる寅
もう何言ってるか全くわからん(^^;)
あくら「お兄ちゃん」
もうさくらほとんど笑ってますね〜。
これは笑うよねえ。(^^)
3人で羽交い絞め
★おばちゃん重い体重を乗せて必死で右腕を掴む。
★おいちゃんも「寅!」って言って、
いっしょに左腕を掴んで止める。
★さくら、後ろから腕を掴む。でも笑ってるゥ
寅「死んだ気になって風呂洗いなさい」
死んだ気になって風呂洗え!
お前死んでんだよ!死ねぇー!!」
誰にも止めれません(^^;)
脚本にないこといっぱいしゃべって、
暴れまくって渥美さんの独壇場!
「男はつらいよ」はこうでなくっちゃね!!
最後の「死ねー!!」は声ひっくり返ってました。
スクリーンの映像が左からススっと変わって。さて時間は経って…
食後の茶の間
寅コックリとうたた寝いびき「グウ〜・・」
歌子「寅さん疲れてるみたいですね」
おばちゃん「え・・」
おいちゃん「ホホいやあこいつはね、今日一日ずっとあなたの事を心配してましてね」
歌子「え?」真顔で驚く
おいちゃん「え、お顔を見たらね安心してどっと疲れが噴き出したんじゃありませんか」
さくら「冗談よ」 さくら、嘘ついた(^^;)
おいちゃん「そうそうそうそういや冗談冗談ハッハハハハハハハ……」
おばちゃん「夕べ寝てないから・・」←歌子ちゃんのこと考えて寝れなかった(^^;)
さくら寅に水をおく「お兄ちゃん・・」
寅「ウン・・?」
寅「ハハハ」
一同「ハハハハハ・・」
悩んで、やつれて、驚いて、はしゃいで、喚いて、そして今、
ようやく心が休息している寅でした。寝ればいいさ。
さくら、お茶を出して「あ、どうぞ」
歌子、静かにお茶を飲んでいる。
博「あのォー…時々雑誌やなんかで見るんだけど、津和野っていいところらしいですねー」
寅「・・うん・・」
歌子「ええ」
博「は・・確か図書館にお勤めだとか・・」博必死で話をつなぐ。
歌子は他のマドンナのように明るく盛り上げたり、
愛想を振り撒いたりはしない。父親譲りの不器用さと
実直さがある。そういうところはある意味博とも
似てなくもない。ましてや今回はちょっと複雑な状況。
寅眠いが、起きようとして目をカッと目を開ける。
歌子「ええ…でも今度やめてきたんです」
おいちゃん「….」
博「そうですか」
歌子「実はそのことなんですけどね・・だいぶ前から考えてたことなんですけど
あたしはやっぱり東京で何か自分に向く仕事を見つけて働きたくって
義母たちにはずいぶん反対されたんですけど、どうしてもそうしたいって、
ケンカして出てきちゃったんです」
さくら「そう〜・・」
さくら、はっ、と気づいたように
さくら「…ねえ、家(うち)でしたらいつまでもいてくださっていいんですよ」
さくらって、こういうタイミングが実に上手い。
ほんと心根が優しい。
どうして義母たちは、反対するのだろうか?子供もいないのに…。
歌子のことを親身になればなるほど一人でもう一度新しく再出発をしたほうが
いいと思うはず。
おばちゃん、にっこり笑って「ええ」
寅、ず〜と寝ている。
歌子「そう?…本当にいいのかしら・・、もちろんすぐにアパートか下宿を探して…」
おばちゃん「何言ってんですよ、家の二階の部屋はどうせ空いてんですから。ねぇ」
おいちゃん「そーさー、寅はどこにだって寝られっからな。な、寅」
寅、頭揺らせてレム睡眠状態(^^;)
おいちゃん「・・寅!…うん?」
博寅をゆすって「兄さん・・」
さくら「お兄ちゃん」
寅「ウン?ウン?」と笑いながらも寝ぼけている。
博「歌子さんが」
寅「うん」
博「これから二階にね」
寅「うん、あーそうか・・寝ますかもう眠いでしょう」ちゃうって(^^;)
さくら「お兄ちゃん」
一同「クスクス」
歌子「でも私、寅さんに会えてよかったわ。
もし会えなかったらこうやって東京に出てくる決心なんか
つかなかったかもしれないんですもの」感慨深げ
歌子の偽らざる気持ち
寅「遠いしね」まだ寝ぼけてる(^^;)
一同「ハハハハ…」
おいちゃん「こんな奴でも結構、お役に立つことがあるんですねぇ〜」
寅「そうそうそうよく言うよエーへヘヘへ〜・・」
博「お留守の時は寂しくしてますよ」
言い得て妙だね博。寅の本質。
寅「ォ!ワハッハッハハ!」
一同笑う
寅「泣かせたこと言うねえお前え?ハハハハ・・」
8回柱時計の鐘が鳴る
さくら、仏間に行って満男に毛布掛けてやってる。
満男はまだ寝たくないらしく絵本を開いているようだ。
歌子「でも皆さんとこうしてると思い出すわ」
寅「えー?」
歌子「2年前のこと」
寅「あーもうあれ2年なっちゃうかね。
そうここで皆で楽しく晩ご飯食べたもんね集まって」
おばちゃん、箱から写真選んで「ねえねえ」
寅「うん?」
おばちゃん「私二年前の写真を探しといたんだよ」
寅、おばちゃんを指差して「あ、あんたの?」と言う。
字幕で見てみると「あったの?」になっていたが、これは寅が
おばちゃんを指差していることから「あんたの」と言っている。
ということは、ここで渥美さんはアドリブを入れたんだね。
つまり、『おばちゃんの2年前の顔写真』っていうミニギャグ。
おばちゃんの背中が笑ってましたね。
脚本にはこのへんのやり取りはない。
おばちゃん「うん」
おいちゃん「ヘエー」
歌子、見ながら「ああー寅さんと初めて会ったとき
寅「あーあ、なんだい」
歌子「越前でね・・」
寅「あーそうそうこれどうしてるかね・・」 これ=みどりとマリ
おいちゃん「どれどれ、なんだい寅バカみたいに口あけて」
寅「違うんだよ違うんだよほら写真取る時はさ、よくチーズって言うだろ
あん時オレ間違えてバターァ!って言っちゃったんだよ」
思い出すねえ…(´▽`)
バタ〜〜!
一同ウケる
寅「そんであん時大笑い、おなか痛いなんて・・ハハハハ」
寅、博を見て「珍しく笑ってるよ。ほら!」
博「しかしあんときも可笑しかったですね」
寅「いついついつ!」寅、乗り乗り!
博「おふくろの葬式の時ですよ・・墓の前でね」
寅、すでに分かって「ウハハハ!」
さくらも、すでに分かって大笑い!
博「みんなで写真撮ろうってことになったんですよ
そしたらね俺が取ってやるってカメラ構えて
『ハイ!笑って』!って」博、裏声!
博が裏声まで出して目をひんむいてギャグの再現するなんて
貴重なフイルムだ(^^;)
寅「ハハハあれは参った参ったうーんいや、オレ、しまったと思ったんでね
それでね、いや『泣いて』と、こう言ったんだけれどもう遅かったよ」
寅「惣領の兄貴怒ってたもんな、ハハハ」
博「そら怒りますよ」
一同「ハハハ・・」
寅「笑っちゃったなあ」
博「墓の前ですよ、ハァ〜フフフ」
寅「ハハハーァ・・?」
と歌子が黙って下を向いてるのを見て笑いを止める
さくら「歌子さんどうかなさったの?」
歌子「…プー!!おかしいわね寅さん!!」
と噴出して大笑い。コップを倒してしまう
寅「アハハハハ!」
歌子「ハハ・・ごめんなさいすいません・・フフフ」
博、目が点。
ゆっくりと静かにメインテーマが流れる
さくら「これどうぞ」と拭くものをわたす。
歌子「すいません」
さくら、この時ふきんをエプロンから出しながら
寅を見て実に嬉しそうな輝いた目をする。
歌子の心が解放されていくのが分かるんだね。
そのことを寅と一瞬で共感できた目だった。
おいちゃん「あ〜あ〜あ、」
さくら「大丈夫?」
歌子「ごめんなさい」歌子まだ笑ってる。
男はつらいよのメインテーマ曲が流れ続ける
寅、歌子を見つめてる。
なんともいえないやさしい顔。
歌子また体制を崩す
おいちゃん「あー!あー」
おばちゃん「あらあら」
歌子「ハハハ・・ごめんなさい・・ハハ」
寅、下を向いて、目を潤ませている
博「兄さんどうしました?」
寅「うん…歌ちゃん笑ってるよ」
博「・・・ええ」と頷く。
寅「よかったなア…」と、涙
博、静かに頷く。
寅、分かるよ、その気持ち。よかったね。
前田吟さんの「ええ…」は胸にぐっと来ました。
とらや 二階
歌子かばんの中を動かしてる
さくら「歌子さん入っていい?」
歌子「どうぞ」
さくら「寝巻きどうぞ」
歌子「あ…、あたし持ってるの」
さくら「あ、そう、でももしよかったら」
歌子「ありがとう」
さくら「何か不自由なことない?何でも言ってね」
歌子「どうもすいません」
さくら「あ・・あのう・お父さん..元気?」
歌子「ええ多分」
さくら「最近お会いになったの?」
歌子顔を横に振る
さくら「・・でもお葬式の時は・・」
歌子「こんなこと聞いたらさくらさんびっくりなさるかもしれないけど」
さくら「…」
歌子「正圀さんが亡くなった時、すぐそのことを、父に速達で知らせたら
返事が来て…それも葉書でね 『仕事中だから行けない。お前は葬式が
終わったらすぐ帰って来い』って・・たったそれだけ。
いくら私たちの結婚が気に入らなかったと言ってせめてお葬式の時ぐらい・・。
だってそうでしょう。普通の父親だったら、
例えばさくらさんのおじさんだったらすぐにでも飛んで行って
『つらかったろうな』って慰めてくれるはずよ・・。
あたしの父にはそんな父親らしい愛情が欠けてるのよ」
さくら「・・でもそれはお父さんの性格で。心の中ではきっと歌子さんの事を・・」
歌子「だけどね。いくら心の中で思っててもねそれが相手に
伝わらなかったらそれを愛情って言えるかしら…。
私、今父に会いたいと思わないの」
相手に伝わらない『哀しい愛情』の存在を理解できない歌子。
しかし、この世にはいろいろな愛情のかたちがあり、
そしてそれと同じ数だけの幸せがあるのだろう。
歌子のこの表情は険しく、頑なだった。
さくら「・・・ごめんなさいね、立ち入った事聞いてしまって」
黄色いスタンドと紫色の花の補色関係が
部屋の中で美しく響きあっていた。
歌子「いえ・・いろいろご心配かけて」
さくら、ニコッと微笑んで「・・じゃ、お休みなさい」と立ち上がる。
歌子「お休みなさい」
さくら「あら、歌子さん、雨よ…」と下りて行く。
窓を見ている歌子。
(ゆっくりギター演奏で歌子のテーマが流れ始める。
そして次の江戸川の場面へと続いていく)
赤い目覚し時計を置く
花瓶の紫色の花
歌子にとって、もうたった一人の身内となってしまった父親。
その父親との長い確執は心の中の大きな重石となっているに違いない。
ある意味似たもの父娘なので、こういう場合、きっかけがないと、
引くに引けなくて長引くことが多い。そして後々になってお互いが
後悔するのである。
江戸川
歌子のテーマが流れる
渡し舟に乗って歌子と寅と源ちゃんで釣りをしているのが遠く映される。
前シーンのギター演奏から始まって、そのまま途切れることなく、
バイオリン演奏とのジョイントに入っていく。とても美しい流れ。
源ちゃん、寅の釣り針に大物の魚を着けて捏造工作!!
源ちゃん「兄貴!引いてる引いてる!」
寅「よし!」
しかし竿が外れてパーになり、歌子大笑い。
寅、残った竿で源ちゃんを叩きながら
寅「大きいの付けすぎんだよお前は!バカ!」
そんなこと言ったら歌子ちゃんにバレちゃうぞ寅(^^) ま、バレてもいいか!
寅、帽子の上から手ぬぐいで頬被り。ある意味凄い格好(^^;)
源ちゃん「ヒヒヒヒ!」
寅「見ろ!バカ!」
おそらく何ヶ月ぶりかで見せる心底幸せそうな歌子の笑い顔。
ひと時の休息。
柴又慕情の『白つめ草の白い花冠』を思い出す。
歌子の父親の書斎
遠くでさくら「ごめんください」
父親「・・うーん・・」なかなか出ようとしない
さくら「・・ごめんください」
父親「・・ハー・・ァ!」面倒くさそうにようやく書斎から出る
さくら玄関にいる
父親「あ、何ですか?今家の者おらんのですが」
さくら「いえ・・あの、突然お邪魔しまして・・あたし柴又におります諏訪と
申します・・あの以前歌子さんのことでお会いした事が・・」
父親「アアァ、あの時のあなたでしたか・・いやどうも失礼」
↓
以前、「柴又慕情のラスト」歌子の結婚後、柴又のとらやまで来ている。
あの時はなんとなく歌子の結婚も認め、態度が随分軟化したように見えたが…。
さくら「は・・どうもご無沙汰しております」
父親「いやいや。で…何か?」
あくら「あのう、・・あの・・実は歌子さんの事なんですけど・・」
父親「は、」
さくら「歌子さんは今私どもの所にいらっしゃるんです」
父親「ほう・・」
さくら「なんですか・・今度東京にお見えになったのは津和野の生活を切り上げて
こちらで何かいい仕事を見つけたいと、そのようなお考えだとか」
父親「…」
さくら「いやあのそれでご心配なすってらっしゃるかと思いまして
一応お知らせに上がったわけなんですけども」
父親「そうですか…それはどうもわざわざ」目を合わせようとしない
重い空気が流れる。
さくら「・・・。あ、あのうこれつまらない物ですけど」と団子を渡す
父親「いやアこれはどうも」
さくら「…」
父親「あ、ちょっとお上がりになりませんか」そういうことも言えるんだ。
さくら「いえ、あたしはこれで・・」
父親「そうですか」
さくら「じゃ失礼します。どうもお仕事中お邪魔しました」
父親「あ、いえいえ」
日傘を差して出てくるさくら
さくら「ハア・・」とため息←疲れるよねあの人じゃ(− ―)
その後ろを歌子の父親が傘を
ブランブランと振って勢いよく坂を走って来る
宮口さんのこの格好
愛嬌があって実におもしろい。
空飛ぶ高見修吉(^^)
父親「あ、あの…駅までお送りしましょう」
さくら「は…あ、はい」
駅近辺の道 近くの家からピアノが流れる。
ツェルニー:30番練習曲第4番
父親「それじゃ、わたしは、これで」
さくら「どうもわざわざすみませんでした。それじゃ」
父親「あ、…あのう、歌子がご面倒をおかけします。
ま、よろしく願います・・。じゃ」
たぶん、この父親、駅までの道でなんにもしゃべらないで
歩いたんだろうなあ…。そういう人なんだよね。
コミュニケーション不全症。
でも気持ちはあるんだよ。だって、さくらに追いつくために
飛ぶように駆けてくるんだから。
さくら駅の方へ向かう
さくらのアパート
さくら「いいお父さんなのにね・・どうして歌子さんあんなふうに言うのかしら。
会ってみればいいじゃないあって話しをすれば必ず分かり合えると思うけどな」
博「そうだよ会いさえすればいいんだよ。会いさえすれば
全てが解決するんだよ。
ただその会うってことに歌子さんに抵抗があるんだろう。
考えてみれば父親に反発する気持ちが今日まで
歌子さんを支えてきたのかもしれないな」
博の体験から来る実感でもあるんだよね。
満男おもちゃで遊んでる
さくら「そんなものかしらね。難しいのね親子って」
博「あ、そうか君は親にあんまり縁が無かったもんなア」
さくら「ン・・」
縁日 上野 不忍池
寅、『高島易断』の運勢本を売ってる
啖呵バイ
寅「天に起動のあるごとく人それぞれに生まれもったる
干支と言うものを持っております。
とかく人生というものは波高くそして長いものであります。
あなたの生まれた星によってあなたの運命というものが
定められておる。ね。
どうすれば良いのか正しい暦の読み方
正しい暦の把握の仕方なんであります。
私がなぜ何の得も無いのにこの路傍の一角をお借りして
皆様にこのようなことをお願いしているか
つまり、私は皆様方に幸せになっていただきたいのであります。」
職安(相談所)へ向かう歌子
職員「公立ですと現在資格が無いと採用ができないんですが
その資格と言うのが保母さんの資格だとか」
歌子「ええ」
職員「あるいは看護婦さんの資格それから保健婦の資格」
歌子書き込んでる
職員「そう言う資格が無いと現在はあの公立では採用していないんです」
歌子「あのー助手のような形でもダメなんでしょうか
職員「はい、えーこれはあのー私立でございますと、そういう助手的な面で、えー働きながら
資格を取る方法はございます」
歌子「そういう私立の施設は東京にはございますか?」
職員「東京にもございますが私の知っているのが千葉県、大島におりますので
ご紹介申し上げても結構だと思いますけど」
東京よりも地方や僻地の方が人手不足だものね、職員さん。
歌子はこのあと「大島」の施設に興味を示すが、なぜ千葉県じゃだめなんだろう。
千葉県なら時々実家に日帰りできたりするのに。
青山あたりの喫茶店
歌子がみどりやマリと3人で楽しそうに会話をしている。
(3人の関係は柴又慕情参照)
とらや 夕方
前に豆腐屋がラッパを吹いてる「パ〜〜プゥー・・」
さくら「お豆腐2つ」
豆腐屋「へい」
満男、ピンクの風船持っている。
寅、バイ終って帰ってくる。
さくら「お帰ンなさいどうしたのくたびれた様な顔して」
寅「当たり前だよこっちは一日労働してんだよ」
さくら「ご苦労様」
寅「何だおかずは」
さくら「ハンバーグ」
寅「ハンバーグ・・?カーッそんな横文字のモンは
嫌いだよ!食いたかねえや!」
暖簾くぐって
寅、歌子を見つける「ハーッ!」
歌子「お帰りなさい」
寅「歌ちゃんもう帰ってたの?」
歌子「一時間ほど前に」
寅「ふーん」
おばちゃん「寅ちゃん歌子さんがねあんたのためにって
ハンバーグ作ってくれたんだよ」
寅「歌ちゃんが!!」もう極上@▽☆◆◎!
歌子「上手くできなかったんだけど」
寅「いやいや」
歌子寅さん好き?
大好き!!ハンバーグ!
今晩当たり洋食食いたいなと思ってた」
これだよな〜 ┐(-。ー;)┌
さくら、暖簾をくぐって、ちょっと、唖然
歌子「良かったア!」
寅「あ、じゃ、着替えしてくるね」と、部屋間違える。
満男「ハハハハハハ」←素早く反応!
寅「あ!あこっち歌ちゃんの部屋だ、ね、俺の部屋こっち・・
(口笛)♪ピュッピュッピュゥ〜ピーポーピー」
満男、風船持ちながら寅を追いかける。
寅二階に上がって「あ〜」と部屋に入り電灯の笠をクルルッとまわして遊ぶ。
歌子、下から「寅さーん」
寅「はいよ!」
歌子「お食事前にお風呂に入る?」
寅「そうしましょうかァ!」と浮かれてる
豆腐屋のラッパ 『プゥ〜パーァ・・』
寅背広を吊るそうと…。
寅「ええっと、あ!」ハンガーを見つける。
寅「お風呂をお入りになったらお疲れでしょうから
お腰しでもお揉みしましょうか?
いいえ疲れてなんかいません。さあ!
明日もモリモリと真面目に頑張ろう!」と体操!
幸せだね〜寅(^^;)
とらや 茶の間
ケーキの箱が置いてある
ハンバーグはどうした?もう食べたのかな?
ハンバーグ騒動はないのか?
あるわけないか。歌子がいっしょなんだもんね。
さくら「わあおいしそう。ねー」
おばちゃん「わー」
さくら「どこのケーキ?」
歌子「青山なの、このお店ね昔よく行ったんですよ」
一同へえ〜
寅が台所でガッシャーンとたおす「あっあっあー」
寅、何を考えたのかインスタントコーヒーを作っている。よっぽど機嫌がいいのだろう。
こんなこと他の作品では滅多に無い。
さくら「お兄ちゃん大丈夫?」
寅「大丈夫だよ歌子さん今すぐコーヒー入れますからね。美味しいやつ。え」
歌子「ええ」
おばちゃん「青山行ってらっしゃったんですか今日は」
歌子「勤めてた頃のお友達と会ってたんです」
おばちゃん「あらお友達と」
おいちゃん「へえ〜」
歌子「あ、こちらにも伺ったことあるんでしょみどりさんとマリさん」
博「あ〜あ」
おいちゃん「あー!あ分かった!」
さくら「あ、あの面白い人たち」←決して褒め言葉ではない(^^;)
寅、お盆にこぼれたクリープを吹き、「フーッ!コホコホ」白い煙がもうもう立つ。
さくら「あら、やあねえお兄ちゃん何やってんの」と、さくら手伝おうとする。
おばちゃん「あー!」
寅「ミルクやったミルク・・」社長いやがってる
おいちゃん「で、今はどうしてるんですかあのお嬢さん方は」
歌子「あ、みどりさんは結婚して子供が一人いて
ご主人はまだ若いんですけど会社の重役さんで」
おいちゃん「ほー」
寅台所で手伝おうとするさくらを追いやって茶の間へ行かせる
「向こう行け・・」
歌子「大きなマンションに住んでるんですよ」
おいちゃん「ほォー!!マンション!へえ〜」
↑山田監督何か言いたげ(^^;)
歌子「ええ・・マリさんの方はね」
さくら「ええ」
歌子「あたしビックリしちゃったんですけど
銀座のナイトクラブで働いてるんですって」
社長「ナイトクラブ!!?」
社長この手のことにはいつも過剰反応
お金に走ったかマリさん。
おばちゃん「ほお〜」
さくら社長にケーキを渡す。
歌子「ええ大変なお金稼ぐらしくってね。
こォんな大きなダイヤの指輪したりして」
社長「ダイヤ!!!」◆
社長また過剰反応。銭金、物、には目がないからなあ(^^;)
歌子「ええ」
寅あまりの社長の音量にお湯をこぼしてしまう。
寅「デカイ声だすなよバカ!タコ!」
おばちゃん「じゃ、お二人とも今お幸せなんですね」
そうくるか。おばちゃんていつも単純すぎるよ、考えが。
満男が自分のケーキを奥の仏間へ持って行く。
歌子「それがね二人とも愚痴ばっかりこぼすのよ」
おばちゃん「あら」
歌子「ご主人が理解が無い(みどり)とか
仕事が面白くない(マリ)とか」
おばちゃん「うんマア・・」
歌子「挙句の果てにあたしのことをあなたは
気楽でうらやましいだって」とさくらを押す
自分の環境の不満を言い続ける人は、
自分の本質に気づかないまま行動している人に多い。
自分が見えない人に、人が見えるわけがない。
歌子がどのような生活をしてようが彼女達に
とって隣の芝生は青いのだ。
それにしても、今回はみどりさんとマリさん、
セリフがないばかりか、なんとなく人格まで
前回よりガクンと落とされて、可哀想。
歌子ちゃんの引き立て役って感じ(TT)
みどりさん(高橋基子さん)はこの先、
第28作「紙風船」の夢の出だしで、
口から生まれてきたような料理番組の
司会者役で出演されていました!
高橋基子さんといえば実は「モコ・ビーバー・オリーブ」のモコさんとして
歌を歌ったり、ラジオのパーソナリティとして一時代を築いた人。
泉洋子さんは、確かみなさん知っている「サインはV」では、
立木大和に途中加入した部員「ミリ」役。
凄い努力家なんだがドライな性格でチームの和を乱していた。
社長、そうとうケーキを荒く食べながら「ハーッ!」
おいちゃん「ハハハハ」
寅社長にコーヒーをすすめる「おい、ひとつ取れよ」
寅「な、社長」
社長「ウン?」
寅「人間金があるからっったって決して幸せとはいえないよ」
社長「どうして?」社長には絶対分からない感覚
さくらと歌子がコーヒーがのってるお盆を受取る
おいちゃん「だってお前、金のねぇ奴がみんな
不幸せだってんならさ、この寅なんざお前
生まれてから今日まで不幸せのずーっと
連続じゃねえか、ヘヘへ。」
第12作「私の寅さん」では、おいちゃんは、
『寅、え、早い話が人間食うために生きてるんだぜ』と
のたまわっていました。
寅、コーヒーをすすめてる。
寅「あれなんだいおいちゃんおかしなこと言うなおい?
それじゃ俺が一年中貧乏してるようじゃねえかよ、ねえ?」
と歌子にニコッと笑って意見を求める寅
おいちゃん「あれ?そうじゃねえのかい?おい」
寅「当たり前だよ何を証拠にそんな事をおっしゃるんですか?フフフ・・」
おいちゃん「ハハハハーだってさ」
寅「え?」おいちゃん「お前の財布に500円以上入ってるんの見たことねえもの」
寅「あ!あ!なんだいおい人の財布の中身見たな!?」
さくら「ちょっとよしなさいよ」
博、コーヒー飲んで苦い顔「アァー・・ッ」
←物凄く苦いのかな??コーヒー入れすぎ?
寅「思い切った顔しやがんのアーだって
センブリでも飲んでるつもりか」
センブリ 「千振」 リンドウ科の2年草の草本.
草丈の小さいのは5cmくらい、大きいので40cmぐらい。
この全草(花から根まで全部)を使用。花は5弁で白色か薄い紫色をして、9〜10月頃開花。
この花の付いた状態で乾燥し使用。
センブリの名は漢字で「千振」、又は「当薬」(とうやく)と書く。これはセンブリの名の由来と特徴を
非常に良く表しています。
「千振」とは千回振り出し(煎じる)てもまだ苦いとの事から。「当薬」は当(まさ)に
薬であるとの意味。この二つの言葉から非常に苦く、非常に良く効く薬である事がわかる。
センブリの歴史は室町末期に民間薬として利用されはじめ、胃薬に使用された。また一部では、
殺虫薬や目薬としても使用された事もあるそうだ。
私も一度バリに持って来て腹を壊した時に飲んでみたが我慢できる苦さを
はるかに超えていたので1回でやめてしまった(^^;)ゝとにかく我慢できる
苦さではなかった。鼻をつまんで飲んだあとも、10分くらいは水を飲み続けない
と収まらなかった。
苦くて飲めない博
おばちゃん「ねーねーね!でもさお金の無い人よりお金のある人の方が
幸せに決まってるわよ、ねえ歌子さん」
おばちゃん単純(^^;)
歌子「さあ・・それは・・難しい問題じゃないかしら寅さんどう思う?」
寅「えっ?いや、どうってそのう・・こらどう言うものですか?」
こういう時、絶対博に振る寅。確率100パーセント。
博「え?」
寅「つまりさ、え?」
博「つまり、あ、あれですねえ」
寅「いやだから難しく考えないで簡単にスッとね、スッと言ってみたら?」
歌子「は・・」
おいちゃん「カハハ・・」
歌子ケーキを食べてる。
博「幸福と言う問題を金でつなげて考えるのは
正しくないと言うことですかね」
歌子、ケーキ食べながら、頷いている。
寅「ア!あ、なるほどなるほど・・」
博「たとえば兄さんは今自分の仕事にどれだけ満足しているか」
寅「俺?俺、仕事、そらあ・・い、いい。なかなかいいせん行ってんじゃないの」
博「あるいはこの愛情と言う問題についてどれだけ
充足しているか・・」
「仕事」はマリ。「愛情」はみどり、が今悩んでいる問題っていうことか。
歌子コーヒーを飲むが相当苦そう・・
寅「バカだなお前あ歌子さんの前で愛情だなんて・・どうも失礼しました」
博「ハ・・」
寅「気の毒だよ・・」どういう感覚してるんだ寅って(^^;)
博「何もそんな事言ってるじゃ・・」
博「ま、男女間の愛情だけじゃ無い友人や肉親つまり
兄弟親子そう言った関係での愛情も含むんですがね」
寅「オー、肉親、肉親、肉親!身内だよ、ね?」
社長鼻ををぬぐいながら「その点じゃ寅さん言うこと無いよ。
さくらさんおいちゃんおばちゃん博さん
みんなに愛されて幸せだよ。なあ竜造さん?」
おいちゃん「そーそー!
俺は立派な甥を持って幸せだと思ってるよ」
一同「ハハハハ」
産みの母親に捨てられた寅が、博の問に対してすぐさま
「肉親、身内」と言いきれることに、ほっとする。
ほんとうにとらやの人たちとの縁が深くてよかった。
おばちゃんコーヒーをスプーンで飲むが苦くて角砂糖を取る
さくらの近くの何個かのコーヒーカップにコーヒーが
入っていないように見えるのは気のせいだろうか??
寅「そういう言い方はねえだろう」
おいちゃん「ん〜悪いのかい?」
寅「そう言う嫌味なものの言い方するんじゃないよ」
おいちゃん「それじゃあなんて言やあいいんだよえ?
極道者の甥をもって不幸せでございます
と本当の事を言やあいいのかい?」
寅「本当のこと・・!?」とおいちゃんの首をつねる
おいちゃん「あ!イタタ!」
さくら「あ、ちょっとよしなさいよみっともない」
おばちゃん「どうしてよー。立派な甥をもって幸せでございますって
言ってるのがどうしていけないの?」
ほんとにそう思ってれば言っていいし、
思ってなければ言っちゃいけない。
「立派」っというのは社会的な意味合いを多く
含む言葉。いかにも寅には不似合い。
寅「あーあー夫婦だ肩もつんだねー
おばちゃんまでそう嫌味を言うのか、なーァさくら」
さくら「アラ、あたしだって幸せよ優しいお兄ちゃんがいて」
と苦いコーヒーを飲んでゆがんだ顔になるさくら。
おばちゃん、さくらを見て同情している。
さくらの言う「優しい」と言う言葉は寅には実によく似合う。
寅「よーく言うよおい婿、お前どうなんだい?」
博「ええもちろんですよ」←具体的な発言を避ける博(^^;)
寅「社長どうなんだ?」
社長「俺だって幸せだよ親切な知り合いがいて」
寅「そうかいそうかいみんなでそうやってよってたかって人を
バカにすりゃあいいよ なア」と照れて紙を丸める。
歌子笑ってる
博「ハハ・・」
おいちゃん「へへ・・」
寅「え?何どうしたの歌子さん」
歌子「フフ・・あのね寅さん」
寅「うん」
歌子「あたしも幸せよ
寅さんみたいな…友達がいて」
寅「友達…なんて言われちゃあ
困っちゃうよなあ博!」
と丸めた紙を博に飛ばす
(前田吟さん、痛い!)
↓
博の鼻に直撃
歌子は形容詞を付けずにただ幸せと
言った。こういう言葉が結局一番寅には
似合ってるのかも。
今回は歌子を無私の心で応援しているので友達と言われて
とても喜ぶ寅でした。
博「…!!(痛ッ)い、いいじゃありませんか…なあさくら…」
↑痛くて目をパチパチ
さくら「そうよ、お兄ちゃん幸せでしょ?」
さくら、その発言はそのまんまだよ(^^;)でもすごくわかる。
寅幸せの塊の顔で
寅「さあ…まあ…どうかねえェ!
まあ、じゃあ今夜はこんな所で
お開きということにしますかア?」
一同「ハハハハハ・・」
おいちゃん「ハーア」
博「そうですね」
おばちゃん「ハハ・・」
歌子「それじゃああたしお先に失礼して…」
おいちゃん「あ、あー」
さくら「あ、どうぞ」
歌子「お休みなさい」
一同「お休みなさい」
おいちゃん「お休み」
博「どうもご馳走様でした」
歌子「いえいえ」
おばちゃん「ありがとうございました」
歌子「お休みなさい」
歌子はケーキとアマ苦いコーヒーとか飲んだのにどうして
歯を磨かずに寝るのか?
トイレは行かないの?ってどうしても思ってしまうんだよね。
もうそれは映画だからって十分かっているんだけれども。
歌子だったら、かならず歯を磨くと思うから…。
48作中2階に下宿したマドンナでトイレに行ったのを見たことがない。
お風呂は夕子さん、花子ちゃん、すみれちゃん、等々…入っていたが。
よく考えたらさくらを初めほとんどみんなそういうシーンはない。
おばちゃんは、よく「ご不浄に行ってくる」とか言って、おいちゃんをじらせていた。
もちろん寅に関しては大抵どんなシーンもある。
ところで、この時のとらやでの博の言った言葉こそが
今回の大きなテーマであろう。『人間の幸せとは何か』。
仕事に対する充足感や人との信頼に支えられた
強い結びつきがその人の金銭的な財産や社会的地位を
越えて、生きる支えになっていることが多い。
題経寺の鐘 ゴォーン…
寅、階段へ行く
歌子「あ、お休みなさい」
寅「お休みなさい」
寅「あのさアくたびれちゃってるんだから」やめろって(^^;)
と片足を階段の側面をかけている。
題経寺の鐘 ゴォーン…
寅「ぐっすり寝た方がいいよ」当たり前だって(^^;)
歌子「ハイ」
寅「ちゃんと枕もして」もういいって(−−;)
歌子「ハイ」
寅「フフフフ・・」
寅さくらたちの方へ向いて「はーア、さア僕もぐっすり寝よ。お休み」
題経寺の鐘 ゴォーン…
一同「お休みなさい」
寅鼻歌を口ずさむ『喧嘩辰』
寅の十八番!これが出たらそうとう機嫌がいい!
北島三郎若い!!!
殺したいほど 惚れてはいたが
指も触れずに 別れたぜ
浪花節だと 笑っておくれ
ケチな情けに生きるより
俺は仁義を 抱いて死ぬ
おいちゃん「へへ…」
寅荷物部屋への階段を上がっていく
寅「♪惚れてはィたがア〜とくらい!指も触れずーに…」
おいちゃん「あーバカにくたびれちまったよ」
分かるよ〜、おいちゃん(^^;)
おばちゃん「あ〜・・あら!よっこいしょ!」
とひっくり返りそうになるがさくらが手をかす。
みなさん、ごくろうさまです(^^)
機嫌が悪い寅も大変で気を使うが、機嫌が良過ぎる寅も
それはそれで気を使う。特にマドンナつきならなおさらだ。
基本的に『寅とマドンナ付き』の共同生活は疲れる。
ということなのだろう。
博「さくら帰ろうか」
おばちゃん「あー」
さくら「満男かえるよ」
おばちゃん「はい、ご苦労さん」ほんとほんと
さくら満男に「はい、眠いの?うん?」
みなさんのケーキとコーヒーに対する考察
まずコーヒー
タコ:目をつぶりながらもコーヒー飲む。
博:飲んだ直後せんぶり飲んだような顔をする。
歌子:飲んでちょっと苦そうにして、その後変だなって感じでまた飲んで
微笑みながらも首をかしげる。
おばちゃん:苦くて顔をゆがめ、がまんできずに砂糖を入れて紛らわそうと
する。
さくら:飲んで顔をしかめてしまう…(おばちゃん横目で同情している)
さくらと歌子ちゃんコーヒーのことでちょっと笑いあう。
博:こりずに2回目も口をつけてやっぱりせんぶり顔。
歌子ちゃんは結局ケーキちょっとしか食べないで
歯も磨かず2階へ上がり寝てしまう。
虫歯になるぞ…。
ケーキに関しては
結局、ムシャムシャケーキを食べていたのはタコ社長だけで
歌子ちゃんはほんの少し口をつけただけ。
さくらも博もおばちゃんもおいちゃんもたぶん一口も手をつけないまま
お開き(TT)
みんな寅のまずいコーヒーばかり飲んで一向にケーキに興味なし。
メロン騒動のときと大違い…(TT)
ちなみに満男はケーキを仏間に持っていって即効で食べたもよう(^^)
温泉津
絹代のテーマが流れる。
絹代の声で
『寅さんその後お変わりありませんか。
突然この町をお発ちになってしまって
どうしたのかと心配しておりましたが、』
雨の中絹代と子供が学校から帰ってくる。
『妹様のお手紙でご無事に実家にお帰りに
なったことを知ってほっといたしました。』
絹代、窯場で壷を窯に入れている。
『私ども親子も元気で暮らしています。
主人も心を入れ替えて働く気になってくれております。
これも皆々様のお陰でございます。
梅雨の季節に向けご家族の皆々様
お体をお大事にお過ごしくださいませ。 かしこ』
さくらは温泉津に手紙出したんだね。優しいな。
こういうところの演出が実に決め細やか。
とらや 二階
寅と歌子がいる。
歌子が返事を書いてる
寅「うん・・そうそう」
歌子「…うん…終わりの方これでいいかしら」
寅「いいんじゃないの。なんて書いたの?」
歌子「『いつかまた山陰の方に旅をする機会がありましたら
ぜひお寄りしたいと思っております』」
寅「ふーん・・」と書いた手紙をのぞく
歌子「あ・・・!」と手紙を笑って隠す。
寅「エヘヘ・・」
歌子「『まだお会いしませんがご主人にどうぞくれぐれも
よろしくお伝えください絹代様 車寅次郎』」
寅「うーん・・上手いなあ、さすが小説家の娘さんだけあるよ」
そういえば第11作「忘れな草」でも寅はさくらに網走の牛飼い家族に
手紙を書かせていた。代筆を頼むってやつか…。
寅の拙い字でもいいから、寅自身の言葉の方が嬉しいんだけどなあ。ほんとは…。
歌子、笑いながら「からかわないでよ」
寅「いや本当だよハハ・・お、さくら、書いた書いた」
さくら、階段から上がってきて「え?」
歌子「あ・・」
寅「うん」パッっと葉書をつまみとる。
歌子「あ!」
寅「へへへ」
さくら、ハガキを持って「まアこんなきれいな字で書いてもらって」
寅、ハガキの下の方指差して「車寅次郎…」
歌子「アハ、あたし困るって言ったんですけどねえ」
っと、さりげなくスッっとさくらからハガキをとる歌子。
寅「いいんだいいんだ」と葉書をまた歌子からパッと、とる。
さくら「しょうがないわねえもう」
ハガキが 歌子→寅→さくら→歌子→寅と
回っていくのが実に愉快!
豆腐屋のラッパ パァープゥ〜…
寅「ケケ」
さくら「歌子さんそろそろ行きましょうか」
寅「行きましょ行きましょ何にも無いけど」
さくら「違うのお兄ちゃん」とお茶のお盆をとる。
寅「いやいや、え?何?」
歌子「あ、今日さくらさんのお宅にお呼ばれなの」と便箋をかたずける。
寅「……あぁそう、いいんじゃない…
気をつけて。へへ」こわ(^^;)
豆腐屋のラッパ パァープゥ〜…
歌子「はい、じゃすいません」
寅「え、はい」
さくら「ごめんねお兄ちゃん」
寅、プイと向こうを向く」(怒)」
このスネ方が可愛い(^^)
歌子階段のとこから顔だけ出して「寅さん」
寅「はいッ(喜)」
歌子「行ってきます」
寅、階段に向かって「気をつけてね、うん(喜)」
豆腐屋のラッパ パァープゥ〜…
さくら「あ、あのね、おばちゃんがね…」
寅、また向こうを向く「(怒)」
さくら「おばちゃんが、ご飯だからね降りておいでって…ま…」
寅、さくらの方に向きなおして睨んで「(怒)」
おばちゃん下から「寅ちゃーんご飯にしよう。あんたの好きなお芋の煮っころがしだよ」
寅、前を向いて、ジッ…。
階段の方をまた向いて。
寅「…(怒ォ!!)芋なんか食い飽きたよ!ったく」
と雑誌や、書いてもらった葉書までを投げて、足を机に投げ出して横になる。
ダダッコだね(^^;)
あの渥美さんの間は最高に上手い!
この喜と怒の緩急がたまらなく可笑しい(^O^)
さくらたちのアパート 夜
満男が遊んでる姿が窓の外から見える。
近くの踏み切りの音
ブ〜・・ガタンガタン・・チンチンチン・・
歌子「みどりさんやマリさんもあたしの就職の事いろいろ心配してくれて、
就職口を紹介してくれたり…再婚の話まで持ち込んできたりするんだけども、
でも生活のためだけに就職したり、
就職する代わりに結婚したりするくらいなら
なにもいろんな人の反対を押し切ってまで
津和野から出てくる必要は無かったと思うの」
さくら「さっきおっしゃってた施設の仕事って
心身障害時児とか、お年寄りの世話をする仕事のこと?」
歌子「ええ。そういう仕事なら私みたいなものでも
一生懸命にがんばれば何か人のために
役立つことがるんじゃないかしら。
少しは人から感謝されることがあるんじゃないかしらって、
そういう風に考えてね」
さくらお茶を入れながら「でもそういう仕事って大変なんでしょう?」
歌子「そうなの」
さくら歌子の後ろに寄ってる満男に「満男」
満男結構歌子になついているね。
歌子「いざやってみたら半年ももたなかったって
言うんじゃみっともないしね。
だからここんところはあんまり無理をしないで
あたし相応の仕事を選んだ方がいいのか?
でもそれじゃああんまり意気地の無いような」
満男せっせと漫画雑誌をめくってる
歌子満男をなでながら「そんなとこですっかり迷ってしまってね…」
さくら「むずかしい問題ねえ・・ねえどう思う?」
博「うーん…あ、僕にはとても答えられないなあ」
満男「読んでえ」
歌子、満男の本を開けてやる。
博「そりゃあ歌子さんが決めることだし、また、
歌子さんはきっと一番正しい選択を
するに違いないとそう思います」
歌子「…」
さくら「もしもよ、お父さんに相談したら何ておっしゃるかしら?」
歌子「実はね。そうしようかとも思ってるの」
こういうこと思える時って和解の兆し有り。
さくらとひろし顔がゆるむ「は・・」
博、ホッとした顔で「そいつはいいなあ。そうしたらどうですか」
歌子「もちろん返事は決まってんでしょうね。
『お前なんかにそんな仕事できるか』なんて
バカにしたような言い方するするわきっと・・」
←意外にそうでもなんだな…
ひろし「そいつはわかりませんよ。話してみなくっちゃあ」
歌子「そうかしら」
博「もしお父さんにそう言われたとしたってあなたが考えを
変える必要は無いでしょう。どうですか、会ってみたら」
歌子、深く考えている背中「…」
列車の警笛 プゥー…
さくら「お兄ちゃんに相談したらなんて言うかしら」と台所へ行く。
歌子「こないだ相談したの」
さくら「え?」
博「何て言ってました」
歌子「全部やめちまえって」
博「ア!ハッハハハハ…」
さくら「フッ」
歌子「じゃあどうやって暮らせばいいのって聞いたらね、」
さくら「うん」
歌子「『毎日とらやでブラブラして花を摘んだり
歌を歌ったりして暮らしなさい』って」
博「ウハハハハ」
さくら「フフ」
博「なるほどハハハハ」
さくら「バカねえ、もー」
歌子満男にクッキーをあげる
確かに、寅の言うようなことをして生きていくことは不可能だし、
寅はこういう現実的な職業選択の問題を思考できる能力もないが、
この浮世離れした寅の感覚が歌子の心を癒し、慰めもする。
「柴又慕情」の時もそうだったが歌子の気持ちを解きほぐし、
解放してあげる寅と現実的な諸問題の相談に乗ってあげるさくらと博。
この兼ね合いが実に上手くいっている。そういう意味では歌子はとても
心強い人たちに囲まれていることになる。
普通いませんよ〜こんな人たち。歌子はほんと幸運です!
翌日 さくらたちのアパート前
踏み切りの音ガタンガタン・・チンチンチン・・
さくら、外の洗濯機で洗濯している。
電話のベル リリリリリリリリーン…
さくら「もしもし」今回の受話器のカバーは赤地の白水玉
さくら「なんだお兄ちゃん。何よ?」
後ろで子供たちの遊ぶ声
さくら「今忙しいのよ。いったいどっからかけてんの?・・・!歌子さんのお父さん!?
じゃ、高見先生のお宅に行ってるの!?」
歌子の父親の客間
寅「そうだよあのガンコ親父に一発ぶちかましてやろうと
思ってよ、うんそしたらね今仕事中だからちょっと待ってろなんて、
ったくご大層なこと言いやがってよ。
こっちは頭に来ちゃったからウイスキーかっ食らってんだよ。え?大丈夫だよ
だ・・うるせえなお前は!切るぞー」と黒電話の受話器を置く寅。
寅「あ、よいしょ先生よ仕事まだ終わんないのかい?
なんだい人がせっかく来てやったってのによ。帰るぞ俺もうほんとに」
とナポレオンを自分のコップに注ぐ
第12作の「ジョニ赤」もこのナポレオンも円がまだ高くなかった
当時としてはなかなか買えない物だったのだろう。
後ろに歌子の父親、高見が来る
父親「いや、どうも失礼」
寅「お、お、これやってたよ」
父親「あ、ナポレオンやってるのか」
寅「ナポレオンだかワシントンだか知らねえけどよ
結構いけるじゃねえかこいつ、な!」 ツッ コトッ
父親ナポレオンをしまう
寅「ところで、どうなったいその返事は」
父親タバコを構えながら「返事と言うと」
寅「だから言っただろう。歌子ちゃんお前に両手をついて、私が悪うございました
お許しくださいって言えるかどうかって」
父親タバコの煙をはきながら「そんなことがいえるか…。謝るのは私じゃなくて歌子の方なんだ」
寅「うん、わかった!俺は最初あったときからね、あ〜この男は
話し合えない人間だなとそう思ったよ。うん…へッ」
ピアノの演奏が聞こえてくる。
バイエル:練習曲第10番
寅「ケッ歌子ちゃんも可愛そうだよこんな父親を持ってさ。
今何やってんの商売
あ、小説家か、チャンバラ書いてんの?チャンバラ」
父親「うん?いや…『時代物』は書いてないが…」
寅「あー現代物・・・あ!知ってる知ってる人妻の不倫な恋なんて!
カァー!イヤらしいもん書いてるねぇ!お前!しかしよくまあ
そうしたもん書けるねその顔で!」得意の仁義なき決めつけ(^^;)
父親「おい君ーちょ、ちょっと待ってくれ」
寅「いやいやさ生活状況も苦しいだろうけどさ、
いくら苦しくたってそういう恥ずかしいものかいちゃいけないよ。
やっぱりその、真面目にねコツコツコツコツやっていきゃあいつか
芽が出るんだから。…そう言うもんだよ、世間てのは・・うん」
得意のいわれ無き説教┐(-。ー;)┌
寅ナポレオンを口に含んでツッ・・コトッ・・
寅「ま、いいやじゃ今日俺これで帰るよ、うん。あー…じゃ、あばよ・・あ、何だこっちか
ザラザラザラザラしてんだよ掃除をしてないんだよこの家は。
これじゃあいい作品は生まれないよー」厳しいねェ〜
父親「…」と、ナポレオンを持って注ごうとするが、空っぽ。
父親「ゴトッ・・・ふん・・・」
とらや 店先さき
おいちゃんがホクホク顔でパチンコの景品を江戸屋に見せる。
踏み切りの音カンカンカン…
今回のとらやのお品書き
冷蔵庫はオーソドックスに『雪印』
赤飯 150円
茶飯 150円
草団子 100円
磯乙女 100円
おでん 150円
くずもち 100円
ところ天 100円
あんみつ 150円
みつまめ 150円
寅「なんだよ文句あんのかお前たちは、え?コッチは電車賃使ってわざわざ
遠い歌子さんの所までいってきてやったんだよ!」
さくら「だってそれじゃまるでぶち壊しみたいなものじゃない」
おばちゃん「そうだよ!行かない方がよっぽど気が利いてるよ!」
おいちゃん「なんだいなんだいみんな喧嘩してないで落ち着けよ」
寅「なんだと!」
おいちゃん「ほらパチンコ屋で持って羊羹とってきたからお茶飲んで頭冷やして、な」
おばちゃん「そぉんなこと言ってる場合じゃないわよ!
ちょっと聞いてちょうだいよ!」おばちゃんエキサイト裏声!
おいちゃん「なんだいどうしたんだよ」
おばちゃん「寅ちゃんね、今日歌子さんの家へね、のこのこ出かけていったのよ。
本当にメチャクチャな事言ったりして」
寅「メチャクチャってなんだい」
さくら「だってそうじゃないの!歌子さんに手をついて謝れだなんて」
おばちゃん「こんな行儀の悪い男が突然現れて大きな声出したりしてさ!」
おいちゃん「んまー」
寅「おーおーおーおばちゃんよ、変なこといわないでくれよ。
俺はわざわざ向こうへ出かけてったんだぞお前。本来なら向こうから来てだな、
娘がこの度は色々お世話になりましてとか恐れ入りましてとか
一言挨拶してしかるべきだろう!なんとも言ってこないじゃないか。
あんなの父親でもなんでもねえよ!」
さくら「そんなこと無いってお兄ちゃん。
あのお父さんはね、本当はとっても優しい人なのよ。
心の中は歌子さんの心配でいっぱいなのよ」
寅「何だよお前は。何であの親父の肩をそう持つんだよお前は」
おいちゃん「まてまて寅それじゃあ…」
寅「うるせえな」
おいちゃん「お前先方いってテメエの言いてェことだけ言って
帰ってきたとこういうわけか!?」
寅「ええ行ったい悪いのか!」
おいちゃん「お前な歌子ちゃんのお父さんはなア
偉え小説家の先生なんだぞ!お前知ってんのか!え?」
おいちゃん、それとこれとは別だよ。かえって話がややこしくなる。
寅「何であんな親父が偉れえもんだいヒョロヒョロの能無しが」
おいちゃん「この野郎お前よくもとらやの恥さらしやがったな!
まったくもぉ、ろくでなしの極道者の身内を持って
俺たちは本当に不幸せだよ!」
出ました。いつかの晩の言葉そのもの。
寅「ハハハ何を言ってやんだよこの野郎そのセリフはこっちで言いたいね
昼日中からパチンコやってやがってそんな叔父貴を持って、
あたしゃ不幸せもんだよ」
この松村おいちゃん、最後まで「パチンコ大好き」なことを
寅に嫌がられてた。この後の下條おいちゃんはパチンコしない。
さくら「お兄ちゃん・・!」
おいちゃん思いっきり羊羹で寅を叩く←羊羹では痛くないぞ(^^;)
おいちゃん「コノヤロウ!」
寅「な!あ!この野郎・・!!」
おばちゃん「あ!ちょっとなにすんのよ!」
さくら「お兄ちゃんやめなさい」
おばちゃん「ちょっとよしな・・!」
さくら「お兄ちゃん、お兄ちゃんお願いだから歌子さんに謝んなさい」
後ろからパチンコ景品を投げるおいちゃん。
寅さくらを飛ばして「畜生!俺がいったい何をしたっつうんだよ!
どうして謝らなきゃならねえんだい」
さくら「だってそうでしょう歌子さんとお父さんがいつかは
仲直りしなきゃなんない事ぐらい分かんないの!お兄ちゃんは!」
寅「向こうが悪いんだから仕方が無いじゃないかお前」
さくら「そうじゃないって言ってるでしょうそれじゃ歌子さんが
あんまり可哀想でしょう」
寅「歌子ちゃんはね俺んちの二階にいてフラフラフラフラしてた方が
それでいいんだっつうんだよ」
さくら「は〜・・・そんな事できるわけないじゃないのよ」
寅「どうして!」
さくら「あのね、生きていくためには誰だって働かなくちゃいけないの」
寅「何を言ってやんだいそだったらお前の亭主は働きもんだから
その分働いたらいいじゃなえかよ!」
凄まじい理屈…博って一体…(TT)
おいちゃん「さくら、こんなバカ相手にすんなよ」
寅「!・・何だこの野郎!」と茶の間のおいちゃんに向かって景品を投げる。
さくら「お兄ちゃんお兄ちゃん本気で歌子さんの
幸せ考えてないわね」
寅「何!?どうしてそんなこと言うんだお前!」ドギマギする寅
さくら「だって歌子さんにいつまでもうちに
居てほしいのと言うのはお兄ちゃんの
気持ちでしょでしょ。
それじゃ、歌子さんが幸せなんじゃなくて
お兄ちゃんの方が幸せなんじゃない」
さくらのこの言葉は、寅の本質的な気質を見事に
言いえて怖いくらいだ。寅は自分の幸せのためだけに
動いている部分が常にある。さくらは時々寅に辛辣な
ことを言うが、この言葉の持つ意味は大きかった。
寅「そうかそうか要するにお前は歌子ちゃんが
この家に居るのが嫌いなんだよ、お前はな」
おいちゃん「やめろやめろこんな奴に何言ってもムダだムダ・・」
寅「!!おいちゃんはいちいち言うこと無いだろう、お前!黙ってろってんだよ」
出ました。、寅の足技!おいちゃん、タジタジ。
おいちゃん「おお・・!ちょちょ」と店先を見ている
一同店先を見る
店先
歌子の父親、高見修吉が店先に立っている。
父親「・・・高見です・・突然お邪魔しまして・・」
さくら「あら・・どうも失礼いたしました」
父親「あ・・いつぞやはどうも・・」
さくら「いいえ」
父親「寅次郎さん先ほどは大変失礼しました。」
寅「え?いえいえ」←この反応面白い。寅も緊張するんだね。
おいちゃん「あ、こりゃどうも・・・!つね!!ちょっとお前・・」
おばちゃん「ハッ!!ただ今お茶を!」と偉い人&話題の人が
来たのでおばちゃん緊張。
さくら椅子を引いて「どうぞ」と置いてある寅の背広を片付ける。
父親「あ・・・歌子はいますか?」
さくら「ええ・・あの、今お風呂屋さんに行ってらっしゃいますけどそろそろお帰りになる頃だと思います」
父親「そうですかじゃあここでちょっと待たしていただきます」
おいちゃん「あのゥ・・奥のほうへどうぞ・・」
父親「あ、いやここで結構です」
とタバコを出す
さくら、灰皿を前へ出す「どうぞ…」
豆腐屋のラッパ プゥ〜…パァー
とらやに明かりがつく
父親、タバコにマッチで火を点ける。
張りつめた空気が漂う。
豆腐屋のラッパ プゥ〜…パァー
おいちゃん「あ、寅!」
寅「うん?」
おいちゃん「歌子さんバカに遅いじゃねえかお前ちょっとさ・・」
寅「オウ!!」
寅、父親の前をまたぐ「ちょっとごめんなさいよ」と参道へ。
歌子「寅さァーん!」
父親気がつく。
一同も心配。
さくら、ドキドキ
歌子「ほら釣忍買って来ちゃった・・!」
釣忍(つりしのぶ)
荵(しのぶ)草の根茎を、葉のついたまま、
さまざまな形に作り、そこに水をたっぷり打つなどして、
納涼を楽しむ飾りもの。
俳句の季語にもなっている。
釣忍がチリンチリリン・・鳴る
歌子「どうしたの?・・・!」
一同長い沈黙
歌子、父親を見つめる。
歌子、目の前の寅をチラッと見、父親を見ながら近づいて行く。
父親「・・もっと早く来たかったんだが・・・
父さん、仕事があってな、うん・・
沈黙
昼間寅次郎さんに言付ければ良かったんだが
つい気がつかなくって。ま、なにかの足しにしなさい」
と袖からお金の入った厚みの封筒を椅子に置く。
父親「あ、それから暑くなるから父さんよく分からんのだが、
お前のタンス開けてな、適当な物包んであるから・・・」
歌子「…」
ようやく歌子の方をそっと見る父親。
父親「…うん…まあ元気そうで…何よりだ」
父親「…じゃあたしはこれで」と席を立つ
歌子「お父さん…」
父親、ちょっと戸惑ったように
父親「うん?…何だ…」ともう一度座る。
歌子「・・長い間心配をかけてごめんなさい…」
父親「いや・・うん、
何も君が…謝ることはない…。
謝るのは、多分、私の方だろう……。
いや、私は…口が下手だから…何というか
誤解されることが多くてな」
美しいメロディが流れる。
父親「しかし私は君が自分の道を。
自分の信ずる道を選んで、
その道を真っ直ぐに進んで行ったことを・・
うれしく…。私は…本当に…うれしく…」
と、遂に胸が高ぶり、泣き、ハンカチを目に当てる。
歌子も泣きながら
歌子「あたし…もっと早くお父さんに
会いに行けばよかったのにね…
ごめんなさいね…ごめんなさい…」
と、父親の腕をしっかり掴み、
歌子「ごめんなさい…ウックゥゥゥ・・・」と泣き崩れる。
おいちゃんの肩がぐっと落ち、震え続ける。
こんなにも、この親子は会いたかったのだ。
父親こそ娘との和解を望んでいたのだろう。
娘に心底誇りを持っていた父親。
彼は実は娘の人生を理解していた。
歌子が見た生涯にたった一度の父親の涙。
本当に相手に伝えたかったことを、ようやく言い合えた二人。
和解の時期が手遅れにならなくて本当によかった。
二人は間に合ったのだ。
おいちゃん 「クフッズズズーゥッグファッ…」
ぐちゃぐちゃに泣いているおいちゃん。
さくら、目を潤ませて、歌子たちを見て、
さくら「ねえ…良かったね、おばちゃん」とおばちゃんに駆け寄る。
おばちゃんも目を泣き腫らしながら
おばちゃん「ズゥゥゥ。よかったねェ・・・ズッ」
おいちゃん、ガッと、立ち上がり、
おいちゃん「ヅゥッ・・さくら!すぐ工場行って
博と社長呼んで来い」
男はつらいよ メインテーマがゆったりと流れる。
おいちゃん「おいつね!何だこの野郎、
メソメソしやがって、酒だよ!さ、酒の支度だよ!
おばちゃん、泣きながら台所へ。
「おい!寅ァ・・なんだいお前までバカみたいに
そんなとこに突っ立って…」
おいちゃん、優しい声…
寅、店先で立って下を向き泣いてる。
釣忍がチリンチリンチリンチチリン リン…と鳴る
産みの母親に捨てられ、父親にも縁遠く育ってしまった寅。
そんな寅が垣間見た父と娘の深くて強い絆。この寅の涙は
父娘和解への感激の涙であると同時に、寂しい自分の
生い立ちへの慰めの涙でもあるのかもしれない。釣忍の
風鈴の朱色がいやに目に沁みた。
この作品の最も重要な部分とも言えるこの場面は、ともすれば
情感が強く支配し、テンポが止まってしまう場面でもある。
宮口さんが感動的に演じれば演じるほど、観る人はその演技の中に
入り込んで意識がそこにとどまって完結してしまう。「男はつらいよ」の
世界からずれてしまう。それを見事に広がりのあるカットに成立させて
いたのは、松村おいちゃんの、メリハリのある強い演技と台詞回しだ。
小細工抜きで真っ向勝負の彼の演技はこの場を大きな空気に変える
ことに成功し、あのシーンにもう一度テンポを与えていた。
見事な山田監督の演出。そして、松村達雄さんの面目躍如。
この演技は森川さんでも、下條さんでもなく、松村さんならではの世界
だったと思う。松村さんはここぞと言う時の「強い演技」ができる人だった。
それにしてもこの場面は「柴又慕情」からの歴史があってこその
感動だったことを思うに、続篇をあえて制作した意味がここに見事に
説得力を持つのである。
江戸川 電車が鉄橋を走ってる
江戸川土手源ちゃんが満男とキャッチボールをして
滞空時間の長いジャンプ!の後転げる
寅つまよう枝を咥えながら、抜け殻のようにぼんやり寝転んでいる。
とらや
きれいに片付けられた二階の荷物部屋が
夕暮れに赤々と照らされてる。
寅のかばんが立ててある.
さくら「お兄ちゃん」
さくら階段を上がってきて「お兄ちゃん?」
とらや 一階 おいちゃん団子を作ってる
さくら「おいちゃん」
おいちゃん「はア?」
さくら「ねえ居ないわよ」
おいちゃん「おかしいなあ…かばんはあるのか?」
さくら「かばんはあるけど部屋の中きちんと片付いてる」
おいちゃん「お!お前気がつかなかったか?」とおばちゃんに聞く
おばちゃん「昼間までは居た様だったけど…今日は店が忙しかったもんだから…」
おいちゃん「へーえ…ホイ」とタバコの箱を持ちながらさくらにマッチを取ってもらう。
さくら「なんだか気になるわ」
おいちゃん「なにしろ歌子さんが親父さんのところへ
行っちまった後の寅は半病人だったからなア」とマッチで火を点ける
う〜ん、そうだったんだア…
歌子の家
近くで花火が上がってる
歌子水屋になにかをしまってる。
花瓶にあじさいの花
庭先に寅
歌子「あッ、寅さん!! まあ… あーびっくりした。どうしたの突然に」
寅「うんちょっとその近くまで来たもんだからね。先生は。」
歌子「なんか会合があるとかって出かけてるの」
寅「ふーん」
歌子「でもよく来てくれたわね」
歌子、しみじみ寅を見る。
花火が上がる スパッ!パタパタン…パラパラ…
歌子「あっお座布団・・」
寅「あ、いいよいいよ花火どこでやってるんだろ」
歌子「あ、多摩川」
歌子「さっきからね、子供の時の事を思い出してたの。
母と3人でよくここに座って花火見物したものよ…。
そのころはねあんなビルなんか無かったから
もっと良く見えたの。あっ上がった」
「柴又慕情」でも「恋やつれ」でも歌子が母親の思い出を話す場面は切ない。
時々母親と電話くらいしてるのだろうか?
それとももう全く交流が無いのだろうか。
父親の身勝手さに我慢できなくて人知れず出て行った歌子の母親。
歌子には愛情があったはず。歌子に会いたくないのだろうか?
母親はとても歌子に会いたがっていると思うのだが…。
花火 ポン、タタタタン!パラパラ…
寅「仕事のことはどうなった?」
歌子「え?」
寅「いやちょっと気になったもんだからね」
歌子「うん、いろいろ悩んだんだけど、とにかくやれるとこまでやってみよう
と思って施設に行くことに決めたの」
寅「うん…」
歌子「大島に藤倉学園って言う施設があるの。この前見に行って来たんだけどね」
寅「そお…伊豆の大島かぁ」
歌子「そう」
歌子「三原山の煙が遠くに見えてね、広くって、とっても景色のいいところ」
花火 ドドーン!
歌子「あっ、だめねえ音がしてから見たんじゃ、こっから観るのはそれが難しいのよ」
寅「うんあれそばで見ていると筒の中からポォーン!って出る音まで聞こえるもんね」
歌子「それからしばらくしてパァーっと開くのよね」
寅「そうそう」
歌子指を刺して「ほら、きれい!」
花火 ドドン!パラパラ…ドン!パララ…
明るい歌子の横顔をじっと見ている寅。
寅「歌子ちゃんもすっかり元気そうになって良かったね」
歌子「ハ・・そうかしら・・」
寅「うん」
歌子「でも寅さんには本当にお世話になったわねどうもありがとう」
寅「いやァ別に俺は何もしねえよ」と下を向く。
歌子ちゃん、本当に寅には感謝しなくっちゃね。
いつかどこかできっと恩返し出来る日が来ると思うよ。
花火 ドッ!パツ!ドドドン!ドパッ!
歌子「仕掛けじゃないかしら」
寅「うん?」
歌子、木のサンダルをはいて庭先に出る
寅、歌子のサンダルをはく足を見つめる。
庭に咲くあじさいの花
歌子のテーマがゆったりと流れる
花火 トパパパパン!パン…ドパパパパン!
歌子遠くの夜空を見て跳ねてみたりする。
その後姿をじっと見つめる寅。
寅「浴衣…きれいだね」
歌子、振り返って「えっ、何?」
寅、ハッと我に帰り、考え…、
寅「…いや、なんでもない」
ハッっと我に帰り 自分が何をいったのか気づく寅
歌子、近寄って「なんて言ったの?」
寅「ううん、何にもいわねえよ」
寅「あ、先生・・先生は遅いねえ」
歌子「そうそう」
寅「え?」
歌子「父がね寅さんの事ほめてたわよ」
寅「ヘッ何だって?」
歌子「とっても厳しい批評をされたって。何ていったの?」
寅「ヘヘッ何だかわかんねえな 俺、口から出まかせだから」
歌子「だから出まかせに何ていったの?教えて」
寅「うーん…忘れちゃったよほら、
俺、あのワシントンごちそうになって酔っ払ってたから」
歌子「ワシントン?」
寅「へへえー?ああ!いや、あの、ナポレオンだ!」
歌子「アッ!ハハ!」
寅「ハハ間違えちゃった」
歌子「ハハハ…!あっついけない何か冷たい物もって来るわね」
寅「ハハハハ、ん」
歌子、途中「フフフフ」笑いをこらえ奥の部屋へ戻る
寅、ふと強烈な寂しさが襲ってくる。
遠くを見つめる寅。寂しい肩。
そして、顔が暗くなり、ゆっくり下を向いてしまう。
花火が上がっている トドパッ!パン!パタン…パラララ…ドン!ドン!
歌子を見つめる少年のように澄んだ寅の目。
ふと口に出てしまった『浴衣…きれいだね』。
寅と歌子の数々の物語の果てに呟かせた
ほんとにささやかな言葉。
どうして渥美さんは、あんな目ができるのだろう。
おそらく、歌子には告げずに、
そのまま帰ってしまったのだろう。
第8作「恋歌」の貴子との別れを思い出す。
とらや
裏庭 おいちゃんや博と一緒に満男が花火で遊んでる。
おばちゃん「あーきれいだねえ」
博、満男に、「足かかっちゃうからな」
さくら「あー、たしもやりたいな」
社長「ヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルパッ!ってのあったな?」
おばちゃん「あれはねずみ花火」
社長「ああ」
博「次これ行きますよ」と大きい花火を出す
一同「あ!」
社長「俺の工場焼けちゃうよ」
おばちゃん「危ないよ、ねえ〜へへ」
電話のベル リリリリリリーン!
おばちゃん「ねえねえねえねえ線香花火ないの?」
博「ありますよ」
おばちゃん「ある?どれどれ」
さくら電話を取りに行く
さくら「あら歌子さんお元気?ええお陰さまで。
えッ兄ですか?いえまだ…お宅に?ああ…お宅に伺ってたんですか。
…いえどっかからだの具合でも良くないんじゃないかしら」
どうぞ心配なさらないで。え、大丈夫…はい、帰ったらそう伝えるわ
どうもすいませんでしたわざわざ」
と電話を置く。
さくら、土間に寅の雪駄があることに気が付く
荷物部屋へ繋がる階段から寅がかばんを持って降りてくる。
さくら「帰ってたの今歌子さんから…!」
と言いかけて寅がかばんを持ってることに気が付き絶句。
寅「おいちゃん達と面合わせるとまた引き止められたりして
面倒だからこれでいくよ、な、」と土間に下りる
さくら「お兄ちゃん」と寅を座らせて、
寅「うん?」
さくら寅を座らして「なにもこんな時間に行かなくたって明日にしたっていいじゃない」
警笛が聞こえてくる ブゥ〜…カンカンカンカン…ガタンガタン…
寅「うーん…」
裏庭で大きな花火で遊んでいる一同。歓声が起こる。
おばちゃん「きれいだねー」
社長「かぎやー」
一同ハハハハ…
さくら、寅を見ている。
寅「…、何だお前情け無え面して、え?ちょっと旅へ出るだけじゃねえかよ。
それにお前たちに迷惑掛けたらしいしさ」
メインテーマがゆっくり流れる
さくら「誰もそんなふうに思ってやしないわよ」
寅「まーたまた何言ってやんだい、へへ…」
さくら「本当よ。…お兄ちゃんが居ないとね、みんなだまーって
テレビ観ながらご飯食べて、それじゃお休みなさいって
寝るだけなの。
お兄ちゃんどうしているかなって、いつだって
みんなそう思っているのよ」
寅席を立つ「…」
さくら「…、お兄ちゃん」と追う
寅「そんな風に思われているうちが華よ。な、さくら」と参道へ出る
花火見物から帰ってくる男達が通り過ぎる。「ハハハハ…」
さくら見送る。
おばちゃんお盆を持ちながら茶の間から「誰か来てたんじゃないのかい?」
さくら、ちょっと微笑みながら下を向く「…、」
みんな黙って食事をして、じゃぁお休みと言って寝る。
さくらは、地味で退屈な兄のいない日常を寅に伝えたかった
のかもしれないが、その日常の中にこそ、幸福があることを
一番知っているのも実はさくらなのだろう。
夏 とらや
セミが鳴いている
おばちゃんかき氷を作っている。
おばちゃん「どうもありがとうございましたどうも・・は〜」
工事現場の作業員「おばちゃん、水もらうよ」
おばちゃん「あ、どうぞ暑いねえ」と氷をかく。
作業員「ああ」
シャカシャカシャカシャカ!
おばちゃん、歌子の父親の方へかき氷を持っていく
おばちゃん「へ、あの子供だましみたいな物ですけど」
かき氷をお客さんに出すたびにこのせりふを言うおばちゃん(^^;)
仏壇前のお供え物に大きなスイカ
歌子が買った釣忍ぶが風に鳴っている。
「チりン…チリン」
おいちゃん「しかしなんでしょうねえ大島は暑いんでしょうねえ今頃は…」
父親「はあ」
おいちゃん「まあ冬は暖けえ所なんだろうけどねえへへへ」
博「お手紙の様子じゃ仕事はなかなか大変らしいですねえ」
さくら「一日中子供を追い掛け回してるとか」
父親「はあ何かそのような事らしいですなあ」
満男がおばちゃんに寄ってくるがおばちゃんが暑がってよける
さくらかき氷を出す「どうぞ」
父親「あ、どうも」
おばちゃん「でもよくお許しになられましたねえ大事なお嬢さんを。
あんな遠いところに」
父親「いやああたしは反対したんですが言うことを聞くような奴じゃありませんから
何しろ頑固な所は私に似ておりまして」
一同ハハ・・
父親「あ、寅次郎さんはどうしてます?」
さくら「先月の中ごろ家を出たっきりで…
まあ、どっかで元気にはしているんでしょうけど」
父親「ほお…、放浪の旅と言うことですか」
さくら「…ええ…は…」
社長、汗を拭きながら後ろから入ってきて「おばちゃんお客様…」と指を刺す
おばちゃん「あ、どうも」
おいちゃん「社長、上がれ」と手招き
社長名刺を出しながら「あ、は、こりゃ、あのーどうも始めまして私隣で印刷屋をやってます
よろしくお願いいたします…どうも」とさくらずてに名刺が渡される
おいちゃん「タコです」
社長「何を言うんだよ」
父親「ご高名はかねがね…」お茶目な高見修吉さん(^^)
「チりン…チリン」
一同ハハハハハ!
社長寄ってきた満男をかまう
歌子のナレーション
歌子の手紙『とらやの皆さん暑い夏をいかがお過ごしですか
大島に来て一月が夢のようにたってしまいました』
父親の後ろに歌子が買った釣忍が見える。
「チリン…チリン」
江戸川土手で満男とさくらが父親を見送っている。
満男が土手を転がっていく。
満男のこういうやんちゃっていいねえ〜!
歌子の手紙『心や体が不自由な子供の面倒を見るのは
想像していたよりも遥かにに大変な仕事です。』
大島の施設で歌子がたくさんの子供と働いてる。
歌子の手紙『朝、目が覚ましてから夜寝るまで、
子供たちを相手にまるで戦争です。
毎日が無我夢中の内に過ぎてしまうのです。
皆さんと幸せについて語り合った夜のことを
時々懐かしく思い出します。』
歌子、敷地内の農園で茄子を子供たちと一緒にとっている。
歌子『今の私は幸せかどうか
そんな事を考える余裕もありませんが
でも十年先二十年先になって今のことを思い出したときに
ああ、あのころは幸せだったと、そう思えるようにと
願っています。
ところで寅さんはどうしていますか? 今旅先ですか?
私は寅さんがいつかヒョィとこの島に来てくれるような
気がしてなりません。
ああ、本当に来てくれないかなあ』
益田市 持石海岸 海水浴場
生コンクリートのトラックが止まって、降りてくる寅
住友生コン
セミが鳴いている。
寅が歩いていく。
海岸近くで、手を上げて伸びをする寅。
砂浜に花が咲いている
海岸に海水浴客。
遠くから聞きなれた笑い声が聞こえてくる
寅、ハッと見て、駆け寄っていく。
夫婦が子供たちと一緒に遊んでいる。
女「ダメえ!いやァ!ハハハハ!」
女「ハハハハ!ハアハア…!」
と赤い水玉模様の浮き袋を持ちながら砂浜に戻る。
寅「お絹さーん!」
なんと!寅が会いに来たのは
大島の歌子ではなく、
温泉津の絹代だった!
温泉津の日々を失恋の後も
大事に思っている寅に胸が熱くなった。
それでこそ、車寅次郎だ!
男はつらいよメインテーマが流れる
手を振る寅。
絹代ハッと気づいて「寅さーん」と手を上げる。
後ろで男が子供をあやしている
寅「おーう!!」
絹代「まー寅さんしばらく…!父ちゃん!父ちゃん、
ちょっとちょっと父ちゃん!ほら父ちゃん」
顔も見えないし、配役にも出てこないけど、
この無骨な、絹代の夫の演技が実にいい。
こういうキップのよさそうな、お人好しで
ちょっと気ままな人っているよねえ。
カメラ遠くから彼らを捉えている。
音楽盛り上がって
寅「あー、こらどうも旦那さんですね。あ、どうもはじめまして」
寅と絹代の夫は丁寧に挨拶しあって、
お互い気が合う感じだ。
絹代浮き袋で夫を叩く
寅「えーお絹さんにはいろいろとお世話になっておりました。
え、今そこで皆さんのあのお幸せなお姿を拝見しまして」
海パンとビキニがカメラの前を通り過ぎる。こらこら(^^;)
絹代は寅を、頼りがいのある優しい人だと、
人として好感を持っている。そうでないと寅にあのような手紙は
出さない。その絹代の心が寅には嬉しかったのだろう。
惚れたハレタでなくても、自分のことを思っていてくれる人が
いるということがたまらなく嬉しいのだ。そして温泉津の日々の
何もかもが懐かしく、こうして再来したのだろう。
寅の愛情と言うものは究極的にはそういうところに
行き着くような気がする。
寅は人というものが好きなのだ。
終
(車寅次郎) 渥美清
(諏訪さくら) 倍賞千恵子
(鈴木歌子) 吉永小百合
(車竜造) 松村達雄
(車つね) 三崎千恵子
(諏訪博) 前田吟
(諏訪満男) 中村はやと
(タコ社長) 太宰久雄
(源公) 佐藤蛾次郎
(御前様) 笠智衆
(高見修吉) 宮口精二
(絹代) 高田敏江
(みどり) 高橋基子
(マリ) 泉洋子
(歌子の姑) 小夜福子
(おじさん乗客) 吉田義夫
(老婆乗客) 武智豊子
(温泉芸者) 光映子
(寅さんの花嫁) 石原昭子
スタッフ
監督 : 山田洋次
製作 : 島津清
原作 : 山田洋次
脚本 : 山田洋次 / 朝間義隆
企画 : 高島幸夫 / 小林俊一
撮影 : 高羽哲夫
音楽 : 山本直純
美術 : 佐藤公信
編集 : 石井巌
録音 : 中村寛
スクリプター : 長谷川宗平
助監督 : 五十嵐敬司
照明 : 青木好文
公開日 1974年(昭和49年)8月10日
上映時間 104分
動員数 194万4000人
配収 8億7000万円
今回の更新は2005年2月15日でした。
これで第13作『恋やつれ』は完結です。
次回から第14作『寅次郎子守唄』を更新します。
次回1回目更新は、だいたい2月25日です