第26作 男はつらいよ
1980年12月27日封切り
護るべき存在の発見 ― 父親代わりの寅の奮闘記 『学校』構想の原点
北海道は奥尻島。
寅の仲間のシッピンの常こと水島常吉は腸閉塞で亡くなる。その一人娘であるすみれちゃんが一人淋しく住む島が
この奥尻島である。彼女は人生をもう一度やり直すために、東京で働きながら定時制高校に通おうと密かに思っていた。
定時性高校なのになにがなんでも東京ってところがいかにも若気のいたり的なところだが、まあそれは許すとしよう。
そんな時、縁あってちょうど父親の墓参りに来てくれて知り合えた寅に助けられるような感じでなんとか一緒に上京してくる。
そしてそんな不幸な生い立ちの何事にも自信のないすみれちゃんを寅は一生懸命護ろうと、直接柴又のとらやにつれて来るのである。
これは第7作「奮闘篇」での花子を護る寅を彷彿させる。
ところで啖呵は普通寅が相手に対してやるものだが、マドンナも時として啖呵をきる。
マドンナの啖呵といえば、リリー。数々の名場面がある。
「相合い傘」でのメロン騒動のリリーの啖呵は映画史上に残る名啖呵だった。
「紅の花」でも満男のことで、寅に対して啖呵を切る。この啖呵もリリーの長年の寅への想いが
感じられる胸にしみ入る啖呵だった。
そして、もうひとつ、忘れがたいマドンナの啖呵が、この時のすみれちゃんの啖呵である。
しかし、柴又参道の青山巡査はすみれちゃんを連れてきた寅を、指名手配中の誘拐犯人と間違ってしまう。
それを体を張ってかばうすみれちゃんの必死の啖呵は、胸にくるものがあった。
すみれ「やめてえ!!この人がなにしたって言うんだよ!なんてこと言うの…。
寅さんはいい人だよ。父ちゃんの友達で、私が東京に来たいって
行ったら、心配して一緒について来てくれたんだわ。
そんな人警察に連れて行くなんて、バカだよー!!
何年警官やってんだ!!出世なんかできるもんか!!おまえなんか!!
悪いと思うなら、謝ったらどうなの。こんないい人のこと、あんまりだ」
ただただ『気持ち』で動いてくれた寅に対して、心一杯の気持ちで答えるすみれちゃん。
どのマドンナにもないダイレクトな優しさは、さすが男気のあったシッピンの常の娘だ。
渡世を生きた父親の熱い血と、幼いころから体験した数々の修羅場の残影がこんなところに残っているのかもしれない。
寅はそんな一途で、純で、不器用なすみれちゃんが愛しくて、なんとか力になってやりたいと決意していくのだった。
そして5日間の奮闘努力の甲斐あって彼女は編入試験に合格し、葛飾高校の定時制で勉強をはじめるのである。
伊藤蘭さんは文句なしに可憐だ。
このシリーズは寅には若すぎる若いマドンナがしばしば登場するが第7作の花子とこの作品のすみれちゃんは
本当に護るべき存在だった。花子は無垢な生命だったが、
すみれちゃんは若いけど酸いも甘いも噛みしめて生きてきた不器用な苦労人だ。
昼間はコンビニで働いて夜定時制で勉強する日々が続いていく。
スクリーンではその後、学校での国語の授業が展開されるが、あのシーンを見ていると、のちの山田監督の作品
「学校」の原点がまさにここにあると思われてならない。
ちょうど、あのロケが行われた「南葛飾高校定時制」は私の尊敬していた林竹二さん(元宮城教育大学学長)が授業を行った高校だ。
林さんは私の学生時代から教師時代に多大な影響を受けた教育者で、
全国行脚しながらの数々の荒れた学校で奇跡の授業を行っていた。
南葛飾高校(地元の人たちは南葛と呼ぶ)もそのような学校のひとつだった。
つまり、あのすみれちゃんたちが定時制で受けた国語の授業は
山田監督があの撮影の数年前に行われた南葛での林竹二さんの 授業をイメージしたのではないだろうか。
教育にとても問題意識がある山田監督ならそういうことはきちんと知っていただろう。
ちなみにあの松村達雄さんが演じられた国語の先生の名前は脚本ではなんと『林先生』となっていた。
これは偶然だろうか。山田監督はあのシーンの演出で林竹二さんを意識していたと思う。
林先生は「学んだことの唯一の証は変わることだ」と生涯言い続けた人だ。
生徒は授業の前と後では変わっていなければならないと言うのだ。
だから授業で生徒を変えようと思えばまず教師たちこそが自分を変革して行かなければならないとも
いい続けていた人だった。
林さんの晩年のライフワークは足尾銅山鉱毒問題を追及し続けて死んだ「田中正造」の研究であり、
その影響を大きく受けた私の大学時の卒業論文も同じく「現代教育における田中正造の意義」だった。
私の学生生活の後半2年間は絵を描く傍ら、田中正造の研究ばかりしていたというイメージが今でも残っている。
それほどにも私は教育学、社会学方面では林竹二さんに影響を強く受けていたのだ。
だから南葛飾高校での国語の授業と聞くだけで私には深い感慨が押し寄せてくる。
南葛飾高校定時制(映画では葛飾高校)での松村達雄さん(林先生役)の授業
南葛飾高校定時制で「ソクラテス」の授業を行う林竹二さん
林さんの授業を聞く当時の南葛定時制の生徒たち
ちょっとわき道にそれたが
話は元に戻って、すみれちゃんの定時性入学のために奮闘する寅をはじめとらやの人たち。
この物語には激しい恋やとびっきりの美人マドンナが出てくるわけではないが、あの不器用で純粋なすみれちゃんを
何とか幸せにしてやりたいと、映画を見ているこちらも寅と同じ気持ちになってくるから不思議だ。
寅自身もみんなに宣言しているようにこの作品は惚れたハレタというより、寅が父親代わりになってすみれちゃんの
幸せを切に願う物語なのである。
当時25歳の伊藤蘭さんの美しく溌剌とした若い芝居がうまく成功していて、テンポのいい、弾けた作品に仕上がっている。
それにしても松村達雄さんは、ああいう先生の芝居をさせたら右に出るものはいない。完全なハマリ役だった。
あの濱口國雄さんの「便所掃除」の朗読は歴史的な名シーンだ。
寅とのやり取りも、当然もとおいちゃんゆえ息がピッタリで安心してニッコニコで見ていられる。
ちなみに渥美さんと松村さんは実生活でも仲が良かった。
寅の部屋を永久的に用意した博の偉大さ。
前半はさくらが狭い潜水艦アパートからやや広い小型輸送船一軒家に移り住んだ。
見に行った寅は二階にもう一部屋ある事に気づきさくらに聞く。
さくらは、それはお兄ちゃんの部屋だと言うのだった。
博のなけなしの給料から少しずつ支払っていくその重い人生の中で貴重な一部屋。
それをいつ泊まるともわからない旅人寅のために空かせておくなんてさくらはそう思っても、普通、夫は反対するもんだ。
私は博が自分から寅の部屋にしようと言ったと思っている。
さくらの性格的には博にそう言う事は言わないだろう。
博がさくらに提案したに違いない。
博は本当に偉いやつだ。さすがさくらが速攻で結婚しただけの事はある。
あ、そうそう
そしてこの第26作は谷よしのさんが別人役で3回も登場した唯一の作品でもある。
■第26作「寅次郎かもめ歌」全ロケ地解明
全国寅さんロケ地:作品別に整理
それでは本編をどうぞご覧ください。
今回も夢から
疫病や天災が続く柴又村 柴又神社
夕暮れ
尺八の音
寅のナレーション
今は昔、江戸川のほとりで、大勢の村人たちが、美しい娘を囲んで泣いていた。
工場の中村君、谷よしのさん、
柴又のご近所さんたち松竹大部屋の方々総出演!
そこへ深い筒型の天蓋をかぶった旅人が通りかかり、
『何をそんなに悲しんでいるのか』と問うた。
人の良さそうな老人が進み出てこう答えた。
おいちゃん「はい、長い間生きてまいりましたが、
こんな酷い年はございません。
真夏だというのにコタツが欲しくなるような寒さ。
秋の長雨で堤が切れて、村中はもう水びだし。
そのあとは疫病の大流行。
もはや、お上にお助けを請うほかはないと、代官様に訴えましたところ…」
代官屋敷
おなじみのメンバー3人(^^;)
悪代官「タタリじゃ!筑波山に住む天狗様のタタリじゃ!
お怒りを鎮めるために、美しい娘を差し出せ!
よいか村一番の美しい娘をな!ハハハ」
腰ぎんちゃくのタコ社長と源ちゃん村人に向かって「ハハハ」とせせら笑う。
柴又神社
ひろ吉「嘘だ!!天狗のタタリなんて嘘だ!」そらそーだ(^^;)
おさく「ひろ吉さん、私覚悟はできております。
私一人の命で村の皆さんが幸せになるなら…」
ひろ吉「おさく!」
おばちゃん「おまえの兄(あに)さんがこんな時にいてくれたら…」
おいちゃん「それを言うな…」
みんなでしくしく泣いてしまう。
寅「娘さん、安心なさるがよい。そなたの代わりに私がなろう」
おさく「あなた様が」
おいちゃん「めっそうもない」
ひろ吉「旅のお方、まさかそのような…」
寅「問答している時ではない。ささ、秋の日はつるべ落とし、
おぬしの身に着けている物を、ささ、さ、早く!」
ゴ〜〜〜ン
寅「おお。。。もう日が沈む」
そして夜
悪代官と腰ぎんちゃくは3人で天狗の面を被り、神社にやって来る。
面を取って
タコ社長「ハハハ、あったあった〜〜!ハハハ」
悪代官「ハハハ、早くフタを開けろ」
タコ社長「へへー」
ポヨ〜〜ン
ギギ
タコ社長「ヒヒヒ、お楽しみでございますね、お代官様!」
悪代官「フフフ、早く顔を見せろ、ん」
着物に包まった寅
おさくの声色で
寅「お待ち申しておりました。お代官様」
パッと起き上がり、着物をとって
寅「はっ!!」
悪代官「うわ!バケモノ!!」
と逃げる。
闇の中で捕まえられる悪者たち。
源ちゃんは髪の毛を切られて、半泣きで逃げまくる。
寅「こいつ、坊主にしてやる!待てー!!」
闇の中
源ちゃんの声「かんにん!!かんにんしてー!!」
そして翌朝
寅のナレーション
「恐ろしい一夜が明け村人たちは再び祠の前にやって来た」
つづら箱の中でなぜか隠れている寅。
おいおいそんな演出しなくても
味方なんだから普通にみんなを待ってろよ ヾ(^^;)
寅のナレーション
「そしておそるおそるつづらを開けたところが、いやもう驚いたの何の」
開けてびっくり
ポヨ〜〜ン
みんな「わあ!」とひっくりかえる。
バッと起き上がり
寅「みなさん!!おはよう!!」
と手をあげる。
あんた一晩中箱の中で待ってたのか??暇やな〜〜 ヾ(^^;)
ひろ吉「旅のお方、天狗様はどちらに」
寅は刀で指して
寅「あちら!!」
三人とも縄で縛られてつるされている。
源ちゃんは坊主(TT)
タコは首吊り(TT)
悪代官は石碑に縛られている。
おいちゃん「あ!あれは代官様!!」
みんな驚く。
寅「天狗様とは、真っ赤な偽り」
村人たち「えー!…」
寅「悪代官とその子分たちです」
おいちゃん「なんと…」
村人たち、ざわめいている。
おお!こんなところに加島潤さんがいる!
今回はセブンイレブン店長役もあるので
なんと二度出演されている。
そして、あのお掃除芸で知られる大杉侃二朗さんを
おぶっている(^^;)
柴又駅前八百満のおばさんもいる!
寅「さあ、これでもう安心だろ、おさく」
おさく「どうして私の名前を?」
寅「今を去ること20年前、この柴又村をあとにした時以来、
片時も忘れなかった名前よ」
おさく「お、お兄ちゃん?」
寅「そうよ!」
この二人のセリフ、なんか第1作の20年ぶりの再会を思い出すね。
おいちゃん「寅!」
おばちゃん「寅ちゃん!」
谷よしのさんももちろん村人で参加。
谷さんは今回は3回も登場するという離れ業を披露。
村人も喜ぶ。
寅「柴又村のみなさん、車寅次郎は帰って参りました!」
村人たち「おおお!!!」とみんな拍手。
寅の願望がよく現れている夢だね、こりゃ(^^)
寅「悪代官は滅びました。
この柴又村に永遠に平和は続くことでしょう!」と手を振る。
村人たち「おおお!!」と大歓声。
笑顔で手をあげ続ける寅。
寅はいつも心のどこかで柴又の人たちに
歓迎されたいという気持ちがあるんだね。
夢では結構実現しているのだが…。
ちなみに、
この夢は、実は脚本第1稿ではちょっと違ったものになっている。
まず寅は柴又の格式を誇る庄屋「とらや」の当主。
困った村人たちを日々助けている。
それを嫌がっている悪徳金持ちタコ兵衛は村人にきつく当たり続ける。
村人たちはそんなタコ兵衛に暴行を加え殺してしまう。
博が罪をかぶって村を出て行こうとした時に、寅がそれを制し、
「いや、おまえは将来のある身だ。この私が行きます」
と罪をかぶって自首する。
その後寅は処刑されてしまうが、その訴えは幕府を動かして、柴又村に
再び平和が蘇ったという話だ。
夢から覚めて
どこか関西の片田舎の池のほとりでうたた寝している寅。
徳島県の片田舎の池のほとりでうたた寝している寅。
徳島県鳴門市大津町木津野西川田10
厳島神社
この場所は
僕のリンクにも紹介している
寅友の小手寅さんが2013年4月に発見!
子供A「おい、おっちゃん目覚めたぞ」
ようやく起きて伸びをする。
寅「あ、あ〜…」
子供A「おい、おっちゃん目覚めたぞ」
木にもたれかかったら、その木が腐っていて、池にボチャン!
寅「ああ!」と、ビビル寅。
子供B「おっちゃん、いらんことすな、魚が逃げるわァ!」巻き舌!
この関西弁の子どもは超最高!最優秀エキストラ演技賞!
謝る寅。
タイトル イン
男はつらいよ寅次郎かもめ歌
口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、
姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
間奏が長い
奮闘努力の甲斐もなく今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる陽が落ちる
東京 葛飾柴又 江戸川土手
今回も江戸川土手に帰ってきた寅
江戸川をボートの練習する学生たち。
ミニコントはお馴染み コントの帝王 津嘉山正種さん。
江戸川土手でトレーニングする人気ボクサーの津嘉山さんにサインをねだる
群集に混ざって寅ももらおうとするが、持ち合わせの紙がない。
子供に紙を1枚もらおうとして喧嘩。止めに入ったトレーナーが寅に押されて
転び、勢いでボクサーも転ぶ。
怒ったボクサーはトレーナーの顔にマジックで
落書きを書いてしまう。もうそのあとは二人で棒振り回して大喧嘩。
寅はいつものように知らん顔して立ち去っていく。
柴又 帝釈天参道
『日蓮大聖人第七百遠忌』のポスター
さくらが自転車で題経寺二天門を曲がっていく。
とらやにやってくる。
ご近所さんに「こんにちは」
さくら自転車停めて、
さくら「ああ、いい天気」
おばちゃん、掃除しながら
おばちゃん「んー」
さくら「すっかり秋ね」
おばちゃん「どうだい、落ち着いたかい新しい家」
さくら「それがねー、窓の目隠しがまだできてないのよー。
今も大工さんとこ行って文句行って来たとこだけどね」
なんと今回からさくらが潜水艦アパートを脱出し、一軒家に引越したのだ。
おいちゃん「おい、これえ、御前様がくだすったぞ、『遅くなりましたけど』って」
転居祝 題経寺 のし紙
さくら「まあ、困ったわこんなことしていただいて」
おばちゃん「なんだろ?」
そこへ国勢調査の調査員の人がやって来る。
おっと、杉山とく子さんだ!
国勢調査員「こんにちは」
おばちゃん「あら、こんにちは」
新旧「おばちゃん」ついに御対面!(^^)
テレビ版「男はつらいよ」のおばちゃんと
映画版男はつらいよの両おばちゃんがご対面!
同じシーンで共演するのは実は初めてのことだ。
本来はテレビ版で人気のあった、
この杉山とく子さんにおばちゃん役をお願いするはず
だったのが、 彼女の舞台の仕事の都合で出れなくなり、
以前からおばちゃん役に、興味を持っていた
三崎千恵子さんが立候補し、出演することになったのだ。
調査員「先日お願いした国勢調査の紙を」
おばちゃん「国勢調査、あ、ちょっとあんた、その机の上」
おいちゃん「ああ〜」と立ち上がり
おいちゃん「えーっと、こんなことでよかったでしょうか」
調査員「えーっと、お宅はお夫婦お二人ですね」
おいちゃん、調査員の方に、甥の寅のことを尋ねる。
おいちゃん「実は…その件なんですが、もう一人同居人がおりましてね、
私たちの甥で寅次郎っていう
バカなやつなんですが…」
おいちゃん、調査員に「バカ」って言ってもしょうがないんだよ ヾ(^^;)
調査員「普段住んでいらっしゃる方ですか?」
おいちゃん「普段は…住んでないんですけど」だよなあ…(^^;)
調査員は現在住んでいる場所で届けているはずだと教える。おいちゃんたちは、今日現在とらやに
いないのでそれなら今いないから関係ないという風になり、調査員の人が帰りかけたのだが…。
おばちゃん「時々ひょろっと帰ってくんのよ」
調査員「ひょろっと…」
おばちゃん「困っちゃうの」
調査員「あ、そういう方の場合は今日現在おられる場所で届けていただくはずです」
おいちゃん「今日現在いるとこで」
調査員「ええ」
おいちゃん「あ、そうですか」
おいちゃんほっとして
おいちゃん「やっぱり書かなくてよかったんだな」
調査員が帰ろうとする。
おばちゃん「どうもごくろうさんでした」
調査員「いいえ」
寅がその刹那、スッと前を横切ったのだ(^^;)
おいちゃんあわてて「あ、ちょっと!勘違いでした。今日現在おりました」
なにもそこまで厳密に…おいちゃん律儀〜(^^)
調査員「いらっしゃるんですか」
おいちゃん「どうもすいません。あい、さくら、鉛筆」
それで、寅のことを調査書に律儀に書き加えようとしているおいちゃん。
寅が再び横切る(^^;)
さくら「お兄ちゃん!」
寅、振り向いて
寅「よ!さくら、元気か?」
みんな「おかえりー」
寅「ちょっとそのへんまで用事で来たもんんだからね、
どうしてるかなって寄ったんだ。
ん、なに、一時間くらいいたらすぐ帰るから」
おいちゃん「一時間??」1時間に敏感に反応する律義者(^^;)
おばちゃん「たった?」
寅「ああ」
おいちゃん、調査員の方を向き
おいちゃん「一時間くらいって場合は…、これ…」おいおい、バカ正直 ヾ(^^;)
さくら「ずっといるわよ、お兄ちゃんに書かせなさいよ」
寅「何?書くんだ」
おいちゃん「ん!そうだな。あのな、ここに書いてくれ、お前の名前とか年とかいろいろ」
寅、急に脅えるように声が震え、ジリジリ後ろにさがりながら、
寅「オレは別に悪いことなんかしちゃいねえからな」
完全な【条件反射】
寅のそれまでの人生がよ〜く分かる発言です(^^;)
さくら「そんなんじゃないのよ国勢調査よ」
おいちゃん「これ書かねえとな、日本の人口からはずされちゃうんだぞ」その表現笑える(^^;)
さくら「そうよ」
寅、タジタジしながら
寅「はずされたっていいよォ〜」と怖がっている。
さくら「何言ってるの、いけないわよそんな」
寅「いいんだよ」
調査員「私またあとで来ますから」と出て行く。
おばちゃん「ま、どうもすいません」
おいちゃん「どうもすいませんでした」
たぶん寅は生まれてからこのかた、
一度も国勢調査の紙を書いていないのだろうな。
結局、すぐに終わりそうもないので調査員の方は
後で取りに来るということで去っていった。
寅、呆れて
寅「まったく驚いたねえ〜、
久しぶりに帰って来たのに、罪人扱いしやがってよー」おいおいあんた耳あるのかよ ヾ(^^;)
と見当違いなこと言っている始末。
さくら「そんなんじゃないのよー。いいわよ、私書いとくから」
おばちゃん「まあ、寅ちゃんお掛けよ」
おいちゃん「どうだ寅元気だったか」
寅「うん、オレは元気だよ」
寅、土産を差し出して、
寅「あ、これ、いつもと変わらねえけど土産だ」
さくら、おばちゃんに渡す。
おばちゃん「どうもありがと」
寅「あ〜あ、どうかね、おいちゃん、何かいい話はねえか」
おいちゃん「ないない」
おばちゃん意外な顔して
おばちゃん「あら、あるじゃない、さくらちゃんの…」
おいちゃん「そうそう」
寅「なんだ、どうした?」
それでもさくらたちが、念願の一軒家に引っ越したことを知ると顔がパッと明るくなる寅だった。
おいちゃん「さくらたちがな、ひろォーい家に引っ越したんだよ」
さくら「フフフ…」実はそんなに広くないので照れている。
寅「家買ったのか!」と目が輝く。
さくら「うん…、もちろん月賦だけどね」
さくらたちは第9作「柴又慕情」の時も
タコ社長の栃に20坪の小さな家を建てようとするが、
寅は、生意気だとまくし立ててケチをつけていたが、
今回はあれから8年の歳月が経ち、寅も
もういいんじゃないかと思えるのかもしれない。
寅「へえ」
さくら「おいちゃんが、この店抵当に入れてね、
お金借りてくれたの」
えらいねおいちゃん( ̄ー ̄)
おばちゃんがおいちゃんを見て微笑んでいる。
実は夫婦というものはこういうふうに自分の夫が褒められた時、
相手を見ないものだ。
長年連れ添って自己同一化しているので見ないのだ。
他人なら逆に微笑ましく相手を見る。
寅「そうかあ、家持ったのかおまえたち…」としみじみ頷いている。
おばちゃん「2階建てだよ」とニッコニコ
寅「ほう、2階建て、そらたいしたもんだ」
おばちゃん「うん」
寅「いや、オレもね、心配してたの。
いつまでこいつらがさ、あの潜水艦みたいな
アパートに住んでんのかなっと思って、へへ」もう最高!座布団2枚(^^)/
みんな「フフフ」と笑う。
寅「で、どこだい?、そこは」
さくら「すぐ近くよ、題経寺の南側」
柴又5丁目。
現在の北総鉄道北総線の『新柴又駅』の高架付近土手寄り。
題経寺から自転車で6分くらいかな。
寅「行ってみようか!」
さくら「行く!?」嬉しそう(^^)
おいちゃん「見てやってくれよ、綺麗にしてるから」
寅「そうか、よし、行こ行こ!」と二人して出て行く。
おばちゃん「あ、晩ごはん家で作るからね」きめ細かい演出
さくら「うん」
寅参道に出て
寅「おまえ庭広いのか?」
さくら「ううん、庭なんて…」
寅「池でも作って鯉でも入れろよ、オレ送ってやるよ、引っ越し祝いに」
と、参道を歩いていく。
おいちゃん、二人を見て
おいちゃん「やっぱり兄妹だな…」としみじみしている。
ゴミ収集車の音楽 「乙女の祈り」
柴又5丁目
さくらたちの家が見える道。
田園の近く、土手の手前に5軒建売が並んでいる。
さくら「あそこ、右から2番目」青いトタン屋根の家
寅「はあー…」
さくら「小さくてびっくりしたでしょ」
寅「え、いや、いい環境だよ、周りは畑だし…」
寅が何か言えた筋合いではないし、自分を省みると言えるわけがない。
あの一軒家は現在どうなっているかというと…
現在、さくらの家があった場所は北総鉄道の高架になってしまった。
そういうこともあってさくらの家は二回三回と揺れ動くことになる。
現在の同じ位置。もうずいぶん前に高架になってしまった…。↓
息子が立っているあたりがさくらの家があった場所だと思われる。↓
ちょうど息子が立っているあたり↓がさくらの家が建っていた場所。
そういえば、後の作品では夜のロケもあった。↓
夜はさすがに風が冷たい。
第31作「旅と女と寅次郎」ではさくらの家の前で夜のロケも行われた。
私は、このシーンが好きで、第31作と言えばいつもなにげない別れのシーンをひそかに思い出す。
現在は、上のシーンの夜はこうなっている。もうすっかり変わって当時の面影はない↓
同じ方角から現在を撮ってみる。
今度は家が見える方角から見たアングル。
同じ位置の夜はこうなっている↓
寅は柴又駅のほうへ歩いていくのだった。
あの寅の歩いていった道の夜は現在こうなっている。↓
以上、ロケ地情報でした。
さて、物語に戻って…
さくら、自分の家の玄関で隣の家の男性にあいさつ
さくら「こんにちは」
隣の人「はい」
寅「あ、お隣のご主人ですか。
妹がいつもお世話になっています。どうもありがとうございます。」
と挨拶。
表札
諏訪博
さくら
満男
柴又五丁目三十七ー五
「埴生の宿」がBGMで流れる。
家のことなので埴生の宿なんだね。
寅「なんだい、まだ新しいじゃねえか!」と嬉しそう。
さくら「でも建ててから3年経ってるのよ〜」十分新しいよ(^^;)
寅「ほお〜、じゃあ前に住んでいた人が大事に使ってたんだい」
さくら「ん」
寅「な。材料だっていいもの使ってるじゃないか」
実は…
脚本第1稿では、安普請でベニヤも多いってことになっている。
が、それじゃあんまりだと思ってちょっと良くしたんだね。
なぜ前の人は家を買ったにもかかわらず、手放すことになったのか…。
なにがあったのだろうか?
さくら「仕事は丁寧だっておいちゃん褒めてたわ」
松竹大道具さんご苦労様です(^^;)
寅、ガラス戸を見て
寅「お!そっちは庭だな」
カーテンをさっとあけると、小さな空間に植物が植えてある。
さくら「狭いでしょう」
寅「え?いや、このくらいがちょうど手ごろなんじゃないか」
寅「あ、そうするとこっちがパーッと江戸川か!」
と、開けると隣の家の部屋が丸見え。
さっきのおじさんとご対面〜(^^;)
さっき両方の家に挟まれているの外から見たろうがヾ(^^;)
隣の人「お。あ、…」
寅「さきほどはどうも失礼しました」
隣の人「いえ…」
寅「おでかけですか?」着替え中に話しかけるなって ヾ(^^;)
隣の人「ええ。これから夜勤なんです」
寅「あ、はは、そうですか、ごくろうさま」
隣の人「は」と言って気まずくすぐに閉める。
寅「お隣近くっていいじゃねえか、手が届いて、ね」褒めてることになってないぞヾ(^^;)
寅窓の反対側のふすまを開けながら
寅「これは隣の部屋か?」
開けるとまくらがポロポロ落ちてくる(((^^;)
暑い中、押入れに入っているスタッフさんご苦労様です(TT)
さくら、あわてて枕をしまいながら
さくら「お兄ちゃん二階もあるのよ、見て」
寅「そうだった、二階があったんだっけな、二階二階二階」
気を取り直して2階へ上がろうとする寅。
階段と台所の間の関係が狭いので
寅「おい、ここの階段とここんとこ狭くてさ、
上から棺桶を縦に持ってくる時、大丈夫かいこれ?え」
さくら「フフフ」笑うしかないよね(^^:)
昔から住居とというとすぐに
葬式の際の棺桶の話をする寅だった。
寅「ま、そういうことは葬儀屋が考えるか」
と、上がっていく。
二階は満男の部屋がある。
寅の声「おいさくら」
さくら「え?なに」
寅の声「これ、満男の部屋か?」
さくら「そうよ」
と言いながら御前様がくれた時計の箱を開けている。
寅の声「はあ〜…、
小学生の癖に自分の部屋なんか持ちやがって生意気な」ほんとほんと(^^)
そして隣にもう一部屋…。
2階から寅の声「この空き部屋なんだい?下宿人でも入れんのか?」
さくら、下から
さくら「それはね、お兄ちゃんの部屋。
泊まる部屋があると安心でしょ」
メインテーマがしっとりと流れる。
寅「…」
さくら、箱を開けて時計を見る。
さくら「わあ、素敵な時計」
さくら「さ、どこにかけよ」
と部屋をうろついている。
寅は胸を打たれ感動して無言のままゆっくり下りて来る。
寅「お前今、なんでも欲しいものやるって言ったら、何が欲しい?」
さくら、御前様がくださった時計をかける場所を見渡しながら
さくら「そうねえ、やっぱりお金かな、
ローンの支払いが大変だから」と、超お気楽に言う。
寅「…金かあ…」
と、しょんぼりしてしまう。
寅に一番縁がないものだからである。
ちなみに山田監督の脚本第2稿では、
この二階の空き部屋が「寅の部屋」だと知らされた時に、
寅はさくらに「年中旅暮らしのオレに気を使うことはないんだよ。
気持ちだけはありがたくいただくよ」と言わせている。
本編では無言のままである。この『無言』が良い。
言葉では言い尽くせない寅の喜びと感謝が表現されていた。
しみじみいいシーンだった。
博のなけなしの給料から少しずつ支払っていく
その重い人生の中で貴重な一部屋。
それをいつ泊まるともしれない旅人寅のために
空かせてかせておくなんてさくらはそう思っても、
普通、夫は暗に反対するもんだ。
私は博が自分から寅の部屋にしようと言ったと思っている。
さくらの性格的には博にそう言う事は言わないだろう。
最初に博がさくらに提案したに違いない。
博は本当に偉いやつだ。
さすがさくらが速攻で結婚しただけの事はある。
題経寺 境内
寅は御前様にお金の無心をお願いしようとするが、
御前様「おお寅」
寅「はい」
寅「相変わらず御壮健でなによりです」
御前様「お前も元気か」
寅「はい、元気でやっております。へへ」
寅廊下まで飛んできて
寅「御前様、おりいってご相談があるんですが…」 みえみえヾ(^^;)
御前様「まさか、借金の相談じゃないだろうな」さすが仏に仕える御前様。お見通し(^^;)
寅、図星でびっくりしたが、さとられないように
寅「え!?…
結構毛だらけネコ灰だらけと…お尻のまわりは糞だらけだ…」
そそくさ退散する。
源ちゃん追いかけてきて
源ちゃん「兄貴〜!!」
源ちゃん「おかえり」
徐疫守 (かぜふうじ).の看板
これは当山が昔から伝承する除疫守り(一般には風封じと呼ばれています。)
「除疫守」は、柴又帝釈天で昔から伝わる風邪封じのお守りです。
毎年10月1日から12月20日まで受付が行なわれ、
新年の元旦から7日まで祈祷されたお守りを1月15日から3月末日までの間授与されます。
毎年申込みが多く、大変人気のお守りです。
寅「元気でやってるかおまえ」と源ちゃんの頭をいじる寅。
寅は源ちゃんにこづかいをやる。
寅「これでラーメンでも食え」と500円札を渡す。
意外にも源ちゃんが
札入れにシコタマお金を貯めていたのを発見!
寅、急に目の色が変わって
寅「ゲンちゃん〜〜、お茶飲もうお茶飲もう」猫なで声、悪だくみ丸出し((−−;)
源ちゃん「へ、へい」
寅「ちょっと話したいことがあるんだ。いろいろ、と…」源ちゃん、ホヘ( ̄ロ ̄)?
と源ちゃんに抱きつきながらニコニコ顔で源ちゃんを連れ去っていく。
源ちゃん、蛇に睨まれた蛙状態。ああ… チ〜〜ン(TT)
夕方
題経寺の鐘
とらや 二階
源ちゃんの聖徳太子の一万円札2枚にアイロンをかけ、ピンと指ではねて
祝儀袋に入れて立てかけ、眺めながらニコニコ顔の寅。
源ちゃん…ああ…(-_-;)
下ではさくらとおばちゃんの声
さくらの声「おばちゃん、お皿どこ?」
おばちゃんの声「茶箪笥の引き出し」
さくら声「これ?」
おばちゃんの声「寅ちゃ〜ん、ごはんだよ」
寅「おう、おう」
湯飲みにたてかけてホレボレ。
しばらくしてさくらが上がってくる。
さくら「お兄ちゃんなにしてんの?みんな待ってんのよ」
寅、祝儀袋(引っ越し祝い)をさっと隠して
寅「うん、今行く今行く」
祝儀袋に
引越し祝 寅次郎
さくら台所で大根おろしをすっている。
社長の声「こんばんはー、はー参った参ったよー…」
おいちゃん「おまえの参ったは聞き飽きたよ〜、ハハハ」
とらや 台所
寅が下りて来て、
寅「お待ちどう」
おばちゃん「あ、来た来た」
さくら「さあ、はじめましょう」
社長「寅さん、おかえり」
と、お辞儀。
寅、にっこにこで
寅「どうだ社長、景気は?フフ」
社長「はあ〜、ダメダメ」と笑う。
茶の間で博が
博「兄さん、お帰りなさい」
寅「博、見てきたぞ、新しい家を」
博「そうですってねー」
寅「うん」
寅「あ、社長、この度はいろいろ力貸してくれたそうだなあ、
いろいろありがとう」
とらや 茶の間
とさくらと二人でお辞儀
社長「たいしたことしてねえよ〜、銀行の保証人になったことぐらいさ」
寅座りながら
寅「おいちゃんよ、無理してくれてありがとうよ」
おいちゃん「いいじゃねえかそんこたあ」
さくら、イモの煮っ転がしを置く。
寅、イモを指差して
寅「お!こりゃいいなあ」
おいちゃん「さ、乾杯しよう」
と寅にビールを注ぐ。
さくらはおばちゃんにビールを注ぐ。
おいちゃん「寅、おかえり」
寅「どうもありがとう」
寅「博さくら、とりあえず引っ越しおめでとう、ハハハ」
社長「おめでとう〜!」
タコ社長も交えてみんなで乾杯。
社長は銀行でローンを組む時の
連帯保証人になってくれている。
これも、意外になかなかできないことだ。
社長「っぱあー!!ビールは最初の一口が一番うまい!」
おいちゃん「可笑しなやつだな、ビール飲むたびに同じこと言ってやがる」
みんな爆笑。
映画「息子」の中で、いかりや長介さんも同じように
この「っぱあー!!ビールは最初の一口が一番うまい!」
って言っていた。
で、一緒に飲んでいたとうもろこし君が同じフォローしていた。
博「兄さん、どうぞ」とビールを注ごうとするが、
寅「あ、ちょっと待ってくれ」
寅、あらためて博のほうを向きなおして、正座をする寅。
寅「博君」
博「あ、はい」
と、博も正座…。
一同やや緊張。
寅「考えてみると、たった一人の妹さくらが、
お前に嫁いではや十年。
波風もたてず仲良くやってこれたというのは、
ひとえに、おまえがよくできた男なんだ。
兄といてあらためて礼を言う」とお辞儀。
博、恐縮してしまって
博「いえ、どういたしまして」
さくら、ジーンときている。
博「いやあ、まいったなあ」と照れている。
と、照れ笑い。
寅「ついては…、ついては…」
腹巻の中ををもぞもぞ探して
寅「おまえたち夫婦が、10年目に、やっと家を持った。
それに対するの心ばかりのお祝いです」
と祝儀袋(中身は源ちゃん)をビシッと渡す。
さくら感激。
みんな感激。
社長「いやあ…さすが寅さん、立派な挨拶だー」と感心。
おばちゃん「よかったね、さくらちゃん」
さくら「お兄ちゃん、どうもありがとう」
涙ぐむおばちゃん。
博「遠慮なく、これはいただきます」
寅「うんうん」
博とさくら、お互いに頷きながら祝儀をもらう。
社長「いくらだ?」と博に聞く。これだよ(-_-;)
博「いくらだっていいじゃありませんか」
おばちゃん「そうだよ、金額じゃないんだよ、いやしいねこの男は」
おいちゃん「ささ寅、いっぱいいこう」とビールを注ごうとする。
寅は博の胸ポケットにある祝儀袋が気になる。(気にしてるふり ^^; )
おいちゃん「寅、こんどはどのへん旅してたんだ?」
寅「え?ま、あちこちな」上の空
おばちゃん「なんか面白いことあったかい?」
寅「あ、うん」
おばちゃん「おもしろいこと…」
寅「あ、ちょくちょくな」
さくら「どうかしたの?」
寅、博の胸ポケットを見ながら
寅「いや、別に、フフ」
寅「大丈夫だろな」
博「何がですか?」
寅「え、フフ、いや、ほら、あのー…、香典出す時さ、
中の札忘れちゃってね、袋だけ出すことがあるじゃねえか。
うん、いや…確かに入れたな」わざとらしい…(^^;)
社長「気になるのかい?」
寅「いやあ、フフ、ちょっとね」
さくら「じゃ、調べてみたら?」
寅「いいよいいよ、そんなのするこたあないよ」
博、パッと袋の中を見るポケットを見る。
博「あります」おいおいおい ゞ(^^;)
スッと一万円札を2枚袋に引っ込める。
社長もちらっと見て
社長「二千円かい?」
博「そうですよー」おいおいおいおいおいおい ゞ(((((^^;)
寅「二千円???」
博思い出して
博「あ!!!」
もう一度お札を出す。
なんと二万円!!
みんな驚く
さくら「あら!!」
社長大声で
社長「二万円!!」
おばちゃん目を見開いて驚いている。
満男は別に驚いていない♪ そらそーだ ゞ(^^;)
おいちゃんおばちゃん目玉が飛び出しそうになっている。
寅「ま、あればいいでしょう。しまっときなさい。フフフ」
源ちゃんのお金…(TT)
博、顔を青ざめながら
博「兄さん…、こんな大金…」
寅「いいからいいから、遠慮しないで」ニッコニコ
博「困るなしかし…」弱っている。
そらそうだ、いつも多くて数千円。少ないときは500円しか財布に入っていない
寅が、2万円を持っているはずがないことは、みんな瞬時に分かってしまうのだった。
どこでどう工面したのか…、これが心配なところ。
また、お返しという意味でも負担になる。
寅「はやく、しまっときな」
と、イモをつっつく。
博「どうでしょう」
寅「ん?」
博「気持ちだけいただくということにして、これは…」と、2万円をお膳に置く博。
寅「…」顔色が変わって、芋の煮っ転がしをつついている箸を置き、
寅「それじゃ、受け取れねえっていうのか?」
さくら「そうじゃないのよ、私たちにはかえって負担になるから…」
おいちゃん「金額が金額だからな」
おばちゃん「そうだよ」と小声で諭す。
寅、だんだん声が大きくなって
寅「くどいな、おまえたちも。いっぺん出したものが受け取れるか!」それもそうなんだよなァ。
博「…、兄さん、とにかく」と、2万円を寅の前に置く。
寅、ついに切れて
寅「しつこいよ!」と、お金と同時にビールも手で払ってしまう。
みんな「あああ」
さくら「お兄ちゃん、怒らないで。気持ちはとっても嬉しいのよ」
社長、冷静に博にこう言う
社長「じゃあ、こうしたらどうだい。
5千円だけもらってあと返したら、な」失礼なこと考えるね(−−;)
と提案。お金を崩す社長。
博もそれに乗って、
博「じゃあ、5千円だけもらうことにして。
ありがとうございました」それじゃ逆効果だって(−−;)
寅、もう爆発寸前。
おいちゃんも寅を見てハラハラしている。
社長1万円札上にかざして、
社長「寅さんの1万円冊か。
まさか偽札じゃねえだろうな。
あー!あった透かしがあった、
ホンモノだよこれ!ハハハ!」
寅は、もうその前から怒りを露骨に顔に出してんだから、
空気読めよな社長(−−)
寅「このヤロウ!てめえ!」とお膳のお札を撒き散らしす。
満男ひらひら舞っているお札を見ている。
寅「このヤロウ!
金が欲しかったら
食っちゃえ食っちゃえ、てめえは!!」
と、社長の口に1万円札を丸めて押し込む寅。
これでもかと、貪欲に笑いを作る山田監督究極の演出、
ああ…太宰さん…。ヤギか…(TT)
社長「うぐぐぐぐ」
さくらたち止めながら、寅に謝るが、
寅「どこの世界に、祝儀に釣り出すヤツがいるんだ!」
みんな「…」
寅「そら2万円って金は大金だよ、
オレだって1万円にしようか、2万円にしようか
ずいぶん悩んだんだ!しかしな、
オレはおまえたちの喜ぶ顔が見たかったんだよ!」
さくら「…」
寅「えー!どうして素直に受け取れねえんだよ」
寅「素直に喜んで、『お兄さんありがとうございました。
これで、ずーっと前からさくらが欲しがっていた
桐の箪笥を買ってやれます』なぜそう言えねえんだい!」
さくら「…」
寅「てめえら…、オレがテキヤ風情だと思ってバカにしてるんだろう!」
さくら「違うわ!お兄ちゃん」と首を振る。
寅「なに言ってやがんでぇ!
人の真心には変わりがねえんだ!」
と、かばんと帽子を持って出て行く。
おいちゃん「さくら!止めろ!」
さくら「お兄ちゃん、待って!」
しかし、寅は早足で駅の方に行ってしまう。
さくら「お兄ちゃんごめん!
私が悪かった、…わたし…」
呆然と店先で立ち尽くし、
そしてうつむいて涙を流すさくらだった。
今回もやはり、誰も悪くない。
みんなが優しい気持ちになっているのにちょっとした心のズレで、
悲劇が生まれてしまう。
このシーンを見ている人の中には、あのまま、
博やさくらが感謝だけして素直に2万円を
受け取ればいいのに、と思われる方も多いだろうが、
やはりさくらたちは寅のことが心配なのである。
寅はさくらにとっては他人ではないのだ。
寅にとって2万円がどれほど大金か充分に理解しているからこその
やり取りなのだ。
また、その金の出所も身内なればこそ気になってしまう。
おそらく普通に稼いだ金でない事もうすうす分かっているのである。
他人が祝儀をくれるようにはさくらたちは「ありがとう」と、
簡単に割り切れるものではないのである。
北海道 江差 江差港
かもめ島 頂上の広場
第18回江差追分の全国大会が野外で行われている。
追分会館の館長さんである小田島さんが教えてくださったところによると、
本来は文化センターの体育館で全国大会は行われているが
この撮影のためにかもめ島祭りで有名な「かもめ島」に
特設会場を設けて野外ロケが行われたのらしい。
小田島さんのおっしゃるには
あの時の司会の役をされたのは新木秀幸さんとおっしゃって
現在江差の教育委員会の教育長をされていらっしゃるらしいです。
この場所にあった遊具はもう今はなにもなく、
寅たちの横で営業していた民宿「花月」も今は廃業されたらしいです。
函館バスが通る。
第18回 全国江差追分大会
♪地からはえたか 浮島か
ソイー ソイ
観客拍手
司会者「は、ありがとうございました。
ただいま歌ってくださったのが、江差町の松村守冶さんでございました」
第20回NHKのど自慢全国大会(民謡の部)で松村守冶氏江差追分で優勝した方。
司会者「さ、次の方をご紹介いたしましょう。え、56番目 隣の上ノ国町から来ていただきました
柳田節子さんです。お迎えください」
観客拍手。
尺八が鳴って
ソイー ソイ
♪かもめの鳴く音に
♪かもめの鳴く音に
ふと目をさまし
あれが蝦夷地の
山かいな
江差の五月は
江戸にもないと
誇る鰊の
春の海
松前江差の
かもめの島は
地からはえたか
浮島か
そんな会場で厳寒の中バイをする寅やポンシュウ。
何を好き好んでそんなところでバイを…。
ポンシュウ「この辰年生まれの人は出世する人が多い。
だが難を言えば猪突猛進型と言ってこれがいい方に向かえばいいが、
いったん悪い方に向かった時は、悪の道に転落すると言う…」
寅は帽子の上からチェックのスカーフで頬被りをして
源ちゃんに手紙を書いている。
東京都葛飾区柴又七ー十ー三
帝釈天内
源公 様
俺がこの前お前に借りた二万円
もう少し待ってくれ。
かならず利子をつけて返すからな。
二万円の二という漢数字を太文字にしている。
ま、お金返すわけないのは確実だが、一応はがき書くだけましか。
次の人が舞台で歌を歌っている。
♪かもめの鳴く音にふと目をさまし
あれが蝦夷地の
山かいな
テキヤ仲間で火に当たっている。
舎弟がお茶を作っている。
ポンシュウお茶を飲みながら
江差追分が唄われ続けている。
寅帽子の上からマフラーを縛って防寒。
ラーメン食べた後 どんぶりが置いてある。(隣は実は民宿だった)
ポンシュウ「はー…、今年はさっぱりだなあ」
鼻水を直接地面に飛ばす漁師上がりのテキヤ仲間
ポンシュウ「汚ねえなあ北海道の漁師上がりは」
寅「漁師って言えば、あいつどうした?あの博打キチガイの」放送禁止…ヾ(^^;)
ポンシュウ「おー、シッピンの常か?」凄いあだ名(^^;)
寅「あのヤロウちょっと顔見せねえな」
漁師テキヤ「あいつ逃げちゃったんべな〜」
ポンシュウ「あ、オレ、博打の貸しがあんだ」
ポンシュウ舎弟のマコトに
ポンシュウ「おい、マコト!常どーした?シッピンの常」
向こうで子供相手のゴムヨーヨー釣りのバイをしながらそばを食っているマコト
マコト「死にましたァ〜」後の渥美さんの付き人篠原さん。
篠原さんは、かなりの作品でちょい役で出演している。
朝日印刷の工員役も多い。
ポンシュウ「死んだ?なんで〜!??」
マコト「腸閉塞ー!」
上手くいかなかった子供に優しくしているマコト
マコト「持ってきな」
死んだと聞いてみんな顔が青くなる。
みんな「いやあ…」
寅「あれも死んだか…」
みんな「…」
寅「ヤロウの故郷(くに)はなんていう島だっけ?」
漁師テキヤ「奥尻島」
寅「奥尻島か…、ま、線香の一本でも上げに行ってやるか」
ポンシュウ「あ、おまえ行くんだった、オレの香典もってってくんねえか」
寅「ああ」
ポンシュウ、舎弟に
ポンシュウ「おい、香典袋あとで買っといてくれ」
舎弟「はい」
漁師テキヤ「おらあ持ってら」
ポンシュウ「へえー、用意がいいな」
漁師テキヤ「商売物だって」
ポンシュウ「あ、そうか」
漁師テキヤ「一枚100円にまけとく」
ポンシュウ「おい、なんだってえ、おめえもいい死に方しねぞー」
寅の向こうに 元山、笹山、八幡岳が見える。
わざわざ奥尻島行くんだねえ、寅は。
こういうところは義理堅い寅だった。
奥尻海峡を寅を乗せたフェリーが行く。
すみれのテーマが流れる。
フェリーの客がくつろいでいる。
フェリーの中で香典の名前を書く寅。
御霊前 車寅次郎
仲間の分も預かっている。
岡松…
伊藤博文(千円札)をスッと二枚出して中に入れる。
汽笛を鳴らしながら奥尻港に入るフェリー 大晶丸。
後記追加: この船は「大晶丸」ではなく「大函丸」だという可能性が大きくなった。
これは私のサイトをいつもご覧くださっている「さすらいのサラリーマン」さんからの
メールでわかったことなのだ。「大函丸」は大函航路(大間⇔函館)のフェリー船名で、
「第二 大函丸」は1972年5月より譲渡船として東日本海フェリーの奥尻航路へ就航していた
とフェリー会社・船舶関連の歴史から判明したそうだ。
尚、船尾に示す船籍港も「函館」ではなく「小樽」になっているので、
船舶ファンなら船尾の映像を見ただけで奥尻航路に転用された「大函丸」と分かるそうだ。
函という感じが旧漢字の凾という字をあてているので↓
「晶」と読み間違えてしまった。
東日本海フェリー株式会社
奥尻港
物悲しくすみれのテーマが流れ続ける。
淋しい町を歩いていく寅。
ツネの家を訪ね歩いている。
菊地旅館
この旅館は青苗にあるのだが…、
かなり奥尻港から離れた南の先。
まあとにかくここは 青苗地区^^;
お食事の店 みかさ
ヤマハ
ヤンマーディーゼル
電機屋
晴山精肉店前で道を聞く寅。
水島常吉の家をようやく見つけ、声をかける寅。
寅「ごめんください」
表札に「水島」の文字
遠くで犬が鳴いている。
窓から常吉の位牌と写真が見える。
さくらが持っていたハンテンがかかっている。
この緑のハンテンは第24作でさくらが着ていたもの。
後に第34作では寅が着る。
わざわざ大船から奥尻までスタッフが持ってきたんだね〜。
留守のようだ。
近所の人に常の身内の事を聞く寅。
川尻水産 いか加工場
寅「あのー…、水島すみれって子いるかね?」
あき竹城さん「いるよ」
寅「すまねえけど、ちょっと呼んでくんねんか」
やや警戒しながら
あきさん「すみれちゃーん、すみれちゃーん、お客だわ」
微妙にジロジロ寅を見るあきさん。
すみれちゃんがドアを開けて出てくる。
寅、ちょっとお辞儀をし、外で話そうと言うしぐさ。
飴玉を舐めながら寅を見ているすみれちゃん。
寅は少し微笑んですみれちゃんにちょっと話があるって無言で合図する。
すみれちゃん飴玉を口から出して、ついて行く。
寅「あんた、水島常吉の娘さんかい?」
すみれちゃん「はい」
寅「そうかい…、おとっつぁんにそっくりだ」
すみれちゃん「…」
寅「あ、オレは、車寅次郎と言って、
あんたのおとっつぁんの友達よ」
すみれちゃん、少し納得。
寅「このたびはとんだことで…」と頭を下げる。
寅「オレはなんも知らねえで、江差でそのことを聞いて、
びっくりして飛んできたんだ。
まあ本来なら葬式にも来なくちゃいけなかったんだが、
いまさらそんなこと言ってもしかたがねえ…、
せめて、墓の前に線香の一本も上げてェと思ってやって来たんだ。
墓はどこだい?」
すみれちゃん「ちょっと待ってねえ」
とエプロンをはずしながら事務所に戻っていく。
加工場では、あきさんたちの笑い声。
あきさんすみれちゃんに
あきさん「あ、すみれちゃん、漁業組合の竹石さんに電話入れといてよ」
すみれちゃん「はい」
加工場のライトバンで
墓がある賽の河原まで寅と一緒に乗っていくすみれちゃん。
すみれのテーマ
奥尻島最北端
稲穂岬 賽の河原
墓の上にカラスがたくさん止まっている。
しゃがんで常吉に心で何かを伝えている寅。
ポケットに手をつっこんでそれを見ているすみれちゃん。
墓の前に置いた香典の束をすみれちゃんに渡す寅。
すみれちゃん、お辞儀しながら受け取る。
墓はいっそう淋しい寂れた海岸に建っていた。
手を合わせて拝む寅。
自分の分の香典と託された香典をすみれちゃんに渡す。
どこまでも淋しい荒涼とした海岸を見渡す寅。
すみれちゃんは墓のそばに石を積んで供養をしている。
寅「へー…、それじゃあ、
ここでお祈り上げると死んだ仏に会えるのか…」
すみれちゃん、もくもくと石を積み上げている。
寅「へェー、それじゃあ、おとっつあんに会いたくなったら、
いつでもここへ来ればいいんだ、な」
すみれ「別にィ、会いたくなんかないもん…」
すみれのテーマが流れる。
寅「そりゃあ、博打好きで、大酒飲みで、ろくな親父じゃなかったから、
恨みに思うの当たり前だけどな」
と、言いながら寅も石を積み上げている。
寅「あいつはいつもお前のことを自慢してたよ。すみれって言うんだろ」
すみれちゃん、寅を見る。
寅「すみれはベッピンだ。オレにはできすぎた娘だ。
どんなことあったってあいつをテキヤのカカアにはしねえ。
大学生で、まじめなサラリーマンの嫁にするんだって、
酒飲んで酔っ払うとそう言ってたよ。
今でもきっとそのへんで、おまえのこと心配してるよ。
だから赦してやんな、な」
すみれちゃんは寅を見て、それには答えず、
無言で歩いていく。
その夜 ホテル 奥尻
イカ釣り船が出ていく。
谷よしのさん演じる女中さん布団を敷いている。
(谷さん今作品2回目)
寅は夕食をとっている。
谷さん「すいませんな、お食事中、どっこいしょ。
今日は釣りのお客が大勢来て忙しいんだわ」
寅「そうか…、おばちゃんひとりじゃたいへんだなあ」
谷さん「人手が少なくてねえ」
寅「ん」
廊下から声
すみれちゃんの声「ごめんください」
谷さん「はあい」
ドアが開く
すみれちゃんが顔を出す。
この黄緑ハンテンは、
第24作でさくらが着ていたハンテン。
寅「よお」
谷さん「なんしたん、すみれちゃん」
谷さんがマドンナの名前を呼ぶ台詞はこの第26作だけ。
ちなみに谷さんが「寅さん」という名前を口にするシーンも他の作品ではある。
第19作の「寅次郎と殿様」だ。またお暇な時に見てください。
すみれ「このお客さんに用があって…」
谷さん、寅の顔を見て
谷さん「へえ…」
寅柔らかい表情で
寅「ま、入んなよ」
谷さん「どうも」
寅「あ、どうもごくろうさん」
谷さん出て行く。
大きな魚の干物をテーブルに置きだす。
すみれちゃん「わざわざ遠くまで来てもらってすいませんでした。
これ、お土産です」
寅、そういうことだったのかと微笑んで
寅「あー、ありがとう。あ、そうかい…、礼に来てくれたのか」
すみれちゃん「明日帰るんですか?」
寅、酒を飲みながら
寅「うん、ここにいても商売にならないしな」
ちょっと頷くすみれちゃん。
おもむろに寅の横に座ってお酌をしようとする。
寅「…、あ!そうか、フフ、こりゃどうもありがとう」
寅お酌されながら
寅「そうか…、あんたのおとっつさん、酒飲みだから、
いつもこうやってお酌してたんだ」
すみれちゃん「…」
ちょっとはにかむすみれちゃん。
なべつる岩が写っている「奥尻島」の観光ポスター。
すみれ「明日帰るんですか?」
寅「うん、ここにいても商売にはならねえしな」
いつも商売にはならない小さな島でバイしてるくせに(^^;)
すみれちゃん、ススッと近寄って御銚子を持ちお酌をしようとする。
寅「…!あ、そうかい、フフ、こりゃありがとう」と、顔がほころぶ。
寅「そうか…、あんたのおとっつあん酒飲みだから、いつもこうやって
お酌してたんだ」なんとまあ…。
すみれちゃん、少しはにかみ照れる。
寅「この島に、ずーっといたのかい?」
すみれ「いいえ、函館で働いてました。
お土産物屋とか喫茶店とか」
寅「うん、そうか。
函館にいたことがあるんじゃあ、
この島の暮らしはちょっと淋しいな」
船の汽笛 ボ〜
すみれ「おじさんは、東京ですか?」
寅「うん、そうよ」
すみれ「私も…東京行きたいな…」
うーん、そういうのって安直な考え…。
寅「まあ、その気持ち分かるけどなァ。
東京なんてないいところじゃないよ」
行ったことないから余計にずっと憧れ続けるんだろうけどねえ。
すみれ「…」
寅「東京で働きてえのか?」
すみれ「うん、働きながら学校行きたいの」函館や札幌じゃダメなのかい?
寅「学校?」
すみれ「私、高校中退だから就職のときもハンデがあるの。
だから東京の定時制高校行きたいなあ…って思ってる」なぜ東京なんだ?
寅「…、おまえそんなこと考えてたのかァ…。
あの極道者のツネの娘がなァ…」
すみれちゃん「じゃあ…さいなら」と
寅「もう行くのか?」
帰ろうとするすみれちゃんを呼び止め、
寅「あ!ちょっと待て!」
かばん開けて、中からとらやのマッチを取り出しす。
お、意外にもかばんの上に時刻表が!
寅も時刻表使うことあるんだねえ…。
寅「あの…東京行ったらな、ここへ訪ねてきな、
え、オレの家(うち)だから」
すみれちゃん「東京…、」
寅「うん」
すみれちゃん「…これ、なんて読むの?」そうそう、意外に読めないよねえ…(^^;)
寅「え、あ、そりゃ葛飾っていう」
すみれちゃん。恥ずかしそうに頷く。
すみれちゃん「柴又」
寅「うん」
すみれちゃん「てい…」寺の名前なんて読めないよねえ…(^^;)
寅「柴又帝釈天だ」
すみれちゃん「あ」と頷く。
寅「な」
すみれちゃん「東京」
寅「うん」
すみれちゃん「か、かつ?」
寅「あの、上野駅降りたらな、
これを見せろ、人に。
で、ここへ行きたいんだけど、って訪ねろ。な、
そうしたらすぐこれるから」
すみれちゃん「はい…」とにっこり。
寅「気をつけてな、ん」
寅「どうもありがとう」
第7作「奮闘編」の花子ちゃんの時と同じこと言ってるね(^^)
すみれちゃんほっとして頷き階段を下りて帰っていく。
はっと思い出したように部屋を出て、階段の下へ向かって
寅「あ!ちょっと待て!
あのな、あんまり目つきの悪い男に見せるなよ、え、
学生さんに見せろ、真面目そうな」
すみれちゃん「はい」と下から返事をする。
奥尻島の観光ポスター
安心した表情の寅だったが、また思い直して
寅「ちょっと待った!おい!今あのね、学生って言ったけどさ、
学生はダメだ。な、学生ダメだ。
あのー…、おまわりにしろおまわりに、な、
おまわりだったら大丈夫だ」
すみれちゃん「はい」と言って宿を出て行く。
寅、やっぱり追いかけて外に出て
寅「ちょっと待て!おい!よ!
あの、おまわりって言ったけどね、それも人によるよ、ね!」
警察まで疑うと聞く人いなくなっちゃうぞ ヾ(^^ ;)
寅、走りながら
寅「おい!ちょっと待て!」と追いかける。
玄関上がり口で谷よしのさん「???」
東京 葛飾柴又 帝釈天参道
高木屋さんの配達自転車が通る。
米倉斎加年さん演じる青山巡査(轟巡査)が敬礼をして挨拶。
とらや 台所
社長が珍しく草団子を食べている。
青山巡査が長万部から戻ってきたのだ。
この方、昔(第16作のころ)は轟巡査と言った。
青山巡査「こんにちは」
おばちゃん「あら、しばらくね青山さん」
青山巡査「はい、お袋の具合が悪く、
しばらく郷里の長万部に帰っておりました」
とらや 店
さくらも店に出て挨拶。
素朴な疑問:青山巡査は、なぜ郷里の長万部で警察官をしないのだ?
青山「実は先日来、新聞を騒がせていました誘拐犯についてですが」
おばちゃん「田舎の娘さんを上手いこと言って東京へ連れ出して、
悪いところへ売り払っちゃうっていう…」
青山巡査「このたび公開捜査にふみきりましたので、
これをどこかに貼っておいてください」
さくら「まだ捕まってなかったんですか?」
とシゲシゲと似顔絵を眺める。
はっと驚いているさくらとおばちゃん。
青山巡査「はい」
三味線がペンペンペン…
似顔絵ポスター
この顔にピンときたら110番!!
この男が婦女子誘拐の犯人です。
心あたりのかたは110番してください。
警視庁
目は細く
角ばった顔
関西弁なまりがある。
45歳
偽名 山崎忠春
中川伸郎
青山巡査「これはモンタージュで、正確ではありませんが…」
四角くて目がちっちゃい顔…のモンタージュ
そのまんま(^^;)
三味線の音 ぺんぺんペン
青山巡査「角ばった顔と
細い目が特徴であります」
社長と青山巡査目が合って
社長「オレじゃないよ、角ばってないもん、目だって大きいし、
ね、おいちゃん」
おいちゃん「フフフ」
さくら「お茶でもどうぞ」
青山巡査「あ、勤務中ですから」
青山巡査「それでは、若い娘をつれた中年過ぎの男で、
角ばった顔をしたものを見かけましたら、ご一報ください」
さくら、おろおろしながら
さくら「はい」
おばちゃん、青ざめながら似顔絵をずっと見ている。
青山巡査「では」と敬礼して立ち去る。
さくら「どうもご苦労様でした」
娘をつれた男が歩いていく。
青山巡査すかさず反応して、似顔絵と比べている。
おばちゃん、ポスターをおいちゃんに見せ
おばちゃん「ちょっと、あんた」かなり寅を疑っている((^^;)
おいちゃんポスター見て
おいちゃん「あ…よく似てらあ」(((^^;)
と、平然としている。
おばちゃん「まさか、寅ちゃんじゃないだろうね」
さくら店でぴくっと反応。
おいちゃん「バカだなおまえ〜、あいつがそんなことするわけねえだろ」
おばちゃん「そらそうだけどさ…」
おばちゃん「あ、関西訛りだって書いてある、」
おいちゃん「そらみろ」
おばちゃん「あーよかった」
この次の作品、第27作「浪花の恋の寅次郎」
では、寅は確かに関西訛りになってとらやに
戻ってきたね(^^)
そこへなんとすみれちゃんを連れた寅が
運悪くというか、お約束どおりにというか、
とらやに帰ってくる。
さくら「おばちゃん、お兄ちゃん」
おばちゃん「えー!!?」
と参道を覗き込む。
おばちゃん「あらあー」とニコニコで迎える。
おいちゃんも「帰ってきたか」と嬉しそう。
寅がすみれを手招きして、何か言っている。
三味線の音
ペンペン
タコ社長このシツエーションに青ざめ、
おいちゃんと顔を見合わせる。
みんな真っ青。
寅「お!これはみなさん、お揃いで、へへへ」と店に入ってくる。
寅はそれぞれに挨拶するが、
みんな寅のことより「すみれちゃん」のことが気になっている。
みんな声小さく「お帰りなさい…」
寅「社長、どうだい、景気は?」
タコ社長「え?うううん」とうわの空。
ついこのまえ社長と大喧嘩したばかりだろ(^^;)
寅「おいちゃん、神経痛の方はどうだい?痛むか?」おいちゃんは神経痛持ちだと判明。
おいちゃん「うん。。。まあまあだけどなあ…」
さくら、すみれちゃんを見て、おろおろしている。
すみれちゃん、しゃがんで荷物整理している。
寅「さくら、おまえ、満男、学校行かせてるか?」愚問(^^;)
さくら「そんなことよりお兄ちゃん、どうしたの?あの娘さん」だよね(^^;)
寅「え?なに?え?」 わざとらし…(−−;)
さくら「あの娘さん…」
寅「あ、あー、あれか、
これにはいろいろと深い事情があるんだけどね、
それはゆっくり話すとしてだ」
な、なんと、備後屋が青山巡査にチクっている。
備後屋、あんた寅の昔からのお馴染みじゃないのかよ(−−;)
青山巡査はモンタージュと顔がそっくりな寅を誘拐犯だと疑う。
まあ、あれだけ似てリャァねえ(^^;)
さくら、おろおろ
寅「どうだろ、あの娘、しばらく家で面倒見ちゃくれねえか」
さくら「…」
すみれちゃん、手荷物整理長いなあ〜。
チクリの備後屋は『四角い顔、キツネ目』 のしぐさ。
緊張する巡査。
すみれちゃんゆっくり立ち上がって巡査を睨む。
寅「ま、とにかく紹介するから。な、うん」
青山巡査、後ろを向いて気づかれないようにしながら、
さっと寅を見る。
青山巡査「あああ!」
寅、怪訝な顔で青山巡査を睨む。
寅「なんだい、なんかオレに用か?」
青山巡査「別に…」緊張している顔がバレバレ
寅「そうか、だったらいいがな」
寅「ささ、行こう」
と、二人してとらやに入って行く。
さくらにお辞儀をするすみれちゃん。
すみれちゃんにお辞儀をするさくら。
あわてふためいて、とらやに入ろうとして
つまずき、似顔絵をばら撒いてしまう青山巡査。
寅「ん、なんだい?え?」
と、似顔絵を拾う寅 ((★д★;))
寅、さくらに紙を渡しながら、はっと気づく。
寅「ハハ、なんだ、オレに似てるじゃないか、な、フフフ」
すみれちゃん、ちょっと巡査に怒ってる顔。
寅「この男が婦女子誘拐の犯人です。ハハ…」
ハッとこれが何を意味するか気づく寅。
三味線 ベン!!
すみれちゃん、寅を見ている。
さっと青山巡査を睨む寅。
青山巡査、寅と対峙。
お互いにらみ合う。
さくら、あわてて青山巡査に駆け寄り
さくら「あの、青山さん、ご存知でしょうけど、私の兄です」
おばちゃん「決して誘拐なんてするような男じゃありませんよ」
社長「顔は似てるけどね」
青山巡査、緊張しながら
寅を睨み
青山巡査「ちょっと交番まで来ていただけるでしょうか」
寅、爆発寸前の顔になりながらも、無理やり笑顔を作り、
寅「いいよ〜、交番好きだから」ガクガクブルブル(((;゚д゚)))
青山巡査、引きつり笑いしながら
青山巡査「ご足労かけてすみません」
寅も引きつり笑いしながら「いいえ、行きますよ」
三味線の音
ベンベンベンベンベンベンべべべべ!!!
連れられて行く寅。
寅の声「もう我慢ができねえ!このヤロウ!」
青山巡査の声「あいたァー!!」
三味線早弾き
ベンベンベンべべべべ!!!
巡査の帽子が転がってくる。
寅「やい!このヤロウ!ツラが四角けりゃ犯罪者か!
なんだてめえ長引いたツラしやがってこのヤロウ!」
第10作「夢枕」の
岡倉先生VS寅の再現だ(^^;)
青山巡査「あ!あんた、僕のアゴのこと言ってるんだね!無礼な!」
掴み合いの大喧嘩。
その時、さくらを振りほどいてすみれちゃんが
巡査に飛び掛っていくのだった。
すみれ「いやー!やめてー!」と青山巡査を突き放す。
青山巡査「おい!」
すみれちゃん「この人が何したって言うんだよ!」
青山巡査「あんたを誘拐しようとしたんだよ!」決め付けました!(^^;)
すみれちゃん、悔し涙で声を震わせながら
すみれちゃん「…なんてこと言うの。寅さんはいい人だよ。
父ちゃんの友達で、私が東京に来たいって言ったら、
心配して一緒について来てくれたんだわ。
そんな人を警察に連れてくなんて…バカだよ!
何年警官やってんだ!!
出世なんかできるもんかおまえなんかァ!!」
と、物凄い語気で啖呵をきるのだった。
「出世なんかできるもんかおまえなんか!!」
これは青山巡査にはきついパンチだったろうね(TT)
青山巡査、青ざめた顔で下を向く。
寅「わかったわかったすみれ。このアゴもよ。
悪気があって言ってるんじゃないから、勘弁してやんな」
青山巡査「もちろんそうです」
すみれちゃん「悪いと思ったら謝ったらどうなの!」これは正しい(^^)
すみれちゃん「こんないい人のこと、あんまりだ、ウウウウ」と悔し涙を流している。
青山巡査も寅もどうして言いか分からないでいる。
寅「こらこら見せもんじゃないぞ」と野次馬を蹴散らす。
寅、大勢の見物人を蹴散らし、青山巡査も交通整理をする。
青山巡査「交通の邪魔です」笛でピッピと交通整理。
この見物人の中にまたもや谷よしのさん登場!(≧▽≦)
めがねをかけてごまかしているがわかりますよ、谷さん(^^)
ま、まさか、すみれちゃんが心配でホテル奥尻から偵察に…?。
ということで、この作品だけで別人で3度も登場している。
青山巡査、チクった備後屋に
青山巡査「帰って仕事しなさい。
警察には正確な情報を提供しなさい」と怒っている。
三味線 ベンベンベンベン
夜 題経寺の鐘
とらや 風呂
湯船に浸かっているすみれちゃん。
★ファンサービスです、はい(^^)
このシリーズのファンサービスは↓
花子、すみれ、蛍子、あけみ、蝶子(^^;)
かなりお湯が熱そう.。。
茶の間ですみれちゃんの生い立ちや苦労をみんなに話してやっている。
父親絡みの数々の苦労があったようだ。
寅「なにせ、親父は極道もんだからね、うん,
学費がないもんだから
あの娘はアルバイトしながら学校行ってたんだからな」
みんな「へ〜」
寅「どうしたって勉強する時間がすくないだろ、
ね、授業についていけなくなるんだよ。
で、ズルズルズルズル休みが多くなって、
いずれ長期欠席っていうことになるんだよ…」
みんな「うーん…」
寅「ね、そのへんのところの気持ちはオレはよーくわかるな、うん」
博「そうでしょうねえ」そういや博も高校中退だったな…(^^;)
おいちゃん「そういや、寅も中学三年で中退だったからなあ…」
おばちゃん「この人は校長先生の頭ぶんなぐって退学になったんだろ」
みんな大笑い。
退学の詳しい内容は、
このあと、物語の後半で直接寅の口から語られる。
っていうか、当事もう戦後の中学校形態になっているはずだから
その程度のことでは中退にはならないで、自宅謹慎くらいだと
思うけどなあ…。
寅「オレのこと言うこたねえじゃねえか、おばちゃん」とふくれる。
タコ社長お土産のスルメのにおいをかいでいる。
おいちゃん「おふくろはどうなんだい?」
寅「生き別れだよー」
さくら「あの子が小さい時にね、家出ちゃったんだって」
博「じゃあ、ずっとお父さんと二人暮らしですか?」
寅「まあ、あいつもさあ、まんざらの女嫌いってわけじゃないからね、
そりゃ時々はくだらない女引きずりこんで、酒によっぱらってぶん殴ったり
蹴っ飛ばしたりしてる、そういう修羅場をさ、
あの子はジーッと見ながら育ったんじゃねえのかな」
おいちゃん深くうなずいて
おいちゃん「なるほどねえ…
そうでなきゃさっきみたいなきついセリフはとても出ねえやあ、なあ」
みんな考えている。
満男が英語塾から帰って来る。
満男の声「ただいま〜」
みんな「お帰り」「お腹すいたでしょ」とか言って満男をかまう。
満男「もうペコペコだよ〜」中村はやと君、このあたり最後のセリフかな。
それを聞いていた寅
寅「英語の塾からお帰りか。『ただいま】、『お帰りなさい】。
『お腹すいたのか?』」
こういう幸せな連中には、
あの不幸せな娘の気持ちはわからないなあ…」
幸せ、不幸せは相対的なものだし、本人が感じることであって
他人が決め付けることでは無いんだけどなあ…。
でも、寅の優しい心はわかりますよ(^^)
博「ところで兄さん」
寅「ん」
博「これから、あの子どうするんですか?」
それで、寅は、あらためて正座をし、博に向き合う。
博も、なんだかつい正座してしまう。
寅「相談と言うのはそのことなんだよ〜。
さっきも話した通り、東京で働きながら夜学に入りたい、
あの子のそういう願いをなんとかかなえてやりたいんだ。
腸閉塞で死んでしまった愚かな父親になり代わり
この通り頼むよ、博よ、さくらよ、この通り」
と頭を下げる。
博「え、…あ、どうも」
寅、博がどうやら協力してくれそうなので安心して足を崩し、
寅「あ〜、やだやだ、おまえ、学校の事となったら
オレは手も足もでねえかね、ハハ」
おばちゃん「そらそうだね」
なんせ中学校3年の時、
校長の頭ぶん殴って退学になってしまったのだから(^^;)
社長「恋愛のほうなら、まかせておけだけどな、ハハハ!ハハハ!」
寅ムッとして社長に詰め寄る。
寅「オレはな、あの娘の父親代わりのつもりなんだ」惚れてると紙一重((^^;)
社長「うん」と恐縮。
寅「下手な勘ぐりはやめてくれよォ」と凄んで、社長を庭に追いやる。
社長「悪かった悪かった」
寅「てめえのそういうの下種の勘ぐりって言うんだ。このヤロー!」
上のシーンは実は実は脚本には無いのだ。
脚本では↓こうなっている。
寅「社長、おまえには経済的な方面で助けてもらいたいくらいだから、よろしく」
社長「冗談じゃないよ、こっちが助けてもらいたいくらいだよ」
と、なっていて色恋の話はしていない。
いつものように現場で変えたんだね。
その時すみれちゃんがお風呂から
すみれちゃんの声「寅さん」
さくら「なあにー?」
すみれちゃん「お風呂熱いの…」
寅、ススと風呂の戸の方へ行って
寅「バカだなあ…、熱いのに我慢することないんだよ、
そこの水道…」
と、風呂のガラス戸を思いっきり開けてしまう。
すみれちゃん「キャー!!!」
★ファンサービスそのAです(^^;)
寅「ああ!!」
目をパチクリしながら
寅「間違って見ちゃった」
寅、たじたじ、こけそうになりながら
寅「いや、見ない!見ない!見ない!」うらやまし…(−−;)
さくら「いや〜ね〜」ね(^^;)
寅「見えるわけないそんな所から、ねえ!フフ」
さくら、風呂の前で
さくら「開けるわよー、すみれちゃん。
あのねー、そこの水道ひねってー、わかる?」
みんなシラ〜〜〜〜〜〜〜…(−−)
寅「へんな勘ぐりやめろよ。
オレは父親代わりだから。
あ〜、目が霞んでしょうがない」
と、頭をグルグル回してごまかす。
都立葛飾高校 校門
定時制高校の看板
【定時制で学ぼう。1〜4年各学年。
希望者は本校事務所まで 連絡先 691−3357】
2010年6月の寅福さんの調査により
この高校が【南葛飾高校】であることが判明しました!
詳しいことは「寅次郎な日々445」を御覧ください。
ちなみに満男や泉ちゃんが通っていた高校は、
私も後に調べてみた結果、
【葛飾野高校】であることが判明!
そして、この二つの高校は徒歩圏だった。
事務所の説明を受けるすみれ。
定時制 入学手続き受付
事務員さん「こちらには」
すみれちゃん「はい」
事務員「写真を貼っていただきます。ね」
すみれちゃん「はい」
事務員「で、中学校の校長印でこの割印を押していただくんです、ね」
すみれちゃん「はい」
葛飾高校 校門
待っているさくら
すみれちゃんが出てくる。
さくら「どうだった?」
すみれちゃん「これ願書」
さくら見ている
すみれちゃん「やっぱり入学試験あるんだって…、」
さくら「あら」
すみれちゃん「私自信なくて…」
さくら「でも簡単なんでしょ」
さくら説明書に目を通している。
二人歩きながら
すみれちゃん「でも、できなーい…」と沈んでいる。
さくら「ほら、書いてある簡単な試験て」簡単って書いてあるの??
すみれちゃん「どうしよう…」
さくら肩に手をやって
さくら「大丈夫よ」と微笑む。
現在の「南葛飾高校」
五兵衛橋のたもとの公衆電話で博に電話しているさくら。
江北通りの旗
綾瀬駅の近くなんだね。
足立区 綾瀬5丁目 五兵衛橋のたもと。
さくら「博さん、ちょうど願書もらってきたとこ、社長さんは?
スーパー行ったの、じゃあ私たちもそっち行ったらいいのね
うん、すぐ行く、そいじゃあね」
電話切って。
さくら「スーパー向かったって、行こう」
と二人して五兵衛橋を渡って行く。
あの五兵衛橋は、今は少し高くなり、自転車も通れる歩道橋と連結されている。
現在の五兵衛橋
実際のセブンイレブンのロケ地は、この五兵衛橋とはかなり離れた場所。
間違っても徒歩圏ではない。
このころはコンビ二のことを「スーパー」って呼んでいたんだね。
そのあとコンビニのセブンイレブンでパートで働くことに。
なんと社長のコネ。
社長もなかなか役立つね。
葛飾区青戸8丁目
セブンイレブン
『ウン、いつも入れたてでウマいんだ』のコピー
長渕剛の『順子』が店内のBGMでかかっている。
♪〜離れない 離さない 離したくない君
いろんな言葉で君に 愛をつげてきたけれども
終りさ みんな終りさ 僕のひとりよがり
君へつないだ心の糸は 今 プツリと切れた
離れない 離さない 離したくない君
いろんな言葉で君に 愛をつげてきたけれども
終りさ みんな終りさ 僕のひとりよがり
君へつないだ心の糸は 今 プツリと切れた
オー 順子 君の名を呼べば 僕はせつないよ
やさしさはいつも僕の前で カラカラ から回り
オー 順子 君の名を呼べば
僕は悲しいよ だから 心のドアを
ノックしないで ノックしないで ノックしないで
嫌いかい 嫌いなんだね こんな僕のこと
あと二年待つことが そんなにいやだったとはね
ずるいよ 君はずるいよ 内緒であんな奴と
僕とくらべていたとは 冗談のひとつにもなりゃしない
オー 順子 君の名を呼べば 僕はせつないよ
やさしさはいつも僕の前で カラカラ から回り
オー 順子 君の名を呼べば
僕は悲しいよ だから 心のドアを
ノックしないで ノックしないで ノックしないで
長渕剛さんはご存知のように第37作で、
美保さんの恋人の健吾役で登場する。
セブンイレブンのあのオレンジ色の制服…懐かしいねえ
あのコンビニは葛飾高校のそばにあるっていう設定だが、
2010年6月、寅友の寅福さんが執念であの位置を発見された。
詳しくは寅福さんのサイトをご覧ください。
葛飾区青戸8丁目22番地付近
環七と6号線が交差する付近だ。
ロケ地の【南葛飾高校】から1キロはある。遠い…。
今はもうまったく違う店になっている。
セブンイレブンのオーナーさんは今もこの2階部分にお住まいだと言うこと。
(地図参照)
社長「今店長来るからね」
さくら「採用してくれるかしら」
社長「大丈夫大丈夫、この店長はね、オレ、昔面倒見てやったんだよ。
若いけどなかなかしっかりしているやつでね、
なに、いやなんて言わせないよー」
店長「どうも」
出た!加島潤さん登場!
リリーの寿司屋の客
ひとみさんの一回目の結婚式司会
柴又村の百姓
セブンイレブンの店長
スタンダード証券の社員
社長「どうも忙しいのに悪いね」と、肩をたたく。
店長「いやいや」
社長「この子なんだけどね」
すみれちゃん深くお辞儀。
店長「は」
店長「そのへんで、お話しましょう」
社長「そう、じゃあちょっと時間拝借してね、フフフ」
お客さんレジに
本当の店長の奥さん「はい、いらっしゃいませ」
夕方 とらや 台所
夕方 豆腐屋のラッパ
寅、プレゼントもって上機嫌で帰ってくる。
おいちゃん、お客さんに接客しながら
寅「おう」
おいちゃん「お帰り」
寅「さくら、どうだった?」と台所へ。
さくら「おかえんなさい」
みんな「おかえりなさい」
寅「うまくいったかい?」
さくら「うん、就職の方はなんとかなりそう、パートだけどね」
寅「そうか、社長がちゃんとやってくれたんだな、うん」
うなずくさくら。
寅「で、高校の方はどうした?」
さくら「願書もらってきたわ」
寅、もう入れたと勘違いし、喜ぶ。
寅「そうかそうか、そりゃよかったよかった」
寅の頭の中→入学願書=入学
寅「これな、入学祝買ってきちゃったよ。
いの一番に渡してやろうと思って…、
真っ白な運動靴なんだけど、これ、喜ぶかな?」サイズ合うのかい?^^;
とニッコニコ。
さくら「お兄ちゃん、まだ入学したわけじゃないのよ」
寅「どうして?」
博「編入試験があるんですよ」
さくら「それに合格してはじめて決まるの」
寅「えー!!どうしてそんなこと、おまえ、早く言わないんだよ!」
さくら「私だって今日初めて知ったのよ、試験があるなんて」
寅「試験があるんじゃダメだよ」決めつけ(^^;)
さくら「どうして?」
寅「通るわけねえじゃないか。
中学もろくすっぽ行ってないんだよ、そうだろ。
葛飾柴又帝釈天っていう字が読めないんだから。
オレだってその字は読めるよ、そうだろおまえ、えー」
あんた地元なんだから当たり前だろが ヾ(^^ ;)
結構「帝釈天」って読み間違える人多いと思う。
すみれちゃんが特別なのではない。
なんとすみれちゃんが階段から下りて寅の横にいる(^^;)
寅思わず
寅「こんちは…」
はっと気づいて
寅「あ!すみれちゃん、ここにいたのか、ハハ…」
すみれちゃん「人の恥、さらす事ないでしょ…、バカ」
博「まだ…五日あるんだし」
さくら「うん」
博「これから勉強すれば大丈夫だよ、なあ、すみれちゃん」
寅「うん」と、うなずく。
すみれちゃん、しょぼくれて上に上がっていく。
寅「あ…」
寅、おろおろしながら、さくらたちに
寅「おーい…」
さくら「バカねえ…」
寅「どうすんだよ、おまえ…」
寅「博、おまえ、ちょっと勉強教えてやってくれ…勉強」
博「ええ、いいですよ」
寅「さくら、おまえも英語くらい知ってんだろ、教えろよ、ほんとに」
頷いているさくら。
寅「おばちゃん、おばちゃん、あの、帝釈様行ってさ、入学できるように
お百度参りちゃんとやってくれよ、え!
もうみんなでできることはちゃんとやってくれよー!
ぼんやりしてないで」
みんな今日知り合ったばかりなんだけどなあ…お百度参りは可哀相(TT)
おばちゃん「わかったよ」わかったって…、ほんとにするの(((^^;)
寅「そうだ、オレ、社長に『裏口入学』相談してこよ」 なにもそこまで…ヾ(^^;)
庭に飛び出していく。
寅の声「社長!社長!」
おいちゃん店から来て
おいちゃん「どうしたんだ?」
博「んー、大変だこれから…」
みんな「…」
博たちはその日から5日間すみれちゃんにつきっきりで特訓。
すみれのテーマ
とらや 縁側
さくらは英語。
すみれちゃん「アリス ケイム ツウ ア ウッド」
さくら「うん、それを現在形に直して」
すみれちゃん「 え、…っと、カム ケイム カムだから
アリス カム ツウ ア ウッド」
さくら「違うでしょう、アリスは3人称だから動詞にエスがつくでしょう」
すみれちゃん「あ、そうか…、アリス カムス ツウ ア ウッド」
寅が庭にやってきて、興味本位に塀から覗いている工員たちを
ほうきで蹴散らしている。
みんな塀から墜落している(^^;)
見事な渥美さんのミニコント。
寅は勉強教えられないので
工員を蹴散らす役(^^;)
すみれちゃんとさくら、その光景を見て笑っている。
おばちゃんは帝釈様の境内にある
『浄行菩薩』にお百度参り。
おばちゃん「南無妙法蓮華経〜、
南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜、
どうぞ入学できますように」
浄行菩薩は、煩悩を断ち切る。
さらに、四大菩薩に地・水・火・風の四大を当て、上行菩薩が火徳、無辺行菩薩が風徳、
浄行菩薩が水徳、安立行菩薩が地徳を表す。
それゆえ、浄行菩薩の像を水で洗い清めることによって、自分自身の煩悩を清めるということになり、
さらに自分の身体の悪いところと同じ部分を清めて祈願をすると治るといわれる。
おばちゃん「源ちゃん、お金なんか勘定してないで働きなさいよ」
源ちゃん、我に帰って財布を腹巻にしまい込む。
小金持ち源ちゃんはこの作品ではひたすらお金の勘定(^^;)
おばちゃん「南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経〜、南無妙法蓮華経」
とらや 二階
博は数学。
博「FX イコール マイナス2Xプラス3と置けば、…」
すみれちゃん「えーっと…、Xがマイナス1から1まで…」
寅、横に控えているが、転寝をしてユラユラ舟を漕いでいる。
寅は横で寝てるだけ(^^;)
博「ほっといて」
すみれちゃん「え。。。っとマイナス2、フフフ」
寅、寝言
すみれちゃん、笑ってしまう。
これは笑いますよ、渥美さんのあの芝居は素で笑っちゃいます(((^^)
題経寺 境内
寅、いてもたってもいられないで、帝釈天にお賽銭を入れてお祈りする。
御前様を見つけて
寅「御前様〜、ここ入学試験に効き目あるんですかア?」
御前様ちょっと考えて
御前様「入学試験?」
寅「うん」
御前様「はて。。。」 はて… ってヾ(^^;)
寅「あー、ダメだダメだ、こんな自信のない顔じゃ」
この二人のやり取りの間(ま)うまいなあ〜(^^)
ちなみに、帝釈天には学業成就のお守りが売っている。
私の息子も受験期に持っていた。
私自身も祈願のお賽銭を10回以上は投げ込んだ(^^;)
これが良く効くんだ。
おかげで息子は受験した大学全て合格した。
なんとも抜群のご利益だった(^^)/
源ちゃん、寅を見つけて血相変えて追いかけてきて
源ちゃん「兄貴ー!2万円2万円!返してくれや、なあー」
無理無理絶対無理ヾ(ーー;)
寅「わかってるわかってる!」とシラを切る。
それでもしつこく追いかける源ちゃん
思いっきり寅走る。
この時の二人の全力疾走コントはすばらしい!
本当に、とらやの人たちって人が良すぎるね。
おばちゃんのお百度参りにいたっては
凄すぎるくらいの親切心。
こんなこと自分の娘にしか普通しないよ。
いくら寅に頼まれたからって
ほぼ初対面の人にここまでしてやるなんて、
ほんとまさに観音様のような人たちだ。
寅の人を見る眼をどこかで信頼してるんだね。
そして遂に
試験当日の夕方を迎えるのでありました〜〜〜。
後編に続く
(2011年5月31日アップ)
そして後編です(*^▽^*)↓
そして遂に試験当日の夕方を迎える。
緊張しているすみれに対し、【落ちる】とか、【すべる】とか、【転ぶ】とか、
この手の言葉は絶対使うなと命令。出ましたおなじみ【禁句】シリーズ
「続男はつらいよ」では「おかあさん」の類はダメ!
「夢枕」では「息子」「坊や」「せがれ」はダメ!
「恋やつれ」では「夫、亭主、だんな、ダーリン」はダメ!
「噂の寅次郎」では「離婚」はダメ!
さくらとすみれちゃん下りて来て
さくら「忘れ物ないわね。あ、願書は」
すみれちゃん「はい、これ」
寅「あ、そういうものはね、バックにしまっとけ、
落っことすといけないから」あひょ…(><;)
博「あ…」
みんな指差す。(^^;)
寅「あ!!落っことすな、
なんて自分で言っちゃったよ。
あー、注意してるとどうしても
口が滑っちゃうんだよね」うわっち(((((@@;)
社長「あ」
寅「あ!!!滑っちゃったって、
自分で言っちゃったよ。全部言っちゃったよ社長」
まあ、それでも寅とすみれちゃんは
おばちゃんのお百度の願のかかったお守りを渡されて、
みんなに感謝しながら、なんとか学校のそばまで行ったのだったが…。
夕暮れ時・・・綾瀬
「綾瀬川」にかかる「五兵衛橋」
橋の袂で急に怖気づいてしまう。
すみれちゃん「寅さん、私やめようかな…。だって、どおせダメだもん」
と、橋の欄干にもたれて諦めようとする。
メインテーマが静かに流れる。
寅「すみれ、おまえそれでいいのか。本当にそれでいいのか?」
すみれちゃん「…」
寅「『あの娘の親父は大酒飲みでバクチ好きだ。親父がろくでなしから
娘もボンクラで、夜間の高校も入れやしねえ』おまえ、そうやって人に
後ろ指指さされて、平気か?」
すみれちゃん、寅を見て、首を横に振る。
寅「だろう…。 な」
とすみれの肩を持って一緒に歩いていく。
なにげないシーンだが、
私はすみれを優しく励ます寅のこの声が好きだ。
寅だからこそ言える言葉だったと思う。
こういう演出がこのシリーズの奥深さ。
葛飾高校 廊下
定時制の職員室を聞く寅。
松村おいちゃん演じる国語教師に案内されて、
そのあと編入試験を教室で受けるすみれちゃん。
寅は心配でしょうがないので、戸を開けて、指で国語教師を呼ぶ。
寅「先生、あの娘入れるかねここに?」
国語教師「さあ、それは試験の結果見なくちゃなんとも言えんけどね」
寅「いやあ、あの娘ね、オレの死んだ友達の娘でさ、
この学校は入ってもらわないと
オレ困るんだよな…」
と、財布から2千円出して
寅「少しだけど、ちょっと…」
国語教師「なんだい!?」
寅「いや、暇な時、ちょっと駅前でパチンコでもやってよ」
2千円ポッキリで、何とかしようとするなよな…。トホホ(^^;)
2代目おいちゃんの駅前でのパチンコ好きを意識した見事なコント。
国語教師驚いて
国語教師「バカ!なんてことする!」
寅「気持ちだからさ、せっかくだしたんだから」
国語教師は戸を勢いよく閉めてしまってしまい、寅は指を挟まれ痛がる。
このギャグはである松村達雄さん扮する2代目おいちゃんのキャラからとったギャグだ。
つまり2代目おいちゃんは大のパチンコ好きだったってこと(^^;)
ちなみに山田監督の脚本では「専門書かなんかを買ってくれ」となっている。
現場で「パチンコ」に変わったんだねえ〜。
そのあとの面接も、不器用なすみれちゃんは、なかなか自分の気持ちを表現できない。
それで、つい、寅が毎回割って入って、国語教師に外に連れ出されるのだった。
諏訪家 食堂
さくらが電話でおばちゃんと話している。
筆記試験も面接も上手くいかなかったらしい。すみれちゃんは泣いていたそうだ。
博が風呂場から出てくる。
さくらの家の脱衣場が映る、数少ない場面。
電話を切ったさくらに博はいいことを言う。
博「試験の成績で落としたりはしないと思うけどなあ、
そんなことで人間を評価しないのが定時制高校なんだ」
さくら「うん」
こういう冷静なところが博のいいところ。
物事の本質から目を離さないところはさすが。
博「発表は、いつなんだ?」
さくら「あした」
博「今夜は眠れないな兄さん」
翌日 夕方 葛飾高校
すみれちゃんが教科書を入れた封筒を持って
小走りで校門を出て行く。
とらや 店
すみれちゃん飛び込んでくる。
すみれちゃん「さくらさん!合格した!」
さくら「ほんと!?」
すみれちゃん「ほら!これ教科書、みんなただでもらって来たの」
みんな出てきて大喜び。
すみれちゃんは江戸川土手に寅を呼びに行く。
すみれちゃん走りながら、
すみれちゃん「寅さーん!」
寅、気づいて
寅「どうした!」
すみれちゃん「受かったァー!!」
寅「受かった!あ!イタ!」とこける寅。
寅「よかったなあー!」
すみれちゃん「ありがとう!ほんとにありがとう!」
寅「よかったよかったよかった」
二人抱き合って、小躍りして喜び合うのだった。
いいシーンだ…。
C学校に通うすみれ。そして母親との再会
夜 とらや 茶の間
夜はみんなでお祝い。
すみれちゃんが『江差追分』を歌うはめになる。
そういえば蘭ちゃんは元歌手だ!
寅はちゃかして、それ見てすみれちゃんは笑ってしまってなかなか歌えないのだった。
みんなやんややんや
楽しいひと時。
幸福な日々。
北海道 奥尻島
一方、喧嘩別れしたすみれの恋人である函館の大工、
貞男が奥尻島にすみれちゃんを
訪ねてくる。そして東京の葛飾に今住んでいることを知るのだった。
東京 柴又
すみれちゃん一生懸命セブンイレブンで働いている。
夕方 とらや 店
遅刻しそうになっているすみれちゃん、さくらの自転車使って葛飾高校へ急ぐ。
寅も備後屋の自転車を無断で奪って追いかけていく。(ミニギャグでしたァ(^^;))
葛飾高校 定時制授業
国語教師が詩を朗読している。
濱口國雄 「便所掃除」
扉をあけます
頭のしんまでくさくなります
まともに見ることが出来ません
神経までしびれる悲しいよごしかたです
澄んだ夜明けの空気もくさくします
掃除がいっぺんにいやになります
むかつくようなババ糞がかけてあります。
どうして落ち着いてしてくれないのでしょうか
尻の穴でも曲がっているのでしょう。
それともよっぽど慌てたのでしょう
唇をかみしめ戸のサンに足をかけます
静かに水を流します。
ババ糞におそるおそる箒をあてます
ボトンボトン便坪に落ちます
乾いた糞はなかなか取れません
タワシに砂をつけます
手をつき入れて磨きます
汚水が顔にかかります
唇にもつきます
生徒たち「いや〜」(((((−−;)
そんなことにかまっていられません
ゴシゴシ美しくするのが目的です
朝風が壷から顔をなであげます
心も糞に慣れてきます
水を流します
雑巾で拭きます。
金隠しのうらまで丁寧に拭きます
もう一度水をかけます
クレゾール液を撒きます
白い乳液から新鮮な一瞬が流れます
国語教師「こうやってな、汚い便器をピカピカに磨き上げた時、
この人は、自分の心まできれいになったような気がして
最後にこういう言葉でこの詩を結んでいるんだよ、よく聞けよ」
便所を美しくする娘は美しい子供を産むと言っていた母を思い出します。
僕は男です
美しい妻に会えるかもしれません
すみれちゃん、心が振るえ、しみじみしている。
みんなも静かに余韻を感じている。
ほんとうにみんないい顔をしている。
深い心の動きがあったときの人の顔は美しいのだ。
国語教師「どうだ。詩はいいもんだろう…」
そのような静かな感動とは別次元で
一番後ろの席で寅が、うっつらうっつら居眠りしている。
そのうちに、机が倒れそうになって、大きな音がする。
みんな大爆笑。
国語教師「…」 授業ぶち壊し(^^;)
寅照れまくる。
山田監督にはこれがあるのだ。つまり、さわやかな感動の後に
ステン!と転がす笑いが待っているのだ。
ただじゃすまないのがこの映画(^^;)
翌日 柴又 帝釈天参道
すみれの母親がとらやに向かって参道を歩いている。
とらや 庭
すみれちゃんが洗濯物を干している。
工員達向こうからからかっている。
このパターンはちょくちょく使われる。
さくらに呼ばれて店に来るすみれちゃん。
すみれの母親が突然訪ねてきたのだ。
母親「あらいやだ。あんたがすみれ?」
すみれちゃん「はい…」
母親「私。誰だかわかる?」
すみれちゃん「母ちゃん?」
母親は懐かしがるが、その反面、今、自分には家族がいるので一緒には暮らせないとも言うのだった。
そんな母親の言葉にショックを受けたすみれちゃんは
すみれちゃん「私、なにも、あんんたなんかと一緒に暮らしたくありません!」と啖呵をきってしまう。
母親も、すみれちゃんにそう言われるのは当たり前だと、つぶやく。
お金を置いていこうとするが、すみれちゃんはその封筒を返そうとして床に落とす。
傷心の母親はさくらたちに深々とお辞儀し、
母親「すみれのことをよろしくお願いいたします」
と泣きながら帰っていく。
さくら、すみれちゃんに追いかけるように言い、
しぶる彼女の腕を掴んで二人して外に飛び出る。
近くの電柱の陰で泣いている母親を見つけるすみれちゃんとさくら。
すみれちゃん、思わず母親の近くへ走り寄る。
第19作のテーマのアレンジ版が流れる。
すみれちゃん「母ちゃん…」
すみれちゃん、母親の肩に手をかけようとする。
母親突然振り向き、泣きながら、すみれちゃんを力いっぱい抱きしめる。
母親「いいわね、お前は幸せになんのよ」
さくら、その様子に胸を打たれている。
母親、さくらにもう一度丁寧にお辞儀をして、泣きながら小走りで去っていく。
母親の背中を見つめているすみれちゃん。
すみれちゃん、目を潤ませながら
すみれ「苦労してんだね…、母ちゃん」と、つぶやき、とらやに入っていく。
柴又7−6
どんな事情があろうとも、母と娘は会えてよかった。
そう思える一瞬だった。
さくらが追いかけなければ、すみれちゃんは辛い思い出を背負うことになったであろう。
よかった…。
すみれちゃんの言った「母ちゃん…」は切ないね。
D貞男との再会と帰ってこないすみれ
葛飾高校 定時制の教室
みんな寅の中学校時代の話を面白がって聞いている。
寅「その校長のあだ名がさ、タヌキって言うんだよ。これツラがタヌキそっくりだ」
みんな「ハハハハ!」
寅「またこのタヌキがやなヤロウでね、
こっちが嫌だなァ〜っと思ってるから向こうだってこのヤロウって思ってるわけだ」
寅「ある日ね、オレのことを捕まえて、
フン、やっぱりお前は芸者の息子か、どうせ家じゃろくな教育してないんだろ」
女子生徒「ひどーい」
寅「ね、こうぬかしやがったんだよ。オレは頭にきたなあー。
そうだろ、オレが頼んで芸者の子に産んでもらったわけじゃ
ねえんだから」
みんな、頷いている。
寅「よし!このヤロ、ぶっとばすぞ、と思ったんだ」
男子生徒「ほんとに殴ったの校長を」
寅「あたりめえだよおめえ。だけどまさか素面でやるわけにゃあいかねえだろ、な。
ちょうど運動会の日だよ。オレみんなに隠れてさ、キューっと一杯飲んでな、で、仮装行列だったんだよ。
オレ、土人のかっこうしてよ、ね。こん棒持って、タヌキの後ろ頭ねらってコキーン!とねやったのよ、うん」
みんな「うわー」
寅「だけどオレもバカだねえ〜、自分で顔黒く塗ってりゃ分からないと、思ったの。
だけどいくら顔黒く塗ったってさ、この四角いオレのツラが丸くなるわけねえもんな」
みんな「ハハハハ!」
寅「それですぐクビだよ、クビクビクビ!んー!それが中学3年。それ以来ずーっとフーテン暮らしよ」
みんな「ハハハハ!」
男子生徒B「ねえ、タヌキまだ生きてんの?」
寅「死んだよ、可愛い娘残してな」
この男子生徒Bは 高野浩之
彼はこの映画の前にドラマ「倅(せがれ)」で渥美さんと父息子を演じている。
倅(せがれ)
東芝日曜劇場(第1168回)
主な出演
渥美 清、高野 浩之(高野 浩幸)、乙羽 信子、大竹 恵、太宰 久雄、三崎千恵子、桜井センリ
山田洋次監督が描く“父をめぐる物語”の大特集。
監督が「男はつらいよ」コンビの渥美清のために練り上げた「倅」は、
出来のいい息子に頼りっぱなしの父親が溢れるばかりの愛情を注ぐ姿を描いている。
旅から帰ってくる息子・勝利(高野浩之)をどんな風に迎えようかと悩み、
一人もくもくと練習する父親など、独特の雰囲気をもつ渥美がユーモアに演じている。
勝利の幼なじみ役の大竹恵は、大竹しのぶの実妹。
【ストーリー】
自転車屋の金之介は高校生の息子・勝利とふたり暮らし。
そんな勝利は金之介に内緒で生まれて初めての一人旅に出ようとしていた。
信州まで10日間の自転車旅で、唯一、この計画を知るひとみに見送られて旅立っていく。
一方、勝利がいなくなったことに気づいた金之介は大騒ぎし、
ひとみから自転車旅のことを聞かされ余計に心配で心配で、
食事さえもノドが通らない状態になってしまう。
そしていよいよ勝利が帰ってくる日がやってきた。
金之介は暗いうちから起きて、風呂をわかし、掃除をし、息子の帰りを待ちわびた。
授業開始のチャイムが鳴る。
寅「あ、その娘ってのはさ、面白い話はあるんだよ」
英語教師が入ってくる。
寅「…さ、勉強勉強、この続きはまた明日」
みんな残念がる。
英語教師「寅さーん」
寅「ええ?」
英語教師「たまには英語の授業聞きませんか?」
寅「あー、英語はいいよォ、オレアメリカに用がねえから」寅上手い!座布団2枚!(^^)
みんな「ハハハ」
男子生徒「イェイイェイー!」
学校の主事室のおばちゃんを見つけて
寅「おばちゃん」
おばちゃん「はいー」
寅「熱いお湯沸いてる?」とお土産をぶら下げてくる。
おばちゃん「沸いてるよー」
寅「そう、美味しいおせんべい買って来たよ、柴又の」とらやのせんべいじゃないのかい(^^;)
おばちゃん「まあ、いつも悪いねえ〜」と、ニッコニコ。
寅「はい、いこいこ」と主事室へ歩いていく。
このように寅は、主事室のおばちゃんとだべりながら
すみれちゃんの授業が終わるのを今日も待つのでした(^^;)
寅のこういうところ私は大好き。人生の玄人。
なかなか学校の主事さんに焦点が合わないんだよね、父母たちって。
昼 とらや 店
おばちゃん、江戸家のおかみさんと「寒くなったね」「師走だね」、と、話をしている。
とらや 台所
さくらがお金の計算をしている。家のローンの支払いがキツイようだ。
さくら「厳しいわァ、月々ローン払っていくと」
社長「そうだろうねェ」
さくら「あとはボーナスが楽しみなだけ」うわ!キツ!座布団1枚(^^;)
社長「キツイな、さくらさんもォ」
電話が鳴る。
さくらが出てる。どうやら相手は恋人の貞男らしい。東京までバイクですみれとよりを戻しにやって来たのだ。
さくらはセブンイレブンンの電話番号を教える。
この時さくらは「セブンイレブン」の言葉を口にする。
この映画の主人公たちが会社名を口に出すのはきわめて珍しいこと。
社長はすみれちゃんの恋人だと直感。
社長「色っぽいからね、すみれちゃんは」
おばちゃん「あらそうかしら」
社長「女には分かりませんよ、あの色気は」(^^;)
社長、店を出て行きながら
社長「オレも誰かに雇われたい。ボーナスもらいたい」でも、社長って呼ばれもしたいんだろ…(^^;)
さくら、笑っている。
足立区 綾瀬5丁目 綾瀬川 五兵衛橋のたもと。
川のほとりで貞男とすみれちゃんが話をしている。
貞男が手紙書いても返事来ないから、奥尻に行き、ここまで来たとのこと。
どうやら酒に酔った勢いで、すみれちゃんと大喧嘩し、すみれちゃんは
それを本気にし、別れてしまったようだ。
貞男はもう一度すみれちゃんに
貞男「すみれ、一緒に暮らしてくれ、お願いだから、な」と手を握り、懇願する。
そして今でもすみれちゃんは貞男のことが好きだと告白する。
誤解が解けて、貞男は強くすみれちゃんを抱きしめるのだった。
夜 とらや 店
柱時計が8時の時を打つ。
寅「8時かもう…、ちっ、すみれのヤツ今頃まで何してるんだろうないったい」
とイライラする寅。今夜は学校にも登校していないようなのだ。
さくらは晩ごはんを食べるように勧めるが…
寅「めしなんか食ってられるかいバカ!」午後8時で、そこまでイライラするのは厳しいね。
寅、誘拐犯のモンタージュ見て、
寅「おい、まさか誘拐されたんじゃないだろうな」
寅、犯人のチラシを見せて
寅「さくら、こんな顔してたか?電話してきた男」
さくら「電話だから、分かるわけにでしょ、フフフ」
寅「バカヤロ!電話の声聞きゃ、
四角い顔か丸いツラか分かるじゃねえか!」無理無理ヾ(^^;)
電話が鳴る
寅が勢いよく出て
寅「すみれ!おまえ…、団子?バカ!!」客を一人永久に失ったな(−−)
ガチャ!
おいちゃん「お、よせよォ、お客さんの電話」
寅はすみれのことが心配で高校に走っていく。
さくらたちは電話をかけてきた男友達のことを話し合っている。
E朝帰りのすみれに怒る寅。そして別れの時
翌朝 とらや 店
寅が茶の間で布団をかけて仮眠をとっている。
ようやくすみれちゃんが帰ってくる。
おいちゃんびっくりして
おいちゃん「心配してたんだぞ、すみれちゃん」
すみれちゃん「すいません」
おばちゃん「あら!いったいどこ行ってたのさ!」と台所からすっ飛んでくる。
おばちゃん「寅ちゃんが心配して、
とうとう夜明かしだったんだよォ。電話すりゃいいのにィ」
おいちゃん「おい、つね」と、それ以上は言わせないように配慮する。
寅、仮眠から目覚め、上半身を起き上がらせている。
すみれちゃん、寅の前にやって来て
すみれちゃん「ごめんなさい」と頭を下げる。
寅「…」
すみれちゃん「電話しよう電話しようって何度も思ったんだけれども…」
寅、厳しい顔をして
寅「誰かと一緒だったのか」
すみれちゃん「函館にいた時の友達でね、大工さんしている人」
寅「男か」
すみれちゃん「寅さんにも会ってもらいたかったんだけど、
仕事があって今朝の汽車で帰ってしまったの」
怒りを内に秘めながもそれでも外に出てしまう寅だった。
いきなり立ち上がり
寅「それじゃ一晩その男と一緒にいたんだな!」
すみれちゃん「だって私、結婚するの、その人と」と真正面から寅を見つめる。
寅、愕然としながら
寅「結婚…」
おばちゃん、すかさず二人の中に入り
おばちゃん「寅ちゃん、怒っちゃだめ、今怒っちゃ可哀想だよ。ね」
寅、すっと二階の自分の荷物部屋に行く。
さくらたち、家からやって来て
さくら「おはよう…、あら!!帰ってたのすみれちゃん」さくらは結構平気顔、大人だね…(^^;)
おばちゃん「いいところへ来てくれたよ。寅ちゃんがね、
物凄い顔して二階へ上がっていっちゃったんだよ」
さくら「…」
おばちゃん「ちょっと行っとくれよ」
すみれちゃん「ごめんなさい」
謝るすみれちゃん。
「いいのよ」って、言いながら二階へ上がっていくさくら。
二階 荷物部屋
はやくも旅支度をしている寅。
さくら「お兄ちゃん、すみれちゃんの話、ちゃんと聞いてあげたの?」
寅、かばんに服を入れながら
寅「オレはな、あの娘が男と泊まり歩くような
ふしだらな娘だとは思わなかったんだよ」
それにしてもいきなり旅支度とはなんと短絡的な…。
さくら「そんなこと言ったって、あの子、
子供じゃないのよ。もう一人前の大人なのよ」
寅「そいつが女ったらしだったらどうするんだ?
すみれは騙されてるんじゃねえか」
さくら「それはね、お兄ちゃん、
すみれちゃんを信じてあげるしかないの」
寅「…」
さくら「あの子が、自分の判断でしたことだから
きっと間違ってない。そう思ってあげるしかないのよ」
寅「難しいことはオレには分からねえよ。
いいよ、すみれのことはおまえたちに任せる」
ある意味ほんとこの人って無責任(−−)
寅、立ち上がって階段のほうへ。
そして振り返って、
寅「そのかわり、さくら」
さくら「はい」
寅「そいつが本当にまじめな男かどうか、
すみれと所帯を持って、地道に暮らしていける男かどうか、
おまえちゃんと確かめてやれよ」
さくら立ち上がって
さくら「それだったら、お兄ちゃんが会って、
お兄ちゃんの目で確かめればいいじゃない」
寅、さくらを見て
寅「オレが会ったら、何するかわからねえよ…。バカヤロ…」
やっぱり惚れてんのかねえ…。年の差凄いけど…。
二階から下りてくる寅。
メインテーマが静かに流れる。
おいちゃん「おい、どこへ行くんだ?」
寅「決まってらあな、商売の旅よ。おいちゃんおばちゃん達者でな」
おばちゃん「行っちゃうのかい寅ちゃん」
さくらも下りてくる。
すみれちゃん、寅を見ている。
寅、店先で
振り向いて
寅「博、お前さくらと仲良くやれよ」
博「ええ…」
寅、そっとすみれちゃんを見る。
出て行こうとする寅。
すみれちゃん、立ち上がり寅にすがりつく。
寅の前に立ち、寅の腕を掴んで、
泣きながら首を何度も振り、胸に顔を埋める。
すみれちゃん「寅さん怒らないで、お願い」
寅、すみれちゃんの方に手を当て
寅「怒らねえ…。大丈夫」
寅、すみれちゃんを見つめて
寅「幸せになれるんだろうな、おめえ」
すみれちゃん「うん。きっとなる」と、泣いている。
寅「もしならなかったら、オレは承知しねえぞ」
寅、そして、優しい語調に変わり…
寅「いいな」
すみれちゃん、頷く。
寅はそれを確かめ、
スッと出て行ってしまう。
すみれちゃん、呆然と立ち尽くし、
すみれちゃん「寅さん!」
と走り出すが、歳末の大売出しの賑わいの中
寅は遥か向こうを歩いていくばかりだった。
F寅の入学願書とさくらの涙
葛飾高校 応接室
国語教師は、すみれちゃんたちの結婚には賛成だが、
結婚後も学校を止めないで続けていくように
相談しに来たさくらにも助言している。
国語教師「そうだ、この間、寅さん、いや失礼、
車さんがこれを提出なさったんです」
さくら「入学願書…」
葛飾高等学校 入学願書 (定時制)
葛飾柴又4−5−10−2
保護者が諏訪さくら 妹
車寅次郎 (男)
昭和15年11月29日40才
葛飾区柴又七ー七ー21
葛飾商業
卒業年月 昭和25年4月 卒業見込
さくら、なんともいえない表情で、寅の書いた願書を見ている。
国語教師「私どもの学校が気に入ったから、
正式に入学したいと、そういうご希望なんですが、
実は車さんは中学3年中退なんです」
さくら、頷く。
国語教師「ということは、高校受験の資格がないわけで、大変お気の毒ですが、
認定試験を受けるか、あるいは、夜間中学…てのがありますから、
そちらに入っていただくか、
それしか方法がないんですけどね」
この国語教師の言葉が後の山田監督の作品『学校』に繋がっていくのだ。
さくら、願書を見つめたまま目が潤んでいる。
国語教師「車さんに、そうお伝え願いますか」
さくら「あ、はい。ちょっと旅に出ておりますけど、帰ったらそう伝えます」
国語教師「はい」
願書をもう一度見つめるさくら。
寅は、15歳の時に家出をして以来、自分の好きなように生きてきた。
風の向くまま気の向くままその日その日を生きている。
しかし、そんな寅でも『社会』や『行政』の壁というものを感じざるを得ない時もある。
アウトサイダーゆえにその厚い壁に 阻まれることもあるのである。
定時制高校は、いみじくも博が言ったように、テストの成績などで人間を評価しない。
「学びたい」という欲求さえあれば、学ぶチャンスを与えてくれるところが最大の長所であり、
その理念に基づいて最大限の援助を行ってくれるところである。
しかし、寅は「葛飾商業」という中学校を3年で中退している。つまり卒業していない寅は、
その入り口にすら立つことを 許されないのである。門前払いというやつだ。
それじゃ夜間中学校に行けばいいんじゃないの、と言えばそれまでだが、
やはり「行政の取り決め」といのは寅の気持ちに寄り添うことはしないのである。
いやまったく当たり前といえば当たり前なんだけれど、やはり淋しいし悔しい…。
さくらは、寅にほんの少し芽生えた学ぶ心に感動すると共に、
そのささやかな希望を受け入れられないこの厳しい社会に愕然としたのかもいれない。
そしてそんなことは何も知らない兄を思うと、いっそう悲しみが押し寄せて来たに違いない。
第28作「寅次郎紙風船」でも似たようなことがおこる。
寅は光枝さんと所帯を持つために今度こそ真面目に働こうとして『日の丸物産』の面接を受ける。
面接は盛り上がったのだが、経歴が悪かったのか、背広ネクタイに雪駄履きという
奇妙な格好が影響したのか、結果は『不採用』。 これがある意味社会というものなのだろう。
おいちゃんは悔しさのあまり 不採用の紙を投げ捨てていた。私にはあの気持ちが分かる。
Gすみれの結婚と愉快な再会
正月 江戸川土手
源ちゃんが江戸川土手で
寅からの借金返済についてのハガキを読んでいる。
寅の声
寅「新年おめでとう、例の2万円だけど、
もう少し待ってくれ。必ず利息をつけて返すから 元旦 寅 」
源ちゃん、怒って、ハガキを指ではじく。
源ちゃん、寅には2万円は無理だよ…諦めるしかないね(TT)
とらや 茶の間
正月で物凄い賑わいの店。
さくらやおばちゃん大忙し。
男たちはあまり手伝ってない(TT)
すみれちゃんと貞男が新年の挨拶にやって来て
仏間で博と結婚のことで話をしている。
社長が隣の茶の間から、なにげに貞男を見ている。
おいちゃん、ひそひそ話で社長に
おいちゃん「おい、どう思う?すみれちゃんのコレ(親指)」ひそひそ
社長「大丈夫、あの男なら間違いないよ」ひそひそ
おいちゃん「自信たっぷりだなおまえ」ひそひそ
社長「こう見えてもね、経営者の端くれだい。人を見る目くらいあるよ」ひそひそ
おいちゃん「どうだか、まあ」ひそひそ
さくら「あー、忙しかった」と仏間に来る。
さくら「ほんとに大きいわねあなた」
貞男「いやあ、頭は空っぽです」と、自分で頭を小突く おいおいヾ(^^;)
みんな「フフフ」
博「フフフ、3月に結婚式挙げるんだってさ」
さくら「あら!、そう〜!」
さくらニコニコで、おいちゃんのほうを見て微笑み
さくら「やっぱりちゃんとしたほうがいいわよね」
すみれちゃん「二人とも、あまり身寄りないから、どっかのお宮で簡単にと思って」
博「簡単でいいよ、そんなものー」
さくら「ねえ、学校、続けるんでしょう?」
すみれちゃん「ええ、もちろん。この人にも勧めてるの、一緒に行こうって」
貞男は今東京で大工さんしてるのかな?
博「3月か…、兄さん出られるといいけどな」
さくら、下を向いて
さくら「そうねえ…」
すみれちゃん「出てくれるかしら?」
さくら「どうして?」
すみれちゃん「だって怒ってんだもん、私のこと」
さくら「大丈夫よ、この人見たら安心するわよ」
すみれちゃん、貞男を見る。
さくら「ねえ、おいちゃん」
おいちゃん「そうそう、寅の気に入るタイプだよ」
みんな大笑い。
茶の間に行ってみんんで酒を飲む。
社長はろいろ手のひらを比べあったりして貞男をかまっている。
すみれちゃん、さくらにお土産を渡す。
さくら、お礼を言って床の間に持っていく。
さくらのテーマが流れる。
寅の諏訪家への年賀状 新しい住所、新しい家だね。
寅の声「博、さくら、新年おめでとう。
去年の暮れはすみれのことで
おまえたちにいろいろ迷惑をかけてすまないと思っている。
幸せ薄いあの娘を、なんとか幸福にしてやりてえ、
それが父親代わりのオレの一番の願いだ」
徳島県鳴門市
四国 巡礼八十八箇所巡り 第一番札所 霊山寺の門前、茶店
お遍路さんたちが茶店で座っている寅の前を通っていく。
鳴門道路にかかる赤い橋を歩いて渡って行く寅。
せとうちを遠望できる展望駐車場で景色を見ている寅。
寅のハガキの続き
寅の声「どうか、どうか、すみれをよろしく頼む。
正月元旦 阿波 徳島にて 車寅次郎」
鳴門スカイライン 展望台
そこへ、なんとあの奥尻島の
イカ加工工場のあき竹城さんがやって来る!
あきさん「ちょっとあんた!」
寅「…?」
あきさん「やっぱりあんたじゃねえの!」
寅「そういうおまえさんは?」
あきさん「いやだあ〜、ホレ、北海道の奥尻で、すみれちゃんと働いてた」
寅「あーあ!あのスルメ工場のイカ裂きのおばさんか」
あきさん「うん!ハハハヒヒヒヒ!!」
寅「なんだい?また今日はここへ?」
あきさん「いやあ、去年豊漁でよォ」
寅「うん」
あきさん「みんなで暖かいとこ行くべって来たんだわあ〜」
寅「あー、そうか、そりゃよかったな」
あきさん「どうだね、一緒にバス乗らねえか」
寅「ん…、でもいいのかい?」
あきさん「乗る!?」
寅「んん…フフフ」
あきさん「嬉しいィヒヒヒヒ!!」(^^;)
寅「フフ…」
あきさん「いくべえ。いやよお、
男いなくて退屈してたとこだったんだよ、ヒヒヒヒ!」 寅…(((((TT)
と、寅の腕をガッチリ掴んで引っ張って行く。
寅「参ったな、フフ」と、ヨタヨタ歩いていく(^^;)
【阿波鳴門巡礼ツアー 「奥尻島 御一行様」】の超派手な幕が張られたミニバス。
あきさん「ほらみんな!お客さんだぞ!」
バスの人たち「ワアアアア!」と拍手
寅「こんにちは」とお辞儀。
あきさん「ほら乗った乗ったァ!」
寅「どうも北海道の皆様遠路ハルバルご苦労様でございます」
みんな拍手
あきさん「ほんじゃ行くか」
あきさん「今夜は男がいっから楽しいよ」
寅「エヘへへ」
あきさん「オラ、ストリップやるだよ!ハハハ!」おいおいヾ(^^;)
みんな「アハハハハ!」
あきさん「おめえもやっか!やれよ!ハハハ」と、同僚も誘う(^^)
バスは、鳴門道路を走っていく。
遠く瀬戸内の海が白く光って
終