バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第2作 続・男はつらいよ
1969年11月15日封切り
『でも、もう…そのお父さんはいないのね…』 寅に愛を与えたマドンナ「夏子さん」
第1作の成功に気を良くした松竹はすぐさま第2作を作ることを決断するが、急がせたために全く新しい
脚本を書くに至らず、ストーリーや登場人物等を考えるとかなり『テレビ版の影響』がある。
散歩先生のこと、寅の入院、菊との悲しい再会、うなぎ釣り、散歩先生の死、などなどテレビ版の脚本無しにははじまらないのである。
これは第4作「新男はつらいよ」の設定にも同じことが言える。
しかしそれでもなお、この第2作はスタッフ、キャストのの情熱、安定した構成力、密度の濃さ等、長いこのシリーズの
中でも最高峰の一つであることは間違いない。特に散歩先生のキャラクターはとても魅力があり、かつ、東野英治郎さんの
好演もありこの作品が格調の高い物になっている。はしょって作っても上手くいくときは上手くいくものだということが
この作品や「望郷篇」などで見事に証明されている。このシリーズ全体で見ても最高傑作のひとつに上げていいだろう。
題名の「続.男はつらいよ」でもわかるように
スタッフがこの時点でもなおシリーズ化を決めているわけではないのがわかる。
もう1本、もう1本、という感じでこのあともしばらくは作っていく。それもとてつもなく短い期間で。
松竹もスタッフに無茶を言ったもんだが山田監督達もよく情熱を持って作っている。たいしたものだと思う。
もっともあまりにも急がせたためにこの後の第3作、第4作は、山田監督は脚本までの担当でとどまっている。
体は一つなので仕方が無いことだが、少し残念だともいえる。
ちなみに第3作を担当した森崎東監督の作品「フーテンの寅」はエネルギッシュな佳作で、このベストには
入れなかったが、山田作品とは違った「生々しさ」が光っている。
寅次郎を生身の香具師として描いた最初で最後の「映画」とも言える。このシリーズのどの作品にもない
「人間寅次郎」だ。ある意味、あれこそが厳しい現実の中で生きている寅次郎だとも言える。
また、第4作の「新.男はつらいよ」もオリジナル版を最も深く知りうる小林俊一監督の作品に相応しい、懐かしき
柴又の人々が佐山俊二さんや二見忠夫さんによって、そして谷よしのさんたち松竹大部屋の方々によって
生き生きとスクリーンを駆け回っていた。ある意味、あれこそが本来の「男はつらいよ」なのかもしれない。
柴又を舞台にした寅次郎は実にいいものだ。
夏子さんの心根 寅のために泣いてくれたただひとりのマドンナ
下の写真を見ていただきたい。
これは第2作「続男はつらいよ」のラスト、京都三条大橋の袂で寅とお菊さんの二人の背中を見守る夏子さんの
表情である。
寅に対してあんなに優しい眼差しを投げかけた人は後にも先にも散歩先生のお嬢さん、坪内夏子さんだけである。
このことはこれまでに何度もしつこく書いてきたが、このシリーズでの彼女の寅に対する眼差しは惚れたハレタを超えて、
運命共同体に向ける眼差しそのものだ。
寅に必要なのはマドンナが彼を好きになってくれる以上に実はマドンナのこの眼差しなのだ。
このシリーズで寅に対してこの眼差しを向けたのはさくらと夏子さんだけだ。
彼女の心は温かい。それは父親の坪内散歩先生から受け継いだ優しさだ。前にも書いたが、
葛飾商業時代の恩師である散歩先生は寅のために懸命に生みの親に会いに行くことを説得し、
悲しい結末の果てに寅と一緒に泣いてやるのである。私はこのシーンが大好きだ。
赤の他人で、寅のためにここまで一生懸命考えてくれるのはこの坪内散歩先生意外には誰もいない。
そのお嬢さんの夏子さんも観音様のように慈悲深いのである。寅に付き添いお菊さんの経営する
ラブホテルで必死にお菊さんを説得する彼女の姿に私は心を打たれた。
私は寅が好きで、寅びいきだ。
だから寅のことを男性としてみてくれなかった夏子さんに対して実はやるせない思いをしてしまうが、
そんなことが吹っ飛んでしまうくらい寅と夏子さんは息が合っている。それもそのはず、夏子さん役の
佐藤オリエさんはテレビドラマの「男はつらいよ」の唯一無二のマドンナ坪内冬子さんなのである。
佐藤オリエさんが優しく「寅ちゃん」と呼ぶその声には長い歴史を感じるのだ。彼女こそ寅のマドンナの
代表である。マドンナの名の通り寅を優しく包み込む母なる温かみがある。寅の生涯の恋人がリリーなら、
寅の生涯のマドンナは夏子さんである。
坪内冬子という名前は、第1作で御前様のお嬢さんとして使われてしまったので、
ここでは冬を夏に変えて夏子としている。冬から夏なんていう簡単な変え方がいかにも山田監督らしい。
坪内逍遥をもじって坪内散歩(逍遥は平たく言うと 散歩と言う意味)なので坪内姓は変えれないのである。
私はこの夏子さんと寅の場面で、あのラストの三条大橋以外の場面でもうひとつ好きなシーンがある。
江戸川土手でうなぎを釣る寅を夏子さんが訪ねるが、あの場面で自分の父散歩先生の生い立ちを
少し語るのである。
夏子「寅ちゃん…私夕べ、お父さんに叱られちゃった…。
寅ちゃんのことで」
寅「え!?オレのことで?」
夏子「あたし寅ちゃんのお母さんのことひどい人だって言ったら、急に怒り出して
『子供が可愛くない親がどこにいる、子供を捨てるにはそれだけの辛い事情があったはずだ。
他人のおまえが生意気な口をはさむんじゃない』って」
寅「でもねえ、お嬢さん、それはあのババアの面を見たことのねえ人の言うことですよ。
そうですよね。先生のような、上品なお母さんを持っている人には、とてもわからねえ…」
夏子「父もね、お母さんの顔知らないのよ…、」
寅「えっ!…」
夏子「父が二つか三つのときに死んだの…」
工場のサイレンが聞こえる。
寅「はァ…先生も産みのおふくろさんの
顔知らないんですか… はぁー…」
散歩先生が寅の気持ちをよく分かってくれる背景には、同じ寂しさ、哀しさを共有している
せいかもしれない。
このシーンは散歩先生のことを語っているのだが、それと同時に夏子さんの心根の柔らかな部分が
見ている私たちにも優しくじんわりと伝わるいい場面だ。
夏子さんも寅のことを冬子さん同様親しみを込めて「寅ちゃん」と言う。できることなら冬子さん同様
夏子さんも、さくらたちと同じ時空に生き、シリーズの途中に2度3度と顔だけでもチラッとスクリーンに
見せて欲しかった。夏子さんは、このシリーズにかなり縁の深い人だと私は思っている。
寅の生涯たった一人の師 散歩先生
寅がどん底に落ち込んだ時、散歩先生が傍にいてくれ、そして泣いてくれるのだ。
ほんとうに散歩先生は寅の恩師だ。あれこそが『師』というものだとつくづく思う。
あんないい先生と生涯で出会えて、それだけでも寅はほんとうに幸せものだ。
さくらや身内はともかく、赤の他人で、誰も寅みたいな奴と一緒に泣いてくれはしない。
寅は、いつもマドンナを初め、旅で出会った人々を笑わせたり、励ましたり、助けたりしているが、
誰も、人生を通して業のように存在する寅の淋しさや辛さの荷物を少し持ってやろうなんて思っていない。
だからこそ、逆に寅に深い愛情を注いでくれた散歩先生は素晴らしいし、
寅の悲しみに立ち会った夏子さんは素晴らしい。
寅の悲しみを共感し、分かち合えるというのは、ひとつの能力であり、才能だと思う。
寅が産みの親の菊さんと、会おうかどうか躊躇している時に散歩先生は強く会いに行くことを勧めるのだ。
散歩先生「寅、これは大事なことだからよーく聞け。」
老病死別といってな、人間には四つの悲しみがある。
その中で最も悲しいのは死だ。
おまえのおふくろもいつかは死ぬ。」
その時になってからじゃ遅いんだぞ!その時になって
あ~、一度でもいい、産みのお袋の顔を見ておけばよかった、と
後悔しても、取り返しがつかないんだぞ!そうだろ!寅!」
寅「…」
散歩先生「さ、会いに行け。生きてるうちに。今すぐだぞ」
しかし、結局寅はお菊さんと会い、とんでもない修羅場を経験してしまう。
心がズタズタに切り裂かれてしまったのだ。
散歩先生「あーあー、俺が悪かった。俺が無理にすすめなければこんな悲しい目に
会わなかった。泣け!泣け!泣け!こころから泣け!」
バン!とお膳を叩いて泣きながら
散歩先生「実にこの世は悲しいなあ…」
寅「そうだよ、ウウウ…、だったら先生だって泣いてくれよ!」
散歩先生「よし!泣こう。寅、お前と一緒に二人で泣こう、な、寅!」
寅はほんとうに幸せである。
夏子さんの亡き父への言葉
『お父さん、寅ちゃんは、お母さんに会っていたのよ。
そうなのよ、やっぱりそうだったのよ。お父さん。
お父さんがどんな顔をするか見てみたいわ。
でも…もう、そのお父さんはいないのね…』
この京都三条大橋のラストは、この長いシリーズの中でも屈指の名場面であり、
第8作「恋歌」のラスト、第17作「夕焼け小焼け」のラスト、第25作「ハイビスカス」のラスト、
と並び、日本映画史上に残る名ラストシーンだと言えば笑われるだろうか。
私は本気でそう思っている。
■第2作「続男はつらいよ」全ロケ地解明
全国ロケ地:作品別に整理
本編
今回は夢から
第1作との違いはあの松竹富士山の段階から
「男はつらいよ」のテーマ曲が流れるところである。
この後のほとんど全てがこのパターンを採用していく。
第1作との違いは夢のシーンがこの作品から登場してくることだ。
このあとも夢のシーンが無い作品もちらほらあるが、
基本形としては冒頭には「夢」のシーンが定着していく。
もっともこの第2作はコントの要素は無く、
本題への伏線にとどまっている。
全体に薄い秋の夕暮れ色の画面。
寅 「もしやあなたはお菊さんと申しませんか?」「この顔に見覚えがございませんか」
「今を去る38年前、雪の降る寒い夜、
玉のような男の子をお産みなすったはずだ。」
この時点で38歳の寅次郎。
「おっかさんの倅、寅次郎でござんす」
「おっかさーん…」
「おっかさ~~~ん」と
エコーがかかって…
このシーンには後に本題の中で寅が京都で
母親のお菊に会う直前に人違いするお澄(すみ)さんが
登場している。←風見章子さん
「真実一路」でふじ子さんのお母さん役してましたね。
本当の菊は、泣く子も黙るあの、
ミヤコ蝶々さんである。
夢の中でもどうやら人違いしているらしい。
(観客はこの時点では寅同様この人が
お菊さんだと思っている。)
ここで夢から覚める。
三重県 伊賀 柘植駅 近く
駅近く 旅先の料理旅館「小崎亭」
このロケ地を完全に発見されたのは、私がいつもロケ地についていろいろ助言をしていただいている
三重県在住のNさんである。
彼が発見して、数年後、鉄道中心の寅さん本が出版され、
それにはなんと「木曽福島の上松駅」と間違って書かれてあったらしいのだ。
Nさんは写真がライフワークで、もう何十年も日本中めぐられている。
そういうこともあって文字通り全国の街々をよくご存知なのだ。
ましてや御自分が住まわれている三重県。
それゆえ、しっかりとした取材のもとに柘植駅だと決定なされたわけだ。
まず最初に、
あの第2作の冒頭の旅館「小崎亭」が三重県の柘植駅でロケされたことを聞くために
現地の商工会に電話され、年配の男性職員さんがしっかり覚えていらっしゃったことで、
確信を持たれて、その後すぐにNさんご自身も現地に赴かれ、
「小崎亭」の近くで今度は別の年配の女性の方に直接聞かれ、
実際にやはり「小崎亭」が存在した事を確認したのだ。
その女性は小崎さんご家族を良く知っていて、
小崎さん御家族は25年ほど前にすでに引っ越されていったそうだ。
また駅の背後に映っていた山々の形が今も変わっていないことを確認し、
その風景を撮影し、
最終決定をされたのである。
ちなみに私の両親の故郷はこの柘植駅がある伊賀上野である。(^^)
寅は寝ていたのである。←電話40番
柘植駅での蒸気機関車がシュ、シュ、シュ、ポーッ!
山田監督は本当に蒸気機関車が好き。
この先の第3作第4作でも効果的に使われている。
特に第5作は圧巻。
寅「また夢かァ…」
おなら「ぷーーぅ」
「うぅ…」パタパタ」
三味線 ペペペン、ぺンぺン…。
←初めてのギャグ(喜劇であることを知らせる)
メインタイトル(黄色地に黒と赤の文字)
←演奏はまだとても静かな優しい感じで、
後のダイナミックな演奏ではない。しかし静かな演奏もいいもんだ。
「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、
姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」
さくらが結婚してしまったので
「俺がいたんじゃ、お嫁にゃいけぬ…」
とは歌えない。
それで2番の歌を採用(「男はつらいよ」はすべて星野哲郎さん作詞)
「どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
目方で男が売れるなら こんな苦労も
こんな苦労も掛けまいに 掛けまいに♪」
とてもスローなテンポで歌っている。
演奏もゆったりしたもの。
曲と同時にキャスト、スタッフが、手書文字で出てくる。
第1作はフォント文字。
歌と同時に懐かしい江戸川土手を歩く寅。
ここでおなじみのショートコントが入る。
まず、カバンでカップルの男の頭を叩いてしまう。
そのあとサッカーボールを少年達の場所まで蹴ろうとして
空振り、ステン!と思いっきりコケル!
(この間も歌は終わっても伴奏だけは続いている。)
渥美さんのコントの中で、
ここまで思いっきり体を張って動いたのは珍しい。
このボール蹴りのシーンは体当たりの印象がある。
渥美さんもこの映画に燃えていたのである。
とらや 店
いきなり店員さんがドーンとアップで映り、
「お待ちどう様でした」←セリフを貰っていた。
この店員さん、第1作と違う女の子を使っている。
第2作のほうが年上で垢抜けている。この店員さんは第5作まで続く。
↓
2014年秋に、高羽さんの所有している台本第4作に書き込みがあり
この店員さんが「脇山邦子さん」だと判明!
詳しくは私の2014年12月のコラム↓を参照。
★号外!難攻不落だった2作~5作までのとらやの女店員「友ちゃん」の役者名を
高羽さん所有の台本で見つけました!!脇山邦子さんです!!
さくらが満男のオムツの世話をしている。
さくら「さあ、そろそろ帰ろうかな」
おいちゃん「まだいいじゃないかよ。博さんとお帰りよ」「晩飯だけ食べていけ」
などといってさくらを帰そうとしない。
森川さんは人懐っこいキャラクターの『おいちゃん』だ。
なんか観ていて温かい気分になれる。
おいちゃん 「あのばあさんとさしむかえに
飯食うの飽き飽きしてんだよ。」
なんて不謹慎なこと言っている。
おばちゃん満男をだっこして裏の工場から戻って来る。
おばちゃん「満男ちゃんににおとうちゃんの働いているところを見せてきたよ~」
おばちゃん、そんなん覚えてないって(^^;)
おいちゃん「みっちゃんよ、えー、フフ…。しかしこの子はなんだね、
ますます寅さんに似てきたね。」
さくら嫌がる。
ちなみにおいちゃんはこの作品では満男のこと
「みっちゃん、みっちゃん」って呼んでいた。
理由「四角い顔でよ」
「たぬき面」と「ゲタ面」で笑わせる。
ここで例の店員さん多めのセリフ
「おかみさん、お店のお客さんビール1本」
←実はこれはなんと寅が注文したもの。
お店の店員さんは寅のことを知らないのだ。
これは遥かず~と後に第47作「拝啓車寅次郎様」で
店員のカヨちゃんが同じ間違いを犯し、寅に団子を
出していた。
おばちゃん「いらっしゃい。はいお待ちどう様」っと
ビールを出して、はっと気づく。
題経寺の鐘『ゴ~ン』
寅 「おばちゃん寅だよ。見忘れたか?
・・そうだろうなあ、無理はねぇよ…」
おばちゃん 「やだよ!」
バシッtっと寅の背中叩いて(結構きつめに叩いてた)
おばちゃん「ちょっと、大変だよ、寅さんだよ!」
おばちゃん「なに言ってんだよ、なんだよー、
こんなとこへ座っちゃって
ビールなんか注文したやってさ、」
これも第47作「拝啓車寅次郎様」で、
同じギャグが使われる。
さくらが寅に「なに団子なんか食べてんの?」と言っていた。
寅「なんだよ、しばらく見ねえうちに随分年とったなあ…
あれから何年経ったっけ…(指で数えながら)」
おいちゃん「何年って、まだ一年もたっちゃいねえよ。」
寅「え?1年・あ、そうかい?オレは
また10年も経ったかと思ったよ…」
おばちゃん「さんざん心配してたんだよ。プイっと家を飛び出したっきり、なしのつぶてでさァ」
おいちゃん「ハガキの一本ぐらいよこしゃ良かったんだよ。」(店にはまといが置いてある)
寅「(感極まって)ありがとうよ、
こんなヤクザの旅ガラスにそこまで心配てくれて…」と頭を下げる。
おいちゃん「わかったわかったまあその辺にして・・な…」
寅「時に…妹のさくらは達者かね?え?」
茶の間で赤ん坊の泣き声。
寅、はっと気づく。
寅「さくら!…、なんだいそりゃー。
へーぇ…子供が生まれてたのかー、
おまえの子供か?よかった
よかったよかった。
そうかぁー、それじゃあ、
博と上手くいってんだなあ。え。」
↑第1作ラストの手紙で「風の便りに妹さくら
出産の知らせを聞き…」と手紙で書いて
いるので本当は知っているはず。この寅の
行動は第1作をきちんと見た人にとっては
困惑する発言。
さくら「バカね、お兄ちゃんは…なにしてたのよ。
こんなに心配しているにのに・・・知らないで」
さくら泣いてしまう
(さくらの顔が美しい)
寅「オレが悪かった…。泣くなよ」
おばちゃん「寅さん、あんたの甥だよ、抱いておやりよ」
おばちゃん「ホーラホラ、満男ちゃん。伯父さんだよ、お前の」
おいちゃん 「寅さんよ、おめえに似てるって評判なんだよ・・・」
寅「そうか…おめぇオレに似てるのか?え?」
遥か後に、満男は恋にのたうちまわるところまで
寅に似てくるのだ。
なんともいえないやさしい顔で満男を見る寅
第42作以降、満男シリーズになったときに、
満男の言動が本当に寅と似ていて、
この第2作を思い出してしまった。
おいちゃん、酒の用意をし始める。
寅「ちょっと、待ってくれ。せっかくだけどな、
オレはあんまり長居はできねえんだ」
寅「これで失礼するぜ・・・」
さくら、驚いて、戸惑う。
とらやの品書きが正面で垂れている。これは面白い位置だ。
おいちゃん「冗談じゃねえ、今来たばかりじゃねえかよ。」
寅 「止めねえでくれよ。
ゆっくりしてえのはヤマヤマだけどよ、
実のこと言うとオレは旅の途中よ。
何、ほんのちょっと寄っただけのことさだ。」
さくら「でもなにも今すぐ行かなくたっていいんじゃないの?
狭いけど私の家にも泊まっててよ、ね?」
寅は、さくらたちのあの潜水艦のようなアパートには
この後も結局一度も泊まらなかった。
リリーは一度第15作「相合い傘」の時泊まった。
源ちゃん、とらやに来ている。
寅「ありがとうよ。オレはおめえのその元気な姿観ただけで結構。
博のヤツに会えなくて残念だがよろしく言ってくれ」
さくら「ちょっと待ってよ、博さん今呼んでくるから、ね。」
おばちゃん「何も遠慮なんてすることないんだよ」
おいちゃん「とにかくな、奥で茶一杯!それぐらいならいいだろ!」
寅「それがいけねえんだよ。
一杯が二杯になり三杯になる。
団子が出るか、また茶を飲むか、
そのうち酒になるじゃねえか。
オレは一杯や二杯じゃすまねえぜ、
気がついた頃にゃ、
お銚子がずらっと並ぶ。
さあ、もう腰がたたねえねえ。
いっそのこと、泊まっていくか、
(寅、大きく手を上げ、)
カラスカーァと鳴いて朝になる。
おはよう!
二杯になる三杯になる。
『またお茶をください!』
二杯になる三杯になる。
団子が出るか、酒を頼むよ、どうする?
オレは旅に出れなくなっちまうじゃねえか」
おいちゃん「何もそこまで
考えなくていいじゃねえかよ」
ほんとほんと(^^;)
このギャグのパターンも
第5作「望郷篇」で寅の仕事を決める時のおいちゃん
のセリフで再登場。
そして遥か後、
第32作「口笛を吹く寅次郎」で、高梁蓮台寺の朋子さんが、
寅とこの掛け合いしていた。
博、やって来て「兄さん!もう行っゃうんですか」
寅「おう、博か、妹のさくら頼むぜ」
さくら「お兄ちゃん!」
本当に出て行ってしまう寅。
題経寺の前
さくら「お兄ちゃん!」と追いかけてくる。
さくら「あんまりだわ、そんなことってないわ。
どうして?どうして遠慮するの?」と食い下がるが
寅 「なあ、さくら。惜しまれて
引き止められるうちが花ってことよ。
分かるだろ、な。」分かる分かる(^^)
第13作「恋やつれ」のラストなど、
何回かこの真実の言葉は使われる。
寅「満男、早くでっかくなって親孝行するんだぞ。
いくら、オレに面が似てるからって
オレみたいな男になったらオシメエだ」
寅 「さあ、飴玉の一つも買ってもらいな」
←な、なんと5千円!
さくら、見て驚く「お兄ちゃん!これ…」
寅「うん、いいっていって…あばよ」
さくら「お兄ちゃん、どうしても行っちゃうの?」
寅「おめえたちには分からないだろうが、
これが渡世人の辛れえところよ…」
角を曲がった後で財布をまた開けて
寅「痛かったなあ…今のは」あとで少し後悔
寅って、第8作「寅次郎恋歌」では500円と5000円
間違えて大空小百合ちゃんに渡していたね。
ちなみに、
この第2作でさくらに
渡した5000円は、
後の第5作でさくらから
寅へ北海道に行くための
旅費として戻されることになる。
後ろの石に落書きで『おならくさい』と蝋石で書かれている。
第8作に出てくる貴子さん経営の「ローク」のビルは建設中!
ロークは第5作からすでに営業を開始している。
とはいうものの、すぐには柴又を出ず、その辺をぶらぶらする。
このあたりからのストーリーの内容と展開が
一部テレビ版を踏襲している。
常磐線の鉄橋が見える道。
葛西神社前
後に第41作と第42作でロケが行われたさくらの家は
この葛西神社から徒歩5分。
寅、ぶらつきながら「チンガラホケキョの歌」を口ずさむ
「♪一、二、の三、鎌倉の~、
ホラ、チンガラホケキョ―」
この歌は第8作恋歌でも
子供達が歌っていた。
実に渥美さんの雰囲気にピッタリの曲。
渥美さんのCDにも入っている。
隠れた名曲。
この「チンガラ、ホケキョ」の意味は最初、
九州南部の方言の「ちんがら」つまり
「めちゃくちゃ」とか「たいそう」という意味と、
「ほっけきょう」、つまり鶯の鳴き声と法華経の掛詞とずっと思っていたが、
「男はつらいよ」をこよなく愛するsrbigote さんが調べられたところによると
なんと「ちんがら」も鳥の鳴き声。具体的には百舌の鳴き声だそうだ。
つまり百舌と鶯の鳴き声を歌ったわけだ。
古くから伝わる酒屋、米かし唄の中に百舌の鳴き声が出てきて
ちんがら、ひんがら、しょんがらりん
と鳴いているそうだ。
ちなみに
「チンガラホケキョーの唄」は、
第2作「続男はつらいよ」でも散歩先生への道で歌っている。
第8作「恋歌」でも貴子さんの子供たちがこの唄を江戸川土手で
歌っていた。
そして第9作「柴又慕情」でも金沢の宿で歌っていた。
第2作では
♪一、二、の三、鎌倉の~、
ホラ、チンガラホケキョ~、
第8作では
♪一二の三、浅草のぉ~
ホラ、チンガラホケキョ~
第9作では
♪一、二、の三、日が暮れてぇ~、
ホラ、チンガラホケキョ~、
デコ坊よ~、帰ろうよ~♪」
さて物語りに戻ろう…
葛西神社の坂を曲がると…
子供達の英語の歌が聞こえて来る。
子供の三輪車が坂を駆け抜ける。「おっと!」
寅が看板見ると「坪内英語塾」
表札に「坪内散歩」
坪内散歩先生の自宅←坪内逍遥のもじり。逍遥と散歩で、かけている。
第1作で御前様のお嬢さんの時に
「坪内」姓を使ってしまったが、テレビ版からの
正統な坪内はこの散歩先生。
「坪内逍遥」のもじりだったのでいくら第1作で
使ったからと言って変えるわけにはいかない、
で、そのまま使った。その結果、散歩先生の娘さんも
テレビ版では冬子だったが、結局これも第1作で
使ってしまったので夏子に変更。
当初1作品で終らせるつもりだったので、
このあともいろんなところで
辻褄が合わないことが続発。
しかし、それはそれで面白い。
子供達塾からぞろぞろ帰っていく。
寅「先生!坪内先生!おひさしぶりでござんす。
アッシのこのツラに見覚えありませんか?
お忘れですか…無理もねえ、20年も昔の
ことでございますからねえ…
葛飾商業でもって、先生に英語習ってた、
車寅次郎ですよ。
勉強一つもしないで先生にぶん殴られちゃ
悔しいってんで、先生とこのハナッタレ
娘いじめてた、不良の寅ですよ!
ねえ!忘れちゃったかなあ…」
散歩先生「いいや、忘れとらん、覚えとるよ」
この散歩先生の言い方好きだなあ~。
確信を持って覚えている。という感じが
静かな中にもよく出ていた。私もこんな先生に
英語習いたかった。
寅「覚えてる!」
散歩先生「さ、上がれ」
寅「時に、あのハナッタレお嬢ちゃん元気ですか?
今いるの?」
散歩先生「ホーレ、そこに立っとる。」
寅、振り向く。
BGM流れて
夏子がチェロを抱えて
玄関の前に立って不思議そうに見ている。
散歩先生「夏子、誰だかわかるか?」
テレビ版では彼女は「冬子さん」
夏子「もし、人違いだったら
ごめんなさいね。
寅次郎さんじゃなぁい?」
寅「ハイ」←小さな声で
夏子「ほんと!?、いやだ、
ハハハ!しばらくね!!」
と遠慮する寅を、家の中に無理やり上がらせる。
テレビ版「男はつらいよ」のマドンナは、
ずっとこの佐藤オリエさん。
渥美さんとのコンビは年季が入っている。
寅、おばちゃんに電話。
寅「酔っ払っちゃったぞ!」
寅「先生!オレは嬉しいなあ!よくオレの顔を覚えていてくれたね!」
散歩先生「おまえの顔はねえ、
一度みたら忘れられん顔だよ。」
と、酔っ払いながら言う。
寅「そうですか!
サンキュー!サンキュー!」
散歩先生 「あーあー、人生相見ズ、
ヤヤモスレバ参(シン)ト商ノ如シ。
今夕(コンセキ)マタ何ノ夕べ
コノ灯燭ノ光ヲ共ニス。
寅、分かるかこの意味が!」
寅「ダメだよ、先生。オレ英語全然ダメよ。」
散歩先生「バカだな~、これは英語ではない、漢詩だ」
寅「カンシ…」
散歩先生「人間というのは再会するのは、
はなはだ難しいということだ。」
今夜はなんと素晴らしい夜であることだ。
古い友人訪ねてきたのである。お父さんの
友達が来たというので子供達が質問攻めにする。
酒をもってこいと追っ払い。
二人は杯を重ねる。
全く聞いていなくて、ひたすら、料理を食っている寅。
夏子それを見て笑っている。
寅、散歩先生を見て指差して笑う。
なぜかいいんだよなこのシーン。
この二人の師弟関係が心から羨ましい。
外は雨がしとしと降っている。
二人の話は尽きない。
明日になれば君は
また別れを告げて山を越え、
私はここに残る。
ひとたび別れれば人生は
茫々としてお互いの消息は絶えはてる。」
「アーアー明日山岳ヲ隔ツ、
世事両(セジフタツ)ナガラ茫々。」だな!
散歩先生最高!!
これは中国の詩人杜甫(712~770)が
乾元二年(七五九年)春、四十八歳のときに作った友情を表現した詩
「贈衞八處士」である。
杜甫が二十年ぶりで衛家を訪ね、同家の八男である友人に再会した喜びを詠んだもの。
明日のことはわからない戦乱の世、その喜びはひとしおだった。
贈衞八處士
人生不相見、動如参與商。今夕復何夕、共此燈燭光。
少壮能幾時、鬢髪各已蒼。訪舊半為鬼、驚呼熱中腸。
焉知二十載、重上君子堂。昔別君未婚、兒女忽成行。
怡然敬父執、問我来何方。問答乃未已、兒女羅酒漿。
夜雨剪春韭、新炊間黄梁。主稱會面難、一舉累十觴。
十觴亦不醉、感子故意長。明日隔山岳、世事兩茫茫。
人生相い見ず、動もすれば参と商との如し。
今夕は復た何の夕ぞ、此の灯燭の光を共にす。
少壮能く幾時ぞ、鬢髪各々已に蒼たり。
旧を訪えば半ばは鬼と為る、驚呼すれば中腸熱す。
焉んぞ知らん二十歳、重ねて君子の堂に上らんとは。
昔別れしとき君は未だ婚せざりしに、兒女忽ち行を成す。
怡然として父の執を敬し、我に問う何方より来るやと。
問答未だ已むに及ばざるに、兒女は酒漿を羅らぬ。
夜雨春韭を剪り、新炊黄梁を間う。
主は称す会面は難しと、一挙に十觴を累ぬ。
十觴も亦た醉わず、子の故意の長きに感ず。
明日山岳を隔てなば、世事両つながら茫茫。
人生において別れた友に再び会うことが難しいことは、
ともすれば参星(オリオン座)と商星(サソリ座)が一つの空に相見ることが
ないかのようだ。だが今宵はまたなんとよい晩なのであろうか。
この一つともしびの光をあなたと囲んでいるとは。若くさかんな
日々はいつの間にか過ぎ去り、鬢や髪はお互いすでにごまじおになってしまった。
昔の仲間を訪ねてみると半分は故人となっている。
私は驚き叫んで腸の中が熱くなる。思いもかけなかった、
二十年を隔てて、再びあなたの座敷のお客になろうとは。
昔別れた時あなたはまだ結婚していなかった。ところが今は
男の子や女の子が列を作って出てくるではないか。彼らは喜ば
しげに父親の友達に敬意をはらい、「どちらからいらっしゃったのです。」などと
尋ねたりする。私の子供達の問答がまだおしまい
にならないうちに、あなたは子供達をかりたてて酒や飲み物を並べさせる。
また夜の雨の中を春の韭を切り取ってき、こうりゃん
を混じえて新たに飯を炊いてくれる。主人のあなたは言う、
「会うことはなかなか容易ではない。」と、そして一息にさかずき十杯を
続けざまに飲む。十杯のさかずきをかさねても私は酔いはしない、
ただあなたの古い友情のいつまでも変らぬことに心うたれるのだ。
明日ともなりお互いに山を隔ててしまったならば、
山のこちらとあちらと両方とも世の営みははかり知れなくなってしまうことであろう。
この直後なんと寅が人生初の胃痙攣
寅「アレ!?…」
散歩先生「寅!」
クラッシックな救急車に乗る!
「金町中央病院」
寅は救急車に結構乗っている。
第22作「噂の寅次郎」、
第45作「寅次郎の青春」でも
お世話になっている。(^^;)
また、盲腸で入院、手術の経験もあり(子守歌参照)
ちなみに第22作の時は仮病。
おいちゃんいつものセリフ、
布団かぶりながら「知らねえよ、オレゃもう」
金町中央病院 寅の病室
さくらもおばちゃんも見舞いに来てない!
どうしてだァ???
病院のベッドの上で啖呵売
「ねっ!かどは一流デパートで
下さい頂戴で頂きますと
700が600、500は下らない品物、
今日はそれだけ下さいとは言いません!ねっ!
浅野内匠頭じゃないけど腹斬ったつもりで
負けちゃう!これ、どうです、
500が300、200が50、
えい!貧乏人の行列だ、
持ってきやがれ、この乞食野郎」
患者「ああ先生、助けてください、
この人が笑わせるもんですから」財津一郎さん。
財津さんは、第4作では、とらやに入った泥棒役で好演。
看護婦さん「車さん!静かにしてください!
何度言ったら分かるんですか!」
寅「そうかオレの子供産みたいか、
よし待ってろ待ってろ、
産ませてやるから!」
後期の作品では絶対出てこないような
セリフ!この頃の寅は言うことが
危ういねえ!面白い!こうでなくっちゃ。
いつもの帝釈天参道のご近所の方たち
みんななぜか入院しているぞ!(^^;)
『サクラ』が一声かけると買った!
とこう言うんだよ。
だけどこれは格好よく、買った!
っていうと、なんだこいつ慣れてるな…、
ってバレちゃう。ね!
ちょっと、恥ずかしそうに
『すいません、ちょっとそれとってください』
ってそう言う。そうするとこっちが、
『おう!お兄さんいい買物をしたね、さあどうぞ』
恥ずかしそうに持って帰るふりして、
むこうの角の陰で待ってる。
お客は全部帰っちゃう。
持ってくる。
オレは100円やる。
これを何回も何回もくり返してたらいいんだ。ね!
ところが世の中には暇を
持て余している馬鹿ババアがいるからね。
(近所の乾物屋のクソババア)
「あれ?この人さくらだよ」
なんて言われたらお釈迦に
なちゃうからねえ!
ハハハ!
え!こっちはバイをしなきゃならない、
そっちは買わなきゃならない。
ここでもうひとり兵隊が必要。
→ そこで、ちょっと人相の悪いの、
こういうのが出向いて来るんだよ。ね!
周りの客に分かんないように小さい声で
『おばさん、向こう行ってろよ。』
ババア、耳悪いから『へ!?』
『へいじゃねえ、
てめえだ向こうへ行ってろ、ババア!』
ババア、ビックリしてぶっ飛んで行っちゃう!
一同、ハハハ!!(大爆笑)
盲腸の手術をした男役で財津一郎がでているが、
それの付き添いの女姓役で谷よしのさんがでている。
実はこのあとラスト近くの散歩先生の葬式の時も
谷よしのさんは知り合い役、つまり別人役で再度出ていた。
大部屋の女優さんの中で谷さんは別格。
唯一、渥美さんと差しで
長めの会話ができる役をもらえる人なのだ。
谷よしのさんは「かもめ歌」では離れ業の
1作品3回出演(全て別人)も達成している。
初期の頃から随分重宝がられているんだなあ。
彼女は小津安二郎監督の「麦秋」や、
木下恵介監督の「野菊のごとき君なりき」
にも出演してセリフももらっている。
男「ウ~~ギャ~~!!」
寅「??、なんだなんだどうしたんだ?
え?大丈夫か、え?」
男「笑わせないでくれ、
オレ昨日盲腸切ったばっかりなんだ」
寅「盲腸切ったばっかり?じゃあ、この辺か?」
と毛布の中に手を入れてくすぐる。
第14作「子守歌」で、寅も実は、昔盲腸の
手術で入院していたことが判明。
茶の間の話の種に出てくる。
男「う~~~!!!触るな」
寅「へへ!大げさだよ、おまえ」
藤村医師やって来て「どうしました?」
男「助けてください…この人が笑わせるものですから」
寅「なんだ、可笑しくなかったら、
笑わなきゃいいじゃねえか、な!」
このセリフは第11作「忘れな草」で
おいちゃんと寅が喧嘩した時に使われる。
藤村「少し、大人しくしなさい。ここをどこだと思っているんだ」
寅「どこだと思ってるって、
おめぇさんどこへ勤めてんだい?」
寅「火葬場じゃねだろう」
寅「てめえだな、ゆうべオレの横っ面張りやがったのは!」
藤村「ああでもしないと、
君は注射打たせなかったからね。
悪かったと思っている。その点、謝る」
寅「おっ?てめえ、
さしづめインテリだな!?」←出た~!
寅「あっ、そうか、
そのインテリが暴力を振るったわけだ。」
第10作「夢枕」でも寅はインテリの岡倉先生と
火花を散らすことになる。
寅「へー、田へしたもんだよ
かえるのションベン、
見上げたもんだよ屋根屋の
ふんどしときたもんだ。」
藤村「僕が医者じゃなかったら、
表へ出ろと、言いたいところだ。」
寅「おー、いいこと言うじゃないかよ。
上等だよ!
君は僕に喧嘩を売ろうと言うのか、
よーし、それがいやしくも患者に対する
医者の態度か、僕ら患者は…!」
寅、遠くで夏子を見て、急に「あ、いたたった…」
よくやるよ(ーー;)まったく…
夏子ベットにやって来る。
夏子「寅ちゃん、まだ痛む?」
寅「え、まだちょっと…。
昨日よりはいいんですけど…あいたた」
夏子「先生、いかがでしょう?」
藤村「たいしたことないはずです。
いままで大声で騒いでいたんですから。」
夏子、花を手渡して帰る。
すぐさま寅、跳ね起きて、隣の財津さんの
上を踏んで歩いていく。
男「ウギィ~~~!!!」
夏子、廊下で「じゃあ、悪いもんにあたったわけじゃあ…」
藤村「いえいえ、その逆です。」
いいものを食べ過ぎて
胃がびっくりしたんでしょう。
なぜ分かるんだそんなこと(^^;)
藤村「明日にでも退院できるんですがね」
ほんとうは、今すぐ退院できるだろ(^^)
藤村「あ…、ちょっと失礼ですが、あなたあの方のご親戚の方ですか?」
夏子「いいえ、違います」
藤村、笑いながら「あー、そうですか、ハハ、そうでしょうね。失礼します」
入院してから一日たつのに
さくらやおいちゃんおばちゃんは
どうして見舞いに来ないんだ??
金町中央病院は柴又のすぐ隣。
普通無視するってありえんぞ??
寅、病院から抜け出す。
散歩先生、困った顔で夏子と電話。
↑おい、おい、さくらはどうした!?
とらやさんは無関心か?
金町中央病院
藤村「おまけにですね、昼過ぎに、
弟分とかいうチンピラが来まして、
うな重、肝吸つけて二人前とってくれ、とこういうことを…
500円チップ←受け取れません。あしからず。
入院料その他は?
夏子「それは私がお支払いたします」
夏子優しいょねえ。
おいちゃんおばちゃん、さくら~、
どうしたんだよ!~~(T T)
寅の入院費、
他人さんに払ってもらうなよ~!
夏子「ほんとに、先生には
いろいろご迷惑をおかけして…」
藤村、夏子に「いえ…、あなたを責めるような
言い方をしてしまって。
考えてみたらあなたのほうも
被害者なんですね…。
すいませんでした」
今ごろ気づいたか。とほほ。それより、住所と電話番号
もう控えてあるはずだからはやくとらやの人たちに
電話してきてもらえよ。
飲み屋『京城園』でトラブル
登「田舎へ帰ったらいきなり親父のヤツ、
オレの頭ぶん殴りやがってよ!」
寅「ハハハ!また逆戻りか!」
「夜霧にむせぶ寅次郎」で
盛岡の登の家で登のお父さんチラッと映る。
このころは八戸ということになっている。
店員「レバ品切れなんで、カルビ2人前にしときましたから」
寅「あー結構、結構毛だらけ猫灰だらけ、
ケツの回りは糞だらけってね、
なあおばちゃん!ハハハ!」
寅「さてと…、ぼちぼち病院帰るかなあ…」
寅「さてと、じゃあ、オレ帰るからね、おまえゆっくり食ってけよ」
店主「お客さん、勘定だよ。」
寅「おい、ノボ、オレの分ちょっと払っといてくれよ」
登「兄貴、オレ持ってねえよ…」(|||_|||)ガビーン
寅「そら、まずいなあ…」
寅、店長に「よ!ちょいとツケにしておいてくれ、な!」
店主「ほ~~、どうもそう言う感じがしたのよ…」
寅「おー、なんかおめえ、勘違いしてんじゃないのか。
オレは葛飾の寅だぜ。堅気の衆には
絶対迷惑をかけねえ、
きっと持ってくるから。なあ」
勘違いはお前だ。そんなん聞くわけ無いってヽ(´~`; ォィォィ
店主「ツケはだめだよ」
寅「なにい?」
店主「この看板見えないか?」
ちょっともめて
店主、たいして何もしてないのに大げさにコケル。
(ほ~、なるほどね…(- ー))
「暴力振るったな、あなた!」
「無銭飲食だ、この野郎!」
「警察だ!110番!」
すごいドタバタ
ようやく警察沙汰に
なってからさくら来ている。
どうして一度も病院に
来なかったんだ?
葛飾区 本田警察署
京成の立石駅から徒歩数分
さくら、身元保証人の書類を書いている。
刑事、登に「おまえもう帰っていいぞ」
寅、喜ぶ。
刑事「旦那はまだダメだよ!」
警察署で寅が手錠かけられている。
ちょっとシリアスな場面。
さくら「無銭飲食はともかくとして
お店の人に乱暴したのはよくなかったんだって。
そんなことしたの?」
寅「冗談じゃないよ!」と言い訳。
寅の気持ちも分かる。
確かに店主自ら大げさに倒れたのは確かだ。
さくら「不起訴になるかもしれないんだからね」(泣いてしまう)
下着と団子持ってきたからあとで受け取ってね。
団子っていうのが変だね??なぜ団子?
登に怒鳴りさくらに怒鳴る寅。
こういう場面はほんとに
この初期の作品のみで
観ることが出来る荒々しい場面。
ショボくれる寅
さくら、泣き崩れる。
翌朝、江戸川の土手
散歩先生と寅
寅「穴があったら入りてエような気持ちでござんす…。
すぐいい気になって羽目を外してしまう。
どうしてこうバカなのかねえ先生…」
散歩先生「うん」
寅「もう、みっともなくて、
この町にはいられねえから、また、旅に出ますよ…」
寅「そのうちきっと…ご恩返しさせていただきやす。」
散歩先生「うん」
寅「お体を大事にして、
きっと長生きしてくださいよ」
散歩先生「寅!」
寅「へい!」
土手の上で源ちゃんが
トランク持って待っている。
散歩先生「人生相見ズヤヤモスレバ
参(シン)と商ノ如シだなあ…」
↑オリオン座とサソリ座
寅「おっしゃるとおりです。そこが渡世人の
つらいところでござんす。」
会話が噛みあってないんだが、
なぜか不思議に自然な感じ。
散歩先生、頷く。
散歩先生の寅へ呼びかける「寅!」という声は、
寅に対する愛情に溢れていた。いい師弟関係だね~。
犬をダッコしているのが面白い。
立ち去っていく寅、見送る散歩先生。
しかし、このあとふたりは京都で偶然再会するのだが…
1ヵ月後
京都
京都を旅行中の散歩先生と夏子
清水寺。哲学の道
「紅燃ゆる丘の花、さ緑匂う岸の色、
都の花にうそぶけば…。」
♪第三高等学校寮歌
渡月橋
寅、啖呵売
なんと源ちゃん「サクラ」を
して京都までついて来ている。
源ちゃん凄い行動力。
この先の源ちゃんは、第6作ラストを除いて
柴又から一歩も出なかったので、
このころは身が軽い。第1作では寅とは
そうとう敵対関係だったが、
第2作以降は、なつき始める。
寅「天に軌道のあるごとく
人それぞれに運命と言うものを
生まれ合わせております、
とかく子の干支の方は終わり晩年が
色情的関係において良くない!
丙午の女は家に不幸をもたらす、
未の女はかどにも立たすな、というが、
そこの若いお方、あなたの生まれ年は?
「昭和25年です」(大阪弁)
←源ちゃんの生年がわかった!
25年は庚の寅、この干支の方は
両親の縁薄く幼少より苦労する人が多い
という干支であります。
この印堂、あなた眉と眉の間にかげりがありますな、
あなた両親がいないね
源ちゃん「へえ、ほんまや、よー当たるわー」
この干支の方はどことなく気品があり、
そして、頭の良いのが特徴とされております、
たまたまそうでない場合もあります。
(と、竹棒で源ちゃんを指す)
源ちゃん照れ笑い。(サクラ)
当たるも八卦当たらぬも八卦、
人の運命などというものは誰にもわからない、
そこに人生の悩みがあります、
奥様、先ほどよりあなたは顔だけこちらを向いて
足と体が向こうを向いております、
ということは、これから用をしに
行かなければならないが、私の話が気にかかります。
何故かと言うと、あなたの心に悩みがあるから、ねえ、
さてみなさん、こうやってここで話をしております。
チョンガーの身の上のこの私も
何時如何なる時絶世の美人とばったり出逢うということも・・・
お嬢さん!あっあっ、こける
夏子さんと偶然会ったのだ。
←天文学的数字。第1作でも、
寅は御前様たちと奈良で偶然会っている。
このように48作までずっと毎作品
信じられない偶然が続いていく(^^;)
寅「こりゃ驚き桃の木山椒の木だ!
どうしてこんなとこに??」
出ました!おなじみ『付け足し言葉』
夏子「寅ちゃんの運勢判断でも
分からないの?フフ…」
夏子さん上手い上手い!座布団1枚(^^)
橋の袂の甘いもの屋に入って
かっこうよく払おうとするが例のごとく
財布には500円しか入っていない。」
↑この先どの作品にも出てくる500円ギャグ。
500円札が出回らなくなった後も
なんとか500円でがんばっていた。
しかし、夏子に会わなかったら、今晩500円でどうやって宿に泊まったり
食事ができたのだろうか?不思議だ。たまたま500円しかないにしては、
かなり頻繁。寅は、全国的に馴染みが多いのでツケにしてもらうのかな?
旅館「巴家」
旅館で散歩先生に説教される。
散歩先生「なんで正業につかんのだ。
正業につけ。額に汗して労働することの
尊さが分からんのか!?」
テキヤもそれなにり、きちんと働いていると思うんだが…
寅「よく分かっております」
散歩先生「おまえは人並み以上の体と
人並みに近い頭を持っとるんだ!」
散歩先生、微妙ぉ~なことを言う。実に含蓄のある言葉だ…。
散歩先生「なぜ京都にいる?」
寅「理由にはならないんだけどおふくろがいるんでね…」
テキヤ仲間が知らせてくれたらしい。
寅「別に会ったってねえ、どうってことないんだしさ~、うん…」
夏子「生きてたの!お母さんが!?」
寅「でも、俺のこと捨てたおふくろだからね…、
むこうで会いたがってるかどうか…」
夏子「何言ってんのよ!寅ちゃん、大変じゃないの!
別府なんか行ってる場合じゃないわよ。
すぐ会ってらっしゃい!ね!会いたいでしょ!?」
寅「でも、オレのこと捨てたおふくろだからねえ…。
向こうで会いたがってるかどうか…」
夏子「そうかしら…」
寅「それに、あっしはお見かけどおりのヤクザな男だし、
もしおふくろが立派な暮らしをしていたら
きっとおふくろは迷惑なんじゃねえかな…」
夏子「でも、血を分けた親子なんでしょ?」
寅「血を分けたって言ったってねえ…。
なんにも覚えちゃいねえ。
お互い顔を見会わせて、ハア、
あなたがお母ァかい?そんなとこだよね、先生」
「ネバ!ネバッ!!」NEVER! NEVER!!
散歩先生「寅、これは大事なことだからよーく聞け。」
「老病死別」といってな、人間には四つの悲しみがある。」
「その中で最も悲しいのは死だ。
おまえのおふくろもいつかは死ぬ。」
その時になってからじゃ遅いんだぞ!その時になって
『あ~、一度でもいい、産みのお袋の顔を見ておけばよかった、と
後悔しても、取り返しがつかないんだぞ!そうだろ!寅!」
寅「…」
散歩先生「さ、会いに行け。生きてるうちに。今すぐだぞ」
寅「でも、会ったら、なんて言っていいかわからない…」
散歩先生「お母さんと呼べばいい。
大きな声で、お母さん!」
寅「おかあさん…」
散歩先生「何をぐずぐずしておる。
夏子、おまえ一緒についてってやれ」
夏子「そうするわ。寅ちゃん行きましょう」
寅「ええ、ありがとうございます」
ところで、
仏教でいう人間のもって生まれた大きな悲しみとは
本来「生老病死」と言われる。
これらを一般的には「四苦」という。
生まれることでさえ一つの悲しみで赤ん坊は泣いて
この世に誕生する。特に釈迦の修行したインドでは
厳しいカーストがあったので生まれること自体が
悲劇の始まりのようなケースが多かったようだ。
ある日出家前の釈尊が東門を出ると老人に出会い、次の日南門から出ると病気の人に出会い、
また、西門より出ると、葬儀の列に出会い、北門より出ると僧に出会ったという。『四門出遊』
その四つの苦しみの他にもう四つの別の苦しみ、すなわち
どんな愛おしい人とも別れなくてはならない事『愛別離苦(あいべつりく)』、
逆にどんな嫌な人とも会わなくてはならない事『怨憎会苦(おんぞうえく)』、
求めても求め切れない事、『求不得苦(ぐふとっく)』、
体が盛んになり、年齢とともに、
それぞれの場で出会う困難な事『五蘊盛苦(ごおんじょうく)』
この四苦と最初の根源的な四苦を合わせて「八苦」という。
ふたついっしょに言う時「四苦八苦」という。
考えてみれば変な言い方だ。全部で8つの苦しみなのだから
ただ単に八苦と言えばいいのだが、最初の根源的な四苦を
強調したいためにわざわざだぶらせて「四苦八苦」というのだろう。
全部で十二苦ではないので、ご注意を!
ところで散歩先生が「生老病死」の「生」を削り、
その代わり『愛別離苦(あいべつりく)』を加えて
「老病死別」と、言ったのはいかにも日本的な、
というか「生まれること」を悲しみと言いたくない優しさ
のあらわれとも考えられる。
寅の生い立ちや散歩先生の生い立ちを考えると、
とても複雑な気持ちになる。
さて、本編に話題を戻そう。
建仁寺の塀と大中院の間を抜ける大通り。
花見小路通り
この花見小路通りのロケ地は私のサイトをいつもご覧になってくださっている
ロケ地めぐりの達人「さすらいのサラリーマン」さん(京都市在住)からの
貴重な情報を元に決定した場所です。
グランドホテルを探す寅と夏子。安井毘沙門町(東山区)
青江美奈の「恍惚のブルース」が流れている。
1966年(昭和41年) これが青江さんのデビュー曲。
80万枚売り上げたらしい。
一、女の命は 恋だから
恋におぼれて 流されて
死ぬほどたのしい 夢を見た
あとはおぼろ あとはおぼろ
ああ今宵また しのびよる
恍惚のブルースよ
二、あたしをこんなに したあなた
ブルーシルクの 雨が降り
こころがしっとり 濡れていた
あとはおぼろ あとはおぼろ
ああ今宵また しのび泣く
恍惚のブルースよ
三、あなたがこんんなに したあたし
ブルーパールの 霧が降り
あたしは貝に なっていた
あとはおぼろ あとはおぼろ
ああ今宵また すすり泣く
恍惚のブルースよ
夏子さんがおすみさんに道を聞く直前&直後の場所はここ↓
京都市東山区小松町563 付近
ここも上記のロケ地めぐりの達人「さすらいのサラリーマン」さん(京都市在住)からの
教えていただいた場所です。
左の大きな建物は 旧「中村甲刀修史館」 現在「井伊美術館」
だからこれが目印になるので、今後はみなさんとてもロケ地巡りしやすいです(^^)
祠に花を供え、お祈りしている年配の女性に道を聞く。
これらのシーンはすべて同じ場所で撮影されていることがわかる。
上の画像で示したとおり、①はもうすでに場所が確定した。
ということは、あの祠の位置や電柱の位置も自ずとわかってしまうのである.
で、見てみると・・・
あの祠はこの場所にはもうない。その横の旅館もない。
あるのは電柱のみ。
この電柱は何でも知っている!
現在は電柱の向かって右横には「小多福」とういう甘味処ができている。
・・・っていうか、この祠の土台石組の形をとってはいるが
石じゃないな。よくてセメント。下手したらスタッフさんが作った張りぼてかも。
祠がなくなるってのはあまり聞いた事ないし、今はここはごみ置き場になっているのを
考えるとやはり…映画用の張りぼて土台かも・・
おすみさんは夏子さんに自分がグランドホテルの者だと伝える。
夏子「グランドホテルってこのへんですか?」
お澄さん「へえ、うちどすが」
夏子「おばさん…グランドホテルの…」
お澄さん「へえ、グランドホテルのもんですが」
まとめるとこうなる。↓
カメラの位置と方向。↓
赤が夏子さんがおすみさんに質問する直前
黄緑が夏子さんがまさに質問している瞬間
青がおすみさんがそれに答え案内しようとするシーン
さて物語に戻る!↓
現「小多福」の前からどんどん歩いて東に向かうおすみさん。
寅と夏子さんはついていく。
お澄みさん「満州事変の前の年やったかなあ…
えらい不景気な時で」
寅と夏子さんはこの時点でおすみさんが産みの母親だと決め付ける!
「グランドホテル佛蘭西ハイツ」←正式名称らしい
京都府京都市東山区毘沙門町44付近
現在は「ホテル サンデー ブランチ」 左側
ここは、ホームページもあるし、予約もできるし、この界隈では人気が高いそうだ^^
ホテルの全体像を見たい方は自分で検索してね^^;
電柱のそれぞれの位置はは今も同じ。
中に入って・・・
女主人が二人の前に出てくる。
「思い出の間におぶ持っていってちょうだい」
「バイブレーションベッド」「ドリームセット」
「梅ちゃん!これ!どこへいったんやあの子はもう…」
「真珠の間やで。」
菊、夏子を誤解して
「このごろは女の方が
積極的なんやな、へっ、怖いなあ」
寅、部屋に入って
寅「暗ろうござんすね」
寅、逆に、スタンド消してしまう「あっ」「あん?」
お澄みさん、トントン(ドアをノック)、
夏子「どうぞ!」
寅「ハイ!」
同時に言う。
お澄みさん、いろいろ部屋の中を説明。
お澄さん「これがバイブレーションベッドのスイッチどす。」
ベッドがモコモコ動き出す。(^^;)
スタッフが下で動かしてんだろうなあ…。
お澄さん「鏡はお好きどすか?」
夏子「ハイ…。いいえ!」
このセリフ何度見ても面白い(^^;)
寅、思い切って、お澄みさんを追いかけて
ヨら「人違いだったらごめんなさいよ。
よーく俺の顔見てくれ、
この顔に見覚えないかい?」
「38年間一度だって忘れちゃいねえよ」
「一度だけ口に出して呼んで見たかったんだ!」
「おっかさん!あんたの倅の寅次郎だよ!」
菊、やって来て
菊「ちょと、ちょと,なにしてんねんな、あんたもう
『アテネの間』のお客さんな、生卵もってきてって。はよ持ってってか」
寅「うるせえ!だまってろクソババア!」
菊「くそばばあ?何抜かしてケツかんねん!」
夏子、寅の事情を菊さんに説明する。
菊「親子? お澄みさん、あんた子あったん?」
お澄さん「いいえおまへん…」
寅、菊の名前を出す。
お澄さん「お菊はんは、この人だす。」
菊「せや、わてや。何ぞ用か?
グランドホテルのお菊はわてやが、
おまはんらに妙なイチャモンつけられる
ことはないで、うちは暴力団との
つき合いはないんやさかいな」
夏子、東京での事を聞く。
菊「東京?おったことあるよ。
葛飾で芸者しとってやさかいな」
夏子「そのころ男の子産んだでしょ?」
菊「えっ、?なんであんた知ってんねん?」
夏子「この人ね。寅次郎さんなのよ…」
菊「えっ…、おまえ…」
ちょっと顔がほころぶが、すぐ元に戻って。
菊「ふーん、そう…、
今ごろ何の用事やねん。」
菊「あっ、銭か?銭はあかんで、もう。
親子でも銭は関係あらへんで」
夏子「おばさん、何てこと言うの。
寅ちゃんはね、産みのお母さんに
会いたくて、それだけで
ここまで来たのよ」
寅「お嬢さん、帰りましょう。
オレは何もこんな淫売上がりの女
見るためにのこのこやってきたんじゃねえんだよ!
さっきから黙って聞いてリャぐたぐた言いたい放題
ごたく並べやがって、てめえなんかどっかとっとと
消えてなくなれ、このたぬきババア!」
菊「何?ようそんなことが言えるな、産みの親に向かって!」
寅「てめえが産みの親?誰がてめえに産んでくれと頼んだ!
オレゃてめえなんかに産んでもらいたくなかったい!
ひりっぱなしにしやがって、
ひとのことほったらかして雲隠れしやがって、
てめえ、それでも親か!」
菊「ひりっぱなし?ひりっぱなしとはよう言うたな!」
寅「てめえがオレを
捨てたんじゃないか!!」
菊「やかましやい!!
なに言うてケツかんのじゃ、アホ!
どこぞの世界に自分の子供を
喜んでほうる親があるんじゃ!
えっ!何も知らさらんと
すき放題なこと言いやがって!
このバカヤロー!出て行け!」
寅「畜生!てめえが
産みの親じゃなかったら、
ぶん殴ってやるんだ!」
菊「おう!殴ってもらおやないか!
やれや!」
これは地獄。修羅場だ。
「やめて!!ダメ!!…」夏子泣く。
寅「クソ…」寅出て行く。
「寅ちゃん!」夏子追いかけていく。
このシーンの寅は全48作中で
最も辛く、可哀想だった。
キリストを抱く聖母マリアの
ステンドグラス。
菊はこのステンドグラスをどのような
気持ちで作らせたんだろうか。
寅に対する懺悔の気持ちも
あったような気がする。
菊しゃがみこんで、
菊「何しにきやがったんや、
あのアホ、ほんまに…」
悲しみの中で涙ぐんでいる。
菊は第7作「奮闘篇」でまたまた活躍!
第44作「寅次郎の告白」でも寅が泉ちゃんに
菊がまだ健在であることを話す。
さすが、寅の母親だ。なかなか丈夫で元気な人である。
それにしてもこんなに親身になってくれるなんて
夏子は優しい人だ。
さすがは散歩先生の娘さんだ。
寅がマドンナを助けたり、面倒見たりする作品は
数多くあるが、全48作中、マドンナがこんなに
寅のことに一生懸命になってくれる(恋愛感情は無いとしても)
のは最愛の人リリー以外ではこの坪内夏子だけ。
ほんとこのひとは情に厚く優しい。
父母の育て方が良かったのだろう。
佐藤オリエさんも上手かった。
彼女は後に、山田太一さんの「ながらえば」でも
なかなか味のある演技をしていた。
旅館「巴家」
散歩先生 「あーあー、俺が悪かった。
俺が無理に勧めなければ
こんな悲しい目に会わなかった。
泣け!泣け!泣け!こころから泣け!」
バン!とお膳を叩いて
泣きながら散歩先生
「実にこの世は悲しいなあ…」
寅「そうだよ、ウウウ…、
だったら先生だって泣いてくれよ!」
散歩先生「よし!泣こう。寅、
お前と一緒に二人で泣こう、な、寅!」
寅「先生よ!ウウウ…」
そしてこの散歩先生も寅にとって
まことすばらしい師だと思う。
私もこんな先生に
めぐり逢いたかった。
夏子部屋に入ってくる。
寅、恥ずかしがって
寅「あーオレ死んじゃう、死んじゃうよー!」
夏子「寅ちゃん、そんなこと言わないの」
夏子「今晩ここへ泊まって、
明日私たちと一緒に東京へ帰りましょう。
ね、それが一番いいわ。」
夏子の優しさが身に沁みる
さくらのテーマが流れる
寅「お嬢さん、心の張りを
なくしちまったこのおいらに
帰っていくところなんか
あるわけねえよ、ハハハ…」
ガタ!!(座椅子ひっくり返る)
寅、照れて…「エヘン…」
障子がスーと、動いて
「あーーっ!」
(庭先へ転がり落ちる)
ギャグ2連発
「落っこちちゃった、アーアー」
っと、泣く。
夏子つい笑う。
散歩先生「可笑しくない!」 三味線 ぺペン、ペン
↑佐藤オリエさん、リハーサルで笑いが止まらなくて
このシーンは脚本に笑うことが取り入れられたらしい。
最初のサッカーボールギャグといい、
この障子スライド転びギャグといい、
この作品の渥美さんは、相当燃えて
いた感じがする。攻めているね~。
とらや 店
おいちゃん「夏子さんがくれぐれも優しく迎えてやってくれ…って。
なにしろ自殺しかけたってくらいだからなあ…」
さくら「おかえりなさいって、普通に言えばいいのよ」
おいちゃん「それは分かってるけど、その後だよ。
おふくろさんに会ったんだってなあ、なんていうのかなあ」
博「だめですよおじさん!とんでもない、絶対にそれを言っちゃダメです。
いいですか兄さんは長い間捜し求めていた実の母親に会ったんですよ。
ところがその母親は、寅さんが考えていたような人ではなく、
薄情で残酷な女だったんです。それで兄さんは大変なショックを受けた。
自殺まで考えたそうじゃありませんか。
それに似た経験があるので実によく分かるんですよね…」
博、兄さんか寅さんか
どちらかにしろよな(^^;)
この頃はみんな呼び方も
それぞれマチマチ。
兄さん…、寅さん…
そこで、寅が帰ってきたら気を使ってあげようということになり
「お母さん」とか「母親」とか「おふくろ」とか
言ってはいけないことになる。
←(この手の禁句ものギャグはこの先多くの作品で使われることになる)
★「夢枕」では息子、倅はダメ!
★「恋やつれ」では夫、亭主、だんな、ダーリンはダメ!
★「噂の寅次郎」では離婚はダメ!
★「かもめ歌」ではすべる、落ちるはダメ!
源ちゃん、かばんいっぱい持って戻って来る。
博「だめですよ、おじさん!
そんなそわそわしたら、いつも通り自然に自然に。
「笑顔で笑顔で」
おいちゃんの顔ひょっとこ(^^;)
↑シンプルだが誰もが笑える
強烈な森川信ギャグ!
三味線、ぺン、ペン、ペン…
源ちゃん「兄貴、みんな待ってます」
この当時源ちゃんは
大阪弁と東京弁が混ざっている。
まだキャラがはっきりしていない。
寅、夏子に連れられて戻ってくる。
博とさくらに抱えられるように奥の茶の間に…
三味線 ペンペンペン…
満男がぐずる。
さくら「私が抱くわ」
おばちゃん「やっぱりお母ちゃんがいいのね…」わっ(><;)
博咳払い!
一同 シ~ン
寅「……」
寅のアップ (--;)
三味線 ベンべン…
「寒くなった」「冬は苦手」
博「この間、この子を見におふくろが来たでしょう…」
あちょ~、博まで…(_ _;)
寅のアップ
三味線 べンべン…
博のお母さんは、
とらやに来ていたんだ!
おいちゃん「あ…ツネ、テレビでもつけろよ」
いやな予感(一 - ;)
さくら「ほら!満男ちゃん、お馬さんよ!」
テレビ「おかぁーさーぁーん
ハナマルキ味噌おかあさん。
♪お味噌なーら(ハナマルキ)」(TT)
↑この第2作のメインギャグであるばかりか、
このシリーズの中でも
燦然と輝く名ナンセンスギャグ(そんなもんあるのか?)
おいちゃんのテレビを消せという
仕草が笑える。寅が沈んでいても、
森川おいちゃんで思いっきり笑わせる
のが、初期の作品の強み。これは
何ものにも変え難い宝だった。
三味線 ベンベンベンベン
一同シーン
タコ社長、いつものように駄目押し
社長「ひでぇ、おふくろさん
だったんだってねえ…」
社長さん、いくら無神経でも,
この寅の状況で
そんな言い方しないって。
ここまでいくとちょっと性格異常(^^;)
寅、菊との修羅場を泣きながら
みんなに語る。
夏子慰める。
食事しようとして
寅「あっ…あ…」
おいちゃん「どうした寅」
寅「ションベンしてくる…」
一同ポカン
この大事なシーンでのシンプルな
ションベンギャグは
第1作のさくらとの再会でも使われた。
このシリーズでは
珍しいとらやのトイレが窓越しに映る。
第3作でも、今度は後ろからトイレが映る。
ちなみに、このハナマルキ味噌のCMには後に渥美さんも登場する。
http://jp.youtube.com/watch?v=GOmfTW4gHmE
翌日裏の工員にも同じストーリーを繰り返す寅、
「おかーさーん」
夏子、店にやって来る。
菊との修羅場を工員に語る寅。
夏子が来たことがわかると、
寅、例のごとくイスを立って飛んでいく。
工員のイスひっくり返って洗濯物落ちる。
夏子「今日お暇だったらうちに遊びにこない?
源ちゃん、あなたもいっしょに…」
寅喜んで承知。
寅、源ちゃんを隠す。「何だコノヤロ!」
←源ちゃんなぐられる。
散歩先生宅
寅が行くと、もうすでに源ちゃん来ている。
夏子「源ちゃんがね、チビ探してくれたのよ。」←子犬
源ちゃん、寅に外に連れ出され、追い払われて、
門のところで泣く。
夏子「源ちゃんは?」
「用事があるって帰りました。」
←夏子無反応(ちょっと鈍感)
夏子「おまえどこ行ってたの?」
寅「あっち行ってたの」
夏子「もう行かないでね」
寅「また行くよー」
夏子「いじめられたんでしょう」
寅「いじめちゃった!」
夏子「??…」
源ちゃん、
門のところでまだ泣いている。
源ちゃん「チクショ!エーン、エーン…」←幼稚園の子供ら見てる
泣く泣く葛西神社の前の小道を帰って行く源ちゃん。
夏子の声が聞こえてくる
夏子「泣いちゃダメ、
ホレホレホレホレ…」
犬と源ちゃんがらみの
ミニコントでした(^^;)
夜、散歩先生と夕飯
散歩先生「こら!渡世人、フーテンの寅公!」
寅「へい!」
散歩先生「おまえは実にバカだなー!
おまえを退学させた校長の
タヌキもバカだが、そのタヌキを
ぶん殴ったぶん殴ったおまえは
もっともっとバカだぞ!」
↑寅が葛飾商業を3年で中退になった直接のきっかけ。
寅「はい、すいません。」
寅のことを叱ってくれるのは
散歩先生だけだと知っている寅は、嬉しくてしょうがない。
寅「先生、もっと叱ってくださいよ」
いいね~!
散歩先生「よーし!おまえのようなバカは
いくら叱っても叱り足りん!」
散歩先生「ただ!しかしだ!(バン!!)
おまえなんかより少し頭がいい
ばっかりに、おまえなんかの
何倍もの悪いことをするやつが、
うじゃうじゃいることだ。
こいつは許せん!
実に許せんバカモノどもだ!!」
寅「私よりバカがおりますか?」
散歩先生「おるおる!無数におる!」
喚き散らして散歩先生寝てしまう。
夏子と寅で一緒に毛布を掛けてやる。
夏子と顔が近づいてドキドキしてしまう寅。
夏子それに気づかず微笑んでいる。
寅の至福ここに極まる(^^)
美しいテーマ曲が流れる。
門の外に出て
夏子「本当はね、お父さんとってもうれしいのよ
寅ちゃんとお酒飲むの。また来てね」
別れ際に、帰ろうとする寅と、道を開けようとする夏子で、
譲り合ってお互い照れ笑い。
またもや至福の寅
第1作のように『喧嘩辰』を歌うのかな?と思わせて
「お味噌なーら、ハナマルキ、
おかーさーーん、とくらぁ!」
と、踊り、回りながら葛西神社前の夜道を帰る。
とらや 店
寅、帰ってきて
寅「団子の店とらやの従業員のみなさま、
本日一日ごくろうさんでした!」
寅「♪団子なーら。
とらやさん!
おじーちゃーん!
あっ!間違えちゃった!
おかーさーん」
「階段間違えと雪駄脱ぎ忘れ」のギャグは
第1作と全く同じパターン。
天上頭ぶつけギャグも足される。
おばちゃん「……」
全てを悟って、そっぽむいて、プイっと向こうへ行く。
おいちゃん「バッカだねえ…」
←森川おいちゃん十八番の
愛情たっぷりのシンプルギャグ
東金町葛飾区東金町3-19-1
向こうに「金町駅団地」が見える。
純喫茶店 スカイラーク (後に「ジャズインブルー」)
夏子と藤村がデートしている。
←(高級純喫茶スカイラーク.ウエイトレス募集TEL609-2525)
コカコーラの看板
ハイドン 「ひばり」 第1楽章 が流れる。
藤村「おねえさん!おねえさん!コーヒーひとつね」
夏子、そんな藤村を見て微笑んでいる。
いつの間にか仲良く
交際するようになった二人でした。
ちなみに「テレビ版男はつらいよ」では、
佐藤オリエさんの名前は坪内冬子さん。
恋人は医者ではなくバイオリニストの藤村。
夏子の演奏会(音楽会)
弦楽四重奏. チェロ
そのころ寅は「易断」のバイ
「そりゃ私だって商売ですよ、家に帰りゃー女房子供が
腹空かして待ってる。昔の仙人じゃあるまいし
霞の中からスーッと出てきてこんなこと
しているわけじゃありません。ちゃーんとね、
ネタ元というところがあって、その道具を借りて
店を出しているわけだ。
こんな易なんてもので人間の運勢などというものが
百発百中で当たるわけがない。あたくしが言っているんだから
間違いない。しかし、お客さん、あたくしはこの商売を
もう十年やっている。なぜでしょう?十のうち九つ間違っていても、
たったひとつだけ本当のことがあるからなんです。
あなただってそのひとつにすがりたいような悩みが
あるからあたくしの話を聞いているんだね、お客さん。
あっ、そこのお客さん、(源ちゃん「サクラ」)あなた、親がいないね…。
恐ろしいなぁ、あなた捨て子だったね」
演奏会
ベートーヴェン・弦楽四重奏曲 第6番
演奏会に藤村聴きに来ている。
隣の席が空席になってしまっている。
バイ終わって、その横で二人して熱い湯気の立ったラーメンうまそうに食っている。
源ちゃん「せっかくお嬢さんから切符もらったんだからよ、
音楽会行きやぁよかったんだ」
寅「バカヤロー、ああいうところはオレたちの
出入りするところじゃないんだよ」
テキヤ仲間「お先に!」
寅「お疲れ!」
←ものすごい早口で。(渥美さんの真骨頂)
このあと源ちゃんの一人芝居しばらく続く。
源ちゃん「お嬢さんいいお嫁さんになるだろうな。
あなた、おつかれになった?
ご飯にするそれともお風呂?
ねえ、今日ご馳走作っちゃったのよ。
何だと思う?・・・ラーメンよ」
後期の源ちゃんじゃ考えられないセリフ。
全シリーズ中、源ちゃんが
一番長くしゃべったセリフ。
初期の頃は、源ちゃんの
キャラはまだまだ流動的だった。
寅「ばかやろう!お嬢さんが
そんなもの食べるわけないだろう」
源ちゃん「じゃあ、なにを作るんだよ」
寅「決まっているじゃねえか、スパゲッチイよ!」
チェロ演奏が続いている。
ある朝、とらや 店
夏子が来る。
しっかり店員の女の子映る!(セリフなし)
おばちゃん「おはようございます、いかがですか?先生のお体?」
散歩先生、体を壊しているらしい。
夏子「それが、はっきりしなくてね…」
おばちゃん「いけませんねー」
とらやのかまどから湯気、
ずーとこの第2作は源ちゃんが後半とらやの
従業員として働いている。第3作でもとらやで
真面目に働いている。
まだずーっと東京弁。
源ちゃん「兄貴ー、起きろよー!
先生のお嬢さんが来ている…」
ドドド!!!
源ちゃん頭押されて転がる
寅「お暇あるなんてもんじゃないですよ!しょっちゅうもてあましちゃって
鼻血がブアーッと出そうですよ!へへ!」
夏子、散歩先生が寅に折り入って
相談事が有ることを伝えに来る。
この場面でとらやの「おしながき」
「値段」がはっきりスクリーンで読み取れる。
レモン、イチゴ.メロンかき氷50円.あんみつ70円.クリームソーダ70円.
ソーダー水50.アイスクリーム30円
サイダー50円.クリームあんみつ80円.
冷蔵庫は「森永」
サイダーやソーダー水などが50円と、当時の普通の値段なのに比べて、
かき氷やあんみつが安め
特にクリームあんみつは80円と凄いお得!これじゃあんまり儲けがないぞ。
当時1969年といえども、もしサイダーが50円だとするならば、甘いものの王者
クリームあんみつは下町の安い店でも120円くらいはしたと思う。
(わたしは当時まだ小学校低学年なので想像)
ちなみに第13作「恋やつれ」ではあんみつは150円になっていた。
散歩先生の家
散歩先生(少し元気ない)
散歩先生「実はな、うなぎが食いたい。」
寅「冗談じゃないよ。」
散歩先生「わしが若い頃食べた天然の、
ナチュラルなうなぎが食べたい」さすが英語の先生(^^;)
寅「今、江戸川汚れちゃってるんだから…」
散歩先生、すねて「もういい!もういい!」
仕方なく江戸川で釣りをすることに…
江戸川土手
ほお被りしてうなぎを江戸川で釣ろうとする寅
タコ社長、スクーターでやって来て「なに釣ってるだい?」
寅「こんな川でタコが釣れるか?」
社長「うなぎなんか釣れるわけ無いじゃないか、
そんな仕掛けで、ハハハ!」
おばちゃん、団子とおにぎり、
あついお茶の差し入れ←さすがおばちゃん親切!
おばちゃん、どうして、寅の入院の時は
1回も見舞いに行かなかったんだい?全くの謎。
源ちゃんにおばちゃん「あんたも付き合いがいいねえ~」ほんとほんと
おばちゃん「いやだよ、あてもなしに釣ってんのかい。
おかしな人だね、寅さんも…」
寅「義理ある先生に頼まれてよ、まさか
いやとは言えねえやな。
そこが渡世人の辛えところよ…」
夏子が来て
夏子「寅ちゃん…私夕べ、お父さんに叱られちゃった…。
寅ちゃんのことで」
寅「え!?オレのことで?」
夏子「あたし寅さんのお母さんのことひどい人だって言ったら、
急に怒り出して『子供が可愛くない親がどこにいる、
子供を捨てるにはそれだけの辛い事情があったはずだ。
他人のおまえが生意気な口をはさむんじゃない』って」
寅「でもねえ、お嬢さん、それはあのババアの面を
見たことのねえ人の言うことですよ。そうですよね。
先生のような、上品なお母さんを
持っている人には、とてもわからねえ…」
夏子「父もね、お母さんの顔知らないのよ…、」
「えっ!…」
「父が二つか三つのときに死んだの…」
工場のサイレンが聞こえる。
寅「はァ…先生も産みのおふくろさんの
顔知らないんですか…」
寅「はぁー…」
人は過ちを犯す生き物だ。そして、その過去の過ちを
改めていく能力も人間は持っている。
散歩先生が寅の気持ちをよく分かってくれる背景には、
同じ寂しさ、哀しさを共有しているせいかもしれない。
運動部のボートが過ぎていく。
しびれ切らした夏子が寅に提案。
「じゃあ、こうしたら、丸甚さんとこ行って
生きたうなぎ買うのよ。そいで、
今、…江戸川で釣ってきましたって…」
寅、スくっと足つ!
夏子、ちょっとたじろぐ。
寅「そんなこと知ってるんだったら
どうしてはやくそれを教えて
くれなかったんですよ。
そうなんだよ、
いくら物知りの先生でも、
「江戸川のうなぎのツラと浜名湖の
うなぎのツラ見分けつかねえもんなあ!」
あんたたちっていったい(--;)
しかしその直後ほんとにうなぎが掛かる!
源ちゃん「引いてる!引いてる!兄貴!」
寅「うなぎだ!」
寅「釣れた!釣れた!
釣れた!釣れたーい!!
うなぎだ!うなぎだ!
うなぎだ!うなぎだーい!」
3人とも全力疾走で大はしゃぎして家に帰る。
寅「♪お味噌なーら、ハナマルキ、
とくら!おかーさーん」
源ちゃん「おかあさ~~ん!!」
散歩先生の家
子犬の鳴き声
寅「先生!うなぎ釣れたよ!土手からずっと
駈けづめだったからねー!
蒲焼にしてやるからね!
正真正銘の天然のうなぎだぞ!
キモはキモ吸いにしてやるからな!」
寅「先生…起きろよ!……!」
寅「…」
寅「先生………」
散歩先生の顔を見つめる寅
寅「先生よ…死んだのかい?…」ガクッと腰が落ちる。
夏子「寅ちゃーん!あーッ疲れた。
寅ちゃんの足の速いこと!
…おとう…!!」
夏子、先生に触れ、真っ青になり
すぐ電話のほうへ走る。
寅「死んじゃったよ…し、しんじゃった…よ」
と愕然としている寅
お通夜
散歩先生のイスに伏して泣き続ける寅次郎。
御前様やって来て、
御前様「あれは、寅ですね…?」
夏子「はいそうです…」
御前様、障子を閉めて
御前様「寅、みっともない。泣くのはやめろ。
悲しいのは誰も同じだ。
しかし、一番悲しいのは、
一番泣きたいのは、あの、娘さんだ」
寅、ハッとする。
その娘さんが涙一つこぼさずに
きちんとしておられるのだ。
おまえはなんだ。それでも男か?
こういう時こそおまえがしっかり
しなくちゃいけないのではないか
それくらいのことが分からんほど
バカじゃなかろう」
寅、決意
翌日葬式
奮起して次の日の葬式のダンドリを朝5時起きで
すべて仕切る寅。
(寅は葬式のことをとてもよく知っている。
もうほとんどプロ並)
第5作でもいろいろおいちゃんが死んだと
思って段取り考えていたね。
観音経が聞こえてくる。
正式には「妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五」(偈文)
爾時無尽意菩薩 以偈問曰
世尊妙相具 我今重問彼 佛子何因縁 名為観世音
具足妙曹尊 偈答無盡意 汝聴観音行 善応諸方所
弘誓深如海 歴劫不思議 侍多千億佛 発大清浄願
我為汝略説 聞名及見身 心念不空過 能滅諸有苦
假使興害意 推落大火坑 念彼観音力 火坑変成池
或漂流巨海 龍魚諸鬼難 念彼観音力 波浪不能没
或在須弥峯 為人所推堕 念彼観音力 如日虚空住
或被悪人逐 堕落金剛山 念彼観音力 不能損一毛
或値怨賊繞 各執刀加害 念彼観音力 咸即起慈心
或遭王難苦 臨刑欲寿終 念彼観音力 刀尋段段壊
或囚禁枷鎖 手足被柱械 念彼観音力 釈然得解脱
呪詛諸毒薬 所欲害身者 念彼観音力 還著於本人
或遇悪羅刹 毒龍諸鬼等 念彼観音力 時悉不敢害
若悪獣圍繞 利牙爪可怖 念彼観音力 疾走無邊方
玩蛇及蝮蠍 気毒煙火燃 念彼観音力 尋聲自回去
雲雷鼓掣電 降雹濡大雨 念彼観音力 応時得消散
衆生被困厄 無量苦逼身 観音妙智力 能救世間苦
具足神通力 廣修智方便 十方諸国土 無刹不現身
種種諸悪趣 地獄鬼畜生 生老病死苦 以漸悉令滅
真観清浄観 廣大智慧観 悲観及慈観 浄願常譫仰
無垢清浄光 慧日破諸闇 能伏災風火 普明照世間
悲體戒雷震 慈意妙大雲 濡甘露法雨 滅除煩悩焔
諍訟経官処 怖畏軍陣中 念彼観音力 衆怨悉退散
妙音観世音 梵音海潮音 勝彼世間音 是故須常念
念念勿生疑 観世音浄聖 於苦悩死厄 能為作依怙
具一切功徳 慈眼視衆生 福聚海無量 是故応頂礼
爾時持地菩薩 即従座起 前白佛言 世尊 若有衆生
聞是観世音菩薩品 自在之業 普門示現 神通力者
当知是人 功徳不少佛説是普門品時衆中 八萬四千衆生
皆発無等等 阿耨多羅三藐三菩提心
↑の赤文字がこの作品でお坊さんが読経している部分。
かなりの部分読経している。
観音経は読みやすいこともあり、日本で最も広く
親しまれているお経の一つ。
禅宗などでもよく読まれている。このお経は全部で
二十八章からなる法華経(ほけきょう)の
第二十五章であるが、その章だけを独立させて
観音経という一つのお経としたものである。
第二十五章は完全に独立した内容となっている。
おそらく法華経が成立する時に、
観音信仰を説く独立したお経が取り込まれて
第二十五章ができたと考えられるらしい。
正式には「観世音菩薩普門品第二十五」と言う。
観音経は名前のとおり観音さまの功徳を
説いたお経であり、観音さまを心に念じたり
観音さまの御名(みな)を唱えると、
たちどころに一切の苦厄から救われると説かれている。
散歩先生の葬式では、かなり長くお経が読まれていた。
散歩先生が寅に語った「生老病死」もこのお経の中に
出てくる。もっとも、散歩先生は「老病死別」と言って
はいたが。
おいちゃん受付、源ちゃん靴そろえる役、
谷よしのさん、知り合いのおばさん役で、さくらたちと同じ部屋にいる。
タコ社長の奥さん(水木涼子さん)も同席。
水木さんは第6作「純情篇」第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」
でもタコ社長の奥さんとしてバッチリスクリーンに登場!
第3作ではなぜか九州の別府あたりを行商している役で
ラストの汽車の中でで寅の隣に座っていた。
谷よしのさんは最初に寅が入院いていた部屋にも
入院部屋で財津一郎の付き添いでいたから
今作品はなんと2回目でしかも別人で登場!
さくら、満男のためにミルク試し飲む(さすが山田監督、芸が細かい!)
寅「よーし、あれもいいし、これもいいな、あっ、隠亡(おんぼう)への祝儀忘れてたな…!」
↓
死体の埋葬・火葬などを業とする者を指したが,
転じてそれらの役をする者,その役をもそう呼んだ。
御坊・隠墓・煙亡とも書く。以前には,穴掘り・埋葬,
あるいは火葬を隠亡にやらせたが,もともと,
このオンボウ役は,死の忌を最も受け易いと考えられていた。
藤村、学会の会合終ってようやく葬式にあらわれる。
寅「あ!なんだいあんたか!」
夏子、藤村を見て、耐えていた心が崩れていく。
夏子の部屋
夏子自分の部屋で思わず藤村の胸に泣き崩れる。
藤村「結局、僕のことは…」
夏子「言ったわ。3日前にそれとなく…」
藤村「そしたら?」
夏子「お前の選んだ男なら何にも言わんって、
ちょっと寂しそうな顔を…」
寅、そうとは知らず部屋のドア開けてしまう。
寅愕然として、しばらく二人を見ている。
渥美さんのきつい目。シリアスな場面。
寅「お嬢さん」
夏子「はい」
寅「お棺が出ますよ、出棺ですよ…」
夏子「どうもありがとう…」
寅「いいえ」
そのあと、焼き場まで偶然3人車に
乗り合わせる寅の不幸…これは辛い。
ちなみに「テレビ版.男はつらいよ」では、同じく佐藤オリエさん演ずる
マドンナ冬子さんは、寅に、彼の気持ちを受け入れることが
できないことを真正面から謝るのだ。つまり彼女は寅の想いを
きちんと理解していた。
しかし、この映画版では夏子さんは、
遂に寅の気持ちは分からずじまい…。残念…(TT)
夜、とらや 店
おいちゃん「まいった、まいった、今日は、まいったーな!
あんな辛れえこともなかったな!」
おばちゃん「ハラハラし通しで私胸がが悪くなっちゃったよ」
おいちゃん「あーもう、寅さんの顔見るのが切なくて切なくてなあー」
博「辛かったろうなあ…全く同情しちゃうなあ…」
おばちゃん「火葬場でお骨の焼ける間の長かったこと、ねえ~」
おばちゃん実感だねえ(^^;)
さくら「私お兄ちゃんと顔合わせ無かったわ。気の毒で…」
おいちゃん「ああいうのを三枚目と
いうんだよな、絵に描いたようだよ」
おいちゃん「だから、オレは言わんこっちゃねえってんだよ。
ほんとにあいつはバカだねー...」
電灯つく。
おいちゃんの背後に寅が座っている。
!!!!!
おいちゃんだけ気づいていない。
おいちゃん「えっ?」
さくらと博、ビックリしておいちゃんに無言で知らせる。
おいちゃん「えっ?」
さくら、首を横に振る
おいちゃん「ううん?…」
おいちゃん「うぇええぇ…!」
おいちゃんビックリ仰天して後ろにひっくり返る。
森川信の独壇場だ!
これぞおいちゃんギャグ!
寅ゆっくり立って、
ビビリまくっている
おいちゃんの手をとり
起こしてやり、パタ、パタ、
と着物をはたいてやる。
こわ~~~(^^;)
満男泣きじゃくる。アドリブか!??
緊張感のある空気を赤ん坊ゆえに察したのか?(^^;)
その後、ふらふらと二階に上がっていく寅、
(荷物部屋のほうに上がっていったのはなぜ?)
おいちゃん「はー、苦しい。はー…ちょっと、
ちょっと水持って来てくれ、
さくら、いよいよ今日は、
オレゃだめかもしれねえ…」
追いかけ、二階に上がるさくら。
窓の外は風が強い
さくら「お兄ちゃん…」
寅、泣いている。
寅「さくら、心配するなよ、別にどおってこたあねえんだ…。
オレは慣れてるしよ。先生の葬式も一応取り仕切ったし、
これで…ちったあ先生への恩返しもできたろうよ。
あとのことはよどうってこたあねんだよ…ウウウ…」
さくら「お兄ちゃん、泣いてるの?」
寅「バカヤロウ!顔で笑って、心で泣いてよ…
そこが渡世人のつれえところよ。ウウウ…」
さくらも泣いてしまう。
寅「先生!先生よー!
先生は分かってくれるよなー!
ウウウ…」
悲しい尺八が流れる。
第1作も寅は結構泣いたが、この第2作は
寅は泣きに泣きまくった。
こんなにも寅が思いっきり泣くシーンが
多い作品は他にはもちろんない。
春、桜、とらやの縁側
登が堅気になってとらやを訪ねる。
登「お嬢さんは?」
おいちゃん「3日前に結婚式、今、新婚旅行で京都」
京都 三条大橋
夏子
『そうなのよ、お父さん、私今京都にいるの、
つとむさんとふたりでね。
そしてね、とってもびっくりするような、
お父さんにどうしても聞かせてあげたいことに
出会ったのよ。
寅ちゃんがいたの」
寅が雪駄を修理してもらっている。
菊「ホラ、寅、もう寅、行くで!」
寅「細かいの、ちょっとくれよ」
菊「厚かましいな!何べんも何べんもこの子は…」
寅「いいじゃねえか、親子の間柄で」
菊「勝手なこと言うな、金の話はまた別じゃ」
寅「しみったれてるなあ、まったく!
よお!お母ちゃん!!」
『お父さん。寅ちゃんは、お母さんに会っていたのよ。
そうなのよ、やっぱり
そうだったのよ。お父さん。
お父さんがどんな顔をするか見てみたいわ。』
藤村「おい、声をかけなくていいのか…?」
夏子「いいのよ…、いいの…」
←夏子の顔とても優しい
「でも、もう..
そのお父さんはもういないのね…」
↑シリーズ屈指の美しく哀しい余韻。
この夏子の言葉に泣けました。
三条大橋を渡る寅と菊、
失われた時間を
取り戻していくような二人の背中…
第2作「続男はつらいよ」は名作である。
第1作「男はつらいよ」に負けないね、これは。
監 督 :山田洋次
脚 本 :山田洋次、小林俊一、宮崎晃
撮 影 :高羽哲夫
音 楽 :山本直純
出 演 :車寅次郎/渥美清
諏訪さくら/倍賞千恵子
車竜造/森川信
車つね/三崎千恵子
諏訪博/前田吟
タコ社長/太宰久雄
源吉/佐藤蛾次郎
川又登/津坂匡章(後に秋野大作に改名)
御前様/笠智衆
菊/ミヤコ蝶々
坪内散歩/東野英治郎
澄(グランドホテル店員)/風見章子
医師、藤村努/山崎努
患者/財津一郎
坪内夏子/佐藤オリエ
観客動員数 48万9000人
完(2004年1月16日更新)(2005年2月12日再度修正、)(2007年1月25日追加修正)
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