バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第32作 男はつらいよ
1983年12月28日封切り
起死回生 物語の復活 千の風になって口笛を吹く寅。
備中高梁から始まったアイデアの泉
第18作「寅次郎純情詩集」を最後に、山田監督はアイデアを出し切り、作品作りに悩み始める。
その後もさすがに地力があるので、「佳作」までは必ずこぎつけるのだが、臨場感の弱い場面や過去の作品の
二番煎じ的なシーンが時として若干目に付くようになってくる。二番煎じは必ず一番煎じに劣る。半年に一度の
制作の連続はやはりなかなかアイデアが醗酵しないのだ。半年に一度というのはやはり厳しいサイクルである。
落語なら繰り返し演じることで深みや味や艶がでてくるが、映画の場合は新鮮味が失われ、劣化していく危険性がある。
(もちろん、これは非常に高いレベルでの作品批評、ないものねだり、であって、第19作以降の作品もほとんどが
すばらしい良さをたっぷり含んだ、品格のある作品たちであることは疑いのないことではある。)
しかし、そんな時、第8作で登場した印象深い備中高梁を再び舞台にすることを思いついたことでインスピレーションが
もう一度こんこんと湧き始めたのである。これは博の父親の故郷であり、博たちの故郷でもある高梁ならではの効果だ。
山田監督自身にとっても、この落ち着いた高梁の町は第8作ロケの時もとても印象深いものがあったらしい。
そして、寅が、高梁に滞在することそれ自体が博やさくらと自動的に深い縁ができていくのである。
この絶妙の設定がまず成功のポイントだった。ましてや、寅が滞在する博の父親の菩提寺である蓮台寺の和尚さんが
なんと懐かしい2代目おいちゃんの松村達雄さん。そしてその娘さんの朋子さんと相思相愛の仲になる。そのマドンナが
当時絶頂期のもっとも輝いていた竹下景子さん。そして寅は最初から高梁の町にいる。とらやには行かないのである。
それゆえ、滞在が長くなる。寅は町の人となる。こうして備中の小京都、高梁での物語が深まっていく。
第15作「相合い傘」が第11作「忘れな草」の助走を経て、大きく花開いたように、この「口笛を吹く寅次郎」は第8作「恋歌」の
懐かしい思い出をベースに、第22作「噂の寅次郎」でのイメージも手伝って、見事に物語の中身もスケールも広がり、
往年の「相合い傘」や「夕焼け小焼け」のごとく躍動感に溢れ弾んでいくのである。
こうして、第32作「口笛を吹く寅次郎」は山田監督にとって、長いトンネルの後青空がスカッと見えるように
起死回生の傑作となった。
寅の2つの天職
なんと寅は今回は啖呵バイをしない!する必要がないのである。なぜならば今回寅は「お坊さん」なのだ。
それもそのはず寅は物語の初っ端から備中高梁の蓮台寺にいついてしまうのだから。
寅のお坊さんは『門前の小僧習わぬ経を読む』の言葉どおり、宗派やお経の差異を超えて初めてとは
思えないほどの貫禄だった。そのあげく、遂には『納所坊主』として引き続き檀家の法事の段取りなど
全て取り仕切っていった。テンポのいい寅の特質が全開し、正に「口笛を吹く寅次郎」となっていく。
旅をしながらの啖呵バイどころではない。
ちなみに「納所坊主」とは、 寺務所会計・庶務係として下働きしている僧や見習のお坊さんのこと
寅の生業はもちろん「テキヤ」である。時々「行商」とか「露天商」とも言われる。
おいちゃんやおばちゃんは、あまりいい顔はしないが、なんだかんだ言ってもこれは寅の天職である。
実に巧い。特に啖呵バイの口上の口跡のよさは他の追随を許さない。天下一だ。
お客さんの心を掴むのも実に巧み。だからこそ、啖呵バイで怪しい品物を売ることができるのだ。
特に『易』のバイは相当の玄人。この、人の心を掴まずしてはできない啖呵バイとお坊さんの説法とは
どこか共通点があるのだろう。それ以外の職業も出来ないわけではないが、根気が無いので、
いわゆる毎日働くというような正業というものにつけないのである。
結局、寅は人と話す仕事が向いているのだろう。お坊さんというのは人に物を売る仕事ではない。
人が話しに耳を傾ければ、それで成功だとも言える。いわゆる『法話』は寅の得意技なのだ。
もちろん歴史も仏教も何も知らないし、お経もほとんど読めないので、全部自己流ではあるが、
笑いながらも、人々は寅の話に感動するのではないだろうか。
寅は人生の達人だ。お坊さんというのは人生の達人でなければ務まらない。
さくらに合図する寅
しかし、その後が悪かった。
朋子さんと婿養子結婚したいばかりに、本格的にお坊さんの修行を御前様に
申し出て、たった3日で逃げ出してしまったのだ。
結局、寅は瞬間的にいい仕事はできても、継続的にはできないのだろう。
怒ってとらやにやって来た御前様は「煩悩が背広を着て歩いているような男」「3日間で逃げ出すしまつ」と
寅を批判する。
おいちゃんそれを聞いて余計なことを言ってしまう。「3日坊主とはこのことですね」
御前様怒り爆発!みんなで反省。もう笑いの連続である。
ちなみに寅はお坊さんのことをこう言う。
「医者になるよりは楽だろう。なんせ相手はもう死んじゃってんだから」(^^;)
ベストカップル 朋子さんと寅
「なんと言いますか…、美しさの中に知性を秘めたと言いますか」
これは、朋子さんに遭った後、博がとらやで呟くセリフ。
寅の人生なのかでもなかなかあれだけ華を持った女性はいない。
幼馴染の可憐な千代さん。最愛の人であり旅人であるリリー。
青白き月光の輝きかがりさん。魔性の女性ふじ子さん。
彼女たちに勝るとも劣らない美しい朋子さん。家族想いで、温かな心が見ている私たちの気持ちを
和らげてくれるようだった。
この「男はつらいよ」の中で、真剣に寅に対する自分の愛情を何らかの形で寅にはっきり伝えたのは、
千代さん、リリー、そしてこの朋子さんだけである。
柴又駅ホームで、悲しみで潤んだ目をした朋子さんが首を横に振った時、寅の決意と覚悟しだいでは
恋が成就する正にその時だったのだが、寅がとった行動は……。
今回のマドンナとの相思相愛の別れは私にとってこのシリーズでもリリーとの別れ同様、最も悲しく、
後にまで想いが残ってしまうものだった。それほどまでにこの二人には「物語」が存在したのだ。
「ねえお兄ちゃん、お兄ちゃんと朋子さんとの間に何があったか教えて」
「そんなこと教えられるかい。それは大人の男と女の秘密ですよ」
このように今回の朋子さんと寅の縁は深かった。
あらゆるマドンナの中で渥美さんとの相性が浅丘さんに匹敵すると言われる竹下景子さん。
渥美さんは、競演中、ずっと竹下さんのことを「お嬢さん」と呼び、実に仲がよかったそうだ。
実際スクリーンを見ても、竹下さんと渥美さんは最初から最後まで見事に息がピタッ!と合っている。
山田監督もそのことを感じたからこそ、後に竹下さんをもうあと二度もマドンナに起用するのである。
浅丘さんを除いて、三度出演したマドンナはもちろん竹下さんだけである。
絶妙の『居場所』が生む物語の深み
上にも書いたが今回のマドンナの朋子さんと寅の恋がこのシリーズの中でもより深く、切ないのは
彼女の住む備中高梁の寺に寅も何日も滞在し、お坊さんとして働き、役に立ち、彼女の父親、弟、
そして弟の恋人らとの喜怒哀楽を寅も同時に体験したからである。つまり短いながらも彼女の住む
高梁の家が寅の心の住処になっていったからである。さらにはハンコ屋、タクシー運転手たちに
代表されるように町の人々とも関係が深くなっていくにつれ、高梁の町自体が寅の第2の居場所、
故郷となって朋子さんと寅の恋を応援していたからである。
その上なんとさくらたち家族3人も法事で高梁にやって来て全てが合流するという寅にとっても
見ている私たちにとってもこのシリーズで未だかつてない最高の状況が誕生するのである。
だからこの2つの家族は博の実家高梁を通して見えない糸で最初から繋がっているのである。
それゆえ寅はその居心地のよさから高梁に居ながらにして千の風になって口笛を吹きながら
気持ちは時には柴又へ時には高梁へと、どちらの大空にも飛んでいるのである。この環境こそ、
寅の理想。旅人の至福なのだ。そしてそれは見ている私たちの理想であり至福でもある。
物語の終盤で朋子さんがとらやに訪ねてきた時、私たちはまるで寅の身内がとらやに訪ねてきたような
錯覚に陥るのはそのせいである。
つまり寅はさくらたち家族のものでもあり、実はすでに朋子さんたち家族のものでもあったのだ。
だからこそ余計あの柴又駅ホームの別れがいつにもまして切ないのだ。
山田監督はこうして絶妙の寅の『居場所』をこの物語で作ることに見事に成功したのである。
この『居場所』設定の効果はこの後、第38作「知床慕情』に受け継がれていく。
美しい備中高梁の町
このシリーズで私が心から美しいと思った町は、
播州龍野、山形寒河江、北海道小樽、そしてもう一つがこの備中高梁である。
どの町もしっとりと落ち着きがあり、古き良き伝統が息づいていた。
そしてその作品はすべて名作である。
町に趣があるとそこに必ず物語が生まれるのである。
そしてこの高梁は第8作「恋歌」でもそうとう多くのロケがされている。
今回本編を再現するに当たり、第8作と第32作のロケの12年間の今昔も、博の父親の実家「岡村邸」
やひろみちゃんの白神食品店のある「紺屋町美観地区」などを中心に比較しみてみた。それもお楽しみください。
笑い満載 ザッツ エンターテイメント2
このシリーズで一番のエンターテイメント性が高い弾けた物語はと聞かれたら
第1作「男はつらいよ」と第15作「相合い傘」と第17作「夕焼け小焼け」と、
そしてこの第32作「口笛を吹く寅次郎」だと即座に私は答える。
「物語」に深みがあるだけでなく、最初から最後まで笑い満載なのだ。物語のどこをとっても
上質の笑いがちりばめられて息つく暇がないほどだ。
物語が充実すればかならず笑いも弾ける。これは古今東西の物語の真理である。
渥美さんの表情がこんなに生き生きしていたのは久しぶりだった。
下の画像↓はおいちゃんとおばちゃんとの往年の駒形橋の家でのラブロマンスの
再現をしていたシーン(^^;)おいちゃん首を絞められてました。
風に揺れる洗濯物
「男はつらいよ」の忘れがたいシーンと言えば、寅とさくらの別れのシーンをはじめ、
マドンナとの別れや、再会などが頭をよぎるが、時として、どうでもいいような実にさりげない
場面が、いつまでも頭から離れないこともある。
それが、この第32作「口笛を吹く寅次郎」のラストシーンだ。
偶然再会した寅と熊さん。今、熊さんは因島大橋工事現場で働いているのだ。そして娘さんの傍らには
職場で知り合った再婚相手のあき竹城さんが笑っている。このあき竹城さんの楽天性が鮮やかである。
彼女は第26作「寅次郎かもめ歌」でも物語のラストを明るく締めくくってくれるが、ひとつの
物語のラストを鮮やかなハッピーエンドに変えてくれるスケールの大きな役者さんである。
やはり、ハッピーエンドの女神は、あき竹城さん、そして第14作の春川ますみさんだ。
この映画のなんともいえない奥ゆかしい深みは、このような本物の役者さんがさりげなく
しめるべきところでしめていると言う点にも現れている。山田洋次監督はこのような役者さんの
力を引き出させるのが天才的に巧いのだ。
あき竹城さんは叫ぶ
「あれー!!洗濯物とぉり込むの忘れたよぉ〜!」
そしてラストに映る風に揺れる3人家族の洗濯物。
私は第32作「口笛を吹く寅次郎」の中で、どのシーンが一番好きかと自分に問うた時、
実はこのラストの風に揺れる洗濯物のシーンなのである。
まあもっとも、こんなこと人に言っても、物語の本流と関係のない、なんでもないこの洗濯物の
シーンがどうして一番感動するのか説明が厄介なので、そういう時は、同じく最高に切ないシーンである
寅と朋子さんの柴又駅での別れを言うことにしている。
あの風に揺れる洗濯物の風景の中にこそ、この長い映画の核があると私は今でも確信を持っている。
動画
第32作「口笛を吹く寅次郎」感動のラストシーン再現しました!
イラストレーション 龍太郎
■第32作「口笛を吹く寅次郎」全ロケ地解明
全国寅さんロケ地:作品別に整理
本編
松竹富士山
今回はいつもと違い、シリアスな音楽。
今回も夢から
夕焼け空の中 寅が故郷柴又を想い浮かべている。
テーマ曲がゆったりと流れる。
寅の声
「私生まれも育ちも東京は葛飾柴又です。
故あって、渡世の暮らしに身をやつしておりますが、
侘しい旅の明け暮れに思い出すのは、故郷で
私の身を案じてくれている肉親たちのことであります。
たったひとりの妹さくら。亭主の博。おいちゃん、おばちゃん。
印刷工場のタコ社長…」
寅がズームになって
夕焼け空の中にとらやの人々の姿が映し出されていく。
「あー…、その名を口にするだけで、
私の目は涙で潤むのでございます」
とらや 青色の世界
台所
夢なので若干台所の様子が違う。
さくら「おばちゃん、お兄ちゃんまだ帰ってこない?」
おばちゃん「どうしてんだろうねえ〜、
私たちがこうして陰膳据えて待ってるっていうのにィ」
寅、陰で、その姿を見ている。
おいちゃん「早くあいつに知らせてやりてえよお〜」
おばちゃん「喜ぶよ、きっと、小さな目を糸のように細くしてさ」
と、目が糸になるポーズ。おばちゃん相変わらずお茶目(^^)
小さな目を糸のように…
博「ハハハ」
寅、陰でほのぼの笑っている。(体は夕焼けの色のまま)
タコ社長やって来て
社長「さくらさん!日取りが決まったよ!」
と意気揚々。
寅、社長の肩をたたこうとするが、
その前にすっと台所へ。
さくら「なんの?」
社長「寅さんの結婚式だよ!」
さくら「あー!」
社長「10月のね、大安吉日、
もうホテルは予約しちゃったよ」
さくら、高揚しながら
さくら「すみません」
夢とは言え寅の結婚決定。
ちょっとだけ設定が第13作「恋やつれ」に似ている。
もっとも今回は偽寅が結婚。
↓第13作の夢
博、見合い写真を見ながら
博「しかし、兄さんが気に入らなかったらどうするう?」
さくら「大丈夫よォ〜、こんな素敵な人じゃない」
とみんなでニコニコ。
おばちゃん「そうだよ、この人だったら寅ちゃんだって文句ないよ」
寅も背後に回ってニコニコで写真を覗く。
おばちゃん「社長さんにいい人お世話してもらってェ」
写真はよくよく見るとな、なんと今回のマドンナ!竹下景子さん!
夢でマドンナが出てくる作品は
意外に少ないが、この第32作も写真だけとは言え、
マドンナが夢に出ているんだねえ〜。
マドンナが夢で出て来るのは第27作「浪花の恋の寅次郎」
第28作「紙風船」第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」
社長「いやいや、これで少しは恩返しが
できるってもんだよ。
ほんとに、寅さんには、世話になったからねえ…」
なってないなってない(^^;)
と、泣き始める社長(^^;)
寅は社長の肩に手を当てて、頷く。
社長は寅に気づかない。
博店先を指差し
博「さくら、誰だ?あれ」
さくら「お兄ちゃん!」
みんな店先へ駆け出す。
寅は後にいるのに、店先にもう一人寅が?
さくら「お兄ちゃんおかえりなさい!」
なんとレオナルド熊さん!
おばちゃん「おかえり」
社長「寅さん、おかえり」
コミカルなメインテーマ
偽寅「さくら元気だったかい。社長景気はどうだい?」
寅、自分じゃない男が寅になっているのを見て
怒りが湧いてくる。
さくら「お兄ちゃん、お嫁さんが決まったのよ」
偽寅「誰の?」
おばちゃん、偽寅の肩に手を当てて
おばちゃん「寅ちゃんのだよ」
偽寅「オレの?」
社長「ほら、ご覧よ、この人だよ、美人だろ」
おいちゃんと博結婚式用のモーニングと白いスーツを持ってくる。
おいちゃん「ほらほら、お前のモーニングも作ってあるんだ」
博「これは、新婚旅行の背広です」
夢とはいえ、メッチャクチャ段取りがいいね(^^;)
社長、祝儀袋を出して
社長「これお祝い!」
偽寅「社長すまないねえ〜」
寅は暖簾をたくし上げてますます怒りの顔
社長「マンションの一つでも買ってもらおうと思って」
これまた夢とは言え凄い金額(@@;)
現実の社長とはえらい違い。
一同「ハハハ」
結婚を祝う音楽でお馴染み 『結婚行進曲』が流れる。
メンデルスゾーン作曲 『結婚行進曲』1842年作曲
シェークスピアの喜劇「真夏の夜の夢」の
劇中音楽「真夏の夜の夢」作品 61 の第9曲目にあたるのが、この「結婚行進曲」。
思いもよらぬ運命にもてあそばれた 2 組の恋人たちが、
ついにめでたく結婚する場面で演奏される、晴れやかな喜びに満ちた行進曲
花嫁とその父らしき人がとらやの店先に。
さくら「あら、みえたわ!」
いきなりやなあ。夢だから何でもあり(^^;)
おばちゃん「まあ、お綺麗な…」
博「兄さん!あの人がお嫁さんです!」
偽寅「やったー社長!」と飛び跳ねて喜ぶ。
偽寅も社長も「ウハハハハ〜!!」
写真の方と実物と違いますね〜。
これも夢だからOK??
寅、台所から怒って出てくる。
寅「チクショウ!」
しかし、動きが止まってしまって。
寅「おい!!」
急に声がゆっくりしか出なくなってしまう。
寅、懸命にそれでも訴える。
寅「おい!おおおい、
ちがう、ちがううう、
だまされてるよおお、
オレが寅、とらじろううだあああ…」
口の動きは『オレが…、オレが』と言っている。
いやあ、あるあるそういう金縛りの夢 ヾ( ̄∇ ̄;)
岡山付近を走る吉備線
電車の中
寅、長いすに寝ながらうなされている。
寅「あー、あー…」
労働者風の男が寅を起こしている。
なんと夢の中の偽寅のレオナルド熊さん!
熊さん「大将、大将…」
寅、はっと目を覚まして
寅「えっ、ふあー!」と熊さんを見て、驚き、起き上がる。
そりゃ驚くよ。夢の中で見た偽寅だもんなあ(^^;)
熊さん「うなされてたようだなあ…
悪い夢でも見たんかい?」みたみた(^^;)
寅、我に帰って
寅「ありがとう…」と、言いながらほっとする。
熊さん、自分の座席に戻りながら
熊さん「無理ねえやなあ、
いやなことばっかりだ。近頃はなああ」
と、嘆くように座って、弁当を持ち、娘に語りかける。
熊さん「食べたかァ」
娘さん「うん」
熊さん「もういいのか?」
娘さん「うん」
熊さん「そうか」
寅、しみじみ二人をいい顔で見て、頷いている。
娘さん「あの人だあれえ?」
熊さん「あれ、おじちゃーん、おじちゃーん、てな」
寅、近づいて
寅「娘さんかい?」
娘さん歌を歌いながらイスの上で可愛く踊っている。
熊さん、照れながら
熊さん「ああ、はは、これは、オレの命よ」いいねえ〜( ̄ー ̄)
寅、横に座りながら
寅「そうだなあ」
寅、ちょっと周り見て、
寅「カミさん…どうしたい」?
傾いた娘さんの体を支えてやる。
熊さん「うう…思い出しちまったじゃねえか、ううう」
とカバンに顔をつけて泣いてしまう。
寅「…すまね。悪く思うな」
と、娘の頭をなでて、抱っこしようとする寅。
寅「なあ、な、姉ちゃん。すまなかったなあ」
娘、寅の膝の上でキャッキャッ遊ぶ。
寅「姉ちゃんなあ、ヘヘヘ、ウリウリウリ」
娘「フフフ」
寅「あー、可愛い子だ可愛い子だ」
寅、娘さんをあやす
寅「よーしよしよしー、ヘヘヘ、オラオラオラー、」
オレンジ色の国鉄吉備線が
秋の吉備路を走っていく。
タイトル
男(赤)はつらいよ(黄) (白)口笛を吹く寅次郎 (白)映倫
今回だけいつもの口上は、使われていない。後にも先にもこの作品だけ。
口上『大道三間 軒下三寸
借り受けましての渡世、
わたくし、野中の一本杉でござんす』
啖呵バイのことだね。
いつもの作品なら
「わたくし、生まれも育ちも
葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、
姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
目方で男が売れるなら こんな苦労も
こんな苦労もかけまいに かけまいに♪
備中国分寺跡の梅林
総社市上林
市南部のアカマツにつつまれた丘陵地のほぼ中心部に位置し、
聖武天皇の発願によって全国に創建された国分寺の一つ。
建物は南北朝時代に焼失したと伝えられ、
現在の建物は江戸時代中期以降に再建された。
境内にそびえる五重塔は、県内唯一のもので
吉備路の代表的な景観となっている。
今回の歌の間のミニコントは備中国分寺跡
備中国分寺跡の梅林で熊さん父娘とおやつを
食べてピクニックをしている寅。
隣の家族のカメラを借りて寅が父娘写真を撮っては
見たものの、映っている様子を見たくて、
熊さんがついついフィルムをビヨーンと引き出して
しまい、 おいおい ゞ( ̄∇ ̄;)
全てがパーになって隣の家族の父親と
熊さんが大喧嘩というナンセンスギャグ。
寺領の西はずれにある梅林
熊さんたちの大喧嘩を
笑いながら見ている寅と娘さん。
かわいい娘さん、お父さんが喧嘩してるのに笑ってるよ、
なかなかの大物(^^;)
父娘たちと本村のバス停で別れ、
高梁に向かう寅。
高梁川の渡しを使い、町に入っていく寅。
柴又 帝釈天 山門前
源ちゃんが般若心経を唱えている。
源ちゃん「般若波羅蜜多、
羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶…」
子供たちがそばで不思議そうに見ている。
般若心経(仏説摩訶般若波羅蜜多心経)
源ちゃんの唱えていたのは上の↑水色の部分。
日蓮宗は『妙法蓮華経』を根本経典としているため、
般若心経を唱えることはない。
源ちゃんは「日蓮宗」なので、まずありえないことだが、
この題経寺の御前様は、そんなケチくさいことはしないで、
全てのお経はお釈迦様のお教えだということで、
自ら第11作「忘れな草」でも般若心経を唱えていた。
さくら、感心して
さくら「あら、源ちゃん。
門前の小僧、習わぬ経を読む」
さくらの後にクスリ屋さんとやきそば、牛丼の店。
このやきそば屋さんはつい最近まで古美術店があった場所。
となりのクスリ屋さんは第14作「子守唄」で、寅が連れて来た
赤ん坊のミルクなどをさくらが買った店。
お馴染み貴子さんのロークはその向かって右隣。
源ちゃん、さくらにかまわれて嬉しそう。
照れ隠しに箒で掃除。
子供たちにあっち行けと言っている。
とらや 店
さくら「こんにちは〜ごくろうさま」
と、江戸家に来ている行商のおばさんに挨拶。
七五三注文予約承ります。の貼り紙。
とらやのお品書きがいきなり映る。
大福餅 150円
豆大福 150円
お赤飯 200円
ところてん 150円
あんみつ 280円
くず餅 250円
草だんご 150円
焼きだんご 150円
磯乙女 200円
三色だんご 200円
今回は店に冷蔵庫が無い!!
たぶん横の団子製造の部屋にあるんだろう。
台所で、博とおいちゃん、おばちゃんが暗い顔。
おばちゃん、台所から店にやって来て、
おばちゃん「さくらちゃん、博さんと社長喧嘩したらしいんだよ」
さくら「えー?」
とらや 台所
さくら「どうしたの?」
おいちゃん「社長がな、儲けにならない仕事ばかり
持ち込むんで、博さんが怒ってるんだよ」
博「要するに古いお得意さんにしがみついている
だけなんだ、社長の営業のやり方は…。
そういうお得意ってのは、儲かる仕事は
大きな工場に出しておいて、手間ばっかりかかって、
どこにも引き受けてのないような仕事を
うちに押し付けてくるんだ。
今日だってそうなんだ。
急ぎの仕事だから割り込ませてくれって、
冗談じゃないってんだよ!最初から
赤字って分かってる仕事なんだからなあ…」
赤字って分かってる仕事?そりゃまあやる気しないよな(^^;)
さくら「そう腹を立てないで、いい機会なんだから
ちゃんと話し合ってみたら?根本的なこと」
おいちゃん「あいつは少し博さんに甘えてるんだから。
この際、きつく言ってやったほうがいいぞ」
おいちゃん、工場の方を見て
おいちゃん「あ、来た来た」
タコ社長、愛想笑いしながらやってくる。
社長「博さん、さっきは悪かった。オレの言いすぎが
あったら謝るから…、この仕事だけはやってくれよ。
今日中に済ますって専務に約束しちゃったんだよ。な、
この通り。と、頭を下げる」
博、下を向いたまま
博「今まで何べん言われたかなそういう無茶を。
段取りがみんな無駄だ」
おいちゃん「お前のやり方はその日暮らしなんだよ。
経営者として失格だな」
経営者としては確かに相当ひどい(^^;)
博「長期的な展望というものが全く無いんですからねェ」
さくら、ハラハラしている。
おいちゃん「ないない」合いの手(^^;)
さくら「博さん、そんな言い方したら、
話し合いにならないじゃないのォ」
社長、ブスーとしている。
さくら「ねえ、社長さんだって困るわよねえ〜」
さくら、安易な仲裁はいけない。
下手に情をかけても工場は良くはならない。
夫の博に結局はいいことはない。
社長「わかったよ。へッ、どうせオレは無能な経営者だよ。
止めますよ、止めりゃいいんだろお!
なにもやりたくてあんな工場やってるんじゃないんだよ、
みんな叩き売って、借金払った残りは
退職金としてくれてやるよ!」
と仰々しいジェスチャーで泣きながら威嚇。
博、嫌な顔して身を引く。
あの工場を売ったお金は借金を払っても
残るほどそんなに高くはないだろ社長、
見栄を張ってもバレてるぞ。
社長「オレは一文無しになって、
ウエエ…、カバン提げて
寅さんみたいに、
フーテンして歩くんだよ!
ウエエエエン」
と泣き泣き工場へ戻っていく。
博に甘えてるねえ、社長さん(−−)
甘えれる部分は甘えていいけど、
工員たちの給料と今度の冬のボーナスは頼むよ。
実は、ボーナスどころか、正月に社長は博の家に、
当時まだ出始めだったパソコン(リコーSP200)を
なんとプレゼントするのだが、そのことはラストで。
一同シーン
おいちゃん「思い出しちゃった、寅のこと…」
さくら、下を向きながら微笑む。
おいちゃん、立とうとする。
さくら「どうしてるかしらね」
電話 リーン
おばちゃん「はいはい、とらやです。
あら!寅ちゃんなの!?」
おいちゃん、ステン!と転ぶ。
久しぶりに出ました、おいちゃんのステン転びギャグ。
第14作「子守唄」第17作「夕焼け小焼け」などで
ステンと思いっきり転んでいました。
おばちゃん「さくらちゃん、寅ちゃんだよ」
さくら、小走りで
さくら「えー?」
さくら「もしもし?」
備中高梁
紺屋川のほとり 紺屋町美観地区
日本の道百選の通り。
白神食料品店の斜め向こうにある黄色い公衆電話
なんとプッシュホン!寅にしては珍しい。
寅「おう、さくらか、ん?みんな元気でやってるか?
そうか、うん。
オレ?オレはあれだよ。あのー、
備中高梁ってところにいるんだよ。そうよ、博の
おとっつぁんの故郷だよ。」
諏訪一郎(ひょういちろう)さんと寅は第8作「恋歌」で、
この高梁の実家で数々の思い出を作った仲なのだ。
「りんどうの花」の話はあまりにも有名。↓
第8作のリンドウの花のシーン
田中紙店 結納、のし
キムラヤパン
シキシマパン 食料品 たばこ 日用品塩
白神食料品店のひろみちゃん、やって来て、10円玉を差し出す。
寅「うん、近くまで来たんでね」
ひろみちゃんに10円玉を入れてくれるようにジェスチャー。
寅「入れて」
ひろみちゃん入れてあげる。
寅「急に思いついてさ、
墓参りしようと思って、うん、フフフ」
寅、電話しながら、ひろみちゃんに目でお礼。
寅「ども、いい子だね」とひろみちゃんに言う。
寅「おまえじゃないよ、(と、さくらに)。
うん、あのー
寺の名前何てたっけ?」
ひろみちゃん、つい振り返って、笑ってしまう。
寅も笑って
寅「寺の名前」
とらや
電話口
さくら「博さん、今お兄ちゃん
岡山県の高梁にいるんだって」
博「へー」
さくら「ね、お父さんのお墓参りしたいって
いうんだけれども、
何ていったっけ、お寺の…」
博「蓮台寺」
さくら「もしもし、蓮台寺だって」
寅「あー、そうそう、思い出した思い出した。
えー?、いつ帰るかって?
そうよなあ〜、
まあ、これから、出雲の方へ出て、米子、鳥取と、
フラフラと秋の風に吹かれて歩いてるうちにゃ、
いずれ柴又へ着くでしょう、エヘヘヘへ」
いいねえ〜、寅は社長と違ってお気楽で┐(´-`)┌
寅「…?おい、…あ、切れたか。ち、まあいいや」
と、受話器を置く。
2−3116番
とらや
さくら「のんきなこと言って」
と受話器を置く。
おばちゃん「なんだって?」
さくら「当分帰ってきそうにもないわね。
あの調子じゃ」
博「しかし兄さんよく覚えていてくれたなあ、
親父の墓のことまで」
おいちゃん「そういうことは、
妙に覚えがいいんだよ、あいつは〜」
寅って、葬式とか墓参りだとか大好きだもんね。
このシリーズでもそのようなシーンはかなりある。(^人^)
おばちゃん「ほかのことはすぐ忘れちまうのにねぇ」
一同「フフフ」
博、黒のアームカバーをつけて
博「さてと、しかたがない、工場に行くか」
さくら「博さん、仲直りしてね、社長さんと」
仲直りと言うより、社長が博の経営再生計画に真摯に耳を傾け、
固定化した自分のやり方を打ち破れるかにすべては
かかっているのだと思う。
単純な人間関係のいざこざではないのだこれは。
下手に仲直りすると社長はこの方針でいいと思ってしまう。
おばちゃん、お客さんに
おばちゃん「いらっしゃい」
工場
涙をすすりながら
メガネをかけ、オタオタ写植をしている社長
ゆかりちゃんが、ハンカチを渡そうとしている。
ゆかり(無声音で)「社長さん」
社長、ゆかりちゃんのハンカチに気づかず、
泣き続ける。
工員の中村君とトシオ君、
どうしていいものか困っている。
博、やって来て
社長の持っている紙を取る。
博、工員たちに
博「しょうがない、やらなきゃ終わんないんだからな」
博、工員たちにテキパキ指示。
博「この分、今日中にやる」
工員(トシオ君)「はい」
トシオ君の名前は第37作「幸福の青い鳥」で出てくる。
実は彼はゆかりちゃんを密かに慕っていたのだ。
ちなみに中村君は第23作「翔んでる寅次郎」で、
古沢規子さんと川千家で結婚披露宴をしている。
別の紙出して
博「ここ原寸でいこう」
工員(中村君)「はい」
博「紙、アート(紙)でいいんですね」
社長泣きながら
社長「うん」泣いてる場合じゃないよ社長(^^;)
博「在庫あるか?」
ゆかり「あ、切れてる」
博「電話して」
博「この部分は今日中にはできない。時間が
かかちゃうぞ」
ゆかりちゃん、社長にハンカチを渡す。
社長、礼を言って、
メガネをはずし、涙を拭き、うつむく。
こんなに頑張ってもこの仕事赤字かァ…(ノ_-。)
高梁 蓮台寺(本当は薬師院) 墓地
薬師院
山号:東向山
札所名:備中西国三十三所観音霊場
札所番号:第3番
宗派:真言宗御室派
高梁の北方、臥牛山山頂にある重要文化財の山城
「備中松山城」の砦として築かれた薬師院と隣の松連寺。
城郭造りの頑丈な雄姿は寺というにはあまりにも勇壮だ。
寛和年間(985〜987)、花山法皇の開基といわれている。
真言宗御室派に属し、本尊は薬師瑠璃光王如来で、
五十年毎に秘仏御開帳法要があると言う。
現在の薬師堂は棟札から、元和10年(1615)の建築とされている。
ここは2つの寺があり、正面向かって、左がこのロケ地である薬師院、
右が松連寺となっている。松連寺の観音堂には、
豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、総帥・宇喜多秀家(岡山城主)が
座乗した軍船に使われていた格天井と船戸が現存する。
境内には清水比庵(ひあん)の歌碑がある。
ゆったりとした音楽が流れる。
諏訪家の墓に参っている寅。
寅「はあー…、
先生、
しばらくだなあ。
オレだよ、
寅だ。
覚えてるか?」
水をかけ、ウイスキーをかけ、線香を焚く。
寅「
葬式には来れなかったんで、
今頃やって来た」
寅も、ウイスキーをかざし、そして飲む。
寅「オレは元気だよ。
相変わらずのフーテン暮らしで、
嫁さんももらえねえけどな。
これは持って生まれた性分でしょうがねえや
ヘヘヘ。
博はちゃんとやってるからな」
寅、枯葉を取り除きながら
寅「さくらとも仲良くやってるし、
なんの心配もいらねえよ」
しゃがんで手を合わせ拝む寅。
この静かな墓参りのシーンは
なんとも味わいがあった。
何度見てもいい場面だ。
寅、お寺の水桶の場所に戻って
寅「お世話さーん」
誰もいない
寅「お留守か…、お留守ですか」
寅、眼下の町を眺めながら、
汽車の音
寅「さあ…って、柴又へでも帰るか…」
おいおいおい、さっき電話で、
出雲に出て、米子、鳥取と行く
ってさくらに言ってたんじゃなかったのかい ┐(´-`)┌
寅、遠く下の石段を見て
寅「なんだ、酔っ払ってるのかあの坊主」
はるか下から和尚さんが
ふらふらよろけながら上がってくる。
朋子「お父さん、大丈夫?」
和尚さんは2代目おいちゃんの松村さん。
朋子「ありゃりゃ!あ!やっぱり酔うとる。はい」
と、腕を抱えて上がっていく。
朋子さんの「ありゃ」はこの物語での口癖。
何度も出てくる。柔らかくてとてもいい響きだ(^^)
朋子「ほら、はい」
和尚さん、へたってしまう。
朋子「は、しょうがないな、はい」
和尚「う〜〜ん」
またヨタヨタ抱えられながら上がっていく。
寅、朋子さんを見て、
すぐ眼からハートマークが飛び出した。
(o ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄o)
朋子のテーマが流れる。
朋子「法事の時はお酒を
控えなさい、と言うとるでしょ」
和尚ヨタヨタになりながら
和尚「なんぼも飲んでおらんわい」
と風呂敷包みを落とす。
朋子「うーん、よう言うわ、こげんにフラフラして」
和尚「んー、うるさいなあ、おまえは」
寅、すれ違う時、ずっと朋子さんを見つめている。
朋子、風呂敷包みに気付いて
朋子「あ、どうしよ」
寅拾う。
朋子「あ、ど、どうも」
と朋子さん手を出すが、
寅はなんと風呂敷包みを渡さないで抱え込む!
朋子「…?」だよね(^^;)
寅「わたくし持ちます」 いきなりかよ ゞ( ̄∇ ̄;)
和尚さん、手すりでゼイゼイになりながら
和尚「お参りかな?」
寅「はい、諏訪先生のお墓へ」
和尚「おー、諏訪先生のお知りあいかの」
朋子「そいじゃあ、遠方から?」
寅、目からハート乱射
寅「はい、…東京から」
朋子「あら」と、和尚さんを見る。
和尚「おー、そりゃまた遠くから。
ちょっと、寄っていきんさい、ヘヘヘ」
と、手招きし、上がっていく。
ちなみに諏訪一郎(ひょういちろう)さんの知り合いは
北海道にもたくさんいるだろうね。
和尚「ヘヘヘ」と上がっていく。
朋子、笑いながら
朋子「どうぞ」
寅「は…、でもやっぱり私、急ぎますから…」
と、いいつつ目は
「おじゃまします!」と言っているぞ ヾ( ̄∇ ̄
;)
朋子「それでもお茶のいっぱいくらい」
寅、一歩下がって
寅「でも…ご迷惑だから」
寅、それなら風呂敷渡せよな(−−)
朋子「父もそう言うとります、ね、どうぞ」
寅、ニコーっと笑って
寅「そうですか!」
朋子「ええ、どうぞ」
と上がっていく。
寅、俄然元気に溌剌と、
階段を意気揚々と上がりながら
寅「それじゃ、ほんとうに一杯だけ
いただいて、すぐ失礼しますから」無理無理(^^;)
と、すぐ朋子さんを追い越し、上がっていく。
寅、小声で、振り向きながら
寅「それだけですから、どっちですか?
いきましょ!はい」とニッコニコ(^^)
ニコニコ
スタスタ上がっていく。
たまらんなあ〜、この露骨な態度。
なんの節操もない。
瞬殺的に決まっちゃったんだね。┐(-。ー;)┌
カメラは遠くからロングで彼らを撮り、
蓮台寺の城郭が美しく写っていく。
夕闇迫る美しい高梁川
母屋の居間
和尚と寅の笑い声
和尚「アハハハ」
寅「ヘヘヘ」
和尚「アハハハハハハ」
居間
もう、相当二人とも出来上がっている。
サッポロビール、日本酒がいっぱい。
寅「最初分かんなかったんですよ」
和尚「フフフ」
寅「なんで医者が笑ってるか?」
和尚「フフフ」
寅「でね!私聞いたの。どっか、私おかしいですかって」
寅、背広広げる。
和尚「うん、フフ」
寅「そしたら、医者が言ったねえ。
『きみい、レントゲン撮る時は、
笑う必要ない』って
ハハハハハハ!」
和尚「ハハハハ!」
朋子、おかず持ってくる。
寅「いやだけどね、レントゲンだって、
あれ、にっこり笑って写した方がいいと思うの。
だって明るく撮れるもの、そのほうが」
和尚「そりゃそうじゃあ、ハハハ」 おいおいゞ( ̄∇ ̄;)
朋子「ハハハ、そんな…フフ」
寅、箸振り回しながら
寅「そうそう、写真て言えばね」
和尚「うん」
寅「こんな話しがあるの」
寅「葬式でね、みんな集まったの」
和尚「うん、フフ」
寅「黒いの着て。その時、私がねえ、
写真撮る役になっちゃったの。
で、キャメラ持ってジーッと見た時、
ついうっかりさ、『はい!笑って』と
こう言っちゃったんだ」
和尚「うわハハハハ!」
朋子「フフフ」と我慢し切れなくて笑っている。
もちろんこれは第8作「恋歌」の
博の母親の葬式でのエピソード
第13作「恋やつれ」で、歌子ちゃんとらや
訪問の時も、このエピソードを茶の間で
なんと博がしゃべっていた。
↓
第8作の記念撮影のシーン 笑って〜!
寅「怒ったね、跡取りが」跡取りとは毅のこと。
和尚「フフフうん」
寅「そんな怒るこたあねえんだよ、
ねえ、てめえだって笑ってるくせにさ」
和尚「ハハハ」
朋子「フフ」
和尚「坊主も笑うたんじゃろその時」
寅「これがね、糞食ったような坊主だけどさ、
ニコーっと笑ったね、金歯出して、ハハハ!!」
相変わらず凄い表現(^^;)
でも、ちょっと待てよ…その時の坊主って、
この蓮台寺の和尚さんのことじゃないの?
和尚さんも爆笑してるけど
ひょっとして自分のことだったりして。あちゃ…( ̄∇ ̄;)
朋子「フフフフフ」
寅「な、和尚さんよ、
バカぱなしばっかりしてるけどさ」
和尚「うん」
寅、手を合わせるまねして
寅「いいのかい?この御勤めのほうは、
夜の御勤めのほうは?」
和尚「なあに、仏、ほっとけじゃ」
またでたよ、このギャグ ┐(´ー`)┌。
しょっちゅう出るよ。
最後は大人になった大空小百合ちゃんに
まで言わせていた。
和尚「ハハハー」と寅に酒を注ぐ。
寅「仏ほっとけねえー」
おいちゃん「あんたの話聞いて
今頃笑とりゃせんかのお、ハハハハハハ」
朋子「お父さんのお経なんかより
よっぽどありがたい言うて、フフ」
和尚「そうそう、ハハハ」
車の音
朋子「あ、帰って来た」
寅「どなた?」
和尚、シリアスな顔して
和尚「息子じゃ。できそこないの」
寅「できそこない…?」
戸が開いて
朋子「お帰り」
一道、寅の方を見る。
朋子「ごはんは?」
一道「食べた」
朋子「檀家の方のお知り合い」
一道、お辞儀をして
一道「こんばんは」
寅、きょとんと
寅「あ、学生さん?」
一道「ええ」
和尚不満げに
和尚「学生なら何で学校行かんのじゃ。
いつまでも家の中にゴロゴロしとってェ」
寅、一道を見上げている。
一道、父親を睨んで足早に二階に上がっていく。
寅のカバンから帽子が落ちる。
朋子「ごめんなさい」と帽子を拾う。
寅「いえいえ」
朋子、寅の帽子をカバンの上に置く。
和尚、お銚子をコン!とお膳に置いて、
憮然とした顔で飲んでいる。
寅、そっと朋子さんの近くに顔を近づけて
寅「親子関係うまくいってないの?」
朋子「そうなの」と少し呆れている。
和尚情けない顔をして
和尚「んんん、情けない話しじゃのう、
あんた。偉そうに仏の道など
説いてまわっとるが、実は、ふ…、
たった一人の…息子すら、
よう育てんのじゃ、このわしゃあ、うううう」
と情けない顔で泣いてしまう(^^;)
寅「いつもこんなふうなの?」
朋子「そう、あ、お父さん…」
寅「お父さん、よ。陽気にやろうや、パッと。な」
和尚「ん!」
和尚、急に頬を膨らまし、
目をひんむいて倒れてしまう。
寅「大丈夫?、大丈夫かなあ、こりゃあ…」
朋子「あーりゃりゃ、すっかり酔うてしもうて…」
と座布団をまくらにして寝かせている。
寅「いやあ、少しオレ、飲ませすぎちゃったかなあ…」
和尚、うなっている。
朋子「いいのよ〜、父がこねえに嬉しそうに
笑おたの、ほんとに久しぶり」
朋子、ガウンをかけてやる。
寅「あー、そうですか」
朋子「いつも陰気なジジイなの」 ジジイって…( ̄∇ ̄;)
寅「へえー…」
二人で、ちょっと微笑んでしまう。
朋子「フフフ」
柱時計が時刻を打つ。10回 (10:00pm)
寅「あー、こりゃどうも、なんだか
バカっぱなしをしているうちに、
すっかり長居しちゃって」
と、帽子を手で持ち、おいとまのフリをする(^^;)
朋子「あの、よろしかったら、
今夜は家にお泊りになりませんか?」
寅「いえいえ、これ以上
ご迷惑をおかけするなんて、とても」
朋子「そのつもりで、もう床も敷いてありますから」
と、ガウンをかけなおしてやる。
寅「え?」 まんまとやったね寅 v( ̄ー ̄)ノ
寅おどおど。
朋子「広いだけが取り得の家ですけん。どうぞ」
と、お銚子を持って台所へ。
寅、かしこまって正座して
寅(無声音)「はあー、…」
と、腕時計を見るふり見るふり(^^;)
朋子、振り向いて
朋子「今、熱いのつけますから」
あああ、寅いい気になっちゃうよ( ̄∇ ̄;)
寅、幸せ一杯の顔をして、
帽子を手遊びしながら
寅「それじゃ、ほんとに一晩だけ」
と、至福の声。ニッコニコ(^^)
翌朝 早朝
朝霧が立ち込める高梁川の川辺で
撮影をする一道たち。
シューベルトの鱒
この曲は第12作「私の寅さん」でも使われていたね。
先輩、一道にコーヒーを渡してやる。
飲みながら、シャッターチャンスの瞬間、
連写で撮っていく一道。
高梁の町
朋子さん、朝に八百屋で買い物
高梁市本町32
朋子「オヤジさん、これなんぼ?」
玉子と青菜
オヤジ「はい、200円と65円、265円です」
女子高生たち通学
自転車で
「おはよう」
蓮台寺
朋子、蓮台寺の長い階段を上がってくる。
石手で作られた清浄水の桶
とんびの声
寅が上がり口に、旅支度を整えて座っている。
朋子、気づく。
朋子「ありゃ、どうしたんです?、こげえなところで」
寅、すっと立ち上がって
寅「ゆうべはどうも、遅くまですいませんでした…」
朋子「もう帰られるん?」
と、少し淋しそう。
寅「は、お茶一杯のつもりが、泊めてまでいただいて」
朋子「あ、ええのよ、そんな遠慮」
と、家に上がって、
朋子「今すぐ朝ごはんの支度しますけ、
せめてごはんだけでも」
と、上がり口に朋子さんが座る。
うーん、これが日本文化なのでしょう。
お客さんをもてなす時の作法でしょうか。
寅「はい、そのお気持ちはありがとうございます。
が、キリがありませんから」
朋子「どうしてぇ?」
寅「はい、朝ごはんをいただいた後に、
食後のお茶を飲みながら、バカっぱなしを
しているうちに、すぐお昼です」
朋子「ええ…」と小さく頷く。
寅「『おそばにしますか?おうどんにしますか?
『そうですねえ、おそばでもいただきましょうか』
そんなことしているうちに、三時のおやつですから。
薄切りの羊羹にお薄をいただいているうちに、
今度は夜です。
『もう一杯どうですか?』『いえいえ』、
二杯が三杯、四杯、またこちらへ泊まるようなことに
なります。
それじゃキリがありませんから」
朋子「そこまで考えることはない思いますけど…」ないない(^^;)
寅「いや、考えちゃうんですね、性分として」
朋子「へえ……」
この長いギャグは第2作「続男はつらいよ」で
使ったギャグのアレンジ版。
↓
寅「それがいけねえんだよ。
一杯が二杯になり三杯になる。
団子が出るか、また茶を飲むか、
そのうち酒になるじゃねえか。
オレは一杯や二杯じゃすまねえぜ、
気がついた頃にゃ、
お銚子がずらっと並ぶ。
さあ、もう腰がたたねえねえ。
いっそのこと、泊まっていくか、
(寅、大きく手を上げ、)
カラスカーァと鳴いて朝になる。
おはよう!
『またお茶をください!』
二杯になる三杯になる。
団子が出るか、酒を頼むよ、どうする?
オレは旅に出れなくなっちまうじゃねえか」
おいちゃん「何もそこまで考えなくていいじゃねえかよ」
以上第2作「続男はつらいよ」のシーンでした。
寅「それじゃ、失礼します」
朋子「名残り惜しいわ、なんやら…」
寅、振り向いて
寅「あ、あの…美青年の弟さんによろしく」
朋子「はい…」
寅、ちょっと、もじもじして、
寅「それと、とうとうお会いできませんでしたけれど、
ご主人にもよろしくどうぞ」
出た!寅のさぐり( ̄∇ ̄;)
必ず既婚か未婚か確かめるんだよな。
第8作「恋歌」でこのパターンが
最初に使われていた。
朋子「ありゃぁ〜…」
寅「はい?」
朋子のテーマが流れる。
朋子「私…出戻りなんです…」と恥ずかしそうに下を向く。
寅、眉がピクッっと動く ( ̄▽ ̄)
微妙〜〜に喜んでいる。
寅「え?」
朋子「いっぺん結婚したんですけど、
事情がありまして…」
ともじもじしている。
表からタクシーの運転手さん、やってくる。
関敬六さん、今回はポンシュウではなく、
タクシーの運転手さん
運転手「おはようございます。あ、」
朋子「ありゃ…」
運転手「院家さんをお迎えに来ました」
と、腕時計を見る運転手。
朋子「ありゃ…。どこからあ?」
運転手「ハンコ屋の法事ですがな」
運転手、寅に挨拶
朋子「何時から?」
運転手「10時からですぅ」
朋子「へえ??」
朋子柱時計見て
朋子「たいへん!あと10分しかないわ!
お父さん!」
と寝室に走っていく。
和尚、瀕死の二日酔いで唸っている。
和尚「おう…」
朋子「わー、お父さん、今、お迎え、
…!どうしたん?」
和尚「おーい、朋子、わしゃ二日酔いじゃあ、
誰か代わり頼んでくれんかい」
和尚吐きそうになっている。
朋子「えええー!今頃そげいなこと、
あああ、えらいことやなああー」あたふた。
和尚「えらいこっちゃ〜〜」 確かに┐(~ー~;)┌
朋子「運転手さん、ちょっと待って、
…今…宗久寺さん電話してみるけん」
と電話口に走っていく。
運転手「あ、宗久寺の院家さんなら、
今朝早よう岡山のほうへ行きんさったでえ」
朋子「え!」
運転手「家の車で」
朋子「ほんとー!」
和尚、ううううと吐いている ((((TT)
朋子「あ…いやあ…」
運転手「どねいしたん?ゲロ吐きんさって」
このセリフ笑った(^^;)
朋子、顔に手をあて、お手上げ状態。
朋子「あああ、どーしよー…。
あああん、困ったなああ」
寅「お嬢さん」
朋子、寅を見る。
寅「私が代わって参りましょう」おいおい(^^;)
朋子「…あ、あなたがぁ?」
寅「はい。私にも責任があります。
門前の小僧習わぬ経を読む。
私、お寺の前で育った男ですから。」
お寺の前でって…それだけでできるのか?(^^;)
朋子「はあ…」
寅「法事の真似事くらいなんとかなります。
余ってる衣ありませんか」ほんまかいなゞ( ̄∇ ̄;)
朋子「あ…はあ…」
寅「い、行きましょう」
と、奥の部屋へ行こうとする寅。
朋子「それでも、宗派などは?」
寅「大丈夫大丈夫」大丈夫じゃないだろ(^^;)
と和尚の部屋を突っ切って行く。
寅「念仏唱えりゃ、
同じようなものです。」
メチャクチャ( ̄▽ ̄;)
寅、和尚を押しのけて
寅「邪魔だ、邪魔!」
和尚、へたり込んで、
和尚「そうそう、うまくいくよ。
同じようなもんだい」
いいかげんな和尚さんやの〜(−−;)
このあたりの松村さんと
渥美さんのコントはさすが!
松村さんのへべれけはもう最高!
寅、向こうのほうで
寅の声「これでいいでしょう、はい」
ちなみに↑で出てくる『崇久寺』さんは
福岡にある山田洋次監督のお父さんの墓がある寺だ。
こんなところにも山田監督の思い入れの気持ちがちょろっと表れている。
メインテーマがテンポよく流れて
タクシーが走っていく。
後部座席で寅がそれらしく座っている。
すでに坊さん気取り。
寅「あ、運転手さん」
運転手「へい」
寅「仏様はいくつでなくなられたかな?」
すでに完全に役になりきってる。すご…( ̄、 ̄;)
運転手「九十二です」
寅「ほおおー」
運転手「今日は7回忌じゃけん、生きてりゃ、百ですら。
あれだけ生きりゃ、めでたいもんじゃ」
運転手「気をつけんさいよー」と近所の子供たちに言う。
ロケを見ている子供たち
そこらじゅうでロケを見ている子供たちの群集(^^;)
紺屋町美観地区の中に入って、昨日寅が電話をかけていた
白神食料品店の前を通って行く。
カメラは白神食料品店の中から道を映している。
備北タクシー 55 あ97−82
堤章玉堂印鑑に停まる。
タクシー、クラクション
プッ、プーーッ!
ゴム印 実印 認印 表札
万年室、ペン先修理
実印のご相談は当店へ
ハンコ屋「あー、ごくろうさん!今、寺から電話が
あったんじゃけど、
院家さん、具合悪いそうでていけんが?」
寅、降りてきて
寅「あ、は、代理を務めます納所坊主でございます」
ちなみに「納所坊主」とは、寺務所会計・庶務係として
下働きしている僧や見習のお坊さんのこと
ハンコ屋「おお」
寅「不慣れな点は、どうぞご容赦願います」
ハンコ屋「そんな、かまやせんが、
ありがてえところをちょろっと
やってくれりゃあそれでええのじゃ。
上がってちょうでい」
第11作「忘れな草」のラストでもおいちゃんが「ありがたいところだけ」
と言っていた。
ハンコ屋「おーい!納所さんみえられたで」
蓮台寺 居間
寅のカバンと帽子が映る。
一道「大丈夫かな?あげな人父さんの
代わりにやってェ。寺で修行したこと
なんかないんじゃろ?」
ないない。修行どころか悪戯しかしたことない(^^;)
朋子「それでもォ…お寺の前で育ったけえ、
だいたいのことはわかるう言うてェ…」
一道「フフ、むちゃくちゃじゃそげえなぁ」確かに(^^;)
朋子「だってえ、迎えに来たのは10分前なんよお」
言い訳になってないって。
朋子座って
朋子「お父さんはゲーゲー吐きよるし」朋子さん身振り手振り(^^;)
一道「フフ」
朋子「だいたいあんたが行かないけんとこよおー。
なによ、偉そうに文句なんか言うてえ!
『すいません、僕がお寺を継げばこげな迷惑
かけずにすんだのに』って、それぐらいのこと言うたらどう?」
一道「オレに当たらんでもええがな…」
一道、旅の準備
朋子「また撮影旅行?」
一道「伯耆大山の紅葉を
ねろうてみようとおもうて…」
鳥取県から見た大山
朋子呆れながらも、箪笥の中からサイフを取り出す。
朋子「お金無いんじゃろ」
財布開けて
朋子「何日ぐらい?」
一道「金ののうなるまで」
朋子2万円置いて 甘いよ朋子さん…(TT)
朋子「そげいなことばっかりしよって、
学校のほうはどうするの?
朋子「授業はとうにはじまっとるんじゃろ?」
一道「…」
朋子「お寺を継ぐか継がんかいう問題はお父さんと
あんたの問題じゃけん。二人できちんと話しんさい」
一道、頷いて、2万円持っていく。
朋子「お互いに口を利かんでなんでも私に言わせて。
そういうの卑怯よ」
一道「わかっとる」
お勝手の戸が開く。
白神食品店のひろみが入ってくる。
ひろみ「お早うございます」
と、ビール持ってくる。
一道「うっす!」
朋子「ごくろうさん。大変じゃねえ、朝から」
っていうか、もうすぐ11時だよ。
一道「これからひろみのとこ寄ろう思とったんじゃ」
ひろみ「なあに?」
一道、写真を見せる。
一道「これ、できたで」
ひろみ「わー、恥ずかしい!こげに大きい写って」
と、写真を見ていく。
一道「ニキビ修正しといたほうがよかったかな」
山田監督って意地悪(TT)
ひろみ「それを言う思うた。一番気にしとることを」とつつく。
一道「だってほら、これほら…」
ひろみ「やだ、やめて、フフフ」
朋子、掃除機持って
朋子「カズ、ほんなら気いつけて行きんさい」
一道「ん」
朋子「ひろみちゃんごくろうさん」
ひろみの声「はーい」
ひろみ、三脚を持ってやろうとする。
ひろみ「はい」
一道「サンキュー」
朋子掃除機を持って廊下を歩いていく。
勝手口の札
寺の裏手の道
一道、ビールのケース持って運んでいる。
ひろみ、一道のリュックや道具を車に積んでやる。
一道はバイクにビールのケースをくくりつけてやる。
ひろみ「山を写すんなら、頂上まできれいに晴れとらんと
よう撮れんまい」
一道、どうやってバイクの荷台に
縛ればいいのか迷っている。
バイクには「白神食品店」の文字が!
一道「ああ…」
ひろみ、一道からひもを取って、自分で縛ろうとする。
ひろみ「ね、曇った日はどうするん?」
一道車の荷物を点検
一道「晴れるまで待つんじゃあ」
ひろみ「へえ、その車ン中でェ?」
一道「ああ」
ひろみ「それじゃあ、雨が降ったら、一日休み?」
一道、ドアを閉めながら
44 み、87−93
一道「フフ、そうはいかんよ。
…雨が上がってェ、さあーっと晴れた一瞬は、
絶対のシャッターチャンスじゃけんな」
ひろみ「へえ…」
一道、寝袋を縛りながら
一道「空気が澄んで木の葉が雨に濡れてェ、
キラキラ光って、そじゃっえ、明日あたり雨が上がるかなあ
思うたら、前の晩から車の中で待つんじゃ。雨の音を聴きながら」
ひろみ「そげな時、…なにを考えるん?」何か言いたげ(^^)
一道「別にい…、なんにも」ちょっとじらす(^^)
と車に乗り込む。
ひろみ、ちょっと不満そうにして
ひろみ「ふうん」
一道「ただぼんやり写真見てるんじゃ」
ひろみ、近づいてきて、
ひろみ「何の写真?」
一道「つまらん写真」
エンジンかけて
一道「ヌード」 おいおい(^^;)
ひろみ、小声で
ひろみ「やらしい」いやはや(^^;)
と、背中を向ける。
一道、ひろみのほうに
水着姿のひろみの写真を見せる。
一道って…( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)
シューベルト 鱒が流れる。
ひろみ、振り向いて、ちらっとその写真見て
ひろみ「あ、私だ!」そらそうだ(^^;)
いったいあの写真いつ撮ったんだ??(^^;)
と写真を奪おうとするが、一道は運転席の前において
アクセルを踏む。
ひろみ「ちょっと、一道さん、
やだ、やだ、いけんよー!
ねえ、返して、ねえ!」
と言いつつちょっと嬉しそう(^^)
ひろみ「ねえ!いじわるう!」
と走り去るワゴン車をの窓をたたく。
ひろみ「えっちいー!!」まあまあ(^^;)
ひろみ実に嬉しそう。
微笑みながら、ひろみもすぐバイクで追いかける。
音楽テンポよく
分かれ道で
ひろみ「風邪ひかんでねー」
一道、運転席から手を振る。
ひろみ、ニッコニコ〜!で運転していく。
一道はひろみの言わんとするところをうすうす
分かっていながらあえて知らん顔をし、
いったん気を落とさせ、焦らし、
その後バーンとビックリ水着写真を目の前に
つきつけて効果的に相手を喜ばす。
さすが佐田啓二さんの息子さん!
彼もなかなかのやり手ぇ〜ん(^^)
紺屋町(美観地区)
白神食品店
お母さん「はい、ありがとう」
ひろみ、バイク停めて、
ひろみ「母ちゃん、ハンコ屋さん、法事?」
お母さん「おばあちゃんの7回忌」柿を盛り付けている。
ひろみ「ふうん」
読経の声が聞こえてくる
白神食料品店の横の店は紙屋さん
コクヨ帳簿 ライオン事務用品
なんと、第8作「恋歌」でも同じアングルから撮影がされている。
白神食品店もその近くの店も12年の年月を経て模様替えをしていた。
右端にハンコの堤章玉堂が見える。
↓
第8作「恋歌」
ハンコ屋の中から
「南無大師遍照金剛。。。」の声
蓮台寺は真言宗だからね。
一同 「南無大師遍照金剛、 南無大師遍照金剛」
寅よくお経が読めたなあ…、っていうか
よくばれなかったなあ…。
だいたい柴又題経寺はご存知日蓮宗、
ここは当然真言宗(^^;)
普通読めんよ。困った〜…。
ま、とにかくお経終わって
寅「よし!」
寅、お経の後、座りなおして、手を合わせる。
一同「ありがとうございます」
と、お礼
大杉侃二朗さんと谷よしのさんの姿が見える。
今回は大部屋のみなさん備中高梁の町の方に
扮しています。
大杉侃二朗さんはご存知第18作「純情詩集」、
別所温泉で坂東鶴八郎一座の座員の役で
あの「お掃除芸」をした異彩の人。
第18作で踊る大杉侃二朗さん
もちろん大杉さんは、金町中央病院の入院患者。
菊の湯のオヤジさん。湯の山温泉のラーメン屋のオヤジ。
柴又のご近所さん。駅員さん。リリーと寅が再会する
函館のラーメン屋の屋台のオヤジ。などなど
数限りなくこのシリーズに出演。
寅「えー、おばあちゃんは九十二歳の天寿をまっとうしたと
伺っております。
本日この七回目の法要に、かくも大勢の関係者が
集まられるということで、個人の人柄が偲ばれます。」
一同、お辞儀
寅「人間この世に生まれて来る時もたっった独り。
そして、死んでいく時もたっった独りでございます。
なんと寂しいことではございませんか」
急に目を見開いて、手を上げて、
寅「天に軌道があるごとく、
人それぞれに運命の星というもを持っております。
とかく子の干支ォのかたは
終わり晩年が色情的関係においてよくない!
一同ぎょっとする。
未(ひつじ)の女は門にも立たすな。蛇の女は執念深い。
一同ポカ〜〜〜ン だよな(^^;)
奥様、失礼じゃが、あなた眉と眉の間、
すなわちこの印堂に陰りがある」いつものパターン(^^;)
周りの人たち、彼女の顔をシゲシゲと眺める。
寅「ということは、ご主人の浮気で
泣かされている相であります」
全くいつもの啖呵バイの
易者バージョンそのまんま(^^;)
印堂にかげりが…
ハンコ屋のオヤジ、呆然
奥さん、口あんぐり。
寅「ご主人、なかなかの二枚目でございますな」
ハンコ屋「は???」
寅「あなた」
と指をさす。
後の男性客「ズボシやズボシ」
一同大笑い。
谷よしのさん笑い爆発。
↓
ハンコ屋のオヤジ、タジタジして、きょろきょろ
奥さん「和尚さん、お見通しじゃあなあ」
一同再度大爆笑。
ハンコ屋「あほ!わしゃ遊びはもうやめとるよ」
奥さん「うそ!うそ言いんさい!」
寅「あなたがやめてもおなごがほっとかんでしょう」
上手いねえ〜(^^)
一同さらにさらに大爆笑
ハンコ屋「無茶言うて…!」
ハンコ屋、振り向いて
ハンコ屋「一緒なってもう!」と大杉侃二朗さんにちょっかい。
ハンコ屋「もう本当にえらいの頼んだわもう!
いけんわこらもう!なあ!」
ハンコ屋をはじめみんなガヤガヤ大騒ぎ。
寅「お賑やかなことで」
と手を合わせ、ニコニコしている寅。
こうなったら完全に寅のペース(^^;)
しかし、この笑い話の前に、ちょこっと真っ当な
しみじみした話をさわりとして入れるところが
寅が素人じゃないところ。
面白い爆笑ネタを言うだけではないのだ。
蓮台寺
蓮台寺の石段で箒で掃除をしている朋子
タクシーが停まって
ハンコ屋と寅が出てくる。
二人とも笑って盛り上がっている。
ハンコ屋「いやいやいや楽しかったなあ」
運転手も笑って出てきた。
寅「お父さん、また頼むよ、ハハハ」
寅、朋子に気づいてお辞儀。
ハンコ屋「今度わしゃ、面白いとこ案内するからなあ。
高梁じゃおえんから、
岡山まで車飛ばしていこう!なあ」
やっぱり、寅の占いはズボシだったね
このオヤジって…(ーー;)
この手の方言、そういえば第48作「紅の花」の
岡山県津山でも使ってたなあ…。やっぱり似てるんだね。
それにしても長門勇さんは岡山県出身の俳優さんなので
実にネイティブ!(当たり前)(^^;)
寅「また頼む頼む頼む、ハハ」
ハンコ屋「なあ」とタクシーの運転手にも声かける。
ハンコ屋「あ、朋子さんー!」
運転手「あ、どうも」
朋子降りてくる。
朋子「おかえりなさい」
朋子、寅のふろしきを受け取る。
ハンコ屋「いやいや、おかげさんで、ええ法事させてもろたわ。
この納所さんの法話のありがたいこと、ヘヘヘ」
寅、手を合わせてお辞儀。
朋子「ほんまあ」とほっとしている。
ハンコ屋「悪いけどあんたのお父さんのな、こ難しいお説教より
よっぽどためになる言うてなあ〜、
ぼっけえ評判じゃったがーハハハ」
運転手「ハハハ」
ハンコ屋「お布施はずんどいたからなあ、ハハ」
朋子「すいません」
タクシー、帰っていく。
朋子「あーよかったぁー、
うまいこといったんじゃねえ〜」と安心顔
寅「ええ、まあなんとか」
朋子のテーマ
と、二人石段を上がっていく。
朋子上がりながら
朋子「ねえ」
寅「え」
朋子「どないな話しをされたん?」
寅「いやあ、口からでまかせですよ」確かに(^^;)
朋子「えー?」
寅「フフフ」
朋子「フフフ」
朋子「なんか…フフフ、面白そう、ハハハ」
寅「ハハハ」
朋子「ハハハ」と無邪気に笑う。
その朋子の横顔をまぶしく見ている寅。
この瞬間から寅は一目惚れから、
本惚れに移行していったねこりゃ。
寅、寺の中に入っていく。
朋子箒持ちながら
朋子「寅さんお昼ご飯はもう済んだんでしょう?」
寅の声「はい、あちらで済ませました」
朋子「じゃあ、晩御飯は何にしましょう」
ふたり遠くになりながら
寅「いや、もうなんでも結構ですよ」もうすっかりその気(^^;)
朋子「え?」
寅「余ってるもんで」
朋子「でも…」
柴又参道
川千家の前をさくらと満男が早歩きで
とらやに向かっている。
柴又7−6
二人ともお出かけの服装
満男「母さん、遅いんだよ」と小走り。
さくら「しょうがないでしょ。戸締りしないと
いけないんだから。」
と早歩き。
満男、さくらのかばん持って
満男「持ってくよ、はやくゥ」
とらや 店
さくら、小走りでやって来る。
さくら「あー、遅くなっちゃって、…!あら」
御前様が源ちゃんを連れて見送りに来ている。
おばちゃん「御前様がわざわざお見送りに来て
くださったんだよ」
さくら「まあ、おそれいります」とお辞儀。
御前様「満男君も行くそうだね」
満男「はい」
さくら「こんな機会にでも、おじいさんの故郷を
見せてやりたいと思いまして」
御前様「お墓の下でおじい様がお喜びになるだろう」
御前様、袋に入った『御仏前』(御香資)を差し出して
御前様「これ、仏様に」
さくら「ご丁寧におそれ入ります」
源ちゃん満男に
源ちゃん「お守り」
満男「おそれ入ります」言うねえ〜満男も(^^;)
源ちゃん指差しながら、ヒヒヒ笑い。
おそれいります。
おばちゃん、急いで台所から来て
おばちゃん「さくらちゃん、お弁当」
テーブルで風呂敷縛りながら
おばちゃん「お茶は汽車の中で売ってんだろ」
さくら「うん」
おおいちゃん「はやいもんだねえ、もう3回忌かあ、ねえ」
さくら「うん」
博工場からタコ社長と一緒にやって来て
タコ社長に
博「よろしくお願いいたします」
博「さて、そろそろ行こうか」
博「これ、社長にもらっちゃったよ」
とさくらに、『御仏前』(御香資)を見せる。
さくら「あら、そんなことしていただいて」
一同お礼。
社長「いや、ほんのお花代」とお辞儀。
さくら、博に御前様からの『御仏前』の袋を見せて、
さくら(無声音で)「これ、御前様」
博、深々とお礼。
このあたりのシーンはなんでもない場面なのだが
繊細な演出が光っている。ひとりひとりのやり取りが
凝っていて、それでいて自然で、奥深い味わいがある。
おいちゃん「博さん、お兄さんやお姉さんによろしく」
お姉さん????
おいおい、博にお姉さんなんか
第8作の母親の葬式の時はいなかったぞ(@@;)
おばちゃん「さくらちゃんも大変だね、
末っ子のお嫁さんだから」おばちゃん年の功(^^;)
一同 笑いながら納得
満男、ハラハラしながら、
満男「早くしないと新幹線遅れるよ」
博、腕時計見て
みんなでカバンを持って店を発つ。
さくら「そいじゃあ、いってきます」
おいちゃん「ああ、いっといでえ」
満男「いってきまーす」
社長「いってらっしゃい」
おばちゃん「お土産なんかいらないからね」
さくら、笑いながら
さくら「なんだか催促されたみたい、フフ」
お土産ってどっちにしても買ってくるんだよね。
一同笑う
お馴染み清掃車の音楽が流れている。いつも昼間に流れているが、
普通は朝早くだろう。それともこの音楽は清掃車じゃないのかな??
店先まで出て、見送る一同
おいちゃん「いい天気だ」
社長「楽しい旅だといいねえ」
御前様「ぱったり、寅と会うたりしてえ…」
う〜ん鋭いい!
と、歩いていく。
おいちゃん「は…」
御前様「いや、冗談冗談、
ハアア!ハアア!ハアア!」
といつもの御前様笑い(^^;)
源ちゃんもいつもの指差しヒヒヒ笑いで去っていく。
おばちゃん「まああ、お人が悪い、フフ」
おいちゃん「悪い冗談を、フフ…どうも、フフ」
社長、大笑い。
一同、遠くの御前様にお辞儀。
御前様のお告げでした(^^;)
高梁 蓮台寺
寅が納所坊主の格好で鼻歌を歌いながら
境内の砂に線模様を描いている。
「♪ラララララララッタンタンタンタン、
ズンチャカチャ、ズンチャ、チャチャ、
花摘むうう野辺に
陽はあああ落おおちいいて、
ペロペロペロぺ、ポンポンポン♪」
「誰か故郷を思わざる」
昭和15年(1940年)作詩西條八十、作曲古賀政男
霧島昇の歌でレコード化され、大ヒットした。
1 花摘む野辺に 日は落ちて
みんなで肩を くみながら
唄をうたった 帰りみち
幼馴染みの あの友この友
ああ 誰か故郷を 思わざる
2 一人の姉が 嫁ぐ夜に
小川の岸で さみしさに
泣いた涙の 懐かしさ
幼馴染みの あの山この川
ああ 誰か故郷を 思わざる
3 都に雨の 降る夜は
涙に胸も 湿りがち
とおく呼ぶのは 誰の声
幼馴染みの あの夢この夢
ああ 誰か故郷を思わざる
高梁と言えばあの「誰か故郷を思わざる」だよね。
第8作「恋歌」の博の父親 諏訪一郎(ひょういちろう)
と寅のやり取りの名シーンだ。
今回もやはり寅は同じ歌を口ずさんでいる。
ああ、それにしてもさくらたちは当然、寅が蓮台寺に
マドンナ目当てで居ついているなんて夢にも
思っていないで一路高梁へ。
さあ、どうなりますやら。フフフフ…(^^)
高梁 武家屋敷通り
博の父親の実家の前
父親の実家の門を眺めている長男の毅
向こうの方に特急「やくも」が走っていくのが見える。
第8作「恋歌」では、同じ線路を蒸気機関車が煙を立てながら
力強く走っていたことを思い出す。
↓
第8作で寅たちの横を走るSL
岡村邸(博の父親の実家に使われた)
この、毅がシゲシゲと眺めている武家屋敷通りの
岡村邸の門は、もともとは明治10年(1877)、本町に設置された
上房郡役所の門でとても重厚なものである。
先代の岡村秀治郎が大正年間、郡役所の移転で
不要になった門を買い取り、自宅の門とした。
ゆったりと音楽が流れる。
毅、門を開けて、痛んだ扉を触っている。
この博の父親の実家は、第8作で博の母親が亡くなった時に
長い時間ロケされていた。岡村邸は広いの敷地面積を持っているので
維持が大変そうである。第32作では土壁などが修復されていた感じ。
第8作で岡村邸の門の中に入っていくさくら 第8作で酒を買うために外に行く寅
父親の世話をしていたと思われる
近所のおばあちゃん道から覗いて
おばあちゃん「ありゃあ、まあ」
毅「あ、おばさん、ご無沙汰しております」と道に出て行く。
おばあちゃん「まああまあ、毅さんじゃったあ」
毅「はい」
おばああちゃん「門が開いとるけん、誰じゃかと思っとったあ」
毅「ああ、いやあ、傷むもんですねえ、
人が住まないと…」
おばあちゃん「気をつけて、時々風を入れるようにはしてるんやけどなあ」
毅「あ、すいません、お世話をかけて」
おばあちゃん「いえいえ、もうなんにも」
毅「みなさんお変わりございませんか?」
おばあちゃん「おかげさんで、どうにか」
このおばあさんは岡嶋艶子(おかじまつやこ)さん。
彼女は、第29作「あじさいの恋」で加納作次郎の家で
かがりさんと一緒に女中をしていたあのおばあちゃん。
ちなみに第8作「恋歌」では坂の下、代書屋横の
後藤さん家のおばあちゃんが手伝いに来てくれてる
なんてとらやに来て博の父親が寅にしゃべってたので
あのおばあちゃんはその方かも。
それとも娘のお産の時に腰を打って動けなくなった
もともとあの家で働いていたお手伝いの「横山」のおばあちゃんか?
普通はもともとのお手伝いさんである横山のおばあちゃんと考える方が自然。
しかし、さくらは法事の時におばあちゃんのことを「岡田のおばあちゃん」と
呼んでいた気がする…。うーん迷宮入りか…。
毅、夕方 国道180号線沿いを歩き、
町の中の旅館 油屋旅館に戻って行く。道の横は高梁川。
岡山県高梁市本町38-1
油屋旅館の前身は江戸期の旅籠から始まる。
現在の館は明治期に建築された木造三階建て。
昭和4年伯備線が開通した年の秋、与謝野鉄幹、晶子夫妻が
この3階に宿泊し、高梁川をながめ、その様子を詠んだ歌や
次の日備中松山城、頼久寺等を散策した時の歌も残されているそうだ。
それよりさかのぼる幕末、山田方谷を慕って長岡藩の河井継之助も
ここ備中高梁を訪れて逗留していたのが、油屋だそうだ。
油屋はもちろん現在も旅館として営業を続けている。
油屋さんのおっしゃるには山田監督が、昔のお城の残っ
ている
全国12の城下町の中でここ高梁が一番落ち着いているから2度
ロケをしましたとおっしゃっていたそうだ。もちろん油屋を宿にしていた。
渥美さんも大変気に入って「八 つ墓村」の時にも宿泊したらしい。
油屋旅館
みんなロビーに集まっている。
さくら、満男と
さくら「満男のがおっきいじゃない」
と、靴の大きさを比べている。
衿子「膝からしたは私のが長いもん」
一同 ハハハ
さくら、満男にちょうどのサイズ買ってやれよ(TT)
毅、ロビーにやって来て
毅「よお」
さくら「あ」
と立ち上がる。
毅「今着いたの?」
さくら「はい、どうもご無沙汰してます」
毅「うん」
満男「こんにちは」
毅「おー、満男君だったな。よく来たねー」
信子「フフ、博ちゃんの小さい時そっくりよ」
おおおお!これが幻の博のお姉さん(信子さん)か!
よく見れば第47作の長浜に住む菜穂ちゃんの
お母さん(八木昌子さん)じゃないか(^^;)しかし
なんのために今更お姉さんを増やしたのか?
毅「信子はさくらさんと初めて
じゃなかったのか?」初めて初めて(^^;)
信子「んー、お母様のお葬式の時
会ってるわよォ」会ってない会ってない ゞ( ̄∇ ̄;)
毅「ほー…」
信子「二人ともまだ若かったから、フフフ」
さくら「フフフ」
毅「ハハハ」
毅「衿子は?…」
毅の奥さん「あ、この子は始めてよ」
衿子「あ、でも私さくらおばさんとは
電話で一度…」
さくら「あ、またおばさんって言った」
とお茶目に衿子を叩こうとする。
衿子役は、若き日の森口瑤子さん、今とかなり違う雰囲気だね。
確かこれがデビュー作だよね。
さくらって「おばさん」という言葉嫌がるんだよね。
第10作「夢枕」でも岡倉先生の教え子たちにおばさんって
言われて怒ってた(^^;)
ちなみに、第8作「恋歌」では、毅の長男さんである
『友泰(ともやす)』君が来ていた。
つまり彼は衿子さんのお兄さんかな。
毅「おばさんは悪いぞ、ハハ」
でもそれ以外に呼びようはないよな。
いくらなんでも「さくらお姉さん」とは呼べないし(^^;)
「さくらさん」じゃ姪としては若干生意気だし…、
でも「さくらおばさん」とは二度と呼べない雰囲気なので
がんばって「さくらさん」ということになるのでしょうか…。
大変だねえ衿子ちゃん。
修ロビーにやって来て
修「兄さん、飯の支度できたって」
毅「あ、そうか」
修「博、はやく着替えしろよ」
博「はいはい」
毅「忘れ物ないか?」
修の声「女将さーん」
さくら「ね、お部屋どこ?」
博「2階」
一同それぞれの部屋へ。
今回は修の奥さんもお子さんも来ていないなあ。
第8作の時には一家総出で来てたのに。
食事が終わって
中庭にある池の鯉が映っている。
満男、池の鯉を見ている。
衿子「満男ちゃん、何見てるの?」
衿子しゃがんで
衿子「うわー、大きな鯉」
満男「江戸川で釣れるよ、こんぐらいの」
衿子「ほんとォ?」
満男「うん」
衿子「こんなのがあ?」
満男「そうだよ」
池の写真を撮る満男
今回は満男は一道と同じくらい写真取りまくり。
満男は、自分や家族が写真の中でこちらを向いて
笑って写っているような思い出的、記念写真,
アルバム写真的なものを撮ろうとしていないところが
なかなかセンスがいい。
あくまでも自分が撮りたいと感じた風景や物を
カメラに託している。
居間でくつろぐ一同。
虫の声
信子「あら、虫が鳴いてる…」
毅の奥さん「静かねえさすがに」
信子「大阪なんかじゃ考えられないわ」
信子「修の所なんかどお?」
修「問題にならないよ窓の向こうは
高速なんだから」
さくら「毅お兄さんはこの高梁で
生まれたんですね?」
毅「うん、」
後の妹弟はみんな北海道生まれ。
さくら「いくつの時までいらしたんですか?」
毅「小学校一年生だ」
さくら「じゃあ、いろいろ思い出が」
毅「僕には懐かしい土地だなあ。
暑い夏降るような蝉時雨の中をジンベェを
着たおじいちゃんに連れられて高梁川に
泳ぎに行くのがもう嬉しっくって嬉しっくて」
信子「さくらさんお生まれは?」
さくら「柴又です」
信子「じゃあ生まれ故郷にずっとそのまんま?」
そのまんまって、そういう人多いってば(^^;)
さくら「ええ、なんだか恥ずかしいみたいフフッ」
信子「ふふ」
毅「いやあ、羨ましいですよ、
僕たち兄弟はみんな故郷が
ないわけだから」ほんとほんと( ̄ー ̄)
毅の妻「ねえ」
信子「うちの子なんか故郷は団地よ
千里ニュータウンの」
修「お墓も団地だなこの分じゃ」
毅の妻「はは」
修「あ、いや本当にね…」
毅「なあ修、…さっき親父の生まれた
家見に行ってきたんだけど」
修「おお」
毅「あの家処分するのもったいないと思わないか?
いやあ、オレ、定年になったらここに
ひっこもうかな〜と思うことがあるんだ。
どうせ子供たちとはバラバラになるんだし、
それにオレがここにいれば父さんの墓守だって
できるわけだしなあ」
修「それ、どういう意味?つまり、あの土地
兄さんの物にしたいって言うことなのかい?」
毅「そうじゃないんだよ、売らずにすむ
方法はないかと言ってるんだよ
おやじの思い出の家を!」ちょっと威嚇。
信子「じゃあ、相続税なんかどうすんの?」
毅「うん・・・そりゃあ、い、いざとなったら
退職金前借して、お〜、払うって方法
だってあるだろう?」
毅の妻「パパァそんな事私なんにも
聞いてないわよ」と、うろたえる。
毅「ちょっと!お前黙ってろよ!!」と、また威嚇。
満男、部屋にやって来て、
満男「母さんあの池、あのね…」
さくら「いまね大事な話してるからね、
衿子ちゃん向こうの部屋行ってて」
修「…ようするに判を押せって
事なんだね、権利放棄の」
毅「いやァ、そこまでは…」
修「結局はそこに行きつくよ
この問題 なあ姉さん?」
信子「パパに相談しないと分からないけど、
ウチはそのお金あてにして
増築始めちゃったのよ」
修「いいよ、判をついても。ただし…
オレの相続分買い取ることが条件だ」
毅「そんなことができるなら相談などするか!」
修「へー…、じゃあ無条件にハンコ押せって
いうの?へ、そんなことが通るのかねえ!」
毅「修、何だその言い方は!?」
博「いい加減にしないか、
兄さんたち、みっともないぞ」
信子「あら、偉そうな口きくのね、この子」
修「おまえ遺産いらないのか?」
信子「あんたがお金に一番困ってるんじゃ
ないの?さっき言ってたじゃないの、
工場がピンチだって」
博「僕がお金を欲しいということと、
遺産を分け合うということは
全く別問題なんだよ」なるほど(−−)
信子「…」
博「せっかく3回忌で兄弟が
集まったんじゃないか。
父さんが可哀想だよこれじゃ」
修「なーにを言ってやがる」
静かな音楽が流れる。
毅「いや…オレの言い方も
悪かったのかもしれん。」
毅「誤解しないんで欲しいんだが、
オレの真意はあくまでも、あの家を、
つまり、おやじが生まれ育った
あの家をなんとか保存したい…」
信子「兄さん、あたし達には全然愛着なんて
無いのよあの家に」
修「感傷だよ感傷にしか過ぎないよ」
毅「感傷?親を思う気持ちを
なんで感傷なんだ!
お、お前だって子供がいるだろう!
もしお前の子供が親であるお前に対してだな!」
毅の妻「パパ!大きな声で!」
毅、観念した様子で、憮然と
毅「わ、分かった!処分するよ…!
きれ〜に四等分にして分ける。
そ、そうすれば文句が無いんだ!!(バン!)」
怒って部屋を出て行く。
毅の妻「ごめんなさいね」とさくらたちに言う。
しかしいつもながら博の兄姉って、言ってることは正しいけど、
なにげに冷たい性格が滲み出ちゃってるね。
毅の気持ちは分からないでもないが、兄弟が多いとそういうことは
難しいかもしれないね。世知辛い世の中だからねえ。
小津安二郎監督の「東京物語」でもちょっとこれに似た世知辛さを
感じてしまう場面があった。
しかし、みんなそれぞれに世帯を持って必死で暮らしていて、その
遺産も人生設計の中に組み込まれていて密かにあてにいるのが
実は本音だと思う。だからここは割り切ってきちんと等分に分けるか、
そうでないのなら毅が分割でもいいから弟妹たちの取り分のお金を
工面し、支払ってやるしか方法はないとも思える。
電話 チリリリーン!チリリリーン!
毅の妻「は〜本当に気が短いんだから…」
さくら「あ、熱いの入れましょうか?」
毅の妻「あ、すみません」
博、電話に出る。
博「はい。あ、この度はお世話になります。」
博「ちょっとお待ちください。
お寺だけど明日の人数18人でいいかって」
修「夕方電話でそう言ったんだぞ。なに聞いてんだ」
博「もしもし、それで結構です」
蓮台寺 居間
寅が受話器を持っている。
寅「あ〜あ、左様でございますか。」
博の声「はい」
寅「大変失礼でございますけど、
貴方様のお名前は?」
博「あの、僕は三男の博ですが」
寅「三男の博さん。あ、奥様もご一緒に参ります?」
博の声「あ、はい、一緒です」
寅「あ、そうですか、 いえいえ、はい、
よろしくどうぞ(チン・・・)」
寅「ヒヒ、奥様はさくらさん。
お待ちしております」
と、愉快でしょうがない様子で目が三日月。
この性格たまらんなあ…さくら泣くよ… ┐(-。ー;)┌
ヒヒヒ、
ところで、相続のことだが、第22作「噂の寅次郎」のラスト付近、
博の父親が柴又駅のホームでさくらに『博が家を建てることが
あった時は私に知らせてください。そのつもりで安曇野に
土地を少々買ってあります』と言っていた。
博は結局、柴又に建売をローンで買ったので、安曇野の土地は
父親が持ったままになっていると思うのだが、あの土地も
やはり当然相続の時に分配するのだろうか?
それと、第8作「恋歌」で、母親の葬式の後、長男の毅がやはり、
この家の処分のことを父親に相談していた。
つまり、父親を自分の家に呼び、一緒に住む代わりに、この実家を
売ったお金で部屋を増築したいと言っていたのだ。
どうも毅はそういうことを先回りしていろいろ考える男らしい。
鳥取県江府町 御机(みづくえ)
雄大な伯耆大山南壁と紅葉(こうよう)が見える
シューベルトの鱒が流れる
写真を撮る一道
鳥取県江府町御机
手前の小屋は五メートル四方で、
農機具置き場として約七十年前に建てられたらしい。
田園に位置し、大山の南壁を望む絶妙の位置にあるので
よく写真に撮られる。
一道もこの位置からの大山を狙っている。
高梁 蓮台寺
満男が高梁の風景写真を撮っている
衿子「満男ちゃん、お経が始まるわよ」
満男「はあい」
衿子「フフ、靴大きいんでしょ」
満男「うん、」ブカブカ(TT)
衿子「フフ」
さくら、気持ちは分かるが、上着ならまだしも、やはり靴は
その時その時でちょうどのものを買わないと怪我をするし、
マメができたりもする。子供の成長期といえども
靴だけはピッタリの物を与えなければいけないのだ。
寺の中
さくら「少しじっとしてられないの?」
博「お前、落ち着きが無いぞ、近頃」
博、満男の足を叩く。
修「お待たせいたしました。院家様がお見えです」
和尚さん、そして後ろに寅がついている。
満男、寅を見る。
満男「…!!!!!!」 そりゃそうだ(^^;)
さくら、後ろに座っているおばあちゃんに気がついて、
後を向いてしまう。
さくら「岡田のおばあちゃん、どうぞ前へ詰めてください」
満男呆然…(^^;)
おばあちゃん「えー、私はここで」
博「空いてますから、どうぞ」
おばあちゃん「そお、…じゃ」
というわけで博もさくらも寅に気づかない。
結局、前を見ていた満男だけが寅を見てしまう。
お経の前にたどたどしく2度鐘を撞く寅。
いかにも不慣れという感じ。
般若理趣経
理趣経の最初 『勧請』部分を読経する和尚。
正しくは『大楽金剛不空三摩耶経般若波羅蜜多理趣品』
理趣経は真言密教で日常的に読誦されるお経である。
名前の通り『般若経』の系統に属しているが、
内容的にはむしろ『金剛頂経』の流れを組む。
密教で最重要視されるお経は『大日経』と『金剛頂経』である。
しかしこの2つは日常の勤行では読誦されることはほとんどない。
読誦による功徳がはっきり説かれているこの『理趣経』である。
内容的には、真言密教の根本的立場である即身成仏の
思想を説いた経典。
般若の智恵をもってみると、存在する全てのものはそのままが
仏の世界であり、欲望も含めて何物も厭い嫌うべきものはない。
そこには一切のものが肯定される。
この般若の智恵をもって、日々に菩薩行を実践することを説いている。
蓮台寺の和尚が読経した理趣経の『勧請』部分
↓
みょうびるしゃな むぜん
歸命毘盧遮那佛 無染無着眞理趣
しょうじょう せ せ
生生値遇無相ヘ 世世持誦不忘念
こうぼうだいしぞうほうらく
弘法大師摶@樂
たいらきんこうふこうしんじ さんま やけい
大樂金剛不空眞實三摩耶經…
満男つい寅を再度確かめようとして
前につんのめる。
さくら満男を叩いて
さくら「ちゃんと頭下げてなさい」
満男、さくらの耳元で
満男「母さん、あの人」
さくら「どうしたの?」
満男「寅伯父さんだよ」ピンポン♪(^^)
さくら振り向いて
さくら「何言ってんのバカな子ね、和尚さんでしょ」
信子、落ち着きがない満男をいやがっている。
さくら、一応念のために前のお坊さんを観察。
寅、お経の本をこねくり回している。
博「どうしたんだ?」
さくら、お坊さんをまだ観察。
博もつられて見る。
寅、経文の紙をパラパラと落としてしまう。
慌てて、つい後を振り向き、さくらと顔を合ってしまう寅。
あ…
さくら、ガアアアアアーーーン!!!
Σ(|||▽||| )
わが目を疑うさくら
この世の悪夢をいっぺんに見た顔。
博、口半開きで呆然。
蓮台寺 墓
墓の前でみんな拝んでいる。
おばあちゃんがお参り。
寅、線香を持って次のお参りの人に渡してやる。
満男「どうしておじさんがお坊さんに
なんかなっちゃったの?」真っ当な質問(^^;)
満男、それはね、マドンナがとびっきり綺麗だからだよ
ただそれ一点だけ(^^)
博「父さんも今それを考えてんだよ」
そして母さんもね(^^;)
寅、遠くから
さくらになんとウインクσ( ^ー゜)
さくら、怒っている。
なぜか前にいた信子
急にドキッとして(^^;)
信子、さくらに、
信子「ねえねえねえ、あのお坊さん、
私にウインクしたわよ、
いやらしいわねえ」
と、言いつつちょっと嬉しそう(^^)
さくら「すいません」とついつい頭を下げる(^^;)
信子「あなたがあやまることないでしょう?」そりゃそーだ(^^;)
博、さくらに合図、
さくら、気づいて
さくら「あ、そうですね」
信子「変な人ね、フフフ」
まさか山田監督、このギャグのために
わざわざ博のお姉さんを急遽作ったんじゃ
ないだろうな。ありえるぞこりゃ…。
修、おばあちゃんが石段を
登るのを手伝ってやっている。
そういう優しいところもあるにはあるんだね修って…。
修「よーしっと、おばあさん、
いくつになったって足が強い」
おばあちゃん「だいじょうぶ」
博、さくらを見て、
博「顔色が悪いぞ、大丈夫か?」
さくら「ええ、お兄ちゃん何か悪いことでも
してるんじゃないかしら、あんな格好して…」
博「いやそんなことないだろう。
とにかくここに墓参りに来たんだよ。
それははっきりしている」
さくら、ふらふらになりながら
さくら「そうねえ…」
博「問題はあとで何があったかだなあ…」
女性問題女性問題、思い出せよ過去のデータを(^^;)
石段の上から女性の声
朋子「寅さぁん!」
さくらと博驚いて上を見る。
さくら&博 「!!!」
!!!!!
寅「あ、はいはい」
と鉄のポールをまたぐ寅(^^;)
朋子「あの、ちょっと、フフフ…」
寅「はい」と軽快に駆け上がっていく。
朋子「フフフ、ちょっといいかしら、あのなあ、
今電話かかってきてるんやけど
明日の法事のことで」
寅、袈裟の飾りぐるぐる手で振り回しながら
寅「でも、こないだ失敗したからオレ」と、テレまくる。
朋子さん、笑いながら
朋子「フフ、いいから、ちょっと、
電話まだ切ってないから」
寅「そう、はいはい」と小走りで行く。
朋子笑いながら寅の後を駆けていく。
さくら、下からそれを見て、
フラフラと倒れそうになる
博、慌ててさくらをサポートし、
博「しっかりしろ」
さくら「はあ……」と目が虚ろ。
さくらこのシリーズ最大のピンチ!
おそらくさくらの中で数々の妄想が
渦巻いているのかもしれない(^^;)
寺の中 座敷
みんなで食事をしている。
毅、和尚さんのところに挨拶にやってくる。
毅「どうも本日はありがとうございます」
和尚「あ、ハハハ」と手を合わせる。
毅「お陰で、3回忌もなんとか」
お銚子を持って注ぐ、
毅「まあ、お一つ」
和尚「あんたもご苦労様でした。
お父さんもお喜びじゃろう」
毅、お辞儀をして恐縮する。
寅、横ででかい海老を口を開けて
ほおばろうとしている(^^;)
無理だよ、いっぺんに入らないって
大きさ考えろよ ヾ(^^;)
あ〜〜〜ん
和尚、寅を紹介する。
和尚「そうそう、この人はウチの納所さんじゃけど」
寅、さっと海老を置く(^^;)
寅「んん」
和尚「ワシも年とっておりますんでな、
いろいろと手伝うてもろとります」
寅、手を合わせる。
毅「お世話になりました」
お銚子を持って
毅「ま、おひとつどうぞ」
やっぱり、毅さん、第8作でお母さんの葬式に来た時の
寅の顔を思い出さないんだね。「笑ってェ〜!」事件まで
あったのになあ…。
さくらのお兄さんに似てるな、とさえ思わないところが、
博の兄弟っぽいところだな。
なにかと忙しがって、相手の顔を覚えないんだね。
寅「あ、ご苦労様でございます」
毅「は」
毅「私、長男の毅でございます」とお辞儀。
寅「あ」
毅「正子」
正子「はい?あ、」
毅「家内です」
正子「どうもご苦労様でございます」とお辞儀。
第8作ではこの毅の奥さんの名前は「咲江」さんだった。
改名したのか?それとも同じ顔の双子のもう一人と
再婚したのか?んなわけないか(^^;)
寅、手を合わせてお辞儀。
毅「長女の信子といいます」
信子、お辞儀。
寅「は、お美しい方でございますな」
そんな発言したら、さっきのウインク
勘違いされるぞ ヾ(^^;)
毅「次男の修です」
修「あ、修です」
寅、お辞儀
毅「末っ子の博です」
寅「博さんとおっしゃる、
おほー!これはこれは」
なんだかよく分からない発言(^^;)
博、顔をこわばらせながら、お辞儀。
満男ポカーン
さくら、下を向きっぱなし、失神寸前…(TT)
毅「そのとなりが妻のさくらです」
寅「さ、さくらさん?」いちいち反応するなって(^^;)
寅「おー、ホホホ、遠いところを
ご苦労さまでございます」
おいおい、どうして遠いこと分かるんだよ ヾ(^^;)
さくら、額に冷やせをかきながら、かろうじてお辞儀。
寅「ご立派なご兄弟で結構でございますな」
根拠なし(^^;)
毅「は…ありがとうございます」と、とりあえず恐縮。
毅、「どうそ」と酒を勧める。
寅「あ、は、すいません、それでは」
と酒を注いでもらう。
さくら、またもや目がくらくらして
さくら「私どうにかなっちゃいそう」
さくらがこんな言葉を…
と、博の方にふらついてしまう。
限界が遂に来たさくらでした(TT)
満男、心配そう。
博「ちょ、ちょっと表出よ」
博、身を乗り出して毅に、
博「兄さん」
毅「あ?」
同時に寅も反応してしまう。
寅「えー?なんだ?」
おいおいおい( ̄□ ̄;)
毅きょろきょろしてしまう。だよね(^^;)
一瞬みんなシーン。
寅「え?????」
博、どうしていいか分からなくなって下を向いて
さくらもどうしていいか頭真っちろけ(TT)
博「……」
さくら「……」
寅、はっと気づいて、毅と顔を見合わせてしまう。
寅「…!!」
毅「…?????」(゜o゜;)
寅、いきなりニカーッと笑って
無理やり話題をそらす。
寅「ハハ、しかしあれでございますねえ、
何回見ても結構なお庭でございますね。」
無理あるなあ〜(^^;)
毅「あー」
寅「お庭、あちらあちら、お庭」
一同とりあえず庭を見る。
寅「和尚様、いかがでございましょう」
和尚「ん?」
寅「この広大な土地を駐車場になさるとか?」
和尚「いやあ、もう面倒じゃ。ハハハ」
寅「もったいない」と手で拝む
寅、逃げるように席を立ち、走っていく。
毅「???」
走りながら、ちらっとさくらのほうを見て、廊下に出て
ふらふら走りながら
寅「あー、もったいないもったいない、フフフ」
さくら、泣きそうな顔で寅のところへやってくる。
全く理解不可能で脳みそショートして頭からバネが
たくさん飛び出して限界を超えている感じ。
寅「ヒヒヒヒヒ!!ヒヒヒヒ!ヒヒヒ、
おまえたちのことをよ、
たっぷり驚かしてやろうと思ったけど
返事したのまずかったな。」
さくら、後で誰か聞いていないか心配そう。
寅「途中までうまくいったでしょう?
うまいねと思ったでしょう、
フフフ、ね、ね、フフ…」
あんただけだよ面白がってるの ヾ(-_-;)
さくら、寅を睨んでいる。
寅「怒んなよおまえ〜、んな〜」
さくら「さっきから私がどんな気持ちで
いたかわかんないでしょう」
さくらメソメソ(TT)
寅「からかっただけじゃねえかさ〜」
さくらメソメソ。
寅「泣くなっての」
さくら、真剣な顔で
さくら「ねえお兄ちゃん、正直の答えて頂戴、
ここのうちの人騙して、なにか悪いこと
でもしてんじゃないでしょうね」
寅にそんな甲斐性はないよさくら ヾ(^^)
寅「ばかやろう、オレはそんなことするわけねえじゃねえか。
これにはいろいろと深い事情があるんだよォ〜、
な、あとで話するから」
谷よしのさん、法事の手伝いの人役で廊下に出てくる。
これは、あのハンコ屋の法事の時の谷よしのさんなのか
それとも別人役なのか?この辺の解釈は難しいところ。
手伝いのおばさん「納所さん、お嬢さんが呼んどられるでな」
寅「はい!、ただいま」
さくらもお辞儀。
谷さん、寅の雰囲気が面白いので
フフフと笑って向こうへ行く。
もう存在それ自体が面白いんだろうね寅って(^^)
寅「忙しいんだからオレ、見ろォ、、泣くなって…」
寅、さくらの方を振り向きながら、
寅「な、な」と振り向きながらスタコラ向こうへ走って行く。
寅向こうで
寅「はいはい」
さくらハンカチで涙を拭き、
ため息をつき、席へ戻っていく。
さくらは寅からまだ何も聞いていないので理解不可能。
しかし、お寺の娘さんの存在が実は関係していることだけは
たぶん今までのデータからはじき出せたはず。
高梁駅
博とさくら沈んでいる。
さくらは長いすに座っている。
満男相変わらず写真取りまくり。
セノオ歯科医院
TEL:2−2648
博「ほんとにいいのか?このまま帰ってしまって」
さくら「だって無理やり連れて帰る
わけにはいかないでしょ」
まだふられてないから帰らない帰らない(^^;)
博「でもなんだかオレたちまでグルに
なって騙したみたいじゃないかァ」
さくら「じゃあどうすればよかったって言うのぉ?」
と不満げ。
満男近づいて
満男「こんなとこで喧嘩すんなよー」
博「…」
満男には悪いが、私はこのシリーズで
さくらと博が喧嘩しているシーンがとても好き。
満男のこと、寅のこと、博の独立のことなどなど、
数々の名シーンがある。
遠くから朋子の声
朋子「あ、寅さん、そこ」
階段を下りてくる朋子と寅。
歓迎『ようこそ城の町たかはしへ』
岡山観光キャンペーン
実施期間9月ー12月
高梁市実行委員会
朋子「あ。あの」
さくら「あ」と微笑んでお辞儀。
朋子「ま、どうも失礼しました」
さくらお辞儀。
朋子「妹さんだそうですね」
寅満男のカメラ指差して自分を写せ写せと
ジェスチャーでからかっている。
満男照れている。
朋子「もう、びっくりしてしもうて、
どうしてはよー言うてくださらなんだ
言うて寅さんに怒ったんですよ」
朋子と寅顔を見合いってフフフ笑い。
さくら「申し訳ありません」
さくら「あの、ちゃんとご挨拶しなくちゃ
いけないと思っていたんですけど、
なんだかガタガタしてて、時間がなくて」
頭がまっちろけで、気力がなくなって…が本音(^^;)
博「ええ…」
朋子「こちらこそ、もうお兄様にえろう
お世話になりまして。ねえ」
と、と寅の方を向いて笑う。とても仲がよさそう。
さくら、お辞儀。
構内アナウンス
お待たせしました。まもなく3番乗り場岡山行きの到着でございます…。
寅「さくら、これ朋子さんにもらった。
松茸。高いんだぞ〜おい」
さくら「あらま…」
寅「おい、持ってろ」と満男に渡す寅。
博「申し訳ありません、高価なものを」
朋子「あわててかけ集めたもんですけん、
美味しいかどうか」
さくら「兄がさぞご迷惑かけてるんでしょうね。
なにしろ、変わりもんですから」
朋子「とんでもない、寅さんのお陰で父が
どねえ助かっとるか。フフ。
檀家の方たちがね、寅さんの法話の
ほうがよっぽどありがたい言うて、
フフフ、大変な人気なんですよ」
博「法話なんかするんですか?兄さん」
寅「え?法話なんてもんじゃないよ。
口からでまかせ、ね!」
そうそう啖呵バイの口上しゃべってます(^^;)
朋子、微笑んでいる。
汽笛 プー!
寅「あ、来た来た来た!」
寅、荷物持って
寅「行こ行こ行こ行こ、おい」
さくらと博、寅のことをお願いしている。
朋子「とんでもない」と逆に恐縮。
汽車がホームに入ってくる。
特急「やくも」
381系国鉄特急
尾島病院
戸田病院
アナウンス
お待たせいたしました。岡山行きが到着いたします。
ご乗車の方お忘れ物のないよう、ごしたく願います。
高梁〜、高梁〜、備中高梁、備中高梁です。
ちなみにこの「備中高梁駅」も第8作「恋歌」で夜にロケされていた。
博とさくらが大急ぎで駅前からタクシーに乗る場面。
↓
第8作「恋歌」
柴又 とらや
柱時計が8:00PMを打つ。
さくら「汽車の窓から見てたらね
二人仲良く並んでいつまでも
手をふってんの。私涙が出てきちゃった」
おばちゃん「わかるよぉ」
おいちゃん「はあ」
満男「母さん法事の間中真っ青。
帰りの新幹線なんか
放〜心状態、ねえ」
博「うん、」
さくら「行かなきゃ良かったわ、
高梁なんて高いお金かけて」
さくらが行かなくても、事実はなにひとつ
変わらないけどね。
だいたい、おおよその理由が分かり、
寅が蓮台寺で役立っていることも朋子さんから
聞かされたのだから、帰りの新幹線の中では、
もう少し安堵してもいいとは思うが。
そのまえのショックが尾を引いてんだね、たぶん。
しかしまあ、フーテンの寅がお坊さんの真似事を
しているということ自体確かにかなり怖いよね(^^;)
おいちゃん「で、独身なのか?そのお寺の娘さんは?」
おっと、まんまの質問(^^;)
博「一度結婚したけど今は別れたたとか」
おばちゃん「きれいな人なのかい?」
おっと、これまたかなり鋭い質問。
そこが全てのポイント(^^;)
博、少しあらたまって…
博「何といいますか、
美しさの中に知性を秘めた
とでも言いますか…」
なるほど……博も好みか…( ̄- ̄)
おいちゃん「あ〜あああ、だめだそりゃ」だね(^^;)
社長「じゃあ、寅さん、はりきって働いてるわけだ。」
おばちゃん「役に立たないんだろ、どうせ」
さくら「それがねえ、ほら、
お寺さんて大勢人が集まるところでしょ?」
おいちゃん「うん」
さくら「法事とか、いろんな寄り合いとか
その段取りをね、全部お兄ちゃんがやるんですって」
おばちゃん「へえー」
社長「ほー」
さくら「だから檀家の人たちの評判もとってもいいみたいよ」
おいちゃん「そんな馬鹿な、あの役立たずが評判がいいだなんて」
博「いや、その事なんですけどね、
僕たちは兄さんの事を頭からダメな
人間だと決めつけてしまってるんじゃないでしょうか
可能性を見つけてやると言うのが本当の愛情なんですよ」
「見つけてやる」って、中学生の不良を持つ親や先生
みたいなこと言ってるね(^^)
社長「そのとおりだよ」
おばちゃん「私たちは寅ちゃんの教育に失敗したのかねえ」
おいおい、おばちゃんおばちゃん ゞ( ̄∇ ̄;)
一同「クフフフ」
おいちゃん「遅いよ今頃後悔したって」
おいちゃんとおばちゃんは実は寅の青年期(15才まで)の
人間形成にはさほど関与していない。20年ぶりの帰郷以降も
ほとんどとらやにいないので教育する暇がない(^^;)
だいたいが大人になってからの寅は人のことに耳を
傾けるタマではない。
ちなみに寅はマドンナがらみの仕事の手伝いは
神がかり的な力を発揮するのだ。
第5作の浦安の豆腐屋、第20作の平戸のお土産屋などなど。
さくら「どうしたの社長さん、元気ないみたい」
社長「うらやましくってね寅さんが。オレなんか
きれいな女に心ときめかすなんて
そんな気持ちはもう忘れちゃったもんなあ
税金だの借金だのそんなことばっかりに
追い掛け回されて… 失礼します…」
社長、いよいよ危ないんだねえ工場…(TT)
あ、いつも危ないか…。
さくら「あ、社長さん。」
社長「うん?」
さくら「これ、お土産のおすそ分け」
と、マツタケを大小一つずつ。
社長「マツタケかァ…人間生きていなくっちゃ、
マツタケも食えねえよなァァ〜」と半泣きで香りをかぐ。
おいちゃん「大丈夫かおい」
社長「ありがと」とトボトボ泣きながら戻っていく。
あああああ、社長。。。今夜も首吊る夢見るのか(TT)
おいちゃん「だいぶまいってるなあ」
博「今が一番苦しい時期ですからねえ」
いつもいつも一番苦しい感じだけどなあ…(^^;)
さくら「さあ、帰ろうか」
満男立ち上がる。
高梁 蓮台寺
郵便局員「こんにちは〜」
子守をしてるおばさん「あ、こんにちは〜ごくろうさん」
学校のチャイムが遠くで聞こえる。
蓮台寺 居間
一道居間にやって来て
一道「なんか用?」
授業料未払いの通知の紙を見せる朋子。
朋子「春休みに渡したはずでぇ、今年の授業料。
なんで払わんの?何かにつこうたん?」
普通は授業料は保護者が銀行振り込みするだろが。
学生に手渡しなんかしないよそんな大金絶対に。
一道「…」
朋子「あんたの事じゃけえ、悪いことに
お金を使うたとは思わんよ。
何か必要なもんがあったんじゃろ?言うてみんさい」
一道「キャメラ買うたんや」
あちょー!!ごくつぶし〜!
Σ(ノ▼ο▼)ノ ~┻━┻ (/o\)
和尚「今何ちゅうた!?」だよな(^^;)
朋子「お父さんお願い!一道!謝んなさい!ねッ!」
謝っても済まんよ(TT)
一道「すみませんでした」
和尚「悪いと思うとんなら、
今すぐ耳そろえて金を返しなさい!」
一道「働いてかえします」
朋子「働いて返せるようなお金じゃないじゃろォ」
和尚「働かんでもええ!!
こいつが持ってるカメラやレンズを
全部処分すりゃあ、それぐらいの金になろうが!」
朋子「お父さん、そげなむちゃくちゃな言い方して。
それじゃあ、話し合いにも何にもなりゃせんわ」
和尚「授業料で、カメラ買う男などと
話し合いの必要などないわい」確かに(^^;)
和尚「一体誰のおかげで大学行けとると
思うとるんじゃ!檀家の皆さんはな、
カメラ道楽させるためにお前を
大学行かしてくださってるんじゃ無いぞ!
今すぐ処分せい」確かに(^^;)
一道「嫌じゃ」
和尚「なら大学やめるか!?」
一道「ああ、やめます」
朋子「あほな子じゃねえ、あんた自分が
何言ってるかわかっとる?
やめるとかやめんとか、そげな事軽々
しく言うちゃいけん」
一道「姉さん」
朋子「ん?」
一道「ほんまはこの春休みに、オレ、
大学をやめる決心をしたんじゃ…。
友達が東京の写真スタジオ
紹介してくれてな…。
そこでアルバイトしながら、
本格的に写真の勉強をしよう思うて。
ハ…いつかは言わにゃいけんとおもっとったけど」
朋子「そげに大事な事を…」
和尚「そうか…わしに何の、相談も無しに
そう言う事を決めたんじゃなあお前は」
一道「どうせ反対されるけん」
和尚「ほんなら出てけ!!(バン!)」
一道「はい!そうします!」
朋子「いけん!そげな事いけん!」
和尚「朋子は黙ってろ!
ええか、一道ィ。
二度とこの家の敷居をまたぐなえッ!」
一道、涙を流しながら
一道「ほんなら姉さん…オレ、この家出るけん…」
自分の部屋へ走っていく。
朋子「かず!ねえ、かず!」
朋子、父親のところへ駆け寄って
朋子「お父さん!許してやって、
私が変わりにあやまるけん、ねえ」
和尚「ええか、いっつでもこう言う時はお前が
間に入って、それが結局一道を
甘やかす事になってしまうんじゃ
それじゃいつまでたってもあいつは
一人前になれんのじゃ!」
和尚さんの言う通りだよ、朋子さん(ーー)
それにしても、一道、一年分の授業料を
カメラ代に全部使うとはたいした度胸だ。
ちょっとあんまりだとも思うが、それほどにも
写真が好きなんだね。さすがにあとで稼いで返せよ。
紺屋町
白神食品店
電話が鳴っている。
電話をとるひろみ
壁の標語
『はじめの一本、打つな打たすな覚せい剤』なんちゅう標語や(^^;)
ひろみ「もしもし、あ、あたし。こんにちは、
ちょうど良かった今配達から
帰ってきたとこじゃ。フフ、今どこ?
近くにおるん?駅ィ?
なあんで駅なんかに。
ああ?東京!?
今から東京へ?
なんでえ〜?」
高梁駅改札前の公衆電話
一道「あのなあオレ、親父と喧嘩ァして
しもうてなあ家を出にゃいけんのじゃ
いつかはこんな事になるんじゃないか
おもっとったけど、とうとう本当に
なってしもうてな…」
白神食品店
ひろみ「もしもし、一道さん聞こえとる?
あたしすぐそこ行くけんまっちょぉて。
だって一列車遅らせりゃええが
なんでそんなことができんの?」
高梁駅改札前の公衆電話
高梁市周辺観光地案内地図
一道「3時11分に乗らんとなあ、
今夜中に東京に着けんのじゃ」
構内アナウンス
「まもなく三番乗り場に15時11分初各駅停車岡山行きの到着です。
お乗りの方お忘れ物のないようにお願いいたします」
一道「東京に着いたらすぐに詳しい
手紙書くけえな。 時間がねえな」
一道「あ、そうだ、なんか困った事があったら、
うちの姉さんか寅さんに相談
すりゃあええけん、もうゥ、列車が
入って来た、俺いかにゃいけん、」
列車の汽笛 プォ〜ン…
白神食品店
一道の声「もしもし、ひろみ」
ひろみ「はい…」
一道の声「元気でな、 俺いつか絶対に
迎えに来るけん さいなら」
ひろみ「嫌!!あたしイヤ!行かないで!」
電話の受話器から「 もしもし!もしもし!」という
ひろみの叫び声が聞こえるが電車が来たので、
切ってしまう一道。
(ガチャッ)
構内アナウンス
高梁〜高梁〜備中高梁〜
備中高梁〜車内にお忘れ物
無いようご注意下さい。備中高梁〜」
日生のみかん狩り 50名様
改札を急いでくぐっていく一道。
白神食品店前
シキシマパン 白神食品店 TEL2‐2074
自宅を出て、泣きながら
走って走って走り続けるひろみ。
悲しく、ひろみのテーマが流れる。
高梁ランドリー ドライクリーニング
(三平?)…電気工事
田珠算学院
佐々木食品店
バニーちゃんの水色のエプロン。
路地を抜けてなんとか近回り。
佐々木食料品店の近くの
踏切までやって来て電車を見上げ、
必死の思いで一道を目で探すひろみ。
ここでは「佐々木食料品店」の近くの踏切。
一拍置いて
伊賀谷川に架かる踏切に早変わり。
一道が窓から顔を出している。
ひろみ「一道さん!!」
一道とひろみ
一道も同時に気づいて
一道「ひろみいいいいー!」
列車の前のナンバー 43‐7
ひろみ「行ったらいけん!行ったらいけん!
ウウアァ〜〜…!」
と泣き崩れ、しゃがみこんでしまうひろみ。
なんか、歌手の太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」と
いう歌を思い出したよ。こういう別れは、地方都市では
たくさんあるんだろうなあ…。ひろみちゃん諦めるな!
杉田かおるさん熱演だね。あの方本当に生真面目だ。
蓮台寺 居間
和尚さん夜の御勤め
般若心経
般若心経(仏説摩訶般若波羅蜜多心経)
和尚「仏説摩訶般若波羅蜜多
心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時、
照見五蘊皆空、度一切苦厄。舎利子。
色不異空、空不異色…
和尚さんが唱えていたのは上の赤文字の部分。
(全文はこの物語の最初、源ちゃんのカットの時に
書いたのでそれを参照してください。)
寅が今日の騒動のことを朋子から聞いている。
寅「へえーあの青年が朋子さんの
止めるのも聞かずに」
朋子、夕食を作りながら
朋子「二人とも興奮して、
私の言うことなんか耳にはいりゃへんの」
朋子、食事を運びながら
朋子「こげえな時、寅さんがおってくれたらと思ったけど
寅さんは法事に出てておられんでしょう」
もう完全に寅に法事は寅にまかせっきりの朋子さん一家でした(^^;)
寅「あー、それはすみませんでした」
寅「とうとうやりましたか、あの青年は」
朋子、お膳で頬杖をつきながら
朋子「どうなるんじゃろね、この先…」
寅「大丈夫、そんな心配するこたあ、
ありませんよ。男の子はね、
おやじと喧嘩して家を出るくらいでなきゃ、
一人前とは言えません」
自己弁護(^^;)
朋子「そういうもの?」
寅「そういうものです。この私がいい例ですよ」
いい例ではないだろう。悪い例だろ(^^)
朋子「寅さんも家出をしたことがあるの?」
あるの?なんてもんじゃないです(^^)
寅「はい。恥ずかしながら中学2年の時でした」
その原因が恥ずかしい…(^^;)
朋子「やっぱりィ…、生き方の上で
お父さんと意見が対立したん?」
生き方って…ちゃうちゃう (-_-;)(;-_-)
寅「生き方…。フフ、そんな面倒なこと
じゃありませんよ。えー、私が不良仲間とね、
ヤツデの植え込みの陰でもって、
エンタを吹かして、
あ、失礼、モクを吹かしていたわけです」
指でタバコを吸うふり、
『スパッ、スィー、フー!』
とタバコを吸うマネ。上手いね〜。
朋子「ま…フフフ」
このシリーズで寅はタバコは吸っていない。
タバコを吹かすマネをするのも唯一このシーンだけ。
テレビ版男はつらいよでは吸っている。
朋子さん、笑いをこらえている。
寅「ちょうど風向きが悪かったんですなあ」
寅、おやじのしゃがみポーズを真似て
寅「便所の中でこうやって糞をしていたオヤジの小窓の
ところに煙がスーッと入ってきましてね。
朋子「えー?」
オヤジがそれ見て、パーッと飛び出してきました。」
朋子「まあ」
朋子「は」
寅「まあ、怒って、いきなりそばにあった
薪ざっぱで私の頭を
ポカーーーン!!」
寅、朋子さんに殴るマネ
朋子「キャ!ハハハ」(*/∇\*)と手で頭を覆ってすくむ。
寅「えー」
朋子「えー」 いい合いの手(^^)
寅「頭がパカーッと割れてね」おいおいゞ( ̄∇ ̄;)
パカーーっと…
朋子(無声音)「あらあ…」うそうそ(^^;)
寅「血がピューーーっっと吹き出て」
おいおいおいゞ( ̄∇ ̄;)
ピューーーっと…
朋子「うわーっ」この合いの手いいねえ(^^)
寅「脳みそがどろどろどろと出ちゃった。」
ホラーだよそれじゃ ヾ(- -;)
ドロドロドロと…
朋子「そ、やだー、フフフ」
さすがに朋子嘘だと気づいて
朋子「ハハハハハ」
寅「いくら、オヤジだって子供の脳みそ
出すって言うのはあんまりだよ!!」
脳みそ出すって…死にますよそれじゃ(^^;)
朋子「そんな…フフフフフ!」と手で顔を隠して笑いが止まらない。
朋子さん、首を振りながら大笑い。
寅「この野郎と思ってね、オヤジの
一番大事にしていた『オモト』を」
朋子「ええ」
寅「ね、その植木鉢をオヤジに
向かってバカーーーッ!!!」
とまたまた朋子の方へ投げつける真似。
朋子「キャ!!」 またまた(*/∇\*)
寅「って投げつけたね!オヤジは怒りやがってね」
朋子「ハハハ」
寅「出てけえええーー!!」
朋子「フフフ」
寅「上等だ、それを言っちゃあおしまいよォ!!、
ガラッ!!と開けてサァーー!!」
朋子「はっ、ハ!」
寅「家を飛び出して、それっきりですよ」
朋子、笑いをこらえながら、
朋子「そいで、フフフ、そいで、フフ、
そいで寅さんは一人前になったわけ?」
寅、手を合わせながら、
寅「そうです。それで男になりましたァー」
と、にっこり。
朋子、笑いと涙が止まらない。
朋子「フフフ、ハハハ、そお、フフフ」
救われたね、朋子さん。
寅は白魔術をかけてくれたんだよ(^^)
和尚さん、寅たちのほうにやって来て、
和尚「コホッ、ンン」
寅「あ、きたきたきたきた、
夜のお勤めはもう終わりましたか?」
和尚「何をわろうとる?」
寅「え?和尚さんの事ほめてた。
本当に立派なお坊さんだって。」
和尚「アホ、」
寅「フフフ……なんか用?」
和尚「……」
寅「…あ、…一杯やりたいのか?
いいよ、付き合うよ。」
一杯やりたいのか
和尚「お染はいけんぞ、お前ばかりもてるからのお」
この発言で、寅が和尚とよく出歩いていることや
この町ですでに人気者なことが分かる。
寅「分かった分かった、じゃあ、小春にしよう、ね、」
寅「和尚さん、小春のママね、和尚さんに惚れてるよ。」
和尚「つべこべ言わずにはよ来い!」
寅「嬉しいくせに、本当なんだから」
朋子「お父さん、あんまりおそうなったらいけんよォ」
和尚「うるさい」
寅「今晩はちょっと荒れますよ」
朋子「ごめんなさいね」
寅「いえ」
もうすっかり高梁の町の住人になっている寅でした。
外に出た寅を呼び止める朋子。
朋子「寅さぁん…」
朋子のテーマが静かに流れる。
寅「はいっ、何か?」
朋子「こんな時寅さんがおってくれて、
どんなに助かったか分からない」
寅「そうすか、そら、よろしゅうございました」
と、しみじみ嬉しそうな寅。
和尚「おいっ、はよこい!」
寅「はい!はいはい それじゃ、」
寅の声「あわてなくても大丈夫だよ婆さん
向こうでちゃんと店あけて待ってるからさ」
朋子玄関でそれを聞いて微笑んでいる。
和尚の声「誤解すんな、わしゃあ、あ、
あんな婆さんとなんかあるわけないじゃろ」
面白いね松村さんのこういう『間』って(^^)
寅の声「何言ってんだよ好きなのは
分かってるんだからさ、
なかなか似合いのカップルですよ」
朋子「フフ」
寅との楽しい会話を思い出し笑みを浮かべながら、
そっと戸を閉める朋子。
自分たちが精神的に最も苦しい時に、
そばに寄り添ってくれて、大丈夫だと励まし、いたわり、
笑わせてくれる寅の底抜けの優しさに心を癒されると同時に、
寅の精神のたくましさ、懐の深さを、心底頼もしく思い、
自分の中に男性として寅を思う気持ちが密かに朋子さんに
芽生え始めたような気がする。
彼女のあの目を見て私はそう思った。
高梁川近くの方谷林公園。
シューベルト 鱒が流れる。
この曲、もうすっかり
この若いカップルのテーマ曲になちゃいました。
ひろみが泣いている。
寅「そんなに悲しむこたあねえじゃねえか。
なにもお前のこと捨てていっちまったわけじゃ
ねえんだからさ」
ひろみ「それでも、一道さん、駅から電話をしてきて
『急に東京に行くことになった。もう会う時間がない。
さよなら』それっきりなんよお。私、話したいことが
山ほどあったのに…、まるで逃げるみたいに…。」
とまた泣く。
寅「お姉ちゃんはなあ、まだ若いからわかんねえだろうけども、
それが恋する男の気持ちってもんだよ」
ひろみ「どうしてえ?」
寅「ほんとうは会いたい。どれだけ会いたいかわからない。
でも、おまえのその可愛い顔を見たとたんに、
そんな勇気はすっ飛んじゃって、
もう、故郷(くに)を捨てるなんてことはできないんだ。
『もう東京なんか行くの、よそう。お寺のあとを継いで
ず〜っと暮らそう。』そういう気持ちになっちゃうってことが
あいつは分かっているからこそ、心を鬼にして、
おまえに会わずに出て行っちまったんだよ」
ひろみ「そうじゃろうかあ〜…」
ひろみちゃん、するどい。
一道はひろみが止めようがなにしようが
東京に行くことを決意し、すぐに行ってしまったと思うよ。
なんせ授業料でカメラを買っちゃうくらいやる気
満々なんだから。
寅「まあ、離れて暮らすのは辛いだろうけれども、
いずれあいつは、立派な写真屋になってだな、…」
ひろみ「違います。あの人のなりたいんは
写真屋じゃのうて、写真家です」
寅「違うのか?」
ひろみ「ぜんぜん違います」ぜんぜんって…(^^;)
寅「ん、まあ何でもいいや。ま、その、
立派な写真家とやらになったら、必ずおまえを
迎えにくるから、な。
それまで、おまえ、一生懸命ビールを配達して
待ってろ。ん?」
寅にとって『仕事』というのは『生業』『稼業』『商売』である。
『〜家』と呼ばれる職業は、どこかよくわからないところがある。
あの加納作次郎は自分の仕事を『陶芸家』と言わないで、
『焼き物師』と呼ぶ。このような職人気質に私はほっとする。
私も職業は『画家』と呼ばれてしまうが、『絵描きさん』『画工』『絵師』と
職人的に呼ばれるほうがなんだかほっとする。『〜家』というのは
どこかしらわけの分からない虚業の印象がつきまとう。作品至上主義の
イメージもどこかしらにおう。
近年は『アーティスト』なんて呼ばれる場合もあるが、これは寅にとっては
全くわけが分からないものだろう。なにかいかがわしい虚業のにおいが
プンプンする。寅にとってなんだかわからないものは、私にとっても
わけがわからないのだ。
かの、リリーも自分の「歌手としての仕事」を「商売」と言っていた。
ああいう感覚は私は好きである。
寅は言う。「リリーの歌は悲しいもんね」と…。
寅はリリーの歌をちゃんと分かっているのだ。
ちなみに、写真に関しては、生業(稼業)は写真屋さんで、
自らの作品作りや発表、を同時進行しているから写真家でもある。
というパターンをとっている人はたくさんいそうだ…(^^;)
ひろみ「はあ…」と小石を投げる。
ひろみ、はっと気づいて
ひろみ「は、寅さん」
寅「なんだ姉ちゃん」
ひろみ「東京には綺麗な女の人がいっぱいおるんじゃろ」
寅「…、さあ、どーかなあ…。スー…、
女の方にあんまり
関心がないからオレは…」
よくしゃあしゃあと言うよ、まったく ┐(-。ー;)┌
ひろみ「おるわきっと…、そげんな所行ったら、
きっと一道さん、私のことなんか忘れてしまう。
…だってあの人、モテルんじゃもん」とまた半泣き(^^;)
寅かがんで
寅「そんなに心配だったら、あと追いかけてって、
東京行ったらいいじゃねえか。なんとかやっていけるよ、
愛してればァ」
またまたよく言うよまったく。
寅、さっきと助言が逆だぞ。
ひろみ「そげなことはできません。
父が寝たきりじゃけえ、
私がおらんと店やっていけんのじゃけえ」
そうなのか…
寅「ん、姉ちゃんが幸せになることだったらさあ、
父ちゃんだって母ちゃんだって考えてくれるんじゃねえか、
あとのことはァ…。
ほら、一道だって、寺の跡継ぎ放り出して
東京に行っちまったじゃねえか」
ひろみ「せえでも…、寅さんは朋子さんと
結婚して跡を継ぐんでしょう?」
おおっとお!話はもうそんなところまで!(^^;)
寅「…、え?」
ひろみ「私はひとり娘じゃもん」
朋子のテーマ流れる。
寅「そういうことはまだ…、
だ、誰が言ったの?」ハンコ屋ハンコ屋(^^;)
寅、明らかに嬉しそう。
ひろみ「みんなそう言うとるけど、違うん?」
みんなって…(−−;)
寅「え?…いやあ、そういうことは…
あんまり大きな声で
言わない方がいいんじゃないの」
たじたじ、そわそわ、うきうき。
ひろみ恐縮して
ひろみ「はい」
寅「ね、まだ、確定的なことじゃないから、フフ、はあ〜」
確定的って…(^^;)
ひろみ「はい」
寅、ニッコニコ顔で
寅「なんか美味しいもの食べに行こう、ね。
なんでも御馳走するから。行きましょ」
もう平常心を完全に失っています。
ひろみを立たせた時に、
高台からひろみが足を滑りかける、
ひろみ「あ!わー!!」
寅「あ!大丈夫か大丈夫か!」
と引き込んだ勢いで、
今度は寅が前へつんのめる。
寅「あー!!」とひろみの足を持つ。
間一髪セーフ
寅「あ、ハハあー」
ひろみ安堵の声
ひろみ「フフ、ハハ…」
渥美さん、杉田さんのミニコントでした(^^)
高梁川
釣りをするハンコ屋とタクシー運転手
ハンコ屋「まあ、倅を追い出して、自分は養子に入る。
どうやら寅さんの思い通りにいっとるようじゃの」
そんな計画的みたいに…。凄い方向に話が進んでいます。
やっぱ、この二人が高梁中に撒き散らしてるんだね(^^;)
タクシー運転手「いや、養子になるちゅうても、寅さん
ほんもんの坊さんじゃないじゃろが」
ハンコ屋「はー、せーじゃが。せーが朋子さんの悩みじゃ、
ちゅ話じゃ」
悩みって…、朋子さんのことまで自分で
脚色をしてるんだねハンコ屋さん…(^^;)
魚がかかるが、
ハンコ屋「お!ととと」
すぐ逃げる。
ハンコ屋「は、…おえん。んーん」
と、また糸をほりこむ。
何度聞いても長門勇さんの岡山弁はいいねえ〜。
蓮台寺
風呂場。
和尚が湯船に入っている。
まだ少々ぬるいらしく、
朋子さんが風呂に追加の薪を入れている。
朋子「ひやっ、あちち…」
朋子さんフーフー息を吹いている。
和尚湯船に浸かりながら鼻歌
和尚「♪はああなつう〜むうう〜、のお〜べ〜にィ…、
日はあああ〜、おちいいい〜てええええ。え、」
この鼻歌、ちょっと聴いただけでは分からないが、
よおおく聴くと「誰か故郷を思わざる」だ(^^;)
窓の外で火をくべている朋子さんに
和尚「おい!ぬるいぞ!朋子、もっと焚けえや!」
と、ガラス窓を叩く。
朋子「今焚きよるがなあ。うるさいなあ。コホ、コホ」
和尚さんまた鼻歌
和尚「♪みいいいんなでかあたああを〜〜、」
ほんと何の歌か分かりづらいなあ〜。
寅、笑いながらひょこひょこやって来る。
朋子と目が合う、
朋子「ありゃ」ちょっと華やぐ朋子。
和尚の入っている湯船を指差し「フフフ」と笑い
寅「しー」と口に人指し指をあて
クスクス笑いながら手を火にかざして
朋子の隣にしゃがむ。
和尚「♪くみいいなあああがあああらあああ〜…」
朋子無声音で
朋子「お帰りなさい」とニッコニコ。
このちょっとした二人のしぐさで、
もう相当仲がいいことが見て取れる。
こんなにお互いの心がピッタリ寄り添う
カップルはこのシリーズの中でも珍しい。
二人の背中が彼らの相性を物語っているのだ。
寅薪を持って、笑いながら
寅「だいぶ御酩酊ですね」
朋子「油屋さんで、お酒よばれてきたんじゃっと、
いや、もう…いやになるわ」
とクスクス笑っている。
和尚「♪歌あああをを、歌ああ〜ったあ〜、」
寅「ああ…、お父さんも辛いんでしょう」
朋子「ん」
和尚「かええええりいいみいいち〜」
朋子、寅と顔を見合わせ微笑む。
和尚「おい!朋子!」
朋子「なあにい?」
和尚「お前な、そろそろどこぞへ嫁に
いったらどおない?」
手ぬぐいがポチャ〜ンと湯船に落ちる。
和尚「う〜ん?」
朋子ビックリし、思わず寅の方を見てしまう。
そして、すぐ下を向く。
朋子「ハ、お父さんこそどうするん?
私が居らんようになったら」
和尚「わしは寅さんと二人でのんびりやっていくわい」
朋子、寅を見て、照れながら、微笑み、
また下を向く。
和尚さん、寅といつまでも暮らす気なんだね。
寅のことよっぽど気に入ったんだなあ。
寅「ヘヘへ」
朋子「ハ…」
寅、ニコニコ笑っている。
和尚「それともお前、寅さんを婿養子
にでももらうかい?お〜?」
朋子、寅をパッと見て、
どぎまぎして目がおろおろ動き、動揺する。
朋子「あっ…」
カシャーン
と薪をくべる時に使う金属棒を下に落とす朋子。
朋子「お父さんそげなこと、…」
寅、まったく動じず、のように見えるが、
微妙に顔がどぎまぎしている。
石になっているのかも(^^;)
和尚「いつかお前言うとったろ、
今度結婚するなら
もうインテリはこりごりじゃい、言うて、
いっそ、寅さんみたいな人がええ言うて」
朋子、緊張しながら、ちらっと寅を見る。
和尚「 なァ!そげー言うたじゃろ」
朋子、居たたまれなくなり、思わず立ち上がる。
ほぼ同時に寅もつられるように立ち上がる。
朋子、下を向き、緊張し…、
思い切ってこわごわ寅を見る。
朋子のテーマがゆったりと流れる。
朋子、寅と目をしっかり合わせ、
朋子「ハハ は…」と照れ笑い。
寅のほうは頭まっちろけで、目をパチクリ。
どう対処していいかわからない。
朋子、寅の緊張した目に耐えれなくなり、
逃げるように目を伏せ、
寅の横をすり抜け、母屋へ走っていく。
サンダルを、母屋に入る手前で脱いでしまい、
靴下で土間を歩き、急いで居間に上がってしまう。
寅が慌てないのは、たぶん今何が起こったのか
頭の中で整理されていないから。
依然として思考停止。
まっちろけっけ(^^;)
ああ、それにしてもこの夜の朋子さんは
いつにも増して美しい…。
和尚、何も知らずに
和尚「おい、朋子?」
寅、我に帰り、
あわててしゃがみ、せっせと薪をくべる。
和尚「居らんのか?」
寅「え?」と言って、母屋を振り返り、きょろきょろ。
寅「イエ、オリマセンノォ」と、朋子さんの真似。
笑いました、これは。渥美さん上手すぎ(^^;)
朋子さんがそこにいたら「オリマセンノォ」って言うわけ
ないよな(^^)
イエ、オリマセンノォ…(^^;)
和尚「?!!」ちょっとビビって、
「まさか」と思い、
和尚、ガタッとガラス戸を開け、寅を見て、
寅「あ」
和尚「あ」
もう一度
寅「あ」
和尚「あ」
2度づつ「あ」を言い合うところが
二人とも実に上手いねえ!この二つの「あ」は
渥美さんと松村さんの歴史を感じさせるね。
この二人のかけ引きはただもんじゃないね。
あ
寅「お背中でもお流ししましょうか?」
和尚「あ…、〜いや、結構でございます・・」笑いました(^^)
と極めてバツが悪そう(^^;)
寅「あ、そうですか。はい」
と小声でぼそぼそつぶやき、立ち去る。
和尚、寅の行くえを恐々見ている。
ようやく、嬉しさを実感してきた寅、
目が宙を舞って、足も宙に浮き、
恍惚とした顔でひらふら去って行く。
寅、平衡感覚を失ってしまって、柱にぶつかり、
そのあと、足を滑らしそうにもなりながら歩き、
朋子さんが入っていった台所を外から覗いて…、
彼女を見たのか、とっさに顔を下げ、
背広の裾を持ってふわふわ歩いていく。
文字通り夢心地 〜〜〜〜(  ̄ー ̄)♪
寅はこういう時が一番幸せなんだろうね。
恋愛成就一歩手前って位置がいつも
好きなんだよなこの男は。
いつもそこどまり。
でも、それじゃ、相手が可哀想なんだよな…(ーー;)
遠く、第1作「男はつらいよ」で、夜の帝釈天参道を
「喧嘩辰」を口ずさみながら踊っていた寅を思い出した。
ともあれ、この夜の寅は、人生最高のひと時だったのかも。
翌朝 蓮台寺境内
居間
居間で和尚さんが寅の置手紙を読んでいる。
朋子さんは台所仕事している。
『私、思[う]ことありまして
故郷にもどります。
今後の身のふりかたにについては、
肉親とそうだんいたします。
どうぞお体を大切(つ)に。
寅次郎』
和尚「そらあ、おられまいなあ…、
あげなことあっちゃ…」
朋子、何かを考えている。
和尚、ごはん茶碗を出して
和尚「朋子…」
朋子ムスッとして
朋子「ご飯ぐらいつげるでしょ自分で」
当然朋子は機嫌が悪く、プィと出ていく。
朋子、外へ出る
戸が閉まる音 パシャン!
和尚、自分でしょぼしょぼご飯をよそう。
朋子、庭でほうきとちりとりを持ってとぼとぼ歩く。
居間では和尚が反省している。
和尚「まずい事をしたなあ・・・」と指についたご飯をなめる。
境内から町を眺め、
昨晩の失敗を悲しみ、
遠く寅に想いを馳せる朋子。
汽車が通っていく。
朋子、昨晩の事であまり
眠れなかったのか、小さくあくびをする。
なんでまあこうなるのかねえ…。
やっぱり寅って臆病なんだねえ。
普通なら、あのあと二人の仲は進展するはずなのに、
緊張感に耐えられず、寅は今回も逃げてしまったのだ。
寅はいつもあそこまでだ。
相思相愛の緊張感と、待っているであろうリアルで責任の
伴う未来に耐えられないのだ。
しかし、ちょっと待てよ。あの置手紙…。
「今後の身のふりかた」「肉親と相談…」って書いてあったな。
ってことは、朋子さんとの結婚を真剣に身内と相談し、考え、
決意するためにいったん故郷に帰るってこと??
もしそうだとしたら、朋子さんはあの文章の真意は分かって
ないな。
京成柴又駅
白山メガネ店
柴又コーヒースタンド
寅が駅から出てくる。
駅員「お客さん、お客さん!」と追いかけてくる。
寅、うわの空でスタスタ歩く。
駅員「きっぷきっぷきっぷ」
寅「いらない、いらない」要るよ(^^;)
駅員「いや、あの、こっちがいるんですよ」
寅「いらないいらない」あんたは要らないんだろうけど(^^;)
駅員「柴又までのきっぷ」
寅「あああ!」
駅員「え」
寅「きっぷな」
駅員「こうゆうの、こうゆうの」と切符を見せる駅員。
子供相手か(^^;)
寅「お、ん、ん、ん、ん、、うんうん」
駅員「うん」
寅「はい」
駅員「はいはいはい」
と、受け取り、改札に帰って行く。
駅員「何言ってんだまったく」
駅員切符を見て
駅員「…! 岡山ァ?!」
とらや 店
お客が団子を買っている。
おばちゃん「毎度ありがとうございます」
参道からとらやに笑いながら帰ってくる寅の声。
テンションが異常に高い(^^;)
寅「おばちゃん、ハハハ!
さくら、ビクッとして店先を見る。
駅の方向から寅の声が聞こえてくる。
寅の声「ハハハ!すっかりご無沙汰しちゃって、ね!え!
おばちゃん「あ…寅ちゃん」と、いきなり現れた寅にポカン。
お客に対して
寅「あ、どうもありがとうございます。どうもどうも」
寅さくらの方に手を上げて
寅「よ!さくら!あの時はちょっとおまえのこと
驚かして悪かったな。え」
さくらポカン。
寅「おいちゃん、年とったよ年を。
フフフ。元気だよ、元気オレは!
ハハハ!ハハァ!」
と、異様なハイテンションで、
両手で元気印をポーズ!
さくら、かろうじて一緒に微笑む。
寅「あーあ!は!あ〜、
パチ!(両手を叩いて)
とらやか!んー!しばらくだ!
懐かしいな、何年ぶりだ!?えー!」
もう完全に躁状態。目が宙に飛んでいる。
気が違っている。笑いっぱなし。
完全にあの夜の朋子さんとのことを引きずり、
未来を想像し、舞い上がっている(^^;)
これは何かを決意してるんだね。
さくら「何言ってんの、七月に帰ってきたでしょう?」
寅「フハハハ!そうそう、
あれからもういろんなことが
あったからねえ。5年も10年も
たったような気がしちゃったよ。うん、フフフ!」
ニッコニコ
おいちゃん「元気そうでなによりだよ」
寅「フフフ、ありがとうありがとう、フフフ」
完全に常軌を逸しているね(^^;)
さくら「それで高梁のお寺の仕事はもう済んだの?」
寅「ん、うん、一応済んだ済んだ。…え?」
さくら「…?」
寅「なんでおまえ高梁のお寺のこと知ってんの?」
おいおいおい、さっき『あの時は驚かして悪かった』って
さくらに謝ってたばかりじゃないか、頭大丈夫か? ゞ( ̄∇ ̄;)
さくら「あ、私、行ったでしょ、法事の時」
寅「あ、はははは、あ、そんなこともあったな」
もうすべて心ここにあらず。何を聞いてもうわの空。
反応するだけ無駄無駄 ヾ(-д-;)
おいちゃん「????」だよね(^^;)
おばちゃん「さくらちゃんにいろいろ聞いて、
心配してたんだよ」
寅「どうもありがとう。…
実はね…、そのことでもってみんなにぃ…、
聞いてもらいたいな、と思って帰って
来たんだけどね、うん、
スーッ…、
えーっと…」
自分の世界に入り込んでいる寅。
柴又駅員とらやの店先で中をうかがっている。
寅、駅員に気づいて
寅「いらっしゃい、スー…」と言って、
またすぐ
寅「どっから話したらいいかなあ…」と、考えあぐんでいる。
寅「そうだ、おばちゃん、ニ階…で、
オレちょっと休ませてくれないかな」
駅員外で困っている。
寅「頭をちょっとね、整理してみたいと思うんだよ」
おばちゃん「いいともいいとも」テレビの見すぎ(^^;)
寅、おいちゃんのところへ行って
寅「おいちゃん、頭の整理ができたら、
みんなに、よーく話をするから」
おいちゃん「それがいいそれがいい、うん」
なんのことか分からないが
とりあえず相槌を打つおいちゃん(^^;)
寅「うん」
さくら「あとでお茶持ってってあげる」
寅「ありがとう」
寅、暖簾をくぐろうとして、
寅「あ、」
さくら「え?」
寅「ご先祖様にごあいさつをせねば」
さくら「あ、そんなの後でいいんじゃないの」
寅「そうそう。仏ほっとけといいますからのォ」
また出たよ、このシャレ。
さくら「そうね」適当〜(^^;)
寅「ハハハハ、ハハハハ、ハハハハ」
と意味のない高笑い(^^;)。
さくら、おいちゃんを見て不安げ。
おいちゃん「やっぱりふられたんだな…」そうくるか(^^;)
さくら「そうかしらぁ…」
おいちゃん「心配かけまいと思って、無理に明るく
ふるまってんだろう。バッカだなあ…」
さくら「…」
さすがのおいちゃんも今回ばかりは見切れてない。
駅員「あのー、あ…、」
おばちゃん「??」
駅員「あの人なんですけど」
おばちゃん「はい」
駅員「あのー、上野から柴又までの
乗り越し料金を払って欲しいんですが…」
おばちゃん「あら」
さくら、走って近づき
さくら「あら、すいません」
とサイフをポケットから出しながら
さくら「おいくらですか?」
駅員「はい、140円です」
さくら、財布を開ける。
駅員「ただ、このキップが高梁から岡山までなんでェ」
さくら「え!?」
駅員悩んで考えてしまっている。
駅員「えーっと、岡山から東京までの…運賃…
というのはどういうことになるのかなこれが…」
と腕を組んで上を向き、
駅員「スー、はあああー…」とうつむき悩む。
駅員「わかんねえな…、
やっぱり国鉄さん行って、聞いてきます」
さくら、お辞儀。
駅員、キップを見ながら
駅員「うわーっ、は」とあまりの長距離にビビッって立ち去る。
おそらく1万円近くかかるんじゃないかな…(TT)
人見明さん、今回も駅員役で実にいい味出してるなあ。
彼は、後期の作品で、佐渡の食堂のオヤジ、
北海道の散髪屋、近所の麒麟堂、
江戸家の桃枝の亭主、酔っ払ってしまった釣り人、
などなど、もうしょっちゅう登場する。
さくら、店先まで出て、
さくら「どうもすいません」
帝釈天 夜
鐘の音
ゴ〜〜〜ン
とらや茶の間
タコ社長が台所に入ってくる。
社長「遅くなって申し訳ない」
おばちゃん「あ、待ってたんだよ」
さくら「こんばんは」
社長「寅さん、おかえり」
さくらのほうに向かって
社長「オレに用事だって?」
と照れている。
さくら「相談事があるからね、社長さんにも聞いて欲しいって
いうのよ。すいませんね、忙しい時に」
社長「は、とんでもない。オレのような男でも、役にたつことが
あれば嬉しいよ」
第28作「紙風船」の時、寅は、
「大事な話があるから身内だけで面合わせたい」
って言って、やって来た社長をわざわざ追い出して、
話を進めたくせに(^^;)
おばちゃん「まあ、おかけよ」
社長「あ、ありがとう」
博「さくら、いいのか?」
さくら「うん」
鐘の音 ゴ〜〜〜ン
寅、腕を組んで考えている。
博「じゃ、兄さん、みんな揃いましたから」
寅「うん」と何度も小刻みに頷く。
寅、下を向いて
寅「スィーーー…」と決意をし、
寅「実はオレ…、
余生を仏に仕えて過ごしたいと、
こう考えているんだが…」出たァ〜!(^^)
一同意味がよく分からないで寅を見る
寅「みんなはどう思う?」
さくら「仏に仕えるというと?」
寅「仏前に明かりをともして、朝な夕な、
お経を唱えて過ごそうというんだ」
社長「誰が?」
寅「わたくし」
社長「あ、ハハハ」と指をさす。わかるわかる(^^;)
寅に真剣に見つめられて、下を向く社長。
さくら「お兄ちゃん、それ本気で考えてんの?」
寅「冗談でそんなことが言えますか」
博「早い話が、出家をするってことですか?兄さんが」
寅「そう」と深く頷く。
おばちゃん、台所でメソメソ。
おばちゃん「いくら失恋したからって、
なにも坊さんにまでなることないじゃないか」
博「そりゃあ、普通の人と違って兄さんは
20ぺんも30ぺんも失恋したんだから、
世をはかなむ気持ちにもなるんでしょうけど、
しかし、出家するなんていくらなんでも
飛躍しすぎですよ」露骨(^^;)
社長「そう、まだまだ可能性はあるよ。元気出せよ」
博「まだ若いんですから」
おいちゃん、寅を指差して
おいちゃん「おまえさえその気なら見合いの口はいろいろ
あるんだぞお」
第10作「夢枕」参照→見合い相手ほとんど全滅状態(^^;)
第21作「わが道を行く」参照→極まれにはいる(^^;)
おばちゃん「そうだよ、諦めんのはまだは早いよお」と、メソメソ。
寅、微かに苦笑いしながら
寅「みなさん、なんか誤解なすってらっしゃるんじゃ
ないですか?私はべつに結婚することを
諦めたりしちゃあいませんよおぉ」
さくら「…、じゃあ出家なんかすることないじゃないのお〜」
寅「だから、諦めちゃいないから、
…出家をしたいと言ってるんですよ」
一同「…????」だよなあ(^^)
社長、首をかしげながら
社長「分かるかい?」
おいちゃん「ぜんぜん分かんねえ…」
社長「だってえ、嫁さんもらうことと、坊さんになることは、
全く反対のことだもんな」
さくら「そうね」
博「例えばですね、兄さん、
相手がお寺の一人娘で、
兄さんがそこに婿養子になる。
そんなことならともかく…。
あ…!!!!!」
さくら「…!!!!」
さくらのほうが博より気づくのが早かった。
寅、ニヤリ
寅、うっすら笑って
寅「えー、どうかしたかあ?」よく言うよ(~_~;)
博、顔真っ青、「しっまた!」という表情。遅いよ(−−;)
さくら「あ、あ、あのねお兄ちゃん。お坊さんなんて
そんな簡単になれるもんじゃないのよ」
博、しきりに頷く。(^^;)
寅も頷いて
寅「うん、そうだよ、だからさ、こうやって
みんなに相談してるんじゃねえか。
え?なんかいい手ない?」
博、呆れている。
寅「うまく坊さんになるような手がさ。
社長、おまえ顔広いんだから、
なんかそういうのないかい?
いいのがぁ」
なあぁ〜るほどね。
社長を呼んだ意味がよぉーく分かったよ(−−;)
社長「坊さんねえ…。医者になるんなら裏口入学ってのが
あるらしいんだけどな」
寅「んー、医者になるよりは
少し楽なんじゃねえか。
もう相手死んじゃってんだから」
寅上手い!ざぶとん1枚(^^;)
もう相手は死んじゃってんだから
博「兄さん、坊さんは葬式を出すために
いるんじゃないんですよ」そりゃそうだ(^^;)ゞ
寅「そうかい?」
さくら「お経読むだけじゃなくてね、宗教についての深あ〜い
学問修めなきゃいけないのよ」
おいちゃん「第一おめえ、修行しなきゃいけねえんだぞ。
火の中へ入ったり、
ちゃあああー!っと滝に打たれたり」(^^;)
ちゃあああーっと…
と身振り手振り。
おばちゃん「1ヶ月も断食したり、
できんのかい?そんなことがあ」
1ヶ月って…。それじゃあ死んじゃうよ(^^;)
この老夫婦はイメージがちょっと偏りがち(^^;)だが、
確かに蓮台寺(薬師院)は「真言宗」つまり密教。
禅宗である曹洞宗の修行が厳しいのは有名だが、
密教も修行は厳しい。だからおいちゃんやおばちゃんの
言ってることは極端だがあながち間違ってもいないかも。
密教は、修行の実践により、誰でもただちに仏になることが
できるという教えだからだ。ちなみに密教の修行とは、
身体の修行である身密、言葉の修行である口密、
心の修行である意密で、あわせて身口意の三密修行と
呼ばれている。
真言宗ではその修行を加行(けぎょう)という。
最初の基本的な期間はだいたい100日ぐらいらしい。
多くの人は専門の学校に入り、1年間、教義・教学を
勉強しながら、修行も行なうという方が多いようだ。
その他にも高野山上には数箇所道場があるということ。
近年、荒行はしないといっても、寒い中水をかぶったりはする。
加行の前半に行なう礼拝行は百八回の礼拝(五体投地の礼)を
一日3度行なうそうで、体が相当痛くなるらしい。
まあ、1年で一通りのことができるようになっても、そのあとは、
人生をかけた長い修行があるのだが…。寅には全く無理だろう(^^;)
寅「そらあ、オレだって多少のことは
覚悟してるけどさあ、
あんまり日にちがかかるってのは
辛いよお…ねえ、何日くらい
かかるんだろ、この、ひっくるめて」
ひっくるめてって…(^^;)
社長「運転免許だってェ、
2ヶ月やそこらかかるからなあ」意味無いよそのたとえ(^^;)
と、ハンドル握るまね。
おばちゃん「お花やお茶のお免状だって3年ぐらいかかるよぉ」
寅「ちぇ、そこをさあ、
なんかこうもっとてっとり早くできねえかねえ
例えば、偉い坊さんに袖の下を使うとかなんとか…」
出たよ出たよ。結局はこういう方法しか
思いつかないんだよな寅って。
不精っていうか、怠け者っていうか┐(-。ー;)┌
そういえば、寅は第26作「かもめ歌」で、すみれちゃんの入試の
時も袖の下でなんとかしようとしてたなあ(^^;)その時の試験監督の
先生は今回の和尚さん役の松村達雄さん。
さくら「バァカなこと言うもんじゃないわよォ!
お坊さんになるということはね、
運転免許とるなんてこととわけが
違うのよォ!、ねえ博さん」と、博にバトンタッチ(^^;)
博「つまり、修行ということは精神的な修養を
積むということですからねェ。
2年や3年じゃできませんよ」
博、なんとかやめさせたい(^^;)
さくら「そうよォ」さくらも必死(^^;)
博、達磨をテレビの上から持ち出して
博「例えば、この達磨禅師は『面壁九年』といって
9年間考え続けてようやく悟りを開いたんですよ」
おいちゃん「これずーっと座りっぱなしだから、
手足が無くなっちゃったってんだろう」
っと、手が縮むポーズ(^^;)
寅「いやだいやだ」と小声でビビる。
達磨大師(達磨禅師)(5〜6世紀頃)は南インドの香至国の第3皇子といわれている。
小さいときから仏心が篤く、27祖の般若多羅について仏教を修得し、後に仏教に力を
入れている梁の武帝に召されて、仏法についての問答をした。
けれども達磨の『空』を示した簡潔な言葉と武帝の功徳を期待する
現世的な心の間に大きな溝があり、結局達磨は失望した。
『機熟せず』と達磨はさらに揚子江を渡って洛陽の東方、嵩山少林寺に向かう。
嵩山は中国五嶽の一つで、山腹にある洞窟に座って、この作品で博が達磨を持ちながら
寅に言っていた有名な「面壁九年」の修行を行う。
後世、数々の絵にも描かれているように、この壁に向かってひたすら九年坐禅を
続けたとされていたという逸話は、これは彼の「壁観」を誤解してできた伝説である。
「壁観」は達磨の宗旨の特徴をなしており、『壁となって観ること』即ち『壁のように動ぜぬ境地で
真理を観ずる禅』のことだと言われている。後世の人々はそのことを分かりやすく庶民に
伝えるために伝説を作ったのであろう。
この「壁観」の教えは後の中国禅において、六祖慧能(638〜713)の言葉とされる坐禅の定義などに
継承されている。達磨大師の教えはのちに日本にも渡り、禅宗の開祖となって広められた。
そういえば、第16作「葛飾立志篇」でも御前様が
寅に達磨禅師のことを語っていた。
博「それから道元禅師という人にいたっては
悟りを開くまでに30何年かかった
と、言われています」
道元は釈迦以来伝えられた仏法の基本は坐禅であり、
悟りを得るという目的を持っての坐禅ではなく、
坐禅そのものが悟りの姿であるという
『修証一如(しゅしょういちにょ)』の教えを示した。
さくら「へえー」
おばちゃん「へえーえ、そんな偉い人が30年も
かかったんなら寅ちゃんみたいな
頭の悪い人は50年も100年も
かかるんじゃないのォ?」
博、微妙ぉ〜に笑っている。(^^;)
さくら心底困った顔。
寅「チッ!話になんないよまったく」
それはあんたのほうだよ(−−)
さくら、微妙にむっとする。
寅「そんなこと言ってたら
あの人ババアに
なっちゃうじゃないか」
おいちゃんたちその言葉にはっとする。
この瞬間、キャメラは寅とおいちゃんだけを映し、
さくらや博を映さない。そのことによって、
かえって静かな緊張感を醸し出させていた。
ここの演出はなかなか巧い!
寅「ったくなあ!ちッ、ま、こういう素人に
相談したのがいけなかったんだ。
よし!明日御前様に聞いてみよう。
じゃあ、今晩はこれでお開きということにして、ん!」
と、すくっと立ち上がり2階へ行こうとする。
柱時計が8回打つ。(8:00PM)
さくら、考え込んでいる。
寅、階段下で、立ち止まって
寅「あ、おばちゃん」
おばちゃん「あ、なんだい?」
寅「明日の朝5時におきるからね」
おばちゃん「5時ぃ?」
一同驚き、呆れる。
寅「うん、そういう習慣ついちゃったんだもん、
うん、そいじゃおやすみ」
社長「おやすみ」
さくら「おやすみ」
寅「おう、おっす」
寅「あ、そうだ、おばちゃん、明日の朝飯な、」
おばちゃん「うん」
寅「精進にしてくれ、精進に」
おばちゃん「え?」
寅「肉魚いっさい抜き、簡単でいいだろ、な、
味噌汁の身はね、豆腐とワカメ、それから
おからの煮付け、それから納豆、
それからまあ、一夜ずけのぉ、お新香に
パリパリの味付け海苔
そんなもんでいいかな」
そんなもんって…(^^;)
★ このパターンは第5作「望郷篇」のアレンジ版。
↓
寅「上等、上等、
温かい味噌汁さえあれば十分よ、
あとは
お新香、
海苔、
たらこひと腹、ね!、
からしのきいた納豆、
これにはね、
生ねぎを細かく刻んでたっぷり入れてくれよ!
あとは塩昆布に生卵
でも添えてくれりゃ、おばちゃん、何もいらねえな、うん。」
★ 第42作 「ぼくの伯父さん」でもこのアレンジ版がでてくる。
↓
寅「おばちゃん…、オレは久しぶりに帰ってきたんだぜ。
この家でなきゃ食えないものを作ってくれよ。
たとえば、
一塩のシャケ、
パリッとした浅草海苔、
秋茄子の煮たの。
シラスの大根おろし。」
おばちゃん「わかったわかった、なんか作ってあげるよ」
★ 第12作「私の寅さん」では逆に寅が九州から長旅で疲れて帰ってくる
さくらたちに昼ごはんを作ってやる。
↓
まず、
熱い番茶に、ちょっと厚めに切った羊羹のひとつも添えて出す。風呂に入って、
温かいご飯!
シャケの切り身
山盛りのお新香
おっと引用が長〜くなった。話を本筋に戻そう。
寅にいろいろ朝食の事で要求をされたあとのリアクション
↓
おばちゃん「それだけ全部朝の5時までにつくんのかい?」
いいねえ、このリアクション(^^)
寅「そうだよ、そらまあ、できればねえ、
たらこの一腹ぐらい欲しいなあ、と思うけども、
そうはいかない、オレは出家する身だったから、
ふむ、じゃ、お休みなさい。
ななむみょうほうれんげきょう…、
なむみょうほうれんげきょう・・・・」
寅の唱えているのは「法華経」
高梁の蓮台寺とは宗派が違うんだけどなあ(^^;)
おばちゃん「へ」
おいちゃん「さっき気になること言ってたな」
社長「聞いた聞いた、
あの人がばあさんになっちゃうって話しだろ」
おばちゃん「そ」
博「それがほら、いつか話したでしょう?
高梁のお寺のお嬢さんのことですよ」
おいちゃん「そうか、まだふられてなかったのか・・・」
まだって…(^^;)
博「それどころか、ますますエスカレートして
行ってるって感じだ、な、さくら」
さくら頷く。
社長「どうにかなるなら何とかしてやりたいねえ、
それで寅さんが幸せになれるんならさあ、
ま、無理だろうけどね」
みんな見切ってるねえ。
確かに実を結ぶのは無理かもしれないが、
それは相手に寅がふられるからじゃないんだよ。
寅が逃げてるんだよ、そのへん分かってる?
社長さん、おいちゃん(−−)
ただ、今回は、一旦は彼女の元を離れたものの、
まだ逃げてないのかもね…。
さくら「どうなるのかしらねえ…」
東京 渋谷駅近く ハチ公前
シューベルトの鱒が流れる。
ひろみ、東京の渋谷ハチ公前で、きょろきょろ
おろおろあたふたしたり、ため息をついたり
している。
ひろみちゃんのファッションある意味目立ってるね(^^;)
ハチ公前は古典的な待ち合わせ場所だね。
でも分かりやすくていいや(^^)
ある意味渋谷で目立っているひろみちゃん(^^;)
ひろみちゃん、火薬が爆発したような
ヘアーと化粧しているが、彼女なりに
一生懸命工夫したのだろう(^^;)健気だね。
カメラスタジオ
写真家の森山徹さんがモデルを相手に撮影している。
カメラマン「少し笑ってごらん、ああ、いいねえ、いいよ」
助手A「露出入ります」
モデル「暑いねえ、光ってるゥ?」
カメラマン「大丈夫大丈夫」
助手A「OKです」
カメラ「OK、次30号行くからね、140つけて」
助手A「早く早く」
一道「はい」
カメラマン「次、立ちポーズだからね」
一道「はい」
カメラマン「絞り大丈夫?」
助手A「OKです」
カメラマン「はい、行くよォ」
撮影を始める。
係りの人「石橋一道さんって人いますか〜?」
って言うことは朋子さんは
『石橋朋子』さんだね。フルネーム決まり!(^^)
一道「はい、はい」
助手B「電話よ」
一道「すみません」
電話口で、
一道「もしもし。ひろみ?ごめんー、今どこなん?
ああ、そうか、悪かったなあ・・・。
いや、昼間までに撮影を終える予定
じゃたんだけど、別の仕事が入ってしもうてなあ。
オレ抜けられんのじゃ。
は、こっちから連絡つけられんし
・・・さっきからどうしようか思うて
ひろみ「いいの、そんな心配せんで私も
悪かったんじゃ急に出てきたりして・・・。
ん?私?
そうねえ、これから柴又へ行って寅さんの家に
行ってそいで帰る。また出てくることもあるけん」
ひろみちゃん可哀想…(TT)
ひろみの電話の横に
「渋谷東急」の看板
ステイン.アライブ (1983年公開)
ジョン・トラヴォルタ主演
土曜日の夜の“ディスコ・キング”だった一人の男が、現状に飽き足らず、
ブロードウェイのスターを目ざしてトレーニングを積み舞台に立つまでの姿を
描いた青春映画で、「サタデー・ナイト・フィーバー」(78)の続篇。
一道「あほな事言うな、せっかく出てきたんじゃないか、
俺、夕方までには必ず仕事終わるけん。
えーっと、あ、そうや、寅さん家で待っとって、な。
本当に待っとるんだぞ・・・そいじゃ」
電話を切る チン…
仕事場に戻って
一道「すみませんでした」
ひろみの気持ちは分かる。待ち合わせ場所に
いつまでたっても現れない一道。
こんな人ごみの多い渋谷で、どうしていいか
分からなくて心細かったのだろう。
一道は今が大事な時だから、仕事場で自分の
置かれている立場をきちんとひろみに前もって
最初の電話で説明しなくてはいけないと思う。
そして、ひろみがやっぱり仕事場に電話するのはちょっとまずいね。
なんせ一道は一番下っ端の新米のアシスタントだからね。
ちょっと仕事場から遠いけど最初からとらやで待ち合わせが一番
よかったかも。
一道も、NTTの電話番号案内で、柴又の団子屋「とらや」で、
電話番号教えてくれるんだから、仕事終わったらすぐ電話は
かけれると思うのだが…。
柴又駅 夜
一道、柴又駅につく。
葛飾区 柴又4丁目
たばこ
More
Speak LARK(ジェームス.コバーン!)
あのコマーシャルは忘れ難い(−−)
CIGA RETTES
SEVEN STARS
アルバイトニュース
求人タイムス
クリームソーダ
フルーツサワー
DAIDO
かみかみオレンジ
ネクター
コカコーラ
ファンタ(グレープ、オレンジ、メロン)
源ちゃんと友人がネクタイをして
DAIDOの自動販売機を叩いてる。
源ちゃんがネクタイをしているのは珍しい。
第13作「恋やつれ」第20作「寅次郎頑張れ」
第23作「翔んでる寅次郎」でも派手なネクタイ姿を披露。
ちなみに第32作での源ちゃんのスーツは、第23作で
ひとみちゃんの披露宴で着ていたものと同じ。
13作「恋やつれ」のネクタイ
20作「寅次郎頑張れ!」のネクタイ
23作「翔んでる寅次郎」のネクタイ
話は戻って…
一道「すみませんあの、
とらやさんゆうだんご屋さん
どこでしょうか?」
源ちゃん「参道真っ直ぐ行って右側、古臭い店や」
源ちゃん、意地悪(^^;)
一道「は、どうも」
友達「汚ねえ店だからよ」ひでええ(TT)
源ちゃん「へへへへ」
バンバンと自動販売機を叩く。
とらや 台所
さくらが、階段下で、ひろみの
赤い靴を拭いてあげてる。
さくら「じゃ、おばちゃん」
おばちゃん「うん」
さくら「お願いね」
おばちゃん「あ」
おばちゃん「傘持ったかい?」
さくら「うん」
博「兄さん寝たかな?」
さくら「寝たわよ」
満男「お休みなさい」
満男の帽子 SF
サンフランシスコジャイアンツ←あじさいの恋の時と一緒。
満男のジャンパーの刺しゅうは「Y」 番号「62」
この満男のジャンパーは第30作「花も嵐も寅次郎」での
正月にも着ていた。よっぽど好きなんだね。
しかしいったい、このジャンパーはどこのものなのだろうか?
日本のプロ野球ではないし、大リーグでもなさそうだし…???
博が店を出ようとすると、いきなり一道が出て来て、
ぶつかりそうになる。
一道「あ、こんばんは、こちらとらやさんでしょうか?」
博「あ、はあ、そうですけど」
一道「はあ、」服をはらいながら、
一道「僕、高梁でお世話になった一道と言います」
初対面の大人には「石橋一道」って言うんだよ(^^;)
さくら「あらあ」
博「ああ、蓮台寺の」
さくら「はあ」
一道「はい」とハンカチを取り出す。
一道「こんな時間にお邪魔してすみません」
さくら「は」
一道「あ、あのー・・・僕の友達のひろみが
今日こちらにお邪魔しなかったでしょうか?」
さくら「みえたわよ」
早く「家にいる」って言ってやれよ、さくら。
一道「は、は、そうですか」
一道「夕方までには必ず迎えに
来る言うて約束したんじゃけど、
どーしても仕事が終わらんもんで、
すっかりおそうなってしもうて、
電話しとうても電話番号わからんし、
おまけに電車まちごうて
松戸の方に行ってしもうたりして…、
とうとう、こんな時間になってしもうたんです」
だから、NTTの電話番号案内で聞けってば、
「柴又 とらや」ですぐ分かるって(^^)
一道「それで、ひろみは、何時ごろ帰りましたか?」
さくら「家にいるわよ」
一道「へェ?」
さくら、なんだかじらすねえ(^^;)
さくら「フ・・・どうしても帰るっておっしゃったんだけど、
とっても疲れてるようだったんで、泊まってらっしゃいって
無理におすすめしてね、
お母さんにも電話して今さっきお風呂に入って、
もう床に入ってるころじゃないかしら」
ほんと、とらやのみんなって優しいねえ…。
よかったねひろみちゃん。
一道「そうですかぁ!」
さくら「ふ」
一道「ひろみはお宅に泊まっとるんですか」
さくら「むこうの階段を登ったところよ、いらっしゃい
ひろみさん喜ぶわぁ〜」
一道「はあ。…あっ、けどもう遅いから…」
博「何言ってるんだよ、
君に逢うために東京に出てきたんだろう」
さくら「ねっ、いらっしゃい」
博「さ」
一道暖簾をくぐってくる。
おいちゃん「いらっしゃい」
一道「は、今晩は、夜分どうも」
おいちゃん「挨拶なんかいいから、さあ、さあ」
おばちゃん、男前には超甘い(=_=;)
と、一道のショルダーバックを持ってやる。
さくら「後でみんなで一緒にお茶でも飲みましょ。
あの、その左側のお部屋、さ」
と、さくら、一道の雑誌を持ってやる。
一道「失礼します」
一道2階へ上がっていく。
おばちゃん「いい男だねえェ〜あれじゃあ、
岡山からだって会いに来るよ」
来たよ来たよ来たよ、おばちゃん、露骨だねェ… ゞ( ̄∇ ̄;)
いい男だねえ…
さくら「ばぁかねえ、おばちゃん」
おいちゃん「どうする寅おこすか?」
さくら「いいのよ」
さくら、一道の持っていた雑誌をペラペラめくる。
おばちゃん「そうだよ、あんな無粋な男が
出てきたらぶち壊しだよ、
これから甘あ〜いラブシーンが
始まるって言うのに」
おいおいおい、おばちゃん、おばちゃん、
だんだんエスカレートしてるなあ… ゞ( ̄∇ ̄;)
博「ハハハハ言うなあおばさんも」
おいちゃん呆れてる。
おばちゃん「ははは」
おっと、さくら、なぜか一道の雑誌を、
なんと自分の白い買い物カバンに入れた!博も何も疑問に
思わないでカバンを受け取っている。
なぜ?それって一道の雑誌だぞ。
預かっているだけだとしたら
カバンの横にでも置いてあげればいいのに…。
あ、でも、もし、一道の持っていた雑誌が「写真の雑誌」だった場合、
芸術としてのヌードや水着などが載っているかもしれない。
一道にとっては芸術でも満男や老夫婦にとっては刺激が強い。
そこで、さくらが、何度かペラペラめくってチェックして、
自分のカバンに入れ、博にさっとカバンごと渡した。
と、なんていうことは十分に考えられるな。う〜んさくらの行動は深い(^^)
満男、台所に来て、
満男「ねえねえ、恋人?」と指を刺す。
さくら「そ、」
満男「エッ!」(* ̄∇ ̄*)
と、超ニヤつきながら、石になって固まる(^^;)
エッ!
満男、満男、おいおい、
目が三日月になってるぞ ゞ( ̄∇ ̄;)
博、満男を見てちょっと笑っている。
吉岡君の、このリアクションは巧かった〜!
さすが笑いの壷を心得てるね。
ニ階の部屋
雨の音。
ひろみが寝ている。
みかんを食べたんだね。
一道、ひろみを見ている。
そして、ひろみの顔にそっと手を当てようとする。
その気配に気づき、ひろみ目が覚める。
ひろみのテーマが流れる。
ひろみの顔が華やぐ。
ひろみ「は・・・」
見つめる一道。
ひろみ「もう、フ…来ないか思うた」
この言葉、切ないね…(TT)
一道、小さく何度も頷き、
ひろみの手をとる。
雷が鳴る。
ゴロゴロゴロオオ・・・
とらや 台所
さくらがロールケーキを切っている。
おばちゃんが(紅茶)ティーバックを出している。
満男「母さん、いまごろ、雷」
博「小ぶりになるまで待つか」
さくら「ちょうどいいわ、お茶飲んでから帰れば」
おいちゃんがコップと一緒にサントリーの角ビンを出す。
おばちゃん、作業うわの空で、ニ階を見ている。
おばちゃん「あ、あら」とティーバックの箱を手から落とす。
さくら「何そわそわしてんのよ、」
おばちゃん「え?あ、いや、何だか落ち着かないんだよ、
二階に新婚夫婦がいるみたいでさ、
ねえ、あんたぁ〜?」
と、おいちゃんに甘ぁく同意を求めるおばちゃん。
この前の寅と一緒だよこれじゃ。完璧に舞い上がり、
調子が変なおばちゃん(ーー;)
満男がロールケーキを
つまもうとするが、さくらがぺシッ!
おいちゃん、おばちゃん、博、さくら、満男、一道
6個のカップがおぼんにのっている。
おいちゃん、いよいよおばちゃんに呆れて、
おいちゃん「興奮してんじゃないかいい年して」ほんと(^^;)
博「思い出すんでしょ、若いころを」
一同「あはははは」
その時大きな雷が落ちる。
ゴギュヴガアアン!!
おばちゃん「キャアアアアーーー!!!」
と、おいちゃんの首に飛びつく。
Σ(|||▽||| )
おいちゃん、
当然思いっきりひっくり返る(TT)
(||| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄0 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)
出た!おばちゃんの得意技、
体重を利用した必殺首絞め
『魔性のスリーパー.ホールド!』
またの名を『おばちゃんスペシャル!』
おいちゃん「離せッ、離せッ、
気持ち悪いじゃないかっ」
ギブアップ負け (_ _,)/~~
気持ち悪いって…、一応夫婦だよ (T▽T)
博たち「ハハハハ!!」
おいちゃん、ぜいぜい息をして目がペケ。
博「アハハハハ!!」とまだ笑っている(^^)
さくら「停電!」
恥ずかしくて、つい笑ってごまかすおばちゃん。
おばちゃん「ハハ、フフフ」
おいちゃん「はあ…ったくもお〜ほんとに」
と、呆れておばちゃんを見ながら、ぜいぜい…(^^;)
おばちゃん、さすがに、
自分のやったことに、自分で大笑い。
三崎さん、マジで笑ってました。
そうだろうねえ〜。
あの二人、NG何回やったのかなあ…(^^;)
しかし、このシリーズの中で、柴又とらや付近って
しょっちゅう雷が落ちるなあ…、
ひょっとして日本で最も雷の落ちる地域なのでは?(^^;)
日本版ゴールデントライアングルか。
いつかみんな戦国時代にタイムスリップするぞ。
おおこわ…(^^;)
とらや ニ階
ひろみのテーマが流れる。
雷の直後なので
ひろみが起き上がって
一道の胸にうずくまっている。
雷 グガァ〜ン、
ひろみ「きゃ、怖い・・・」
一道、しっかりと抱いてやる。
一道、ひろみの顔を両手でそっと持ち、
キスをする。
窓をぬらして降り続ける雨。
うーん、青春だね ( ̄ー ̄)
よかったねひろみちゃん。
一道を死んでも離すんじゃないぞ。
ところで、よく考えると雷の恐怖のリアクションで
おばちゃんとひろみちゃんは同じことをパートナーに
しているのだが、結果がこんなにも違うとは…。
ああ…、おばちゃんの十九の青春は
どこへ行ったんだろう…(TT)
チャンチャン(^^)
江戸川 土手
軽快な音楽
源ちゃんと寅が土手をぶらぶら歩いてる。
ジョギングをしている女性二人が通り過ぎるのを
源ちゃんと寅が一緒に振り向き、
寅が源ちゃんを小突き、『お前もしろ!』と指図。
源ちゃん威勢良く走り出すが、犬の追撃に遭う。
寅はそれを笑うが、自分も同じ目に遭う(^^;)
お馴染み渥美さんと佐藤蛾次郎さんの
ミニコントでした(^^)
とらや店先
いつになく御前様が怒って説教をしている。
久しぶりに真顔で怒る御前様
御前様「ん〜、仏教における修行とは、煩悩を断ち切るための
命がけの闘いですッ。
寅のごとき煩悩が背広を着て
歩いているような男がどうして修行ができますか!」
御前様巧い!座布団1枚(^^)
おいちゃん「ごもっともでございます」
御前様「本人のたっての願いゆえ、修行の真似ごとをさせては
みましたが、三日で音を上げる始末!」
さくら「申し訳ございません」と深々とお辞儀。
おいちゃん「グフッ!三日坊主とは
この事でございますねえ」
おばちゃん「ヘヘへヘ」
二人とも一生言ってろよ(−−)
さすがにさくらはギャグに参加せず。
おいちゃんって…(−−;)
御前様「冗談を言ってる場合ですか!」
おいちゃんたちビクッ!!
おいちゃん、全部座布団とりあげ(TT)
ビクッ!!
おいちゃん「ハヒ!ハハーー・・・」
御前様「困った人たちだ!」
おばちゃん「すみません」
御前様「当分寺への出入りを差し止める。
左様申し伝えなさい!」
悪さしたわけではないいのに厳しいね。
お坊さんのことは御前様も譲れない分野なんだろうね。
おいちゃん「ハハーー・・・」
おばちゃん「へへ〜」
さくらだけ、ちょっと「何もそこまで…」の顔をして
御前様を見る。さくらは兄想いだからね。
御前様とらやを出て、駅のほうへ歩く。
御前様、今度こそ喜び、そして寅を信じたんだね。
仏の道のことに関しては、お坊さんは神経症があるのだ。
自分の存在を揺さぶる大事な分野だからだ。
帝釈天参道
御前様「困った奴・・!」と、まだぶつぶつ(^^;)
朋子駅のほうから歩いてくる。
御前様、そんな事を言いつつも、
前を歩く朋子に目線が吸い込まれて行く。
朋子、立ち止まり、御前様と静かに挨拶をかわす。
御前様、ホワァ〜〜**
御前様、朋子さんの美しさに瞬殺される。
デヘデヘニタ〜。わかるわかる(^^;)
ニタ〜〜
ハッとし、
御前様「いかん!
修行が足りん!ン〜ンン!!」
と、頭を手で撫でる。
煩悩が袈裟を着て歩いている
御前様でした(^^;)
しかし、あの美しい朋子さんに心を揺り動かされない
お坊さんがいたとしたら、人間味が無さすぎだ。
御前様の感受性の豊かさは私は大好き。
江戸川土手
軽快な音楽 (口笛)
源ちゃん、写真を見て、
源ちゃん「美人やなァ〜!」
寅、どうやってその写真を手に入れたんだ??
今時、モノクロ写真ってことは、一道にもらったのか?
寅「ン〜」
源ちゃん「この人が兄貴に惚れてるんでっか?」
寅「まあな」
寅ってこういうこと言うんだよね。
ったく、どうしょうもない軽薄さ┐(-。ー;)┌
第10作「夢枕」のラストでも寅は登に、千代さんが
自分に好意を持って、告白までしたことを吹聴していた。
このへんの演出は寅のダメキャラが如実に
出ていて変にリアル。
源ちゃん「ほな、結婚するんでっか!?」
寅「そうはいかない。その人と一緒になるためには
どうしても坊主になる資格を取らなければいけない。
それは簡単にはできない」
源ちゃん「でも兄貴、愛があれば何とかなるんやないか?」
源ちゃんどこで覚えてきたんだ、それ(^^;)
寅「それは若者の考えることだ。
オレぐらいに分別が分かるようになると
そうは簡単にはいかない。
お前たち若者が羨ましいよ、うん…」
よく言うよ、まったく ┐(-。ー;)┌
源ちゃん、そっと密かに写真を
自分の腹巻に入れようとする。
おいおい源ちゃん源ちゃん ヽ(´o`;)
寅気づいて、
寅「なん、ちっ」
源ちゃん「え?」 ばれるって ヽ(^^;)
寅「なんだよ」
と、写真を、自分の腹巻に戻す。
さくら自転車でやって来る。
さくら「お兄ちゃん!!お兄ちゃん、こんな所にいたのォ?」
寅「いい年して大きな声出すんじゃないみっともない」
さくら「朋子さんが見えたのよ!
朋子さんが見えたのよ突然に」
寅「え?どこに?」
さくら「とらやによ、ほら、いつかの弟さんの事が
心配になって出てきたんですって。
今日中に岡山に帰らなきゃいけないって言うから、
早くお兄ちゃん見つけないといけないと思って」
寅「どけッ、どけッ!」
さくら「??」
寅「どけッ!」
子供をひきそうになる。
結構危ない演出だ〜(^^;)
子供の親「バカヤロ〜!」
バカヤロウ!のオヤジはあの源ちゃんと
缶ジュース買っていた人?
さくら、走って追いかける。
可哀想…(TT)
第27作「浪花の恋の寅次郎」のふみさん訪問の時は
寅が江戸川土手にいるのにもかかわらず、
江戸川土手を探さなかったさくら。
今回は朋子さんが時間が無いので江戸川土手を
探しに来たんだね。
しかしまあ、ふみさんも事前のアポ無し、朋子さんもアポ無し、
朋子さんの性格的には絶対にありえないね。
自分の弟の一道がとらやで大変お世話になったことを
帰って来たひろみちゃんから聞いた朋子さんは、
必ずとらやにお礼の手紙を出し、かつ、すぐさま電話を
すると思う。そして来る時にも失礼のないように電話を
一本入れると思う。
まあ、いつも言っているように、それじゃ話が盛り上がらないから
こうするしかないのだが、やっぱりあの朋子さんが、と思うと、
ありえないよなあ。
たぶん、寅のことでよっぽど悩んで迷って来たんだろうね…。
さくらなんか、寅を迎えに行くときに必ず相手にアポを入れる。
網走も、別所温泉も、田の原温泉も、全て事前に相手に
連絡をしていることが物語を見ていると分かる。
まあ、寅が問題を起こしているので当たり前のことなんだが…。
とらや 店
朋子、イスに座っている。
おばちゃん、お客さんに
おばちゃん「ありがとうございました」
おいちゃんが、店で座っている朋子さんに、
柴又のことをなにやら説明している。
朋子さん、「そうですか」と頷いている。
おばちゃん「どこいっちゃったんだろね」
おばちゃん、おいちゃん、あらためて朋子さんと
お辞儀をし、挨拶。
石倉三郎扮する、そば屋、が歌を歌いながら
そばを配達している。
「♪夕暮れの雨が降るゥ〜、
矢切のォ〜わたあしい〜…あ!ああああ!」
ガガ!ガッチャン!!
矢切の渡し 細川たかし
作詞: 石本美由起 作曲: 船村徹
一、「つれて逃げてよ……」
「ついておいでよ……」
夕ぐれの雨が降る 矢切の渡し
親のこころに そむいてまでも
恋に生きたい ふたりです
二、「見すてないでね……」
「捨てはしない……」
北風が泣いて吹く 矢切の渡し
噂かなしい 柴又すてて
舟にまかせる さだめです
三、「どこへ行くのよ……」
「知らぬ土地だよ……」
揺れながら艪が咽ぶ 矢切の渡し
息を殺して 身を寄せながら
明日へ漕ぎだす 別れです
そういえばこの歌を歌っている歌手の細川たかしさんは
第31作「旅と女と寅次郎」のオープニングで
友情出演していたなあ。
なぜか、とらやで座っているおいちゃんも、あまりの音の
大きさにズズズと椅子から滑り落ちる。
下條おいちゃんのミニギャグ(^^;)
通行人女性たちの悲鳴
女性「キャ!」
女性「キャーア!!」
ザルそばがコロコロ転がってくる。
そば屋の声「あーあ、このそば!高いそばバカ野郎!」
その直後
寅、頭にそばの麺を乗っけてとらやに走ってくる。
おばちゃん「なんだ?」と外に出る。
寅、おばちゃんとぶつかり、
おばちゃん「どどど、どうしたの?」ねえ〜(^^;)
店に入った寅、おばちゃんとぶつかりながら、
必死できょろきょろ朋子さんを探す。
おばちゃん「ありゃ、やだ、なになになに、こっち…」
このリズム感、上手いねえ三崎さん!
ありゃ、やだ、なになになに、こっち…
おばちゃん、かろうじて手で
朋子さんのいる場所を指差す。
朋子、寅にピントが合って目を見張る。
寅「はあ!!…朋子さん!」
と寅にしては珍しく感極まった無声音。
朋子も感極まり、目を輝かせ、そして潤ませながら、
朋子「寅さん」
寅「よく来たなあ!」
朋子「あは!」
寅「うん!」
あの再会時に朋子さんの寅を見る眼は
愛する男性に会いに来ただけの目ではなかった。
あの目は離れて暮らしていたかけがえのない『家族』に
再会した目でもあるのだ。朋子さんにとって寅は、
自分たちが苦しい時、淋しい時共に励ましあった
家族である寅さんなのだ。
だからこの作品はマドンナがすでに寅の運命共同体に
近い存在になっている稀有の物語である。
そこに他の作品にはないこの作品独自の深みと愛着、
そしてその後の深い悲しみがあるのだ。
それにしても、寅、帽子から垂れてるその『そば』、
なんとかしろよ(−−;)
そば屋、頭にそばをかぶりながら、とらやに走ってきて
怒り心頭で、寅の腕を叩く。
そば屋「このヤロウ!」
寅「あた!」
おばちゃん、とっさに寅の体をかばう。
そば屋「弁償しろ!このヤロウ!」
寅「やったなこのヤロウ!」
そば屋「こんなにバラバラじゃないか!」
と手で垂れ下がったそばを口に入れる。
寅「テメエのほうからぶつかってきたじゃないか!」嘘つけ(^^;)
そば屋「なに言ってんだ!そっちから…」
寅、いきなり首を絞めようとする。
おばちゃん「あら、ちょと寅ちゃん、なに!」と止めに入る。
おいちゃん、も寅の腕を掴む。
そば屋「あー!苦しい!」
とテーブルに倒れこむ。
寅、絞め続ける。(^^;)
朋子「あ!寅さん!いけない!」
寅、笑いながら
寅「こりゃね、子供のころから慣れてますから、へへ」
ニコニコ笑いながら大喧嘩(^^;)
工場のトシオ君やおまわりさんやって来て、
みんなで必死で止める。
そば屋「頭大丈夫か!このヤロウ!」
寅、そば屋の髪の毛掴む。
そば屋「あたー!!このヤロウ!」
おいちゃん「やめろ!」
寅の帽子も吹っ飛ぶ。
とらや 茶の間
朋子さんが笑っている。
朋子「フフフ」
さくら、笑いながら
さくら「このおじさんが怖い顔してねェ」
おいちゃん、「なーに」って言いながら笑っている。
さくら「『同じ部屋に泊めるなんてとんでもない!
そんなふしだらなこと、オレは絶対許さん!』
って、フフフ」
朋子「フフフ」
おばちゃん「えらそうにねー」
さくら「ねー」
おいちゃん「もうやめろよ、その話は」と照れている。
一同「フフフ」
朋子「でも、おじさんの時代はそうだったんでしょ?」
寅、そっと
寅「それが違う…」
朋子「どうして?」と微笑んでいる。
寅「この二人はもうできてた」
できてたって…(^^;)
一同「えー!?」
おいちゃん「バカ!つまんないこと言うんじゃないよ!もう」
と、そそくさ、店の方へ行く。
朋子「フフ」
寅「へへへ」
寅「二人でね、浅草で、デートしたんだってさ」
朋子「ふうーん」
寅「帰り道に雨が降ってきちゃった」
朋子「あらあ」相変わらずいい合いの手(^^)
寅「駒形橋の袂に親戚のおじさんがあるんです」
朋子「うん」
おばちゃん、朋子さんにお茶を置く。
寅「そこでまあ、雨宿りをしたわけだね。
いつまでたっても雨が止まない」
おばちゃん「ちょ…、およしよォ〜」と、手をふる。
さくら「フフ」
寅「『もう、しょうがないからおまえたち
ここへ泊まっていきなよ』
『いえ、私たちまだ結婚前だから』
なんちゃって!フフフ」
なんちゃって!
朋子、さくら「フフフ」
おばちゃん「もう、寅ちゃんたらよしなよ、もう!」
寅「笑っちゃう!」
おばちゃん恥ずかしがってそそくさ台所へ。
朋子「ねえ、それでどうなった?」
朋子さんも好きだねえ〜(^^;)
寅「え、粋なおじさんの計らいでね、若い二人は二階の
座敷で二人っきりだ。
雨がザーッっと降って、
突然ピカピカピカ!ゴロゴロゴロ!
あのおばちゃん、『キャー怖い!!』」
と、抱きつくポーズ(^^;)
朋子「あ、フフフ!」
さくら、ニコニコ笑っている。
寅「あの太った体でもってさ、
カマキリみたいなおじちゃんに、
へあああ!!」
朋子「キャア!」
寅「って抱きついちゃったんだよこれがァ」
朋子、さくら「ハハハ!フフフ!」
朋子、ゲラゲラ笑っている。
見てきたようなことを言う寅でした(^^;)
さくら、台所を振り返って
さくら「おばちゃん、素敵なロマンスね、
ほんとにその通りなの?」
おばちゃん「口から出まかせだよお!ほんとに
おしゃべりな男だよ」
おばちゃん、サツマイモを蒸かしたものを
こんもり持ってくる。
おばちゃん「これでも口突っ込んで少しは黙ってな」
と寅にサツマイモの皿を差し出す。
寅「はいよ」
さくら、皿を受け取って
さくら「あらあら、子供のおやつみたいなもの」
朋子「ね、さくらさん」
さくら「ん?」
朋子「フフ、ちょっと聞きにくいことじゃけど、」
さくら「なあに?」
朋子「結局その晩、弟はどの部屋に
泊めていただいたんですか?」
さくら「…、ああ、フフ」
おばちゃん「フフフフ」
朋子「え?」
おばちゃん「あたしゃねえ、一緒に寝かせてあげなさい、
って言ったんですよ。だけどさ、
あの頑固親父がダメだダメだ
って言うでしょう、だからね…」
おいちゃん、店で苦笑い。
おばちゃん「フフフ」
朋子「どこへ寝たんですか?」
さくら「お兄ちゃんが寝てた物置部屋に
一緒に寝させられたの。可哀想に…」
朋子「そう…」
寅「こっちだっておまえ驚いたよォ、
目が覚めたらさあ、こーんな
足の長いヤツが隣に寝てるだろォ、」
サツマイモの長い短いを両手に持って
寅「こっちがオレだよォ、根みたいなの」と、笑って
寅「驚いたよ!ハハハ!」
おばちゃん、さくら、朋子「フフフ」
朋子、笑いが止まらない。
さくら「目が覚めるまでそっとしといてあげてって、
ひろみさんが言うから、
声もかけないでいたら、お昼頃までぐっすり」
朋子「フフ」
おばちゃん「さぞかし疲れるんだろうねェ。
慣れない土地で」
さくら「毎日ラーメンばかり食べてるんだって」
と、ポットからお湯を急須に入れている。
おばちゃん「可哀想に…」
おいちゃん、茶の間にやって来て、
おいちゃん「何の話だい?」
さくら「一道さんのこと」
おいちゃん「へえ…」とお茶を飲む。
朋子、あらたまって
朋子「ありがとうございます」とお辞儀。
一同きょとん
寅「…?いえええ、とんでもないです」
さくら「お兄ちゃん…?」と、寅を見る。
寅「いいえ???」寅、なんのことかわからない。
さくら「なにが?」と、朋子に尋ねるさくら。
朋子「は…、そんなふうに、弟のことを思うてくれる人が
東京にいるいうだけで、私…、安心です。
よろしゅうお願いします」
さくら「そんなあらたまってェ」
おいちゃんも笑いながら「ん」
寅「ウチに下宿させろって言ったんだよ、
オレが面倒みてやるからァ」
無理無理、失恋したらどーせすぐ旅に出てしまうくせに。よく言うよ、
体裁のいいことばっか(ーー)
朋子「そういえば、父が言うとったわ、
カズのようなヤツは寅さんに
預けるのが一番いいって、フフ」
寅、大きく頷き「ほんとその通り」と、ちいさくつぶやく(^^;)
おいちゃん「とんでもない!こんなのに預けたら
不良になちゃいますよー」
さくら「ねえ」
寅「不良(フリヨ)はそっちだろう〜、
なんだい雨の晩に若い娘手込めに
しゃがって、な、おばちゃん」
朋子「フフフ」
おばちゃん笑いながら
おばちゃん「ほんとだ。おかげで私は一生不幸せだよ」
とお湯のポットを持って行こうとする。
おいちゃん「何言ってんだい、
それはこっちのセリフだい、バカ!」
と帳場へプィと行ってしまう。
いいねええ、ご両人!(^^)
寅「そうだそうだ、
訴えてやれ訴えてやれ、
な、最高裁判所へ」
笑ったなァ、これ、渥美さんのアドリブかな(^^;)
さくら「ハハハ」
朋子「ハハハ」
おばちゃん、笑いをこらえている。
おばちゃん「さくらちゃん、お湯沸いてるからね」
さくら「はい」
寅「んー」
朋子「フフフ」
寅「女の一生を不幸せにしやがってなあ」
さくら、朋子「ハハハ」
おばちゃん店で接客
おばちゃん「なにいたしましょう」
茶の間は朋子と寅だけになる。
朋子「あー、寅さんがウチにおってくれた時には、
ウチの中どんなに明るかったか知れない」
寅「あー、和尚さんそんなに機嫌悪いの?」
朋子「うん、一日中いっぺんも口をきかない日だって
あるんよ。寅さんがウチにおらんようになってから…」
寅「ん…、まあ大変なんだな、朋子さんもなあ…」
朋子「……」
沈黙が続く。
朋子、意を決したように、
朋子「…あのねえ」
おばちゃん、店先からおいちゃんを呼ぶ。
おばちゃん「ちょっと」
おいちゃん「あ、備後屋さんか」
と、メガネをはずし、
おいちゃん「ちょっと失礼」
朋子「あ、いえ」
おいちゃん、備後屋に
おいちゃんの声「こないだ悪かったな…」
寅「なん、なんで、そわそわそわそわ行っちゃうんだよ、
みんな落ち着かない連中だな、ねえ」
朋子「…」
寅「せっかく朋子さんがこうして遊びに来てくれたのに…」
朋子「…」
寅「団子食べますか…」
朋子「…」
寅「はあー、そうだ、工場行って博呼んでこよう…」
緊張した空気に耐えられない寅。
朋子、寅のハンテンの袖を掴んで、
朋子「寅さん」
袖を掴む朋子さん
寅、掴まれた袖見て
寅「へ?」
ゆっくり朋子を見つめる。
掴まれた自分の袖を見る
朋子「私そろそろ帰らんと…」
寅「も、もうそんな時間?」
朋子、時計を見て
朋子「5時の新幹線乗らんと今日中に帰れんの。
もう4時でしょう」
朋子さん、帰るの早すぎ。
せめて今夜遅くまで寅と話して
夜は宿に(もしくはとらやに)泊まる気持ちで、
腰を落ち着けて欲しいな。
寅「まだなんにも話しちゃいないような気がするけども」
あんたおいちゃんとおばちゃんの
ラブロマンスの話しかしてないよ(^^;)
朋子「私もそうなの」と寅にだけ聞こえるように言う。
寅「……」緊迫した顔で下を向く。
朋子「ね、…柴又の駅まで送って来て」
と早口の無声音で言う。
寅「……」黙って小さく頷く。
張り詰めた緊張が漂う。
寅「あ、そうだ。
あのー、和尚さんにお土産持ってってもらおう
と、思って…、柴又名物の美味い佃煮があるんだよ」
寅「さくら」
さくら「え?」
さくら、ポットにお湯を入れようとしている。
さくら、さっきまでの、二人の緊張感漂う空気を、
知らないふりをするようにさりげなくしている。
寅「あのー、…、朋子さんな」と台所に下りて来る。
さくら「うん」
寅「帰るんだって、時間がないから…」
さくら「そう…」
寅、雪駄を履いて
寅「オレ、ちょ、ちょっと」と店先へ走っていく。
おいおい、どこ行くんだよ。
朋子さんとの最後の大事な時間なのに
なぜ逃げるんだ。
客でごったがえす店先。
寅が客を蹴散らして走っていく。
寅に押されてなだれ込んでしまう客たち。
備後屋とおいちゃんも雪崩現象で倒れる。
客「なにするんだよー」
客「あいたたた」
さくら「まあ、すいません」
寅って肝心な時にいったいぜんたいなにを
やってんだろうねまったく。
恋が進展するここぞという時に、
必ず、怖気づき、隠れてしまうのだ。
柴又駅 ホーム
金町 太陽社
高木屋老舗
矢切の渡し 松戸テニスクラブ テニス教室 アーバンコート10面 ナイターコート6面
エーワン ヘヤースプレー
千代田質店
初詣は成田山
さくらと朋子が歩いている。
さくら振り向きながら
さくら「遅いわねお兄ちゃん、
どこのお店までいったのかしら?」
向こうのアパートで洗濯ものを干している女性が見える。
向かいのホームで子供たちが遊んでいる。
さくら「ごめんなさいね、
そわそわして落ち着きがなくて。
ほら、お客さんが来ると、
妙にはしゃぐ子供がいるでしょう」
朋子「ええ、フフフ」
さくら「あれとおんなじなのよ」
朋子「私、分かります寅さんの気持ち」
さくら「そう」
朋子「ええ、フフフ」
今寅がいないのは、はしゃいでいるというより、
怖気づき、逃げているんだけどなあ…。
さくら、改札の方向を探しながら、
さくら「それにしても…。…あ、来た来た!」
寅「あ、間に合った!」と走ってくる。
間に合ったはないだろ寅。
朋子さんは駅まで送ってと行ったはずだ。
なに、怖気づいてんだよ、あああ最悪(TT)
さくら「どこまで行ってたのよ」
寅走ってきて
寅「和尚さんに食わしてやりたいと
思って、美味いからさ」
朋子「あ」
寅「これお土産」
朋子「ありがとう」
さくら、後を向いている。
寅「はい、ん…なんだい、
もうちょっとゆっくりできるんのか
と、思ったんだオレ。なあ、さくら」と呼びかける。
さくら「そうねえ、
せっかく東京までいらしたんだから」
寅「んん…、見物するとこいっぱいあるんだよねー、
浅草の観音さまとか、向島の遊園地とか…」
意味ねえ〜、そういうことじゃないだろ寅!(TT)
浅草の金龍山浅草寺(せんそうじ)は、
東京都台東区浅草二丁目にある、東京で最も古い寺。
創建は推古天皇36年(628年)と伝えられている。この近辺は
国際的な観光スポット。
観音菩薩を本尊とすることから「浅草観音」あるいは「浅草の観音様」、
浅草寺(あさくさでら)と通称され、広く親しまれている。
寅が言っている向島の遊園地とはどこだろう?向島には遊園地は無いはず。
考えられるのは3つか?
「向島百花園」 は、向島にあるが遊園地ではない。
「あらかわ遊園」は、隅田川沿いに位置する小さな遊園地。
周辺には古い煉瓦塀があり、隅田川にかかる小台橋へも歩いて行ける。
ただ、隅田川沿いだが向島にはまだちょっと遠い。でも向島と言えば隅田川。
そういう意味ではここかなあ…。
「花やしき遊園地」は東京都台東区浅草、浅草寺から歩いていける。
なんと江戸時代1853年(嘉永6)開園の花園から始まる。観光スポットのひとつ。
後に動物園になり、戦後遊園地に。シンボルともいえる「Beeタワー」をはじめ、
楽しい乗り物が揃う。浅草なので向島では無いがまあ近い。
寅「なあ、さくら」
さくら「…うん」
朋子下を向いて何かを考えている。
朋子「……」
遠くで電車の警笛
プウー、プウー
朋子、緊迫感を増し、寅に近づき
朋子、寅の袖を掴む。
(とらやの茶の間に続き二回目のアプローチ)。
朋子のテーマが静かに流れる。
寅を見て、何かを話そうとする。
寅もとっさに朋子を見る
朋子、袖を掴んだまま
朋子「ねえ、寅さん…」
と少しさくらから離れて話そうとする。
朋子のテーマ
さくら、気を利かせて、自分から離れて、向こうを向く。
寅、緊張しながらさくらの方を向く。
朋子寅に、そっと
朋子「ごめんなさい…」
寅「え、…なに、なにが?」
朋子「いつかの晩のお風呂場のこと…」
寅「な、なんだっけなあ…」
朋子「ほらあ」
寅「あ!あああ!ああ!あのことか」
と、わざとらしく今思い出して気づいたふり。
朋子「あの三日ほど前の晩に父がね、
突然、今度結婚するんやったら
どげな人がええかって聞いたの」
寅、真剣な目で朋子を見ている。
朋子「それでね…、フフ…」
と下を向いて戸惑いながら
はにかんでいる。
朋子「それで…」
しだいに朋子の顔は悲痛な色を帯びていく。
寅、朋子を真剣に見ている。
朋子「私……」
と、胸が張り裂けそうな声になっている。
寅、その緊張に耐え切れず、子供のような声で
寅「寅ちゃんみたいな人がいいって
言っちゃったんでしょ」
朋子驚き、
半ば放心の顔で、
寅を見つめ…、
朋子、コックリ頷く。
寅「和尚さん、笑ってたろう、フフ」
朋子、悲しみの顔。
寅「オレだって笑っちゃうよハハハ」
と顔は笑っている。
緊張感に耐えられない寅は、
とにかくあの日の出来事を、
冗談の方に持っていこうとしている。
寅「なあ、さくら、フフフ」
と柱によりかかろうとしてよろける。
さくら、さすがにカンがいいので、
彼らの方を向かないで、下を向いている。
寅、もう一度さくらに笑いかけながら
寅「なあ、フフ」
さくら、知らない顔をしながらも緊張している。
朋子、悲しげな顔で
朋子「ねえ、寅さん…」
寅「え」
踏み切りが鳴り始める。
カンカンカン
朋子「私、…」
寅振り向く。
朋子「あの晩父さんの言うたことが、寅さんの
負担になって、それでいなくなって
しもうたんじゃないか思うて、
そのことをお詫びしに来たの」
寅「オレがそんなこと
本気にするわけねえじゃねえか、フフ」
朋子、悲しい目をする。
朋子「……」
寅、微笑みながら何度も小さく頷く。
朋子、消え入りそうな声で
朋子「そう……」
朋子「じゃあ、…私の錯覚……」
と寅を見つめる。
寅、無理やり微笑んで、
寅「安心したか。ん、フフフ」
朋子、悲しみに満ちた潤んだ目で寅を見、
首をそっと横に振り
そのまま寅を見つめる。
笑っていた寅だったが…
寅、朋子の悲しい目を見て
やがて真剣な顔になっていく。
寅の言葉に打ちひしがれ…
朋子ゆっくり視線を下げ、
遂に目を伏せ、絶望の色に変わっていく。
ギリギリで「覚悟」をすることのできない寅は
朋子を受け入れることができず、
朋子をひたすら見つめるしかなかった。
電車がホームに入ってくる。
二人の様子がシリアスなので、
さくらは、あせり、
さくら、あわてて寅に近づき
さくら「お兄ちゃん
東京駅まで送ってあげたら?」
と、思い切って寅に言う。
寅も、その言葉に頷き、
寅「うん、あの…」
朋子「もういいの」
寅「……」
朋子「話は済んだし…」
無理やり笑顔を作って…
朋子「さくらさん、ありがとうございました」
さくら、少し微笑む。
電車が止まる。
朋子、ドアのところまで行く。
さくら、朋子が乗る直前にお土産を渡して、
さくら「はい、これ。じゃあ、気をつけて」
寅「和尚さんによろしくな」
笛の音 ピー
朋子、何度も小さく頷いて
朋子「はい」
これが朋子の最後の言葉。
ドアが閉まり朋子さくらにお辞儀
さくらもお辞儀
朋子、寅に微笑む。
寅「旅の途中でまた寄るからよ」
もう寄れないよ……。
朋子ガラス越しに寅の声を聞き、
精一杯頷き、微笑む。
寅、動き出した電車に小さく手を上げる。
朋子、小さく挨拶。
ドア越しの朋子の姿が見えなくなる。
電車はスピードをまして、
そして遠くに過ぎ去ってゆく。
見送る寅。
背中が淋しい。
電車が通った後、また夕日がホームに射し、
さくらの顔を明るく照らす。
しばらく電車を目で追い、やがて下を向き、
一変して絶望の顔になる寅。
メインテーマが静かに流れる。
寅、さくらのところまで歩いてきて
止まり、乾いた照れ笑いをしながら
寅「ヘヘヘ、というお粗末さ…」
さくら「……」
寅、空を見ながら
寅「さて、…商売の旅に出るかァ…」
とホームを歩いていく。
さくら追いかけながら、寅の肩を持って
振り向かせ、
さくら「ねえ、お兄ちゃん」
寅「ええ?」
さくら「お兄ちゃんと朋子さんの間に
一体何があったの?教えて」
寅「そんなことおまえに教えられるかい。
それは大人の男と女の秘密ですよ」
と歩いていく。
さくら、そんな寅を見ている。
さくら、寅に追いつくべく
ホームを小走りで駆けて行く。
結局、
覚悟も決意もできない寅は朋子さんをただ、
見つめるしかなかった。これが寅の限界だった。
朋子さんは、寅がいつまで話しても自分の気持ちを
受け入れてくれないことに気づいたのであろう。
だからこそ、東京駅でなく柴又駅で別れたのだ。
とにかく、大事な別れ際にその緊張に耐え切れず、
佃煮を買いに行く男だ。もう、どうしょうもない。
僧侶の修行がどうのこうのというのは実は関係なく、
寅には、結婚生活は無理なのだ。
結婚に憧れ、結婚をすることのシュミレーションは大好き。
見合いも大好き。身近な周りの人間にも本気で吹聴する。
しかし、ギリギリで女性とのリアルな結婚はできない。
女性と二人っきりで一つの屋根に住めないのも同じ理由だ。
ドロドロの艶かしいリアリティが苦手なのだ。
このことでその昔リリーはどれだけ傷ついたか…。
どんなに好きになった女性に対しても、その人のために、
自分の人生を変えられない男、それが車寅次郎なのである。
相手に恋をし、相手も自分を好きになって、ここから先は
責任と覚悟と決意が必要だという決定的な「得恋の瞬間」に、
ようやく、自分の幻想の中でそこまでの過程を楽しんでいた
だけなことに気づき、リアルな未来が見えて怖気づき、
逃げ出すのでる。
それゆえ、寅を愛した女性にはその先に必然としての
失恋という過酷な運命が待ち構えている。
このような、花が開きそうな恋のつぼみを自分の手で
摘み取ってしまう行為を、寅は何度も何度も繰り返し、
寅を好きになった女性を結果的に傷つけてしまっている。
そのことに関して、寅自身が罪悪感に打ちひしがれ、
このような不可思議な恋をその先もう止める、というような
決意を寅は決してしないのだ。その先も相変わらず、
やっぱりこの手の行為を繰り返し続けている。
ここがこの男の最大の美点であり、盲点でもある。
この種の行動を果てしなく繰り返しているという意味では、
寅は、女性に対してある種の病理的な「神経症」を
おそらく持っている。
神経症ゆえ、この欠点は自分だけでは治ることなく、
永遠に繰り返されることとなる。
出口の無い、実ることの無い、堂々巡りの恋を死ぬまで
繰り返してしまうのだ。
しかし、本人はそれを背負って墓場まで持っていく気でいるし、
毎回、やや早めに逃げるせいか、寅に恋をした相手が極端に
人生を誤ってしまうこともなさそうだ。たまに相手が寅に恋心を
抱いていない場合などは、ただ深く寅にお世話になったことを
感謝することも多い。歌子ちゃんなどはその代表例である。
それゆえ、社会的に、寅はこのやっかいな神経症を抱えたまま
生活していっても別段差し支えないとも思われる。
人は誰しも、どこかの分野で多かれ少なかれやっかいな
神経症を持っている。そのために他人や家族や仕事仲間が
迷惑をかけられたり、結構傷ついたりしているのだ。
私に言わせれば、寅の神経症は、巷の人々によく見られる
ようなとてつもないドロドロした大掛かりなものではなく、
ささやかなものである。
だから私は常々寅のこの手の神経症を大いに認めようと
思っている。
とは言っても、さすがに今回の朋子さんは、このシリーズの
中で、最もこの寅の神経症の大きな犠牲になり、
最も深く傷を負った女性になってしまったと言えるだろう。
悲しみの深みに入ってしまったという意味ではリリー以上である。
なぜなら、彼女には寅は最愛の恋人であると同時に、
なによりもすでに彼女のかけがえのない家族でもあったのだから。
恋人としての別れ。
そして家族としての別れ。
彼女の傷はやはり深い。
この長いシリーズの中で、リリーは別枠として、
私が、『寅となんとしても別れてはならない運命的な
出会いをした女性』という感覚を持ったただひとりの人。
それがこの朋子さんだった。
このシリーズがここで止まろうが、完結しようが、
それによって観客が怒ろうが、断じて寅と朋子さんは
あのように別れてはならなかった。
私は、今でもそう思っている。
あの二人の相性はただものではないからだ。
ただひとつの救いは、第48作「紅の花」で満男が
朋子さんのことを奇しくも話題に出した時、
「再婚したよ、とっくの昔に」と、寅が言っていたことだ。
その後、朋子さんが手紙を出したのか、さくらたちが
父親の法事の時に再婚のことを聞いたのかは
わからないが、長い歳月のあと、寅のことは懐かしい
思い出に変わり、今はもう新しい幸せの中にいるのかも
しれない。
でも…、はたしてそうだろうか…。
正月 江戸川土手
江戸川土手に凧が上がり、音が鳴っている。 ブゥ〜
チャリチャリーン
リコー(RICOH)の営業車がさくらの家を出て行く。
初荷の旗がたなびく。
リコーの社員「失礼します」
さくら家に入っていく。
近所の人「おめでとうございます」
さくら「あ、おめでとうー」
満男、パソコンの『RICOH SP200』を
操作している。
『SP200』はリコー初のパソコン。(製作は日立製作所)
当時だいたい20万円半ばくらいかな。
おそらくタコ社長は高価なリコーの『オフセット輪転印刷機』を
購入した時、おそらくこのパソコンSP200も
かなり安くでつけてもらったのだろう。
ちなみに『RICOH SP200』は
CPUは8MHzくらい。
メモリーは384KBしかない。
ちなみに今、私の使っているパソコンのCPUは2,26GHz。
約300倍。
私のパソコンのメモリーは512MB。
約1300倍。
その頃は増設メモリーなども非常に高かったので
当時のリコーが84年6月に発売した『マイツール』と言う
事務ソフトもMY1,MY2 の2つのプログラムにわけて
動かしていたらしい。
あまり使いそうもないコマンドをMY2の方にいれ、
使う場合はフロッピーを入れ替えて、もう一度立上げ直すと
言う今では考えられない事をしていたらしい。
84年9月には、前記の問題を解決するため、
『マイツール』を1本に統合しても動くパソコンが、リコーから
『RICOH SP250』と言う名前で発売された。
満男「あ〜」
博「そこ、そこストップ、ストップ押せ」
満男「ストップ・・・それで?」
画面の流れ続けていた文字列が止まる。
博「F2だな、」F2は『スタート』だね。
満男「F2」
画面が切り替わる。
博「うん、」
満男「モグタコたたき・・・あ〜でたでた、出たァ〜」
この名前笑った(^^)
ようやくゲームソフトが動く。
さらに博がキーボードを指す。
当時はマウスがないんだね(^^)
さくら「へえ〜これがパソコンなの〜テレビみたいね」
テレビって…(^^;)モニターがあると
なんでもテレビに見えるんだね。わかるわかる(^^;)
社長「アハハハハえ〜っとね、これはー」
満男「ディスプレイって言うんだよ」
社長「あ、そうそうそう」
さくら「へえ」
博「有難うございました、
こんなものいただいてしまって」
社長「あ、いやいや、ほんのお礼心だよ」
満男「これウチでもらったの?
工場のもんじゃないの?」
さくら「社長さんのプレゼントなの」
満男「へえー、どうして?」
社長「あのね、満男君、博さんが、
大事なお父さんの遺産を、
みんな投資してくれて、
おかげでおじさんの工場はオフセットを買えたんだよ。
だからァ、パソコンの一台くらい、安いもんなんだよ。
オフセット印刷
版に付けたインクを直接紙などに付着させず、
版から一度ゴムシートに移し(オフ)、ゴムシートから
あらためて紙などに転移(セット)させる印刷方法
平版(へいはん)印刷とも言う。
社長が購入した頃はいくらくらいだったか定かでは無いが
どんなに安くても新品なら一台5百万以上したと思われる。
第33作からはオフセット室が登場する。
↓
第33作では「オフセット室」登場
社長「だってそうだろ。
その金が無きゃさ、オレは首くくって
死んでたかもしれないんだよ。
今じゃさ、笑い話になるけどさ、
去年の10月の給料日、
ウ…、オ、オレ、あん時…クク」
と、泣きじゃくる社長。
社長、その気持ちがあるなら
投資した博にちゃんと配当支払えよ。(−−)
博凄い勇気だね(^^;)、自分の勤めている会社に
賭けているんだねやっぱり。さくらもよくOK出したな。
遺産を自分たち個人の贅沢に使わないところが
いいねえ〜。それにしても即効で売れたんだね父親の
土地と家屋。
そういえば、この博という人は、第26作で自分が家を
買った時に、貴重な2階の一部屋を快く寅のために
提供した人なのだ。それゆえ、寅がいつ帰ってきても
いいようになっている。博は本当に凄い人だ。
しかし、よくよく考えてみたら、このあとの作品でも、
時々社長は工場の経営が苦しいっていつも嘆いていたので、
博にとってこの投資は、はたして成功だったのだろうか?
下手したら、配当どころか最後まで投資した額すら戻って
こなかったりして…。
たとえ、ある年に利益が上がっても工場が成長を
続けていくためにそのお金をさらに投資せざるを得ない
なんてことも…。だから、いつまでたっても配当に回す余裕は
あまりないかもね。博も朝日印刷には投資による儲けは
期待していないともいえる。半分ボランティアで、無利子で
お金を貸しただけなのかも(^^;)
このあと、社長はオフセットを入れたことによって人手が急に
余ることになってしまう。それゆえ第35作「恋愛塾」では
あの美しく可憐で、なんと写植ができる江上若菜さんを
雇わなかった。あ〜もったいない(^^;)
博「社長、泣くのやめましょうよ」
さくら「そうよぉ、まだ松の内なのよ」
満男「正月くらい笑ったほうがいいよ」
言うねえ満男も(^^;)
社長「わかってるわかってる」
ちなみに、あのパソコンは第33作でも登場するが、
やがて出てこなくなり、後に博は新しいタイプの
2代目パソコンを買っている。↓
第33作でも同じパソコンを使ってグラフを作る満男
その後何年かして博は新しい2代目パソコンを買った。
博、ビールの入ったコップを社長の前に置く。
朝日印刷の従業員がやってくる。
中村君、トシオ君、ゆかりちゃん。
中村「おめでとうございます!フフフ」
さくら「あ、来た来た」
さくら、ゆかりちゃんの晴れ着を見て
さくら「きれいねええ」
博「あー!似合うね」
さくら「さあ、どうぞ」
ゆかり「はずかしい!フフ」
博「さあ、朝日印刷の全従業員が集まったぞ!
今日は盛大にやるか!」
社長「やろう!徹底的にやろう!」
中村「やりましょやりましょ、おめでとうございます」
と社長と博にお辞儀。
ゆかり「おめでとうございます」
博「おめでとう」
社長「おめでとうおめでとう」
中村「いやー、今日はしかし参ったな…、あ!」
と、転んでしまう。
一同「ハハハ」
ゆかり「あ、私手伝います!」
さくらの声「あ、あなたはいいのよ」
ゆかりちゃん、それでも晴れ着の上からエプロンをして
健気に食器を運ぶ。
テーブルには年賀状
寅からの年賀状。
さくらたちへあてたもの。
寅から諏訪家への年賀状は珍しい。
普通はとらや宛に送ることが多い。
寅の声「新年おめでとう。
博君、さくらさん、
夫婦仲良く暮らしてください。
満男君、しっかり勉強して、
立派な人間になってください。
私もひたすら反省して、
人に尊敬される人間になろうと思います。
瀬戸内海にて 車寅次郎」
安芸 因島大橋近く。 尾道市
因島大橋(いんのしまおおはし)は、この映画が作られた1983年に完成。
全長1,270m。 しまなみ海道の中にある。布刈り瀬戸に架かる3径間2ヒンジ補剛
トラス吊橋で、向島と因島を結ぶ。上下二段構造で、下段は自転車歩行者道が
設置されている。道は西瀬戸自動車道である。
布刈り瀬戸は主要航路になっているので、
橋桁は満潮時の海面より50mの高さをとってある。
この映画が作られた1983年建設当時は、日本最長であった。
看板
お客様
長年皆様に御利用頂いてまいりましたが、
因島大橋開通に付、来る・・月十五日に
運航を取り止めさせて頂くこととなりました。
御哀願誠に有り難うございました。
向島カーフェリー
一福屋食堂
日の丸の旗
ポッカコーヒーの自販機。
酒とおでん
独りテーブルに座って、
何か考え事をしている寅。
朋子さんのことを思い出しているのだろう。
今回は切ない恋だったからねえ。
連絡船の汽笛
ボォ〜〜
汽笛で、ふと我に帰る寅。
寅「ああ、船が来たねえ…」
おばさん「ああ、そうですねえ」
現地の本物の店のおばちゃん。
寅「う〜ん・・・」
寅「おばちゃん、」
おばさん「はい」
寅「ここの島に橋が架かるとすると、
連絡船はどうなっちゃうんだい?」
おばさん「もう無いようなってしまうんですが」
寅「ほお」
おばさん「へえ」
寅「じゃあ、ますますこの店は寂れちまうなあ・・・」
おばさん「そうじゃねえ、寂れてしまうですわねえ」
寅「はい、釣りはいらねえよ」
おばさん「はい、はいどうも、ありがとうございました」
寅、ふと前を見ると
あの備中国分寺の梅林で一緒に遊んだ
熊さんとお嬢ちゃんと、見知らぬ中年の女性が
前の道を連絡船の方へ歩いている。
あきさん「センスないんだからァ!」
熊さん「体弱いんだもの、お前、見得もへったくれもないだろ」
あきさん「センスなかに着てんでぼこさァ、もうやでえ〜」
熊さん「むこう行ったら、温かいもん食べようなあ」
とお嬢ちゃんに言っている。
寅、彼らに気づいて、顔が華やぐ。
寅「かあさん、どうもごちそうさま、うん」
おばさん「はい、どうも有難うございました」
笑いながら勢いよく店を駆け出していく寅。
車が横切る
ププ〜
寅、走りながら熊さんに呼びかける。
寅「よお!」
ボォ〜・・
立て看板
祝完成 本四築橋 因島大橋
ボォ〜・・
寅「やっぱりいつかの!」
熊さん「大将〜いや〜その節はお世話になりました、
いやだ、こんなところで
お目にかかれるなんてエ〜」
寅「うん、ここで働いてんのかい?」
熊さん「うん、その橋の工事現場でね〜」
寅「あ〜、そうかい、うーん、」
寅「それで・・」
熊さん「え?アハハハハ・・ひゃ、
飯場の、炊事場にいた女なんだけどね、
気が合うっちゅうか、なんちゅうか、おい、挨拶しろ」
あきさん「え?」
あき竹城さん、恥ずかしそうに、
目をあまり合わさずペコっとお辞儀。
彼女のこの素朴さがなんともいいねえ。
寅「そうかい、そう言うことだったのかい、
お姉ちゃん、よかったな、
きれいなお母ちゃんができて、ねえ」
あきさん大いに照れる。
熊さん「きれえなんて、そんな・・・」
と一緒にてれてる。
ボォ〜・・
寅「お、船呼んでる、船」
熊さん「あ、そうだ・・あんたも一緒?」
寅「そうそうそう」
熊さん「あ」
あきさん「あれえ〜〜!!」
熊さん「あ?何?どうした?」
あきさん「洗濯もん取り込むの忘れたよ」
この言葉に彼女の正直さと素朴さが滲み出ている。
熊さん「何言ってんだ、そんな事ででかい声出すなよ」
寅「アハハハ」
熊さんたちの家の庭先
真っ青な空に
子供や熊さんたちの洗濯物が
爽やかにひるがえっている。
ボォ〜・・
因島大橋の下を連絡船が通っていく
因島大橋が映って
なにか事件や出来事がおこるわけでもなく
全く平凡な日常。昨日と同じ今日がある。
風にゆれる洗濯物。
そこに確かに家族が暮らしている。
そのこと以外に人間の幸福があるはずもない。
この映画は、家族がただ平凡に暮らし、
ご飯を食べ、洗濯をし、子供を育て、
寝かしつけ、洗濯物を干す…。
そのような日常をさりげなく、
そして丁寧に描いている。
いつの日か、子供が家族のもとを離れ、
それぞれの人生を旅するときがきても、
幼き日の、風にゆれる洗濯物の原風景を
心の奥にいだき続けていくのだろう。
終
出演
渥美清 (車寅次郎)
倍賞千恵子 (諏訪さくら)
竹下景子 (朋子)
中井貴一 (一道)
杉田かおる (ひろみ)
下絛正巳 (車竜造)
三崎千恵子 (車つね)
前田吟 (諏訪博)
吉岡秀隆(諏訪満夫)
太宰久雄 (社長)
佐藤蛾次郎 (源ちゃん)
笠智衆 (御前様)
松村達雄 (和尚)
梅野泰靖 (毅(博の長兄))
八木昌子 (信子(博の姉))
穂積隆信 (修(博の次兄))
関敬六 (運転手)
レオナルド熊 (親方熊)
あき竹城 (その妻)
長門勇 (ハンコ屋)
スタッフ
監督 : 山田洋次
製作 : 島津清 /中川滋弘
原作 : 山田洋次
脚本 : 山田洋次 / 朝間義隆
企画 : 高島幸夫 / 小林俊一
撮影 : 高羽哲夫
音楽 : 山本直純
美術 : 出川三男
編集 : 石井巌
録音 : 鈴木功 / 松本隆司
スチール : 長谷川宗平
助監督 : 五十嵐敬司
照明 : 青木好文
公開日 1983年(昭和58年)12月28日
上映時間 105分
動員数 148万9000人
配収 10億8000万円
今回2007年1月21日で
第32作「口笛を吹く寅次郎」は完結です。
次回は北の大地、知床を舞台にふたつの恋が
おおらかに花開く名作!第38作「知床慕情」です。
第1回目の更新は2月4日あたりになると思います。