バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第40作 男はつらいよ」
1988年12月24日封切り
旅立ってゆくのはいつも男にてカッコよすぎる背中見ている。 輝ける闇を行く寅次郎
第40作「サラダ記念日」は私のベスト24作品のなかでは、第45作「寅次郎に青春」共々極めてボーダーライン上の作品である。
このボーダーライン上の作品と言うのが私には実はまことにたくさんあって、なんと10作品以上もある。迷いに迷ったのだが、
結局、渥美さんの晩年である40作台の作品を最後の第48作「紅の花」以外にもベスト24の中で何作品か入れてみたい
という気持ちもこめて、あえて40作台から2つ選んでみたわけである。つまり高校野球で言う、【21世紀枠】での選択だった。
その場合、内容の中に一つか二つとても自分が飛びぬけて個人的に気に入ったところがあるということを考慮する時の
大きなポイントとした。しかし、その40作台の中でも第40作にするか、第45作にするか、それとも第42作「ぼくの伯父さん」にするかと
最後の最後までこれまた迷ったことを思い出す。
雲白く遊子悲しむ。
島崎藤村が明治38年に発行した「落梅集」の中に『小諸なる古城のほとり』という詩がある。
後にそれを発展させて「千曲川旅情の歌一、ニ」としても発表したものだが、これは寅の人生をそのまま
表現したような詩だ。
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子悲しむ
緑なすはこべは萌えず
若草も籍(し)くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡辺
日に溶けて淡雪流る
小諸の駅前で知り合った老婆に気に入られ、楽しい一夜を過ごした寅だったが、実は彼女は、不治の病に侵され、
余命いくばくも無かったのだ。そのことを知りつつも自分が長年連れ合いと住み続けたこの家で最後を迎えたい、と願ってもいた。
しかし、結局この物語の最後、老婆は小諸病院で亡くなる。そのことで女医の真知子先生は自分を責め続けるのである。
第10作「夢枕」で伊賀の為三郎のはかない最期のことを聞いた寅はこの世の無常と旅の生活の哀しみをつくづく
思い知らされるのだが、今回も寅にとっては、自分の人生に照らし合わせて考えざるを得ない「人生の最期」の問題が
突きつけられている。
あの老婆が家を去る時の顔は忘れられない。たとえそれが小諸病院の院長さんに、それじゃ野垂れ死にだ、と言われても、
人には、ギリギリの局面では尊厳があることを忘れたくはない。
若い由紀ちゃんと茂の恋の行方や、自分と真知子先生の淡き想いのその向こうに、寅には自分の行く末の哀しみが
人知れず付きまとっているのである。特にこのころの渥美さん自身の体調を考えるとこのテーマはどうしても複雑な思いになる。
あのおばあちゃんが最後に自分の住処でありたった一つの居場所をいつまでも見つめていたことを今も思い出す。
そして彼女はこう呟くのである。
「これがへえ…見納めだ」
浜松のKさんが作られたあの凛とした歌を今また思い出した。
「遠い旅 いろりの残り火 消えゆくように 枯葉降る庭 眺めつ逝きたし」
早稲田の杜にやって来た寅 インドの通りゃんせ
早稲田大学は意外にも寅のようなはみ出し人間を受け入れる大学なのである。あの大学には正門が無い。深夜になると
スライド式の低い囲いはされるが、高い塀は無いのである。そのような精神が120年以上続いているのである。
それゆえ買い物帰りのお母さんが入って行ったり、小さな子どもたちが出てきたりもする。
由紀ちゃんを探すため早稲田の西洋近代史の講義に紛れ込んだ我らが寅。
Industrial Revolution = インドの通りやんせ
イギリスの蒸気機関を発明したワット = 平戸出身のワット君(良介)この作品では宮城県。
と聞こえる寅が早稲田の杜にやって来て、学生だけでなく教授も巻き込んで大爆笑を巻き起こす。
学生たちは寅のオーラとその語りの神がかり的な上手さに聞きほれ、大いに盛り上がる。
教えていた教授までも一緒に惚れ惚れと聞き入ってしまう。寅というのはほんとうに不思議な人だ。知らない間に人々を
魅惑してしまうのだ。老いも若きもインテリも不良もみんな寅に惚れてしまう。
人生の最期をどう過ごすか、という重い命題が、この早稲田の一連のシーンにより中和され、喜劇映画の面目がここに来て
躍如されるのである。
実は、このシーンは私にとって、懐かしさと共に感慨が深くなるのである。
この「西洋近代史」の講義が行われているのは早稲田の本部、(おそらく6号館あたりの)402教室だという設定なのだが、
実は、私の絵のページの日記にも出てくる、自分の人生に決定的な影響を与えてくださった恩師の坂崎乙郎教授の
講義『芸術学』を毎週受けていたのが、なんとこの6号館のの4階の視聴覚教室だったのである。
由紀ちゃんの横に見えるのが本部の6号館
坂崎乙郎先生は、実は私とは学部が違うのだが、私の聴講の申し出を快く承諾してくださり、結局大学1年から4年まで、
そして早稲田を卒業してからも仕事の時間をやり繰りして5年間ずっと、私は講義を受け続けた。その次の年に坂崎先生が
応援していた同い年の親しい画家『鴨居玲』が57歳で世を去った。そして数ヵ月後の12月にご自身も57歳で急死されてしまい、
数ヶ月の間私たちは悲しみにくれたのだが、結局その時の私たち学生は坂崎先生の最後の教え子となってしまった。
先生は1時間半の講義時間を必ず毎回遥かに越えて2時間半、時には3時間近くも講義してくださった。
講義を少し短く終わる教授は腐るほどいた。いや、ほとんど全員そうだった。ちょうど映画の中で寅がたまたま講義を受けていた
「西洋近代史」の三国一朗さん扮するあの先生も時間が近づいたら懐中時計を見てそろそろ終わろうとしていた。いい意味でも
悪い意味でもああいうさばけた先生が圧倒的に多かった。
だから1時間半の講義を5年間の間、毎回2時間から3時間近く、つまり通常の倍近くもされる逆の意味でかなり変わった厄介な先生は、
私や私の友人たちの知っている限りでは坂崎先生以外一人たりともいなかった。ある意味そんな過剰な行為はありえないのだから。
おそらくあれから20年たった今でもそんな濃密で長い講義を毎回する先生は一人たりともいないだろう。
教授たち全員が休講にする野球の早慶戦の日でさえ坂崎先生は全く休まず、信念のもとに講義をされた。
もちろん坂崎先生は画家ではなく、教授であり、美術評論家なので当然絵画の技術的なことは教えなかったが、
絵を描くとはどういうことか、絵を見るということはどういうことか、そして絵を描く者として生涯を貫くということの厳しさと喜びと、
なによりもその行為による絶対的な孤独を全身全霊で伝えてくれた。決して美術概論のごとき眠くなるような講義や、絵の表層的な解釈
に明け暮れるような左脳的な講義は1日たりともされなかった。そういう意味でも非常に特異な、厳しい講義だったと今でも思う。
坂崎先生と出会わなかったらヴァン.ゴッホの本当の凄さにも気づかなかったかもしれないし、私は今、こんなキツイ絵の
道には進んでいなかっただろう。
私がこの第40作「寅次郎サラダ記念日」を自分のベスト24作品になんとか最後に無理やり滑り込ませたのも、潜在意識の中に
どうしてもこのような個人的な青春期の思い入れがあることをここで告白せねばならない。
当たり前だが私は「映画評論家」ではなく、ただの「私人」であるし、これはただの個人が純粋に好きでやっているサイトなので、
このような個人的な想いが混入することをどうかお許し願いたい。このようにぐだぐだ自分の青春期の個人的な思い出を
書いていてまことに恥ずかしいし恐縮だし場違いなのだが、この青春期の想い無しにこの作品を本気で語ることは私には実際不可能
なのである。
ちなみにあの映画ロケは私が卒業してからたった4年後のことだった。それゆえ構内の風景も風俗も学生たちの雰囲気もみんな
私の知っている世界のままだったこともポイントの一つだった。
本来、物事に対する想いと言うものは百の人がいたら、百の人生に裏付けられた百の想いがあるのだと思う。
寅たちがあの映画の中で座っていた館の窓の下にはあのエンパクこと、演劇博物館が見えるのだ。懐かしくないわけがない。
あの風景の中にあの声を持った坂崎乙郎先生がおられ、私たち学生もいた。
ましてやその地で、私が好きな「男はつらいよシリーズ」のロケがなんと行われたのである。こんな奇遇は滅多にない。
嬉しくないはずが無いではないか。
由紀ちゃんの向こうに見えるのがエンパクこと、演劇博物館
ところで、この作品の中では、大学での寅がおりなす傑作コメディ以外でも、真知子さんが大勢でとらやに押しかけるシーンもなかなか
明るくていい。なんだかほのぼのとして楽しい。題経寺に行ったり、矢切の渡しに乗ったりするシーンも、なにも物語性は無くとも無条件に
嬉しいのだ。一見だらだらしているように見えるが、こんなほのぼのとした楽しみ方が許されるのも長く続いたこのシリーズならではの
ものだと思う。過去の膨大な作品たちが、なにげないシーンを輝かせるのだ。
マドンナが柴又界隈を散策し、馴染んでいくということが、極端に少なくなってしまったこのシリーズの最後のほうのでは、
もはや貴重なシーンでさえある。これ以降、最後の第48作まで、寅の愛したマドンナが柴又であのように散策することはもう無いのである。
そして柴又駅での別れ際、真知子さんは寅に意味深なことを言い、握手をし、別れていった。今回の恋も淡くはあるが相思相愛の
形を取っているのだ。
真知さんの鋭敏な感覚と決断
真知子さんは、寅と淡い恋をする。まあそれはそれで楽しめるのだが、そのことよりも、私には彼女の行動で
感動したことがある。
ラスト付近で小諸病院の院長先生であるすまけいさんが真知子さんを説得するシーンの彼女の表情である。
末期医療のことや、自分の息子との同居のことで悩む真知子さん。小諸病院を辞めて、しばらく自分を見つめ直したい、
先のことをじっくり考えたいと申し出た真知子さん。その時の彼女顔は、思いつめた悲しげな顔だった。
しかし、そんな真知子さんを院長は真剣な顔で一喝するのだ。
院長「自分を見つめたいか…、結構ですねえ。寅さんの言葉を借りるなら、結構毛だらけ猫灰だらけだ。その程度のことで
辞められたら、医者が何人いたって足りませんよ。こういう土地じゃね。
いいですか、この病院はあなたを必要としている、それが何よりも大事なことで、あなたが抱えている問題などは
たいしたことじゃない。子供と会いたければ呼び寄せればいい。悩み事があるのなら働きながら解決すればいい。
そうやって苦しみながらですね、この土地で医者を続けていくことが、自分の人生だってことに、あなたど、どうして
その確信が持てないん…ですか。
東京の郊外のお母さんの家で花でも眺めながら休息の日々を送る。そのうち縁談があって、瀟洒な病院の奥様に納まる。
そんな人生があなたにとって幸せなんですか。…ちっとも幸せなんかじゃない!」
院長を見つめる真知子さん。
看護婦がドアを開けて、患者の様態の急変を告げる。
席を立つ真知子さん。
この時彼女はすでにこの地で医師を続ける決意に溢れた目をしていた。この短い時間で変わった真知子さんの
表情、そして目の力がよかった。
人間は新しい行動に対して迷う時、前もって、やらない理由とやる理由が密かにその心に用意されている。
そして、実際は、やらない人はやらなかった後で、やらない理由のリストの中から適当にみつくろってそれを自分の
言い訳にする。
やる人も同じようにやる理由を実際はあとで適当に自分の心のリストから選んで、勝手に納得する。
本当は、理由が最初にあるのでなく、意外にも生理的な『行動』が先にあるのである。
結局、自分の人生の扉を開ける人は蹴飛ばしてぶち壊してでも開けるということである。
真知子さんは、おそらく全てのハンデや苦悩を抱えながら、人生の扉を蹴飛ばし、それでもだめなら体ごと体当たりで
ぶち当たって扉を壊して開けていったに違いない。だから、彼女は院長に説得されたから、医師を続けていったのではなく、
何ヶ月か東京に戻って迷い、考えたあげく、最後はもう一度自分自身で小諸病院に戻り、子供を呼び寄せ、
医師をあのあとも続けたとは思う。
しかし、院長のこの爆弾発言のおかげで、今後1年分くらいの彼女の迷いと紆余曲折を一気に
吹き飛ばしたのも事実だ。これによって心身ともに救われた患者は多いと思う。患者は待てません。
時間の短縮!えらいぞ院長!
もちろん、院長先生が真知子さんに惚れてるのは疑う余地がない(^^)
愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人
「かっこよすぎる背中見ている」 由紀ちゃんの感覚
それにしても、今回も寅はまたもや敵前逃亡をしてしまった。真知子さんが泣きながら寅の胸に顔を
埋めた時、寅の恋愛は今回も『得恋』になったのだ。そして得恋の瞬間が即『失恋』となるのが中期以降の
寅の恋愛なのである。羨ましいと言えなくも無いが、よくよく考えるとこんな悲しい恋は無い。出口が無いのだから。
寅の僅かなニュアンスを感じ取って察知した由紀ちゃんが寅に言う言葉。
「寅さん 好きなのね…、おばちゃまが」
この時の彼女の顔は憂いに満ちていた。そしてそのような哀しい大人の恋もあるのだと、瞳を沈ませてその物語を心に
刻ませていくのである。私は、静かなこのシーンにいつも心を打たれる。
美しい恋の短歌を作る彼女は人の悲しみや切なさが分かるセンスを持っている。
さくらやリリー、そしてとらやの人たちは別として、この長いシリーズの中で、寅の出口の無い恋が理解できた数少ない女性が
意外にもこの由紀ちゃんだったと思う。若くして彼女はすでに人の恋を感じる「歌人」なのだ。泉ちゃんや他のマドンナたち
じゃ分からない、由紀ちゃんにだけ分かる人の心の襞というものはある。由紀ちゃんの目はそういう目だった。三田寛子さん
会心の演技だと言い切ってよいと思う。
そして寅のそのような恋を見事に表した歌。
「旅立ってゆくのはいつも男にて カッコよすぎる背中見ている」
これが由紀ちゃんの気持ちであり、真知子さんの気持ちであり、さくらの気持ちであり、リリーの気持ちであり、
そしてこのシリーズを見ている私たちの気持ちでもあるのだ。
このシリーズ全体に見事に当てはまる珠玉の一首だといえる。俵万智さんの数々の歌から見事に抜き出した監督に感服。
そして、すべてが終わった後、博がこう呟くのである。
「雲白く 遊子悲しむ、か…」
この作品全体にゆったり流れているこのような深い哀しみに私は心惹かれているのかもしれない。
さあ、本編。
今回は一気に1回で完結まで走り抜けましょう!
■第40作「寅次郎サラダ記念日」全ロケ地解明
全国寅さんロケ地:作品別に整理
本編
松竹富士山
信州 佐久の風景 秋
JR『小海線』
佐久広瀬駅
【旧国鉄キハ58系】が2両編成で走っている。
八ヶ岳東麓の野辺山高原から千曲川の上流に沿って佐久盆地までを走る高原鉄道。
一般的に『高原列車』といえばこの小海線。海抜千メートル以上をずっと走り続けるのだ。
キハ58系はもともと急行列車だったが、1980年代からは、
1980年代以降はローカル線の普通列車用として多くが転用された。
寅の乗っているのももちろん小諸行きの各駅停車。
寅「さくら 元気か。
お前の肉親やおいちゃんおばちゃんたちに変わりは無いか?
オレは相変わらずの旅ガラスだ。
花見を追っかけて
南から北へ短い夏が終わればもう秋だ。
今度は紅葉を追って北から南へ逆戻り
こんな暮らしから早く足洗いたいといつも反省するんだが
知ってのとおりのヤクザな性分だ。
長続きする訳なんかねえ バカは死ななきゃ治らねえとは
オレのことさ。
佐久広瀬駅から佐久海ノ口駅の間の千曲川鉄橋を渡る汽車。
南牧村中学校 教育委員会 湊神社近く
南牧中学校付近。
湊神社近くの鉄橋を電車が通過する
この『小海線』は7回も千曲川を渡ることで有名。
千曲川に絡まるように線路が敷かれている。
そして寅を乗せた各駅停車の小海線は終着駅『小諸』へと走っていく。
小さな小瓶の日本酒を飲んでいる。
せめて お前の息子に、決して伯父さんみたいな
人間になるなと、朝晩言って聞かせてやれよ。
満男が正直で働き者で町内の人たちに慕われるような
立派な人間になれることを伯父さんはいつも祈ってるとな」
車掌「あ、すみません、切符拝見します。」
寅「はい、御苦労さん」
車掌他の乗客に聞かれて「大体ですね、10分ぐらいでいくと思いますが」
寅、車掌に酒を勧める。
寅「そうね、ま、ちょっと一杯、一杯やったらどうだ?」
車掌「!…いや、いやいや 困りますよ」
寅「いいからいいから え?」
車掌「いや、困りますよ」
寅「遠慮すんなよお前 ほら、つまみ、つまみ」
スルメを渡そうとする寅。
車掌「勤務中ですから、こまりますから。ハハ」
と、スルメにハサミを入れてしまう(^^;)
横の客「車掌さん切符」
車掌「いやいや、いいです、いいです」
寅「ハサミ入れてやんの おかしいな、おい、ハハハ」
タイトル
男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日 映倫112847
メインテーマ
信州 小諸城下
口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
目方で男が売れるなら こんな苦労も
こんな苦労もかけまいに かけまいに♪
懐古園の入り口前で
【信州小諸大浅間山火煙太鼓】がダイナミックに鳴り響く。
小諸 健速神社の祇園祭
健速神社の祇園祭のメイン。
珍しい六角形をした御輿(六角御輿)が、
担ぎ手の掛け声とともに神社階段を豪快に駆け下り、
市内を練り歩いて行く。
「雨乞い神事の水掛け」や「受け渡し神事」など、
五穀豊穣や無病息災を願う神事が夜まで続く。
「こもろ市民まつり・みこし」
同じ時期に行われるのが、多くの神輿が町を練り歩く「こもろ市民まつり.みこし」。
市の東西から約二十六連の”子供みこし”が、
夜は二十三連の”大人みこし”が市街地を中心に練り歩く。
『建速神社の祇園祭』も『こもろ市民まつり』も7月半ばの年中行事だ。
寅のバイが行われているのは初秋の設定だからさすがに
ちょっと無理があるかな…(^^;)
キャッスルホテル
ひしや釣具店
団扇 小諸青少年協会議所
健速神社の祇園祭
各地で開催される祇園祭のなかでも、豪快な御輿廻しが見られるのが
小諸市の健速神社だ。毎年七月第二日曜日の正午から行われるこの祭り、
映画でも担いでいた珍しい六角形をした御輿(六角御輿)が、担ぎ手の掛け声とともに
神社階段を豪快に駆け下り、「雨乞い神事の水掛け」や、旧ホテル小諸前での
「受け渡し神事」など、五穀豊穣や無病息災を願う神事が夜まで続く。
六角御輿
十七世紀後半の小諸の政治は、領民に大変な苛酷を強いるもので、
餓死者や、他国へ逃げ出すほどだったと伝えられている。
そうした中、新しく赴任した藩主は、人身安寧(あんねい)の為に遷宮したのが
この健速神社で、その際に古くから縁起の良い象徴でもある亀甲(きっこう)文様の神輿が
作られたのではないかと伝えられている。
健速神社は、旧北国街道小諸宿の本町沿い。
小諸市 健速神社近く
本町交差点横
浅間山が雄大にそびえる中、
祭りが最も賑わう小諸市本町交差点すぐ横で
ポンシュウと一緒にスポーツウエアや
スニーカーをバイする寅。
看板に書かれた嘘八百の文字
ソウルオリンピック公認
フローレンスジョイナー
カールルイス ご愛用
スポーツ シューズ大特価
一足九八〇円
よくここまででたらめ書くなほんと(^^;)
※口の動きから↓※
寅「これならぴったりだよ」
寅「どうだ?」
泥棒の穴の開いた靴下が変にリアル(^^;)
泥棒「うん、ぴったり」
笹野高史さん今回は泥棒役(TT)
ポンシュウが泥棒にジャンパーを着せる。
追加事項↓(2008年10月13日)
この時またもや出川哲朗さんが、チョイ役でいた。↓
私は、今の今までまで出川さんの出演は第37作、第38作、第39作の3作品だと思っていたが、
これで出川さんは37作から連続4作品で出られていたことになる。
今回このハッピ姿の出川さんを見つけられたのは、
私の敬愛する『寅福さん』。
こういう発見物に関しては、寅福さんは本当に凄い。
泥棒、着るだけ着て、駆け足の真似して逃げる!!
出川さんたちは必死で追いかけるがこの泥棒足が速い速い。
走りながら途中のお巡りさんと挨拶する泥棒。
追加事項 2008年11月4日夜
私がいつもメールのやり取りをしていただいている
Kさんという方が先ほどメールをくださって、
第41作「心の旅路」の最初にも出川哲朗さんが
出ているのを発見されました。
第41作 オープニング
雨降る宿で寅やポンシュウが
くすぶっているところにさくらから手紙が来て、
一緒に1万円入っているシーンで、
ポンシュウと、もう2人部屋にいるんですが、
一人は渥美さんの付き人の篠原さん、そしてもう一人が
出川さんということです!
さきほどDVDで見てみたんですが、
寝転がっているところなんか似ている!
出川さんである確率がこれはかなり高い…。
というか、間違いない!
そうなると、なんとなんと、
37,38,39,40,41と
彼は5作品連続出演!!ということになる!
第41作「心の旅路」より 出川哲朗さんのアップ
柴又 題経寺山門
源ちゃん、幼い子からマンガ本を取り上げる。
子供「バカ」と、源ちゃんを睨む。
源ちゃん、こづいて、子供の帽子を落とす。
この二人やりあってますね(^^;)
さくら、自転車で山門前までやって来て、
さくら「源ちゃん」
源ちゃん「ちは」
さくら「御前様 元気?」
源ちゃん「ええ、今日は幼稚園の運動会に行ってますわ」
さくら「ああ、運動会の音楽か」
源ちゃん、腹を殴られ、子供の逆襲にあう。(^^;)
源ちゃん、子供の足を踏み報復をする。
このミニコント面白い。
とらやへ自転車で向かうさくら。
とらや 店
ポスター 庚申11月1日(火)
今回から新しい店員さん「三平ちゃん」登場です。
おばちゃん「はい、250円のおつり〜」
三平ちゃん「はい、すみません」
三平ちゃん「はい どうも」
客「ごちそうさま」
三平ちゃん「ありがとうございました」
おばちゃん「ありがとうございました」
三平ちゃん「こんにちは」
さくら「だいぶ板についてきたわね」
おばちゃん「いい子が来たねって皆に言われるんだよ」
さくら「長続きしてちょうだいね」
三平ちゃん、照れて頷いている。
博が昼ごはんをとっている。
さくら「あら、お昼?」
さくら「おいちゃん」
おいちゃん「ん?」
さくら「三平ちゃんの健康保険、やっぱり組合に
切り替えることにしたわ。
事業者負担が増えるけどそれが決まりだから」
おいちゃん「ほ〜。俺には良くわかんないから、頼むよ」
さくら「幼稚園の運動会だって今日。
満男が通ってたのがついこの間のようだけどねえ」
博「近頃どう考えてんだ あいつ」
さくら「受験のこと?」
博「うん」
さくら「どこか、地方の小さな大学に
行きたいなんて言ってたけど」
博「意気地が無いんだよ、せっかく東京にいながら
わざわざ金かけてまで遠くへ行くことないじゃないか」
さくら「いいじゃないの静かな環境で
勉強したいって言うんだから」
おばちゃん「満男の事かい?」
さくら「うん」
おばちゃん「大変だねえあんたたちも」
満男、店先でうろうろ。ちょっと入りにくい…。寅だね(^^;)
さくら「何してんの満男」
おばちゃん「寅ちゃんみたいな真似して お入りよ」
博「バカ」
冷蔵庫はサントリービールがスポンサー
郵便局員「郵便でーす はい」
満男「ごくろうさま〜
アハ、伯父さんからだ 汚え字」
草だんご 詰合わせ各種ございます・
さくら「なんて書いてあるの?」
満男「『拝啓、天高く馬肥ゆる秋、 気候はいい
食い物はうまい 俺は元気にやっている。
みんなの幸せ祈りつつ 車寅次郎』」
満男「いいなあ、伯父さんは
大学落ちたらおじさんの弟子になるか」
おばちゃん「バカ!大学出ないからあんな
人間になっちゃったんじゃないか」
おばちゃん、寅の性格は「大学」とは
なァ〜んの関係もありません(^^;)
でも、寅の生き様を自分の逃げの口実に
利用しちゃあダメだよ満男。
さくら、満男の頭をポカ!
満男「はあ〜」
博「仕事仕事」
三平ちゃん「いらっしゃい どうぞ いかがですか?
お団子ですね、はい、
200円二つ ありがとうございました」
信州 小諸駅前 バス停近く
こもろ駅 KOMORO STARION
民謡が流れている。
『大手鹿島商店街』入り口の八百屋
寅「はー」
紅玉 300円
寅「じゃ、これでいいや」
八百屋「はい、どうぞ〜」
寅「じゃ、ありがとうよ」
八百屋「はいどうぞ」
新鮮 信州りんご荷作り発送承ります
実の秋 信州果物をどうぞ
おみやげ 骨董品
(英文で)DCパートナーズダイアモンドクレジット
ホテル小諸
ベンチに『フジカラー』
小諸周辺 宿泊案内
大手鹿島商店街
体が辛そうにして、バスを待っているおばあちゃん。
寅「おばあちゃんよ、次のバスは何時だい?」
おあちゃん「まだ一時間はあるずら」
寅「あ、そう。何だい じゃ出たばっかりだな。」
おあちゃん「お前さま どけへ行くだ?」
寅「うん?どこへ行くかねえ…近くに
ひなびた温泉でもないかね え?
川ぷっちに露天風呂があって、
頭に手ぬぐいでも乗っけて 月眺めてると
村の娘が『ちょいとごめんなさい、今晩お泊り?』
なんて話すような所がさ、ヘヘヘ…」
このパターンは、いろいろな作品で出てくるが、近いところでは第39作「寅次郎物語」
天王寺駅派出所での寅のアリアである。
おばあちゃん「ええなあ、お金持ちは」
寅「え…お金持ち?いやあ、金なんかない、
金はないよ、暇はあるけど。うん
おばあちゃんはどこ行くんだい?」
おばあちゃん「家へ帰るだ」
伊豆大島フリーパック Oshima 黒潮の海へ いらっしゃい!!
東京 東京ディズニーランド フリープラン
お知らせ バス促進デー
寅「孫に土産買ってか?」
おばあちゃん「そんなもんいねわ」
寅「ほおお〜じゃあ働きもんの息子夫婦が待ってるんだ」
おばあちゃん「あいつら、へ、東京へ出っちまって、オレ一人留守番だ」
寅「おばあちゃん一人かァ。
そらあ寂しいなあ へえ〜(パシッ)…????」
おばあちゃん「お前さま面白え人だな」
おばあちゃん、寅の腕を掴む。
寅「そうかい、面白えかい」 とビビッている。
おばあちゃん「今晩 オレんとこ泊まらねえか ごっそすっから」
寅「いや、…オレ暇なように見えるだろう。
だけどこれで結構忙しいんだ ありがとう」
寅、馴れ馴れしいおばあちゃんをちょっと警戒している(^^;)
寅とおばあちゃん、一緒にバスに乗っている。
寅の肩にもたれて寝ているおばあちゃん。
小諸市郊外の山間の農家
真田町 傍陽(そえひ)
この家のロケは、実は小諸から少し離れた真田町傍陽(そえひ)
ゴ〜ン…
カアカアカア…
薪の煙
寅、古い薄暗い家の中で不安そうにキョロキョロ…。
テレビがついている。
おばあちゃん「さあ、風呂へえるべし」
寅「ああ ありがとうよ」
おばあちゃん「五右衛門風呂だで中に下駄入れてあっからな」
寅「あ、わかってるわかってる 下駄はいて入るんだろ」
寅「べたっと尻ついたりするとさとアチチって大やけどして尻っぺた」
おばあちゃん「えへへへへ、おかしいなこの人
アハハ今夜、うめえキノコ汁こさえてやっからな」
寅「ああ…」
夜、囲炉裏のそばで
寅「♪草津よいとこぉ 一度はおいで」
おばあちゃん「あ〜どっこいしょ」
寅「ほりゃ」
寅「♪お湯の中にもほりゃ花が咲くよオ〜チョイナチョイナ、ヘヘヘ」
おばあちゃん「楽しいなあ」
寅「楽しいか、おばあちゃん」
おばあちゃん「うん」
寅「そうか、そりゃよかったよかったよかった」
おばあちゃん「飲むべし」
寅「おお、あれだね、おばあちゃん、あの辛口とか甘口ってあるけどさ
この酒はちょっと酸っぱいのね これね うん フフフ…」
おばあちゃん「じいちゃんの法事の時に飲んだ酒だから
ちいっと酢になってるかもしんねえな、こらえてくれや」
寅、複雑な顔して、
寅「いやいやいやいや。おいしく頂いてますよ」
寅「さあさ、ほら、ばあちゃんも景気よく
パーっと飲もう飲もう飲もう、ね。よし、
じゃ、今度佐渡桶さ歌っちゃおう佐渡桶さ。
♪はあ〜佐渡へ〜佐渡へと草木もなびくよ〜、エエエ…?」
おばあちゃんが向こうの部屋に向かって手招きで、こいこい。
寅も、ついつい手招きを真似ながら、????
ふくろう ホー…ホー…ホー…
おばあちゃん「おいで、こっちおいで」 な…(((((^^;)
寅「おばあちゃん、誰かいるのかい?」
おばあちゃん「おじいちゃんが、そけへ座ってるだ」
おばあちゃん「おいで」
寅「えー…」
フィーーーン…ポォーーン…
カメラが珍しくズームになって、寅の表情をとらえていく。
高羽さんにしては珍しいなこの方法(^^;)
ズーム
寅「よお、おい…
しっかりしろよ、おばあちゃん
おじいちゃん、と、とっくの昔に死んじまったって
言ったじゃないか そうだろう」
おばあちゃん「時々ああして出てくるだ」
寅「ううん〜そんな…」 と、タジタジ(^^;)
おばあちゃん「おじいちゃん この人寅さんだ
あいさつするだよ」
寅「いい、ううん、そういう事はいい」 よ、小声でぶつぶつ…(^^;)
おばあちゃん「人見知りする方でなあおじいちゃんは」
寅「おばあちゃん、どこへ行くんだ?どこへ?」
おばあちゃん「ハバカリ」
寅「え?」
おばあちゃん、「おじいちゃん、遠慮しねえでこっち来るがええだよ」
マジかよ(^^;)
尺八の音
寅「よお、おばあちゃん。その、土間の隅で
やっちゃったらいいじゃねえかよ」
ホー…ホー…
おばあちゃん外へ出て行く。
寅、緊張で、正座して、震えながら
寅「エエ、ウウン!
はあ〜〜、佐渡へえ〜とくらあ!さどへ〜とくらああ〜!
佐渡へ〜とぉ〜…」
仏おじいちゃんの声「とぉ、くぅさぁきぃもぉ…なぁびぃくぅぅ、よぉ、と〜…」
仏も歌うんだねえ〜(^^;)
寅「うわあああ!!」ビビッてと水屋に背中を引っ付ける。
水屋の上から紙がバサバサッと落ちてくる。
達磨の人形も落ちてくる。
寅「おう!!…はあはあ…」
翌朝
真知子先生が車でやって来る。
トイレから出て、外で寒がっている寅。
真知子「お早うございます。」
寅「お早うございます」
真知子「私、小諸病院の医者ですけど」
寅「あ、お医者さんですか」
真知子「はい」
寅「あ、えーっとおばあちゃん、おばあちゃん」
寅「あ、どうぞどうぞ」
真知子「あ、お早う、おばあちゃん」
真知子「迎えにきたわよ さ、病院に一緒に行こう。」
おばあちゃん、行きたがらない。
真知子「月曜日からずーっと待ってたのよぉ、
おばちゃん自分で来るって言うから」
おばあちゃん「先生…。オラ病院で死ぬのは嫌だ
この家で死ぬんでやす。」
真知子「こないだも話したでしょう?病院で検査して
悪いとこちゃんと治して それでまた良くなったら
ここへ帰ってこれるんだから」
おばあちゃん「先生」
真知子「うん?」
おばあさん「お願えだからここへいさしてくれ」
と、手で拝む。
真知子「だめ 今日は病院に行くの」
真知子「支度して ね ねえ」
寅「ばあちゃんよ、」
真知子「あ」
寅「遠いところからわざわざ来てくれたんじゃねえか、
な、ちゃんと言うこと聞かなくちゃダメだよ
ばあちゃん、オレも一緒について行ってやるから」
おばあちゃん「寅さんも来てくれるだか」
寅「ああ、おばあちゃん、一緒に行くよ、な」
おばあちゃん「しかたね そんなら行くか」
寅「ん それがいい それがいい は…」
真知子「おかげで助かりました」
寅「はあ」
真知子「ハ、」
真知子「ご親戚?」
寅「いいえ、ほんの通りすがりの、旅のものです。」
真知子「ああ、」 と頷く。
寅「おばあちゃんの、わびしい独り住まい、見るに見かねて
一晩だけお付き合いさしていただきました。」
真知子「そお、ご親切な方」
寅「いいえ」
寅「おばあちゃんはだいぶ悪いんですか?」
真知子「あんなに嫌がってんのにかわいそうなんだけど」
寅「はあ」
真知子「これ以上独りで置いとくわけにはいけないの。
もう十年以上独り暮らしなんですよ。気の毒に。
おばあちゃん 大丈夫?」
日めくりカレンダー 5日【1988年10月5日(水)平日?】
真知子「こっち火消しとくからね」
真知子さん、おばあちゃんの荷物を持って外に出て行く。
真知子さんちょっと足を滑らせてしまう。
寅「大丈夫ですか?」
真知子「あ、ええ、フフフ」
真知子「あの、じゃあ、あたし、車回してきますから」
寅「あ、そうですか、はい」 と、ニコニコ顔の寅。
おばあちゃん、寅のカバン持って出て来る。
寅「あ〜おばあちゃん、
悪い悪い病人にこんなもんもたせちゃって
悪かったね。さあさあさあ、行こう 大丈夫かい?
さあ、よいしょ、お」
車 ナンバー 64-95
車が近くまでやって来る。
寅「さあ、おばあちゃん、乗ろう。な、はいよ」
真知子「足、気をつけてねぇ。 閉めるわよ」
寅「はい、おばあちゃん」
後部座席に乗ったおばあちゃん。
おばあちゃん「ちょっと待ってくれんかな…」
寅「先生、」
真知子「うん?」
寅「ちょっと待ってくれって」
真知子さん、小さく頷く。
静かな音楽がゆっくりと流れる。
車のガラス窓を開けるおばあちゃん。
おばあちゃんは、哀しげな目で、自分の住処を眺める…
秋の透き通った陽を受けて、枯葉が、ゆっくりと舞っては落ちていく。
朽ち葉色の世界が静かに広がっている。
おばあちゃん「これがへえ… 見納めだ」
透き通ったおばあちゃんの目が、急に悲しげになる。
寅「そんなことは無いよおばあちゃん、 な」
寅「きっと良くなってまた帰ってこれるって、
先生もそうおっしゃってくれたじゃないか」
悲しい目をしたまま、住処を眺めて両手を合わせるおばあちゃん。
目をつぶって淋しさに耐えながら一心に拝む。
そして涙がこぼれていく。
真知子さんもどうすることもできない。
おばあちゃん「ありがとう先生、走ってええよ」
と、下を向いて泣いている。
真知子さんも、涙が出てしまってハンカチで鼻を押さえる。
下を向く寅。
そしてゆっくり車は家を後に走り去って行く。
主がいなくなった住処が秋の空気に輝いている。
小諸病院
病院アナウンス『田中さん 田中チヨさん…』
真知子「お早うございます」
院長「おはよう あ、あのおばあちゃん
車乗せて連れて来たんだってね ご苦労さん」
真知子「え、少し強引でしたけど」
院長「あー、ま、しかたねえさ」
真知子「でもねえ、先生。
私どうしても引っかかるんですけど
人生の最後をどう迎えるかを選ぶのは
その人の権利じゃないでしょうか?」
院長「じゃあ、野垂れ死にしろという事になるぜ
まあ、その議論は後にして、少し休みなさい、顔色悪いよ」
真知子「……」
院長、廊下で患者にあって
院長「うわ〜大丈夫?
フハハハ!しばらく酒ダメ!ね?アハハ…」
おばあちゃんの病室
窓の外は風景というよりはあまりにも描いた『絵』のまんま(^^;)
ベットに、紙で
『内科 担当医 原田 中込キクエ 殿』と記されている。
真知子「ご苦労様 どうですか、おばあちゃん」
寅「ひどく疲れたみたいですけど」
真知子「そう」
真知子「急に環境が変わったからね…オシッコ行った?」
寅「はい、私は行きました。近いものですから」 出たよこのギャグ(^^;)
真知子「おばあちゃん」 笑ってしまう。
寅「あ、一時間ぐらい前に行きました」
真知子「そう」
寅「はい」
真知子「お便所に慣れるまでに苦労するのよお年よりは」
寅「はあ〜」
おばあちゃん「先生」
真知子「はい?」
おばあちゃん「寅さんご飯食べてねえだ」
真知子「あら、朝から何にも?じゃあたしと一緒だわ。
お腹すいたでしょう、これから何か
御用時でも?」
寅「いえ、別に」
真知子「じゃ、一緒に食事しません?
お世話になったお礼にごちそうするわ」
寅「はい」
真知子「じゃ、後で医局にいらして」
寅「イキョク?」
おばあちゃん「寅さん」
寅「うん?」
おばあちゃん「あの先生もな」
寅「うん」
おばあちゃん「旦那さんと死に別れて寂しく暮らしてるだ。
あんた慰めてあげてくれや、
おらにしてくれたようにな」
寅、それを聞いて目が本気度120パーセント。
ターボエンジンフル回転
本気になりました(^^;)
寅「それじゃ…そうするわ オレ腹もへってるしな」
おばあちゃん「おらんことはええから早く行くべし」
寅「うん」
寅「ありがとう じゃあな」
真知子のテーマ音楽が大きく高まって
病院の外の歩道を歩く寅と真知子先生
真知子「患者の病気を治して寿命を延ばすのは
もちろん医者の仕事なんだけど
同時にどう安らかに死を迎えるかという
患者の心の領域に立ち入ることも
医学の内だと思うの。だってーそうでしょう?
いずれ死ぬと決まった患者に
口や鼻から管を入れて口もきけない状態にしておくよりも、
その人が長年住み慣れた家で家族に囲まれて
安らかに息を引き取るほうが幸せに決まってるもの。
あなたそう思いません?」
寅「思います。私も注射だいっ嫌いですから。
注射打たれるくらいだったらその場で
死んだほうがいいと思います。
むしろ即死を望みますね」
出たよ出たよ、見当違いのバカ話(^^;)
そういえば第2作「続男はつらいよ」で胃痙攣で担ぎ込まれた寅が、
注射を嫌がり、藤村医師が殴って、注射を無理やり打ったってことがあったね。
第29作「あじさいの恋」では鎮静剤を打たれていた。
真知子「アハ、いやねえ、アハハ…」
寅「即死、ヒヒ」 しつこい(^^;)
真知子「注射は別よ アハハ面白い方」
真知子「よかったら家へいらっしゃいません?
すぐ近所なの」
寅「はい」
真知子「ね?ウフフ」
商店街を歩く真知子
真知子「どうも」
店員「あ、どうも」
真知子「こんにちは〜」
八百屋で、ザクロを手にして
真知子、「おいしそうね、フフフ」
姪の由紀ちゃんが小諸駅から手を振りながら走ってくる。
あの駅前の城のハリボテはナンなんでしょうか?観光キャンペーンかな。
由紀「おばちゃまァ〜!!」
真知子「あら、来たの」 と、手を上げる。
由紀「ご飯これから?」
真知子「う〜ん」
由紀「あー良かった〜。駅弁食べようと思ったらねえ
売りに来ないのよ。おなかペコペコ」
由紀ちゃん、寅を見て??
真知子「あたしの姪なの」
寅「あ〜」
真知子「東京の大学に行ってるんですけどね、
こうやってしょっちゅう来るんです」
由紀「こんにちは」
由紀「始めまして由紀と言います」
寅「私車寅次郎と申します。
おばちゃまにはいろいろとお世話になりまして」
まだ、なんいもお世話になってないなってないヽ(´〜`;)
由紀「あ、いえいえ どうも」
真知子さんの下宿先
立派な旧家。
真知子「あ、この御宅に部屋を借りてるの」
寅「ほ〜お、こりゃ、立派な家だ」
真知子「どうぞ」
真知子「ただいま〜」
由紀「こんにちは、また来ました」
真知子「さあ、どうぞどうぞ、ちょっと散らかってますけど」
由紀ちゃんお鍋にお湯沸かしといて」
由紀「は〜い。大きいお鍋どこ?」
真知子「流しの下見てごらん」
寅、窓の向こうの景色を見る。
見事な浅間山
寅「ほーお」
寅「いい眺めだねえ」
真知子「すばらしいでしょう?」
真知子「そこにぼんやり座ってるとね
あっと言う間に時間が過ぎちゃうのよ」
真知子「今紅葉でしょう?
それが茶色になると雪が降り出すの」
寅「なるほど」
寅「冬が来るんですか」
真知子「そう」
由紀「雪景色も素敵ですよ、おじさま、真っ白になるの」
寅「なるほど…、冬の次は春ですか…」 粋だねえ、言うことが(^^)
真知子「春がすばらしいの白い雪が
だんだん解けてきて黒い土が
あっちこっちから顔を出すの。
柳の枯れ枝がぼ〜っと色づくころになると
フキノトウが芽を出すの。
そうしたら、もう小諸の町は一気に春よ」
寅「なるほど」
由紀「小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ。ね」
寅「…?あ、なんですかそれ」
真知子「あ、藤村の詩よ」
初出は明治38年「落梅集」の中の詩『小諸なる古城のほとり』である。
真知子「そうだわ、遊子悲しむの遊子って
寅さんみたいな人の事を言うのねきっと」
寅「とんでもねえ、オレみたいな意気地なしが
勇士だなんて、へ、でも爆弾三勇士だとか
真田十勇士ってのはガキのころずいぶん憧れました。
でもどっちかと言うと、猿飛佐助みたいな
ああいう忍術使いが好きだったな」 また出たよ出たよ(^^;)
由紀ちゃんと真知子さん、
笑いをがまんしているが耐え切れなくなり、
由紀「タハハハ!アハハ!アハハ!
面白いおじさま あ、ごめんなさい やだもう」
寅、笑いながらも、きょとん??
爆弾三勇士
上海事変中の1932年(昭和7年)2月、
19路軍が上海郊外に築いた陣地の鉄条網に対して、
突撃路を築くため、点火した破壊筒をもって敵陣に突入爆破し、
自らも爆死した独立工兵第18大隊(久留米)の、
江下武二、北川丞、作江伊之助各一等兵のことを指す。
肉弾三勇士(とも言う。
戦死後それぞれ二階級特進として、陸軍伍長となる。
壮烈無比の勇士としてその武功を称えられ、
映画や歌にもなり、陸軍はじまって以来ともいわれる弔慰金が集まった。
ただし、この話には事故説などもある。
真田十勇士
大阪の陣の頃、徳川家康を倒すため武将真田幸村に仕えた10人の勇士のこと。
もちろん大正期に書かれた講談本『立川文庫』に登場する、半分以上架空の忍者軍団。
一般的には↓
猿飛佐助(さるとび さすけ)
霧隠才蔵(きりがくれ さいぞう)
三好清海入道(みよし せいかい にゅうどう)
三好伊三入道(みよし いさ にゅうどう)
穴山小介(あなやま こすけ)
由利鎌之助(ゆり かまのすけ)
筧十蔵(かけい じゅうぞう)
海野六郎(うんの ろくろう)
根津甚八(ねづ じんぱち)
望月六郎(もちづき ろくろう)
のことを言う。最も人気のあったのは猿飛佐助。寅も大好きだったようだ。
さくらの家
階段下からさくらが満男を呼ぶ。
さくら「満男」
満男「なに?」
さくら「おじさんから電話でねあんたと話がしたいって」
満男「おじさんが?何の用だ?」
第43作あたりの2階とぜんぜん間取りが違うぞ、
後には階段に平行にドアがあった。
さくら「知らないわよ 長距離らしいから早くして」
電話に出る満男。
小諸の真知子さんの家
寅「あ、満男君か。その後受験勉強は
順調に進んでいるかな?」
満男「う〜ん、まあ」
寅「おじさん、いろいろ考えたんだが
早稲田大学を受けなさい」
何も知らないで言ったらだめだ。そうはいう発言は、
本当は受験生には余計なお世話だぞ、寅。(−−;)
満男「ええ??」
寅「うん、その件で今先輩と変わるかから、」
満男「ええ?」
由紀「もしもし、満男君?」
満男「あ、はい」
由紀「私、早稲田大学の原田由紀って言います。どうも」
満男「…どうも」
由紀「もう大学へ行ってみた?」 何でそう来るんだ?(^^;)
満男「…いいえ」 当然だよな(^^;)
由紀「いつでも案内しますから連絡してね じゃあね」
受話器を寅に返す。
寅「え?はいはい」
寅「はい、もしもし、うん、じゃあな、
え?どこにいるかって?
小諸なる古城のほとりよ。
うん、じゃ、勉強したまえ」
由紀「ウフフフ」
寅「しかし大したもんだな女の子で
早稲田大学入るなんて
よっぽど頭いいんだろ」
由紀「ちっとも珍しくないのよあたしのクラスなんてね
半分以上が女よ」
寅「ほお〜」
寅「で、何の勉強してんの?」
由紀「国文学」
ちなみに、早稲田では「国文学」とは言わず「日本文学」と言います(^^;)
真知子「短歌ってあるでしょう?あの子
今それを勉強してるの」
寅「タンカ?タンカって言うと?」 啖呵ではないぞ(^^;)
真知子「百人一首の歌」
寅「うん」
真知子「あのう…三十一文字(みそひともじ)
“青丹よしぃ〜…”なんてあるんでしょう?」
『あおによし(青丹よし)は、都に対する枕詞。
都の塔の連子窓の色が「青(あお)」で、
柱や扉の色に使われている色が「丹(に)」。
「よし」は美しいという意味。
この枕詞は万葉集によく登場する。
あおによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり。小野老 おののおゆ
あをによし 奈良の都に たなびける 天の白雲(しらくも) 見れど飽かぬかも 遣新羅使
故郷の明日香はあれど あおによし平城の明日香を見らくしよしも 大伴坂上郎女
寅「あ、あれか、あ、あれだったら知ってますよ
三十一文字(みそひともじ)ね。
うん、あの…“古池や 蛙飛び込む水の音”ポチャン。
フフ、違いますか?」
由紀「あのね、それは五七五で俳句だから、
あと七七とと続かなきゃいけないの」
寅「あ、七七とね、あ!続くの知ってます、
知ってます、知ってます」
寅「“それにつけても 金の欲しさよ”」
これは、江戸期に太田南畝(蜀山人)が詠んだ歌が最初。
『世の中は いつも月夜と米の飯 それにつけても金の欲しさよ』
『それにつけてもおやつはカール』はこれをもじったもの(^^;)
由紀「プ!フフフ!おじ様どこまで本気なの?」
寅「ず〜っと本気ですよォ」
由紀「フフフ!」
寅「七五調か こりゃゴロがいいなあ
結構毛だらけ 猫灰だらけお尻の周りはクソだらけ ってね
あ、こりゃちょっと汚えな」
ふたりとも、吹き出している。
寅「田へしたもんだよ蛙のションベン
見上げたもんだよ 屋根屋のフンドシ
これもちょっと汚えか、ね」
真知子、由紀「アハハハ」 と腹を抱えている。
寅「ヤケのヤンパチ 日焼けのなすび
色が黒くて 食いつきたいが
あたしゃ入れ歯で歯がたたないよ。
こりゃ全部七七になんのね、フフフ」
真知子&由紀 「アハハハ」大受け(^^)
寅「さて、今宵はここでお開きにしたいと思います。」
相変わらず、引き際が絶妙。早いね〜。惜しまれるうちが華、なのを知ってるんだね。
真知子「あら?もういらっしゃるの?
まだいいじゃありませんか」
寅「女の独り暮らし、それでなくても噂の種ですから」
真知子「まあ、そんな気を使っていただいて…」
寅「それじゃ、お嬢ちゃん」
由紀「またいつか会いましょうね」
寅「そうだね あ、どうぞそのまま」
それでも、真知子は玄関まで見送る。
玄関先
しっとりと真知子のテーマが流れる。
真知子「不思議なご縁であなたのような方と会えて、嬉しかったわ」
寅「あの、おばあちゃんの事どうぞよろしくお願いします。
また機会がありましたら、見舞いにあがりますから」
真知子「お願いします」
寅「はい。 それじゃ」
門のほうへ歩いていく寅。
真知子「あ、寅さん」 もうすでに『寅さん』と呼んでいる(^^)
寅「はい」
真知子「私、うっかりしてたけど、今夜泊まるところあるの?」
寅「一年中旅暮らしですから、
ねぐら探すのには慣れております」
夜なのに無灯火のバイクが通リ過ぎる。(^^;)
真知子「そう」
寅「はあ〜いい月でございますね」
と、空を見上げる寅。
真知子「は」
真知子さんも見上げる。
寅「それじゃ、ごめんなすって」
真知子「あ」
玄関の戸を閉める。
ニ階に上がりながら、
真知子「雲白く遊子悲しむ…」 と、呟いている。
家主の娘「先生、お風呂どうぞって」
真知子「あ、ありがとう」
真知子「由紀ちゃんあたしに用事あったの?
また悩み事のそうだん?」
真知子「缶チューハイ二本飲んで
嫁になれって言った人… どうしたの?」
由紀ちゃん、ふくれて、
由紀「おばちゃまの事で来たのよォ」
真知子「私のこと?」
由紀「お見合いの写真持って来たの
おばあちゃまがどうしても持って来いって」
真知子「電話で断ったのに」
由紀「写真も見ないで断るなんて失礼でしょ」
写真見て、顔だけで断る方がある意味もっと失礼だよ由紀ちゃんゞ( ̄∇ ̄;)
由紀「いいお話よ、奥さんとは死に別れだし、
子供はいないし、病院の経営者だから、おばちゃま、
東京へ帰るいい機会でしょう」
見合いの写真を二人してみる。
由紀「わりと二枚目じゃない」
真知子「私ねェ、あんまり細面の人
あんまり好きじゃないの アゴなんて張ってて
ガッシリしてたくましい顔がいいわ」
由紀「へえ〜、じゃあさっきの寅さんみたいな顔?」
真知子「そうか!なんだか懐かしい人に
会ったような気がしてたんだけど
あの人死んだ和男さんに似てるわこの辺が」
由紀「結局おばちゃまはどうしても
死んだ旦那さんが忘れられないって訳?」
真知子「だってたった一人の男だもん」
と、お風呂に行く。
ゴ〜ン…
由紀ちゃん、食事の後片付けをしながら、
由紀「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺、
それにつけても金の欲しさよ。フフ」
ゴ〜ン…
亡くなった夫の「和男」さんの山での
写真を見ている由紀ちゃん。
実は、この写真の人は、当時の山田監督にはなくてはならない
縁の下の力持ち、あの助監督の五十嵐敬司さん。
彼は大の山好き。バックは残雪の残る北岳。
早春の塩見岳から北岳へ縦走した時の写真らしい。
五十嵐さんは普段からエラの張り具合が渥美さんに似てるって言われていたそうだ。
小諸病院 廊下
看護婦A「あ、白川さん、もうちょっと待って。」
子供「おはようございます」
患者A「おはようございます」
真知子「大事にしてね」
患者A「ありがとうございます」
看護婦「山本さん、どうぞ」
おばあちゃんの部屋
真知子「おばあちゃん 具合どお?」
真知子「検査嫌だって看護婦さんに言ったんだって?
でもね、検査しないと治療方法が分からないのよ
私がついてて、痛くないようにしてあげるから。ね」
寅からの花束を見て、
真知子「あら?寅さん来たの?」
おばあちゃん「東京へ帰りやした。 先生によろしくだと」
真知子「なあんだ」 と、少し淋しく思う。
真知子「顔だしてくれりゃあいいのに…。
さ、拝見しましょう」
汽車で、東京に向かう寅。
真知子のテーマが流れる。
窓を眺めている。
真知子さんの部屋
夜、自分の部屋の電灯をつける真知子さん。
冷蔵庫の上:コーヒーミル、コーヒーの缶、お茶の缶、ポット。
冷蔵庫の中身
上段:パックされたかに味とえび味の食品2個
中段:空
下段:ヤクルト5本パック1個、おかずの残りが2個ハム1個
フタ:卵4個、缶飲料1缶、雪印バター1個
カレンダー
モネ風(印象派風)の絵 ベネチアの海の絵
台所の横に
由紀の置手紙。
由紀「おばさま
ニ時の汽車で帰ります。
見合いの話は断ってあげますね。
その代わり引き出しから五千円拝借。
獲れたての短歌を一首
【ため息をどうするわけでもないけれど 少し厚めにハム切ってみる】」
手紙を読みながら少し微笑む真知子。
真知子「はあ〜」 と厚めにハムを切る真知子先生。
『獲れたての短歌』って映画の中では書いていたが、
『採れたての短歌』のほうが歌らしくていいと思うのだがどうでしょう。
もちろんこの由紀ちゃんはサラダ記念日の著者『俵万智さん』のアレンジだ。
その昔、あの『サラダ記念日』が出てまもなく、大きな本屋にほんの少し、
ちょろっと並んだ時、たまたま私はちらっ、パラパラっと立ち読みをした。
吾をさらいエンジンかけた八月の朝をあなたは覚えているか
寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら
線を引くページ破れるほど強く「信じることなく愛する」という
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
今日風呂が休みだったというようなことを話していたい毎日
過ぎ去ってゆく者として抱かれおり弥生三月さよならの月
おそらくは来ることのない明日なら語りつくして眠らんとする
忘れたきことのみ多き六月にガラス細工の文鎮を置く
朝刊のようにあなたは現れてはじまりという言葉かがやく
愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人
心の中にいきなり冷たい清水を流し込まれたような強い衝撃を受け、「こりゃすげー」と独り言を言い、
目が血走り、他の歌も、読んでいった。
文句なしにいい。こんな感覚が歌で詠めるのか!それによくある口語体なのだが、定型を重視もしている。
軽いようで軽くない。歌謡曲の詞などを超えた品格がある。なによりも瑞々しさがページから滴り落ちてきた。
信じられない思いだった。迷いなく本を持って「見つけた!」って気持ちで足早にレジに向かった覚えがある。
そのあと、その本を、行く先々で持ち歩き、会う人会う人に恥ずかしげも無く宣伝しまくった。
私とピッタシ同世代のこの人の感覚に新しい時代の幕開けをひしひしと感じ、興奮していた。
なんのことはない、『サラダ記念日』は、そのあとあっという間に260万部の大ベストセラーになっていき、
私なんかがわざわざ宣伝する必要もなくなったのであった。
そのあとの彼女が次々に出した本をそのつど読んだが、残念ながらどの歌も『サラダ記念日』ほどには
心に響いてこなかった。彼女と同じような類の他の人たちのそのような新しい歌集もいろいろ読んでみたが、
『サラダ記念日』とは一つの例外も無く似て非なるものだった。
最初の『サラダ記念日』だけちょっと次元が違う。特別に感覚が新鮮で鋭敏なのだ。ズバッと懐に踏み込まれるのは
この本だけ。最初で最後の凄まじい切れ味。こんなことってあるんだ…、と驚愕したことを今でも覚えている。
そしてこれらの歌の中のさらに何首かは何百年の歴史に耐えていくだろうと本気で思うのだ。
柴又、帝釈天参道裏 朝日印刷工場
中村君が地上げ屋に対抗して看板を取り付けさせられている。
社長「あ〜いいよいいよ、
いや〜もっと高い方がいいなあ。おい、気をつけろよ」
中村君「おお、」
社長「左のほう 左のほう」
中村君「こっち?」
社長「お前から見て右だよ」
中村君「ああ、」 しぶしぶ。
【この土地は絶対に売りません 朝日印刷社長】
社長「よし、これで地上げ屋は来ねえぞ」
中村君「なんかみっともねえなあ」
備後屋「そうだよ、やめた方がいいよ」
社長「うるさいな!この!」
備後屋「え??」
バブル真っ盛り、日本が本当の意味で危うい時代だったんだね。
この浮ついた時代のツケを、後に国民は十年間以上払わされることになる。
この長いシリーズで、唯一、朝日印刷が
別方向から映った貴重な映像。
2階はおそらくタコ社長の家族の部屋。
工場の中
ゆかり「博さん」
博「おう」
ゆかり「博さん、すみません、できました」
博「あ〜出来たか」
中村君「あ〜腹へった」
社長「みんな、聞いてくれ!とにかくね、
この工場はオレが生涯をかけた仕事だから
どんな事があっても操業は続ける。安心してくれ。」
一同「パチパチ…」
ゆかり「がんばって」
社長「そういう訳だからさ、ひとつ〜…、
今年の暮れのボーナスは
ほんの餅代程度と言う事に・・・」 」
社長の老獪なやり口を、いち早く中村君が察知。
博やゆかりも微笑を残しながらスッと逃れる。
あまいよ、社長(−−;)
中村君「おい、仕事仕事!」
ガチャン、ゴチョン・・・
社長「おい」
中村君「ノブ!」
信「はい」
中村君「油足したか?」
忘れてたらしく、信、油を足す。
社長「ああ、畜生!」
と、足を地面に叩きつける。
とらや 台所
おばちゃん、洗濯物を取り寄せてる。
社長「まったくもう、」
おいちゃん「どうした?」
社長「労働者にな、資本家の悩みが
分かってたまるかってんだよ」
ボーナスを約束どおり支払うのは最低の義務だぞ社長(−−;)
第32作でデカイ投資をした博に、配当し払っているのかい?
従業員が人のいいのを利用しちゃいけないよ。
おいちゃん「三平ちゃん、」
三平ちゃん「はい」
おいちゃん「社長に団子でも食わしてくれ」
三平ちゃん「はい」
さくら、三平ちゃんの保険のことでおいちゃんに話している。
さくら「おいちゃん、」
おいちゃん「ん?」
さくら「保険事務所に出す書類ここに名前書いて ハンコ押して」
おいちゃん「ふ〜ん」
さくら「もう一通あるからね、雇用保険のが」
三平ちゃん社長に団子を渡す。
三平ちゃん「はい、どうぞ〜、はい」
さくら「あ、お寺の注文届けてくれた?」
三平ちゃん「はい、源ちゃんが取りにきてくれました」
さくら「そう。 あ、職人さんにね、」
三平ちゃん「はい」
さくら「もう二釜ついてちょうだいって言って
魚甚さんから二十箱注文があったから」
三平ちゃん「はい」
社長「すっかり団子屋の女将さんだね、さくらさんも」
さくら「ええ?そうかしら?」
三平ちゃん「あと二釜おねがいします」
職人さん、うなずく。
社長「あんたが娘のころはきっと玉の輿に
乗っていい所の奥様になるに
違いないと思っていたけどねえ」
第1作で、寅があの時見合いに
ついていかなかったら…、玉の輿だったかも(^^;)
おばちゃん「あんたがしっかり儲けて、
博さんに高い月給払ってくんないからだよ〜!」
おばちゃん、上手い!ざぶとん2枚上げてください(^^)/
社長「それを言うなよ」痛いとこつかれたね、とほほ(^^;)
おいちゃん、さくらに何気なく言う。
おいちゃん「悪いと思ってるよ、
何もかもお前に、ハ〜〜ッ、甘えちまって」
さくら「何言うの改まって あたしはそれほど
苦にしてないのよ。この家で育ったんだもの。
むしろ申し分けないと思ってるわよ。
だって本当は…、この店の後継者はー…」
おいちゃん「分かってる。最後まで言うな」
社長「何してんだろうね、後継者」
みんな、寅に想いを馳せる。
清掃車の音楽
三平ちゃん、台所にやって来て
三平ちゃん「奥さん、すみません、親戚の人見えてますけど」
さくら「え?」
寅が店先で、うろうろして、入りにくそうにしている。
さくら「あらあ!嫌だあ、お兄ちゃんじゃないの
どうしたのよ、そんな遠慮したような顔して」
寅「いやいや奥のほうでみんななんか
シンミリ話してるんでね、
邪魔しちゃ悪いかなと思って、うん」
さくら「何言ってんのよ」
お客が入ってくる。
さくら「あ、どうぞ、」
三平ちゃん「いらっしゃいませ!どうぞ」
さくら、台所に来て
さくら「おばちゃん、お兄ちゃん帰ってきた。」
寅「よ、」
おばちゃん「お帰り」
寅「へへ おいちゃん、おばちゃん、よ、社長もいたか」
社長「よお、お帰り」
寅「うん、」
おばちゃん「元気だったかい?」
寅「うん」
おいちゃん「噂してたんだよ、お前の」
寅「ありがとうよ、みんなも変わりはねえか」
さくら「うん、元気よ」
寅「うん」
さくら「ま、そりゃ、社長さんにしても、
おいちゃんにしても、うちにしても、
それぞれ悩みあるけど
でも、誰にでもあることだもんね。」
寅「ごもっとも…。このオレにだって悩みはある」
おいちゃん「ほお〜なんだいそりゃあ」
寅「うん、そのことに関しちゃ、何れ、
今夜ゆっくり話をするよ。
オレァ、長旅で疲れてるんだ。
ちょっとニ階で寝かしてくんねえか」
さくら「あ、いいわよ」
寅「うん これ…」
とみやげ物を渡そうとするが、
いきなり、前に三平ちゃんの顔が突っ込んでくる。
三平ちゃん「旦那さん、すみません、
出張所の人 来てはりますけど」
おいちゃん「あ?ああ」
寅「おい、なんだこりゃ?」
さくら「あ、新しく入った店員さん、
とってもよく働いてくれるの」
寅「あ、そう、これ美味しいから…」
三平ちゃん「よろしくおねがいします!!」 と耳元ででかい声。
寅、三平ちゃんのデカイ声に目がペケ(x x;)
寅「耳のそばでお前でかい声出すなよ、
オレは傷つきやすくなってんだから今」
三平ちゃん「どうも、すいません!」
寅「はあ!!…ったく ガーンときちゃった はあ〜」
ニ階に行く時に階段で足を打つ。
ダァン!
寅「なんだよ…」
社長「アハハハ」
さくら「ごめん」 さくらのせいじゃないってヽ(´o`; )
さくらも微妙に笑っている(^^;)
社長「ウフフフフ、ッハッハ」
ゆかり「社長さん!」
社長「おう!」
ゆかり「税務署から電話よ」 また税務署か…(−−;)
社長「は〜またか、ったく やれやれ」
おばちゃん、ニ階を見上げて、
おばちゃん「帰ってきたか。…さて、何作ってやろうかな」
おばちゃん微妙に嬉しそう(^^)
ゴ〜ン…
三平ちゃん「お疲れ様でした」 と帰っていく。
さくら「ご苦労さま」
おいちゃん「あ〜」
おばちゃん「ご苦労さま」
茶の間
博「ところで兄さん、悩みがあるそうですが、
一体どう言う事ですか」
ゴ〜ン…
寅「うん」
寅、正座し、腕を組む。
寅「小諸なる 古城のほとり 雲白く 遊子悲しむ」
おいちゃん「なんだそれ??」
満男「島崎藤村の詩だろう 、千曲川旅情の歌」
初出は明治34年発刊の「落梅集」の中の詩『小諸なる古城のほとり』である。
この初出の『落梅集』の『小諸なる古城のほとり』という題名が最初に頭に入ってない場合は
受験生としてちょっと困るかもしれない。これは受験生がよく間違うところ。
だから『千曲川旅情の歌』と言ってしまった満男も若干アバウトな言い方である。
とらやの人たちに言う時はあれで十分だが、受験生としての自分のまとめとしては
こう頭に入れておくべき。↓
あの詩は明治34年刊行の島崎藤村の「落梅集」冒頭にある「小諸なる古城のほとり」。
ただし、3年後に藤村自身が、若菜集、一葉舟、夏草、落梅集の四卷を合本した「自選藤村詩抄」
の中では、落梅集の後半にあった他の歌「千曲川旅情のうた」と2つ合わせて『千曲川旅情の歌.一、ニ』
と新しく改題。もっと分かりやすく書くと、↓
落梅集の「小諸なる古城のほとり」は、「自選藤村詩抄」では「千曲川旅情の歌.一」に改題。
落梅集の「千曲川旅情のうた」は、「自選藤村詩抄」では「千曲川旅情の歌.二」に改題となった。
(一般的に世間ではこれら全部をアバウトに「千曲川旅情の歌」ってひとまとめで言われて親しまれている)
↑これで初めて正解である。
『自選藤村詩抄』は今でも岩波文庫で売っている。
★「落梅集」冒頭の『小諸なる古城のほとり』。
(後に『自選藤村詩抄』の中の『千曲川旅情の歌.一』)は
下記の通りである。
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子(いうし)悲しむ
緑なす(はこべ)は萌えず
若草も藉くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡邊
日に溶けて淡雪流る
あたゝかき光はあれど
野に滿つる香(かをり)も知らず
淺くのみ春は霞みて
麥の色わづかに青し
旅人の群はいくつか
畠中の道を急ぎぬ
暮れ行けば淺間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飮みて
草枕しばし慰む
★「落梅集」後半にある『千曲川旅情のうた』。
(後に『自選藤村詩抄』の中で『千曲川旅情の歌.ニ』)
は、下記の通り。
昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪(あくせく)
明日をのみ思ひわづらふ
いくたびか榮枯の夢の
消え殘る谷に下りて
河波のいざよふ見れば
砂まじり水卷き歸る
嗚呼古城なにをか語り
岸の波なにをか答ふ
過(いに)し世を靜かに思へ
百年(もゝとせ)もきのふのごとし
千曲川柳霞みて
春淺く水流れたり
たゞひとり岩をめぐりて
この岸に愁(うれひ)を繋(つな)ぐ
これらを合わせて『千曲川旅情の歌.一,二』
寅「さすがは受験生 ついでに聞くが
遊子とは誰のことか知ってるか」
おばちゃん「真田十勇士のことじゃないかい?」
出たあ〜。寅と一緒(^^;)
寅「たのむよおばちゃん、教養のない人間は黙っててくてよ」
よく言うよまったく…。
小諸で全く同じことを自信たっぷりに言ってたくせに(−−;)
満男「要するにおじさんみたいな人の事じゃないの?」
寅「満男、お前確かに勉強している」
博「兄さん」
寅「うん?」
博「前置きはそのへんにして、進めませんか?話を」
寅「うん」
寅「千曲川のほとり小さな町のバス停で
『次のバスは何時だい?』こう声をかけたのがきっかけよ。」
さくら「いくつぐらいの人?」 マドンナだと思い込んでいる(^^;)
寅「そうよねえ〜…年のころなら七十七、八」
さくらの肩がガク…(^^)倍賞さんのこういう演技いいですねえ。楽しい(^^)/
寅「腰の曲がったやさし〜いおばあちゃんだ」
さくらと博、顔を見合わせて「???」
さくら「うん」
満男、マドンナ登場を期待していたさくらを
後で密かに観察してニヤニヤ( ̄ー ̄)
寅「話に聞くとじいさんとは死に別れ」
さくら「うん」
寅「息子夫婦は東京へ行った
寂しい独り暮らし あまり気の毒なので
一晩だけばあさんの家にわらじを脱いだと思ってくれ」
さくら「うん」
満男「クク、クククク」
博「なんだ?」
満男「そこにきれいな女の人がいたりして」
寅「おまえ、この」
博「バカ、黙ってろ」
寅「バカ!黙ってろ!このぉ・・・」 と指さす。
第38作あたりから、満男の口は伯父さんそっくりに発達し、
留まるところをしりません(^^;)
さくら「ごめんなさい」
さくら「おばあちゃんの家に泊まって喜んでもらったのね」
寅「う〜ん」
さくら「よかったわねえ〜〜」 気を使うねえ(^^;)
さくら「それで?」
寅「うん」
寅「実はな、」
さくら「うん」
寅「そのおばあちゃん病気なんだ」
さくら「あら」
寅「入院しなきゃなんない。翌日、病院から迎えが来た」
おいちゃん、オッと思いさくらに合図!
博「看護婦さんが?」 (^^;)
さくら「看護婦さんが?」 (^^;)
寅「んーにゃ、お医者さんが」
でも女医さん〜♪♪〜( ̄。 ̄)
寅「ところがね、そのおばあちゃんは入院をするのが嫌だと言う」
さくら「うん」
寅「医者はほとほと困っている。そこでオレが
『おばあちゃん、入院して体を良くしてまたここへ戻って来たら
いいじゃないか』『寅さん、あんたも一緒に行ってくれるかね』
『もちろんだとも』僕は付き添っておばあちゃんを入院させた
ま、こう言う事だ」
おばちゃん「他人事(ひとごと)じゃないねえ」
寅「そうだろ〜〜」
おいちゃん「いい事したんじゃないかお前」
寅「ありがとう。
しかし、同じジジイ ババアにしても、
温かい家族に囲まれてうまいものをたらふく食って
ブクブクブクブク太ってるジジイババアもいれば」
おいちゃん「ッチッ」 まあまあヾ(^^;)
博、おばちゃんのほうをチラッと見てクスクス。
おばちゃんを見るなよヾ(^^;)
寅「あのような気の毒な年よりもいる。
ねえ!世の中なかなか公平にはいかないものだ」
一同「……」
寅「さて、今夜はこのへんでお開きと言う事にして」
おいちゃん「ん?」
さくら「お兄ちゃん、もうおしまい?」
時計が9回鳴る。
寅「はい」
寅「あーあ、今ごろどうしてるかなア」と思わせぶりなことを言う。
さくら「おばあちゃんの事?」
寅「うんにゃ、お医者さんの事だ 今でも悩んでいるだろう」
と、ニ階に上がっていく。
博「美人の事なんか全然出てこなかったじゃないか」
さくら「何話したかったんだろう いったい」
満男「この謎の鍵は早稲田大学にあると思うな」
さくら「どうして」
満男「ん、だってこないだ電話で…」
寅が、また階段を下りてくる。
おいちゃん「し〜」
みんな気がつかないふり(^^;)
寅「おばちゃん」
おばちゃん「あ?」
寅「あの、早稲田大学ってのはどこにあるんだ?」
おばあちゃん「さあ〜都の西北って言うから
西北って言うから西北(にしきた)の方じゃないかい」
寅「そうじゃないよ、どうやったら行けるのかって聞いてるんだよ」
おばちゃん「知らないよ、あたしゃそんな事」 無愛想(^^;)
満男「おじさん、三ノ輪橋から滝野川を通って早稲田に
行くチンチン電車があるだろ?
東京でただ一つのあの。終点で降りればいいんだよ」
路面電車、都電荒川線のこと。
都電荒川線は三ノ輪橋から早稲田まで全長12.21キロを約48分で日中は5〜6分間隔で走っている。
時速13キロでのんびり走るのでバイクなどによく追い越されている。時々乗車する人が走って向かって
いれば出発せずに待っていてくれたりする。
チンチン電車の由来となる金は、運転席の右上方にある。出発の時必ず鳴る。
寅「あ、そうか、じゃ、チンチン電車で
行けばいいんだな、よし分かった。
♪都の西北 チンチン電車だ」
早稲田大学校歌
相馬御風作詞・東儀鉄笛作曲
都の西北 早稲田の杜に
聳ゆる甍は われらが母校
われらが日頃の 抱負を知るや
進取の精神 学の独立
現世を忘れぬ 久遠の理想
輝くわれらが 行手を見よや
わせだ わせだ わせだ わせだ
わせだ わせだ わせだ
質 宝石電話 佐野屋
ワンマン 早稲田 7017
早稲田大学校歌のメロディがゆったり流れる中、
都電荒川線【旧型7000型】がゆっくり早稲田駅に向かっている。
この撮影の頃は『早稲田駅』はまだ雰囲気があったが、今は超現代的な駅になっている。
この近くにそば屋「金城庵」がある。2004年の取材の時も名物の『天丼』を家族で食べた。
大正時代からの老舗で三島由紀夫が楯の会の結成式を行った店。
早稲田大学南門通り商店街
大隈講堂が見える早稲田大学南門通り商店街と言えば、
喫茶店『ぷらんたん』や喫茶店『高田牧舎』『広文堂書店』がある。
南門を入るとすぐ大隈銅像と図書館がある。そのまま真っ直ぐ北へ
行くと演劇博物館。そしてその西横が寅が講義を受けた6号館。
ちなみに都電荒川線で、早稲田で降りた場合、早稲田大学南門の
通りは反対側なのでこの辺は寅は通らない。
オザワ洋服店
喫茶店『ぷらんたん』が見える。
3年前の2004年春に私が南門商店街を取材した時の「ぷらんたん」近く。↓
ぷらんたんの向こうに由紀ちゃんと茂君が待ち合わせした『高田牧舎』がある。
昔は「高田牧舎」からもう少し行ったところに『SABO茶房,早稲田文庫』があった。
井伏鱒二さんの文章があったような気がする。私の頃はもうかなり老朽化していて
危ないな…って思っていたのだが、やはりとっくに閉店していたか…。
あれこそ大隈講堂と並ぶくらいの早稲田の宝だったのだが…。(TT)
カレーライス スープ 牛丼
…国の学生は、たちあがれ! 403教室 11.26集会へ
早稲田大学 本部 (西早稲田キャンパス)
大隈重信の銅像を見上げる寅
図書館の向かい側、政経学部の3号館前の
ベンチで由紀ちゃんをどうして探そうか迷っている寅。
この寅の、向かいに見える図書館は、構内で最も古い建物。大正14年建設。
横山大観・下村観山のふたりの日本画家が、無償で描いた大作「明暗」(1927(昭和2)年)が
入ってすぐの階段のところに展示されている。今は安部球場の跡地に大きな図書館ができたので、
図書館ではなくなっている。(まあ、博物館のような役目になっている)
しょうがないので、とりあえず走っている2人の青年を呼び止める寅。
寅「おい、青年」
茂「なんですか?」
寅「何やってるんだ?」
茂「走ってるんですよ」
寅「どうして」
茂「決まってるじゃないですか。体鍛えるためですよ」
彼らはハンドボール部のサークルに入っている。
寅「ほー、田へしたもんだよ蛙のションベン」
茂の友人「へ?」
茂「え?」
寅「学生だろ、頭鍛えろよ」
茂「頭にくんな、このおじさん」
と、走り去ろうとする。
寅「おい、ちょ、ちょっと待て、待てよ、まだ話終わってないよ」
茂「何ですか?」
寅「あのさ、オレ、由紀ちゃんに会いに来たんだけどさ、
由紀ちゃんどこにいる?」
茂「誰ですか?ユキちゃんて?」 分からんよねえ〜(^^;)
寅「由紀ちゃんだよ、ほら・・・目のパッチリとした
ちょっと甘ったるい声でしゃべる
かわいい娘いるだろ、由紀ちゃん 由紀ちゃん!!」
ユキちゃんという名前はゴマンと…(^^;)
茂「知りませんよ」
寅「早稲田に行って由紀ちゃん知らないの?
もぐりだろ、天ぷら」
昔は偽学生のことを、学制服だけ(コロモだけ)来て、
中身がないとのことで『天ぷら学生』と呼んだらしい。
第16作「葛飾立志篇」で金町商店街で文房具を売る寅や源ちゃんが
学生の制服を着ているがあれが『天ぷら』。この作品のラストでも
ポンシュウが早稲田の帽子や学制服を着てバイをしている。
茂「やだなあ、このおじさん、
ユキちゃんだけで分かるわけないでしょう」
寅「どうして?」
茂「あのですね、この大学には何万人と学生がいるんですよ」
寅「何万人?」
茂「ええ」
寅「ここに?」
学生事務室で、学生名簿を閲覧する2人。
レポートBOX
学生A「あ、ごめんなさい」
友人「あ〜あったあった」
友人「原田由紀 これじゃねえか」
茂「一文の日本文学か、同姓同名いるかな」
寅は由紀ちゃんが小諸駅近くで自己紹介した「原田由紀」のフルネームを
覚えていたか、それとも真知子さんの苗字が「原田」姓なので由紀ちゃんも
「原田」だと思ったのかもしれない。
もっとも、由紀ちゃんが「短歌」を作っていることは、寅は分かっているので、
最初から文学部だということは分かるから、さほど難しくないかもしれない。
友人「う〜ん」
茂「まあ、いっか オレたちも人がいいなあ」 あんたらすんごく人がいいよ(^^;)
友人「まったく」
茂「どうもありがとうございました」
本部の6号館あたりの4階廊下
友人「は〜ここだここだ」
茂「どうぞ」
寅「おう なんだ入っていいのか?」
茂「大丈夫です」
茂「ここで待っててください」
寅「え?」
茂「次の講義は西洋近代史ですから
その由紀ちゃんって娘は必ずここに来ると思いますから」
日本文学学科の必須科目なのかな?選択科目だとは思うんだがどうして彼らが
知ることができるんだろう?プライバシーがあるので今ならあり得ないことかもしれない。
寅「由紀ちゃんの席はどこなんだよ、席は」
茂「え・・・決まってないんです。適当な所に・・・」
寅「ふーん、じゃあ、オレはここで座って待ってりゃいいんだな」
茂「ええ」
寅「うん」
寅「間違いなく来るな」
茂「さぼらなけりゃね」 女性は比較的サボらない人が多い。
寅「いや、本人に会ったらさぼらないで来いって言ってくれよおい。」
茂「だって顔しらないんだもの〜」 トホホ顔(^^;)
寅「あ〜そうか、そりゃそうだな、うん、ご苦労さん」
茂「じゃ」
寅「うん」
寅「よお、ちょっと、来い来い、来い来い、来い」
茂「なんですかぁ〜〜…ハ…」 半泣き(^^;)
寅「うん、本当にご苦労さん、
これで気持ちだコーヒーでも飲んでくれ うん」 と100円渡す。
子供の駄賃より酷い金額(^^;)
茂「あ、こりゃダメです すみません」
寅「何だよ 遠慮すんなよおい」
茂「参ったな もう〜」 とほうほうの体で逃げ出す2人。
まだ、誰もいない教室。
寅、キョロキョロして、黒板のスイッチを押す。
ウイ〜〜ン…と黒板が動く。
10月の早稲田際が間近な、
秋たけなわの構内と大隈講堂が映る。
写真↓は2004年春に、取材した時のもの。
私が4年間入っていたサークル『絵画会』は未だ健在。
創立100年祭の時の部長(幹事長)だったと、現部員に話したら、
『うわ、20年くらい前ですねえ!』と驚かれた。
光陰矢のごとく…(TT)真ん中で皮リュックを背中に担いでいるのが私。
大隈重信像 朝倉文夫作。
寅が見上げていたこの像はこの手のものにしては名作。高さは298cm。台石の高さは212cm
朝倉文夫は舞台美術家朝倉摂の父でもある。現在立っている大隈像は1932年に大学50周年、大隈没後10周年を
記念して作られたもので、実は2体目のものである。大隈重信像(早稲田大学)は立体商標権の草分けで
1997年に商標登録されている。右足を失った後の姿のものであるため、杖をついているのが特徴である。
角帽にガウンを着て早稲田大学総長の姿をした晩年の大隈重信像は、1987(昭和62)年に
新宿区指定有形文化財の彫刻でもある。
製作者である彫刻家の朝倉文夫は大隈像を3回制作しているが、この立像は2回目のもの。
1回目の物は礼服姿で大隈講堂内にある。
大隈重信は、佐賀藩士の出身で明治維新政府の要職を歴任後、いったん下野して立憲改進党を結成し、
外務大臣や総理大臣も務めた。彼が早稲田大学の前身である東京専門学校を創立したのは、
下野直後の1882(明治15)年のことだ。
「西洋近代史」の教授が6号館の階段を上がって校舎に入っていく。
寅が寝ている。やっと目が覚めて顔を起き上げると、
なんとすでに講義が始まっていた。
教授「ああ・・・そもそもインダストリアルレ・ボリューションと言うこの用語は、
歴史学上の概念においても極めて問題の多い物の一つであります。
また、あ・・・その、おー本質についてもこの相対立する見解が行われていて、
インダストリアル・レボリューションについて、ただ一つ確実に一般化し得る事は、
それについての一般化が不可能だと言う見解さえある。
えー1884年アーノルド・トインビー。スペリングを間違えないように
T、O、Y、N、B、E、E ね。
このトインビーの表したイギリス産業革命講義.
レクチャーズ オン インダストリアルレボリューション イングランド
(Lectures on the Industrial Revolution in
England)
によって産業革命という概念が登場したわけだ。
あーこの中でトインビーは次のように言っている・・・」
Arnold Toynbeeは、「産業革命 」を命名した歴史家であり、
世界最初のセツルメント 『トインビー・ホール』を興したセツルメント運動の発起人の一人。
「セツルメントの父」とも呼ばれる。 文献による実証と社会改革家としての関心を
合わせもった豊かな才能の持ち主だった。
産業革命後の貧困問題に関心を示し、「労働者教育とそれに伴う意識の向上・環境整備」を取り上げ、
これを行うための施設を作ろうと試みた。これがセツルメント運動である。
後に、トインビーの理想を体現するための福祉施設として世界最初の
セツルメント「トインビー・ホール 」が設立される。
トインビーはそういう意味で、社会福祉学 において福祉事業の先駆者として扱われる。
セツルメント: 貧しい住民の生活救済のため診療所や宿泊所、託児所などを設置する社会事業の一種
この寅が聞いていた講義で『1884年.アーノルド.トゥインビー』と教授が言っていたのは
『 Lectures on the Industry Revolution 産業革命講義』という題の遺稿集が1884年に発刊されて、
それによって広く『産業革命』の概念とその意味が知れ渡ると同時に産業革命による新しい社会問題が
世の中に知られるようにもなったことを言おうとしたものと思われる。
つまり、急激な大量生産により、物価が下がった反面、劣悪な環境での労働といった
労働問題、都市のスラム化による衛生面の悪化などの社会問題の発生が生じた。
工場労働が一般化し、労働者階級が形成される事となった。
そして極度に発展していった資本主義は、金融資本と産業資本の融合した独占資本を生み出した。
独占資本は政治にも深く関与し、「市場」の拡大を政府とともに進めようと考えるようになる。
植民地を増やす必要に迫られた先進諸国は19世紀には帝国主義に傾いていったのである。
【産業革命】は一般的に、18世紀に始まった第一次産業革命と、19世紀に始まった
第ニ次産業革命に分けることができるが、ここの講義では18世紀イギリスで始まった
石炭、蒸気機関を動力源とする軽工業中心の発展を述べている。イギリスが持っていた
豊富な植民地、そしてヨーロッパ全体の人口増加、労働力囲い込み措置などにより、
イギリスでまず発展したのである。
イギリスでは民間会社が中心になって発達したが、フランスやドイツなどでは、やや遅れて
19世紀になってから国家ぐるみで本格的に発達した。
しかし、19世紀半ばから20世紀にはいる頃には、電気動力・内燃機関動力が発達をしはじめた。
ちなみに近年のアニメ映画『スチームボーイ』は、蒸気機関だけでひたすら発展していった
電気動力を持たない空想未来世界を描いたユニークなものであった。
一応補足しておくと、これも皆さんご承知の通り、アジアの日本でも産業革命は遅ればせながら起こった。
まず、幕末に佐賀藩で反射炉が建設され、洋式の製鉄が始まった。
明治維新後、国家ぐるみでの『殖産興業政策』によって必死で進められていった。
そして第一次産業革命の象徴があの群馬の官営富岡製糸場であり、
第二次産業革命の象徴があの九州の官営八幡製鉄所である。
寅「何書いてんの?」
学生B「喋ってる事書いてんだよ」
寅「わかんのか?」
学生B「いや、あんまり・・・」
寅「分かんない事書いてどうすんだお前」
真後ろの学生Cがすこし迷惑そう。
学生B「書いて覚えるしかないだろう??」
寅「分かんない事書いて覚えられんのか?
オレなんか分かってる事書いたって分かんねえやなあ〜?」ギャグか(^^;)
と後ろの学生Cにふる。
学生C「ちょっと静かにして下さい。」
教授「ア、ああ、すなわち!」
寅、口チャックのしぐさ。
学生達「ククク・・・」と笑いをこらえる。
教授「・・・ちょっとそこの人」
寅「オレかい?」
教授「何か質問でもありますか?」
寅「していいの?そっちに?」
教授「だったら手を挙げて聞いてください
私語されると他の人の迷惑になりますからね」
寅「あ、迷惑にね、はい・・・ハイ!!」
教授「あ」
寅「え〜〜っとハナッから全然わかんないんだけど」
一同爆笑「ハハハハ!!」
教授「ハナってどこのことですか?」
寅「悪いけど頭からもういっぺんやってくんねえかね」
教授「…、ん。そもそも、
インダストリアル・レボリューションと言う用語は・・・」
寅「ハイ!!…」
寅「あの・・・その・・・それだよ
えーインドの通りゃんせっての?それ分かんない」
『インド』しか似てねえ〜(^^;)
一同また爆笑「ガハハハ!!」
教授「君、・・・君は産業革命を知らないんですか?」
寅「知らない」
教授「困った人だなあ〜 あなた聴講生?」
寅「はい!」うそこけ(^^;)
教授「ほー。… 君ね」
学生D「はい」
教授「『産業革命の概念』をね、簡単に説明しなさいよ」
学生D「はい」
教授「うん」
学生D「えーっと、18世紀のイギリスの技術革新は」
教授「うん」
学生D「ワットの蒸気機関の発明によって」
教授「うん」
学生D「工業生産の規模を飛躍的に発展させた」
それまでにも、簡単な蒸気機関はドニ・パパン(1695年制作)やセイヴァリ(1698年制作)によって
作られてはいたが、1710 年に実用に向けてある程度きちんとした形で最初に改良したのは
実は、ワットではなく、トーマス・ニューコメンだった。
ワットが改良に成功するまでの60年以上もの間、ニューメコンの蒸気機関が鉱山などの水汲み用動力
として使われた。
ただ、ニューメコンの蒸気機関はシリンダーと冷却器が共有されているため熱効率が悪く、
炭坑の排水にしか用いられなかった。 そして遂に1769年、ジェームス.ワットは、シリンダーと冷却器を分離して
熱効率を高める蒸気機関を発明し、かつ、ピストン運動を回転運動に転換して動力として
実用化され動力革命がおこり、後に『蒸気機関の18世紀』と評されるように、産業革命の大きな
原動力に繋がっていったのだ。
以上のことにより、産業革命の概念の説明は、
『ワットの蒸気機関の発明によって』ではなく、
『ワットの改良により一層汎用性を得た蒸気機関によって』にしたほうがいい。
それと、『産業革命』の説明だから、『工業生産の規模の発展』だけを述べるのは片手落ちで、
『それに伴う社会構造の変革』というような言葉は最低、発言の中に入れなければならない。
ジェームス・ワット(James Watt,)1736年 -
1819年
はスコットランドの数学者、エンジニアである。シリンダーの上下の両方に蒸気をおくる複動蒸気機関を
完成させただけでなく、その後も凝縮機、調速機、変速機の発明など蒸気機関の改良を
続けておこない産業革命の進展に貢献した。
現在ワットの名は、皆さんご承知の通り、仕事率の単位や電力の単位ワット[W]として残っている。
だからこそ、島田良介が電柱に登っているのを見て『ワット』君と名づけたのだ。
教授「ふんふん。ま、そんな所だろうね、うん」
教授、寅の方を見て、
教授「分かりましたか?」
寅「まるで分からない」
一同またまた爆笑「アハハハハ!!」
教授「弱ったなあ…。
あなたワットがね蒸気機関を発明したことは知ってるでしょう?」
寅「蒸気機関って、あの・・・
シューポッポッポッって走るあの蒸気機関車かい?」
教授「う〜ん、まあ、そうですが?」
寅「あれワットが発明したの?」
教授「うん」
寅「嘘だあ」
一同「アハハハ」
教授「嘘だとおっしゃっても歴史的事実ですから」
あたりまえだが、ワットは蒸気機関を改良したが、蒸気機関車は発明していない。
蒸気機関車を発明したのは随分後のトレヴィシック
。
1804年に牽引力の弱い蒸気機関車を作った。
ワットが亡くなる5年前の1814年にはあの有名なスティーヴンソンが
それをまた改良して、蒸気機関車の実用的な試作に成功し、交通革命の幕開けを告げた。
ちなみに黒船で有名な、あの蒸気船は1807年、フルトンが
外輪式蒸気船でハドソン川を時速7,5kmで航行させた。
寅「あのボンクラが蒸気機関車発明した?
冗談じゃないよ、ガスの栓ひねることもできないんだよ」
一同「アハハハハ」
寅「まずだね、あいつが生まれる前に蒸気機関車ってのは
もうポッポッポッポッ走ってたんだから
冗談じゃないよ、笑っちゃうよ、ねえ」どういう頭してんだ寅って(^^;)
一同大爆笑「アハハハハ!!」
寅「先生の言ってるのはあいつの事じゃないのか?」
教授「ほお、あなたはワットと言う友人がいるんですか?」
寅「おお、いるよ」
教授「やっぱりイギリス人?」
寅「何言ってんだろうな、非常識だねえ、
日本人に決まってるでしょう。宮城県出身!」
一同「アハハハ!!」
寅「何も分かってないんだねえ。」
第20作「寅次郎頑張れ!」のワット君こと
島田良介は平戸だから長崎県なんだけど、
俳優の中村雅俊さんは宮城県出身。
楽屋オチのギャグだね、こりゃ。
寅、学生たちに向かって、
寅「いや、これがね、電気会社の労働者。
いつも高い電信柱のテッペンで仕事してる。
それでみんながワット君ワット君って
あだ名をつけたの うん」
学生たち「あ、そうか」と、納得。
寅、学生たちを見ながら、
寅「あ、そうそう、
これについちゃ、
ちょっとおかしな話があるんだけども、
暇だったら聞くかい?」暇って…講義中(^^;)
一同「聞く聞く ウーウー!!ワア〜!」
みんな盛大な拍手 パチパチパチ
教授もついつい座る。
寅のペースにはまりました(^^;)
寅「これは学生諸君にも参考になる話だと思う。
こいつがね、
ラーメン屋の姉ちゃんに失恋をして、
自殺を図った」
教授驚く。(^^;)
寅「窓の隙間に目張りをして、遺書を書いて、
ガスの栓をひねる、
シューー・・・
部屋中ガスが一杯だ。
そこまでは よかったんです。ね。
あーもうこれでこの世のお別れだ。
せめての名残に一服点けようと思ったんだね、
あのバカが。
マッチを取り出しシュッとつけた。 ドカァーン!!
学生たちビックリ
寅「階段をゴロゴロゴロ!でドデーン・・・!
もうススでハナの穴 真っ黒」
一同「アハハハハ!!」
寅「髪の毛なんかチリチリで
パンチパーマかかっちゃって」
一同大爆笑!!「ハハハ!!」
寅「なー」
6号館横、演劇博物館前の道
(坪内逍遥博士記念演劇博物館)
友人「由紀ちゃーん 忘れ物」
由紀「あー!サンキュー」
由紀、西洋近代史の講義に急いでいる。
茂「由紀ちゃん?」
由紀「え?」
茂「君 一文の原田由紀さん?」
由紀「そうよ」
茂「寅さんって知ってる?」
由紀「寅さん?」
茂「うん」
由紀「知ってるわよ」
茂「あのね、402教室で君の事待ってるって
オレが案内したんだ」
後には演劇博物館が見える。正式には坪内逍遥博士記念演劇博物館
由紀「本当にー!…あなたは?」
茂「オレ 露文の尾崎茂。早く行きなよ、
講義終わっちゃうよ」
作家で早稲田の文学部出身の『尾崎一雄』っていたなあ。
由紀「どうもありがとう」
↓2004年春に取材した時のもの。手前が私。奥の建物がエンパクこと『演劇博物館』
「早稲田大学坪内博士記念・演劇博物館」という正式名称からも分かるように、
この博物館は1928(昭和3)年、坪内逍遥博士が古稀(70歳)に達したのと、
その半生を傾けた『シェークスピア全集』全40巻の完訳を記念し、
坪内逍遥自身の発案と各界有志の協賛により創設されたもので、
日本唯一の演劇専門博物館として、現在も多彩な活動を続けている。
第2作「続男はつらいよ」で登場する坪内散歩先生は、この坪内逍遥をもじったもの。
彼は文学部を作ったことでも有名。
この入り口の張り出し部分は劇場にも使えるようになっている。図書閲覧室は楽屋、
舞台を囲むようにある両翼は桟敷席、建物前の広場は一般席となる構造になっている。
由紀ちゃん、402教室の後のドアを開ける。
一同「ドハハハ…!」
教授「いやあ、ワット君についての珍しい学説をお聞きしたわけです、」
一同「ワハハハ!」
教授「えーっと僕はどこまでお話したかな?あ、まだいくらも話してない」
一同「アハハハハ!!」
教授「と言うようなわけで、ヘヘ…、
ま、どんな訳か良く分からんが」
一同「ダハハハハ!」
由紀ちゃんなぜ笑っているのか分からないでキョロキョロ。
教授「インダストリアル・レボリューションは
富の増大にならんで貧困の増大が見られた
不幸な時期であると言うトインビーの主張について
話そうと思ったんだが・・・(懐中時計を見て)
あ、時間も少なくなったから、後は僕の本を読んで下さい」
寅「そのご本はいかほど?」
教授「1,800円」
一同「アハハハハ!!」
高いけど、結構試験対策で買っちゃうんだよね(^^;)
教授「では本日の講義は終わります」
寅「はい、どうもご苦労様でした」と立ち上がって拍手。
一同「パチパチパチパチ」
手を上げて教室を出て行く教授。
学生たち立ち上がってワイワイ帰り支度。
寅、一番後ろで立っている由紀ちゃんを見つけて、
寅「よオ、由紀ちゃん」
教授が時計見て帰るくらいだから、由紀ちゃん、かなり講義の最後のほうに
教室行ったんだね。残り20分から25分と見た(^^)
結構サボりますねえ。
それにしても、寅はたぶん、1時間くらいはしゃべったんじゃないかな。
ワット君が幸子ちゃんと恋人になり、めでたしめでたしまで物語をしゃべり続けた
のかもしれない。
寅「伯父としてな、一応大学下見しとこうと思ってよ」
嘘つけ、由紀ちゃん経由の真知子さん狙いが見え見えだぞゞ(−−)
由紀「あーそうか」うそうそゞ( ̄∇ ̄;)
寅「うん」
由紀「どうだった」
寅「なかなか いい大学だよ 先生まじめだしな
それに 生徒も親切だしよ」
由紀「それになんたって家から通えるんだもんね ここは」
垂れ幕
仮構の「平和」,偽りの「繁栄」―個性なき個性
今こそ甦らせよ 批判の・・・
寅「由紀ちゃんは下宿か?」
由紀「おばあちゃんの家から通ってるの つまり 私の母の実家
と言う事は、あの美人のおばちゃまの家でもあるんだけどね」
寅「え?美人のおばちゃまって言うと?」
由紀「この前会ったばっかりじゃない。女医さんよ」
寅「あーそう言えば
そんな人もいたような気がするな〜うん」
よく言うよ。バレバレ┐('〜`;)┌
由紀「ひどいわ〜、おばちゃまが聞いたらがっかりするわよ」
寅「え?」
由紀「好意もってるのよ 寅さんに
死んだ旦那様にこの辺がそっくりでとっても懐かしいって」エラ(^^;)
寅「へへへへ あ、そう、そう言ってた
いや、オレ物覚えが悪くてね〜もうさっき会った人でも
すぐ忘れちゃうんだよ〜ふん、」
寅「よ、青年。」
尾崎茂と友人が歩いてくる。
茂「会えたんですね」
寅「うん この人がその由紀ちゃんだ。
その悪い頭で覚えとけ」
茂「まいったな、それじゃどうも」
寅「あ」
青年たち、去っていく。
友人「由紀ちゃーん佐々木さんの講義出るんでしょう?」
あ、さっきの「由紀ちゃーん 忘れ物」って言ってた友人だ(^^)
由紀「うん」
早稲田では教授でもみんな苗字に『さん』付け。
私たちも坂崎先生のことを
いつもは仲間内では坂崎さんと呼んでいた。
由紀「あたし講義あるから甥御さんに頑張ってって言ってね じゃ」
寅「会えて良かったよ」
由紀「おばちゃまに電話してあげて、独りで寂しくしてるから」
寅「独りでいるの?」
由紀「うん きっと喜ぶと思うわ はいこれ電話番号」
寅ヤッタね(^^)
寅「うん」寅目的達成!(^^)/
由紀「さいなら」
寅「はいよ」
由紀「ごめ〜ん」
寅「へへへ」
さっきの教授、寒そうに正門を出ようとしている。
教授「ゴホホ、」
寅「よお、先生」
教授「おお、いやあ 先ほどの」
寅「いやいやいや どう 君も忙しい?」
教授「あ?あはは」
寅「暇?」
寅「そのへんのところで一杯やろうよ」
寅たち、『大隈商店街』の方へ歩いていく。
【寅さんが早稲田の杜にあらわれて やさしくなった午後の教室】
東京郊外 真知子さんの実家
〒145-0064 東京都大田区上池台40-16
ピンポイントストリートビュー
https://goo.gl/maps/A4hrZzDbP1idQvG89
坂を上がってくる息子と友人。
息子「…の事好きだろ?」
友達「あいつのどこがいいんだよ〜」
息子「絶対そうだよ絶対 じゃあな」
友達「バイバイ」
家に入って
息子「ただいま〜」
真知子の母親「お帰り、ママ帰ってきてるわよ」
息子「土曜日でもないのに?」
母親「くたびれたから一週間休みもらったんだって」
息子「ふーん・・・」
真知子息子のところにやって来て、
真知子「オッス」
息子「オッス」ちょっと照れてる。
真知子「何この汗はーう〜ん?うわ〜男くさーい」いやがるよそういうのって(^^;)
息子「嫌だー木村ン家に行くんだ」
と、逃げていく。
真知子「久しぶりに帰ってきたのに嫌な顔しちゃって」
真知子さんが抱きついたからですよ(^^;)
母親「男の子がいつまでも母親にベタベタするもんか
あんた離れて暮らしてるから子供の成長に気づかないのよ」
真知子「はーやっぱり一緒に暮らそうかな」当然(−−)
母親「信州つれてって?」
真知子「うーん」
母親「面倒見る自信あるの?
自分の食事作る暇もないくせに」
自信が有る無しは関係ない。
なにはともあれ、まずは同じ屋根の下で
一緒に住むことが大事なんだよお母さん。
息子「行ってきまーす」
母親「子供のためでもあんのよ 再婚は
今のまんまじゃ不自然だわよ」
時によっては子供つきで再婚した人々も、摩擦が多く不幸になることもある。
真知子「何度も言うけどね、お母さん
今の病院をやめる意志はないの」
真知子「私を頼りにしてくれる患者さんだって沢山いるんだから
あたしは今充実してるの」
母親「医者としては充実してても女としてはどうなの?」
母親「そりゃあんたが医学部進んで夜もろくに眠らないで
一生懸命勉強してた頃はわが娘ながら誇らしいと思ったわよ。
でもね このごろ あんたと同い年の豆腐屋の美代ちゃんが
娘と仲良く買い物なんかしてるの見ると 一体 女としてどっちが
幸せなんだろうと思ったりしちゃうのよ?」
人と比べるのはよくないぞお母さん(−−)
真知子「わたしは骨休めとして帰ってきたのよ。
お母さんの幸福論に付き合うつもりは無いわ」
由紀ちゃんが帰ってくる。
由紀「ただいま〜」
由紀「帰ってたの?なあんだ」
真知子「何よ」
由紀「寅さんに会ったの」
真知子「どこで?」
由紀「大学来てくれたの。
連れてくれば良かったなあ、おばちゃまがいたなら」
真知子「寅さん柴又に帰ってるの?」
母親「だれ?その寅さんて」
由紀「おばちゃまが今つきあってる人」おいおいゞ(^^;)
母親「あらやだ、そんな人いたの?あんた」
真知子「いるわよ」おいおいおいゞ(^^;)
由紀「大丈夫よ 不倫じゃないから」確かに独身(^^;)
母親「バカなこと言わないでよ ばか・・・もっ」
名優『奈良岡朋子さん』をこんなちょっとした役に使うなんて贅沢〜。
由紀「電話しあげたら?
後で番号調べてあげる。柴又の車さんか」
『とらや』と言う、あ、間違えた。
今作品から屋号が『とらや』から『くるまや』に変わったんだった。
NTTで調べて柴又『くるま菓子店舗』という団子屋ですぐ分かるよ(^^)
とらや 夕方
さくら「ご苦労様でした また明日よろしくお願いしますね〜」
寅、2階から下りて、裏から店に出てきて
寅「ふぅ〜〜ン・・・はぁ、もう夜だなぁ・・・」なんとなく様子を伺っている感じ。
さくら「はあ〜日が短くなったわねえー」
寅「本当に日が短い、嫌んなっちゃう、はあ〜…」何か言いたげ(^^;)
寅「あ、いけね。さくら、悪いけどね、
あの、百円玉ちょっと細かくしたのちょと貸してくんねえか」なぜ?
さくら「え?何するの?」
寅「え、ちょっと電話してくるから ちょっと」
さくら「フ…電話なら、家にあるじゃない」そらそうだ(^^)
寅「え?あ、あった?
ああ、あったんだ そうだ。
でもオレ市外だから じゃちょっと貸し・・・」わざとらしいね(^^;)
さくら「この電話だってかかるわよ」まったく(^^)
寅「かかる?これ?あ、そう…
柴又だけかな〜っと
思ったんだ。うん。」糸電話か(^^;)
さくら「フ・・・」
倍賞さんさすがにこれは笑ってます(^^;)
これ笑わない人いません。
笑ってしまう倍賞さん。
寅「でもさ、あれ、かけるとほら、
お前たちに料金で、迷惑かけるから ね、ちょっと」
さくら「どうせ私のお金でかけるんでしょう」いやはやその通り(^^)
寅「お前ね!オレが外で電話かけに行っちゃ
なんか悪いわけでもあんのかよ!」
さくら「分かったわ、じゃ、かけてきなさい」かなりプンプン。
すねた顔も倍賞さんは素敵!(^^)
さくら、台所のさいふから小銭を出す。
寅「よぉ!いちいちいちいち・・・」
さくら、ちょっとふてくされて、寅に小銭渡しながら、
さくら「あたし達に聞かれたくないんでしょう」図星★
寅、ニコニコ笑って
寅「そりゃそうだ」と、つい呟いてしまう。
店先で、はっと気づいて、
寅「誰がそんな事言ったっつうんだよ!
痛くもねえ腹探られちゃ
たまったもんじゃねえよ!
いいよ、オレはここでかけるよ!
料金払やいいんだろ!」
と、さくらに貰った小銭をテーブルに叩きつける。
さくら、自分の小銭見て唖然。
開いた口がふさがらない。
寅「ったく、意地だ、
こうなったら 明日の朝まで
かけちゃうからオレ」
さくらを睨みながら電話のダイヤルを回す寅。
ンジーンジーンジーンジーンジーンジー
おばちゃんやって来て
おばちゃん「どこに電話してんだい?」
寅「どこに電話しようと俺の勝手だろう、
いちいちおばちゃんの
許可求めなきゃいけねえのか!」
なにかと因縁をつける寅(^^;)
さくら、そっとおばちゃんに、寅の機嫌が悪いことを伝える。
ンジーンジーンジー(計九回)
寅「なんだったくいちいち、
それより自分の用事しろってんだよ。ばあか ばか・・」と小声でぶつぶつぶつぶつ
プルルル… プルルル
寅「みろ!留守じゃねえか!」おいおいもう切るのか(^^;)
さくら「はい、おせんべいでも
食べててちょうだい。もうすぐご飯だからね」子供相手か(^^;)
寅「いらないんだよ」
おばちゃん「作ってなんかやるもんか」おばちゃんの逆襲(^^)
寅「食ってやるもんか」負け惜しみ(^^;)
電話 リリリリリーン リリリリリーン
寅「おい、おい!」寅すぐそばにいるのに電話に出ない
さくら「そばにいるんだから
電話ぐらい取ってくれていいでしょう?」全くその通り(^^)
寅「何言ってやんだよ ほんとにペラペラペラペラ繰り返してよ」小声でぶつぶつ
寅、超いやいや受話器とって
寅「はい、くるまや。
お団子は夕方はなぁい、ええ」
さくら、一応誰からか気にしている。
寅「!!ええ ハイ!!!ワタクシですが…」
と、血の気が引いている寅
ああ、おば様ですか、いいえ、どういたしまして
あ、今東京に!ああ、そうですか」知ってるくせに(^^;)
この変わりよう。カメレオンも舌を巻くよ。┐('〜`;)┌
さくら、寅が好意を持っている人からかかってきたことに気づく。
真知子さんの家 電話
真知子「久しぶりに休みが取れたんで
実家に帰ってきたんですよ。
そしたら姪が大学であなたに
会ったって言うからびっくりしちゃって。
柴又には、いつまで滞在なさるの?」
寅「タイザイ・・タイザイ?はい、
ずーっとタイザイしております」
真知子「お会いしたいわ〜」
寅「はい・・・」寅、天にも昇る気持ち。
真知子さんの家 電話
真知子「あのー、柴又にうかがってもいいかしら?
前から一度行ってみたいと思ってたの。
うん、そうね、例えば今度の日曜日、
どうしてらっしゃる?」
台所で母親が不安げに、聞き耳をたてて、うろうろしている。
寅「はい、私、あの ずーっと暇ですから、はいッ、
どうぞお待ちしております。
あ、駅…まで、あの迎えにやらせますから。
はい、お待ちしております。はい、伝えます」
受話器が切られて。
さくらを見ながら、受話器を指さす寅。
意味ねえ〜(^^;)
寅、電話を切って
寅「はい おば様がよろしくって」分からんってヾ(^^;)
さくら「どこの?」ねえ(^^;)
寅「信州の」それじゃなんにも分からんってヾ(^^;)
寅「あーあー、はら減った。
おばちゃん、早く飯食おう」
おばちゃん、さっきのことで怒ってるよ(^^;)
日曜日 柴又駅前広場
ボーっと真知子さんを待つ源ちゃんと三平ちゃん。
証明写真 順寿司 萬壽堂
レストラン ダイコク
冬季限定酵造
CABIN 山口不動産 喫茶店パンジー 十字堂 コサカフルーツ
スポーツニッポン 毎日新聞
ラーメン 立食 そば うどん
レンタルビデオ 立ち入り禁止
国民相互銀行 柴又支店
飲むヨーグルト
商店街アナウンス「味と香りのなんぽう楽・・・」
源ちゃん「あれや!あれに間違いない、
お前兄貴に言うてこい」
三平ちゃん「はい」
『歓迎 原田真知子先生』の紙を広げる。
このように、紙に人の名前を書いて歓迎するパターンは、第21作「わが道を行く」
でさくらが田の原温泉に寅を引き取りに言った時、留吉が歓迎の意味を
込めて持っていた。第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」でさくらたちが養老牛温泉へ
風子の結婚式に来た時、第34作「真実一路」でふじ子さん親子を柴又に呼んだ時、
とらや 店
さくら「またいらっしゃいね〜」
七五三の子供「うん、バイバイ」
さくら「うん、バイバイ」
おいちゃん「ありがとうございました」
三平ちゃん、飛び込んできて、
三平ちゃん「奥さん、奥さん、今、駅着きはりましたけど」
さくら「あ、そう」
寅、暖簾のの向こうから店に来て、
寅「来た? 来たか?どれどれ、うん?よしよし」
三平ちゃんの陰から外の様子を見て、まだ来ていないことを確認する寅。
寅「それじゃ、ちょっと、集まって、
おばちゃん!おばちゃん!ちょっと」
おばちゃん「あ?」
寅「それじゃ、もういっぺん、復習します。
入り口から、お二人が入ってくるな。
『いらっしゃいませ』
ここでオレが両家の紹介をする。
まず座ってお茶を一服召し上がる。ね。
その間(カン)におじちゃんがこの店の歴史を語る。
程よい所でおばちゃんが、
「さあ、さ、奥のお茶の間でおくつろぎくださいまし、ね」
寅、三平ちゃんの手を取っていることに気づいて、パッと離し、
寅「お前はいい。
座布団座布団お客用のをちゃんと出して、
それからあのータコはそっから入れるなあいつはみっともないから、ね。
いいか会話は楽しくしゃべりすぎるなよ。
と言って、間があきすぎてはこれはしらけてしまうから。ね。
その辺のところは程よく。
あ、なんだ、博いないじゃないか。
こう言う時はあいつが一番早く来てなきゃいけないんだよ!」
さくら、真知子さんたちが来たことに気づき、
さくら「来たわよ」無声音。
寅「来た!?ったく、遅いじゃないかバカ!!」
真知子「!!」
由紀「??」
さくら「ごめんなさい」
真知子「すみません 遅くなっちゃって」
由紀「ごめんね寅さん」三田さんそれって、京都弁。京都府出身だもんね(^^;)
寅「いいえ」
あちゃ〜〜〜(TT)
寅、頭の中マッチロ、石になっている。(^^;)
さくら「兄が大変お世話になったそうで」
真知子「あ、さくらさんですか?お噂はかねがね」
かねがねって…いったいいつしゃべったんだ寅は
さくらのことを。あの小諸の数時間しかないはず。
さくら「あの、叔父と叔母です」
おいちゃん「いらっしゃいませ」
真知子「原田真知子でございます。大勢でお邪魔しまして」
おいちゃん「いえいえ」
由紀「こんにちは」
由紀「寅さん、この子おばちゃまの息子よ」
寅「あ、息子さんですか?」
まだ意識が朦朧、固まりが解け切ってない。
息子「こんにちは」
寅「こんにちは」
真知子「実家の母に預けてるの」
茂「こんにちは」
寅「あ、ご長男ですね」
茂「僕ですよ」
寅「え?」
茂「ほら、大学で会ったでしょう?」
寅「あああああ、」もの凄く世話になったろうが(^^;)
茂「僕金町なんですよ昨日由紀ちゃんに会ったら
柴又行くって言うんでじゃ、僕が案内しようって事で」
金町ってことはウイーンのマダム(淡路恵子さん)の実家と一緒(^^)
寅「あーそう、そら御苦労さん。 君は?」
満男「満男だよ」バカだねえ〜(^^;)
寅立ち上がって
寅「あーあ、さくらのお子さん」何言ってんだか┐(~ー~;)┌」
寅「…ん、君は?
…あ、源公。これは分かる」
これは笑いました。
源ちゃんのヒヒヒ笑いが聞こえてきそうです(^^)
おばちゃん、微妙に笑う。
寅「あんまり大勢集まっちゃったんで、
こんがらがっちゃったよ、ハハハ」
みんな「ハハハ!!」
ようやく、寅、意識が元に戻ったね。
みんなも心が柔らかくなった。
源ちゃん、由紀ちゃんに
源ちゃん「行きましょか?」
さくら「どうぞ」と店の中に入ることを勧める。
おばちゃん「どうぞどうぞ御かけになって」
由紀「あの、私たち先に帝釈天にお参りに行ってもいいかしら?」
寅「あ、そういうのもいいなあ」
真知子「ええ、じゃあ、私もそうさせていただくわ」
寅「ええ? い、行っちゃうんですか?」
由紀ちゃん、三平ちゃんにメロンをお土産として渡す。
真知子さんからのお土産。
寅「じゃあ、源公」
げんちゃん「へい」
寅「満男」
満男「はい」
寅「ちゃんとご案内して、はい」
源ちゃん「へい」
さくら「見物済ませてからお寄りになって下さい」
真知子「ええ 行って来ます」
おばちゃん「いってらっしゃい」
由紀「いってきまーす」
源ちゃん「あ、こちらです」
さくら「いってらっしゃい」
寅「おい!源公」
源ちゃん「はい」
寅「離れろ 渡し舟のってもいいけどもな、
あれ危ないからもしひっくり返るようなことがあったら
お前が犠牲になって一人死ね」
源ちゃん「へーい」返事するから面白いね(^^)
寅「いいな 離れろ!南無妙法蓮華経、南無・・・」
と、手を合わせ拝む。
豆知識
映画『男はつらいよ』シリーズに登場するさくらの一人息子は「諏訪満男」。
藤子・F・不二雄原作のアニメ『パーマン』で、主人公パーマン1号の本名は「諏訪光男」。
真知子のテーマが流れる中柴又をめぐっていくみんな。
由紀「あそこにもお団子がある〜」当たり前(^^;)
由紀のジャンパー JUST BIGI KID'S J
ICE FEEL
息子のトレーナーUP・AND・UP WENILITY
源ちゃん「備後屋」
備後屋「おお」
小指を突き出してニヤ。
下品だなあ〜源ちゃん(^^;)
備後屋「寅のか?」
題経寺境内
山門を入って左側に浄行菩薩が安置されている。
頭がよくなると源ちゃんに聞いて線香の煙をかぶる
由紀ちゃんの近くで参詣者が浄行菩薩に水をかけて擦っている。
茂も由紀ちゃんに煙かけている。
満男も密かに自分に煙を呼び込んでいた(^^;)
由紀「頭良くなるんですか?」
源ちゃん「もちろんです」一応源ちゃん寺男だもんね(^^;)
由紀「あ〜」
矢切の渡し
満男が紙テープで別れを演出(^^;)
真知子「永のお別れみたいだわ〜」とテープを振っている(^^;)
由紀ちゃんの体にテープが絡みついて、キャッキャ言っている。
真知子さん笑いながら
真知子「大丈夫?フフフ」
由紀ちゃんの横でゆったりと舟を漕ぐ船頭さんは現在で杉浦さんという方。
明治時代頃から代々矢切りの渡しの船頭をする一家となり、
それ以後、世襲制で代々運航し、現在で4代目。
元和2年(1616)、幕府は利根川水系河川の街道筋の重要地点15カ所を定船場として指定、
それ以外の地点での渡河を禁止した。その1つが矢切の渡しで、、主に近郷の農民が対岸の
農耕地へ渡るために利用していた。
現在、都内に残る唯一の渡し場で、対岸の松戸市下矢切との間を往復している。
伊藤左千夫の名作「野菊の墓」の舞台となり、ヒット曲「矢切の渡し」を生んだ地としても有名。』
運営許可は千葉県側。
渡し場にはこう書いてある。
「渡し舟は午前9時より午後5時迄運航しております」
「矢切の渡しは11月末日迄毎日運航しております(雨天・荒天日は休みます)」、
「7月〜8月の特定の月曜日は定休日」
「1月中旬〜3月中旬頃は、土日祝日のみの運航」
空いていれば手漕ぎだが、込んでいる時や、夕方遅くはモーターつきになってしまう(TT)
手漕ぎに乗りたければ、混んでいる日、風のある日、午後遅くなどは避けたほうが賢明。
渡し船運航中は矢切(松戸)側に旗が上がっている。
乗船料 大人 100円 (中学以上)、小人50円(2才以上)
もう20年以上変わっていない。
ちなみに第1作(1969年)の頃は大人30円小人20円)
現在では年間約 18万人近くの観光客が訪れ親しまれている。
矢切の地名の由来は、平和に暮らしていたこの辺りの人々が度重なる戦争の苦しみを味わい、
戦いで使われた弓矢を呪い「矢切り」「矢切れ」「矢喰い」を悲願して矢切の地名となった。
【矢切の渡しと柴又の帝釈天界隈】は、環境省の「日本の音風景100選」に選定されている。
渡し場での但し書き
「アイスキャンディーは食べ終えてから乗って下さい」
「舟内では音楽・案内等はありませんのでご了承下さい」
源ちゃん船上で仕切っている。
真知子さんの息子さんに、矢切側の船着場を指で指して教えている。
渡りきった向こう岸の矢切は、小説「野菊の墓」で、主人公の政夫と民子が別れた悲しい場所。
ここから文学碑へと続く「野菊のこみち」を通って1,5kmの畑の道を歩いていくと高台があり
「野菊の墓 文学碑」がある「西蓮寺」へ入っていく。ここは眺めが良い。
おばちゃん「遅いねえ」
さくら「うん」
三平ちゃん「お帰んなさい」
真知子「ただいま」
さくら「お帰んなさい」
真知子「あ、楽しかった〜。
渡し舟に乗ってね、
野菊の墓まで行って来たの」
結構健脚だなあ…。
矢切の渡し場から「野菊のこみち」の案内板を頼りに1.5kmも畑の中を
下矢切の高台に向かい歩く。
そこは「野菊の墓 文学碑」がある「西蓮寺」である。
真知子さんはこの西連寺までみんなで行ったのだろう。
小学生の子供も一緒なので、真知子さんは片道30分ぐらいはかかる。
往復で1時間。ちょっとキツイと思うが…。
ちなみに「野菊の墓」は15歳の政夫と二つ年上の従姉弟の民子との悲恋を描いた物語。
伊藤左千夫の処女小説。
『僕の家といふは松戸から2里ばかり下がって、矢切の渡しを東へ渡り、小高い岡上で
やはり、矢切村と言っている所。』
で始まる情緒豊かな美しくて読みやすい小説。
映画では1955年の木下恵介監督の「野菊のごとき君なりき」がある。
渡し船の客である老人になった政夫が老船頭に
思い出を語る手法で話は進んでいく。回想シーンを全て
楕円形にぼかした手法が新鮮だった。
後にアイドルや歌手さんが主役で何度か映画化されたが、
木下監督のあの映画がダントツ美しく切なく哀しい。
【野菊の墓あらすじ】
旧家に育った政夫と家の手伝いと政夫の母の看護に呼ばれて家に来ていた従姉の民子。
政夫はまだ小学校を卒業したばかりで、民子はその二つ年上にしかならない。
そのあまりに無邪気な仲の良さが、周囲の好奇心をあおって噂になる。
世間の目を気にする親たちによって、民子は政夫が学校に寄宿する間に嫁に出される。
やがて、悲しみの中で病を得て嫁ぎ先から里に帰された民子は、政夫の手紙を
握りしめながら亡くなってしまう。
そして、民子の墓の周りには、二人の好きだった野菊が咲き乱れていた。
さくら「ああ、そう、他の人たちは?」
真知子「河原で遊んでる 私は疲れちゃったから
帰ってきちゃった。アハハ」
さくら「亭主」
真知子「あ」
博「あ いらっやい」
真知子「始めまして寅さんにはいろいろと」
・・・どうしたの?寅さん」
寅、襖にもたれて寝てる。
さくら「フ・・・張り切りすぎてゆうべろくに寝てないみたいよ」
真知子「あ、あら ま フフフ」
襖にもたれて転寝。
コク…
このはしゃぎすぎてコックリ寝てしまうパターンは
第13作「恋やつれ」で使われていた
今回のお品書き↓
第38作の時とまったく同じメニューを使っている。
このメニューはもう6作品で同じ物。
メニューの固定化がおこっている。
冷蔵庫は今回もサントリービール
最近はサントリーが多い。
草だんご300円
焼だんご300円
磯乙女300円
茶めし200円
お赤飯200円
こがね餅200円
おでん 400円
くず餅300円
あんみつ300円
ところてん300円
ジュース200円
ラムネ150円
ビール300円
江戸川土手
口笛入りのいつもの軽快な曲が流れる。
茂「『ダイレクトメールと言えど我宛のハガキ喜ぶ秋の夕暮れ』
この感じ よく分かるなア」
由紀「でも『秋の夕暮れ』が今ひとつなんだけどね」
茂「でももっと好きなのがあるよ
『愛人でいいのと歌う歌手がいて言ってくれるじゃないと思う』
オレ笑っちゃったよ これ読んだとき」
由紀「なんて歌手が歌ってるか分かる?」
茂「分かる分かる」
由紀「は」
歌手の名はテレサ.テン
歌の名は「愛人」
愛人
作詞荒川とよひさ
作曲三木たかし
歌 テレサ.テン
あなたが好きだから それでいいのよ
たとえ一緒に街をあるけなくても
この部屋にいつも帰ってくれたら
わたしは待つ身の女でいいの
尽くして 泣き濡れてぬれて そして愛されて
時がふたりを離さぬように
見つめ寄り添ってそしてだきしめて
このままあなたの胸で暮らしたい
満男、カメラでスナップ。
源ちゃん、息子にハンテンを羽織らせてやる。
源ちゃん息子にガオー!
息子「兄さん助けてー」
茂、助太刀に行く。
満男カメラでスナップを撮ってやってる。
『朝刊のようにあなたは現れて はじまりと言う言葉がかがやく』
とらや 茶の間
さくら「なあん・・・アハハハハ!ウソォ!」
博「アハハハハ真面目に聞いてたら」
さくら「ねえ!」
寅「本当だってオレがこの耳で聞いたんだから」
真知子「そのおじいさんの声を?」
寅「う〜ん。ちょうど座ってると仏壇が…、真後ろにあったなあ
で、かすれたような声でね、
佐渡へ〜とぉ…くぅさぁきぃもぉなぁびぃくぅよぉぉ・・・
アリャアリャアリャ、サ!ってね、
オレしょうがねえから手拍子打って合わしちゃったよ
だけど、生まれて初めてだぜお化けと一緒に歌歌ったなんて」
さくら「もう でたらめばっかり」
寅「ほんとだってばさ〜」
博「しかし、兄さんにはあるかも知れないぞ
普通の人にはおこり得ない事が」
真知子「うん、私もそう思う」
寅「へんに敏感だからなオレって」
博「グブ!!」
真知子「フ!」
さくら「いつ亡くなったのそのおじいさん」
寅「うん えっとね 8年前って言ってた」
さくら「病気?」
寅「違う!」
真知子「あら、私その話聞いてないわどんなふうにして亡くなったの?
あのおばあさんの連れ合い」
寅「ンン、秋も終わり寒い風がピュー・・・と吹くころ」
真知子「うん」
尺八の音
寅「野良から帰ったおじいちゃんが
『ばあさんやオラ横になりてえから布団さ敷いてくれねえか』
そう言ったそうですよ」
寅「おばあさんが布団を敷いてやると」
さくら「うん」
寅「おじいさんはそこへ横になって
『オラぁもう疲れたでよ・・・先に行くでよ・・』
そう言ったんだって」
おばちゃん「まあ…」
寅「おばあちゃんが泣きながら
『オラ一人で残されたら寂しいべよ』と言うと
おじいちゃんがな
『しんぺえすんな、オラ毎晩お前の枕元に出てやっから』
『本当に出てくれるだか?』
『約束するだ』
そう言うとおじいちゃんはふかーい、ふかーいため息を
一つ『ハアー・・・』っとついて、ポックリいっちまったんだって
その夜、おばあちゃんは、おじいちゃんに添い寝をしてやって、
朝、着物を着替えて、村中の家々に、
『ゆうべ、私の連れ合いは仏になりました。
生前はお世話になりました』
と、あいさつして回ったんだって」
仏になったおじいちゃんに添い寝を一晩してやるなんて、
本当に深い契りで結ばれていた夫婦だったんだねえ…。
さくら「いい話ね」
真知子「ほぉ…んと・・・」
おばちゃん、泣いている。
現代医学的に言えば、野良から帰って一日で
亡くなってしまうのは、循環器系か脳か、なんらかの
病気の名前が普通はついてしまうのだろう。
しかし、寅はさくらの「病気」という質問に
はっきり「違う」と強い語調で言いきるのだ。
病気とは思わずに天寿だと思って静かに眠るように
この世を去るときが確かにあるのだ。
知らぬが仏、ということはこの世には多い。
あの35作「恋愛塾」の五島の若菜ちゃんの
おばあさんもそのような最期だった。
真知子「私の亭主も一度ぐらい化けて
出てくれたらよかったのに・・・
愛情が無いのかしら フフ」
さくら「やっぱりお医者さんだったの?ご主人」
真知子「学校の先生」
さくら「どんな方だったの?」
真知子「山が好きで好きでどうしても山で暮らしたいって
信州に就職したの。だから私もしかたなし、今の病院で」
さくら「へえ〜」
さくら「じゃあ、しょっちゅう山登りを?」
真知子「そお、オレは慎重だから絶対山じゃ
死なないって言うのが口癖だったの」
さくら「うん」
真知子「でも結局は、遭難して死んじゃったわ」
博「ええ?」
真知子「一ヶ月もたって雪の中から死体が
見つかったんだけどね、
ポケットの中にあった泥だらけの手帳に
『真知子ごめん』って、書いてあったの」
さくら「そお・・」
真知子「それ見た時、腹が立って、
謝ればそれで済むと思ってるのか、
何て身勝手な男だろうって、
破って捨てちゃったわ、そのノート」
その時の絶望と絶対的孤独を思い出してしまい、
耐え切れないで下を向いてしまう真知子さん。
寝転んでいた寅、真剣な顔をして起き上がる。
あまりにも、思いがけない真知子さんの行動に、
真剣な顔で起き上がる寅。この怖いくらいの真剣な
表情が寅の人並みはずれた洞察力の表れでもある。
それでも、夫の最後の文字を破いて捨ててしまった
その時の彼女の絶望は分かるはずもなかった。
さくら、下を向いて考えている。
博、真知子さんを見ている。
寅も彼女を見ている。
沈黙の時間が流れる。
真知子「あ、ごめんなさい
あたし何でこんな話しちゃったのかしら」
と、涙を拭く。
わかるわかる、とらやのみんなと一緒にいると、
心がとけるんだよね。
店でおいちゃんがお客さんにお礼。
おいちゃん「ありがとうございました」
おいちゃん茶の間に帰ってきて、
おいちゃん「何のお話ですか?やーれやれ」
おばちゃん「どっこいしょ」と、台所へ立つ。
おいちゃん「よっこいしょ」
寅「その立ったり座ったりする時にさ、
やれやれだとかどっこいしょって
言うのやめてくれよ、
爺むさい婆むさい」
寅「お前みたいな体の丈夫なやつにはな、
年取るとどんなにつらいか分からないんだ」
寅の過去の病歴:盲腸、胃痙攣、便秘、風邪 なにより恋の病。
さくら「そうよ」
おばちゃん「そうだよ」
真知子「は・・・寅さんはそんなに丈夫なの?」
おいちゃん「それだけが取り柄です!」
寅を指差し、きっぱり。
寅「なんだよ、それじゃ、
オレがまるっきりバカみたいじゃねえか。
オレだっていろいろあるんだぞ、悪いところが
それ我慢してやってんだ。」
博「はじめて聞いたな、どんな所が悪いんですか?」
寅「近頃めっきり記憶力が衰えたとかな」
真知子「それは誰にでもある事よ」
寅「いや、他にもあるんですよ 胸が時々痛むんです」
真知子「それはいけないわ、どんな風に痛む?」
寅「ええ、あの、こう キューンと差し込むようにね
こうオッパイの下が・・・はい」適当適当嘘八百(^^;)
真知子「ちょっと拝見」
寅「あ、脈ですか」
寅、手を握られて
寅「ああ!」と手を引く。
真知子「いえいえ、脈を診るだけで・・・」
寅「いえいえ、あたし
保険証持ってませんから」最高!(^^)/
真知子「いいの、そんな事」
寅「いや、オレ持ってないんだよね」しつこい(^^;)
第14作「子守唄」で、看護婦の京子さんが寅の熱を計ろうと、
おでこに手を当てた時もこうだった。
寅「いやいや、ちょっとお前変わりにね、」
博「診てもらえばいいでしょう?診てもらえば」
寅「お前丈夫だからお前ちょっと診て…」
と、無理やり博の腕を掴む。
博「いやいや、僕…」
さくらゲラゲラ笑っている。(^^;)
寅「ああああ!汚い汚い汚い!!」
博「いいですよ、もう、ハハハ」
寅「手消毒しなさいよ」ひでえ(^^;)
真知子さん、笑いが止まらない。
寅「汚いよおまえ!」
さくら「もう、いやねえ、フフフ」
寅「お前本当に診てもらえよ」
博「いいですよ」
寅「お前どっか悪いぞきっと」
真知子。手で顔をおおって笑い続ける。
真知子「アハッ!アハハ」
おばちゃんも、笑っている。
寅「おいちゃん診てもらうかそれとも 無駄か!」
このへん、渥美さんのアドリブくさいぞ(^^)
おいちゃん「まったく何を!」
おばちゃん「しょうがないね」
外を見て
おばちゃん「… あら、お帰んなさい」
みんな帰ってくる。
由紀「ただいま おなかすいちゃった」
おばちゃん「さあさ、どうぞ、お昼の支度ができてますからね」
由紀「すみません」
おばちゃん「どうぞどうぞ」
茂「おじゃまします」
満男「あー腹減った あの丼何?」
満男おばちゃんの肩を揉んでやる。
おばちゃん「天丼」
茂、タコ社長が、茂や真知子さんの息子に挨拶し、
賑やかな茶の間を覗いている。(マドンナ目当て)
博の声「アハハハハ!」
由紀の声「いやだ〜」
由紀の声「えー」
縁側から、茂は朝日印刷を見ている。
この茂が真知子さんの息子と庭を見ている場面で
先ほどの笑い声の音声が2度使い回しされていた。
ここでさっきの音声の使いまわし。
博の声「アハハハハ!」
由紀の声「いやだ〜」
由紀の声「えー」
全く同じ(^^;)
柴又駅 ホーム
あれからみんなで天丼食べて、
夕方遅くまで歓談したんだねえ(^^)
満男「これお前の帽子?」
息子「僕のなんだから!」
満男、ふざけて息子を線路に落とすふり(^^;)
結構ギリギリ(><;)
由紀「あ、やめなさい あぶないわよ」
由紀「電車来るから」
デンキランド 金町店 03-(608)0201 P大駐車場完備 ググッと楽しいデ・ン・キ館 Denki
Land
京成広告専門店 ボード TEL03-778-2961代
真知子「はあ〜…、寅さんといると
どうしてこんなに楽しいのかしら」
寅「へへへヘ、いつもバカなこと
ばっかり言ってるから。
オレさくらにしょっちゅう怒られてるんだよ」
真知子「ううん、そうじゃないのよ、
寅さんと話してるとね、
カメラがズーム
フ・・・何て言うのかな…、
私が一人の女だと言う事を思い出すの」
微笑んでいた寅の顔が、真剣になる。
どう反応していいか分からず空白の時を漂う寅の眼。
寅「あ、電車が来た」
由紀「さようなら」
寅「あ、さようなら」
ドアが開く。
電車番号 3542
息子「バイバイ」
満男「バイバイ」
真知子「いろいろありがとう」
握手を求める真知子さん。
真知子さんの手を見つめる寅。
満男驚きながら寅を見る。
寅、背広の胸で手を拭いて…
寅、手を差し出し握手。
顔面蒼白
僅かに頷きながら微笑む寅。
発車の笛
メインテーマが美しく流れる。
真知子「じゃ…」
と、真知子さんの手が離れる。
ドアが閉まり
去っていく電車。
いつまでも握手のままの姿勢をとっている寅。
寅「伯父さん行こう」
メインテーマ高まっていく。
手を見ながら歩いていき、
そっとまた立ち止まり…。
もう一度振り向き、電車の方向を見、
また、自分の手を見る。
そして
最後にその手をそっと背広の内側に
仕舞いこみ、ゆっくり歩いていく寅だった。
『愛ひとつ受けとめかねて帰る道 長身短針重なる時刻』
題経寺 山門
源ちゃんがアクビしながら、掃除してるふり(^^;)
三平ちゃん、団子届けに来る。
寺の中、縁側
お茶を飲む御前様
三平ちゃん「こんにちは」
御前様「うん」
さくら「ご苦労様」
さくら「あー、すっかり秋ですね、御前様」
御前様「そうそう、昨日寅が来て久しぶりに歓談しました」
さくら「あら、どうせバカな事ばかり言ってたんでしょうね」
御前様「いやいや、近頃は
金儲けしか考えん人間が
この門前町にも増えてきましたから、
寅のような無欲な男と話してると
むしろホッといたします。
うん あれはあのままでいい」
さくら「ありがとうございます。
そんなふうにおっしゃって頂くと
少しは安心いたします。」
さくら「それじゃ、私これで」
御前様「帰りますか?」
さくら「はい ごめんくださいませ」
御前様「褒めたつもりじゃないんだが 困ったな」
御前様は、さくらが謙虚に寅の欠点を言って、
『中和』すると思ったのだろうが、
さくらは、寅が御前様に珍しく褒められる時、
いつもありがたくその言葉をいただくのだ。
それがさくらの救いであり、寅の救いでもあるからだ。
寅を『無欲な男』と表現した御前様。
常日頃、御前様は普段は、「困った〜」と寅のことを嘆いている。
第1作からずっと何かあるたびに「困った〜本当に困った〜」の連続。
「寅を押し売りと間違えるのはむしろ正常な感覚です」と言ったり、
「煩悩が背広を着て歩いているような男」と言って憚らない。
しかし、寅を愛する御前様は時として私たちの心に染みとおるような
温かな言葉をおっしゃることもある。
寅を『無欲』と表現できるのは、尋常な洞察力ではない。
人間の仮面の裏の貪欲さを知り尽くしている人だけが感知しうる
感覚だ。
第39作「寅次郎物語」でも御前様は寅をこう表現している。
御前様「仏様が寅の姿を借りて
その子を助けられたのでしょうなあ…」
さくら「もったいない兄みたいな愚かな人間が
仏様だなんてバチがあたりますよ御前様」
御前様「いや、そんなことはない。
仏様は愚者を愛しておられます。
もしかしたら私のような中途半端な坊主よりも
寅の方をお好きじゃないかとそう思うことが
ありますよ、さくらさん」
第14作や第17作、第18作、第25作、39作などの寅の奮闘などを
思い出すにつけ、御前様のこれらの言葉が蘇ってくる。
それにしても、この会話で御前様が、珍しく門前町の人々の一部を批評している。
「近頃は、この門前町にも、金儲けのことしか考えん人間が、増えてきましたから…」
と、寅の『無欲さ』と対比させている。この発言は、実は、この頃起こったある騒動と関係があったのだ
と私は思っている。
その騒動とは、木屋さんの斜め向かいにあった『柴又屋』という団子屋さんが、突然、この作品の
少し前に、店の名前を『とらや』にしてしまったことにはじまる。確かに柴又屋さんは初期の作品群では
木造の雰囲気のある団子屋さんだったせいもあって店先を映画に使われていたし、映画で使う小道具
や『とらや』と名前の入った店先の売り台もスタッフは年に2回も撮影があるのでいつも店先に
置きっぱなしにしていた。しかし『とらや』という名前はあくまで柴又にある架空の店の名である。
架空の店だからこそ、いろいろな話も作れるし、他の店にも迷惑がかからないのだ。
しかし、映画が人気が出たからといって、その中の架空の店である『とらや』を柴又で実際に使うと
いうことは、名前をとらやに変えた柴又屋さんはお客さんがかなり激増して嬉しいだろうが、観光客が
「ここがあの映画で出てくる『とらや』かあ…」と勘違いしてしまう問題が生じる。
せっかく本当に『店先』をロケに使われていたのだし、売り台も置いて行ってくれているのだから、
ここはやはり『初期の頃この店先がロケでいつも使われていました』と店先に貼り紙や看板を
出したり、記念写真やポスターやシリーズの名場面をどんどん店内に貼ったりして地道に宣伝する
のがいいと思う。そういうのはどんどん積極的にやればいいと思う。そして店の正式な名前自体は
昔から続いた『柴又屋』を維持し、愛し、大切にこの先も受け継ぎ、かつてロケに店が使われたことに
誇りを持ち、そのままでいくのが、参道の店々も松竹も、スタッフたちもファンもみんな幸せで一番良いと
思われるのだがどうだろう。
柴又屋さんが、この映画シリーズが好きで好きでファン意識が高じて純粋についつい店の名前を『とらや』に
変えて松竹に迷惑をかけているのなら、みなさんご存知の通り私なんかもそういうタイプなので(^^;)ゞ
気持ちは凄く分かるのだが、もし万が一、この店名変更の理由の中に、冷静な儲け主義の考えが
潜んでいるとしたら…ちょっと淋しい。そうでないことを祈りたい。
御前様のおっしゃったあの言葉はそういう騒動のことを意識していると私は勝手に思っている。
松竹側は、そのまんまでは誤解を招くので変えてくれるように頼んだのだが聞いてもらえず、
それでしかたなく映画の側が「車菓子店舗(屋号は『くるまや』)」に変えざるを得なかったということ。
ちなみに映画の『とらや(くるまや)』のイメージ的なモデルとなった店は『木屋老舗』さんである。
山田監督も、スッタフも、キャストもみんな、ここを拠点として着替えたり、食事を取ったり
休憩したりしていた。ロケ以外のときも渥美さんも電車に乗って、時々食べにきていたらしい。
この『騒動』の詳しいことは当時助監督だった五十嵐敬司さんが書かれた本
「寅さんの旅.『男はつらいよ』ロケハン覚え書き」(日本経済新聞社)にも書かれている。
江戸川土手
寝転ぶ寅の横で満男が悩んでいる。
満男は寅と散歩に来たんだろうか。
ありそうでない珍しいシチュエーションだ。
サイレン
満男「伯父さん質問してもいいか?」
寅「あんまり難しいことは聞くなよ」
満男「大学へ行くのは何のためかな?」
寅「決まってるでしょう?これは勉強するためです」理由になってないって(^^;)
満男「じゃ、何のために勉強するのかな?」そうくるよな(^^;)
寅「え?そう言う難しい事は聞くなって言ったろう」
寅「つまりーあれだよ、ほら
人間長い間生きてりゃいろんな事にぶつかるだろう。
な、そんな時オレみてえに勉強してない奴は、
この振ったサイコロの出た目で決めるとか
その時の気分で決めるよりしょうがないな、
ところが、勉強した奴は自分の頭で
キチンと筋道を立てて、
はて、こういう時はどうしたらいいかなと
考える事が出来るんだ。
だからみんな大学行くんじゃないか、そうだろう。
ち、久しぶりにキチンとした
事考えたら頭いたくなっちゃった」
確かに『学問』の意味は寅の言う通りかもしれない。
さすがに寅は分かっている。しかし、学問することの
方法は『大学へ入学すること』だけではない。本を読んだり、
人と話したり、旅の中で何かを学んだり…、瞑想をしたり…等々
いろいろあると思う。
自分の中にたゆまない追究心と好奇心があれば、学校や
組織にこだわることは無いとも思う。大学は人間が成長する
ための場所としては、確かに有効だが、一つの選択肢にしか
過ぎない。
しかし、もし仮に大学に行くことに疑問を感じているとしても
寅はさくらたちとの間にしがらみがあるので、
彼らの大事な一人息子の満男に、大学だけが人生ではないとは
やはり言えないのである。
早稲田大学 文学部 (戸山キャンパス) 広場
三朝庵向かい
穴八幡宮神社の近く
本部から歩いてほんの5分。
茂がハンドボールをしている。
シュート!
由紀ちゃん記念会堂前の階段に座り
それを見ている。
この体育館は『記念会堂』といい、入学式や卒業式に使う。
昭和39年(1964年)の東京オリンピックでは体育館として
フェンシング会場ともなった。
サザンオールスターズの『ステレオ太陽族』が流れる。
♪誰の彼女か知らぬけど
踊る姿がいかしてる…
ステレオ太陽族 1981年
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ)
サザンオールスターズの4枚目のオリジナルアルバムであり、
9曲目に収録されている楽曲名である。1981年7月21日発売。
誰の彼女か知らぬけど
踊る姿がいかしてる
you are an another girl
shyなそぶり最高
you are so beautiful
振り向いておくれな
髪のみだれもそのままに
誰をまつのさなにゆえに
you are an another girl
夢を見ちゃいそうな
you are so beautiful
ステレオみたいに
it’s up to you
I’d like to fall in love with you
どんな態度が君にいいのか分からないよ
Hand jive moan
Feel me groove
Just an another lover
イントロから徐々に音量が上がり、
曲全体でも1分29秒と非常に短い楽曲である。
汗をかき、着替える茂。
微笑みながら
つぶつぶオレンジの缶ジュースを飲む由紀ちゃん。
『バレンシアオレンジしかもつぶ入りの100パーセント果汁のように』
そういえば、俵万智さんの『サラダ記念日』にこういう歌があった。
『想いっきりボリュームあげて聴くサザンどれもこれもが泣いてるような』
早稲田大学本部 南門前
喫茶店(レストラン) 高田牧舎
茂が文庫本を読んでいる。
由紀ちゃん、外から、茂の姿を見て、
すぐに店の中に入り、声をかける。
待ち合わせしてたんだね(^^)
『文庫本読んで私を待っている 背中見つけて少しくやしい』
2004年春に南門前の高田牧舎も取材した。↓
私の入学した時は、もっとクラッシックな店だったが、
卒業する頃には、このようなモダンな店になってしまった。
創業は、なんと明治38年(1905年)。
ミルクホールとして開業したこのお店、「高田牧舎」の名は
大隈重信邸に牛乳を届けていた牧舎がこの地にあったことに由来する。
私が通っていた時からじっくり煮込んだカレーライスとハヤシライスは名物。
写真の少年は当時14歳の息子。
早稲田南門商店街を文学部の方に歩く由紀ちゃんたち。
さっき、高田牧舎で2人で待ち合わせしたと思ったのに、
なぜか5人で歩いている。
この時のメンバーは
由紀ちゃんの居所を探してくれたあの茂の友人と
「由紀ちゃん、佐々木さんの講義出るでしょう?」
と言っていたあの女性二人。計5人。
1週間以上たった別の日なのに友人3人ともみんな同じ服着ている(^^;)
上下の服が、寅が来たあの日と同じもの。
スッタッフさん、同じ時に撮影したことバレルよこれじゃ。
もちろん由紀ちゃんと茂だけは別の服を服を着ている。
でも主役の2人とも下の白いシャツはあの日と同じ。
1週間以上は経っているのになのに友人3人みんな同じ服
→
この先にカレーうどんとカツ丼発祥の店でもあり
大隈重信御用達でもあった『三朝庵』がある。
窪田洋服店の前を通り、
(味自慢千貫ラーメン)中華料理の店 『ほづみ』の前を通る。
ほづみも2007年の今も健在。
しょうゆラーメン380
塩ラーメン380
みそラーメン430
チャーハン430
ギョーザ260
3人のチンドン屋がカネタイコを打ち鳴らしながらすれ違う。
背中に『堂々新装OPEN パチンコ 凱旋門』の
看板を背負っている。
『小春日の早稲田通りのチンドン屋 見ルナ見ルナというように行く』
2004年春の取材。先ほども貼り付けたがもう一度。
『初めての口づけの夜と気がつけば ぱたんと閉じてしまえり日記』
下で声
息子「由紀ちゃーん!電話〜」
由紀「はい」
降りてきて
由紀「どけ」(^^;)
息子「何だよ」
由紀「ハイ、由紀です。 な〜んだおばちゃまか
亮がただ電話って言うからボーイフレンドからだと思ったのよ」
と、息子をこずく。(息子さん、母さんから電話って言いにくいよな。自分の母親だからね)
息子「ヘヘへ…」
由紀「なあに、どうかしたの?」
由紀「おばあさんが危ない?
いつか寅さんと一緒に入院した、あのおばあさん?」
真知子「明日まで持つか持たないかなの それでねー」
真知子「それでね、さっきからおばあちゃんが
うわ言のように何べんも寅さんに会いたいって言うのよ
どうしたもんかなと思って 寅さんに話したら迷惑かしら」
由紀「分かったとにかく頼んでみるわ。
寅さんなら、きっと行ってくれると思う」
真知子「む、無理な頼み方しないでね、
私のわがままなんだから うん、それじゃ」
静かに真知子のテーマが流れる。
悩む真知子さん。
看護婦「先生、脈がとれません」
真知子「ビタカン用意して」ビタミン・カンフル注射
瀕死の病人に起死回生のため、打つ時がある。
看護婦「はい」
看護婦「リエちゃん、チョッと来て、」
とらや 夜
茂と由紀が待っている。
小諸へ行くために、赤い車が停まっている。
寅、2階から下りてくる。
おばちゃん「あ、危ない」
寅「ええい、」
寅「お、お待ちどお」
寅「おいちゃん、オレ信州までひとっ走り行って来るから、な!」
おいちゃん「ん…」
由紀「ねえ、本当に無理じゃなかった?」
寅「あのおばあちゃんがな、
オレに会いたいつってるんだぞ
行かねえわけにいくもんかい!」
寅「青年」
茂「はい!」
寅「お前運転手か?」
茂「ええ」
寅「よし!車の方自信あるか?」
茂「勉強は自信ないけど、車の運転なら」
寅「よーし!行こう!はい!行け!」
おいちゃん「おい、寅、」
寅「ええ?」
おいちゃん「その学生さん腹減ってるって言うから
何か食わしたらどうだ?」
寅「いらないいらない、オレ腹いっぱいだ。
はい!はい、行こう行こう」
おばちゃん、台所から飛んできて、
おばちゃん「お嬢ちゃん、これ車の中でおあがり」
と、おにぎりを渡す。
由紀「どうも、ありがとう」
寅「早くしろ、早く早く ハイ!早く」
由紀「お騒がせしました」
おいちゃん「くれぐれも気をつけてな」
由紀「はい」
寅「ぶっ飛ばせ」
車が出て行く。
由紀「さいなら〜」
車が走り去っていく。
おいちゃん「行っちゃったか・・・」
おばちゃん「もしかしたら、
このまま帰ってこないんじゃないかね〜」
おばあちゃん戸を閉めて、カーテンを閉じる。
おばちゃんのこういう時のカンって当たるよね(−−)
早朝 信州小諸
朝、小諸病院にたどり着く寅たち。
看板 信濃毎日
由紀「着いたわよ〜もう、
結局私がほとんど運転したんじゃない」
なんと…、茂、車の運転だけは自信あるんじゃなかったのか(−−;)
由紀ちゃん可哀想(TT)
茂、由紀に起こされてなんとか起きる。
茂「寅さん」
寅「うん?」
茂「着きましたよ 寅さん」
寅「あ?うん」
由紀「寅さん、」
寅「うん?」
由紀「着いたよ」
寅「どこ?」どこって…(^^;)
由紀「病院」
由紀「もう、早く〜」
小諸病院 廊下
寅「あ、看護婦さん」
看護婦「寅さん・・・」
寅「おばあちゃん、具合どうだい?」
看護婦「残念だわ〜 今朝五時に」
寅「そうか〜・・・間に合わなかったか・・・」
霊安室
身内の人たちがいる。
渥美さんの付き人の篠原さんもいる。
真知子さんが下を向いて放心している。
寅「お身内の方ですか?
このたびはご愁傷様でございました。
ご焼香させていただきます」
真知子「寅さん、来てくれてありがとう」
寅「間に合わなくてどうもすみませんでした」
チーンチーンチーン・・・
拝む寅。
真知子「おばあちゃん、寅さん来てくれたわよ」
寅、おばあちゃんの顔を見て、微笑む。
寅「ああ、いい顔だなあ…、
おばあちゃん今ごろは、おじいちゃんと二人で
仲良く話してるよ。ねえ…」
寅が、死に顔に対してこういうこというのは初めて。
第2作「続男はつらいよ」の時は散歩先生の死を
受け入れられず、腰を抜かし、喚いていた。
年齢を経て、寅の心が深くなったんだね。
こういう寅の顔は、晩年でなければ見れないのだ。
真知子さん、耐え切れずに
泣きながら外に出て行く。
真知子のテーマが静かに流れる。
霊安室の、外の廊下
真知子「うう・・・」
木綿のハンカチ(手ぬぐい)を渡す寅
真知子「おばあちゃんが手を合わせて
お願いだからあの家で死なせてくれって
そう言ったでしょう?
あの時の顔が目に浮かんでねウウ・・・」
寅「疲れてるんだよ、ね、
少し休んだらいいや、少し横になって」
真知子「ありがとう」
と、寅の胸に顔を埋め泣いてしまう真知子さん。
寅「…!!!」
寅、どうしていいか分からず、
彼女の肩に手をやりそうになりながらも
ぎこちない動きになって帽子に手をやってしまう。
向こうの館からドアを開けて出てきた
2人の看護婦たちが、はち合わせ。
看護婦、驚いて、口を手で押さえて
看護婦「あッ!」
寅「は!」
真知子さんと寅、パッと離れる。
看護婦「すいません」
真知子さん寅にちょっと微笑んで、
真知子「あ、ごめんなさい」
寅「いいえ」
看護婦たち、戻ってしまう。
真知子さんも急いで、館に入っていく。
寅、一人残って、深くため息、
寅「はー…」
そして霊安室へ戻る。
小諸郊外のおばあちゃんの家
お通夜(葬式)の読経
お経は『大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)』
おばあちゃんは曹洞宗なのだろう。
なむからたんのうとらやーやー
なむおりやー、ぼりょきーちいしふらーやー
ふじさとぼーやー、 もこさとぼーやー
もーこーきゃーるにきゃーやー
えんさーはらはーえいしゅうたんのうとんしゃー
なむしきりーといもー …
南無喝羅怛那。多羅夜耶。
南無阿利耶。婆盧羯帝爍仏羅耶。
菩提薩垂婆耶。摩訶薩垂婆耶。
摩訶迦盧尼迦耶。奄。薩幡羅罰曳数怛那怛写。
南無悉吉栗垂伊蒙。…
沈んでいる寅。
大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)は
正式には『千手千眼観世音菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼』といい、
略して、『大悲呪』ともいわれる。
観世音菩薩を賛える32句からなる陀羅尼(呪文の句)
(真言のこと、また「総持」」とも訳され、一切の功徳を総て持つという意味)。
「千手千眼観音」が慈悲の心で人々の苦しみを救う事を説いた呪文のお経
大悲心陀羅尼と大悲円満無礙神呪(大悲呪)は同じお経。曹洞宗でよく読まれる。
観世音菩薩の無限の大悲(衆生をあわれみ、その悩みを除き去る大きな慈悲)と
その偉大な功徳をあらわしている。
お寺での日々の勤行や法事の時などによく読まれている。
↓赤字がこの映画で読経されている部分。
『千手千眼観世音菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼』大悲呪
梵語の呪文をそのまま漢字で音写したものであるため、
経文を読んでもその意味を理解することはまったくできない。
南無喝羅怛那。多羅夜耶。
南無阿利耶。婆盧羯帝爍仏羅耶。
菩提薩垂婆耶。摩訶薩垂婆耶。
摩訶迦盧尼迦耶。奄。薩幡羅罰曳数怛那怛写。
南無悉吉栗垂伊蒙。阿利耶。婆盧吉帝。
室仏羅。楞駄婆。南無那羅。謹塀醯利。摩訶幡多。
沙梼F婆。阿他豆輸朋。阿逝孕。薩婆薩多。那摩婆伽。
摩罰特豆。怛姪他。奄。
阿婆盧醯。盧迦帝。迦羅帝。夷醯利摩訶。菩提薩垂。
薩婆薩婆。摩羅摩羅。摩醯摩醯。利駄孕倶盧倶盧。
羯蒙度盧度盧。罰闍耶帝。摩訶罰闍耶帝。陀羅陀羅。
地利尼。室仏羅耶。遮羅遮羅。麼麼罰摩羅。穆帝隷。
伊醯伊醯。室那室那。阿羅參仏羅舎利。罰沙罰參。
仏羅舎耶。呼盧呼盧。摩羅呼盧呼盧。醯利娑羅娑羅。
悉利悉利。蘇盧蘇盧。菩提夜。菩提夜。菩駄夜菩駄夜。
弥帝利夜。那羅謹塀。地利瑟尼那。婆夜摩那。娑婆訶。
悉陀夜。娑婆訶。摩訶悉陀夜。娑婆訶。悉陀喩芸。
室幡羅耶。娑婆訶。那羅謹塀。娑婆訶。摩羅那羅娑婆訶。
悉羅僧阿穆羯耶。娑婆訶。娑婆摩訶悉陀夜。娑婆訶。
者吉羅阿悉陀夜。娑婆訶。波多摩羯悉陀夜。娑婆訶。
那羅謹塀幡伽羅耶。娑婆訶。摩婆利勝羯羅耶娑婆訶。
南無喝羅怛那多羅耶夜。南無阿利耶。婆盧吉帝。爍幡羅夜。
娑婆訶。悉殿都漫多羅。跋陀耶。娑婆訶。
谷よしのさん登場。
女「お勤めが始まりましたで、どうぞ」
静かに、拝みに席を立つ寅。
落ち込む寅を見ている谷よしのさん。
谷さんの表情がデリケートに長く映る、珍しいシーン。
小諸病院
院長室
コンコン、
看護婦「院長先生、回診の時間です」
院長「ちょっと待ってくれ」
看護婦「はい」
天丼のおわん
院長「この病院やめて何するの?」
真知子「しばらく、仕事から離れて
自分を見つめ直してみたいんです。
子供とも一緒に暮らしたいし」
院長「自分を見つめたいか…、結構ですねえ。
寅さんの言葉を借りるなら、
結構毛だらけ猫灰だらけだ。」
真知子「どう言う意味ですか」
院長「その程度のことで辞められたんじゃ、医者が
何人いたって足りませんよ。こういう土地じゃね。」
真知子「その程度とおっしゃいますけど
私にとっては大きな問題なんです
ハー・・・それにいろいろ勉強して
みたい事もありますし・・・」
院長「いいですか?この病院はあなたを必要としている、
それが何よりも大事なことで、
その、あなたが抱えている問題などはたいしたことじゃない。
子供と会いたければ呼び寄せればいい。え?
悩み事があれば働きながら解決すればいい。
そうやって苦しみながらですね、
この土地で医者を続けていくことが、
自分の人生だってことに、あなたど、
どうしてその確信が持てないん…ですか。
東京の郊外のお母さんの家で、花でも眺めながら
休息の日々を送る。そのうち縁談が
あって、瀟洒な病院の奥様に納まる。
そんな人生があなたにとって幸せなんですか!
…ちっとも幸せなんかじゃない!」
強く、覚醒した目で院長を、見つめる真知子さん。
真知子「……」
この時真知子先生は変わった。違う人になった。
看護婦「原田先生、」
真知子「はい」
看護婦「3号室の上条さんが吐血しました」
真知子「血圧は?」
看護婦「40以下です」
真知子「じゃ、輸血の準備して」
看護婦「はい」
真知子「すぐいくから」
看護婦「はい」
院長「あの患者心臓弱ってるから注意しろよ」
真知子「はい」
もう完全に吹っ切れた真知子さん
最前線に向かう集中力のある眼
院長「何か言っちゃったな…」
と、激しく我に帰っている院長。
院長、好きなんだね…、真知子先生を(^^)
廊下を歩いていく真知子さん。
真知子「クロスすんだ?」クロスマッチ検査
看護婦「はい、やってます」
真知子「酸素」
看護婦「今準備中です」
真知子「3単位ね」 200ml×3単位=600ml
看護婦C「はい」
クロスマッチ検査
患者の血液と輸血する血液を混ぜ合わせて、輸血する血液が
患者さんにとって適切な血液であるか否かを確認する検査。
この検査で凝集をおこす場合は、
輸血をすると副作用がでるということを示す。
輸血製剤の量は「単位」で表記する。
日本では200mlの献血から作られる量が1単位。
国により量が異なる。
看護婦がドアを開けて、患者の様態の急変を告げる。
席を立つ真知子さん。
この時彼女はすでにこの地で医師を続ける決意に
溢れた目をしていた。変わった真知子さんの表情、
そして目の力がよかった。真知子さんはあの短い時間の中で
院長の言葉に感銘を受け、自分を見事に変えた。
優れた鋭敏な感覚と、深い教養、そしてなによりも動物的とまでいえる
反射神経。
最後に患者の緊急輸血のために最前線の廊下を歩いていく
真知子さんの背中に、今後の人生が全て見えた見事なシーンだった。
それにしても、あの院長の
「この病院はあなたを必要としている。それが何よりも大事なことで、
その、あなたが抱えている問題などはたいしたことじゃない」
この言葉は、ある意味、暴力的なまでに自分勝手な極論だ。
コーリング(Calling)。天が与えた仕事であり使命。
天からの使命を自覚すること。能力の高さは天が与えた『使命』が
あるゆえのもの。その才能を自分が好き勝手にしていいものではない。
自分は託されているのだ。
悩むことは許されるが、立ち止まることは許されない大きな使命。
人生にはそういうことがあるのだ。
才能を開花させながら悩む。悩みながら動く。見る前に飛ぶ。
それができること。そして仕事による多様で強烈なストレスを、
仕事をすることによってのみ解消させることができる才能。
これがCallingである。
今、巷で流行の「プロフェショナル」と、言ってもいいが、
やはりもっと逃れられない才能の呪縛と使命、そして開花。
Callingとしか言いようがない。
院長はそのことを熟知している。
真知子さんに自分と同じ匂いを感じ取っている。
渥美清さんはそういう人だったし、坂崎乙郎先生もそうだった。
おそらく、どんなに苦しくても、真知子さんは、子供を東京から呼び寄せ、
一緒に暮らし。最前線で仕事をしながら医者として人間として才能を
花開かせて行くのだと思う。
真知子さんは、夫が愛したこの美しい信州で生きていくのだ。
真知子さんの居間 夕方
茂「由紀ちゃん、ぞうきんあったっけ? 車掃除するんだ」
由紀「そこ」
茂、由紀ちゃんのサラダ見て
茂「あいよ うまそう」
寅「青年、」
茂「はい」
寅「駅まで送ってくれるか?」
茂「帰るんですか?いいですよ」
由紀「帰るの〜?今一生懸命晩ごはんの支度してるのに・・・」
寅「あ〜、御馳走になって行きてえんだけどもな、仲間が松本で待ってるんだ
5時の汽車にのらねえといけねえんだ」
由紀「ダメよ、おばちゃまに叱られるわあたし、」
寅「迷惑かけて悪かったなと、そう言ってくれ な、
そう言えば分かるから」
由紀「でも〜せっかくサラダも作ったんだし・・」
寅「いいかい、由紀ちゃん。
おばさまは女だ。
悲しい時やつらい事があった時にちゃーんと筋道を立てて、
どうしたらいいかなあ〜と考えてくれる人が必要なんだよ。
由紀ちゃんそう言う人探してやんな。な」
メインテーマが静かに流れる。
由紀「でも、その人が寅さんじゃいけないの?」
寅「……」
寅「バカなこと言っちゃいけねえ、
おばさまが聞いたら怒るよ」
と、笑いながらも
淋しそうな横顔をふと見せる寅。
由紀「寅さん好きなのね… おばちゃまが…」
鋭敏な感受性で寅の心を知る由紀ちゃん。
その言葉は『歌人』の心、『歌人』の眼でもあった。
こんな集中力のある優しいニュアンスで寅の気持ちを
言葉にしてくれた人はこの長いシリーズでさくら以外には
誰もいない。
寅、由紀ちゃんの作ったサラダを見る。
そして、サラダからフォークで2切れのピーマンを食べる。
由紀ちゃんは、寅の心と、真知子さんの心を想っている。
寅「うん、いい味だ」
と、フォークを渡す。
茂戻ってきて
茂「行きますか?」
寅「ありがとう」
寅「由紀ちゃんもうんと恋をして
いい歌を作んな。な、
あばよ」
最後に歌作りのこと言ってあげるのが寅のさすがなところ。
由紀「さよなら」
由紀ちゃんの心が
悲しみの中で静かに潤いを帯びていく。
この寅が旅立つシーンの三田寛子さんが私は好きだ。
なんともいえない柔らかさと鋭敏な感覚、彼女しか出せない
正に絶品の冴えでした。
『寅さんが「この味いいね」と言ったから 師走六日はサラダサラダ記念日』
とらや 夜
さくらが電話に出ている。
さくら「まあ、そんなこと気になさってわざわざ。
思い立って旅にでるなんてしょっちゅうなんですよ。
私たちは慣れっこになってますけど」確かに慣れっこ(^^;)
おいちゃんたち何かを察知している。
小諸 真知子さんの部屋
真知子「だったらいいんですけども あの、
実は私の姪が気に障るようなこと
申し上げたらしくて、
ご気分害されたんじゃないかしらと・・・
だとしたら、本当に申し訳なくて」
由紀ちゃん、横で落ち込んでいる。
さくら「大丈夫、心配なされないで。
仮にそんな事があったとしても
3日もたてばケロっと忘れてしまうのが
兄の取り柄なんですから」
3日は持たないだろう。1日でケロッと忘れるよ(^^;)
だいたい、由紀ちゃんの言葉は寅を傷つけてないし。
真知子「そうですか?そうおっしゃってくださればホッとします」
真知子「ああ、いいえ 夜分失礼しました。
あ、あの、またお会いしたいと思います。
ごめんください。フ・・・」
由紀ちゃんが寅に言ったことは、
寅の心を安らかにしてくれたと私は思う。
あの瞬間、由紀ちゃんは寅の心に寄り添った。
自分の気持ちをわかってくれる人がいる。
それは実らぬ恋を生み続ける運命を甘受している寅にとって、
その淋しい人生の中で数少ない救いなのだと思う。
とらや
さくら茶の間に戻ってきて
さくら「大体想像がつくでしょう?」
博「うん」
おいちゃん「また ひとつ終わったか」
おばちゃん「かわいそうに…」
おばちゃんは優しいねえ(−−)
社長「こうなるのは分かってたんだよ、
もともとつりあわねえんだからさ、アハハ・・・アハハ」
おばちゃん「何がおかしいんだよ」
社長、つりあっていようがなかろうが、
結果は一緒。
これが寅の人生なんだよ。
だから哀しいんだ。
社長「ん、 おやすみ」
さくら「おやすみなさい」
師走の風ピュー・・・
社長「おー寒い」
めずらしくキャメラは、タコ社長の立ち去る後姿を映しながら
レールを使って左の茶の間に流れていった。
こんな撮影を高羽さんがしたことは滅多にない。
特にこの茶の間でレールを使ったことは過去に記憶が無い。
この画像は右から左へレールを使って流れた映像を繋いで再現したものです↓
博「雲白く遊子悲しむ か・・・」
犬の鳴き声
哀しみの顔で火鉢に手を当てるおいちゃん。
余韻を持たせるようにゆっくりフェイドアウト
正月 江戸川土手
お馴染み江戸川土手で 凧が揚がっている。
満男の女友達が江戸川土手を歩いている。
さくらの家の前
女の子「あれが満男君ん家」
女の子「それにしても〜」
女の子「みんな成人式みたいねえ〜」
一同「せえの…、満男君!」
満男ニ階の窓を開ける。
満男「オス、」
一同「おめでとう」
満男「今行く」
満男「おめでとう」
一同「あ、おめでとう」
同級生「ごめんね待った?」
満男「待たないよ」
同級生「ユウ子ったら着物着るのとても嫌がって」
さくらの家 居間
さくら「はあ、まあま」
さくら「は、満男も出かけちゃったし お昼はお持ちでも焼く?」
博「うん」
さくら、原稿を見て
さくら「あら、これ由紀ちゃんの歌じゃない」
博「本にしてやる約束したんだよ もうけなしの大サービスだ」
さくら「なんて題にするの?」
博「『サラダ記念日』 もう少し歌集らしいのにしたらって言ったんだどねえ」
さくら「『サラダ記念日』・・・
ひょっとしたら売れるんじゃない本屋さんに出したら」
博「そうかなァ…」
さくら「『平凡な女でいろよ、激辛のスナック菓子を食べながら聞く』
売れるわよこれ」
博「フ・・・出版して大もうけするか」
初期投資する勇気あるかいあのタコが(^^;)
さくら「ビルがたったりして、本社ビル」
博「アハハハハ・・・」
備後屋「おめでとうございまーす」
さくら「あら、備後屋さん」
備後屋「旦那いる?」
さくら「ええ」
博「よお」
備後屋「あ!どうも 昨年中は
いろいろお世話になりました」
博「あ、いえいえ」
さくら「今年もよろしく」
備後屋「こちらこそよろしくお願いします」
朝日印刷は、小さな印刷会社なのでいわゆる『製本』だけをしてあげているわけで、
おそらく50部や100部、製本をするだけだろう。だから『出版社』ではない。
ましてや、儲けは無いにしろ印刷代の経費を由紀ちゃん自身にに払わせたとしたら、
事実上由紀ちゃんの『自費出版の形』になるので、仕上げた本は全て由紀ちゃんの
元に届けられ、由紀ちゃんの自由になる。したがって由紀ちゃんの本がたくさん売れ
出し始めたら、由紀ちゃんはおそらくどこかの『出版社』と独自に契約を結ぶだろう。
中堅以上の出版社の場合は、全国の書店に流すルートをしっかり持っているので、
契約先の書店でいっぺんに販売することが可能。したがって印刷された本は当然ながら
由紀ちゃんのところへは行かない代わりに全国の書店で売ってくれる。もちろん儲けは
ほとんどが出版社が取り、作家は10パーセント程度の印税を貰うだけである。
例外として、大手の印刷会社や大きめの書店などは、出版業も同時に
行っているところもあるが朝日印刷は『出版業』とは無縁。
と、いうことで、朝日印刷の場合、由紀ちゃんの本が売れ始めると、残念ながら、印刷は
新しく出版社と契約している大手の印刷会社が行ってしまうと思われる。
で、相変わらず由紀ちゃんの本が売れ出してからも、朝日印刷は本社ビルが建たなかった
のである。
信州 小諸病院
真知子さんが患者のレントゲン写真を見ている。
看護婦「おめでとうございます はい、郵便です」
年賀状が机の横にドサッと置かれる。
真知子「ありがとう」
看護婦「あ、おめでとうございます」
院長「うん?何がめでたいんだ?」
看護婦「どうしてですか?」
院長「正月は独り者には地獄よ、
飲み屋も食堂もみんなやすみなんだから。
仕方ないからね、コンビニエンスストアって
言うのに行って、一人用おせち料理って言うの
食ったけど まずくて涙出てきた」
ああいうのってまずいよねえ〜(^^;)
看護婦「アハハハハ」
院長「へへ・・・そんなとこで笑ってねえでお酌してえな」
看護婦「また飲むんですか、
早死にしますよ、
医者の不養生なんだから」上手い上手い(^^)
院長のバカ話に笑いながら、真知子さんは、
由紀ちゃんから来た、年賀状を読んでいる。
由紀「新年おめでとう
獲れたての短歌を
一首おばさまにさし上げます。
『旅立ってゆくのはいつも男にて、
カッコよすぎる背中見ている』
一九八九年 元旦 由紀」
由紀ちゃん最後まで微妙〜に京都弁(^^;)
真知子さんは、由紀ちゃんのこの歌、こころに沁みただろうね。
島原
島原城
お〜!最後の啖呵バイだけのために渥美さんが島原までロケに!
天守閣の下の広場で通学用のデイバッグをバイしている。
高校生でいっぱい。
寅「さあ、もう、ヤケだ ね!ヤケのヤンパチ日焼けのなすび
色が黒くて食いつきたいが わたしゃ入れ歯で歯が立たないよ、ときた!」
ピューマのバック
客「アハハハハ・・・」
島原城は寛永元(1624)年、松倉豊後守重政が7年の歳月をかけて築いたもの。
五層天守閣を中核に、大小の櫓を要所に配置した、安土桃山期の築城様式を
取り入れた壮麗な城だった。
しかし残念ながら大部分は明治維新のときに政府により取り壊されてしまった。
現在、本丸、二の丸の郭とその石垣を残す。
天守は世に言う第一期天守築城ブームのコンクリート再建時の復興天守。
中は資料館になっている。
ポンシュウ「今日は特別学生さんには大割引ね はい、
手にとって見て東京の学生さんみんなこれしょってんだ、
はい、カラッテごらん(背負ってごらん)。あーらいいね」
ポンシュウ、早稲田の角帽かぶっている。これぞ『天ぷら学生』
看板 早稲田大学
『学生特別割引』
ポンシュウ「あ、おじさん、これ欲しいの?
ちょっとカラッテごらんピクニックにはもってこい!」
なんとオープニングで登場したあの笹野さん扮する泥棒だ!
なぜ、小諸から島原へ!?
赤いピューマ(PUMA)のデイバックを背負う。
ポンシュウ「え、ね、いいねえ〜!ピッタシだよ!八ハハハ」
寅、背中から
寅「おじさんおじさん、おじさん、おじさん、こっち向いてこっち向いて」
泥棒、振り向く。
寅「おー赤い色が良く似合う。ピッタリだ」
泥棒笑いながら
泥棒「具合ええわ、うん」
寅「よかったよかった」
寅、どこかで見た顔だと…、ハッと気づく。
寅「あれ?」
泥棒「あ!いつかの…」
寅「泥棒!!」と指を指す。
泥棒、飛び上がって逃げる。
寅「ポンシュウ!ポンシュウ捕まえろ!!」
ポンシュウ「待てェ〜!!泥棒!泥棒!」
転がるポンシュウ。
どんどん逃げていく泥棒。
ポンシュウ「あいつ泥棒だ!追いかけてくれ!
いたああ、チクショウ!」
紐がほどけてしまったヘリウム風船が
天守閣の彼方に舞い上がっていく。
追いかけるみんな。
城を降りて、街を駆け抜ける出る泥棒
テキヤ仲間「待てェ!!ねえさん!捕まえて!泥棒だ!」
みんな「待てェ!!」
泥棒のほうが足が速い。
島原港の船着場に走っていく泥棒。
海の国道57号線
泥棒は今正に出発した連絡船(九州商船)に
飛び移り、船が出て行く。おそらく
三角行きか、松島行き。
追いかけてきたテキヤたち、へなへな。
島原の小島が遠く映って
遠く島原の島々が映って 終
どんな小さな連絡船や遊覧船でも、無線機は持っている。たとえ持って無くても
向こう岸の九州汽船の事務所にすぐ連絡とって、警察に来てもらい、
おそらく向こう岸で御用となるだろう。
泥棒も船に乗ったのが失敗だったね。陸を走り続ければ、
足が速いのだからどこかに雲隠れできたのに。船では足の速いのを
利用できないばかりか、ただひたすら船で向こう岸に着くのを待っているだけ。
バカだねえ〜。
ところで
確かに寅の行動は由紀ちゃんが言っていたようにカッコ良すぎる。
寅は引き際が肝心だなんて言っているけど、ほんとうは
自信と覚悟がないだけのこと。さくらやとらやのみんなは
分かっている。しかし、真知子さんや由紀ちゃんには
それは分からない。
だからこそ、
「旅立って行くのはいつも男にてカッコよすぎる背中見ている」なのだ。
しかしこれはあくまでも由紀ちゃんから見た真知子さんの気持ち。
真知子さんのもう一つの密かな気持ちを
今度は私が俵万智さんの『サラダ記念日』から選んでみた。
『愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人』
真知子さんは、寅の優しさを、今も寅に返せなかったあの日の
木綿のハンカチとともに心の引き出しに大事に仕舞っていることだろう。
あの彼とともに過ごした安らぎの時は幻ではなかったのだと、
いつもあのハンカチが教えてくれるのだ。
しかし寅の心は、真知子さんと同じではない。
今回もまた自分の想いを打ち明けることなく漂泊の旅に旅立った寅。
春は桜を追いかけ南から北へ。
秋は紅葉を追いかけ北から南へ。
一見明るく自由で気ままだが耐え難い孤独がつきまとう。
輝ける闇を内包しながら今日も行く寅の人生を象徴するかのような
そんな歌が、あの柔らかな『サラダ記念日』の中にひとつ
隠されたように潜んでいる。
『ゆく河の流れを何にたとえてもたとえきれない水底(みなそこ)の石』
出演
渥美清 (車寅次郎)
倍賞千恵子 (諏訪さくら)
三田寛子 (原田由紀)
下絛正巳 (車竜造)
三崎千恵子 (車つね)
前田吟 (諏訪博)
吉岡秀隆(諏訪満男)
太宰久雄 (社長)
佐藤蛾次郎 (源ちゃん)
尾美としのり (尾崎茂)
すまけい (院長)
笹野高史 (泥棒)
三国一朗 (教授)
関敬六 (ポンシュウ)
鈴木光枝 (中込キクエ)
笠智衆 (御前様)
奈良岡朋子 (真知子の母親)
三田佳子 (原田真知子)
スタッフ
監督 : 山田洋次
製作 : 島津清
原作:山田洋次/俵万智
脚本 : 山田洋次 / 朝間義隆
企画 : 小林俊一
撮影 : 高羽哲夫
音楽 : 山本直純
美術 : 出川三男
編集 : 石井巌
録音 : 鈴木功 / 松本隆司
スチール : 長谷川宗平
助監督 : 五十嵐敬司
照明 : 青木好文
公開日 1988年(昭和62年)12月24日
上映時間 100分
動員数 182万2000人
配収 12億3000万円
終
今回2007年3月31日で
第40作「寅次郎サラダ記念日」は一気に完結です。
次回はあの柔らかな蝶子さんが寅とデュエットをする
第45作「寅次郎の青春」です。
次回のアップはだいたい4月17日頃です。
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