バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第5作 男はつらいよ
1970年8月26日封切り
2005年6月28日『松村達雄おいちゃん』名場面集アップ!
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ふたりのさくら 夢の共演
見事なリズム!簡潔で力強い傑作 完結篇に相応しい万全のキャスト
松竹側のあまりにも露骨で早急な制作指示のため第3作、第4作と脚本までの参加となった
この2作品はオリジナルテレビ版の「男はつらいよ」の懐かしい香りがあり、本来の「男はつらいよ」を
彷彿させるなかなかの佳作だったが、山田監督が思う山田監督の演出とはやはり食い違いがあった
ため彼にとって若干悔いが残る作品となった。
自分が現場にいてこそ、自分が考える演出ができるのである。やはり納得のいくものを自分の手で
作り上げるのが一番いいのは当たり前のこと。かくして山田監督は殺人的超ハードスケジュールを
ぬって、自分の手でこの作品を完結篇にするべく「山田監督の寅次郎」を甦らせるべく万全の
キャストを使った。
テレビ版男はつらいよのメインキャストを駆り出したのである。おばちゃん役の杉山とく子さん、
さくら役の長山藍子さん、博(博士)役の井川比佐志さん、など気心の知れた人々を配し、
テンポよく仕上げている。渥美さんも乗りに乗ってるという感じで、最初から最後までまったく
だらけた箇所が無い。寅次郎のネックのひとつでもある「労働の尊さ」というテーマがはっきり
感じられるところもこの第5作を懐の深いものにさせている。
それにしても第1作からこの第5作までの期間がちょうどたった1年!だなんてある意味異常な短さだ。
そのうえこの間にもあの名作「家族」を撮り終えているのである。山田監督初め、スタッフの方々も
キャストの方々も才能と体力が充実していたのだろう。「続男はつらいよ」もこの第5作「望郷篇」も
とても短期間で撮り終えているが、制作期間が短くても優れた作品はできるのだということの証明にも
なっている。あと、この作品は蒸気機関車がこれでもか!というほど出て来るが、あの力強い勇姿も
この作品にリズムを与えている。
裏に潜む死の影
しかし、この作品にはもうひとつ、「死の影」がオープニングから前半を支配している部分がある。
夢の中でのおいちゃんの死、とらやでのおいちゃんの死にかけ騒動、そして、北海道で寅がお世話になった
政吉親分の死。
全編で大笑いしながらも、どこか心の中で「死のにおい」を感じさせるのがこの第5作「望郷篇」である。
この陰と陽の対比がこの作品に一筋縄ではいかない奥行きをつくっている。
長山藍子さんと倍賞千恵子さん 二人のさくら
それともうひとつ。、これは私だけの感想かもしれないが、テレビ版さくら役の長山藍子と映画版さくらの
倍賞千恵子が同じスクリーン上で、登場するシーンはやはり緊張感がそこはかとなく滲み出ていて、
二人とも眼がキラリと光って女優魂を感じさせてくれる。なかなかシビアな場面だ。
テレビ版「男はつらいよ」でまるで恋人のような腹違いの兄妹を演じた長山藍子さんが、ほんとうに
寅のマドンナとして映画のスクリーンに登場できた事は彼女にとっても感慨深いものとなったはずである。
いずれにしてもこの「望郷篇」は『活きのいいピチピチした作品』といえる。最高傑作のひとつと
言っても誇張ではないだろう。渥美さんの弾けた動き、攻めの演技。それらが実に見事だった。
それゆえ、私のバリ島の14年間の滞在の中でも最も多く観た作品のひとつである。
長山藍子さんの感慨
豆腐屋の節ちゃんは、明るくて気さくで元気で浦安の情緒たっぷりの下町っ子。
寅ともピッタリ相性が合う人だ。会話も十年来の仲良しのごとくポンポンキャッチボールが弾む。
寅とリリー。寅と節子さん。寅と千代さん。寅と夏子さん、寅と朋子さん、などなど寅と相性の
いいマドンナは見ていても気持がいい。
その節子役の長山藍子さんはテレビドラマの「男はつらいよ」でさくら役を2クール、
26話にわたって演じてきた。
渥美さんとは歴史のある方である。長山藍子さんは当時の思い出をインタビューでこう語られた。
『 映画になる前に、テレビでやってたんですね、その時私はさくらをやらしていただいてたんですね。
で、テレビでは、あの、えっと、…たくさんの方が見てくださったみたいなんですけど、
ま、映画で、あの…お兄ちゃんが蘇るってことで、すごく嬉しいなあ〜って思ってたんですね。
そしたら、あの〜第5話ですね、「望郷篇」で、あの、マドンナでお声をかけていただいて、
またあの〜…とらやのみんなと会えるし、お兄ちゃんとも会えるし、あ、すっごく嬉しかったです。はい。
ライティングとかを直してる時間ってありますよね、で、そういう時に、やっぱり前にテレビの
男はつらいよをやってらっしゃる、どうだ?元気でやってる?おいちゃ〜ん!とか言ってね、
う〜んてつってねなんとかかんとか、二人で小さい声であのいろんなお話をしていた私語を。
そん時に渥美さんが、葦をぴゅっと、セットの中の葦を、取ってね、二人でこうやってあの…
川の水をこういう風にしながらお話してたんですよ。普通のお話を…。
そしたらそれを監督が見てらしたんですね。『今みたいにやってェ…』っとおっしゃって、
『え?』『その葦ね、捨てないでそのままやって…』っておっしゃって、それで二人で何か心の
通い合ったよな、通い合わないよな…フフ、とてもね、あの…素敵なシーンになりました。満月…でね。
お兄ちゃんのそばに…今度はちょっとマドンナとしていられたことが嬉しかったです…はい』」
この長山さんの言葉にはジーンと来た。久しぶりにテレビで兄妹を演じた二人が映画で共演し、
心を通わせたなんとも温かい気持ちになれるエピソードだ。
このシリーズ一番の手痛い失恋
しかし、この節子さん、寅の気持ちを知らないで、寅の目の前で婚約者を紹介してしまい、かつ自分がいなくなっても
この店で働いて欲しい!という凄まじく身勝手な希望を言ってしまうのである。空前絶後の手痛い失恋を面と向かって
させてしまうのだ。寅が旅立ったあとで寅の気持ちをはっきり自覚した節子さんはさくらにそれとなく聞くのだが、全ては
あとの祭りだった。
御前様のお嬢さんの時も書いたが、どう考えたって、40過ぎの独身男が、一生懸命自分に対してつくしてくれるの
だから、ひょっとして…と思うのが普通なのだが、第1作から脈々と受け継がれてきたこのステン!と転ばせる
「手痛い失恋」を信条としたスッタフたちは、カンのよさそうな下町娘の節子さんでさえ脚本的に鈍感にしてしまった。
どこまでも『寅の気持ちには気づかないマドンナ』というとほほ路線なのだ。寅ってほんとこの頃は可哀想(TT)
映画はもちろん寅が思いっきりステン!と失恋した方がメリハリとパンチが効いてスピード感が増す。そんなことは
十分に分かっているが、さくら役を26話も演じてきた長山藍子さんの気持ちはちょっと複雑だったのかもしれない。
ちなみに映画の前に作られた、オリジナル版でもあるテレビドラマの「男はつらいよ」では、
マドンナの坪内冬子(佐藤オリエさん)さんは結局は寅をふるものの、寅の気持ちをきちんと自覚し、理解していた。
せっかく長山藍子さんが出演されるのだから、やはりここは、たとえ、寅の気持ちを最終的には受け入れられない
としても、寅の気持ちをちゃんと知ってくれるマドンナという脚本であって欲しかった…。
ま、ともあれ、この第5作「望郷篇」はスタッフ、キャストとも忙しいさなか、かなりの短い時間で作られたにもかかわらず、
映画の持つスケールの大きさと小気味良いリズムを保っている。こういう作品を真に「冴えがある作品」と呼びたい。
力技で押し倒したような作品にはない、ハイテンポな活きのよさがこの「望郷篇」の命だ。
そのような傑作に出演できた長山藍子さんは幸せ者だと思う。
そして、これでいよいよ終わりだと思っていた山田監督も
この作品の成功によって第6作「純情篇」を作ることになっていくのである。
寅の気質の変化が見られる第5作
ところで…、
寅の第10作以降によく見られる、恋の成就の瞬間に行う敵前逃亡は男としてマドンナを
幸せにし続ける自信がないのと結婚という地道な現実を生きる覚悟がないののダブルなんだと思われるが、
しかし、この第5作の時点での寅はご存知のとおり、節子さんさえOKだったら所帯を持とうと本気で考えていた。
収入の問題も自営なので解決できている。
1作から4作までずっとただただふられ続けていた寅が、はじめてかなり真剣に結婚できると勘違いした作品なのだ。
今までの1〜4作までのパターンと比べてちょっと今回は新しいバージョン。
つまり第5作の時点では山田監督としては、寅はしっかりまじめに結婚したいし、一見そのような状況も現れる。
でもマドンナは実は寅を好きではなかった。
ああ残念でした。…というパターンを作ったわけである。
しかし、監督は、それ以降シリーズが続いていったので、またまた違うバージョンを模索しなくてはならなくなったのだ。
第7作は恋の関係がちょっと違うバージョン。
で、第8作「恋歌」では、もう少しマドンナを寅に寄り添わせた…。
で、寅はここではなんとなく逃げる。
マドンナの心ははっきり描かれていないけれど、それでも寅は逃げる。
この第8作には逃げる寅の萌芽がある。
そして監督は第10作「夢枕」でついに禁じ手を使う!。
つまり寅が本気で好かれてしまい、告白もされる。その結果、はっきりと両思いが成立してしまい、
その時点で寅は早くもさっさと逃げるわけだ。
これは第5作の結婚をしっかり考えた寅とはちょっと違う。
もうこれは寅の気質の変化だと言えよう。
その後は第15作、25作のリリーにしても、第32作の朋子さんにしても、第10作同様、相手が本気になった時点で
すでに逃げ腰になってしまう。自信と覚悟がないゆえの逃亡がこうして繰り返されていく。
そして、最後にさらに一歩進化(変化)したのが第48作だったというわけだ。
つまり寅は監督の発想と共にそのキャラを何度か変化させて行ったのだ。
■第5作「望郷編」全ロケ地解明
全国ロケ地:作品別に整理
本編
オープニングはいつものように松竹富士山だが、
音楽は「男はつらいよ」の出だしとは異なる旋律。
夢のシーンから入る。
とらやのふすまの空いた部屋を次々に通って一番奥の臨終の
きわのおいちゃんが伏している部屋にたどり着く寅。
夢ゆえになんでも許される世界に突入。
なぜか裏庭は真っ赤な夕焼け空。
第2作と良く似たシュールな空間である。
とらや
襖が、何枚もある奥の
深い部屋の一番奥においちゃんが寝ている。
さくら「お兄ちゃん」
寅「おいちゃん、おいちゃんよォ!
もう、口もきけねえのかい…死んじゃいけねえぜ、
今まで散々ぱら世話になったのによォ、
恩返しひとつできないじゃねえか…」
おいちゃん「寅…あとのことはた、…頼む」
おいおい泣く寅
さくら「お兄ちゃん泣かないで」と声をかける
寅「おいちゃんよー、ウウウ…、おいちゃんよー」
さくら「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
さくらの声が最後だけ「お客さんん…」になる
この声は、夢から覚めた瞬間への橋渡しの
役目でちょっと笑える。この短いシーンは
ほとんどコントが使われていないが唯一、この
「お客さん」が笑える。
なお、この夢のシーンにはタコ社長もいる。
博はなぜか労働中の汗にまみれたシャツのままだが、
この辺が今回のテーマ(労働)を暗示しているなかなか心憎い演出だ。
さくらの「お客さん」と言う声から
谷よしの扮する安旅館の女中さんの
「お客さん」と言う声に変わっていく。
つまり、倍賞千恵子から谷よしのへ
バトンが渡されている。
これはマニアにとってはなかなか嬉しい演出だ!
谷よしのさんのセリフ
谷さん「お客さん、そんなかっこで寝てると風邪引くよ…」
谷さん「よく降るネエ…」←(朝ごはん盛り付けている)
長雨で売ができないで困り果てている寅
寅「テキヤ殺すニャ刃物は要らぬ、
雨の三日も降ればいいってね、
いっそのこと、カラッと晴れちゃくれねえかかな…」
頭で障子押してしまって『ステン!』と転ぶ。
寅「あいて...いててて...」
(第2作の京都の旅館、巴屋でもこの転びギャグは使われた。
第38作「知床慕情」でも三度使われた。)
メインタイトル「男はつらいよ.望郷篇」
赤黄青の字とバックは入道雲と青い空
おなじみの口上
「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
第5作から↑この歌でほぼ定着。(例外は第1作参照)
今回は江戸川土手での
ショートコントなし。
こういうしっとりとした
柴又風景描写も
いいもんだ、と思う。
私は結構好き。
特に帝釈天参道の亀屋さんや
川千家さんなどが映し出されて
なかなか情緒ある演出だ。
私のように地球の果てに長く住んでいると、
こういう下町風情溢れる風景は特に嬉しい。
今回は後半で千葉の浦安が出てくるが、
山田洋次監督にとっても愛着のある
土地のせいか、とても情緒たっぷりに描いていた。
この第5作は2度美味しい
作品である。今はディズニーランドが
出来てしまって、豹変したが…。
とらや 店
さくら、満男をベビーカー(乳母車)に乗せてピンクの麦藁帽子
被ってとらやに入ってくる。暑そうである。
↑このピンク帽子って第1作で寅が冬子と釣りに行くために用意したものだ!
満男(中村はやと君)も結構大きくなって幼児っぽくなってきた。
さくら「とらやさん?どうしたの?
みんな死んじゃったの?」
↑さくらの冗談結構きついぞ(^^;)このころは
とらやの面々の口はまだまだプリミティブ。
おいちゃんもおばちゃんも暑さに参っている様子。
おばちゃん「このクソ暑いのに葬式なんか出されちゃ
かなわないよ」
って下町ギャグを飛ばしている始末。
博、コーラを飲みに台所へやって来る。
満男を抱っこしてあやす。
電話が鳴る
おいちゃん「しかしなんだねえ、オレはこの子見てると
どうしても寅さん思い出すんだけどねえ」
時々おいちゃんは寅のことを
第三者には「寅さん」と呼んでいる。
博「それだけはよしてくださいよ」と苦笑い。
さくら「フフ、仕方ないわ、伯父ちゃんだもんねェ」
おばちゃん電話をしながら
おばちゃん「寅さん!ちょっと、あんた寅さんなの!?」
寅は、この前の夢が正夢だったら
困るので電話で確かめているのだろう。
おばちゃん「え?そりゃ生きてますよ〜」
博「どこからですか?」
おばちゃん「上野だってさ。ケロッとした声しちゃってさ、
『おいちゃんまだ生きてるかい?』
だって」
おいちゃん、ムカついて
おいちゃん「畜生めェ、人が散々心配してんのも
知らねえで、死にかけてるって脅かしてやれ」
おいおいいいのかよゞ( ̄∇ ̄;)
おばちゃんも、頷いて
おばちゃん電話で「あのねえ〜、生きてることは
生きてんだけどさ…、
おいちゃんたち寅を電話でからかう。
こんなこと後期の作品ではありえない『悪戯心』
みんなやんちゃだったんだねえ。
おばちゃん「もう息をしてるだけなんだよ...」
わっ、嘘!(||| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ー ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)
寅、ビビッテ
寅「じゃあ、病気か!?」
おばちゃん「もう長いことなさそうだよ...」
♪ピッピロリ♪
赤電話を、下に降ろして
寅「やっぱり...」(正夢に違いない!)
おばちゃん、電話持って笑いながら
おばちゃん「フフフ、驚いてるよ」
と、とらや一同に向かってささやく。
おばちゃん「あのねえ、さくらちゃんも来てんだよォ〜。
うん、うん、
あ、そうかい、じゃ、待ってるよ」
おばちゃん、受話器置いて
おばちゃん「すぐ来るってさ、フフ」と大はしゃぎ。
おいちゃん「あーあ、また寅が帰ってくるか…、なんだか
頭痛くなっちゃったなあ…」
おいちゃんさくらに
「まくら、すまねえけどちょっとさくら出してくれ...」
↑でました森川信十八番まくらギャグ!!
何度聴いてもおとぼけの面白さがある。
おいちゃん「じゃねえや、さくら、すまねえけどまくら出してくれ」
さくら「ハハハ」
おいちゃん「なんだか、ろれつも回らなくなってきちゃった、おい」
おいちゃん「おいおい、はやく…」
このあと連続して、
今度はお尻突き出し寝そべりギャグ!
しみじみおかしい。
この可笑しさは森川おいちゃんの独壇場。
さくら、おいちゃんのお尻をペチッと叩いて、
さくら「なああに、おいちゃん、フフフ」
と笑っている。
一方寅は急ぎタクシーでとらやに向かう。
タクシー車内で
寅「運ちゃん、あした友引か?
友引だと困るんだよ火葬場休みだから...」
運ちゃん、いまどきの暑さじゃ、
仏は2日ともたねえかね?
いよいよとなれば
ドライアイスでもいいけどな...
それより面倒なのは
仕出しの弁当だよな。
生ものじゃ腐っちゃうし...」
そこまで考えるか…( ̄ー ̄;)
葬式もんにいやに詳しいね寅って(^^;)
「続男はつらいよ」でも葬式仕切ってた。
とらや 茶の間
タコ社長が、おいちゃんと満男の寝顔見ながら、
社長「あと50年もたつとこの坊やも
こうなっちゃうんだからねえー」
はかないねえ人間なんて」
そこへ、寅急いで入ってくる!
♪ピロピロピッ♪
寅「おいちゃん!
オレだよ!分かるかい寅だよ!...。
もう口もきけねえのか?」
虫の知らせっていうのは
あるもんだなあ...」
寅「さくら、おめェひとりに
気ィもまして悪かったなあ…」
さくら、何か言おうとするが、
寅「おばちゃん、まだなんにもやっちゃいねえんだろう」
おばちゃん「なんにもって?」
寅「いいんだ、いいんだ、いいんだ、
オレはな、帰る道々
ピシーッと打つべきところにゃ、
ちゃんと手は打ってきたからなあー」
おいちゃん置き上がって、(^^;)
おいちゃん「おい、寅さん、今なんて言ったんだい」
寅「うん、いや、オレは帰る道々…」
寅、「…!!!」
寅、寝床見て、おいちゃん見て
寅「あれえ!!、
おいちゃん口きけるのか!!?」
おいちゃん「あたりめえよォ〜!」
社長、大笑い「ハハハハハハ!」
寅、驚いてドギマギ、キョロキョロ。
さくら「お兄ちゃん、
おいちゃん病気でもなんでもないのよ」
寅「だっておばちゃん電話でオレに言ったじゃねえか」
おばちゃん「冗談だよォ〜、フフフ」
寅「冗談?」
社長「寅さん担がれたんだよ!ハハハ!」
おいちゃん「おい、おめえ、打つ手は打ったって
どんなことなんだい?」
寅「う…、決まってるじゃねえか…」
おいちゃん「え?」
寅「おいちゃんがダメだって聞いたからよ…」
御前様、蒼ざめて入ってきて
御前様「ご免、」
おばちゃん「あら、御前様」と迎える。
寅「……」
御前様「おかみさん、今そこで寅さんに聞いたんだが、
ちっとも知らなかった。そんなに悪いのかね!」
御前様も寅といわずに寅さんと、言っている。
おばちゃん「悪いって…」
御前様「竜造さんが危篤だとか……?おや、
そんなところで起きてていいのかね??」
おいちゃん「当たり前ですよ!あたしゃこの通り
ピンピンしてますよォ!」
おいちゃん、寅を睨む。
近所の人たちもあわてて飛んでくる。
近所の人「おかみさん!旦那が危ないんだって!?」
ご近所さん役で大塚君代さん登場
おいちゃん「い、いや、それがね…」
御前様、少し憮然として
御前様「どうも冗談にしてはタチが悪いようだな寅さん」
「とらやさん、どうもこのたびはえらいことで」
「あんまり突然なんで…」
と近所のみんな次々に飛び込んでくる。
井上葬儀店 軽四で到着
607−0244−0983
葬儀屋「ごめんください。
このたびはご愁傷様です...」出た〜(^^;)
さくら「どちらさまですか?」
葬儀屋「は、葬儀屋でございます。さきほど連絡をうけまして…」
寅「あ、あー、ごくろうさん。
葬儀屋さん?」
葬儀屋「あ、はい」
寅「あっそう、
今日はいいなあぁ〜うん」
魚屋か(^^;)
葬儀屋「いいと、申しますと…??」
おいちゃん「帰ってくれ!帰って!
死んだのはこのわしだっバカ!」
↑さえる森川節、いいねえ〜!!
とらや 夜
みんなでもめにもめている。
寅「言っていい冗談と
悪い冗談があるんだよ!
おばちゃんなにか?
亭主のこと殺さなきゃ、
オレのことからかえねえのかよ」
おばちゃん「何言ってんだよ!あんただって
悪かったんじゃないか!なにも
葬儀屋連れてこなくてもいいじゃないか!
柴又中大笑いだよ!あんなことされちゃ!」
朝日印刷の工員たち2階から覗いて
電話(657)341…
工員A「また始まったのか?」
工員B「寅さんの帰ってきた晩って、必ずだなー」
★このシーンからタコ社長の工場は
「朝日印刷」に変わりました。(^^;)
第1作から第4作までは「共栄印刷」
寅「しかたがねえだろ、ったく、おじちゃんが
死にでもしなきゃね、オレは恩返しが
できないんだよ!
さすがとらやの旦那さんの葬式だ。
立派な葬式だったって
人に羨ましがられるような葬式を
だしてえなって思ってたのよ!」
凄い理屈(^^;)
博「それじゃ、おじさんが死ななきゃ、
恩返しができないっていうんですか?」
寅「生きてて葬式ができるかい!
…なにい!??」
うわっ(><;)
寅、博をこずいて暴れる。
おいちゃん遂に
プッツン切れてさくらに
おいちゃん「さくら、ひ、紐
もってこい紐!
死んでやるよ、
そんなに死んでもらいたきゃ
ほんとにオレは死んでやらぁ!
え!?、なに言ってやがんだい、
コンチキショウ!!」
←すごく細い紐すぐ切れるって(^^;)
鴨居にひもぶら下げて、首を吊るまね。
どすんと細い紐が切れる。
おばちゃん「あららっ!、バカだねなにしてんだよこの人は!バカだねえ」
おいちゃん「イテテ…、どーせオレはバカだよ!
どうせオレは寅の血続き
なんだから!バカだよ!」
寅「なにい!?」
おいちゃん「なにじゃねえや!
てめえのツラなんか見てるよりも
死んだほうが幸せなんだ!!」
寅「もっぺん言ってみろ!」
おいちゃん「よーし!何べんでも言ってやら!てめえのツラ見るより
死んだ方がましだてんだよ!!」
寅、激情して、
寅「よし!紐なんかいらないよ!
オレがこの手で絞めてやるよ!!」
凄いセリフ(^^;)
博やおばちゃん、みんなで止める。
寅「チキショー!!」
寅「出て行くよ!
オレが出てきゃいいんだろ!
どうせオレは邪魔者だよ!ああ!」
寅「さくら!止めるなよ!」
(喧嘩の時にかならずこれがでる)
寅「え!オレは二度とこのうちには帰ってこねえからな!
こんな心の冷てえ人間の住むところへはな!」
寅「さくら!止めるなよ!」「オレは本気だからな!」
(障子におでこぶつける)
「さくら!止めるな!」
↑さくらも、これだけ、止めるな止めるなって
言われれば止めるよな。
寅、店先でジロジロ見物している近所の人たちに
「なんだ、なに見てんだこのヤロウ
見せもんじゃネエ!」
さくら「お兄ちゃん!私たちが悪かったわ、ね!」
寅「止めるなっていっただろ…」
ここまで止めるなって言われると、
止めてくれって言ってるのと同じ┐(-。ー;)┌
寅「当たり前だよ、騙されたようなものだからな、
オレ、結果的にはよ」
↑寅の言ってることほんとは正しい。
悪いのはおいちゃんたち。
(店の戸がスッと動いてよろける)
さくら「本当に気の毒だったわね」
寅「おまえほんとにそう思っているのか?」
す、するどい(^^;)
さくら「思ってるわよ!だから、
中入って、ね、中に入って…」
寅「まあ、おまえがそう言うんだったら
ま、寄っていくか…」
あ〜疲れるねえ(−−;)
さくら参道に出て近所の人にあやまる。
さくら「どうもすいません…」
近所の人「たいへんだネエ…」
ほんとにケンカのたびに裏の工員や
近所の人々たちに知れ渡っちゃって、
見世物みたいになっちゃって大変だねー。
しかし、時には第6作「純情篇」や第11作「忘れな草」の
ようにさくらが反対に怒って、寅が謝るって
いうようなこともおきるが。
翌朝 とらや
寅、起きてきてぶつぶつ言って、
寅、お天道様に向かってかしわ手2回打つパン、パン、
裏の工場
タコ社長が八戸からきた少年に工場を案内している。
社長「ここは、第1工場、活字印刷をやるところです。
今は暑いですけどね、来年は冷房を入れる予定です。」
↑全くの嘘。そんな気なし(^^;)
寅「労働者諸君!やってるな!
結構、結構、けっこう毛だらけ
猫灰だらけ、おまえのお尻は
クソだらけ!ってな、ハハ!」
寅「あっ、おまえ、新入りか?どっから来た?」
少年「青森県の八戸です。」
寅「アンレ、アゥオモリ ノ ハチヌノへ?」
寅「なんで、あんな空気のきれいなところから、
よりによってこんなうす汚いところへきたんだよ?
肺病にならないうちに帰したほうが
いいんじゃねえか、えー?」
タコ社長「あの人はね、近所の不良で、
キチガイだから相手にしない方が…」
↑タコ社長すごい表現だね(^^;)テレビじゃ×
博、寅を追い出し怒る。
寅「上等だよ!あんな薄きたねえ小屋、
頼まれたって行きたくネエーよ!よくおまえ、
あんなとこでもって辛抱してるね!ええ!
田へしたもんだよ蛙のションベン、
見上げたもんだよ屋根やの
ふんどしだよ!!えー!」
寅「おばちゃん腹減った朝めし朝めし」
おばちゃん「もう、冷えちゃってるよ…」
寅「上等、上等、
温かい味噌汁さえあれば十分よ。
あとはお新香、海苔、
たらこひと腹、ね!、
からしのきいた納豆、
これにはね、生ねぎを細かく刻んで
たっぷり入れてくれよ!
あとは塩昆布に生卵でも添えて
くれりゃ、おばちゃん、何もいらねえな、うん。」
↑すんごい贅沢(^^;)
と言いながらおいちゃんの丸めている草団子の
棒状のものをぶらぶら中に浮かせて
寅「あれ!?あっ、昨日からオレ通じがねえんだ!」
棒状団子をペチッと置て行ってしまう。
おいちゃん、怒って、
棒状団子をべチッと叩き置く!
ふたりとも昨日の騒動が
まだくすぶっていますね〜(^^;)
このシーンでは店の店員の女の子(ともちゃん←第4作)
が思いっきり映る!(相変わらずセリフ無し)
この店員さん、第2作から出ずっぱりで、かつ、
これだけ長くはっきり映っているのに
セリフもほとんどないし、女優名も分からないのは辛いですね(^^;)
どなたかこの方の名前わかりませんか?
↓
柴又駅前を登が歩いている。
少年サンデー
少年キング
少年マガジン
平凡
明星
旅行読売
TVガイド
登やってきて昔世話になった
札幌の政吉親分の危篤を知らせる。
寅「え!?札幌の政吉親分、政吉親分が死にかけてるって!?」
登「うん、死ぬ前に一目兄貴に会いたがってるって…」
昨日の事件以来、
寅をかなり、のけものにしているとらやの面々。
寅「もし、死んだとなりゃ
せめてもの恩返し
葬式一切オレが
取りしきらにゃァならねえ!」
でました、またもや葬式取り仕切り!
おいちゃん「あのやろう、なにかってえーと
葬式ばかりしてやがんの!」
(私の住んでいるバリの人々も
いつもなにかってぇーと葬式ばかりしている)
おいちゃん「ひょっとしたら出かけるかも知れぞ」
おばちゃん「これで出てってくれるんだったら
そのほうがありがたいよねえ」
↑結構冷たいぜ!とらやさん。
このころの作品はこのように、寅は
はっきりととらやで厄介者、のけ者に
されている。まあ、それだけ寅の気質が、
初期になればなるほど凶暴だからだ。
後期の作品になるとまったりと優しくなってくる。
北海道へ行きたいが登も寅も先立つものがない。
寅、「社長〜♪」
社長「あッ!ころっと忘れてたよ!
税務署行ってこなくちゃ!」って逃げる。
おばちゃん、店員さんが帰ってきたのを見て、店員に
「あ!いらっしゃい!」って逃げる。
おいちゃん「オレもころっと忘れてた!」
寅「なにを?」
おいちゃん「わからネエから、ちょっと
近所で聞いてくらぁー
なんか忘れちゃったなぁ、
忘れちゃったなぁーオレゃー…」
森川ワールド爆発ぅ〜!!(^^)
寅「きたねえなあー!」
登「兄貴、この家じゃ、
のけ者にされてる
んじゃないのかい?」するどいぞ登(−−)
寅「そこが渡世人のつれえところよ」
御前様から電話。
渡世の義理だという理由の借金を断った
という旨の電話。
最後にさくらのアパートに行く。
さくらは長ァーく説教する
さくら「額に汗して油まみれになって働く人と、
いいかっこしてぶらぶらしている人と
どっっちが偉いと思うの?
お兄ちゃん、そんなことも
わからないほど頭悪いの?
地道に働くってことは
尊いことなのよ。
お兄ちゃん、自分の年のこと考えたことある?
あと5年か10年たってきっと後悔するわよ。
そのときになってからでは取り返しがつかないのよ!
あー、ばかだと思ってももう遅いのよ!」←真剣に怒るさくら
それでも5000円をタンスの上の
カンカンから出して寅に渡す。
寅「いいのか?」
さくら「いいのよ。いつだったか
満男に飴でも買いなってくれたでしょ。
あのお金よ」
↑第2作の最初の方で出てくる
帝釈天前のシーン(第2作参照)
寅「ありがと。オレも毎日反省して、
おまえが恥ずかしくない偉い兄になりますよ」
さくら「偉くなんかならなくていいの、
ただ、地道な暮らしをね…」
寅「そ、地道、分かってる、うん。
オレもう、時間がねえからな」
寅「あ、博よ、昼間は工場で
すまなかったな。オレはねあれから
ずっと反省してんだ。じゃ、あばよ」
寅反省顔で出て行く。
博、さくらに「少し言いすぎじゃないか…」←甘いよ博(ーー;)
さくら「いいのよ、あれくらい言わないと
分かんないのよ!」と涙声。
↑あれくらい言っても実は馬耳東風(^^;)
寅、アパートから出て小躍りしながら
「いった!いった!うまくいったよ!おい!
タクシー呼べ!タクシー!」
全く反省無し!ああ…さくら可哀想…(TT)
札幌
上村医院
札幌テレビ塔近く 漢薬堂2階が上村医院
札幌テレビ塔のすぐ近く創成川通沿いを南下徒歩5分。
そこが札幌銀行指定病院である「上村医院」があったところ。
その南のMobilのガソリンスタンドになっているビルあたりか漢薬堂ビルどれかだろう。
映画の電柱に出てきた小さな看板「上村漢薬堂」のビルは
そのMobilのガソリンスタンドの十字路の道渡った角にある。
念のために札幌の漢薬堂ビルさんに電話を入れてお聞きしてみたところ
このビルの2階が病院だったということだった。
現在の同じ位置。上村医院はもうない。
政吉親分の入院先病院の入り口
頭ぶつけ、「何だコノヤロー」と独り言
政吉親分(木田三千雄さん)の変わり果てた姿を見て
寅「あー、親分、弁天の親分、そうだ、親分だろ。
こんな小さくなっちまって、どうしなすったい…。
昔、草相撲で北海山という四股名で
大関まで張ってたあんたさんが、
変われば変わるもんだなー…お気の毒によ」
親分の舎弟「おかみさんたちは東京行ったっきりこねえんだ」
この舎弟役の谷村昌彦さんは第8作「恋歌」で、寅の仲間を、
第18作「純情詩集」で、坂東鶴八郎一座の座員を好演していた。
親分は息子に会いたがっている。
昔、函館の旅館の女中さんに産ませた子供に会いたがっているらしい。
政吉「息子に会いてえ…、一度会いてぇ…」
寅「ん…、わかったよ、親分、よーく分かったよ。あんた、昔、
派手に遊んだ人だ。そんときのことだろう。
この女中さんは優しい人だったんだろうなあ。その息子さん、
まだ一目もあったことのねえ息子さんに、」
寅「ただ一言すまなかったとそう詫びてぇんだな親分!」
政吉親分「顔を見てえ、見てえ」
息子を探しに小樽に行く寅と登
小樽
息子を探しに町を歩いている。
小樽は第15作「相合い傘」でも、
切ない物語が展開された。
小樽は博が小学校に通っていた町。ここの港で博の
お母さんが自分の女学生の頃からの夢を博に語った。
また第15作でもパパさんの初恋の人の住む町としても再登場。
第22作でも、早苗さんが帰っていく町として語られる。
小樽 築港機関区
ここから機関車(D51)がバンバン出て機関車好きの山田監督の世界に突入!
蒸気がブァーと出て、驚き、たじろぐ寅と登。
フーテン風の寅と機関士の対比が抜群の効果
労働の厳しさを蒸気が暗示
寅「石田澄夫さんかい?」
父親が死にかけてることを知らせる。
澄夫「僕には父親はいません…関係ありません」
寅「コノヤロー!この薄情もの!引き摺り下ろしてやるだ!
離せよ!腹巻が伸びらあ、チキショウ!…」
寅「やい!てめえ、それでも赤い血の流れた人間か!?
実の父親が死にかけてるんだぞ!!」
「降りろ!!」←ホントの機関士さん怒鳴る。
発車後は缶を焚く澄夫
タクシーで追いかけ、銀山駅で待つ。
寅たちが待つ銀山駅を汽車は通過してしまう。
「前、注視ー!」
「前。よおしー!」
プアアアアー!!!!
「銀山定時通過ー!」
小沢駅で追いつく。
登、タクシーの運転手に、「2000円に負けてくれないか、
おい、600円くらい…、つらいとこなんだよ…」
寅「おーい、青年!!、ずーっとタクシーで追っかけて
きたんだぞ、もうくたくただよ!」
寅「たとえ会ったこと無くたって、
実の父親なんだよ、会いたいと思うのが
血の繋がった親子の人情じゃネエか、ええ?
おまえ一度だって父親に会いてえと
思ったことねえのか?
ええ、青年?どうなんだよ?」
澄夫「ないといえば嘘になります。
本当は会ったこともあるんですよ…」
寅「うん…、え?、
会ったことがあるのか?、親父にか?」
澄夫「ええ…、小学校1年生の時でした。
自分に父親がいると知らされて、
無性に会いたくなっておふくろに内緒で
汽車で札幌まで行ったんですよね。
あとで考えればそこは赤線だったんですね。
その家までまで行ったら女の人が大勢いて、
父親だと指差された男が真ん中にいて女の人を
なぐっていましたよ。
その若い女の人は泣いて謝っているのに、
その男は何度も殴るんです。僕はその男が
鬼のように見えましてね」
寅「それで、どうしたい」
澄夫「そのまま帰ってきましたよ。」
寅「一人で汽車に乗ってか?」
澄夫「いいえ、帰りの汽車賃も持ってなかったので、
線路の上を歩いて帰りました。
そうすれば間違いなく帰れると思ったんですね。」
回想シーン、少年が線路の上を歩き、後ろから警笛を
激しく鳴らす汽車が迫る。
プッ!プッ!プッ!プーッ!!!
★白黒映像で色を飛ばしぎみにして回想の雰囲気を
強く出している。↓
山田監督にしては珍しく技巧的な表現
澄夫「おふくろが怒りましてね、さんざん殴られました。」
ひぐらしが鳴いている
(カナカナカナカナ…)←もの悲しい
澄夫「そのおふくろも5年ほどして死にました。可哀想な一生でした。」
澄夫「遊び半分に子供を生ませてあとは知らん顔で、
今度は自分が死にそうだから息子に
会いたいって、
そんな身勝手なことありますか?
ふざけるなといいたいよ。
なにが親父なもんかそんな男は」
美しく寂しい音楽流れる。
澄夫「息子は転勤していなかったと
そう言ってください…」
D5127
「5番出発進行ー!」「5番出発進行ー!」
「発車15秒前!」「発車15秒前!」
「発車合図確認!」 ブー〜
「発車合図確認!」
「発車!」「発車!」プオー〜!!!
この息子さんの長い葛藤の時間を
思うとなんともやるせない哀しい話だ。
幼い日、遠くまで会いに行った父親に失望し、
果てしなく長い線路を独り歩いて帰った彼の
寂しい心を考える度に、人の世の理不尽さを
感じざるを得ない。
札幌の病院
事務員電話に出て、
「大変お気の毒ですが竜岡政吉さん、
今日の五時にお亡くなりになったそうです。」
寅、赤電話持ったまま、呆然…
小沢駅前 「末次旅館」
駅前の末次商会の食堂でロケ。
寅たちはまだ、小沢駅のそばにいる。
寅「登、おめえ、てて親いたっけ」
登、父親に殴られた思い出があり、
帰りたくないらしい。帰るならひとやま当てて
百万のキャッシュ持ってオヤジをあっと言わせて
みたいらしい。
登に父親のいる八戸に帰るように怒鳴る
寅「バカヤロー!生息な口聞くな!
ケツに卵の殻くっ付けた小僧ッ子
のくせしやがって、てめえなんかに親の
気持ちがわかってたまるか!
セールスマンだかなんだか知らねえけど、
てめえ、見かけは堅気だが、気持ちの中は
ヤクザのまんまだぞ、
これから、五年、十年経って、いい歳して、
身寄りも無く、頼りもなく、ケツ温める家も無く、
世間の者は相手にもしてくれねえ、
そん時になって
あー、オレはばかだったなあと後悔しても、
もう取り返しがつかないんだぞお。
寅泣きながら
いいかあ、人間、額に汗して、油にまみれて
地道に暮らさなきゃいけねえ。
そこにはやく気がつかなきゃいけねえんだ」
寅、最後の金をテーブルに置き、
寅「登、いますぐ田舎に帰れ。親父に詫びを入れて,
汽車のカマ焚きでもして地道に暮らせ」
帰郷を嫌がる登に
思いっきりコップ割って!
バリン!!
寅「杯(さかずき)は割った。もうてめえとは、
兄弟でもなんでもねえ。とっとと出てけ」
それでも、躊躇する登の頬を
思いっきり叩く寅。
政吉親分の惨めな最後はさすがに寅には応えた。
自分のどうしようもないダメなところを
なんとしても登に真似て欲しくないのだろう。
登はこのあとなかなか堅気になれない。
第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」で十年以上経って寅は登と再会。
その時には、すっかり堅気になっていた。奥さんもいたし、子供もいた。
階段の横に「札幌オリンピックのポスター」
↑笠谷!金メダルへのジャンプ!
飛んだ!決まった!見事なジャンプ!…だったっけ。
階段のところで、躊躇し、
寅にもう一度、一緒にいさせてくれと
頼む登を蹴ろうとする寅。
寅、空振りしてコケル。
外に出て
登「兄貴のバカヤロー、トンチキ、
下駄づら!兄貴なんか…死んじまえ!」
泣きながら小沢駅に行く登。
しかし、さくらにもらった五千円だけで、こんなに
いろいろなことができるはずはない。普通は二人分の
小樽までの運賃にもならない。ましてや宿に泊まって
酒を飲むなんてできるはずもない。汽車賃全てキセル
&宿踏み倒し、したのかな?大体帰りの汽車賃無いぞ。
とらや 店
あいかわらず暑い日が続いている。
リ―ン、リーン、
おいちゃん「誰かいねえのか?」
おばちゃん「誰かったって、私しかいやしないんだろ
はいはい、とらやです。え?寅さん、
ちょっと寅ちゃんが帰って来たのかい?」
ここでは寅ちゃんと言っているおばちゃん。
電話口のさくら
さくら「お兄ちゃんもいろいろ考えたらしくてね、
地道に働く決心をしたらしいのよ、
ガラッと様子が違うのよ。からかってなんか
いやしないわよ!本当よ」
↑疑うって事を知らないね。
ほんとさくらって兄思い(^^;)
おばちゃん「あんた大変だよ、寅ちゃん帰ってきてね、
これから地道に暮らすんだってさ」
また寅ちゃんと、言っている。どういう心境の変化だろう。
おいちゃん「地道に?」(^^;)
おばちゃん「うーん」(^^;)
おいちゃん「寅が?」(^^;)
おばちゃん「うーん」(^^;)
おばちゃん「あんまり暑いんで
おかしくなったのかもしれないね」
おいちゃん「そうかもしれねえな。
もともと少しおかしい奴が
さらにおかしくなりゃあ
案外こりゃ元に戻るかも知れねえぞ」
↑冴える森川節(^^;)
おばちゃん「来たよ来たよ!」
おいちゃん「どんな様子だ?」
おばちゃん「神妙な顔してね、亀家さんに
帽子脱いで挨拶したりしてるよ」
おいちゃん「バカだねあいつは〜…」
おばちゃん「どうする?」
おいちゃん「どうするもへちまもありゃしねえやな、
さくらもさくらだよ、そういうことを真に受けてね…、
あれも頭に来てんじゃねえかな?」
おばちゃん「来た来た!」
二人で、なぜか直立不動の姿勢(^^;)
とらやに乳母車押して入ってくる寅
(動きにあわせてドラムがタタタタタッ!と鳴る)
帽子をちょっと浮かして挨拶(ドラムがタタタタッタタッ!)
おいちゃん、おばちゃん直立不動で出迎えている。
歩行にあわせて(ドラムタタタッタ、タタタッタ)
寅「おいちゃん、おばちゃん、この度はどうもいろいろと
ご心配かけてすみませんでした」
おいちゃん「いやあ、あの、まあ、
あの、どういたしまして、
寅さんもお元気でなによりです」(^^;)
寅「はい」
おばちゃん「水風呂でも浴びて、
冷たいビールでもどーお?」
寅「いけない!」
寅「皆様が汗水たらして一生懸命
働いているのに一人だけ楽をするなんて!」
一歩進む(ドラムタタタタッタ)
おいちゃん、おばちゃん柱に釘づけ
帽子を少しとって(ドラムタタタタッタ)
一歩一歩(ドラムタタタッタ、タタタッタ…)
「あっ、さくら、これから汗水たらして
地道に働くかと思うと
なぜか身の内が引き締まるようだな」
(ドラム、笛 タタタタッタ タタタタッタ…)2階に上がっていく
(今回はなぜか荷物部屋のほうに上がっていく)
↑時々こちらのほうの部屋も使うようだ。
それにしてもなぜ、荷物部屋のほうに
行ったのか?わからない…。
おばちゃん「どうしちゃったんだろ?」
おいちゃん「とうとう来たかな?」
おばちゃん「ちょっとおかしいよねえ」
頷きあう老夫婦。
さくら「なによ、まじめに働こうってのが、どうして
可笑しいの?」
おいちゃん、首フリフリ(^^;)
さくら「そりゃね、お兄ちゃんに
とっては珍しいことよ。」んだ(^^;)
おいちゃん、頷く(^^;)
さくら「でもいいことなのよ」
おいちゃん、頷く(^^;)
さくら「その気持ちを大事にしてあげなきゃ、
お兄ちゃんいつまでたっても救われないじゃない」
さくら「そうでしょう?」
おいちゃん、頷く(^^;)
とらや 茶の間
おいちゃんおばちゃん、さくらで、とらの
仕事を話している。
さくら「ねえ、おいちゃんたちも黙ってないで
相談乗ってよ〜…」
おいちゃん「考えてるよ、しかし、いざ地道に暮らすには
どうすりゃいいかと言われてもなあ…。こりゃなかなか
難しいぜェ…」
さくら「とにかくお兄ちゃんはテキヤ以外やったこと
ないんだからね。なんでも最初からやる気じゃないと
ダメよ、って言ってあんの」
おばちゃん「やっぱり寅さんは客商売が
向いてるんじゃないかね」
またもやおばちゃん「寅ちゃん」から
「寅さん」に戻っちゃった。
さてここから…
職業選びであーだこーだギャグ(この先もちょくちょくでてくるギャグ)
今回のお題は「地道な暮らし」
(キーワード「額に汗」と「油まみれ」)
寅後で立っている。
さくら「いつか、福寿司さんで、若い衆がいなくなって困っている。
福寿司さん!お寿司屋さんなんかいいんじゃない?粋でサ!」
寅、浴衣姿で後ろに立っていて歩くたびに
(大太鼓がドーン、ドーン)
「さくら、おまえらしくないな、粋だとか
イナセってのは今までのオレのことを
言うんだよ。そんなものが地道な暮らしとは
オレゃ思えないな」
おいちゃん「寅さん、ウチの商売手伝っちゃ
どうだい?
一番気心も知れてるし…」
寅「ダメだね…」
おばちゃん「どうして?」
寅「オレは何べんも言うように額に汗して
油まみれになって働きたいんだよ、
この店で働いてそうなりますか?
おじさん、おばさん、あなたがた、
ふたり汗水たらして働いていますか?
それくらいの理屈はわかるでしょう?」
さくら「それ、もののたとえなんだけどなあ…」
さくらのこのセリフ爆笑!(^^)
おいちゃん「あったよ!さくら、テンプラ屋!」←たぶん「大和屋」さん
おいちゃん「暑いし、汗も出るし!」
さくら「確かに油まみれにもなるわね」
寅「ダメだね」
おいちゃん「なぜ?」
寅「テンプラ嫌いだもん!」
↑(私はこの気持ち分かる。嫌いな食べ物
を作ったり売ったり出来ないよね。)
おいちゃん「だって、おめえが食うわけじゃないぜ」
寅「理屈じゃないんだよ、
嫌いなものは嫌いなんだよ!」
おいちゃん「うーーーん…」
寅「早い話がさ、汽車の釜焚きとかよォ…」
↑今回はトラウマになっている「汽車の缶焚き」
に異常に憧れる寅です。
おばちゃん「あっ、ちょうどいいのがあるよ!
これならぴったりだよ!ほら!菊の湯さん!」
あそこの缶焚きのおじさん、辞めたがってるんだよ」
おいちゃん「ありゃ暑くて汗が出るぜぇー!どうだい、寅さん?」
寅「ダメだよ、あれゃ、
地道な暮らしとは言えねぇよ」なぜ!?
さくら「どうしてよ!地道よ、
あんな地道な仕事はないわよ」
寅「おまえも考えが浅いね〜、
缶だけ焚いてりゃいいよ、
風呂屋にいりゃあなあ、暇な時には
三助のまねごともしなきゃならねえんだ。
男湯ばかりじゃねえ、女湯もあるんだ。
ババアや子供ばっかりじゃないよ、たまには
三十過ぎの女ざかりの粋な芸者も
来るかも知れねえや。
それの肩なんか揉んでりゃさ、
つい調子にのって歌の歌の一つもでらあな。ね!
♪包丁一本〜、
サラシにまいーてー〜♪、
『あら、寅さんいい声ネエ、
あしたお約束あるの?
ねえ、この色男』
イテテテ…、あざになっちまうじゃねえか、
そんなことが地道な暮らしといえるかよ」
おいちゃん「なにもそこまで考えなくたって
いいじゃねえか」ほんとほんと(^^;)
この「なにもそこまで…」
パターンは第2作でも、第32作でも出てきた。
博「にいさん、お帰りなさい!」と汗と油にまみれた姿
寅「よお…」(ドラムタタタタタタッタ!ジャーン!)
まじまじと博の汗と油にまみれた体を見て、
「汗と、油…!」
手をさすって汗と油を匂う寅←ちょっと変態ぎみ(^^;)
寅「決まった!!明日からオレあんたの工場で働くぜ!
これでめでたく仕事が決まったな、今夜は早く寝るか」
↑タコ社長許可してないぞ ┐(~ー~;)┌
おばちゃん「知らないよー」
社長 「こっちだって知らないよー」(笛ピロピロピッ!)
翌朝、とらや
ジーンズのツナギ着て、運動靴履いた寅、口笛
寅「じゃ、これから労働に行って来るからな!
あっ、これか、博に借りてな!似合うか?」
ポーズ!!(写真参照)↓
おばちゃん「似合うよ」
寅「まじめにやってくるからな!」
←気張った顔で目をヒンムイタ顔が最高!!
気合だけは入ってるなあ〜!
寅「あっ、おばちゃん、オレな帰ってきたら
すぐ風呂に入るからな、
風呂沸かしといてくれ。」
おばちゃん「あいよ」
寅「なにしろ労働してくるからな!」
寅「うん、それじゃ、行って来る」
寅「あっ、それからね、風呂上がったら
冷えたビール飲むからな!
ビール冷やしといてくれ、
なにしろ労働してくるからな!」
おばちゃん「わかったよ…」
寅「あっ、それからもうひとつ、
できたら按摩呼んどいてくれるか、
ちょっと労働して筋肉揉みほぐすからな、」
寅「じゃ、行って来る!」
おばちゃん「あいよ…」←おばちゃんげっそり(−−;)
寅「おいちゃん!地道な暮らしってのはいいな!」
ポーズ!!「これか!」
寅「♪たて万国の労働者〜♪、
おはよー労働者諸君!
今日から僕は君達の仲間だぞ!
共に語らい、共に働こう!!
ハハハハハ!」
おいちゃん「バカだねー、まったく…」
このあと工場はもちろんのこと、
全ての店から断られることになる寅。
あれだけさわいだのに、とほほ…
とらやに近所のみんな集まっている。
さくら自転車に乗って亀屋のご主人に
挨拶しながらとらやに向かう。
さくら「断ったんですか?」
タコ社長「…、はやく言やあ、ねえ…」
おいちゃん「寅のヤツね、その足で
菊寿司さん行ったんだってさ、
もちろんそこも断られてね、」
大和家さん「あたしのほうへ」
おいちゃん「そうそう、てんぷら屋さん行って、
それからその足でもってね、
今度はお風呂屋さん行ったんだ。
お風呂屋さんも間に合ってるって言ったんでね、
寅のヤツ、カーッときて、いきなり首を
ガッっと絞めたんだって。
すいませんでしたね、どうも」
菊の湯さん「私ども人手が欲しいのは
やまやまなんですけど、ちょっと…」
このとき来ていた菊の湯さんの旦那さんは
大杉侃二朗さん!
第18作「純情詩集」で坂東鶴八郎一座の
座員としてあの知る人ぞ知る『お掃除芸』を披露!!
もう、駅員、近所の人、入院患者、備中高梁の檀家の人、
寅の昔からの仲間、等々で活躍。男版『谷よしの』って
言う感じ。
さくら寅を探しに自転車で土手に行く、「お兄ちゃーん」(TT)
モーターボートがびゅんと走りぬけてゆく。
渡しの小舟の中で寝ている寅、
勝手に流されて川下のほうへ…←浦安方面
寅にしてみれば普段の行いがたたった、ということだろう。
気持ちを入れ替えて頑張ろうとしても、他人は過去の自分しか
知らない。世の中では実によくあることだ。
このパターンは第10作「夢枕」の
「見合い相手探し騒動」なんかでも応用されている。
半月ほどたって…
べたべたの小包がさくらのアパートに
送られてくる。とらやで開ける。中身は腐った油揚げ。
とらや 店
おばちゃん「やだよ、油揚げじゃないか」
「くさいよこれ、臭いよ!腐ってるよ!」
↑この小包のギャグも後の作品で
『小蝿のたかった葡萄』で使われる。
当時はクール宅急便
がないからね〜(^^;)、まあ、どうせ
そんなものあったって寅知らないだろうが。
千葉県カツシカ郡浦安町28 三浦 方 車 寅次郎
マドンナの名前は「三浦さん」
おいちゃん、住所を見て
おいちゃん「浦安?川下の浦安か?」
さくら「うん」
さくらが読み上げる
寅からの手紙『さくら、つまらないものだが
食べてくれ』
おばちゃん「腐ってるよもう!」←再度おばちゃんのつっこみ(^^;)
寅の手紙『オレのことなら心配するな、
地道に、油まみれになって働いている
暇な時、オレの服やなんかを送ってくれ、
ひょっとするとオレは一生ここで地道に
暮らすかもしれない。兄より』
女の店員さん(ともちゃん)またしっかり映る。
おいちゃん「何?ちょっと、一生?」
さくら「そう、一生地道に暮らすかもしれない…」
おいちゃん「ただごとじゃねえよ…一生てぇのは、」
おいちゃん「こりゃなんかあるぜ、
なんかあるよ…。
知らねえぞ、オリャ、知らネエヨ…」
森川おいちゃん、こういう時はほぼ、動物的勘が働いて
うすうす事情が飲み込めてしまうから怖い。
寅を熟知しているんだね。
次のシーンの入道雲はタイトルバックの雲と同じ
千葉浦安 西境橋 付近
たぶんこのあたり…
さくらが寅の家を探す。
下町風情溢れる浦安。
庚申塚近く
浦安市猫実4丁目14付近
。
もちろん当時はディズニ―ランドはなく、寅の好きそうな雰囲気のあるいい町だった。
(私は中学校の先生をしていたころ、引率でディズニ―ランドに何度も行ったがもう
昔の浦安の面影はそこには無かった。)
現在の庚申塚付近↓
まだ面影が少しだけ残っている。
豆腐屋を探し当てるさくら。
小さな看板に 「とうふ 三七十屋」 の文字
店から寅の鼻歌が聞こえてくる。
「♪包丁一本、サラシに巻いーてー、かぁ、旅にでたのぉもー、
板場の修業ーてね、♪」
『月の法善寺横町』
包丁一本晒しにまいて
旅に出るのも 板場の修行
待ってて こいさん
哀しいだろうが
ああ若い二人の
想い出にじむ法善寺
月も未練な 十三夜
藤島桓夫さんの歌,昭和35年のヒット曲
ちなみに私は大阪の出身でこの法善寺の近くの
「夫婦善哉」というぜんざい屋さんで
ふたつのお椀に出てくるぜんざいをよく食べました。
このお店はぜんざいしかメニューになく
、狭いけれど雰囲気のある店です。
寅の鼻歌「♪タララララララァ〜、ラララララララー…♪」
寅「あっ!さくら!来たか!おい!」
(さくらの両腕をつかんで喜ぶ)
寅「あっ、いけね、油ついちゃった」(腰のタオルで拭く)
さくら「お兄ちゃん、こんなとこに…(住んでいたのね)」
さくら、寅の真面目に働く姿見て嬉しそう
寅「あっ、焦げてる焦げてる」
寅「見てくれよ、どうだい、おい!額に汗してよ、ね!
油まみれになって、働いているんだよ、
地道な暮らしをしてよ!」
さくら「本当に油まみれね」
寅「そうよ、仕事ってぇのはね、何しても
楽なものはないんだよ、ウン」
↑寅からそんな言葉が出るとは、
夢にも思わなかっただろうね。
それにしても、好きな女性のために
ここまでも人が変われる寅って
凄いなって思ってしまうのは私だけでしょうか。
節子の母親登場
(杉山とく子さんはテレビ版「男はつらいよ」のおばちゃん役)
杉山とく子さんも、このシリーズでそれはもういたるところに
出てくる。キャラがたって面白かったのは「寅次郎恋愛塾」の
アパートの大家さん役や「寅次郎の告白」の鳥取の
駄菓子屋ばあちゃん役。この人は実に上手い。
母親「いやねぇ、二言目には、
オレに似て、オレに似てって
あんたのこと自慢すんだよ」
寅「自慢なんかしちゃいねえよ、こんな口うるさい小姑みたいな妹
持ってよー、ただ、なんとなくさ、ツラがオレに似てるってことよ」
どこが…(^^;)
母親「いやだよ、ツラなんか似てやしないよ、
ね、さくらさん」
さくら「ええ、兄は色男ですから」
↑これは、名言!さくらいいこと言うなあ
寅「いやー、うまいこと言うな!まいった、まいった」
さくら、寅にひそひそ…
さくら「ねえ…家の人留守なの?」
さくら「へぇーじゃぁあのおばさん
ずっと一人でお店やってたの?」
←いろいろ女性関係を探り始める(^^;)
寅「うん、…ぜんぜん一人って
わけじゃないけどね、
もう一人いることはいるよ…」
さくら「え?…誰?」←いよいよ核心に近づいてきた
寅「子供だよ…」←どう〜見たって大人(^^;)
さくら「なにしてるの?その息子さん」←おっと、フェイント
寅「息子さんって
いうんじゃないな、あれは…」
さくら「娘さん?!」←決まってるよさくら(^^;)
寅「まあ、そういうことになるんじゃない…」
さくら、悩んでいる顔…。
そして、節子登場
節子「寅さんいるー?」
↑残り30分でようやくマドンナ登場!(シリーズ中最も遅い登場)
ちなみにこの第5作「望郷篇」は
シリーズ最短88分だ!
やっぱり映画は
長ければいいもんじゃないのがわかる作品だ。
寅「ハイよ」
節子「はい!ハタンキョウ!」
と袋渡しながら自分もひとつ口に入れる。
母親「節子!さくらさんだよ!」
★さあここから新旧さくら二人がハチアワセの場面!
節子「あ、ィモゥトサン…?」
←スモモを口に入れたままなのでこうなる
口から出してポケットへ仕舞い込む。
←そのあとそのハタンキョウどうなったんだ(−−;)
ハタンキョウ(別名:トガリスモモ).
日本スモモの仲間で甘く果汁の多い品種。
代表的なものは、山梨県の「甲州巴旦杏」で「ケルシー」と呼ばれてた。
現在はあまり市場に出回っておらず、姿を消しつつある。
「ハタンキョウ」とはスモモが
万葉の時代に中国から伝来した時の古い呼び名
さくら「兄がいろいろお世話になってます。」
新旧さくら共演
節子「いいえ、私達こそいつも
お世話になりっぱなしで、あのね、
お噂はよく、ねー、お暑いのに…、
うん!いやだわ、寅さん!
オレにそっくりだなんていうからてっきり私!」
寅「もっといい女だと思ったでしょう!
ヒヒヒヒ!ヘへへ!」
節子と母親「ハハハ!ハハハ!!」
寅「バーキャロー!」
寅の気質を熟知している
さくらだけが少し心配顔。
帰り道
節子と挨拶して別れるさくら。
さくら「いい人たちね、二人とも」
寅「口の悪いお袋と、気の強い娘だ、
どおってことねえや」いいねえ〜!このセリフ(^^)
剛とすれ違いざま。
寅「よお!にいさん!
ここんとこ来ねーじゃネエか、豆腐食い飽きたか?」
剛「研修で箱根に行ってたから…」
寅「ほぉー、箱根、結構結構、けっこう毛だらけ猫灰だらけ、
おまえのお尻はクソだらけ!」
寅「これ、オレの妹だよ!」
さくら「どうも…」
寅「何だ!そんな目したってダメだぞ、
おまえ、こりゃ亭主持ちなんだからな!ハハハ!
寅「不器用な野郎だね、あいつは、
おまえの亭主の博に似てやしねえか?」
井川比佐志さんは
テレビ版「男はつらいよの」博(博士)役!
寅「同じ種類だな!」
これはテレビ版からのフアンにはたまらない言葉
コーヒー、ワイン、スナック「プチ」
さくら「お兄ちゃん、あの、地道に暮らして、
それから考えることも地道にね、
あまり飛躍しちゃだめよ」
↑さくらにはなんとなく
この先にある不幸が見えているのかも。
寅「気をつけてな!あばよ!」
寅のラッパ「パープー」「パープー」
豆腐屋
《謙遜ネタ》
母親「謙遜するにもほどがあるよ。立派な若奥さんだよね!」
節子「うん」
寅「へへへ、とんでもねえ、
あんなみっともねえオカメ、とても人前にゃ」ひえ〜(^^;)
節子「寅さん、団子屋、団子屋っていうから
私てっきり屋台のお店だとばっかり
思っていたら、ね、立派なお店みたいじゃない。」
寅「何が立派なもんか、あんなもの犬小屋に
毛が生えたようなもんですよ」ひえ〜(^^;)
母親「帝釈様の門前町にあるんだろ立派なもんだよ」
寅「帝釈様なんて豚小屋みたいなもんですよ」ぴえ〜〜(^^;)
節子「あらっ、有名なお寺じゃない、裏に江戸川があって」
寅「とんでもねえ、あんな川、ドブ川みたいなもんですよ」あちょ〜(^^;)
母親「なにも、江戸川まで謙遜することないじゃないか」
『予告編』では節子のことも「節子なんて…」と謙遜してしまう
シーンがあるので、是非DVDで見てください。
柱時計(ボーン、ボーン、ボーン)
寅「明日早いので失礼させていただきます。」
母親「乱暴な口利いているけれど、
案外育ちがいいのかもしれないよ」
寅遠くで耳ダンボ(^^;)
母親気づいて
母親「あ…なに…?」
寅、忘れ物のタオル取りに来て、
「じゃ、ぼく寝ます」(^^;)
(髪に手をあてちょっとポーズ)
部屋に戻りながらもう一度
「ぼく…寝ます」(^^;)
♪ピロピロピロピロピロピーッ!
パコパコパコパコパコパコ…
ピピピピッピッ!
寅、自転車で配達している。
説江山 正福寺 縁日
正福寺の縁日で源ちゃん見つけて説教
(源ちゃん20円でお茶の急須売ってる←安すぎ)
寅「人間はな!額に汗して、地道な暮らしを…」
源「ヘイ!」
寅「ヘイじゃない、ハイ!」
★この時の佐藤蛾次郎さんは、他の作品に出演していた関係で丸坊主だったそうだ。
それゆえにこの作品ではカツラだったということです。びっくりだね。
「寅さーん」
「ハイ!」
翌日
黒板に書いてある。
東商スーパー豆腐50、油揚げ130、江戸寿司油揚げ50、
節子「あら、今日は?」
剛来て、「ちょっと時間ないか?大事な話があるんだ。」
夜
その夜節子母親と口喧嘩する。
一緒にいた源ちゃんを隠す。
節子「寅さん、まだ起きてたの?そっち行っていい?」
寅「どうかしたかい?」
節子「ちょっとね、かあさんと喧嘩したの…」泣いてしまう。
寅、小さな木切れで、川の水をつつく。
節子「あーきれいなお月様…」
寅「あーそうだね」
寅「天に軌道のあるごとく人それぞれ運命と
いうものを持っております、かぁ、」
節子「ん、なあに?」
寅「三(産)で死んだが三島のおせん、
おせんばかりがおなごじゃないよ、」
寅「白く咲いたが百合の花、四角四面は
豆腐屋の娘、
色は白いが水臭い」上手い上手い(^^;)
寅「四谷、赤坂、麹町、チャラチャラ流れる御茶ノ水、
粋な姐ちゃん立ちションベン!」
寅「あっ…」
節子「ハハハハハ」
節子「寅さん、どうして結婚しなかったの?」
この質問歌子ちゃんや京子さんもしてたなあ…(^^;)
寅「まあ、…いろいろあったしな、うん」
節子「寅さん、できたらね、
…もしできたらずっと家の店に
いてもらえないかしら?だめ?」
寅「いや、いいよオレは
ずっとそのつもりだったし、
昔から豆腐大好きだからな」
節子「本当?
本当によかったわ、
これで安心できるわ」
ある意味節子のこのお願いって超自己中心的な発想、
もしくは鈍感。普通これだけ露骨に寅が節子に
なついてたら分かるはず。
もしうすうす分かっているとすれば 酷い。
熱愛する恋人たちには周りが見えないということなのかも
しれない。
節子お礼を言って部屋に戻っていく。
源ちゃん「兄貴おめでとうございます。
今のプロポーズやな」
↑源ちゃんがこう誤解するのものも無理ない。
誰だって自分に気があるって思うよ、そら。
寅、源ちゃんをこづきながら、相当舞い上がった
表情で、喜びを抑えきれない様子。
翌朝
寅、ご機嫌で歌を歌いながら働いている。
母親「今夜ビールでも飲もうか!寅さんが
ずっといてくれるお祝いにさ!」ニッコニコ
節子「そうね!」と働きに行く。
自転車でまたまた配達
自転車で「♪包丁1本〜サラシにマーイーテー♪」
このあたりの浦安の風情がいい!
寅、さくらに電話
←赤電話ではない、
それも電話ボックスから!
寅「ひょっとしたらオレ、こっちで
所帯持つかもしれないよ。
おい、みんなにはまだだまってろよ。
ここだけのはなしだからな、
おい!きいてるのか?」
さくら「うん、聞いてるよ、もしそうなるといいね…」
勘のいいさくらはすでに不吉な予感、
暗い音楽
この寅の「所帯持つ思い込み」はこの先の
作品にも度々出てくる哀しいギャグだ。
私が印象深いなと思ったのはまず
「奮闘篇」の花子ちゃん。これは美しくも切ない
思い込みだった。
あと、「寅次郎恋やつれ」の絹代さん。
「寅次郎紙風船」の光枝さん。
「口笛を吹く寅次郎」の朋子さん。
どれも寅は、真剣だったが、花子ちゃんと
絹代さん以外の2人は、脈があったにも
かかわらず、結局、寅の逃げの心が入った
ゆえにうまくいかなかった。
もし万が一この時、節子さんが寅のことを
好きだったとしても最後の最後ギリギリでは
寅は逃げ出すのかもしれない。それとも
第5作の時点では、まだ寅の気質は明確に
設定されていないのかもしれない。
さくらのアパート
『コーポ江戸川』
後には名前が変わって「こいわ荘」
東京都葛飾区柴又4−23−26
ポスター「葛飾花火大会」主催葛飾区観光協会
豆腐屋
豆腐屋の黒板に「寅さんパーティ」の文字。
節子「寅さぁーん!」
寅、赤い新調の服着てくる。
母親「あれ!あら素敵!」
寅「ヘヘ、ちょっと派手気味って
いうこともあったけど、
他に着るもんがないもんですから」
源ちゃんも参加。
節子、寅にビールを注いでやる。
節子「どうもごくろうさまでした」
みんなで乾杯
節子「寅さんへ感謝を込めて」
母親「よろしくね」
そこへ例の剛やってくる。
剛「こんばんわー」
寅「なんだよおまえ、今時分来たって
豆腐なんか売らないよ」
剛「いえ、違うんです。これ、買ってきたんです」←大きなスイカ
寅「いやね、節ちゃん、
この前来た妹の亭主ね、それと感じが似てるんだ。
まるでそっくりだよ。だからね、
オレどーもこれとは他人のような気が
しねえんだな、あれか、やっぱり、
印刷工場で職工かなんかやってんのか?」
くりかえすが、井川比佐志さんは
テレビ版「男はつらいよの」博士(ひろし)役!
テレビ版を知っている人にとってはとても面白いところ!
剛「いや、国鉄です」
昔は国鉄だったんだねえ〜。
っていうかまだまだずっと国鉄。
母親「この人ね国鉄の機関士なんだよ」
寅「缶焚きか!
ほう偉いねー、ありゃ大変な仕事だよ!
いやあオレは見直しちゃったな
へぇー、そうでありましたか」
今回は「缶焚き」に
異常な関心がある寅でした。(^^;)
節子「あのね、この寅さんが、ずっとこの店を
手伝ってくれることになったのよ」
節子さんはどういうつもりで
この言葉を言っているのだろう…。
剛「ほう!そうですか、そりゃ
都合がよかった、
どうぞよろしくお願いいたします!」
寅「う、うん、へへ…?」
寅「えっ?どうしておまえ、
オレによろしくって…、
あれっ?おかみさん、これ、
親戚かなんかになってるの?」
母親「これから親戚になるんだけどね…」
このセリフのやり取りは第1作でも冬子の
婚約者を紹介する御前様のセリフで使われた。
母親「おまえから肝心なことを説明しなくちゃ」
剛が節子との結婚の話を寅にする。
剛「今度高崎機関区に転勤になるんですよ。
前から結婚のことについては…、
節子さんと話し合ってきたんですけど…。
節子さんには節子さんの家の事情がある。
母さん一人残しては店はやっていけない…。
母さんはどうしても店を潰したくない。
ま、そんなことで長引いてたんだけれど
今度の転勤を境に、どうしても結婚したくて、
それで、節子さんもようやく決意してくれて…、
それが、今聞いたら、寅さんが、
店をやってくれる、それなら、
母さんも助かるし、非常に好都合だなって…」
源ちゃん、真っ青になっている。
寅、震えながら割り箸口で割ってわなわなし、
寅「何にも知らなかったからね、
さっちゃんも教えてくれなかったし」
↑動揺して節ちゃんをさっちゃんと
言い間違えている。
寅「三枚目だよ、僕は」
↑寅の震えながらのこの告白にも近い言葉を
この親子がこの時まじめに考えれば
もう少し寅は傷が浅かったかもしれない。
寅「ほんと、おめでとう」(TT)
剛「ありがとう」
節子「ずっといてくれる?」
↑これだけ動揺して「三枚目だよ」と
まで言っている寅の動揺が
伝わらないのかこの女の人には。
ほんとこの節子さんって鈍感というか
自分本位というか…。
いや、やっぱりうすうすどこかでわかっていて、
それでも自分たちの幸せの事しか
考えられないのかもしれない。
寅「ずっといてくれますよ、
心配いりませんよ、」哀しいね(TT)
母親「そのうち、ね、誰かいい人
見つけてあげるからね、寅さん」
↑追い討ちをかけるように(TT)
寅「そうね!誰か
いい人一人ね、みつくろって」←もう何を言っても地獄
母親「どんなタイプがいいんだい、寅さんは?」
←もういいってば!(ーー;)
寅「そうね、やっぱり、
おかみさんみたいな人がいいなあ」
←寅、精一杯のギャグも哀しい…
寅口は笑っているが、目は泣いている(TT)
母親「やだよこの人は、ハハハハハ!」
このあたりの会話は寅ほんとに可哀想だった。
事情を知っている源ちゃんだけ真顔で寅を見ている。
この時の源ちゃんのシリアスな顔が
この場の真実を語っていた。
翌朝 浦安の漁師舟が次々に出て行く。
節子「寅さんは?」
源ちゃん「朝早ようどっか行ってしまいました…」
節子「どうして?」
どうしてはないよ…気づいてやって欲しい(TT)
源ちゃん「知りまへん…」
節子「……」
もうこのへんでさすがに
気づいてくれたかな…節子さん。(TT)
とらや夜(葛飾花火大会)
さくら浴衣姿
おいちゃん、さくらたちが遅いのでやきもきしている。
おばちゃん「早く食べちまいなソーメン、
早くしなくちゃ仕掛け(花火)見られないよ」
サッポロビール
(予告編では「男は黙ってサッポロビール」の仕掛花火も登場)
博「兄さん呼べばよかったですね」
おいちゃん「今日明日あたりふられて
帰ってくるような気がしてならねえんだよ。」
さすがおいちゃん。3人のおいちゃんの中では、
この森川おいちゃんがもっとも、寅に対しての洞察が鋭かった。
さくらたちそうめん食べる。
電話 リーンリーン
おばちゃん「まあ、これはこれは、まあ、この度は
すっかり寅がお世話様…、は?
寅がいなくなった?いいえ、私どもには…、
はい、まあご心配をおかけしてすいません。
あの、こっちへ来ましたらね、
さっそくお知らせしますから」
おばちゃん「ちょっと大変だよ!
寅ちゃんいなくなっちゃったよ、
やっぱり、ふられたんだよ!バカだねー!」
後ろに寅が立っている(TT)
さくら、おいちゃん、寅が後にいることを目で合図。
おばちゃん「えっ?ひぇー!」
↑このパターンは第2作でおいちゃんが
葬式帰りに使った名作ギャグ(^^)
おばちゃん、顔引きつりながら微笑む(^^;)
おいちゃん「げ、元気かい?寅さん」
さくら「お兄ちゃん、もう…、お店やめちゃったの?」
寅「豆腐屋の方…?
やめちゃたよー、へへへ…ヘへへ…へ」(TT)
花火 ババーン!バーン!
タコ社長「あ、寅さん、なんだい嬉しそうな顔しちゃってさ、
連れてこなかったのかい?」
寅「誰を?」
社長「これをだよ!」(小指)
社長「聞いてるようまくやってるようじゃないかよー、
浦安の方でさー!」
社長「色男!ハハハ」
寅いきなり手で思いっきり社長の鼻を押さえる
社長「うう!イタタタ!」
寅怒って二階へ
博「寅さんの顔が笑ってる顔かどうかくらい
分からなかったんですか!?」
↑この場面でも博は時々寅のことを寅さんと言っている。
第2作でも博は第三者に寅さんと言っている。
おいちゃん「寅はふられたんだぞ」
社長「えっ?またか!」←駄目押し(ーー:)
みんなで揉めている中、寅はそっとカバンを持って
二階から下りて、店先へ。
そして出て行く
さくら気づいて追いかける。
今回は柴又駅とは逆。
国鉄金町まで歩くのかな?
題経寺の前で追いつくさくら。
さくら「また行っちゃうの?」
寅「うん」
寅「やっぱり地道な暮らしは
無理だったよ、さくら」
哀しい言葉だね…(TT)
さくら「うん…」
寅「オレ昔からバカだったもんなあ…、
だけどよぉ、さくら、
あんちゃんはよう…今度は、
今度だけは、
地道に暮らせると思ったよ、」
分かる分かる(TT)
さくら「うん」
寅「本気でよ!」
さくら「うん」
寅「やっぱりだめだよな…、
おまえ、幸せに暮らせよ!」
さくら「お兄ちゃん!」
曲がり角で
ちょっとさくらの方をむいて、少し笑って去っていく。
花火バン!バン!バン!
この別れのシーンは美しい!
寅の無念な気持ち分かるな〜。
自分の愛する人のために地道に
働くことは動機としてちっとも
不純じゃないと私は思う。
寅はきちんと地道に働いていた。
この第5作の時点で、山田監督は
寅に第10作以降のような
「得恋的失恋」を与えていない。
つまり、この時はまだ、寅は節子さんが
寅を好きになれば、結構結婚まで
こぎつけたかもしれない…とも思う。
(この時、すでに第8作で
使われた喫茶店「ローク」が見える)
すでに六波羅貴子さんがいるってことか!?…まさか…
あのロークには実際に六波羅朋子さんという
名前のマドンナのモデルになった方が住んでいる。
1ヵ月後
夏
さくらのアパート
節子がさくらをアパートに訪ねてくる。
節子「どうしてかしら、どうして寅さん急に
ウチを辞めちゃったのかしら、
なにか訳があるんじゃないかしら?」
↑さすがに節子もうすうす分かっているような
話し振り。でも気づくのが遅い。
さくら「別に訳なんて、口先ばかり良くって、
結局兄はヤクザな人間なんですから、まともな暮らし
なんて飽きちゃったんでしょう。
いつもそうなんですよ」
そう言うしかないよね、さくら。
『兄はあなたのことが好きだったんですよ』
なんて言えるわけないし(TT)
旅先からの節子に宛てた寅のハガキを読むさくら
懐かしい第1作のテーマ曲が流れる。
拝啓、
その後、お元気ですか。
私こと思い起こせば恥ずかしきことの数々
今はただひたすら反省の日々を過ごしております。
浦安にておかけしたご迷惑の数々
くれぐれもお許しください。
なお、柴又におります、私の妹、
愚かな女なれど、身寄り頼り無き不幸の身の上ゆえ、
なにかと、お力になっていただきたく、
ひれ伏してお願い申し上げます。
末筆ながら、節子様の幸せを心からお祈りしています。
車 寅次郎
ハガキのナレーションが流れる中、
さくらが江戸川の土手で
たたずみながら兄のことを思っている。
静かな名場面とはこのことを言う。
↓
田舎の海岸で登と再会
北海道小樽市・朝里海水浴場
脚本では「北陸路」とだけ書いてあるのだが
私の敬愛する『小寅さん』が北海道旅行でこのラストの海岸を
北海道小樽市・朝里海水浴場であることをつきとめられたのだ。
凄腕だ…。小寅さんのサイトはリンクも貼らせていただいているので
興味のある方はリンクからどうぞ。
寅「よぉー!」
登「あー!!」
寅「お控えなすって!」
登「お控えなすって!」
寅「それじゃ、仁義になりません、
まずあんさんからお先にお控えなすって!」
登「それじゃ、ひかえさせていただきやす」
寅「さっそくの、お控えありがとさんにござんす。
わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
姓は車 名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と、発します!」
ハハハ!ハハハ!!
登「兄貴ー!
堅気になったんじゃねえのかよー!?」
寅「てめえだって、
なにうろうろしてやがんだい!バカヤロー!」
登「ちっとも変わってねーよー!!」
寅「バカヤロー、徐々に変わるんだよ!
いっぺんに変わったら体に悪い
じゃねーかよー!!コノヤロー!」どっ(^^)
ハハハ!!ハハハ!
遠くで蒸気機関車が通る プォー〜!!
終
第5作 2004年1月25日完結
製作 小角恒雄
企画 高島幸夫 小林俊一
監督 山田洋次
監督助手 宮崎晃
脚本 山田洋次 宮崎晃
原作 山田洋次
撮影 高羽哲夫
音楽 山本直純
主題歌 『男はつらいよ』
作詞 星野哲郎
作曲 山本直純
唄 渥美清
美術 佐藤公信
装置 小島勝男
装飾 町田武
録音 小尾幸魚
調音 松本隆司
照明 青木好文
編集 石井巌
進行 福山正幸
製作主任 峰順一
衣裳 東京衣裳
現像 東京現像所
協力 柴又神明会
出演
車寅次郎 渥美清
さくら 倍賞千恵子
節子 長山藍子
御前様 笠智衆
車竜造 森川信
剛 井川比佐志
博 前田吟
登 津坂匡章(後の秋野太作)
澄雄 松山省二
車つね 三崎千恵子
梅太郎 太宰久雄
節子の母親 杉山とく子
源吉 佐藤蛾次郎
木田三千雄
谷村昌彦
大塚君代
谷よしの
光映子
山田百合子
高木孔美子
二宮順一
山本幸栄
石井愃一
大杉侃二朗
市山達己
尾和義三郎
高木信夫
高杉和宏
樫明男
みずの皓作
観客動員数 72万7000人
(第6作は数日後にアップし始めます。)
第5作 2004年1月25日完結 (追加修正2007年1月28日)
2005年6月28日『松村達雄おいちゃん』名場面集アップ!
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