バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
第7作 男はつらいよ
1971年4月28日封切り
このシリーズで最も清らかな心を持ったマドンナ 花子 花子を護るために奮闘する寅次郎
第六作を作ってすぐに山田洋次は第7作を要請される。ほんとに休む間もないとはこのことだ。第5作、第6作ともに寅次郎の『望郷の念』を
大きく打ち出して格調の高い作品に仕上げたが、同じテーマを第7作に持ってくるわけにも行かず、山田監督にとってアイデアに苦しんだ数ヶ月
だったようである。
この第7作は48作中でもかなり特色がはっきりしたちょっと変わった作品である。それはマドンナが障害を持つ、という設定から来るものでろう。
主人公が障害者、というのは後に「息子」や「学校U」となって花開いていくが、この時期、山田監督の感覚はまだそこまでいたっていない。しかし、
障害をもった人の自立についての大きな問いかけの萌芽は福士先生の花子に対する教育姿勢のなかで窺い知ることが出来るのである。
とはいえ、この映画はあくまでも恋の物語であり、喜劇である。山田監督の問題意識が喜劇の軽やかなテンポを崩してしまってはもともこもない。
この第7作はそういう意味では、ちょっと大口を開けて笑いながら見づらい作品かもしれない。ここの部分の欠点はどうしてもぬぐいきれない。
それでも、マドンナの花子が江戸川の土手で歌を歌い、寅と語り合うシーンは他の作品にはない、なんともいえない涼しげな優しい風がスクリーン
に吹いており寅の心もいつもよりなんだか温かくて私はこの作品も好きである。48作中、ある意味ではもっとも穢れのないマドンナであったともい
えよう。もちろん小さん師匠扮するラーメン屋の親父が言うように現実的にはいろいろな問題がこの巷では彼女の身に降りかかってくるのであろう
が、それでもやはり彼女の心は清らかで穢れがない。このこともまた紛れもない事実である。寅は恋をした、というよりは「清らかな護るべき心を
わずかの間だが持ち得た」と言った方がこの場合的確かもしれない。
障害を持つ花子と寅の結婚について周囲が当然のように反対する中で、さくらだけが、2人は結婚してもいいのではないか。と思う場面は兄に対
する盲目的なまでの愛情の深さが表現されていて、切なくも悲しかった。見事な演出だと思う。
また、寅の産みの母である菊も再度登場して、母と子の消すに消せない絆も表現されていることが、この作品に深みを与えている。
■第7作「奮闘編」ロケ地解明
全国ロケ地:作品別に整理
オープニング。『夢』はない。
越後広瀬駅
雪が随分深い。
集団就職の一団が汽車を待っている。
寅のナレーション
『冬来たりなば、春遠からじ、とか申します。
その遅い春の訪れがこの北国にもようやく
やって来た頃、故郷を後にして
都会に旅立つけなげな若者たちの姿が
この田舎の駅に見られるのでございます。』
どの学生も父母達もとてもいい顔している。
学生、母親に「心配しねえでくれねえか、みんな…」
母親「体に気をつけて可愛がってもらうんだぞ…」
学生「母ちゃんも、あんまり無理しないでかせがっしゃれ」
↑この辺り、越後弁で話す地元の
人々どうしの会話は実に味わい深くて美しい。
特にこの母子の会話は本物だ。
【2008年9月末 追記↓】
ここの部分の母と息子の会話は、とても味わい深く、
内容を是非知りたいと長年思っていたのだが、
私が敬愛する寅ファンであり、熱烈な寅マニアである
越後出身の『寅福さん』が、
このたび、越後の小出出身のお母様のお力を借りてなんと
この方言を解読されたのだ。
非常に高い解読率で、
この解読により、「奮闘篇」がより一層味わい深いものになったことはもちろん、
それ以上に、当時の越後地方の生活や様子を窺い知る上で、
貴重な資料ともなったことは間違いない。
『寅福さん』及び『寅福さんのお母様』に深く感謝いたします。
それではお二人が解読された部分を紹介いたします。
ご堪能ください↓
学生「心配しないでくんねんかの だんだん帰るんだんが」
(あんまり心配しないでくれよ また帰ってくるから)
母「そうがっか ほいで頭病みだったんがな、
身体に気をつけてかせがねばだめだぞ」
(そうね、でもあんたは頭がすぐ痛くなる子だから
身体に気をつけて働かなければダメだよ)
学生「母ちゃんもまー、あんまり無理しねーでかせがっしゃれ」
(母ちゃんもあんまり無理しないで(畑仕事など)働いてくれよな)
母「ん・・はぁ〜・・・」
母「ほら、しゃーちんしょがお前に餞別くれるってや。
行ったら忘れねーでどーでも礼状出さんばならんど。」
(そういえばしゃー家のところの衆がお前に餞別をくれたんだよ。
向こうへ着いたら必ず御礼の手紙を出さなきゃいけないよ。)
この部分の寅福さんの解説
「しゃーちんしょ」とは多分固有名詞のようでよくわかりませんでしたが、
この辺りの村ではご近所の親戚一同を「〜衆(しょ)」と言っているらしいです。
母「ポケットよくしまって落とさんよーにしとけ。」
学生「母ちゃんも・・・」
(声がかぶり解読不可能・・・)
以上『寅福さん』とお母様が解読された部分でした。
寅「君達は集団就職かい?」
学生「はい」
寅「あー、ご苦労さんだね、で、どこへ就職するんだい?」
学生「東京のオモチャ工場です。」大川弥太郎の工場かも…。(第14作『子守唄』参照)
寅「そうかい…おばあちゃんも心配だね」
おばあちゃん「はい…」←このおばあちゃんキャラに味があった(^^;)
寅「東京か…しばらく帰らねえなぁ…」
「可愛い子には旅をさせよ申しますが、
まだ、年端もいかねぇのに労働に
励まなきゃならねえこの若者たちに
遊び人風情のこの私が生意気な
ようでございますがこう言ってやったんでございます」
寅『親を恨むんじゃねえよ。
親だって何も好き好んで
貧乏しているんじゃねえんだよ、ねっ。』
↑確かに家庭の経済的な事情もあるが、
本人の事情もあるぞ、寅。いろいろだよ。ちょっと
断定しすぎの感あり。
ホーム 汽車の前で
寅「あっ、それからな。東京に出て
故郷が恋しくなってたまらなくなったら、
葛飾柴又の帝釈様の参道にとらやという
古くせえだんご屋があるから
そこへまっすぐ訪ねていきな…。
そこにはオレのおじさんとおばさんにあたる
老夫婦とそれからたった一人の妹がいるからよ。
どいつもみんな涙もろい情け深いやつらばっかりで
君達が故郷に帰ったみたいにきっと親身になって
迎えてくれるよ。」
透きとおった冷気と後ろの山が
なんともすがすがしくてよい
出発直前の汽車の汽笛『ポーーッ』!!
寅「あっ、もし妹がオレのこと聞いたら、
車寅次郎は…、あっ、オレだけど、
車寅次郎は、たとえこの身は遠い他国
の空にいようとも心は柴又の皆さんと
一緒にいると伝えてくんな。」
そんな細かいこといきなり言うなって、わからんよ(^^;)
みんな「はい」
汽車動き出す。
寅「元気でな、しっかりやるんだよ!」
お母さん達「元気での、の!!」
「しっかりやれよ!…あれ?、あっ、オレもあの汽車乗るんだ!」
あちゃ〜〜〜(_ _ ;)
ホームを走っていく寅、
寅「おい!!、おい!!」
駅員とぶつかりそうになって
メインタイトル
おなじみの口上
「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、
姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」
♪どおせおいらはヤクザな男 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
↑この第7作の歌は「兄貴」でなく「男」となっている。このあとに「偉い兄貴」とでてきて
「兄貴」がだぶるので「男」に変えたのかもしれない。しかし結局「兄貴」にまた戻っていく。
カメラは江戸川に浮かべた船の中から撮影されている。川面が美しい。
前作の第6作は俯瞰図、今回第7作は
水面からの江戸川や対岸の景色。
今回はしっとりとして大好きな映像だ。
コントもいいがやはり私はこういう何気ない風景も好きだ。
柴又 題経寺前
源ちゃん境内掃いている。
とらや 店
大きめの車がとらやの前で止まる。
派手な服着た菊(寅の産みの母。第2作参照)が車から降りてくる。
とらやの店の中
今回も第6作に続いて森永の冷蔵庫。(森永マミー)
団子一折500円(違う柱には300円)
ジュース50円
コーラ60円
サイダー50円
焼き団子60円
菊「こんにちは」
おばちゃん「いらしゃい」
菊「あーしばらく。あんた竜造さんの
奥さんでっしゃろ。私ですがな、お菊…」
おばちゃん「まぁ!お菊さん」
おいちゃん「おー!お菊さん」
お互いを懐かしむ
おばちゃん「あんまり若いんで分かんなかったわよ」
菊「いややわ…若いのは服だけよ。」鋭い自己分析!(^^;)
←ド派手な服だが、ある意味似合っているともいえる。
胸のアクセサリーがなんとも派手。
菊「もう、あんた、久しぶりに柴又へ帰ってきてなー、あっちこっち懐かしいて、懐かして…」
一方題経寺(帝釈天)での御前様と冬子
冬子「だって寅ちゃんのお母さんってもうずいぶん前に
お亡くなりになったんじゃないの?」(赤ん坊あやしながら)
冬子はもうすっかり元気そう。
御前様「いや、それはさくらさんのお母さんでな、
さくらさんの父親というのはなかなかの遊び人でな、当時芸者を
しとったお菊さんに子供を生ませてしもうてな、その子が寅なんだよ。」
冬子「あ、そう…」←冬子あまり反応せず。
冬子さんその反応ちょっと鈍感?
これってこの親子にとって大変な話なんだぞ冬子さん!
ほんとに寅のことギリギリではどうでもいいんだなあ…。
散歩先生の夏子さんと反応が大違い。
ちょっと冷たいというか、悲しいというか、さみしい…。
御前様「確か、関西の方で元気にしとると聞いとったが、、そうか…お菊さん帰ってきたか…」
とらや
菊「実はね、1年程前に寅からこんな便りがありまして、
近じか嫁貰うよって母ちゃんも遊びに来てくれと、
書いてありまっしゃろ。」
おいちゃん、ハガキ見ながら「なるほど…」
菊「もう、あんなね、極道なやつでも親を安心させてさせてやろう、
というその気持ちがうれしゅうてね、私…」
菊「寅の嫁はんどんな子でんねん。ここにいまんの?」
おいちゃん「それはですね…」
さくら、とらやにやって来る。
さくら「こんにちは。あっ、お客さん?いらっしゃいませ」
菊「あんた、寅の嫁はんでっか…へぇー、
ほんならこの子私の孫でっか、
おばあちゃんやで、血ィって怖いもんですね」
おいおい ヾ(^^;)
満男を寅の子供と思っている。
おいちゃん「いや、ちょっと、あのね…こりゃ寅の嫁じゃないんですよ」
菊「えっ?」
おいちゃん「さくら、こちら寅のおっかさんだよ」
おいちゃん「寅の妹なんですよ」
さくら「あの、…お兄ちゃんの妹のさくらです。はじめまして。」
菊「私、寅の母親の菊でございます。
どうもなんやけったいな具合でんなぁ、
なんや関係ありそうでよう考えたら
全然他人でんなぁ、この人」ちょっと笑いながら
(さすがにお菊さんアクのある発言するなぁ…)
菊「なんやおかしいと思いました。こんなきれいなおこ(娘)が
寅の嫁はんに来るはずがないわね。私なんでこない
慌てもんでんねやろ、昔から慌てもんで、えらいすいませんでした。」
おいちゃん「いや、どうも…」
菊「で、寅の嫁はんは、どこにいまんねん?」
さくら「お兄ちゃんのお嫁さん?」
おいちゃん「寅がな、お菊さんにね、所帯を持つなんてハガキを出しやがってさ」
さくら「いつ?」
おいちゃん「いや、1年程前さ」
さくら「浦安の節子さんのことかしら?」
おばちゃん「あー、そうかもしれないね!」
おいちゃん「ありゃ去年の夏だろう?」
さくら「一年ほど前っていったら…」
おいちゃん「あっ、幼稚園の秋子先生」(実は『春子』先生)
おばちゃん「あっ、そうかな…」
さくら「でも、散歩先生の夏子さんだってちょうど1年くらい前よ」
おいちゃん「そうかい?ありゃ、もうちょっと前だろ…」
おばちゃん「ひょっとしたら、御前様のお嬢様じゃないか?」←冬子
さくら「それはもっと前よ」
おいちゃん「ありゃ、ずっと前だ…、その辺は確か…」
菊「いろいろあったんでんなぁー、…」
そうそう(^^;)
↑この寅の恋の遍歴ギャグは
「忘れな草」や「恋やつれ」「紅の花」などでも出て来る。特に「忘れな草」のは傑作
おいちゃん「ええ…」
菊「で、結局はどうなってますん?」
おいちゃん「えー、ですからつまりね…、
その、相も変わらず、独身で
一人ということになっております。
菊「ああ…、そうですか…」
江戸川 土手
寅、江戸川土手を歩く。
寅「帰ってきたか…」
とらやの前
菊「ありがとうございました」
おばちゃん「おかまいもしませんで」
さくら「もし、お兄ちゃんが帰ってきたらすぐ電話させますから」
菊、車に乗り込んで「あのー、帝国ホテルの615号室でございますのでお願いいたします。」
一同「うなずく」
菊「あのー、帝国ホテル、でございます。」
しつこい(^^;)
とらや 店
おばちゃん「帝国ホテルなんていくらくらいで泊まれるのかねえ?5千円かねえ?」
さくら「さあ、1万円くらいじゃない?」
おばちゃん「たいしたもんだねえ、金持ちなんだねえ…。
大きな自動車に乗っかっちゃってさ」
←おばちゃん読みが甘いぞ
おいちゃん「無理してんだよ。貧乏芸者だったお菊さんとしては
30何年ぶりに精一杯錦を飾って帰ってきたんだ。
その気持ちを考えると哀れでならねえよ」
さすがだねおいちゃん
さくら「そうかもしれないわねー」
おばちゃん「考えて見りゃ可哀想な親子だねぇ…」
ほんとそうだ…。
さくら「今ごろ何してるのかしらねー、お兄ちゃん」
おいちゃん「今度帰ってきたら、大歓迎してやろうじゃねえか」
おばちゃん「いつだって歓迎してるじゃないの」
おいちゃん「いやぁ、この間なんかずいぶん気まずい思いさせちゃったぜ」
さくら「そうよ。お兄ちゃんが帰ってきたときっていつもそうよ。
なんだかちぐはぐになっちゃってさ、大騒ぎになるのよ」
おばちゃん「じゃあ、どうすればいいのよ」
さくら「簡単よ、みんなでさー、あーお帰りなさい、って笑顔で迎えりやいいのよ」
おばちゃん「いや、それがそう簡単にいかないから苦労するんじゃないのよ」
そこでおいちゃん練習しようとする。
おいちゃん「仮にオレが寅だとするだろ。
上野あたりで買ってきた一個100円の土産をこう…」
←土産を人差し指にかける
おいちゃん「例によってバカ面してよ
、『ヨッ!おいちゃん、
おばちゃん、元気ー!?
なんて言うだろ。
するとおまえたちがスーっと立ち上がってよ、
やあ、まあ、寅さんよくお帰り…
てんで肩の一つもポーンと、叩いてやるだろ、
そうすっと、あの寅のバカヤロウ、
コロッコロッして大喜び!!
簡単なんだよなあ、
こんな簡単なことがどういう……??」
←後ろに寅が立っている。
さくら、おばちゃん目で合図(−−;)
おいちゃん「何だ?」
おいちゃん「え?」
おいちゃん「え?」
おいちゃん「え〜ッ?」
おいちゃん「え??」
左へ振り向く(寅は右の方へずれて見えない)
ここで思わずスタッフの笑い声が入っている(^^;)
おいちゃん「バカおどかすな、そんな…!!あっ!いた!
あ!!すいません!あの、おかえりなさい」
寅「そう言やぁ、このバカが
コロコロ言って喜ぶのかい!」
おいちゃん「いいや…おめえ、そりゃ、そりゃ違うんだよな。なあ、おい」
おばちゃん「だから、言わないこっちゃないじゃないか」
さくら「あのねー、お兄ちゃん、今、おいちゃんたち…」
寅「いいんだ、いいんだ、分かてるんだよ!どうせオレがいねえ
留守にはこのオレの悪口肴に茶でも飲んでるんだろう!?
分かってるんだよ!でもな、つい、おいちゃんたちはどうしてるかな、
と気になって寄ってしまうんだよ。
ふっ!オレァほんとにオオバカもんよ!!」
さくら「違うんだってば!お兄ちゃん、」
寅「さくら、お前もグルだとはオレ知らなかったょ!
たとえ日本中の人間がみんなオレを裏切ってもだ!
たったひとりの妹だけはこのオレのことをね…。
今更そんなこと言ったって愚痴だよ!
オレはもう二度と帰ってこねえよ!」
さくら「ちょっと待ってよ、
お母さんがみえてるのよ」
寅「おふくろ?」
おいちゃん「そうなんだよ、お菊さんがおめえに会いたがってんだよ」
おばちゃん「帝国ホテルに泊まってるんだよ。すぐに電話しなよ」
寅「オレにはおふくろなんかいねえよ」
でも寅、寅から先に
お菊さんにハガキ出したんだろうが(^^;)
第2作のラストはよかったよ。
おばちゃん「なにいってんだよ、おまえの産みの親じゃないか」
寅「ふん!冗談じゃねえやー!そりゃいかにもよ、
オレァあのクソババァの体内から生まれ出でたかもしれねえよ、へっ!
人のこと勝手にひりっ放しにしやがって逃げた女がどうして母親なんだ!?
オレの母親はねおばちゃん、あんただよ
そして父親はおいちゃん、お前なんだぜ…。
そのボクをこのふた親は
冷たい仕打ちをするんだもんなあー…。」
何度も書いてきたが、おばちゃんに関しては、
家出する前の少年期の寅とはあまり接触を持っていないはず。
寅を育てたのは明らかにさくらの母親なのだが、
その辺のところはこのシリーズではちょっとタブーになっている。
現在のおいちゃんおばちゃんと寅との愛情関係を
浮き立たせたい故にだろうが、
やはりさくらの母親を避けては本当の寅のことは語れないのである。
さくら「お兄ちゃん、違うの」
おいちゃん「寅、そりゃ誤解だよ!」
寅「いいんだ!いいんだよ!オレゃもう帰らねぇよ」
さくら「どこ行くの?」
寅「夏になったら鳴きながら必ず帰ってくるあの
燕(つばくろ)さえも何かを境にぱったり姿を
見せなくなることだってあるんだぜ…達者でなー!!」
←時々出てくる寅の捨てゼリフ
帝釈天の方向から
冬子「寅ちゃ〜ん!!」
寅「えっ!?呼んだ?」(照れ笑い)
寅「あっ、お嬢さん」
冬子「まあ、寅ちゃんお久しぶり」赤ん坊を抱きながら
寅「どうも、お嬢さんもお元気で」
冬子「ありがと。よかったわねえー、
お母様にお会いになれたんでしょう?」
さくらが目と手で遠くから
冬子の赤ん坊あやしてるのが笑える。細かい演出
寅「ええ…、そんな、そんな、どうなってたっけさくら?」
さくら「え、ええ、あのー行き違いになったんですけどね、
まだ2,3日は東京にいるんだそうです。」
寅「そう、そうですよ」
冬子「まあ〜、お会いになりたいでしょう?」
寅「えー、そりゃ、とっても。な、」ええかげんやな…(−−;)
源ちゃん「タクシーつかまりました」
冬子「じゃ、私急ぎますので。お元気でごきげんよう」
向かいの江戸屋さん団子一折500円の張り紙
寅、機嫌直って、
寅「へへ、でもさ、お嬢さんもよかったね、
お元気そうだし、赤ちゃんだってできたしな。
…なぁ、おいちゃん」
みんなシラ〜〜〜
おいちゃん「うん、はは…、そうだな」とぷいっと中へ行ってしまう。
寅「なあ、おばちゃん」
おばちゃん「あー、そうね」
と、そそくさと中へ行ってしまう。
寅「そうだよなぁ、さくら…」
さくら「うん」
寅「な…」
源ちゃん、ニヤついて様子をうかがっている。
寅「源公、よかったな…へへ」
源ちゃんも、つられて「へへへ…」
寅はっ、と我に帰って
寅「なに人の店先にいるんだよ!」いつものパターンでひっぱたく
寅さくらに「しょっちゅう来るんかよ、アレ、あんまり寄せんなよ」
寅「さくら、これやるよ、
なっ…開けてさ…みんなでお茶飲もうよ…」
(上野で買ったお土産)
さくら小さくうなずく
寅「ハァーーーッ」と下を向く
ここでも思わずスタッフの笑い声が入っている(^^;)
寺の鐘『ゴー−−ン〜』
タコ社長の工場
残業の工員たちをからかう寅
寅「労働者諸君!今日もまた残業かね!
どうもご苦労さん、はぁ〜あ、こういう
貧しい食物(しょくもつ)でごまかされて、奴隷のように
こき使われている諸君は可哀想だなー」
山田監督も凄い言葉考えるねまったく((((^^;)
寅、博にさくらたちと喧嘩したことを告げる。
博「兄さん、何したんですか?」
寅「おまえちょっと顔見せてくりゃいいじゃねえか…」
寅工員達のパンをタコ社長から奪いまくる。
博とらやへやって来て事情を聞い
さくら少し泣いている。
博「兄さんはどうしても会わないっていうんですか?」
おばちゃん「会ったって話すことなんかないねえっって、
そお言うんだよ!」
おいちゃん「だから、オレは言ってやったんだよ、
たったひと言おっかさんって言ってやれって、
それでお菊さんは涙を流して喜ぶんだ。」
博「さくら、なにも泣くことないじゃないか、そんなことで…」
さくら「ちがうのよ、私達が一生懸命
そんなことで話しているうちに
お兄ちゃんったら、お兄ちゃんったら、
プーッって大きなおならするんだもん!!」
またさくら泣く。理由がくだらねえ〜(^^;)
↑この時の倍賞さんの表情かわいい!
おいちゃん「そうなんだよ!しかも飛び切り臭い奴だぜ!」
(目をひんむいて顔中でデカイを強調!)
おばちゃん臭いって顔で
手でパタパタ扇ぐ
↑このおばちゃんのしぐさは笑えます!
寅、そこへアンパン食べながら工場から戻ってくる。
「♪泣ぁーくの、歩くの死んじゃうのぉ〜♪」
→1970年のいしだあゆみの歌
なかにし礼 作詞
筒美京平 作曲
嫌われてしまったの 愛する人に
捨てられてしまったの 紙クズみたいに
私のどこがいけないの
それともあの人が変わったの
残されてしまったの 雨降る町に
悲しみの眼の中を あの人が逃げる
あなたならどうする あなたならどうする
泣くの歩くの 死んじゃうの
あなたなら あなたなら
私のどこがいけないの
それとも誰かを愛したの
忘れられてしまったの 愛した人に
何が出来るというの 女がひとりで
あなたならどうする あなたならどうする
泣くの歩くの 死んじゃうの
あなたなら あなたなら
寅「なんだい、なんだい、まだガタガタ言ってんのかよ!」
博「兄さん、そりゃ兄さんが悪いですよ」
寅「バカヤロー、何言ってやがんだい!
出ちゃったものしょうがないだろ!」
おいちゃん「そらな、神経がたるんでいるからだ!
そういうものが出るんだ。」
寅「何!?」
博「おじさんたちも、そう興奮しないで」
おいちゃん「これが興奮せずにいられるか!」
←おならのことでここまで真剣なのが笑える。
博「まあまあ、みんな落ち着いて、何ですかたかが屁くらいのことで」
おいちゃん「何だ!たかが屁くらいとは何だ!!」
おばちゃん「あんたはあのおならの音を
聞いていないからそんなこと言うんですよ!」
寅「あっ、そりゃ、そうですよ。こりゃ、
たれた本人がびっくりしちゃったからな!
ヴアァーー!!とデカイ音だよ!」
さくら「お兄ちゃん!」
おいちゃん「このやろー!もー!
もう我慢できん!表へ出ろ!表へ!」
寅「うるせーな!ブツブツと、コノヤローめ!
たかが屁したくらいでもってメソメソ泣き面しやがって!
もし糞したら自殺でもしなけりゃ
ならないのかい!!」
さくら「おならの話なんかしてないでしょ!
お母さんの話してんのよ!」
さくら、みんなでおならの話してましたよ(^^;)
翌日 車の中
タコ社長の車で帝国ホテルに行く、さくら、博、寅
タコ社長の車ライトバン(朝日印刷K.K)←時々、作品によっては有限会社にもなる。
例えば第39作では有限会社
今観ると凄くレトロな車内!
車内で寅足を投げ出し
「♪あなーたのあいつも死んじゃおかー、あなたならー、あなたならー。
泣くの、歩くの、死んじゃうのー…♪」
さくら「うるさいわねー!ちょっと静かにしなさいよ!」
このころの寅って足を乗せたりしてとてもやんちゃ! ↑
帝国ホテル 部屋
さくら部屋をノック
寅「なんだかすごいとこだねぇ…、どれくらいとるんだここは?」(指でお金マーク)
寅「オレ、ションベンたまってるんだけど、外かな?」
さくら「ここよ…」
寅、コンコンとノックして、「返事するわけね−よな、ハハハ」
用を済ませて
寅「さすがホテルだよ!、オレ今ションベンを流そうと思ってさ、
栓ひねったらヨ、熱いお湯がダーっと出てきや
がんの!田へたもんだよ蛙のションベンだ!」
さくら「お湯?、お兄ちゃん、どこに…」
寅「どこったってその部屋の隅にこういう
大きな金かくしがあってよ、体ごとすっぽり入ってションベン
できるくらいになってんだよ。見るか?ちょっと行って見て来い、
で、してこい。 で、オレがこうやってやってたらよ、
こっちの脇にでっかい鏡があってよ、
オレの全身がバッチリ映ってんだろ恥ずかしくなっちゃってなー、
ちょっとした四六のガマよ。『己の醜い姿に
驚きガマはタラリタラリと脂汗を流す』って奴だよ。
えー?(ガマの油売りの口上)
さくら恥ずかしい思いでいっぱい。
寅「あっ、それからね、これくらいのタッパかなんか、
こーなって上蓋が付いてる奴で、持ってこう開けると
中に水が少し入っているけど、
あれは西洋人の洗面器かなんかか?」
↑普通いくらなんでも
こんなに間違わないって(^^;)
さくら、唖然…
菊、下を向いて少し泣いている。
菊がさくらに昔の思い出や苦労話を話しているときも、
寅は落ち着きが泣く、背広の袖の内布をほどかせてしま
ったり、ベットでビョンビョン跳ねたりして大はしゃぎ。
菊ついにキレて爆発!、啖呵!!
菊「何でも恋しやがって、どんどん振られやがって、
それが四十に手が届く大の男のすることか!
おまえちょっと脳が足らんのとちゃうか?
何顔見てんねん、悪い顔しやがって!
考えることあるか!
痛んだ脳しやがって!
おまえみたいなそんな出来損ないの
そんなとこに来てくれる女はな、
手が2、3本足らんかて、脳が足らんかて、
あー、結構でございます、
よう来てくれはりましたと、
涙こぼして礼ゆうてもええねんぞ!」
↑菊さん、そりゃあんまりだよ…とほほ
(絶対テレビ放送できません(^^:))
寅「黙って聞いてりゃ、ひでえこと言うんじゃねえかよ!
脳が足りねえ息子を産んだのはどこのババアだ!」
菊「生まれた時にはちゃんと足りとったんや!」
寅「そうか!そうだろうな、
ヒリッ放しで放り出され、
長い間雨風に打たれてりゃ、
脳みその半分くらいは
溶けて流れちまうわい!
それもみんなてめえのせいだぞ!!」
菊「それが生みの親に向かって言う言葉か!」
寅「誰が、てめえなんかに産んでくれって言ったい!」
寅「そのうちハァ〜ッ!って腰抜かしてびっくりするほど
ベッピンの嫁さん連れて来てやるからな!」
菊「お〜結構なこっちゃ、そんな女ができたら
ハァ〜ッって喜んで死んでも本望じゃ!」
寅「言いやがったな、よぉーし!
ひっくりかえって腰巻さらして恥かくな!!」
さくら「お兄ちゃん!!」
ものすごいキツイ言葉の応酬だ。
凄まじいとさえ思う。
出て行く寅。
寅が出て行ったあと、さくらが菊に怒る。
さくら「あんなひどい言い方ないと思います。
脳が足りようと足りまいとお母さんの息子でしょ、
私にとったってたった一人の
お兄ちゃんなんです。あんなひどい
言い方しないでください。」
菊泣く…
菊「さくらちゃん、おおきに、おおきに…。
あんな出来損ないの子、
そこまでおもてやってくれて、おおきに…」
とらや
おいちゃん「オレがな、おーいどこ行くんだと聞いたらな、
ちょと嫁探しに行ってくるって、
止める間もあらばこそ、
カバンもって行っちまったんだよ。」
博「また、旅に出たんですね…」
おばちゃん「今度は短かったね…。たった一晩
しかいなかったじゃないか」
たった数時間の時も結構多いですよお(^^;)
おいちゃん「あー、こんなはずじゃなかったのになあ…」
満男のオモチャがお膳で目立っていた←赤い猫に見える
静岡 富士市本町 望月下駄屋前
啖呵バイで下駄を商うする寅
寅「なー、おばちゃんよ、
こんな立派な鎌倉彫りがねー。
わずかこんなお値段でお願い
できるわけないでしょ。
これは大きな声じゃ言えないけれどね、
神田はポックリ堂という
履きもの問屋がわずか何百万円の
税金で投げ出した品物だよ。デパートでお願いし
ましたら600が500する品物、
今日はそれだけくださいとは言わない。腹切ったつもり、
どう、400、300、あー、これで買い手がなかったら
右に行って田子の浦、
左に行って三島!右と左の泣き分かれだ!
よし!特別250円!
おばちゃん持っていけ、ほら!どう、おばちゃん、ほら!」
となりの望月履物屋の親父
「ダンナ、困りますね、こんなところで
営業妨害ですよ、こんなところ
で下駄とか売られたら…」←普通やるか?隣で。
↑このパターンは
『忘れな草』網走でのレコードの売でも使われる。
寅「こっちはこっちで商売してんだ、
ここは天下の大道だからね」強気〜(^^;)
かね丸パンの車(富士市平垣本町)
生徒募集『公認.富士編物専門学校』
天津甘栗
沼津駅近く
ラーメン屋 『来々軒』
ラーメン待っている寅(新聞見ている)←冬季オリンピックの話題
4強へ、五輪の星
花子ラーメン食べている。
クッキングゼリー、サッポロビール
トランジスタラジオから天気図詳細放送(天気図作成用)
『アムール川流域の50度。991ミリバールの
低気圧があってほとんど停滞しており、この中心付近から寒冷前線が…』
花子ラーメン食べ終えて、
寅の方見て『にこリ』と笑う。寅も『ニコ』
店主(柳家小さん師匠)寅へ、「ハイ、お待ちどう。」
店主「ああ、勘定かね、80円」←ラーメンが1杯80円は当時としても安いと思う。
花子ラーメン代払う。1000円札
『♪あなたなーらどおする〜♪』
↑それにしても今回はこの歌よく出てくるなあ。タイアップだね。
それぞれの作品で1つは必ずあるね、こういうの。
第6作では『圭子の夢は夜開く』
花子「えぎ(駅)、ど行けば…?」
寅「なに?」
花子「えぎ(駅)」
花子が出て行った後で
店主「お客さん、あの子ね、ここがね少しおかしいね。」
寅「そうかい?」
店主「そりゃね、ちょいと目にはかわいい女の子で
通るけれども、よーく見て御覧よぉ…。
目なんか変にこう... 、
間がぬけててさ、確かにありゃ、
どっかの紡績工場から逃げ出されたに違いないよ。
確かに、今、人手不足だからねえ、工場の人事課長かなんかが
田舎行って、そいでまぁ、ちょっと変な子だけども、頭数だけ
そろえておきゃぁ、なんてんでひっぱってきたもんの、
人並みに働けねえ、しょっちゅう叱られてばかりいて、
いやになって逃げ出すってやつだよ。そのうち、まあ、
悪い男かなんかに騙されて、バーだ、キャバレーだ、
あげくの果てにゃ、ストリップかなんかに
売り飛ばされちまうんじゃないかな。可哀想だな…」
↑さすが柳家小さん師匠、
間が独特の味になっていて聞かせるねぇ〜
沼津駅前交番
『県民に信頼される警察』『和と団結ー誠意ある勤務』
花子が中にいる。
寅、通りかかってちょっと覗く。
警官(犬塚弘さん)が
名前を聞いているが答えてくれない。
寅「だんな、大きな声を出しちゃいけませんよ。
ちょっと頭薄いんですよ。」
寅、座って
寅「どうしたの?泣かなくてもいいんだよ。
はい、涙拭いて、な、名前なんていうの?」
花子「太田花子」
寅「ね、ちゃんとこたえるでしょう」
寅「ねえ、住所どこ?うち…」
花子「青森県西津軽郡鯵ヶ沢町轟(とどろき)」
寅「青森かー、遠いところから来たんだねぇ…」
どうやらこの近くのバーで
働かされていたようである。
寅「この人はね、決しておっかなかないんだから」(^^;)
寅「今聞いてみたらね、やっぱりこの辺のバーで
働いてたらしいいんですよ。」
警官「たぶんそんなことだろうと思った。
また悪い奴に捕まるからここに連れてきたんだがね」
警官「青森までいくらかかるかなあ?」
寅「3000円くらいじゃないですか?」
警官財布を取り出すが少ししか入っていない。
警官「月給前だからなあ…」
寅自分の札入れを取り出して「いいでしょう!」
(パン!という景気のいい音)
警官「そういうわけにはいかないよ」
寅「何を言ってるんですか、いいんですよ」
ところが500円札3枚だけしかない。
寅「私も月給前なんで…」出た〜〜(^^;)
沼津駅でみかんとおかき買ってやって、見送る。
弘前、急行 3600円
改札で
寅「あのね、東京でもって迷子になったらな、
葛飾の、柴又の、とらやって団子屋を訪ねて行きな。
おい、分かってんのかよ!
葛飾の柴又の…おい、ちょっと言ってみな」
花子「かつしか、し、ばまったのトラ…」
寅「ち、違うよ」
改札の駅員さんの手帳をいきなり破り、
「ちょっとすまねえ」
駅員さん、やり取りを聞いていたので文句言わない←(心優しい駅員さんだ!)
ひらがなで住所書いて(かつしか、しばまた、とらや)
寅「これ持ってな、迷子になったらお巡りさんにみせて、
この家に訪ねて行きな。そこでよ、
寅ちゃんに聞いてきたって
言えよ。家の者親切にしてくれるから」
花子「とらちゃん?」
寅「オレ、『とらちゃん』って
言うんだよ、なっ!早く行きな」
花子、心細くて階段でみかんばらばら落とす
寅「早く行くんだよ」
寅とても心配そう
水元公園 桜 花見
第1作と同じアングル
現在の水元公園の同じ位置からの桜
桜並木がある土手の下でタコ社長、工員、
おばちゃんなどで花見の宴会
一同「めでた、めーでーたーぁーのー、わかぁまーぁつ、
さぁーまぁーよーぉー、えーだーぁぁも、」「チョイ、チョイ」
花笠音頭 --- 山形県民謡
一、
そろたそろたよ
踊り子がそろた 秋の
でほよりなお そろた
二、
花の山形
紅葉の天童 雪を
ながむる 尾花沢
三、
めでためでたの
若松様よ 技も
栄える 葉も茂る
とらや
『本日、従業員慰安のため、休業いたします。』の張り紙
とらやの縁側で寅の事を心配するおいちゃんとさくら
そこへ花子とらやの中に入って来る。
花子「とらちゃ〜ん」
「とらちゃんいね〜の?」
おいちゃん気づいて「…??」
花子「とらちゃん、いるべか?」
おいちゃん「いねべよ」
花子寅が書いた紙見せる
『かつしか しばまた とらや』←とらやの字が大きめ
宴会から帰ってきたタコ社長は
社長「『よくも、うちのめらしこキズモノにしたな!』ってんで
損害賠償1千万!てなことになってみろよ…」
おいちゃん怒って「風船タコみたいにしやがって!」
座敷では花子が満男相手に遊び相手になってあげている。
←先ほど出てきた赤い猫のおもちゃ
博「青森の役場に速達を出して
両親を探しましょう。なあ、さくら」
寅が前を通る。
おいちゃん「!!…。来たよ、来た!」
寅がちょび髭と色眼鏡を
かけてとらやの前を横切る。
おばちゃん「髭つけてたよ」←おばちゃんのしぐさ面白い
社長「変装しているつもりだよ」
おいちゃん「ばかだねえ、あの四角い顔が
隠せると思ってるのかねえ…
ほんとにバカだね…いやになっちゃう」
寅また覗きに来る。
みんな知らないふり(さくらだけ少し冷静)
博と寅目が合う
寅逃げていく。
さくら「バカバカしいわねー」
寅、ごく近くの赤電話からとらやに電話
寅「あっ、もしもし、とらやさんですか?」
(別人のふりで声を高くしている)
いきなり地声に戻って
寅「あっ、なんだ、さくらか、え、あ、オレだけどね…。」
さくら「早く帰ってらっしゃいよ。誰か来なかったかって?」
寅「いや、誰も来てなかったかって?」
寅「いや、誰も来てなかったら、それでいいんだ、
別になんでもないんだ。うん。
えっ!?来てる?
何でそれ早く言わねぇんだよ!」
さくら「うん、お兄ちゃん一体…?切っちゃった…」
博、外に覗きに行く。
寅ドドドと走ってくる。
博突き飛ばされる!凄い変装!
タコ社長やさくらも蹴散らして
寅、笑って喜んで、
「どこだ、どこだ!」
花子を見つけて「花子ー!、花子!」
花子「おっかねぇー!助けてけれ!」
わからんわなその変装じゃ(^^;)
寅「ほれ!オレだよ!」
寅、髭、めがね、取りながら
寅「オレだよ!とらちゃんだよ!」
花子「とらちゃーん!!」(安心して笑う)
寅「うん」
←渥美さんのこの「うん」はしみじみと美しい表情だった。
寅「そうかい、来てたのかー。
よかったなー」
はだしの花子の足と桜の花びら…
寅「キップ無くさなかったか」
花子「うん」
寅「悪い男に声かけられなかったか?」
花子「うん」
寅「俺が書いた紙、
お巡りさんに見せたんだな」
花子「うん」
寅「よかった、よかった…」(しんみり)
寅「この店のおいちゃんや
おばちゃんは親切にしてくれたかい?」
花子「うん」
寅少し泣いて「そうかい、よかった…」
花子も安心して泣いてしまう。
寅「オレな、心配でな…泣かなくていいよ」
寅ハンカチ出して、「チンしろ、」
花子「うん」(鼻をかむ)
とらやの一同離れて見ている。
さくらたちと花子のことで相談する。
寅は花子をとらやで住まわせたいと言う。
このシーンで満男の機関車オモチャが
さくらの目におもいっきり当たる。↓痛そう!
タコ社長の工場で働く事になる。
社長上機嫌で工員達に紹介する。
寅、それとなくおばちゃんに聞く
(おばちゃん、寅のフンドシとかを干している。)
おばちゃん「♪花ぁ〜は 上野〜」
寅「おばちゃんよ、となりのね、社長はよ、
どうなんだい、女道楽の方は…?」
おばちゃん「昔はね、遊んだらしいんだけど…
バーの若い女かなんかとできちゃってさ、
おかみさん泣かしてたっけ」
社長ってそうだったのかあー…(^^;)
寅「!!…」
工場の社長の事務所
花子に背中揉ませているタコ 超上機嫌
寅ポスターの筒でパコッ!
社長「イテッ!何すんだ!」
寅「タコ!見たぞ!花子に肩なんか揉ませやがって、
児童虐待法で訴えてやる!」
↑なぜか難しい法律の名前知っている寅でした。
即刻身柄は引き取る。今日一日分の
賃金をよく計算してとらやまで持ってこい!」細か(^^;)
寅「花子おいで、油断も隙もありゃしねえ…」
題経寺 御前様と寅
御前様「それじゃおみくじでも売ってもらおうかな」
寅「御前様なら安心ですよ」
花子を預けたあとにふと心配に…
寺の門の柱が目に入り、
そこに『スケベ』とチョークで落書きがしてある。
はっとする寅
大急ぎで戻って
寅「花子、行こ、」
御前様「なんじゃ?」
寅「すみません、今の話はなかったことにしてください。」
花子「どこさ行くの?」
寅「お偉いお方でもよ、生身の人間だ。
万が一ってこともあるからな…」ハア〜…(−−;)
結局とらやで働くことに落ち着いた花子
寅「オレ、なんだってはじめからこのことに
気がつかなかったかなー…、
ほれ、昔からよく言うじゃないか、」
おいちゃん「なに?」
寅「灯台の根元は暗いよ。って」←灯台下暗し
おいちゃん「そうそうそう」←笑える(^^;)
とらやの客にいろいろ聞かれる花子
寅怒って「なに、戸籍調べしてやがんだ!!」
すったもんだで、バケツを道にぶち撒いて追い出す。
おいちゃんが花子をかばっている。
寅、おいちゃんまでも突き飛ばして、
おいちゃん「な、なんだい?」
寅「たとえ、おいちゃんだってな、
馴れ馴れしくするとこういうことになるんだ!」
もうここまで来ると過干渉の極致。
寅、間違ってるぞ(−−)
寅「花子、おいで」
おいちゃん、呆然「あー、いやだいやだ…」
おばちゃん、さくらのアパートで
対策をさくらたちと相談。
おばちゃん「あたしゃ、近頃、寅さんの『花子ぉ〜』って
声聞くと背中がゾッとすんだよ」
江戸川土手で、花子と寅
歌を歌う花子
「♪いーくとーせー、ふーるさーと、来てみればー、
さーくはーな、なーくとり、そよぐーかぜー、
かーどべーの、おーがわーのささやきもー、♪」
故郷の廃家(はいか)
作曲:W.S. Hays 作詞:犬童球渓
一
幾年(いくとせ)ふるさと 来てみれば
咲く花鳴く鳥 そよぐ風
門辺(かどべ)の小川の ささやきも
なれにし昔に 変わらねど
あれたる我家(わがいえ)に 住む人絶えてなく
二
昔を語るか そよぐ風
昔をうつすか 澄める水
朝夕(あさゆう)かたみに 手をとりて
遊びし友人(ともびと) いまいずこ
さびしき故郷や さびしき我家や
↑美しい歌だなあ…花子にぴったし
寅「花子、歌上手いなぁ…」
花子「とらちゃん、岩木山知ってるか?」
寅「イワキさん?って誰だ」(^^;)
花子「人じゃねえ、山の名前だ」
寅「あーあ、津軽の岩木山か、知ってる」
花子「じゃ、福士先生も知ってるか?」
寅「福士先生?」
花子「うん、山でねえ、私の先生だ」(^^;)
寅「学校の先生か?」
花子「うん」
寅「知ってる知ってる」うそ(^^;)
花子「あのな、福士先生、
夕焼けの時、岩木山さ、
花子の歌コ聞かせてやれって言ったの。
花子はたいした歌コ上手いから
岩木山もうんと喜ぶべって」
う〜ん福士先生ってすばらしい(^^)
寅「花子は福士先生好きか?」
花子「うん」
寅「福士先生に会いたいのか?」
花子「うん、会いてえ」
寅「福士先生の嫁になりてえか?」
花子「えへ!ふふふ…バカなこと!福士先生には奥さんいるんだもの、
私が嫁っこになったら奥さんに怒られるべさ!ふふふ」
寅「そりゃ、そうだよな」
寅小さな声で「よかった…」
花子「寅ちゃんは奥さんいるか?」
寅「そんなもんいるかよ、オレに」
花子「本当か?」
寅「あたりめえじゃないか」
花子「私、とらちゃんの
嫁コになるかなー」
寅「えー!?、てへへ…、
よせよ何いってんだい、…からかうんじゃねえよ。
ハハハ、笑っちゃうよ、オレの嫁さんになるなんてよ、
そんなことうぶなおまえが言うなんて、へへへ…、
でもよ、ありがとよ…
オレその気持ちだけで十分なんだよ。
花子、もうおまえどこへも行くな。
故郷にも帰るなよ。ずっとここにいろよ、
オレが一生面倒見るからよ、
なあ、花子」
↑寅とても嬉しそうでいい表情している。
花子、寅が話している途中で
寅の話そっちのけで歩いていく、そしてまた歌を歌う。
花子「♪ふーけゆーくー、あきのよぉー、
たーびのそーらーのー、
わーびしきー、おもーいーにー…」
作詞 犬童球渓(いんどう きゅうけい)(1884〜1943)
←花子が歌うこの2曲はともに犬童球渓さんの作詞
作曲 Ordway,John(1824〜1880)
明治40年「中等教育唱歌集」
オードウェイはアメリカの出版業者、医学博士。数多くの美しい抒情歌を作曲している。この曲は、
「Dreaming of Home and Mother」で、アメリカの教科書にも掲載された。犬童球渓の作詞により、明治
から大正にかけて全国的に愛唱されるようになった。旅にたとえた人生の寂しさや哀れを感じさせる名曲。
作詞 犬童 球渓 作曲 オードウェイ
ふけゆく秋の夜 旅の空の
わびしき思いに 一人悩む
恋しやふるさと なつかし父母
夢路にたどるは 里の家路
ふけゆく秋の夜 旅の空の
わびしき思いに 一人悩む
窓打つあらしに 夢もやぶれ
はるけきかなたに 心迷う
恋しやふるさと なつかし父母
思いに浮かぶは 森のこずえ
窓打つあらしに 夢もやぶれ
はるけきかなたに 心迷う
さくらのアパート 部屋
寅「なあ博、この部屋ってのはいくらするんだ?」
博「家賃ですか?15000円です」
寅「ハァー、高けーなー、こんなケチな部屋がよ」
寅「このミシンこれいくらだい?これ月賦だろ?月賦だろ」
さくら「またフンドシ縫ってくれっていうの?」
昔そんな事頼んだのか寅は(^^;)
寅「お前ね、オレがそんな話でここまで来ると思ってるのかよ」
寅「博とお前と2人でどれくらいかかるんだ。当節は?」
博「生活費ですか?そうだな、近頃物価が上がったからなあ…」
さくらと博あんぐり...
さくら「お兄ちゃん、まさか、結婚の話しじゃ…」
寅「いやー、ハハハハ…早い話が
そういうことになるんだけどね…、
また出直してくらぁ…」
さくら「ちょっと待って、相手は誰なの?」
寅「相手?そんなものいたかなぁ?」
博「相手がなけりゃ、結婚できませんよ」
寅「あー、そういうもんかなー、ほうー」
さくら、問い詰める。
寅「よく言うだろ、緑(みどり)はコトナルモノヨって…」
さくら「緑?」
寅「なんだ、知らないのか、
緑はコトナルモノヨアジナモノヨ、って、いにしえの
言葉にあるだろう。つまり僕たち二人は
そういうケースだったんだ。
寅「♪丘に登れば〜♪」←知床旅情
森繁久弥 作詞/作曲
知床の岬に はまなすの咲く頃
思い出しておくれ 俺たちのことを
飲んで騒いで 丘に登れば
はるか国後に白夜は明ける
旅の情けか 酔うほどにさまよい
浜に出て見れば 月は照る波の上
君を今宵こそ 抱きしめんと
岩陰によれば ピリカが笑う
別れの日は来た 知床の村にも
君は出てゆく 峠を越えて
忘れちゃいやだよ 気まぐれ烏さん
私を泣かすな 白いかもめを
白いかもめを
さくら、博に「分かる?」
博「縁は異なもの味なもの、のことだろう」
さくら、ようやく気づいて
さくら「お兄ちゃん、もしかしたら、
花子ちゃんなんじゃない?」
寅、照れ隠しにタンスのドアを
開けて鏡を見て顔を隠す。←照れる
寅「まあ、その話はさあ、
今度でいいんじゃない?、じゃぁまた来らぁ〜」
さくらと博、複雑な顔
寅「♪丘に登れば〜♪」
とらや 店
おいちゃん「はぁー、さくらの気持ちも分かるよ、
なんてったって寅のことを一番考えている
のはおめえだからな。しかしな、
さくら、花子は普通の娘じゃねえんだよ。」
さくら「でもね…」
おいちゃん「早い話が足りねえ同士の結婚ってことだぜ、
どんな子供ができるか…。
寅の嫁にはね、
頭だけはしっかり人をあてがわなくちゃ」
おいちゃんは、寅のことについてはちょっと偏見がある。
寅はいわゆる一般の生活を送れるきちんとした健常者であって
いわゆる足りないわけではない。ただ思慮深くない面や、
軽薄な面が多々あるだけ。
さくら「でも、花子ちゃんは、あんなにお兄ちゃんの
ことを慕ってんのよ。いいじゃない、
子供のことなんか、お兄ちゃんが
あんな嬉しそうな顔したの初めて見たのよ」
おばちゃん「待ちなよ、さくらちゃん、さくらちゃん、
寅さんのことをばっかり考えすぎるよ」
さくら「どうして…」
おばちゃん「花子ちゃんが寅さんと一緒に
なってはたして幸せかどうかってことなんだよ。
あたしたちは、なんてったって
あの娘のことよく知らないものね」
←確かにおばちゃん冷静で妥当な考えだけど…
さくら、泣く。
←さくらの盲目的なまでの兄を思う心が切ない。
タコ社長やってきて「大変なことになった」と悩む。
御前様もやってきて
御前様「本来ならおめでとうと言うところなんだが、
どうもねぇ…」
デパート
フォスター作曲 「夢見る人」
花子を連れていろいろ新居に必要なものを見て回っている。
照明器具売り場
寅「二十七万両だって…」
マネキン人形見て、口の形を二人で真似る。
着替え室『ON』寅開けてしまう 客「キャー」←予告編では「OFF」
花子メイクアップの実演のモデルになり化粧される。
寅「ねえちゃん、こんなことしてタダかい?」
さくらのアパート
さくら菊と電話で話している。
菊「実はね、さっき寅から電話掛かりましてね、
また嫁はんもらう言うとりまんねんけど…」
さくら「あっ、ええ、何か、そんなふうなことを…」←さくらはっきり否定しない
菊「あの子の嫁さんになるってのは
どんな子でっしゃろ?あんなんの嫁ハンになるねんから
ちょっとくらい脳悪うおまんねやろ。
…いえ、どんな子でも結構なんです。
へ、あのこのところへ来てくれるという、
その優しい気持ちだけでも私…私、うれしゅうて…」
菊はすっかり信じて喜んでいる。
寅、啖呵バイ (易のバイ)
神奈川県 江ノ島駅近く
龍口明神社(旧社)
神社は飛び地で 奈川県鎌倉市津1
富士急のバスが通る。
道向こう、真向かいに「イワタ洋品店」
神奈川県藤沢市片瀬3丁目付近。
このバイの場所は雑誌も本もほかのサイトも誰もわからなかった場所だったが、
私のサイトをいつもご覧になられているロケ地めぐりの達人
「さすらいのサラリーマン」さんが寅がバイをしている道向こうの
「イワタ洋品店」の看板に映る電話市内局番の「22−6522」から
ネットで調べられて、見つけられたのだった。
大昔、欽明十三年(五五二年)、村人達は山となった五頭龍大神を祀るために
龍口山の龍の口に当たるところに社を建てた。
これが龍口明神社の発祥と伝えられている。
鎌倉時代には龍口山にほど近いところが刑場として使用された時期もあり、
村人たちはこの付近の祟りを恐れていたという。
また、昭和二十二年(一九四七年)には、龍口山が片瀬村(現藤沢市片瀬)に
編入されて以降、境内地のみ津村の飛び地として扱われ、
大正十ニ年 (一九ニ三年)には、関東大震災により全壊、
昭和八年 (一九三三年)に龍口の在のままで改築した。
太平洋戦争後の復興により、交通事情も悪くなり、
昭和五三年(一九七八年)に氏子の里がある別の地へと移転した。
なお移転後の現在も、旧境内は鎌倉市津1番地として飛び地のまま残っており、
社殿・鳥居なども、移転前の姿で残されている。
神社は移動しても、今も形はこうして鳥居や社殿が残っている。
映画からもう40年も経っているが、映画と同じ建物が残っている。
「巡り会いが人生ならば、
すばらしき相手に巡り会うのもこれ人生であります。
盛者必滅会者定離(えしゃじょうり)
会うは別れの始まりと誰(た)が言うた。
眉と眉の間の『いんどう』お嬢さんあなた
ここがすばらしく輝いております。
いい愛情に恵まれておるかもしれない。
いい愛情に恵まれておるかもしれない。
しかし、月に群雲(むらくも)、花に風、
一寸先の己が運命分からないところに人生
の哀しさがあります。バン!!
とかなんとか言って、四角い顔したオヤジ、
出たらめ言ってやがると思ってるね。
ホント言うとこれ口から出まかせ、でもね、
長い間この商売でメシを食っていると、
百に一つは当たることがあるんだよ。」
パシ!!
江戸川土手
蓬を摘むおばちゃんと花子(満男も一緒)
花子「♪ふーけゆく〜、あーきのよ〜、たーびのそーらぁーの〜
わーびしき〜、おもーいーに〜、ひーとりなーやむ〜…♪」
おばちゃん「花子ちゃん、あんた本当は
田舎に帰りたいんじゃないのかい?」
花子「でも、とらちゃんが帰るんでねえよ、って、
そう言うんだ。」
問題だね…(−−)
とらや
福士先生がとらやへ花子を引き取りにやって来る。
福士先生「実は花子は子供のときから
私がずっと特別に生活指導してきた子でして
ご覧のとおり、発育が遅れておりますが、
私としては特別扱いすることなく人間として
生きていく自信を与えてやりたい、
そう思いまして、つまりああいう障害児にこそ、
密度の濃い教育が必要であると、そう思います。
…、気立てはいい娘(こ)でして、」
後の学校シリーズに繋がっていくテーマの
萌芽がすでに見られる。
さくら「それに、とてもしっかりしてますよ」
おいちゃん、にっこりうなずく。
福士先生、うれしそうに「そんですかぁ。…歌が好きで」
さくら「うん、いい声で、」
福士先生「そんですかぁ、
お宅でも歌ってたんですかぁ、そんですかぁ、」(嬉しそう)
花子帰ってくる
花子「♪こーいしや〜、ふーるさと〜、なつかしちーちはは〜♪」
花子、さくらに「ねえちゃん!ほれ、もち草こんなにいっぱい…」
福士先生「花子!先生迎えにきたぞ!」
花子「先生!来てけたの!?」
福士先生「えがった、花子、
まめしててえがった。
花子、切なかったべな…」
花子、泣く
福士先生「花子、泣くんでねえ、
みんな先生が良ぐなかったんだ…」
おばちゃん「寅さんが帰ってきたら
どういうことになるんだろう…」
おいちゃん「たとえ、どんなことになってもね、
花子は先生と一緒に帰ったほうがいいよ。
そうだな、さくら」
さくら「うん、…そうね…」(複雑な表情)
寅、啖呵バイ終って、夕方柴又へ帰ってくる
寅「♪恋しや〜、故郷〜、
なつかし、ジジイ、ババ」凄い替え歌(^^;)
とらや
題経寺の鐘『ゴ――ン〜』
おばちゃん「来たよ!歌うたいながら帰ってきたよ!」
社長「ついに来たか!、大変だ!大変だ!
とらやさん最大の危機だぞ!オラ知らねえぞ!」
社長工場の方へ逃げていく。
一同おろおろ。
さくら「私やっぱり言えないわ、博さん言って」
寅「おいちゃーん、おばちゃーん、
ただいま帰りました。ほら、花…。
花子、…花子どこ言ったんだ、えっ?博」
博、おいちゃんをじっと見て
「知りませんか?…」(^^;)博逃げたな!
寅「おじさん、知りませんか」
おいちゃん「え?え…あ、あの、
その…何じゃはゃないかな…」
(にやけながら裏庭の方を指す)
寅「ハニョニョヘヘ…?、庭かな?」
寅、探すが当然いない。
おいちゃん、博に「知りませんかとは、なんだ」
このシリーズでも珍しくおいちゃんが博にぶつぶつ言うシーン。
寅「なに黙ってんだよ、さくら!」
さくら「あのね…」
そのとき御前様の娘冬子が
用事で来て一時中断
(寅一時的にニコニコ装う)
おばちゃん、冬子が帰った後、
必死で目にも止まらぬ速さで寅から離れる。←ものすごい早業
さくら「あのね、お兄ちゃん、
花子ちゃん田舎に帰ったの…」
事情を話す、さくらと博。
もちろん寅は納得しない。
寅「おまえたち、嫌がる花子を無理やり帰したな」
博「それは違います。
花子ちゃん故郷(くに)に帰るの、
とても喜んでいましたよ」
寅「でもよ、オレは花子の傍に
一生いてやると約束したんだぞ!」
博「それはそんなこともあったかもしれないけど、…、
花子ちゃんは普通の娘じゃないんですからね…」
寅「あーそうかい!分かったよ!それじゃ花子は
オレみたいなヤクザもんの傍にいるより、
その津軽の山奥のよ、ナンジャラ先生の
傍にいたほうが幸せっていうのか!?
えー!そうなんだろ!はっきり言ってみろ!
さくら!、そうなのか…?」(最後は自信なさそうに言う)
さくら「そうよ、
お兄ちゃん、その通りよ…」
わなわなして寅二階へかけ上がり
トランクに荷物を詰め込み始める。
さくら、上がってきて
「お兄ちゃん、どこへ行くの!?
どこ行くの、お兄ちゃん」(トランクを握ろうとする)
寅、さっきのこともあって、つい、止めようとする
さくらの頬を手の甲で叩いてしまう。
倒れこむさくら
ハッとする寅、少し間があって、
それでも出て行ってしまう寅。
起き上がって頬を押さえながら、
悲しみに呆然とするさくら。
寅が出て行って
それから一週間ほどたった
とらやの茶の間 雨
おいちゃん「ゆうべもな、またあいつの夢見ちゃったよ。
毎晩不吉な夢ばかり見るんで気になってしょうがないよ」
郵便屋「車さん、速達ですよ」
『拝啓。おまえを殴って悪かったな。
あんちゃんは本当にバカな奴だ。
こんなバカな役立たずは
生きていても仕方がない。
花子も元気にしていたし、
オレはもう用のない人間だ。
オレのことは忘れて達者に
暮らしてくれ。
さよなら。
敬具 寅次郎』
一同不吉な予感が当たったと、不安になる。
さくらが津軽まで行くことになる。
夜汽車の中のさくら(疲れた表情で窓を見ている)
早朝弘前でローカル線に乗り換える。
国鉄 五能線
さくら「すいません、あのぅ…轟(とどろき)は鯵ヶ沢の前ですか?」
乗客「あっ、向こうになりましす、あっ、まえ、前のほう…」
さくら「…先ですか?」
乗客「はい、先です。」
北の果て、とういう感じの無人の「驫木駅」
さくらのまわりを風が吹き抜けていく。
ようやく人に聞いて花子が働く田野沢小学校にたどり着く。
田野沢小学校 (現在の田野沢福祉センター)
福士先生「花子ー!給食が来たぞー!」(西北給食センター)
福士先生や花子と再会
寅がここに訪ねてきたことが分かる。
福士先生「そんですか、いや、花子からお兄さんのことはいろいろと
伺っておりましたども、実に親切なええ方ですなぁ。」
さくら「あの、兄がこちらで
ご迷惑をおかけしませんでしたか?」
福士先生「いえいえとんでもない、
花子が元気でしてる様子ば見て、
えがったえがったとたいした喜んで下さって、
その晩は、私どもさとこ泊まって頂いて、
なんももてなし、できなかったんですが
魚だけは新しいもんで、二人して酒飲みましてなあ、
ハハハ。しかし、お兄さんじっつに面白い
お方ですなぁー!酔っ払ったら歌うたって、もうハハハ。」
花子さくらにあげる給食を持って立っている。(笑って少し照れている)
福士先生「花子何遠慮してるんだ来へ」
さくら「こんにちは」
花子「こんにちは」
さくら「花子ちゃんとっても元気そうね、
帰ってきてよかったね」
花子「うん!」(嬉しそう)
赤電話でさくら、とらやに連絡、
安心していいと話している。
おばちゃんはまだ安心して
いないことが分かる。
弘前行きのバスに乗っているさくら(弘南バス)
車掌さん「次は、千畳敷…」
乗客たち「あれあれ、なんだべか?消防団も警察も出てるダ」
乗客たち「最近、よくこの辺で身投げがあるんだ」
さくらの表情が曇る
北風の中寒そうに歩く寅
手がかじかんで、凍えている寅
車掌さん「岳(たけ)温泉前…」
岳温泉前 バス停
さくらが座っている窓の向こうに寅の帽子がちょっと映る
どこからともなく
寅「はい、どうもどうも、来たかちょうさん待ってたホイ
!ハイ、おばあちゃん
順番にお詰ください、ハイ気をつけてねー!」
びっくりして振り向くさくら
寅「はい、おばあちゃん乗ったねー!
(車掌さんの名前観て)あっ、斎藤みつ子さん、発車オーライ!
毎度ご乗車…とと」
バスが発車して揺れて、さくらの前にこける寅
寅、さくらを見て
寅「!!…さくら!」
さくら「何してんのよ!!こんなところで!」
寅「オレか?…温泉入ってたんだよ。
な、おばちゃん、」
おばちゃんの声「はい」
さくら「何いってんのよ!
このハガキはなによ!!」(相当怒って)
寅「あっ、ハガキ?つ、着いた?」
さくら「着いたわよ」(すこし怒って)
寅「いやー、なんだかあの時は
あんな気分だったんだよなー…。
腹はすくし、金はねえしよ、
それにボロっちい宿屋で
もって、壁の隙間っから風が
スース―吹いちゃうしなー…」
さくら「……」
寅「オレ、死んだと思ったか?」
さくら「冗談じゃないわよ」
寅、なんともいえない顔でさくらを見つめ…
寅さくらをじっと見て
寅「…死ぬわけないよな…!」
(ふと、さくらに対して優しい目になっている)
寅「そんな訳でよ、毎日ここにいるバアちゃんとね、
風呂に入っちゃ、背中の流しっこして
キャッキャ、キャッキャやってたんだへへへ…」
さくら、呆れて、でもほんとは
安心してなんともいえない気持ちになる。
そしてようやく…少し笑うのだった。
バスにある看板『常に世界をリードするホンダ』『小原皮膚科』
寅の声「けっこう毛だらけ猫灰だらけ、
お尻のまわりはクソだらけってな!」
バスの外から瞬間的に映る寅の立っている
位置が逆になっている。(撮影の関係だろうか)
バスは日本晴れの中、岩木山を遠くに
望みながら津軽の田舎道を走っていく。
終
製作 ............... 斎藤次郎
企画 ................ 高島幸夫 小林俊一
監督 ................ 山田洋次
監督助手 ............今関健一
脚本 ................ 山田洋次 朝間義隆
原作 ................ 山田洋次
撮影 ................ 高羽哲夫
音楽 ................ 山本直純
主題歌 ............... 『男はつらいよ』
作詞 ................ 星野哲郎
作曲 ................ 山本直純
唄 ................ 渥美清
美術 ................ 佐藤公信
装置 ................ 小野里良
装飾 ................ 町田武
録音 ................ 中村寛
調音 ................ 小尾幸魚
照明 ................ 内田喜夫
編集 ................ 石井巌
進行 ................ 長島勇治
衣裳 ................ 東京衣裳
現像 ................ 東京現像所
製作主任 .............池田義徳
協力 ................ 柴又神明会
出演
車寅次郎 ................ 渥美清
諏訪さくら ................ 倍賞千恵子
車竜造 ................ 森川信
車つね................ 三崎千恵子
御膳様 ................ 笠智衆
諏訪博 ................ 前田吟
桂梅太郎 ................ 太宰久雄
太田花子 ................ 榊原るみ
菊 ................ ミヤコ蝶々
福士先生 ................ 田中邦衛
ラーメン屋 ................ 柳家小さん
坪内冬子 ................ 光本幸子
巡査 ................ 大塚弘
源吉................ 佐藤蛾次郎
福原秀 小野泰次郎 城戸卓 江藤孝
長谷川英敏 山村桂二 高畑喜三 北竜介
1971年(昭和46年)4月28日
上映時間 91分
動員数 92万6000人
配収 1億8000万円
続く(2004年2月25日完成、
第8作「寅次郎恋歌」は数日後に更新します)
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