2023年8月9日
号外!!
第23作「翔んでる寅次郎」
小柳邦男が住むアパートロケ地発見!!
泣き虫京子ちゃんのお土産は「DONUT ARTS」
先日、紅奈々子の夜ロケが寅福さんのセンスと第六勘により大船で見つかった。
京成高砂の設定だが、やはり夜ロケは大船撮影所の近所だったわけだ。
寅福さんの才能とヒラメキでゴールまで行きついたのだ。
実は、それと同じ条件で僕は
寅福さんにもう一作品の調査をお願いしていた。
そのカットの中にヒントが少ない
夜ロケ
それは
第23作「翔んでる寅次郎」の夜ロケだ。
入江ひとみと小柳邦男は二人とも父親が中堅規模の会社経営をしている
苦労知らずのお嬢様とお坊ちゃまだ。
2年前に制作された「幸福の黄色いハンカチ」で好演した桃井かおりさんが今回もちょっとずれた
お嬢さん感覚ながらも、彼女なりに真っ向から人生に挑むひとみ役を爽やかに演じている。
彼女は親の敷いたレールを無理やり歩むことに動物的本能で遅ればせながら疑問を感じ、
発作的に結婚式を抜け出し、自分の人生をようやく自分自身で模索しはじめるのである。
ギリギリでは、彼女は野生を隠し持っていたのだ。
それでも巨大な親の呪縛から逃れることがなかなかできない彼女でもあったが、
寅が大きな防波堤になって、後押しをして、なんとか自分の足で生きていくことを開始していく。
ひとみさんは、みたとおり、しゃべったとおりの、絵に描いたような田園調布の甘ちゃんのお嬢さんだが、
彼女の感覚は意外にも死んではいなかったと言えよう。
それは新婦に逃げられた新郎の小柳邦男にも同じことが言えるだろう。
それにしても、親の大きな庇護の元から飛び出し、初めて自分の力だけで生きはじめたのだから
たいしたもんである。それでどんな小さな幸せしか手に入らなくても、そのちっぽけな幸せは
紛れもなく彼女が自分で手に入れたものなのだ。生きる実感とはそうしたものなのだから。
で、物語の流れとしては
意に沿わぬというよりも、そもそも恋愛感情も芽生えていない小柳邦男との結婚を
ひとみさんは迷いに迷ってついに結婚式当日お色直しのスキを見つけて
ウエディングドレスのままタクシーで逃げていく。
で、どこに行ったかというとなんとなんと柴又のとらやに逃げ込むのだ。
北海道で知り合った、その旅先での縁を頼りに藁をもすがる思いで倒れこむように
寅の懐に倒れこむひとみさんだった。
そして、寅のいつもの岡惚れ親切をきっかけに、ひとみさんは親の庇護から離れ、
自活しようと試み始める。
まずはとらやの2階に住みながら英会話教室をはじめようとする。
そのころちょうど邦男も父親のインテリアの会社を突然辞めて、
柴又に近い富士見自動車工場で整備修理工として働き、同じく自活しはじめるのだ。
勤めたばかりなので、おそらく柴又近くの工場の近所の古い安アパートの二階に住んでいる。
そんな柴又の近くの邦男のアパートにある日は妹の京子ちゃんが
邦男の着替えやお土産を持って訪ねてきてくれたり
違う日は、ひとみさんが邦男の真意を確かめるために京子ちゃんに
場所を聞いて訪ねてくるのだった。
しかしだ!
紅奈々子のあのトリックを思い出してほしい。
僕も寅福さんもこの邦男のアパートは葛飾区ではなく
やはりきっと大船地区、もしくは大船から近い場所だと思って探していた。
ほぼヒントがないこのシーンは10年間難攻不落だったのだ。
捜査開始!
まず、
寅福さんは、
この邦男が歩く露地の横に建つ橋脚に注目された。
大船地区に絞って道路の橋脚がありそうな道路を探していく・・・
探し始めてたった1日
大船撮影所から近いところでそれらしき橋脚が見つけられた!!
それがここ。
奈々子のあのマンションからも自転車圏なのだ。
いきなりビンゴ!!なんという幸運。
この橋脚!!映画の橋脚に似ている。
そしてなんと、映画本編同様「コンクリの柵」まである!
■大船名物【ぐるぐる橋】こと
「笠間跨線橋(かさまこせんきょう)」
跨線橋には歩行者用階段が設置されており、それを使い跨線橋へ上れる。
他の跨線橋では歩行者通行禁止とする所もあるがここは歩行者OK。
もちろんループのところには歩行者階段が付いている。
跨線橋両端がループしており、
回転角度は東側が270度超に対し西側は180度程。
車線数は1車線と車両すれ違い困難なため、
橋両側交差点にある信号機にて跨線橋上は交互通行となっている。
ショートカットで使う人も多いのか、毎日かなりの交通量らしい。
街中ということもあり交通量は多いのにループ直径が約15mとカーブがきつくなっている。
ここは6本の路線が通るかなり線路が密集した幅の広い場所。踏切設置はいろいろな意味で難しい。
それで、柏尾川と線路に挟まれた陸の孤島のエリア笠間1丁目の半分の家の方たちには
このぐるぐる橋は自分たちの生活には欠かせない重要な役割を担ってきたのだ。
赤丸が例のお店。黄色い線が露地を邦男が歩いたルート。黄色丸が邦男の部屋
さて元の話題に戻ろう。↓
そして、なんと!道の向かい側には、
邦男が歩いていた露地の背景に見えたあの店が
2010年のストリートビューに写りこんでいる!!
物証は最低でも6個ある!もうこれは確実だ。
グーグル・ストリートビューのタイムマシンは本当にお世話になってきた。
これまでに15年間のストリートビュー捜査により約400〜500カ所以上のロケ場所が
特定されたのだ。
寅福さん おめでとうヾ(*´∀`*)ノ
世界初登頂ですね!!
銀河系初登頂でもOK!!
この邦男のアパートは現在このようなアパートになっている。もう45年近く経つのだ。
アパートのサイドにある階段を上がっていく邦男。
1977年の航空写真
1977年の航空写真
階段の向うに、アパートの背後にある全く別の緑の壁のアパートが
ちらっと見える。
45年経っても、背後の緑の館はなんと残っていた。
2010年のストリートビューにこの背後の緑色壁アパートは残っていたのだ。
物証たちが見えて、全体がわかるストリートビュー
■2010年のストリートビュー
https://goo.gl/maps/j7RdTUxrvmsAbfUq8
1977年航空写真
ちなみに、この邦男のアパートの2階自室シーンは作品中2回出てくる。
■1回目は妹の京子ちゃん編
夕暮れも過ぎて夜になろうとする時邦男が仕事から戻ると妹の京子ちゃんが
悲しい顔をして待っていた。
ギターが置いてある。
いきなり悲しい顔をしている京子ちゃん。
邦男「大家さんに開けてもらったのか」
頷く京子ちゃん。
邦男「いい部屋だろう」
めそめそ泣いてしまう京子ちゃん。泣き虫京子ちゃん
邦男「どうした?」
京子「お兄さんが可哀想…。こんな汚い部屋で」
京子ちゃん表層的なところで捉えてはいけないよ。
価値観が狭すぎるぞ。
邦男「バカ言え、これからきれいにするんだ」
邦男「このかばん、シャツなんか入れてきてくれたの?」
頷く京子ちゃん。
可憐な京子ちゃん、悲しみの演技なれども輝きがあった。
洋菓子(DONUT ARTS)の箱を見つけて
邦男「これは?」
京子「お土産」
邦男「あ、そうか、サンキュウサンキュウ」
邦男「な、京子、お茶入れてくれよ」
京子「うん」
ダイエー直営の「DONUT ARTS」
今から40年前 ダイエーの経営する「DONUT ARTS」
DONUT ARTS の歌発見!!
大捜査線 第25話 可愛いあの娘が死んだ
https://youtu.be/ui9VRzPnKG4
箱の中のドーナッツを食べる邦男。
京子さん流し場のシンクで薬缶を持って
京子「これ?」
邦男「そう」
京子「わあ…きったない…」
ひとみのテーマ スキャットが入る。
どうもこの手の甘ったるい女性スキャットが私は苦手。((((^^;)
当時新人の戸川京子ちゃん、このころはふっくらしていた。
彼女は第29作「寅次郎あじさいの恋」でも再度登場する。
加納作次郎の自宅工房に見学に来た東京の女子大生の役。
翔んでる寅次郎のクライマックス、邦男の歌うシーンでも泣いてしまう
やっぱり泣き虫の京子ちゃんだった。
劇団ひまわりに所属していた京子ちゃんは
後に大人になってからも戸川京子の本名でモデル、女優、パーソナリティなど、
いろいろな分野で幅広く活躍したが
30歳後半からは持病の喘息がひどくなり、37歳で亡くなるその月まで病気に苦しめられたようだ。
しかし本当の死因はやはり精神的な病気とも言われている。
■2回目はひとみさん編
ひとみさんは母親から邦男が会社を辞めただけでなく家からも出て
一人暮らしをはじめたことを聞き、邦男が人生を自分で切り開こうとしていることを感じながらも
自分の無茶な行動のせいで、邦男が苦境に立っているとも感じてしまい、
彼の妹の京子ちゃんに住所を聞き、謝るために訪ねて来たのだった。
しかし邦男は今がとても楽しいんだとひとみに自分の解放された気持ちを伝えるのだった。
夜 邦男のアパート
渥美二郎の大ヒット曲『夢追い酒』のメロディが
遠くから小さく流れている。
作詩 星野栄一 作曲 遠藤 実
昭和53年
1 悲しさまぎらす この酒を
誰が名付けた 夢追い酒と
あなたなぜなぜ わたしを捨てた
みんなあげてつくした その果てに
夜の酒場で ひとり泣く
夕食代わりにカップ麺をすする邦男
ニドと砂糖が置いてある。
日清カップヌードル
ドアをノックする音
邦男「どうぞ」
と言いつつも、カップめんをすすり続ける邦男。
開けたドアにひとみさんが立っている。
驚き、風呂桶を持って立ち上がる邦男
邦男「あ…よ、よく分ったねここが…」
ひとみ「京子さんに聞いて…」
邦男「あ、あそうか」
頷くひとみさん。
邦男「あ、どうぞ」
あたふた片付ける邦男。
二人座って
邦男「今、夕飯だったんだ」
ひとみさん、悲しげにカップめんを見ている。
邦男「これ、案外旨いんだよ」
ひとみ「邦男さん…。ごめんね…」
邦男「どうして?」
ひとみ「私、あなたに酷いことをしたと思ってる」
邦男「フ…そんなことないよ。
京子がなんて言ったか知らないけど、
僕は今とっても楽しいんだ。
毎日いろんなこと考えるし…。
もっともひとみさんのことが一番多いけどね」
立ち上がって薬缶を取りに行く邦男。
ひとみ「…」
邦男「僕のどこがひとみさんが嫌いだったか。
それを直せば好いてくれるようになるのか、
まあ、そんあことをくよくよ考えるから、
やっぱり嫌われてしまうのかな…」
ひとみ「…」
邦男「もう二度と会ってもらえないかなと思っていたけど、
…、ひとつだけ後悔してることがあってね、
これだけはどうしても言いたくて」
ひとみ「どんなこと?」
邦男「つまり…一度も言ったことなかったろ。
君のこと好きだって」
ひとみ「……」
ひとみのテーマが流れる。
ギター演奏と女性スキャット
ひとみさん、感激し、表情が崩れて
立ち上がって窓辺に行き、外を見る。
ひとみ「…」
邦男は彼女の心の動きに気づいていない。
邦男「…」
またカップめんをすすり始める邦男。
ひとみ「ね、…キスして…」
邦男「!…」
邦男カップ麺を食べる手が止まる。
麺を口に突っ込んだまま驚きひとみを見つめる邦男。
頼むからカップ麺から離れろよ(( ヾ(^^;)
立ち上がり、窓辺に行き、
口を何度もふく邦男、
そしてひとみさんの肩を抱き、
不器用にキスをする。
ひとみ「ネギ食べちゃった、フフ」
もう一度ひとみさんをしっかり抱き、キスをする邦男。
たぶん…、この二人は、
最初の結婚式まで告白も無いし、
キスも無かったんだね。
ようやく今二人の恋が始まったって感じ。
このようにこの邦男のアパートは
二人の美しい女性が訪ねて来て、
いろいろ物語があるのだ。
不器用でお坊ちゃまの邦男が
人生を始めた第一歩の部屋がここ。
それゆえ、
このアパートロケ地発見は意義深いものだった。
ギリ鎌倉市大船ではなく、横浜市栄区なんだね
神奈川県横浜市栄区笠間1丁目4‐5
■2010年のストリートビュー
https://goo.gl/maps/j7RdTUxrvmsAbfUq8
参考資料
邦男が勤める富士見自動車工業
あの、今回寅福さんが見つけた邦男のアパートからこの工場は徒歩ではなんと40分以上かかってしまう。
どうやって毎日通っているんだろう・・・。
神奈川県横浜市栄区上郷町60
ストリートビューで、在りし日の富士見自動車工業を見ることができる。
https://goo.gl/maps/JtiW3SSo7VGZPLybA
設定は柴又近辺
だが10年ほど前に大船からそこそこ近くだと判明。
現地調査も行った。
現在はまったく違うドラッグストアが建ってしまっている。
事故で前がぺちゃんこになった
グレーのフォルクスワーゲン.ビートル タイプ1
おそらく『モデル1303』あたり。
戦前の1938年にデビューし、
2003年までの間に累計2152万台もの台数が生産されたフォルクスワーゲン・『タイプ1』
その長い歴史の中で、1972年「新世代のビートル」としてフロントにストラット・サスペンションを採用、
フロント・ウィンドウも空力を意識したラウンド・タイプ改良を受けたモデルが「1303」
2016年くらいまではこの工場は存在していた。
私がバスで行った2016年12月10日↓↓は、ちょうど更地にしてしまった年で、がっくり_| ̄|○したことを今も覚えている。
映画のアングルで撮影
2016年12月10日撮影
柴又のそばの工場という設定なのでナンバーは「足立」!!さすが整備工場自由自在(⌒∇⌒)
というわけで
今回も寅福さんのセンスと第六感が大活躍だった。
寅福さんありがとうございますm(__)m。
■寅福さんのブログの今回の記事当該箇所。
全48作品プラスアルファの全てのロケ地、車窓、風景描写は本当に膨大で、1作品で25カ所〜30カ所は存在する。
つまりシリーズ合計はおそらく 1500カ所以上はあるが
この15年ほどの寅福さんを中心とした寅友たちや私や私の家族の格闘と努力により
一瞬の車窓も含めた全てのロケ地の約95パーセントがすでに判明、解明されたのだ。
(水だけとか木々だけとか空だけなどの映像がアップすぎて完全ノーヒントは数に入れない)
しかし、残り5パーセント約40〜50カ所はほとんど映像の中にヒントがほぼ無い、物証が極めて少ないない場所ばかりだ。
しかし、いずれこれらのヒントや物証が無い不明地もひとつひとつ解明されていくだろう。
【追記】
2023年8月10日
寅福さんは、お仕事がお休みの日。思い切って大船エリアに行かれ、
現地に到達され、写真を撮影し、
別の日に
千代田区永田町の国会図書館でこの場所の当時の住宅地図をコピーされ、
完全コンプリートされた。
参考資料 写真と住宅地図↓
寅福さんのブログより拝借
■映画と同じ構図の現在の写真。
この写真は寅福さんのブログから拝借しました。
■当時の住宅地図
寅福さんのブログより拝借
この住宅地図は寅福さんのブログ↑↑から拝借しました。
■あの邦男のアパートは【第二福住荘】
■あのショーケースのあったお店は【食事処ひさご】だと判明
■2023年の今もかろうじて残るその隣の住宅は【美幸荘】
■背後に見えていた緑のアパートは【たなか荘】
■本編でのいろいろな店の看板は全て山田組の小道具
。