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 2024年 7月24日

毎日新聞朝刊 掲載記事

  




2024年 
7月24日

毎日新聞朝刊の関西地方版(大阪、兵庫、京都)に
龍野の町とガレリアと僕の水彩画が紹介されていました。



2週間ほど前に
毎日新聞社の大阪本社の櫻井記者さんから電話の取材とメールの取材がありました。
毎年絵画展と染織工芸展を企画していだいている龍野のガレリアの井上さんからの紹介で、電話されてきたのでした。


映画 男はつらいよ 第17作「寅次郎夕焼け小焼け」のロケ地になった龍野の町に対する思いを聞かれ、
ラストシーンの、寅が樽の上に乗りながらの遥か彼方の東京の青観に向かって御礼を言うあの絵をぜひ観たいと言われました。


その後メールで3度ほどやり取りをし、
記事にされました。

もともと寅さん映画のファンである櫻井記者さんは、
この僕への電話とメールの前に
現地で、井上さんにこの映画作品の名シーンのロケ地のピンポイントに案内され、今も残る城下町龍野の風情に静かな感銘を受けていたようでした。


この映画、
男はつらいよ第17作「寅次郎夕焼け小焼け」には実はクライマックスが2つあるのです。

誰もが言われる上記の
東京の青観に向かって手を合わせるあの
カタルシスのある美しいラストの大団円。

しかし、中盤にもう一つの静かなクライマックスがあるのです。

龍野の夜

志乃さんに
「僕はあなたの人生に責任がある」と、
後悔し、謝る青観

「僕は後悔している……」とも。

そして、志乃さんは、控えめながら
強い目になって

静かに、

「じゃあ…かりにですよ、
あなたがもう一つの生き方をなすっとったら
ちっとも後悔しなかったと、
言い切れますか…?

私、この頃よく思うの。
人生には後悔は
つきものなんじゃないかしらって。

あーすりゃよかったなあ…
という後悔と

もう一つは

どうしてあんなことしてしまったんだろう…、

と、いう後悔」

それを聞いて
涙を潤ませている青観。

ふたり、黙って庭を見ているのでした。

この2人にはいったいどのような
青春の物語があったのでしょうか。

青観の一元的な人生の考え方を瞬時に見抜き
、相対的に言い換えて
青観の後悔を救った志乃さん。

しかし、
それは青観の画家としての深い「業」までも
同時に露出させてしまう諸刃の剣(つるぎ)でもあったと思います。

そして、翌日

別れの朝

志乃さんは一目別れの挨拶をしたいと
去っていく青観の車を中原邸の前で
長く待ち続けていたのです。

昨晩、気丈夫に青観に自分の覚悟を伴った
孤独の人生観を語った志乃さん。

しかし、それでも、もうひと目、
青観のあの姿を、あの表情を、あの目を
胸に焼き付けたかったのでしょうね。

もう生涯二度と会うことのない二人なのです。

青春の初恋の風がほんの一瞬、志野さんの
前を過ぎ去っていったこのシリーズ一番の
せつないシーンでした。

志乃さんと青観の隠された若き日の初恋と
その後の裏切りと
その先の数十年後の赦し、

そして永遠の別れ

青観の車に向かって静かにお辞儀をし
最後に手を振る志乃さんの背中から透けて見える少女のような眼差しがせつなく美しいシーンです。

櫻井記者さんは、龍野コンシェルジュの
スペシャリストであるガレリアの井上さんの案内で
このシーンの感慨を現地で臨場感とともに味わったのでしょう。

そのような志乃さんと青観の静かな物語の果ての
永遠の別れのシーンを選択した櫻井さんの良き文章でした。 








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