男はつらいよ/予告篇集
― もうひとつの物語 ―.
No.10
寅次郎わが道をゆく
第22作
もうひとつの「男はつらいよ」 ― 3分間に賭けた映画人たち ―
松竹映画「男はつらいよ」のDVDには実に嬉しい特典が付いている。それは『予告篇』だ。この予告篇は、たかだか2分から3分だが、
なかなか捨てがたい貴重な映像が入っていたりする。例えば撮影ロケが挿入されているもの。倍賞さんのNG場面が挿入されているもの。
本篇では出てこないシーンがたくさん挿入されているもの、等々、興味が尽きないのだ。どのカットも本篇採用のカットとは、微妙に
違うシーンがわざと入れられてあるのが心憎い。どちらかというと本篇と全く同じカットを使っている方が少ないくらいだ。とにかく
この「2分間の作品」を見て、本篇を見ようかどうかお客さんは決めるわけだから編集に携わった人々は常に真剣勝負だったと思う。
それらの方々のセンスと心意気が強く感じられる名作予告篇も何作もある。まさにそれは「編集の勝利」だともいえる。
特に、短いゆえに、たったひとつのシーンのインパクトが本篇以上に強烈に印象に残ったりもする。そこが実に面白い。
一寸の虫にも五分の魂があるのだ。
しかし、一般的には、この『予告篇』たちは、いつも本篇の陰に隠れて日陰者扱いになっている。
そこで本日から私がその『予告篇を』このページで簡単ではあるが全48作品紹介していきたい。
ただでさえ、本篇解説がダラダラ長いのに、予告篇までつきあってられないよ。という方はどうぞ、このページは飛ばしてください。
で、今日は第22作「噂の寅次郎」だ。
この作品はなんといっても志村喬さんだ。もちろん彼はマドンナではない(^^;)
しかしこの、博の父親と寅次郎がばったり旅先で出会う物語となると、もうそれはワクワクものである。
絶妙の取り合わせといえば、寅と池ノ内青観、寅と殿様、寅と加納作次郎。そして寅と諏訪ひょう一郎である。
ひょう一郎が言う「今昔物語」寅が言う「こんにゃく物語」。変に可笑しいがアリアを聞いているうちになにかじわっと
深いものが心に沸いてくる。
そして2番目の魅力はなんともいえない魔性の魅力を持った早苗さんである。大原麗子さんはそれはもう美しい。
あんな美しい人がとらやに勤めるわけがない。しかしもし勤めちゃったら…。というわけでこの作品は2つのワクワク
が待っている。
それでは予告編をどうぞ〜。
尺八で始まる予告篇
木曽路はすべて
山の中である
島崎藤村の小説「夜明け前」の冒頭である。
とらや 茶の間
ドォーンと寅の正面顔
寅「今は昔、あるところに男がいた」
クレジット 渥美 清
社長「ある所ってどこだい」 これだよ、まったく(−−;)
おばちゃん「日本に決まってるよ」
出たよおばちゃん、そらそうだけど(^^;)
社長「日本たっていろいろあるだろう北海道とか九州とかさ」
話が進まないよ(−−;)
博「どこでもいいんですよそれは」
さくら「ほら、昔々、ある所にお爺さんと
お婆さんがおりましたって言うでしょう、あれよ」
社長「ああああああああ」ぶち壊し(−−;)
さくら「ね、お兄ちゃん」
寅「チッ、やめたよ。
とてもお前たち相手に話はできねえや」
おいちゃん「まあまあ、そう怒るなよ、面白そうな話じゃないか、
昔、ある所に一人の男がいた、
それで?
恋愛でもしたか」
寅「そのとおりよ」
バーンとメインテーマ
男(赤)はつらいよ(黄)噂の寅次郎 予告(白)映倫
バックは木曽路風景
この出だしは上手い!
正に編集の勝利だね!
意味は無いけどリズムがいい!
予告編というのはつくづく抽象芸術なんだなって再確認。
リリーのテーマ
早苗が寅を見るシーンのバックでクレジット
そして
いま 柴又で―
寅「……」
始まちゃいました(^^;)
おばちゃん「寅ちゃんこの方ね、今日からうちの店で働いて
くれるんだよ、お名前はー…」
早苗「荒川です」
クレジット 大原 麗子
おばちゃん「あ、荒川さん、あ、あのね、この人ねあたしたちの甥で、
あのゆうべ一晩泊まってね、もう〜旅に立つの」
あちゃあ〜〜〜
おいちゃん「残念だなあ、もっとゆっくりしていきゃいいのに」
うわつ、わざとらしい追い出し…(^^;)
おばちゃん「本当に」
うわつ2(^^;)
早苗「お世話になってます、どうぞよろしくお願いします」
愛しく 咲いた
華 いち輪
とらや 台所
早苗お昼の弁当をとっている
いろいろとかまう寅。
寅「うなぎの蒲焼でも…」
早苗「いえ、いいんです」
寅「あ、漬物でも出そうね、」
早苗「あの、本当に結構ですから」
寅「おばちゃん、どこ入れてあるんだろうなあ、あ〜あ」
と空のナベを落としたりしてる。
早苗「フフフ…」
寅「え?何おかしいんですか、ヘヘ」
早苗「フフフ、寅さんて、怖い人かと思ったけど、
本当は優しいのね」
あ〜〜、そんなこと言っちゃったら…(^^;)
渥美さんの歌声とともにメインテーマ
メインテーマと共に源ちゃんが参道でヨーヨーをしている。
このカットは前の作品の転用。
クレジット 泉 ピン子
可笑しい 楽しい
寅が谷よしのさんたちに付き添われて
とらやに戸板で運ばれてくる。
仮病か???
クレジット 室田日出男
クレジット 志村 喬
クレジット 倍賞千恵子
早苗さんから、離婚するかもしれないって
聞かされて、内心大喜びの寅。
お馴染みのメンバーがクレジットされる。
寅「おだんご美味しいよ!」
さくら「なに?どうしたの?」
寅「あ!さくらか!いい天気だねえ今日は!はい!
いらっしゃい!お団子いかがですか!」
ウキウキした寅の心を表した渥美さんの『行ったり戻ったり』の見事な
足技アドリブをお楽しみください(^^)
さがって
外国人「アリガト」
寅「どういたしまして!
また来てね!」
すすんで
恋の噂の 寅次郎
とまって
寅「はい!いらっしゃい!」
もどって
すすんで
お待たせ しました
最新作
山田洋次監督作品
とらやで寅と社長が喧嘩をしている。
寅「このやろう!」
寅、社長をこかせて
社長「アガ!」
一番でっかいお正月映画
寅の首絞め!
男(赤)はつらいよ(黄)
江戸川土手がバック
噂の寅次郎
12月28日(木)当劇場大公開
志村喬さん最後の出演。彼は「ものがたり」を私たちに
置き土産として残していってくれた。やはりこの作品は
志村さんのあの声、あの姿がしみじみといい。
2005年12月25日クリスマスにアップ