男はつらいよ/予告篇集
― もうひとつの物語 ―.
No.11
翔んでる寅次郎
第23作
松竹映画「男はつらいよ」のDVDには実に嬉しい特典が付いている。それは『予告篇』だ。この予告篇は、たかだか2分から3分だが、
なかなか捨てがたい貴重な映像が入っていたりする。例えば撮影ロケが挿入されているもの。倍賞さんのNG場面が挿入されているもの。
本篇では出てこないシーンがたくさん挿入されているもの、等々、興味が尽きないのだ。どのカットも本篇採用のカットとは、微妙に
違うシーンがわざと入れられてあるのが心憎い。どちらかというと本篇と全く同じカットを使っている方が少ないくらいだ。とにかく
この「2分間の作品」を見て、本篇を見ようかどうかお客さんは決めるわけだから編集に携わった人々は常に真剣勝負だったと思う。
それらの方々のセンスと心意気が強く感じられる名作予告篇も何作もある。まさにそれは「編集の勝利」だともいえる。
特に、短いゆえに、たったひとつのシーンのインパクトが本篇以上に強烈に印象に残ったりもする。そこが実に面白い。
一寸の虫にも五分の魂があるのだ。
しかし、一般的には、この『予告篇』たちは、いつも本篇の陰に隠れて日陰者扱いになっている。
そこで本日から私がその『予告篇を』このページで簡単ではあるが全48作品紹介していきたい。
ただでさえ、本篇解説がダラダラ長いのに、予告篇までつきあってられないよ。という方はどうぞ、このページは飛ばしてください。
で、今日は第23作「翔んでる寅次郎」だ。
この作品の一番の見所は寅とさくらがマドンナの仲人を勤めるシーンだ。自分の結婚もできない
男が仲人をするまでの顛末が山あり谷ありで実に面白いのである。工場の中村君の結婚も含め3回も
結婚のシーンが出てくる可笑しな作品である。
2年前に制作された「幸福の黄色いハンカチ」で好演した桃井かおりさんが今回もちょっとずれたお嬢さん感覚ながらも
真っ向から人生に挑むひとみ役を爽やかに演じている。
「ママの考えてる幸せとは違う幸せが欲しいの」ひとみのこの言葉の意味を考える旅である。
それでは予告編をどうぞ〜。
富士
帝釈天をバックにクレジット
男(赤)はつらいよ(黄)翔んでる寅次郎(白) 予告篇 映倫
クレジット 渥美清
おいちゃん「おい、満男にこんなもの送ってきたぞ」
さくら「満男に?」
おいちゃん「ああ」
さくら「誰からだろう」
クレジット 倍賞千恵子
さくら「北海道にて 車寅次郎…」
北海道
この流れ、上手い!これまた編集の勝利。
ひとみ「なにしてんの?」
寅「おお、海見てんだい」
ひとみ「はあ〜…」
寅「ねえちゃんなにしてんだい?」
ひとみ「うん、おしっこしてたの」
寅「へぇ〜」
ひとみ「気持ちいいわねえ ここどこォ?」
寅「そうさなあ…北海道じゃなねえかなあ?」
ひろみ「それくらい分かってるわよ〜」
クレジット 桃井かおり
北の旅で出会った女の子
鐘「ゴ〜ン…」
寅「できたものはしょうがないんだから
くよくよするなってんの、なあ、博、え?」
鐘「ゴ〜ン…」
博「え、 ともかく、あなたの一生の幸せこそ、
かけがえのないものですから」
寅「そう言うこと、」
さくら「お母さんもきっと分かってくださるわよ」
寅「うん!」
ひとみ「ありがとう…おやすみなさい」
寅「あ、おやすみ!」
おばちゃん「おやすみなさい」
ひとみ「くくくく…」
寅「え?え?何?」
ひとみ「あのねえ、寅ちゃん、」
寅「うん」
ひとみ「可笑しいのよ、うちの母ったら」
寅「はは?」
ひとみ「うん、寅さんのことね私の恋人と
間違えてんの、バカねえ、おやすみなさい」
寅「おやすみなさい」
寅「ハ…」
一同、沈黙…
さくらだけ、少し笑う。
寅「困っちゃうよなあ上流階級の人は
妙な誤解をするから、ハハ…」
博、ザザッとごはんに味噌汁をかけてすする。
田園調布の自宅
ひとみ「ママは今幸せ?」
ママ「何を言い出すの突然?マア、幸せでしょうねえ」
ひとみ「だったら私あれだわ、
ママの考えてる幸せとは違う幸せが欲しいの」
クレジット 木暮実千代
邦男「ぼくもいろいろ考える事がありまして、」
寅「そうか」
クレジット 布施 明
寅「それで一つ大きく成長すりゃいいんだから」
邦男「しかし、失恋するって、悲しいことですねえ」
寅「そうだよ、その事に関しちゃおりゃ、
誰よりも詳しいからね!」確かに…(−−;)
邦男「??」
北海道で啖呵バイ
幸福とは…
飛んでる寅さんの恋愛指南
御前様が源ちゃんに鐘の中に入って轟音地獄の刑にしているのを
バックにして、おなじみのキャストがクレジットされる。
御前様の源ちゃんへの地獄の鬼のような折檻が見もの
↓
ひとみを襲おうとした男が倒れるのを
バックにして、ゲストがクレジットされる。
北海道 支笏湖付近
トラブルに巻き込まれている寅
湯原昌幸さん、いい味出しています(^^)
本編では谷よしのさんとの短いコント有り。
人々の幸せを求めて
山田洋次監督作品
翔んでるシリーズ最新作
男(赤)はつらいよ(黄)翔んでる寅次郎(白)
次週当劇場 大公開
幸せとは何か。を求めて彷徨う、一組のか弱き若いカップルの旅を
寅が支える第23作でした。