男はつらいよ/予告篇集
― もうひとつの物語 ―.
No.2
第31作
もうひとつの「男はつらいよ」 ― 3分間に賭けた映画人たち ―
5日に1作品のペース。全48作、順不同気まぐれ選択でいきます
松竹映画「男はつらいよ」のDVDには実に嬉しい特典が付いている。それは『予告篇』だ。この予告篇は、たかだか2分から3分だが、
なかなか捨てがたい貴重な映像が入っていたりする。例えば撮影ロケが挿入されているもの。倍賞さんのNG場面が挿入されているもの。
本篇では出てこないシーンがたくさん挿入されているもの、等々、興味が尽きないのだ。どのカットも本篇採用のカットとは、微妙に
違うシーンがわざと入れられてあるのが心憎い。どちらかというと本篇と全く同じカットを使っている方が少ないくらいだ。とにかく
この「2分間の作品」を見て、本篇を見ようかどうかお客さんは決めるわけだから編集に携わった人々は常に真剣勝負だったと思う。
それらの方々のセンスと心意気が強く感じられる名作予告篇も何作もある。まさにそれは「編集の勝利」だともいえる。
特に、短いゆえに、たったひとつのシーンのインパクトが本篇以上に強烈に印象に残ったりもする。そこが実に面白い。
一寸の虫にも五分の魂があるのだ。
しかし、一般的には、この『予告篇』たちは、いつも本篇の陰に隠れて日陰者扱いになっている。
そこで本日から私がその『予告篇を』このページで簡単ではあるが全48作品紹介していきたい。
ただでさえ、本篇解説がダラダラ長いのに、予告篇までつきあってられないよ。という方はどうぞ、このページは飛ばしてください。
なお、予告篇の雰囲気を壊さないためにも、あえて本篇の物語の補足をここでは入れない。感覚的に見ていただきたい。
予告篇を見る時点では観客は本篇を知らないからだ。予告篇ゆえどんどんカットが飛んでいくがそれを右脳的に感じていただければ、
と思っている。あくまでも予告篇は「抽象芸術」であり「ジャズ」なのだから。
予告篇はたった2分。構成の妙もさることながら、どの予告篇もキラッと光るカットが一つか二つ入っている。短いゆえにかえってそれが
印象深く燦然と輝くカットとなるのだ。
そのそれぞれのキラッと光るカットを中心に本日から9ヶ月ほどで全48作を紹介していくつもりだ。
ただ、予告篇なので、順番に第1作から始めないで、私の気まぐれ的な選択により、ランダムにその日の気分でアップしたい作品を
紹介していこうと思っている。だいたい5日に1作品のペースで更新していく予定だ。これもだいたいで、気分が乗ったら4日に
1作品アップしたり、仕事が忙しい期間は6日になったり、日本滞在中(1ヵ月半)はやたら忙しいので7日に一度になったりすると思うが、
基本的には5日に1作品はアップしていきたい。
それにしても「篇」と「編」。どちらを使おうかいつも迷う。一応最近は「編」の方が圧倒的に多いが、
今回の予告編は、松竹さんの記述を見習って、本来の使い方である「篇」を採用してあえて「予告篇」とした。
本日(2005年7月28日)は、その2回目
第31作「旅と女と寅次郎」
この第31作の予告篇は『名作』のひとつである。
音無しの『松竹富士山』の直後に茶の間でいきなり運動会用の笛の音。
それを嫌がるとらやの面々。何が起こるんだ?なぜ嫌がっているんだ?
と、観客に思わせるカット。もうこれでそうとうのインパクト。
タイトルの後、
本編とって置きのあの伝説にさえなっている『とうもろこしギャグ』が
惜しみもなくここで披露!。あのギャグでの渥美さんと都さんの
2人の『間』は最高だった。
そのあとの弾けるようなテンポの良さといったらシリーズでも出色である。
はるみさんの歌『惚れちゃったんだよ』のリズムに見事に乗って、
『寅のパン食い競争の練習』や『ウォ―クマンを聴きながら歩く寅』
『たらい舟でひっくり返るベンガル』などが実に上手い!次々に
ギャグのハイライトシーンが映し出されていく。
なによりもこの『惚れちゃったんだよ』を歌うはるみさんの声が凄く冴えている。
当時日本一の歌い手のひとりだったことがよくわかる。
そして、船での別れのシーンで今度は「涙の連絡船」の三番!
この曲に合わせて二人の別れ、とらやでのドタバタなどが次々に現れ、
最後に波止場での寅の叫ぶ姿で終わる。
予告篇とはこうだ!と、人に言えるような見事な3分10秒だった。
まさしく編集の勝利と言えよう。
松竹富士山が無音で映る。
松竹映画
とらや 茶の間
寅「ピーッ!フレェ〜フレェ〜!
ミーツーオ〜!!
いきなり『 渥美 清 』のクレジット
みんな耳をふさぐ
ウチワ2つ持って
タンタンタン!、タンタンタン!
タンタンタヌキの金玉はぁ〜!、
…ウワー〜〜!!
フレーフレーォ〜ミツオー!!
バンザーイ!!」
一同シラ〜
さくら、なにか言いたげ...
満男ガックリ下を向く…
メインテーマ
クレジット『 男はつらいよ 旅と女の寅次郎 予告篇 』
バックは越後(旧西蒲原郡岩室地区)の『はさ木』。
バックに見えるのは角田山と弥彦山
「はさ木」とは刈り取った稲を乾かすために植えられた木。
越後平野にはたくさんある。
越後 出雲崎
手書き縦文字で、
この度は
越後路―
寅さんの
佐渡の休日
佐渡 宿根木(しゅくねぎ)
佐渡 宿根木(しゅくねぎ)
民宿「吾作」の夜
寅「どっかで見た顔だなあ…」
はるみ「…。そお?」
寅「オレと前どっかで会ってなかった?」
はるみ「ううん、会ってない」
寅「どこだったかなー」
テレビのモニターを見て…
寅「思い出した!
去年!
岐阜の千日劇場。
あそこの前で
トウモロコシ焼いてたろ?
ナッ!焼いてた」
あちょ〜〜〜ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ
「......」
はるみ「ううん、焼いてない」焼いてないよなあ、そら(^^;)
場面パッと変わって
『惚れちゃったんだよ』を歌うはるみさん。
はるみ「♪ホォォ〜〜…
惚れ..ちゃったんだぁ〜よォ〜…!
意地でさよなら言っては来たが、
「都はるみ」のクレジット
寅、パン食い競争の練習中
『惚れちゃったんだよ』のリズムと見事にマッチ!
とんとんとんと走って口を開けたが失敗して、
手でつかんで食べてしまう。(^^;)
♪惚れェちゃったんだ〜よォ〜…」
柴又新商会 商店街
柴又新商会の商店街で葛飾電気から代金を払わず
寅、ウォークマン(東芝ウォーキー!!)を持って歩く。
第16作「葛飾立志篇」の眼鏡屋が横にある!第16作では
八百満のおかみさんがこの葛飾電気の店頭のカセットを見ていた。
♪思いきれずに泣いてるバカさ〜、
渥美さん、人とすれ違う時ひょいと
よけるそのよけ方が上手い!
これもまた、音楽のリズムにマッチ!
ひょい
恋するものの
嬉しさは―
佐渡
佐渡で寅とはるみが遊歩道を歩いていく
はるみさんがキバナカンゾウの花を持って歩いている。
♪夜汽車で今すぐ会いに行く〜、
幼いころの
夢のよう
土産物屋(山本食堂)ではるみのマネージャーが奮闘している。
♪待ぁ〜〜っあ、あって、待っておくれよ
藤岡琢也、桜井センリ、木ノ葉のこ、ベンガル、扮する
マネージャーたち、ヘトヘトで目がペケ。
ベンガル、はるみを追うためにタライ舟に
乗って漕ぎ出すが、あえなく転覆。あたりまえ ゞ( ̄∇ ̄;)
やさしく哀しい
虹の色―
♪こぉのオ〜レ〜を〜」
歌の終わりの直後に
船の汽笛 ボォ〜
佐渡 小木港
山本屋(食堂)の2階ではるみがエメラルドの指輪を寅に渡す。
はるみ「ねえ、これ持ってて」
寅「いや、オレこんなもの…」
はるみ「違うの私の思い出に、ねっ!」
と、階段を下りる
寅「はるみちゃん」
はるみ、階段の手すりから顔を覗かして、
はるみ「なに?」
寅「もし、辛くてたまらねえようなことがあったら、
そして、オレのような男でも相談相手にのれる
ような事があったら、
東京は葛飾柴又帝釈天参道の、とらやへ行きな。
オレがいなくたって、親切なおいちゃん、おばちゃんや
妹のさくらが相談にのってくれるからな」
はるみ「うんきっとそうする。
さよなら」と階段を下りる。
佐渡汽船フェリー えつさ丸
マネージャに連れられ、フェリーで去っていくはるみ
汽笛 ボーー!!
はるみがデッキで寅のいる向こうを見ている。
今度はここから
『涙の連絡船』三番後半が流れる
歌「♪汽笛が、汽笛が〜、汽笛が〜と流れながら
とらやでの倍賞さんが映り『倍賞千恵子』のクレジット
満男の運動赤白帽子を手で振る。
♪暗い〜波間で〜
寅と社長の大喧嘩のシーンが流れ
とらやの面々、御前様たちがクレジット
おいちゃん、赤い笛でを吹いて止めようとする。
江戸川土手の寅が映り、
♪泣きぃじゃあ〜くう〜る〜、
他のキャストのクレジットが出て
佐渡
崖に咲くキバナカンゾウの黄色い花々
♪泣けば〜、散る散る、
笑いと涙
楽しさいっぱい
♪涙の、粒が〜、
旅と女と
寅次郎
寅が、走りながら船に追いつこうとしている。
♪連絡ぅ〜船の
山田洋次監督作品
寅が波止場で口に手を当て叫ぶ。
口の動きから察して
「京はるみ〜!がんばれ〜!」
(本編ではここで、汽笛で声がかき消される。まるでフランス映画.『望郷』の
ラストで、「ギャビー〜〜〜ッ!!」って叫ぶジャンギャバンだ。)
最新第31作
♪着くぅ〜、港ぉぉ〜」
タイトル
「男はつらいよ 旅と女と寅次郎」
佐渡の岩と海をバックに。
赤いバックに8月6日(土)当劇場大公開
都はるみさんの冴えに冴えた歌声と数々のテンポのいい映像の
組み合わせが上手い!編集の技を存分に見せてくれた秀作予告篇だ。
都はるみさんは本編では「アンコ椿は恋の花」「惚れちゃったんだよ」
「女の海峡」を歌う。「涙の連絡船」は予告篇だけの特典
佐渡.宿根木[しゅくねぎ] (重要伝統的建造物群保存地区選定)
江戸時代は廻船基地として栄えた村で、船主や舟大工職人達が住んでいた。
小さな入江に質素な板壁の家が100余軒肩を寄せ合って建っている。
大正期には木羽葺石置屋根の家並が独特の風景をつくっていたと言う。
予告篇終わり
第31作予告篇 上映時間:3分10秒
次回作品アップは4日後の8月2日頃です。
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