男はつらいよ/予告篇集
― もうひとつの物語 ―.
No.6
第19作
もうひとつの「男はつらいよ」 ― 3分間に賭けた映画人たち ―
全48作、順不同気まぐれ選択でいきます
松竹映画「男はつらいよ」のDVDには実に嬉しい特典が付いている。それは『予告篇』だ。この予告篇は、たかだか2分から3分だが、
なかなか捨てがたい貴重な映像が入っていたりする。例えば撮影ロケが挿入されているもの。倍賞さんのNG場面が挿入されているもの。
本篇では出てこないシーンがたくさん挿入されているもの、等々、興味が尽きないのだ。どのカットも本篇採用のカットとは、微妙に
違うシーンがわざと入れられてあるのが心憎い。どちらかというと本篇と全く同じカットを使っている方が少ないくらいだ。とにかく
この「3分間の作品」を見て、本篇を見ようかどうかお客さんは決めるわけだから編集に携わった人々は常に真剣勝負だったと思う。
それらの方々のセンスと心意気が強く感じられる名作予告編も何作もある。まさにそれは「編集の勝利」だともいえる。
特に、短いゆえに、たったひとつのシーンのインパクトが本篇以上に強烈に印象に残ったりもする。そこが実に面白い。
一寸の虫にも五分の魂があるのだ。
しかし、一般的には、この『予告篇』たちは、いつも本編の陰に隠れて日陰者扱いになっている。
そこで本日から私が全48作品の『予告篇を』このページで簡単ではあるが全48作品紹介していきたい。
ただでさえ、本篇解説がダラダラ長いのに、予告篇までつきあってられないよ。という方はどうぞ、このページは飛ばしてください。
予告篇はたった3分。どの予告篇も見るべき重要カットはおそらくたった一つか二つ。しかしそれが燦然と輝くカットなのだ。
そのキラッと光るカットを本日から1年半ほどで全48作の予告篇を紹介していくつもりだ。
ただ、予告篇なので、私の気まぐれ的な選択により、順番に第1作から始めないで、順番は不同、ランダムにその日の気分で
作品を紹介していこうと思っている。これもだいたいで、気分が乗ったら4日に1作品アップしたり、仕事が忙しい期間は6日になったり、
日本滞在中(1ヵ月半)はやたら忙しいので7日に一度になったりすると思う。飽きたら時々になるかも…。
今回は第19作「寅次郎と殿様」の予告篇
ここ1ヶ月ほどこの「第19作の予告篇ページ」が見れなかったそうだ。すみませんm(_ _)m
気持ちを新たに本日再度作り直しました。2005年11月25日
寅「さがれ!無礼者!恐れ多くもこの方をなんと心得る。
伊予は五万石の城主、藤堂久宗様であらせられるぞ
下がれ下がれ、ずがたか〜〜い!!団子あきんどずが高い!」
この第19作「寅次郎と殿様」のメインはなんといってもアラカンさんと渥美さんの共演である。
世紀のスーパースターのアラカンさんを『心の師』と、尊敬してやまない渥美さんにとって
この競演はどんなに嬉しかったか。渥美さんの少年時代、青年時代はこのアラカンさんの映画と
共に歩んだといっても過言ではないのだ。アラカンさんと共演している時の渥美さんは実に
目が輝き、楽しそうだった。浮世離れした二人がかもし出す御伽噺のような異色の作品だ。
三木のり平さんがアラカンさんの脇をしっかり固めているののがなんとも頼もしい。
とにかくアラカンさんは何を演じても絵になる。
★甘露じゃの〜っとラムネを飲むアラカンさん。
★三木のり平さん相手に刀振りかざして大立ち回りを演ずるアラカンさん。
★手品使いのような格好でとらやに訪ねてくるアラカンさん。
★リヤカーでとらやに連れてこられるアラカンさん。
★さくらのことを「ムスメ!聞いておりますか!」と呼び捨てにするアラカンさん。
★鞠子さんと二人、涙をハラハラと流すアラカンさん。
★夕暮れの江戸川土手を鞠子さんと二人して歩いていくアラカンさんの後姿。
もう何から何まで絵になっている嵐寛寿郎さんだった。
特に私が好きなシーンはラムネを不思議そうに眺めながら中の
ビー玉をコロコロと転がして喜んでいるあの目だ。
アラカンさんは少年の目をしたスーパースターなのだ。
この予告編もアラカンさんを中心に一気に鞍馬天狗のように駆けていく3分間だ。
大洲の町のしっとりとした美しさ、真野響子さんの若々しい美しさが
元気なアラカンさんと上手くマッチしてなかなかの佳作だ。
鞠子のテーマ曲も美しい。
もちろん本編の夢は寅の鞍馬天狗!!
シリーズ中屈指の映像美だといわれている江戸川土手の別れ
さて、予告篇の始まり。
ハープが流れて
四国 伊予 大洲城址
寅「ああ!あ!あ、ああ!」
と最後のお金、五百円札を石垣から落としてしまう寅。
スタッフがチラッと見える。本編では見えていない(^^;)
鐘「ゴォ〜ン」
五百円が殿様の上に!
殿様「ん…?」
寅、走ってきて
寅「お、おじいちゃん、ひょっとしたらこの金、
拾ったんじゃねえかい?」
殿様「天から降ってきたよ」そりゃそうだ(^^;)
寅「あ、じゃオレんだい、あの〜上でね金勘定してたら
風に飛ばされておっこっちゃったんだ、どうもありがとう」
クレジット 渥美 清
休憩所 駄菓子屋
グリコ カプリコ
寅「そうだ、せっかく拾ってくれたんだ、
なんかお礼しよう。なっ!
おばあちゃんラムネ一本くれや」
駄菓子屋のおばちゃんがラムネを渡す。
スタッフの声が予告篇にのみ混ざっている。
スタッフの音声「もう一本、もう一本…だからな」
本編ではさすがに入っていない(^^;)
殿様「いやいや、さような高価な物を」高価って(^^;)
寅「なになに銭貰ったら礼するの決まりだよ」
もう一本も開く。 ボン!
クレジット 嵐 寛寿郎
このへんのテンポの速さが渥美さんだ。
見ていて気持ちがいい。
寅「はいはい、どうもありがとう、
さっ、飲みなよ飲みなよ」
寅「はい!、はいはい…あーっ」
カチンと瓶で乾杯
カラコロとビー玉を転がす殿様。
殿様も飲む。
寅「どうだい、うまいか?」
またまたカラコロとビー玉を転がす殿様。
殿様「ゥオ〜なかなか甘露じゃのお〜」
寅「へ…?」
タイトル
男はつらいよ 寅次郎と殿様 予告篇 映倫
バックは江戸川
給水塔 江戸川
クレジット 南の国は伊予の大洲市
クレジット 寅さんと殿様の奇妙な友情
クレジット めぐり逢った女性は
鞠子のテーマ曲 アコーディオンで。
「おはなはん通り」を歩く鞠子
クレジット 真野響子
柴又 帝釈天参道
クレジット こちらおなじみ葛飾柴又
鞠子さんが見つからなくて、とらやを逃げ出す寅。
さくら「お兄ちゃん」
寅「うーん?」
クレジット 倍賞千恵子
さくら「…人の嫁さんの心配もいいけどね、
少しは自分の嫁さんの事も考えてね」
寅「う〜んそうだなあ、
オレもそろそろいい年だし、
もうこのことは諦めた方が
いいんじゃないかな」
寅、よく言うよ。最近はお千代さんやリリーの
時のように自分から
敵前逃亡しているくせに(−−;)
さくら「なに言ってるのよ」
社長「そうだよ寅さんまだ若いんだから
これからチャンスはあるよ」
寅「ありがとうよ社長、
本当に人間の運命なんて分からないもんなあ」
社長「わかんない、わかんない、」
このときから、鞠子さんの登場までずーっと
エキストラさん数人が画面の奥で待っているのが見える。
もちろん本編では待っていないカットが使われている。
寅「オレがいつどこでいい女に巡り逢うか、
これもわかんないしさうかわかんないしさ、
例えばこの敷居ポン!とまたいだところで
ばったり回り逢って、その女と
所帯持つかも知れねえ」
お、これはくるぞくるぞ…(^^)
さくら「そうよォ〜」そうよって、さくら(^^;)
社長「そうそう」
寅「へっへっっへ、ま、そんなような事を
信じて生きていこうよ、なっははは、は〜…」
そろそろ、くるぞくるぞ(^^)
さくら「ね、早く帰ってね」
寅「あ」
鞠子さん「あらあ〜」
寅「よお!あ、大洲の宿の!」
来た〜〜〜!!!!(^^)/
鞠子「ええ」
寅「あはは!」
鞠子「よかったいらしてたんですか」
寅「え、いまオレ戻ってきたんだよ」
うそばっか(−−;)いつもこれ!
鞠子「そのせつは、いろいろと有難うございました」
寅「いえいえいえ」
実はたいした事してないんだよね(^^;)
鞠子「お土産までいただいてしまって」
寅「とんでもねえ」
鞠子「翌朝、お礼を申し上げようと思ったんですけども、
でもよかったわあ、お会いできて」
寅「いやあ〜運命だなあ」
鞠子「本当!分かんないもんねえアハハ!」
さくらたち、不思議そうに顔を見合わせる
寅「さささ、入んなよ、
オレんちだからさ、あ、お、さくら、
ボケーっとしてないで、
ちょっとお茶出せ、
おばちゃん、団子団子団子団子」
さくら「お兄ちゃん」
寅「あ?」
さくら「どなた?」
寅「こちら、…あれ?
あんた名前何ていったっけ、
オレ聞いてなかったなあ」
本編ではこのあと名前聞いてびっくり!!前半のクライマックス。
柴又参道
クレジット 異色の競演
源ちゃんがリヤカーに
お殿様を乗せて参道を走る!
源ちゃん「下に〜!下に〜!」
大洲城址の道
執事「またそんなことをおしゃって、
あ、お殿様は貴方がいらっしゃるとですね、あ、
ことのほかご機嫌麗しく…」
クレジット 三木 のり平
本編では嵐寛寿郎さんより
三木のり平さんの方がキャストの
一番最後にクレジット。いろいろ
あるんだねえ(^^;)
寅「こりゃ言っとくけどな。
ここの殿様の家来じゃないんだ」
執事「そりゃ分かっております。
いい事思いついた」
寅「な、なんだよ」
執事「今夜宇和島でね」
寅「いやいや」
寅逃げ腰(^^;)
執事「花火がございますからね、
あのー大洲美人を車に積み込んでですね、
ぐっと繰り込んでパッと!!」
寅「やんない」
執事「ぐっと」
メインテーマ曲テンポよく盛り上がって
題経寺 渡り廊下
源ちゃんとチャンバラをして、
御前様の頭をポカリと刀で叩いて!
御前様に怒られている満男
クレジットでお馴染みのキャストが紹介
ポカリ!
ハキモノで歩かないこと と張り紙。
バーン!と奇妙な格好で
登場する殿様!
クレジット いよいよ冴えるシリーズ最新作
大洲城址
大洲城址の赤電話から
さくらにSOSを出す寅。
クレジット 山田洋次監督作品
男はつらいよ 寅次郎と殿様
次週当劇場 大公開
この第19作は序盤に大笑いネタ「こいのぼり」「犬のトラ」
がある。アラカンさんが登場してからもさらに笑いの連続である。
特に鞠子さんを寅が探す場面は最高のギャグ!
殿様とフーテンの寅。
浮世離れしたこんな寅さんもいいもんだ、としみじみ思う。
是非、本編も見てください。
第19作「寅次郎と殿様」予告篇 改訂版 終わり
改訂版 2005年 11月25日