男はつらいよ/予告篇集
― もうひとつの物語 ―.
No.7
第18作
もうひとつの「男はつらいよ」 ― 3分間に賭けた映画人たち ―
全48作、順不同気まぐれ選択でいきます
松竹映画「男はつらいよ」のDVDには実に嬉しい特典が付いている。それは『予告篇』だ。この予告篇は、たかだか2分から3分だが、
なかなか捨てがたい貴重な映像が入っていたりする。例えば撮影ロケが挿入されているもの。倍賞さんのNG場面が挿入されているもの。
本篇では出てこないシーンがたくさん挿入されているもの、等々、興味が尽きないのだ。どのカットも本篇採用のカットとは、微妙に
違うシーンがわざと入れられてあるのが心憎い。どちらかというと本篇と全く同じカットを使っている方が少ないくらいだ。とにかく
この「3分間の作品」を見て、本篇を見ようかどうかお客さんは決めるわけだから編集に携わった人々は常に真剣勝負だったと思う。
それらの方々のセンスと心意気が強く感じられる名作予告編も何作もある。まさにそれは「編集の勝利」だともいえる。
特に、短いゆえに、たったひとつのシーンのインパクトが本篇以上に強烈に印象に残ったりもする。そこが実に面白い。
一寸の虫にも五分の魂があるのだ。
しかし、一般的には、この『予告篇』たちは、いつも本編の陰に隠れて日陰者扱いになっている。
そこで本日から私が全48作品の『予告篇を』このページで簡単ではあるが全48作品紹介していきたい。
ただでさえ、本篇解説がダラダラ長いのに、予告篇までつきあってられないよ。という方はどうぞ、このページは飛ばしてください。
予告篇はたった3分。どの予告篇も見るべき重要カットはおそらくたった一つか二つ。しかしそれが燦然と輝くカットなのだ。
そのキラッと光るカットを本日から2年ほどで全48作を紹介していくつもりだ。
ただ、予告篇なので、私の気まぐれ的な選択により、順番に第1作から始めないで、順番は不同、ランダムにその日の気分で
作品を紹介していこうと思っている。忙しい時や、用事のあるとき以外の隙間の時間を使って更新していきます。
今回はその第7回目
第18作「寅次郎純情詩集」である。
予告篇に大杉侃二朗さん登場!
この予告篇では最初に美しい娘さんに寅が惚れてしまい、
さくらに、例え話として「あの人のお母さんとなら反対しないわ、お兄ちゃんは
そういう年なのよ」と言われてシュンとしてしまった寅に、偶然にもその美しい
お母さんが現れてしまう。さくらに今さっきOKをもらったばかりの寅は、喜び勇んで
家に通い続け、さくらは呆然とする。このギャグの場面の掛け合いがこの予告篇の
メインだ。
そしてこの作品で忘れられないのが第8作で登場した坂東鶴八郎一座が再び
寅と別所温泉で再会し、一夜の夢を楽しむのだが、その宴会の時に出される
宴会芸が知るひとぞ知る「お掃除芸」。松竹の大部屋さんの大杉侃二朗さんの
見事な芸がこの予告編でもチラッと垣間見ることが出来る。
また、予告篇の最後にタイトルと一緒に映る、田園電車の信州、上田電鉄別所線が
ほのぼのとして、シリーズでもひときわ切なく美しいこの作品に相応しいイメージを
作り出している。この第18作の予告編はなんだか温かい気持ちになれる3分40秒だ。
松竹富士山
夜 とらや
気まずそうにとらやに戻ってくる寅
寅「不良品交換バザーかおばちゃん、ウチには不良品ないかい?」
豆腐屋のラッパが鳴ってくる。 パァープゥ〜
一同、そうとう怒っているぞ(▼▼メ)
さくら、ちらっと寅の方を見て、無視。
博、飯をぼくぼく食ってる。
寅「あ…もう晩御飯か」気使ってますねェ〜!
おばちゃん「お魚食べましょうねー」と満男に。
さくら「いただきます」
寅「あ、そうだ、うう、さくら開けて皆で食べればよかったのに…
これ、ねっ辛くて美味しいんだよ」
と気使って、自分が昼間持ってきた漬物を
チラチラ見せるがみんな無視!
そう〜とうみんな怒っている(^^;)
シ〜〜ン、シラ〜〜
豆腐屋のラッパ パープー…
博、黙々とご飯をほおばってる。
寅「あー、がんもどきとお芋か俺の好きなものばっかりだ。
は、おばちゃん気を使ってくれたんだね、それじゃ…」
またまた、一同、完全沈黙(▼▼メ)。
寅「箸…」
おいちゃん「醤油ないか?」
さくら「ふっ」とおいちゃんに寅の漬物をよけて醤油のありかを見つける。
豆腐屋のラッパ「プゥ〜〜」
踏み切りの警告音 チンチンチン…
寅「箸…」とさくらに言うが無視される
寅、さすがに居たたまれなくなる。
そこへ博の味噌汁をすする音
博「ズーッ、ズッズゥー…チッ」
博、怒ってますよォ〜(^^;)
寅、博を睨んでブス〜〜〜!!
クレジット 車寅次郎 渥美清
寅、さくらの方を見て、ついに逆切れ
寅「なんでい!みんなツン黙りやがって、
オレになんか言いてえ文句でもあんのか!」
タイトル
男(赤)はつらいよ(黄)
寅次郎純情詩集 予告篇
映倫 (白)
寅が江戸川のふちを歩く
とらや 店の中
さくら「おにいちゃんは本当に若くないのよ!
そりゃ、いくつになっても女の人を好きになっても構わないわ、
でもねあの先生はお兄ちゃんの娘ぐらいの年なのよ、
お兄ちゃんがまともに結婚してたら、あの先生ぐらいの娘が
いてもおかしくないのよ!」
博「…そうですよ」
さくら「はーもう」
寅「はー…、なるほどなあ…、」
さくら「仮によ、あの先生に、
きれ〜〜なお母さんがいたとして、
その人をお兄ちゃんが好きになったと
したら、私たち誰も文句なんか言わないわ」
クレジット さくら 倍賞千恵子
一同、深く頷く
さくら「お兄ちゃんは、それくらいの年なのよ」
社長「そう」
寅「そうか…、あの先生のおっかさんねえ…」
寅「うーん、そんな年頃になるか…」
寅、さくらの横に座って、
寅「オレもそろそろ考えなきゃなあ…」
満男の担任の雅子先生がとらやに入ってくる。
雅子先生「こんにちは」
さくら「あら、先生!」
雅子先生「ちょっとお団子を買いに」
寅、スクッっと立ち上がって、緊張
おいおい、舌がまだ乾いてないぞヾ(- -;)
雅子先生「あら!満男君の伯父様!あ、、帰ってらしてたの?」
寅「帰ってらしてたの!」だめだこりゃ┐(-。ー;)┌
さくら、冷汗タラ〜〜〜の顔
(さくら、目は笑ってない)
雅子先生「そう…みなさん、こんにちは」
クレジット 柳生雅子 檀 ふみ
寅、深々と「こんにちは」
博たちも
博「こんにちは」
おいちゃん「いいお天気で」
おばちゃん「いらしゃいませ」
雅子先生「いつぞやはどうも」
さくら「いいえ…」とお辞儀
雅子「みなさん、ちょっと失礼」と表に
寅「どこ行くんですか」と追いかけようとする。ほんと懲りないねえ(−−;)
博、必死で寅を掴んで止めて、
博「兄さん!」
寅「え…」
寅「さくらが、さっき言ったこと…覚えてますね」
さくら、睨んでいる。
寅「お、覚えてる、覚えてる。さっき言われたばかりだもんな」
頭で覚えてても、体が伴わない寅でした(^^;)
さくら、頷く
寅「お母さんだったらいいんだ、
お母さんどまり…」どまりって…(^^;)
雅子先生戻ってきて
雅子先生「お母様、こっちよ」
寅、はっとして
寅「!おかあさん。。。」
博ドキ!
さくら、博を見る!
雅子先生「母も一緒に来てるんですの」
さくら、真っ青
博ドキリ
さくら、寅を見る
寅「…はは。。。」(@@)
母親の綾、とらやに入ってくる。
綾「あー…、懐かしいわあ〜、」とキョロキョロ
クレジット 柳生綾 京マチ子
第14作「子守唄」で使った「京子のテーマ」が
アコーディオン演奏で流れる。
予告篇制作段階では本編テーマ曲が間に合わない
ので過去のテーマ曲を多用している。
雅子「ほら、」
綾「ん?」
雅子「こないだお話した満男君のお母様」
綾「!」
さくら「あ…、先生にはいつもお世話になっています」
とオーバーを脱いで、深々とお辞儀。
綾「いいえ〜、先日この子がとらやさんに
伺ったと言う話を聞きまして、
もーう、懐かしくて懐かしくて、
今日はお散歩がてらに足を延ばしましたの」
寅、まっっすぐ綾を見ている(^^;)。
博、心配そうに寅を見ている。
もうダメだね。さくら『公認』マークがついちゃったから(^^;)
遂に本格的に始まっちゃったよ。
秋の水元公園
池のほとりを散歩する寅と綾、源ちゃんもお供。
クレジット 美しい母娘と
寅さんとの出会い。
雅子先生と柴又参道を歩く寅
寅「っまたくねえ、ろくな連中いませんからね。子供の教育に
とっちゃ、ほんとに、いけないとこですよ」
雅子先生「あらあ、いいところですよ。古いお寺があって、
広々とした江戸川の川原はあるし、」
クレジット 所詮かなわぬ
高嶺の花か
信州 別所
啖呵バイをしている寅
寅「物の始まりが一ならば、国の始まりは大和の国。
島の始まりが淡路島ときた。
ねえ!続いた数字が二だ!どう!
テーマ曲のもと渥美さんの歌声
「♪奮闘努力のかいもなく、」
同時に重なる啖呵バイ
寅「兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ」
クレジット 張り切る寅さんの
純情青春譜
別所温泉 旅館
坂東鶴八郎一座と寅の愉快な宴会
出ました!松竹の宝!
お掃除芸を披露する大杉侃二朗さん!登場
(この人のお掃除芸を見たい人はぜひ本編をごらん下さい!)
メインキャストがクレジットで紹介されて
みんな手拍子しながら大笑い。
「♪今日も涙の〜」
クレジット 山田洋次 原作 監督 作品
「♪今日も涙の陽が落ちる
信州 上田電鉄別所線
車内で赤ん坊をあやす寅
クレジット 待望のシリーズ最新作
「♪陽が〜〜落ちる〜〜」
田園をのんびり走る別所線。
タイトル
男はつらいよ 寅次郎純情詩集
次週当劇場 大公開
本編同様、実にほのぼのとした予告篇だ。
このタイトル通り「純情詩集」そのものだ。
第18作「純情詩集」予告篇 終わり
2005年11月3日完結
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