バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
寅次郎わが道をゆく
第23作 男はつらいよ
1979年8月4日封切り
もうひとつの幸せを求め彷徨う若者たち 前代未聞寅の仲人始末記
『ふられた後で気がつくんじゃないのか、やっぱり恋をしていたんだと』
これは博がこの作品で言った名言。
ひとみさんに惹かれながらも、若い二人の恋の仲人をする寅のせつなくも可笑しい奮闘を描いた作品だ。
この作品の一番の見所はなんと言っても寅とさくらが本当にマドンナの仲人を勤めるシーンだ。
自分の結婚もできない男が仲人をするまでの顛末が山あり谷ありで実に面白いのである。
工場の中村君の結婚も含め3回も結婚のシーンが出てくる可笑しな作品である。
2年前に制作された「幸福の黄色いハンカチ」で好演した桃井かおりさんが今回もちょっとずれた
お嬢さん感覚ながらも、彼女なりに真っ向から人生に挑むひとみ役を爽やかに演じている。
ただまあ挑むと言っても、甘ったれお嬢さんの小さな冒険&発見って感じがしないでもない
情けなさは終始付きまとってしまう欠点もある。
物語に甘さが残る欠点はこの作品のタイトルにもそこはかとなくにじみ出ている気がしないでもない。
とにかく、世間知らずのひとみさんは一度結婚式をした人ともう一度結婚するなんていう
とてもユニークな体験をしてしまった人だ。
そしてウエディングドレスのままとらやになだれ込んでくるという、前代未聞の暴挙にも出た最初で最後のマドンナだ。
それもおいちゃんたちとは一面識もないのにだ!
それゆえ全マドンナの中で、おいちゃんがはっきり面倒見たくないと怒ったのはひとみさんだけ(^^;)
わかるわかるその気持ち。とらやは『お助け駆け込み寺』じゃないんだから。
アマちゃんという意味では全マドンナの中でひとみさんが一番考えが甘い。
ほんとうの幸せを求める軌跡
ひとみ「ママの考えてる幸せとは違う幸せが欲しいの」
今回はひとみさんのこの言葉の意味を考える旅である。
彼女は親の敷いたレールを無理やり歩むことに動物的本能で遅ればせながら疑問を感じ、
発作的に結婚式を抜け出し、自分の人生をようやく自分自身で模索しはじめるのである。
ギリギリでは、彼女は野生を隠し持っていたのだ。
それでも巨大な親の呪縛から逃れることがなかなかできなさそうな彼女でもあったが、
寅が大きな防波堤になって、後押しをして、なんとか自分の足で生きていくことに成功していく。
彼女はみたとおり、しゃべったとおりの、絵に描いたような田園調布の甘ちゃんのお嬢さんだが、
彼女の感覚は意外にも死んではいなかったと言えよう。
それは新婦に逃げられた新郎の小柳邦男にも同じことが言えるだろう。
それにしても、親の大きな庇護の元から飛び出し、初めて自分の力だけで生きはじめたのだから
たいしたもんである。それでどんな小さな幸せしか手に入らなくても、そのちっぽけな幸せは
紛れもなく彼女が自分で手に入れたものなのだ。生きる実感とはそうしたものなのだから。
控えめながら邦男の妹役であの戸川京子さんが出演している。
彼女の披露宴でのスピーチはなかなかよかった。
彼女は第29作の中でもちょろっと出てくる。
と、いうことで、
『ほんとうの幸せとは何か』、を求めて彷徨う一組のひ弱な若い甘ちゃんカップルの旅を
寅がしっかり支える第23作でした。
■第23作「翔んでる寅次郎」全ロケ地解明
全国寅さんロケ地:作品別に整理
それでは本編をどうぞ。
今回も夢から
天才医学博士車寅次郎は
ひたすら便秘の研究を続けている。
題経寺 二天門
昭和初期の頃か…
柱に爆発時の車博士のバカッ面と髪の毛がチョークで書かれてある(^^;)
おお!これは予言の絵だ!
↓
めんこ遊びをしている子供たち。
さくらが、帝釈様にお参りしていると
子供たちがさくらを見つけ、バカにする。
子供A「やーいやーい、キチガイ医者の妹やーい」ひどい言い方(TT)
子供たち一斉に「やーいやーい、キチガイ医者の妹やーい」
放送禁止用語連発(^^;)
さくら、青ざめて、足早に参道を帰っていく。
うなぎ蒲焼
草団子
子供たちは参道でさくらを追いかけながら
「やーいやーい、ヤブ医者の妹やーい」と繰り返す。
近所のおばさんも、さくらが挨拶しても知らん顔。
柴又医学研究所(とらやの位置)
さくら淋しげに車寅寅次郎博士の住居である
『柴又医学研究所』のドアを開けて中に入っていく。
柴又医学研究所 車寅次郎博士 の看板
なおもしつこく、子供たちは追いかけ、ドアに石を投げつける。
子供たち「やーいやーい、ヤブ医者の妹やーいやーい」
柴又中の住人からバカにされ、嫌がられているが、
『便秘の研究』が結実する日が刻々と近づいている。
さくら入ってきて
おばちゃん「あら、お嬢様」
さくら「お兄ちゃんの研究は進んでいますか?」
おばちゃん「はい、それが…、夕べもとうとう一睡もなさらずに…。
あれでは、研究が完成する前に
倒れておしまいになるのではないかと
主人と心配をいたしております」
さくら「そう…」
さくら「今日はお兄ちゃんの好物をたくさん作って来ましたから。
お昼にしましょうね」
おばちゃん「お優しいことで」
おいちゃん、二階から下りて来て
おいちゃん「おいでなさいまし」
さくら「あなたがたご夫妻にはほんと苦労かけますね」
おいちゃん、オーバーアクションで(^^;)
おいちゃん「何をおっしゃいます、車先生にお仕えるするだけで私たちは
幸せでございます。なー、つね!」
おばちゃん「はい、せめて、先生のお薬が完成するまで
なんとか長生きをしたいと、
それが私どもの望みでございます」
さくら、感激で、目を潤ませ
さくら「どうもありがとう」とお辞儀。
静かで悲しげな音楽が流れる。
二階への階段の入り口に
『研究中につき静粛に』の貼り紙。
さくら二階に向かって
さくら「お兄ちゃんごはんよー」
その声に応ずるように
やがて寅が本を読みながら、ヨタヨタ下りてくる。
最後には足を踏み外し、こけてしまう。
助手の博が上から駆けつけ
博「先生!」
さくら「お兄ちゃん、少しは休まないなくては…」
二人に抱えられるように、テーブルにつく寅。
疲労困憊の寅だが
寅「もう一息、もう一息で、薬が完成する…」
さくら「ほんとう!?博さん」
博「理論の上では99パーセント完成しております」
さくら「じゃあ、もうすこしね!」
博「はい」
寅、本を読みながら、おかずをつつく。
ほとんどつまめなくて空振り(^^;)
渥美さん、細かい芝居してます((^^;)
博「先生の発明によって、地球上の便秘の患者はその苦しみから
永遠に開放されるでしょう!」
さくら「まあ!素敵!」
寅、間違って爪楊枝入れを食べようとしている。
ありえないってヾ(^^;)
さくら、驚いて
さくら「は!お兄ちゃん、これ、食べれないのよ。
こっち食べなさい」
そこへ悪徳金貸しのタコ社長と源ちゃんやって来て
社長「どうするんだいどうするんだい、
いつ引き払ってくれるんだ、この屋敷を!」
さくら「お願いです。もう少しいさせてください」
社長「あー、そうかい、それじゃあな、
今すぐ、元利そろえて借金返してもらおうじゃないか」
源ちゃん、金銭借用証書を開いてみんなに見せる。
さくら「兄のいる前でそんなことを。兄は今、研究に没頭中なんです」
と、おイモの煮っ転がしを食べさせるさくら。
さくら「はい、おイモの煮っ転がし」
社長「便秘の薬の発明か!?
そんなものできるわけがないだろう!
頭のおかしい医者に!」
博「なんてこと言うんだ!天才に向かって!!」
社長「天才!?これが!」
社長、源ちゃんふたりして
「ガハハハ!!」と大笑い。
一方寅は、箸にイモを突き刺して、
あることを発見していた。
寅「ハハハハハ、わかった!!」
みんな一斉に寅を見る。
寅「理論がわかった!!」
さくら「えー…」
寅「博!」
博「はい!」
寅「この、おイモの繊維がテェーマァだ!!」
博、虫眼鏡でイモを観察(^^;)
寅、喜びはしゃいで
寅「はー!!急がなくっちゃ!!急がなくっちゃ!!
気持ちがせいている…」
と、イモを持ってヨタヨタ二階を上がっていく。
みんな二階を見ている。
さくら、我に返って
さくら「おじさん、今兄はなんと言いましたか!?」
おいちゃん「遂に理論がわかったとおっしゃいました!」
おばちゃん「おめでとうございます!おじょうさま!」
おいちゃん「おお!!」
と、みんなで抱き合う。
社長たちも思わず驚いている。
研究所 二階
二階に上がった寅
寅「どうしてこれに気がつかなかったか!?
この、お芋の繊維と、このひまし油を
混ぜ合わせれば、そこに、新しい結晶が生まれ、…。
なんでこんなことに気がつかなかった今まで…」
ひまし油: とうごまから搾り出した油で、
小腸を刺激して排便を催してくれる便秘薬として重宝されていた。
湿布したり、お尻に塗っても効き目がある。
ドアの向こうでさくらと博の声
さくら「お兄ちゃん!」
博「先生!!」
寅「入ってはいけない!
入ってはいけない!
この実験には危険が伴うんだ。
入ってはいけません!!」
寅は二つを混ぜ合わせ、溶液が煙を出し始める。
寅「さあ、人類が長い間苦しんでいた便秘から救われるのだ。」
管の間を黄色い溶液が流れていく。
寅「さあ、来るぞオ!」
ドカアーン!!
二階大爆発(TT)
社長、お口ポカン(^^;)
みんな「ギャー」「キャー」
寅が爆発頭になって階段を落ちてくる。
第20作「寅次郎頑張れ!」のワット君と同じパターン。
さくら「お兄ちゃん!」
博たち「先生!」
三味線の音 ペンペンペンペン…。
寅、髪の毛爆発、目がぐるぐるになりながら
三味線の音 ペンペン!!
で、バタっと倒れる寅。
さくら「お兄ちゃん!」
博たち「先生!」
寅「便秘の薬!便秘の薬!便秘の薬!」と、うわ言のように手を伸ばす。
三味線 ペペペンペンペンペン…ぺぺンペンペン…
神奈川県伊勢原市 大山
片田舎の 日下部医院
寅、病院でうたた寝。
岡本茉利さんの看護婦さん。
看護婦「車さぁん…、車さぁん、車さん」
ビクッと起きる寅。
看護婦「お待ちどうさま、はい、これ便秘のお薬」
寅「はああ…」と、受付に行く。
看護婦「食後2錠ずつ、効きすぎたら1錠に減らしてください。
今飲みますか?」
寅って便秘する時あるんだね。
普段は早飯早糞芸のうちを地で行ってるのにね。
寅「そうね…」
貼り紙
健康保険患者さんに
初心の方は必ず保険証または証明書を受付にお出しください。
保険証がない場合は一般患者として料金をいただきます。
尚、現在保険証をお持ちでない場合でも、初診日から3日以内に保険証と領収証を
お持ちになれば、料金を払い戻しいたします。
下剤をその場で飲む寅。
看護婦さん「なるべく、繊維の多い野菜なんか食べてくださいね」
寅「ああ」
看護婦さん「お大事に」
看護婦さんはもちろん
大空小百合ちゃんでお馴染みの岡本茉利さん。
ここで、もう一度岡本さんをおさらいしておこう。↓
■ 岡本茉利さんの整理箱
第8作 「寅次郎恋歌」 四国 雨の日の 坂東鶴八郎一座の花形 大空小百合
ラストでも甲州路で再会
第16作「葛飾立志篇」 ラストでの西伊豆の連絡船ガイド さん
第17作「寅次郎夕焼け小焼け」 池ノ内青観の家のお手伝いさん(とし子さん)
第18作「寅次郎純情詩集」 夢のシーン 北アフリカのカスバの女性
A信州別所温泉での坂東鶴八郎一座大空小百合
『不如帰』の浪子役
第19作「寅次郎と殿様」 大洲城での料理屋の店員(出前) ほんの一瞬だけ(^^;)
第20作「寅次郎頑張れ!」 夢のシーン 大金持ちになったとらやのお手伝いさん(なかなか可愛い)
Aラストで寅と軽四トラックで再会する坂東鶴八郎一座 大空小百合
『ああ無常 レ.ミゼラブル』のコゼット役
第21作「寅次郎わが道をゆく」 肥後の田の原温泉に住む留吉の元彼女(春子) 「あんた何くれた!?」
第23作「翔んでる寅次郎」 寅に便秘薬と水を渡した日下部医院の看護婦さん
第24作「寅次郎春の夢」 京都での坂東鶴八郎一座大空小百合『蝶々夫人』
の蝶々夫人役
「ミーバタフライ!ミーバタフライ!」
病院の外に出る寅
神奈川県伊勢原市 大山 大山バス停前
ここは、元 森林組合の事務所として使われてたらしい。
花売りの行商が通り過ぎる。
病院を出てすぐもようしてきたらしい(^^;)
寅「あ、あれ??なんだもう効いてきちゃった…」
もぞもぞと、寅すぐ病院に戻って
寅「すいません、ちょっと便所貸して下さ〜い」
この病院、中が真っ暗なのでどうも空き家(廃屋)っぽい感じだなあ…。
タイトル
男はつらいよ 翔んでる寅次郎
口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
今回は間奏が長く入って、もう一度後半部分を繰り返す。
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
今回のミニコントは、子供たちが江戸川土手で、
がま口に糸をつけて引っ張り、
寅が密かに拾おうとするのをからかう。
この作品では津嘉山正種さんは残念ながら出ていない。
怒った寅は必死で追いかけるがいつものとおり次々と人を蹴倒し、
倒された人がまた誰かを倒してしまい、
喧嘩を始めると言うパターン。
このコントにあの第16作「葛飾立志編」で衝撃の告白をした
上條恒彦さんが出演。
彼は第15作、第16作、第19作、の夢にも出演している。
赤い服着た人が上條恒彦さん
なお、この作品では上條さんはクレジット有り。
柴又 帝釈天参道
工員たちに胴上げされている工員の中村君。
今日は古沢規子さんと中村君が
川千家で結婚式を挙げたのだ。
工員たち「わーっしょい!わーしょい!わーっしょい!わーしょい!」
博「よーし!そのへんでいいだろう!」
博「がんばって行ってこいよ」
中村君「どうもみなさんありがとうございます」
タコ社長、うしろから
社長「中村君規子さん、バンザーイ!」
みんな「バンザーイ!」
社長「バンザーイ!」
みんな「バンザーイ」
みんな、盛り上がって拍手。
中村君「じゃあ行ってきます」
みんな「がんばって行ってこいよー!」
二人いすず自動車のハネムーンカーに乗り込む。
車の後ろのガラスに
『中村君、規子さんおめでとう』と書かれている。
これは恥ずかしい((((^^:)
さくら、それを見て笑っている。
とらや 店
式が終わってさくらたちがとらやに帰ってくる。
さくら「はあー、ただいま」
みんな「おかえり」
さくら「あ、満男帰ってたの」
おやつのサンドイッチを食べている満男。
おばちゃん「どうだった?中村さんの結婚式」
さくら「あの人ったらすっかりあがっちゃって、ね、フフ」
博「どっちかと言や、嫁さんのほうが落ち着いてたな。
平気で酒飲んだりして、フフ」
おばちゃん「近頃はそうらしいね」
おいちゃん「大安吉日だから大変だったろ川千家さんも」
博「今日は5組もあったらしいですよ」
おいちゃん「はあー」
参道で工員たちの笑い声。
若い娘「いやねもうー」
社長が入ってくる。
工員が社長が忘れた引き出物を渡す。
工員「社長」
社長「ああ」
工員「これ」
社長「あ、ありがと」
博「ごくろうさん」
社長「昼まっから酒飲んだら妙な気分だよ」
おばちゃん「ごくろうさま、はいお茶」
さくら、満男のかばんから作文用紙取り出して
さくら「あら、三重丸!」
博「なにが?」
さくら「作文」
博「ちょっと読んでみろ」
満男「『僕のお母さん。僕のお母さんとお父さんは恋愛結婚です』」
社長「ハハハハハハ!!」
さくらと博照れまくり
さくら「バカね、なんてこと書くの」
と追いかける。
逃げる満男
さくら「ちょっと、こら!」
みんな大爆笑。
社長「あんなこと書くようになったかねえ、あの子も」
みんな、月日の経つのは早いものだと、感慨を深くしている。
おいちゃん「何年になるんだ?おまえたち…」
博「もう十年ですよ」
みんな、はあーっと感嘆。
社長「お互い年をとるわけだねえ」
さくら、お茶を飲みながら
さくら「そうね」
さくらと博は結婚してはや十年が経ったようだ。
社長「この界隈も変わってきたしな」
おいちゃん「変わらないのはとらやとおまえの工場だけか」
社長「そうそうそうハハハ!」
みんな大笑い。
おばちゃん「変わらない男がもう一人いるけどね…」
みんな「…」
みんな、寅のことを思っている。
博「どうしているかな兄さん…」
さくら「そろそろ帰ってくる頃ね…」
おいちゃん「いつになったら嫁さんもらえるのかな、あいつは…」
花嫁さんがまた前を通る。
社長「あ!またお嫁さんだ」
大船調 アングル(^^)
博「美人だ…」
社長「だいぶかかってるよ」と、お金のことを言う(^^;)
さくら「え?フフフ」
そんな時、寅が帰ってくる。
みんな「。。。!!!」
寅も花嫁さんに気づいて、後をついて行く。
さくら「お兄ちゃん!」
寅、店に戻ってきても、ずっと花嫁さんの方を見ている。
おいちゃん「あーいやだ」と、うつむいてしまう。
寅、ようやく店の中を見て、
みんなが勢ぞろいしていることに
気づき、照れ笑いをする。
寅「ハハ、みんないたのか、フフ」
さくら、立ち上がって
さくら「おかえりなさい」
みんな「おかえりなさい」
寅「なんだい、みんなそんな黒い服着て…しんみりしてよ。
…!!
誰か死んだのか!?誰だ!?
おばちゃ…!なんだおばちゃんいるじゃねえか、そこに」
おばちゃん「当たり前だよ!あたしゃぴんぴんしてるよ!」
このおばちゃんの元気印ポーズ印象的です↓(^^;)
さくら「喪服じゃないのよこれ、結婚式の洋服」
葬式大好き、葬式命、の寅は、結婚式だと知って、気が抜け、
寅「なーんだ、びっくりさせやがらあ、
結婚か、くだらねえなあ」
椅子に座って
寅「誰だ、誰だ、え?誰の結婚だ?」
社長「うちの工場の工員ですよ」
寅「職工?ホッホー!結構だねえ!
結構毛だらけネコ灰だらけ、
お尻のまわりはクソだらけか!へへーッ!」
寅「ケ!職工が結婚するかね、フフ…」
博とさくらもそうだったんだぞ寅。
社長、その言葉にワナワナ。
博「兄さん、いいじゃありませんか
愛し合って結ばれるんですから」
寅「フフフ…凄い凄い凄いねェ〜、へ〜、
愛し合って結ばれるか、ケッ!職工が…」
バカにしながらもどこかで
嫉妬しているんだろうね、寅って。
社長「寅さん、それじゃあ何かい?
オレんとこの工員が、人並みに愛し合ったら悪いのか?」
寅「おー、よく言いますね。
人並みに愛せるほどの
給料出してるんですか、
社長さんとこでは」キツイねえ(TT)
さくら「お兄ちゃん、もうやめて」
社長、涙目になりワナワナ震える
社長「博さん、こんなこと言ってるよ…うううう」涙…(TT)
でもな、社長、博にすぐふらないで、
その寅の言葉の意味を一人で真剣に考えることも大事だぞ(−−)
博、社長をなだめる。
おいちゃん「寅!てめえが結婚できねえからといって、
人様の結婚にケチつけるこたねえ!」
痛いとこついた!逆襲。
社長「そうだよ」
寅「なんだと!?」
おいちゃん「人様の結婚式を見るたびに、
オレたちがどんな思いでいるか、
おめえ、それ考えたことあるのか!」
社長「あるわけないよ」
寅「…」
おいちゃん「いつになったらおめえが綺麗な嫁さんの手をとって、
その入り口から幸せそうに入ってきてくれるかって…、
何べんそんな夢オレ…、そんな夢…、
ウウウ…、まったく、情けねえ…、チキショウ…」
おいちゃん向こうへ行ってしまう。
みんなおいちゃんの言葉に黙ってしまうのだった。
おばちゃん「可愛いからこその言葉だよ」
おばちゃんのこのセリフは蛇足かな…。
それは言わなくても観客も寅自身もみんな知っている。
言えば野暮にもなる…。
社長「ほんとほんと」
博、背広脱ぎながら、
博「社長着替えて、仕事…」
社長「あ、そうだ」と工場へ。
え〜〜、今日は休みじゃないのかよ ヾ(−−;)
お客さんが来る。
おばちゃん「いらっしゃいまし」
お客さん「すいません、千円のください」
おばちゃん「はい、ちょっとお待ちください」
さくら、寅のかばんを重そうに持って いつもそんなに重くないだろが ゞ(^^;)
さくら「二階で一休みしたら?」
寅「あ、ちょっと」
とかばんを開けて箱を取り出す。
寅「さくらよ」
さくら「ん?」
寅「これ、おいちゃんにな、
これ買ってきたんだ。やってくれ」
さくら、明るい表情になって
さくら「へー…、喜ぶわ、きっとー、へへ、なんだろ?」
と、匂いをかぐさくら。 こういうしぐさが妙にリアル(^^;)
さくら「フフ」
寅、おいちゃんのほうを見、そして下を向く。
夕方 源ちゃんが撞く題経寺の鐘
御前様が手を合わせ、祈り、それを見守っている。
とらや 茶の間
さきほどの箱よりなぜか長細い緑の瓶を手を取り、
眺めているおいちゃん。
このサイズの違いは明らかにスタッフのミス((^^;)
披露宴の引き出物がお膳に乗っている。
キャップをはずして香りをかぐおいちゃん。
さくら「なんだったの?」
おいちゃん「化粧水だよ」
さくらも香りをかいで
さくら「あら、いい匂い」
おいちゃん「フフ、こんなものあいつがな、
どーせインチキなんだろうけど」
と、まんざらでもない顔でまたもや
「はあ〜〜〜」と、香りをかぐ(^^;)
なんだかんだ言っても、やっぱり嬉しいんだね。
寅が下りてくる。
おばちゃん「あ、寅ちゃん、ごはんだよ」
寅、社長に頭を下げて
寅「社長、昼間はすまなかった」
社長「いいんだよいいんだよ、
なにも気にしちゃいないよそんなこと」
おばちゃん「ま、おあがりよ、
おまえの好きなおイモの煮っ転がしたくさん作ったから」
寅「オレが持っていくから」と寅が手伝う。
社長と博、イタリアワインのコルクを抜けなくて困っている。
社長「こういうの(コルク抜き)あれば、ポンといくんだけどね」
博「もう少しで…」
さくらも見ている。
寅「おいちゃん、勘弁してくれ」深々とお辞儀。
おいちゃん「いいんだいいんだ、もういいんだ」
おいちゃん、瓶取り出して
おいちゃん「これありがとう」と、上機嫌。
寅「そうかい、髭剃り後に使ってくれるか」
おいちゃん「生まれて初めてだよ、こんなの使うのー、うん」
寅「そうかい、おいちゃん、これな、ちょっとどうだい」
とラベル見せながら
寅「正真正銘、オレがいつも使っているガセネタと
違ってな、本物の舶来、アメリカ製だよ」
おいちゃん「はあー」
さくら「へえー、アメリカ製」
寅「大切に使ってくれ」
おいちゃん「使わせてもらうよ」と拝む
博「社長にもらったこのワイン、イタリー製ですよ」
寅「ほー、豪勢だねえ!」
社長「ほんもんだよ」
寅「ほー」
おばちゃん「フフフ」
ここで、おばちゃんのボケ
おばちゃん「アメリカだのイタリアだの、
まるでもう外国行ったみたいだねえ〜」
おばちゃんだねえ〜(^^)座布団一枚。
おいちゃん、瓶から液体を手に出して、手にこすり付け
顔にゴシゴシ塗っている。
寅、にこにこ笑っている。
一方、ワインを開けようとしていた二人
博と社長「あ〜〜〜!」
コルクが瓶の中に入ってしまう。
博「あー、おっこっちゃった…」
社長「あー、いいよ、このまま飲んじゃおう」
博「あー、そうですね」
博「兄さん、じゃあ、イタリー製」とコップに注ぐ、
寅「あ、そうか、おう。
社長、これは、おまえところに来たワイロかい?」
社長「ハハ、よせよ、そんな人聞きの悪い、お歳暮だよー」
博「お歳暮だって、ワイロのうちでしょ」それは微妙に違うと思うけど((^^;)
みんな「ハハハ!!」
博、寅のくれた瓶を持ち、香りをかぐ。
みんなにワインを注ぐさくら。
おいちゃん「できたな、…じゃ」
社長「オレのもな」とコップをもらう。
それにしても、タコ社長はいつも座敷に上がらないで
上がり口で座っているんだね。
なんだか可哀想。
ま、時々、正月などはしっかり上がりこんで入るからいいか。
みんなで乾杯の準備。
おいちゃん「寅」と手を差し出し、
寅「ん?」
おいちゃん「お帰り」
みんな「お帰りなさい」
寅、恐縮して…
寅「こりゃどうも…ただいま」
と深々と頭を下げて乾杯。
社長やおばちゃんたちコルクが口に入って飲みづらそう(^^;)
社長「ぺッぺッ、ウエー…、うまいかい?」
さくら「うん…それなりにね…」とコルクの破片を出す。
博、寅がおいちゃんにあげた瓶の英語を読んで
博「あれー??」
寅「ん?」
博「兄さん、これ、頭につけるやつですよー」
寅「…!ほんとうか?」
さくら、おいちゃんを見て
さくら「おいちゃん、だいじょうぶ?」
おいちゃん、にこにこ笑って
おいちゃん「どっちだって毛が生えてんだ、
おんなじようなもんさ。ハハハ」
座布団一枚!(^^)
みんな「ハハハ!!」と大笑い。
満男もバカ笑い。
寅、満男に向かって
寅「満男、可笑しいか?」
満男「可笑しい」(^^)
寅「うん…、いいか、寅おじちゃんはな、
英語の勉強をちゃんとしなかったからこういう間違いをおこした」
社長「いいこと言うなあ、寅さん」
寅「おじさんみたいになりたくなかったら、
ちゃんと勉強しろよ、わかったか」
できなかった寅が偉そうに言うことではない。
だから説得力があるようなないような…(^^;)
満男「うん」
博「そうだぞ」
満男「うん」
おいちゃん「寅じゃなきゃ言えねえセリフだなあ」
おばちゃん「そうねえ」
さくら「でも、近頃少し成績上がったのよ」
寅「あ、そうかそらえらいよおまえ、なあ」と、頭をなでる。
博「作文どうした?三重丸もらったやつ」
おばちゃん「そうそう」
寅「見せろ見せろ」と、満男に催促。
博、ランドセルから取り出す。
社長「それ、聞かなくちゃ」
寅「よしよしよしよし、うんうん」
と作文用紙を広げ、読み始める。
寅「『ぼくのお母さん』
ほおー、なんだいオレよりこれは字がうまいじゃないか」
と、満男の頭を触る寅。
みんな「ハハハ」
おばちゃん「そうなんだよ、フフフ」
さくら「おかしなこと書いてあるのよ、フフフ」
満男「読んじゃダメ!」
と、なぜか叫んで必死で取り返そうとするが、
寅「いい、いいって」
と、相手にしない。
おいちゃん「寅、ちょっと声だして読んでみろ」
寅「よしよしよしよし、んん!!」
『夕焼け小焼け』で使われた、
龍野のテーマ曲が流れ始める。
寅「『ぼくのお母さんとお父さんは恋愛結婚だ』
満男、なんとか作文を奪い取ろうとするが、寅に阻まれる(^^;)
寅「なるほどねえー、うん、なるほどなるほど」
と、言いながら、
必死で読むのを止めようとする満男の
頭を押さえる寅。
寅「だから、お母さんは
お父さんのことを『博さん』と呼んでいる」
みんな「ハハハ」
寅「ん、社長、よく見てるな」
社長「 たいしたもんだ」
照れている博とさくら。
寅「んん、『お父さんはお母さんのことを『おい、さくら』と、
ちょっと威張って言う』」
またまた照れまくる博とさくら。(^^)
博「バカ、フフ…」
と照れている。
社長「ちゃんと見ている」
寅「『でも本当は、お父さんは
お母さんをとても大事にしている』」いいねえ〜…
おいちゃん「う〜〜ん、見てるねェ〜」
みんな納得(^^)
社長「ほんとほんと」
ちなみに脚本第2稿では、もうひとつ書いてあって↓
おばちゃん「それから?」
寅「お母さんは歌が好きでお風呂の中で、よく流行歌を歌っている」
どっと笑う一同。
寅「ちゃんと見られてんだぞさくら」
という会話が入る。
さくらは風呂の中でよく鼻歌を歌っているのだろう。
あ〜見たかったこのシーン。
しかし本編ではカット。
本編に戻ろう。
さくら、ワインを社長に注ごうとするが、
社長にとってはこういうワインはまずいので
社長は手をふって遠慮する。
おばちゃん「寅ちゃんに帰ってきてもらってよかったねえ〜、
こんなに幸せになれて」
おいちゃん「あ〜、よかったよかったぁ」
さくら「ね、お兄ちゃん、まだあるんでしょ?」
寅「あるある、
…『お母さんが、時々悲しい顔をする時がある。
それは、おじさんが帰ってきた時だ』」
満男心配そう…
寅「おじさんさんってだれだ?…」
あ、オレか…」
いきなり不穏な空気が…
みんな、少し不安そう(^^;)
満男、そそくさと襖の裏に避難 ((((((^^;)
寅「おじさんの名前は寅さんと言って
お母さんのたった一人のお兄さんだけど、
ちらっと、襖の満男を睨む寅(^^;)
…いつも恋愛ばかりしていて、
そのたんびにふられるから、
今でもお嫁さんがいないか…」
しだいに読み方が超ゾンザイになって
声を震わせていく寅。
読む声がとがってくるのが誰の耳にもわかるようになる。
寅、そうとう怒っている。
おいちゃん「うん、ちゃんと見てる」と、大いに納得。
座布団一枚(^^;)
おいちゃんを睨む寅。
社長「それから? 声出して読んでくれよ」
さくらも博も真っ青…
寅「近所の人が」と社長を睨む。
上手い上手い(^^;)
社長「ほう」
寅「『悪口を言うと、』」
社長「ん」
寅「『お母さんはとても悲しそうな顔をする』」
さくら、いたたまれなくなって、作り笑いしながら
さくら「お兄ちゃん、もういいんじゃない?」
博「うそばっかり書きやがって、もうやめましょう」
真実のみ(^^)
と、作文用紙をとろうとするが…
寅「いいよ」と博の手を払いのけ、読み続ける寅。
寅「『ぼくは、おじさんが、はやくお嫁さんをもらって、
お母さんを安心させて欲しいと思っている』」
寅、不気味にニコニコ笑って一同を見渡し、
急にブスッと表情が変わる(((−−;)
みんな、下を向いてしまう。
不気味な静寂が続く(^^;)
おばちゃん顔を合わせないようにそそくさ((^^;)
その静寂を破るように
社長「子供でも…ちゃんと見てるんだねえ…」あちゃ(><;)
ビビる博とさくら。
寅「そう、ちゃーんと見てますよ」
さくら「さあ…、ごはんにしよう.。。」
博「オレちょっとビール…」と、逃げようとする博の腕を掴み、
寅「ちょ、ちょ、この赤い字は誰が書いたの?」
博声を出して読む
博「『とてもよく書けました。
ほんとうに困ったおじさんね』」
Σ(|||▽||| )
音読するなよ博、駄目押し…(TT)
寅「そう」
博「先生です…」
寅「ほぉーーう、じゃなにか満男の教師は
この作文がいいって褒めてるわけか」
さくら「お兄ちゃん、もうその話はいいから、ごはんにしよ」
と、台所に行きかける。
寅「さくら」
止まるさくら。
寅「おまえはどう思ってるんだよ、これ、ええ?」
座るさくら
寅「満男は、このうちの恥をさらけ出してるんだぞ!
おまえ、それで平気か!」
さくら「別に恥ってことはないでしょー」
寅「恥だよ!これは絶対なる恥!」
バカ(−−;)
おいちゃん深く頷いて
おいちゃん「そのとおりだ…」
寅「そうだろ、おいちゃん!」と力む ダメだこりゃ…(−−;)
おいちゃん「そうだ…」
寅「ほれみろ!」
おいちゃん「お前はとらやの恥だ…
はああ…」(TT)
寅も下向いて
寅「はぁぁ…」
おいちゃん、その顔見て、情けなく思い
おいちゃん「ばっか…」と、小さな声で嘆く。
寅、ようやく恥の本質が自分のことだと気づいて
寅「え?……」
寅「…!…ほっ...!」
渥美さん、天才的な『間』
社長、せせら笑う。
社長「ハハハハハハ!」
きつい眼で社長を見る寅。
社長「ご本人がそういってりゃ世話ねえや!
ハハハ!バカだね、ハハハ」
寅、怒りと共に社長の背後から、
イタリアワインを社長の頭にぶっ掛ける
ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ
寅「イタリアのワインで
シャンプーしてやらあ!このヤロ!」
太宰さんご苦労様です(TT)
社長「わああああああ!っとああああ!!
なにしゃがんだこのやろ!!」
寅「このヤロウ!」
と、社長に座布団ぶつけて
寅「なにがイタリアのワインだ!
中小企業の恥さらしが!」
さくら「お願い!もうやめてちょうだい!」
社長「わあああ!なにしゃがんだ!!」
博、社長をかばいながら
博「まあまあ」
さくら「お兄ちゃん、これじゃあ、ほんとに恥さらしよ」
おばちゃん「見てごらんよ!!
満男ちゃんが泣いてるよ!!」
と指を指す。
仏間で机にうつ伏せになって泣いている満男。
冷静になりつつも、怒っている寅。
博「兄さん、満男の作文で
気に触ったことがあったら謝ります」
おいちゃん「博さん、謝ることはねえ、
謝るとすれば寅のほうだ」そうかな…(−−)
おいちゃん「そうだろ、寅」
さくら「お兄ちゃん、そのとおりよ」
博「満男、もう泣くな」
寅は、土間に下りて、
かばんと衣服を持ち出て行こうとする。
さくら「お兄ちゃん」
と、寅を追いかける。
店先で
メインテーマが静かに流れる。
さくら「久しぶりで帰ってきたのに、
晩御飯も食べないで出て行っちゃう
なんて、そんなことってある?」
しょっちゅうある…
寅、さくらに
寅「満男にな、
寅おじさんが悪かったってそう言っとけ…」
スッと出て行く寅。
店先で寅を見送っているさくら。
店の方に戻って深くため息…。
さくら「…はあ…」
満男を慰めているおいちゃん。
おばちゃん台所から
おばちゃん「さくらちゃん、ご飯にしよう」
さくら下を向いたまま
さくら「うん…」
今回は久しぶりに寅を囲んで、稀に見る
幸せな団欒のひと時があったのに残念だった。
そういう意味では見事なコントラストだった(^^;)
この第23作の中で、
後半の川千家披露宴のシーンと並んで
私が最も好きなのがこの『満男の作文騒動』
北海道 白老町
支笏湖の南、
北海道白老町字虎杖浜の
虎杖浜(こじょうはま)神社で
ネクタイのバイをする寅。
旗がたなびいている
虎杖浜(こじょうはま)神社
昭和四十四年 氏子一同
寅の声「どう、手にとって見てやって、
ハイ!手触りがいい!、ね」
寅「手に触ってごらん、似合うだろ、ほら、ね!」
おじさんの胸に当てる
お客さんたち「ほー、いいわあ」
寅、違うおじさんに
寅「ほら!似合うだろほら、ね」
お客さんたち「あー、似合う、いいわあ」
寅「さあ!北海道のみなさん!
開拓時代のご苦労お察し申し上げます、
さて、わたくしが、ここで取りいだしましたる
イタリアの高級ネクタイ!
待ってくださいよ。
今新聞に出ている偽もんじゃない!
大きな声じゃ言えないけどね、これは密輸品!!
ね!だから急いで売らなきゃならない!
角は一流デパートの
赤木屋、白木屋、黒木屋で、
紅白粉つけたお姉ちゃんから、
くださいちょうだいで買ってごらん、
一万から五千円のしろもんだよ。
うちはそんなにくれとは言わない!
もう安く売っちゃおう!ね、どう、お兄さん、ほら、
アランドロンそっくりだ!ほら」
お客さんたち爆笑「ハハハ」
海岸で遊ぶ子供たち。
そんな中、ひとみさんと登別市、
『大湯沼』の畔で出会う。
北海道登別市地獄谷温泉 大湯沼
旅の音楽が流れる
インドネシアの名曲『ブンガワン.ソロ』のアレンジのような出だし。
大湯沼は、地獄谷の北方にあって、
噴煙を吐いている日和山の南麓にできた爆裂火口で、
灰黒色に濁った湯をたたえている。
水面は40℃〜50℃であるが、深いところは130℃の高温。
周囲は1`、深さ22bの大規模な湯の沼は、世界的にも類が無く、
学術的にも貴重なものといわれている。
以前はこの湯沼から硫黄がさかんに採取されていたが、
現在は採取されていない。
ひとみさん、レンタカーから降りて、寅に近づく。
ひとみ「こんにちは」
石を湯気の立ち込める沼に投げている寅。
寅、振り向いて、
寅「よう」
ひとみ「何してんの?」
普通声かけないって、ダボシャツ、お守り、腹巻の男に ヾ((^^;)
寅「うん、…景色見てんだい」
ひとみ「ふーん、わあ、不思議なとこねえ。
なんていうとこ、ここ?」
寅「北海道ってとこ」
ひとみ「それぐらいわかってるわよー」と笑いながら車に戻る。
ひとみさん、振り返って
ひとみ「ねえ、もしよかったら乗っていきません?
いいところまで送っていくわよ」
ダボシャツ腹巻男に普通言わないって ヾ(^^;)
寅「ああ、ありがとう、
オレはそういう狭いところ苦手なんだよ」
第30作「花も嵐も寅次郎」でも三郎青年が
一緒に乗って帰ることを勧めるのだが
「くたびれるからなあ…、車の旅は」って寅は嫌がっていた。
ひとみ「それじゃあ、歩いていくの?」
寅「ああ」
ひとみ「ふーん」
車に乗り込もうとするひとみ。
寅立ち上がって、遠くから
寅「娘さん」
ひとみ「ん?」
寅「あんた、まだ嫁入り前だろ」
ひとみ「そうよ」
寅「若い娘がな、旅の行きずりの男を
そんな気安く誘っちゃいけないよ。
もし、悪い男だったらどうするんだい。そうだろ」んだんだ。
ひとみ、ちょっと頷いて車に乗る。
旅のテーマが流れて
ひとみ「おじさん変わってるのねぇ…」
寅「そうかい?」
ちょっと手をあげるひとみさん。
寅も手をあげて応える。
後ろに見える日和山
大気沼
柴又参道
郵便配達のスクーターが走る。
とらや
台所
昼ごはんを食べている博。
小声でさくらが相談している。
博「天体望遠鏡?」
さくら「うん…」
博「冗談じゃないよ」
満男が欲しがっているのだろう。
博、ご飯茶碗にお茶を要求しながら
博「まだ早いよ、そんなものは」
さくら「でもねえ…」
一方、郵便配達員が店先で
郵便屋「とらやさん」
おいちゃん「はい」
郵便屋「小包です」
おいちゃん「あ、どうも、ごくろうさん」
郵便屋「50円不足なんですけど」
おいちゃん「え?」
と、戸惑いながら、50円を支払い
おいちゃん「どうもすいませんでしたね」
おいちゃん、台所にやって来て
おいちゃん「おい、満男にこんなもの送ってきたぞ−」
さくら「満男に??」
と言って、小包を手に取り
さくら「誰からだろう?
『北海道にて…車寅次郎』
お兄ちゃんからよ!」
博「北海道にいるのか」
さくら「うん」
おいちゃん「やっぱり気にしてるんだなあ、
こんなもの送ってきてさあー」
おいちゃん「なんだいこれ??」
博「鉛筆ですねぇ」
おいちゃん「ふーん」
あるある、観光地に大きなエンピツ。
とらやの店先で若いカップルが立っている。
中村君たち新婚旅行から戻って来たのだ。
中村「ごめんください」
さくら「あら、中村さん」
と店に出て行く。
中村「こんちは」と照れている。
博「ようー!!帰ってきたのか!」
さくら「お帰りなさい」
規子さん「ただいま」
中村「どうも、結婚式の時はいろいろ」と、お辞儀。
さくら「いいえ」とお辞儀。
規子さんお辞儀。
博「いいえ、こちらこそ」とお辞儀。
さくら「よかった?能登半島」
規子さん「はい」
さくら「あ、おかけなさい、今、お茶でもね」
博「ま、どうぞどうぞ」
数日後
北海道 道道2号線 オロフレ峠から登別の路線
道道2号線の登別からオロフレ峠を越えて
壮瞥町弁景の道道2号線と道道327号線の交差点付近
洞爺湖の中ノ島が見える。
左側の山は有珠山。
この場所は2015年、
いつもお世話になっている越後の滝沢さんからのメールによってわかりました。ありがとうございます。
滝沢さんの寅さんに関するサイト http://www.ac.auone-net.jp/~takizawa/torajiro31.html
カッコウが鳴いている。
車が止まってしまって困っているひとみさん。
そこへ、若い男が車でやって来て
若い男「どうしました?」
ひとみ「わかんないの。なんかエンジン止まっちゃって…」
若い男「ちょっと見ましょうか」
ひとみ「すいません」
エンジンをかけてみる。
若い男「これ、ガス欠ですよ」
ひとみ「あー!そうか」
若い男「ハハハ、そうだ、僕の友達がね、
その先でガソリンスタンドやってんですよ。
そこの若い衆に取りにこさせましょうか。
それまであんたはどっかでお茶でも飲んでたらいいですよ」
カメラ、遠くから引いて二人の様子を点描で撮っている。
ひとみ「わー!助かっちゃったすいません」
若い男「いいえ、ハハ」
若い男の車に乗るひとみさん。
遠くでカッコーの鳴き声。
旅のテーマ曲が流れる。
支笏湖湖畔の美笛キャンプ場近く
ぼんやり湖を眺めている寅。
後ろをあの若い男の車が通り過ぎていく。
寅のバックにそびえる恵庭岳(えにわだけ)
アイヌ語で「エ・エン・イワ」『頭のとがった岩山』の名を持つ恵庭岳.
夏はキャンプでにぎわう美笛キャンプ場
草むらで停まる車。
キャーという女性の声
振り向く寅。
もう一度
キャー
若い男「なんだよ、さっき親切にしてあげたじゃないか、
ね、だから…」
ひとみ「キャーやめて!」
若い男「大丈夫大丈夫、誰もいないって、初めてじゃないんでしょ」
ひとみ「いたた!!」
若い男「どうしたの?」
ひとみ「ね、言うこと聞くから、乱暴しないで」と半泣き。
若い男「ほんと」
ひとみ「洋服が破れちゃうから」
若い男「ほんとうにいいんだね、ありがと…」
と、ズボンのチャックをはずしはじめる男。
若い男、なかなかチャックが下がらない。((((^^;)
若い男「何だこのチャック!ちきしょう」
その一瞬の隙を見て、ドアを開け、逃げ出すひとみさん。
若い男「ちょっと、ねえ!ちょっと!!」
後ろで様子を見にやって来た寅に駆け寄るひとみさん。
若い男「ちょっと!!」
寅を見て、驚く男。
若い男「なんだいあんた!」
寅、ニコッと笑って
寅「なんだい、兄さん、女くどくんだったら、
もう少しうまくやったらどうだい」
いいセリフだ。
若い男サングラスを取って、
若い男「何を!」
棒切れを取って、
若い男「このヤロ!!やああああ!!」
と殴りかかるが、ズボンがずれ落ちて
若い男「ああああああ!!」とわめいて地面に倒れる。
パンツ丸見え状態(((TT)
湯原さん…リハーサル大変だったでしょう(TT)
雄大な風不死岳(ふっぷしだけ)とのコントラストが…(TT)
同じアングルの風不死岳
グーグルアースでも同じ位置からチェック(^^)
若い男「あいたた…あいッ…」
寅「どうしたい!二枚目!」
若い男「待て!このヤロ、チクショウ!!」
と、ズボンをあげて、
急いでチャックを上げようとしたその時に、
若い男「あ!!!!」と急所をはさんでしまう((((TT)
動かそうとして余計にはさみ
若い男「あいたたた!!!!!あた…くううう」
と苦しみのたうちまわる。
ひとみさん、余裕が出てきて
近寄り
ひとみ「どうしたの?だいじょうぶ??」
ひとみさんお人よし(^^;)
若い男「くうう…はあ…はさんじゃった!」
ひとみさんを見ながら
若い男「おまえのせいだぞ!バカヤロ!」
と逃げていく。
若い男「あいて…あ!!血が出ちゃった!!あいててて」
と半泣きで車に乗る。
車で去り際に捨て台詞
若い男「覚えてろ!チクショウ!!」
ち 55
ま 12−30
遊覧船のスピーカーの音
「今から一万年前だと言われています…」
寅「怪我しなかったか」
ひとみ「うん」
ひとみさん、寅に見覚えがある。
ひとみ「あらあ!どっかで見た人だと思ったら、
こないだ山で会った人!」
寅「なあ、オレ言っただろ、
女の一人旅はあぶねえから気をつけろって、え」
ひとみ「ん…」
ひとみさんはしばらく寅と一緒にクルーズをする。
支笏湖
日本有数のカルデラ湖で、
恵庭岳・紋別岳・樽前山・風不死岳が湖の周辺にそびえている。
日本最北の不凍湖、
最も深いところで360m、秋田県田沢湖に次いで2番目であり、
日本一の平均深度260mを誇っている。
支笏湖クルージング 『ちどり』
夕日に当たる逆光の恵庭岳
寅「お姉ちゃんはウチはどこだ?」
ひとみ「東京」
寅「ほう、オレも東京だよ、葛飾柴又」
ひとみ「ふーん、葛飾」
ひとみ「私は田園調布」
寅「ほう、田園地帯か。おとっちゃん百姓?」そうくるか(^^;)
ひとみさん笑いながら、
ひとみ「違うけど、フフ」
寅「しかし、そうやって一人旅に出たんじゃ、家は心配してるぞ、おい
えー、今晩宿はどこだ?予約は」
ひとみ「わかんない」
寅「え?予約もしてねえのか?じゃあ、オレ探してやろうか」
ひとみさん、ため息ついて
ひとみ「私困っちゃったなー…」
寅「何?」
ひとみ「着替えなんか入ったトランク、
あの車の中に置いて来ちゃったもの」
寅「そんなこと気にするない。くよくよするなよ、え、
体が無事なら何よりじゃねえか。
貞操にはかえられないぞ」
寅「パンツの一枚や二枚や……三枚…」(((^^;)
この『間』が面白い。
ひとみさん笑う。
寅「へへへへ」と笑う。
夜 支笏湖 丸駒温泉旅館 (旧 翠明閣)
夕闇迫る恵庭岳が見える。
フロント
貼り紙:フロントへの御用は午後十時までにお申し付けください。
なんと、あの強姦をたくらんだ若い男は、
この旅館の若旦那だった。
若旦那「う〜〜〜しみるなあ…」と、さっきの応急手当(((TT)
(女中さんがお馴染み谷よしのさん)
女中「若旦那」
ぱっと隠す若旦那。
女中「お二人連れですけど、一人一部屋欲しいんですって」
若旦那「ダメダメ、一部屋だけ」
女中さん寅たちに伝えに行く。
女中さん戻ってきて
女中「なんとか二部屋都合してくれ言っとりますが」
若旦那、そっと後ろ向きに立ち上がりながら
若旦那「ダメだって言ってるでしょう」
女中「何やってんの??」座布団一枚(^^;)
若旦那「なんでもないよ、うるさいね」
谷さんがこの映画シリーズでギャグに加わるのは
これが最初で最後(^^)
ヨタヨタ歩いてきて
若旦那「今日は混んでますから…アイタ!!!…無理ですね、
一人一部屋は……」
若旦那寅たちを見て仰天。
ひとみさん、きつい目で若旦那を睨んでいる。
寅、ちょっと冷静ににやつきながら
寅「お、そうか…部屋は無いかァ」
若旦那弱弱しく
若旦那「はい…」
壁に『美笛峠』のポスター。
ひとみ「お姉さん警察どこ!?」
女中「なにをするんですか?」わかんないよねえ(^^;)
ひとみ「署長にあって私全部話す、今日あったこと」と怒っている。
寅「うん、言ったほうがいい、言ったほうがいい」(^^;)
ひとみ「ね!許せない」と、出て行こうとする。
若旦那、必死で笑顔ふりまいて
若旦那「ちょ、ちょっと待ってください、
あのー、とりあえず上がってください、
部屋のほうなんとかしますから!ね」
寅「そんなに言うんだったらさ、ちょっと泊まるか?」
若旦那「お願いします!」
若旦那「どうぞ上がってください」
寅「あのー、あんまり予算ないんだけど」とぼそぼそ言う。
若旦那「結構です、いくらでも結構です、
ハハ…。ハーイ、松の間と竹の間ご案内よ!」と愛想笑い(TT)
女中さん、何か言おうとするが、
若旦那、寅のカバン持ちながら
若旦那「いいんだよ、オレがなんとかするから」
女中「でも…」
若旦那「お前うるさいんだよ、ガタガタガタガタ」
また急所に痛みが
若旦那「う!!!!!!!」
苦しみのた打ち回る若旦那だった(TT)
その様子をじ〜〜っと
見ている女中の谷よしのさん。
谷さんのこの『間』が最高!
寅たちに弱みを握られた若旦那は
このあとも寅に散々付きまとわれることになる。
寅の部屋
食事をして
湖を見ながら、あくびをするひとみさん。
寅「お姉ちゃん、もう眠くなったか、
フフフ、いろんなことあったからな」
ひとみ「フフフ」
ひとみ「ねえ、明日寅さんどこ行くの?」
酒を注ぎながら
寅「そうだな、ま、日のあるうちに函館へ出て、
それからま、3、4日バイをして、旭川かな…。
次の日は、気の向くまま、風の吹くままよ」」
ひとみ「いいなあ、そんなふうに気ままに暮らせたら〜」
ひとみさん寅は特別です。
普通テキヤは商品買取で大変なんです。あいさつ回りも大変。
シマもほとんど決まっているので寅のように気ままな旅を続けながら
バイをしているテキヤは実は一人もいません。
寅「へへ…ひとみちゃんって言ったか」
ひとみ「うん」
寅「あんたどうすんだい?東京に帰るの?」
ひとみ「考えてんのよ〜…」
座って
ひとみ「やっぱり、東京帰ろうかな…」
寅「なんか悩み事でもあるのか?一人旅なんかして」
ひとみ「私ね、もうすぐ結婚するの…」
寅「ああ…、!!…え?
なんだい、それじゃ幸せなんじゃねえか!」
寅「そうか、ささ、さ、じゃあま、まずお祝いのもう一杯だ」
と酒をついでやる寅。
寅「お祝いだよ、お祝いだよ、えー、そうか、結婚するのか」
酒注いで、
寅「へえー、相手の男はいい男か」
ちょっと小声で
ひとみ「ええ、まあ」
寅「うん」
寅「ひとみちゃんのこと優しくしてくれるかい?」
小声で
ひとみ「わりとね」
寅「…? まんだ、結婚するのに嬉しくないみたいだなあ…」
ひとみ「だから困ってんの。
ほんとはもっと嬉しくなけりゃいけないんだろうけどね、
どうしてもそういう気になれないのよね、一人で北海道でも旅行したら
少しは気分が晴れるかな…っと思って飛び出したんだけどね。
でもおんなじね。やっぱり諦めるしかないみたいね」
寅「んー…」
寅「ひとみちゃん、バチが当たるよ、そんな口きいちゃ…」
ひとみ「どうして?」
と、好きな人と添い遂げなかった昔の男女の悲しい物語をして諭すのだった。
寅「世の中にはね、病気のおとっつさんを助けるために
親子ほども年の違う、金持ちのスケベじじいの
嫁になる娘だっているんだよ」
今の日本じゃあまりみかけないかも((^^;)
ひとみ「…」
寅「その娘が、今のひとみちゃんの言葉聞いたら
どんな気持ちになると思う?」
ひとみのテーマが流れる。
ひとみ「それ、どういうこと?」
寅「たとえばだ、冬のさむ〜い晩、雪が音も無く降っている。
ピュー…、ね、
その貧しいアバラ家には、
すでにそのスケベ爺の男から迎えが来ている。」
頷くひとみさん。
寅「『それではおとっつさん私は参ります』
病気のおとっさん、娘の手を取って、
『娘よすまねえなあ、オレの病気のためにおめえを
あんないやなヤツの処に行かせて…』
『何を言うのおとっつさん、一日も早く元気になってね、お薬代を送るから』
その時、表をパタパタパタパタパタパタパタパタ、息せき切った人の足音。
ガラッ!!と開いた。
誰だと思う?」
ひとみ「いや、知らない」と首をふる。
そらそうだ(^^;)
寅「幼馴染の茂作.『およねちゃん!おめえなんであんないやなヤツのところ
いくだ?』『許して、茂作さん、たとえこの体はあの男のものになったとしても、
心はいつまでも茂作さん、あなたのものよ』『およねちゃーん』
表はしんしんと降り積もる雪、あまりにも悲しいその光景に、
迎えに来たその男でさえ、ツッ(鼻をすする)ともらい泣きをしていたなあ…」
この内容は第22作「噂の寅次郎」のオープニングの夢のアレンジ版。
ひとみ「それからどうしたの?およねさん」
寅「およねかい?」
ひとみ「うん」
寅「およねちゃんはねえ、
その雪の夜、茂作に誓ったように、
一生涯、茂作のことだけを想い続けてくらしたのさ…」
寅がふと見るとひとみさんがしんみり涙ぐんでいる。
寅「…!…どうした?なんかオレの言ったこと気に触ったか?」
ひとみさん、首をふりながら、涙ぐみ
ひとみ「およねさんて、幸せだなあって思ったの。
それだけ好きな人がいて…」
寅「…」
不幸せなおよねのことを幸せだなんて…
何がこのひとみさんにあったのだろうかと、思い、
不思議がっている寅。
ひとみ「私、寝る」
寅「そうかい、やっぱり東京に帰るかい」
ひとみ「うん」
ひとみ「じゃ、おやすみなさい」とお辞儀。
寅「あ、おやすみ」
寅、追いかけて
寅「あ、あのう、
もし気分が晴れねえようなことがあったら、
葛飾柴又帝釈天の参道にな」
ひとみ「うん」
寅「とらや、っていう団子屋があるんだよ。
そこに訪ねてみな、オレの身内がいて、
きっと相談相手になってくれるから」
ひとみさん、ちょっと安心して
ひとみ「どうもありがとう」
寅「ああ」
この「何かあったらとらやに来い」は
寅のマドンナに対するいつもの発言だが、
これらの発言によって本当に人が訪ねてきて、
とらやの人たちがどれだけの苦労や世話をいままでしてきたか…、
思い出すだけでも可哀想だ。
ドアを開けるひとみさん。
寅「オレの言うことなんか、気にすんなよ、
きっと幸せになれるから、な」
と、最後に『白魔術』をかける寅(^^)
こういうところは人生の玄人なのだ。
頷きながら
ひとみ「私、寅さんに会ってよかった」
と、ドアを閉める。
寅、そんなことを言われてニヤニヤしていると。
ドアをノックする音。寅の部屋は107号室
コンコン
寅、ひとみさんだと思い、甘い声で
寅「はいはい、忘れ物?」
なんと、あの若旦那が入ってきて
若旦那「あのー、お布団は向こうの方に
二つ並べて用意してございますから」
と、ニヤニヤ。
若旦那「もしよろしかったら、そろそろどうぞ」と寅の腕をつついて
若旦那「フフフ」
寅「バカヤロウ!!!」と怒鳴る。
若旦那「はあ!!??」
と、ドアにへばりつく(((^^;)
どこまでもスケベな若旦那でした(−−;)
この湯原さんと渥美さんのミニコントは
脚本第2稿にはない。
現場で作り上げたものであろう。
翌朝 丸駒旅館前
怪我も癒えた若旦那がタクシーで去っていくお客を見送っている。
若旦那「どうもありがとうございましたー」
ほうきでそうじする若旦那。
朝風呂に入ったあとの寅が、ふらふらやって来る。
若旦那「あ、おはようございます!」
寅「昨日の娘どういたい?」
若旦那「は、わたくし、今朝峠まで行って車取ってきまして、
それでさきほどお発ちになりました」
寅「ほう」
若旦那、結構親切なんだね。
若旦那「はい。あ、車さんにくれぐれもよろしくとおっしゃってましたよ」
寅「あ、そうか、そりゃよかった」
若旦那「はい」
寅「さて、オレは」と伸びをする。
若旦那、顔を明るくして振り返り
若旦那「お帰りでございますか」
寅「いや、ここはとても気分いいからね、
2、3日ゆっくり滞在していこうと思って」
若旦那「いや、あの…今晩、団体さんが入るんでこざいます…」
寅「あそ、ふーん」
若旦那「は、はい」
寅「警察どっち?」
若旦那「は?」
寅「いや、オレ暇だからね」
若旦那「は」
寅「署長に会ってさ、昨日見た暴行未遂の話、
ちょっとしようと思って…」
若旦那「いや、いや、あの!」
寅遠く指差して
寅「車呼んでくれや」
若旦那「車って、あの、結構でございます。
一週間でも10日でも
結構でございますからごゆっくりどうぞ!」
寅ニッコニコで
寅「あは、そう!悪いな、ハハハ」
若旦那「いえ、とんでもないっす、はい」
寅、くるっと振り向いて
若旦那「一週間でも十日でもごゆっくりどうぞ、ハハ…」あああ…(TT)
寅「迷惑かけてんじゃない?フフ」
キーワード(^^)
若旦那「いやいやいや、そんな、ハハ」
寅「ハハハ、ハハハ」
と館に入っていく。
若旦那「ごゆっくり!」
寅「うん」
若旦那、寅が入ったあとで、怒って竹箒を叩きつける。
箒が折れて、
若旦那ブスッ
宿の主人の暴行未遂を言う言わないで、
何日も無理やりタダで宿泊するのは、
ギャグのシーンとは言え、寅のキャラではないと思うが、
監督はそのあたりどう思っているのだろうか…。
寅は、その性格や気質を気に入られて、
人の情けや親切で寝泊りさせてもらえる…ってキャラなんだけどね。
車に乗っているひとみさん。
ひとみ「結婚か…」
数週間後…
映像にかぶるように
メンデルスゾーンの結婚行進曲が流れる。
東京 ホテルニューオータニ
確かここでさくらの見合いやったよね(第1作)。
メンデルスゾーンの結婚行進曲 -
劇音楽『夏の夜の夢』の中の1曲。
あらゆる結婚式で頻繁に使われている名曲。
ひとみさんは、実はこの作品で2度もこの曲で結婚式を行う(^^;)
盛大に邦男とひとみさんの結婚式披露宴が繰り広げされている。
仲人はなんと松村おいちゃん(^^)
式場の係員は桜井センリさん。
仲人「小柳、入江ご両家の皆様、ならびにご親族の皆様、
本日大安吉日の良き日にかくも盛大なる華燭の宴を
催されることを心からお祝い申し上げます。
さて、小柳邦男君ひとみさんのお二人は
先ほど当ホテルの結婚式場において、厳かに結婚の契りを
結ばれました。ここに謹んでご報告いたします」
こういう役させると実に上手いね〜、松村さん(^^)
おそるおそる新郎を見るひとみさん。
沈んでいくひとみさん。
何かを迷っているような表情。
ウエディングケーキのカットを行う二人。
小柳邦男はにっこり笑っているが、
ひとみさんはかなり滅入っている。
お色直しの時間
化粧部屋に入ってくるひとみさん。
おばさん、ひとみさんと一緒に入ってこられて
おばさん「よろしくお願いいたします」
みんなで、ひとみさんのカツラを取り、化粧を落とす。
おばさん「これ何分くらいでございます?」
担当者「15分でございます」
おばさん「あ、そう、まあー、今日は暑いですね〜」
担当女性たち「もう、汗びっしょりおかきになって」
と、テキパキ動いている。
おばさん「ひとみちゃん、おしっこ大丈夫?」
ひとみさん、もうかなり不安定な精神状態。
披露宴会場
仲人役の松村おいちゃん、
細かい芝居をちょろちょろ後ろでやっている(^^;)
スピーチ
出席者「わたくしどもの会社は、インテリア関係の仕事をしておりますが、
邦男さんは実に豊かなその方面の才能をお持ちでございます。
しかも私どもが常に関心いたしますのは、
会長のご子息であることをつめの垢ほども鼻にかけない…」
化粧部屋
おばさん「お時間大丈夫?」
担当者「はい、大丈夫ですよ」
担当者B「ドレスこちらです」
おばさん「まあ、これ?、うん、ふーん」と眺めている。
なにか思いつめているひとみさん。
ひとみさんの中でなにかが
はじけそうになっている。
披露宴会場
イタリアの有名な歌曲『カーロ・ミオ・ベン』が歌われている。
ジョルダーニ作曲 カロ・ミオ・ベン
オペラ歌手「♪Caro mio ben credi miatmen Senza di te Languisce il cor…」
『カーロ・ミオ・ベン』(Caro mio ben )
18世紀後半、トンマーゾ・ジョルダーニ作曲の歌曲。
Caro mio benとは「いとしい女(ひと)よ」という意味。
愛する女性に対して自分のことを思ってくれるように願っている歌である。
愛しい人よ
どうか僕を信じてほしい
君がいないと僕の心は
すっかり沈んでしまう。
というような内容。
原曲は弦楽4部と独唱からなる。
1782年以前にイギリスで作曲・出版された。
Caro mio ben, credimi almen,
senza di te languisce il cor,
caro mio ben, senza, di te languisce il cor.
Il tuo fedel sospira ognor.
Cessa, crudel, tanto rigor!
cessa, crudel, tanto rigor, tanto rigor!
Caro mio ben, credimi almen,
senza di te languisce il cor.
caro mio ben, credimi almen,
senze di te languisce il cor.
一方…ひとみさんは
化粧部屋
しかし、ひとみさんは、
この期に及んでも浮かない顔でまだ迷っている。
ウエディングドレスを全て身につけたひとみさん。
おばさん「いかがですか?」
と、準備が整ったかどうかを訊ねる。
担当者「はい、できました」
おばさん「きれい…いいわねえ、ドレスもまた…」
担当者「ちょっと顔色が悪いようなので頬紅をさしますね」
おばさん「お時間はどう?」
担当者「はい、迎えに来ましたらすぐに写真室の方へ」
おばさん「まあ、写真もあったの…、それは大変」
ひとみさんの中で何かが弾ける。
よろよろと外に出て行くひとみさん。
おばさん「あら?どこに行くの??」
ひとみ「ちょっと、お手洗い行かなくちゃ…」
おばさん追いかけてきて
おばさん「まあ、しょうがないわね今頃」
どんどん、歩いていくひとみさん。
おばさん追いかけながら
おばさん「あなた…、いったいどうしたの…」
小走りに橋って逃げるひとみさん。
おばさん「ひとみさん!ひとみさん、
ちょっと待ちなさい!ひとみさん!」
こけてしまうおばさん。
逃げていくひとみさん。
おばさん「ああ!!」
そばにいたご婦人たち駆け寄ってくる。
ご婦人「奥様、大丈夫ですか?」
と、手助けしている。
おばさん「あ、どうも、すいません」
横の出入り口
そのすきにひとみさんは出口まで逃げて
なんとタクシーに乗り込む。
個人タクシー 330円 ナンバー79−15 犬塚弘さん
披露宴会場
出席者に相撲取りがいる。
真っ青になって花嫁失踪を司会者に知らせる桜井センリさん。
桜井さんに耳打ちされて青ざめる司会者
この司会者は加島潤(かじまじゅん)さん。
第26作で柴又でセブンイレブンを経営していたタコ社長の知人。
司会者「えー、ちょっと申し上げます。
新婦のひとみさんが気分が悪くてちょっと
横になってらっしゃいます。
あ、もちろん大したことございません、
すぐよくなると思いますが、
お色直しは新郎一人でおこないます」
騒然としているひとみさんのご両親のテーブル。
父親「見てきたら」と言っているようだ。
小暮実千代さんがママ。
新郎一人で、頭をかきながら部屋に入ってくる。
流れる音楽は今度は
ワーグナーの結婚行進曲
- オペラ『ローエングリン』の『婚礼の合唱』。
この曲もメンデルスゾーン同様、ものすごく結婚式の披露宴で使われる。
さきほどのおばさん、走って入ってきて、
両親たちにすばやく報告している。
母親青ざめて、おばさんと一緒に走って出ていく。
桜井センリさん新郎に
桜井さん「笑顔で笑顔で、時々あることですから」とささやく。
新郎かなりダメージを受けているようで
仲人の松村さん「どうした?嫁さん」
新郎「え?大丈夫です」おいおい大丈夫じゃないだろ ヾ(−−)
思わずテーブルにうずくまって
新郎「まいっちゃったな〜〜〜」
あんたたち、婚約時代に何を話し合ったんだいったい。
意思の疎通がまったくできてないよこれは┐(-。ー;)┌
ひとみさんっていうより、ひとみさんの苦悩に気づかない
新郎にこそ問題があるね。
一方、とらやでは
とらや 店
自転車で駅の方からさくらがとらやにやってくる。
さくら煎餅の金子屋さんに「こんにちは」とあいさつ。
高木屋 い志い くずもち
おいちゃん、寅宛のはがきを読んでいる。
東京都葛飾区柴又七ー十ー三十三
とらや方
車 寅次郎 様
大田区田園調布一ノ三十五ノ二
入江ひとみ
ひとみさん、住所の番地調べたんだね。
さくら「誰だろう?」
おいちゃん寝転びながら
おいちゃん「知らねえよ、そんなー」
さくら「…」
おいちゃん「どう考えたって、
あいつに田園調布に知り合いがいるとは
思えないんだけどなァ」
おいちゃん「おい、ちょっと声出して読んでみろよ」
さくら「『寅さん、もうすぐ私の結婚式です』」
おいちゃん「え?」
さくら「『北海道の宿で寅さんに言われたこと、
なんべんも思い返しています。
あのまま、いつまでも寅さんと
旅を続けたほうがよかったかなと、
思ったりもするんですけど、
そんなこと言ったら寅さんに
叱られてしまうかもしれませんね。
式には寅さんに来て欲しいけど、
そういうところに来るのはきっと
寅さんは嫌いでしょうね。
ひとみ』」
おいおい、お互い初対面で、一日行動を共にしただけでは、
結婚式には呼ばないって ヾ(^^;)
おいちゃん、ゆっくり起き上がりながら
おいちゃん「穏やかじゃないぞ、おい〜…」
おいちゃん「何があったんだい、その人と〜」と、びびっている。
さくら冷静に
さくら「でも…、ほら、もうすぐ結婚するって
書いてあるでしょ、だから…」
おいちゃん、合点がいった声で
おいちゃん「あ、そうか、結婚するのやめます、
って言うんだったら問題だけどな」
そうそう問題問題(^^;)
もうすぐ問題が来るぞ〜〜〜〜((((( ̄▽ ̄;)
さくら「旅先でちょっと知り合ったくらいのひとじゃなーい?」
おいちゃん「あ、なんだい、あー、驚いた」
と、安心してまた寝転がる。
おばちゃんがお出かけから帰ってくる。
おばちゃん、店先で
帝釈天方向を見て
おばちゃん「あ!寅ちゃん!」
おいちゃんまた起き上がって
おいちゃん「え!!」
と、こけそうになる。
寅やって来て
寅「おう!おばちゃん、達者だったか、フフ」
おばちゃん「よく帰ってきたねー!」
寅、店に元気よく入って来て
寅「よお!さくらにおいちゃん、元気か!」
おいちゃん「おう!」
さくら「お帰んなさい」
さくら「北海道にいたんじゃなかったの?」
ほんと、こんな早く舞い戻ってきて、
あんな遠いところからの旅費がよくあるよな(^^;)
寅「いたいた、なあ、。エンピツ届かなかったか??」
とさくらを指差す。
さくら「あ、そうそう!どうもありがとう」
寅「だろう」
おばちゃん「喜んでたよー」
寅「うん、届きゃいいんだよ」
寅「オレね」
さくら「うん」
寅「静岡の兄弟によ、助っ人頼まれてよ、
これからバイにいかなきゃならねえんだ」
おばちゃん「あら、そう」
寅「これ、土産だよ」北海道の海産物かな。
おばちゃん「どうもありがと」
寅「だから今日はね、お茶をいっぱいいただいたら
軽く失礼します」
おばちゃん「何言ってんだよー、ゆっくりしておいでよー、
一晩や二晩、どうにでもなるじゃないかァー」
さくら「そうよー」
寅、ちょっとそわそわして
寅、さくらの手をつかみ
寅「ひょっとしてさ」
さくら「うん」
寅「オレのこと娘が訪ねてこなかったかなあ…」
さくら「…」
寅「年の頃なら24、5かな、訳あり風の感じで、
田園地帯出身の娘」
さくら「あ、それぇ…
入江ひとみって人じゃない?」
寅「来たの!?来たの??来たの??」眼が輝く(^^;)
さくら「ううん、ハガキが来てんの」
寅「え!?どこどこ?」
さくら、おいちゃんにちゃぶ台の上にあるハガキ催促
さくら「うん」
寅あせって
寅「早く早く」
寅「は!入江ひとみ!」
黙読している寅。
寅「『寅さん、もうすぐ私の結婚式です…』」
静かに腰をかける寅。
さくら「…」
寅「はあー、ああ…、とうとうあの子も嫁に行くかァ…」
寅深くため息をつきながら
寅「悩んでたもんなあー…」
さくら「何を?」
寅「結婚問題だよ」
寅「はあー…『寅さんに叱られるかもしれません』か…、
オレもちょっと言いすぎたかなあ…。
こんなに悩むんだったら、いっそうのこと結婚なん諦めちえと、
そう言ってやればよかったぁ…」
と沈んでいる寅だった。
さくら「ね、ど、どういう人?」
寅「農村地帯の娘さん」大田区田園調布だってば ゞ(^^;)
タクシーがとらやの前までやって来る。
寅「オレがもうちょっと早めに帰ってくればなあ…、
いろいろと相談に乗ってやれたんだ…」
おばちゃん「なんだい、こんな狭いところへタクシーなんか乗り入れて」
さくら「ねえ」
おばちゃん、この後、ひとみさんのお母さんは
もっと大きなキャデラックで乗り入れてきます(^^;)
タクシー運転手、源ちゃんをのかせて
タクシー運転手「邪魔邪魔邪魔」
タクシー運転手「すみませーん、とらやさんってこちらですか?」
おばちゃん「はい、そうですけど」
タクシー運転手「寅さんっていらっしゃいますか?」
おばちゃん「ええ、いますけど」
タクシー運転手「は!」
タクシーに戻りながら
タクシー運転手「お客さん!いましたいました!」
運転手、源ちゃんに
タクシー運転手「坊や、ちょっと手伝って」
源ちゃん、どう見てももう大人(^^;)
気持ちが子供の部分があるので
そう呼ばれちゃうのかもしれないね。
そういえばリリーも源ちゃんのこと
『坊や』って言ってたっけ。
と、源ちゃんにウエディングドレスのすそを持たせる。
さくら外見ながら
さくら「お兄ちゃんお客さんよ…」
寅、ハガキを何度も読み返して、店先を見ようとしない。
さくら「お兄ちゃん」と、腕をゆするが、
寅「うるせえなあー」
寅「『こんなこと言うと、寅さんに叱られるかもしれませんね…』」
と、ハガキを繰り返し読んでいる。
寅、はがきを読みながら
寅「バカ、バカやろう」と照れている。
そんな寅の向こうに
真っ白なウエディングドレスを
着たひとみさんが立っている。
さくら呆然&唖然 ( ̄0 ̄;)
ひとみ「寅さん…」
寅、背中を向けてハガキを読みながら
寅「はいよぉ〜。
今ねえ、ひとみちゃんからのハガキを
読んでいたら、寅…」
このギャグは第17作「夕焼け小焼け」の
ぼたんの訪問時のアレンジ版。
さくら、寅の肩をたたいて、
振り向かせようとする。
寅、店先をゆっくり振り返り仰天!
ひとみさんが悲しい顔で立っている。
後ろで露木さんの備後屋が覗いている。
寅立ち上がり
寅「ひとみちゃん!!」と、満面の笑顔。
ひとみ「…」
寅をすがるように見つめるひとみさん。
ひとみ「ああ!!よかったぁ〜!!」
と中に走りはじめるひとみさん。
ドレスの裾を持って運転手と源ちゃんが
一緒に突っ込んできた。(/≧◇≦\)
運転手おいちゃんと正面衝突
ひっくりかえるおいちゃん(TT)
寅に抱きつくひとみさんだった。
ひとみのテーマが盛り上がり
ひとみ「よかったぁ〜!!
いなかったらどうしようかと思っちゃった!」
寅「大丈夫だよ、ほら、
オレこの通りいるじゃないか」と、ニッコニコ。
ひとみ「私ねー、
逃げてきちゃったの、結婚式から」
寅「そりゃよかった!」
おいおい、超無責任、事情知らないだろ ゞ( ̄∇ ̄;)
ひとみ「どうせね、親戚のところ行ったり、
友達のところ行ったって、
連れ戻されるだけでしょう。色々考えてね、
寅さんのところ来ちゃったの、うううう、
お願い寅さん、ううう、助けてェ!」
タクシー運転手、事情がわかって目が点(((^^;)
寅「大丈夫!大丈夫だよ!
オレがいるからは誰が来たって
指一本だって指させやしねえぞ、
さくら!はやいとこ
二階の一番奥の部屋にかくまってな、
誰にも会わせえるんじゃねえぞ!」
マジかよ寅(((ーー;)
さくら「さ、こっちいらっしゃい、いいのよ」
え〜〜〜!!、ほんとかよさくら、
ことがことだけにやばいんじゃ…(((^^;)
タクシー運転手「気をつけて」
寅振り向いて
寅「あ、ありがとう」
はっと気づいて、運転手に
寅「おまえなんだ?」
タクシー運転手「タクシーの運転手です」
寅「あ、そう、よし、ご苦労だった、帰れ」と手を外に指し示す。
タクシー運転手「いや、あの、料金を…」
寅、すぐ振り向いて
寅「そういうこと早めに言え、早めに」
と財布を取り出す。
寅、千円札出して
寅「はい、釣りはいらねえ、アメでも買え、帰れ」
と、二階へ行こうとする。
タクシー運転手「いや、あの、4600円なんです!」
寅戻って来て
寅「なにい〜〜??」
源ちゃん、運転手をつついて
源ちゃん「まけろ」
寅「まけろ」
タクシー運転手、源チャンに怒って
タクシー運転手「なんだおまえは!!」
と源ちゃんの髪の毛を掴んで押し倒す(TT)
源ちゃん「ウギャァ」
蛾次郎さんごくろうさまです(TT)
おばちゃん「ああ、あたしが払うから、いいよいいよ」
と財布を開けて払う。
ひとみさんが払うべき料金を、おばちゃんが…
あまりにもお人よし(TT)
寅、そのスキに
運転手に渡した千円を奪い返す。
うわっ!せこい(((^^;)
おばちゃん「じゃあ、5000円ね」
寅「大丈夫?」
と二階に上がろうとするさくらに声をかける。
さくら「大丈夫大丈夫」
寅、外に向かって大声で叫ぶ。
寅「おいこら!見世物じゃないぞ帰れ帰れ!」
源ちゃん「じゃまや、行け行け」
寅「ほら、行きなっての!」
寅「おいちゃん、今日はもう商売お仕舞いだから、店閉めてくれ」
おいちゃん「ああ、わかった」
源ちゃん「こら」と、野次馬を蹴散らす源ちゃん。
寅「おまえも帰るんだよ!」
と、源ちゃんの頭をこづく。
このへんはお馴染みの蛾次郎さんとのミニギャグ(^^)
寅「帰った帰った帰った、さあ、散って散って散って」
夕方 とらや 二階
浴衣に着替え、
布団に入って、
疲れきったのか、うとうと寝てしまったひとみさん。
大きなウエディングドレスが壁にかかっている。
とらや 台所
みんなひそひそ声
博「だったら、もっと前に勇気を出して、
結婚しないと言えばいいじゃないか」
さくら「だから、今日言おう、明日言おうと思ってたんだって、
周り見ると、みんな喜んでるし、
結婚式の準備はどんどん進んでいくし、
どうしようどうしようと思ってるうちに結婚式になっちゃった…、
そういうことってあるんじゃないの?」
だからといって
結婚式の最中に逃げるってのはまずない ゞ(^^;)
博「しかし、無茶だなあ…」無茶すぎ((^^;)
と茶の間に上がる。
おいちゃんちょっと複雑な表情で
おいちゃん「事情はあるだろうけど…、
とにかくあの娘を家に置くわけにはいかねえ」
と、いやがる。
おいちゃん「他人様の娘なんだから」
おばちゃん「そうだよ、今頃ご両親はどんなに心配してなさるか」
頷くさくら。
おいちゃん、思わず大声で
おいちゃん「言ってみりゃあ、家は赤の他人なんだ!」
しかも面識一度もなし(TT)
さくら「シー!!」
おいちゃん「こんな騒動に巻き込まれるなんて迷惑だよ、
はっきり言って。
そうだろ、博さん」
と、博に強い同意を求める。
博無声音で
博「そういうことですね」
おばちゃん「すぐに電話番号聞いてさ、
お宅に電話してさ、
引取りに来てもらいなよ。
それが一番いいよー」
冷たくも厳しくもない、ごくごく真っ当な意見。
頼ってきたからって言って、この状況で何日も泊めてやるのは
ある意味奇妙な行為。
さくら、頷きながらも、
さくら「でも…お兄ちゃんの意見もあるだろうし…」
おいちゃん、すぐさま反応
おいちゃん「あいつのは意見じゃありません、
偏見です」座布団二枚(^^;)
おいちゃん「いいか、博さん、
あんたの口から
はっきりそう言ってくれよー」
博「えー、僕が言うんですか?」ねえ(^^;)
おいちゃん深く頷いて
おいちゃん「そう!」
どう考えてもこの家の主人であるおいちゃんが言うべきだろう(^^;)
おばちゃん「そうだよ、こういうことは
博さんの口から言ってもらわなくっちゃ」
おばちゃんも自分は言いたくない(((^^;)
深く頷くおいちゃん 逃げたね…((^^;)
おばちゃん「寅ちゃん、どこ行った?」
さくら「え…、ショッピングに行くって
出かけてったけど…」
ひとみさん関係なので横文字(^^;)
おいちゃん「ショッピングなんて…
あのバカ…またあいつ…」
さくら「あら、帰ってきた」
寅「ショッピングショッピング」と走って帰ってくる。
みんな一斉に博を見る。
博緊張する。(((^^;)
仕方無しに頷く博(TT)
おばちゃん小声で
おばちゃん「帰っていたよ!」
寅参道走りながら
寅の声「散在しちゃったよ、ったく、フフ」
寅、源ちゃんつれて店に入って来て
寅「あーあ、ひと汗かいちゃったよ〜」
おばちゃん、「おかえり」と、猫なで声。
寅「さくら」
さくら「ん?」
買い物をいろいろ取り出して
寅「ちょっとこれ見てくれよ、ちょっと派手かなあ…感じが、
ダメだったら店で取り替えてくれるっていうんだけれど」
と、ピンクと黄色の派手な服を自分の胸であわせている(^^;)
さくら「なにそれ?」
寅「え?ひとみさんの着替えだよ、何言ってんだ」
どういうセンスしてるんだ((^^;)
源ちゃん後ろで寅の帽子かぶっている。
お風呂セットも買っている。
後ろにいる源ちゃんの袋をあけて
寅「源公、出せ出せ」
寅、赤いサンダルを出して
寅「ほら、さくら、サンダルだろ、
あと箸、歯磨き、歯ブラシ、一応全部買ってきたんだ、ほれ」
後ろで源ちゃん、シャンプーのふた開けて、
中味の液が顔に飛び出て眼がペケ、
細かい芝居してます蛾次郎さん ((^^;)
寅「な、あとさあ、パンツ買わなきゃならないんだけど、
まさかオレ買うわけにいかねえから
それさくらおまえ探してくれな、
いずれここで滞在が長引くから、なあ、おばちゃん!」
よくまあ、そこまで考えるねえ〜…(−−;)
おばちゃんにっこにこで
おばちゃん「そうだね」あああ〜〜((−−;)
寅博に向かって
寅「博、おまえ、訳は聞いたな」
博「…はい」素直(TT)
寅「うん、そういうこと!」
博「はい」
寅「今回は、オレが全責任を持って
引き受けたってことになるから、
おまえも力貸してくれよ、いいな」
博「はい」 ヘビに睨まれた蛙状態(TT)
おいちゃん、博の顔をまじまじ見てしまう。
寅「よし!、おばちゃん」
おばちゃん「ん?」
寅「今夜のごちそうはなんだ?」
おばちゃん「がんもどきの煮たんだけど…」
寅「だめだよがんもどきなんかー、
相手は田園地帯のお嬢さんだぞオ、
それがふかーい悲しみに浸っているんだから、
なにかこう口当たりの柔らかい上品なもの作らなきゃァ」
手前でおいちゃんが博の腕をつつくが、
博はもう無理だと、そのおいちゃんの手をはねのける。
こうしてみんなもう寅のペースにはまっていくのだった。
後ろで源ちゃんはピンクのスカーフを肩にかけて遊んでいる。
細かい芝居が続いている蛾次郎さん。
寅「もう、がんもどきとかそんな欲しくないものばっかり…」
社長の声が庭から聞えてくる。
社長「寅さん!寅さん!聞いたよ!
嫁さん連れてきたんだって??」
どこでどう聞けばそんな話になるんだ(−−;)
みんな、どっちらけの表情。
寅「タコ、おまえはな、
ここ当分この屋敷出入り差し止め!
おまえのこのデリカシーの無いツラはなあ、
深ーい悲しみに浸っている
娘さんには似合わない!出て行け!出て行け!」
と、腕を振り上げる。
さくら「お兄ちゃん、おっきな声出さないでよ、
二階に聞えるじゃないのよ」
寅、社長に
寅「シッ!」
と、パントマイムで社長を庭先に追い払っていく。
社長「は??」と言いつつ、ジリジリ後ろに下がり、
庭まで出てしまう。
寅、握りこぶしを作って殴るふりをしながら追い出していく。
社長「あ!」
と、怖がり、庭でこけそうになる。
寅、追撃を緩めず、
ほうきを持って社長に殴りかかるマネ。
追い込まれた社長、塀をよじ登ろうとする(^^;)
とらや 二階
さくらが上がってくる。
寅の買い物を一応持ってくる。
さくら「ごめんなさい」
ひとみさん、まだぐっすり眠っている。
さくら、そっと買い物を置いてひとみさんを見る。
ひとみのテーマ 静かにギターの音色が流れる。
寅の声が庭から聞える。
寅「頭出すな!」
と、社長に言っている様子。
二階の窓から下を見るさくら。
寅「うるさいんだよ、おまえの工場はー、眠れやしねえ」
と、やはり社長に言っている様子。
寅、二階を気にしながら
寅「他人がいるんだ」
庭から、ぴょんぴょん飛び跳ねて
ひとみさんを気にする寅。
さくら、上から、
さくら「シーッ」と指を口に持ってくる。
寅、寝ているのかというジェスチャー。
さくら「うん、寝ている」という口の動き。
豆腐屋のラッパ
パ〜〜〜〜プ〜〜〜〜
窓をそっと閉め、下に下りるさくら。
いろんなマドンナが、家を出て、
寅を頼ってとらやに転がり込んでくるが、
それは、別段問題は無いのだが、
このたびは、明らかに事情が違う。
だからおいちゃんはきつくそう言うのだ。
ひとみさんは自分の内なる気持ちを優先してしまったために
多大な迷惑を何百人という大勢の人にかけたあげく
とらやでかくまってもらっていることになってしまう。
気持ちはわかるが、世間ではそうなる。
寅はああいう男だから
評判も含め、捨てるものなどなにもないが、
おいちゃんたちは堅気として店を構え、信用を得、
常識人としてこれからも生きていかなくてはならないのだ。
ひとみさんは、目が覚めたら、
きちんとお礼を言って、とりあえずその日のうちに
とらやを出て行くのが最低限のけじめだと思うが…。
そのあと、家族とのけじめの話し合いが終わってから、
もう一度、寅にあらためて今後のことを相談に来ればいい。
帝釈天 参道
題経寺の鐘の音
ゴ〜〜〜〜ン!!
鐘撞きを忘れていて、あせって、
参道を走る源ちゃん。
音を聴いてビビル源ちゃん。
源ちゃん「あああ!!」
題経寺 鐘撞き堂(鐘楼)
鐘撞き堂に上がってくる源ちゃん。
源ちゃん「すんません!」
御前様「鐘撞きほったらかしてどこ行ってた!」
源ちゃん「あんな、寅さんに嫁さんが来たんや」
何も事情がわかっていない源ちゃんでした┐('〜`;)┌
御前様「なに?」
源ちゃん「きれ〜な人や」
と、身振り手振り(^^;)
御前様「なに?御仏に仕える身が
嘘などつきおって!む!」と拳骨のふり。
源ちゃん「え、ほんまや」と半泣き。
御前様「こんなか入りなさい!」と鐘の中を指差す。
え…????(ーー;)
源ちゃん「へえ…」
と、しぶしぶ鐘の中に入る。
源ちゃん「ほんまや、嘘やない、ほんまや…」
と、ずっと半泣き(TT)
御前様、思いっきり鐘撞き棒を振る。
源ちゃん「かんにん、かんにんしてェー!!」
ゴーーンンン!!
源ちゃん耳押さえながら
源ちゃん「わああああああ!!!!」
ゴーンンンンンンン!!!!
源ちゃん「わああああああ!!!!」
( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)
そこまでする御前様っていったい…ぞわわわ。
仏の道はきびしい〜、
耐えろ源ちゃん(TT)
これで前半は終わりとさせていただきます。
次回第23作「翔んでる寅次郎」完結編は5月末日本に帰国して
一段落ついた後の6月中旬以降になります。
翌日
帝釈天参道 とらや前
狭い帝釈天参道にみんなの迷惑かえりみず外車がとまっている。
こういう行為にその人の道徳性が滲み出るのだ。
Cadillac 1976 Seville
キャデラック・セヴィル(Cadillac Seville) 1976年型
同型車↓
1970年代前半に巻き起こったオイルショックの影響を受けた、
アメリカ市場におけるアメリカ車全体のダウンサイジング化と低燃費指向に対応すると同時に、
アメリカ製高級車に比べてサイズが小さく、燃費に優れたメルセデス・ベンツのミディアムクラス(現Eクラス)やSクラス、
BMWの5シリーズや7シリーズなどのヨーロッパ製の高級車への対抗車種として、1975年に「セヴィル」を発売した。
「セヴィル」は全長が5メートル強とサイズこそ小さくなったものの、
内外装のデザインはこれまでのキャデラックのものを踏襲し優雅さを残した。
また装備は他のキャデラックと同等のものを備えた上に、
キャデラックとして初の電子制御式燃料噴射装置を標準装備するなど、
当時の低燃費指向に対応した装備を備えていた。
当時のキャデラックとしては価格が高かったにもかかわらずヒットした。
学校帰りの満男と友達3人がキャデラックに群がってくる。
運転手がほこりを取っている。
友達「わー、ベンツベンツ!」
満男「スゲー!ベンツだあ」
運転手「こらあ、触っちゃダメ」
満男「おじさん、これベンツ?」
運転手「キャデラック」
みんな「スゲー、スゲー」
と窓kら中見て窓ガラスをいじりだす。
運転手「こらー」
とらや 台所
とらやにひとみさんの母親がやって来ているのだった。
おばちゃんとおいちゃんが邪魔をしている寅を見て
こっちに来るように催促している。
おばちゃんに、こっちに来させるようにうながすおいちゃん。
おばちゃん、寅に手招き。
聞く耳を持たない寅。
諦めるおばちゃん
とらや 仏間
母親「黙ってちゃわかんないわよ、どういう気持ちかママに教えて」
ひとみ「…」
さくら自転車でとらやにやって来る。
おいちゃんはさくらに事情を説明している。
母親、寅を指し示して
母親「こちらの方とどういういきさつがあったか知らないけれど、
とにかくここは人様のお宅でしょう、
だからとりあえず家に帰って、お父様に謝って、
その上で、しばらく…ヨーロッパへでも行ってたら?」
ひとみ「…」
母親「ね、そうなさい」
ひとみ「いや、私家に帰るつもりないの」
母親「それ、どういうことなの?」
ひとみ「私、これ機会に一人で生きて行くつもりなの。
『あんな娘勘当いたしました』と言ったほうが
パパだって都合がいいんじゃないの」
母親の言うように、あまりよくも知らない人様の家に
厚かましくもウエディングドレスでなだれ込んできたのは事実だ(((^^;)
歴代マドンナの中で最も非常識なお方。
母親「まあ、何てこと言うんですこの子はぁ、…ねえー」
と寅に同意を求める視線((〜〜;)
寅、ちょっと戸惑って
寅「え、フフフ」と、なにげ&無意味に笑顔(^^;)
さくら外からやって来て、おばちゃんに事情を聞いている。
ひとみさん、母親に
ひとみ「あ、寅さんの妹さん、お世話になってるから…」
さくら仏間に入ってきて、座り、深々とお辞儀。
さくら「いらっしゃいませ」
母親「若奥様でいらっしゃいますか、このたびは娘が、
大変ご迷惑をおかけいたしまいて」とお辞儀
さくら「いいえ、なにも出来ませんで」
と、またもや深々とお辞儀。
おいちゃんおばちゃんも台所でお辞儀。
母親「見ず知らずのお宅にこんなにご親切にしていただきまして、
ほんとにお礼の申しようもございません」
とお辞儀。
さくら「いいえ、どうぞお気になさらずに」
とさらに深くお辞儀。
さくらは、この状況としてはそんなに深々とお辞儀しまくらなくてもいいと思う。
いつも思うんだがさくらのお辞儀は日本一美しい。
そして、確かに今回は自分より目上の母親に対する礼儀が入っているのは分かるが、
今回に限ってはひとみさんが一方的に多大な迷惑をかけていることを
もう少し考慮に入れていいと思う。
みんなに迷惑をかけて結婚式場を抜け出してきたひとみさんを
寛大な気持ちでお世話している事実をひとみさんも母親もどう考えているのだろうか。
その日は仕方が無いとしても翌日になったのだから
ひとみさんはどんなに苦しくても一旦はとらやを出て行くべきだと思う。
寅「もうその辺でいいだろ。あの、お二人だけの話もあるから、
おまえ気を利かせて、おまえちょっと向こう行ってろ」
うなずくさくら。
寅「早く行けよ」
さくら、はっとして
さくら「お兄ちゃんこそ邪魔でしょ」
と、釘をさす。
寅「え??」
母親「あ…恐れ入りますが寅様、
二人っきりにさせていただけましたら…」
寅様って…「寅次郎様」だろう、普通は(−−;)
寅、しかたなくうなずく。
ひとみさんに『向こう行くから』ってモゴモゴ言って、
目でウインクしてよくわからない合図。
さくら恥ずかしがって
さくら「ほら」と寅の手を引っ張って行く。
寅、無理やり台所へ。
ひとみ「ごめんなさい」
寅、ブスッとしながら
寅「ほらほら、おいちゃんもおばちゃんもボケーッと
突っ立って見てんじゃないよ失礼だから、
非常識なんだから…」
とぶつぶつわめいて庭先へ。
仏間
母親神妙な顔&無声音で
母親「正直に言って、あなたあの寅さんっていう変な人のこと好きなの?」
ひとみさん、うんざりした顔で無言。
母親「ねえ、大事なことだからママだけには嘘つかないで」
ひとみさん、苦笑しながら
ひとみ「バカねえ、寅さんは私の話、親切に聞いてくれただけって、
さっきも言ったでしょう」
母親半信半疑で
母親「ほんとう??…だったらいいんだけど。みんな言ってんのよ、
あなたに好きな人がいたんじゃないかって」
ひとみ「バカねえ、いやらしい、
そんな単純なことじゃないわよーわ」
べつにいやらしくはないが…。
母親「…」
母親、急に怒りと悲しみでメソメソし始めて
母親「バカバカって、よくそんな口が聞けるわねえ…」ほんとほんと(−−)
とハンカチを探す。
ひとみ「ごめん…」
母親「昨日一日ママがどんな気持ちで過ごしたか、考えてみたの?」
ひとみ「…」
庭先で寅がお気楽な気持ちで
ひとみさんにパントマイムで呼びかけている。
『あ〜あ、お母さん、泣いちゃっているね』っておいうジェスチャー((^^;)
母親、気づかず、ハンカチで顔を抑えながら
母親「あなたが死んでしまったんじゃないかと思って
お葬式の心配までしたのよ、うううう」
ひとみさん、寅のパントマイムに微笑む。
寅、飛び上がっては、チャップリンのようにニコッと微笑む。
ついに笑ってしまうひとみさん。
寅も向こうで笑っている。
とらや 店
冷蔵庫はここ数作はずっと
リボンシュトロン&サッポロビール
お赤飯 200
豆大福 150
大福餅 150
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅 250
磯乙女 200
ジュース200
ラムネ150
ミルクコーヒー200
全作品お品書きの推移を見たい方はこちらをどうぞ
とらや全48作品【お品書き】考察記
話が一段落しとらやを出る母親。
参道で待つ運転手に冷たい麦茶かなんかを
飲ませていたおばちゃん。
細かい演出(^^)
おばちゃん運転手に
おばちゃん「ご苦労さんでした」
さくら、店に下りてきて
さくら「おばちゃん」
おばちゃん「ん」
さくら「お帰りになるわ」
母親「長いことおじゃまいたしまして」
とらや一同お辞儀。
母親「奥様…」
母親「なんとしてでも連れて買えるつもりでおりましたが、
娘が言うこと聞きません」
おばちゃん「は」とうなずく。
母親「こちらのお宅に御世話になりたいというようなことを…」
おばちゃん「どうぞどうぞ」
おいちゃん「うちならなんの遠慮も要りませんでございますから」と、お辞儀。
うーん…おいちゃんもおばちゃんも
このことでそこまでお辞儀する筋合いはない。
母親、感激して
母親「ああ…ありがとうございます」とお辞儀。
母親「寅様にはなんとお詫び申し上げてよろしいか…」
おばちゃん「どうぞ、お気にめしあそばさ。。。ず……」しどろもどろ(^^;)
これは第15作「相合い傘」でも使った『あそばせギャグ』。
さくら「あそばしめさずに」ひょえ〜難しい言い回しだね。
おいちゃん「お嬢さまはちゃんとお預かりいたしますので」とお辞儀。
迷惑だ!って言い放っていた昨日と大違いなおいちゃんの考え(−−)
さくら「そのうち気持ちも落ち着かれるでしょうし」
母親「お言葉に甘えさせていただきます」
みんなでお辞儀。
母親「あらためてお礼におうかがいいたしますが
どうぞ、あの子をよろしくお願い申し上げます」
いつのまにか茶の間に寅がやってきてひとみさんと
べちゃらべちゃらしゃべってる。
ひとみさん、頼むからおいちゃんたちに
もう少し恐縮してくれよ。
昨日からめちゃくちゃな迷惑かけてる本人なんだから。
母親、それに気づかず
母親「寅様は…?」
寅、パッとひとみさんの後ろに隠れる。
おばちゃん「あ。。寅さまは工場の社長さんのところへ」
母親「さようでございますか、およろしくお伝えくださいませ」
みんなでお辞儀しまくり。
母親「それでは」
と参道に出て行く。
さくら、ちらっと茶の間で隠れている寅を睨む。
しかし寅はあいかわらずひとみさんといちゃいや(((^^;)
おいちゃん怒って
おいちゃん「カッ!」
寅もおいちゃんを睨み返して緊張が続く(^^;)
帝釈天参道
母親車の中から
母親「どうぞよろしくお願いいたします」
みんなお辞儀しまくり。
車が去っていく。
おばちゃん大きく息を吐いて
おばちゃん「は〜〜〜くたびれた」
と額の汗を拭く。
さくらもぐったり。
ど−してまあ世話してやってるほうがこんなに気づかれするんだろうねえ。
どちらも住む世界が違うと緊張するんだよね。
夕暮れ時
朝日印刷
博「おーい。止めるか」
工員たち「はい」
社長「お疲れ様、はいお疲れさーん」
工員たち「お疲れ様でした」
工員たち「おい中村、飲みに行こうか」
新婚の中村君
中村「いいよ」
工員たち「へへ、無理すんなよな」
中村「いやあ…今日はやっぱり帰るよ、帰る」中村君気が変わった((^^;)
工員たち「いいじゃないかよおまえ」
工員たち「ビールくらい、フフ」
中村「今日は帰るよ」
工員たち「規子さん怖いんだろ、フフ」
中村「いいや」
工員たち「うそだよ、うそだよなあ、フフ」
と、新婚さんの中村君をからかう工員達でした(^^)
夜 茶の間 夕食後
おばちゃんにポットを渡すさくら。
おいちゃんの声「なかなか美人ですよ〜」
ひとみさんの母親のことを言ってるのかも(^^;)
寅の声「そらそうだよね、おばちゃんが好みなんだからさあ」
おいちゃんの声「いやあ、ハハハ」
食卓には食後のメロンが並んでいる。
博、残業から台所に戻ってくる。
さくら「ごくろうさん」
おばちゃん「お帰り」
寅「おー、お帰りお帰り、
なんだ、おまえ遅かったからみんなで飯食っちゃったよ。
さくら、ビールでも出してやれ。な」
博、ひとみさんに向って
博「どうですか、少しは気分落ち着きましたか」
ひとみさん恐縮して
ひとみ「ほんとにもう、いろいろと…」とお辞儀。
ほんとにねえ、ある意味とても人騒がせ。
寅「落ち着いたよ、落ち着いた」
ひとみ「もう…、昨日は一日無我夢中で…あれだったんだけど、
ほんとよく考えたら私ずいぶん大勢の人たちに
迷惑かけちゃってたんですよね」
んなこと、よく考えなくてもすぐ分かるだろ ヾ(−−;)
寅「そんなのくよくよすることないって、ね。
ほら、昔からよく言うじゃないか、な。
なんだいあの、お盆がひっくり返っちゃってさ、
中っかたの水が、ありゃ返っちゃこねえんだろ」
博、ちょっとこわばりながら
博「『覆水盆に返らず』ですか」
寅「そうだよ、それだよ。
だから後悔するこたあないんだよ」
ひとみ「別にしてないですけど」
寅ちょっと恥ずかしがって
寅「…そうですか」とニヤつく。
ひとみさんは後悔はしていないよね。
キャンセルして心底ほっとしているって感じだ。
さくらビールの栓を抜きながら、
さくら「立派な結婚式だったんでしょうねえ」
寅「うん」
おばちゃん「そーだよー、あのドレス見たってねえ、
お高かったんでしょう?」
でました!おばちゃんの高価なものに敏感&弱い癖
寅「いや、ドレスでよかったんだよ、
あれだったら軽いからさあ。ねえ。
これが花嫁衣裳重ねて着ててごらんよお、
着崩れちゃって、ズルズルズルズルしてさあ、
バタバタバタバタ逃げるにも
逃げられないじゃないかあ」
この場合の花嫁衣裳というのは日本の着物での衣装という意味。
みんなクスクス笑う。
ひとみ「でも最初は花嫁衣裳だったのよ」
寅「あ、そう、それじゃあ、こういう…鬘かぶってたのか」
頷くひとみさん。
ひとみ「うん、だけどあれへんなものね」
寅「へ?」
ひとみ「人がやってる時はそんなふうに思ったことなかったけれど、
自分が綿帽子被って白粉塗られて鏡の前に座ったらね、あれなの、
タヌキがペンキ塗られて鬘被ってるみたいなの」
みんな大笑い。
おいちゃん「ご冗談を、フフフ。きれーなお嫁さんだったでしょう」
寅「そうねえ」
みんな頷く。
ひとみ「そんなことありません。
ぜったいきれいじゃないわよあれ」
おいちゃん「フフフ」
ひとみ「まるで見世物よ。私なんて恥ずかしくてどうしょうかと思ったのに」
っていうか、披露宴をすること自体、人に見せるためなんだからね(^^;)
みんな考える。
博頷きながら
博「わかります、
なんたってあれは封建時代の格好ですからねえ」なるほどね(−−)
そういえばあの白無垢着物も
「嫁ぎ先の家風に合わせてどんな色にも染まります」という決意を込めた装いなんだよな。
頭には角隠し、または綿帽子をかぶるけど。
披露宴では、白無垢の後にお色直しで、色打掛に着替えます。
これは嫁ぎ先の色に染まりましたという意味の表れだそうだ。
寅「あ、なるほどなあ。
じゃあ男のほうはチョンマゲ乗っけてなきゃいけないわけだ」
と頭に手をやる。
博、頷きしながら
博「そう言うことになりますね」
寅「おいちゃん」
おいちゃん「え」
寅「オレの結婚式の時には石川五右衛門の鬘かぶる」
みんな爆笑
寅「あれ、パーっとなっててなあ!男らしくていいよ、ねえ」
博「案外似合うかもしれませんね」
寅「な」
さくらや博にしきりにディテールを話す寅。
それと同時においちゃんと話すひとみさん。
おいちゃん「それとあれですか、
その、花嫁衣裳のお披露目が終わって、
それであとはこの…お色直しということで」
ひとみ「うん、控え室にね、美容師の人たちが待っててくれて
もうみんなよってたかって私のお化粧取ったり
新しい衣装に着替えさせたり…
もう着せ替え人形みたいよ」
みんな「…」
ひとみ「もう、眉書かれたり、口紅塗られてる自分の顔見ながらねえ、
私、女って悲しいなって思ったの、
だってほんとにこれでおしまいって感じなのよ。
これからすばらしい人生が広がっていくなんて
そんな幸せな気分になんかなれないのよォ」
さくら「分るわ…、とってもよく分るわ」
おっと…
さくらって博との結婚の時、心の隅に迷いが有ったんだね…。
Marriage blueっていうやつかな。
なんせ博の告白から結婚までスピード決断だったものね。
ひとみ「男の人は決してそんな気持ちになったりしないんだろなあ」
みんな「…」
ひとみさんの言うことはなんとなくわかるけど、
どうも浮ついた感覚にしか聞こえないことも事実だ。
甘えがあるんだろうね。
ひとみ「そんなこと思ってたら急に目の前が暗くなってきちゃってね…。
気がついたらね…、
タクシーに乗って運転手さんにジロジロ見られてたの」
寅「へえ…」
ひとみ「気が違ったと思ったのね、あの運転手さん」
寅、ニコニコ笑って頷く。
寅「…」
おいちゃん「まさか、そんな…フフフ」
社長が庭からやってくる。
でかい社長の声
社長「あー、食った食った!」
寅、露骨に嫌な顔。
ひろみさんクスクスうけている。
社長「はあー、めし三杯食っちゃったよ」
おいちゃんも情けない顔をして笑っている。
社長「あ、こんばんは」
おばちゃん「品がないねえ」
社長「どうして?」
おばちゃん「大事な話してたんだよ」
寅「社長、おまえな、自分の娘、嫁に行かせる時に
何着せて行かせるんだ」
社長「何って…貸衣装だよ」
寅「ほう」
いっぽうさくらとおいちゃんは
無声音で社長のあだ名をひとみさんに伝えている様子。
おいちゃん「あいつのあだ名なんだか知っていますか」という口調。
ひとみさん、首を振る。
さくら「タコ」と言っている様子。
ひとみ「フフフ」
3人でひそひそ笑い。
社長「金町にね、知り合いの貸衣装屋がいてね、安くしてくれるっていうんだよ。
8万のところね、5万。何もかも、足袋からね、肌襦袢からさ、腰巻まで。
どうだおばちゃん安いだろ」
おばちゃん「やだねえ、すぐお金の話して」
おいおいおいおいおばちゃんも
さっき『お高かったんでしょう』って言ってたくせに ヾ(^^;)
社長「そうは言うけどねえ、今時の結婚式は金がかかるんだよ」
博「社長、今話してることはね、結婚式は形式でしかない。
大事なのは結婚する二人の未来ではないかということなんですよ」
社長「ほー…未来ねえ…」
タコ社長はその未来において本当に
娘のあけみを貸衣装でお嫁に出している。
第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」参照↓
寅、ぼそぼそっと
寅「おそらくタコには理解できない」
ひとみ「フフ…」
おいちゃん「いやあ、お話伺うとお嬢さんの気持ちも分るような気がするよォ」
ひとみ「おじ様の時代はお見合い?」
おいちゃん「いやいやそんな大それたことあんた、ハハハ」と笑いながら否定。
寅「ところが、こちらのおじ様こんなお顔してますけど、
れっきとした恋愛」
ひとみさん、目が輝いて
ひとみ「恋愛…」
そういえばひとみさんは
恋愛結婚じゃなかったんだったね。
寅、社長を指差して
寅「そこいくとこちらのおじ様、こんなお顔してますけど、
れっきとしたお見合い。な、フフフ」
ひとみ「へ〜…」と笑っている。
さくら「一度お見合いしたっきりで、
交際もしなかったんですって…」げええええ( ̄◇ ̄;)
寅「フフフ」
社長「オレたちの時代はそうよ」人によるよ(−−;)
博「結婚式の日、お嫁さんの顔見たら
見合いとは別の人だったんでしょ」
ああ…究極だね(TT)
事情を知っているさくらたち大笑い。
ひとみ「えー!??」だよね(^^)
社長「そうなんですよ、オレが会ったのはね、
もっと鼻の高い女だったんだよ。
だから仲人にね、
ひょっとしたらあれ別の女じゃないかって聞いたらね、
見合いの時は妹を出したって、こう言いやがんだよ」
ああ…水木涼子さんこんなこといわれて可哀想…(TT)
第6作「純情篇」でのお二人↓
みんな「ハハハ」
社長「びっくりしたねえ〜!あん時はもう…」怒れよ(TT)
ひとみ「ほんとそれ?」
おいちゃん「ほんとほんと、フフフ」
寅「社長よ、だけどおめえ
よく逃げ出さなかったじゃねえかよ」ほんとほんと(^^;)
社長「そりゃ思ったさ、だけどしょうがないじゃないか、
仲人に借金があったんだからぁ」
あちゃああああ、だめだこりゃ((((((ノ_-;)
さくら「社長さんその頃から借金してたの?フフフ」
社長「そうなんだよハハハ」
みんな「ハハハ」
裏から社長のおかみさんの声
おかみさん「父ちゃん!」
社長「はい!」
おかみさん「早くお風呂入ってよ!」グッドタイミング(^^)」
この声は水木涼子さんではなく別の人だね。
社長「はいはい、愛してるよ」と帰っていく。
さくら「いやだ、フフフ」
社長「おやすみ、…なんだ大きな声出してみっともねえな」と我に帰っている。
指差して笑っている寅とおいちゃん。
よかったね社長、とりあえず偶然結果が良好で。
柱時計が夜の8時の時刻を知らせる。
黒板 板書 松木様 かしわ餅 くず桜
さくら「ひとみさん、疲れたんじゃない?」
彼女疲れるようなこと何もしてませんよ今日は((^^;)
寅「あそうだなそろそろ今晩はこれでお開きってことにするか」
ひとみ「うん」
おばちゃん「お布団しいてありますから」
ひとみ「すいません」
ひとみ「じゃ、寅さん私」
寅「そうかい、おやすみ」
ひとみ「おやすみなさい。ごちそうさま」
みんな「おやすみなさい」
寅「まあ、あれだよ、まあ、できたものはしょうがないんだから
くよくよするなっていうんだよ、なあ、博」
博、急に自分にふられて戸惑いながらも
博「まあ…ともかく、あなたの一生の幸せこそ、
かけがえのないものですから」
寅「そういうこと」
さくら「お母さんもきっとわかってくださるわよ」
寅「うん」
ひとみ「ありがと。おやすみなさい」
みんなもう一度「おやすみなさい」
ひとみさんは二階に上がっていく前に急に笑い出して
ひとみ「フフフ」
寅「え?え?なに?」
ひとみ「フフフ、あのねェ寅ちゃん」寅ちゃんって言った??(00)
寅「うん」と階段まで飛んでくる。
ひとみ「可笑しいのようちの母ったら」
寅「ハハ??」
ひとみ「うん。寅さんのことね、
私の恋人と間違えてんの」
寅「…!」
ひとみ「フフフ、バカねえ〜、おやすみなさい」
寅、ニコニコで
寅「おやすみなさい」
寅、勝手にのぼせて舞い上がる。
寅「ハハ…、困っちゃうよなあ、上流階級の人は、
妙な誤解をするから、フフフ」
一同シラ〜
博呆れてお茶漬けをかき込む。
工場でギターの音。
寅、庭へ出て
寅「よ!朝日印刷の労働者諸君!
ささやかな憩いのひと時をすごしておるかあ。
よし!明日もまた労働に励んでくれ!ハハハ!」
と上機嫌。
さくら「ばかねえ…」と無声音。
おいちゃんがねっころがろうとして、さくらが気を利かせて
座布団を丸めておいちゃんの頭に敷く。
おいちゃん「あ、ありがとう」
芸の細かい演出。
博「満男どうしたんだ?」
さくら「うん、そろばん塾なんだけど、遅いわねえ…」
こういうちょっとした余韻の会話がいいんだよなあ…
江戸川土手
寅とひとみさんが土手で風に吹かれている。
ひとみのテーマが流れる。
ひとみ「寅さん、ここで育ったのねえ〜…」いい感覚だねえ〜。
第6作「純情篇」の夕子さんを思い出すね。
彼女も江戸川べりを寅と歩きながらこんなこと↓を言っていた。
夕子「東京にもこんなところがあるのね。フフ…嘘みたい…。
寅さんはこういう風景を見ながら育ったのね。」
寅「ああ、オレがガキのころは、…もっといいとこだったィ。
今はすっかり変わっちまった」
ひとみ「ねえ、」
寅「ん」
ひとみ「この川原に座って、好きな人のことなんか想って、
涙したことなんかやっぱりあった?」
うーん、いいねえ〜。
寅「まあ、そんなようなこともあったかな…」
と、向こうで眺めている源ちゃんをチラチラ見ている寅。
ひとみ「ねえ、前から気になってることあるんだけど」
寅「なんだい?」
ひとみ「どうして結婚しないの?」
出た〜〜〜〜
((||| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ー ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)
超素朴な疑問でした。
寅「…」
ひとみ「なんか訳あるの?」(^^;)
寅、へんにまじめな顔して、
寅「そうさなあ…
ま、オレにも、いろいろと
触れてもらいたくない過去があるということさ。
そう言えば分ってもらえるかな…」
そんなもったいぶるものは何も無い。
ふられてばっか&臆病なだけ。
要するに嘘八百((((^^;)
ひとみ「ん…わかるような気がするわ」
寅「そういうこと…」
源ちゃん、後ろで寅を指差して大笑いしながら転げまくっている。(^^;)
この手の質問をズバリした人
それまでにも結構いたなあ…
(5作)節子さん、(9作)歌子さん、(14作)京子さん…
とらや 店
なんと新郎になるはずだった小柳邦男(こやなぎくにお)が
ひとみさんに会いにとらやに来ている。
おいちゃん、店番で忙しそう。
おいちゃん「あー、お待ちどうさまでした。2箱で1500円いただきます」
二千円を渡すお客さん。
おいちゃん、レジに行きながら座って待っている邦男に、
おいちゃん「お待たせしますねえ、もう帰って来るとは思います」
さくら、自転車でとらやにやって来る。
電話が鳴っている。
おいちゃん、さくらに気づいて
おいちゃん「あ、さくら電話」
さくら「はいはい、わかった」
おいちゃん「どうもありがとうございました」
おいちゃん「んー、こんな忙しい時にみんな出はらっちゃって、もう」
と忙しそうに小走りで台所へ。
さくら電話に出て
さくら「はい、あ、毎度どーも、はい、はい、承知いたしました。
はい、どうもありがとうございます」
電話を切ってメモするさくら。
そこへ江戸川土手から
寅と瞳さんが帰って来る。
寅、とらやを通り過ぎてしまうひとみさんに
寅「どこ、どこ行くの、家こっちだよ」
ひとみさん「フフフ」
寅「ハハハ!」
はっと、立ち上がる邦男。
邦男を見るひとみさん。
明るくつとめて
邦男「…やあ」
呆然と邦男を見つめているひとみさん。
寅「誰?」
ひとみ「私が結婚しようとした人」
寅「…はあ……、あんたか」感慨深いよね…(^^;)
邦男「はい。小柳(こやなぎ)です。こんにちは」とお辞儀。
寅、ちょっとしょげている。
邦男「お母さんに君の事聞いたもんだから。
…どうしてるかなあって思って」
ひとみ「…」
さくら呆然。
邦男「元気?」
寅「はい…」おいおい、あんたじゃないって…ゞ(^^;)
ちょっと、心が動揺している寅。
好きなんだねえひとみさんのことが。
寅を見るひとみさん。
はっと我に返り、自分でもとまどい照れている寅。
渥美さん、こういう芝居は天才的だ。
ひとみさん邦男に、
ひとみ「ありがとう…私は元気」
沈黙
ひとみ「ごめんねほんとに」
と、いたたまれなくて二階へ駆けて行く。
寅たち、二階を見ている。
邦男「…」
みんなどうしていいかわからずおろおろ。
邦男「それじゃ、失礼します。さよなら」と、お辞儀。
静かにひとみのテーマが流れる。
帝釈天 参道
そんな邦男を追いかけ、失恋を慰めようとする寅だった。
寅「おい!青年!」出ました!
邦男「僕ですか?」
寅「元気出せよ元気。
えー、話は聞いたよ。辛い気持ちはよく分るよ。
邦男「はい」
寅「それが人生勉強ってもんだからな」
邦男「はい、僕も色々考えることがありました」
寅「そうか、それで大きく成長すればいいんだから」
邦男「しかし、失恋するって悲しいことですね」
寅「そうだよ。そのことに関しては
オレは誰よりも詳しいからね」詳しいって… ゞ(^^;)
邦男「そうですか?」
寅「ん、ちょっとコーヒーに見に行くか」
邦男「はい」
寅「いこ」
急に明るくなる邦男。
そんなに急に気持ちが切り替えれるわけないだろって思うけど((^^;)
とらや 夜 二階
二階で、さきほどの邦男のことを考えているひとみさん。
下で寅の声「おばちゃん、今帰ったよ」
おばちゃんの声「おそかったねー」
寅の声「うん」
ひとみさんは寅が外で邦男と話していたことをうすうす知っている。
寅の声「ひとみちゃんは?」
おばちゃんの声「いるよ、二階に」
ひとみさん、耳がダンボ。
寅の声「ん、ひとみちゃーん!」
ひとみさんすぐに
ひとみ「はーい!!」
寅、下から
寅「ちょっと上がっていいかな」
ひとみ「どうぞ」
上がってくる寅。
ひとみさん階段のところまで行ってしゃがみ、
ひとみ「待ってたのよ寅さん、どうした?」
寅「あー、」
ひとみさんパジャマ姿
ひとみ「あ、こんな格好でごめん」
寅「ん、いいよいいよ、いや、あの青年とね、ずっといっぱいやってたんだよ今まで」
ひとみ「ん」
寅「ん、ま、いろいろ言って慰めてやったからあれでいいでしょう」
ひとみさんほっとして
ひとみ「そう…どうもありがとう」
寅「んー…しかしあれだよな、
そのうちさ、またあの青年に会うようなことがあったら
もうちょっと優しい言葉かけてやれよ。
あんなに惚れてんだから」
ひとみさん、意外な表情で
ひとみ「私に?」
寅「ん」
ひとみ「フフ…うそよォ〜、
私のこと恨んでるはずよ」
寅「冗談じゃないよォ、
恨むどころか、あの結婚式以来
毎日毎日あんたのことを
考えて暮らしてるらしいぞ、あいつは」
ひとみ「……」
寅「まあ、いくらあいつが好きだってな、
ひとみちゃんのほうが逃げ出したいくらい嫌いなんだから、
こりゃ仕方がないけどさ。
男と女の間ってもんはそういうもんなんだよ」
ひとみ「…」
寅「いや、ただ一言ね、
『あんたの気持ちは嬉しいわ、どうもありがとう』
そのくらいのこと言ってやんなよ。
その言葉だけであいつは幸せになれるんだから。
恋をする男の気持ちってのは
そんなもんなんだよひとみちゃん。
…わかるかい」
ひとみ「うん…私とっても大事なこと聞いた…」
寅「勉強になったでしょ」えらそうに(((((^^;)
ひとみ「うん」
寅「じゃ、おやすみ」
ひとみ「おやすみなさい」
階段下から
寅「あ、ひとみちゃん」
ひとみ「ん、なあに?」
寅「窓開けて、空見てごらん。お月様傘かかってるよ」
ひとみ「そおお?フフ」
寅階段を見上げながら
寅「じゃ、おやすみ」
と、ちょっと格好をつけて手をふって下りていく。
その直後心がうわずって
ガタガタガタ階段でこける寅。
おいちゃんそれ見てあたふた。
ちょうどおいちゃんは、
寅がくれたヘアーローションを
髪の毛につけていたのだった。
うーん、演出が細かい〜(^^)
おばちゃん団子部屋から出てきて
おばちゃん「だいじょうぶかい?」
足を打ってかなり痛がっている寅。
呆れる老夫婦。
寅「く…はあああ…」バカ…ヾ(−−;)
数日後
雨の日
題経寺 ニ天門前
邦男がひとみさんを待っている。
電話で呼び出したのだ。
邦男、ひとみさんを見つけて
邦男「やあ」
傘を差しながら近づく邦男。
邦男「電話して悪かったかな…」
邦男「どうも店のほうには行きにくくて」
邦男「迷惑?」
ひとみ「ちょっとそのへんでお茶でも飲まない?」
邦男「いいの?」
とニッコニコ。
二人はなぜか題経寺の境内に入っていく。
おいおい、そんなところに喫茶店はありませんよ ヾ(^^;)
喫茶店 ローク
BGMでグリーン・スリーブが流れる。
この喫茶店は窓からの眺めや店内の様子から考えて
あきらかに貴子さん経営の喫茶店ロークだ。
窓の向こうは題経寺の石塀。
カウンターには男の人がいたので、貴子さんはどなたかにこの店を
譲ってしまったのかもしれない。
当時流行っていたインベーダーゲームのあのコンピューター音が
店内にとどろいている。時代だねえ〜〜〜〜(^^)
コーヒーサイフォンがカウンターに並べられている。
珈琲250
紅茶250
カフェオレ350
トースト200
ハム チーズ 野菜
スパゲティ
ピラフ
珈琲をとっている二人。
ひとみ「どうして私のことが気になるの?」
邦男「それは…僕にも責任があるような気がするからさ」
ひとみ「私これから、自分の力で自活して暮らしていこうと思ってるのね」
うなずく邦男
ひとみ「もちろん働くっていったって
さしあたり英会話教える程度しか出来ないんですけど」
邦男「それはいいね」
ひとみさん、ちょっと呆れて
ひとみ「だから邦男さんとは住んでる世界が違うの。
あなたにはお父様が経営する立派な会社があるでしょう。
それがあなたにふさわしい未来よ… 」
邦男「親父の会社…、こないだ辞めちゃった」
ひとみ「!!……」
邦男「だいたい僕にはインテリアの仕事なんて向いていないしね」
ひとみ「……」
信じられない顔で邦男を見つめるひとみさん。
ひとみ「私行かなくちゃ…」
邦男「うん」
ひとみ「さよなら」
邦男「さよなら」
作り笑いをするものの、淋しさを隠し切れない邦男だった。
題経寺のほうへ歩いていく。
夕方 邦男のアパート
掃除用品や台所用品、食料品などを買ってくる邦男。
二階に上がって自分の部屋のドアを開けると
妹の京子ちゃんが来ている。
邦男「なんだ、京子か」
懐かしいね、戸川京子さん…。彼女の最後を考えるとちょっと複雑
第29作「あじさいの恋」でも出演。あの時はスリムになっていた(右)。
↓
ギターが置いてある。
悲しい顔をしている京子ちゃん。
邦男「大家さんに開けてもらったのか」
頷く京子ちゃん。
邦男「いい部屋だろう」
めそめそ泣いてしまう京子ちゃん。
邦男「どうした?」
京子「お兄さんが可哀想…。こんな汚い部屋で」
邦男「バカ言え、これからきれいにするんだ」
邦男「このかばん、シャツなんか入れてきてくれたの?」
頷く京子ちゃん。
洋菓子の箱を見つけて
邦男「これは?」
京子「お土産」
邦男「あ、そうか、サンキュウサンキュウ」
邦男「な、京子、お茶入れてくれよ」
京子「うん」
箱の中のドーナッツを食べる邦男。
京子さん流し場のシンクで薬缶を持って
京子「これ?」
邦男「そう」
京子「わあ…きったない…」
ひとみのテーマ スキャットが入る。
どうもこの手の甘ったるい女性スキャットが私は苦手だ。。。((((^^;)
江戸川土手
草野球をする人たち。
江戸川土手を邦男のことを考えながら歩くひとみさん。
ひとみのテーマ流れる。
ボールが転がってきて拾い投げ返すひとみさん。
ちょっとボールがそれて青年がこけてしまう。
ひとみ「あ、ごめん」
この江戸川河川敷でのひとみさんのシーンは
どういう意味があるのだろうか。
邦男のことを考えているのだろうが、
なんとなく散漫なイメージが残ってしまう。
自動車修理の町工場
神奈川県横浜市栄区上郷町60
でました!柴又じゃなくて大船のパターン(^^;)
富士見自動車工業株式会社
邦男が働いている。
ひとみのテーマ 女性スキャットが流れ続ける。
ようやく等身大の自分の居場所を得た感じで
生き生きとしている様子である。
事故で前がぺちゃんこになったグレーのフォルクスワーゲン.ビートル タイプ1
おそらく『モデル1303』あたり。
戦前の1938年にデビューし、
2003年までの間に累計2152万台もの台数が生産されたフォルクスワーゲン・『タイプ1』
その長い歴史の中で、1972年「新世代のビートル」としてフロントにストラット・サスペンションを採用、
フロント・ウィンドウも空力を意識したラウンド・タイプ改良を受けたモデルが「1303」。
ジャッキを移動させながら
邦男「人は大丈夫だったんですか?
ケガ、助かる、よかったー…車パー…、」
とらや 店
ひとみさんの英会話教室のためのチラシを見ている寅。
AS FOR TOMMORROW.
WE WILL WORRY ABOUT IT TOMORROW.
(心配なきあなたの将来のために)
中学.高校の基礎英語から
高校.大学の受験英語
英語教えます。
カルフォルニア大学卒業
入江 ひとみ
ご希望の方は下記まで
連絡先 葛飾区柴又7−10−11 とらや 方
どうやら寅が社長に頼み込んで朝日印刷で作らせたようである。
寅「カルフォルニア…、英語教えますか…」
社長「なあ、寅さん、せめて紙代だけでも払ってくれや」
そう言うなら印刷するなよ。
寅が払う可能性は元々ゼロなことくらい社長はわかってるはず(−−;)
寅「だから言っただろう、金は出世払い」
社長「ハハハ、悪いけど、これ以上出世できるのかい?」
寅「四の五の文句言わない。税務署早く行け」
社長ヘルメット被って
社長「あ、そうだ、本当に行かなきゃいけないんだよな」
そこへ邦男がうろうろとらやの前をうろうろやって来る。
気づく寅。
寅「あれ?」
さっと知らん顔する邦男。
寅「あ、また来やがったあいつ」
寅「おい、こら、青年、なにしてんだ」
邦男わざとらしく
邦男「あ、ここがとらやさんでしたか、ハハ」
寅「なーにをとぼけてやんだい」
寅、邦男の作業服を見て
寅「なんだいそのカッコウは?」
邦男「は、今、近所の工場で働いているもんですから、
昼休みちょっと寄ってみようと思って。
…あの…ひとみさんいますか?」
寅「未練たらしい男だねおまえも」
邦男「…」
寅「好きな女でも嫌いになっちゃうよこれじゃあ」
邦男「…」
寅「ましてひとみちゃんおまえのこと嫌ってんだからね」
下を向く邦男
寅「オレこんこんとおまえに教えたろ」
沈んでいる邦男
寅「しょうがないなー…」
ちょっと悪知恵が浮かぶ寅。
寅「よし、じゃ、ちょっと呼んでやるよ」
邦男「よろしくお願いいたします」
寅、誰もいない二階に向って
寅の声「ひとみちゃん、こないだの青年がまた来たよ」
おばちゃん、呆然。
寅「え?なに?ん、…ん、そう言っとく」
寅ニコニコしながら
寅「会わないって、帰ってくれって」
邦男「ほんとですか」
寅「ほんとだよー」うそうそうそ
邦男「そうですか…帰ってくれって言いましたか」
寅「んー」
おばちゃん台所から見ていて、
デタラメな寅に文句言いたそう。
寅「悪いこと言わないよ、おまえ二枚目だしさ、
背だって高いんだし、家だって金持ちなんだろ、
他に女はいくらだって見つかるよ」
邦男「そ、そういう言い方には僕抵抗感じるな」と少し怒る。
寅「テイコウ?あー、
おまえさしずめインテリだな。
あー、それじゃ余計女にもてないよあ諦めな」
出ました!『さしずめインテリ』発言(^^;)
邦男「これ、ひとみさんの好きなお菓子です。渡しといてください」
寅「ん」
邦男「さよなら」
その時、まさに、ひとみさんがとらやに帰ってくる。
さくらも一緒。
邦男「あ!」
さくら「あら?」
ひとみ「…!!」
邦男、「…!!」
寅を睨む邦男。
ひとみのテーマが流れる。
寅、シラを切って
寅「あ?あれ?
ひとみちゃん、二階にいたんじゃないの?
不思議だなあああ〜…空耳かな…」バレバレ
ひとみ「邦男さんお願い。もう来ないで…」と悲しい声で中に入ってゆく。
ひとみ「ごめんなさい」と泣きながら二階に上がっていく。
邦男「…」ちょっとタオルで目を拭きながら泣いている。
寅「ほら、な。オレが言った通りだろ」
寅「まあ、しょうがないや、
どっか行って冷たいビールでも飲むか青年」
頷く邦男。
まだ工場午後からもあるんだろ、
自動車修理なんだからアルコールはダメだよ(((ヾ(^^;)
寅「じゃ、行こ」
呆然と見送るさくら。
さくら、台所へ行って
さくら「おばちゃん、いったい何があったの?」
一部始終を聞いていたおばちゃん、ちょっと呆れながら
おばちゃん「寅が悪いんだよ、知らないよもう」
と、そっぽを向いてしまう。
怒りながらヤケクソでアンコをこねるおばちゃん。((^^;)
さくら、寅たちの行った先を見ている。
さくら「…」
さくらのアパート
さくら「ひょっとしたらね、ひとみさん、
あの人が好きになったんじゃないかしら」
博「だったらいいじゃないか、案外うまくいくよ、そのうち」
さくら「でも可笑しなもんね、
結婚しそこなった二人がまた改めて恋愛するなんて」
博「可笑しくないよ、
つまり...新しい生活の中で二人が進歩したということなんだから」
さくら「そうね…」
博「相も変わらず、ふられてばかりいる人もいるけどね」
さくら「やっぱり恋してんのかしら、お兄ちゃん」
博「ふられた後で気がつくんじゃないか、
『やっぱり恋をしていたんだと…』」
このセリフは博のこのシリーズ屈指の名言の一つ。
全ての寅の恋は博のこの一言に集約されている。
博の洞察力が見事に生きた感覚的な言葉だった。
さくら「……」
博、満男に算数の練習問題を作ってやってテーブルに持っていく。
満男は、しゃあしゃあと漫画本を見ている。
博「満男、これ」
漫画本(ドラえもん)をスッと下にかくす。
博「何してんだ、こら!」
と、漫画本をテーブルの上に出して
博「どうしておまえはそんなに算数が嫌いなんだ」
満男「計算は好きだよ」
博「計算だけじゃダメでしょ」
浅草 キャバレー新世界付近
商店街のマイク
「中村時計店のセンスある…」
向こうに浅草寺の五重塔が見える。
啖呵バイ(カーテン生地、服地)をする寅
寅「どうしてこんなにいいものがだな、皆様の手に入るか。
大きな声では言えないよ。
神田は六法堂といういい織物問屋がわずか、ね、これだけ(五本指)の
税金で投げ出した品もんだよ! (バシッ!)
今日はね、もうただみたいな値段でやっちゃお。
いいかいお母さんこれだけの品物。
あの有名な田園地帯、大きなお屋敷のさ、
広い芝生のある家の大接間にかかってる品物だよ」
お客「あーそうですか」
寅「ね!わかる?手触りが違う手触り。
しかし今日はわたくしそれだけくださいとは言いません。
浅野匠守じゃないけど、おばあちゃんおばあちゃん、見て、
腹切ったつもり、まけちゃうよこれ、ね!(バシッ!)
ただみたいな値段だよー。
どう、物の始まりが、国の始まりが大和の国、ね!
島の始まりが淡路の島、
泥棒の始まりが石川の五右衛門、
助べえの始まりがこちらのおばちゃん!
客たちドッと沸く。
寅「お!はい、ピンクのカーテンいいね!お兄さん新婚さん?」
ホステス大募集 保証 10000円確実
受付時2時
ウエイター
メンバー
主任
カウンター
ボーイさん
カウンター
浅草ハワイ一号店
ひとみさんの家
母親がくどくどひとみに説教をしている。
母親「あなたの話を聞いてるとね、
なんだか無理に苦労してるみたいなんだけども、
世の中ってそんなに甘くないのよ。
自分じゃ大人になったつもりかもしれないけど、
世間の人から見れば、
甘えっ子のお嬢さんなのよあなたなんか」
ひとみ「…」
母親「私たちに恥をかかせて、たくさんお金を損させておきながら、
独立だとか、自活だとか、えらそうな口を利いて」
ひとみ「ママ…」
ひとみ切羽詰った声で
ひとみ「私幸せになりたいの。
それがそんなにいけないこと?」
母親「だから、ママの言うとおりにしていれば、
あなたはちゃんと幸せになれたはずなのよ」
ひとみ「ママは今、幸せ?」
母親「…、なに言い出すの突然。
まあ…幸せだわね」
ひとみ「それじゃあ、私あれだわ、
あなたが考えている幸せとは
違う幸せが欲しいの」
母親「……」
ひとみさんのこの言葉は胸にしみ心にしみました。
幸せは一つじゃないのである。
人の数だけ幸せがある。
彼女のこの言葉
「それじゃあ、あれだわ、
あなたが考えている幸せとは違う幸せが欲しいの」
は実は第2稿ではなかったセリフである。
第2稿では
「ママの言う幸せなんか本当の幸せじゃないの、絶対違うの」
となっている。
しかしこれではひとみさんは相手をを否定することによって自分を保とうとしている
ので母親と同じように自分しか見えていないのである。
これではありがちなただの若者の理想主義の物語にもなりかねない浅さが残る。
しかし、本編でのこのセリフによってひとみさんは母親の生き様を客観視し、
ある程度認めてもいる懐を与えているのである。
これによって第23作はようやく物語としての奥行きが出来たとも言えよう。
現場で、この一言を思いつき、
言わせるところが山田監督の山田監督たる所以なのである。
母親「…」
鳥かごの小鳥の鳴き声
母親「とにかくね、…お父様の名前を傷つけるようなことはもうしないでちょうだいね」
ひとみ「…」
母親「こないだ、邦男さんが家出した時だって、ウチのせいだみたいに言われちゃって
お父様困ってらっしてたのよ」
ひとみ「家出したの?邦男さん」
母親「そうですよ、お父様の会社は辞めるし、家は飛び出すし、
あなた邦男さんまでだめにしちゃったのよ。
それなのに『幸せになりたい』て、よく言えるわね…」
めがねをテーブルに強く置いて、少々腹立ちぎみに立ち上がる。
めがねが床に落ちてしまう。
母親、お手伝いさんを呼びながら歩いていく。
母親「テルさん、テルさん、玄関お掃除すんだの?」
意外な邦男の事実を知り、
考え込んでしまっているひとみさん。
夜 邦男のアパート
渥美二郎の大ヒット曲『夢追い酒』のメロディが
遠くから小さく流れている。
作詩 星野栄一 作曲 遠藤 実
昭和53年
1 悲しさまぎらす この酒を
誰が名付けた 夢追い酒と
あなたなぜなぜ わたしを捨てた
みんなあげてつくした その果てに
夜の酒場で ひとり泣く
夕食代わりにカップ麺をすする邦男
ニドと砂糖が置いてある。
日清カップヌードル
ドアをノックする音
邦男「どうぞ」
と言いつつも、カップめんをすすり続ける邦男。
開けたドアにひとみさんが立っている。
驚き、風呂桶を持って立ち上がる邦男
邦男「あ…よ、よく分ったねここが…」
ひとみ「京子さんに聞いて…」
邦男「あ、あそうか」
頷くひとみさん。
邦男「あ、どうぞ」
あたふた片付ける邦男。
二人座って
邦男「今、夕飯だったんだ」
ひとみさん、悲しげにカップめんを見ている。
邦男「これ、案外旨いんだよ」
ひとみ「邦男さん…。ごめんね…」
邦男「どうして?」
ひとみ「私、あなたに酷いことをしたと思ってる」
邦男「フ…そんなことないよ。
京子がなんて言ったか知らないけど、
僕は今とっても楽しいんだ。
毎日いろんなこと考えるし…。
もっともひとみさんのことが一番多いけどね」
立ち上がって薬缶を取りに行く邦男。
ひとみ「…」
邦男「僕のどこがひとみさんが嫌いだったか。
それを直せば好いてくれるようになるのか、
まあ、そんあことをくよくよ考えるから、
やっぱり嫌われてしまうのかな…」
ひとみ「…」
邦男「もう二度と会ってもらえないかなと思っていたけど、
…、ひとつだけ後悔してることがあってね、
これだけはどうしても言いたくて」
ひとみ「どんなこと?」
邦男「つまり…一度も言ったことなかったろ。
君のこと好きだって」
ひとみ「……」
ひとみのテーマが流れる。
ギター演奏と女性スキャット
ひとみさん、感激し、表情が崩れて
立ち上がって窓辺に行き、外を見る。
ひとみ「…」
邦男は彼女の心の動きに気づいていない。
邦男「…」
またカップめんをすすり始める邦男。
ひとみ「ね、…キスして…」
邦男「!…」
邦男カップ麺を食べる手が止まる。
麺を口に突っ込んだまま驚きひとみを見つめる邦男。
頼むからカップ麺から離れろよ(( ヾ(^^;)
立ち上がり、窓辺に行き、
口を何度もふく邦男、
そしてひとみさんの肩を抱き、
不器用にキスをする。
ひとみ「ネギ食べちゃった、フフ」
もう一度ひとみさんをしっかり抱き、キスをする邦男。
たぶん…、この二人は、
最初の結婚式まで告白も無いし、
キスも無かったんだね。
ようやく今二人の恋が始まったって感じ。
夜 とらや 店
寅、ようやく仕事から帰ってくる。
さくら「遅かったわね、おかえり」
寅「ひとみちゃんは?」
さくら「まだなのよ」
寅、かばんを開けて、ネックレスを取り出す。
寅「今日はよ、精出して働いたからね、
儲かっちゃったい、でこれをね」
さくら「私に!?」おいおいゞ(^^;)
寅「バカ!おまえじゃないよ」
さくら「ああ、ひとみさんにね」
このパターンは第15作「寅次郎相合い傘」で、
雨にぬれると、寅が言った時のさくらの
勘違いと一緒。あの時はもちろんリリーがその相手。
さくらって…(TT)
寅「どうだい?気に入るかなこれ」
さくら「ああ、素敵、喜ぶわよきっと」
寅「そうかー、なんせ田園地帯のお嬢さんだろ、
安モン買うわけにいかないからよ。オレ張り込んじゃったよ」
さくら「そう…、高かったでしょう」
寅「高いよー〜そりゃ」
寅「ひとみちゃんどこ行ったんだよ」
さくら「晩ごはんまでに帰るって言ってたんだけどねえ、どうしたのかしら」
寅「大丈夫かおい、えー、ああいう世間知らずの娘はな、
いい男と悪い男の見分けがつかないから、
変なヤツにひっかかったら、たいへんだぞ」
さくら、呆れている。
寅「オレちょっと駅まで迎えに行って来るか」
博、店に入ってきて
博「兄さん、ひとみさん帰ってきました」
寅、ちょっと緊張して、帽子を整わせながら
寅「あ、そうか」
さくら「お兄ちゃん、これ」とネックレスの箱を寅に渡す。
寅、いよいよ緊張して胸ポケットにいれようとするが
見ないで入れるのでなかなか入らない。
で、無理やり入れようとするが何度も空振り。
さくらも手伝ってようやくポケットに入れる。
このへんのパントマイムは面白い。
高揚した表情のひとみさんが走って帰ってくる。
ひとみ「ただいま!」
寅「どうしたい、遅かったじゃないか、心配してたんだよ」
ハアハア息を切らせている。
ひとみ「あのね寅さん、フフ」
寅「なんだい?」
ひとみ「私やっぱり結婚する」
寅「…ん…え??」
ひとみ「いいでしょう?」
寅、ちょっと頷き、優しい声で
寅「いいよ」わかってない(^^;)
ひとみさん、照れに照れてて、二階へ走っていく。
ひとみさんおばちゃんに
ひとみ「ただいま!」
おばちゃん「おかえり」
寅「…」
寅、ひとみさんの走っていったほうをい向き、不可思議な顔で
寅「誰と結婚するんだ?」声が上ずっている。
博「に…兄さんじゃあ……、ないと思いますけど」見事なつっこみ。
寅「…そうだよね」(T T)
さくら、デリケートに小さく頷き、
寅を見つめる。
寅「ま…、誰とでもいいと思ってたんだ。…」ああ…(T T)
小さくうなずくさくら。
ちょっと胸のポケットに仕舞い込んだネックレスを触る寅。
ネックレスの箱を見ている寅。
博「そうですね…」
ひとみさんが、もう一度下りて来る。
おばちゃん「あら?何か?」
店に入ってきて
ひとみ「言い忘れてたんだけどね、寅さん」
寅「なに?」
ひとみ「私たちが結婚する時はね、
寅さんにお仲人お願いしようって…、
邦男さんと相談してたの」
さくら「…ああ」
ひとみ「いいでしょ?」
さっき邦男が告白したばかりで
もう結婚&お見合いまで話が進んだんだね。
さすがお互い二度目の結婚式(^^;)
寅「い、いいよ」
さくら「だめよ、お兄ちゃん奥さんいないし…」
ひとみ「あ、そんなの平気よ。
ねえ、だって寅さんが本当に仲人なんですもんね」
独身者が仲人をしてはいけない、という決まりはない。
むしろ形だけの仲人が多いなか、
本当に二人のことをわかっている人ならそれでよいと思う。
新郎新婦と深い縁で結ばれているひとがするべき。
そういう意味では寅でいいと思う。
寅「うん」
ひとみ「いいでしょう?」
寅「い、いいよ」
メインテーマがクラリネットで静かに流れる。
ひとみ「よかった…」
安堵と喜びの表情で、二階へ上がるひとみさん。
おばちゃん「ごはんまだなんでしょ」
ひとみ「うん、もうお腹すいちゃって」
おばちゃん「おつゆあっためるから」
さくら「…」
社長が庭から入ってきて
社長「あー食った。おばちゃん、また飯三杯食っちゃったよ」
博、寅をいたわるように、しかしさりげなく
博「兄さん、お腹すいたでしょ。ご飯食べましょ」
寅は逆にどん底に突き落とされたように
二階の荷物部屋へ沈んだ気持ちで上がっていく。
社長、暖簾のところから覗いて
社長「寅さん、今帰ったのか?」
無言で荷物部屋に上がっていく寅。
おいちゃんやさくらはどう言っていいかわからないで考え込んでしまう。
社長「あれ?どうしたんだ?」
おばちゃん「社長、どうしてこんな時にのこのこやってくるんだい」
さくら、とりあえず二階へ行く。
とらや 二階 荷物部屋
やはりいつものように、
すぐに旅に出ようとかばんに服を詰め込んでいる寅。
さくら、はっとするがするが、すぐには止めないで
さくら「お兄ちゃん、びっくりしたでしょう。
私たちも驚いたわ。
でも…こうなってみると
案外これも自然だなって気がするのよね。
あの二人、きっとうまくいくよ」
寅「また…逃げ出したくなったりしやしねえかな」
さくら「大丈夫よ、今度こそ、ひとみさんの意思で決めたんだから」
寅、小さく頷いて
寅「そうだな…」
さくら「うん」
寅、かばんを閉めて出て行こうとする。
さくら、あせって
さくら「ねえ、ど、どこ行くのよ」
寅「うん、オレもそろそろ商売の旅に出なくっちゃね」
さくら「だって、今ひとみさんに仲人するって約束したばっかりじゃない。
だめよ、旅に出たりしちゃ」
寅「うん…まあな…」
さくら「ね、結婚式まで家にいて、ね」
寅「うーん…」
と、今回はいつにもなく旅に出ることを迷う寅だった。
いつものパターンなら、そんなマドンナの失望なんてお構いなしに
さくらを振り切って旅に出ちゃう寅だが
どうして今回は残ったんだろうか…。
下からおばちゃんの声
おばちゃんの声「さくらちゃん、寅ちゃんごはんまだなんだろ」
さくら「うん、今行く」
さくら「お兄ちゃんいいわね」と
振り返りながら下に下りていく。
雷が鳴る。
寅一人になって窓を見ながら
寅「あーあ…
うーん、辛れえとこだな…」
博のあの言葉を思い出すね。
「ふられた後で気がつくんじゃないか、
『やっぱり恋をしていたんだと…』」
月日は経ち…
川千家 二階 結婚祝賀会場
結局ひとみさんは、なんとこの結婚式の日まで、
とらやの2階にずーっと居候していたのだろう。
正式にお金を払って住んだ下宿人型マドンナは別として、
歴代マドンナの中では結構長く滞在した人だ。
今回は工場の中村君と古沢さんの披露宴もここで行われた。
川千家さん大忙し(^^;)
彼らの1回目の結婚式と同様
懲りずに、『メンデルスゾーンの結婚行進曲』 が使われる。
劇音楽『夏の夜の夢』の中の1曲。
『結婚おめでとう』の文字
川千家さんの看板
小柳
入江
ご両家様
はとバスご一行様
ちり紙交換の軽四がスピーカーをがなり立てて通り過ぎていく。
「まいどーおさわがせします。おなじみのチリ紙交換に参りました。
古新聞、古雑誌、ボロギレ、そのほかなんでも結構ですから
トイレットペーパー、化粧紙と交換いたします」
あちゃ〜〜〜〜。ほんとお騒がせだよ(^^;)
川千家 祝賀会場
ほんの十数人の小さな祝賀会。
窓を見ている社長。
出席者一同、みんな白けて通り過ぎていくのを待っている。
出席者の半分はなぜか柴又参道界隈の人(^^;)
博が司会をしている。
博はさくらと寅が仲人をすることを許したんだね。偉いね。
博「大変失礼しました。新郎新婦の入場でございます。
拍手でお迎えください」
一同拍手。
邦男困った顔で一人中に入ってくる。
邦男「ちょっと待ってください。
仲人トイレ行ってますから」と博に告げる。
一同に
邦男「みなさん、どうもすいません」
博、仲居さんたちに
博「閉めて、もう一回」
とドアを閉めさせ、カセットを止める。
川千家 廊下
さくらと寅、手洗い場から戻ってくる。
さくら「いやねえ、もう、
さっきから何べんトイレ行くのよ」
寅「しょうがないじゃないかでるもの。
出物腫れ物所嫌わずだよ、何言ってんだよおまえ」
と、服を直している。
さくら、邦男とひとみさんに
さくら「ごめんなさいね」
ひとみ寅に向って
ひとみ「大丈夫?」
博の声が部屋の中から聞こえる。
博の声「それではあらためて新郎新婦の入場です」
メンデルスゾーンの結婚行進曲が再び鳴って、
ドアが開き
皆が拍手。
川千家 祝賀会場
新郎新婦と仲人が前に進んでいく。
社長寅に
社長「しっかりやれよ」
寅手を上げて応える。
博「本日は小柳邦男君、ひとみさんの結婚にみなさんよくお集まりくださいました。
ただいまから、二人の結婚を祝って
祝賀会を開きたいと思います。
まず恒例に従いまして仲人の車寅次郎さんに
ごあいさつをしていただきます。車さんどうぞ」
みんな拍手
寅、ガチガチで立ち上がり
寅「い、今?」
博「どうぞ」
寅「ここで?」
博「そうです」
御前様の声「しっかり、やれ!」
寅、ますます緊張する。
おいちゃんたち「うまくやってくれよほんとに」とハラハラ。
寅「…今回は…ニギニギ……
なんだっけなあ…」
おいちゃんたち真っ青。
さくら青くなりながら
さくら「…紙出して紙…お兄ちゃん」 無声音
ひとみさんも無声音で
ひとみ「紙、紙出して」と、邦男に伝え、
邦男も無声音小声で寅に
邦男「紙出してください」
寅「ん?」
邦男「紙」
寅「紙?あ!!…博、書いて来た紙、読んでいいでしょうか」
博「どうぞ」
社長も手でそうしろそうしろと合図。
寅安心して
寅「読むんだったら…」
羽織の中を探し始めるが…
寅「いやね、ちゃんと覚えてきたんだけどさ、一応ここに…」
なかなか見つからない。
邦男心配そう
寅「いや、大丈夫大丈夫」
寅、ハッとして
寅「あれ?」
寅「さっき便所行った時落っことしちゃったかな」
源ちゃんとその周辺大笑い。京子ちゃんたちもクスクス笑い。
なぜ源ちゃんまでが出席してるんだろうか…((((^^;)
虎の巻がどこかへ行ってしまった寅。
で、いつものように、笑いながらもう居直っていく、…
寅「いや、ハハハ、驚いたよオレ、
いや今までね、袴と羽織でもってさあ、
『大』をしたことないんだよなー」
一同大笑い。
源ちゃんには特に大うけ。
寅「これがスカートだったら、
こうやってこうやってスポット出るだろ」としゃがんでポーズ(((^^;)
一同またまた大笑い。
寅「羽織はぬれちゃうんだよ、下もね」
一同笑い続けている。
で、しょうがないからこれ頭のほうへかけてさ、
で、ヒモ解いて口にくわえるんだけどね、
ウンコしながらアクビなんかしたら
ワーっておっこちゃって、
全部ぬれちゃうんだ、ハハハ!」
一同「ハハハ!」
さくら「お兄ちゃん」
寅笑いながら
寅「え」
さくら「やめなさい!」
新郎新婦も下を向きながら笑っている。
すっかり調子に乗った寅、
寅「あ〜あ」
ニコニコ笑って 寅、
扇子をテーブルに打ちつけ、
パンパン!
寅「さて!まあ、こんなところで、
今回はわたくしの持っておりました虎の巻が!!、
ま、ポトンと落ちて、
ウンが着いたというところで
めでたしめでたし!」
なんとまあ…(  ̄ ̄ ̄ ̄ ▽  ̄ ̄ ̄ ̄ ;)
一同「ハハハ!」
寅「ね!ま、これを持ちまして、
はなはだ簡単ではありますが」
一同「ハハハ!」
寅「仲人のご挨拶にかえさせていただきます。へへ」(ノ_-;)ハア…
一同笑いながら拍手。
寅いい気になってその場を仕切っている。
寅のスピーチは面白くて笑えるけど、
面白いだけで新郎新婦の琴線に触れないところがダメ。
本日の酒はサッポロビール
帝釈天参道
そのころひとみさんの母親が
例のキャデラックに載って川千家にやって来る。
川千家 祝賀会場
御前様が詠う、
江戸期の国文学者・本居宣長の詠んだ歌が
聴こえて来る。
御前様「♪敷島の〜大和心を人問わばぁ〜、
朝日に匂う山桜ぁ〜花。
♪敷島の〜大和心を人問わばぁ〜、
(合いの手『いよおーお!』)誰が言ってるんだ?
朝日にィ〜(御前様『はい!』)
会場に入ってくる母親。
ひとみさん母親に気づき、
邦男に母親が来たことを知らせる。
(編集の不具合で2度おいちゃんたちに
お辞儀をしているように見える母親。
お辞儀をする邦男。
お辞儀をする母親。
匂ィィおおおお〜う〜
山桜ぁぁ〜ぁぁバナァァァ!!」
みんなも一緒に「バナァ…」
う〜ん、超前衛〜〜〜!!
御前様って…
やっぱりスーパーエンターティナー!(^^;)
一同笑いながら拍手
御前様「一席お粗末でした」
博「それでは新郎新婦の親族を代表して
邦男君の妹さんの京子さんにご挨拶をしていただきます」
一同拍手
京子「本当は私の父がご挨拶をしなければいけないんですけど、
兄は勘当されているので両親とも来ないんです。
私も…、行っちゃいけないと父は言いましたが、
それは私の自由だと思うんです」
寅、深く頷いている。
京子「お兄さんとひとみさんは、
一度結婚しておいてまた今度結婚するなんて、
ちょっとおかしいみたいだけど、
私はそう思いません。
とっても素敵だなあって思ってます。
お兄さん、ひとみさん、おめでとう」
一同盛大な拍手。
博「仲人よりはるかに立派な挨拶でした」座布団一枚(^^)
社長「その通り!」
寅「そこうるさいよ、黙れ!」と、ブス
一同「ハハハ!」
源ちゃんも大笑い。
玄ちゃんも、色々手伝ったから、出席しているんだね。
珍しくネクタイ姿。
第10作や第20作でもネクタイしてたな。
なぜみんなが笑っているのか
よく事情が飲み込めくて戸惑っているい母親。
隣のひとみさんの母親の顔を見て
急に真面目になりおすましをする源ちゃん(^^;)
博「では次に、
今日の主役である新郎新婦から挨拶していただきます。
まずひとみさんからどうぞ」
一同拍手
源ちゃん「待ってました!!」
源ちゃん、母親のほうを見てニコニコ。
母親もニッコリ。
ひとみ「…私は今、邦男さんの幸せについて考えています。
この前の結婚式の時は
もう自分のことしか考えてなかったんです。
つまり、…なんていうかな…
あの…、人のことを一生懸命考えるっていうか、
相手の幸せをほんとうに心から願うっていうか、
そういう態度が私には一番欠けてたのね」
そのことを教えてくれたのはここにいる寅さんです。
寅、ハッとする。
ひとみのテーマが静かに流れる
いただいたこのネックレスと
一緒に私寅さんのこと一生忘れない。
ありがとう寅さん。
寅小声で、恐縮して
寅「いいえ、どういたしまして」
さくらもひとみさんの言葉に深く感じ入ると共に
兄の優しさをあらためて静かな思いで実感している。
それから、さくらさんはじめとらやのみなさん
ほんとうにどうもありがとう。
おばちゃん小声で
おばちゃん「とんでもない」と恐縮。
ママ…来てくれてほんとうにどうもありがとう。
私、今…しあわせよ」
静かに頷き涙する母親。
人はそれぞれ幸せになりたい。
後に大学生、社会人となっていくの満男もそのことを常々考えていた。
しかし、ひとみさんの思う幸せとママの幸せには上記のようにずれがある。
寅が思う幸せとさくらの幸せも本当は、ずれがある。
リリーの幸せと寅の幸せも微妙にずれがある。
それでも人は時としてやはり人を大事に想い、
人の幸せを心から願う。人を無心で護りたいと思う。
その時世知辛い人の世にも少し潤いが生まれ、人の心に血が通う。
人が生まれてきた意味は最後は全てそこに集約される。
ひとみさんは、そのことを寅の優しい気持ちから学んだんだね。
博「次に新郎の邦男さんどうぞ」
みんな拍手。
邦男「あのー、…ぼく、歌が下手…いや、話が下手なもんですから、
挨拶の変わりに歌を歌いたいと思いいます」
みんな拍手。
寅「おまえ大丈夫歌えんのか?」
と、ちょっと心配そう。
邦男頷いて
邦男「大丈夫です」
布施さん歌上手いよ(^^)
寅小声でひとみさんに
寅「歌ったことあるの?、あれ」
寅、邦男に向って小声で
寅「何歌うのおまえ」
拍手の中
椅子を持ってきて友人から渡されたギターを持つ。
そういえばアパートにもギターは置いてあったなあ。
邦男「あんまり上手くないんですけど」
御前様「下手でもかまわん」
寅「そう!心で歌え、心で」
ちょっと爪弾いて音あわせ。
邦男「それじゃ」
寅、大声で
寅「みんな笑うな!!」
ギターの音が鳴り始める。
邦男「♪壊れそうな優しさを僕は抱きしめ
君のまえではいつも陽気でいたい。
きらびやかなものに惑わされないで
どうか僕のとこへやって来ておくれ。
君は君のために翼を広げて
信じるものに向かい飛び立つんだ。
僕にできることは何もないけど、
とまり木ぐらいなれるだろう…。
いつまでもいつまでも変わることない
大切ななにかを見つけてほしい。
涙がみるみる溢れていく京子ちゃん。
歌に聴き入る源ちゃんとひとみさんの母親。
いつまでもいつまでも………大切な何かを…
ひとみさんを見つめながら涙を流す邦男
ついには歌えなくなりハンカチで目を押さえる邦男。
邦男「うううう、うううう」
邦男を見つめている御前様。
内気で控えめな邦男の
精一杯の愛情表現だった。
ひとみのテーマのスキャットが静かに流れる。
京子「うううううう…ううううううう…」
と、兄の気持ちが痛いほど分かり
泣きじゃくる京子ちゃん。
涙を抑えるひとみさんの母親
泣いてしまうおばちゃん。
邦男さん、ほんとうに人が人を大事に想うということが
心底伝わるいい歌だったよ(TT)
寅も泣いてしまい、ハンカチを取り出そうとして、
虎の巻を見つける。
寅「さくら、紙あった」
さくら「もういいのよ」と泣いている。
ひとみさん、涙を流しながら
立ち上がって邦男に拍手。
一同も拍手。
寅前に出て
寅「みんなどうも今日はありがとう!
ほんとうにありがとう!
よかった!」
と、邦男の肩を掴む寅だった。
社長「おめでとう!おめでとう!」
御前様「よかったー!よかったぞ!よかった!」
一同大きな拍手。
泣いてしまう寅。
ああ…
第1作のさくらと博の結婚式のラストを思い出すね。
そのシーンのまんま( ̄ー ̄)
↓
夏真っ盛り とらや
せみの声
風鈴の屋台
とらや 台所
真っ赤なスイカを割るおばちゃん。
ひとみさんの母親がお礼に来ている。
母親「ところで、あの子たち、
ちゃんと暮らしているんでございましょうか?」
おいちゃん「ええ、共稼ぎでお忙しそうですが、
お元気ですよ」
母親「じゃあ、時々こちら様には」
おいちゃん「はい」
さくら「ええ、お風呂の帰りにお寄りになって、
お団子を食べたりして」
おいちゃん「とても仲がよくて、な」
さくら「うん」
安心する母親。
母親「あー、さようでございますか、いろいろと御世話になります」
おいちゃん「ご心配でしょう離れていらっしゃると」
とタバコを取り出す。
母親「はい、なんですか、一番手がかかった娘なもんでございますので、
いつまでも気になりまして」
おいちゃん「さようでございますか」
寅、よかったね。二人は今、幸せだよ。
おばちゃんスイカ持ってきて
おばちゃん「お恥ずかしいようなもんでございますけれど、
どうぞお召し上がりおあそばし…ま…あの…」
またまた出ましたおばちゃんのあそばせ口調(^^;)
さくら、とっさに
さくら「どうぞ」と微笑みながら差し出す。
母親「おそれいります。
あのー…さくら様、今日はお兄様は
お出かけでいらっしゃいますか?」
どうやら仲人のお礼に来たようだった。
さくら「実は…先月の末から旅に出ておりまして」
残念そうな母親
母親「まあ、残念でございますわ、実は今日はね、
お仲人していただきました御礼にと、
おうかがいいたしましたんですが、
一同お辞儀
母親「あのー、ご旅行先はどちらでございますか?」
おいちゃん「ご旅行先はいつも…」(^^;)
さくら「は…暑い時は北の方にでかけるんですけど」
おばちゃん、にこやかに微笑みながら、
おばちゃん「贅沢な男でございまして」
このおばちゃんの言葉は心に沁みました。
味のあるセリフだね。文句なしに名言。
こういう言葉があるから
この映画シリーズは懐が深いんだ。
母親「やっぱり軽井沢のほうへ」
おばちゃん「…はい、さいざます」と、口からでまかせ(^^;)
さくら驚いておばちゃんを見る。
さくら「…」
母親「さいざますか、じゃあちょうど都合がようございました。
実は私どもも明日から
あちらへ出かける予定にしておりますもので」
みんな「はい」(((((^^;)
母親「ひょっとしてあちらでお目にかかるかもしれませんわね」
おばちゃん「ほんとでございますねえ」またまたでまかせでまかせ((((〜〜;)
さくら、また、おばちゃんを見る。(^^;)
おいちゃん小声でおばちゃんに
おいちゃん「青森じゃなかったのかい?」
おばちゃん「違ったかい?」小声
さくらおろおろ。(^^;)
こういうギャグは第15作「相合い傘」で、
兵頭パパの奥さんがとらやに来た時に使われたパターンだ。
庭から社長の声
社長「あー、暑い暑い、あー…、
おばちゃん、工員たちになあ、コーラやってくれねえかな」
と、まな板の上のスイカをほおばる。
母親「まあ、社長様、ごきげんよう」とお辞儀。
社長、びっくりし、あわてふためいて、
座敷に上がり深々とお辞儀。
さりげなくポケットから扇子を出して扇ぐ。
母親「まあ、先日は娘のことでいろいろとありがとうございました」
同時に店でお客さんが呼んだらしくおばちゃんが反応。
さくらが、私が行く、とおばちゃんに目で合図。
微笑みながらも店のほうへ。
なんとも繊細な演出。
そして母親の声とかぶさるように
寅の暑中見舞いのナレーションが入っていく。
見事な編集の技。
さくらのテーマが流れる。
寅の声「拝啓 とらや御一同様。
東京は暑いことだろう。
寅のナレーションが続く。
寅の声「涼しい北国の宿でこの便りを書いている。
ひとみちゃんは元気か。
なにしろあの頼りねえ二枚目が亭主じゃ、
ひょっとしてひとみちゃんは
不幸せなんじゃねえかなと、
それを考えると、仲人のオレとしちゃあ、
心配で夜も眠れねえ。
あの娘を、くれぐれもよろしく頼む。
寅次郎 拝」
北海道 支笏湖湖畔 桟橋
寅は、またもや支笏湖に来ている。
あまりにも露骨なロケの繰り返し。
大人の事情、松竹の事情、撮影の事情、予算の事情…、
でも知らないふり知らないふり(^^;)
桟橋を歩いていく寅
汽笛を鳴らす遊覧船。
そして、例の旅館の若旦那がまたもや
いつものようにナンパしている。
肩に手を掛けようとして払いのけられ、押し倒される若旦那。
女の子「なによー」
若旦那「なんだよー」
女の子「私、そんな女じゃないわよ、バカにしないでよ」
去っていく。
若旦那「おい、ちょちょちょ、ちょっと」
女の子「なによー」
寅が見ている。
カメラ、ズームになって。
若旦那「かたいこというなよ、
どーせおまえ処女じゃないんだろ」
女の子、怒ってビンタ バシ!!
アタ!
かけていく女の子。
彼女笑っちゃってます&帽子が飛んじゃった。NG。。。((〜〜;)
若旦那「あけみー」
と追いかけようとするが
寅の気配を感じ
ちょっと照れながら通り過ぎざまに作り笑い。
若旦那「ハハハ!」
と横を向きながら通り過ぎていく。
寅「フフフ、よお、おい」
ピタッと止まる若旦那。
若旦那「あ!」
と、驚き
若旦那「ハハハ、また見つかっちゃったですか、ハハハ」
メインテーマが流れ始める。
寅「あー、そうか、お前の旅館このあたりだな」
よく言うよ、知ってるくせに(−−;)
若旦那「はい」
寅「よし、今晩お前んとこにする」あ〜あ(−−;)
若旦那「あのー、今晩団体さんでいっぱいなんですけれども」
寅「断る?」
若旦那「いやいやほんとです」
寅「警察はどこかな?」と、キョロキョロ
私はあんまり好きじゃないんだけどな、この手の「脅しギャグ」。
寅っぽくない、っていうか粋じゃない。
若旦那「あ、いえ、あのー…、
僕の部屋でいいでしょうか?」
へえ〜、いいところあるんだねこの男(^^)
寅「ハハ、いいよいいよォ、うん」
若旦那ほっとしている。
寅「そうか!じゃ、今晩は、
お前のとこで色懺悔でも聞くか、ハハハ!」
若旦那「いやあ、ハハハ」
寅「迷惑かけてんじゃない?」今回の合言葉(^^)
若旦那「そんなことないですよ、ハハハ」超迷惑(((^^;)
と言いながらも、さっきの女の子が気になって振り返る若旦那。
一方、さっきの女の子、別の男たちにナンパされている。
メインテーマ大きく高まって
夏の支笏湖がキラキラ輝いて広がっている。
まあなにはともあれ、
一組のカップルがようやく普通に自分の足で人生を歩き始めたという
それだけのことなのだが、
抜け出せないほどのしがらみと与えられたぬるま湯の中で
ただそれだけのことが意外にも難しい人たちが世の中にはいるのだろう。
それにしても今回の物語、
なぜか妹役の戸川京子ちゃんの泣き声がいやに耳に残った。
実直で線の細い兄を心底心配し思いやる妹。
「兄と妹」
やはりこの永遠のテーマはなかなかいいものである。
いわゆる「妹の力」を今回は別の形でみせてもらったって感じだ。
終
出演
渥美清 (車寅次郎)
倍賞千恵子 (諏訪さくら)
桃井かおり (入江ひとみ)
布施明 (小柳邦男)
下絛正巳
(車竜造)
三崎千恵子 (車つね)
前田吟 (諏訪博)
中村はやと (諏訪満男)
太宰久雄 (タコ社長)
佐藤蛾次郎 (源公)
笠智衆
(御前様)
松村達雄 (最初の仲人)
犬塚弘 (タクシー運転手)
桜井センリ (結婚式場の係員)
湯原昌幸 (旅館の若旦那)
小暮実千代 (ひとみの母親)
スタッフ
監督: 山田洋次
製作: 島津清
企画: 高島幸夫 、小林俊一
原作:
山田洋次
脚本: 山田洋次 朝間義隆
撮影: 高羽哲夫
美術: 出川三男
編集: 石井巌
録音 : 中村寛 松本隆司
照明: 青木好文
スクリプター:
長谷川宗平
音楽: 山本直純
助監督: 五十嵐敬司
製作進行 : 玉生久宗
制作補 :
峰順一
公開日 1979年(昭和54年)8月4日
上映時間 107分
動員数 172万6000人
配収 10億7000万円
次回はようやく第24作「寅次郎春の夢」です。
この作品マドンナはさくらでもあります。
結婚後のさくらが一人の女性として扱われる数少ない作品です。
前編のアップはバンコク滞在の後、バリに着いてからですので、
だいたい…11月中旬頃でしょうか。
ゆっくり気長にお待ちください。
今年中になんとか第26作「寅次郎かもめ歌」もアップしようと思います。