第24作 男はつらいよ

 1979年12月28日封切り


  



                   



さすらいの旅人マイケル、悲しく切ない恋の物語


さくらを女性として扱った異色作品



今作品のマドンナは圭子さんではなく、実はさくらだ。


女性としてのさくら。つまりさくらの本当の恋の物語は、もちろん第1作のみであるが、
この第24作はもう一度さくらに恋をする男性が現れるのである。その男はさすらいの旅人マイケル.ジョーダンだ。

山田監督はさくらに第2作以降、母なるもの、妹の力、つまり「聖なるもの」としてのみ表現してきた。
当時まだまだ若くて美しい倍賞さんをスクリーンで見続けてきた私たち観客には、
彼女を博の奥さん、満男のお母さんどまりのイメージのまま閉じ込めてしまうのは
あまりにももったいない映画つくりにも見えていた。
これは車寅次郎の恋の物語であるということを考慮してもなお、もう一度女性としてのさくらを見て見たい気持ちを
抑えることは誰もが出来なかったはずである。

そんな時、マイケルジョーダンがスクリーンに登場した。


彼は慣れない日本でのセールスで身も心もボロボロになった時、とらやの人々に救われ、とりわけ、さくらの
優しい心根に故郷アリゾナの母の面影を見、そして自分にとっての理想の女性をそこに見つけるのだった。

マイケルの心の高ぶりは京都での妄想にも表れる。
坂東鶴八郎一座演じるプッチーニの「蝶々夫人」を見ている最中に愛するさくらを想い幻覚を見る。
ピンカートンを自分に見立てて、蝶々夫人をさくらに見立て、再会に感激し、抱き合うのだ。
たとえマイケルの中の夢の妄想シーンといえども山田監督がさくらを博以外の他の男性と女性として
抱擁させたのはこのマイケルだけである。さくらの歌う「ある晴れた日」はおそらく吹き替えなしの倍賞さんの声。

そしてラスト付近で、ついにマイケルは自分の気持ちを抑えきれず、さくらに愛を告白する。
博を愛するさくらは、もちろんその場で「インポッシブル」とすぐに断るが、それでも、戸惑い、困惑し、寅に相談する。

さくらからそのことを秘かに伝えられた寅は、

寅「アメリカ人はよ、お互いの気持ちを察するって言うのは苦手なんだ。
 ハッキリ口に出して言わなきゃ納得しないんだ。
 オレたちみたいに、想いを胸に秘めてスッと立ち去る…。
 そんな芸当はとてもできやしないんだ。…だから、な、勘弁してやれよ。


と言った後、そっと

寅「バカだな、あいつも…」と独り言のように小さく呟くのである。

まるで寅自身の人生とダブらせるように…。寅には、マイケルの気持ちが痛いほど分かるのだろう。
この「バカだな、あいつも…」は、背後に、毎回実ることない恋を続ける寅の人生も見え隠れする本当に
切なく哀しいセリフだった。恋をする男はいつもどこかぶざまで哀しいのだ。



そして、さくらとの別れ際、寅はマイケルに、さくらに何か言ってやれ、と勧める。
マイケル「さくらさん、…ほんとにごめんなさい
さくら「…いいえ
マイケル「さよなら
さくら「…さよなら


と、マイケルはさくらの手を握り、そして立ち去っていく。
あの握手は、もう生涯会うことはないであろうマイケルの万感の思いのこもった握手だった。


                 
マイケルがアメリカへの飛行機の中で遥か下を流れる江戸川を見ている。
プッチーニの「蝶々夫人」からの歌曲「ある晴れた日」がスクリーンに美しく流れる中、
さくらは同じ頃、マイケルが乗った飛行機を江戸川土手で座って遠く見送っているのである。

この江戸川土手のさくらの優しい表情は、爽やかで温かい余韻が残る実にいい顔だ。
マイケルが乗ったであろう飛行機を遠くいつまでも見つめるさくら。

この時のさくらの気持ちとあの目を博は知る由もない。
この僅かなさくらの秘密がこの作品に柔らかな奥行きを与えているのだ。
この物語によって、その後のさくらのキャラクターに膨らみが出たと思う。




香川京子さんの存在感

一方、もちろん寅も恋をするにはするが寅の存在はさくらのお兄様って程度で終わりがちだった。とほほ。
圭子さんは、茶の間での寅の愛情に対する『アリア』に耳を傾け、共感し、深く頷いていたものの。
彼女と寅との絡みは全体的には希薄で、マイケルとさくらの絡みの方に中心が置かれている。

しかし、香川京子さんはどこまでも美しく上品でその存在自体が魅力的。それゆえ、私などは脚本的にもっと彼女と寅との縁を
深くして欲しかったと思っている。私以外でもあの名優、香川京子さんをもっと生かして欲しかったと悔しがった人は多いだろう。
私は昔「東京物語」を見て以来、香川さんの大ファンだ。なんとか彼女と寅のハイライトを作って欲しかった。
いきなり、恋人の博のお兄さんにうりふたつの(^^;)貨物船の船長さんなどが安直にやってきて、おしまいにしてしまわないで、
彼女に寅の恋心をしっかり感じて欲しかった。
最終的に寅に「デイス イズ インポッシブル」と言ってもいいから(^^;)寅の気持ちを一度は心に留めて欲しかったのだ。
あー残念。




それでは本編完全版をどうぞ。


今回も夢から。


松竹富士山



            





Chinatown San Francisco


            



サンフランシスコのチャイナタウンはアメリカ最大のチャイナタウン。


In The Depression Years of the 1930's

一部の金持ちは贅沢に酔っていたが、一方大衆は貧乏のどん底にあえいでいた。



ある場末のバー兼売春宿



ナレーション

チャイナタウン.サンフランシスコ。

蓄音機が鳴っている。


居眠りしているタコ社長扮するオーナー。



映画『蜂雀』The Hummingbirdのポスターが掛かっている。



            







配給:パラマウント支社
製作国:アメリカ(1924)


写っている女優はグロリア・スワンソン

1897年3月27日生まれ アメリカ/イリノイ州シカゴ出身
ハリウッドへ赴きマック・セネットと共に“海水着美女”として多くの作品に出演。
その後セシル・B・デミルに認められ「夫を変へる勿れ」を皮切りに瞬く間にスターの仲間入りを果たした。

「港の女」、「トレスパッサー」でアカデミー主演賞候補となった。
48年にTVショーに出演した彼女を見たビリー・ワイルダーが、あの「サンセット大通り」に招き入れ
3度目のアカデミー候補になる。その後74年の「エアポート'75」で再び復活。

結婚はウォーレス・ビアリーなどと計6回。83年、老衰のために死亡した。





               



ピストルの音がして。


居眠りしていたタコ社長がびっくりして起きる。


ドアが開いて、腕を撃たれた車寅次郎がよろけながら入ってくる。




               



女たち「キャー!!!

おお!なんと谷よしのさんが!こんなところに!


               

             




谷さんにしてはなんだか妖艶な(^^;)…娼婦役??



               





客や娼婦たち


What happened!?


What are you all right










              




女給のさくら、コップに水を注ぎ、


さくら、恐々「はい」と置く。

寅、水を飲んで

寅「ぷはっ、ありがとよ

さくら、はっと気づいて

さくら「あんた日本人ね!


外でなぜかチャルメラの音(^^;)


寅「あー…、何年ぶりに聞くかなあ…、日本の言葉を…

さくら、近づいて

さくら「傷、大丈夫?

寅「ほっといてくれ…
  どうせ長くない命だ。お尋ね者の暮らしはもう飽き飽きしたよ…。
  あ、そうだ。
  オレの頼みを聞いてくれねえか…。
  もし、日本へ帰るようなことがあったら、
  ある女に、このお守りを渡してくれねえか…



 と、帝釈様のお守りを女に渡す。


寅「兄貴の形見だと言って…

女(さくら)、お守りを見つめている。


日本古謡 「さくらさくら」が流れる。

さくら さくら
弥生の空は 見わたすかぎり
霞か雲か 匂ひぞ出づる
いざや いざや 見に行かん



物語後半でプッチーニのオペラ「蝶々夫人
が出てくるが、
実はこのオペラの第一幕にこの「さくらさくら」のメロディが登場する。




             




寅「お兄ちゃんはどこにいるのと、その女が尋ねたら、
  遠い遠いアメリカはサンフランシスコというところで
  惨めな生涯を終えたと。
  しかし、死ぬ間際まであんたの幸せを祈っていたと、そう伝えてくれ


さくら「それで、あんたの名前は?


寅「オレの名前は、姓は車、名は寅次郎…、
 
 そして妹の名前は…




                



さくら「さくら…

寅「さくら。
 この名前を日本の空に向って、どれほど呼んだことか…、
 はっ、どうしておまえその名前!?


さくら「

寅「もしやおまえは!

さくら「お兄ちゃん!


寅「さくら!



           





その時、寅を探しにマイケル扮するFBIが入ってきて、


手下の源ちゃんがピストルを突き出し、



マイケル「
OPEN!


          



源ちゃん、入ってきてピストルを突き出す。


タコ「アミーゴアミーゴアミーゴと「友達」であることを主張

なぜか英語でなく中国語でもなくスペイン語!

マイケル「私はFBIだ。動くな、焼きそばにするぞ!と言ってるみたいです(^^;)



威嚇射撃をするが、運悪く天井の扇風機に当たり、
それがマイケルの頭に落ちてあっけなく自爆。
あちゃ〜〜〜バカだねえ…(TT)



          




ふらふらになったところで手下の源ちゃんを間違って撃ってしまう。

源「
うわー!!…あほやな」  バタッ…


 
          





寅「おお!天は我に味方をしてくれた!
  さくら、早く日本へ帰ろう!


さくら「でもどうやって?


船乗りの博が都合よく入ってきて(^^;)


博「寅さん!あなたを探していました!

寅「博さん!いいところへ来てくれた!

博「日本行きの船が出ます



         



博「急いで!

さくら「はい!

寅「さあ、みんなもはやく自由になろう!

外でチャルメラの音。

娼婦たち、「謝謝」「来来」などと言って逃げていく。


タコ社長は「借金返せと焦っている


ふらつきながらFBIのマイケルはまたピストルをぶっ放してしまい、
運悪くタコ社長にあたる(TT)



タコ社長「ノー、アミーゴー」と言って倒れる。








日本への汽船 日本丸のデッキ

TOKYO

寅とさくらがデッキに出ている。



博「車さん

歩み寄り

博「もう大丈夫ですあとは一路日本に向かうだけです


寅「博君、君のおかげで僕たち兄妹は救われることができました。
  ほんとうにありがとう



さくらお辞儀をして

さくら「ありがとうございました

寅と博固く握手。




           



汽笛が鳴る。

海のかなたから朝日が。。。



BGM盛り上がる。


寅「おお!今ひんがしに陽が昇る!
 朝日まで私たち兄妹の前途を祝福するようだ!




                  



二人の晴れやかな頬が朝日で朱に染まっていく。


微笑み双眼鏡でかなたを望む博。



夢が終わり…


ここから現実…、





紀州 和歌山市 加太港

の小さな連絡船 えびす号 の中



太陽を顔に受けている寅、寝ぼけて
船の中で転んでしまう。

乗客のおばさんおじさんたち大笑い。





         





寅「どこだどこだ、…着いたか日本へ最初から日本やろがゞ(^^;)





                    



寅「夢か…、ヒヒヒヒはあー


ちょっと照れてる寅。


         







タイトル イン




         







はつらいよ 寅次郎春の夢


江戸川土手に立ち、懐かしい故郷柴又を眺める寅。




       




口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。


   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前の喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


   ♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら こんな苦労も
   こんな苦労もかけまいに かけまいに♪




懐かしい柴又へまたもや帰ってきた寅。

河川敷ではテニスの練習をしている女性たちがいる。


         



寅はテニス姿をじろじろ見てしまい、なんとなく「いやらしいわねえ〜
って見られる。

女性「何か用ですか」と質問。


            



寅もはっと気づいて、気まずくなり、ブスッとしてスゴスゴ立ち去る。




            





もちろん寅は別に悪くない。
わざわざ大勢の前で自主的に練習しているのだからその姿を見られるは当たり前。
それがいやなら、そんな姿で人前で練習するなと私は言いたい(−−)



ちょっと離れた場所では女子学生たちが陸上競技の練習をコーチの
指示の元行っている。



コーチ役はお馴染み今回もコントの帝王、津嘉山正種さん!


さっきと同じように何気なく女学生達を見ている寅。



         




女子学生たち、みんな短パンになるため、ジャージを脱ぎ始める。

寅、なんだかいよいよ恥ずかしがってスゴスゴ去っていく。




         




たった一人の男子学生(コーチ補助)が短パン履き忘れて、
ヨレヨレのパンツ姿になってみんなに笑われ、
コーチに散々な目に合うが、怒って仕返しをして
喧嘩になるというバカコント(^^;)




             





監督原作 山田洋次



             






江戸川土手近く


さくらが土手から自転車をこいでくる。


さくら、『
英語塾 柴又英会話教室』の前で自転車を止める。


看板には

『中学生の基礎英語、基礎英会話教えます』

講師 高井めぐみ


めぐみちゃんといえば
第11作「忘れな草
の青森から来た工場の水原君の彼女を思い出す。


めぐみ「
あ、おはようございます

『WHITE』ロゴのトレーナー。

さくら「
こないだはごめんなさいね、満男が日にち間違えちゃって

めぐみ「
いいえ、今日は4時からですから間違えないように

さくら「
ほんとうにぼんやりしてるんだから

めぐみ「
フフフ

さくら「
じゃ、ごめんなさい

めぐみ「
さよなら

さくら「
さよなら


どうやら満男は近所の英語塾へ通っているらしい。

この若い女性が高井めぐみさんと言って
アメリカに住んでいた『柴又英会話教室』の先生。



            




さくら、題経寺の二天門前を通過。


ポスター 庚申日 10月20日

源ちゃん、眠そうに掃除。

さくら自転車漕ぎながら、チリーンとベルを鳴らして

さくら「
おはようー

源ちゃん「
フワアア」と大あくび。

源ちゃんにいつも挨拶してくれるのは柴又界隈ではさくらだけ。




          






とらや 店


さくらが自転車でやって来る。


おいちゃん「
よおー

さくら「
もう、秋ねえ

さくら「
お寺の紅葉がすっかり色づいて

おいちゃん「
んー

さくら「
おばちゃんは?

おいちゃん「
二階

さくら「


おいちゃん、割り箸を紙に入れながら

おいちゃん「
甲府からぶどうたくさん送ってきたんだけど、痛んでてなァ

さくら「
あら

おいちゃん「
おまえ、好きなだけ持ってけよ

さくら「
うん


二階へ上がっていくさくら。



とらや  二階



          


おばちゃん、もらいものの大量のぶどう(関山ぶどう)を
たくさんの箱から出し出し寅の部屋に広げてより分けている。


さくら「うわー、いっぱい!


おばちゃん「
こんなにたくさんくんなくてもいいのにねえ



関山ぶどう。。。って甲府じゃなくて山形県じゃないのかな。




          




おばちゃん「
よいしょ」と空箱を廊下に持っていく。

さくら、一粒食べて

さくら「
うん、おいしい

おばちゃん「
これからくだものが美味しくなる季節だね。栗、柿、りんご、みかん

おばちゃん「


さくら「
うん?

おばちゃん「
寅ちゃん、そろそろ帰ってくる頃だねえ

さくら「


さくら「
うん



          



下からおいちゃんの声

おいちゃんの声「おい、さくら、下りて来い」

さくら「
なあにい?」とぶどう見ながら大声。

おいちゃんの声「
寅だ、寅が帰ってきた


さくら、表情が華やいで

さくら「
えー!!



          



と、下へ降りていく。

おばちゃんも追いかける。


暖簾をくぐって


さくら「
お帰りお兄ちゃん



           




寅「
よお!

さくら「
フフ

寅「
おまえ、お寺の横、自転車で走ってたろ、一生懸命

さくら「
うん

寅「
オレ見てたよ、フフフ



           



さくら「
声かけてくれればいいじゃい、ねえー

おばちゃんも出てきて

おばちゃん「
おかえり

寅「
よお、おばちゃん、元気か

おばちゃん「
なんとかね

寅「
そうか、そりゃよかった

みんなでフフフと笑う。


寅みやげ物をくるくる手で回す。

さくら「
なあに?

さくら「
あら、なんだろ

寅「
ぶどうよ、季節のもんだからな

さくら、一瞬青ざめ、知らん顔でにこっとする。


このパターンは第19作「殿様」のこいのぼり騒動に似ている。


          



寅「
今年はまだ食ってないだろ

おいちゃん、おばちゃん複雑な顔つきで戸惑っている。

おいちゃん「


オバちゃん、ニコッと笑って

おばちゃん「
ん、まだ。フフ」うそ((^^;)

おいちゃん「
初物だ大うそ(((^^;)

寅「
そうかい、それはよかった

さくら、茶の間を指して、「
お兄ちゃん上に上がったら

寅「
うん

寅、台所へ歩きながら

寅「
あーあ、暑い夏が終わったらよ、がっくり疲れがきたぜ

おいちゃん「
あー、オレもなあ、もうこの頃肩凝ってしょうがねえや、うん

おばちゃん「
さあ、お上がり

寅「
おばちゃんよ

おばちゃん「


寅「
オレの部屋でもってごろっと横になりてえんだけどいいかな

おばちゃん、青ざめて

おばちゃん「
あ、あのね、今二階散らかってんだよ

寅「
いいじゃないか、散らかってるくらい

さくら「
でも、横になるんだったら座敷でも

みんなで「そうそう」

寅、微妙においちゃんを睨む。

おいちゃん、ビビッて

おいちゃん「
へ…

寅「
誰かオレの部屋にいるのか?

おばちゃん「
ううん、誰もいやしないよ。おまえの部屋じゃないの

寅「
だったら、いいじゃねえかおばちゃん、さあ、行こ行こ

と歩いていく。

寅、「
」っと振り向いて、さくらに

寅「
あー、久しぶりだな、フフ」と上がっていく。

おばちゃん、二階に上がる寅を覗き込んで、振り向いておいちゃんたちに、

おばちゃん「
どうしよう、二階いっぱいぶどう広げてあんの

おいちゃん「
えー!!知らねえぞ、オレは〜!」と逃げる。



           



おばちゃん小声で

おばちゃん「
どうしようさくらちゃん

さくら「
困ったわねえ…

二階を覗くおばちゃん。



二階から寅の咳払い。

寅の声「
ァ、ウホン


ビビルおばちゃんとさくら。


階段を下りながら寅のキツイ目が光っている。



           




ぶどうを口に含みながら房を持っている。



口からぶどうの皮をさくらに向かって吹く。

ぺッ
 

うひゃあ〜〜〜〜〜すさまじき山田演出((((((^^;)

おばちゃんに向かっても

ぺッ


& ぶどうをおばちゃんに放り投げる。


おばちゃん「
うわ!

ああ。。。寅って下品(−−;)



          



台所の椅子に座る寅。
恐ろしいほどの緊張感が走る。(((((((^^;)



さくら、寅の
お土産のぶどう持ちながら

さくら「
あのね、お兄ちゃん

寅、そのお土産ぶどうをさくらから取り上げて

寅「
ああー!!と不機嫌にテーブル向こうに置いてしまう。



          



博が庭に現れる。

助かったとばかりに

おばちゃん「
あ!博さん来た!」と寅の前を飛ぶように走り抜けていく。



          




おばちゃん「
博さん!寅ちゃん帰ってきたよ

博「
え?

と言いながら、なんとぶどうの箱
持っているではないか。

あちゃ〜〜〜〜〜〜(><;)

博「
あー!お帰りなさい」と笑顔。

博はなんにも事情知らないから
ぶどうの箱もってにっこにこ。


寅ブスッとしながらも

寅「
よお、元気かい博

博「
ええ

さくらにぶどうの箱を見せながら

博「
さくらこれ、社長の奥さんから

寅、ぶどうの山を見てムカッ



           




さくら「
あら!

博「
おすそ分けですって

ぶどうをずっと睨み続けている寅。

そして寅の土産のぶどうを見つけて

博「
なんだ、ここにもぶどうがあるじゃないか

さくら「あ…それ…

博、中を覗いて

博「
あは、これすっぱくてまずいやつだぞォ、
 誰持ってきたんだ?


ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ  チ〜〜〜ン


と、ぶどうを取り出しみんなに見せるバカな博。



さくら「
お兄ちゃん…」…ああああ…(TT)

おいちゃん、指差してあわあわ…。


博「
ええ…

一同緊張が走る。

さくら「
お兄ちゃんのお土産よ


博を睨む寅。


唖然とする博。


博「


寅ギロリと睨みながら

寅「


博「
はい

寅「
社長はどうしてる?

博「
はい、今税務署に行ってますけど

ゴミ収集車の音楽が遠くで流れている。

寅、頷きながら、立ち上がり

寅「
そうか、おまえたちがなぶどうがしょっぱいだの甘いだのと
  ゴタクを並べている時に、あいつは経営者の苦労を一身に背負って
  飛び回っているんだなあ…、可哀想に


と庭に出て行く。

博「
すいません…




外でお客の声「ごめんください」

さくら店に向かい

さくら「
いらっしゃい。なんにしますか


台所で寅のぶどうを見ている博。

先ほどの発言を後悔している様子。


ぶどうをきっかけとした寅の不機嫌は
こうして夜まで続いていくのだった。




夕闇迫る柴又

源ちゃんが撞く題経師の鐘

ゴ〜〜〜ン






とらや 茶の間 夜


満男、友達と店先で別れる。

満男たち「バイバ―イ」

満男「
ただいまー

みんなで「おかえり」

満男、台所に来て不機嫌に寝転んでる寅を発見。


さくらにぼそぼそ。

さくら「
は、伯父さんよ

満男、茶の間に上がる。


           



おっと満男君、
ヤクルトスワローズのファンなんだね!

寅、起き上がって

寅「
よお!なんだおまえ、だいぶまた大きくなったじゃないか。えー

博「
おい、挨拶しろ

満男帽子取って

満男「
グッドイブニング



           




寅「
へ?

満男「
ハウアーユー

博下を向く。

寅博に

寅「
どうしたんだあいつ。何言ってんだ?

博「
英語ですよ。今…英語の塾に行ってるんです

さくら、台所から

さくら「
アメリカで長く暮らしていた人で、まだ若いけどとってもいい先生なの

寅「


博「
流行(はやり)なんですよ

寅、ちょっと複雑な顔して

寅「
へー、満男が英語をね

『寅のぶどう』とほうれん草のおひたしがテーブルに。

おいちゃん「
今日は、なに習ったんだ?え

満男「
お父さんはファーザー

おいちゃん「




           



博「
へえー、お母さんは?

満男「
マザー

さくら、やって来て

さくら「
じゃ、伯父さんは?Uncle

満男「
伯父さん?

さくら「
伯父さん?

満男「
伯父さんはねえ…

寅、ちょっと興味をもって聞いている。

寅、ちょっと笑って、小声で博に

寅「
わかんないんだよ

満男「
タイガーう〜〜〜ん good job! d( ̄◇ ̄)b



            



さくらと博大笑い。

おばちゃん「
うまいうまい、フフ



            



寅、感心して

寅「
あーそう、英語ではおいちゃんのこと『タイガー』って言うの。
  はー、それは知らなかった
」」

寅、台所のおばちゃん指差して

寅「
じゃあ、おばちゃんのことなんて言うんだい?Aunt

みんな「…」



            




博「
兄さん

寅「


博「
猛獣の虎のことを英語でタイガーって言うんですよ

おいちゃん「
シャレだよシャレ

台所でおばちゃん寅を見て

おばちゃん「
バカだねえ…

おいちゃん「
ちょっと新聞とってくれ

寅、ようやく分かって

寅「
あ!、あ、そうか、つまり満男は英語でシャレたってわけね

おいちゃん「
そうそうそう

寅「
上等だよ、うん…、そうか…。
  虎がタイガーだとしたらライオンは何ていうんだ?


満男「
ライオンは英語でもライオンだよ

寅、ちょっとブスッとして

寅「
ふーん…、根っから英語かあれは。なるほどね

さくら「
ごはんにしよ

博「
ビールどうぞ」とビールを持つ。

寅機嫌の悪いまま

寅「
先生よ、じゃ、このビールは英語でなんてんだい?本当はBeer(ビア)

博「
これも英語ですけど

と寅のコップに注ぐ。



          






寅「
じゃ、コップはなんて言ってくれるんだい、コップはよ

博ビールを注ぎながら

博「
コップも英語なんですけど…本当はcup(カップ)

おいちゃん、止めに入って

おいちゃん「
もうもう、英語の話はよそう、な。飯にしよう

さくら、ご飯をよそう。



そこへ間が悪く社長の声



そこへ世界一間の悪い社長が例のごとくやって来て



社長「
おばちゃん、

おばちゃん「
はい

さくら「
社長さんよ

寅「
ほう


社長「
夕刊見たかい?
   
がね檻から逃げ出したんだってさ。千葉県で


社長「
あ、寅さん、お帰り。帰ってたんだってね

社長「
元気でやってるか

社長「
ああ、元気だよ
  見たかい。
  射殺するかどうかでもめてるんだって、
   オレはね絶対
射殺すべきだと思うんだ!

寅「
あー、間違いだね本当にとムカムカしながらもイモの煮っ転がしをつつく。

おいちゃん、それは言わないように身振り手振り(^^;)

おばちゃん「
可哀想だよ、そんなこと

社長「
どうして?虎は猛獣だよ。
   だいたいね、素人が虎を飼ってるのが間違いなんですよ


博「
社長、の話はもうそれくらいで

おいちゃん「
バカ…

社長「
え?どうして?
   なんで
の話をしちゃいけないの?


おいちゃんおもいきいり寅を指差す。

おばちゃん、ぼそぼそっと小声で

おばちゃん「
ウチにもいるでしょ…その言い方なあ…(−−;)


社長「
あ、そうか!このウチにも一匹いたな。
  飛びっきり
獰猛なやつが、ククク、ハハッハハハハハハハ!!




             



寅我慢の限界に達し、

寅「
むはあ!!」とお土産のぶどうをわしづかみにして


             
                  


寅「
タコ、てめえ!


社長の顔にぶどうをなすりつける。



             



社長、ぶどう色で顔がめちゃくちゃ。


太宰さん…リハーサルも含めごくろうさまです(TT)


おばちゃん「
寅ちゃん!


寅「
ちくしょう!

社長の顔がぶどう色に(TT)



              



みんなで必死で止める。

博、寅を止める。

寅「
離せ、チクショウ!!

さくら「
お兄ちゃん!と止めつつ笑ってます倍賞さん(^^)



                  これは紛れもなく笑っていますよ倍賞さん(^^)
               


寅「
離せ、チクショウ!
 
分かった!てめえらの腹の中は!
 なんだいよく帰ってきやがったって
 ほんとは腹の中でな、てめえたち獰猛な虎が
 一匹帰ってきたと思ってんだろう!
 てめえらの注文通り、オレは逃げ出してやらあ!

 射殺
でもなんでもしやがれ!コノヤロ




               



寅「
バカヤロウ」と言いながら上がり口に置いてあったカバンを持ち。


社長、半泣きでブツブツ。


さくら、追いかけ

さくら「
ちょっと待って!

満男たち見ている。

さくら「
いくらなんでもあんな言い方ってないでしょ!


カッと振り向く寅。


        



静かにメインテーマが流れる。

寅のぶどうで汚れた手をエプロンで
丁寧に何度も拭いてやるさくらだった。


最後に寅の指輪を直して…。

さくら「『今ごろどうしてんのかしら?
  もうそろそろ帰ってくる頃じゃないかしら…』
  おいちゃんやおばちゃんたちと
  いつもそう言い合っていることくらい
  知ってるでしょお兄ちゃん



実に繊細な演出だ。こういうところがこの映画の格。



              



寅、札入れからお金出して、


寅「
満男にな、英語の帳面買ってやれ…

お札を見ているさくら。

さくら「




             





お金を受け取り、ふと茶の間を見るさくら。

スッと店を出て行く寅。

さくら、すぐに気づいてまた寅を眼で追いかける。




さくら「今度いつ帰るの?」と泣いている。

寅、立ち止まって

寅「気が向いたらな…

寅「おまえ、博と仲良くやるんだぞ


       


わずかに頷くさくら。

さくらを見る寅。

そう言って、寅は旅立ってしまったのだった。


いつまでも寅を見送っているさくら。


       



前の
江戸家の女将さんも店から寅を見ている。


社長の声「悪気は無かったんだよ…ごめんよ…」

博「
わかってますよ

おばちゃん、参道のさくらに向かって

おばちゃん「
さくらちゃん、ごはんにしよう

静かに頷くさくら。

博もさくらを心配そうに見ている。

社長の声が台所から小さく聞える。

社長の声「新聞見てびっくりしたもんだからさ…。大体虎を飼うなんて無責任だよ」

おいちゃんの声「しつこいじゃないか、もう」

社長、ぶつぶつ言いながら帰っていく。


            






上記の別れのシーンでも出てきたように、
この頃までの倍賞さんは、誰かからの刺激による『突然の驚き』を表現する直前の
ほんの一瞬0,3秒ほどだけ『間』『タメ』を作っていた。
時には目をちょっと見開いてじっとする、時には少しずらして他の場所をぼんやりorちらっと見て、
その次に相手の突然の言動に驚きながら相手の方を見る、という2段階方式。
振幅の大きな『突然の驚きの演技』を実に頻繁にする。
この作品だけでも何度か出てくる。
たとえば序盤で博が持ってきた「ぶどうの箱」をさくらが見てギョッとする場面などはその典型だ。

この倍賞さん独特の『間』というか『タメ』というか『ゆさぶり』は
どの作品でも頻繁に当時彼女は使っていた。
これはもうこのころの彼女の『型』になっていたと思われる。
(ちなみに、このシリーズの後半からはそのような演技はかなり少なくなっていった。)


当時、日常の緩和の後の突然の非日常の緊張とでもいうのか、
この『ため、ゆさぶり』によって、その直後の驚きや緊張を強調させるねらいであろう。

この『型』がどの作品でもたまに出てくるところをみると、
山田監督も世間の人々も彼女のこの『型』を認めている…と思われる。
『じつに繊細な演技』と言っているのだろう。

しかし、渥美さんはもちろん、森川さんも、笠さんも驚く演技のときに
このような『ゆさぶり』演技は決してしない。

一般的に倍賞さんの演技は実に自然で、かつ『間』が抜群なのは周知のとおりだ。
私も倍賞さんの自然な演技は日本のどの女優さんよりも好き。もうそれは突出して好きだ。

しかしあの、何かにふいに驚く直前の顔の『ゆさぶり』にかぎっては、う〜ん?と思ってしまう。

人はあんなふうには表情をゆさぶって驚かないものである。
どんなに油断をしていてもただ素直に「はっ」とそちらをむいて驚くのだ。


もっとも、あの倍賞さんの演技にケチをつけるのは偏屈で意固地な私くらいだろうから
これを読んでいるみなさん、お気を悪くなさらないで
ちょっと気のずれた男のたわ言だとさら〜〜っと流してください。

あ、ちなみにシリーズ後半以降の倍賞さんは、
そのような『説明的』『パターン』演技は一切なくなった気がする。








A【奇妙な出会いマイケルとらやさん】


紀州路を一人旅する寅。

山本直純さんの美しいオリジナル曲 この曲は名曲だ


紀ノ川の農業用堰(藤崎頭首工)近くを歩く寅

 
   
   


軽トラックからみかんが落ちて拾っていく寅。


        

そこら中にみかんが落ちている。

みかん畑を歩いていく寅。

    


柿が実る夕方の

和歌山県岩出市根来寺 山門


カラスが鳴いている。



もうすっかり秋である。



           





山門の下で柿をほおばる寅。

向こうで赤ん坊をおんぶした母親の声

母親「ひろちゃんごはんよー





寺の鐘 ゴーン



           








               現在の根来寺 山門

         










柴又 題経寺 二天門


今回の主人公『マイケル.ジョーダン』
が途方にくれて座っている。

源ちゃん、御前様が帰ってきたのを見つけて

源ちゃん「
外人

とマイケルを指差す。


御前様「
え?

源ちゃん「
外人

マイケルに気づく御前様


マイケルの英語はほとんど字幕に出てきません。日本語訳だけです。
それゆえ、これ以降のマイケルの英語は私が独自&適当に聞き取ったものがかなり多く含まれます。
もちろん聞き取れなくて正確じゃないところも時々あり、
そういう時は字幕を参考にしながら日本語で適当〜に書きます。
どうか英語の部分は適当ですので〜気軽に読み流して下さい。


      




マイケル英語で

マイケル「
Oh,excuse me, Reverend.(すみません 牧師さん(御前様))
     I am looking for a place to stay.(私は泊まるところを探しています)
     Is there an inn around here?(このあたりに宿はありますか)

      
      
御前様「
全然わからないそらそーだ(((^^;)


マイケル「
Yea, Can you undrstand me?(言ってることわかりますか)
    I wana... I am looking for an inn around here.(私はこのあたりで宿を探しています)



源ちゃん、ベンチの上に乗っかり、マイケルの背の高さと比べてちょっかい出している。


御前様、源ちゃんに

御前様「
おい


御前様「
あのね、その…手まねで、こう…」とマイケルにゼスチャーをしている。

マイケル「
テナリ?

御前様「
手まね

マイケル「
temane…??、Doun town here?(ここは街中(繁華街)ですか)

この町見てわからんか(^^;)



マイケル.ジョーダンが御前様に宿(旅館)のことを聞いているが、
御前様は全く分からない。







とらや 店



豆腐屋 パープー

さくらが店から出てきて

さくら「
お豆腐屋さん

豆腐屋「へい」

さくら「
お豆腐と揚げちょうだい


そこへ英語塾のめぐみさんの母親、
圭子さんがとらやにやって来た。

圭子「
ごめんください

茶の間から台所のおばちゃんへ

おいちゃん「
はい、いらっしゃい、おい、お客さん

おばちゃん「
はいはい、いらっしゃい

と、店を覗く。

圭子「
お団子くださいますか、500円のひとつ

おばちゃん「
はいはい


さくら、豆腐と揚げ受け取って戻ってくる。


圭子さんの美しい佇まいに、『誰だろう…』という顔。

さくらにっこり笑って

さくら「
いらっしゃいませ

圭子さん、はっと驚いて

圭子「
あの、失礼ですけど、満男さんのお母さんですか



        



さくら「
はい、そうですけど

圭子「
私、高井めぐみの母親でございます



        



さくら、「
あら、めぐみさんの!

圭子さん、にっこり笑う。

さくら「
まあ

さくら豆腐を置いて

さくら「
満男がいつもお世話になっております

と、お辞儀。

圭子「
いいえ

おいちゃん、茶の間から下りてきて

おいちゃん「
そうですか

さくら「
叔父です

おいちゃん「
それはそれは、さ、どうぞ、ま、おかけになって

圭子「
じゃ、失礼します」と中ほどまで入ってくる。

圭子「
めぐみに聞いてましたけど古いお店ですね

おいちゃん、手を振り振り、

おいちゃん「
いやあ、汚いばかりで

おいちゃん「
さくら、お茶

さくら「
はい


腰掛ける圭子さん。


高島屋の紙袋。


おばちゃん、団子の折り詰めもって店に出てくる。

おばちゃん、にっこり笑ってお辞儀。

圭子さんもにっこり笑ってお辞儀。

圭子さん店内を眺めている。



そこへ御前様が、高校時代成績がよかったさくらの英語力を
当てにしてマイケルを連れて来る。



御前様「
いやあ、困ったな…

おいちゃん「
御前様

御前様「
あ、さくらさん



         



さくら「


御前様「
ちょうどよかった。あんた、学校の成績よかったね

さくら「
は?

御前様「
ん、あんたなら大丈夫だ


さくら、圭子さんのお茶を作りながら

さくら「
あのなんでしょう??



         



御前様「
ハロー、ハロー」とマイケルを呼ぶ。


みんな「
え?」と言う感じで参道を見る。


マイケルの声「
You mean in there?(そこなんですか)

御前様「
来なさい、こっち

マイケルの声「
ハイ

源ちゃん、犬を呼ぶように口笛を吹く。(^^;)

ピュピュー、ピュー

マイケルにとらやを指さし、入るようにジェスチャー。

背をかがめながらマイケルが入って来る。



         



御前様「
この外人が寺へ来てなにか尋ねるんだが、
    わしにはさっぱり分からんので連れて来ました



さくら「
あらー…


御前様「
君君、ハロー、このご婦人に話してごらん、
    
ぺらぺらぺらぺら…

この身振り手振りが最高(^^)


     


マイケル「Oh,Excuse me madam、(すみません奥さん)
     Is there an inn around here?(このあたりに宿はありますか)


さくら、首をかしげて「
????


マイケル「
an inn(宿です)

御前様「
エニイン!((((^^;)

さくら「
さあ。。。わかりませんわ御前様と首を振って困惑気味。



         



御前様「
しかし、学校で英語は習ったんだろう?英語、イングリッシュ

そういう御前様も第36作「柴又より愛をこめて」では外国人に
ブロークン英語で道を教えていた。


みんなさくらに注目。


さくら「
そりゃあ、習いましたけど…ねえと、おいちゃんを見る。

マイケル「
What I need is a room with shower.(シャワーつきの部屋が必要なんです)


マイケル、シャワーのジェスチャー。

マイケル「シューシュー…shower


ダメもとで、源ちゃんにも

マイケル「シュー…showerダメダメ労力の無駄 ヾ(−−;)



          




源ちゃん、笑いながらシャワーのジェスチャーを真似る。

マイケル途方に暮れながらも


マイケル「
…and a bed,bed,bed to get some sleep.(寝るためのベッドも)


マイケルベッドに寝るジェスチャー。



          




源ちゃん、笑いながらマイケルの真似をする。

このあたりの蛾次郎さんのボケは天才的に上手い。



圭子「
あのう…この人旅館探してるみたいですよ

御前様「
あ、あなた英語わかりますか?

圭子「
ええ、少し

御前様「
おお〜、君君、この人にぺらぺらぺらぺら…
またもや同じジェスチャー(^^;)



          



マイケル「
Oh!you speak English?

圭子「
Yes

マイケル「
Is there an inn around here?(このあたりに宿はありますか)


圭子さんみんなに向かって

圭子「
この辺に旅館ありませんよね



          



おいちゃんたち「
ないねえ…」ざわざわ

源ちゃん「
No」とジェスチャー

圭子さんマイケルに

圭子「There arent any hotels around here.(この辺にはホテルはありませんよ)
    
There are many of them down tawn YURAKUTYOU,AKASAKA.
    (有楽町や赤坂などの街中だったらたくさんありますよ)



          





圭子さんため息をつきながら


圭子「Why are you looking for in a place like this?
   (どうしてこんなところで探してるんですか?)


ある意味日本をほとんど知らないマイケルが京成電鉄に乗って、乗り換えもして
柴又に来てしまっていることが驚き。

マイケル「Well,see Japanese hotel is so expensive.(日本のホテルはとても高いです)
     My business dose not to be good luck、will be short money .

      (私の仕事は上手く行ってないですし、お金も足らなくなってきて…)

マイケル「I need a place to sleep(寝るところさえあればいいんですが)
       
圭子「I dont think so(ちょっと無理ですね)
    
マイケルあきらめて、カバンを持つ。

マイケル深々とお辞儀しながら

マイケル「ドウモ アリガトウ ゴザイマシタ

さくら「あら、いいえ
とお辞儀。

帰ろうとしたマイケル、店先の戸の梁に頭を思いっきりぶつける。

さくらたち「
あ!!



           



圭子「Are you all right?(大丈夫?)

マイケル「
Yeah…

源ちゃんクスクス笑っている。

参道に出てマイケル源ちゃんを手でシッシッと、追い払うマイケル。

とぼとぼ駅に向かっていくマイケル。


御前様、圭子さんに

御前様「
どういうことですか?

圭子「
旅館はないと言ったらあきらめて帰っていきました




            


     


おいちゃん「
ほお…

御前様、参道まで出てマイケルの後姿を見ている。

さくら「
今晩どうするんでしょう…

圭子「
ねえ

おばちゃん「
なんだか気の毒みたいだねえ…

さくら「
ん…

おいちゃん「
疲れたような顔をしてたなあ…

さくらたち、頷く。

御前様「
そうだ、寅の部屋が空いてたな

さくら「
ええ、空いてますけど…

御前様「
どうかなあ…日米親善のために」おおげさ(^^;)



       



おいちゃん「
え?

みんな顔を見合わせる。

御前様「
ねえ、奥さん」と圭子さんにふる(^^;)

圭子さん、ちょっととまどって

圭子「
はあ…」と微笑む。






帝釈天 参道 


参道をトボトボ歩いていくマイケル。

後ろの方から圭子さんの声。

圭子さんの声「
ちょっとー。ミスター!

高木屋さんの前で振り返るマイケル。

圭子さんとさくら追いついて



         



圭子「
You are lucky.This lady said,You may stay thire house.
   (あなたは幸運よ、彼女が家に泊めてくださるって)

さくら「
あ、あの、小さな畳の部屋なんですけどね」と、手でジェスチャー。



         



圭子「
She said its jast a Tatami room,no bed and anything you know?
   (畳だけの部屋で、ベッドや他のものはないけど、いい?


マイケル「
You mean、She give me the place to stay?
    (彼女が寝るところを提供してくれるってことですか)


圭子「
Yes

マイケル「
Thank you、How wonderful meet kind people,
    Thank you very much. (ありがとう、こんな親切な人に会えてよかった)


と、帽子をとって、さくらに握手を求めるマイケル。

こんな嬉しいことはないよな(^^)でもお礼は少しでも払ってやれよ。


さくら笑いながら、どう言っていいかわからず


さくら「
いいえ」ともじもじ。


この日本語の「いいえ」は素晴らしい演出。
いいなあ、こういう感覚。






          







とらや 庭 & 朝日印刷


工員の声「お疲れ様」

社長「
ご苦労さん

塀の外から興味深々で茶の間を覗き込む社長。




とらや 茶の間

食事が終わって手持ち無沙汰のマイケル。

ハンテンを来ている。

博がお茶を入れてあげて

博「
どうぞ

マイケル気づかない。

博「
どうぞ」とジェスチャー。

マイケル「
Oh…」と飲む。



          



社長、庭からやって来て

社長「
おばちゃん、どうした外人

おばちゃん「
今、ご飯食べたとこだよ

社長「
食った!

おばちゃん「
うん

社長マイケルを見て照れ笑いしながら

社長「
あ、どうも、へへ

マイケル「
こんばんは

社長「
あ、こ、こんばんは

おいちゃん「
マイコさん、こちら、シャチョーです。シャチョーさん

マイケル「
Ohー、シャチョウ サン。ワタシ マイコ(マイケル) ジョーダン …デス

社長「
マイコ?
       
ちょっと怖がっている満男を座らせるおいちゃん。

マイケル「
マイコ(マイケ) デス

社長「
マイコさんですか、ああ、どうもどうも

社長、上がり口に座りながら

社長「
いや、社長と言ったってね、ただの薄汚い工場でしてね、
   アメリカの大企業に比べればとても…


博、振り向いて

博「
そんなこと言ったってわかりませんよ



          



さくら「
フフフ

社長「
あ、そうか…

笑いながら果物を食べるマイケル。梨かりんご。

社長「
こんばんのおかずはなんだったの?

さくら「
とんかつ

社長「
外人だからね、ちゃんと食べた?

さくら「
うん、おいしいおいしいって

社長「
へえ〜〜〜



          



おばちゃん「
おみおつけもね

社長「
え?味噌汁も?

と、マイケルをジロジロながめる。

おばちゃん「
おつけもんだって食べたよ

社長「
大丈夫かい、そんなもん食わして、下痢するぞ

おばちゃん「


社長「
ほら、タバコ屋で飼ってたチンパンジーさ、
   一週間で死んじゃったろ、
   あれ、食いもんのせいだってさ


おばちゃん「
あらほんと!と真剣な顔。

はっと我に返って


おばちゃん「
聞えるよ、バカだね

マイケル、社長を見ている。

マイケル「
ン?チンパンジー?



        



社長とおばちゃん「
いえいえいえ」と笑ってごまかす。



        



マイケルちょっと眠そう。

さくら気づいて。

さくらおいちゃんに

さくら「
寝てもらおうか

おいちゃん「
ああ

おいちゃんマイケルに向かって

おいちゃん「
マイコさん、二階へ上がって寝ますか?

マイケル、意味がわからない様子。


おいちゃん、にわかにジェスチャー。

おいちゃん「
いいかい


寝転んで寝るまね、&イビキの真似

おいちゃん「コォー!コォー!なにもそこまで…((( ゞ(^^;)


        


マイケル驚いて

マイケル「
Is he all right?座布団一枚((^^;)


博「
You…sleep」と二階を指差す。


さくらも可愛いジェスチャー付きで

さくら「
sleep

このさくらのジェスチャーがなんとも可愛い(^^)


        


        




マイケル「
Oh、sleep

まいちゃん、むくっと起きて

おいちゃん「
そうそう、スリープ

マイケル「
Thank you very much.
      I would like to sleep. I am very tired . hai 


さくら「
じゃあどうぞ」と案内する。

マイケル立ち上がり二階に行こうとする。

さくら、土間に下りながら

さくら「
シーツまだだったわね」とおばちゃんに言う。


黒板の文字

中原様  PM3:00

草だんご
磯乙女


甘味処 友禅 

PM5:00

カンテン
くず餅
草だんご




またもやマイケル梁で頭を打つ

ゴン!!




        



おばちゃん「
あー!!大丈夫ですか?

マイケル「
Im all right Im all right Im fine.

社長とおばちゃん、唖然としている。

大きな足で小さなサンダルを履くマイケル。

社長とおばちゃんそれを見ている。

茶の間の方を振り向いて。

マイケル「
ミナサン オヤスミナサイ」とお辞儀。

みんな「お休みなさい」

階段の梁にまた頭を打ちそうになる。

おばちゃん「
ああ!危ない

マイケルスッと見切って背をかがめる。上手い!(^^)

マイケル笑いながら手を広げて、

マイケル「
Im all right.


みんな安心。

と、思いきや

階段を踏み外してこけてしまう。



          



おばちゃん「はー…くたびれた

社長「何の商売なんだい?

博「
ビタミン剤のセールスマンでしたっけ

おばちゃん「
うん

社長「
セールスマン

おいちゃん、瓶詰めビタミン剤を博に見せながら

おいちゃん「
これもらったよ、アメリカじゃこれ食うのが大流行らしいな今

おばちゃん「
あれをトランクに入れてね、売って歩いてんだって

社長「
トランクに入れて?じゃあ行商…


おばちゃん、頷く。

博「
ホテルに泊まる金もないって言うんだから苦労してるんでしょうね

みんな、頷く。
社長「
アメリカ人だからって金持ちばかりじゃないんだねえ…

と、ビタミン剤を舐める社長。おいおいヾ(^^;)

おばちゃん「
でもねえ…目なんか見ると優しそうだよー

おいちゃん「
悪い人間じゃねえな、ともかく…



           







とらや 二階

シーツを敷布団にかけて、整えているさくら。


さくら、マイケルの手帳の中から見える母親の写真を手に取る。

名刺には日本語で「マイケルジョーダン」と書いてある。

マイケル「
It is my mother.

さくら「
ああ…お母さん…。優しそうな人ね」と微笑む。


嬉しそうに頷くマイケル。



          



マイケルのテーマ流れる。


さくら「
それじゃマイコさん

マイケル「
ドウモアリガトウ、サ…、サ…

さくら「
さ く ら

マイケル「
Oh,サクラサン

さくら「
おやすみなさいと正座して超深々とお辞儀。

でました世界一のお辞儀(^^)。



        



あわててマイケルも同じように正座

さくら、ちょっとびっくり。



マイケル「
オヤスミナサイ」と深深とお辞儀。



          



さくら「
あ…おやすみなさい。フフフ…」と、ふすまを閉めて下りていく。


マイケルは心が温かくなり


マイケル「
♪Good night Sakura〜. Good night Sakura〜
と、早くも目がハートで、


口ずさんで眠りにつくのだった。

布団から足がはみ出している。


靴下でさくらにキスをするギャグ。

マイケル「おやすみ…チュ!



         









紀州路  和歌山県紀の川市粉河



西国三十三箇所 第三番札所・厄除観音

粉河寺(こかわでら)
 山門


宗派 天台宗系の粉河観音宗総本山。

本尊は、千手千眼観音菩薩。(絶対秘仏、公開履歴なし) 伝承によれば創建は宝亀元年(770年)、





         






寅啖呵バイ。  下駄を売っている。


寅「まず、このグラフに注目されたい。
 厚生省が発表した日本人の身長のこれグラフであります。
 この赤い字が証明するように、戦後日本人の身長は外国人と匹敵するくらい
 どんどんと伸びています。



      



 しかし!それに反比例して日本人の体力はどんどん落ちている。
 それはなぜかというと日本人はつまり、この下駄を履かなくなったためであります


と下駄を手に持ってみんなに見せる。

手を足に見立てて、

 ね、いいかいお母ちゃん、ほら、足の、親指と人指し指、ね、
 この間に健康をつかさどるツボがあります。
 ここへ鼻緒をグイとつっこんでグイグイグイグイ刺激する。
 これは日本人の大発明であります




向こうでは、バスガイドさん、お遍路さんを案内している。

ガイド「さあ、急いでくださーい」

近くの店ではみかんの即売。


寅「
ね、オレなんかほら、こうやって365日雪駄を履いているから、
  ただの一遍も病気をしたことが無い!


嘘ばっか、寅は、今までに盲腸、胃痙攣、便秘、風邪等々枚挙に暇が無い(^^;)
救急車に乗ったこと3回!



寅「
ただし、頭はよくないが、これは親父ゆずりだからしかたがない

客、どっと笑う。


寅「
笑ったな女学生、退学


寅の向こうに初代ポンシュウの小島三児さんが見える。


ガイド「早く来てくださーい」

お遍路さんたち「はーい」


ガイド「バスが出ますよー」

お遍路さんたち、みかんを買い込んでいる。


寺の鐘 ゴ〜〜ン


お客がいったん引けたあと売り上げを計算している寅。

千円札や五百円札で5枚ほどと小銭。


隣で、初代ポンシュウの息子が弁当を食べている。


ポンシュウがお茶を注いでやっている。

ポンシュウ「
熱いぞ



         




寅、その様子を見て

寅「
ポンシュウよ

ポンシュウ「


寅「
あの、美人のカミさんどうしたい、具合でも悪いのか?

ポンシュウ「
うん…ガキ置いて逃げちまいやがったよ

寅「
え?

ポンシュウ「
オレみたいな渡世人と一緒になったってろくなこたあねえと
       思ったんだろ


寅「
…男か?」と親指を示す。



         



ポンシュウちょっと照れ笑いしながら

ポンシュウ「
…そんなところだ…



         



子供たち「おっちゃーん、クジ引かせてぇー」

ポンシュウ「
あいよー


ポンシュウ寅に

ポンシュウ「
嫌な商売だよ…

ポンシュウ「
これ百円だよ、百円

子供たち「ハズレたー」

ポンシュウ「
ハズレたらお面持ってきなー

と子供たちにお面渡す。


優しい風が吹いているような音楽が流れる。


寅、静かにポンシュウの息子のそばに行き、


しゃがんで、


寅「
ほい、坊主、これでアメでも買え」と五百円札を渡し、スッと戻っていく。



         



子供はお札を受け取り、また弁当を食べ続ける。


人生の機微を知り尽くした渥美さんのこういう『姿』と『間』は、
ほんとうに渋くてピシッと決まっていていつまでも記憶に残る。


段ボール箱
パンジー  株式会社ハタナカ



このバイのとき初代『ポンシュウ』の役者さんは小島三児さん。
彼は新しい男とくっついた奥さんに子供を置いて逃げられたばかりでしょぼくれていた。
関敬六さんが2代目ポンシュウとして活躍しだすのは第29作あたりから。
もっとも、関さんがポンシュウとしっかり呼ばれ始めるのは第34作あたりから。







紀州路での安旅館



女中さんはお馴染み
谷よしのさん。

今作、夢のシーンについで二度目の登場。

大部屋女優さんの中で直接主役と長い会話をするセリフがもらえるのは谷さんだけ。



奇妙な部屋。むかしはこういう部屋が多かったのかも。

階段の途中に襖がある。


カバンの上に宿帳が乗っている。

襖を開けて谷さんが寅に話しかける。

谷さん「
お客さん、宿帳書いてくれた?



        




寅「
」と指し示す。

谷さん「
お風呂は十時までに入ってや。
    そのあと私ら入るよって


谷さん、宿帳見ながら…

谷さん「
東京都、…これなんて読むん?

寅「
かつしか

谷「
葛飾区、しばまた…、変な名前やなおいおい、客に対して失礼なヾ(^^;)



        



と襖を閉めて下へ降りていく。


前回(第23作)も今回も谷さん、結構セリフ多かった。




遠く汽車の汽笛が聞える。




部屋の中


寅「
葛飾柴又か…と、もう望郷の念が静かに沸き起こっているようだ。


日本酒のお猪口を口につける寅。


          




この旅館の寅の部屋には売れ残りの下駄が積まれていたので、
時々は、テキヤの若い衆に頼んでこうして部屋までバイネタを持ちこむこともあるらしい。

同じパターンで第33作「夜霧にむせぶ」でも部屋にオルゴールの売れ残りがあった。






アメリカ合衆国 アリゾナ州


アリゾナの片田舎。



マイケルのしっとりとしたテーマが流れる。


■ この母親とマイケルのシーン↓の英語早口&くだけていてイマイチわかりません
  (^^;)で、適当〜〜に英語書きます。(((((^^;)


マイケルは故郷アリゾナで独り住む母親に手紙を出すのだった。


マイケルの声「
Dear Mam,Sorry I didint write soon.(ママ、ごめんなさい、ご無沙汰してます)


家のテラスにいるママ。



          



マイケルの声「
I hope your good health.(あなたの健康を願っています)


ママがマイケルの手紙を読んでいる。

マイケルの声「
Are you  taking a neuralgia medicine I got for you?(僕があげた神経痛の薬飲み続けていますか)


読み続けるママ

マイケルの声「
Right now, Im in Japan.(今僕は日本にいる)

         Its a offal place(ここは酷いところだ)

         Jampaced cars are filled marvelous people(すし詰めの車に溢れる驚くべき人々)

         And price is sky-high.(物価はバカ高い)

         I am really ,So,I was go banana at first.(最初の頃は気が狂いそうだった)


         【go bnana 】で気が変になるという意味。






銀座 数寄屋橋交差点付近


東京の街中をマイケルがおろおろセールスしている様子が映し出される。



          




マイケルの声「
But Im all right now.(でも今はもう大丈夫)」

         I found super place to stay.(僕はとてもいい下宿先を見つけた)


マイケルたぶんとらやさんにお金払ってないなあ…(^^;)







とらや 茶の間


マイケルのテーマが流れる。




マイケルが茶の間で満男やさくらたちにコップの手品を見せている。


マイケル「
ハイ、ハイ」と白い紙を見せて

それを、伏せたコップの上から包み込み、



           



マイケル「
last(最後に…)

口笛を吹いて

マイケル「
touch(触って)」と満男に催促。



さくら満男に「
触ってごらんなさい」と小声で言う。

おいちゃんも触る。

満男君、この年頃になるとずいぶん目でパチパチ気にするようになる。
緊張すると中村君は目にくるんだね。

マイケル「
アー…

『今からマジックをするよ』と言って…。



          



(この時密かにコップを机の下に落としている)


          




パン!!


と、紙に包まれ、机に置かれたコップを思いっきりつぶす。

さくらたち「
わー!!!」とびっくり。



           



マイケル、口笛を「ピュー」と吹いて

机の下からコップを出す。

さくらたち「
あら、ハハハ

満男机の下覗き込んで興味深々。

おいちゃんやおばちゃんもコップを指差して大笑い。

おいちゃん「
あー、驚いたハハハハ!

マイケル、コップをくるっと投げて遊ぶ。



           




手紙の続き


マイケルの声「
The peaple in this family all really wonderful and very kind.
        (この人たちは家族みんなが素敵でとても親切だ)
        I feel like I mean my own home.(僕は自分の家にいるようだ)





江戸川土手



江戸川土手をジョギングするマイケル

上下黄色い運動着。


マイケルのコミカルなテーマ流れる。



         



マイケルの声「
And Mam, Selling a vitamin here real back…(ビタミン剤のセールスはダメだろう)

マイケルの声「
But, I keep on track I can take to Hawai.(ママをハワイに連れて行くことは努力していくよ)

マイケル、題経寺の前まで走ってくる。

マイケルの声「
Your  loving son Michael.(息子のマイケルより)






マイケルが参道に入ると


二天門の上から源ちゃんが声をかける。

源ちゃん「
ハロー

マイケル「
ハ!源ちゃんハロー!


          






とらや 台所

おいちゃんが団子を折り詰めしている。

社長もお茶を飲んで今から銀行に行こうとしている。


マイケルの声「
オハヨウ

江戸家の女将さん水撒きながら「
おはよう


マイケル店に入ってくる。

おいちゃん「
あー、お帰り



とらや 台所



マイケル「
社長サン

社長「
おう

マイケル「
How are you?

社長「
ダメダメ、ノーマネー、メニータックス(^^;)



          





普通赤字法人の場合はほとんど税金かからないと思うけどなあ…。


マイケル「
ハー…、ノーマネー、ヨクワカル

社長「
分かる?バンク ゴー『銀行が行く』だよそれじゃ(TT)

マイケル「
Good luck」と社長を励ます。

社長「
サンキューサンキュー




マイケルが二階に上がろうとするとおばちゃんが下りて来る。

マイケル「
おばちゃん

おばちゃん「
おかえりー」上機嫌(^^;)

マイケル「
キヲツケテー

と、おばちゃんを気遣う。

おばちゃん「
はい、ありがとありがと


おばちゃんはマイケルにいろいろいたわられて

おばちゃん「ほんとに優しいねえー、アメリカの男って
と、にっこにこ(^^;)



         



おいちゃん「ち、なあに…」と呆れている。

社長「妬かない妬かない、レディファーストの国だから、フフ

おばちゃん、箒釘に架けながら

おばちゃん「何かしてあげりゃサンキューってお礼を言ってくれるし、
      アメリカの女は幸せだよ



すっかりマイケル党に入党してしまっている(^^)



社長立ち上がって

社長「はじめ来たころは、みんな怖がってたけどな


おばちゃん「
付き合ってみればいい男だよォ、
    へたな日本人
よりましさ
だそうです(^^)

社長「
ほんとほんと、はあーあ

社長外に行こうとして

社長「
待てよ…、へたな日本人が一人いたなそういえば

おばちゃん今ごろ寅を思い出して真っ青。

おいちゃん「
バーカ、オレなんかあいつ帰ってきたらどうしようかって、
     それ考えたら夜もろくろく眠れないんだぞ


おばちゃん「
帰ってくるかしら?

おいちゃん「
知るか、そんなこと



社長「
こういうときに限って帰ってくるんだから、ね。
  知らないよオレャ、フフフ



社長、暖簾をくぐって


体が凍る。


案の定、お約束どおり
寅がやって来て、前の江戸家のおかみさんと世間話。



社長目をみはって大慌て



社長「
いたよ!

おばちゃん「
ん!?


おばちゃん「
わああ!あ、あんた、ど、どどどうする

おいちゃん「
落ち着けバカ、筋道立てて話せばあいつだってわかってくれるよ

社長「
そそ、日米友好のためだもんな

みんなガチガチに緊張(^^;)



寅がこちらに向かおうとしている。

三人とも背中を向けて体が石になる。((((^^;)





おいちゃん「
最初が肝心だぞ

社長「
機嫌よくな、笑顔でな


おいちゃん、社長、無理やり笑顔


         


この無理やり笑顔ギャグは第2作や第7作での森川おいちゃんのギャグのアレンジ。


社長、店に出て

社長「
寅さんお帰り!

おいちゃんたちも、にっこにこで迎える

おばちゃん「
寅ちゃんお帰り

寅もにっこにこで、

寅「
社長、なにも言わない、この間は本当にすまなかった」お辞儀。

社長「
フフ…そーんなこと気にしてないよ!ねえ、ハハハ

おいちゃん「
ああ、ハハハ

とにかくみんな何事も無かったように振舞う。


しかし、おばちゃんいきなり大ボケ一発!
おばちゃん「
シットダウン おいおいおいヾ( ̄∇ ̄;) 



          



寅「
???

おばちゃん「
あ、そうじゃなかった、お掛けよ

寅「
ありがとよ」と座る。

みんな、不自然に愛想笑い。

寅「
故郷はいいなあ

みんな「うんー」と愛想笑い。


さくらのテーマが流れる


寅「
あ、おばちゃん、これな、土産だ。紀州の梅干だよ、食べてくれ

この梅干が後にマイケルの悲劇に…(TT)



         



おばちゃん「
あらー、すまないねえ、いつも気遣ってもらって

おいちゃん「
今、おまえの噂してたんだよ、早く帰ってくればいいのになあ…って。な社長

社長「
うん!」と愛想笑い。

寅「
どういうわけかなあ…、ここんところ、旅をしても侘しくてならねえ…

おいちゃん社長「
ほお…

寅「
秋のせいかなあ…

寅「
名も知れねえ川のほとりでゴロンと横になって、
  青い空を赤とんぼがツーッと泳いでいくのを眺めていると、
  『そうだ、オレも生まれ故郷の柴又へ帰って今度こそゆっ…くり体を休めてえな…。
  ま、そんなような気持ちで帰ってきたのよ。だからね、今回は少し長逗留になるかも
  しれねえけど、いけねえかな?



寅は紀州梅干を土産に、柴又のことを忘れがたくすぐに帰ってきたのだった。




おいちゃんたち、唖然…。

おいちゃん「
…ううん、とんでもない

社長、顔を引きつらせながら

社長「
嬉しいよ、みんな大喜びだよ


おばちゃん、二階を気にする。

寅「
そうかい、なんてったって自分の部屋があるってのは、
 一番体が休まるからな、うん


おいちゃん「


寅「
いいなあ、自分の部屋があるっていうのは

と、しつこく駄目押しを言って二階へ行こうとする。

寅「
じゃ、休ませてもらうよ

おばちゃん「
あのー、寅ちゃん

寅「
なんだい、え、またオレの部屋にぶどうがいっぱい干してあるか、ハハハハ

おばちゃん「
違う違う

おいちゃん、思いきって尋ねる。

おいちゃん「
あのー、ちょっと聞きたいことがあるんだがな

寅「
なんだい?

おいちゃん「おまえ、アメリカ好きか?そんな実も蓋も無い言い方 ゞ(^^;)

みんな、寅を凝視(^^;)




          



寅「
アメリカ?妙なこと聞くねおいちゃん


おいちゃん「
好きだろう?無理やり

イモの煮っころがしじゃないんだから、無理があるよおいちゃん ゞ(−−;)



寅「
…ダイッ嫌い!!ああ……(TT)


     



みんなスッと引いて…呆然…。


寅「
オレ、なにが嫌いってね、
 アメリカほど嫌いなものない!
ま、だろうね(−−)

そのわりにはハワイに行こうとしてたけどね。あそこもアメリカだよ寅。

おばちゃん「
でもさ、日本とアメリカは仲良くしなきゃいけないんだろ

社長「
そうだよ

寅「
誰がそんなこと決めたんだよ!


おばちゃんびびって、

おばちゃん「
さあ、よく知らないけど…知らないよねえそんなこと(^^;)

寅「
どうして日本とアメリカが仲良くしなきゃいけないんだ!?いいかあ、
 あの黒船が浦賀の沖へ来て、
 徳川三百年天下太平の夢が破られて以来!
 日本人はずーっと不幸せなんだぞ!


社長「
ほー、そうだったのかい

寅「
おまえなんか、歴史を学んだことがないだろう

社長「
うん

寅「
経営ばっかりに頭をとられて

頷く社長。


寅「
こっちが頼み込んだんじゃないんだ。向こうからいきなり来たんだ勝手に。
  大きな大砲でズドーンと脅かして、
  無理やり仲良くしようってんだ、そんなバカな話があるか?



確かに。あの当時全くの不平等条約だったもんね。
しかし寅って意外に幕末の歴史把握してるんだね。
あの当時日米和親条約に次いで結ばれた日米修好通商条約は
「関税自主権を行使させない
ことや「治外法権などを認めさせる」などの
全くの不平等条約だった。




          



社長「はあ…、つまりその…寅さんは尊王攘夷のほう


社長言うねえ…なかなかパッと言えないよその言葉(^^;)


寅「
あたりめえだよォ!わかってんのかな((^^;)



           



あの当時、たとえ開国派の連中にしても決して諸外国と仲良くしたかったわけではなく、
まずは戦争を避けるためにやむを得ず不平等条約を結び、それと同時にいち早く
富国強兵を成し遂げ、列強諸国と同じ地位にまで自力でのし上がろうという考えがほとんど。
つまり当時の日本人はアメリカと仲良くしたいと本気で思っていた人間は
ほとんどいなかったのではないだろうか。


おいちゃん、おろおろしながら

おいちゃん「いやいや、あのな、たとえそんなことがあったにしても、
     不幸な過去は水に流してさァ…
日本的〜(^^)

寅「
流せない、流せませんよ。
  いままであいつらに日本人がどれほど酷い目にあったかァ、えー、

 
唐人お吉、ジャガタラお春、蝶々夫人、
 
ほら、枚挙にいとまがない、なァ

鋭いのか、ピントがずれてるのかよく分からない寅だねまったく(^^;)



             





■唐人お吉はもちろん純粋な日本人。
 一般的に知られているようにハリスの病気の介護役として無理やり連れてこられたのだ。
 しかし周囲の目はやっかみ半分軽蔑半分でお吉のことを「唐人
」つまり「外国人」とささやいて、
 苛めていったのだった。彼女こそ歴史の波の中で翻弄された被害者であったことは間違いない。



■じゃがたらお春は、鎖国開始期(江戸初期)の人なので、この寅のたとえは適当ではない。
 鎖国に伴ってイタリア人とのハーフだった彼女は15歳でジャカルタに追放されたのだ。
 アメリカとは何の関係もない。ジャカルタでは東インド会社のオランダ人と結婚して
 結構いい暮らしを続けたらしい。
 『♪赤い花なら蔓珠紗華、オランダ屋敷に雨が降る濡れて泣いてるじゃがたらお春』と
 いうようなしとやかな悲しい人ではなく、ジャカルタの地で上流階級人として
 結構力強く生涯を生き抜いたらしい。



■蝶々夫人はご存じイタリアの作曲家プッチーニの名作のヒロインであるが、
 元々はアメリカの短編小説から取ったもの。
 半分以上は彼らの創作のようだ。
 創作時にヒントになった人は長崎のトーマス.グラバー夫人のツルなど
 何人かいるようだが、当時の現地妻『洋妾(ラシャメン)』は意外にみんな
 割り切っていたらしく誰もあのような悲劇的な最後はとげていない。


ここからはちょっと脱線です。
幕末から明治期の歴史に興味がない人は
バーンと飛ばしてください(^^;)




【奇跡の明治維新】

ちなみに、寅がおいちゃんたちに語ったように
幕末の不平等条約などにより、
アメリカを始め列強諸国に骨抜きにされてしまった日本が
奇跡的に植民地化されずに、なぜアジアで唯一近代化が成功していったのか…。
この要因は実は外的要因、内的要因の両方が存在する。


アメリカ:広大な国内がようやく安定し始めたと思って太平洋を渡って日本まで来ているうちに、
      今度は自国でどでかい南北戦争が始まり、その後外に兵力を出す余裕がなかった。
      とにかくアメリカが本当の力をつけ、世界一の強国になるのはまだまだ先のことである。

イギリス:日本来航直前の中国でのアヘン戦争の教訓を生かし、
      都市を破壊するより、不平等条約の下、貿易で稼ぐ方向性に変わった。
      そして、ちょうど黒船騒動の直後、インドで大反乱(セポイの乱)がおこり、
      これを押さえるのに必死になっていく。
      なにより、大国イギリスにとっては日本は極東の小島という意識は抜けきれなかったようだ。

      そしてその割には日本国内はあらゆる面で成熟していることも現地調査で
      見抜いていったのだった。
      経済の隆盛、教育水準の高さ(当時からすでに識字率の高さは世界一)、
      意思統一の素早さ、稀にみる勤勉な国民性、
      新しいものを何でも受け入れる柔軟な国民性、
      などがすでに高度なレベルで備わっており、
      本気で日本を獲ろうとすると中国よりもかなりてこずると見ていた。
      そしてその苦労に見合う鉱物資源や領土が日本に無かった。このことは大きい。

      もちろん当時の幕府の重役たちもアヘン戦争での中国のダメージは
      伝え聞いているので全面戦争はなんとしても避ける方向で話を進めたのだった。

フランス:極東アジアの小国より、インドシナの方が重要視していた。
      特に日本獲りではイギリスと時期的にかち合ったので、
      その後イギリスが忙しくなったからといって、
      当時世界一の強国イギリスには表立っては抜け駆けはできなかった。


ロシア:沿海州から満州地方への興味の方が当時強かった。
     また、ロシア帝国の徹底的な腐敗で弱体化していたこともある。
     特に運の悪いことに黒船騒動の頃勃発したクリミア戦争は、
     ロシアの手足をもぎ取り、日本どころではなくなったのだ。
     


     
ということで、簡単にまとめると

どの国もアジア・アフリカ・中南米での民族闘争対策に苦労し、
戦争や内乱にあたふたしてきたので、
それまでずっと流行っていた植民地支配ごっこの加速度を
かなり緩め始めてきて素面(冷静)になってきていたということ。

そして、なんだかんだと言っても、
地球の反対側にある資源の乏しい極東の小島のわりには
意外に教育水準が高く、国民意識も高く、しぶとくてこずりそうな日本だったので、
一層躊躇したとも言えよう。



ところで、どうして寅はこの幕末の開国事情に詳しいんだろうか…。

で、思うに寅はやはり赤本といわれる少年用講談本や紙芝居などで
チャンバラを好んで読んだのではないだろうか。
寅のチャンバラ好きは第15作「相合い傘」
や第17作「夕焼け小焼け」で垣間見ることができる。
その講談本の中に『新撰組』とか『鞍馬天狗』とかが登場し、
その背景としてメリケン(アメリカ)の黒船が出てきたりしたのかもしれない。

物語が面白くできているので、
そういう歴史的なディテールも寅少年の記憶にスッと入っていったのかもしれない。





さて、話を物語りに戻そう。



おばちゃん「
困ったねえ…

寅「
え?…なんだ。オレがアメリカ嫌いだと
 何か具合が悪いことが案のか?


おいちゃん「具合が悪いんだがな…ものすごく具合悪い(^^;)

寅「ナンだナンだよ?

おばちゃん「あのね、初めっから話すと長くなるんだけどね…

寅「んはあー、オレ疲れてんだよ、長い話は後にしてくれよォ




おっと…

仕事に出かけるマイケルが後ろからやって来た。


暖簾をくぐって店に入る。


寅とは背後で超至近距離Σ(|||▽||| )

みんな真っ青になって硬直。


寅「せっかく懐かしい気持ちで帰ってきてさ、
 あーあ、家だな…と思ってさ


と辺りを見回す動作をする寅。

背中に控えるマイケルも何だろというふうに同じように見回す。



         




ギリギリで寅は気づかない。ありえないでしょう監督さんヾ(^^;)


寅「いい気持ちのところ、アメリカの話なんかするんだもん、
  オレはいや〜な気分になっちゃったよォ


  オレほんとにアメリカ大嫌いだからね!
 二度とアメリカの話するなよ



暖簾をくぐろうとして、
実はマイケルのジャケットをめくろうとする。


なんともベタな吉本新喜劇ギャグ(^^;)

マイケルも???

みんな硬直((( ̄∇ ̄;)



おはぎ
お赤飯
御注文承ります。



            



寅、顔をマイケルの胸にぶつける。

二人近距離で顔を見合わせて




寅「
…???
マイケル「
…???



           



寅、我に帰って


寅「
わあああああ!!


マイケル「
エクスキューズミ-、
   ワタシマイケルデス。アナタダレデスカ?



寅「
ワタシ『タイガー』デス満男だよそれじゃ ゞ(〜〜;)



           



マイケル「
タイガーサン!Glad to meet you」と、握手を求めるが、

寅はびびってひっくり返る。

おばちゃん「だいじょうぶだいじょうぶ取って食やしないよ
おいおいその表現やめれ ゞ(^^;)




           



社長「
性格はね、おとなしいんだよ猛獣かゞ(^^;)

おばちゃん「
マイコさんと言ってね、10日くらい前から下宿してるんだよ

もうあれから10日経っているんだね。下宿代払ってないぞきっと。

ちなみにおばちゃんの「マイコさん」の発音は完全に「舞妓さん」だった。


おばちゃん色々説明するが、寅は上の空で呆然…。

マイケル「
ゴメンナサイ、OK? SORRY…」」

おいちゃんと社長「
OK、OK

おいちゃん「
いってらっしゃい、いってらっしゃい

とマイケルを両手で押して外に出す。


ちょうどさくらがやって来て


マイケル「
OH!サクラサン。

さくら「おでかけ?

マイケル「
How are you?

さくら「
Fine thankyou

マイケル「
Good!



           



喜ぶさくら。

おばちゃん「
行ってらっしゃい

マイケル「
イタダキマス!

さくらたち笑いながら

さくら「
行ってきます

マイケルの声「
イッテキマス!

みんな「はい」

マイケル「
I blew it again.(またやっちゃった)」と悔しがる。


みんな「いってらっしゃい」

おいちゃん「
グッド バイ  グッド バイ

さくら「
どうしたの、みんな」と笑いながら店に入ってくる。

さくら寅に気づき

さくら「
あら!お兄ちゃん帰ってたの!?


寅はようやく我に帰り

寅「
さくら!」とワナワナ

さくら「え…


寅「あれなんだよ!」と声が裏返っている。

さくら「
あれって?

寅「
怪獣、怪獣だよ!怪獣…(((^^;)


        



さくら、マイケルのことだと気づき

みんなに小声で

さくら「そうだ今さらながらに気づく。

寅「
誰に断ってこのウチやあんなもの飼ったんだ!」飼ったって(((^^;)

さくら「
お兄ちゃん、あの、アメリカ人のこと言ってんの?他に誰がいる(^^;)

寅「
おい、誰に貸してもいいよ、オレの部屋は空いてるから
  しかしよりによってどうしておまえ、
ケダモノじゃねえかありゃ!




           



寅「
あー!オレはもう出て行く」とすぐに店を出ようとする。

みんな一斉に「
あ!」と止めに入る。

おいちゃん「
オレたちが悪かった今上へ上がって訳を話すから

おばちゃん「
お客さん来てるから、ね

寅、おいちゃんに押し戻されながら


寅「
この店は食い物扱ってんだろ!食い物!
 
保健所に届けたのか!?山田監督って…そこまで…(TT)


おいちゃん「
保健所にはね、私が届けるってことになってんだ適当〜(^^;)

寅「
そういうことははっきりさせないと!」と息巻いている。

さくら「
座って


おばちゃん、店で愛想笑いしてお客に

おばちゃん「
お団子ですか、はいはい






朝日印刷



社長「
言いたいこと言って、くたびれてて寝ちまったけどね、
   あの分じゃ今夜マイコさん帰ってきたら絶対ただじゃすまないぞ


社長も発音が完全に「舞妓さん」モード(^^;)


         



博「
まずいなそりゃ…、兄さんのアメリカ人嫌いってのもわからないじゃないけど

社長「
ヘタすりゃ血みるよ、そうなりゃ国際問題だからね。大変だぞ

社長「
ちょっとバンク行って来るね。あー、ノーマネーノーマネー」バカ(^^;)


そんな慢性の赤字経営でよくまあ銀行(信用金庫)も資金貸してくれるね。
借金だらけの経営って安易過ぎる。







東京 銀座 東京銀行銀座支店 横 街中

三共製薬 ビル   ロケ


マイケルが三共製薬ビルでセールスを行っている。

三共胃腸薬 カゼにルルゴールドA。

冬のボーナスは東銀へ


マイケル「
LOOK、We carried complete linable getting bitamin mineral natural ...
    (私どもは自然成分のビタミンや化粧品の総合メーカーです


店長「
Sorry Mr, But We only with the first-class company
   (すいません、しかし私どもは一流会社とだけお付き合いを…)


マイケル「
Sampson, Sampson, Its a first-class company.
     Its a biggest in America(サンプソン社はアメリカでも最大の会社ですよ)

手を広げた瞬間商品を落としてしまう。

店長「
Thats fine Thats fine,(それは凄いそれは凄い)


店員の声「
店長お電話です

店長「
はい

店長「
But I think better you leave now (もうお引取りください)」とマイケルの名刺を戻す。

マイケル「
…leave now

マイケル「
Give me a place, Mr. Please try them you know... .This is best bitamins madein America
(試しに置かせてください、アメリカで一番のビタミン剤ですよ)

店長「Get gone Mr.(出て行ってください) ときつく言われてしまう。

マイケル「
Get much try Get much try...(試してみて…)


店長がドアを閉める音。


マイケルのテーマがわびしく流れる。


銀座、東京銀行前を歩くマイケル。

看板 省エネルギー対策 照明燈節電…


外国人女性二人が歩いて来る。

マイケルがじっと二人を見る。

二人マイケルを見て「
ちょっと足りないわね

マイケルそれを聞いてちょっといらつく。


横断歩道を歩行者もしくはスタッフさんが走りながら
マイケルの近くにやってくる。これはミス??



            







とらや 台所  夜


おいちゃん、風呂のお湯を入れた後おばちゃんに


おいちゃん「
おい、どうした、まだ頑張ってんのか?

おばちゃん「
ほっといて大丈夫かね。。。

さくら「
いくら言っても聞かないんだもん



           




おいちゃん「
本気で喧嘩したらかないやしねえぞ、寅なんかァ、
     なんせ食いもんが違うんだから、日本とアメリカじゃ




寅は、源ちゃんに武装させ、
マイケルを追い出す作戦に出て、待ち構えている。



寅店の方からさくらを呼ぶ

寅「
おい!さくら!


さくらしぶしぶ

さくら「
はい



とらや 店


寅「
まだかアメ公!

源ちゃんヘルメット被って寅の手伝い。

さくら「
もう帰る頃なんだけど…


             


さくら「
ねえ、お兄ちゃん、お願いだから乱暴なことはしないでよ


寅「
相手の出方次第よ、イエスかノーか!二つに一つだ!
 もしノーと言いやがったら



             



「イエスかノーか」

太平洋戦争初期、シンガポールの戦いの終結時に、
ブキッ・ティマ高地にあるフォード自動車工場にて
山下 奉文大将がイギリス軍司令官アーサー・パーシバル中将に
「イエスかノーか
と迫ったこという逸話が有名。
しかし、実際はあまり要領を得ない台湾の通訳にそう言ったようで、
イギリス司令官側に直接行ったわけではないようだ。



          
宮本三郎作 山下、パーシバル両司令官会 見図
          





源ちゃんヘルメット被ってはいるが、無理やり連れてこられているので
やる気なくコックリコックリと眠っている。



寅、源ちゃんのヘルメットを張り倒して


寅「
このヤロウ!なんだてめえは!居眠りしてる時か!


           




源ちゃん、あくび。

寅「
もしアメ公がそこだったらな、
 てめえが一番先にかかっていくんだぞ!
寅、お前最初に行けよな(−−)

源ちゃん「
へい…

寅「
わかってるか!

源ちゃん「
はい…わかってます



           



寅「
相手はでかいけどもな、恐れることはねえんだ、
  腰が弱いから、腰!
  腰、バー!っとかっぱらえ!


源ちゃん、棍棒をつつくしぐさ

寅「
もうちょっと上から、それじゃかかとだよかかと

さくら「
お兄ちゃん

寅「
なんだい!

さくら「
アメリカ人の中には悪い人だっているだろうけど、
  マイコさんはそんな人じゃないのよ



寅「
どうして日本人の女はそうしてアメリカ人の肩を持つんだ、おい



            



寅「
え!目の玉が青けりゃいいのか!
 それとも背がでかけりゃそれで立派なのかい!


さくら「


寅「
え!

頷いている源ちゃん。

寅、源ちゃんを指し示しながら

寅「
日本人はダメなのか!日本人の男は!

寅、源ちゃんのハンテンをまくって

寅「
見ろ!この足が短くちゃダメなのか!それは関係ないってヾ(ーー;)



            



と、例えに使われ源ちゃん、
自分の足をシゲシゲ見ている。 トホホ(TT)




さくら、寅を座らせて




さくら「
ね、聞いてちょうだい

さくら「
さっきから言ってるでしょう

寅「
なんだよ

さくら「
もし、マイコさんが嫌な人だったらとっくに出て行ってもらってるわよ

寅「
へ!

さくら「
だけどね、あの人遠いアメリカからはるばる日本にやって来たんだけど、
   商売上手くいかなくって…



確かにマイケルはセールスの仕方がめちゃくちゃだ。
熱意はあるが、周到な用意&段取りがないんだね。
売るものが人体に影響を与える「薬」だから、
よっぽど信用できる何かがないと誰も買わないのは当たり前。



           




寅「
世の中そんな甘かないよ!おまえ!

さくら「
でもね、旅館に泊まるお金もなくて、とっても淋しい思いをしてたのよ…

さくら「
その気持ちはお兄ちゃんならよおくわかるでしょう?



寅、さくらの言うことは上の空で、
店先を見つめて、なにやら目がハートになっている(((^^;)



さくら「
聞いてんの?お兄ちゃん

聞いてない聞いてない全く聞いてない&それどころじゃないヽ(´〜`;)




圭子のテーマが流れる。


寅「
いらっしゃい

寅のハート目にたじたじして引いている圭子さんとめぐみさん。



         




さくらふと外を見る。




           



さくら「
あら!

めぐみ「
こんばんは

圭子「
先日はどうも


さくら立ち上がって

さくら「
まあ、いらっしゃい

寅「
お団子ですか?」と立ち上がる。

さくら「
あ、私の兄なんです

圭子さん、めぐみさん大いに驚いて そらそうだ(^^;)

圭子「
あら!お兄様!まあ」とお辞儀。

めぐみさん、ちょっと不可思議そうな目(^^;)

寅照れ笑い


寅「
フフフ


茶の間のおいちゃん『あーあ』という表情。


さくら「
お兄ちゃん、満男の英語の先生のめぐみさんとお母様


圭子「
妹さんにはいろいろお世話になっています



              



寅、いつものパターンで
目がハート、たじたじニヤけて
体くにゃくにゃで、



寅「
はい、ドウイタマシテ…あ〜あ、ダメだダメだ┐('〜`;)┌



               



めぐみさん、かなり笑いをこらえている。変だよね〜このおじさん(^^;)


圭子「
こちらへはご出張かなにかで?」と、にこやか&まじめに質問

寅「
ご出張かなにかで??白痴的オウム返し(^^;)

さくら「
い、いえ、あの…兄の住まいはここなんです

寅照れながら小声で

寅「
あ、そうか…

さくら「
まだ…独り者で」それは言わなくてもいいと思うけどなあ…。

寅、テレまくりでさくらの袖を引っ張る。

圭子「
あら、そうですか

さくら、寅を見て「バカ…」っていう表情。


めぐみさん寅に

めぐみ「
じゃあ、帰ってきたらおっきなアメリカ人がいたので
   びっくりなさったでしょう
お!図星


寅「
え?いいえ〜、
 僕は昔からホラ、
 アメリカ人は
大好きですからァ

どの口で言うとんじゃ(−−メ)



さくら、ブスッとした顔で睨んでいる。


圭子「
あら、そうですか

隣にいる源ちゃんを見てください。これが寅の気持ちです(^^;)



寅「
ええ、ええ

めぐみ「
ねえ、付き合ってみると案外親切だしね


めぐみさん圭子さん、早くヘルメット姿の源ちゃんに気づいてください。
なぜ彼がこんな格好をして棍棒を持っているのか( ̄∇ ̄*)

寅「そうですよォ、なかなかいいヤツですよ、あの芸者

さくら、驚いて

さくら「
芸者じゃないの、マイコさんさくらも実はマイケルだとは思っていない。

寅「
あ、そう舞妓さんね、うん発想が【舞妓】から抜け出ない(^^;)

圭子「
フフフ

めぐみ「
舞妓…フフ



             



圭子「
いい方の家に下宿させていただいて…クス…
   幸せですわ、マイケルは
」とさっきのボケに笑っている。

寅「
そうだといいんですけどねえ…、
 なにしろ田舎もんばっかりそろっていますから


さくら「
そうぞ」と椅子にかけることをすすめる。



その時マイケルが帰ってきて…



寅「
おー!ハローじゃないかァー!

こいつ性格破綻者か…( ̄△ ̄;)



           




マイケル「
halo…

さくら「
お帰んなさい

マイケル「
オ、タダイマ

圭子「
Hi Michael

マイケル「
Hi Keiko、Megumi

めぐみ「
Hi


マイケルみんなと挨拶。


寅「
遅かったじゃないのハロー


おいちゃん、首を振って『だめだこりゃ』のしぐさ。


マイケル「
おー、タイガーさん、Good see you again


寅「
仲良し仲良し、ささ


さくら、さすがに腰に手を当てちょっと怒っている。



            




圭子「
How your business Michael?(仕事どうだった?)

マイケル「
Its very lock up there. (門戸がきついです『あまりうまく行ってません』)」 英語聞き取れません(^^;)

めぐみ「You must be glad to turn with Sakuras peaple.
    (でも、さくらさんの家族がいるのでよかったですね)


マイケル「
Yes、absolutely !(まったくそのとおりだ)

マイケル、寅にも「
Absolutely 」わからんてヾ(^^;)

寅、気安〜〜くマイケルの肩に手を置く。


さくら「
どうぞ」と、椅子をすすめる。

圭子「
あ、私たちもうそろそろ

寅「


圭子「
めぐみ

めぐみ「
あの、私たち田舎に行ってたんですけど、これ…お土産」りんごかな?

みんな「
あら、それはどうも…」と恐縮。

寅「
あーそらどうもすいませんねー

さくらお土産見て

さくら「
あら、信州ですかお故郷(くに)

圭子「
主人の故郷なんです

めぐみ「
飯田なの

さくら「
あー、ご主人の



寅、ショック。。。。



          



寅、ガクッとして、背中を向けうつむく。

圭子「
じゃあの、失礼します

めぐみ「
どうも、おじゃましました

寅、向こう向いたまま。


          



マイケル寅の態度の急変に「
???

圭子「
お兄様、失礼します

寅向こう向きながら「はい」

そしていやいや正面向いてダラダラ。

めぐみ「
マイケルさよなら

マイケル「
Oh、Yha,right,サヨナラ」とお辞儀。



冷蔵庫リボンシュトロン&サッポロビール
冷蔵庫は今回も サッポロビール
リボンシュトロンジュース

お赤飯 200
豆大福 150
大福餅 150
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅  250
磯乙女  200
ジュース200
ラムネ150
ミルクコーヒー200

このメニューの値段と種類はなんと
第20作から第34作「真実一路」までまったく一緒なのだ。


今回以外の作品のお品書きの詳細は
お品書き考察記を参照

全48作品とらや【お品書き】考察記



寅、ちょっと気を取りなおして…、



寅「
あのー…ご主人によろしく第8作「恋歌」の真似(^^)



         



圭子「
え、ええ…それが…



めぐみ「
あの…、パパはアメリカで交通事故で死んだんです



         




寅とさくら「
え…


めぐみ「
もう3年も前のことですけどね…。

寅とさくら顔を見合って呆然。


でも寅の口元にちょっとうっすら笑みが((^^;)


めぐみ「
だから…ママは独身なの…ったく余計なことを((ーー;)



          



圭子さん、めぐみさんをちょっと睨む。




メインテーマが高鳴り



寅「
独身…と、さくらに向かって完全に微笑んでしまう。

寅ってどうしても喜びを隠し切れないんだよね(^^;)




          



圭子さんたち「
さよなら」と歩いていく。

寅、あわてて

寅「
あ!そこまでお送りしますから!」と参道へかけて行く。

圭子さん「あ、結構ですから」

寅「
本当に結構ですから、どうぞ」とついて行く。

上にも書いたが、この起死回生の大逆転パターンは第8作「寅次郎恋歌」で使われたもの。

マイケル、寅のことを不思議がって


マイケル、四角い顔のゼスチャーをし、

マイケル「
ダレデスカ??



         



さくら「
なんでもないの


おいおい、さくら、寅の素性をマイケルに話せよな。
まだマイケルに自分の兄だと紹介してないぞ。



さくら「
ま、マイコさんご飯にしましょ

マイケル「
え?

さくら「
ディナー

マイケル「
Oh、dinner.


レジのところで寝ていた源ちゃん、大あくび。



マイケル気づいて

マイケル「
ゲンチャン


さくら「
あら、源ちゃん、鐘を撞く時間でしょ!

これは、第9作「柴又慕情」での博の発言、
源ちゃんに「君、そろそろ鐘を撞く時間だぞ」と言ったパターンと同じ。
今回は博ではなくさくらが言った。


源ちゃん、反応も第9作と同じように


源ちゃん「
ああ!」と思い出して 走っていく。



           



マイケル「
ちょっと足りねえな…
と、自分が銀座で言われたことをそのまま源ちゃんに言っている。



おばちゃん、冷蔵庫からステーキを取り出す。


さくら「
マイコさん、今日はステーキよ。ステーキ、わかる?

マイケルシゲシゲと眺めて

マイケル「
あー、う〜ん、ステキデスと超ド級オヤジギャグをぶちかます(^^;)



           



さくら「
え??

おいちゃん、茶の間から

おいちゃん「
マイコさん冗談言ってんだよ冗談

おばちゃん「
あら

さくら「
そうか、冗談かあ、フフフ



           




マイケル階段を上りながら

マイケル「
私、マイケル.ジョウダンデスオヤジギャグ2(((^^;)


みんな大笑い。




           



おいちゃん「
上手い上手い、こりゃ上手い


おばちゃん、マイケルとにこやかに冗談を交わした後、ポツリ言う。

おばちゃん「
正直言って、アメリカ人のほうが好きだよ、あたしゃ…

おいちゃん「
まったくだな…


鐘の音  ゴーン


彼らはそのまま、見たまま、思ったままの人だからね。
ある意味わかりやすくてフランク。
でもね…、おばちゃん、アメリカ人も実はほんといろいろな人いるんだよ(^^;)








翌朝 とらや 



       

ここでもとらやの二階が映し出されるが、ご覧のとおり総二階造り
しかし、店の真上のこの二階部屋が映ることは最後までなかった。



とらや 台所



社長「
あ、マイコさん、おはよう

マイケル「
シャチョウサン、How are you?

社長「
ダメダメ、ノーマネー、腹切りおいおい ゞ(^^;)



        
           



マイケル「
I know , Its tough.(ほんとそりゃ困難だね)ダメダメネ


社長「
そうそうそう

社長、おばちゃんに

社長「
どうした昨夜(ゆうべ)は?寅さんおとなしく寝たかい、これやらずに

と指でチャンバラ喧嘩のしぐさ。


おばちゃん「
え、いっぱい機嫌で帰ってきてさ、日本人は布団部屋かって寝たよー

社長「
じゃあ、日米対決は今日に持ち越されたわけか

おばちゃん「
うーん

社長「
大変だね、お宅も

と、おばちゃんの目を盗んで、インスタントコーヒーをカップに入れるせこい社長(^^;)


寅、荷物部屋から起きてきて

寅の声「
あーあ、よく寝たよく寝た

寅茶の間に来て


寅「
おばちゃん、朝飯朝飯

ふと見るとマイケルがパンを食べている。

マイケル「
good morninng Mr. Tiger.


寅「
あー、ヤダヤダ、この家は怪獣飼ってたか、
 あー、象がパン食ったツラしやがって




           



おばちゃん「
あんた、パンとコーシーでいいだろ、マイコさんと一緒に

寅「
冗談じゃない、朝っぱらからパンなんか食えるかい、もぐもぐして
  喉につっかえちゃうよ


おばちゃん「
わかったよ、味噌汁とご飯で支度しますよ

寅、座って

寅「
いいよ、外行って、日本人らしくもり蕎麦でも食うよ


マイケルビタミン剤飲んでいる。


寅、おばちゃんに


寅「
日本茶の一杯でもいただけますか?

と、言いながら、自分のお土産の紀州梅干を開ける。



         



日本茶と、一緒に梅干を一つ食べようとするのだが、
マイケルがその様子を興味深く見ているのに気づく。


寅はいたずら心がムクムクと沸いてきて


         


寅にこにこ顔     (((((^^;)危ない予感



         



マイケルもとりあえずニコニコ。



爪楊枝に梅干を指してマイケルに指し示す。


寅「
おいしい」と無声音。

マイケル頷いてニコニコ。

寅、梅干を美味しそうに食べる真似をする。

一口食べて

寅「
ああ??と庭を指差す。うそ(−−)



        



マイケルが庭を見た隙に
口から梅干をパッと吐き出し、下に落とす。


そこまでやるか…(−−;)




         



そして興味深々のマイケルに

寅はスプーンで山盛り3つの梅干
マイケルの口の中に入れようとする。




            



社長真っ青になりながら

社長「
よせよ、梅干なんか食わせるの!」と小声で注意。

寅「
黙ってろタコ」と小声。

寅ニコニコで

寅「
はい、3つ

スプーンをマイケルの口元に持っていって

寅「
はい


寅「
あーん、そうそう、うまい


マイケル3つとも口に入れモグモグ。


一拍あって。。。。


マイケル「
Oh!!No!!ウ!
  ウオオオオオオ!!!!!
ああ…(TT)



          



マイケル、社長にぶつかり、台所の流しに走っていく。


庭にいたおいちゃん急いで台所へ走る。


梅干を吐き続けるマイケル。

おばちゃん「ひえ〜〜〜〜〜

おばちゃん「
まあ、どうしたのー!と背中を両手でなでてやる。


社長、寅を睨んでいる。



寅、雪駄を履いて店に行きながら

寅「
梅干3つも頬張っちゃそりゃしょっぱいよ。それは、フフ



            



そそくさと店の方に行ってしまう。

社長、おばちゃんに

社長「
そうなんだよ!梅干3つも食わせやがったんだよ!


笑いながらスキップで店を出て行く意地悪な寅。



マイケル、振り向いて何かわめく

マイケル「
なんだ!あの男は!」…という英語(^^;)


社長「
気にしない気にしない」と押さえにかかる。


おばちゃん「
脳天ファイラーね、脳天ファイラー!

と、ジェスチャー入り。



        


正式には脳天壊了(nao tian huai le)と書く。

これは、おばちゃんには悪いが英語ではなく中国語だ。
脳天壊了(nao tian huai le)と書くらしい。
当時の大陸での「兵隊中国語と言って、本土でも流行になったと聞く。
 
ゃった可能性はある。

マイケル、またしょっぱく&すっぱくなってきて

マイケル「
ワアアア!

おいちゃん「
水水!

おばちゃん「
はいはい

マイケル流しで水を飲む。


社長「
オレまですっぱくなってきたよ」と、スッパ顔(^^;)

水を飲む社長。



私は当初、おばちゃんのこの『脳天ファイラー』という言葉を
「ファイラー
とは『FAILURE』、つまりFAIL(不足する、衰弱する、なくなる)の名詞形で
「不足、欠乏、不全、衰弱、失敗者」と言う意味だと思っていた。ノーテンはもちろん脳天。
つまり脳天が欠乏…(^^;)…と思っていた。

その後、私の知人の寅さんファンであるSさんがアイデアを下さり、
「ノーテン.ファイヤー(脳天爆発炎上)」のほうがおばちゃんらしくて面白いしと言われた。
確かに「ファイヤー」なら、おばちゃんでも言葉を知ってるだろうし、あのおばちゃんの
手を上げたアクションにぴったりだ。なるほど、さすがSさんだと納得していたら、

今度は、「男はつらいよ」をこよなく愛するNさんが、いやいや、そうではない。
おばちゃんの言った「ノーテン.ファイラー」は、英語ではなく
中国語の
脳天壊了(nao tian huai le)だと、きっぱりおっしゃった。
「ファイラ」とは中国語で「壊れた」の意味であり「壊了」と書くらしい。
 

私は驚き、ちょっと、いろいろその後調べてみたら、
おっしゃるとおり戦前の大陸に渡った方々や軍隊などで使っていた言葉のようなのだ。
 
上でも書いたとおり、当時の大陸での「
兵隊中国語
と、言うそうだ。
 
シナリオでは「ノーテン.ファィラーね、ノーテン.ファィラー」となっているので、
それだけではわかりかねるが
おばちゃんの年齢を考えると英語よりも、Nさんの仰るように
中国から来た兵隊言葉としての脳天壊了のほうが説得力があるようだ。


それではなぜ英語しかわからないアメリカ人のマイケルに言っちゃったかが
疑問がとても残るところだが、
おばちゃんにとってはとりあえず「外国の言葉」だから同じようなものなんだろう。
だいたい、その言葉の本来の由来などおばちゃんが知っているわけがないのだから、
なんでもOKなのだ。
」として若い頃流行っていた
大陸での兵隊言葉が出ちゃった可能性はある。

そして、そうこうしているうちに月日は流れていった。

で、昨年2009年11月、義父の葬式のため、連れ合いの実家に2週間ほど宿泊した際、
なにかの話の際に、なんと義母が「それはノーテン.ファイラーだね
と笑いながら言ったのだ。

私は心の中で「おおお!この言葉だ!」と、思い、さっそくその意味を聞いてみると、
「ちょっと間抜け」「オバカさん」というような時に使うようだ。
彼女が言うぶんには、随分若い時から年上の人たちがすでに使っていたらしい。
そして実際その言葉が何語かも、その由来も、彼女は全く知らないらしい((^^;)
ただ、なんとなく大陸からの言葉だということはみんなわかっていたということ。

まあ、なんにしても、私が思っている以上に戦前もしくは戦中からこの兵隊中国語の類は
日本全国にすでに広がり、大人も子供も頻繁に使っていたことは間
違いないようだ。








寅が行った先はなんと英語塾を開いている圭子さんめぐみさん宅だった。


江戸川土手近く



柴又英会話教室のある圭子さんの家

株式会社丸福建設の軽トラックが停まっている。
寅の幼馴染、茂の会社




この茂が経営する建設会社は柴又駅の向こう側(1丁目)に本当に実在する。↓


          





大工さんが来ているもよう。

足立ナンバー 69−61

クリーニング 白元舎のバイクがやって来る。

寅配達人に



            




寅「
なんだ、この家持って行くのか?

配達人「あ、ええ」

寅「
あーよしよし、オレ持っていてやる

配達人「いや…」

寅「
いいよいいようん、ついでだから、うん

配達人「すいませんね」

入っていく寅。

見ている配達人。


翻訳の仕事をしている圭子さん。



           




圭子のテーマがゆっくり流れる。


伸びをしている圭子さん。


寅に気づいて


圭子「
あら、寅さん


おいおい、昨日ちょっと会っただけでもう『寅さん』と呼んでいる。
寅が送っていく時に
『寅と呼んでください』とかなんとか言ったんだね、きっと。


寅「
どうも、突然お邪魔しちゃって…」ほんとほんと(^^;)

圭子「
よく来てくださったわ

圭子「
夕べはどうもありがとうございました。わざわざ送っていただいて

寅、緊張して



            






寅「
いいえ。…それではあまり長居をしてもなんですからこれで
とクリーニングもの持ちながらくるっと背中を向ける。

圭子「
フフフ、あら、何をおっしゃるの?今いらしたばかりじゃありませんか。
お茶でも飲んでらっしゃいませんか。私もちょうど一休みしようと思っていたんですよ



寅「
あ、そうですか

圭子「
さ、どうぞ」と座布団を差し出す。

圭子「
洗濯屋さんにいらしてたの?」そらそう見えるよな(^^;)

寅「
ああ、これ今表を通りかかりましたら、洗濯屋の小僧が、『ついでだから持ってけ』だなんて
生意気なことぬかしやがって、しょうがねえヤツな


いつかその舌抜かれるで(−−;)


圭子「
あら…、ごめんなさい

寅「
いえいえ

受け取る圭子さん。

圭子「
どうぞ

寅「


寅、座って

寅「
大変ですね、お勉強ですか

圭子「
勉強じゃないの、翻訳の仕事



         



寅「
翻訳

お茶を用意している圭子さん。

寅「
あの翻訳って…なんて言ったっけ、こう開いて、こっちかたに英語が書いてあって
こっちに日本語の書いてある、こう……


後に寅は第43作「寅次郎の休日」で、
満男の大学入学祝に辞書をプレゼントしてやるが
その時も↑と全く同じこと!言っていた(^^;)



圭子「
あ、字引?

寅「
ええええ、それを見ながらやってるのですか?

圭子「
そうよ

寅「
はあー…頭使うでしょ…」これ笑える(^^)

圭子「
フフ…すっかり単語を忘れてしまって字引ばかり引いてるから
   さっぱり能率があがらなくてね、パートタイムの方がよっぽどお金になるって
   めぐみに冷やかされるんですよ


寅、感心したように腕を組み

寅「
…そうですか…私にできることでしたら
  どんなことをしてもお力になりたいんですけどねえ


辛そうに

寅「
英語の翻訳じゃ、ちょっとなあ…」と沈む。

圭子「
ありがとう、お気持ちだけで嬉しいわ

寅「


圭子「
そんなことよしなさいってめぐみが言うんですけどね。
   でも私、自分で食べる分くらい自分で稼ぎたいんですよ





         






圭子さん、お茶を作って

圭子「
さ、どうぞ

寅「
あ、どうも、恐れ入ります

お茶を飲む二人。

突然かん高い電機ドリルの音。

寅、大工の方を向いて


寅「
うるせえな!あのヤロウ!


圭子「
めぐみの教室の生徒さんが増えてきてしまったもんだから、
   少し広くしようと思いましてね。
   大家さんにお願いして工事始めたんですけど、なかなかはかどらなくて…


せんべいの入った菓子入れを置く。

寅「
と、いうことは

圭子「
大工さんがなかなか来てくれないんですよ。今日はああして若い人が見えてますけどね、
   最初の約束じゃもう一月前にできてるはずなんですよ

    
そりゃ、安い仕事だから、あんまりいい顔されないのはよく分かるんですけどね



           



頷く寅。

圭子「
あら、珍しく棟梁が来たわ


口笛を吹いて大工の茂がやって来る。

このシリーズではお馴染み、犬塚弘さん。

第28作「紙風船」でも柴又小学校の同窓会で同じ『茂』役で出演。


茂「
おい留

留「へい」

茂「
ここの仕事適当に切り上げてよ、昼から高砂の現場回れよ

留「はいよ」

それを聞いて

圭子「
やあねえ


寅「
あのう…翻訳のお仕事じゃお手伝いできませんけども、
  こういうことでしたら私にお任せ下さい


圭子「
え??



           




寅、目が怖くなって、茂のそばに歩いていく。


寅「
茂よ

茂「
よお、寅、しばらくだなあ

寅「
おまえ、ここの工事請け負ってんだって

茂「
ちょっとした片手間仕事よ

茂「
おまえなにやってんだ?こんなところで


寅、あごでちょっと来いと合図。

壁の向こう側へ茂を誘う。



            




寅の声「
じゃあいいんだな、それで

茂「
そりゃまずいよ、やめてくれよ」と、寅にすがりついている。

圭子さん、ちょっと笑っている。



            




煎餅を食べる圭子さん。


寅、にやにやしながら裏から出てきて。

寅「
それじゃ、それでいいな

しぶしぶ頷く茂。


寅、柱見て

寅「
これなあ、節が多いんだよ、これとこれ、ヒノキに代えるかヒノキにな

茂「それじゃ、儲けがなくなっちまうよ〜」

寅「
あ、そうか、じゃ例の件、カミさんのほうに…

茂、一体なにやらかしたんだ??女遊びか??


茂「わかったわかった、やるよやるよ、一週間でやるよ」

寅「
そうか、頼むな



            






茂、留に


茂「


留「はい」

茂「
高砂の仕事はとりやめだ

留「はいよ」


留君はわかってる感じだね。
こういう小さな仕事もきちっとやるって。



寅、縁側に座りなおして

寅「
大丈夫ですよ。ちゃーんと言っときましたからね

圭子「
いいの?

寅「
ええ、ガキの時分からの友達ですから

圭子「
どうもありがとう」と、お辞儀



            



寅、寅もお辞儀。

圭子「
でもいいわねえ、そんな風に昔のお友達が近所にいるなんて

寅「
ええ、あの、学校時代お互いに席順を争う仲でしたから

圭子さん驚いて

圭子「
あら、じゃあ寅さん、お出来になったのね」相手見て言えよな(−−)

寅「
…、いえ、あのー、席順と言ってもあいつがビリかオレがビリかってことです

圭子「
ああ…フフ」と、下を向く。



            




茂の声

茂「


寅「
え?

茂「
おめえまだ嫁さんいねえんだろ、
 なんならオレが世話してやろうか


どぴゃ〜〜〜、茂!血の雨降るで((((((((((((((((^^;)


と、からかいながら柱の節に指をぐりぐり遊ぶ茂。




            




コミカルタッチで「男はつらいよ」のテーマ曲が流れる。


寅、圭子さんに笑みを浮かべながら

茂に猛突進。


茂「ななな、なんだ、なんだよ、おい、やめてくれよ


と屋根に架けてある階段を上って逃げる茂

垂木で茂のお尻を「
このヤロ!」とバシバシ叩く寅。

茂「
いたたた!

圭子「
寅さん」と言いながらもちょっと笑っている。

寅、はしごを取り外して

寅「
もう下りんな!バカヤロ!ハハハハ

と、また茂のお尻をバシバシ叩く。


敷地内に謎のビニールハウス?家庭菜園??。これはなんでしょう??



           



ああ、寅の恋はどこへ行く…。っていうか
寅の恋愛よりも、今回私はマイケルのことが気にかかるのですねやっぱり。






後編






柴又駅 駅前広場



京成線 国鉄線 京成線 都営地下鉄線



暗い顔で柴又駅改札から出て来るマイケル。



        




この後半からは,、多忙が続いているため、制作時間の関係で
マイケルたちの会話に関して、英語は書かずに
日本語のみで展開させていただきます。
ご了承下さい(^^;)ゞ








夜 とらや 茶の間


マイケルのために天ぷらを揚げているおばちゃん。



       



ラジオが流れている。

『8時25分からは。。。今夜は学問に。。。』




寅が暖簾をくぐって入ってくる。



さくら「おかえりなさい


寅、くんくん匂って嬉しそう。


寅「おー

おばちゃん「おかえり!今日は天ぷらだよマイコさん(  ̄∇ ̄; )ナヌ?


と、振り向くとそこに寅がいる。



        



がっくりのおばちゃん。


おばちゃん「なんだ寅ちゃんかと顔が豹変、沈む。

  うへえ〜〜〜超露骨..・ヾ(。><)


         おばちゃんのこの態度なあ…
        



寅、ブスっとして茶の間に上がる。



おばちゃん、はっと我にかえって取り繕うように


おばちゃん「違うんだよ、
    そういう意味じゃないんだよ
そういう意味だよゞ(−−;)


寅背広をふわっとまくしあげてドテッと座り、
ガックリ下を向いてうなだれている。 
おおげさ ゞ(^^;)



素早い背広のまくしあげは、渥美さんの十八番。



       




おばちゃん「マイコさんかなって思って見たら、
    寅ちゃんだったろ、
    だから『なーんだ寅ちゃんか』って
    そう言っただけなんだよ


まったく言い訳になってない。そのまんま ゞ(ーー;)


おいちゃんは、やばいよこれはって目で寅をみている。


寅「あーあ…、アメリカ人はいいねえー。
 毎日毎日ご馳走で。
 そこへ行くとオレなんか芋の煮っころがしだもんねえ




        



おばちゃん「んまあ…

さくら「お兄ちゃん、どうしてそうアメリカ人を嫌うの?

寅「理屈じゃないんだよ、気味悪いんだよ!ストレートな人(^^;)

さくら「どこが?

寅「全部だよー。目の玉青くしやがって、デカイ鼻しやがって、
 毛ガニみたいな赤い毛生やしやがって
これ考えた山田監督って((((^^;)

さくらあきれて

さくら「人種差別よ、それは

おばちゃん「アメリカ人が見りゃねえ、オマエの顔なんかもっと気味が悪いよ。
     四角くって、目がちっちゃくってェ〜〜


寅、キッと睨んで

寅「そういうことを言っていいのか自分の身内に!



       



おいちゃん「やめろよ、みっともないそんあ〜、
     あ、マイコさん帰ってきたぞ




マイケルが帰ってくる。


さくら、出迎えに行く。


おいちゃん小声で

おいちゃん「ほんとバカだなあ」と寅に注意

寅、おいちゃんを見てブツブツ。

おばちゃん「おかえり

さくら「おかえりんさい



マイケル顔に疲れが出ている。

マイケル「ただいま



おばちゃん「どうだった?商売

マイケル、しょぼくれて力なく

マイケル「ダメです…



      




さくら、おばちゃんに

さくら「疲れた顔して…


さくら「マイコさん

マイケル、靴を脱ぎながら

マイケル「はい

さくら、てんぷらを指さして

さくら「今夜はてんぷらよ、てんぷら」と微笑む。



       



おばちゃん「好きでしょ」とにこにこ。

マイケル、さくらの心根に心が震え、静かに感動している。


マイケル「日本の女性はなんて優しいんだ…」英語でこうひとりごと言っています。


あまりの感激に突然さくらに抱きつき、

ななななんと頬に
キス!!!!


       



さくら「きああああああ!



(((((Σ(|||∇|||))))))


おばちゃん「ああああああ!!!と大口開けたまま(^^;)



さくら必死で離れる。


        おばちゃんの表情が面白い(^^)
       



さくら「は!!!!!


もう頭真っ白。目がぐるぐる。



       



寝っ転がっていた寅

びっくらこいて起き上がり


寅「
え!!!!!




       



おいちゃん目が点になり

おいちゃん「は。。。。。笑えます(^^;)



       



みんな凍りつく。

特におばちゃん、
あまりの驚きに愕然としている。

…( ̄◇ ̄;)

       



マイケル、はっと気づいて

マイケル「OH!Sorry…、ついアメリカでの癖が出て…」と言い訳。

マイコはん、あんたっていったい…(TT)




次の瞬間、寅は茶の間からわーっと飛び出してきて
さくらを突き離し、
マイケルの胸ぐらをつかみ


寅「この野郎!!!!と店の方へ押して行く。

おばちゃん「あ!何!何すんの!

マイケル「なんだ!?」(英語)と叫ぶ。



        
            



寅「やい!オレの妹に何しやがんだ!!
 これにはれっきとした亭主がいるんだ!
 てめえ承知の上かこのヤロ!!




        



マイケルは寅の意味が分からない。


さくら「お兄ちゃん、ちょっと待って!
  そういう意味じゃないのよ、あれは



寅「うるせえな!てめえ、あんなことされて平気なのか!
 てめえ博の目を盗んで、このヤロ、
 
不義密通してやがるんだろ!
表現が古うう(^^;)



        




さくら「バカ!なんてこと言うの!と言いつつ、微妙に笑っている倍賞さん(^^)


           倍賞さん笑ってます^^;↓

        



マイケルも寅の言うことがわからなくていろいろまくしたてる。


寅「バカ!ノッポヤロウ!日本語でしゃべれ日本語で!



                          




さくら「お兄ちゃん落ち着いてちょうだいお願いだから




そこへめぐみさんが運よくというか運悪くというか訪ねて来る。



マイケル「おー!めぐみ!


めぐみさん「どうしたんですか?いったい

寅「こののっぽ野郎がな、と、めぐみさんにしゃべろうとするのをさくらが止める。

さくら「お兄ちゃん、ちゃんとめぐみさんに…

寅「うるせええな!この野郎、
  おまえはオレの言うこと聞きゃあいいんだよ!
と、さくらを叱る。


マイケルついに大声で

マイケル「Shut Up!! オレの言う事を聞け!!



       



みんな一瞬耳を抑えてひるんだ隙に
マイケルはめぐみさんに早口でまくしたてる。


マイケル「昨日まで、僕は優しい家族に囲まれて
   幸せに平和に暮らしてきた


寅「なんだ?

めぐみさん「昨日までとっても優しい人たちに囲まれて
    幸せに暮らしてきたって
泣き泣き通訳(TT)



       



寅「ちッ、何だコノヤロ」とそっぽを向く


マイケル「この四角い顔に小さな目の男が
   やって来てからブチ壊しだ


めぐみさん、通訳を嫌がるが、
マイケルは強硬に「Come On!」と懇願。



寅「なんだなんだ、オレのことか!言ってみろよ!え!と睨む。


彼女はそのまんま通訳してしまうのでことはさらにややこしくなる。



       



めぐみさん「顔の四角い、目の小さい男が現れて…、
    僕の幸せをぶち壊したって…
    彼がそういうふうに言うのよ…
泣き泣き通訳(TT)


寅「コノヤロ!!てめえ人の面のこと言いやがって!

寅は顔のこと言われるのが大嫌い(^^;)


とマイケルを押し倒そうとするが、
反対に茶の間に跳ね飛ばされてしまう。




   



みんな「キャー!!


おいちゃんまで巻き添えくって一緒に倒れてしまう。

おいちゃんって…(TT)




ここのシーン、カメラは天井カメラ 俯瞰で映す。



        




もう完全に『わが寅次郎は柴又とらやにおいて、マイケルと戦闘状態に入れり…』だ。



戦闘態勢を表す適当〜なBGM


★寅はカンフーか空手かわからないポーズ。

★マイケルはモハメド.アリばりのボクシングポーズ。



              



庚申のポスター 御本尊二百年記念 10月20日


おばちゃん「博さん!博さーん!!」と走って工場の方へ。


寅「チキショウ!アメ公!勝負するか!

寅カンフー&空手のポーズ




         




寅「ウワアア!!と手を広げて戦闘態勢

おいちゃん、急に寅の手が迫ってきてまたもや倒れる。



下條さん、リハーサルも含め何度もごくろうさまです。(TT)



         



寅「タア!!

めぐみさんビビりまくっている。

一方マイケルは

ボクシングのゴングが鳴って(^^;)

ボクシングのファィティングポーズをとりながら




       





マイケル「Come On! Come On!
   ぶっとばしてやる!モハメドアりだ!


と手をぐるぐる回す。





         





モハメド・アリ(カシアス・マーセラス・クレイ)


元ヘビー級チャンピォン。
ヘビー級なのに軽いフットワークとシャープなジャブ、
輝くカリスマ性は当時世界的な人気を博した。

蝶のように舞い、蜂のように刺す
モハメド・アリの華麗なボクシングは今も語りぐさになっている。
「ロープ・ア・ドープ Rope A Dope
と後に名付けられた戦法によって逆転勝利した
1974年12月のアリ対フォアマンの試合はあまりにも有名。
私もテレビで見た。
またアリは、全世界を巻き込んだ反体制運動、反戦運動の象徴的存在でもあった。



寅再度気合を入れる。

寅「イヤアアア!!!

めぐみさん後ろから

めぐみさん「待って、待って STOP!」と叫び腕を掴む。

おいちゃん「寅!」と叫ぶが両者聞く耳持たず。


柴又の人たち、参道で見ている。


博たち工場から止めにやって来て

博「ピースピース!!と手をあげる。



       



社長「ピースって何だ?

博「平和

社長「平和!ピースピース!


止める博を振り払う寅。




       




おばちゃん「もう!!いいかげんにしてよ!二人とも!
    さくらちゃん見てごらん!泣いてるじゃないの!





        



めぐみさん「Stop! Sakura san is Cry!!とマイケルを止める。


さくら下を向いて泣いている。さくらの涙は強烈な抑止力


これは第6作「純情編」での大げんかを止める時のアレンジ版。
あの時は、夕子さんが主人公だった。



おろおろするマイケル。

マイケル「さくらさん、Plase Dont cry.
   原因はあの男です。
   あの男は一体何者なんだ?



      



めぐみさん「What You say,
   He is Sakurasans Brother!



マイケル「Whats!!??



        



マイケル、寅を見て、さくらを見る。

マイケル「You mean….


めぐみさん「Its truth.



マイケル「ああ…と愕然としているマイケル。



        





だから言ったんだよ。
さくらたちは早めに寅の素性をマイケルに知らせた方がいいって。
やはりマイケルは寅がさくらの兄だということを知らなかったらしい。
めぐみさんんから彼らが兄妹であることを聞かされて愕然とするマイケル。
罪の意識にさいなまれてしまうのだった。




寅、マイケルが急に下を向いてしまったので

寅「なんだって言ってるんだ社長

社長、手を横に振って『わからない



        



マイケルのテーマがゆっくり流れる中


マイケル、後悔の目で寅を見る。

寅、また緊張して


寅「またやるか…

めぐみさん近づいて

めぐみさん「そうじゃないんです。この人ね、
    寅さんがさくらさんのお兄さんだということ
    知らなかったんですって



マイケルもマイケルだ。
一緒にひとつ屋根に住んでるんだから
少なくてもさくらの身内もしくは親戚だってことくらい
さすがに分かるだろ。ゞ(^^;)




みんな「え!??


社長「なんだいと呆れる。


この件に関しては、正式に言わなかったさくらたちも悪い。


マイケル、帽子をとって

マイケル「I'm sorry.この度は失礼しました

マイケル「ごめんなさい



       



と言ってしょぼくれて二階に上がっていった。

めぐみさん「マイケル」と言って慰めに行く。

みんな「はあー…

社長「言ってなかったのかい、
  そんな大事なことを
 ほんとにねえ┐(-。ー;)┌


博「そういえば…そういえばじゃないだろが(ーー;)

おいちゃん「誰だと思ってたんだおまえのことをほんとほんと(ーー;)

寅「兄妹にしちゃ、顔が似てねえからな全〜〜〜然似てない(^^;)

社長「外人だしな



       




めぐみさん戻ってきて

めぐみさん「あのー、自分のせいでこんなことになっちゃったから
    ここを出て行くって言ってますけど



さくら「えー…

おばちゃん「あらあ…

おいちゃん「おい、寅…




店に出てくるマイケル。かばんを持っている。



めぐみさん「マイケル

マイケル「ミナサン、
   アリガトウゴザイマシタ、サヨナラ




       




どうしていいかわからないでおろおろするさくら。


マイケルまたもや店のサンで頭をぶつけて




       



照れ笑い。

参道で見ていた町のみんなもちょっと笑う。





寅「おい!マイコと呼び止めて、




        




寅から握手の手を差し出す。



寅「オレ悪かったよ




          




マイケルもほっとして、

あらためて、両手で寅の手を握り締め微笑む。



寅、あらためて

寅「これ、オレの妹だい、

 フフフ。悪かったな



柴又商店街のみんな拍手。



          




社長「よかったよかった!講和条約締結だよ!ハハハ




          




みんなで大いに盛り上がる。


メインテーマがテンポよく流れる。


寅「じゃ、二人でいっぱいやろうじゃねえか


めぐみさんマイケルに通訳

めぐみさん「友情の印に酒を飲み交わそう

社長「レッツゴー!!ハハハ

マイケル「Lets go!!

寅「さあ、行こう!

社長、めぐみさんに

社長「通訳通訳、ね

めぐみさん「はい

さくら「ほんとは忙しいんじゃない?

めぐみさん「フフ、大丈夫大丈夫、じゃ、行ってきます

博が社長に呼びかける

博「社長、費用の方頼みますよ

社長「オレが持つの?しょうがねえや、
  日米友好のためだ、ハロー〜〜〜〜




         



ようやく一件落着

おばちゃん「もうご町内のみなさん、ご心配かけてすみません

みんな「よかったね

おばちゃん「ありがとうございました





数時間後…





さくらのアパート



タンス側面に電話番号一覧が貼られている。

とらや
朝日印刷
などなど

9月 10月のカレンダー

博と満男が布団の中に入っている。

おそらく9時半は過ぎている感じ。


おばちゃんからさくらに電話がかかっている。


さくら「帰ってきたー?マイコさんも一緒?
   …そう、はー、よかったー。
   で、どうしてる?みんな




        





とらや 電話口

奥の茶の間でどんちゃん騒ぎしているのが見える。


マイケルは南北戦争歌『リパブリック賛歌』を歌い、

寅や社長やめぐみさんは『ごんべさんの赤ちゃん』を同時に歌っている。



なんせ同じメロディなんでなぜか合うんですね、これが(^^;)


私の青春期は『♪まあるいみどりの山手線〜、真ん中通るは中央線〜』と
家電店のCMを歌っていましたね。

また『おたまじゃくしはカエルの子』もこのメロディ。



日本人みんなで


『♪ごんべさんの赤ちゃんが風邪引いた
 ごんべさんの赤ちゃんが風邪引いた』


リパブリック賛歌の歌詞は↓の通り。

Mine eyes have seen the glory of the coming of the Lord;
He is trampling out the vintage where the grapes of wrath are stored;
He hath loosed the fateful lightning of His terrible swift sword;
His truth is marching on.

Chorus:
Glory! Glory! Hallelujah!
Glory! Glory! Hallelujah!
Glory! Glory! Hallelujah!
His truth is marching on.





おばちゃん、受話器をマイケルたちの宴会に合わせて

おばちゃん「聴こえるだろ、もうねえ、
    ご機嫌でアメリカの歌なんか歌っちゃってさ、
    これから飲きっと2次会だよ




           






さくらのアパート



受話器にビンビン歌声が聴こえてくる。

さくら「よかった…。ごめんねおばちゃん、迷惑かけて…。
   うん、うんんそいじゃ、おやすみなさい




           



毎回さくらが寅のことでおいちゃんとおばちゃんに謝るたびに思うのだが、
寅はあのとらやの家をさくらと共に相続する権利が本来はあった。
だからこそ寅はいつも結構リラックスしてあの家に帰郷のたびに住む。
寅はお金が無いだけで、決してあの家の居候ではない。
住む権利を認められた本来の相続人でもあるのだ。

おいちゃんたちへの長年の恩は恩として、
また寅がかける迷惑は迷惑として、そういうものはあるにせよ、
シビアに言うと、実は寅がああいうヤクザで風来坊な性格だから、
おいちゃんたちは逆に自分の兄さん家族が住んでいたあの家に
今も住んでいられるとも言える。

もし跡継ぎの寅が20年ぶりに戻ってきて、とても真面目にとらやをきり盛りし、
かつ、自分の所帯をあの家で持つことに積極的になったら、
おいちゃんとおばちゃんは逆に本来の家長が寅だということを、
より一層自覚し、今より肩身が狭く暮らしているかもしれない。

もちろんそれじゃ話が面白くもおかしくもないし、血が通わないし、
なによりもそういう杓子定規なことをしないのが山田監督なのは
ご承知の通りなんだけどね(^^)





さくら寝床の博に



さくら「仲直りできたらしいわ

博「ひとつは片付いたか

さくら「ひとつって?



           



博「もう一つあるだろ。恋愛のほうがま、すぐ片付くよ(^^;)

さくら「

博「どうせフラれるに、決まってるんだけどさ


圭子さんはまったく寅を男として見ていない感じだものね。



           





さくら「そうか…と、いまさらながら考え込んでしまうのだった。



寝てしまっている満男のそばにある本↓を取るさくら。


【ウルトラ怪獣大百科】(ムック本)


        


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 1970年代 円谷プロ 450円


263mmx190mm

    

       


              






       





       
         
       







アメリカ アリゾナ州



田舎の郵便ポストに手紙を入れるママ。




マイケルママの手紙


マイケルママ「マイケル、私は手紙を読んで驚いたよ。
      お前はなんで日本に滞在してるんだ?
」もちろん英語




マイケルママ「日本はハラキリとカミカゼの国だよ。
      殺されてしまわないうちにすぐに家に帰ってきなさい。
      どうか、お金儲けしょうなんてなんて、
      おまえみたおいな優しい子がお金儲けなんて向いていないよ
」またまた英語



        









とらや  店   雨



マイケルママからのハガキを読んでいるおいちゃんおばちゃんさくら。
と、言っても彼らは英語できないから意味がわかないんだけどね(^^;)



おばちゃん「困ったねえ、アメリカへ送り返そうか



       



さくら「うーん、どうかしらねえ…



寅は茶の間で寝転がっている。

おいちゃん「おい、寅、どう言ってた。
     マイコさん、もう一度ここへ帰って来るのか?


寅「しらないよ、オレは寝っ転がったまま


おいちゃん「起きろよおまえーほんと(^^;)


おばちゃん「どうして関西なんか行ったんだい?ボケ(^^;)


さくら「そりゃ仕事しにいったんだろうけどツッコミ(^^;)



と、雨で濡れた冷たい手をこすっている。



        



さくら「でもほんとは下宿代払えないこと
  気にしてたんじゃないかしら
まともな人間は気にする。

おばちゃん「うーん、そんな遠慮しなくたっていいのにねえ普通遠慮するって ヾ(^^;)

おいちゃん「

寅「

おいちゃん「関西で売れるのか、ビタミン剤なんか…

寅「あの男にはちょっと無理なんじゃねえか。
 この世界はそんなに甘かねえから





おばちゃん急に店先を見て微笑む。


おばちゃん「あら、こんにちは


これは小津安二郎監督の演出パターン。


相手が見えないまま、
まずあいさつをさせるのは小津監督の十八番。



 

        





傘をさした圭子さん。



        



圭子さん「こんにちは。よく降りますねえ

さくら「おあがりになりませんか

おばちゃん「ちょっとお茶でも



寅の顔がパーッと華やぐ。



        



圭子さん「あ、急ぎますから。じゃ

さくらとおばちゃん「どうも」とお辞儀。


寅、喜び勇んで傘を持って店先に飛び出し、


寅「あ!そこまでお送りします!


圭子さんの声「いいんですよいいよねえ〜(((^^;)

寅の声「いいえ、どーせ暇ですから!え!ひまたっっぷり(^^)



        



さくら、複雑な顔しておばちゃんと諦め顔。


おばちゃん「はあーあ、あ。マイコさんが懐かしいよ。
    静かな人だったねえ




        






マイケルのテーマが再び流れる。



マイケルママのハガキの続き



       





マイケルママの手紙の続き



マイケルママ「私はハワイもどこも行きたくないよ。
      私の夢はお前とお前のお嫁さんと一緒に暮らすことだけなんだ。
      そんな日が一日でも早くくればいいと思っている









京都四条大橋

橋を渡っているマイケル。川向こうは南座。






       










京都 下長者町通り 旧大宮角  


小さな薬屋  山口薬局


マイケル「This vitamins are Super GENKI !
   and tranquilisers SHIZUKA for your KOKORO
.



なんのこっちゃ???(^^;)



       



tranquilisersは精神安定剤。



凄いブロウクンジャパニーズ((((〜〜;)


薬剤師のおばちゃん「結構です

このつっけんどんな言い方最高!!すばらしい!!



マイケル「ア、イヤ、チョットマッテ、
    『サンプソン』カイシャは
   セカイテキユウメイカイシャデス




そのあとマイケルは早口の英語で

この伝票に書いてくれればすべての種類のビタミンを注文出来ます」英語

と、まくしたてる。



        



おばちゃん「外人さん、英語が上手ですから、
    私上手によう断らんわ
いい味だなあ〜〜(〜〜)

マイケル「わかります。この薬はアメリカの大製薬会社のものです」英語

おばちゃん「お父さんが今いませんから、いるときに来て下さい

マイケル「ツヨイアメリカ!Most ツヨイアメリカ!わからんてヾ(^^;)

おばちゃん「困りますねえ(^^;)

このおばちゃんは第24作の助演女優賞だ!文句なしの存在感。



        




        




店の中↓

サモンエース

ポリタンC

パブロン 

パブロンのCM・4代目中田嘉子さんですね。

新グロモント 「ちかれたび〜〜」のポスター

「今日はちかれたなー」「ああ、ちかれたびー」
(中外製薬、新グロモント)
農作業をするおじさんの会話。
秋田県花輪地方の方言。
滋養強壮剤




                        
パブロンと言えば中田喜子さん

             


 
乙羽信子→武原英子→長山藍子→中田喜子
、川谷拓三、愛川欽也→
榊原郁恵、近江俊郎、坂上二郎→三田佳子、後藤久美子、小田茜
→末永遥、西秋愛菜、小林沙弥、杉本友莉亜、瑠川あつこ、竹下景子 


しょぼくれて「山口薬局」を去っていくマイケル。


お坊さんが托鉢のために読経しながら家々をまわっている。



子どもたち歩いていくマイケルを見て



         



女の子「大きいなあ〜〜、どっからきたんやろなあ〜〜はい、よく言えました(^^)


隣の小さな男の子が女の子に
前もってセリフを伝えてカンニングさせてあげていた。







西陣の裏路地 上七軒付近  真盛町 

歌舞会 舞妓練習所 事務所前

練習所の事務所をロケのため急きょ芝居小屋に模様替え。


大空小百合ちゃんのいる
坂東鶴八郎一座
公演の前を通るマイケル。


われらが岡本茉利さん登場!



        



偉大なるプッチーニ大先生の不朽の名作、
哀しくも美しい愛の調べ。




        



小百合ちゃんは思いきってマイケルに声をかけてみる。

小百合「ハロー、あのう…ドゥ ユウ ウォント
   シィー アワー プレイ ?


マイケル「What is it ?

小百合「マダムバタフライ。ユウ ノウ?

マイケル「マダムバタフライ、シュァー
   あなたはこの劇団の俳優さん?


小百合ちゃんは「ミー、バタフライ。
   ミー、バタフライ!( ̄▽ ̄)
と、猛アピール。



        
                  


マイケルは『You are madam Butterfly!?
    You are STAR!



小百合「イエス!!




        



マイケル「Thats Wonderful!and such Bauteful Star

小百合「Thank you very match!

マイケル「フフ。。。


結局マイケルは、小百合ちゃんと縁があったので、
その芝居を見ることに。



小百合ちゃんがマダムバタフライを。
坂東鶴八郎がピンカートンを演じている。


               

ピンカートンが蝶々夫人と別れる場面が演じられている。
1年後に帰ってくるというピンカートンを信じられない蝶々夫人は彼をひき止めようとするが、
彼は本国のアメリカに帰ってしまう。
来る日も来る日も夫人は彼の帰りを待ちつづけるのだった。




ピンカートン「それじゃあ、蝶々、達者で暮らせよ

蝶々「いやいや、行っちゃいや、ピンカートン様



        



ピンカートン「聞き分けのないことを言うもんじゃない。
      一年たったら必ず帰ってくると言っただろ



イケル、お菓子をボリボリ食べながら芝居を観ている。



        



殿山泰司さん途中から座布団持って入って来て、マイケルの後ろに座る。


蝶々「でも、アメリカに帰ったら青い目をした綺麗な人がいて…
   私のことなんか…


ピンカートン「バカなことを言うもんじゃない。この世の中で
      愛しているのはおまえだけじゃあないか!



女中スズキ「ピンカートン様、お急ぎ下さい、今、船出の知らせが。ううううう」と泣きながら立ち去る。

女中スズキは歌劇の中にも出てくる蝶々の忠実な下女。

ピンカートン「それじゃあ、蝶々、さらばじゃ



         



身を乗り出して観るマイケル。

背が高いのでマイケルが動く度に
後ろの殿山さんも同じように動いている。



蝶々「ピンカートン様!!


観客席から掛け声「待ってました!白百合ちゃーん

掛け声の素人臭さがなかんか味わい深い(^^)



         



アコーデオンやクラリネット、ドラムで奏でる『ある晴れた日』



         



名曲「ある晴れた日」を歌う小百合ちゃん。


食い入るように蝶々夫人を見ているマイケル。



         




小百合「♪ある晴れた日、
    遠い海の彼方に煙が立ち、
    船がやがては見える…




         




おかきの粉を殿山さんの方に飛ばし、
迷惑を被っている殿山さん。細かい芝居やってくれています(^^;)



小百合「♪白い船が〜港に入り…



途中からマイケルの頭の中で
小百合ちゃんがさくらに変わり、
ピンカートンが自分になって行く幻覚を見始める。

相当この恋の病は重症(TT)




        





さくらが朗々と「ある晴れた日」を歌う。



       



第16作の夢シーンとともに、
倍賞千恵子さんのすばらしい歌声を
長時間聴ける数少ない場面。
彼女のこの歌声だけで「春の夢を観る価値アリ!

追記2012年1月

このお声は倍賞さんによく似た声楽のプロの方が歌われていることが
先日、松竹関係の方と私とのおしゃべりの中で出てきました。
賠償さんはあの時風邪をひいていてうまく声が出なかったそうです。
しかし間違うのは無理も無いとのこと。それほどにもお声が似ています。







さくら「♪さもいなければぁ、
  うれーしさにぃ、
  死ぬかもしれぇーないー、




     



   やがてあの人は傍で呼ぶのよぉー、
   僕の可愛いー、
   愛しい花よとぉー、
   ちょうど昔そう呼んだ通りにぃー…。

   その通りだわぁー、きっとそうよぉー、


   心配はぁー、しなーいでぇー、

   信じてぇーいるーわー、本当よぉ―


                  


最大に盛り上がる音楽



どうしても未練が残り
坂を上がって来たピンカートン(マイケル)は
蝶々夫人(さくら)を見つけ、





         





ピンカートンはステッキから花を出す手品を見せ、
蝶々は心を柔らかくし、




         

         


         




しっかり二人は抱き合うのだった。

幸せそうな二人。最後の時。






          



しかし、現実は隣の禿げた殿山泰司さんに、
抱きつくという最悪の展開だった(TT)

殿山さん「なにすんねん、
   それだけはやめてぇ、みっともないやん
」と逃げていく。


                          現実はこう↓(TT)

           



マイケルは自分の幻覚に感極まり、
現実の芝居との区別が付かなくなり



マイケル「ブラボー!ブラボー!!ブラボー!!ブラボー!!
   ファンタスティック!!ブラボー!!
   ブラボー!!ビューティフル!
と一座に拍手を贈るのだった。


観客のみんなもつられて拍手喝采。

おひねり投げたり、盛り上がっていく。

マイケル「ワアアアオ!!ビューティフル!!と気が違ったように拍手。




        



舞台の鶴八郎と小百合ちゃんたちも
よくわからないながらも喜んで、
舞台でお辞儀の連続。


役者たち「サンキュー!!サンキュー!!」を繰り返す。



        




ちなみに、本当のプッチーニのオペラの筋書きでは、
ピンカートンが再び長崎にもどってきた時には、彼は別のアメリカ人女性と結婚していて
蝶々夫人との間にできた子供を引き取りに来たという最悪のシナリオだった…(TT)


『蝶々夫人』Madama Butterfly,

プッチーニによって作曲された2幕もののオペラ。
いわゆるプッチーニの「ご当地三部作(あとの2作は「西部の娘」
「トゥーランドット」)」
の最初の作品である。

初演1904年(日露戦争の年)ミラノ.スカラ座。
椿姫.カルメン.と並んでこれを世界三大オペラの一つにあげる人も少なくない。



       



お馴染み世界女子フィギュアシングルで
蝶々夫人は安藤美姫さん、トゥーランドットは荒川静香さん、が採用している。

その後改稿を繰り返し、1906年のパリ公演のために用意された第6版により現在の様式になった。

明治維新後の動乱期、
長崎を舞台に、没落藩士令嬢でプライドの高い蝶々とアメリカ海軍士官ピンカートンとの恋愛の悲劇を描く。
ピンカートンは一旦本国アメリカへ帰り、そこでアメリカ人女性と結婚してしまう。
その後、夫妻で蝶々の元へ挨拶に来るが、プライドの高い蝶々は自刃して生き絶えてしまう。

アリアについては、前半の愛の二重唱と言われるあたりや、「ある晴れた日に」、
そして蝶々さんの死のアリア「誇りを持って死ぬ」〜「愛しい我が子」などが有名



アメリカのジョン・ルーサー・ロングが原作、デヴィッド・ベラスコの同名の戯曲がタネ本。
デヴィッド・ベラスコによる英語劇を観戦した
プッチーニは感激し、オペラに採用した。

この『ある晴れた日に』はこのオペラの中で最も有名な局。
晴天を意味する「ピーカン
(ピンカートンの略)という言葉は、この曲のタイトルに由来すると言われる。


創作時にヒントになった人は長崎のトーマス.グラバー夫人のツルなど
何人かいるようだが、当時の現地妻『洋妾(ラシャメン)』は意外にみんな
割り切っていたらしく誰もあのような悲劇的な最後はとげていない。



         



1955年の日伊合作映画『蝶々夫人』ではあの後のお千代さん、当時まだ宝塚ジェンヌだった
八千草薫さんが蝶々夫人を演じ、日伊ともに大反響を呼んだということ。
ま、映画では本当はあの味は出せないとは思うけどね。

      八千草さん主演の映画『蝶々夫人』

       



オペラの有名なところでは大正から昭和初期にかけて活躍したソプラノ歌手の三浦環。
この蝶々夫人役を最も得意とし、その生涯において世界各地で数多く蝶々夫人役を演じた。
現在でも長崎のグラバー園にはその功績を称える三浦の像がある。

マリア・カラスの『ある晴れた日に』も有名すぎるほど有名。


1930年代の三浦環の舞台。


       
                  










柴又 題経寺 二天門前



寅、そわそわしながら

はるか昔、戊辰戦争のときに流行った歌『宮さん宮さん』を歌う。


寅「♪宮さん、宮さん、お馬の前にひらひらするのはなんじゃいな。遅いな…


この「宮さん宮さん」はなんとオペラ『蝶々夫人』でもアレンジが使われている!
山田監督確信犯とみた!




  宮さん宮さんお馬の前に
  ヒラヒラするのは何じやいな
  トコトンヤレ、トンヤレナ
  あれは朝敵征伐せよとの
  錦の御旗じや知らないか
  トコトンヤレ、トンヤレナ



1868年の軍隊行進曲

作詞 品川弥二郎
作曲 大村益次郎


この作曲の大村益次郎って…あの明治維新で活躍した軍隊に貢献した
大村益次郎だよなあ。こんな歌作曲してたのか((^^;)
司馬遼太郎さんの『花神』の主人公。





寅が見ている方向はめぐみさん圭子さんの家とは実は反対方向

寅「おそいなああ…

後ろずさりで御前様に当たってしまう。

御前様「こらあ…

寅「あ、御前様、こらどうも」と笑いながらお辞儀。

御前様「おまえ、さっきからなにをうろうろしてるんだ?


寅「え?あ、今夜とらやへね、
  お客さんが来るんでそれ待ってんですよ


御前様「今夜??

寅「ええ

御前様「まだ、昼じゃないか」と空を指す。

寅「あれえ?まだ昼ですか、今日夜になるの遅いなあ…

御前様「一度、医者に見てもらったらどうだ?

頭指さして

御前様「お医者さんに



         



寅、上の空で

寅「ええ、そうですねえ


またうろうろしながら腕時計を見て

寅「なんだい、さっきから一時間も待ってるのに
 時計はまだ5分も経ってないんだからな
なんのこっちゃ。落語だねこりゃ((((^^;)


屋根の落ち葉落としている源ちゃんに

寅「おい源公!おい!

源ちゃん「
へい

寅「
おまえそんなことしてないで、
 早めに鐘を打って夜にしろ夜に!


と命令している寅。


一応、鐘の方を見る源ちゃん(^^;)



          




そしてようやく夕方

ゴ〜〜〜〜ン


夕方の鐘





とらや 茶の間 夜


リボン サッポロビール



寅がニコニコ走ってくる。

おいちゃんを押しのけて



       



寅「あ!おばちゃん、圭子さんとめぐみさんが来たから!
 な、早く、はいはい早く


おいちゃんたち「これはようこそいらっしゃいませ


寅いきりたって

寅「いいから早く、酒の支度してほら!酒飲まないだろ(^^;)

圭子さん「今日はお招きいただきまして


と二人してお辞儀。



       



寅「挨拶は抜きだから!そこへ料理をずっと。。。。

と、言ったっきりへたれこんでしまう。


さくらたち「あら

さくら「どうしたの?お兄ちゃん

寅「目の前真っ暗ガス欠(^^;)

おいちゃん「昼からずっと待ってて腹減ってんじゃないか?


ぐったりヘタレ込んでしまう寅だった。



      



カメラはズームアップ。

めぐみさん「しっかりして、大丈夫?

おいちゃん、おばちゃんに「なんか食わせろ

圭子さん「大丈夫?寅さん


寅「少しちょうだい、少しちょうだいと、ぶつぶつ。







とらや  茶の間


食事を終え、圭子さんとめぐみさんを交えて歓談しているみんな。

めぐみさんがみかんを運んでいる。

さくら「今日は針の回り方が遅いんじゃないかあー!って、フフフ

圭子さん「申し訳ないわ、そんなにまでしていただいて

結局、寅は自分の業に振り回されているんですよ ゞ(^^;)



さくら、みかん受け取って

さくら「めぐみさんもういいんですよ。上に上がってお茶にして


満男はいつものように仏間で一人(TT)

タコ社長は博にマッチ借りている。


圭子さん「いいんですよ、ほってといて下さい。
    うちじゃなんにもしないんですから。
    貰い手があるのかしら?あれで


当時はまだそういう考えなんだね…。


めぐみさん「いいんですよ。諦めてるから

と、言いながら茶碗を片付けている。



社長「めぐみさん

めぐみさん「はい


社長「どうでしょうかねえ、
  うちの工員で、あんたに一目惚れして、
  寝ても覚めてもあんたのことばっかり
  言ってる男がいるんだけど、
  脈ありませんかね




       




寅が口挟んで

寅「あー、ダメダメ!おまえんとこの職工なんかだめだよ

おばちゃん「そーだよ。仮にもアメリカで暮らしたお嬢さんだよ。
     悪いけどね、あんたんとこのまっ黒けの工員なんかじゃ


さくら「あら、ひどい

社長、おばちゃんを指さして

社長「ねえ



        



めぐみさん「そーよー、ね、社長さん、どんな人かしら、
    私気になるわ


と、茶の間に上がる。

社長「会ったら、がっかりするよ〜」と照れている。

さくら、博に

さくら「ね、誰?

博「近藤、フフ

さくら「あ、フフ」と笑っている。

さくらにまで笑われて
近藤くんってどんなやつなんだ((((^^;)



博「いい奴ですよ、見た目良くないけれどマジメで

さくら笑いながら

さくら「そうそう

めぐみさん「へえー、じゃあ会ってみようかな、フフフ


おそらくアメリカで大学まで出ためぐみさん。
零細工場の工員と本気で付き合う気持ちを持ってるのかな?
もし持っているとすれば偏見のない懐が深い人だ。




寅「よしなさいよ。さくらはね、こいつに惚れたお陰で
  一生職工のカカアで貧乏暮らしだもの
実も蓋も無い言い方…


めぐみさん「あーら、博さんは素敵よ、ねえ、お母さん


       
       



圭子さんも「うん」頷いて


  
       



圭子さん「いつもめぐみと話してるんですよ。口数が少なくて、
    思いやりがあって本当に魅力的だわねえって…




       



めぐみ「私、さくらさんが恋した気持ち分かるわ…


みんなでクスクス


博、下を向いて照れている。

寅「へえー、今時はこういう男が流行るのかねえ〜



              



博「流行りませんよ、参ったな…


みんなクスクス。


そういえば龍野から来たぼたんも博のことを素敵だと言っていた。
博はああ見えてもなかなか女性には人気があるのだ。




圭子さん「死んだ主人も、博さんみたいに口数の少ないほうでしてね、

寅「あ、そうですか

圭子さん「
だからアメリカ人によく誤解されましたわ


おいちゃん「ほー…、そりゃどうして?

圭子さん「ほら、アメリカ人は自分の考えをはっきり言うでしょ、
    主人みたいなのは何考えてるかわからなくって
    気味が悪いんですって



アメリカ住まいに向いていないのに、
なぜアメリカで何年も家族でいたんだ??



寅、博を指さして

寅「何考えてるかわからないもんね、これ

社長「じゃあ、寅さんなんか、どちかというとアメリカ向きだね。
  はっきり言っちゃうから思っていること



みんなフフフ


寅「あー、そういうことなりますかねえ

肝心の時はまったくへたれでからっきし大事なこと言わないけどね(^^;)



めぐみ「ほら、お母さん、この間もマイケルが言ってたじゃない

圭子さん「あ、やめなさいよ

寅「なになになに?

さくら「なーに?マイコさんがなんて言ったの?


めぐみさんたちがマイケルって何度言ってもさくらたちは
「マイコさん」と言い続ける。なぜ?




       



めぐみさん「博さんはね…

圭子さん「もう、おやめなさいってェ〜

めぐみ「いいじゃないの



        



さくら「ねえ、ねえ、博さんがなんですって?

気になるよねさくら(^^;)


めぐみ「博さんはね、
  さくらさんを本当に愛してるのかなって、
  そう聞くの



さくら「え…?



           

  

おばちゃん「あら?どうしてかしら


圭子「マイケルもアメリカ人だから、誤解してるんですよ


めぐみ「私がね、どうしてって聞いたら、
   夫婦でありながらさくらさんに
  一度もキスをしたこともないし、



博「えーー!!!ねえ〜(^^;)



       



圭子「
一度も手を握ったこともない。

   黙って畳に座って『お茶』って。
   さくらさんがお茶を持ってっても
   ありがとうの一言も言わない




        




さくら「フヒャア、フフフ」 さくら照れて面白い笑い方(^^)


         



めぐみさん「アメリカじゃメイドにだって
    あんな失礼な態度取らないって、
    そう言うのよー。フフフ



寅「おまえほんとは愛してないんじゃないかこれを、よー



博、たじたじして

博「そんなことありませんよと、まじめに受け答え。



          



みんな爆笑。


【ここでクイズです】

マイケルは、あんなこと言ってましたが、
実は、博はさくらとある作品の中で
しっかり手をつなぎ合っています。
どの作品のどのシーンかおわかりになりますか。






おばちゃん「そーねー、マイコさんは何をしてあげても、
     いちいち、『サンキュー』ってお礼を言ってくれるしね



さくら、博にお茶を入れながら


さくら「優しいもんね、ほんとに


さくら、博に

さくら「はいお茶

博「あ。ありがと


みんな驚いて「
あ!!




           



大爆笑。

ハハハ


めぐみさん「言った言ったーハハハ



           



圭子さん「アメリカ人はお互いの気持を察しあうことが
    苦手って言うかできないのね。
    はっきり言葉に出して言わなきゃいけないの


寅「ほー

おいちゃん「へー、それは夫婦の間でもですか?

圭子さん「ええ

おいちゃん「ほおー



おばちゃん、蒸した栗運んできて

おばちゃん「じゃあ、いい年をした夫婦が
     『
アイラブユー』なんて言ってんですか?




        



圭子「言いますよ

おばちゃん、顔真っ赤になって

おばちゃん「恥ずかしいと、おいちゃんをちらっと見る。

おばちゃんの照れ最高!!




        



おいちゃんも「なあに」とか微妙に照れている。



        



めぐみ「フフ、おばさん、おじさんに言ったことないの?
   『愛してるわ』って


人見て聞いてよね、めぐみさん。ぞわわだよ…((((^^;)



おばちゃん「そんなこと言うくらいなら
  死んだほうがましですよ
うんうん分かる分かる(^^)


めぐみさん、日本では、年配の夫婦がそういうことを
わざわざ言うのは逆に格好悪いんだ。
かえってオシャレじゃないって言うか、野暮なんだよな。文化の違い。




                  




みんな大爆笑

おいちゃん「愛しちゃいないんですよ。ほんとうに」とおどける。

おばちゃん「あら、そりゃこっちのセリフですよぉ〜

みんな再度大爆笑


圭子「はっきり言葉に表すのもいいことかもしれないけれど、
   …でもね、寅さん



寅「はい、な、なんですか


圭子「人を愛する気持ちって、
  簡単に言葉に表せれるようなもんじゃないでしょう




           



寅「…ええ…分かりますよ、ええ、その気持ち



みんな静かになる。


圭子のテーマが静かに流れる。



寅「たとえ、地球の裏と表に、
 体は離れ離れになっていたとしても、
 気持ちというもんは通じるもんですよ、
 お互いに愛し合っていれば


なるほどね…




        
       



めぐみさん、熱々の栗を一つ取る。


めぐみ「たとえばどんなふうに?

寅「めぐみちゃん、こんなことなかったかい?

めぐみ「…え?



        





寅「夜中にふと目を覚ますんだよね。
 妙な胸騒ぎだ。もしやあの人の身の上に何か…。
 慌てて駆けつける駅。夜汽車、ポーー…、




       



 
どうかあの人がご無事でいてくれるように、
 まんじりともしない一夜(ひとや)。

 やっと駆けつけたその人の枕元。




       



 『寅ちゃん、きっと来てくれると思ったわ』
 『しっかりするんだよおまえ』
 『大丈夫よ、きっと治ってみせるわ』
 『よし』



       



 …こういう気持ち。ね。

 これは言葉では言えない…


奇蹟だねそれは…。でもあるかも…。





何か昔の記憶を思い出すように…


圭子「そうね…。私も信じるわ、そういうこと…



          


圭子さんを見ているめぐみさん。


みんな頷いている。



おもむろに寅、博を見る。

博、ちょっとびくっとして



博「
いい話でした

寅「まあね

さくら「それがお兄ちゃんの愛情ね

寅「いやあ…



めぐみ「ねえさくらさん、
  寅さんその人と結婚したの?
ほへ?(( ̄ ▽. ̄;)



さくら「たとえ話よ、フフ



        



おいちゃん手でウソウソって言う。

めぐみさん笑いながら

めぐみ「なんだ、フフフ、信じちゃった。フフフ

おばちゃん「ささ、召し上がってください


みんなで熱々の栗を取る。


めぐみさん満男を呼んで

めぐみさん「満男くん、熱いよ」と5個ほど栗を持たせる。

満男「サンキューベリマッチ

と、また仏間にすごすご(TT)


社長、栗を熱がりながら


社長「愛の方は分かったけどさー、
  愛してない場合はやっぱり
ノーって
  はっきり言うんですかね、アメリカじゃ




        



めぐみさん「うん、そうよ

おいちゃん「嫌い嫌いも好きのうちなんて言うけど、
    アメリカじゃ通用しねえのかなあそういうことはァ




        




めぐみさん「曖昧なのはいけないの。
   ほら、ボーイフレンドに
   アイラブユーって言われるでしょ。
   その時、もし嫌だったらね、


さくら「うん

めぐみさん「This is impossible』って
     言わなきゃいけないの。



        



博「impossibleなるほどねえ…


社長「それ、ダメってことか?


impossible=不可能、無理、できない。



めぐみ「そうよimpossible


さくら「impossible


めぐみ「ん、私も言ったことある


みんなクスクス。


        



圭子「バカね、この子


社長「ねね、寅さん、嫌だろうね〜、
   そんなこと言われたら




        



寅「バカァ、日本の男はそんなこと言わないよ



博「じゃあなんて言うんです



寅「何も言わない。で言うよまた出たよこのパターン ┐(-。ー;)┌


博「へえー…


第1作で博も、さくらのことで寅に目で言えと指南されていたね。
寅も自ら冬子さんに実践して玉砕(TT)






寅「『お前のことを愛してるよ』



      




寅「すると目で答えるな
  『悪いけど、私あんたのこと嫌い』




      



圭子さん笑いをこらえている。


寅「するとこっちも目で答えるな…、

 『わかりました、いつまでもお幸せに…』



       



寅「そのままくるっと背中を向けて、黙って去るな。

それが日本のやり方よ




         



おいちゃん「おまえはそればっかりじゃねえか座布団一枚(^^)

っていうか、そもそもそれ以前ってことも多い(^^;)




         



寅「どうしてそういう…と怒り心頭で

寅怒っておいちゃんにみかん投げまくり。

何発かおいちゃんに当たる(TT)



        



おばちゃん、おてふきを圭子さんに渡す。


その時

社長の奥さんの声「お父ちゃん、
      いいかげんにお風呂入っとくれよぉ


前作同様、この声は谷よしのさんではない。


社長「おーう、下品な声ばっかり出しやがってもうほんとに…


社長立ち上がって

社長「じゃおやすみなさい

みんなで挨拶。


メインテーマがゆっくり流れ始める。



社長怒りながらも

社長「はいはい、アイラブユー



        



                  

みんな大爆笑。



        



これは第19作「殿様」で最初使われたギャグ。↓

遠くから奥さんの声「お父ちゃん!」
社長「おー!
奥さん「早くお風呂入ってよ!片付かなくて困っちゃうんだよ!」
社長「うるせえ女だな」と裏へ行く。
おばちゃん「愛してるんね、あれでも…
おいちゃん「なあにが愛してるだ…、ったく」と人事ながら照れるおいちゃん。
さくら「フフフ


その前に
第12作「私の寅さん」で奥さんではないが、娘のあけみが同じこと言っている。

その後、
前作の第23作「翔んでる寅次郎」でも
社長の奥さんが風呂を催促し、社長がそれに答える
というパターンをまたもや使っている。

つまりなんと合計4作品(12作,19作、23作,24作)で
社長の奥さん(もしくはあけみ)の声が出てくるのである。
それも同じパターンの『早く風呂入ってよ!』


山田監督はよっぽどこのやり取りを気に入ってたんだろうね。



圭子さんたちは、その後、しばしの歓談のあと、
とらやを後にするが、この時カメラはは参道側から店先を撮っている。
これは大変珍しいシーンだ。つまりとらやの店先が
江戸家さん側外から見れるのだ。









帝釈天  参道



大船セットなのに、参道からとらやを見る珍しい構図。


        



寅の声「またいらしてください

おばちゃんの声「何のお構いもいたしませんでしまくってたけど ヾ(^^;)


みんな道まで出てくる。


圭子さんたちと一緒にさくらたちもアパートに帰る。

これも珍しいパターン。


ほんとうは地理的にはさくらたちのアパートは線路沿いなので
真逆なのだが、毎回土手に上がって帰っていくし、土手から
下りてとらやに行く。


圭子さん「ほんとに楽しかったわさくらさん

めぐみさん「お母さんがあんなに笑ったの何年ぶりかしら。
     初めてじゃない?お父さんが死んでから


みんなで「おやすみなさい」と挨拶。

めぐみさん「どうもごちそうさまでした


おばちゃん、さくらに

おばちゃん「あら、なんだあんた達も帰っちゃうの?(ボケ)

さくらクスクス笑いながら

さくら「あたりまえよ(ツッコミ) と笑いながら自転車を押して行く。

ちょっとしたおばちゃんのさくらのギャグでした。



     




寅「
僕もそこまで送っていきましょう。行きます!

と、ルンルン気分で駆けていく。




参考までに、現在の圭子さんめぐみさんの家の写真。
とらや、さくらのアパート、めぐみさんの英語塾、などが
入ったリアル柴又地図を貼りつけておきます。





【高井めぐみさんの英語塾】

葛飾区柴又6丁目34付近



       





      




                                                少し当時の雰囲気を残している。


      
 






    







          




そんなこんなのある日





上野 不忍池 近く

東叡山寛永寺 辯天堂 天龍橋たもと



曇り空の下、啖呵売をしている寅

易本のバイ


寅「ちょと、ちょっと、そんな離れてないで、そばに来なさいよ。
  大事な話は、ちゃんと自分の耳で聞かなきゃだめ、わかった?
  いいね、ほら、ほら、見てごらん、
  天に軌道のあるごとく、人それぞれに運命というものを持っております


若い女性二人連れ、フフフと笑っている。

寅「お嬢さん、あなたがた、そうやってにやにや笑っているけれど、
  お家に帰ったらとんでもない不幸せが待っているかもしれない。
  そうだよ。一寸先は闇。
  ほら、このお嬢ちゃん、ほら、この眉と眉の間。これを『印堂』と言う。
  ここに陰りがあるということはこれはいけない



二人連れ、ささっとどこかへ立ち去る。


寅「あ、天冲殺だぞ!!おいおい 変なこと言って脅すなよヾ(^^;)

寅「あー、行っちゃうの?

おじいさんだけ残って本をみている。

寅「お父さん、暇か暇かって…、おいおい身も蓋もない…ゞ(^^;)

頷くおじいさん。

寅「ちょっと読んでみて、な



雨がポツポツ降ってきた。



石橋保護のため重量車乗り入れ禁止

(東叡山寛永寺) 辯天堂



寅「なんだよ、降ってきやがった


片付け始める寅。


寅「一寸先は闇だなあ」と仲間につぶやく。


仲間「ほんとだねえ



         




現在の天龍橋たもと↓



         




天冲(中)殺とは占いの『四柱推命』から来ている。

四柱推命(しちゅうすいめい)とは、中国で陰陽五行説を元にして生まれた人の命運を推察する方法。
占い方は、生まれた年、月、日、時、の四つ干支を柱とし、その人の生まれ持った可能性を推し量る。


四柱推命式を読むうえで核となるのが「通変星」「十二運星」。

通変星は比肩(ひけん)劫財(ごうざい)食神(しょくじん)傷官(しょうかん) 偏財(へんざい)
正財(せいざい) 偏官(へんかん) 正官(せいかん)偏印(へんいん)印綬(いんじゅ)に別れる。
十二運星は「長生」「沐浴」「冠帯」「建禄」「帝旺」「衰」「病」「死」「墓」「絶」「胎」「養」の十二種類から成り立っている。

【天中殺】とは、日柱の干支(60種類)から割り出される、12年に1度必ず訪れる不運の2年間で、『空亡』とも呼ばれるもの。
年柱の干支から割り出される空亡も天中殺の一部だが、あくまでも日柱から出した空亡が天中殺のため、
年柱から出したものは補足程度に考えたほうが良いようだ。
この時期は、災いやトラブルに見舞われやすく、結婚や転職、引越しなど何か新しいことを起こすと、良い結果が生まれないとされる。
またこの天中殺の前年に当たる年も、天中殺ほどではないにしろ、同様な意味があると言えるとも。
その時期を避けて行動を起こすことによって、運勢の低下を避けることがでるらしい。
また、その時期の過ごし方によっては、その後の人生に幸運をもたらすことが可能になるとも言われる。
ま、あくまでも生年月日時間を元にした「占い」の世界なので、当たるも当たらないも同じ確率なのは言うまでもない(^^;)



         






とらや 台所   雨


さくら、雨を恨めしそうに見ている。

さくら「
困ったなア…上野に買い物に行こうと思ってたのに


満男がマイケルの黄色いスニーカーを履いて階段から下りてくる。



        




さくら「満男

さくら「また、そんなことして。英語塾に行く時間でしょう

満男「イエス、マザーこの作品の満男は英語づいています(^^;)


スニーカーを片付けるさくら。

おばちゃん「どうしちゃったんだろうね、マイコさん

さくら「ねえ

おいちゃん「もうアメリカに帰っちまったんじゃねえのか

おばちゃん「そんならそれで手紙くらいくれりゃあいいのに。人情てものがないよ

満男の声「いってきまーす

おばちゃん「あ、いっといでー

さくら「満男、傘

と黄色い傘を渡すさくら。


店の前に雨に濡れたマイケルが立っている。



       



さくら驚いて


さくら「あら!マイコさん!



       




マイケルの顔元気なく疲労困憊(TT)


さくら「ねえ!マイコさん帰ってきた!!

と台所へ向かって叫ぶさくら。


おばちゃん「ええ!?

おいちゃん「ええ?


おばちゃん、店に飛び出してくる。

手で泳ぐように走ってくるおばちゃんギャグでした(^^)



       



おばちゃん「まあ!マイコさん!!

マイケル「コンニチハ

さくら「どうしたの?もう

マイケル「ビョウキ…、スーパービョウキ…

さくら「病気!

                  

おばちゃん「まあ、まあ、ずぶぬれで

おいちゃん「おい、上に上がって着替えしてもらえ

さくら「さ、行きましょ



        




満男まだ行かずにマイケルを見ている。

さくら「満男遅れるよ

満男しぶしぶ傘を開いて雨の中歩いていく。

おばちゃん「気をつけて




おばちゃん、階段下で

おばちゃん「まあまあ、可哀想に…こんなに濡れて

マイケル、土産を思い出して

マイケル「Oh!キョウトのヤツボシ」と指を指す。



        



『八つ橋』だろな、たぶん(^^;)



マイケル「どうぞ

みんなで恐縮。

おいちゃん「ばかだな、こんなに気を遣って…

おばちゃん「あ、タオル持ってきてあげる

さくら「マイコさん、着替して、着替え、わかる?

マイケル「ワカリマス

マイケルほっとした表情で

マイケル「自分の家に戻ったみたいだ」と微笑む。

ちょっとよろけるマイケル。


さくら「あ、危ない

おいちゃん「あ、そうだ。マイコさんに手紙来てたなあ

さくら「あ、そうそう、あ、あの、テレビの上よ

おいちゃんの声「あ、わかった

おばちゃん「さくらちゃん、タオルタオル

タオルと手紙を二階に持っていくさくら。

おばちゃん安心して

おばちゃん「あーよかった無事で



おいちゃんお客さんに

おいちゃん「あ、いらっしゃい

おばちゃん、手を叩いて

おばちゃん「さてと、今夜はステーキでもするかな♪






とらや 二階



二階で休みながらとらやに届いた母親からの封書を読むマイケル。
よく届いたな…。



コートを干したりいろいろ世話を焼いてやるさくら。


さくら「Your Mother ?

マイケル「
ハイ、オカアサンデス

さくら「そう…

さくら、廊下の窓を開ける。

さくら「あらあ、止んだみたいよー



        



とらやの庭先から声が聞こえる。


おいちゃんの声「社長、マイコさん帰ってきたぞ

社長の声「え?それじゃあ今日は歓迎パーティだな

おいちゃんの声「ああ。今夜はステーキだ。

社長の声「それはステーキ」(((((((ーー;)

マイケル「
う〜ん、ステーキデス」と言ったマイケルと
まったく同じ
瞬間冷凍ギャグ
山田さん、1作品2回全く同じオヤジギャグはきついです(TT)


おいちゃんの声「ばっか…フフフ

社長の声「ハハハ



マイケル手紙を読み終えて沈んでいる。


マイケル「

さくらマイケルの洗った洗濯物を持ってきて

さくら「はい、これ

マイケル「アリガトウ

さくら「フフ」と首を横に振る。

さくら「なんて書いてあった?」と、手紙を指さす

マイケル「サクラサン…

さくら「はい

マイケル「I‘m going home to America



           




マイケルのテーマが流れる。


さくら「going home…




         



マイケル「はい、そう…

さくら「そう…。関西に行ってもビタミン剤売れなかったのね


外国人がたった一人で、日本語もできずに、飛びこみで薬局に入って、
人の口に入れるビタミン剤が売れるわけが無いし、リアルに考えると売ろうとするわけも無い。
常識的にはもう少し大規模な、計画的、組織的な作戦や根回しが必要。
体に入れる食品や医薬品の輸入はみんな警戒するからね。設定自体に無理がある。



で、今更ながら、
マイケルは「日本ではがんばったけどimpossibleだった」と嘆くのだった。



さくら「impossible…


マイケル「ハイ


さくら「そう…ダメだったのね



         




マイケル小さく頷く。

さくら、どう慰めたらいいかわからなくて、

さくら「…あ、…温かいコーヒー入れてくるわ。
   ホットコーヒー


さくら優しいね(TT)




         



マイケルのかばんを部屋の隅に置くさくら。

さくら「ん、重いわね


下に行こうとする。






マイケル「サクラサンと正座をする。




         




さくら「はい、…なに?


さくら、近づいて耳を傾ける


マイケルの緊張したオーラに

さくら「え?



マイケル「ァ…



マイケル「 I love you 


               


          





さくら「…!!


             


          



マイケル「



         




さくら「im…possible 


      


 This is impossible




         




マイケル「Do you love Hiroshi?



         




さくら「Yes



       




マイケル「



       




さくら「I love him.  Yes! 



          

  


急いで廊下に出て行くさくら。

マイケルさくらの背中に向かって




マイケル「
I mean…



          




奈落のそこに突き落とされるマイケル。


急いで下りていくさくら。


        




動揺しながら走って階段を下りていくさくら。


自分の軽率さと深い悲しみを押さえきれなくて、
洗濯してくれた服を叩きつける。

マイケル悲しみと後悔で全身が震え




       



マイケル「Goddam!!(ガッ!テム!!)ハ!!

思いっきり畳を叩いて嘆くマイケル。




        



ドン!!


振動で浮き上がる帽子↓



         



テグス(釣り糸)で釣られた帽子が振動と一緒に浮いていた((^^;)
もちろん釣り糸バッチリ見えます!




社長の声「揺れたぞ?地震か?うまい演出(^^;)



           


        
       





圭子さんの家




増築した教室で英語を教えているめぐみさん。

めぐみさん「Pig  Pig

子どもたち「Pig PIg  Cat Cat


満男授業中にちょっと遊んでいて
めぐみさんに見つかってしまう((^^;)



          



母屋の方に電話がかかってくる。


リーン リーン


なんと寅がまたもや来ている。

電話に出る寅(^^;)

寅「はい、こちら柴又英会話教室です

こういう応対は実に器用にこなすんだよな寅って(^^)


どうやらおばちゃんかららしい。


寅「おう、おばちゃん、おばちゃん、オレだよオレ。
  えー?いいじゃないの、うん、雨が降ってたからね、
  商売の帰りにちょっと雨宿りに寄ったんだよ、うん。
  なんでここへ電話してきたんだ?

  え?マイコ帰ってきた。ほんとに?
  じゃ、ちょっと出してくれ、オレ話するから。
  …あああ、ダメだダメだ。あいつ英語っきゃしゃべれねえからね。
  うん、よし、じゃ、まあそう言っといてくれや。
  うん、ん?すぐ帰るよ。うんちゃんと伝えとくよ。
  え、うるさいねー、ちゃんと伝えとくよ。
  いちいち、わかってんだい、




         



今度はめぐみさんが「 I can play tenis.」と言って教えている。

繰り返す子どもたち。


英文いきなり難しくなったぞ(^^;)



そこへな、なんと、
博の一番上の「
」お兄さんが入ってくる。




なぜ!!?

ここへ博のお兄さんが!?


寅、ニコッと笑って


寅「こんちは

博のお兄さん「あ…は


寅は葬式の時に会っているはず…。
憶えてないのかな??



        


と、戸惑いながら

博のお兄さん「こんにちは」と挨拶。

寅「この家来たの?

博のお兄さん「え、ええ


寅、ピンと来て

寅「セールスマンだ

お兄さん「あ?

寅「言わなくたってわかってんだ。
  面が日に焼けてるもの


博のお兄さん「フフ…


寅「何扱ってるんだ?

博のお兄さん「は?

寅、彼の大きなカバン指差して

寅「これ、フフ

博のお兄さん「は…


そこへ圭子さんが出てきて

圭子さん「あらあ!

博のお兄さん「や、しばらく

圭子さん「どうしたの?まだ二、三日あとじゃ

博のお兄さん「予定より船が早く着いたんですよ、フフ

博のお兄さん、船乗りだったっけ?? ( ̄。 ̄;)?

圭子さん「あそう、フフフ



       



圭子さん、寅に彼を紹介する。


圭子さん「あ、こちら柳田さんと言って、昔からの知り合いです。
    お船の船長さんなんですよ




       



え?『諏訪さん』じゃなくて柳田さん…。
博のお兄さんと思ったら、別人なのか???


山田監督、役者さんの使い回し好きだね(^^;)
そういえば第32作「口笛を吹く」で登場した博の信子姉さんも
第47作「拝啓〜」で菜穂ちゃんのお母さんとして登場した。





ここから↓は「博のお兄さん」あらため「柳田さん」


柳田「はじめまして、柳田です」と、寅にお辞儀。

寅「あ、どうも…車です」とお辞儀。


寅が自分の姓だけを名乗ったのはとても珍しい。
普通は姓名を全部名乗るか、下の名前だけを名乗るか
どちらかなんだけれども。
ちょっと、緊張している感じ。



圭子さん「ご近所の方でね、とってもお世話になってるの

柳田「ああ

圭子さん「さあ、どうぞ

と腰掛けるように勧める。

圭子さん「あ、いけない、私ヤカンかけたままだったわ、フフ


柳田さん、お土産を渡そうとするが、圭子さんは気づかない。


疲れた様子で腰掛ける柳田さん。


めぐみさん、教室での授業が小さく聞こえてくる。

めぐみさんの声「ちょっと長いけどお家に帰ってたらね、いっぱい書いて覚えて下さい。
         単語はね、一日一個ずつ覚えていけばいいからね。
         はいそれではね、今度これまでにやったことの復習テストするからね


みんな,「さようなら」と、言いながら帰っていく。


寅、ニコニコ笑って

          


寅「船長さんですか?


柳田「はい


寅「大変だなあ…。じゃあ、
 サンマとかイカを大きな網で
 ワーってこうしゃくってる…



柳田「いやいや、そういうんじゃ…

寅「あ、もっとでっかいマグロ

柳田「いやあ…マグロじゃないんです

寅「くじら?
 くじらみたいなでっかい奴は
 餌は何食ってるんだろうね
オキアミ、カイアシなどの(動物プランクトン)

柳さん、ちょっと苦笑している。

寅「まさか、ミミズっていうわけにもいかないだろうし

柳田「いや、僕の船は石油を運んでいるんです



             



寅「石油…

柳田「はい


庭の向こうで、子供たちが帰っていく。



生徒「先生、雨上がったよ

めぐみさん庭に出てきて

めぐみさん「ほんと

みんな「さよなら」

めぐみさん「気をつけて帰ってね



めぐみさん、柳田さんを見つけて

めぐみさん「あらー!、いらっしてたのおじさま

柳田さん「立派になったねー、教室が

めぐみさん「うーん、まあ。フフ、こちらのおかげなのと、寅を紹介。

生徒たちとさよならの挨拶。



圭子さん台所から顔を出して


圭子さん「健作さん」柳田健作さん。

振り向く柳田。

圭子さん「港からまっすぐここに?

柳田「そうですよ

圭子さん「だったら、お茶の前にシャワーでも浴びたら?



           



柳田「じゃあ、そーさせていただきます

と、ここぞとばかりに甘える柳田さん。
どうもこの家に慣れている様子。


柳田さん、寅にお辞儀をして


柳田「じゃあ、ちょっと失礼

と、目の前にあった『寅のお土産の植木鉢(福寿草)』を横によける。

寅、ちょっと気にする。


柳田さん、めぐみさんにお土産を渡す。

柳田「めぐみちゃん、これ

めぐみさん「あ、どうもありがとう


圭子さんの声「今、タオル出しますね


めぐみさん、ちょっと複雑そう…。



寅、急に不安になって

寅「親戚の人?



         

めぐみさん、ちょっと複雑な表情で


めぐみさん「うーん…、…そのうち親戚になるのかな…。

     それより、…お父さんになるのかな…




         


これは、第1作の、御前様の発言のアレンジ版


寅「



         




圭子のテーマが静かに流れる




めぐみさん「お母さんはね、まだ決心がつかないらしいけど、
    私はそうなればいいなって思ってるの。
    だって、お母さんまだ若いんだし…
    魅力あるんですものね。フフ…



と、自分に言い聞かせるように話すめぐみさん。
でも少し淋しそう。


柳田さん、プロポーズしたんだね。



         




寅「



         




めぐみさん「そう思わない?寅さん




寅「え…ん、そう思うよ



         



寅「娘のあんたからも
 そう言って勧めてやったほうがいいよ


めぐみさん「‥うん

寅「それじゃ、オレ、これで



          



めぐみさん「お母さーん」と圭子さんを呼ぶ。


圭子さんやって来て、

圭子さん「あら、寅さん、もうお帰り?


寅「ええ、雨も上がりましたし、…、
 あ、マイコが帰って来ましたよ


めぐみさん「ええ…!

圭子さん「まあ、よかったわねえ、皆さん心配してらっしたから」と驚く。



         



めぐみさん「私、晩にでも顔出します

寅「ええ



圭子さん「そうそう、お花をありがとうございました

と、花を持ち上げる。

寅「いいえ、つまんない花ですよ」 

これは第8作のりんどうの花を貴子さんに持っていったネタのアレンジ。




めぐみさん「なんて言う花?



圭子「福寿草よ、フフ



         



めぐみさん「あ、これが、かわいい花ね

圭子さん「

寅「英語ではなんて言うんですか



         



圭子さん「アドニス。
   ギリシャ神話に出てくる
二枚目のこと。フフ



         





寅「二枚目、これが…、
 

   



寅「今度は三枚目の花買ってこよ



悲しいけど名人芸。座布団3枚(TT)



ふたりとも「フフフ」と大笑い。



寅「フフ、可笑しいですか



           



めぐみさん「面白いわね、フフフ

寅「じゃ、また

圭子さん「またどうぞ

めぐみさん「さよなら



ふと寂しい陰が寅の顔をよぎる。



           



圭子さんのテーマが流れ続けている。



キンポウゲ科の多年草。(元日草)(朔日草)
学名:アドニス ラモサ(アドニス アムルニス)

Adonis(アドニス)は、
ギリシャ神話に登場する、イノシシの牙に 突かれて死んだ二枚目の青年の名前に由来。
傷から出た血のように赤い花にたとえた。 (欧州産の本属のものは黄色ではなく 赤い花だそうだ)

「日のあたる 窓の硝子や 福寿草」 永井荷風






とらや  店



おいちゃんが接客をしている。


寅が帰って来て、店に入って来る。



おいちゃん「おい寅

お客さんに

おいちゃん「あ、お待たせしました

おいちゃん「マイコさん、アメリカ帰るんだってさ

寅ゆっくり茶の間へ

寅「へえー…、いつ?

おいちゃん「詳しいことはわからねえけど、さくらにそう言ってたってよ


おばちゃん、寅に気づく。



         



おばちゃん、皿を洗っているさくらに

おばちゃん「さくらちゃん、寅ちゃん帰って来たよ


さくら「ふーん」と言いつつ店の方を見るさくら。



          



さくら、マイケルの部屋の方をちらっと見て
荷物部屋の方へ上がっていく。


おばちゃん「?」





とらや 荷物部屋


とらやに帰ってきて二階で旅支度をしている寅。


豆腐屋のラッパ。

パープー


さくら、二階にやって来て
悩みながら寅にマイケルのことを言いたそう…。




          



さくら「お兄ちゃん…


寅「マイコ、帰るのかアメリカへ…

さくら「……

寅「どうした?



          




さくら「あのねえ、酷いのよ、マイコさんって…、

  私に………

  
 I loe you って そう言ったの




          




険しい顔になる寅。



          




寅、さくらのそばに寄って、厳しい顔で


寅「それで、おまえどうしたんだ?



さくら「…いつかの晩、めぐみさんが言ってたように…

   『impossible』って、言ったんだけどね…




           





寅「そうか、それでいいじゃねえか



           



寅、またかばんに戻って
しゃがんでかばんに荷物を詰め込みながら




寅「こないだ圭子さんが言ってたろ、
 アメリカ人 はよ、
 お互いの気持ちを察し合うことなんてな苦手なんだって、
 はっきり口に出して言わなきゃ納得しねえんだって…。


メインテーマが流れる。



        




 
オレ達みてえに想いを胸に秘めてスッと立ち去る。
 そんな芸当はとてもできやしねえんだ…。

 だから勘弁してやれよ、な




         




涙を溜めながら頷くさくら。



寅立ち上がって


寅「あーあ…、…

バカだなあいつも…
と自嘲気味に小さく呟く。



              
         



寅はマイケルの気持ちが痛いほど分かるのだ。
この「バカだなあいつも…
」という言葉に託された
マイケルへの共感の想いに私は胸を打たれた。

マイケルは寅であり、寅はマイケルなのだ。
この「バカだなあいつも…」はこのシリーズを象徴する言葉であり、
この作品のクライマックスの言葉だった。


さくら、かばんを持った寅の旅支度を見て


さくら「…!どこ行くの?


寅「
ん…、旅よ


さくら「え!?



寅「もうすぐ正月だい。オレたちの稼ぎ時だ



        



さくらは圭子さんのことが何か影響していることを
今までの経験とカンによって気づいたかもしれない。





とらや 店



店ではおばちゃんが必死でマイケルを止めている。


おばちゃん「さよならはノーよ、ノー。ねえ、
    もうゆっくり家でしてってちょうだい。ねえ




寅が下りてくる。


おいちゃん「あ、寅、マイコさんもうさよならだってよ

おばちゃん「いいじゃないねー、二,三日ゆっくりしてったってさ



マイケルを気に入っていたおばちゃん、
別れが人一倍辛そう(^^;)




マイケル「へイ、トラサン」と手を上げる。

寅「そうか、帰るかアメリカへ、マイコも…

頷くマイケル。


マイケル、さっき「スパー病気」じゃなかったのかい?
結構体動けるんだね。




        



マイケル「


寅「よし、オレも一緒に送ってくよ

マイケル「ドウモ。 ミナサンサヨナラアリガトウゴザイマシタ

おばちゃん「そんなこと…

寅「おいちゃん、おばちゃん、
  オレも今回は長逗留した。ま、このへんでな…



おいちゃん「なんだ、おまえも行っちゃうのか?

                  
おばちゃん「そんなバカな、なにも急に二人で出ていくことないじゃないか。
      行っちゃいけないよ



おいちゃん「冗談じゃないぞおまえ〜、どっかに通訳いねええかなあ

おばちゃん「おやめよ、ね



さくら、下りてくる。



         

         



マイケルさくらに気づいて下を向く。

さくらもマイケルに気づきちょっと怯える。




         



おいちゃん「あ、さくら、何とかしろよ、
     二人とも出て行っちゃうって言うんだよ




さくら「ねえ、お兄ちゃん、何かあったの、急に出ていくなんて




寅、下を向いているマイケルを見て、

寅「マイコよ、さくらに何か言ってやんな、ん


と、マイケルの背中を叩く寅


マイケル、さくらを見て

マイケル「サクラサン…


さくら「はい…


マイケル「ホントウニゴメンナサイと深くお辞儀。



         



さくら「…いいえ

おいちゃんたち「???


マイケル「サヨナラと手を差し出す。


さくら、マイケルの手に応え、握手をする。



         




さくら「…さよなら



         



万感の想いを込めてさくらの手をヒシッっと握るマイケル。
この作品のまぎれもないクライマックスだった。
マイケルの純情が痛々しいほど感じて取れる
悲しく切ないシーンだ。




         

                  


おいちゃんとおばちゃん、
二人の緊張の中の別れを理解出来ないでいる。





メインテーマが流れる


寅「よし!、それでよし、さ、行こう



          



マイケルは、僅かに微笑みながら寅と去っていく。


寅歩きながらさくらたちに


寅「じゃ、あばよ


寅「一杯飲もう、な



          




マイケル「お金持ってるのかい?」ってな英語。



複雑な表情で二人を見送るさくら。


おばちゃん「さくらちゃん、なんかあったのかい?



おいちゃん「さくら…



          



おばちゃん「どうしたんだろ…

おいちゃん「ん…


心配そうにさくらの背中を見ているおいちゃんおばちゃん。


さくら、悲しみと戸惑いの表情で
ずっと二人を見送っている。




                  




最後は下を向いてしまう。



          



おいちゃんもおばちゃんも
マイケルがさくらに何か言ったのだということは
なんとなく分かっているのだが、
まさか愛の告白をしたとは夢にも思わなかっただろう。








夜 上野駅線路沿いの飲み屋



          



ギター流しのお兄さんがリクエストにこたえて、
例の南北戦争『リパブリック賛歌』を歌い、

日本の客は同じメロディである『ごんべさんの赤ちゃん』を同時に歌っている。
いつかのとらやの茶の間でのかけあい再現。



♪ごんべさんの赤ちゃんが風邪引いた
ごんべさんの赤ちゃんが風邪引いた
そこーであわててしっぷした



マイケル達が飲んで騒いでる中、
寅がさくらに電話している。



        
        



寅「どうだい、聴こえるだろ、この大騒ぎをよ


さくらが何か言っているようだが聞こえづらそう。


寅「なにしろなりがでけえからさ、
  飲むわ飲むわ、大損害だよこりゃあ



        



マイケルみんなにはやされて歌えと言われ

立ちあがり、「Thank you」とおどけている。

『リパブリック賛歌』をあらためて最初から大声で歌う。


マイケルGlory! Glory! Hallelujah !
   Glory! Glory! Hallelujah !
.



        








さくらのアパート


     


さくら「もしもし、お金大丈夫なの?え?

寅の声「大丈夫だよ、なんとかなるよ。
   マイコのことは気にするな。
   オレはちゃんとお守りしてやるから



      


寅の声「それからな、これは肝心なことだけど、
   博には黙ってろよ、な


苦労人だね寅は(TT)


         



さくら「

すぐに返事ができないでいるさくら。


         
        




寅「…な!


さくら「…うん、わかった



         




寅「いいか、切るぞ、いいな。

 仲良くやるんだぞ



                           




静かに涙ぐむさくら。


この短い電話の中にさくらを思いやる寅の気持ちが
一杯詰まっていて見ている私も切なくなってしまった。

寅に言われなければ、さくらはひょっとして
博に打ち明けなければいけないんじゃないかと
悩み続けたことだろう。

寅がその迷いを解放してくれたのだ。
ここが寅という男の素人じゃないところ。
なかなか言えない言葉だ。
人間の深い裏の裏の気持ちまで考えての究極の助言だった。



救急車のサイレン


静かに受話器を置くさくら。


何も知らない博は満男に国語を教えている。

博「さくら、お茶

さくら「はい



博、満男に

博「わかったか?

満男首を横に振る。

博「読んでみなさい


満男「南氷洋に冬が来た。
  だんだん夜が長くなって、
  寒さが厳しくなった



なんだか悲しいねえ…。







上野駅近く 早朝  ガード下



ヨロヨロ歩いているマイケル。

マイケル「♪ゴンベさんの赤ちゃんが風邪引いた〜 
    ♪ゴンベさんの赤ちゃんが風邪引いた〜




        



寅「おい、マイコよ

マイケル「ハイまだ酔っている。

寅「もうここでお別れだ。グッドバイだよ



        



マイケル「Good bye、ドウモアリガトウ

寅「うん、向こうへ行くと京成上野の駅だからな電車に乗って
  飛行場行けや


寅「あばよ!

マイケル「ハイ


京成電鉄上野駅のほうへ歩いていくマイケル。



        




寅「おい!マイコよ」ともう一度歩み寄り、

寅「しょぼたれるなよ、元気出せ元気

マイケル「All right....

寅「そのうちきっといいことあるから、な。あ、そうだ


と、首のお守りをマイケルにかけてやり、

寅「おまえにこれやるよ、お守りだ、な。
 これ持ってるとな、
 そのうちきっといい嫁さんが来るから、
 きっといい嫁さん




        



と、小指を突き出し微笑む寅。

        


マイケルは、『これを持ってるとすばらしい女性と
     巡り逢うことができるっていうんだね、そうだろ


、と寅に英語で言うのだった。




         



寅「ヘヘ、ま、そういうことだい、へへ


マイケル「ドウモ、ドウモアリガトウ



寅「おまえも幸せになれよ、じゃ


とお互い握手。



        



マイケル「You too、

  Good luck




寅「あばよ


線路下 須田町食堂
向こうに聚楽



遠く離れてからマイケルが叫ぶ。

マイケル「ヘイ、トラサーン!

寅「え?

マイケルは、『それじゃなぜ寅さんは結婚できないのか?

と、その矛盾を英語で聞いていた。



寅は言葉が分からなくて

寅「オッケイ オッケイ!!ハハハハハ!



         



マイケル「OK!?ハハと妙に納得して去っていくのだった。





その後…



  

アメリカ行きのJAL 機内




マイケルを乗せたアメリカ行きのJALの機体が江戸川上空を飛んでいく。




機内誌を配っているスチュワーデスさん。



マイケル「あ、ちょっと

スチュワーデス「はい

マイケル「あの下に見える川はなんですか?」英語



        




眼下に川


スチュワーデスさんは『たぶん…江戸川だと思います』と答える。



        



マイケル「エドガワ…、

スチュワーデス「はい

マイケル「
エドガワ…と懐かしそうに窓を眺めている。


        




        



実際の江戸川の俯瞰撮影は小さなセスナ機で行われ、
なかなかスリリングで結構冷や汗ものだったそうだ。

成田からアメリカへゆく場合、
わざわざ江戸川上空を回ってから太平洋へ飛び立つ意味があるだろうか。
いくら飛行機とはいえ、かなりの大回りになる。ま、映画ですから(^^;)





蝶々夫人の「ある晴れた日が静かに流れる。



マイケルの眼下に見えるその江戸川土手には…。

ちょうどその頃さくらが博と満男と一緒にいたのだった。


何も事情を知らないでグローブをはめながら
ゴロゴロ転げまわって土手を遊ぶ博と満男。




        
                  


さくらは、草むらに座り、
遠く飛び去っていく飛行機を眺めながら、
涼やかな表情でマイケルとの思い出を懐かしむのだった。



          



       




第一作以降、さくらを母として、妻としてのみ表現してきた山田監督が
たった一度だけ一人の女性としての目をさくらにさせた美しいシーンだといえる。
そういうこともあって、私は
この第24作のこの江戸川土手に座り、空を見上げているさくらの表情と
窓から江戸川を見て思い出にふけるマイケルの表情が共々大好きなのだ。





         



        





このシーン、マイケルの想いが乗り移ったように
映画では窓から江戸川と柴又付近が映っていた。
普通これはありえない。
それにジェット機にしてはちょっと高度低過ぎ ゞ(^^;)



      





グーグルアースで近寄ってみよう。Aマークが柴又駅

      





Aマークから左が帝釈天参道。そして題経寺。


       




もっと近づいてみよう。参道が見えてくる。
とらや、高木屋、川千家、亀家などの屋根が見える。



       





ちょっと江戸川土手を見てみると、二本の金町給水塔が見える。
とんがり帽子の方でさくらは飛行機を見上げていた。




       



つまりマイケルの窓からの視界に柴又の町だけでなく
なんとさくらまで入っていたのだ!



           マイケルの窓からの視界に土手で座るさくら(↓赤丸)も入っていた

     




よかったねマイケル。

君の視界の中にさくらはいたよ。

そしてさくらも君の飛行機を見ていた。



Good luck Michael. 
            




         











正月 とらや 雪景色




笛太鼓にあわせて獅子舞が店先で舞われている。



         



ご祝儀を獅子の口に噛ませてやるおばちゃん。

おばちゃん「どうもごくろうさまでした




           






とらや 台所

ぐみさんがタコ社長の工場の工員2人と
一緒にスキーに行くのだった。




         



博「朝、6時ごろ着くんだって

めぐみさん「うん、旅館でひと休みして、
    朝ごはん食べたらすぐ滑りだすの


博「へえー・・・

さくら「だめよ、松葉杖ついて帰ってこないでね

めぐみさん「フフフ、大丈夫よ

工員たち「お待ちどうさまー

めぐみさん「じゃ、行きましょうか

工員たち「ええ


2人のうち、どっちが例の近藤くん?? (^^;)


工員たち「おめでとうございます


めぐみさんリュックを重そうに担ぐ。


手伝ってやるさくら。

めぐみさん「あ、ごめんなさい


博「めぐみさん

めぐみ「はい

博「この連中が本気にならないうちに
 impossible
ってはっきり言ってくださいよ



めぐみ「
フフフ



        



工員「なんですか?


大笑のみんな。


博「なんでもないなんでもない、早く行け



        

                  


めぐみさん「じゃ行ってきます

社長「お嬢さんをちゃんとお守りするんだぞ

工員たち「はい



        



元気に出てゆくめぐみさん達。

めぐみさん「あ、そうそう、母が今夜お邪魔してもいいでしょうかって

おばちゃん「ああ、どうぞどうぞ

めぐみさん「じゃあ行ってきます

さくら「はい、気をつけてね

社長「頼むよー

工員たち「はい


おばちゃん見送りながら

おばちゃん「いいねー、若い人達は



博たち、茶の間に戻って

博「社長、いっぱいやりませんか

社長「ありがとう

社長「あー、よく降るねえ


おいちゃんもこたつに入って来て

おいちゃん「社長どうかねー今年は

社長「ダメダメ、インポッシブル

みんな「ハハハ

社長「満男、お年玉だ

と渡す。


満男「どうもありがとうお、今度は英語使わないんだね(^^)

博「すいません

おいちゃん「よかったなー

社長「しかしまあ、今年はまた一段と厳しいぞ

おいちゃん「んなまた、不景気な顔するなよ正月早々



マイケルのテーマが優しく流れる



テーブルに1枚のエアメール。

      
         



遥かアリゾナの田舎からマイケルがさくらに年賀状を送ってきたのだ。


さくらがそれをもう一度読んでいる。


         



マイケルも寅同様、新年のあいさつと昨年の反省をしたためてきたのだった。

マイケルの内容はこうだ。




マイケルの声『 思い起こせば恥ずかしきことの数々、

      今は後悔と反省の日々を送っています…。


      私はアリゾナで相変わらず
      薬売りのセールスマンの日々です。
      もうけはさっぱりです





         






アメリカ アリゾナ州 


田舎町のガソリンスタンド

たった2ドル分のガソリンを入れながら、
なんと、
さくらの写真を眺めているマイケル。


胸には寅がくれた【帝釈天のお守り】が光っている。


       

ガソリンスタンドの青年覗き込んでみている。

マイケルマイケル青年のキャップを財布で叩いて



      
      


おいおいおいおい、いつもらったんだそんな写真↓(^^;)
だいたい季節が違うし、
バックが加工してあるのでスナップじゃないぞそれ。
そのわりにはエプロンしちゃってるし…。


    いつ撮ったのか?、いつもらったのか?

      




マイケル「Hey!



      



青年「あんたのガールフレンドかい?



マイケル「うん、どうだ美しいだろ



      



青年「あんたは幸運な男だミスター



マイケル満足顔。

                  





青年「2ドル

マイケル、2ドルとチップ渡す。



青年「インディアンの娘かい?



       



ガソリンスタンドの名前は『ARROWHEAD』(^^;)



マイケル驚いて


マイケル「なにを言ってる、彼女は日本人だ!



       



しかし青年は日本のことも日本人のことも知らない。

青年「ジャパ…ニー〜〜〜ズ??どこの州だ?それ



マイケル「おまえ日本知らないの?

青年「しらんきっぱり(^^;)


マイケル「カハ!鳥の脳みそだなまったく!

マイケル「学校行ったのか?

青年「そんなとこ行かねえよ

マイケル「おまえはアメリカの恥だ!



        



青年「へえー、へえー、それがどうした貧乏男



マイケル車のエンジンをかけながら日本語で

マイケル「バカヤロ

車のドアがうまく閉まらなくて

苛立つマイケル。






このガソリンスタンドのコントの場面、実はそばで渥美さんもいたのだ。
何カットか渥美さんがらみで撮ったのだが、
のこのシーン↓にも、実は渥美さんはこのように登場するのである↓右端が山田監督。

           




しかし残念ながら、撮影はしたものの、宣伝用に「イメージ」として使われただけ。
寅のアリゾナ編は予告編にも、本編にも採用されなかった。
おそらく、お客さんがその予告編を見ると、
本編でも寅がアリゾナへ行くと勘違いする可能性があるからかもしれない。

背の高いマイケルに合わせて機材の箱に乗っておどける
寅次郎っていうか渥美さん。↓


           





ついでにもうちょっと紹介しよう。
渥美さんがカメラを持ってセットの前で集合写真を撮っている風景↓
これはなかなかレアものだ。


            



ちょっとした物語を感じさせる3人の面白い写真。
これも当時の宣伝用だろう。
渥美さんの表情が完全に例の寅の顔でなんだか妙に面白い。


           


ちなみに予告編の前に出る「特報」では、
寅は圭子さんと江戸川の河川敷で初めて出会うという設定だったらしい。
まあ、本がまだ完成していないので、とりあえず、ということなのだろう。
こういう「とりあえず撮っておきましょう」は本が遅い山田組では日常茶飯事。




話を本編に戻そう。



アリゾナの乾燥地帯を
ボロ車で駆け抜けていくマイケルの車。


マイケルの第2テーマ流れる。



さくらへの手紙の続き


マイケルの声『日本での幸せな思い出は
     いつまでも消えることはありません。
     いつまでも美しく幸せにいてください。


        


      最後に、あなたの素晴らしきお兄さんと
      あなたの愛する博さんによろしくお伝え下さい。

      アリゾナより愛をこめて。

      マイケル.ジョーダン





              








一方、そのころ寅は…



西伊豆 静岡県沼津市西浦足保


第16作「葛飾立志編」のラストと同じ港町


天神社(てんじんじゃ)』の初詣をねらってバイをする寅。



        



            



             




この神社、地図には場所は載っているが名前が載っていない。

いろいろ調べたあげく、現地、西浦の地区センターに
電話でお聞きして「天神社(てんじんじゃ)」だとわかった。




事の仔細は


2010年7月12日寅次郎な日々447
「春の夢」のラスト『天神社』のこと


を御覧ください。



        



        



縁起物のおたふくと鈴のバイをする寅。

寒いので石油缶で火を焚いている。




首からぶらさげていたお守りは
マイケルに上げたのでここではしていない



テキヤ仲間、近所の家にお湯を湯のみに貰っている

テキヤ仲間「おばさん、悪いね、もう一杯ちょうだい」


おばさん「はい」



寅はまた、ここでも初代ポンシュウと一緒にバイ。

寅「よお



        



ポンシュウ「よお、おめでとう

寅「おう


ポンシュウの息子を見て

寅「どうした坊主。おまえ母ちゃんいなくても、
 ずっと元気でやってたか




        



寅、ポンシュウに

寅「大変だな、おまえも


ポンシュウ、ちょっと照れて、苦笑い。


寅「??


向こうから女性の声

女性「なおちゃーん

寅「??」女性の方を見る。

女性「ほら、ほーら、また忘れて


と、忘れ物をポンシュウの息子に渡す女性。


寅、ポンシュウを見て「?」という仕草。


ポンシュウ「あれかい?
    あれはつまりそのー、なんてのかな



息子やって来て


ポンシュウ「こいつのな、新しい母ちゃん



         



女性「あ…、あのうちのが
  いつもお世話なってます
とお辞儀。

会釈する寅。

ポンシュウ照れて

ポンシュウ「行けよ

女性「うん、 よろしくおねがいしまーす

ポンシュウ「ほら、行けって

寅、ちょっと呆れた顔している。



         



ポンシュウ照れまくって

ポンシュウ「ヒヒヒ、まあいいじゃねえかと、

そそくさと隣の露天の準備に。




         



女性の声「とうちゃーんこれいいのー


ポンシュウの声「ああいいんだよー



田中世津子さんと 小島三児さんのコンビは、
第43作「寅次郎の休日
」で復活。


寅は小島三児さんの酒屋さんで酒飲んで煮しめ食べて、
指を5本(500円)出されたので、「安いな」って言って、
なんと50円だけ置いていったことあったなあ…。
あの時寅は「釣りはいらねェ」ってほざいてた(^^;)



        








なんだかちょっとほっともし、
悔しさもある寅だった。




寅「ちきしょう!フフ!正月早々やってられねえや!



      



 えーい、さーもうヤケだ!ねえ!


        


 汚わい屋の火事でやけくそだ。
 焼けのやんぱち日焼けのなすび、
 色が黒くて食いつきたいが
 あたしゃ入れ歯で歯が立たないよときた!


      


 さあどうだい!
 今日は特別大奉仕!ね!
 これもうタダでもってっちゃって、さあ!
 ただで持ってけこの泥棒ヤロウ!さあどうだー!
 

 鶴は千年亀はは万年ってやついでねー!
 あなた百までわしゃ九十九まで、
 ともに白髪の生えるまでときた、ね!
 夫婦二人で…





             





天神社の鳥居が見える。


            




遠く連絡船が見える伊豆の海 
鷲頭山の勇姿を背景に江浦湾が映って…。




          


             





この足保「天神社」は、
あの第16作「葛飾立志篇」でもラストに登場する!!
すごい!!
同じ場所がラストに使われているのだw(゚ー゚;)wワオッ!!


   










最後に初代ポンシュウ家族の幸福を表現するところが山田監督の感覚なんだよな。

この類のハッピーエンドでの代表は第32作「口笛を吹く寅次郎」でのラストだ。
レオナルド熊さんとあき竹城さんのカップルは最強無敵のお似合いだった。

この第24作のラストの展開も結構捨てがい味がある。
ポンシュウの息子が今度は幸せそうでとても心地良い余韻だった。









出演

渥美清     (車寅次郎)
倍賞千恵子  (諏訪さくら)

香川京子    (高井圭子)

林寛子     (高井めぐみ)

ハーブ・エデルマン (マイケル・ジョーダン)
 

下絛正巳   (車竜造)
三崎千恵子 (車つね)
前田吟    (諏訪博)
中村はやと
 (諏訪満男)
太宰久雄   (タコ社長)
佐藤蛾次郎
 (源公)

笠智衆    (御前様)



スタッフ

監督: 山田洋次
製作: 島津清
企画: 高島幸夫 、小林俊一
原作: 山田洋次
脚本: 山田洋次 朝間義隆 栗山富夫 レナード・シュレイダー
撮影: 高羽哲夫
美術: 出川三男
編集: 石井巌
録音 : 中村寛 松本隆司
照明: 青木好文
スクリプター.スチール: 長谷川宗平
音楽: 山本直純
助監督: 五十嵐敬司
製作進行 : 玉生久宗
制作補 : 峰順一


公開日 1979年(昭和54年)12月28日
上映時間 104分
動員数 184万人
配収 11億6000万円




次回は第26作「寅次郎かもめ歌」の本編完全版前編です。
なるべく8月前半にアップしたいと思っています。 
ムリムリ ゞ(^^;)




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