バリ島.吉川孝昭のギャラリー内 


お気楽コラム

寅次郎な日々

バックナンバー


2009年1月〜8月分

ほぼ毎日更新



最新のコラムはこちら



過去のバックナンバー一覧
これ以前、バックナンバー2009年1月分〜2009年11月分はこちら
これ以前、バックナンバー2008年7月分〜2008年12月分はこちら
これ以前、バックナンバー2008年2月分〜2008年6月分はこちら
これ以前、バックナンバー2007年10月分〜2008年1月分はこちら
これ以前、バックナンバー2007年8月分と9月分はこちら
バックナンバー2007年6月後半分と7月分はこちら
バックナンバー2007年5月前半分はこちら
バックナンバー2007年4月後半分はこちら
バックナンバー2007年4月前半分はこちら
バックナンバー2007年3月分はこちら
バックナンバー2007年2月分はこちら
バックナンバー2006年12月分と2007年1月分はこちら
バックナンバー2006年9月と10月と11月分はこちら
バックナンバー2006年7月と8月分はこちら
バックナンバー2006年6月分はこちら
バックナンバー2006年5月分はこちら
バックナンバー2006年4月分はこちら
バックナンバー2006年3月分はこちら
バックナンバー2006年2月分はこちら
バックナンバー2006年1月分はこちら
バックナンバー2005年12月分はこちら
バックナンバー2005年11月分はこちら


ご注意) このサイトの文章には物語のネタバレが含まれます。
まだ作品をご覧になっていない方は作品を見終わってからお読みください。


                 

リリーの住んでいた町 錦糸町駅北口(2010年8月25日)

濱口國雄「便所掃除」松村達雄さんここにあり!(2010年8月20日)

第39作『寅次郎物語』 超簡単 ダイジェスト版(2010年8月10日)

第18作「純情詩集」オープニングの駅舎判明!(2010年7月30日)

マイケルが見下ろす江戸川、そして去りし夢(2010年7月21日)

「春の夢」ラストの天神社のこと(2010年7月11日)

岐阜県瑞浪市を走る黄色いペプシのトラック!(2010年7月1日)

すみれちゃんの高校と満男の高校は違う学校だった!(2010年6月28日)

兄と弟 二十億光年の孤独(2010年6月20日)

さくらとお千代さんが演じる蝶々夫人(2010年6月14日)

寅さん世界の柴又周辺マップ .柴又住民たちの家(2010年6月4日)

ご近所だった!さくらの家と京子さんのアパート(2010年6月2日)

第37作「幸福の青い鳥」 今回はちょっと長めのダイジェスト版(2010年5月27日)

ついに発見!健吾の働く看板屋とらくだ公園(2010年5月22日)

発見!リリーの母親の住む街(2010年5月12日)

山田監督の『ヨーイはい(2010年4月30日)

外国旅行に行った準レギュラー2人 (2010年4月25日

白木蓮と青春の輝き(2010年4月18日)
[
「メロン騒動」と「寅さんの子守唄」 『おとうと』からの副産物(2010年4月8日)

第36作『柴又より愛をこめて』 超簡単 ダイジェスト版(2010年3月31日)

第35作『寅次郎恋愛塾』 超簡単 ダイジェスト版(2010年3月19日)

第34作『寅次郎真実一路』 超簡単 ダイジェスト版(2010 年2月27日))

お兄ちゃんとの再会 長山藍子さん(2010年2月15日)

ついに発見! 神田神保町『大雅堂』(2010年2月5日)

もう一人の『さくら』 長山藍子さんの感覚 前編(2010年2月1日)

なぜか江戸幕末に詳しい寅(2010年1月28日

長旅から帰って来た人には…。(2010年1月21日)

新年のご挨拶  寅次郎と雪のバス停(2010年1月2日)

寅とさくら 兄妹の青春(2009年1228日)

男はつらいよの中の雪景色(2009年12月18日)

義母も使っていた「脳天ファイラー」(2009年12月10日)

新郎の名前を呼び間違えた夏子さん(200912月4日)

『男はつらいよ』と干し柿を作る日々(2009年11月14日)

これ以前


★これ以前、バックナンバー2009年1月分〜2009年11月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2008年2月分〜2008年6月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年10月分〜2008年1月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年8月分と9月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年6月後半分と7月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年5月後半分と6月前半分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年5月前半分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年4月後半分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年4月前半分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年3月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2007年2月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2006年12月分と2007年1月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2006年9月と10月と11月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2006年7月と8月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2006年6月分はこちら

★これ以前、バックナンバー2006年5月分はこちら

これ以前、バックナンバー2006年4月分はこちら

これ以前、バックナンバー2006年3月分はこちら

これ以前、バックナンバー2006年2月分はこちら

これ以前、バックナンバー2006年1月分はこちら

これ以前、バックナンバー2005年12月分はこちら

これ以前バックナンバー2005年11月分はこちら






452

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々   バックナンバー







リリーの住んでいた町 錦糸町駅北口

2010年8月27日 寅次郎な日々 その452

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


私はこのシリーズの全てのマドンナの中でリリーが好きだ。
その一番の理由は寅のことを誰よりも深く強く愛しているからだ。

しかし、リリーの人生は悲しい。
特に第11作「忘れな草」のリリーは可哀想なくらい孤独だった。

それゆえか、彼女は文字通り『忘れな草』。 忘れられない人なのだ。

リリーが素晴らしいのはもう一つ、浅丘ルリ子さんが素晴らしいからだ。


このシリーズにマドンナとして出演した39人の女優さんたち。
みんな山田監督の演出に一生懸命に応え、とても頑張っておられた。

しかし浅丘ルリ子さんだけは違っていた。
彼女は山田監督のイメージと演出を遥かに超えた存在だったのだ。
どの監督よりも繊細緻密な高レベルの山田演出を凌駕した主役マドンナは
後にも先にも浅丘ルリ子さんだけだと思う。

まさに水を得た魚。

リリーは山田監督のイメージと演出をはるかに越えて哀しく光り輝いていた。
だからこそ、山田監督は同一マドンナで4作品も作り上げたのだ。


浅丘ルリ子さんの一生一品。 リリーこと本名『松岡清子』


そんな彼女の孤独が一番深かったシーンは、リリーが深夜に泥酔して寅に絡むシーン。
あの夜、キャバレーで深く傷ついたリリーは、寅に助けを求めるが、寅は常識を持ち出して
結果的にリリーを追い返してしまう。



      



翌日、リリーのアパートを人に聞きながらなんとか訪ねるが…、


ハーモニカによる『リリーのテーマ』が切なく流れる。

薄暗く、狭いリリーのアパートの階段を寅が上がる。
薄暗いアパートの廊下。
ドアをノックする寅。

悲しみのどん底にいた彼女は
自分の小さな住処さえも引き払ってしまっていたのだ。

慌しく引っ越していったのだろう。
アパートには小物が散乱していた。

さらにノックする。
そしてドアを開ける。

紙の表札で『松岡』

慌しく引っ越していったことが小物の散らかりようで分かる。
そして、リリーの分身である残された『もの』たちが哀しげに
部屋に散らばっている。


ドアの横には松岡という名字が書かれた紙

赤い傘
フランス人形
楽譜(スコア)
レオナルド.ダ.ビンチの『モナリザ』のポスター
『旅』の字がついてる壁掛けレター入れ。
赤いポール椅子
電球
スタンドの笠
雑誌

フランス人形は子供心を残しているリリー。
「モナリザ」は『美』を愛するリリーの感性。
「旅」の字がついている壁掛けレター入れは
旅から旅の生活を肯定しているリリーの心。
楽譜は彼女のアイデンティティ。



住人A「何か御用でしょうか?」
寅「ああ、ここの女どこ行ったんだい?」
住人A「さあ?今朝方なんだか急にバタバタ引っ越していきましたけど?」
寅「なんかあったのか?」
住人A「んー、よく知らないんだけど大家さんと喧嘩でもしたんじゃないですか?電気代かなんかのことで」
寅「あんた、この女と親しかったのか?」
住人A「いいえ!」っとさっと消える。
列車が遠くを通っている。
襖にタレントのポスター。

リリーが立ち去った部屋で、ただただ立ち尽くす寅だった。




           



白い紙に書かれた『松岡』という名前

      




私は、そんなリリーが愛しく、今から数年前に、アパートの場所を探したがわからなかった。
ネットや人に尋ねたり、何度も調べたのだがどうもこうも候補地は上がるものの、最後の確証まで行かない。
松竹のスタッフ関係者の方々に聞けばわかるが、それは最後の手段。


そこで数年経った今、仲間内で「忘れな草」でのリリーの話題が出たのをきっかけに
今回もう一度だけ
スクリーンからヒントを探すことにした。



赤い橋
駅の前に置かれたコンテナたち
アサヒのマークのビル
LOTTEと書かれた黒っぽい大きなビル




      



山田監督のことだから、リリーの住む街は絶対に下町。
葛飾区、江東区、墨田区、台東区、江戸川区、足立区、北区、…。

まずは『赤い橋』でしっかり探す。『朝日』のマークでも探す。
この写真のような場所は相変わらず出てこない。何もひっかららない。




今回新たに注目したのは

スクリーン右向こうに
が映るが、駅周辺は貨物コンテナが山のように置かれている。
こういうのは間違いなく私鉄ではなく当時の
国鉄

電車が2度出てくる。

一度目は寅がリリーのアパートの方角を自転車の人に聞いている最初のシーンに
遠く走っている電車。

鉄道ファンならお馴染みの
『113系』だと思われる。

東京近郊の在来線の場合

総武本線、成田、東金、などに使われた。





        





もうひとつはアパートの窓の隙間から見えた時の黄色い電車
これも東京の人はすぐわかる。

青なら京浜東北線。緑なら山の手線。オレンジなら中央線。
そして
黄色なら総武線(一部中央線)だ。


       




ということで総武線の駅がアパートのすぐそばにあることがわかった。


総武本線。支線で東京下町の駅…

浅草橋、両国、錦糸町、亀戸、平井、新小岩、小岩、千葉の市川。かな。。。

市川より東ではない気がするし、都心の東京駅から秋葉原まででもない気がする。

ここからはそれぞれの↑の駅名にキーワードを加えて検索して行く。
画像検索の時は【カラー】と【白黒】両方で行って行く。

現在と昭和48(1973年)では町はかなり変わってしまっているので白黒写真のほうが当時の懐かしいものが
探せる確率が高くなるのである。

キーワードは
【赤い橋】
【コンテナ】
【『LOTTE』という文字のビル】


すぐ出てきた!

【LOTTE ビル 総武線】 で、『
ロッテシティホテル錦糸町』なるのもが見つかった。
位置的にもちょうど駅の東、すぐ近くにあったのだ。


        映画の中のLOTTEのビル↓

     




しかし、出てきたそのビルは似ても似つかぬ真新しいもの…。



       



で、ここは昔なんと呼ばれていたか調べると、これはさすがにすぐわかった。
同じ場所に『
ロッテ会館』と言うレジャービルがあったらしい。

ロッテ会館は1970年6月23日にロッテ直営の
結婚式場及びバッティングセンターやボウリング場・ゲームセンター・ビアガーデンなどを
併設する複合レジャー施設として、国鉄錦糸町駅前にオープン。
もしここだとすると、あの「忘れな草」の時はオープンして3年後だったわけだ。


1982年には運営部門が株式会社ロッテ会館として分社化され、
ビルの名称が『
ロッテプラザ』に改められている。

老朽化に伴う建て替えのため、2007年6月30日に閉館。

ということらしい。



       あとは画像検索でたくさん出てきた。
       これが『
ロッテプラザ』になってからの写真↓

          




    
そしてありました!これが映画公開から6年後の昭和54年、まだ『ロッテ会館』のころの写真↓

        



        



     



映画の中で見えるビルの形デザイン、位置とピタリ一致!



これで、あの駅が『総武本線 錦糸町駅』だと決まった。




そして残る大問題は、あのアパートがこの駅前のどのへんなのかっていうことだが…。

寅から道を聞かれた自転車の人は、まっすぐ
へ伸びる道の方角を指さしていた。

おそらく寅は「錦糸町○丁目ってのはどこらへんかね?」と聞いたんだろう。



      






     







ヒントは映画の中でリリーのアパートの窓から見える道向うの風景にあった。



左↓が全体が映った時に見えた建築中のビルの鉄骨   右がリリーのアパート窓から見た同じ鉄骨。その横に横長の白い建物。

                      



            アパートを前から見たシーン。左側の建物の角がリリーの部屋

     




と、いうことは…映画で赤い橋から東が映る時に、小さく見える向こうの横断歩道のあたりか…。

     

                アパートはこの赤い矢印↓の左あたりかな…、って思っている

         



つまり赤い橋の交差点から東に(向こうに)約150メートル左側。





   国土交通省が作った
昭和54年の航空写真。映画公開から6年後。
   
オレンジ丸が赤い橋赤丸がリリーのアパートと思われる場所。
   斜め向かいに白い建物が横並びに続いているのがわかる。

     







   現在の同じ場所。黄色は赤い橋があった場所。赤丸がリリーのアパートがあったと思われる場所。

     







   こちらは昭和38年の赤い橋(赤色)と、後にリリーのアパートのある場所(水色)。
   なんと南北にも東西にもこのころはまだ川(堀)が流れ、木材が運ばれていたことがわかる↓

   そもそも錦糸町の名前の由来はこの航空写真にも見える北口にあった「錦糸堀」
   から来ており、この堀は両国から東西に続く「南割下水」という掘割の大横川から東側
   の部分であったといい、江戸末期には「小梅代地町、南割下水錦糸堀」と呼ばれていたらしい。


      







そしていよいよ、ストリートビューでそのまま航空写真から真下に(地上に)降りてみたら、リリーのアパート付近に
このような↓古びたアパートのような建物があった。

おそらくリリーが住んでいた頃からすでに存在し、
その後バブルのころも壊されることなく、今もなお生き続けていると思われる。

リリーのアパートと雰囲気は似ているが形がちょっと違う。

しかしリリーが住んでいたアパートはこのあたりだったことは確か。


リリーのアパートは【墨田区錦糸町2丁目5】


    


  





ピンポイントで言うと写真の真ん中に写っているあたり。
↓昭和不動産の細くて白いビルと
その右隣りの
細くて小さなビルあたりかな…

   







    向かって左のアパート角(雨戸が閉じてある)がリリーの部屋。↓あの雨戸の隙間から電車が見えた。

     




          映画公開から6年経った昭和54年8月頃の錦糸町北口↓ 長崎橋付近より撮影されたもの


         

                       

                           

                     1973年(昭和48年)映画での同じ場所の映像

                  

                                
                                


    ちなみにずっとわからなかったあの『赤い橋』は『長崎橋』と言うそうだ。(北中之橋とも言った)
    今でも地元では地名として呼ばれている。


            




           昭和50年前後頃の写真。橋から見える家とビルがぴったり一致。
                                                              
           


橋そのものは元禄10年(1697年)に木造で創架されたらしい。
昭和46年架設のトラス橋が架けられたそうだ。『わすれな草』公開の2年前だ。
これを最後に、大横川親水河川整備の際、役目を終えて撤去された(昭和63年3月)。

橋の名は西側に
本所長崎町があったので、そこから付けられたそうだ。

現在、この橋の脇にある広場では 、ガラス市やフリーマーケットなど各種イベントが開催されている。
 


    長崎橋跡から横を見ると東京スカイツリーが!

             


                   

流れる川は『大横川』。
今はもうかなりの面積が埋め立てられ公園になっている。





映画撮影当時からずっと長崎橋のたもとにあった津軽稲荷神社は今も健在↓




           →   


「本所に過ぎたるもの二つあり、津軽大名、炭や塩原」と言われた弘前藩津軽家の下屋敷の跡。
屋敷内に祀られていた稲荷神社のため、津軽稲荷神社と呼ばれている。現在は地元が受け継ぎ、
町会の守護神となっているらしい。関東大震災や戦災で焼失したらしいが、昭和35年に再建された。
祭神は伏見稲荷神社の分神。






ちなみに今、錦糸町駅の北口の同じ場所はこうなっている。左1979年頃。 右は平成の今。


    





映画のアングルで、現在同じ方角を見てみるとこうなる!(右の写真)↓  あちゃ〜〜〜〜まるで別の国…。↓同じ場所とは誰も信じないだろう。
ちなみにリリーのアパートに続いていくこの通りを『
北斎通り』と言うのだそうだ。



  
      






錦糸町は駅南口は以前から発展していたが、京葉道路が通っていることもあって、
南口が表玄関である状態はあの映画の後も変わらず、北口は昔懐かしい雰囲気の町のままで、
リリーの住んでいたあの下町のゴミゴミ感も残っていた。
そして駅北口地区の超再開発が行われた後、状況は嘘のように変わってしまったのである。


リリーが一人で住んでいたあの下町錦糸町駅北口。
今はもうわずかに津軽稲荷神社などやぽつりぽつりと残っている古いアパートなどに
その名残を残すのみである。


ちなみに続編に当たる第15作「相合い傘」では、寅はこの錦糸町駅の今度は南口映画館街で
帽子の啖呵売をしている。面白いものだ。








「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索

ジの上に戻る
最新のコラムはこちら






451

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー





濱口國雄「便所掃除」 松村達雄さんここにあり


2010年8月20日 寅次郎な日々 その451

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


いよいよ『越中八尾おわら風の盆』の前夜祭が始まった。
数日前からの準備。そして今日も忙しかった。
で、第26作「かもめ歌」の本編完全版がほとんど手付かず…(TT)

なんとか8月中に前篇を更新しようと思っていたのだが案の定全くダメ。。。
ここから9月3日までの『おわら風の盆』期間中は作業はほとんどできないと思う。前編のアップは9月になりそう…。
後編は10月かな…。

実は密かに第41作「心の旅路」のダイジェスト版も進めているが、
こちらの方も8月末にアップできるかどうか微妙。

ということで、今日は、第26作「かもめ歌」の中で私が最も気に入っているシーンのひとつを紹介します。


そえはすみれちゃんと寅とが会話で絡んだシーンではない。
あ、もちろんすみれちゃんの入浴シーンでもない(^^;)


それは、葛飾高校定時制(実際は南葛飾高校)の国語の授業で松村達雄さんが
国鉄職員の濱口國雄さんが作られた「便所掃除」という長い詩を全文朗読する場面だ。

なんとも美しい詩。

そしてこの時の松村さんはまさに当たり役。
松村達雄ここにあり!という感じで光輝いていた。



濱口國雄「便所掃除」。

扉をあけます
頭のしんまでくさくなります
まともに見ることが出来ません
神経までしびれる悲しいよごしかたです
澄んだ夜明けの空気もくさくします
掃除がいっぺんにいやになります

むかつくようなババ糞がかけてあります。
どうして落ち着いてしてくれないのでしょうか
尻の穴でも曲がっているのでしょう
それともよっぽど慌てたのでしょう


唇をかみしめ戸のサンに足をかけます

静かに水を流します
ババ糞におそるおそる箒をあてます
ボトンボトン便坪に落ちます
乾いた糞はなかなか取れません
タワシに砂をつけます
手をつき入れて磨きます
汚水が顔にかかります
唇にもつきます
そんなことにかまっていられません
ゴシゴシ美しくするのが目的です

朝風が壷から顔をなであげます
心も糞に慣れてきます
水を流します
雑巾で拭きます
金隠しのうらまで丁寧に拭きます
もう一度水をかけます
クレゾール液を撒きます
白い乳液から新鮮な一瞬が流れます

便所を美しくする娘は美しい子を産むと言っていた母を思い出します
僕は男です
美しい妻に会えるかもしれません




こんな美しい詩は世界中探したってそうそうはない。


これが、私にとっての第26作のもうひとつのメイン。



     




♪蛍こいこい 八尾の盆に 夜の流しの オワラ 道照らせ





「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索


このページの上に戻る
最新のコラムはこちら






450

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 たぶん…一週間に一度くらいアップかな…






第39作『寅次郎物語』 超簡単 ダイジェスト版


2010年8月10日 寅次郎な日々 その450

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。








第39作「寅次郎物語    超簡単ダイジェスト版

寅次郎の面目躍如  ゴッドファーザー寅のロードムービー 


仏様が寅の姿を借りて子供を助けられた物語    



私がこの物語の中で忘れられないシーンがある。

それはマドンナとの絡みでもなく、秀吉との絡みでもない。
安ホテルのお膳の上で般若の政の位牌に向かってつぶやくあのシーンだ。

女房を殴り、家庭を顧みず破壊的な人生を送った般若の政…。

寅「釈善政か…、フン、何が『善』だい、フフフ…、悪いことばっかりしやがって、
  どーせ今頃は地獄の針の山かなんかでもってケツかなんか刺されて『イテテテテ』
  なんて言ってんだろう。フ…。

  どんな人間でも取り得がある。悲しまれ惜しまれ死ぬんだよ。
  おまえが死んだって、悲しんだのはおめえ...サラ金の取立て人だけだったっていうじゃねえか、
  ったくもう…情けねえな…。
  たった一度の人生を、どうしてそう粗末にしちまうんだ。え?
  おまえは何のために生きてきたんだ?

  なに?てめえのこと棚にあげてる?? あたりめえじゃないか、そうしなきゃ、こんなこと言えるかい」
  

         


般若の政の人生は、そっくりそのまま実は寅の人生でもあるのだ。寅は自分に向かってしゃべっている。
そして今これを書いている私自身も寅の言葉を借りて辺境の地に棲む自分のどうしょうもない無為な人生を
吐露しているのかもしれない。

それにしても寅は優しい。秀吉を連れて母親を探す長い旅にでてやるなんて、さくらもおばちゃんもしない。
確かに児童相談所の人がさくらに言っていたように秀吉を行政に任せることは正論だが、
人が人に連れ添ってあげる人の世の情けは何にもまして大切だ。

寅のやったことは間違ってはいない。危なっかしいが、あれで正解だと思う。


        




この子の命が助かるのなら女断ちます。


これは、秀吉の回復を祈って隆子さんが立てた神様仏様への誓い。

寅の願いと隆子さんお願掛け、そして松村おいちゃん医者(耳鼻科(^^;))
の奮闘もあって秀吉の高熱は下がる。
そのことをきっかけに隆子さんは心に泉が湧き、蘇生していく。
隆子さん自分の人生を見つめなおし始める。

隆子「あーよかった、助かった…。そう思った時に、あの子の命だけじゃのうて、自分の命まで
   取り返したような…。胸の奥から冷たくて、きれえな水が、音をたてて溢れてくるような…、
   そんな幸せな気持ちがしてね…、フフ…」


淡路島で生まれ、各地を転々とセールスをして生きてきた隆子さん。
小さな車に乗って八木、五条、橋本…そんな旅がずっと続く…。
今までの旅から旅の孤独な人生を嘆き悲しむ。

「私粗末にしてしまったのね、大事な人生なのに…」
と泣きくずれる隆子さん。

寅は「大丈夫だよ、まだ若いんだし、な、これからいいこといっぱい待ってるよ、な…」

「そうね、…生きててよかった…。そう思えるようなことがね」
と泣き続ける隆子さん。

ほんとうは、秀吉くらいの子供がいたはずなのに…、
独りで子供を産むことを覚悟できなかった隆子さんの深い悲しみは寅に理解できたのだろうか…。


        


このように、彼女にはこのシリーズのどのマドンナにもない、取り返しのつかない
悲しい過去があるのだ。そして、それを聞く寅にも、そして秀吉の父親般若の政にも
同じように取り返しのつかない過去と人生がある。
そしてこれを書いている私の無為な絵描き人生にも…。

ともあれ、あの徹夜の看病の翌朝、隆子さんは人生の中で秀吉と共にもう一度蘇生したのは間違いない。




人間は何のために生きるのか


隆子さんの言葉

…生きててよかった…。』

は、ラストでもう一度満男に対する寅の言葉として出てくる。
隆子さんから寅へ、そして寅から満男へ、最後は私たちへと言葉は受け継がれていく。


ちなみに寅は、伊勢二見ヶ浦でお気楽ポンシュウに同じ質問をしてみる。
ポンシュウ「なんのためかなあ???」
寅「ダメだダメだダメだ。いいいい、おまえの頭だから考えなくていい」…だね(^^;)


しかし、それもつかの間、やはり別れの日は来る。

寅や秀吉と別れたあとの大和上市駅ホームに残る隆子さんの表情には孤独の陰が色濃く宿っていた。
あの顔は寅がマドンナとホームで別れた直後に見せる正にあの孤独だ。これはほんとうに辛いものだ。

旅人の辛さは独りでいる時の孤独にあるのではない。そんなものは慣れる。やはり人との別れの直後の
辛さこそが耐え難い試練なのだ。私も旅人の端くれ、この辛さがただものでないことは熟知している。
しかし、この耐え難い辛い別れだけが旅を奥深くし、人間を鍛え、焼きを入れることも自明である。
そして旅人は次の新たな出会いに向かってまた歩み始めるしかない。



この「寅次郎物語」は、御前様がいみじくもおっしゃったように
仏様が寅の姿を借りて淋しい秀吉を助けられた物語である。

御前様は、こうも言う。

「仏様は愚者を愛しておられます。もしかしたら、私のような中途半端な
坊主よりも寅の方をお好きじゃないかと、そう思うことがありますよ、さくらさん」

ひたすら愛を与えることだけを生きがいとして、愚かだが無欲に生涯を貫いていく
孤独な寅の真骨頂がこの言葉に集約されていた。
さすが御前様は人間を見ている。

その言葉ををさくらから聞いた寅は
「冗談じゃねえや、仏に好かれたっていい迷惑だい」

いいねえ〜、寅って。ポーンと弾けてるんだよな。
これだからこの映画は止められないんだ。


ちなみに御前様は源ちゃんのことを『あれは愚者以前です、困ったァ〜』っとギャグで嘆いていたが、
しかしそうは言っても御前様は源ちゃんこそ仏様にとても愛されている人間だと見ぬいてもいるのである。








それでは第39作「寅次郎物語」ダイジェスト版をどうぞ。


       




まずは夢から。

寅の少年期の柴又。雪の夜

寅のナレーション

寅の声「
さくら、どういうもんかなあ…、近頃オレは子供のころの夢を見るんだ。
     それも決まって、あのさむーい雪の夜のことさ…。


おそらく昭和30年くらいの柴又かな。。。

とらやの横の立花屋さんの看板が見える。
     

       


なんとこの夢には一度も動画で出演したことがないさくらのお母さん、
つまり寅の育ての母親が登場する。

寅の中学生の頃、雪の夜、
万引きか何かで父親に殴られているのを母親が身を呈して
止めているのである。


       


寅のナレーション

寅「
オレを育ててくれた優しいおふくろが必死に叫ぶ。
  『寅次郎謝んな、おまえが悪いんだよ』



最初は障子の影が映っているだけなんだが、
その後、少年寅次郎が表で木に縛られているのを
見かねて母親が助けようと障子を開ける、
その一瞬、彼女の顔が見える。



       


私は前々から、このさくらの母親こそが
寅の人格形成に大きく影響したと思っているので
動画で見れたのはなんだかちょっと嬉しかった。


             




父親との関係が最悪になり、
寅は家を出ていくことを決意。



寅のナレーション「
考えてみりゃ、あれが最初の家出さ



雪が積もった江戸川土手 早朝


無声映画風に スクリーン上にセリフが出る。

セーラー服を来た幼いさくらが泣いて追いかけてくる。


      


さくらの字幕「
お兄ちゃーん
さくらの字幕「
お兄ちゃん、行っちゃいや


      


寅の字幕「
さくら泣くんじゃねえ


      


寅の字幕「
お兄ちゃんは今にきっと偉い人間になって帰ってくるからな

と、江戸川土手を去っていく寅。



寅のナレーション

寅「
情けねえ話しよ。考えてみりゃ、今でもあの時と同じようなことをやってるんだ

さくらの声「
お兄ちゃーん!!


        


幼少期の寅や家族たちを映像で
垣間見ることができる数少ない貴重なシーン。





ここから現実↓


場面変わって田舎の小さな駅の待合室で寝ている寅。



茨城県 常総市 中妻駅

茨城県常総市中妻町にある関東鉄道常総線の駅




        


小さな女の子の声(声は幼少期のさくらのまま)

女の子「
お兄ちゃーん!!お兄ちゃーん!!お母ちゃんが呼んでるよー!!


        


これは、第18作「純情詩集」のオープニングと同じパターン。

伸びをして女の子の頭をなぜる寅。

電車が入ってくる。



        





タイトル  イン


はつらいよ 寅次郎物語


        



関東鉄道常総線に乗り、水海道駅で下車して
板橋のお不動さんまでゆっくり歩いている寅。


        


途中小貝川を渡っていく。


        


ポンシュウたちの車に拾われて板橋不動尊へ。


        




清安山願成寺不動院

大同三年(八〇八)に弘法大師空海が開山


           


いやあこのお寺の本堂、楼門、三重塔は関東でも随一。
一日も早く国の重要文化財の引認定をうけるべきもの。



そんな立派な不動尊の縁日の日


寅たちはバイもそこそこに楼門の横で酒盛り((^^;)

この一連のシーン、お寺の立派さとテキヤたちのイキイキした姿が印象的で
いつまでも印象に残ったものだ。

          



「山田洋次」のクレジットは三重塔をバックに!


        





ここから東京葛飾です(^^)


葛飾区 東京都立 葛飾高校 校庭


満男の通う「葛飾高校」が映る。

しかし、実は「葛飾高校」というのは現在葛飾区にない。
満男の高校のロケは
葛飾区亀有にある「葛飾野高校」だった。

このロケ地探しは

すみれちゃんの高校と満男の高校は違う学校だった!
2010年6月28日 寅次郎な日々 その445


に詳しく書いてある。


そして第26作のすみれちゃんが通う「葛飾高校」もロケ地は定時制を持つ
「南葛飾高校(なんかつ)」だったのだ。(これは寅友の寅福さんが発見された)




第39作では正門を出た後、
さくらは満男と別れてお花茶屋駅から京成電鉄に乗り柴又へ帰ったのだろう。


どうやら三者面談で満男が大学を行かないかもしれないと先生に告げたのだ。
さくらびっくりで、悩んでしまう。

さくら「
どうして黙ってんのよこんな大事なこと。母さん恥ずかしかったわ先生の前で

満男「



       


おまけに満男はさくらと一緒に帰ることを嫌がるお年頃(^^;)
さくら寂しそうに一人で京成線で帰っていく。


       





とらや 店


あけみが手伝ってくれている。
今回も結構あけみが出てくる。


       


さくらが満男のことでぼやくと、おばちゃんは優しい満男を
そんな受験戦争に巻き込むなんて酷いことしなくていいって適当なことを言い出す。


      




柴又駅前

一方あとから柴又に戻ってきた満男は
大洋ホエールズ』のキャップを被った少年と知り合う。

缶ジュースを開けてやった満男に少年がいきなり

少年「
兄ちゃん、寅さん知ってる?


       


満男飲んでいたジュースをブハッ!!と顔にかけてしまう(((^^;)

満男「
びっくりした〜〜〜!!

満男「
寅さんて車寅次郎か?


少年は昔「佐藤政吉」あてに寅から来た年賀ハガキを見せる。

満男「
あー!このキタネエ字!」すぐわかる(^^;)


       


〒963-01 福島県郡山市安積町午庭(本当は牛庭)


とらや 店

満男と一緒にとらやに来た少年はさくらの質問に

お母さんはいない。

お父さんは死んだと言うのだった。



      



死んだお父さんが亡くなる前に「オレが死んだら寅さんのところへ行け」
と常々言っていたらしい。

あけみ、ハガキを見ながら

あけみ「
君、佐藤君って言うの?

頷く少年。

あけみ「
佐藤なんっていうの?


      


少年「
ひでよし

あけみ「
え、どんな字書くの?

少年「
豊臣秀吉の秀吉

あけみ、ついつい吹いてしまう。

あけみ「
すっごい名前!フフ」タブーをはねのけて付けたんだね。


      


秀吉は疲れているらしいのでみんなで居間の方へ案内する。


満男、あけみに

満男「
あんな時笑うもんじゃないよ

あけみ「
わかってるわよ、なに偉そうな口聞いて


      


家に帰ろうとする満男を源ちゃんたちのグループが呼び止め、
裏ビデオを観ようと誘う。

満男は自分の人生&進路で頭がいっぱいなのか無視して歩いていく。
自我の目覚めの時期だからねえ

源ちゃん「
満男、…なんやあいつすかしやがって
出川さん「
まだ早いって…ハハハ」。

みんな「ハハハ」


       


秋深き西日が背中に当たって孤独な満男だった。

源ちゃんグループの一人
「抱かれたくない男N0・1」の出川哲朗さんもこのあたりの作品では
チョイ役で連続出演。


出川哲朗さんは、第37作、38作、第39作、第40作、第41作と5作品連続出演。

またこのころ「キネマの天地」にもチョイ役で出演。

露出が最も高かったのはこの第39作で秀吉の出発のシーン。
かなり長い間出ていた。
全ての作品で鉢巻しているから分かりやすい。
当時はまだよろっと痩せていた。





とらや 茶の間

夕飯のハンバーグを食べている秀吉。


     


タコ社長やって来て秀吉に興味津々。

さくらのミニギャグ

さくら、タコの煮物秀吉に持ってきて

さくら「タコ食べる?嫌い?ちょうどタコ社長が横に映っている。


     


大筋を掴みみんなに分かりやすく伝える博。

つまり、母親は逃げてしまって、父子家庭だったが、その父親も病気で
死んでしまった。死ぬ前にオレが死んだら寅さんを頼れ、と言い残していた。
博の推測では郡山の施設に入っていて黙って東京に来てしまったのではないか。


おばちゃんは自分の考えをおそるおそるさくらに言う

おばちゃん「さくらちゃん、今まで黙ってたんだけど、
     
とっても気になることがあるんだよ

さくら「
なに?

おばちゃん「あの子…ほんとうは…寅ちゃんの息子じゃないかしら…」  願望願望ゞ(^^;)


     


みんな拍子抜けて「ハハハ」

おいちゃん「そんな甲斐性があるか、あの男にそのとおり(^^)

これは、同じくおいちゃんが第29作「あじさいの恋」でも言っていた(^^;)

ちなみに、おばちゃんの『寅の子供願望』は
第14作「子守唄」、第16作「葛飾立志編」でも
ふつふつと湧き出ていた。子どもが欲しいというか孫が欲しいというか、
おばちゃんにはついに子どもが出来なかったからね…。
まあでもおばちゃんに子どもができなかったからこそ
この物語のバランス均衡がとれているんだけどね。



社長「
ありうるよ!そういうことは

みんな「?」

社長「
見てご覧よ、目のあたりとか、顎の張り具合とか

みんな秀吉を見る。

社長「
そうかー!ついにとらやさんにも跡継ぎができたか!よかったじゃないか!なぜそうなる…(^^;)

博「
そんなこと、決まっちゃいませんよ決まってないって言うより間違い ゞ(^^;)

社長「
似てるよ

おいちゃん「
似てりゃ親子か

社長「
そりゃそーだろ

おいちゃん「
じゃあおまえはタコそっくりだから、このタコおまえの倅か??

と、箸で小タコを持ち上げる。

座布団2枚(^^;)



      


で、警察に知らせることはおばちゃんが猛反対したので
警察や児童福祉関係への連絡は数日様子を見ようということに。

秀吉のリュックには父親の位牌が入っていておばちゃんの涙を誘っていた。
位牌を抱いて冥府魔道の旅を続ける秀吉だったのだ。


      


そして秀吉を捨てた母親の写真も2枚持っていて、意外に優しそうな堅気の美人だった。

「う〜ん」とみんな意外な顔で写真を見ていた。
なにやらいろいろ辛い事情がありそうだ・・・


        


さくら「
お兄ちゃん…会ったことあるのかしらこの人に

博「
どうかね…


     





翌朝、


柴又に戻ってきた寅。

江戸川土手



     


さっそく江戸川土手で
備後屋親子に悪態をつく。

寅「なんだい、これ、おまえの子供か?」

備後屋「そうだよ」

寅「わあ!可哀想に…、将来見えたようなもんだ」

怒った備後屋、自転車下りて石を投げつける。

備後屋「チキショウ!くやしかったら作ってみろってんだ!
     コノヤロー!ふられてばかりいやがって!」


     


息子も一緒に石を投げる。



とらや 店

寅 とらやに戻ってきて


秀吉に会うなりあけみの子供と
勘違いしてしまうが…


寅「
あれ?どっかで見た顔だなあ…

秀吉をまじまじ見て

寅「
坊や、家どこだ…?


     


秀吉、あけみに隠れながら

秀吉「
郡山

寅「
秀吉…か、おまえ

頷く秀吉

寅「
そうかあ、やっぱり秀吉かあ

寅「
おじちゃんのこと覚えてるだろう

首を振る秀吉。

とにかくこの秀吉くん、全篇通してほとんどセリフらしいセリフが
ありません(^^;)ゞ


寅「
あ、オヤジもいっしょか

しかしオヤジが死んでしまい、
母親もその前に蒸発してしまったらしいことを知った寅はショックを受けてうなだれてしまう。



とらや 茶の間


寅があとで言うぶんには

父親というのは背中に般若の刺青を入れている男で「
般若の政」と呼ばれてた男だったらしい。
飲む打つ買うの三道楽で、奥さんのおふでさんはずいぶん苦労し、泣かされ続けたらしい。

寅「子どもが生まれたということで、祝いを持って出かけてったんだ。
  極道者が、それでも嬉しそうな顔して、名付け親になってくれって言うんでな、
  よし、ここは一番バーンって張りこんでやれっていうんで、付けた名前が秀吉よ!


あ〜あ、寅が付けた名前だったんだねえ(ーー;)


     


母親は、気立てが良くて、
苦労しているからよく気が付き、涙もろくて、その上色っぽいそうだ(^^;)

酒を飲んだらおふでさんに暴力をふるってたらしい。今で言うDVだ。
そして、寅の予想通り彼女は意を決して出てしまったということになる。

寅は彼女の写真を手で持ちながら

寅「
寝ても覚めても想うのは息子のことばかり、
  おふでさん、すぐ会わしてやるからな。
  しばらくの辛抱だ




蛇の道は蛇。


さっそく小岩のポンシュウのところへ情報収集をしに駆けていく寅だった。

そして夜。

寅はおふでさんんが
和歌山にいることをつきとめる。

その夜は社長と寅と博で焼き鳥屋で酒を呑む。



さくらのアパート

満男は完全に『青年期』特有の自我の芽生えと苦悩が始まっている。
昔から『疾風怒涛の青年期』とはよく言ったものだ。

大学進学に疑問を投げかけて、親とも意見の合わない満男を観て
父親の博はこう言うのだ。↓


      



博「秀吉くんに比べればうちの満男なんか幸せなんだけどなあ…。
  いや…、なにが幸せかそれが問題か…



このシリーズの大きなテーマをポロリと口にした博だった。



      





翌朝  帝釈天参道

翌朝 みんなに見送られて寅と秀吉は母親を探す旅に出かけるのだった。


有)朝日印刷のライトバン 足立45 ち 20−26
トヨタ カローラ ライトバン


今回の朝日印刷は有限会社。
作品によって株式会社になったり有限会社になったりする。
怖い会社((((^^;)



      



みんな餞別などを渡して、励ましている。
出川哲郎さんも餞別を渡す。


      



千代さんの美容院
アイリスが見える。
ピンク屋根もなくなってシャッターは降りたまま(TT)


      



このシーンベタなギャグ2つ。

■車が出発して秀吉だけが残されるミニギャグ。


      


■源ちゃんがあけみに足を踏まれるミニギャグ。
う〜〜〜痛そう…(/_<。)


      




そのあと児童福祉相談所の人にこってり絞られるさくらだった。(
統一劇場の団員さん
母親探しはこちらでするので勝手にそういうことするな、と言うことらしい。
子供の面倒を見れない母親も多いとのこと。
確かに蒸発したあと違う男と暮らしている母親がいるのはよくあること。

たとえば、第33作「夜霧にむせぶ」で根暗男がいたが、あの逃げた奥さんは、違う男と
一緒にその男の赤ん坊を背負いながら新天地で幸せそうに暮らしていた。


ま、児童福祉相談所の方はガチガチの正論を言うが、
これだけは言える。寅はテキヤ仲間たちに聞いて母親の居場所を
その日のうちにつきとめることができたが、児童福祉相談所のスタッフさんたちには、
そのネットワークはまずないだろう。



      




その夜

大阪 天王寺駅前 派出所


とっくに和歌山に着いていなくてはならない時刻に
大阪天王寺駅の派出所から電話。

どうやら子供の誘拐犯に間違われて足止めをくったようだ。

おまわりさんはご存知、
イッセー尾形さん。
前作第38作で入院したおいちゃんの主治医さんをしていた人。

さくらに電話して裏は取れたみたいで安心していた。

結局この天王寺地区の宿に泊まる羽目に。


      


しかしこの天王寺駅から徒歩圏の「
新世界ホテル」になぜ泊まらないんだろう。
あそこなら第27作「浪花の恋」でも出てきたように、気兼ねなく泊まれるだろう。

寅はおまわりさんに宿を探させるが注文がうるさい(^^;)

おまわりさん「ビジネスでよろしおまんな」

寅「あ、ダメ、オレベッドってダメ、それから小さな風呂、腰掛けうんち、
あれ、全部ダメなんだよ。狭くってもいいから、畳の敷いた宿頼むよー」

おまわりさん「日本旅館ですな」

寅「うん、あ、ひとつだけ贅沢言わせてもらうとね」


      


おまわりさん「なに〜〜」

寅「
女中さんがな、夜の十時頃になると、『うちパートやさかいこれで帰る』
 ああいうところはやめてほしい。
 オレ寝る前に、熱燗でキューっと一杯やりたいの、うん、
 おかずなんか、これはもうイカの塩辛でいい。
 寝衣の上に色っぽい羽織りなんかちょっとひっかけて、
 女中さんが、お盆片手にスーっと入ってくる。
 『お待ちどうさま』『いやいいんだよ。こんな遅く悪いねえ』
 『いいのよ、どうせ私宵っぱりだから、さあ、おひとついかが?』
 『うん、じゃあもらおうか』『おまえもどうだい一杯』
 『あーそう、うれしい、じゃあいただいちゃおうかしら』
 フフフ
 そんなふうな感じで、一泊千円くらいの旅館ないかねおまわりさん



       



おまわりさん「フハハハハハハ」と不気味に高笑い。


       


おまわりさん「
日本の現状把握しとらんのとちゃうかあんた、
     フハハハハハハ!!あーあ



       


背中で分かりづらいが、
一緒になって笑っている渥美さん(^^;)





天王寺 安宿

で、形だけ畳であとは全部裏目のうらぶれた宿に結局泊まる。

パート正司敏江さんが、いい味を出していた。


       



ヤクザもんであった秀吉の父親
『般若の政』の位牌
テーブルの上に置き、カップ酒を供え、



        


寅「
釈善政か…、フン、
  何が『善』だい、フフフ…、
  悪いことばっかりしやがって、
  どーせ今頃は地獄の針の山かなんかでもって
  ケツかなんか刺されて『イテテテテ』
  なんて言ってんだろう。フ…。

  どんな人間でも取り得があって、
  悲しまれ惜しまれ死ぬんだよ。
  おまえが死んだって、悲しんだのはおめえ...
  サラ金の取立て人だけだったっていうじゃねえか、
  ったくなあ…情けねえな…。

  たった一度の人生を、どうしてそう粗末にしちまうんだ。え?

  おまえは何のために生きてきたんだ?



       


  
なに?てめえのこと棚にあげてる?? 
  あたりめえじゃないか、そうしなきゃ、こんなこと言えるかい



        




般若の政へのボヤキは、すなわち、寅自身への懺悔に他ならないのだ。
寅は常に自分の無為な人生に後悔している。
しかし、後悔しない人生など古今東西どこにもないのも自明である。



救急車の音


翌日  和歌山へ  JR 阪和線 電車


この年からJRになった。


熊取 和泉砂川あたりを走っている。

眠っている寅の手からおふでさんの写真がぽとりと落ちて
秀吉が拾って腹巻に入れる。
寅は寝ぼけながら起きて、またその写真手で持ち、そしてまた寝る。



      


このなにげない静かなやりとりにこのシリーズの粋がある。





和歌山駅前に到着



で、さっそく寅は人に聞いて


       





和歌の浦』に行く。



若の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴鳴き渡る

山部赤人



          


当時宇宙回転風呂で有名だった『
北村荘グランドホテル』に務めていたらしいが
残念ながらここも辞めてしまって、
今は
奈良県の吉野の旅館で働いているそうだ(ーー;)


      


寅「
お客同士の揉め事があってな、それで居づらくなったらしいや。
  しょうがねえや、おまえの母ちゃん美人だからな



      


なるほどね。


その後、このホテルは倒産し、廃業した。
かつてはこのまるい浴槽がおそらく回転したのだろう…
倒産後長い年月廃墟となっていたようだ。↓



      




今度は『JR和歌山線』に乗って
奈良『吉野』へもうひと踏ん張り!



寅次郎と秀吉の旅は続くのであった。ふう〜〜〜〜


和歌山駅から奈良の吉野口駅まで約2時間。
吉野口で近鉄吉野線に乗り換えて吉野まで約30分、
その後ケーブルカーと徒歩、合計3時間半くらいである。


吉野川橋梁

吉野川流れる吉野町の街中が映る。



      



町の小さな化粧品店でビューティアドバイザーとして廻って、
カウンセリングをしながら商品セールスをしてる隆子さん。


スポンサーは花王ソフィーナ(基礎化粧品(ローション&クリーム))


      



夕方、仕事を終え、吉野の山を隆子さんの軽四が登っていく。
『銅の鳥居』の前を上がっていく。


      


この鳥居は「かねのとりい」と読む。
重要文化財で奈良の大仏の銅の残りでつくったと言われている。
「発心門」ともいわれます。
正平3(1348)年に高師直の兵火で焼失したあと、室町時代に再建された。
山上ヶ岳までの間に発心・修行・等覚・妙覚の四門があり、これが最初の門。
日本三鳥居(大阪四天王寺の石の鳥居、安芸の宮島の朱色の両部鳥居と共に)の1つ



八木屋 翠山荘



正面横の小さなスペースに無理やり車を停める。

おいおい隆子さん、
その玄関横のスペースは車の停めるスペースじゃないだろ。
そんな玄関横の目立つところに車止めるなよ、大きな駐車場がすぐ前の坂下にある。



       



疲れた顔で翠山荘にチェックインする隆子さん。
どうやら恋人と二人で来る約束だったらしいのだが彼は来ないらしい。

二人部屋に一人で泊まるので2割増と旅館のオヤジの笹野高史さんは告げる。



       


オット登場しました
谷よしのさん、
今回はこの後も登場かなりセリフが多い!


      


谷さんの役の名前をスミさん(澄みさん?)と言うらしい。


隆子さんは『梅の間』


谷さん「
いらっしゃいませ」「はい」「どうぞ



その直後  寅がフラフラになって
杖をついて飛び込んでくる。

       



      



なんとオヤジによると、
おふでさんはまたもや辞めてどこかへ行ってしまったらしい。
ああああちゃ〜〜〜またか…<( ̄口 ̄||)>!!!


秀吉がちょっと元気が無い。


      


理由はおふでさんへの嫉妬らしい…。

なんかいろいろ巻き込まれやすい受身的なタチなのかもしれんね(ーー)


ガックリ倒れこむ寅。


      


『萩の間』にとりあえず宿泊

谷さんやってきてちょっと疲れて顔色が悪い秀吉に

谷さん「
おやおや、大丈夫?ん」と2階へ連れていっていた。


      




夜 隆子さんの部屋

隆子さんの部屋には花王ソフィーナの箱が置いてあるので
寅と同じく売れて初めてお金がもらえるのかもしれない。
きびしいね…。




寅は隣の部屋で秀吉の容態が思わしくないのであたふたしている。
どうしたのかと谷よしのさんに聞く隆子さん。

谷さん「
子供さんが具合悪いrしいんですよ。男親やな…」と出て行く。


       




テレビでは吉本新喜劇がかかっていて、
「誰がカバやねん!」の
原哲男さんがでていた。


       





深夜 寅の部屋


夜中になっても容態がよくならない秀吉のことが怖くなりさくらに電話する寅。


       



さくらは、今すぐ医者に見せることを勧める。


       


おろおろする寅。

寅「
だから生き物飼うのいやなんだよオレ」 生き物飼うって…((((^^;)

宿のオヤジにタクシーを呼ばせる。


隣の部屋の隆子さんが廊下に出てきて


隆子さん「
大丈夫私が面倒みるから、お父さんはよ行きなさい

寅、驚きながらも

寅「
そうかい、どうもご親切にありがとう、すいません


      


この時点で、隆子さんは心の優しい気丈夫な人だと分かる。
普通見ず知らずの人に、なかなかここまでしないからね。



タクシー飛ばして病院に駆けつける寅。



菊田病院にたどり着く寅。


ドンドンガラス戸を叩いて、医者を呼ぶ。

中から眠そうな目をして出てきたのは
2代目おいちゃんの松村達雄さんだった。

専門外の耳鼻科医&すでに引退隠居したじいさん医者の松村さん。

寅はとにかく大声で頼み込む。

医者「
わしゃ耳鼻科だぞ

寅「
そんなことかまわねえって!かまうかまう ゞ(^^;)


      


診察室をかき回し、無理やりタクシーに押し込み旅館へ。

松村さん「こらー!」と止めるが寅は聞きやしない。

宿では秀吉が高熱でぜいぜいしている。

思っていたよりひどい状態だったので松村さんは仰天、必死になる。


      



隆子さん寅に

隆子さん「
一緒に暮らしていてどうして気がつかんの、こんな酷くなるまで

寅「
いや、昼間ピンピンしてたんだよ

隆子「
呆れた、それでもなの!

寅「
じゃないんだなこれが…


       



松村さん「
夫婦喧嘩なんかしとる場合か!バカ!!


       


松村さんは今夜が勝負と言い切る。


松村さん「
父さん!あんたもういっぺんわしの家に行ってな、
     この紙をばあさんに見せて薬もろうてきてくれ


と、メモの走り書きを渡す。

寅「


松村さん「
お母さん、部屋暖めなさい

隆子「
はい

松村さん「
それから、ご主人

オヤジ「
へい

松村さん「
コーヒー持ってきてくれ、インスタントでいい

オヤジ「
コーヒーが効くんですか、こういう場合は


      


松村さん「
ヴァカ!!わしが飲むんじゃギャグです(^^)

寅も便乗して「
常識だよ、バカ!寅も思ってたくせに((^^;)


寅はもう一度外に行こうとする。

隆子「
あ、お父さん

寅「
はい

隆子「
帳場に寄ってタオル何枚か届けるように言うて

寅「
うん!母さん!あと、頼んだぜ!母さんじゃないだろが ヾ(^^;)


      


松村さんの言うぶんには

松村さん「
薬が効いて、明日の朝熱が下がれば安心なんじゃが


ストーブを付けている隆子さん。

松村さん「
お母さん、お尻出しなさい

隆子さん「
はい?お尻?と自分のおしりを触る隆子さん。


     


そう聞こえるよね〜、隆子さん(^^;)


松村さん「
あんたのお尻じゃない、子供のお尻じゃい

隆子さん、顔を手で覆う。

これは第25作「ハビスカスの花」の沖縄の病院でのギャグのアレンジ。


松村さん「
なんちゅう母親じゃろうなあ〜あんたの言い方も悪いって ゞ(^^;)


秀吉を横にさせて、自分におしりを向ける隆子さん。

松村さん「
あんたが尻見たってしょうがない

また逆に秀吉を転がす隆子さん。

松村さん「
坊や、がんばれよ!おじいちゃんも一生懸命手当するさかいな

隆子さん「
しっかりするのよ、大丈夫やもんね

荒い息の秀吉。

注射のアンプル液を開けようとして
なかなかうまく行かない松村さんのミニギャグ(^^)



      



そしていろいろ治療があって…

何時間か過ぎ、  夜明け



ストーブが付いている暗い部屋。

秀吉小さな声で

秀吉「
おじさん、おじさん

隆子さんガバッと起きて

隆子さん「
なんか言った?


     


秀吉「
喉乾いた

隆子さん、秀吉の顔のそばまで近づいて

隆子さん「
喉乾いたの?


頷く秀吉。

隆子さん、秀吉のおでこや顔を触って

隆子さん「
いやあ〜。。。熱が下がってる!
    頑張ったね坊や!もう大丈夫よ。助かったのよ


と強く抱きしめる隆子さん。


      



隆子のテーマが流れる


寅を起こす隆子さん。


スタンドのライトをつけて

隆子さん「
お父さん、ねえ起きて!」と手をとって泣笑する隆子さん

寅「
…ダメか…

隆子さん「
違う!フフフ熱が熱が下がったのよ!


     


どうして隆子さんが秀吉にこうまで感情移入してしまうのかは
この夜に分かる。


隆子さんは、飲み物を自販機で買うために
まだ夜が明けきらない外に駆けていく。



     





柴又  とらや


珍しく、工場の中村くんとゆかりちゃんが
博のおごりでお昼ごはんを食べている。


     


さくら店にやってきて、寅からの電話を待っている。
みんな秀吉のことが気になっている。

博に言われて翠山荘に電話するさくら。


寅の部屋に繋いでもらったのだが電話に出たのは隆子さんだった。

隆子さんの声「
もしもし

え?って感じで、びっくりするさくら( ̄ロ ̄|||)?


     


さくら「
あのー…私…車寅次郎の身内の者ですが…

隆子さんの声「
あら、はい。お待ちください。お父さん〜


さくら、ふたたびびっくり煤i( ̄ロ ̄|||)??

混乱し、電話口の博を見る。

寅の声「
はい、はい、なんでしょうか?

さくら「
あの、あ、私、さくらよ」と言いながらも混乱している。


寅は笑いながら、安心した声で秀吉が回復したことを伝える。

秀吉が隆子さんになにか言っている。


寅電話を中断して



寅「
母さん、なんか呼んでるよ


      


さくら、またもやびっくり煤i((( ̄ロ ̄|||)???


簡単に礼を言って切ってしまう寅。

さくらは、秀吉が回復したことは喜ぶのだが…。

そのあと、「父さん&母さん」をずっと考え込んでいる。

博「
どうしたさくら?

さくら混乱してしまっている。

さくら「
でも…お兄ちゃん電話の途中で『母さん』って呼んだわ。
  そしたら女の人の声で「はい」て返事があたけど…



      


博「
それこそ空耳だよ。しっかりしろ


     


さくら「
そうね」と一旦は納得するが…。

さくら「
うそ〜〜〜〜これは倍賞さんの素の言い方(^^;)


     


さくら「
言ったわよ、確かに


この第39作では、とらやの職人さん↓がスクリーン上によく映っている。
そしてこの作品ではとらやはずっと忙しく繁盛していた。
実際はこのような職人さんが一日中いないと、団子屋は出来ないはずなんだ。
おいちゃんとおばちゃんがちょいと朝に作るだけではあれだけの品書きは無理。



     




もう一度確かめるために今度は博が電話かける。


で、もう一度


吉野  八木屋 翠山荘

旅館のオヤジが

暁伸・ミスハワイ師匠の漫才を見ている。


     


浪漫リズム(ロマンリズム)漫才の天才。


      



『これは素敵な チョイといかす。一節聴いたら ドンピシャリ〜♪』で始まるテーマソングで有名だった。

ミスハワイ師匠はど派手なムームーに金髪パーマのカツラで、ヘチマ型のギロをこすり上げ、
「行け!」、「いい声で歌わんかい!」と、
伸をけしかけながら舞台狭しと立ち回り、
甲高い声で「アーイーヤー」(ハワイ語で「さあ、行くぞ」の意味)を連発。
「アーイーヤー」は伸師匠が体調を崩し声が出なくなり間を繋ぐために突発的に生まれたフレーズらしい。

恰幅の良いハワイが腰を振りつつ右往左往すれば、伸がその容姿を
「♪立てばポスト(旧式)で、座ればだるま…」と扱き下ろしながら、
やおら「奥さん、明日も雨でンな」等と客いじりに移る、ペーソス溢れる芸風で一世を風靡。

オチは伸師匠が「寝ぐらへ帰るダンプカー…」で締めた。


電話がかかる

オヤジ「はい、翠山荘です。あ、車さん、ついさっき、買い物に行くとか言うて
出かけられましたけど、奥さんと二人で。…あ、よろしいですか、いえいえ、はいどうも」

電話切ってから。


オヤジ「
あ、…奥さんやなかったか。まあええわ、似たようなもんや

頭をブラシで刺激(TT)


          



呆然としている博。

さくら「そうしたの?いなかったの?」

博、頭がグルグルになりながら


博「
奥さんと出かけてるって…。
  確かそう聞こえたなあ…空耳かな



      


ビヨヨヨ〜〜〜〜〜ン(〜〜;)

博がギャグに参加するのは、この長いシリーズでも極めて珍しい。




隆子のテーマが流れる


すっかり紅葉の吉野



金峯山寺仁王門の前



階段の上で隆子さんの買い物を待っている寅。


門前の和菓子屋『萬松堂』で秀吉のために買い物をする隆子さん。


     


寅も隆子さんもまだ名乗り合っていないことに気づき笑う。


寅「
オレね、東京は葛飾柴又の車寅次郎ってんだ


     


隆子さん「
立派な名前

寅「
そうかねえ

隆子「
私淡路島で生まれて、
   あと四国やら関西やらいろんなところで育ったの。

   
高井隆子と申します


寅「
隆子ちゃんか

寅「
ちょっとなんか呼びにくいなあ

隆子「
フフ

寅「
母さんでいいだろう

隆子「
そうね、寅さんでも父さんでも似たようなもんやしね、フフ

寅「ハハハ」



仁王門をぬけて参道を蔵王堂へとゆっくり歩いてゆく。

山伏の一団とすれ違い驚く寅。




金峯山寺 蔵王堂


修験道の本山。その本堂がここ。

本堂(蔵王堂) 仁王門 ともにもちろん国宝。


お祈りをしている隆子さん。

寅「
長い間何拝んでたんだい?

隆子さん「
お礼言ったのよ、坊やの命が助かったから。
    五百円玉張りこんでしもうた



      



それを聞いて、急に恐縮した寅は

寅「
そういえば礼も言ってなかったな。ありがとう」と頭を下げるのであった。



      



隆子さん「
あ…

寅「
赤の他人のオレ達にこんなにまでしてくれて…

隆子さん「
あ、だって、父さんだって坊やと赤の他人なんでしょ

違うよ隆子さん、
寅は秀吉のゴッドファーザーんだよ。
名付け親であり後見人。知ってる?
赤の他人とはかなり違う関係。




寅「
うん、でもよー…母さんは…たまたま隣の部屋に泊まっただけで
  こんな騒ぎに巻き込まれちまって悪かったな



隆子さんは昨日のことを告白するのだった。
どうやら男の人と二人で泊まる予定が断られたらしい。
それで自暴自棄になって旅館の窓から下に飛び降りてしまおうか…。
なんて思ってたらしい。


隆子さん「
今は本当にあの男が来なくてよかった…。そう思ってるの。
     だって…、もしあいつが来てたら、父さんたちが隣の部屋で何してようと関係なく
     くだらない時間を過ごしてたに違いないもんねえ



       


寅「
そういうもんかねえ…

秀吉がチアノーゼ状態になり一番苦しかった時に、
隆子さんは手を合わせ続けて全ての神様と仏様に願をかけたそうだ。


       



隆子さん「
『この子の命が助かったら、私、酒でもタバコでも
    男でも断ちますから』…そうお祈りしとったの



       



寅、驚いて

寅「
はは〜、偶然だなあ、オレもねえ、
 女断ちますからって、そうお祈りしてたんだよ


隆子さん、吹き出して大笑い。


      


隆子さんの「男断ち」と寅の「女断ち」は一緒じゃない。
寅は最初から女性を断っているからだ。
どんなにその女性のことを思ってもその女性を自分の
恋人や伴侶にしようとしないなんてある意味極めて禁欲的だ。



隆子のテーマが流れる。



ふたりは蔵王堂の縁に腰掛けて、
あらためて秀吉の病気の回復を喜ぶのだった。



隆子さん「
お祈りが通じたかもしれんねえ…

隆子さん「
ほら、明け方、あの子が喉乾いたあ…、っていうたでしょう

頷く寅。

隆子さん「
唇見たら、赤い色が差してて、
    『あー、よかった、助かった…。そうおもうた時、
    あの子の命だけじゃなくて自分の命まで取り返したような…。



        



   
胸の奥から、冷たくて、きれーな水が音を立てて溢れてくるような、
  フフ…そんな幸せな気持ちがしてね


と涙ぐんでしまう。


        



隆子さんの今回のできごとに対するモチベーションは高い。
寅はおそらくこの時点で、隆子さんの人生に多くの悲しみが
あったことを悟っていたに違いない。

その言葉をしっかり受け止め、
般若の政の代わりに丁寧に礼を言う寅だった。


そこへ

宿のオヤジが秀吉がお腹すいたらしいと呼びに来る。

隆子さんは葛湯を作ってあげるらしい。

それと朗報。

オヤジがおふでさんの居場所を突き止めてくれたのだ。

どうやら
三重県の伊勢志摩に今いるらしい。

寅は喜ぶが、隆子さんの顔にほんの一瞬影がよぎる。

縁が遠くなっていくのが淋しいのかもしれない。


        




その夜 寅の部屋


布団を敷いてだべっている寅。

秋の虫が鳴いている


寅はおふでさんが本当に喜んでくれるかどうか自信がなくなっちゃったらしい。

寅「
ひょっとしたら金持ちの後妻になって先妻の子がいて、
  おまけに自分が赤ちゃん産んでたりなんかして
  そうなったらこら、どうするおい…
」と、弱気になる。

妄想がはじまってますよ(( ヾ(^^;)


        



寅「
はるばる訪ねていって迷惑な顔されるんだったらさ、
  いっそのこと、ここから柴又へ引き上げたほうがいいんだよ、なあ。
ええ…(00;)

寅「
もちろん、おまえの母さんも一緒さ」 

あ、あ!…結局はそっちの理由ですか(((^^;) 
ってか、おいおいおい昨晩の女断ちの願はどうした ヾ(^^;)



寅「
おまえ、となりの母さん好きだろ?な」 それはあんたやろ ヾ(^^;)

寅「
な、一晩中寝ないで、おまえのことを看病してくれたんだからあの人は

妄想が始まりますよ〜〜〜

メインテーマが静かに流れる。



寅「
あーあ…、おまえと母さんを連れて柴又へ帰る。
  さくらが聞くな『お兄ちゃん、どうしたの?』
  『うん、オレもいろいろ考えたけれども秀吉はオレの息子にすることにしたよ』
  『ああそう、よかったわね』『でも‥その後ろにいる美しい人は誰?』



         


 
なーんて聞かれたらオレなんて答えたらいいかな?
 え、な、おい、え、おい、よ、ほれ、…。
 なんだよ寝たのか…


一生言ってろよ ヾ(−−;)



その時部屋の襖が開いて隆子さんが入ってくる。



寅「
ん?

ちょっと酔っている。

お銚子とコップ持ってやって来て

隆子さん、秀吉を覗き込んで

隆子さん「
寝たの?坊や

寅「
ん、フフ、なんでい、まだ起きてたのか

隆子さん「
宵っぱりなの私

秀吉の寝相を直す寅

隆子さん「
父さんみたいな人もおるんやねえ…

寅「
え、いやあ、オレみたいなバカもそう滅多にいやあしねえや

隆子さん「
おらんよお、いくら友達とはいえ、
    他人の子供つれて、お母さん捜し歩いたりして…フフ



       


寅「
んー、ま、これは、渡世人の付き合いっていうか、しょうがねえやさらっと言うのがいいねえ。

隆子さん「
でも明日お別れやねえ…淋しそうな隆子さん。

寅「


ちょっと酔っていて

お銚子を倒してしまう隆子さん、寅が拾って、コップに注いでやる。

寅「
母さん、これからどうするんだい

隆子さん「
…小さな車に乗って…、八木、五条、橋本…、
    そんな旅がずーっと続くの…



       


寅「
んん…母さんも旅人(たびにん)なんだなあ…

隆子さん、そっと寅の方にもたれるようにして

隆子さん「
いつか父さんに会いたくなる時が来るやろなあ…


       


別れたくないんだね。

寅「
オレは一年中旅暮らしだから、いつだって会えるよ

隆子さん「
ほんと?


       


寅「
ああ、ほんとうさ

隆子さん「
じゃあ、その時まで男断ちして待ってよ


      


寅「
ああ、オレも女断ちして待ってるよ粋だねえ〜。


      



二人して笑い合うが、


隆子のテーマが柔らかく流れる。


隆子さんの声はやがて嗚咽に変わっていく。



      


寅「
どうした?



隆子さん、泣きながら

隆子さん「
私、粗末にしてしまったのね、
    大事な人生なのに…


と俯せになって泣き続ける。



      


寅、そっとカーディガンをかけてやる。

寅「
大丈夫だよ、まだ若いんだし、な、
 これからいいこといっぱい待ってるよ、な



      


うなずく隆子さん


      


泣きながら

隆子さん「
そうね…、『生きててよかった…』、
    そう思えるようなことがね、ううう…



      


隆子さんはそう言って立ち上がり…

秀吉の布団に入っていく。



隆子さん「
ここに寝てもいいでしょ

秀吉にくっついて

隆子さん「
あ、フフ、ぬくい〜〜、フフ

寅、隆子さんを見ている。

隆子さん「
私にもこれくらいの子供がおったんよォ…。
   可哀想に堕ろしてしもうたけど…



      


そうだったのか…。
それで昨日からの行動が納得できた。



隆子さん、寅の方を振り向いて

隆子さん「
父さん、ここに寝てぇ


      


第15作「相合い傘」のリリー思い出しました(^^;)

寅、ビビる
(((((^^;)

寅「


隆子さん「
ねえ

寅「
あ。そうしましょうか…と、ギクシャクしながら布団に入る。

顔のころに隆子さんの手が。( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)

はっと顔を上げる寅。



      



ちょっと手を横にやって

寅「
はああ、は、はあああ…

とワケの分からない擬音を出して上を向く。


一拍あって―


隆子さん「
あ???あれえ?どうしたどうした。

寅「
は!??

隆子さん起き上がって

秀吉の布団を剥ぎ取る

隆子さん「
なんか温いもんが!

隆子さん「
あ、!!いやあ!!

寅「
やったな!!

秀吉の噴水のようなションベンがもろ寅の口にΣ(|||▽||| )


      


寅「
ぷはあ!!きたねえ!飲んじゃったよゴクッと!ブハ!
  あーしょっぺえ!しょっぺえ〜!
」  ワッ…バカ…(ノ_-;)


      


ご愁傷さま チ〜〜〜ン(TT)


      






翌朝  大和上市駅 ホーム


なぜか 翠山荘の近くにある吉野駅からは出発せず
かなり遠い大和上市駅から出発


いろいろロケの際の事情があるんだろうね…。


電車に乗って窓から別れを惜しんでいる3人。

隆子さん「
さよなら。体に気をつけてね

と秀吉の顔を触っている。


       


寅、秀吉に、

寅「
礼を言え

秀吉「
母さん、どうもありがとう

本当に秀吉くん数少ない台詞の一つです((^^;)


淋しそうにほほえむ隆子さん。

寅「
母さんもよ、今度会う時は、
 もっと幸せになってるんだぞ。な
」 


寅が言うと、嫌味がないね。
寅にしか言えないいい言葉だねえ…。


       



微笑みながらうなずく隆子さん。


      



笛がなって、エンジンが動き出す。


隆子さんに一瞬悲しみの表情が現われる。


       



動き出す電車。『急行 あべの橋」6053


秀吉「
バイバーイ


     


寅「
母さんも元気でな!

隆子さん「
さようならー!!


     


秀吉「
バイバーイ!!

隆子さん「
バイバーイ!!」と大きく手を振り続ける。

電車が遠くに去っても

秀吉の声「
バイバーイ!!

隆子さん「
バイバーイ!!


     



悲しみのBGMが流れる。


一人残される隆子さん。

強烈な孤独が隆子さんを襲う。



     


     



淋しく駅を出て、

一人軽四に乗り込み、去っていく。



     




寅たちを乗せた列車は―


大和上市駅ーかしはら神宮前ー大和八木駅ー鵜方ー志摩神明 約3時間半


『近鉄志摩線』の特急が走っていく。


     



こうして寅と秀吉は志摩神明まで辿りつくのだが、


     




伊勢志摩

登茂山から見た英虞湾


なぜか最後の最後がなんと船!で、英虞湾を入り、賢島まで行くのだ。
ここの湾にはもちろん各島々を結ぶ小さな連絡船で着いたと思われる。

何らかの理由で志摩神明に行かずに、違う島に行ってしまい、
そこから連絡船に乗ったのだろう…。無理があるなあ〜〜〜(^^;)ゞ



船長さんはお馴染み『すまけいさん』

前作「知床慕情」につぎ、2作品連続船の船長役。

同じようにへたな歌をうたう(^^;)

船長「
♪飲み過ぎたのは〜〜〜、あなたのせいよ〜〜〜

『男と女のラブゲーム』


     




賢島に上陸


松井真珠店 

三重県志摩市阿児町神明733の4


寅は、松井真珠店の女将さんである河内桃子さんから
おふでさんが病気で入院し、
今はこの店の別邸で静かに暮らしていることを知らされる。


女将さんはおふでさんが秀吉のことをいつも気にして
それが原因で病気になってしまったことを知っている様子だった。


     


めちゃくちゃな車の運転をするすまけいさんに
運転させて三人はおふでさんが静養する別邸へ。


河内桃子さんの抑えた確かな芝居はよかった〜。


     




海のそばの 松井家の 別邸


うわッ、かなり朽ちているな…。
普段人が住んでいないとこうなるんだね。


寅「
あ〜。これはいいとこだ

すぐにおふでさんを呼びに行く女将さん。

寅「
おふでさんはやつれてるかい?

船長「
手術したあとはこんなにやせとったけど、この頃はもう、すっかり

ちょっと安心する寅。

寅「
そうか、そらよかった…



家の中で女将さんの声「
ほんまや〜、嘘なんか言うわけないでしょ




寅小さな声で秀吉に

寅「
母ちゃんだぞ

入り口のほうを見ている秀吉。


     


半信半疑で走って入り口から出てくるおふでさん。


おふでさん「
…!!寅さん…


     


寅、にこっと微笑む。


寅「
息子を連れてきたよ


     


秀吉を見つめるおふでさん。


     


寅「
さ、行け


     




と、秀吉を送り出すが、秀吉はそこに止まったまま。


おふでさんを見つめる秀吉。


     


寅「
秀、思い出したろ、母ちゃんだぞ

オラ「
行け」とさらに一歩押し出す。

何歩かゆっくり進んでいく秀吉。

緊張感のある音楽

ふでと秀吉のテーマ大きく流れる。


秀吉に駆け寄り、

秀吉を掴み、ひざをつくおふでさん。



     



秀吉を見つめるおふでさん。


秀吉「
お母ちゃん



     


想いが吹き出すように秀吉にしがみつき嗚咽するおふでさん。


おふでさん「
ううううう…ごめんね…
    ごめんね…うううううう



     


次第に泣き崩れていくおふでさんだった。

彼女の後悔も懺悔も全て涙と共に吹き出していくのだった。



     


目をうるませて静かに見守っている寅と船長。

放心状態で見ている女将さん。


     


おふでさん、ハンカチで涙を拭きながら

おふでさん「
寅さん、いったいどういうわけ?…


     


寅「
般若の政はな、‥死んだよ


おふでさん「
え…」と寅の顔を見る。


     


寅「
この子をオレに頼むと言い残して


おふでさん、何かを思い出すような目。

寅「ま、思い出したくもねえような男だろうけれども、
 あいつも仏になっちまったんだ。
 勘弁してやってくんな



     


おふでさん、また嗚咽している。


おふでさん、立ち上がり

おふでさん「
ありがとうございます。
     とんでもない御迷惑かけてしまって


寅「
礼を言われるほどのことはねえよ。
  名付け親としてあたりめえのことをしただけだ。
  なあ秀吉



寅にまとわりついている秀吉。


数時間の後…


寅からの電話

寅は、さくらにことの顛末を電話している。

喜び安心するとらやの面々。



     


寅はこのあとすぐ帰るとさくらに伝える。


     




賢島 松井真珠店及び連絡船乗り場付近


女将さんが今夜おふでさんと夕飯を食べ、
宿泊もしてもらうと決めているのに
寅は振り切る思いで、それらを断り、
この地を去ろうとする。



寅「
奥さん、どうぞ、おふでさんとあの子のことを
 よろしくお願いします。それでは失礼します


とお辞儀をし、船に乗ろうとする。

秀吉は寅と離れたくない。
急いで船まで駆けてくる。

秀吉「
おじさん!おじさんどこ行くの!?

寅「
おじさんはな、これから柴又へ帰って、
  秀吉が母ちゃんと会えたってことを
  みんなに話してやるんだ


秀吉「
オレも一緒に帰る


     


寅しゃがんで

寅「
なに言ってんだ、お前はここに残るんだろ

秀吉「
いやだ!おじさんと一緒に帰る!


     


寅、真剣な目になって、立ち上がる。


     


船長「
どうだい、せめて一晩泊まっていったら…

寅「
頼むから口出さねえでくれ寅の決意は固い。


メインテーマが静かに流れる。


寅「
いいか秀よーく聞くんだぞ、おじさんはな、
  おまえのあのろくでなしのオヤジの仲間なんだ。
  いい年をして、おっかさんの世話もみねえ、
  子供の面倒も見ねえ、
  …そんな粗末な男におまえなりてえか?



秀吉は悲しみで泣き始めている。


     


寅「
なりたくないだろ秀。
 だったらな、このおじちゃんおことなんかとっとと忘れて
 あの母ちゃんと二人で幸せになるんだ。
 わかったな、わかったら早く行け!



秀吉は嗚咽しながら

秀吉「
おじさんと一緒がいい‥ううう


     


寅はきつい目をして


寅「
これだけ言ってもわかんねえのか。おじさん怒るぞ


     


寅「
行け!これで涙拭いてっっさと行けとハンカチを渡す。

泣き泣きよろよろ戻っていく秀吉。

女将さんの胸でエンエン泣いている。


女将さん「
寅さん…それじゃあ…

と、あまりの仕打ちに悲しんでいる。



お辞儀をして、船に乗り込む寅。



     


船の名前 いそぶえ


寅「
船長行こ

船長「
なんちゅうことや…


船が岸を離れていく。


秀吉は、思い切って防波堤の方へ走る。

桟橋を走り寅を追いかけてくる。



船長「
寅さん!ほら!


別れのテーマ曲(ふでと秀吉のテーマ)が流れる


秀吉泣きながら走り続ける。


秀吉「
おじさん!!


言葉とは裏腹に身を乗り出して秀吉を見ている寅。


      


秀吉「
おじさーん、行っちゃダメ!!


      


秀吉「
おじさーん!!おじさーん!!


ハンカチを地面に投げつける秀吉。


遠ざかっていく船



船長「
ええのか行ってしもて

寅「
かまわねえ、どんどん行け


     


船長「
せつないことやなあ」と、うるうる。


     


秀吉、ハンカチを拾って、また泣いている。


     


もう二度と秀吉のもとには戻ってこない寅だった。


     







東京  柴又 題経寺


    


御前様「よかった。本当によかった。
    仏様が寅の姿を借りてその子を助けられたのでしょうなあ



    


さくら「
まあ、もったいない、
  兄のような愚かな人間が仏様だなんて、
  バチが当たりますよ御前様



ちゃうちゃう、さくら。
寅そのものがずっと仏様なのではない。
仏様が秀吉を母親に会わせるために
一時的に寅の姿を借りて旅をしただけ。
よく理解して欲しい。

寅は無欲なので仏様が中に入りやすいということ。




御前様「
いや、そんなことはない


御前様「
仏様は愚者を愛しておられます。
    もしかしたら、私のような中途半端な
    坊主よりも寅の方をお好きじゃないかと、
    そう思うことがありますよ、さくらさん



     


さくら、恐縮して

さくら「
おそれいります


源ちゃん、境内の葉っぱで焼き芋焼いて食べている。

源ちゃん「
コホコホ

ニコッと笑ってさくらにも勧める。


     


ウマそうに食べている源ちゃん。

御前様「
あれは…愚者以前です。困った〜〜


      


笑っているさくら。


ひたすら愛を与えることだけを生きがいとして、
愚かだが無欲に生涯を貫いていく孤独な寅の真骨頂が
この言葉に集約されていた。
無欲という意味では寅はお坊さんたちよりよっぽど無欲。
さすが御前様は人間を見ている。


それにしても、
あのまま児童相談所に秀吉を持って行っていったとしたら
伊勢志摩の母親まで情報をたどっていくことができただろうか…。

行政というのは確かなことを粛々とやってくれるが、
一人の子供の為に何日も何べんも粘り続けて探してはくれない気がする。
決して家族のように一歩も二歩も踏み込むようなことはしないんだよなあ。






とらや  二階


とらやに帰って来たさくらは、寅のお昼ごはんを持って二階に上がる。
御前様が褒めていたことを伝える。

寅は秀吉との別れがこたえたようである。
やや疲れた表情をしている。



      


あけみとおばちゃんが「からみ餅」の話題を一階でしている。

大根おろしに醤油をかけて焼き餅につけてパクリと食べる。

      



さくら「
お兄ちゃんはね、仏様に愛されてるんだって


寅「
フフフ、冗談じゃねえや、
 仏に好かれたっていい迷惑だい。
 今度お参りしたら言っとけ、
 そっちはその気でも、こっちは愛しちゃいねえよーって



      


いいねえ寅のこの感覚って。
仏様ごときでは、シッポ振って喜ばないところが自由人だ。


さくら「フフフ、いいの、そんなこと言って

と、お茶をいれる。


      


この時、二階廊下の開かずの仕切戸が初めて見える。
向こうは荷物部屋。その間に小さな物置部屋。
これはとても貴重な映像。↓



      


さくら「
もう師走よ。早いわねえ、一年経つのって

寅、意を決したように

寅「
さて、ぼちぼち旅に出るか


      


と、立ち上がる。

せっかく持ってきたお昼ごはんも、
今入れたばかりのお茶も飲まないのか…。



漬物用の白菜が干してある。


さくら、びっくりして

さくら「
もう行っちゃうの?

寅「病気でもねえのに、

ハンテンを粋に肘だけでポーンと脱いで―

こういう立ちふるまいがいいねえ、渥美さんは。

     


寅「フラフラ遊んでたんじゃ、
 お天道様に申し訳ねえからな



吊るしてあった背広を着る寅。


さくら「
くたびれてるみたい。働いて大丈夫?


秀吉と無理やり別れたのがきつかったのかも…



寅「
働く?


      


頷くさくら。


寅「
フ…、何言ってんだおめえは。
 働くって言うのはな、博みてえに、女房のため、子供のため、
 額に汗して真っ黒になって働く人達のこと言うんだよ。
 オレたちは口からでまかせ、インチキ臭いものを売ってよ、
 客も承知でそれに金払う、そんなところでおまんまいただいてんだよ



さくら「



かばんを閉じて、廊下に出る。


      



さくら「
お兄ちゃん…、それが分かっていながら…


寅「
それが渡世人のつれえところよ…


     


と、下りていく。


さくら、寅の財布をお膳で見つける。


さくら「
あら」とすぐつかんで渡しにいこうとするが、

ふと立ち止まって…。


寅の財布の中を見て、自分の財布を開け、
一万円札を出して、
寅の財布に入れてあげるのだった。


      


おいちゃんと、おばちゃんに目配せをして出て行く寅。


      


おいちゃんもおばちゃんも止めるが

寅「
また近いうち寄るから」と出て行こうとする寅。


さくら二階から下りて、奥から走ってきて

さくら「
お兄ちゃん、忘れ物」と財布を渡す。


      


寅「
おお!なんでい、
  
命より大切なもの忘れるところだった、ハハハ


      


ちょうど満男が帰って来て、

さくらは満男に駅まで送らせる。



        
     

おいちゃんとおばちゃんに目で別れを交わして、

すっと去っていく寅。

渥美さん、なんてテンポがいいだ。カッコいい。




【このシーンの不具合について】


ところで、このシーン↓で、なんと、
満男が約10秒以上とらやの左横でスタンバイしているのが
この本編でスクリーンに映ってしまっている。






体(腕)とかばん↓が映ったまま10秒以上スタンバイ。


     



その後にさくらが寅に財布を渡すシーンでは、ズームが使われるため、角度が変わり、
最後はスタンバイしている顔まで映ってしまっているのだ。      

「予告編」でスタンバイシーンが映っているのは何度か目にしたが、
本編で、しかもレギュラーの満男が、スタンバイしているのが映っているのは
極めて珍しい。


今までも何度か「予告編」などではこういうスタンバイの
姿がちらっと見えたことがあったが、
「本編」で、それもレギュラーの満男がとらやの横で
立ち止まっているのはえ?なんだろ?って異様だった。


  顔も見えてしまっている↓


     


最初はミスだって思わずに「え?満男そこでなにやってんだ?」
って真剣に悩んでしまった。

寅伯父さんに気を遣って会う前から離れて待ってるとか??

でも、満男があそこでずっと止まっている話の運びのわけないし…。
あそこで10秒以上もぼんやり止まる理由がまずない。
だいたい満男はあのあと寅に気づかずとらやを素通りしようとするのだから。

ただ、観客はスクリーン右の寅とさくらの芝居をひたすら見ているから
左のガラス戸の向こうの満男の顔までは見ない。

私もなんども観ているのに、今日の今日までまったく気づかなかった。

(ちなみにさくらはほとんど満男を見ないまま満男を発見している)






       




そしてタイミングを見計らって吉岡くんは店の前まで動き出す。


とにかく正式な「本編」でこんなことははじめてだった。
びっくりした〜。

映画と違ってDVDなどでは何度も見るので
こういう発見がしばしば起こりうる。
ファンにとってはお宝映像で嬉しい限りだが、
当時のスタッフさん達にとっては
うわっ、ついにわかっちゃったな…。って感じかもしれない(^^;)




物語に戻って…



手を振るさくら。



     





柴又駅前


アイルランド民謡 ロンドンデリーの歌 (ダニーボーイ)




駅前で、参考書でも買えと3千円ほど満男にやる寅。

さくらがお札を増やしているので

寅「
あれ?ちょっと増えてんのか?んなことないか万札が増えてるよ ヾ(^^;)


      


満男は駅での別れ際に寅に
自分の悩みを投げかけるのだった。



満男「
伯父さん…

寅「
なんだ

満男「
人間てさ

      


寅「
人間どーした(^^;)


満男「
人間は、何のために生きてるのかな?


寅「
……んな、おまえ〜」と満男をジロジロ見ながら

寅「
難しいこと聞くなあ、えー

寅、ちょっと考えながら

寅「
んー…、なんて言うかなあ…、
 ほら、『あー生まれてきてよかったな…』って
 思うことがなんべんかあるじゃねえか、ねえ、



      


寅「
そのために人間生きてんじゃないのか


それ、隆子さんの言葉だったね。


      


満男「
ふーん…」と寅の言ったことを考えている。


      


寅「
そのうち、おまえにもそういう時が来るよ。な…


寅、にこっと笑って、満男の肩を叩き

寅「
ま、頑張れ、な


      



そして、言うなり、すっと駅の方へ歩いて行く寅だった。


      


一人残された満男は…


師走の喧騒の中、淋しく参道を帰っていく。



      







正月 とらや 店


隆子さんがなんととらやに遊びに来ている。




若い女性が2人ほど手伝いに来ている。
これは珍しい状況。


まあこの作品は、とらやがとても繁盛している。


      


小さな電気ストーブだけつけて、庭の窓も開けっ放し。
これはこの季節寒いだろうなあ〜〜〜(^^;)



みんな、草団子やおでんを出してもてなしている。
忙しい時に来てしまって恐縮している。



      


隆子さん「
でも安心した、あの坊やがお母さんに会えて

と、ふでさんからの年賀状を見ている隆子さん。


      


なるほど、秀吉のことも心配で、
隆子さんはわざわざ関西から柴又へ来たんだね。




隆子さん「
今ごろどこにいるのかなあ…父さん伊勢の二見浦におります(^^;)

博もさくらも驚く。


隆子さん「
あ、フフ、いけない、寅さんやった。
    私、いっつも『父さん』って呼んでたものだから、フフフ


さくら「
じゃあお兄ちゃんが『母さん』って呼んでた人は…

隆子さん「
私なんです…


       


さくら「
‥!どうして?だよねえ(^^;)

隆子さん「
私は坊やのお父さんだと思って
    『父さん』って呼んでたんですよ。
    そしたらねえ、



さくら「
ええ

隆子さん「
寅さんたら、
   私のこと母さんだなんて、フフフ



       


博とさくら、ようやく事の真相がわかって大笑い。


       


タコ社長が入って来て

社長「
お美しい方ですね…」と、ワケがわからないこといきなり言っている始末。

おばちゃん、隆子さんに社長を紹介、

おばちゃん「
この人ね、博さんの務めている工場の社長のタコ。
     あ、間違えちゃった


おばちゃん「
あれ?あんたなんて名前だっけ?」とボケる(^^;)

設定的には『桂梅太郎』
ただし、映画の中で呼ばれたのは『堤梅太郎』(第6作)



       


みんな大笑い。


社長「
ひどいねえ〜」と漫才している。


さくらのテーマが流れる中


おふでさんのナレーション。


おふでさんからの年賀状

文字が映る。


       



おふでさんの声「
あけましておめでとうございます。

      寅さんをはじめ、みなさんのお陰で
      秀吉と二人、幸せな正月を迎えることが出来ます。
      つらいことはいろいろありましたが、
      今、生きていてよかったと心から思っております。

      正月元旦  賢島にて

      ふで 秀吉



伊勢 二見浦


またもや、同じ場所の伊勢で正月の縁起物をバイしている寅。
毎回毎回本編で一度出てきた土地と同じエリアに
ラストでわざわざ寅が旅費使って舞い戻ってくるなんてありえないって。
もう全48作中ほとんどの作品で本編中のロケとラストのロケが重なっている。
もちろんロケの都合と予算の都合で同じ土地になるのは百も承知なのだが…(^^;)


   


私も大阪時代、小学校高学年の修学旅行で、伊勢志摩に行った。
これはその時の集合写真。夫婦岩が同じ構図(^^)

さて私はこの中のどれでしょう(^^)↓
え?わかるわけないってヾ(^^;)



    



夫婦岩の海を見ながら満男の問いかけを
今も自分に問うている寅だった。



    


一応、ポンシュウにも聞いてみる寅だったが
ポンシュウは皆目わからないようだった((^^;)



そして!なんと、超偶然、というか、お約束(^^;)というか…


おふでさんと秀吉、そして船長の3人で
お伊勢さんの初詣に歩いているのを見つける


すぐに岩陰に隠れる寅たち。


ポンシュウたちも一緒に隠れて、



     


ポンシュウ「
なんで隠れんだよ

寅「
オレたちのような人間がな、声をかけちゃ迷惑なんだ。
  それくらいのことわかんないのか、バカヤロウ


楽しそうに歩いていく3人。


     


秀吉がおもちゃと風船を持っている。

船長、風船を持ってあげて、手から離れそうになる『芸』をする。
この芸は絶品。



     


大笑いしているおふでさん。幸せそうな笑顔。

二見興玉神社と 龍宮社の間に架かる赤い契(ちぎり)橋を渡っていく3人。
【二見シーパラダイス】の水族館に行くのかな…


寅遠くで見守りながら

しみじみ…

寅「そうか…、船長が秀のてて親か、
 いいだろう、あいつだったらいいだろう


船長独身だったのか…(^^;)


     


バイに戻る寅。


寅「
さあ!ヤケのヤンパチ日焼けのナスビ、
 色が黒くて食いつきたいが、
 あたしゃ入れ歯で歯が立たないよ!
 どう!四百!四百円!どう!え!
 四谷赤坂麹町チャラチャラ流れるお茶の水、
 粋な姐ちゃん立ちションベン!さあ!
 白く咲いたがユリの花、四角四面は豆腐屋の娘、
 色は白いが水くさいときた!



      



伊勢の海が映って



      
















「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索



このページの上に戻る
最新のコラムはこちら








449

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 たぶん…一週間に一度くらいアップかな…






第18作「純情詩集」オープニングの駅舎判明!

 
上田鉄道別所線 中塩田駅



2010年7月30日 寅次郎な日々 その449

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



このシリーズのロケ地探しで、どう考えてもあそこだなあ‥って思うし、他の人もそうだねたぶんと、
言ってもいるんだが、どうも最後の決め手が見つからずに何年もお蔵入り…。っていう場所がたくさんあるが
その典型が今回紹介する信州 上田電鉄別所線の駅舎だ。

このシリーズで別所線は3駅も登場する。

ひとつは第18作「純情詩集」で、寅が無銭飲食で捕まり、さくらが半泣きで迎えに行き、
こけそうになっていた「別所温泉駅」



      





もうひとつは第35作「恋愛塾」のオープニングで谷よしのさんとの掛け合いがある「舞田駅」



      





しかし、実はもうひとつある。

同じく「純情詩集」で、オープニングで寅はいつものように夢から醒めるが、
それが別所線のある駅舎横の床屋なのである。

近所の家の妹がお兄ちゃんを「昼ごはんだよ」と呼んでいるあのシーンでだ↓



          



この映画のシーンで左端にギリギリ駅舎が見えるが↓、どうやら駅舎の玄関のほうではなく裏のほうだ。


      



どうもこの駅舎の形が「別所温泉駅」のスタイルに似ている感じがするのである。
「別所温泉駅」は、一番上の画像でも分かるように
屋根が腰折れになったきれいな「マンサード屋根」のスタイルでなかなかおしゃれな感じだ。



そもそも、この別所線は電車も「丸窓」を採用した「モハ5250 丸窓電車」で、なかなかおしゃれなのだ。
この電鉄の昔からのコンセプトは私のツボ。

丸窓はさくらが乗った時に映っていた。



          





で、話は戻って、第18作のオープニングのこの駅舎も
なんか別所温泉駅舎同様「マンサード屋根」っぽいって前々から思っていた。
別所線の駅舎で当初マンサード屋根を採用したのは確か別所温泉駅と中塩田駅だけ。

中塩田駅のマンサード屋根の写真はいくつもあるが全て表側からのカッコいい写真ばかり。
そりゃそうだ、普通は駅舎の表の方が当然カッコいいのだから(^^;)
駅舎の表側は別所温泉駅舎と似ている。同じ頃にきっと建てたのだろう。


私は実は10年ほど前にこのあたりを一泊旅行で旅している。無言館と信濃デッサン館の2つの美術館が
旅のメインだったのだが、ついでに寅が旅をした場所をぐるっと別所温泉から塩田平そして前山寺と巡ってみた。

しかし、この「中塩田駅」のことは頭をよぎらなかったのだ。残念…。


とにかく映画では上の写真の通り駅舎の裏がスクリーン左隅に映っている。
だから裏側からの写真があれば第18作OPのあの床屋さんの空き地向こうに映っているのが
「中塩田駅舎」の裏手(別所温泉方向側)だとはっきり分かるのに…。
2005年当時インターネットで探しても本で探してもどこにも駅舎の裏手は載っていなかった。

と、思っていたのだが…、


昨日、ご家族でマニアックな冥府魔道のロケ地巡りをされている「ちびとらさん」との会話で
この別所線の話題が出たことをきっかけにもう一度頑張っていろいろネットで探してみた。

なんと、数年のうちにいろんなサイトや撮影写真が誕生していたようで、
あっさり駅舎の裏手画像も見つかった(((^^)ゞ
見つかるときは見つかるんだね〜〜。

で、ちょっと拝借して…。すみませんm(__)m


やはり写真で見る中塩田駅舎の裏の構造は
第18作のあの駅舎の裏と一緒だった!




          壁から突き出たひさしの下のトタンや灰色の物入れもまだ健在。↓

      



         映画のアップ↓

      




        その後...月日は流れ、ひさしの下のトタンは取り壊され、蔦が絡んできた頃。

       





          この床屋さん、看板は「フジタ」と読める。今はもうないのかもしれない↓
                                     
        






ちなみに中塩田駅舎の表側は↓のようになっている。
別所温泉駅と同じくかっこいい。大正10年の建築。
2つの駅舎はおそらく時期に建られたと思われる。
2つともマンサード屋根の様式だ。



           





        中塩田駅舎↓

       




        別所温泉駅舎↓

       




で、現在は別所温泉駅舎同様、ついに中塩田駅舎補修&化粧直しされて綺麗になっている↓

しかし、本音は補修される前にあの風雪にさらされた駅舎をスケッチしたかった!!
ああ…無理だあ〜、そこまでの往復交通費が無かった……ガクッ 〇| ̄|_

補修に対していろいろ思うところはあるがあのまま放置され、どんどん崩れていくよりずっとよかった。



            






おまけ(^^)↓

ちなみに別所線の中で近年新しく建てた駅舎もいくつかあるが、
上日原駅(うえだはらえき)はマンサード屋根の様式を小作りに可愛く再現している(^^)

     




ダイジェスト版もたまには進めないといけないので次回のコラムは
第39作「寅次郎物語」本編の超簡単ダイジェスト版をアップします。
8月8日前後になると思います。





「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索


このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







448

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー






マイケルが見下ろす江戸川、そして去りし夢

第24作「寅次郎春の夢」


2010年7月21日 寅次郎な日々 その448

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


ようやく第24作「寅次郎春の夢」の本編完全版完結編作業が終わった。
この数カ月はいろいろ忙しくて大変だったが、なんとか終わってほっとしている。
予定より3ヶ月も遅れてしまった。


もう誰も待っていないとは思いますが、明日あたりにアップします。


ところで、この作品のラストで、失恋したマイケルがJAL機に搭乗し、アメリカへ帰って行くが
その途中、なんと眼下に江戸川の流れが見えるのだ。

航路的にはあり得ないが、映画的にはこれでよし。

あの窓から見下ろした表情から万感の想いが溢れていた。



大の寅さんファンである浜松のKさんが詠まれた歌を思い出す。


『蝶々夫人は「春の夢」  見下ろす江戸川、去りし夢。』




で、今回、あのマイケルが見た眼下の風景は
実際はどのあたりなのかをちょっと確かめてみた。



まず状況はこうである。↓




アメリカ行きのJAL 機内



マイケルを乗せたアメリカ行きのJALの機体が江戸川上空を飛んでいく。


機内誌を配っているスチュワーデスさん。



マイケル「あ、ちょっと

スチュワーデス「
はい

マイケル「
あの下に見える川はなんですか?」英語



        



スチュワーデス『たぶん…江戸川だと思います』と答える。

マイケル「エドガワ…、

スチュワーデス「はい

マイケル「
エドガワ…と懐かしそうに窓を眺めている。


        



        


当時の助監督さんによると
実際の江戸川の俯瞰撮影は小さなセスナ機で行われ、
なかなかスリリングで結構冷や汗ものだったそうだ。

成田からアメリカへゆく場合、
わざわざ江戸川上空を回ってから太平洋へ飛び立つ意味があるわけない。
いくら飛行機とはいえ、かなりの大回りになる。ま、映画ですから(^^;)




蝶々夫人のある晴れた日が静かに流れる。



ちょうどその頃、
マイケルの眼下に見えるその江戸川土手には
さくらが博と満男と一緒にいたのだった。


何も事情を知らないでグローブをはめながら
ゴロゴロ転げまわって土手を遊ぶ博と満男。




         
                  


さくらは、草むらに座り、
遠く飛び去っていく飛行機を眺めながら、
涼やかな表情でマイケルとの思い出を懐かしむのだった。



          



         




第一作以降、さくらを母として妻としてのみ表現してきた山田監督が
たった一度だけ一人の女性としての役割をさせたせつない作品だといえる。

そういうこともあって、私は、この第24作、江戸川土手に座り
空を見上げているさくらの表情と、窓から江戸川を見て思い出にふけるマイケルの表情が
共々大好きなのだ。




        





で、本日のコラムの本題。



映画のこのシーンを航空写真を参考に調べてみると
超偶然に江戸川と柴又付近が映っていた。
マイケルって凄いラッキー。普通ありえない ゞ(^^;)


             マイケルが眺めていた風景(映画のシーン)

       





全く同じ位置をグーグルアースで再現し、
近寄ってみよう。
Aマークが柴又駅

      






近づいてみる。
Aマークから左が帝釈天参道。そして題経寺。


       




低空飛行でもっと近づいてみよう。
参道がしっかり見えてくる。
高木屋、川千家の赤屋根、亀家などの屋根が見える。左に大きく題経寺。
つまりマイケルの窓から見た視野に柴又の町が全て入っていたのだ。



       





マイケル視線のまま、ちょっと江戸川土手の方を見てみると、二本の金町給水塔が見える。
とんがり帽子の方の土手
(赤丸)でさくらは飛行機を見上げていた。


       





つまりマイケルの窓からの視界にさくら(↓赤丸)もなんと入っていたのだ!!

     




よかったねマイケル。

君の視野の中にさくらはいたよ。

そしてさくらも君の飛行機を見ていた。


Good luck Michael. 
            




         










「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索


このページの上に戻る
最新のコラムはこちら






447

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー






「春の夢」ラストの天神社のこと

第24作「寅次郎春の夢」


2010年7月11日 寅次郎な日々 その447

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


数日前から富山で別の展覧会を開いている。

あー、それゆえ、またしても第24作「春の夢」の本編完結編が停滞。
パソコンが長くいじれない。

それでも、なんとかやっとこさラストまで来ているのだが、ここで解決できない疑問が沸き起こった。


失恋の後、いつものようにラスト、寅は正月にバイをする。
そこへ初代ポンシュウ(小島三児さん)が合流。
奥さんに逃げられている父子を慰めようと思ったらなんと新しい奥さんがもういた、って言うオチ。

あのシーンは海の向こうに見える地形を考えると、
第16作「葛飾立志編」のラストの場所とほぼ同じ、
静岡県沼津市西浦足保(あしぼ)だ。



「終」の文字が出るシーン。
遠く連絡船が見える伊豆の海 鷲頭山の勇姿を背景に江浦湾が映っている。
この見え方は確実に西浦足保の海。


     




グーグルアース↓で映画と同じ風景の見え方を確認。西浦足保地区だと断定。


     





寅たちのバイはちょうどすぐ前の神社の初詣をねらってのものだったが、その神社の名前が
わからないのである。



それと神社の写真画像が最後まで見つからない。

場所が分かっているのに名前がわからない…。

こういうことは稀にある。


赤丸で囲んだエリア↓が西浦足保地区の神社の長い階段と本殿
        

          





↓の航空写真で俯瞰してみた。青で印をつけた部分が寅がバイをしていた場所。
赤丸が初詣で賑わう西浦足保(あしぼ)海辺の神社。


          




        
寅が座る斜め前に神社の鳥居があり、長い階段がある。↓



    
    




神社の鳥居の方から見た寅の位置。↓


  
  



のぼり旗に神社の名前が書かれているがイマイチ読み切れない。



まあ、実はそのまま「ある神社」ということにしてもいいのだが、

どうも後味が悪い。

さんざんいろいろな地図でも探し、ネットでも探したが、そんなに小さな神社でもないのに
なぜか名前が出ていないのだ。


その時神社のすぐ近くに「足保公民館」があることに気づいた。

サイトで調べると電話番号が載っている。

恥ずかしながら、すぐそばの神社の名前だから教えてくれるのではないだろうかと
思い、清水の舞台から飛び降りる気持ちで西浦足保公民館に電話をかけてみた。

ところが何度かけても誰も出ないのである。

後に分かったことだが、ここの公民館は普段は無人で、会合等がある時だけ開けるのだそうだ(TT)


それで、もう乗りかかった船なので、恥でも何でもかいてやる…、と割り切り、ちょっと離れた場所にある
西浦の交番に電話をかけてみた。道を聞く人がいるくらいだから、名前を教えてくれるだろうと思ったのだ。

さすがに交番だけあってすぐに電話に出られた。神社名を知りたいことと、その知りたい理由を伝えたのだが、
なんとあの神社のことをご存知でない方だった。ああ。。。(TT)
4キロ以上離れているし、無人ぽい神社だし、わからないのかもしれない…。
向こうの方も申し訳なさそうに謝っておられた。

そのかわり、そういうことだったら西浦の「地区センター」に問い合わせることを巡査さんは勧めてくれた。
電話番号を聞き、今度こそはと、「地区センター」にかけて同じように恥ずかしながら事情を説明し、
尋ねてみたら、さすがにその神社があることはご存知だったが、
そこのスタッフさん全員が神社の名前はわからないということだった(TT)
地区センターから5キロほど離れているので超地元の人しかわからないのかもしれない。

それでも、「地区センター」のスタッフさんは足保のあのあたりに自分の知り合いがいるから
電話で聞いてみてあげると言って、わざわざ神社と同じ足保地区に住むご友人に電話してくださったのだ。

そして、ようやく神社の名前がわかった!

『天』という一文字の神社で『天神社(てんじんじゃ)』というらしい

丁寧にお礼を言って電話を切らせていただいた。


それと同時に、ネットで調べていた時に『神社庁』という組織の存在も知った。
で、恥じかきついでに、『静岡県神社庁』にダメ押しで電話で問い合せてみたところ、
沼津市西浦足保地区にはひとつだけ神社があり、
住所は『西浦足保4-2』名前は「天神社」だそうだ。
いよいよ安心して、お礼を言って電話を置いた。


これで確実。
「天神社」 西浦足保4-2


そして、なんとなんと静岡の神社庁が持っているホームページを地道に細かく見ていくと、
一覧表の中にありました!
ちゃんと西浦足保地区に「天神社」の文字が!あっちゃ〜〜〜(^^;)ゞ

電話で皆さんにご迷惑をおかけしてしまったことを深く反省するとともに、いつの日か必ずこの
「天神社」を訪問しようと心に誓ったのだった。

電話に出ていただいたみなさん、ご迷惑をおかけしました。ありがとうございました。


ちなみに、静岡県には「天神社」と呼ばれる神社は結構たくさんあってきちんと数えてはいないが
7〜8箇所存在していた。

神社の「写真」のほうはネット上では最後まで見つからずだった。これも実によくあること。



なにはともあれ、
24作「春の夢」の本編完全版完結編は今週末か来週初めにはなんとか今度こそアップしたい。
(もう二ヶ月以上こればっか…^^;)







「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索


このページの上に戻る
最新のコラムはこちら









446

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー






ロケ地発見!岐阜県瑞浪市を走る黄色いペプシのトラック!

第9作「柴又慕情」ラスト


2010年7月1日 寅次郎な日々 その446

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。

現在展覧会中なのでなかなか第24作「春の夢」の本編完結編が終われない。
あと少しのところまで来ているのだが、なかなかパソコンの前に座れないのだ。
あと一週間ほどお待ちください。(そんなんことわらんでも、誰も待ってないって… ゞ(〜〜;))


ところで。。。

10日ほど前、久しぶりに岐阜の友人からメールがあった。
彼の名は加納さんと言ってバリ島旅行の常連さんだ。彼と知り合ったのもバリ島ウブド。
あれはまだ20世紀末の頃だ。

あの頃、…確か1997年頃だったか、私はパソコンをまだ使い切れていなかった。
教師時代は全ての試験をパソコンを使って書いていたが、それはパソコンをワープロ代わりに
使っていただけで、決してインターネットを使えていたわけではなかった。

そして20世紀末もうそろそろHPを立ち上げたいなと思っていた。
そこでバリでふとしたことから知り合った加納さんにパソコンの選び方及びインターネットの仕方を
いろいろ教えてもらったのだ。
息子は当時まだ小学校に入ったばかりで、インターネットのことは私同様まだまだ未知の世界だったのだ。
次の年にWindows98が出るということで、一生懸命その仕組みと使用時の注意点を加納さんは教えてくれたのだった。

そして偶然にも彼もまた「男はつらいよ」の大ファンだった。

そして彼のお父さんが亡くなったのは渥美清さんが亡くなった年だったという因縁もある。


そういう強い縁で、その後も日本での展覧会の初日に来てくださったり、バリで再会したり、深いお付き合いを
させていただいている。

初期のバリ日記にも何度か岐阜のKさんとして登場していただいている。



ここ数年お互いに忙しかったせいもあり、音信が途絶えがちになっていたが、上に書いたとおり
10日前にメールを下さった。

そこには驚くべきことが書かれてあったのだ。

彼は岐阜県瑞浪(みずなみ)市土岐町にずっと住んでいるのだが、先日のテレビ放送で「第9作柴又慕情」を観た時、
あのラストシーンの風景がどうも見覚えがあると思い、ビデオで確かめられたところ、
なんと!自分の近所の橋だったああ!!…ということらしい。


こんなことがあるんだな…、と今更ながらにメールを読んだ私も驚いたわけだ。



柴又慕情のラストといえば、ご存知、暑い中、背広を脱いだ寅が田舎の木造橋を渡り、


     




川原で野○ソをしていた登と再会し(^^;)、

     




ペプシコーラのトラックに乗って走っていくあのシーンだ。

     




半信半疑で驚きのメールを返信すると、今度は直接岐阜から電話がかかってきて、
なんとあのペプシコーラのトラックに乗って寅と登が去っていったラストの道は、彼がいつも車で通る近所の道だそうだ!
あの川は瑞浪市を流れている美しい土岐川。その味わい深い木の橋は数年前の洪水で壊れてしまい、
少し下流に普通の橋が作り直されたそうだ。


恥ずかしい話だが、私はずっとあのラストの場所を、適当に静岡か山梨か福井かだと思っていた。
もちろんどの本にもどのサイトにもあの場所は書いていない。検索しても何も出てこない。
もう残るは、最後の手、松竹の当時のロケハンの方に恥を偲んで聞くしかなかったのだ。

でも、よくよく考えたら歌子ちゃんの新居があるのが『
愛知県春日井市高蔵寺』だということは
ラストの手紙の裏の住所で前々から分かっていた。寅は映画のラストで歌子ちゃんを訪ねていったが結局は会えなかった。
あのあと、ふらふらっと、多治見、土岐、そして瑞浪と焼き物の里を放浪していたのだろう。
ちなみに加納さんも若ころは焼き物(美濃焼)を長い間やっておられたのだ。

歌子ちゃんの手紙の住所「春日市高蔵寺」は、偶然にも加納さんのお母さんの妹さんがの住んでいる町だ。
ここにも加納さんは「寅さん」との縁を感じられている。



      



で、さっそく私は、長年のよしみで、厚かましくも彼に現地に行って写真を撮ってくれるように頼んだ。

彼はもちろん快く引き受けてくれて、さっそく翌日の時間が空いた時に、車で5〜7分ほどの
現場まで彼のパートナーの「ぽめさん」と一緒に調査をしてくださったのだ。

まず現場での聞き取り。…とはいえ、ご近所なので現場付近には当然何人か知り合いの人がいるらしく
みなさん、この橋のところで「寅さんロケ」が行われたことをしっかり覚えていらっしゃって「証人」になって
あげると加納さんに言ってくれたりしたそうだ。こういう時は地域共同体というのはありがたい(^^)




この、元あった橋の袂の住所は
【岐阜県瑞浪市土岐町3006-3】
(一般的には土岐町下沢地区)



加納さんが写真を撮っている間、私は地図や航空写真で彼が教えてくれた住所をさぐり、
元あった橋の目安をつけておいた。
赤い丸が橋のあった土岐町下沢地区

      

      



地図をもう少しアップにしてみる。
赤色の線が、今はなくなってしまった木造橋の場所。
青色の点は寅と登が北から来たペプシの車を止めた場所。↓
一番下(南)の白色の橋は、元の位置から下流100メートルに新しく架けられた橋。



      





航空写真の赤で四角く囲ったところが数年前まで橋のたもとがあった場所。
斜めに走っているのが中央本線の線路。




      




もうちょっとアップして、↓のオレンジ色の二本線が元橋が架かっていた場所だ。写真の下方面が下流


      








    




上の映画キャプチャー画像を拡大してみる↓


     




そうこうしているうちに、翌日加納さんが現場で撮った画像を送ってきてくださった。↓


下の写真は、加納さんが現場調査の一回目に撮ってくれた「高羽アングル」。
土壁の小屋がコンクリの車庫になったが、手前の家の母屋は当時の面影のまま。
ちょうど道が曲がっているカーブミラーのあたりに橋が架かっていた。
現在の新しい橋はこの下流100メートルに架かっている。



     






あの土壁の小屋は、なかなか趣があった。↓                     映画と同じアングルで撮ってもらった。
                                                土壁の小屋は現在は車庫になっている。
                                                橋はカーブミラーのあたりに架かっていた。
 


       





     完全 【三菱】 飼料 石田水車  TEL 3○45  の看板

    





加納さんは、この元小屋があった土地の持ち主さんにも画像を見せたところ、確かに昔はこの小屋を
使っていたことを確認された。加納さんはここの共同体の一員なので事は早く進むのだ。


そしていろいろ写真を撮ってきていただいたのだが、最も引いたラストの写真が高羽アングルとはちょっとずれるものだった。
人の好意を無にしてはいけないと自制しつつも、押えきれない「業」が湧いてきて、加納さんに無理を言って、
再度現場に行ってもらい、高羽アングルを撮ってきて欲しいとお願いした。(鬼ですーー;)

加納さんは私のマニアックな業に笑いながら、またもや映画と同じアングル撮影を快く引き受けてくださった。

それが↓の写真たちである。


     



加納さんに、再度現場に行ってもらって、ちょっと高台に登っていただいて引いたショットを撮ってもらった写真。↓
あのラストシーンが、この風景の向こうに蘇る。(元の位置より100メートルほど下流に新しく架けられた水色の橋が見える)


      





元の橋の位置より100メートルほど下流に新しく架けられた橋↓


      




高台と同時に川と同じ高さからも撮ってもらった。
こちらのほうがラストシーンの高羽アングルの高さにやや近いのかもしれない↓


数年前までここに橋がかかっていた。

     
      




加納さんは、映画と同じにするため、家の裏手を汽車が通るまで粘ろうとしてくれたが、
そういう時に限ってなかなか通ってくれなかったそうだ。


     




そして最後にちょっとサービスとして…


元の橋がもし今も健在で、寅が現在この橋を渡ったらこういうふうに見えるはず↓
という想像図を息子に頼んでちょろっと描き足してもらって画像の中にハメ込んでみた。



     

             

      寅が映画同様、背広を脱いでダボシャッツ姿で歩いている。

      







    同じく、もうひとつの高台からの写真にも息子が写真にイラストを挿入してくれた。
    もちろん新しい下流の橋は消してある(^^)↓

    2010年、平成22年6月末、岐阜県瑞浪市土岐町下沢地区の古い木造橋を渡る寅。そして野○ソをする登の図↓



     


               

          寅が渡る橋の向こうに登の姿(^^;)

      




第9作のラスト付近、

失恋した寅は江戸川土手でさくらにこう聞かれる

さくら「…やっぱり寂しいの?」

寅「なんで?どうしてオレが寂しいのよ…」

さくら「じゃぁ…、どうして旅に出ちゃうの?」

寅、ちょっと空の方を見て指を差す。

寅「ほら、見な、あんな雲になりてえんだよ」

さくらは手をかざして寅の指さした空を見るのだった。

その直後の歌子ちゃんの手紙と寅のこのラスト。

そういう意味で、この第9作「柴又慕情」のラストは私にとって
寅の「旅の姿」を再認識するという特別な意味を持っていたのだった。

感慨は深い。




加納さん、ぽめさん、2度の取材本当にありがとうございました。

お二人の未来に幸多からんことをお祈りいたします。


ちなみに加納さんは7月1日今朝、ぽめさんとお二人でバリ島に旅立たれました。
私とはすれ違いだったわけです。うーん、残念…。










「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索




このページの上に戻る
最新のコラムはこちら








445

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー





すみれちゃんの高校と満男の高校は違う学校だった!


2010年6月28日 寅次郎な日々 その445

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。

私が敬愛する寅さんファンの第一人者寅福さんが、多忙なお仕事の中、
今回ご自身のサイト
「飛耳長目録」のコラムで、すみれちゃんの高校とその時出てくる川を
発見されたことを書かれている。
近々、すみれちゃんがバイトしていた「セブンイレブン」の現地調査にも行かれるということだ。


え、すみれちゃんって誰ですかって?
第26作「かもめ歌」のあの可憐でチャーミングな、北海道、奥尻から来た『水島すみれちゃん』です(^^)

彼女は自分の奮闘努力ととらやの人たちの手助けのかいあって、「葛飾高校」の定時制に合格し、通い始める。
同じクラスには当時まだ無名の田中美佐子さんもいた。うそのような本当の話。


で、私などは、単純に葛飾区には当然「葛飾高校」があってそこに定時制もあるんだろうな。って
勝手に信じて疑わなかったのだが、さすが、寅福さんは検証を怠らない。
その結果、今回きちんと本当のロケ地を探されたのだ。

なんと、あの第26作の『葛飾高校定時制』は葛飾区立石の「
南葛飾高校」がロケ地だったのだ。
みんなは親しみを込めて「なんかつ」と呼ぶ。

キャプテン翼の「南葛(なんかつ)」はあのあたりの小学校、中学、高校をモデルにしているようだ。
そして作者の高橋陽一さんはこの「南葛飾高校(なんかつ)」の出身!


そして私の学生時代から教師時代に多大な影響を受けた教育者林竹二先生が奇跡の授業を行ったのも
この南葛飾高校定時制だったのだ。つまり、あのすみれちゃんたちが定時制で受けた国語の授業は
林竹二さんの国語の授業をイメージしたわけだ。


         





         
すみれちゃんの通うあの定時制高校は「葛飾高校」ではなかった!

          



山田監督は、定時制が設置されている高校で、かつ葛飾区ということで「南葛飾高校」を
選ばれたのだろう。

すみれちゃんが通う定時制高校の現在のロケ地写真及び川の位置は
寅福さんのサイト「飛耳長目録」をどうぞ御覧ください。








■さて、ここからは、実は…もうひとつの、個人的な疑問を書いてみる。↓




そもそも「葛飾高校」っていうのが現在は存在していないことがいろいろ調べてみるとわかった。
思い込みというのはなかなか解けないものだ。
私は昨日まで「葛飾高校」は存在すると思っていたのだ。


…ということは…。


満男と泉ちゃんが通っていたあの『葛飾高校』はいったいどこなんだ??

第39作「寅次郎物語」を見る限りでは、
すみれちゃんの「南葛飾高校(なんかつ)」とは正門や校舎のあり方がまったく違う。
「なんかつ」より全体になんでも新しいというかややモダン。
↓の正門にあるプレートの字は読めるようで読み切れない。




         
    正門の壁と校舎デザインが当時としてはややモダン。
      
      




とにかく、この第39作のロケはすみれちゃんとは別の高校だということはわかった。

そして第42作でも満男と泉ちゃんの高校の校舎やグラウンドが回想シーンとして出てくる。
39作と42作が同じ高校かどうか…。

そこで、いつもの切り札、「ストリートビュー」で葛飾区の2〜3の高校正門をぐるぐるまわってみた。


ありましたありました!

満男の高校は、
葛飾区亀有にある「葛飾野高校」だった。
正門に特徴があるのでわかった。

なんと「葛飾野高校」はすみれちゃんの「南葛飾高校(なんかつ)」のすぐ北。徒歩圏!

第39作では正門を出た後、さくらは満男と別れてお花茶屋駅から京成電鉄に乗り柴又へ帰ったのだろう。

     

     





     
    



山田監督の性格的には第42作「ぼくの伯父さん」でロケをした時も、同じ高校を使うはず。
そこでブラバンが行進しているあのグラウンドから見える3つの大きな目立つ建築を覚えて、
必殺ストリートビューで探してみる。



     




またまた、ありました。グラウンド裏から見た風景の中に総電線、白い電柱のようなポール。茶色い建物。

これで第39作と第42作は同じロケ地(葛飾野高校正門、校舎、グラウンド)だったことがわかった!


    




     



     





そしてなんとなんと「葛飾野高校」はほんの一時期旧制の「葛飾中学」から
名前が移行した
昭和24年には「葛飾高校」になったようだ。
その後名前が変わり、今に至っている。

つまり満男の通っていた高校は
旧「葛飾高校」でもあったわけだ。

地元では「
かつこう」もしくは「かつの」って呼ばれているようだ。

と、いうことで、位置的にも寅福さんが見つけられた「なんかつ」のすぐそばに
満男の高校「かつこう」はあったのだ。近い!



あ、もちろん本編の物語的にはすみれちゃんの高校と満男や泉ちゃんの高校は
同じ「葛飾高校」であることには違いない。



      









「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索



このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







444

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー





兄と弟 二十億光年の孤独  イカロス兄弟の別離


2010年6月20日 寅次郎な日々 その444

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


二十億光年の孤独


人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがつたりする

火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或はネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ

万有引力とは
ひき合う孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う

宇宙はどんどん膨んでゆく
それ故みんなは不安である

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした



谷川俊太郎 「二十億光年の孤独」(昭和27)


これは少年期から私の心を掴んで離さない
谷川俊太郎さんの「二十億光年の孤独」というなんとも美しい詩だ。
真実の光が輝いている。


人はみな孤独で、永遠の旅人だ。
どんなに一緒にいたくてもそれぞれの人生の重さや業がそれを許してくれない。

映画「男はつらいよ」の中の、さくらと寅も彼らの人生の中で一緒に暮らした年月は驚くほど少ないのである。
あんなに絆が深い兄と妹だが、その生涯のほとんどは離れ離れに暮らしていくのだ。



      



特に寅の晩年は、いつどこで行き倒れになってもおかしくない生きざまなので
さくらはいつだってこれが最後かもしれないと心の隅でずっと怯えてもいる。



      
      



寅も強がって入るが、彼なりの覚悟、野垂れ死にの運命を背負って生きているのは、あの背中でわかる。

そのようなどうしても同一化出来ない人と人との永遠の孤独があの詩には入っている。





先日、『映像』関係を勉強している息子が、
なかなか心がせつなくなるかわいいアニメーション動画を紹介してくれた。

このアニメーションは、実は日本の宇宙開発を推進しているJAXAが作ったアニメーションなのだが
なんとも美しい兄弟愛と、その悲しい運命を描いているのだ(TT)
普通にこのアニメを見れば、ただたんに彼らのミッションの遂行を淡々と描いているに過ぎないし、
その描き方も実にさりげないのだが、そのさりげなさの中に『永遠の孤独』を感じるのはどうしてだろうか。

兄弟と言っても実は兄も弟ももちろんただの機械なのだが(^^;)

あの音無しのアニメーションを見ていたらせつなくなり、ふと上に書いた谷川さんの詩を思い出したのだ。


物語は、先月5月21日にH-IIAロケット17号機で金星探査機「あかつき」と共に打ち上げられた
小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」(お兄ちゃん)と
小さな分離小型カメラ衛星DCAM2(弟くん)の話。

分離カメラ(DCAM2)である弟くんは、直径・高さともにわずか約6センチの円柱形状で、
バネにより本体から放出され、撮影した画像を無線で本体に送る。

しかし、悲しいことにこの弟くんは一度イカロス兄さんから放出されると、
二度と兄さんの本体には戻らないで、どんどん離れながらもイカロス兄さんの姿を取り続け、
15分後には弟くんの小さな電池が切れてしまい、
イカロス兄さんとは離れ離れになり、永久の眠りにつき、太陽の周りを回り続けるのだ。


ところで、「イカロス」とは…。簡単に言うと、
日本のJAXAが開発した太陽光を帆に受けて航行する世界初の【
宇宙ヨット】「イカロス」のこと。

それが上にも書いた通り、先月打ち上げられたのだが、
宇宙空間で一辺約14メートルの巨大な帆を広げている様子を
小型カメラ衛星DCAM2(弟くん)が撮影した写真をこのたびJAXAは私たちに公開した。

現在イカロスは地球から約1000万キロ・メートル離れた宇宙を金星に向かって飛んでいる。

この計画は、宇宙空間で帆を広げ、太陽の光を受けて推進力を得ること、
さらに、帆の一部に貼り付けた薄膜太陽電池で発電できること

世界で初めて実証する壮大な冒険ロマンなのだ。

イカロスの一辺14メートルの正方形の大きな帆は、
厚さはなんと髪の毛の太さの10分の1にあたる0.0075ミリ。超超超薄い。
表面にアルミが吹き付けられていて、鏡のように光を跳ね返す。
このときに受ける力を、ヨットが風を受けるように進んで行く。



弟くん(DCAM2)が撮ったお兄ちゃん(イカロス)が帆を広げることに成功した写真↓



       






それではイカロス兄さんとDCAM2弟くんの悲しい今生の別れを御覧下さい↓(無音)


      








兄さんの帆が開き、開き終わった後弟くんが飛び立ち、
兄さんを撮影している様子をスーパーCGでしっっかり見たい方はこちらを御覧下さい↓
CGなかなかのハイレベルです。


      






ニュース形式で手短にわかりやすく知りたい方はこの藤井さんが解説をする『NHKニュース』を御覧下さい↓


      




      







「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索


このページの上に戻る
最新のコラムはこちら








443

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー





さくらとお千代さんが演じる蝶々夫人


2010年6月14日 寅次郎な日々 その443

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


いやあ、何かと予期せぬ仕事が舞い込んだりして、ここんところなかなか時間が取れない。
第24作「春の夢」本編完全版完結編を来週中になんとか終わらせようと思っているのだが
どうなりますやら。無理かな…。


この前も空き時間をねらって作業をしていたら、ちょうど倍賞さんが、歌劇「蝶々夫人」からの「ある晴れた日に」を
歌うあのマイケルの妄想シーンが興味深くて、ついついプッチーニの他の歌にまで手を出して聴いてしまっていた。
私はどうも興味が湧き出したら脱線が多くてしばしば本流に戻るまでに多くの時間を浪費してしまいがちだ。
また、倍賞さんの歌声があまりにも役者の域を遥かに出ていたので、ついつい、
彼女の歌声を他の作品でもまたもや聴いてしまっていた。


ではここでクイズです。
このシリーズで最も美しいと言われるマドンナを演じられたある女優さんも、
若き日に「蝶々夫人」を演じられているのである。
それがこの人。当時まだ宝塚ジェンヌ!↓


      


この麗人の話は後にして、


まずは東のSKD出身である倍賞千恵子さんの「蝶々夫人」から(^^)


この「男はつらいよ」では倍賞さんはさくらという地味な主婦役なので、山田監督は歌を歌わせることは
めったに無いのだが、それでも何作品かでは彼女は歌を歌っているのである。


最も長く最も目立っていたのは、この第24作「春の夢」でのオペラ『蝶々夫人』の中の「ある晴れた日に」だ。
あの声は倍賞さんではなく本職のオペラ歌手に歌わせていると思っていた人がかなりいたそうだ。
それほどまでに倍賞さんの声は才能があり、そして鍛えられている。


           



物語の中盤、
とらやの人々によって元気が戻ってきたアメリカ人のマイケルは、もう一度関西でセールスを試みるが、やはりダメ。
もう絶望的にセールスが上手くいかないマイケルは、とぼとぼ京都市の西陣を歩いている。
そんな時、小さな芝居小屋の前で大空小百合ちゃんに呼び止められ、『マダムバタフライ(蝶々夫人)』を観ることに。



マイケルの中で蝶々夫人を演ずる小百合ちゃんの歌声がしだいにさくらに変わっていく…。

名曲「ある晴れた日に」を歌う小百合ちゃん。


食い入るように『蝶々夫人』を見ているマイケル。



                  
          


小百合「♪ある晴れた日、遠い海の彼方に煙が立ち、船がやがては見える…」

小百合「♪白い船が〜港に入り…」

途中からマイケルの頭の中で小百合ちゃんがさくらに変わり、
ピンカートンが自分になって行く幻覚を見始める。相当この恋の病は重症(TT)



さくらが朗々と『ある晴れた日に』を歌う。
第16作夢シーンとともに、
倍賞千恵子さんのすばらしい歌声を長時間聴ける数少ない場面。
彼女のこの歌声だけで「春の夢を観る価値アリ!



さくら「♪さもいなければぁ、うれーしさにぃ、
    死ぬかもしれーないー、



         


  
 やがてあの人は傍で呼ぶのよぉー、
   僕の可愛いー、愛しい花よとぉー、ちょうど昔そう呼んだ通りにぃー…。

   その通りだわぁー、きっとそうよぉー、


         


   心配はぁー、しなーいでー、

   信じてぇーいるーわー、本当よ― 




          


最大に盛り上がる音楽

坂を上がって来たピンカートン(マイケル)は蝶々夫人(さくら)を見つけ、

ピンカートンはステッキから花を出す手品を見せ、
蝶々は心を柔らかくし、

しっかり二人は抱き合うのだった。
幸せそうな二人。



         






『蝶々夫人』Madama Butterfly,

プッチーニによって作曲された2幕もののオペラ。
いわゆるプッチーニの「ご当地三部作」
(あとの2作は「西部の娘」、「トゥーランドット」)」の最初の作品である。
初演1904年(日露戦争の年)ミラノ.スカラ座。
この1904年の初演ではつまずいたが、その後改稿を繰り返し、1906年のパリ公演のために
用意された第6版により現在の様式になった。
椿姫.カルメン.と並んでこれを世界三大オペラの一つにあげる人も少なくない。
『あるはれた日に』と言えば20世紀のソプラノ歌手マリア・カラスが有名。






        オペラ『マダムバタフライ』より「ある晴れた日に」(ソプラノ歌手不明) 
       
この↓YouTube中で使われているアニメーションがなかなか面白いので紹介します。

       



覚えておられる方も多いと思うが、お馴染み世界女子フィギュアスケートシングルで
「マダムバタフライ」は安藤美姫さん、トゥーランドットは荒川静香さん、が採用している。



物語は、明治維新後の動乱期、
長崎を舞台に、没落藩士令嬢でプライドの高い蝶々とアメリカ海軍士官ピンカートンとの恋愛の悲劇を描く。
ピンカートンは一旦本国アメリカへ帰り、そこでアメリカ人女性と結婚してしまう。
その後、夫妻で蝶々の元へ挨拶に来るが、プライドの高い蝶々は自刃して生き絶えてしまう。

アリアについては、前半の愛の二重唱と言われるあたりや、「ある晴れた日に」、
そしてクライマックスの蝶々さんの死のアリア「誇りを持って死ぬ」〜「愛しい我が子」などが有名。


アメリカのジョン・ルーサー・ロングが原作。確かロングのお姉さんか誰かが、長崎に滞在していたことが
あったと聞いいている。その小説を読んで感動したデヴィッド・ベラスコの同名の戯曲がタネ本。

で、後にデヴィッド・ベラスコによる英語劇を観戦したプッチーニは同じく感激し、オペラに採用した。

この『ある晴れた日に』はこのオペラの中で最も有名な曲。
晴天を意味する「ピーカン」(ピンカートンの略)という言葉は、この曲のタイトルに由来すると言われる。

ちなみに「ある晴れた日に」の「晴れた」という語は、
原語のイタリア語には出てこない。
直訳では「ある日に」


創作時に実際にヒントになった人は、長崎のトーマス.グラバー夫人のツルなど
何人かいるようだが、当時の現地妻『洋妾(ラシャメン)』は意外にみんな
割り切っていたらしく、誰もあのような悲劇的な最後はとげていない。



               


そうそう、上の写真の美女の話。

1955年カルミネ・ガッローネ監督の日伊合作映画『蝶々夫人』で
あの後のお千代さん、当時まだ宝塚ジェンヌだった23歳の麗しの八千草薫さんが蝶々夫人を演じ、
日伊ともに大反響を呼んだのだ。

しかも八千草さんは、「蝶々夫人」のスコアを完璧に暗譜して演技に望んだようで、
自分で歌っているとしか思えない口の動きだったとか。
お付きの女中スズキ役を演じた本職のオペラ歌手、田中路子よりも口が合っていたらしい。

日本文化を正しく伝えるという崇高な使命感が東宝の制作動機なだけあって
日本人による文化的視点を強く入れることに成功しているという。
日本家屋のセットはすべて日本から運び込み、遠くローマのチネチッタの地で、
イタリアに遠征した東宝の多くの日本人スタッフの手により、組み立てられたそうだ。

ま、それでも「映画」という表現手段では本当はオペラのあの味はまず出せないとは思うけどね。
うーん…それとは別の意味で、可憐で凛とした八千草さんのマダムバタフライ見たかったー!



      





           




      




     
      




       八千草さん主演の映画 『蝶々夫人』ポスター

             





本家『オペラ』の有名な日本人としては大正から昭和初期にかけて活躍したソプラノ歌手の三浦環。
この蝶々夫人役を最も得意とし、その生涯において世界各地で数多く蝶々夫人役を演じた。
現在でも長崎のグラバー園にはその功績を称える三浦の像がある。

外国人では、マリア・カラスの『ある晴れた日に』などは有名すぎるほど有名。



         
    1930年代の三浦環の舞台

      
                  






おっとっと、
ちょっと脱線が長くなったが、実は今日の本題は『さくらの歌声』の方だ。




この他、『さくらの歌声』を聴けるシーンは実はあと3箇所存在する。



まず

■ 第8作「寅次郎恋歌」  かあさんの歌


にて、酔っ払って帰ってきた寅の無理難題を
聞き、「かあさんの歌」を歌うさくらの声

夜昔の仲間を連れてとらやに酔っ払って帰ってくる寅。
おいちゃんたちの止めるのも聞かずに
さくらに無理やり歌を歌えとせがむのだった。


寅「ほら、いい女だろ、これはね、
 ちゃんと女学校出てんだよ。
 な!おまえ女学校出たな!これね、歌も上手いんだよ、
 ちょっと、ちょと、一曲歌、歌やってみなよ」


仲間たち「よ!待ってました!」

おいちゃん「さくら、歌なんか歌うんじゃねえ、
       おめえは芸者じゃねえんだぞ」


寅「うるせえぞ!このクソジジイ!!黙ってろ!」

おいちゃん「つね!警察呼んで来い、警察!」

寅「うるせー!!チキショー!!」(怒ってテーブルのコップを下に落として割る)

さくら「お兄ちゃん」

寅「なんでい」

さくら「歌うわよ…」

寅「よし、歌え!」

仲間「都はるみか、水前寺かい、よお!」

さくら、しばらく沈黙の後

さくら「♪母さんがぁ〜…」

寅「♪カーラース、ほい!!、なぜ鳴くの、ほい…」童謡『ななつのこ』

(旋律が確かに似ている)


さくら「♪夜なべ〜をして、手袋〜編んでくれたぁ〜、
  木枯らし吹いちゃ冷たかろうて、
  せっせぇ〜と編んだだよ〜、
  ふるさぁ〜とのたよりがと〜ど〜く、囲炉裏の臭いが
  した〜……母さんの、アカギレ痛い、生味噌を…♪」


寅じっと下を向いて聴いている。

そして席を立って、トランクを持って店を出て行こうとする。
(仲間も消えるようにすぐに出て行く)

寅、店先で「さくら、すまなかったな。おいちゃんたちに謝ってくれよ…」

さくら「お兄ちゃん…」

ちょっと悲しい別れだった。




窪田 聡 作詞/作曲

かあさんが 夜なべをして
手袋あんでくれた
木枯らし吹いちゃ 冷たかろうて
せっせとあんだだよ
ふるさとの便りはとどく
いろりのにおいがした


かあさんは 麻糸つむぐ
一日つむぐ
おとうは土間で わら打ち仕事
お前もがんばれよ
ふるさとの冬はさみしい
せめてラジオ聞かせたい


かあさんの あかぎれ痛い
生みそをすりこむ
根雪もとけりゃ もうすぐ春だで
畑が待ってるよ
小川のせせらぎが聞こえる
なつかしさがしみとおる
なつかしさがしみとおる







■ 第12作「私の寅さん」  どんぐりころころ



その次にさくらの歌が聴けるのは第12作「私の寅さん」で江戸川土手を満男と
歩いている時につい口ずさむ童謡『どんぐりころころ』の歌。




江戸川土手

寝転んでいるりつ子さんの兄、文彦。

さくらと満男土手の上を買い物帰りに散歩

このシーンで、さくらが
「どんぐりころころ」の
歌の1番をなんと全部歌っているのだ!

さくら
♪どんぐりころころ 
     どんぶりこ
     お池にはまってさあ大変.
     どじょうが出てきて 
     こんにちは
     ぼっちゃん いっしょに 遊びま…
     おー寒い寒い!」


と満男を後ろから抱く

        



青木存義作詞・梁田貞作曲

どんぐりころころ どんぶりこ
お池にはまって さあ大変
どじょうが出て来て 今日は
ぼっちゃん一緒に 遊びましょう

どんぐりころころ よろこんで
しばらく一緒に 遊んだが
やっぱりお山が 恋しいと
泣いてはどじょうを 困らせた






そして


■ 第16作「葛飾立志篇」 さくらのバラード


行方不明の兄を探し遠くバージニアから西部の町をさまようさくら。
どこかに今もいる兄を想い、
せつせつと『さくらのバラード』の西部劇バージョンを歌うのだった。





酒場の中

歌と演奏が始まる



               



ギター ♪ジャーンジャ、ジャンジャン、
ジャーンジャ、ジャンジャン、ジャンジャ…ジャンジャン



カッコよく背中を向けてチェリー(さくら)登場!


振り返りながら歌い始める。


チェリー「♪テキサスに風が吹くぅ〜
   駅馬車も今日は休み
   兄の〜いない
   西部〜の町…




                


さくら「♪どこへ行ってしまったの〜
   今ごろ何してるの…
   いつも〜、みんな…
   待っているのよ…



みんなしんみり泣いてしまう。


                 



                



チェリー「♪そこは晴れているかしら
    それとも冷たい雨かしら…
    遠く一人旅に出た
    私の〜…おにいちゃーん…




カードに興じている紳士もガンマンたちも
みんな涙を流して聴き入っている。

寒いのか、倍賞さんの歌を歌う息が白い…




                



さくら「♪どこかの草原で〜…


ここでタコ社長の悪者たちの邪魔が入っていく。




さくらのバラード

山田洋次 作詞   山本直純 作曲

倍賞千恵子 歌


江戸川に雨が降る
渡し舟も今日は休み
兄のいない静かな町
どこに行ってしまったの
今頃何してるの
いつもみんな待っているのよ
そこは晴れているかしら
それとも冷たい雨かしら
遠くひとり旅に出た
私のお兄ちゃん

どこかの街角でで見かけた人はいませんか
ひとり旅の私のお兄ちゃん


さくらのセリフ
『いつもそうなのよ いつも
さくら、しあわせに暮らせよって

もう帰らないって
あの時言ったけど…』

そこは晴れているかしら
それとも冷たい雨かしら
遠くひとり旅に出た
私のお兄ちゃん


どこかのお祭りで見かけた人はいませんか
ひとり旅の私のお兄ちゃん




かあさんの歌 どんぐりころころさくらのバラードある晴れた日に
どれもこれも想い出深い。


渥美さんの歌声もいいが、倍賞さんの歌声は格別だ(^^)
いやあ、それはそれとして、八千草さんの「蝶々夫人」をやはり見てみたい。









「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索


のページの上に戻る
最新のコラムはこちら








442

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー






保存版 寅さん世界の柴又周辺マップ 柴又の住人たちの家


2010年6月4日 寅次郎な日々 その442

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。





    


注意:上の地図上、幸子ちゃんの食堂近くから題経寺までの黄色い道路は帝釈天参道ではなく、
    もっと大きな道(国道307号線)。間違いやすいので注意です。







ここ数日、せっかく柴又江戸川沿いロケの話題をしたので今回は【特別付録】をお付けしました↑
これで見ると分かるようにやはり山田監督は川のそばがお好きなようだ。
りつ子さんは江戸川ではないが中川のそば。

私も柴又に住めるなら、駅前や帝釈様の近くよりも江戸川土手沿いがいいなあ〜…、なんて思う。








それでは地図の北から順番に『ストリートビュー』で追いながら、
簡単な説明をしよう。

なお、それぞれの番地の数字は途中までしか書きませんのでご理解下さい





まずは一番北 【東金町】




【さくらの二番目の家】

葛飾区東金町6丁目 葛西神社裏交差点近く。



これは一番目の家が総武線の高架計画にひかかってしまったので
ロケ地を引っ越した結果、なんと北にある常磐線を越えてしまったのだ。
おまけに台所のあり方が見ての通り左右逆。
でも、大船セットでもきちんと台所は逆にしていたのは偉い。(あたりまえか^^;)



        



で、ここに落ち着くかと思いきや…、隣で建築工事が始まって、またもやロケ地探しの旅に(TT)
五十嵐啓司さんはじめロケハンの方々ご苦労様です。



ストリートビューで見てみると現在はこのようになっている↓
二番目のさくらの家は一応まだ健在。







          





        




博はこの横の道を、息子はバイク、親父は自転車か…。
とつぶやいてあの坂を登っていったっけなあ〜。


        







その近くにあるのが


【坪内散歩先生の家】

葛飾区東金町6丁目9 付近 (二番目のさくらの家と同じ6丁目)


ここは小寅さんと並ぶあのロケ探しの達人『寅福さん』が見つけられた場所。
意外に上に書いたさくらの二番目の家からすぐ。
さくらの家が葛西神社の裏側なら、散歩先生の家は葛西神社の表側。



第2作で寅がさくらと題経寺前で別れたあと、土手沿いに金町の方へ歩き、常磐線をくぐり、
葛西神社前を左折し、↓



       




現在は寅の歩いていた道はこうなっている。↓鉄橋の見え方は同じ。

まさか、このあと数カ月後にこの道にお葬式の車がずらっと並ぶとは夢にも思わなかった寅だった



       





同じ道に葬式の車が並び、おいちゃんや寅も乗る。


       





左下の方から子どもたちの英語による歌が聴こえてくるのに反応していた寅だった。


       





で、葛西神社前の左の道を下っていくとすぐに散歩先生の家の塀のドアがある。
つまり散歩先生の家は葛西神社の前なのだ。



       






で、現在はこのような家になっている。


葛西神社側から見た現在の散歩先生の家↓向こうに鉄橋が見える。
たぶん藤村医師がここで開業しているのかもしれない。
横の道が寅が下りていった坂。



       












【柳りつ子さんの家】

葛飾区新宿2丁目3 付近




今度は、寅が散歩先生の家に行くまでに渡った国道6号線をずっと西に、
つまり亀有の方角に歩いて40分ほど行くと柳りつ子さんの家がある。
まず、
中川に架かる中川大橋のたもとを右に曲がる。そしてしばらく歩いて右側に見えるのが柳邸だ。
これも
寅福さんが現地に足を運んで悪戦苦闘の末に最初に見つけられた場所だ。




          
寅たちの後ろに中川大橋が見える。

     






       このような門が今も残るのかなと期待していたのだが…

     





現在の柳邸赤い屋根の家がりつ子さんの家だった場所。
さすがに建て替えていた。残念。



    












【幸子ちゃんが住み込みで働く『ふるさと亭』】

葛飾区柴又7丁目3  付近


で、次は柴又に戻って、お馴染みふるさと亭、ローク、アイリスというとらや周辺地区。
これはみなさんもうご存知。まず駅を降りて、参道までの道に『かなん亭』がある。
『ゑびすやさん』の少し手前。
ここが幸子ちゃんの働く『ふるさと亭』秋田の叔父さんが持っている。


ここはいまさら言うまでもない。
柴又駅のすぐ近くなので映画とストーリートビューでドーンと見てもらおう。




     



現在の『かなん亭』はいろいろなものを売店方式でも売っている。
真向かいは相変わらず富士見屋米店。


     


注意:上の地図上、幸子ちゃんの食堂近くの黄色い道路は帝釈天参道ではなく、
    もっと大きな道(国道307号線)。間違いやすいので注意です。















【志村千代さんの美容院 アイリス】

葛飾区柴又7丁目6付近


そして参道をとらやのほうに進んでいくと、とらやを越えてすぐ斜め向かいのあたりに
お千代さんの経営する美容院『アイリス』があった。


シリーズ途中までなんとか存在したのだが今はまったく別の店になってしまっている。
映画でとらやのちょっとご近所に店があるって設定だったが、ほんとうは斜め向かい。すぐそこ。
あまりにも近いので遠いことにしていたみたい(^^;)



                                       寅の背中に立花屋さんの名前が見える。
             




第18作でとらやの前が映るが↓、もろ斜め向かいにアイリスがある。アイリスの真向かいは『立花屋』さん

        




今も立花屋さんは残っているのでその真向かいとなると今は漬物屋さんかな…。


      











【六波羅貴子さんの喫茶店ローク】

葛飾区柴又7丁目5 付近

そして、あの貴子さんのいるロークである。

これはもう有名。



なんせ第5作の頃にはもうあの位置に存在し、
そのあとも第31作までは確実に営業していた。





   第5作で開店間もないローク。寅の向こうですでに営業。

     




    第5作とテントのレタリング配置を変える。
    【R】をセンターに配置。
    第8作ではまだまだピカピカ。貴子さんが中にいる。

    





   第31作、これを最後にロークは無くなってしまう。

    




     現在は親戚の方がうなぎ屋さんをされている。

    


         






【さくらの潜水艦アパート】

葛飾区柴又4丁目6付近




今度はちょっと柴又駅に戻って、
線路沿いに高砂の方にやや南下。


線路沿いに歩いていくとさくらの潜水艦アパートがある。

第1作から第25作「寅次郎ハイビスカス」まで
住み続けたあのアパート。



寅があまりにも狭いので潜水艦みたいなアパートと名付けたのだ。

とは言っても実はこのアパートもなんども名前が変わっている。

おそらく設定としては引越していない。
初期の頃は設定がはっきりしないで右往左往するのはよくあること。
でも一応変化を書いておきましょう。



このアパートは名前を3度変えている。



最初の名前は第4作「新男はつらいよ」で登場する【
江戸川荘


       





2番目の名前は第5作「望郷篇」で登場する【コーポ江戸川


      




3番目は第20作「寅次郎頑張れ!」から登場する
こいわ荘


      



このアパートはやはり狭いし、大家さんがうるさいので
第9作「柴又慕情」で引っ越そうとするのだが、
そのことで寅と喧嘩したり、資金不足などがあったのか、
結局は第25作「寅次郎ハイビスカスの花」までこのアパートに住み続けた。

そして、おいちゃんの店を担保に入れて銀行から借りたり、
タコ社長に保証人になってもらったりして長期ローンを組み
ようやく、第26作「寅次郎かもめ歌」から2階建ての家に引っ越したのだ。


現在はこのような家になっている。

以前ロケ地巡りの大先輩
小寅さんがかなり詳細なレポートを書かれていた。

さくらのアパートの横に建っていた角のアパートは今でも健在。
さくらのアパート『こいわ荘』だった場所はその右横の白い家。




      




下の2枚↓を見て分かる通りさくらのアパートの隣角の建物は今でも建て替えずに健在↓


         



     
アパートから南、高砂方面に歩いて行く寅。
     
おいおい、そっちは柴又駅じゃないよ、逆だろ ゞ(^^;)                 
今はこういなっている↓  


      



それにしても、この潜水艦アパートに住んでいる長い年月、
さくらはこのアパートから自転車でとらやに向かうが、なぜか江戸川土手経由なのだ。
一体何が彼女をそんなに遠回りにさせているのか?これは永遠の謎である(((^^;)









【高井めぐみさんの英語塾】

葛飾区柴又6丁目34付近


そのあとずっと江戸川に戻ってさくらの一番目の一軒家の近くにめぐみさんの英語塾がある。
つまり圭子さんめぐみさん母娘が住む借家だ。


江戸川土手のあの大きな階段はかなり目立つのですぐわかる。
ここも、ロケ地巡りの大師匠である
小寅さんが最初に現地に行かれたと記憶している。




       




  で、現在は下↓のようになっている。めぐみさんの家はもう英語塾はしていないようだ。
  結婚して別の土地に住んでいるのだろう(^^;)




      



                                                少し当時の雰囲気を残している。


      
 









【さくらの一番目の家】

葛飾区柴又5丁目37〜38付近

【柳生綾さん雅子さんの家】も、このあたり。



そのめぐみさんの英語塾からちょっと送電線に近づくと、もうさくらの一軒目の家だ。


この
青いトタン屋根の一戸建住宅は、
第26作「寅次郎かもめ歌」から第40作「寅次郎サラダ記念日」まで、ずっと住み続けたのだった。
ほんとここには数々の思い出がある。名場面も少なくない。


ちょうど雅子さんが題経寺から見える『送電線の真下』だと寅に言っていた。
あのあたりから見える大きな送電線はここだけ。
もうさくらが家を手に入れた頃は、柳生さんの家ではなくなってしまっていたが(TT)




     




はじめて寅に家を見せるさくら。寅は家がちょっと小さいので戸惑いぎみ。

   




  あけみも2階の窓から寅を想っていた。

   




  身の丈に合った最もさくらたちの家らしい家だったともいえる。

   




  これは第31作での夜の野外ロケ。これはとても珍しい。そして寅が旅立つ名シーンでもあった。

   




   
雨も降り、それゆえのせつないドラマもありました。

   





で、現在の同じアングルから見たさくらの家の場所。ちょうど高架の下あたりかな…(TT)





        




これは土手の方角から逆に見たさくらの家の場所。送電線の左向こう側。高架の下あたり。  右の写真は航空写真。赤丸のあたり。


        











【さくらの三番目の家】


江戸川区北小岩7丁目30 付近


はそのまま江戸川を下ってきた小岩の方まで土手下を20分ほど散歩がてらに歩いていくと
柴又5丁目→東金町6丁目→と移動してきたさくらの家の三番目の家が見えてくる。

第43作「寅次郎の休日」〜第45作「寅次郎の青春」まで使った家だ。

ここも短いながらもいろんな思い出に溢れている。





    




    




    
  満男のへルメットから泉ちゃんが見える。


    




  そして、博が自転車をこぎ、ジョギングをし、泉ちゃんが立っていた道の現在

  あの家はずいぶん前に無くなってしまっていた。今はこう↓




   



       土手に上がってみるとこんな感じ。

   









【水野早苗さんのアパート】


江戸川区北小岩7丁目27 付近


そのままさくらの家から川を下っていくと、
ほんの7分〜8分であの美しすぎるマドンナ水野早苗さんのアパートが現れる。
ほとんど当時の雰囲気を残したまま佇んでいる。
ここも寅福さんや小寅さんが行かれている。



       





      


実際のアパートの名前は『いずみ荘』とは違っていた。
早苗さんは今、どこにいるのだろうか。
あの肇さんという従兄妹さんとあの後結婚したとは私はなぜか思えない。
けれど、このアパートはすぐに引越したであろうことは想像できる。

あの引越しの時点で、彼女はここからとらやに通おうとしていたのである。
さくらは第22作時は、まだ潜水艦アパート在住なので江戸川土手には来ていない。

アパート階段の向こうは真正寺のお墓である。




      
    現在のアパート。ほぼ当時のまま。

       














【さくらの四番目の家】


江戸川区北小岩4丁目40 付近


さて、早苗さんの家から先日『寅次郎な日々』にアップしたさくらの四番目の家である。
もうこの辺まで来ると、完全に柴又からは遠く『小岩』エリアである。
諏訪家はどこにあるの?ってマドンナあたりから聞かれたら柴又ではなく小岩って答えないと
いけないエリア。

そういえば、リリーも一時、小岩に住んでいたっけな。
博とリリーが久しぶりにであったのも小岩駅前だったっけ。
まあ、でも江戸川土手沿いなので柴又と同じ風なんだよね、うん。




              
博が毎日ジョギングしていた。

        



       




          
現在の諏訪家。まだまだ健在である。

       






この場所はさくらと博のシリーズ最後の姿が撮られた場所でもある↓


       












【木谷京子さんのアパート】


江戸川区北小岩4丁目37 付近



このアパートは『
ちびとらさん』が現地で突き止められたことは先日書いた通り。
京子さんはおそらく、あのあと大川弥太郎と結婚し、違う場所で新居を構えたと思われるので
このアパートは引っ越したのだろう。

それにしてもさくらの四番目の家とこんなに近いとは思いもよらなかった。



       



現在のアパートを土手から見たもの。
すっかり建て替えられて入るが、設計は今もだいたい同じような作りと思える。



        





以上です。

今回は大きな更新でした。



     

       






「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ

サイト内検索


のページの上に戻る
最新のコラムはこちら










441

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー




ご近所だった!さくらの家と京子さんのアパート


2010年6月2日 寅次郎な日々 その441

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



昨日、いつ私が参加させていただいている月虎さんの「男はつらいよ」SNSで、
ロケ地巡りをライフワークとされている「
ちびとらさん」が先日京成江戸川駅から江戸川土手を探されたレポートを書かれた。
ついに
第14作「子守唄」のマドンナ木谷京子さんのアパートを突き止められたのだ。

「ちびとらさん」は3歳になるジュニア君といつも一緒に各地のロケ地を巡られる。
ジュニア君は3歳にしてかなりの寅さんマニア。
小諸滞在中、はやくもあの「尾瀬の寅さん」たちの前でちゃんと一人で仁義を切った凄腕なのだ。
まるでこの父子は『子連れ狼(タイガー)』の拝一刀と大五郎のごとし!おそるべし…冥府魔道の道をゆく二人…(^^)

休日になると、いつもニコニコと楽しく、しかし実は眼光鋭く、日本各地の寅さんロケ地を今日も巡られているのだ。
まこと微笑ましくも激しさを秘められた父と子である。

それで、私も「ちびとらさん」が探された京子さんのアパートをストリートビューで巡ってみた。


まず、京子さんは京成 江戸川駅で下りて江戸川の方へ歩いていく。↓



      





下の航空写真で分かるように江戸川駅から江戸川土手はすぐそばだ。


      




で、京子さんは江戸川土手沿いのアパートに到着


      




母親の木谷はなさんから届いた小包に住所が書いてあるが、
こういうのは例のごとく、当然スタッフはわからないように本当の場所とはずらしてある。



江戸川区北小岩四の十三の六

木谷京子  様

と一応なって入るが…


「ちびとら」さんは、それでも住所に書かれてあった場所を歩いて調べてみられた。
案の定江戸川土手の方向ではなかったそうで、やはりこの住所はダミーだったそうだ。



       




で、彼は原点に戻って江戸川土手沿いを探される。


その時位置確認の唯一の決め手となったのが
↓のアパートの向こうに見える江戸川河川敷と川そして赤い突起物があるビルだ。

「ちびとらさん」は、このビルが1972年かに施工した「市川国府台マンション」であることを確かめられ、
間違いなくこの作品に映っているのはそのマンションだと確信された。



                




あとはビルの見え方を考えてピンポイントで絞られたのだ。

先日のTさんの時にも書いたが、彼らロケ探しの達人たちは自分の足で目的地を探される。
実際に江戸川駅から歩かれて現地でキャプチャー画像と見比べながら調査され、
じっくり楽しみながら自分の足で地面を踏みしめて汗をかいて風を受けて絞っていかれるのがなんともカッコいいわけだ。



で、私も、そのような「ちびとらさん」のレポートを足がかりに
遠い富山県から遅ればせながらストリートビューや航空写真で確かめてみた。
その結果が、ストリートビューで見たこのアパートである↓。


          



もちろん完全に建て直してはいるが、部屋の並び方や方角などがほぼ同じ。
川向こうのマンションがあのような角度で見える場所の中でアパートはここだけ。


          同じ位置から川向こうを眺めてみる。ビルの見える角度が同じ!

               



結論としては、京子さんはあのアパートの二階の角部屋あたりに住んでいたと思われる。

一応、伝家の宝刀20世紀1997年の航空写真で見てみたがすでにこの新しいアパートは
1997年時点で建っていた。


京子さんのアパートは『江戸川区北小岩4丁目37付近』

京成江戸川駅から徒歩で5分もかからない鉄橋の近くの場所だった。



ちなみについでに川向こうの赤い屋根の市川国府台マンションにもストリートビューで行ってみた。
結構大きなマンションで、横が国府台神社だった。



       




ところで、話は実はここからが佳境なのだが…



この京子さんの向こうに広がる江戸川と森と赤い屋根のマンション風景だが
どうも他の作品で見たことがある。
それも一つじゃない。複数の作品でだ…。

どうしてもこのおぼろげな記憶を確かめたくて
意を決し、仕事の合間をぬって晩期の作品群を何作品か見て、チェックしていく。

そうするとありました!すぐみつかった!

あの風景、なんと『さくらの家』の前からすぐ江戸川土手に上がった風景だったのだ!!

つまりあの京子さんのアパートの位置は 『さくらの家』から土手沿いに
徒歩でほんの5〜6分ほどだった!


さくらたちの家と言っても、もちろん寅の言うところの昔の潜水艦アパートではない。
一軒家のほうである。
最初はあの一軒家は現在の北総線新柴又駅東側土手沿い高架近く(柴又5丁目)にあり、
映画ではあの家を買って以来全然引越していないことになっているが、
ロケの諸事情により3回一軒家を変えている。(合計4軒)



これは以前も書いたが、

最初の一軒家は26作「寅次郎かもめ歌」〜40作「寅次郎サラダ記念日」まで。

しかし、総武線の高架計画のためついに立ち退きになる(TT)


ちなみにこの一番目のさくらの家と
英語塾を開いていためぐみさん圭子さん母娘の家は結構近いのだ!



         





次に第41作「寅次郎心の旅路」〜42作「ぼくの伯父さん」まで。ちょっと金町寄り。

しかし家の横で工事が始まってしまう。

ちなみに、この2番目の家はなんと散歩先生宅と同じ東金町!
だから散歩先生はさくらの2番目の家のご近所。


          





また変わって第43作「寅次郎の休日」〜第45作「寅次郎の青春」まで。

しかし、これまた近くの家の環境が変わったので家替え。

このあたりにあの早苗さんも住んでいた!

つまりさくらの3番目の家と早苗さんのアパートは同じ
北小岩!
さくらの家はこのように次々にみなさんとご近所になっていく。(((^^;)



          




そして第46作「寅次郎の縁談」から〜第48作「寅次郎紅の花」まで。

家の大きさは徐々に大きくなっていった気もする((((^^;)

さくらの↑の3番目の家ともさほど離れてはいない同じ北小岩!


               
走る博の右に見えるグレーの屋根の白い家

          





で、今回の発見は、そのうちの、シリーズ最後の家とその前の風景。
京子さんのアパートから見えたあの川原や川向こうの風景は
第46作から第48作まで使われた、あの家の前の風景だったのだ。
もうこうなってくるとみんなご近所だァ〜〜〜。
そうなんです。結構
北小岩に集まってるんですね(^^)



           



           




ストリートビューで見ると現在はこのようになる↓。今も健在!京子さんのアパートから徒歩5〜6分。

この家は以前寅仲間の親友『
寅福さん』がすでに探されている。
しかし、あのロケ地探しの究極の達人『寅福さん』でさえ、
まさかここからたった徒歩5分の場所に京子さんのアパートが並んでいるとは思わなかったかも…。



         



『江戸川区北小岩4丁目付近』(これ以上詳しくは書けません^^;)


だから博が朝早くジョギングしている時も川向こうのあの森は
見えているし、満男と菜穂ちゃんが家の前の土手で再会した時も
あの赤い屋根の市川国府台マンションが何度も映っていた。


        

      第47作の時のマンション↓やや側面中心。



           

 
        菜穂ちゃんと満男の間に淡く見えるマンション。

       







    第14作の時の京子さんのアパートから見る同じマンション。やや正面中心。

         




私にとって、これは大きな発見だった。
「ちびとらさん」のロケ地巡りがきっかけだったので
ちびとらさんのおかげだと思っている。





      さくらの家から京子さんの家の方角を見たシーン。鉄橋が見えるが
      あの鉄橋の端からこちら方向に歩いて徒歩3分で京子さんのアパート

       





満男が菜穂ちゃんと再会できて喜び勇んで走っていたあの階段も健在!


     




     


     



で、まとめると
今回のことを航空写真上に書いてみると↓のようになる。

京子さんのアパートは『京成江戸川駅』のすぐそば。
さくらたちの家も当然最寄りの駅は『京成江戸川駅』ということになる。



      





この地図↓でも分かるようにあきらかに新しいさくらの家は京成江戸川駅エリアにある。
それに対して昔のさくらの家やもっと昔の潜水艦アパートは完全に柴又駅(とらや)エリア。

      





そうなってくると…。
第48作『紅の花』で、ラスト、さくらと博が浅草に映画を見に行くが、北の方向、
つまり、新柴又駅の方向へ歩いていく。

浅草ならすぐ近くの「京成江戸川駅」からのほうがダントツ早い。
だから彼らは手前に歩いてこないといけないのだ。


おそらく、とらやにちょっと挨拶してから、出かけるのだろう…。と勝手に思っている(^^;)
っていうか、この家はあいかわらず『柴又5丁目』にあるという設定だから、これでいいのかも(^^)



      





あー、今回もいろいろ面白かった。

おわり









「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索


このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







440

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
バックナンバー





第37作「幸福の青い鳥」 今回はちょっと長めのダイジェスト版  


2010年5月27日 寅次郎な日々 その440

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。







第37作「幸福の青い鳥」    今回はちょっと長めのダイジェスト版


健吾を追いかける美保の姿  
人生を変えるさくらの言葉



この作品ではこのシリーズのもう一人のヒロイン知る人ぞ知る
大空小百合ちゃんが再出演するのである。

しかし、再出演と言っても、実はみんなの知るあの大空さゆりちゃんではなかったのである。


父親を長い患いの末亡くした後、筑豊の住宅で独り芸者をしてひっそりと暮らしていた美保さん。
彼女は少女の頃、「大空小百合」の名前で旅役者をしていた。
寅がその昔、ひいきにした坂東鶴八郎(この第37作では中村菊之丞)一座の花形だったのだ。
座長の坂東鶴八郎は実の父親。その大空小百合ちゃんと9年ぶりに筑豊の寂れた町で再会する。


             
車先生!                      寅さん?  
        →  


あの「車先生」と寅を呼んでいた可愛い娘が、今は「寅さん」と呼ぶ大人の女性になったのである。
かつて熱烈な大空小百合ファン(岡本茉利さんファン)だった私としては、そのキャラの変わり様に
それはないよと、この時ばかりは平気で過去の登場人物をいじってしまう山田監督を恨めしく思った。
私はただの一ファンなので、何をされても文句を言える筋合いではないが、
この大空さゆりちゃんだけは安易に「いじって」ほしくなかった。


寅は彼女と再会してこう言うのである。

寅「失礼だけど座長さんの娘さんかい?
小百合「はい…
寅「ということは、もしかして、大空小百合って芸名で、可愛い声で歌歌ってたんじゃねえか?
小百合「そうですけど…
寅「それじゃあ、オレのこと覚えてねえかなあ…、
おまえのおとっさんとよくねえ酒なんか飲んだりしたことあるんだよ…

小百合「寅さん…
寅「うん、よく思い出したなあおまえ、そうよ、その寅さんよ



これが「幸福の青い鳥」での運命の再会シーンなのであるが、
やはりここは第8作、第18作、第20作あたりの思い出をもう少し大事に
してほしかった。観客は結構覚えているものである。
もちろんこの映画のファンならあの岡本茉利さん演ずる大空小百合ちゃんは
絶対に忘れられない純真なマドンナの象徴だったはず。

もちろん山田監督は、お名前拝借とばかりに、
人物設定やキャラを少し変えて現代の物語に合うようにしてあるのだろうが、
大空小百合という芸名と昔の雨の日のエピソードがそのままなので、
やはり観客にとっては、決定的にあの大空小百合ちゃんなのである。

だから、あの昔の大空小百合ちゃんがいくら大人になったとしても
恩のある寅のことを「寅さん」なんて絶対に言わない。
必ず彼女は「車先生」と言うはず。
言葉ももっと丁寧である。それは役者をとうにやめた今も同じのはず。

第8作当時、おそらく17、8歳くらいだった。当時もう子供ではない。
第8作で2度、第18作で1度、第20作で1度、しっかり会って、芝居を見物し、
またもや長い時間共に話をしている。
第20作で、最後に寅に出会ってから9年の歳月が流れたことになるが、
その程度で何度も縁があった寅のことを忘れるわけがない。

大空小百合ちゃんはスピードが出ている車の荷台の上からでも、
すぐ寅だと気づく記憶力とカンのいい娘さんなのである。
だいたい9年くらいで、この寅という男は何も変わっちゃいない。

山田監督にしてみれば、さほど細かい事まで観客は覚えていないだろうと、
気楽な気持ちでサブのキャストだった大空小百合ちゃんを使い、
ちょっとアレンジして再会場面を設定されたのかもしれないが、
私たち大空小百合ちゃんファンからしてみれば、ここは、こだわりたいのである。


だから、この「幸福の青い鳥」の再会の場面は、私なら独断と偏見で
こう演出したいところだ。


寅「失礼だけど座長さんの娘さんかい?
小百合「はい…
寅「ということは、もしかして…

小百合、はっと気づいて、

小百合「…先生!車先生!
寅「うん!大空小百合ちゃんだね…。よく覚えていてくれたな
小百合「お懐かしいです、先生!
寅「もうその先生ってのは、やめてくんな、寅さんでいいよ
小百合「はい、寅…先生
寅「ハハハ、寅さんだよ
小百合「はい、寅…さん
寅「そうよ!
小百合「はい!

これなら、観客は懐かしいあの日々を思い出すことが出来るのである。

大空小百合ちゃんとの一期一会の日々は、このシリーズの中で大事にしたい
どこまでも懐かしい思い出である。これは多くの人の偽らざる気持ちであろう。

とは言うものの、
時の流れとはひょっとして
そういうものかもな…と、静かに思いかえしもした。

ちなみに志穂美悦子さんには私は実際にお目にかかったことがある。
学生時代椿山荘でバイトしていた頃、友人の披露宴に来られたのだ。
それは美しい方で、映画で観ているよりもずっと素敵だった。



間に合った美保さん  走る柴又参道

もう誰もいなくなって心が淋しい美保さんは
東京に出てきて寅に一目会って、もう一度話をし、筑豊に帰ろうと
していたのだが、寅やさくらたちの応援で、柴又の中華食堂「上海軒」で働きながら
とらやの2階で生活するようになる。

「寅さん、いつもこうやって大勢でご飯食べるの?」美保さんは嬉しそうである。

彼女はさくらにそっと言う「みんなの待つ家に帰ってくるのは嬉しい…」と。
小さい頃から小学校を50回も転校し、父親が亡くなってからの孤独な人生は
もう辛くてしかたがなかったのだろう。矢も盾もいられなくなりとらやへ来てしまったのだ。

           

そんな美保さんは、ふとした縁で親しくなった、画家を志す青年健吾に惹かれていく。

しかしお互いすれ違いが重なり、意地を張ってしまう。
健吾はとらやの店で別れの言葉を告げて柴又駅に走り去っていくのだ。
しかし、本当は美保さんも健吾もお互い相思相愛。

この流れはあの第1作「男はつらいよ」のさくらに想いを告げ、立ち去って
行く博の姿に重なるシーンだ。
そして美保さんは、ギリギリで健吾を全力疾走で追いかける。

それは、まるであの第1作で博を追いかけ柴又駅に走るあの日のさくらのようだった。


そのきっかけになったのは寅の言葉とさくらの優しさ。

寅「話は後で聞く、さ、すぐ追っかけて行きな

美保「でも…

寅「おまえはあの男が好きだし、あいつはおまえに惚れてるよ。
 オレから見りゃよぉくわかるんだ




そして、さくらは自分の体験を踏まえて真剣な顔でこう言うのである。


さくら「お兄ちゃんのいう通りよ。もしほんとにこのまま別れ別れになったらどうするつもり?


          



さくら、はっと気づいて、サイフを取り出し、小銭を美保さんの手のひらに渡し、


さくら「これ、おつり。渡してあげて、…さ、」と美保さんを優しく押し出す。

全力で走っていく美保。

美保さんが行ってしまった後、下を向き淋しい気持ちを隠せない寅。


さくらが美保さんにおつりを渡す時の顔は優しくきらきら輝いてほんと素敵だった。
私はこの時のさくらが大好きである。
私はあのようなさくらを見ては毎回さび付いた垢だらけの心を洗っているのだ。
やはりさくらは人の人生を変える力を持っている。


         



かつて

出て行った博と走り追いかけるさくらがいた。
そして今、
出て行った健吾と走り追いかける美保さんの姿。

17年の歳月を経てまた柴又駅ホームで新しいふたりのドラマが始まるのである。



         博に追いついたさくら             健吾に追いついた美保
           
 

悲しい別れのドラマが圧倒的に多いこの柴又駅ホームの物語の中で、数少ない恋の成就
は、あの第1作と、この第37作だけである。やはり感慨は深い。


それにしても美保さんは偉い。寅に会う前に、何度もとらやに電話して寅がいるかどうかを
確かめている。何の連絡もなしに突然訪ねてくる多くのマドンナたちより、よっぽどきちんとしている。
さすがあの礼儀正しく真っ直ぐな気性の坂東鶴八郎(中村菊之丞)座長の娘さん『大空小百合ちゃん』である。


才能の有無に悩みぬく健吾の魂

オレなんかクズなんだよ!才能のひとっかけらもないクズなんだよ!

6度も7度も公募展に落ちてそう叫んでしまう健吾。
彼は自分の才能の有無を疑い、落ち込み、絵を描くことをやめようとさえ思う。
そんな健吾を励ます美保さん。
この若き画家の卵を見るにつけ、いつも自分のことを思ってしまう。
私も自分の才能を常に疑い、時には自信を持ち、時には今もなお、
才能なんてないんじゃないかと恐れている。

私も健吾もみんな絵描きは死ぬまで悩みぬくのである。
それはある意味当たり前である。
クライアントのニーズに答えて描くのでなく、自分の感覚のみを使って好き勝手に描きまくるのであるから
世間の評価やニーズと乖離することは実に頻繁に起こりうるできごとなのである。
一歩間違えば常に世間的にも自分的にも「クズ」になる危険性が待ち構えている。
私など今までの生涯の大半は「クズ」として生きてきた。
それに耐えて耐えぬいて自分を生涯貫くことができるなら、その人は紛れもなく絵描きなのである。


芯の強い優しさと自己を貫く頑固一徹さを持った九州男児健吾と
それらを全て理解できる同じ感覚を持つ筑豊出身の美保さんは、
このシリーズでのまさにダイヤモンドカップルだった。

すでにテレビドラマ『親子ゲーム』で知り合って交際していた二人が、より一層親密になるきっかけになった
映画であることも忘れてはならないのである。
これは第30作の田中裕子さんと沢田研二さんのパターンとほぼ同じである。

志穂美さんはこのあと長渕さんと結婚、芸能界を引退してしまうので
映画としてはなんとこの「幸福の青い鳥」が最後の出演作品。

なにかと批判の多いこの作品だが、
このカップルのその後の進展を考えるとちょっと嬉しい。






それでは『ちょっと長めのダイジェスト版』をどうぞお楽しみください。



松竹富士山


      




夢のシーン


「幸福の象徴」である青い鳥を追い求めて、
旅を続けている寅やさくらたち。


実は脚本第2稿までは
寅が蒸気機関車の機関士になってお嫁さんをもらい活躍する話だった。
決定稿ではこのモーリス・メーテルリンク作の童話劇「青い鳥」のアレンジ話に落ち着く。




フレデリック・フランソワ・ショパン のピアノソナタ第2番(変ロ短調 作品35)が流れる。

第3楽章

第3楽章に有名な葬送行進曲が用いられていることから
「葬送
」または「葬送行進曲つき」の副題でよく知られるピアノソナタ。


寅やさくらたちは『青い鳥』を見つけに、もうかなり長い日々、山深く入り込んでいるが、
どうしても見つからずにいる。

メンバーは寅、さくら、博、源ちゃん、満男。

さくらは半泣きであきらめムードが漂ってきた。博に泣きすがり柴又に帰りたがるさくら。


       


さくら「考えてみれば幸せを呼ぶ青い鳥なんているわけないわよね、
    バカだった私、ウウウ…


みんなバテバテで憔悴しきっている。

寅「どうしたみんな元気を出せ、もうすぐ青い鳥が見つかるぞ!

その時、青い鳥がやってきて、寅はついに捕まえることができたのだ。

鳥かごに青白く光るその鳥を入れたその時、


      



突如、音楽が明るくなる。

エドヴァルド・ハーゲルップ・グリーグ作曲の

組曲ペール・ギュント 第1組曲 作品46  第1曲 朝

が聴こえてくる。


そしてその向こうにはなんと桃源郷が広がっていた。

どうも凄まじく古い桃源郷のイメージ((^^;)


桃源郷に向かう寅に、
電車の車掌さんが追いかけてきて切符を拝見しようとする。


夢と現実がごちゃまぜ(〜〜;)


このような夢のなかに現実が入り込んでくるのは
第5作「望郷篇」の夢でもあった。
あの時は夢のなかのさくらが「お客さん」と言って、宿の女中役の
谷よしのさんにバトンタッチされ、谷さんが「お客さん」と言って寅を起こすのだ。




      




イッセー尾形さん扮する車掌さんに乗越代を払う寅。
釣りは「ほんの気持だ取っといてくれ」と言ってしつこく迫る寅。
困ったイッセーさん、逃げていくが、それでも執念深く追いかける寅。


      


ドアの向こうに逃げ込むイッセーさん。
是が非でも開けようとドアを横にひっぱる寅。

笑う乗客。


夢、追う人。
旅、追う人。

のポスター





タイトルイン


      




はつらいよ 幸福の青い鳥



山口県 萩市


萩市城址公園の萩時代祭がクライマックスを迎えている。

大勢の人の手で大名行列が繰り広げられている最中。

どうでもいいが、腕時計してる人多すぎ。
それじゃ江戸時代にならないよ〜。


       



公園横の 平安橋

バイをする寅とポンシュウたち。

寅はスニーカーを売っている。

『若者よ、ソウルをめざせ』



       



ふれあいを食卓におくる
松月堂パン 坂倉しんみせ
山口県 萩市 平安古町東区の食料品店。


バイが終わってカバンを持って帰ろうとする寅。
カバンが当たって新堀川に落ちかけるポンシュウ。


平安橋は萩城三の丸の3つの総門(北・中・平安古)の一つ、
平安古総門の外堀に架けられた石橋で、萩城三の丸から城下町へ通じる道路でった。
昔は、中ノ総門や北ノ総門前にも橋があったが、現存するのは平安橋だけとなった。
平安古に通じているということから“平安橋”と呼ばれる玄武岩で造られた橋は、
吊り桁、定着桁を備えたゲルバー桁橋の構造を持った無橋脚の珍しい橋。


新堀川沿いを寅とポンシュウが笑いながら
仲良く西へと歩いて行くところでタイトルが終わる。


        





柴又題経寺 二天門前

上海軒の親父さん(桜井センリさん)が出前をしている。



とらや 台所

さくらがやってくる。

工場の外では工員のトシオが
父親が経営する老舗のクリーニング屋を継ぐかどうか博と相談している。



      



とらや 台所


相談の後、台所で博はさくらに言う。

博「この工場にしがみついていることが、トシオにとってほんとに幸せかどうか

そう言うあんたはどうなんだ博。なぜ独立しないんだ??


さくら「トシオさんが辞めても困らないの?

博「一昨年、オフセットの機械を入れた時点で一人は余剰人員なんだよ。
  だから社長としては辞めてほしいところなんだけど、言い出せないんだ。気が弱くて


さくらしみじみ

さくら「余剰人員ねえ…


あけみがやってきて急に明るくなったとらや。
寅の話題で盛り上がる。



      



おいちゃん曰く、余剰人員=寅((^^;)

そこへ電話


あけみが電話に出て

あけみ「キャー!!寅さん!!

みんなあけみの絶叫に驚いている。



下関の長府 忌宮神社 内の
公衆電話から電話している寅。




電話の向こうで絶叫が聞こえたので、びびって硬直している(^^;)



      



さくらに代わって

さくら「うん、私、どうしたのよーお兄ちゃん、
   一年間もご無沙汰よー、もう顔も忘れちゃったわー、フフフ


そうそう、この年86年は『キネマの天地』が入っているので
1年の空白が空いたんだったね。



      



あけみ「私焼き付いている」とおどける。

そうだったねえ〜〜。
前作第36作では寅に大変なお世話になったね、あけみ。

今どこにいる?と聞くさくらに

寅「長州だよ、長州、ん、へへ、そら帰りてえと思うけどよ、
  こっから江戸は遠いからなあ、え?恋愛?
  冗談言っちゃいけないよおまえ、
  こっちは地道に働いてるんだよ。
  じゃ、これで切るからな、あばよ




遙か関門海峡を挟んで九州を望む

下関市 赤間神宮



壇ノ浦の戦いで入水した安徳天皇の遺体は赤間関(下関)・紅石山麓の阿弥陀寺境内に埋葬された。
建久2年(1191年)、勅命により御陵に御影堂が建立され、
建礼門院ゆかりの尼を奉仕させたのが始まりである。以後、勅願寺として崇敬を受けたそうだ。


寅とポンシュウはその赤間神社でバイをしている。

寅は『鳥の笛』を売っている。
今回は2回のバイともにタイトルにちなんで『鳥の笛』



       



ポンシュウはなんとコンピューター占い。

で、寅もコンピューター占いをやってみる。


ポンシュウ曰く、寅は『寅年』
そして生年月日を記入。



出てきた紙には

南の方角に素晴らしい出会いが待っている』と書いてあった。



       


で、とりあえずポンシュウと離れて一人南、つまり九州に上陸する寅だった。


門司の桟橋

テキ屋仲間のキュウシュウと出会う。

寅「おい、キュウシュウ!
キュウシュウ「なんなー、寅あにいじゃなかねえ!珍しかねえ、どこへ行くと
寅「九州よ
キュウシュウ「そらここが九州たい、フフフ
寅「おまえらどこ行くんだ?
キュウシュウ「本州よ、フフフ

なんちゅう会話だ(^^;)

寅「ほー、オレとお前はお風呂のおならだ

キュウシュウ「なんな??

寅「前と後ろに泣き(鳴き)別れ、フフフ

キュウシュウたち「ハハハ!!」と爆笑。


すっ。。。とお互い別れる。
玄人衆はこのへんの立ち去り方が実に清々しい。
ぐずぐず立ち話などしないのだ。
山田監督はこういう演出が実に上手い。


        




福岡  JR勝野駅そば  遠賀川上流にかかる沈下橋。


増水時にはもぐってしまう橋。



        



黒田節のアレンジバージョンがコミカルに流れる。

寅が渡ろうとしたら、馬が向こうからやって来て、タジタジ戻る寅。

公開前の宣伝スチールではこの橋の袂で健吾と出会っているシーンがある。
当初はそういう設定なのかな。
と、いうことは、長渕さん、この橋までロケに来たのかな?




飯塚の町に入って来る寅。


「嘉穂劇場」の宣伝車が走っていく。

寅が行く向こうに飯塚のボタ山が見える。



        



旧穂波町平恒にある住友忠隈炭鉱のボタ山
ボタとは、簡単に言えば石炭の残りかすのこと。
これを山のように積み上げていったものをボタ山と言う。




嘉穂劇場(かほげきじょう)

福岡県飯塚市にある古い形の劇場。
木造二階建て、入母屋造りで間口15間(27b)、奥行き23間(42b)、定員1,400人、
マス席は一箱6人詰めの席が70余、
桟敷は一階が三段、二階が二段、向こう桟敷は四段。
廻り舞台は直径が約16bもある大きなもの。奈落もある。

建物自体も国の登録有形文化財。
特定非営利活動法人によって運営されている。
初代理事長は伊藤栄子。2代目理事長(現職)は伊藤英昭。

1931年(昭和6年)、当時の嘉穂郡飯塚町で伊藤隆により設置される。
前身は1921年(大正10年)に大阪・中座を模して建てられた木造3階建ての「株式会社中座」
1928年(昭和3年)に焼失し、翌年に再建されるも1930年(昭和5年)の台風で倒壊。

観客は当時筑豊地域の中心産業であった石炭炭鉱の労働者とその家族が中心。
大衆演劇や有名歌手の公演などで賑わった。
しかし石炭産業の衰退もあって、1962年(昭和37年)には延べ266日であった公演数は、
1970年代には10〜15日に落ち込む。
しかし、1979年(昭和54年)から毎年9月に九州演劇協会による「全国座長大会」が開催されるようになり復活。


2003年(平成15年)7月19日の大雨により、 劇場は全て浸水したことは記憶に新しい。
ほとんど全てが使用不能になる被害を受ける。
九州演劇協会会長・玄海竜二より連絡を受けた津川雅彦らが芸能人仲間に呼びかけ、
中村玉緒、明石家さんま、中村勘九郎(現・18代中村勘三郎)ら大物が駆け付けた復旧チャリティイベントが行われ、
イベントに先立ち飯塚市中心商店街で「お練り」も行われた。
このイベントでは、田村正和や木村拓哉らの私物がチャリティオークションにかけられ、
東京でも滅多に無い豪華なイベントとして話題となった。

上記水害の後、約1年かけて復旧工事が行われ、
翌年9月に復興し、開場より伊藤家の家族経営により営業を続けてきた唯一の民営の芝居小屋であったが、
復旧に際して公的資金の支援を受ける必要があったことから、
特定非営利活動法人(NPO)化された。
現在は養子の伊藤英昭夫妻が中心となって運営にあたっている。



嘉穂劇場を見て懐かしがる寅。



        



浅香布美代ショーが86年の10月16日(日)に行われたようだ。


嘉穂劇場の中に入っていくと、
そこは昭和の歴史を全て物語っているような独特の世界が広がっていた。



        




すまけいさん扮する裏方のおじさんが
座布団をゆっくり片付けている。


寅「炭鉱が盛んだった頃、オレもよくここへ来たもんだよ。
  そのころはこの中人がびっしりでな、大変な景気だった…


と、感慨深げに劇場内を見渡している。

おじさん「あんころはなあ…

寅「あー、そうだ、オレは前この小屋で
  東京の歌舞伎を観たことあったっけなあ。
  高麗屋。あら、いつだったっけ?


おじさん「昭和38年3月10日

今の松本幸四郎さんのお父さんの代だねえ、きっと。


寅「はあー、好きだねえ、フフフ。
  勧進帳、よかったなあー



高麗屋の屋号を持つのはご存知、
代々の松本幸四郎一家。定紋は四つ花菱。



寅は、「おじさん、おじさん」と声で呼びかけながら


花道の縁にしゃがんで、
雪駄をつかんで『勧進帳』弁慶の幕切れ、
『飛び六方』の場面での
見事なセッタの『ツケ打ち』をうち鳴らす。


それに応えるように、
クライマックスの『
飛び六方』を演じるおじさん。



寅「よお!バタッ!!

寅「とお!!バタッ!!


おじさん、弁慶になりきって見得を切っていく。

六方を踏み始める。

足で タン!!


寅、雪駄を打ち鳴らし続ける。


バタッ!!
タタ!!タタ!!タタ!!タタ!!
タタタタタタタタタタ!!!


おじさん、ダイナミックに六方を踏んで
花道をこちらに迫ってくる。


寅「いやあ!!タタ!!


       


大見得が完全に決まり、
目をひんむいて、型を維持するおじさん

寅「ちょーおおおあ!!

 高麗屋!!!




       



寅大喜びで

寅「ひゃあ、キャハハハハ」と大きく拍手

寅「上手いねえ!!

おじさん「へへ

寅「おじさん、元役者やってたんじゃないかい?

おじさんテレながら謙遜。

寅「やってたんだよー、ハハハハ


おじさん「フフフ、わかるー、フフフ



六方は身体全体を大きく動かして様式的に美しく歩いて見せる演技を言う。
飛び六方は、宙を飛ぶようにして踏む六方のこと。『六方を踏む』と言う。


感情の高まりなどを表現するために、
演技の途中で一瞬ポーズをつくって静止することを『見得』と言う。
いろんなことわざの語源になっていることは周知のこと。

特に今回のような 「荒事(あらごと)」の役では、より効果的に見せるために、
直前に大きく首を振ったり、足を大きく踏み出したり、手を大きく広げたりする動作を行う。
多くの場合、「見得」の瞬間には「バッタリ」という「ツケ」が打たれる。
寅が打ったのもその『ツケ』


おじさんが寅のツケにあわせて最後に六方を踏むが、
これらは「幕切(まくぎれ)」の「大見得(おおみえ)」と言う。
「ツケ」が細かく打たれた後に、大きく打ち上げられて、
主役を中心にして主だった人物が同時に「見得」をするため、
「打上げの見得(うちあげのみえ)」ともいわれる。




すっかり、気分がよくなった寅は、そのおじさんから
昔贔屓にしていた中村菊之丞のことを尋ねる。




寅「確か筑豊の出だって聞いたんだけどな

おじさん「知っとお。直方(のうがた)の生まれたい

寅「あ、そうかい、で、今その座長どうしてる?

おじさん「死んだ

寅「…、いつ?

おじさん「今年夏

寅「死んだのか…



       


おじさん「葬式に人の集まらんでほんに寂しかった〜…

このおじさんは参列したんだね。


こうして寅は、線香をあげようと座長の家を訪ねる。

この座長の名は「中村菊之丞」となっているが
あの第8作、第18作、第20作、第24作で
登場した『
坂東鶴八郎一座』のことだろう。





田川近く 炭鉱住宅


福岡県宮若市宮田鶴田 貝島大之浦炭鉱住宅



炭坑節が寂しく流れる。


かなりの家が廃墟になっている。
わずかにまだ住んでいる家がちらほら残っている感じ。

座長の家を探している寅。




     



現在のほぼ同じ場所↓



     





寅はそこでバイクに乗って買い物から戻ってきた座長の娘美保に出会う。


彼女はずいぶんスポーティな雰囲気。
ヘルメットを脱いで、怪訝な顔で寅を見る美保。



      



美保「なんか用事?

監督さん、やっぱり大空小百合ちゃんはこういう言い方はしないよ。



寅「失礼だけど、座長さんの娘さんかい?

美保「はい

寅「ということはもしかして『大空小百合』っていう芸名で、
  かわいい声で歌歌ってったんじゃねえか?



こうして再現を書いていると
このエピソードはやはり使っちゃいけなかったって思う。
こういうのは大事にしなくちゃ。
この時点で監督やスタッフだけの大空小百合ちゃんでなく、
観客の心のなかに棲みついているわけだからね。


美保、微妙に怖がって

美保「そうですけど…


寅、にこにこ顔で

寅「そうかい、それじゃオレのこと覚えてねえかなあ…。
  おまえのおとっさんとねよく酒なんか飲んだりしたことがあるんだよ。
  ううん、フフフ


美保、ちょっと思い出した顔で



      




美保「寅さん…



     



寅「うん



     




美保表情が柔らかくなっていく。


寅「よく思い出したな、おい


美保「」目が輝いてくる。

寅「そうよー、その寅さんよー、へへ

寅「それにしても、ずいぶん大きくなったなあ…、ええ


照れる美保さん。


寅が最後に会ったのは第20作のラスト。
(第24作はマイケルだけが会っている)
あの第20作時点でどう考えても大空小百合ちゃんは
二十歳は超えていたと思う。
だからもう彼女は本当は大きくなりようがない。
だから別人だと思えばいいのだが、
大空小百合という名前を使われてしまったからには
ファンたちはそう割り切れるものでもないのである。







美保の家


仏壇に参る寅。

美保さんの口から『仏ほっとけ』ギャグが出る。
古い時代の父親に育てられたので覚えたんだね。

もう何度も出てきたこのギャグを
若い女性の口から発せられるのはなんだかおかしい。



第8作の最初の出会い、あの雨の日に小百合ちゃんに宿まで送ってもらっった
思い出などを話す寅。


第8作では四国という設定だったが、あれは実は神奈川の三浦半島でのロケだった。
そのことを利用して『伊豆の下田』で出会ったという楽屋落ちにすり変わっていた。



父親が病気になってから長引いてしまって
看病でかなり疲れて精神的に参って早く死んで欲しいとまで思ってしまったようだった。


そんなことを聞いて寅は

寅「苦労したんだなあ…、あんたも」と優しく言ってやるのだった」

美保「疲れました…正直言うて…



      



さっき寅に美保に家を教えてくれたおばさんが
りんご持ってきた。


あ、このおばさん役者さんなんだね。大船でも出演しているんだ。
地元のエキストラさんと勘違いした(^^;)


おばさんの前掛け『源氏 力正宗

「源氏焼酎」は静岡県大仁町(現・伊豆の国市)で東洋醸造が作っていた焼酎の銘柄。
「力正宗」は姉妹品の合成酒。同社は平成4(1992)年に旭化成さんと合併。
旭化成は平成14(2002)年、低アルコール事業をアサヒビールに譲渡。
「源氏」はアサヒビールの甲類焼酎・ホワイトリカーのブランドとして現存している。




       




その後、美保がコンパニオン(芸者さんのようなもの)としてよく出向く旅館「かどや」を
紹介され、そこへ一晩泊まる寅だった。





田川の旅館 かどや



着物姿の美保が団体客相手に『炭坑節』を歌って踊っている。

     
       




それを別の部屋(竹の間)から聴いている寅。


      




同じコンパニオン仲間に全作品であけみを雇っていた下田のママが出てくる。
彼女は田中利花さん。
この作品のロケの地元福岡の出身。
だから福岡方言はネイティブ。
彼女はかなりの作品に出演。チョイ役の常連さん。
田中利花さんは当時は田中リカさんと名乗っていた。
1980年「ヘアー」(ディオンヌ役)で舞台活動を開始。
映画俳優からミュージカルまで幅広く活動中。
個性的な雰囲気と、コミカルなキャラクターに定評がある。
また、舞台と並行してシンガーとしても音楽活動も行っている。




      





翌朝 田川を出る寅。


田川 井田(いた)駅 


美保さんがバイクで駆けつける。

香典返しを持ってきたのだ。
若いのに義理堅い。



ホームから三井田川炭鉱の竪坑櫓と2本の煉瓦煙突が駅から見える。

ホームに駆け上がって香典返しを渡す美保さん。


      



美保のテーマが流れる


美保「どこ行くと?これから

寅「そうだなあ…まあ、風に吹かれてフラフラと東京の方へ向かうか

寅、あんた九州でバイしたのかい?(((^^;)

美保「東京ね

寅「うん、フフ

美保「あ、ウチもついていきたか、このまま汽車に乗って…

寅「何かオレにできることあるかい?

寅を見る美保。

寅「と言っても、たいしたことできねえけどよ。
  欲しいものねえのか?


美保「そうやねえ…。青い鳥

例のメーテルリンクの童話のこと。




      



寅「鳥??


寅は不思議に思いながらも、バイネタの残りの鳥の笛を
カバンから出して美保さんにやる。

なんでカバンにそんな売れ残り物ものを…(^^;)



      




美保さんは吹いてみて



      



美保「嬉しか、フフフ


日田彦山線の田川井田折り返し、
筑豊線経由小倉行が入ってくる。


まがりかね駅
ほしい駅


美保「気いつけて帰って


寅「…、もしな、姉ちゃん東京へ出てくるようなことがあったら、
  葛飾柴又、帝釈天のとらやという店へ寄りな。
  もしオレがいなくてもオレの身内がきっとおまえのことを親切にしてくれるから




       



美保「うん」と心を込めて頷く。


ああこの優しい言葉を歌子ちゃん、花子、すみれちゃんをはじめ、
寅はどれだけのマドンナたちに伝えてきたことか…。
そのたびにとらやの面々は彼女たちの世話を焼き、それはもう大変だった。


寅「

頷く美保。


寅「幸せになるんだぞ


ドアが閉まる。

汽車が出て行く。

寅をいつまでも見送る美保。




      




誰もいなくなったホームで笛を吹く美保。




柴又 江戸川土手

ガールフレンドチャコちゃんから満男に来た手紙を読んでアドバイスしているあけみ。


手紙の内容↓

ハーイ ミツオ君 のってる?。
いつも元気いっぱいの
チャコでーす。
こないだのバスケの試合に満男君が来てくれて
もう感激!


でも舞い上がっちゃってシュート3回もはずしちゃって
チャコはずかし!
来週の日曜、3中と試合があるの。

ミツオ君
ぜったいぜったい来てね!
今度こそ、
ロングシュートぜったい決めてみせるから!

中略

じゃあまたね

チャコより


ああ。。。なんという手紙(^^;)


自転車乗ったさくらに見つかるがなんとか話題を変えてごまかす二人だった。



      





柴又 とらや 店


さくらが店にやってくると

工場のトシオの父親がトシオを待っている。

おばちゃんがさくらのことを

諏訪の家内でございます」と紹介。

こういう「諏訪の家内」という紹介をされたのは
このシリーズでこのシーンのみ。
なかなか新鮮な感覚になるから不思議。



どうやら故郷のクリーニング店を継ぐことになった気配。
トシオ共々もう一度煮詰めた話をしあうようだ。




      



タコ社長はトシオの退職金のことで悩んでいる。
どこまでもどこまでも蟻地獄のように
現実のドロドロから逃れられない社長だった(TT)


おいちゃん曰く「不意景気な男だなまったくほんと(^^;)

この調子じゃ第32作で博が投資したオフセット購入代金、
いったいいつ戻せるんだろうね。無理かも…。




      





そんな時寅からの絵葉書が届く


『 拝啓
  とらやのみなさま、お幸せですか。
  長の御無沙汰しておりますが
  近々柴又に舞い戻りますゆえ
  よろしくお願いします。
  車寅次郎 



これはあきらかに美保さんが連絡してきた時の
準備だと見ていいだろう。
こいうところは寅って実にマメだ。



       








東京都葛飾区東『新小岩駅』南口



      



映画と同じ場所の現在。

南口から南西へ向かう路地入口。

新小岩1丁目43番地

昔はパチンコ屋があった場所がゲーム&漫画喫茶になっていた。
『時宝堂』はもうそこにはなかった…。



      





韓国料理の店が集まっている歓楽街。

新小岩南口 『一番街』


美保はなんと早くも東京にやって来ている。
田川ではよほど閉塞感があったんだね。
まるで歌子ちゃんだ。



食堂でラーメンを食べていた様子。

食堂からとらやに電話する美保さん。
もちろん寅はいない。


食堂に忘れ物をしそうになった美保さんに店の中にいた健吾が声をかける。

慣れない土地で知り合いもいなくて緊張し、美保さんは疲れがピークに達している。



ここが最初の出会い。




駅近くを新小岩駅バスが通っていく。

電柱に『杉山医院』 新小岩の南にある病院


南口から北口へ渡るガード下でチンピラに絡まれそうになっているところを
またもや自転車で通りかかった健吾に助けられる。



ステーキレストランうちだ 03-(897 現在は3697)-0147


        



かなり体調が悪い美保さんは、勧められるままにこわごわ健吾の部屋へ。


そこは「創美社」という看板屋の2階部屋だった。

実際に創美社というのは新小岩の駅から荒川を渡って徒歩20分くらいの
場所に存在する




新小岩駅から北西へ歩いて20分ほど
中川沿い 平和橋のたもと。


葛飾区四つ木2丁目5番地



創美社 2階 屋根裏部屋



どうやら健吾は画家を目指しながら、看板屋で働いている様子だった。
しかし看板屋で働いている&絵の具代をけちっているので
絵が微妙に薄っぺらくなってしまっている悲しい健吾(TT)



健吾は美保が筑豊の出だと聞いて親近感を抱く。
健吾は鹿児島なのだ。


健吾「九州か…、帰ってねえなあ…


      



まあ、下心は当然あるにせよ(^^;)
なんだかんだと言いながら、美保に優しくしてくれる健吾だった。



ライトを付けて自分の描いた絵を見て嘆いている健吾。





創美社 2階 健吾の部屋


翌昼

お世話になりました 美保と書いてとりあえず部屋を出て行く美保さん。




この『新小岩駅前』や『創美社』の場所がわかるまでの軌跡は、
私のサイトに載っています。↓

http://www.yoshikawatakaaki.com/lang-jap/torajironahibi.htm#439


     


かつて『創美社』ロケがあったところの現在。

          



      




柴又 江戸川土手


そんな時、寅が柴又に舞い戻ってくる。



       






柴又 とらや 店


満男がガールフレンドたちととらやの前を歩いていく。
女の子たちの履いている靴がロケでは黒の革靴だったのが、
大船セットでは白いスニーカー。


これはミスですね(^^;)



       




で、寅はとらやに帰ってきたが…。

妙に沈んでいる。

みんなで心配するが寅は首をふるだけ。


       


たった一言

寅「青い鳥を探し求めてな…

あ〜あ‥、あんな若い子に惚れちゃったんだね。
自分の年そろそろ考えろって(ーー;)


おばちゃんから昨日から2回も女性から電話があったと聞くやいなや

急にテーブルを叩いて

寅「なんでそんなことを早く言わないんだよ!!

みんな唖然。

寅「誰だ!誰からだ!名前はなんて言うんだよ!

寅はあせり怒り心頭でわめきまくり、

寅「あ、オレがいないからもっとひどいこと言いやがったな。
  『あのバカは二度とここへ帰って来ないよ、
  電話なんかしないでおくれ』
  ガチャン!プツン、



      



おばちゃん「そんなこと、私が言うわけないでしょバカ!」と怒る。

バンバンおばちゃんに悪態をつく寅。
あげくにおいちゃんに出て行けと言われ


寅「それを言っちゃおしいめえよ」と、捨てぜりふを吐いて出て行く。

なぜか自分のカバンでなく、満男のカバンを持っていく  バカ…(((^^;)



       




その刹那。

お約束のパターン(^^)


美保さんがとらやにやって来る。

寅気づかずに

寅「いらっしゃい、お客さんだぞ!」と出ていこうとするが

ふと立ち止まり、振り返り

美保さんを見る。



美保のテーマが流れる



寅「おまえ!



美保さん、ようやく会えてほっとした表情で

美保「寅さん


さくらたち驚きのあまりよろける。
おいちゃん尻もち(^^;)




      



寅「来たのかー

美保「よかった会えてー
ほんとほんと無茶だよ、いきなり会いに来るのはは(^^;)



      



寅「ちょうど今な、おいちゃんおばちゃんと
 お前の話してたんだよー。おいでおいでおいで


と、美保さんの手をとって店に再び入ってくる。

このようにとらやを出て行く刹那、マドンナに再会し、
上機嫌で舞い戻るってパターンは
このシリーズの最も代表的なギャグで、
枚挙に暇がないほど多くの作品で採用されている。


寅はそれぞれメンバーを美保さんに紹介

寅「ひとの悪口なんか絶対言わない、みんないい人でしょう

と、180度態度人格破綻者のごとく意見を変えて上機嫌 ε-(ーдー;)



      



美保さんお辞儀をして


美保「はじめまして美保といいます

さくら「あー、あなたが電話くださった方?

美保「なんべんもすいません

いえいえ、突然押しかける泉ちゃんや泉ママ、歌子ちゃんたちよりまとも。
事前にアポとるのはとてもまっとうな行動です。


どうやら、一週間ほど前に東京に出てきて独力で
仕事を探していたらしいが、なかなか見つからない様子。
それで寅を頼って来たわけだ。


寅は、美保さんを二階に住まわせて欲しいといきなりおいちゃんに頼む。


寅「あ、当分使わせてもらおうか、おいちゃんいいかな?

おいちゃん「いいとも」  テレビ番組の見すぎ(((〜〜;)


なんだかんだとはしゃぐ寅を、やれやれと半ば呆れて
いつものように受身で承諾していくとらやの面々(TT)





とらや 茶の間


みんなが集まるとらや。


小学校を50回も変った美保さんに驚く面々。

みんなで美保さんの就職を考えるが、なかなかいい考えが浮かばない。



        



そこへ、上海軒のおやじさんが出前でやって来て、従業員を探していることを告げる。
美保さんは中華料理屋で働いていた経験があるので一発承諾。
あっという間に上海軒で働くことに決定!。



       



というわけで、なんともあっけなく就職も決まったのでみんなで乾杯。

テーブルが狭いせいか。満男だけ台所で食事(TT)
詰めりゃなんとかみんなで座れるんだけどなあ…。
こういう感覚私にはわかりません。
カメラ(撮影)や構図の都合なんだろうけど…。


いきなりこんなにお世話になり感激した美保さんは
深々とお辞儀をし、あらためてしみじみお礼を言うのだった。

ほんと、ちょっと寅が立ち寄って仏壇に手を合わせただけの縁だからねえ…。


美保「みなさん…、どうもありがとう。
   私はほんとは、寅さんが生まれた家を見たら
   すぐ九州帰ろうと思とったんです


寅が生まれたのはお菊さんが当時住んでいた借家だと思うが、
美保さんはそんな事情知らない。
まあ固いことは言わないで進みましょう。



美保のテーマが静かに流れる

 

美保「それがこんなことになるなんて…、
   ほんとに夢のごと…ほんとに夢のごと
」と泣いてしまう。

美保「寅さん…、来てよかった…


なんども頷く寅。



数日後 柴又駅前  上海軒



      



さっそく、数日後に上海軒で勤めはじめる美保さん。

豚骨味のラーメンも作れる腕前なので主人も奥さんも大満足。




      



そこへ備後屋たちが食べにやってきて…。

美保さん(寅の恋人という認識)を見て大騒ぎ。



     


「抱かれたくない男N0・1」の出川哲朗さんも
この時参道を宣伝カーのように声を出してかけめぐっていた。


寅さんの恋人が上海軒に!

と、みんなはしゃぎまくる。



     



出川哲朗さんは第37作、38作、第39作、第40作、第41作と5作品連続出演
第37作では
ニュースだ!ニュース!上海軒に寅さんの恋人がいるぞ〜!」のセリフあり。
またこのころ「キネマの天地」にもチョイ役で出演。
露出が最も高かったのは第39作で秀吉の出発のシーン。かなり長い間出ていた。
全ての作品で鉢巻しているから分かりやすい。当時はまだ痩せていた(^^;)


それを聞いた源ちゃんも、店々に吹聴。
勢い余って寅のいるとらやにも入ってくる源ちゃんだった。

源ちゃん「兄貴、寅の恋人がな…はっ!。。。まちごうた
と口を抑える源ちゃん  バカ(^^;)



      



ムッとする寅。


      



おかげで上海軒は長蛇の列。「そば」もすぐ売り切れ。


      







その夜  とらや 茶の間


寅はみんなを集めて、『誤解のないように』と、言って

寅「あの子にたいして一点のやましさもない」と断言。嘘八百(ーー)


      


結婚相手を探してやりたいと話が早い。
で、みんなに相手を相談。

いきなり結婚話だもんなあ…


      



みんなは近所の青年たちをそれぞれ薦めるが
寅は、そういう手近ですませてしまおうという
イージーな物の考え方』はやめろと嫌がる。

寅は結構英語を使う。いつ覚えたんだ??(^^;)


寅は寿司職人と結婚させたいと思っている。

寅の寿司の『好物』がこのアリアでわかる。

寅「オレな、その二人に店出させるよ」みんな呆れて笑う。

寅「もちろん間口二間のちーさな店だ。でも、ネタはとびきり上等。
  女将は美人で愛想がいい。
  こりゃ繁盛するよ、おばちゃん、フフフ




       



おばちゃん「もちろんだよー、フフフ

寅「旅からの帰りにちょっと店に顔を出すか。
 『あら、寅さんお帰りなさい。さささ、どうぞ』



メインテーマがクラリネットでしっとりと流れる。


寅「 オレは奥の椅子にスッと座るな。
 温かいお手拭き、酒、黙っていてもオレの好きなものがスッと出る。
 
うに、いくら、海老のおどり。気分がいいからオレはついつい酒が過ぎてしまう。
 『あら、いけないわ、これ以上飲ませたらさくらさんに叱られてしまう』



寅の好きな寿司ネタ決定。
うに いくら えびのおどり


みんなクスクス笑っている。


寅「『そうか、それじゃおあいそ』
 『とんでもない、寅さんからそんなものはいただけません』

  
みんな、クスクス。


寅「
あの子に抱かれるようにして表に出る。
  あー、夜空いっぱいの星だ


この「夜空いっぱいの星だ」は第18作でのアリアのアレンジ。



     



 
寅「
『おまえ今は幸せかい?』『寅さんのおかげで』『でも』『でも?』
  『あの人真面目一方で冗談が通じないの』」
  そこでオレは優しく諭してやるなあ。
  『いいか、人間誰しも欠点というものがあるんだよ、わかるね』
  『わかるね』『はい』


しかしだんだんエスカレートしてきて…。

 
寅「やがて十月十日、玉のような赤ちゃんが生まれる『オギャー!』



      


おいちゃんいよいよ呆れている。

『こんにちは赤ちゃん』のBGM

寅構わずに


寅「
博、オレ名付け親、フフ、どんな名前がいい?

博「
太郎でも次郎でもいいんじゃないですか

寅「
あ、太郎か、ああー、案外そういう平凡な名前がいいかもしれねえな


さすがに寅もこのままどこまでもしゃべれないのでお開きになる。


寅、二階荷物部屋に上がる直前、立ち止まり、にさくらに



寅「
父親の名前はさ、寅次郎だから…はっ…



      


みんな顔色が変わる。

寅「
あ…ハハ…オレの子供じゃなかった、フフフ
  あーこりゃ恥ずかしいこと言っちゃった。。。フフフ

  
と照れて二階(荷物部屋)へ上がっていく寅だった


博「惚れてるのとほとんど紙一重だな…」 

ちゃうちゃう、きちんと寅はしっかり惚れてるんですヾ(^^;)


      



寅はご機嫌で
二階から『こんにちは赤ちゃん』を口ずさむ歌声が聴こえてくる。



寅の声「
♪こんにちは赤ちゃん。
    わたーしーがーママよー。パパパパパパパパパパン




これは、梓みちよさんが昭和38年に歌って100万枚売り上げた歌。


こんにちは赤ちゃん」
    作詞:永六輔
    作詞:中村八大
  
  こんにちは赤ちゃん あなたの笑顔
  こんにちは赤ちゃん あなたの泣き声
  その小さな手 つぶらな瞳
  はじめまして わたしがママよ

  こんにちは赤ちゃん あなたの生命
  こんにちは赤ちゃん あなたの未来に
  この幸せが パパの希望(のぞみ)よ
  はじめまして わたしがママよ

  ふたりだけの 愛のしるし
  すこやかに美しく 育てといのる
  こんにちは赤ちゃん お願いがあるの
  こんにちは赤ちゃん ときどきはパパと
  ほらふたりだけの 静かな夜を
  つくってほしいの おやすみなさい
  おねがい赤ちゃん
  おやすみ赤ちゃん わたしがママよ




その後、美保さんが仕事から戻ってきて、みんながいる家に戻ることの
幸せをさくらに吐露するのだった。


       





一方その頃健吾は

創美社から公募展に絵を出品するべく100号Fの絵を運んでいた。

創美社の社長はまただめじゃないかと心配している。



上野公園内 都立美術館

第22回東陽展 86  11月25日ー12月1日

意気揚々と搬入する健吾。


      


ほんとうはこの手の公募展というのは大きな絵を複数出品しないと、力を信用してくれないのが常。
健吾は内容が抽象系なので1枚出品ではなかなか厳しいかもしれない。


寅は美保のいる上海軒に顔を出す。


美保はちょうどお昼ごはんを食べている。

店内からはBGM
長渕剛の『俺たちのキャスティングミス』が流れている。

♪Far Away Far Away From me
 俺たちのキャスティング ミス
 Far Away Far Away From me
 電話はかけないで




俺たちのキャスティングミス

長渕剛

作詞作曲 長渕剛

お前は身を起こして もつれた髪を
二.三度静かに振り動かした
額際から二つに別れた黒髪を
肩に流して微笑んだ

Dance Dance Dance Again
凍りついた俺の白いベッドで
俺はお前ののど元に口唇を這わせ
お前は俺の胸に指を熱く這わせたけれど


♪Far Away Far Away From me
 俺たちのキャスティング ミス
 Far Away Far Away From me
 電話はかけないで

俺たちが描いていた一夜のドラマが
砂丘の砂の中 うもれてゆく
お前の気の病いと透きとおるほどの静脈が
俺の魂狂わせた

Dance Dance Dance Again
悲惨なほどに 心焦がした現実で
青く痛んだLove Story 最後の(セリフ)を吐いた
「たのむから私と一緒に呼吸をしてくれる?」

♪Far Away Far Away From me
 俺たちのキャスティング ミス
 Far Away Far Away From me
 電話はかけないで


美保さんは初めて出る給料で寅にプレゼントしたいと提案するが
寅ははぐらかして



寅「まあせっかくそう言ってくれるんだ。
  青い鳥でも買ってもらおうか、へへへ



      


美保さんは出前もしていると知って寅は手伝ってやろうと思う。




一方、とらやでは



とらや 店

ヨシオがいよいよお父さんの店を継ぐことになり、
涙を浮かべながら出ていくのだった。


       



中村くんと博は見送りに行ったのだがゆかりちゃんだけは涙を流している。
どうやらヨシオはゆかりちゃんに好意をもっていたらしい。
でも、ゆかりちゃんには別に恋人がいたようなのだ。
複雑な思いで工場に駆けていくゆかりちゃんだった。



       



おいちゃん「そういうロマンスがあったのか…」としみじみ。
おばちゃん「ほんとね


そこへ、なんと上海軒の制服着て、長靴はいて、のっしのっしと
出前を運んでいる姿が店の前に現れたではないか。

悠然と通り過ぎていく寅。




     



おばちゃん「あら!!

おいちゃん「!!!


おばちゃん切れまくって

おばちゃん「あの男一度だってうちの団子配達したことあるかい!!?

おいちゃん「頭痛くなってきたよ、オレは

と、フラフラになって茶の間に戻っていく。

おばちゃん「もう!!」と怒り心頭。




さくらの家


さくらが言うには、あの後おいちゃんとおばちゃんにさんざん叱られて、
明日から心入れ替えて美保さんのお婿さんを真面目に探すことになったらしい。

サントリー角瓶


     




一方


何日か経って健吾は公募展に今年も落選してしまったようだ(TT)

健吾を慰めようと健吾がいつもいる公園にでかける美保さん。






創美社から中川沿いに上流に少し行った公園


葛飾区東立石1丁目22番地


ハーモニカを吹いている健吾。


美保さん近づいてきて

美保「この間はどうもありがとう

と病気を看病してくれたお礼を言い、近況を伝える美保さん。


しかし展覧会に落選してしまったことで自分のことをクズだと言ってしまう健吾。

健吾「オレなんかクズなんだよ、才能の一かけらもないクズなんだよ



美保のテーマが流れる



         



                     現在の公園
         





美保「クズねえ…

美保さん昔を思い出すように

美保「うちもよう言われたわ。おまえなんかクズだって…。
   『おまえごたバカは悩むことを知らんとじゃ』
   フフ…よく父親にね


健吾「親父、何やってんだ

美保「もう死んでしもうたけど、旅役者の座長だったの

健吾「ということは、あれ?舞台立ってたの?

美保「うん。フフフ、こんなちっちゃい時からね。
   『とと様の名前は阿波の十郎兵衛と申します〜、フフ…って』
   歌も歌ったのよ『♪りんご〜の花びらがァ〜〜』フフフ、
   私、トンボもきれるとよ。
   不景気の時はヘルスセンターでストリップみたいなことまでやらされたとよ。
   フフフ、恥ずかしかったー


ストリップショウの真似しておどける健吾。

健吾「♪タンタカタンタンタンタンター、♪
   タンタカタンタンタンタンター、
   お客さんお客さん、
   踊り子さんのお肌には触れないようにお願いします
おいおいヾ(^^;)

美保「やっとらんてそんなことフフフ

健吾「またー、やったんだろ

美保「フフフ



      



ちょっと心がほんわかしてくる健吾だった。



一方寅は源ちゃんを引き連れて

葛飾区役所に結婚相談をしに行くのだった。





葛飾区役所


入り口のドアのとこで超べたな『あなたの声をお聞かせください
ギャグを2人してかまして「わー〜」って箱に向かってささやいていた。
これは超古典とも言えるギャグ。変に懐かしかった(^^;)



      



      





【区民相談コーナー.結婚相談室】を紹介される寅と源ちゃん。

婚姻届が無料だとわかると5枚ももらってしまう怪しい奴らだった((((^^;)

受付のお姉さんクスクス。


で、笹野高史さん演じる近藤相談員



      



寅は美保さんについて相談に来たのだが、いつのまにか
自分の好みのタイプをペラペラしゃべりだす(^^;)



寅「オレなんかどっちかっていうと静かな女がいいねえ。
  オレこう見えてもね、おしゃべりなんだよ。だからね、
  相手の女もおしゃべりだとさ、こりゃ一日ピーピーピーピー
  しゃっべたたら家の中うるさいしなあ、近所迷惑だから、フフフ、
  年の頃なら三十五六から四十だなあ‥。うん、
  器量なんかなんだっていいよ、と言いたいところだけど、
  これは毎日見るものだから、ねえ。
  丸ぽちゃが好きなんだよ。
  朝なんかぱっと目がさめるだろ、で、にっこり笑って、フフ




      



源ちゃん「八重歯八重歯、フフ

寅「お前知ってるなねえ!フフフ!


この発言により、
渥美さんが第32作の朋子さんが趣味なことがバレる(^^)


      



挙句の果てはお土産を受け取れ、受け取らないで、大げんか(((^^;)

近藤さん、。ついに部屋から逃げてしまった。







一方美保さんと健吾は創美社の部屋に戻って健吾の絵を見ている。



創美社 2階 健吾の部屋

ジャコメッティの彫刻のポスターとイタリア名作デッサン展のポスター。
特にあのイタリア名作デッサン展の方は名品が揃うウフィツィ美術館所蔵だったので
20数年経った今でも覚えているくらい
感動した。確かブリジストン美術館で開催したものだったと思う。


鹿児島で絵の才能をみんなに認められて大学や公募展に失敗、
ずっとこのかた今日まで多くの挫折感を味わっているのだ。
そんなことをぽつぽつ美保さんに話す健吾。




      




ひとりになりたくなくて、さみしくて、辛くて
美保さんを抱こうとする健吾に



      



やけにならないで欲しいと訴え、
涙を浮かべながら帰っていく美保さん。


      




美保のテーマが悲しく流れる。





柴又 題経寺 境内


御前様の誕生日に町衆が祝いの纏を舞っている。
とらやの面々御前様に挨拶。




      






とらや 店


寅はこの前の反省から店番し、後片付けしている。

題経寺から帰ってきたさくらは、
寅のあまりにも下手なその仕事っぷりに笑っている。



     



慣れない手つきで店番して、皿を片付けている寅。



そんな時、健吾が参道を美保を探してうろうろキョロキョロし、
とらやにふらっと入って来る。




      



とりあえず、『団子とビール』というへんな取り合わせを注文する健吾。

じっと見ている寅。



寅「人を探してるのか鋭い第六感(^^;)



      



健吾「はい…

寅「もちろん若い娘だな


健吾、団子を食べながら

健吾「は。。。まあ…

健吾「たった一言『ごめん』ってあやまいたいんだけど、
   なーんかこのまんまだと、一生悔いが残りそうで…


健吾、寅を見て笑いながら

健吾「フフフ、なんかオレ全部話しちゃったみたいだね

と、団子を箸で串刺しにする。

寅「いいじゃないか、まあ飲め飲め、フフフ


美保さんとのことを寅に話す健吾


健吾「なんかこのへんの中華料理屋で働いてるとか言ってたなあ…。
   一ヶ月くらい前九州から出てきたとこまでは知ってる


寅もさくらも内心驚いて




さくら「その人の…名前は?



       



健吾「姓の方は知らないんだけど、
  名前は美保っていうんです


さくら、寅「



       




美保さんがとらやに来てから一ヶ月以上も立っているんだね。


その時美保さんが寅が注文したチャーハンの出前を持ってくる。



ドキッとして健吾を見る美保さん。

喜ぶ健吾。



       




寅「お前の話してたのはこの子のことか…

笑顔で頷く健吾。



健吾「この間は悪かったな、ごめん」と謝る。

美保さんは、緊張してなんと言っていいかわからなくて

ついよそよそしくしてしまう。




       



失望していく健吾。


美保「なんで来たの…」と小さな声。

健吾「そんな言い方、ねえじゃないかよ。
  オレ一言詫びを入れに来ただけなんだぞ


美保「

健吾「それをなんだい、今の態度、…オレそんなに悪いことしたかな。
  自然な関係じゃないかよ。いやなら来なきゃよかったんだ


美保「だから、こないだそげん言うたでしょうが



        




健吾「…、あ、そう、嫌いなんだなオレが

美保「女の気持ちのわからん人は好かん」と横を向いてしまう。



健吾、何か言いたげだが、…

健吾「じゃ…もうおしまいなんだな…」とつい言ってしまう。



        




健吾「わかった…

と言って美保さんの肩を掴み、こちらを向かせ、



        




健吾「二度と来ねえよ!!
   そのうち…一流の画家になって見返してやるからな
   その時後悔したって知らねえぞ



ポケットから千円を取り出して、
テーブルの上にシワを伸ばしてしっかり置く。



        



深々と寅とさくらにお辞儀をして


健吾「お邪魔しました


       



最後に美保を見て

勢い良く逃げるように駅に向かって走り去っていく。


      



あとを追うように店の前まで進む美穂さん。


突然の失恋にうつむいている寅。


どうしたらいいのか戸惑っているさくら。


美保さん、お辞儀をしながら

美保「ごめんなさい」と謝る。

さくら「そんな謝ることなんかないのよそらそうだ。


お世話になっているとらやさんでいざこざを起こしてしまって
寅に対しても恥ずかしくて、ちょっと泣いてしまう美保さん。



さくら「ねえ、お兄ちゃん

寅頷いて「うん

寅、微笑みながら

寅「早く言ってくれりゃあよかったのにな。
  好きな男がいるんならいるって



寅、それは無茶だよ。
どうして、そんな自分でもわかりづらい
微妙な感情を人に言えようか。




美保さん、首を振りながら寅のところへ近づき

しゃがんで


美保「そんな関係じゃないの。
   九州から出てきて、寅さんおらんしね、
   どうしていいかわからん時…



       



寅、美保さんの方に手をやり


寅「話は後で聞く、さ、すぐ追っかけていきな

第22作「噂の寅次郎」での早苗さんへの最後の言葉のアレンジ版。

美保「あ、でも…


寅「おまえは、あの男が好きだし、
 あいつはおまえに惚れてるよ。
 オレから見りゃよぉくわかるんだ




       



美保「


そして、さくらは自分の体験を踏まえて
真剣な顔で美保の横でこう言うのである。



さくら「お兄ちゃんのいう通りよ。
   もしほんとにこのまま別れ別れになったらどうするつもり?




      



さくら、はっと気づいて、サイフを取り出し、
小銭を美保さんの手のひらに渡し、



さくら「これ、おつり。 渡してあげて、と美保さんの肩を押すさくら。



       



さくら「…さ、と美保さんを優しく再度押し出す。


     



この時のさくらの表情は明るく強く、
さながら第1作の博を駅まで追いかけるあの力強さを
自ら再現しているような眼だった。


決意したように、
一転全力で参道を駅に向かって走っていく美保さん。



     



見送っているさくら。

美保さんが行ってしまった後、
暗い表情で下を向き淋しい気持ちを隠せない寅。




     




とぼとぼ二階に上がっていく寅。


さくらがその様子を見ている。



     






午後の柴又駅  ホーム


美保のテーマが優しく流れる


傷心の健吾が悲しそうな目で電車を待っている。

しばらくして


美保さんが向こうから現れる。



      





美保さんに気づく健吾。

美保さん健吾を見つめ、



     




美保「おつり

と、手の平を出し、微笑む美保さん。



     





ちょっと微笑んでお釣りを見、美保さんを見る健吾。



     





健吾素早く美保さんを引き寄せ

手を繋いで、そのまま自分ジャケットのポケットに
彼女の手を入れる。




     




そして照れて口笛を吹く。



     




電車が入ってくる。


そっと健吾の腕を持つ美保さん。



      




とらや  二階 荷物部屋


夕方、暗い部屋で美保さんたちの
婚姻届を書いている寅。


ちょっと早すぎるって(((ゞ(^^;)


さくら、上がってきて、婚姻届を見て驚く。


メインテーマが静かに流れる。



裏の保証人の覧に車寅次郎と書いてある。







寅「保証人ていうのがよ、二人いるんだってよ。
  だからもう一人はおまえがなってやってくれよ。
  それが一番安心だよ


さくら、寅の悲しい表情を見ながら静かに頷く。

さくら「わかった

さくら「美保ちゃん、喜ぶわよきっと




保証人の欄がアップになって

車寅次郎

葛飾区柴又七丁目

本籍  同じ

印鑑が『寅』の字(おそらく指輪の印か?)



しかし婚姻届を見つめるさくらの顔には悲しみの色が。



      



何気ない顔で、夕飯のために下りて行く寅だった。







正月 江戸川土手



満男がガールフレンド立ちと歩いている。

あけみが自転車ですれ違って挨拶しても
満男は冷たい。




     



あけみ、怒り心頭

あけみ「ただじゃおかないからね!!
   一生足引っ張ってやる!
このセリフ大笑いしました(^^;)



      






さくらの家 台所



      




美保さんと健吾が遊びに来ている。


さくら「エンゲージリング!?まあ素敵あれから婚約したんだね(^^)


さくら区切り方、違うだろ。エンゲージ リングだよ。



      




【さてここでクイズです】

さくらたちのアパートや一軒家に訪ねてきた寅の愛するマドンナは
美保さんも含めて何人いるでしょうか?(^^)
あ、全然難しくないですね。なんのひっかけもありません。



答え↓


まずは歌子ちゃん。
そしてリリー。
そしてこの美保さん。

まずは3人。

あ、ちなみに泉ちゃんは満男の愛するマドンナです
寅は愛していません(((^^;)

そして実はもう一人いるんですよ。わかりますか。



それは
第5作の節子さんです。
ラストでさくらのアパートに訪ねてきてました。

で、
答えは4人です。


物語に戻ります。



健吾が結婚したら絵を諦めて看板屋だけをすると約束したらしいが、
美保さんは、そういう我慢をして欲しくないようだった。


美保「
なんだか気の毒で…だって、
   あの人の夢なんだもの。絵描きになるのは


さくら「
フフ、大丈夫よ。健吾さんは簡単に
  自分の夢を捨てたりするような人じゃないわよ


美保「
じゃ、口だけかな

さくら「
そうよ

美保「
フフフ


      



「ジンマ」というあだ名を暴露してしまう美保さん。


さくら二階の健吾に茶の間から呼びかける

さくら「ジンマさーんまあ、なんともお茶目なさくらさん(^^)


みんな大笑い。



      



健吾は二階の満男の部屋でハーモニカを吹いていた。



      



椅子にはかつてすみれちゃんが奥尻島できていた緑のハンテンがかかっている。
このハンテンはもともと第24作でさくらが着ていたもの。
第34作では寅が着ていた。



そのハーモニカの音色と寅の年賀状が重なっていく。



新年明けましておめでとうございます。

健吾様、美保様におかせられましては
平和な正月をお迎えのことと存じます。

お二人のご幸福を心よりお祈り申し上げます。
小生、相も変わらず、青い鳥を求めての旅暮らしでございます。



正月元旦  車寅次郎 拝




そのころ寅は…



芦ノ湖の遊覧船(海賊船)乗り場付近


鳥の笛を売っている寅。



     



同年に公開された「キネマの天地」
で主役の小春役をした有森也実と父親役の渥美清とご対面。

友人役の一人にお笑い芸人のエドはるみがいる。
顔はわかりづらいがエドさんなのである。
エドさんは「キネマの天地」でもチョイ役で出演。



     



この第37作でもチョイ役をしていた出川さんも
同年の「キネマの天地」でチョイ役。
なんとセリフあり!




           




寅「これを吹くと幸せになる青い鳥いかが?


小春「うそ〜〜、普通のおもちゃでしょと吹いてみる。



      



寅「あー、吹いた。吹いたからあんた幸せになっちゃうよ

小春「だって、おじさんだって今吹いてたじゃないそらそーだ(^^;)



      




寅「だから幸せだろう

小春「どんなふうに?

寅「こんなきれいなお姉ちゃんがそばに来てくれたじゃない。
  幸せだ、ハハハ


小春「フフフ!!ユニークゥ!!

寅「へへへ、ね


小春、友達を呼んで

小春「この人ユニーク!!フフフ


娘さんの中で白いコートを着ているのがエドはるみさん。



      



寅、娘3人に

寅「おめえたちがユニークだよ!フフフ


みんなでキャッキャ騒いでいる。

寅「さあ!もうこうなったらね、どんどんまけちゃう!
  やけのヤンパチ、日焼けのナスビ色が黒くて食いつきたいが、
  あたしゃ入れ歯で歯が立たないよときた!!




     



海賊船が停泊している。
向こうにはくっきり富士山が見える。


     


カメラ芦ノ湖を箱根峠の高台から映していく。

手前に小さく遊覧船乗り場、湖の向こうに聳える箱根の駒ケ岳。
小さく遊覧船が遠ざかっていく。




    






終わり





6月は『第39作寅次郎物語』超簡単ダイジェスト版と
『第24作寅次郎春の夢』本編完全番完結編をアップします。
気長にお待ちください。











「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索


このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







439

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 たぶん…一週間に一度くらいアップかな…





ついに発見!健吾の働く看板屋とらくだ公園  


2010年5月22日 寅次郎な日々 その439

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


ここのところも仕事や用事でなかなか第37作「幸福の青い鳥」のダイジェスト版の作業が終わらない。
そして第24作「春の夢」本編完全版の完結編にいたっては作業もろくに始めていない。
ちょっと時間ができたのでさあ、作業するぞと意気込んでいたら、息子が面白い本を見つけてきたので
読みふけってしまった。

本の名前は「日本辺境論」(新潮新書) 内田樹 著
世界でも類を見ない日本にしかない特異な思考、行動様式を、
余計なアカやゴミを一切払いのけて単刀直入に論じた永遠不滅の日本人論だった。
岸田秀さんと養老孟司さんを混ぜて、より一層わかりやすくしたその展開に
不覚にもぐいぐいのめりこんで最後まで読んでしまった。


というようなことをしていたので、折角作った時間も風のように過ぎていった(TT)

それに第37作に関しては絵描きの卵である健吾と美保さんが出会ったあの夜の繁華街や
健吾の看板屋さん、落ち込む健吾を慰めたあの川沿いの公園などがすべて皆目どこかわからなかったので
どういにもこうにも進みづらかったのだ。
もちろんどのサイトにもどの本にも彼らの場所は何も書いていない。脚本にも具体名は何も書かれていない。


作っている私も健吾同様落ち込みがちだった。

イメージ的にはあの街は下町。脚本にも『下町』とは書かれている。
そんなに柴又から遠いとも思えないが、やや上野に近い気もする…。しかししぼりきれない

健吾の働く創美社という看板屋さんは映画で観るとちょっと大きめの川のほとり。

健吾は美保さんと食堂を出た後再度出会った時自転車に乗っていたので
あの最初の繁華街とその看板屋はもちろん自転車で行ける距離。


で、いよいよ第37作をアップしないと、と思い、今回最後のつもりで、もう一度目を凝らして、
本気で(^^;)本編の中で映る彼らの出会った街の風景をゆっくりスローで見ていった。


これは大きなヒントを見つけました!

ほんの0,5秒だが、繁華街の駅前を通るバスの前部分が映る。
そこには「
新小岩駅」と書かれてあったのだ。総武本線の駅だ。
そんなに柴又からも遠くない。



       


ここが総武本線『新小岩駅』の前かどうかはわからないが少なくてもこの時点でその近くを通っているのは間違いない。


    


そこで本編でそのバスが一瞬映る街並みを画像化し、
「新小岩駅周辺」に特定してストリートビューでチェック。

より繁華街なのは
新小岩駅の南口なので、南口の横断歩道をぐるぐる回ってみる。
なんとなんといきなりかなり似ているアングルがあった。



    

映画のシーンでは、
歩道橋向こうに大きなビルが見えるが↑、


ストリートビューでは違う小ぶりなビル↓に変わっている。
これは駅南口前あたりから南を見た画像。

    


歩道橋のあり方がかなり似ている。
ビルは建て替えられたのかもしれない。
なんせ20年以上も経っているのだ。



そこで、超伝家の宝刀である、『
ちょっと昔の航空写真(2005年と1997年)
の2時代を使って、それぞれタイムスリップし、俯瞰&ズームしてみる。



赤い矢印線が映画での撮影角度。
青丸がバスが通った向こうに歩道橋越しにビルの有った場所。

2005年
の時点ではすでに、向こうに見えていた大きなビルは案の定取り壊されていた。


      




では
1997年はどうかと言うと、おお!!まだあのでかいビルは健在している!!
このあと2000年も見てみたがまだあのビルは有った。
つまりおそらく20世紀のうちはあのビルはまだあったことがわかる。

      



これで美保さんと健吾がいた繁華街はほぼ決定。
しかし新小岩だと確定する確かなものがもう一つ欲しい。


で、最初に映るこの夜の繁華街にもどる


メガネ宝石の『時宝堂』という店の看板が見える。

検索してみるとしっかりあった!
新小岩1丁目43番地
なんと新小岩駅南口のすぐそばだった。
これも画像をさぐるべく新小岩駅南口周辺をぐるぐる回ってみる。


      



ありました!同じ場所!南口から南西へ向かう路地入口。
同じく新小岩1丁目43番地

昔はパチンコ屋があった場所がゲーム&漫画喫茶になっていた。
『時宝堂』はもうそこにはなかった…。



      



それでもう少しこの南口周辺を検索で調べてみると
なんとここには、韓国料理屋さんが多いエリアがあるのだ!

そういえば、美保さんが食べていた食堂が映る直前にこの映像が先ず入る。
これはどう見たって韓国料理の店がズラリだ。

向こうに見える街灯の鉄柱に『一番街』と書いてあるのがギリギリ見える。


          


この駅南口のあたりはいろんな商店会が混在している。
「一番街」と「一番通り」はすぐ隣。
残念ながら小さなエリアなので画像はないのだが
「一番通りとほぼ同じ雰囲気」

   


映画で映った『一番街』のすぐそばの『一番通り』 このあたり韓国料理の店が多いらしい。


          




で、そのあと美保さんはそのあと体調を崩し、倒れてしまう。
この南口から北口へ渡るガード入り口近くで健吾に助けられそうになるが、
美保さんは健吾を怖がりそのままガードをくぐって行こうとするがそこでチンピラに
絡まれてしまう。

ストリートビューでその前を通ってみた。


     




その先の南口から北口へ行くガード下をストリートビューで通ってみたのが下の2枚の画像。

     

     

     



     



映画で使われたガード下の面影が今も残っているようだ。

天井のライトと壁に開けられている窓のような穴。かなり今も面影がある。

もうこれで決まりかなと思うが再度映画を物語のままチェックし続けると
こういうシーンがさらにあった。


絡んでいたチンピラをけちらしたあと、
健吾が病気の美保さんを連れて、ガードから北口に上がり、
北口駅前の横断歩道を渡るシーンだ。

ここで信号の向こうに見える看板に注意

横断歩道の向こうに工事中の鉄の壁があり、
小さな看板が貼りつけてあるのだ。




    


アップにしてみると「うちだ」というステーキ屋さんらしい。

電話番号が書かれている。

897−0147

検索してみると
 東新小岩1−8
ちょうど北口の目の前。

電話番号も下4桁は今でも同じまま。


      


近年まで営業されていたようだ。
「うちだ」という字体が映画に映っていた字体とぴったし一緒。


      


ここまでを軽くまとめると、
まず美保さんは新小岩駅南口の『新小岩一番街』の路地にある
食堂でラーメンを食べ、そこでとらやに電話をするがとらは留守。
体調が悪くなって北口へくぐるガードの入り口でうずくまってしまう。



その後あのどこかの川のほとりにある健吾の職場兼棲み家にフラフラの高熱でたどり着くわけだ。

と、いうことは普通に考えれば徒歩圏(20〜40分)あたりの川沿いということになる。

とりあえず地図で川を探してみる↓


      



上の地図Aの位置が新小岩駅。
その近くにはあの大きな荒川が流れている。
その右(東)がくねくね曲がった荒川よりも狭い川幅の中川。
それよりもうちょっと東にはもっと川幅の狭い新中川。
そしてさらに東にお馴染みの我らが江戸川。

逆に荒川より左(西)すぐにはもっともっとさらに川幅が狭い旧中川。
そのまた西にはご存知隅田川。

まあざっと見てこのあたりの橋の辺りだとは思う。

しかし、ロケは時として全然違う遠い場所でも行われるので
大抵のロケ地探しは徒労に終わりなかなかつきとめられないのが現状。


しかし、せっかく二人の出会いの場所がわかったのだからここは頑張って創美社を
探し当てたい。


まずは一番目立つ
荒川から見てみる。
大きな川なので雲をつかむような話だが、
とりあえずストリートビューで川沿いを1qほど歩いてみたのが下の画像。
どこもかしこも荒川沿いはこのように土手がコンクリートでかなり高く積まれている

これは大きな川ゆえに自然災害時も影響が半端じゃないためにこうなっているのだろう。


      




映画に出てくる『創美社』の前と比べてみると、あきらかに『創美社』の前は
このような大規模な土手にはなっていない。



     


ということで、『創美社』の前は荒川じゃない。


次は新小岩駅から一直線に北西に歩いていくと30分ほどでブチ当たる
蛇のように曲がりくねる『中川』を探ってみる。

本当は新小岩駅から線路沿いに西に、つまり荒川の方へ歩いていくとその手前ですぐに
荒川に沿うように中川が流れているが、このあたりは首都高速中央環状線が中川に沿って
走ってるのでこのあたりではない。


とりあえず適当に任意の場所を中川のほとりに沿ってストリートビューで降りてみる。
お!ほどよい土手の作り。土手のこぢんまりとしたコンクリート

うすみどりの柵
のあり方が映画で映る柵に似ている。正解は中川かも!!


     






ここは、美保さんが創美社を訪ねて行く時の
橋の様子が最大のポイントになる。
あの橋には
水色の水道管が横を通っている。
これを探さなくてはならない。

こういう時は
航空写真が一番簡単で早い。
いろいろな橋を俯瞰でランダムに次々に見て行く。



    




中川に掛かる橋、どれも特徴的なので違いがよくわかる。残念ながら2つとも美保さんが渡っていた橋とは違う↓

         




        

3つめ、橋の横に水道管らしき一本のラインが!!これは可能性がある!
さっそくストリートビューで降りてみる。きたきたきた!

     



上の、3つめの橋に上空から降り立ったところ。
おお!見事に右側に水色の水道管がある!きたきたきたきたきた!!!!

映画と再度見比べてみる。

     



おおお!横の
欄干の形が同じ!水道管のあり方も当時の面影のまま。決まり(^^)


     




一気に橋のたもとの『創美社』までストリートビューで走って行く。


水道管の周りの雰囲気、道の傾斜角度、
川沿いの歩道のあり方。金網のネット、橋の向こうの電灯
などなど、類似点が多数!


ここだ。もうこれで決まり。



地図で番地調べると。

葛飾区東四つ木2丁目5番地
だった。

あそこは葛飾区だったのかあ〜。
最寄りの駅は京成四つ木よりも京成立石の方が近い。
京成立石駅と言えば、
水野早苗さんが一時立石の友人宅に身を寄せていた。

残念ながら『創美社』
のモデルになったプレハブは今はもういない。(あたりまえか(^^;))


          



      



そして極めつけは『 隠し剣 ちょっと昔の航空写真 』!
ストリートビューではすでになにか建物が建ち始めているが、
この航空写真ではまだ空き地。



       

      





『創美社』はこれで分かった。


さて、ここまで来たら最後の難関に挑戦!

あの公園!


公募展に落ちてしまった健吾が寂しくハーモニカを吹いていたあの小さな川沿いの公園だ。
美保さんは創美社から歩いて健吾を慰めに行く。

印象としては遊具はあまりなく、
動物のオブジェが何個か地面にあった。
ベンチは4つほど。水飲み場。吸殻入れ。ゴミ入れ。
全体にさほど大きくなかった
川からはすぐ。


公園の名前は分からないが
大きなコブのらくだが置いてあったのが
とても印象深かった。

だから私はあの公園のことをひとりで勝手に『
らくだ公園』と普段は呼んでいた(^^;)ゞ



         



     



まず看板屋の社長さんの発言

この川下っていくと小さな公園があるんだよ。
 たぶんそこで昼寝してるんじゃないかと思うんだ。
 あいつのお気に入りの場所なんだよ



川を下る」っていう発言をとりあえずは信じて、
ストリートビューで歩道沿いに川を下ってみる。

ところが行けども行けども公園などない…。

唯一公園らしき空間は↓の木が沢山植えられている場所だったが、どうも違う。。。
だいたい映画に出てくる『らくだ公園』と比べて川からかなり離れてしまっている。




      





映画では川のすぐそば



      




そしてもっと川を下っていくと、区立中川中学があって、首都高速環状線がドーンと現れる。


おかしい??

歩いてすぐのはずなのになぜないのだろうか?


ひょっとしてこの『らくだ公園』だけかなり離れたところでロケをしたのだろうか。


もう一度原点に戻って美保さんが『らくだ公園』を探しに行く画像を見てみる↓



    




そうか!!川がぐいっと曲がっている!!


しかし…創美社から下って行っても首都高速までの間に緩やかに曲がってはいるものの
あれだけしっかりした鋭角のカーブはどこにもない。




    



とはいえ、動物的感で、あの『らくだ公園』は中川沿いにあると私は思っている。
歩道のあり方や金網のあり方、川のあり方などが創美社の部分と同じだからだ。


ひょっとして。。。
映画では「川を下って行くと」と言っているが
ロケではほど良い公園を見つけるために
逆に川をさかのぼって行ったのではないだろうか。
『創美社』より上流には川が二つほど
かなり鋭角のカーブを描いた場所があるのだ。



下のAとBで囲った場所がそうだ。



     



上↑のAとBのようにしっかり川が曲がっていないと、この映画↓のようには見えない。



     




まずは
『創美社』から結構近いAエリアからストリートビューで降りてみる



     



Aのエリアで怪しいのは、
唯一木々が茂っていて民家が近くにあるこの場所のみ

なんか違うような気がするが、まずはストリートビューで地上に降りる。


     



降りると、なんとなんとなんといきなりドーンと
らくだが見えた!!!。
うそのようにドーンといきなり目の前に現れたんですねこれが(^^;)
いや正直自分でもびっくりした。
上から見ると丸い空き地に木々が茂っていて公園には見えなかったもので(((^^;)


        




       



らくだはもちろんのこと健吾が座っていたベンチも健在!!
水色の煙草の吸殻入れ、水飲み場もまだ有った!!20年以上の
歳月に耐えていたのだ!う〜〜〜ん感動(TT)

『らくだ公園』は生きていた!!なんだか無性に嬉しい(^^)


      


      


『らくだ公園』は葛飾区東立石1丁目22番地にあった。




公園の近くにあった二階建てのアパートも今も健在!!

       


    





今回のロケ地探しに基づいて簡単に地図でまとめてみると
のようになる。


物語的には
新小岩の南口『一番街』の韓国料理屋が集まるエリアで食事をした後
美保さんは体調を崩し、北口へ向かうガードの近くでうずくまってしまう。

健吾に心配されるがふりきってガード下へ向かう。

ガード下でチンピラに絡まれているところへ再度健吾に助けられて、
二人して、北口に上がり、前の平和通りを一直線に平和橋へ。30分ほど歩いて
中川にかかる平和橋を渡ってすぐのところにある健吾の住処である『創美社』にたどりつく。

それから何週間もたって、公募展に落選してしまった健吾を慰めるために
社長さんに言われた通り中川を下っていくが、見つからないので、念のために
上流にも足を運ぶ。ぐるぐる回って、ユータンして上流から歩いてきてようやく『らくだ公園』を見つける。
『らくだ公園』の位置は社長さんの覚え間違いで、下流ではなく上流だった。

と、まあ・・・無理やりこういう流れなんでしょうね(((^^;)




    


それにしてもいきなり『らくだ』が画面に現れたときはびっくりしたなあ…。
2時間半の長い長いロケ地への旅でした。




チャンチャン(^^)




    





なんとか5月末には
第37作「幸福の青い鳥」のダイジェスト版をアップできると思います。





「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索



このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







438

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー





発見!リリーの母親の住む街 五反田新開地  


2010年5月12日 寅次郎な日々 その438

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


私は寅のマドンナはやっぱりリリーだと思っている。
リリーは寅と同じくその幼少期は恵まれないで育っていった。今も放浪癖が残る。
そういうところは寅にソックリだ。
最後は寅の悲しみが分かる人でないと真の意味でマドンナの資格はない。


リリーの父親は真面目な印刷工で仲が良かったが、リリーは母親には捨てられてしまったのだ。
だからリリーは父親を慕い、母親を恨んで生きてきたところがある。

そんな悲しい彼女の運命が見えるシーンが第11作「忘れな草」にある。

リリーの母親がリリーにお金の無心をするあのシーンだ。
リリーは情けなくて母親に

親のつもりなの、それでも。はっきり言って、私あんたなんか大嫌いよ!
いなくなればいいと思ってんの


と、なんともキツイ言葉で母親を突き離しながらも、
それでも母親に会いに来て、そしてお金を数万円渡してもやる。
恨んでも憎んでもやはり血のつながった母娘なのである。
リリーはやはり母親が恋しいのだ。


そんな母親が住む街「蒲田」…。
と昨夜までは思っていた。


電柱の質屋さんの住所(大森)やいろんな人々の意見を総合して判断すると
蒲田付近だと思い込んでいたのだが、なんと新事実がわかったのだ。

と、言っても自力でわかったわけではない(^^;)ゞ

昨夜、
熱烈な寅ファンである文京区に住むTさんからメールをいただき、
リリーの母親のアパートがピンポイントで判明したのだった。

なんとなんと蒲田よりももうちょっと北の
『国鉄五反田駅』の目黒川沿いだったのだ。


まずは肝心の部分。つまりそれを確定するにいたる『証拠』の部分の話。
私が確信を持つためにTさんが紹介してくださった昭和60年の『写真』↓がここにある。

中村さんという方が運営されている古い都会の町並みを写したサイトに
まさにリリーの母親が住むあのエリアの写真があったのだ。
これらの写真を映画のそれぞれのシーンと照らし合わせてみる。2枚ほど拝借(すみません)。


この写真は、リリーが歩く新開地飲み屋街にあった『ドリーム』という店が写っている貴重な写真(昭和60年撮影)。
その下の画像は、映画本編でリリーが歩く東五反田1丁目。電柱の住所がかろうじて読めるような感じ。
この映像に『ドリーム』の青い看板ががまさに写っている。
この写真は凄いの一言!これぞ五反田新開地!
これがなかったらTさんでさえピンポイントで詰めていけなかったと思う。
それにしてもTさんはよくこの写真を見つけられた。まったく凄い集中力だ。














そしてもうひとつこの写真↓。これで完全に決定!
まさしくリリーの母親が住んでいたアパートの隣の中華料理屋さん。
つまりこの隣(JR側の方)が母親のアパートだと言うことだ。
映画では中華料理屋だとはわからないが軒先の雨よけ日よけビニールテントで同じだとわかる。







上の写真と下の画像を見比べていただければわかるが、平和軒の軒先のテント模様と、
真向かいの家の縦のストライプの丸いテント!(写真左端ギリギリで写っている)が映画の中でも写っている。
平和軒の方はひょっとしてテントを新しくしたかもしれないが基本的には同じ模様。向かいの家の丸いテントは全く同じ。

もちろん
映画ではカメラの位置は上の写真とは逆である。
だから映画ではアパート2階からは国鉄ではなく逆方向の東急池上線が写っている。
当然中華料理屋さんの軒先は映画では左側に映っている。



これで、100%間違いなく、Tさんが言われるように、リリーの母親のアパートは
五反田新開地、中華料理屋『平和軒』隣(国鉄鉄橋寄り)の目黒川沿いのアパートの2階だ。
上の写真↑では道が折れ曲がっているのでアパートは見えない。



下の映画と上の写真は撮っている位置が逆。

      






    
母親の向こうに見える東急池上線『五反田駅』








そこで私も少しは自力で理解しようと思い、
まずは大づかみでそれを確かめるべく、地図や航空写真を見てみた。

場所は東急池上線の五反田駅とJRの線路、そして目黒川の3つに挟まれた三角地帯だった。
このエリアは昔から五反田新開地と呼ばれていたらしく、歓楽街.飲み屋街だったそうだ。


ただ残念ながら再開発の波の中でこのあたりのエリアはすべて取り壊され、
現在は下の航空写真のように目黒川沿いの飲み屋街は小奇麗な遊歩道になっているのである。
そしてあの、リリーが歩いていた左側の飲み屋街はご覧の通り
↓ホテルロイヤルオーク五反田に変わっている。







そこで伝家の宝刀
『昭和38年の航空写真』を使って同じエリアを見てみる。
そうすると、映画の中でリリーが歩き、リリーの母親の住んでいた
あの『五反田新開地飲み屋街』の道がしっかり写っている。

青印はドリームという店があった位置。
黄印は中華料理屋の横にあるリリーの母親が住むアパート

黄緑印は二人が会話していた国鉄ガード下に近い場所。


赤矢印
は映画の中のリリーの進路






つまり、リリーは、上の地図(昭和38年の航空写真)の赤い矢印線のように
東急池上線の高架下あたりから、五木ひろしの歌が流れる中、『ドリーム』の前を通り。
アーチ型の『新開地』看板のかかる飲み屋街のメインストリートを
100メートルほど東に歩いてきて、道の右にある目黒川沿いの母親のアパートの下に着き、
二階の部屋にいる母親に声をかけ、
ちょっと国鉄鉄橋よりでお金を渡し、母親と別れたあと、国鉄のガードをくぐって帰っていったのだ。

母親のアパートの住所は
品川区西五反田1丁目9番地




今回五反田だと教えてくださったTさんの凄いところは、
それを自らの目で確かめるべく、自分でも五反田に行かれ、詳細な調査をされていることだ。
都市開発後なので跡形もなかったらしいが、道からの電車の見え方は同じだったとおっしゃっていた。





ただ…今回のことでひとつだけ疑問が残る部分がある。

上にも書いた通り、
リリーが歩いていくあの「ドリーム」がある新開地メインストリートの先右側に「平和軒」があり、

その隣に母親のアパートがあると思われる。これは100%正しい。間違いない。

しかし、リリーがドリーム付近の道を歩いている時にはるか向こうに見える
国鉄の高架(鉄橋側面)の形が
、その数分後、リリーが母親と話している時と若干違うように見えるのだ。

これはどう考えればいいのか…。(下の写真をよく見比べていただきたい。)


ドリームの前から小さく見えるあの貨物列車が通過する国鉄の高架は、
リリーが母親と別れて去っていったあの高架とは同じなのか、違うのか?

リリーが歩いていく向こう100メートルあたりに国鉄の高架鉄橋が見える。
よく見ると、黄色いペンキの上、鉄橋側面のマス目が上下に二列ある。

ただし国鉄ガードの近くで道が右に曲がっているのでドリームあたりからは
ガード下の道の左半分しか見えない。道の真中の黄色いラインに張り付いている
それゆえ、赤丸標識(2,9b)は、ここからは見えない。

                                              アップにすると上下の縦幅がマス目がしっかり2列
                                                             

 ⇒   




こちらの高架のサイド(グレーの部分)はマス目が横一列しかなく高さが短い      一方これは上下のマス目が2列
                                                        ただし、映っているのは道の右半分。
リリーの左端に高架に張り付けられている「2,9」の
赤丸標識が見えるので
川から
道の真ん中までずっとマス目は一列だと考えて良いと思う。↓


                             




やはり、あのシーンを再度見ても、
リリーが『ドリーム』の横を歩いていく向こうで茶色の貨物が通っているのであの線路は東急池上線ではなく
当時の国鉄の線路であると今も思う。目黒川を右手に見て歩いていくのだ。
地図で見てみると五反田で目黒川にかかる国鉄の鉄橋は昔からこの位置だけ。

ということは、
角度によってあの国鉄の高架、鉄橋側面の形の見え方が違うということなのだろうか。

会話のシーンではリリーの左端に丸い交通標識がわずかに見えるので
道の真ん中までは鉄橋の側面はマス目横一列であることがわかる。

遠く見えている鉄橋左のあの上下二マスは手前の太い電線が横に通っているのが
混ざって映っていただけなのか?それにしては縦の線と同じくらいはっきり横の線が映っている。
それともし電線だとしたらドリームから遠目で見た時のマスの形がいやに長方形なのが気になる。
あのマス目(黄色いラインの上)はほぼ正方形だということが
母親親とリリーの会話の場所から大きく見えるからだ。


あえてこじつけるなら道の左半分から道の端までは強度を保つため&危険防止安全性確保のために二マスにした。
右半分以降は一マス…。ってことなのだろうか。まあ、そういうことはありうると思う。
おそらく真実はそういうことなのかもしれない。





また、草の土手や木の柵や捨ててある
ガラスの戸などは同じなので、
やはりドリームあたりから遠く見えたあの鉄橋とこのリリーが母親から去っていった場所は同じ位置だと思う…、
同じ映画の同時刻の同じ場所なのに高架の側面の見え方がこうも違うのはある意味興味深い。


ガラスの戸や水色のゴミ箱に関しては動かされているので
スタッフがそのたびにわざわざ動かしていたのかもしれない。







両方のシーンとも捨ててあるガラス戸が見える。↓位置はずらしてある。

    






息子が上の鉄橋説明の俯瞰イラストをさらさらっとスケッチ風に描いてくれた。

高架.鉄橋はこうなっていると推測。
道の右側の鉄橋のサイドは一マス。ガードに張り付いた【2,9b】赤丸標識から左は
補強&危険防止のためサイドの鉄は二マス。

リリーの母親がリリーに別れ際に捨て台詞をはかれ、
泣きながらリリーの背中を見つめている様子がさりげなく描かれている。

アーケードの位置が違っているのはご愛嬌((^^;)






■あの鉄橋サイドの区切りの横線はひょっとして手前の電線なのか。

■道の左半分以降だけ強度を保つため&安全性確保のために二マスにしてあるのか。

 



この鉄橋の構造謎が解ければ安心して熟睡できるのだが…。
困った〜〜〜(^^;)ゞ





      






「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索



このページの上に戻る
最新のコラムはこちら










                                 

437

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 バックナンバー





山田監督の『ヨーイ、はい』  徹底的にこだわり続ける演出 


2010年4月30日 寅次郎な日々 その437

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


4月初めに観た『おとうと』は久しぶりの快作だったが、
あの作品における山田監督の演出の細部が臨場感を持って再現された本がある。

新田匡央さんという方が書かれた『山田洋次 なぜ家族を描き続けるのか』だ。

今まで一部のメイキングフィルムのみでほんのちょっと垣間見ることができた
山田監督の執拗なまでの演出の再現が、一部ではあるが活字で再現されている。

一見なにげない繋ぎのようなシーンに、山田演出の真骨頂がある。
そのことが伺えるリハーサルでの緊迫したやり取りが何箇所か書かれてある。

新田さんがかなりの回数現場に足を運び、記録をとり、時間と労力をかけられたからこそ
なしえた現場のディテール表現が心地よい本だ。

新田さんという方はこれが初めての著作だそうだ。
なるほどである。だからそれぞれの取材に、彼の秘めた気迫が感じられるわけだ。気合が入っている。
近年では珍しい足を使って汗を書いて、取材を何度も執拗に重ねて書かれた映画本だ。

ただ、現場での記録が多いため、一般の映画本としてはなじまないかもしれないが、
山田映画を長く深く愛してこられたファンにとってはこの現場でのディテールの再現は貴重だ。
この点だけ考えても一読の価値はあると思う。


そのディテールの一部をほんのちょっと紹介してみよう。



小林稔侍さん扮する伯父さんの庄平が姪の小春の着付けを見ようと
廊下で手帳に目をやりながら待っている。
茅島成美扮さんする奥さんがドアを開けて「お父さん」と声をかける。
その声に反応して「ん」といいつつ腰を上げ、おもむろに部屋に入っていく、というシーン。

普通に考えるとべつにどうってことのないシーンなのだが、山田監督にとっては
どのシーンも登場人物たちの自然な動きという意味では同じ重要度を持っている。

脚本ではわずか3行のト書きの部分だ。



シーン16

〇〇○ホテル 廊下

一隅に腰を下ろしているモーニング姿の吟子の兄、丹野庄平。
着付けのドアが開き、妻の信子が顔を出し、手招きする。
庄平立ち上がる。


たったこれだけのシーン。



以下新田さんの本文から少しだけ抜粋してみる。↓



山田が発する「ヨーイ、はい」の声でシーン16のリハーサルが始まる。

茅島が「お父さん」と呼びかける。
茅島の声に反応した小林だが視線を上げるタイミングが視線を上げるタイミングが
いまひとつしっくりこない。

山田が小林の動作を逐一決めていく。

「ガチャリ(ドアが空く音)こっちみる。『お父さん』」
山田のこっち見るに合わせて顔を上げた小林だったが、茅島に視線を向けたまま
立ち上がろうとする。

「いや立ち上がるべくちょっと一度目が動かないと。見たままというのは何か変ですね」

目を動かすことに意識が傾いた小林は、ドアが開く音と「お父さん」の間に
タイミングよく視線を動かすことができない。

「違う、ガチャリ、見る。ヨーイ、はい」

こんどは小林が視線を上げてから茅島の「お父さん」まで、ほんの少し間があいた。

「うーん、ずいぶん長いな。ガチャリと言ってから…」

「はい、はい、もう一回いきましょう、ヨーイ、はい」

目を上げた小林が手帳をポケットに収める。
だが何かに見入られたように茅島から目をそらすことができない。

「もうちょっと目がなんとかならないですかねえ。
いったん手帳に目がいくとか。
『お父さん』と言われて(用意が)できたかという感じで(手帳)をしまう。
ちらっとみればわかるじゃないですか」

たまらず、といった様子で小林の傍らに歩み寄り、山田はしばらくの間黙考する。
頭を上げると、急(せ)くように言葉を並べる。

「じゃ『お父さん』で目を上げて下さい。ちらっと見てすぐ目が下へいく。ヨーイ、はい」

小林はどうしても顔を上げたまま手帳をしまおうとしてしまう。

「いや、ちらっと見て、目を下ろして立ち上がる。ヨーイ、はい」

山田の声にかすかな険しさが含まれるころ、
小林は山田の要求を満たす芝居を見せる。
それを塩に現場はテストに入った。

茅島の「お父さん」の声。
小林がちらっと目を上げる。
すぐに視線を落とす。手帳をしまう。立ち上がる。歩き出す。

リハーサルで山田が納得した芝居そのものに見えた。
その時突然山田が芝居を変えた。

「ドアが開いて明るくなる、目が上がるにしましょうか。
 ガチャリ、明るくなる、目が上がる、『お父さん』 ヨーイ、はい」

芝居の最後小林の手帳がうまく内ポケットに入らなかった。

苦笑いを浮かべ「すいません」と謝る小林に構うことなく、

「ヨーイ、ちらっと見て、うんうん、できたかという気持ちで立ち上がる。ヨーイ、はい」

続くテストでも目線が下がらず山田の指摘を受ける。

「じーっと見ているのが変なんですよ。ちらっと見る、『お父さん』。ヨーィ、はい」

どうにか要求に応えてみせた小林に、山田の新たな要求が重ねられる。

「こんどは口の中で『うん』と言って下さい。『お父さん』『うん』。ヨーイ、はい」

うなずいたが「うん」という言葉が出ない。

「いやいや、「うん」と口に出して。『お父さん』『うん』。ヨーイ、はい」

首を上下に動かす動作が大袈裟になった。

「そう大きくうなずかないで、生返事で、ヨーイ、はい」

小林の芝居が終わると山田はうつむいて考え込む。
小林の頷き方に首をかしげる。

「なんか不自然だな。パッと開く。『お父さん』。おおそうかということですからね。
 『うん』と言っても言わなくてもどちらでもいいんですけど、ヨーイ、はい」

どうしても大きくうなずく芝居になる。

「うなずかない。首を振るのが不自然なんですよね」

山田が見本の芝居を見せる。
山田の演ずる「うん」は、首を動かさず口の中で「うん」と言っている。
むしろ「ん」という発音に近い。

「口の中でうんと言えばいい、ヨーイ、…、よーし、見てやろうってことですよね。
ちらっと見る。花嫁の父のような心境で。ヨーイ、はい」

鼻眼鏡にした小林が上目遣いで視線を上げる。

「なんだか怖いなあ」

それからただ単に「見る」だけの芝居を八回繰り返す。
山田は黙って見つめていたが、おもむろに口を開いた。
噛んで含めるような物言いだった。

「あのね、『お父さん』と言われて、ちらっと見て立ち上がる。
 見る時間が長いんですね。
 じっと見ているからおかしんです。
 『お父さん』『よし』という、ちらっと目をやって立ち上がる。
 ちょっとやってみてください。ヨーイ、はい」

悪くない芝居だ。
だが山田はなおも芝居を続けさせる。

「はい、はい。明るくなる、ちょっと見てください」

小林が視線を上げる。山田自ら「お父さん」の声。
小林の癖なのか大きく首を振ってうなずいてしまう。
山田がはじめて声を荒げた。

「いや、うなずかないで!もう一回。ヨーイ、はい!」

視線を上げるタイミングがわずかに合わない。

「いや、違う!明るくなる、目が上がる。ヨーイ、はい!」

現場の緊張が高まる。
スタッフにもそれは伝播していく。
やがてそれは俳優にも影響を及ぼす。
テストのたび、山田の要求の何かが抜け落ちてしまう。

「『うん』って言って!」
「うなずかなで」
「もっと楽しそうに!よっしゃあって感じ」

小林の手帳にも指摘が飛ぶ。

「あまり一生懸命見ないで!指なんかで追わなくていいから。
 漠然と、間が持たないから見ている。ヨーイ…、
 『ヨーイ、はい』で一枚めくってみてください。ヨーイ、はい」

手帳をめくる。ドアが開く。目が上がる。『お父さん』。『うん』。
手帳をポケットにしまう。立ち上がる。ドアに向かって歩き出す。
やっとこなした。

「はい、そう、それでいいんですよ。次、本番テスト」

大きなもので数えられただけでも27回のテストが繰り返された。


長時間の緊張を強いられた」スタッフは、山田の「本番テスト」の声で
ほんの一瞬だけ息を吐く。その弛緩をかき消すように、
間髪を入れず山田の声が響き渡る。

「ヨーイ!」

張りのある声だ。

「顔ではない、目だけでひょいと見上げる。
ヨーイ、はい!一枚めくる」

手帳をめくっている間にドアが開いてしまう。

「違うまだ早いって!ヨーイ、めくるまでが大事なんだから!ヨーイ、はい」

目線を上げるタイミングがまた遅れる。

「明るくなる。(そこで)目線が上がらないと!光を感じているわけだから。ヨーイ、はい」

見上げている時間がやや長い。

「ほんとにちらっと見るだけでいいんですよ。ちらっと。ちょっと見てください」

鼻眼鏡で、目だけで見る仕草が、山田は気に入らない。

「眼鏡を普通にかけて、普通に見上げたらどうなりますか。
 あんまり怖くしないで下さい。柔らかく、楽しそうに見て。ヨーイ、はい!」

延々と続くテストが終わり、山田の本番の声が聞こえたときには、すでに40分近くが経過していた。

「はい、オーケーだね」



以上「山田洋次 なぜ家族を描き続けるのか」からの抜粋でした。
いやあ、実に興味深いレポートだった。


ベテラン俳優さんゆえの染み付いた「色」がその場にそぐわない場合は、
容赦なく自然な色合いになるまでとことん付き合い、根っこから変えていくのが山田監督とスタッフたちのやり方。

このような執拗なまでの「さりげない臨場感、自然な演技」に対するこだわりは彼が若い頃からの大きな特徴であり、
数々の名作はそのようにしてひとつひとつ搾り出すように作り出されてきたことは言うまでもない。
これだけの数を作って長年にわたって弛緩した作品がほとんどないなんてことは
他の映画監督じゃ考えられないことなのだから。

山田監督のあのような感覚がなかったら渥美さんや倍賞さんでさえ、
あそこまでの美しい自然な演技はできなかったと私は思っている。

こんなこと言うのはこのサイトを作って以来初めてかもしれないが、
そういう意味では、渥美清さんのあの大輪の花は山田監督との出会いがなければ開ききらなかったと断言できる。
それは山田監督の方にも実は言えることだったと思う。
あのふたりはそれこそお互いを生かしきることができた運命の出会いだったとつくづく思う。





            









「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索




このページの上に戻る
最新のコラムはこちら










436

                          

『寅次郎な日々』バックナンバー           






外国旅行に行った準レギュラー2人 


2010年4月25日 寅次郎な日々 その436

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


今週はとにかく寒かった。今日も寒い
桜が散ったあとなのに、なぜ?
でも、庭のチューリップはもう少しで開く。

それにそれなりに生業の仕事がはかどったからよしとしよう。

第37作「幸福の青い鳥」のダイジェスト版も今夜からぼちぼち手をつけ始めている。
しかし、第24作「春の夢」の本編完全版の完結編はいやはや全く手をつけていない(TT)


で、第37作「幸福の青い鳥」のダイジェスト版のほうはなんとか4月末にはアップできるとおもう。
もう少しお待ちください。(誰も待ってないって ゞ(^^;))




こういう寒い日は暑い場所の話を少々。

寅は第24作「春の夢」でアメリカ大嫌い、と言ってたわりには
第4作「新男はつらいよ」でアメリカのハワイにマジで行こうとしていた。
登の務めていた旅行代理店がトンズラをしなければ、実際ハワイに行ったのだ。
また、そのハワイへは第41作「心の旅路」で万車券を取った時にもパスポートを用意して再度マジで行こうともしていた。
このように寅はかなりしつこくハワイにこだわっているのだ。でも結局2度ともダメだった。
その代わり、もっと遠いウィーンに行ったけれどもね。
そう言えば、暑いところというとウィーンよりずっと暑い真夏の沖縄にも寅は行ったっけなあ‥。

さくらや博は「ヨーロッパに行きたい」と言っていたが満男の受験期だったので先延ばしにしているうちに
行けなくなってしまったようだ。


寅は身軽だから上記のように外国にも暑い場所にも行っている。
なんせこのシリーズで
飛行機に10回も乗っているのだから、結構あちこち飛び回っているのだ。
決していつも汽車の鈍行ばかりに乗っているわけではない。

新幹線にさえ最低7、8回は乗っている可能性が強い。(飛行機も新幹線も1度の乗り降りで1回とカウント)
(もっとも新幹線に寅が確実に乗ったことが本編で説明されているのは2回のみ)
新幹線の数は多分に不完全な推測なので深く考えないで下さい(^^;))
でも新幹線はともかく
、飛行機10回はほぼ確実。本編でそれなりに説明もされている。

『サイト内検索』をしないで、頭で思い出すだけで
寅の飛行機乗り降り10回がどの物語の時かがほぼ分かった方は完全な『寅さん博士』(^^)



          



最後にもうひとつ。

レギュラー陣(とらやの面々とタコ社長、御前様、源ちゃん)はついに外国には行かなかったが、
このシリーズの『準レギュラー』の中で外国に行った人が二人もいるから驚き。
この二人はどの作品にも出てくるわけではない。
シリーズ後半の作品群で一人は7作品に出ている。もう一人はもっとたくさんの作品に出ている。
参道で働くチョイ役の備後屋や麒麟堂などとは違って、出演している作品ではかなりセリフも多いし、
物語にもしっかり絡んでくることもあるので完全な準レギュラー。
このうち一人はハワイ。もう一人は日本語がしっかり通じる外国(おそらくハワイかグアム)
さて、この二人誰だかわかりますか?(もちろん寅の夢の中ではない)


あ、そうそう、さくらや博もレギュラー陣も『寅の夢』の中ではしっかりアメリカやアフリカなどに行っているが、
それはあくまでも夢なので、ご愛嬌ということでこの話とは関係なし。







「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索





このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







4355

                          

『寅次郎な日々』バックナンバー           







白木蓮と青春の輝き 


2010年4月18日 寅次郎な日々 その435

この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


桜もかなり葉っぱが出てきて、次第に若葉の季節になってきた。

とにかくここ数週間は忙しい。
全く更新ができない状態だ。
4月末には「第37作幸福の青い鳥」を更新する時間が持てると思う。

先日自宅近辺で行ける桜の名所を写真入りで紹介したが
ようやく自宅裏山にある城ヶ山公園の桜が満開になった。
それと同時に白木蓮(ハクモクレン)の花が枝いっぱいに大きな花を咲せていた。後ろは丘一面の桜。

木蓮は香りが良い。なんともいえない新緑の香りだ。



                     
  白木蓮の香りをかぐ息子。後ろは一面の桜
           




東京に住んでいた頃も5月になると木蓮の香りがあちこちからしたものだ。
この城ヶ山は桜もいいし木蓮もいいが、梅雨時の紫陽花もそれは見事だ。



そういえば山田監督の映画のクライマックスで
白木蓮が美しく咲いているシーンがあったことを今、思い出した。

映画の名は『馬鹿まるだし』

主人公は寅次郎の原型とも言える安五郎。ハナ肇さんが演じていた。

寅次郎も安五郎もアウトサイダーだが、寅次郎は実は、完全な根無し草ではない。
優しいさくらやとらやの人々がいつも待っていてくれる。

それに対して安五郎は漂泊者であり、
誰からもつまはじきにあった完全な社会からのはみ出し者である。救いがないのである。
それゆえ、車寅次郎のマドンナへの献身と安五郎のそれは、若干その後の状況が違っているのだ。
安五郎の言葉をそのまま借りれば
「吹けば飛ぶよな旅烏」ゆえの悲哀を散々味わうことになる。

寅次郎はマドンナにふられて、旅立っていくが、どこかで優しいとらやを胸に抱いたままでいる。
つまりどんなに惨めでもその惨めさの底はさほど深くないのである。
それに対して安五郎の孤独は深い。散々つくしてきたマドンナの夏子さんにさらに褒めてもらおうと、
町で起こった人質事件を解決するべく、夏子さんが止めるのも聞かず、安五郎は闘いに行ってしまう。
結局敵のダイナマイトが爆発してしまい、安五郎は足を折り、失明をしてしまうのだった。
その後安五郎は町で見捨てられたように暮らすのだった。
ここに安五郎の人生はどん底に達する。
「男はつらいよ」にはこのような主人公の決定的な悲惨さは見あたらない。

そんなどん底の安五郎の日々の中、

やがて…、夏子さんの縁談が持ち上がり再婚が決まってしまうのである。


夏子さんの婚礼も近いある夜。


目が見えない安五郎は、夏子さんの家に訪れる。

夏子さんに最後の別れにやって来たのだ。


暗い庭の片隅にかつて安五郎が植えた白木蓮の木が勢いよく伸び、
真っ白な花がこぼれるように咲いている。


そこにすっと安五郎が立っている。



                   




夏子「あら、安さん、…びっくりした。黙って入ってくるから」

安五郎縁側まで来て

安五郎「このたびの御祝言、おめでとうございます」

夏子「まあ、あらたまって…、どうもありがとう」

安五郎「あっしはこんな身体なんでお見送りもできませんが、ご新造さん、末長くお幸せに…」

夏子「安さんも、元気で暮らしてくださいね」

安五郎「へえ…」

安五郎、しばらく黙っている。

夏子「いい匂いがするでしょう。安さんが植えてくれた木蓮がきれいに咲いてるわよ」

安五郎「へえ…」

安五郎はまた黙り込んでしまう。


夏子「どうかしたの?」

安五郎「あっしゃあ、申し訳ねえ…」

夏子さん驚いて

夏子「え?」

安五郎「ご新造さん、あっしゃ汚れとる」

夏子「…」

夏子さん、下を向く。

安五郎「あっしゃ汚れております」

夏子「別にどこも汚れてなんかいないわ…」



                




安五郎「へえ…、そうでやすか」

安五郎、沈んだ声でうなだれる。


安五郎は、無法松の告白を真似た自分の一生一代の告白が夏子さんに伝わらないで
空振りに終わってしまったと思い、心が沈んでいくのである。


安五郎を見つめ続ける夏子さんの瞳が潤み、

やがて一筋の涙が頬を伝っていく。


安五郎の気持ちは夏子さんに伝わっていたのだった。



               




しかし目の見えない安五郎にはそのことが分からない。


なんとも悲しく切ない別れのシーンだった。


桑野みゆきさんの白い肌と涙を浮かべた潤んだ瞳は今も脳裏に焼きついている。

『無法松の一生』のあのセリフをそのまま蘇らせた山田監督。
そしてこの安五郎の言葉は、そのずっと後、第34作「真実一路」における寅次郎のふじ子さんへの
セリフに繋がっていったのだ。


山田監督の本格的な映画人としての人生は
この『馬鹿まるだし』から始まったのではないかと私は思っている。

山田監督は近年も繊細な演出で力作を作り続けているが、
『馬鹿まるだし』に代表されるような初期作品のなんともいえないあのみずみずしさは、
その当時にしか作り得ない青春の輝きなのかもしれない。








「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索




このページの上に戻る
最新のコラムはこちら












435

                          

『寅次郎な日々』バックナンバー           







「メロン騒動」と「寅さんの子守唄」 『おとうと』からの副産物



2010年4月8日 寅次郎な日々 その434



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。

春爛漫の大阪の実家で満開の桜を観て、
その足でなんばパークスで「おとうと」を観て、実家に泊まり、先日越中八尾に戻ってきた。



                 大阪鶴見緑地の満開の桜↓。この巨大な緑地は実家のすぐ横にある

       




越中八尾はまだ寒い。いやもうかなり寒い。ちょっと風邪気味。

富山市内のいたち川の桜もまだ5分咲き。
神通川の桜も、家からすぐの城ヶ山公園の桜もまだ5分チョイ咲き。
もう少し待たねばならない感じ。

それでも7年ぶりの日本の桜だ。
スケッチをしたり、ただ眺めたり、満開のあと散り始める頃まで
ちょいちょい見に行こうと思う。



        宮本輝の小説「蛍川」の舞台になった富山市の「いたち川」↓
        ここの地下深くからの湧き水は美味い日本の名水百選。川沿いのさくらはまだ満開まで時間がかかりそう。
        私の家での飲み水は全てここの湧き水を汲んで使っている。

       





追伸
本日4月8日は温かく、5月上旬の陽気。
ひょっとして8分咲きくらいまでいったかもと、スケッチをしに、
私のお気に入りの場所、八尾近くの神通川の土手に車を飛ばした。
ここは桜の名所で土手沿いに何キロも桜並木が続くのだ。
8分とはいかないまでも、7分半…くらいにはなっていた。このままいくともう数日で8分になる。
今日は空に雲がなくかなたには見事な立山連峰がお目見え。
剣岳もくっきり今日は見えた。




       




       




コンピューターグラフィックを勉強している20歳になった息子も最近はクロッキー力、デッサン力の必要性を
ますます感じているらしく、時々私や連れ合いの画材を借りて油彩やデッサンをしている。
私のこのスケッチにも付き合っていた。(写真左端↓)
どうやら来春バリの学校が終わったら日本の美術大学に行く準備をはじめる気配だ。



       




さらに追伸


4月9日富山城近くの松川沿いの桜並木が超満開になった。↓見事。


      








おっと、このコラムは寅ネタ中心だったっけ。
で、映画「おとうと」なのだが、…あ、その前に

この映画の中でちょろっと「男はつらいよ」のあるシーンが2箇所ほど出て来た。
オープニングのあたりで、まず第9作「柴又慕情」の2回目の帰郷のシーンがちらっと登場。

もう一つは、後半大阪が中心になってくるあたり「みどりのいえ」の談話室でなんと第15作「相合い傘」での
あの「メロン騒動」が映った。
ちょうど寅が帰ってきてみんなの前に座るあたりだ。

こういうシーン↓




寅「
いつも言ってるじゃねえかさー、
  ここを自分のうちと思って来いってさ!えー


リリー「どうもありがとう



寅「
う〜んま、そりゃいいや、な!
  メロン美味しいかい?



                         
          
                          


さくら「ウン

寅「よし、じゃ、お兄ちゃんも一つもらおうか。
  じゃ、出してくれオレのナッ


さくら「あ、お兄ちゃん。これ一口しか食べてないから

etc.


ここから大騒動が始まるわけだ。


もっとも、このシーンはスクリーンの端っこで、主人公たちの会話にかき消されるように
小さくさりげなくテレビに映っているだけだから気づかれなかった人が大部分だと思うが、
今度DVDが出たらみなさん確かめてください(^^)






そしてもう一つ、

今回、再確認のためもうひとつのシーン、つまり第9作「柴又慕情」での、寅の2回目の帰郷シーン
をチェックしていたところ、あの幻の名曲『寅さんの子守唄』が使われていることをなんと発見したのだ!

これは最初、数年前に寅友の
寅福さんから聞いた歌なのだが、
私はてっきりレコードだけで、本編では使われていなかったのだ
と思っておいたら、どっこい今回ちゃんとメロディが使われていたことを遂に発見したのだ。

これを読まれている方々にとっては「で、なに」という程度の感想だろうが、
この歌の叙情性を高く評価している私としては本編で使われていて大変嬉しかったわけだ。

ちょうどこの第9作の年(昭和47年)、A面『さくらのバラード』B面『寅さんの子守唄』として4月に発売されていたのだ。
だからある意味歌ができてすぐに本編で使われたというわけだ。

今日の今日まで『寅さんの子守唄』は本編ではついに使われなかったと思い込んでいた私にとって、
大きな安堵の気持ちが湧いて来たのはいうまでもない。
本来はもちろん歌がついていて倍賞さんが歌っている。

下にセリフも含めて全部記しておこう。

この歌の間に入る寅とさくらの『セリフ』がまたたまらなくいいんだよなあ〜。。。





「寅さんの子守唄」


 
作詞 山田洋次  作曲 山本直純
 歌 倍賞千恵子
 昭和47年4月10日発売



寅「さくら!お前元気だったか。
  赤ん坊生まれたんだってな。
  あれ、それ、赤ん坊か!お前 赤ん坊生んだの!」

さくら「バカね、お兄ちゃん、どこへいってたのよ。
    さんざん心配していたのに」

寅「すまねえ…。

  泣くなよ・・・
  ほら 赤ん坊泣いているよ ほら・・・」

ねんねん坊や ねんころり ねんねんねんねこ ねんねして
泣き虫坊やの 見る夢は 四角い顔して ちっちゃい眼
二枚目気取りの 寅さんの 楽しい旅の 夢かしら



寅「おい、なんだかこらあ 赤ん坊にしちゃ
  面白い顔してるじゃねえか、誰に似てるの?」

さくら「みんな、お兄ちゃんにそっくりだというけど」

寅「ばかやろう、ふざけんな。オレに似てりゃもっと二枚目よ。
  どっかちょっと似てるな?デコ坊、お前俺に似てるの、
  かわいそうに、この野郎、この野郎」

さくら「ダメよ、お兄ちゃん 起きちゃうじゃないの」


烏もお家に 帰るのに 小鳥もみんなで 寝てるのに
着たきり雀の 寅さんは トランクひとつの 旅がらす



寅「あーあー、やっぱりてめえの家の畳がいいな。
  ゆんべ一晩中夜汽車に乗ってたからよ。
  なんだかからだ中が痛くって、痛くってたまんないよ。
  三等車の腰掛がかたくって、かたくってよ えー」

さくら「シッ」

夕焼け空に 鐘がなる 今ごろどうして いるかしら
私のお兄ちゃんの 寅さんは 本当は淋しい ひとなのよ



さくら「お兄ちゃん、だめよ、そんなとこに寝ちゃ、
   風邪ひくじゃないの しょうがないわねェー」

寅、寝言を言って「グー…」



ね、なかなかいい歌でしょ。




あ、ところで肝心の映画「おとうと」だが、
映画そのものは直球勝負、映画通が好みそうな旨味のある今風の変化球は一切無し。
ここまでベタでいいのか、これでは嫌がる人多そうだ…と心配するくらいの直球勝負。

だから刺激が好きな若者はこの映画をあまり観ないのだろう…。

それにしても
明らかに鉄郎と吟子に寅次郎とさくらがだぶる。
あの扱われ方、あの啖呵、あのていたらく、あの指にはめた金の指輪。。。
あの披露宴は「男はつらいよ」第1作の「お見合い」&「披露宴」を混ぜたもの以外の何ものでもない。

吉永小百合さんは今もなお美しく清楚で慈愛に溢れている。
彼女はやはりスターの中のスター。
どんな役をしてもそのオーラは変わらない。


そして言わずもがなの、小春と亨にさくらと博の青春がだぶる。
あれもまさしくあの第1作。
蒼井優さんのあの静かなリアリティはなかなかいい。
懐かしい風を運べる稀有な女優さん。


だからこの映画は「男はつらいよ」が好きな人は絶対気に入る。


また、随所に小津監督の構図。
近年ますます小津監督を意識している山田監督を感じる。

山田監督は、この作品の中で「男はつらいよ」を密かに再現しているのだな、と思われた。
これを「くりかえし」「使いまわし」…才能が枯渇した。と見る人もいる…とは思う。


その昔、出来の悪い弟をみんなであいつはダメだと言い合って
ずっと踏みつけ続けることによって
逆に家族のまとまりをつけてきた部分が必ずあったはず。
善良な人間の中に潜む人間の弱さ。
亡き吟子の夫はそのことを見事に見抜いていた。
この物語の陰のキーマンは写真以外では一度も出てこない吟子の夫。


そして陰のキーマン2は、鉄郎とともにもう一人の『異物』である邪魔者扱いの義母の絹代。
彼女の最後の鉄郎に対するなんとも優しい言葉が脳裏に今も残る。
この言葉のために映画を作ったことがわかる。


鶴瓶さんのキャラの立ち方は他の追随を許さない凄みがあった。
「ディア.ドクター」の彼も実によかった。
いや、「ディアドクター」の伊野治医師役のほうが鶴瓶さんの本来のキャラを抑えている分
よりいっそう才能の開花を感じた。
「おとうと」のほうはキャラのたちかたが芸人である鶴瓶さんそのものに近い。
それゆえイメージが鉄郎と芸人鶴瓶が混ざり、そこが実はちょっと欠点にもなっている。


地味だが今回気に入った俳優さんが
横山あきおさん。
この人は異空間を作ってくれる。これが映画に不思議さを醸させる。



大阪と東京、まったく違う場所で
吟子も鳥を飼い、
鉄郎も鳥を飼う。
吟子は鳥かごに入れ、きれいに世話をしている。
鉄郎の飼い方はめちゃくちゃ。
部屋のど真ん中に止まり木を作って、いわゆる部屋での放し飼い。
狭いところでは鳥がかわいそうだと鉄郎は言う。幼い子供のような発想。
あの鳥の飼い方の違いが彼らの全人生の決定的な違い。
鉄郎は独善的、自己本位、そして豊穣でまっすぐな愛。
どちらがいい悪いではない。所詮全ては相対的だから。


そして私は鉄郎を選ぶ。




       









「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索



このページの上に戻る
最新のコラムはこちら








433

                          

『寅次郎な日々』バックナンバー           





第36作『柴又より愛をこめて』 超簡単 ダイジェスト版



2010年3月31日 寅次郎な日々 その433



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


一時帰国が迫っていますので生業が忙しく、かなりアップが遅れました。

それでは本日は
第36作「柴又より愛をこめて」の超簡単ダイジェスト版をどうぞお楽しみください。↓







 寅次郎 二十三半の瞳   風の丘に立つ真知子先生の孤独


栗原小巻さん二度目のマドンナである。

伊豆七島の小さな式根島で教職に人生をかける真知子先生。
真知子先生には美しい女性というよりもっと強さと孤独を私は感じ取れる。

生半可な生き方をしていないことがその強い瞳から感じられる。
そして人間を見るその洞察力もそうとうなものである。

真知子「寅さんもしかしたら独身じゃない?

寅「
えへへ、まあ、お恥ずかしながら

真知子「やっぱり…


寅「あ、そういうのって分かるのですか


真知子「首筋のあたりがね、どこか涼しげなの
     生活の垢が付いてないっていうのかしら



        



財産を持たず、地位も持たず、しがらみも無く、フーテン暮らしを続ける寅。
行き着くところは目を被いたくなるような悲惨な末路が待っていることは百も承知しているが、
それでも自分の美学に従う寅。

寅はどうしようもないバカだが、バかなりに
人生に保険をかけない、その潔い生き様が真知子先生の琴線に触れたのだろう。

「男はつらいよ
のもう一つの隠された魅力が
この寅の野垂れ死に覚悟の潔さにある。

東京から遠く離れた厳しい環境の式根島で子供たちのために強い気持ちで
15年も生きてきた真知子先生にしか分からない『人を見る眼』というものは確かにあるのだ。

離島の先生とフーテンの寅。
このかけ離れた二人には
ある共通した『孤独を伴った覚悟』が存在する。
痩せても枯れても自分の道があるのだ。

そしてわが身をかえりみて、
辺境の地に暮らす売れない絵描きの私には
あの丘に立つ真知子先生の気持ちが分かる気がする。



もちろんこの作品は、木下恵介監督の「二十四の瞳」のオマージュである。
いたるところにそのようなシーンが出てくる。
あの教え子たちが先生に自転車をプレゼントするシーンなどはまるで同じだった。

それにしても映画「二十四の瞳」に出てくる贈り物の「自転車」は素晴らしい
存在感を醸し出していた。あんな自転車今日本のどこを探してもないだろう。
古いという意味ではない。物としてとてもいいのだ。
「柴又より愛をこめて」のスマートで軽そうでひ弱そうな自転車と比べた時に、
日本はいい意味でも悪い意味でもこのように変わったのだとしみじみ思ってしまった。


「柴又より愛をこめて」では当然ながら小学校の卒業生はみな健康で全員島へ
同窓会のために戻ってきていた。しかし「二十四の瞳」では貧困や戦争でたくさんの
教え子が若くして死んでしまうのである。男の子は大部分が戦死。生き残って帰ってきた子も
目が見えなくなってしまって…。そして戦後の苦しい日々。

戦後まもなく、生き続けること自体が大変だが、それでも仕事にリアリテイを持ちながら
物作りができた時代の職人さんによって作られた自転車が、それから30年経って、
衣食住が満ち足り、物が大量生産されている時代の自転車より存在感があるのは
考えてみれば当然なのである。


乗り物の中でも自転車は人間に近い。だからこそ独特の魅力を感じてしまうのだろう。
「二十四の瞳の」あの黒い自転車の存在感とあの映画の存在感はやはり繋がっている。


ところで、気づいている方も多いと思うが、
この「柴又より愛をこめて」というタイトルはほとんど内容と関係ない。
寅が柴又から遠く式根島に住む真知子先生を想うというのならどの作品でも
似たようなことが言えるので、まあ、この場合は深く考えないで言葉の遊びだと思ったほうが
いいだろう(^^;)もちろん007ジェームスボンドの最高傑作「ロシアより愛をこめて」からのもじりだ。


ただ、満男が柴又に訪ねてきた真知子先生と寅おじさんの恋の顛末を予想し、ちゃかして英語でこう言うのである。

『I'm very happy 』 said Tora.From Shibamata With Love

まあ、このくだりが「柴又より愛をこめて」ということなんだろう。




笹野さんの当たり役  下田の長八


私にとって映画「男はつらいよ.柴又より愛をこめて」といえば式根島の真知子先生ではなく、
寅の悪友である、あの遊び人『下田の長八』を思い出す。

第36作「柴又より愛をこめて」で寅の頼みを聞いてアケミを探してくれたあの
スケベで憎めない遊び人長八だ。笹野さんはどんな役でもしっかりはまる人で、くわえタバコをして
ひょうひょうと歩きながらポトッっと口からタバコを落としてしまい、あたふた拾ったり、女の人のお尻を
触って嫌がられて川に落ちそうになったり(^^;)この長八の人が良くて情けないテレテレしたキャラを
完璧に演じきっていた。笹野さんは凄い。

「おうーい!とぅらああ(寅)!」とダレタ言いかたで道から宿の二階に向かって叫ぶ長八。
かっこいいとつい思ってしまう。
           
そしてこれまた、どうしてだか分からないが私はあの長八の雰囲気がとても気に入っている。
ずっと頭からこびりついて離れない。
たぶん私も実はあんなふうにふあふあひょうひょうへらへらと面白おかしく生きたいのかも知れない(^^;)
スケベな遊び人にいつも憧れているのだ。人生に迷いがないのがいい。徹底してテレテレ遊んでいるのが
わかる姿かたちなのだ。

私がもう一度生まれ変わることが出来るなら、絵描きではなく、学校の先生でもなく、ああいう遊び人になりたい。
どんなにしょぼくても、ああいう人生につきものの晩年の悲劇が待っていてもああいう人生を送ってみたいと密かに思っている。

寅があけみを見つけた後もその夜長八と酒を飲み、家に泊まりこむくらい二人は仲がいいらしい。



          




あけみの純情 

この作品の美保純さんは最高だ。


そしてこの物語は言わずもがな『あけみ』がその懐を深くしている。

みなさんご存知のようにあけみは慎吾君と結婚して以来ずっと自分たちの愛情の問題で悩んでいる。
自分たちの愛の形を模索しているのだ。その悩みはもうライフワークと言えるくらい深刻になってきている(^^;)
そして遂にピークがやって来る。
それがこの第36作「柴又より愛をこめて」の家出である。

迎えにはるばる下田まで来た寅の胸で号泣するあけみ。

あけみは寅に聞く

「愛ってなんだろう…」

寅はこう言ってやる。

「ほら…いい女がいるとするだろう…。

男はそれを見て、

この女を大事にしてえ…そう思うだろ。

それが愛ってもんじゃねえか」             

それからあけみと寅の旅が始まっていくのである。



          



旅先の式根島であけみは島の青年に求愛されるあけみ。
彼の心を傷つけたことに耐え切れずあけみはまたもや
寅の胸で号泣してしまうのだった。

このように人生の小さな機微をいろいろ体験したあけみは成長して
柴又に戻っていく。


そして寅は恋焦がれたマドンナの真知子さんに失恋し、悲しみ、
最後はつき物がとれたようにひとり旅立っていく…。


正月の青空の下、さくらの家の二階であけみは遠くを眺めてこうつぶやく…。

「どこにいるのかなあ…寅さん…」

今もあけみの心に住み続ける寅でありました。
あけみはやはりいいねえ〜。

この作品は笹野さんと美保純さんを見てください。









それでは第36作「柴又より愛をこめて」
超簡単ダイジェスト版をどうぞご覧ください。



       




今回の夢は宇宙ロケットもの。

最も日本人らしい日本人というだけの理由で庶民を代表してアメリカの宇宙飛行士に選ばれた寅は、
日本はもちろん外国の有名雑誌や新聞記事に大きく取り上げられている



       


そして打ち上げ本番当日。

「乗り物酔い」するとかなり怖気づく寅。

宇宙服を着ながらなぜか雪駄履き((^^;)

博やさくらが今さらダメだと説得。


寅、さくらに

寅「こないだだって『矢切りの渡し』が波荒い時オレ行ったり来たりしただろ。
  オレあの時2回もゲロ吐いちゃったんだぞ!


何のために渡しを行ったりきたりするんだ(−−;)


       



緊張のあまりションベンがまたもやしたくなる寅。

担当者がやって来て「ロケットは揺れない」と言っているが
寅はもちろん信用しない。

寅「嘘だ嘘だ信じられない

担当者「white men dont lie!

博「白人嘘つかない

寅「そうやって白人インディアン騙した!実に山田監督らしいネタです(^^;



       



それでも無理やり連れて行かれる寅。

…3,2,1、0

ロケットが発射される。

案の定ものすごく揺れる。

あまりの恐怖でションベンをちびっている寅。


NASAの赤ランプ点滅(((^^;)




       







うなされている寅。



国鉄只見線  会津高田駅 待合室


ちびる直前に目が覚める寅。

松居直美さんをはじめとする女子高生たちに教えられて
なんとか走って横のトイレにあたふた駆け込む寅。


       




晩秋の会津を国鉄の汽車が走っていく。

滝谷川


只見線の滝谷川鉄橋





タイトル イン


はつらいよ 柴又より愛をこめて


        


口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。


♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


どぶに落ちても根のあるヤツは  いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ
   泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら  こんな苦労も
   こんな苦労も かけまいに かけまいに♪





名物ボーダラ




只見川のほとり 柳津町


会津桐下駄 小川屋

博とさくらに送ってやろうとするがバカ高い値段に
驚き次々に下駄を減らしていき、女将さんに詫びを入れ笑いながら諦める寅。
と、いうミニギャグ。

普通は最低5千円くらいから3万円まで。


     



会津高田 円蔵寺の縁日



参道の階段を上がりきったあたりでポンシュウと一緒にバイの準備。

只見川つり橋のそば
円蔵寺菊光堂が見える。

円蔵寺の創建は大同2年(807)に空海に命じられた徳一大師が
虚空蔵尊(柳津虚空蔵尊又は福満虚空蔵尊)を奉じて菊光堂を建立したのが始まりとされる。
日本三大虚空蔵菩薩の寺として有名。
臨済宗妙心寺派。山号は霊岩山。本尊は釈迦如来。

現在の菊光堂は文政元年(1818)に火災で焼失した後の文政13年(1830)に再建されたもので、
虚空蔵尊は丑年の守り本尊で菊光堂建立時に働いていた一頭の牛が竣工と同時に姿を消したなどという伝説もあり
会津の民芸品である赤べこもこの地が発祥。





柴又 帝釈天参道


さくらが江戸川土手をくだり題経寺二天門の前で止まる。

この時、焼きそば牛丼屋さんのオレンジ屋根の隣にあった
ピンク屋根の『喫茶店ローク』が店をたたんで無くなってしまったことが
わかる残念な映像。骨董屋さんの志野木さんに代わっていた。
確か…同じ経営者だったと思う。あの六波羅さん。

               


        

               

          第31作ではまだ健在だった。

      




さくらは御前様にタコ社長がテレビに出演することを告げる。
なんとあけみがついに
家出してしまったらしい。


御前様急いで見に帰る。

源ちゃんは携帯テレビ!のアンテナを伸ばして見ている。



        


柴又のみんな、とらやのみんなも注目してテレビを見る。

後に源ちゃんは御前様たちと一緒に事務所で見ることに。
携帯テレビじゃきちんと映らなかったのかもしれない。


        





ワイドショー モーニングeye


『モーニングEye』(モーニングアイ)は、
1984年11月5日から1996年9月27日までの約12年間、
TBS系列で放送されていた日本のワイドショー。



キャスター 森本毅郎



そこで涙ながらに訴える社長の姿はあまりにも切羽詰っていて
大泣き&空気読めなくて完全に番組をつぶしてしまい。
まったくの逆効果だった(TT)



        





柴又参道では

備後屋と麒麟堂「柴又の恥さらしだ

博たち工員一同「うわあーーー…逆効果だなこりゃ



とらや 茶の間のおいちゃん

おいちゃん「あの顔見たら帰る気もおこらねえや

おばちゃん「いやだねえ…いやだねえって…((^^;)

みんな落ち込んでしまう。







伊豆 下田


実はなんと偶然あけみも下田でこの番組を見ていたのだ。



        


ブスッとしてテレビを消すあけみ。


となりの商店の前の赤電話からとらやに電話するあけみ。

加藤敏郎たばこ店



とらや 店

電話を受けて、あけみだとわかって喜ぶさくら。


さくら「あーよかったー…生きてたのォ。
   心配してたのよお、みんなで



あけみは元気な様子、

さくら「それであけみちゃん…、今どこにいるの?…もしもし


        



あけみ「…下田、…そう、伊豆の下田。あとは言えない。
    いつまでここにいるかわかんないもん。

    さくらさん、寅さんどうしてる?…そう、あー私寅さんに会いたいなあ…。
    帰ってきたら、あの、あけみからよろしくって言っといて
」」


        


あけみの部屋の下 弥治川
      




柴又 帝釈天参道


で、そういう時に寅は必ず帰ってくるのだ。

帝釈天参道をさっそうと歩く寅。

源ちゃんもついて来る。


        


川千家の仲居さんが「寅さーん」と呼びかけ、
寅が「よー」と手をあげる。


        


なにげないが、寅がさっそうと参道を歩く小気味良いシーン。
私が大好きなシーンだ。





とらや 店


で、寅がとらやに着いてみると、みんなあけみのことで大騒ぎ。
社長はテレビ局から帰ってきたようだ。


寅を見つけるなり、わーっと寅に群がってくるとらや&社長たち。

寅はなんだかわからないのでとりあえず店先に逃げていく。

みんな寅を店の中に連れて入り、いろいろ世話をやく。



        


寅気味悪がって

寅「お見合いの話だったら断るよ、この前でオレ懲りてんだから」第3作のことかな?

社長涙目で

社長「寅さん!…えらいことになっちゃったんんだよ…うううう

寅「そおかあ…そらあ気の毒に。
  とうとうおまえの工場はつぶれちちまったか…


などと、まあいろいろ食い違いはあったものの
あけみの蒸発をようやく把握した寅だった。


さくらはあけみが寅にとても会いたがっていたことを伝える。

寅、すくっと立ち上がって

寅「わかった、あけみは伊豆の下田にいるんだ

みんな頷く。

寅「オレに会いてえと言ってるんだ

みんな頷く。

寅「かわいそうにナァ…


寅はすぐ出発することを決意、
昔面倒見てやったダチの
下田の長八に頼んで探させるらしい。

寅「社長、万事はこのオレに任せろほんとかよ(^^;)


       



すぐに店を出る寅


どこへ行くと聞かれて

寅「決まってるじゃないか。下田みなとに行くのよ

みんなは一日くらい泊まっていけよというが、
寅はあけみが待っているとすぐ行こうとする。


社長感激に打ち震えて

社長「寅さん、神に誓って二度と寅さんの悪口は言わないよ


こんなことを言ってはいたが
このあと社長は第48作までずっとどの作品でも
寅の悪口を言い続けたことは言うまでもない((((^^;)


      



寅、社長の肩をたたいて、

寅「社長吉報を待ってろよ!じゃあな」と、みんなに送られて旅立っていく。


夜になって博とさくらは満男にあけみの家を教えられる

さくらたちはあけみの家知らないんだねえ〜。
これは意外だった。
あけみはあんなにさくらになついて仲いいのにそんなもんなのかね…。


あけみの夫の信吾に寅があけみを探しに行ったことを伝える。
無愛想な信吾。
あけみがなぜ出て行ったのか微妙に分かる演出になっている。

もともとの性格も無愛想なんだろうが、あけみにかなり怒っている様子。


         


帰り道で満男はさくらにあけみがなぜ寅に会いたがっているか
わかる気がすると言うのだった。

満男「伯父さんのやることはどんくさくて常識外れだけど、
   世間体なんか全然気にしないもんなあ、
   人におべっか使ったり、お世辞言ったり、
   伯父さんぜったいそんなことしないもんなあ…
なるほど(−−)

博「へえ、尊敬してんのか?


        


満男「尊敬まではいかないけどさリアルな寅の位置(^^)

満男照れて自転車こいでいく。





下田市  朝


出ました!下田の長八!

いいねえ〜、この軽さ、このよたり。
笹野さ
んの十八番だね。

よたよた歩いてくる。



ただ歩くだけでなく笹野さんいろいろ実に細かい芝居やってくれています(^^;)


       





寅が泊まる  中長旅館


長八「うおおーい、寅ァ!!この言い回しは絶品です!

寅「おー!長八か

長八「ひとりそれらしい女見つけたんだけどよ、会ってみるか?

寅「どのあたりだ

長八「了仙寺のあたりよ、行きゃわかる了仙寺は下田市3丁目

寅「よし、すぐ行く


歩きながら


長八「その女おまえのこれか?と、小指を立てる(^^;)


       



寅「バカな、ちょいとしたわけありでよ、人に頼まれたんだ

長八「そーか

いいなァ この長八の雰囲気(^^)


       




弥治川 そばのスナック


       



どうやらあけみは「さくら」という名前で働いていたらしい


長八、「あけみ」ではない名前を聞いて

長八「あ、さくらか…、どうせ本名じゃねえだろうねなあ


寅、驚きもせず静かな顔で


寅「いや、その子に間違いねえんだ、会わしてくんねえか



       


寅に「さくら」と言う名前のリアクションをさせないところが山田監督の才能。
玄人はそんなリアクションしないんだよね。すっと心で飲み込んでしまう。
このあたりのリズムは実に品がいい。


スナックのママが言う分には、
あけみはお風呂帰りにいつも港(みなと橋付近)でぼんやりしてるって言ったので、
寅は礼を言ってスタスタ港のほうへ歩いていく寅。


去っていく寅の格好をみながらママは長八に

ママ「やだよ、面倒なことは…、うちはただ雇っただけなんだから


そんな話じゃないんだよ、と、
言いながらママのお尻をそっと触る長八。(((((^^;)




      



ママ「あーん!!もう!!いやらしい男だね!

と、胸を押されて弥治川に今にも落ちそうになる長八。

長八「あ〜〜〜〜〜!!、あ、びっくりした!!バカ。。。(^^;)


      









下田 みなと橋



♪〜無理をするなと しかって抱いた背中のうすさ 細い肩
   馬鹿な男に夾竹桃の花がしみるよ




どこからともなく牧村三枝子が歌う『夾竹桃』の3番が流れている。

作詞水木かおる 作曲遠藤実


3番

熱があるのにまた起き上がる
俺のためにと夕げの支度
無理をするなとしかって抱いた
背中のうすさ 細い肩
馬鹿な男に夾竹桃の
花がしみるよ





みなと橋からあけみを見つける寅。



     



近所の男たちにからかわれて怒っているあけみ。

悲しい目でぼんやり海を眺めている



       




寅の声「よお、美人の姉ちゃん

あけみ、怒って振り向く。

寅を見ておどろくあけみ。



寅「僕とお茶を一緒に付き合っていただけませんでしょうかちょいちょいゞ(^^;)

と茶化しながらたどたどしく言う寅。



       



ちょっと笑う寅


あけみのテーマが流れる


あけみ「なんで…?寅さんなんでこんなとこに…ほんと(^^;)

寅にこにこしながら

寅「そりゃこっちのセリフよ、フフフ、
  おまえこそなんでこんなとこにいるんだ?
ほんとほんと(^^;)

あけみ感無量で

あけみ「寅さん…会いたかった!!

と寅に抱きつこうとしてこけそうになる

お風呂セットが道に散らばる。



       



泣きじゃくるあけみ

寅「よしよし、大丈夫だ、大丈夫だ、な、
 もうオレが来たから安心しろよ


本当に悲しいときにこんな言葉言って欲しいよね(^^)


と、あけみを抱いてやる。


散らばっているお風呂セットを片付け始める寅。



しかし…とは言え、柴又にかえるのはいやだとごねるあけみ

とらやに電話し、博にあけみが見つかったことを説明する寅。



       





下田 中長旅館   寅の部屋


あけみは疲れて寝てしまっている。


女中さん役で谷よしのさんが登場。
この頃は髪,、ショートにしているんだね。

寅「まだ寝てるのか、うん…、あ、ちょっとねえさん、
  それ肩へかけてやってくれねえか



       


谷さん頷きながら

谷さん「お客さん、ご飯は?

寅「せっかく下田に来たんだからよ、ダチ公といっぱいやってくるわ

下田の長八におごるんだね。

谷さん「そう

毛布をあけみにかけてやる谷さん。






翌日


下田 入田浜


夫婦喧嘩が原因ではないとこぼすあけみ。


         


あけみ「ねぇ、愛…ってなんだろう


寅「フフ…あまえも、また面倒なこと、聞くねぇ


あけみ「だって、わかんないんだもん


寅「ほら、いい女がいたとするだろ、な



         




あけみ「うん

寅「な、と、男はそれを見て、
 「ああ…いい女だなぁ、
 この女をオレは大事にしてぇ、そう思うだろ。
 それが、愛ってもんじゃないか




         



あけみ、感動して


あけみ「どーして、寅さんにお嫁さん来ないんだろー(^^;)

と寅の腕に抱きつく。

寅「オレ、ネクラだからなあ…へへへネクラ…(^^;)



        



寅はあけみにどこへでも付き合うということで、
なんと海の向こうに見える島(式根島)にいくことになった。



で、行きのフエリーで式根島小学校の同窓会の連中と知り合う。

どうやら島には美人の先生がいるらしい。

俄然興味がわく寅(^^;)



卒業生は11人いるので二十二の瞳だって笑っていると、
寅はちょっかいだして




       



寅「じゃあ、これでオレ一人が入ると
  ちょうど二十四の瞳になるわけだ。な、ハハ



みんな笑いながら納得。

寅「でもちょっと目が小さいから
 
二十三半って言ったとこかな、ハハ座布団2枚(^^)

みんな爆笑。


       








式根島 式根島小学校  



港への道を島崎真知子先生が自転車で走っていく。


      



フエリーを降りてきたみんなと再会。

一人一人と再会を喜ぶ。

それなりに丁寧な演出。
木下恵介の『二十四の瞳』を意識しているシーン。


寅の顔を見て

真知子「あなた…あ、誰だったかしら?ちゃうちゃうヾ(^^;)

寅「はい!? 寅ちゃんです!!



     



先生年が違うだろ年が(((^^;)

みんなでクスクス

真知子先生真に受けて

真知子「寅..ちゃん?


という、おおぼけをかましたあとで宿に向かう一同でした。



      




おっと、あけみがいたっけ((^^;)


一人残され、呆然と立ち尽くすあけみ

ブス〜〜〜〜〜〜(▼▼メ)

ひでええええ寅って(TT)

       



で、いきなり完全に忘れられて置いてけぼりのあけみだった。


とはいえ、
式根館の息子茂と知り合い、

古くは室町時代から天然の港として使われていたとされる、波穏やかな
泊海岸を案内され心が落ち着くあけみ。



       


地を鉈で割ったような温泉である地鉈温泉に案内されるあけみは
ちょっと心が柔らかくなっていく気がするのだった。


この温泉では美保純さんの後姿の素っ裸が映る。
このシリーズ最初で最後のお尻がしっかり映るヌード映像(動画)だった。


        



美保さん、こんなことやらされてちょっと可哀想なきもするが、
本人はケロっとしているのかもしれない。
なんせぜんぜん爽やかな感じだったので
okでしょう。


で、最後に着いた宿、式根館で、寅と再会するが、
港で置いてけぼりを食ったあけみは完全『しかと』



寅は寅で、真知子先生を囲む同窓会の宴会になぜか出席。


みんな真知子先生が新任の時からずっとこの島で
教職をしてくださっていることに
深い感謝と尊敬の念を抱いていることがわかる。
何年もとどめさせて申し訳ないとも思っている。



みんなで真知子先生に新しい自転車をプレゼント!


完全な映画「二十四の瞳」へのオマージュ。
同窓会で自転車を贈るのは同じ。




        



感動している真知子さん。


        



そこへ寅が鼻唄歌いながら風呂上りにやって来て


みんな「これで二十四の瞳になりました!


        


『七つの子』を合唱するみんな。



乗り物の中でも自転車は人間に近い。
だからこそ独特の魅力を感じてしまうことも多い。
「二十四の瞳の」あの黒い自転車の存在感はやはり日本の当時の底力を感じる。


      
「二十四の瞳」の自転車。芸術的なまでに美しい。
       








一方 とらやでは

社長が、式根島での寅とあけみの仲を勘ぐったりしておいちゃんたちに怒られる。


        




式根島

翌日同窓生たちは本土に帰っていく。

(新島から東京行きに乗り継ぎ)


港でみんなを見送る真知子さんと寅。

淋しくてちょっと脱力感がある真知子さん。


       


家への帰り道

真知子さんの実家が堀切だと知って
二人して盛り上がる。


       


真知子のテーマ




一方、おいてけぼりのあけみだが。。。


実は、あけみはあけみで例の旅館の青年茂に
船に乗せてもらって開放感を味わっていた。



      






大浦海岸


毎年6月後半にスイムとランの競技アクアスロンが開かれるのがここ。


真知子先生は遥か向こうの海を見ながら自分の心の奥を寅に吐露する。



       



真知子「ここ、私が島で一番好きなとこ



寅「なるほど、こりゃいいとこだ

真知子「淋しくなるといつもここに来るの



       



寅不思議に思って

寅「先生みたいな人でも
 そんな淋しいなんて思うことあんのかね


真知子「フフ…そりゃ、ありますよ

寅「はあー…

真知子さんは言う

真知子「二十四の女先生に憧れてあんなふうになりたいと思って
    学校出てまっすぐこの島に来たの。
    十五年前。
    この島はまだ水道もなくてとっても不便だったけど、
    でも子供や若者はたくさんいたし、
    私はとっても大事にされて、
    そりゃあ張り合いのある毎日だったのよ。

     でも…、ふと気がついてみると
     私ももう若いとはいえない年になってしまった。
     この先どうなるのかしら…、
     このままばあちゃんになってしまうのかしら…。
     そんなこと思ったりするとね…




       




その言葉を受けて、
寅も延々と続く一人旅の中の夕暮れ時のわびしさ悲しさを
正直に真知子さんに告白するのだった。



真知子「寅さん…。もしかしたら独身じゃない?



       



寅「えへへ、まあ、お恥ずかしながら

真知子「やっぱり…



寅「あ、そういうのって分かるのですか


真知子さん頷いて

真知子「首筋のあたりがね、
   どこか涼しげなの
   生活の垢が付いてないっていうのかしら



        

   

このシリーズの中で寅を独身だと見抜いたのは
後にも先にも真知子さんだけ。
深い洞察力を持っている人だ。


寅はちゃかしておどけ、笑ってしまう真知子さん。





神引展望台


空気が澄んでいる日には、伊豆半島や富士山、また伊豆七島のうち八丈島を除くすべての島が
展望できる絶好の景勝ポイント。
新東京百景にも選ばれている。

シゲルに案内されて長い坂道を登って神引展望台にたどり着くあけみ。

絶景に感動し、心全開になって喜んでいる。


この島を気に入ったと伝えるあけみ。



茂「そんなに気に入ったか?

あけみ「うん

茂「だったら、この島の人になってくれないかな…


静かにあけみのテーマが流れる


驚いてシゲルを見つめるあけみ。


        



茂「大事にするから、あんたのこと


茂は本気の眼


       




あけみもシゲルを見つめる。



あけみ「
だめ…


       




あけみ、気持ちを断ち切るように駆け下りていく。

遠くから、大声で

あけみ「言いにくいけど…私人妻なの!
    ごめん!!ごめんね
と遠ざかっていく。


残されるシゲル。






とらや 店


あけみから電話で「明日帰る」と言う電話が入る。


どうやら寅は帰りたがっていないようだとさくらに告げるが
さくらは首に縄をつけても寅を連れて帰ってくるようにあけみに頼むのだった。


        


電話を切ったあとみんなでどうしてその島にいたがっているのか話し合っていると
おなじみ満男の突込みが入る。


満男「常識的に考えればさ、

さくら「
うん

満男「
島に美人がいんだよ。へへへ超図★



        



みんなハッとする!

博もさくらもおばちゃんも激怒!



 

一方式根島では


式根館 寅の部屋


あけみは明日の船で寅を連れて本土に帰ると宣言する。

寅は帰りたくないと言うが、あけみはどうせふられるのだからと
説得する。




        



気にしていることを言われて怒る寅。

それで口げんか。

寅「この…人妻くずれ!

あけみ「人妻で悪いか!

寅「亭主ほっぽり出しやがって、ふらふらふらしやがって、ろくなもんじゃねえ,ったく

しかし、その喧嘩の最中あけみは
寅はかまってくれなかった淋しかったと突然泣き出してしまう。


ほんと途中から野放し状態(TT)

そっと覗き込む寅。

寅「どうしたんだよ



        



あけみ「ここの息子に、結婚申し込まれたの、うううう」と泣く。

寅「結婚?だっておまえ人妻じゃねえか

あけみ泣きながら

あけみ「だから帰るって言ってるじゃない、ううううう、
   私傷つけちゃった…
   どうしたらいいの、ううううう




と、寅の胸で泣きじゃくる。

寅「……、そうか…、惚れたか…うん…


        


 

と、カメラは寅をしだいにズームアップ。
高羽さんって意外にズームアップしていくんだよね。




式根島小学校



翌日 小学校へ真知子さんを訪ね、
用事が出来て今朝の船で東京へ戻ることになったと伝える寅。

真知子さんはとても淋しそう。



        




真知子「どうもありがとう。私の話聞いてくださって、…楽しかったわ…

と寅を振り切るように教室に入っていく。


真知子さん、精神的にそろそろこの島潮時っぽいね…。



フエリーが出る  港


寅たちを乗せたさるびあ丸が桟橋を離れていく。



あけみが後悔と悲しみの中で島を眺めている。


        


茂も遠くからフエリーを見つめている。



式根島小学校 教室


小学校の教室で遠く聴こえてくるフェリーの汽笛に気づく真知子先生の淋しそうな横顔。


やはり真知子さん悩んでいる。

この島去る時期だね。潮時だ…。






柴又 題経寺 二天門




御前様の英語

外国人に駅までの道を教えている。

ポケット英会話辞典を持ってめがねをかけている。

第24作で、マイケルにまったく英語を話さなかった御前様と比べるとかなりの進歩

御前様「ゴーストレイト、メインストリート、
   アンド ファースト十字路ターンライト、
   ユーファイン、シバマタステイション.オーケ?




        



御前様、英語はまあだいたいそんなものだけれど、
そんなことよりも、
最初の大きな十字路を右に曲がっていくと
柴又駅行かずに柴又街道を京成金町駅方向に行っちゃうよ〜〜(TT)


お礼を言って立ち去る外国人観光客

外国人の妻「彼は英語をしゃべってたの?」
外国人の夫「たぶんね、そう思うよ」


離れて聞いていたさくら

さくら「まあ、御前様素晴らしい英語よいしょっ..と…(^^;)

御前様「はは…通じたかどうか、ハハハ」と、照れまくる御前様



       



源ちゃん「通じてない」とさくらに無声音で伝える((((^^;)


御前様はあけみを探し出し、
連れ戻した寅を褒めてやる。

しかし、実のところを言うと寅はずっと恋やつれをしているのだった。

さくらは「今寝込んでいます」と伝える。


どうやらかなり深刻な恋やつれのようだ。





とらや 店 &茶の間

恋やつれの寅のことでみんな腫れ物にさわるように扱っている。

あけみの厳命

寅への禁句

多くの作品で登場するおなじみ『禁句ギャグ』。

今回あけみが言っちゃだめと言ったのは、

島、海、女の先生、魚、などなど…。(^^;)

朝食に鯵の開きを出されると涙を流す寅でした(^^;))

おいちゃん曰く「当分うちじゃ魚食えねえよ」とぼやく。

一方、あけみは夫と話し合ってもう一度夫婦生活をやり直そうとしているらしい。
いくらメインではないとは言え、このあたりの安直さがちょっと気になる。


寅が二階からフラフラになりながら下りて来て
気が弱っているなりに元気を出そうともしている。

しかしそれを学校から帰ってきた満男が
徹底的にぶち壊す。

禁句をどんどん口から出す。


■新しい『女の先生』が赴任してきた。(^^;)
■『独身で凄い美人』((^^;)
■超偶然にも『二十四の瞳』を読む満男((((((^^;)



3番目はあまりにもできすぎ(^^;)


        


このシリーズはじめての寅が団子を食べるシーンが映し出されるが
ギリギリで口には入らなかった。残念!
禁句が出るたびに寅は団子を落としたり、皿を落としたり、へなへな。。。



        

        



そこへ備後屋と麒麟堂がやって来て
今とらやで禁句に入っている【式根島】に海釣りに出かけるそうだ。

それを耳をダンボにして聞いている寅。



       



案の定、池釣りの竿と魚篭持って格好をして
熱に浮かされるように備後屋たちをふわふわ追いかける。


へろへろメインテーマが流れる中



       



店先で

寅「おばちゃん、魚獲って来る、
  こんなでっかいの。包丁研いで待っててくれよ


おばちゃんつい

おばちゃん「いっといで」と言ってしまう。

さくらとおいちゃん大慌てで参道を走っていく寅を止めに行く。

おばちゃん「行かせておやりよ」と半泣き。


       


おいちゃん「バカ!何言ってんだ」と寅を追いかけていく。

おばちゃん「エエエン。。。」と泣きじゃくる。

おばちゃん、寅のことが可愛いんだね(^^)


満男も飛び出し

満男「伯父さん、頭にきちゃったよ、フフフ」と大笑い((^^;)


       



おいちゃん、さくらと一緒にひさしぶりの参道ロケ。

備後屋たちに寅を止めるように大声で叫ぶ。



      



結局…備後屋や麒麟堂に説得されて
寅に行かせないようにしてくれて寅を説得。



さくらの家にお詫びのケーキを持って訪ねて来ているあけみ。


寅の悲しい恋やつれのことをあけみがさくらから聞いて、
『私が式根島に行かなかったら、寅さんは悲しまなくてすんだ。私のせいだ』、と泣いてしまう。



       






とらや 店


で、寅はついにこの苦しみから逃れるために旅に出ようとする。



       



みんなに別れを言ってよろよろ旅立つ寅。

おばちゃんはまたもや泣いている。


       



社長に餞別をもらい、とぼとぼ参道を歩いていく…、

なんと真知子さんがこちらに歩いてくるのだった。




この【旅立とうとしたらマドンナに出会っちゃった】パターンは
第11作、第13作、第19作、第37作、などでも使われる
山田監督十八番、お馴染みのマドンナとの再会パターンだ。



寅の声「あーーー!!!


真知子さんの声「寅さん!!!


寅「はい!!

おいちゃんおばちゃん社長は「???


寅が駆け戻ってきて

寅「おいちゃんおばちゃん!先生来た!これも第11作のアレンジ。


         


三人とも呆然…。


それでいつものパターンで

さっそうと真知子さんと一緒にとらやの前を歩く寅だった。


        



とらやに入って来て

寅「ただいま!

おばちゃん「あ…おかえり



        



寅、真知子さんを紹介する。

真知子「島崎真知子です

みんなお辞儀をするがしどろもどろ。

寅「元気を出せよ!陰気だなあ〜!暗いなあ〜!よく言うよ(−−;)

そこへさくらがやって来る。

さくらも寅の豹変に唖然。


        


真知子先生を茶の間に上がらせて

みんなで盛り上がっている。




朝日印刷

タコ社長がいつものように寅さんがらみの美人が来たと流布。
しょうがねえなと言いながらも朝日印刷の工員たちも美人を見に塀越しに覗きに行く。


        



ふかし肉まん?が運ばれてくる。

驚く真知子さん。

真知子さんは言う

真知子「不思議ねえ…、寅さんって

寅「??え?なにが?

真知子「初めて桟橋でお会いした時、
   本当に若者に見えたのよ


独身には見えてもさすがに『若者』はないだろ ヾ(^^;)


        



おいちゃん「知能程度が低いからでしょ」((^^;)

寅「な、なんだ??

真知子さん笑いながら

真知子「そうじゃないんですよ、
    …それがね、どうかすると可愛いらしい少年に見えたり、
    かと思うと、うーんと年上の頼もしいお兄さんみたいに見えたり


寅、照れながら片岡知恵蔵扮する怪人二十面相の真似。

片目をつぶって

寅「それは七つの顔の男、
 実は名探偵多羅尾 伴内、テッ、フフフフ
なりきっている(^^;)



        




多羅尾 伴内(たらお ばんない)は、
比佐芳武原作・脚本のミステリ映画シリーズ、
および同シリーズの主人公である架空の探偵の名。「七つの顔の男」シリーズ。

片岡千恵蔵主演で、1946年(昭和21年)ー1948年(昭和23年)に大映が4作品を、
1953年(昭和28年)ー1960年(昭和35年)に東映が7作品を製作し、興行的に大成功を収めた。

千恵蔵が七変化の活躍をするという痛快無比な面白さが大評判となり、
とくにクライマックスの名台詞「ある時は○○、またある時は××、しかしてその実体は……!」は
多くのファンによって模倣された。




        




真知子のテーマが優しく流れる。   

      

真知子「さくらさんいいわねえ、こんな素敵なお兄様がいらして

さくら、笑いながら

さくら「そうね、フフフ、頼もしくて、
   いつもお小遣いくれて、
このギャグは第12作のアレンジ(^^)

寅顔をひきつらせて笑う(^^;)


        


おばちゃん駄目押し

おばちゃん「妹想いで、親孝行で、あたしゃ幸せ

おばちゃんは母親ではない((ゞ(^^;)


寅「そこまで言うと嫌味になるよ最初から嫌味言ってるんだよ(^^;)


みんなクスクス笑い。

博がやって来て

博思わず「綺麗な人だなあ…

みんな笑う。


うーん、博はそんなこと面と向かって言うかなあ…。
確かに純粋な男だが、そういうことは言わない気がする。
そういう決定的な言葉を安直に使わずに博の心の動きを表現して欲しかった。




さくらの家


さくらと博が帰ってくる。

満男は留守番していたのだ。


満男はサンドイッチ作って食べたらしい。
なかなかえらい。

満男「伯父さん元気になった?

さくら「なったわよ起死回生(^^)

はい、と肉まんの残りをテーブルに置く。

さくら博に

さくら「これからどうなるのかしらね…

博「いずれは終わりが来るんだろけどな

満男「ハッピーエンド?


       



博「まさか…、…!!

さくら満男に「バカ

満男、二階に行きながら

満男「 I'm very happy  said Tora.From Shibamata With Love

この満男の言葉がこの映画のタイトル【柴又より愛をこめて】の由来。

さくら「生意気になって。。。





神田神保町交差点が写る。


       





千代田区駿河台2−5

文化学院 ロケ


ロシア語編集部


     


文化学院は創立80年を超える歴史のある学校。
開校の前年に創立関係者の西村伊作、与謝野晶子、与謝野鉄幹、石井柏亭らが、
新しい教育について語り合い、開校に至った。
そして、「国の学校令によらない自由で独創的な学校
」「小さくても善いものを」「感性豊かな人間を育てる」などを
狙いとした教育が展開された。


専門課程は全7コースあり、
総合芸術学科には音楽・ダンスコース、演劇・声優コース、総合デザインコース、美術・クラフトコース、文芸コースがある。
放送・映画学科では放送コース・映画コースを設けており、在学デビューシステムやキャリアデザインの体制も充実。


卒業生には、俳優「十朱幸代・前田美波里・とよた真帆」、
アーティスト「米米クラブ・石井竜也」、映画プロデューサー「石田基紀」、デザイナー「菊池武夫・鳥居ユキ」、
写真家「大西公平」、彫刻家「宮脇愛子」、建築家「松井雅美」、
染織家「志村ふくみ」、俳優「平野レミ、秋川リサ」、画家「久里洋二」、
小説家「杉本苑子、辻原登、中島たい子」、舞踏家「酒井はな」など、有名なアーティストが多数。


それぞれの分野に優れた人材を輩出していることで有名。



で、実はこの文化学院の建物をロケして

ロシア語辞典編集部

ということになっている。



川谷拓三さん登場。

酒井「はい、ロシア語辞典編集部です…、

ニコッと笑って

酒井「おまえか…フフ…

無声音で「
パパだよ

酒井「どうしたんだ?


     


千秋「今ね、御茶ノ水にいるんだけど、誰と一緒だと思う?

で、真知子先生だとわかると、鼻歌を歌ってすっ飛んでくる酒井だった。

どうやら娘千秋の誕生日プレゼントを買いに来たらしい。

電話ボックスの向こうにニコライ堂が見える。


      





有楽町マリオン ブティック


ロシア民謡 カチューシャ が流れる。

真知子さんが娘に赤いチェックのスカートを買ってあげる。

有楽町マリオン前を歩く3人。


       



新宿 東口 伊勢丹会館2階

ロシア料理 ペチカ

ロシア料理の店で夕食を食べている3人。


     



数年前に惜しまれながらも閉店してしまったらしい。

    


酒井は娘が買い物をしている時に
真知子さんに見合いをしたことを告げる。

酒井「実はこないだ見合いをしましてね…

食事の動きを止め複雑な表情をする真知子さん。

酒井はその見合いが失敗に終わった原因が
千秋ちゃんの意向だったことを告白する。

新しいお母さんが来るんだったら、真知子おばちゃんがいい
と言ったらしいのだ。

つまり、真知子さん以外の人とは結婚して欲しくない
ということらしい。

緊張の表情が現れる真知子さん。

そして窓のそばに立ち、戸惑う目をする。

この時の窓の外は本物の新宿靖国通り

つまりこの一瞬のシーンだけ本物のペチカでのロケだと思われる。


       


遠くを見つめる真知子さん。

どうやら彼女は酒井の気持ちをうすうす知っていて、
心の準備はある程度できていたようだ。


       


酒井はそのエピソードに乗じて自分の気持ちを告白するのだった。

酒井「そりゃ、もちろん、千秋の望みどおりになれば、
   あいつはどんなにか幸せか…。
   いや、それは卑怯な言い方だな。
   あなたと暮らせたら僕はどんなに幸せかと
   僕はずっと思っていました


酒井をそっと見つめる真知子さん。


ロシア民族弦楽器 バラライカによる

『モスクワ郊外の夕べ』が流れる。


       


バラライカの音色といえば映画『ドクトル・ジバゴ』
ソ連の作家ボリス・パステルナークの小説。そしてデヴィッド・リーン監督の映画。
モーリス・ジャールによる挿入曲“ラーラのテーマ”がバラライカ演奏。
ロシア革命の混乱に翻弄される、主人公で医師のユーリー・ジバゴと恋人ララの運命を描いた傑作。


酒井「あなたの気持ちも考えずに、勝手に自分のことばかりしゃべって
   不愉快だったでしょ、勘弁してください


真知子「愛しているって言われて、
    不愉快に思う女がいると思う?



        


酒井「ありがとう…。でも…、もう、こういう話は二度としませんから

真知子「私は、どう、受け止めたらいいの?
    あなたに結婚を申し込まれたって考えていいの?


酒井「あ…はい

酒井「でも…もちろん…

真知子「私、考えておきます

酒井「はい


       

 

真知子さんは、酒井に対する恋愛感情も少しは芽生えているのだが、
やはりなんとしてでもこの人と、と言う感じではないようだ。
やや受身的な結婚になるかもしれないとも思っているのかもしれない。







とらや 夜  



寅が社長と一杯呑んで帰ってきたのだった。

どうやらあのあと、とらやに真知子さんが訪ねてきたらしい。

寅になにかの相談があるらしいのだ。


       





翌朝 調布の飛行場で待っている寅


真知子さんはどうしても寅に結婚の相談をしたかったようだ。

そうだとは知らずに喜んで待っている寅。


       


学生時代の親友の娘千秋と父親の酒井とのなれそめを話す真知子さん。

話がしだいに核心に迫っていく。

気づいていく寅。

真知子「実は昨日…、その子のお父さんから…当然……

寅「その子のお母さんになってくれと言われたんでしょう

静かに頷く真知子さん。


第9作、第13作で使われた「歌子のテーマが流れる。


ここはがんばってオリジナルを作って欲しかった。


静かに下を向いていく寅。


真知子「彼は誠実な人だし、女の子は私にとてもなついてるし、
    なにも問題はないの。でもね。でも…


心が高ぶってきている真知子さん。

沈んでいく寅

真知子「もし、そうなったとしたら、


       


真知子「
身を焦がすような恋の苦しみとか、
    大声で叫びたいような喜びとか、
    胸がちぎれそうな悲しみとか、
    そんな…、そんな感情は胸に閉まって鍵をしたまま、
    一生開けることもなくってしまう。
    そんな悩み、寅さんなら、どう答えてくれるかと思って…



    
暗い表情で聞いている寅

    はっと我に帰るように




       


寅「いや…、オレのような渡世人風情の男には
  そんな難しいことはわからねえ…


アフレコが口の動きとかなり違っているね。

寅「


新中央航空株式会社 離島航路

飛行機の離陸の知らせが来る。

ミニバスが止まる。


寅「ただ…

真知子「え?

寅「ただ、お話の様子じゃ、その男の人は、きっといい人ですよ


        


真知子「そおお…?

寅「はい

寅は真知子さんに乗車をすすめる。

真知子「でも、聞いてもらってほっとしたわ…

寅「そら、ようござんした

ミニバスに乗車する真知子さん。

暗い表情に戻る寅。


真知子「お正月にはきっと帝釈様に行くわね


        


寅「待っています

真知子「さようなら

寅「さようなら


真知子さんを目で追いかけ続ける寅。



        


AIRCRAFT MAINTENANCEの作業倉庫


真知子のテーマが流れる。


走り出すそのせつな、遠く寅を見つめる真知子さん。


        


真知子さんはまだ迷っているのかもしれない。
自分の人生はこれでいいのかと。



小型飛行機に乗り、離陸する真知子さん。

新中央航空 

登録番号JA 5218 運航会社 CUK
型式BN-2A-2 製造番号344 受領年月 1973.11 引退1999.09




         



                BN-2A-2の同型機

         



飛び立っていく飛行機をいつまでも見送っている寅。


        


飛行機が見えなくなって

とぼとぼ立ち去っていく寅。


新中央航空の事務員が
寅の忘れ物だと釣りの道具を渡す。



        


失意の寅の前を飄々と通り過ぎる白猫

これは演出か、はたまた偶然か…。


        






とらや 夜


茶の間で上野にかばんを届けに行ったさくらを待つみんな。

さくらはちょっと沈んでいる。

釣りの道具をさくらから

おいちゃん「寅なんか言ってたか?

さくら「真知子さん、結婚するかもしれないって



        



みんな「…」

さくら「相手は子供のいる人らしいけど

おばちゃん覚悟していたようで淋しそうに

おばちゃん「やっぱりね…


さくら「わりに元気そうだった。
   憑き物が落ちたみたいに、ほっとしたような顔してたわ



        


みんな落ち込んでしまう。


        



やがて…遅い食事の支度を淡々とするみんな。

寅の釣り道具が写る。。。。


        










正月 さくらの家

郵便番号125
柴又5−37−2

あけみが遊びに来る

朝日印刷の工員たちも来ている。



        



新年の挨拶をするあけみに


        



さくら「本年は、どうぞお手柔らかに

あけみ「また〜

さくら座布団一枚(^^)

みんなに受ける。


        




あけみ二階の満男の部屋にいって



窓の外を見る。



満男「なに見てるの?

あけみ「」いいねえ…空か…。


あけみ「寅さんどうしてるかしらあ…


        


寅との旅を懐かしく思い出しているあけみだった。

窓を開けて

遠くを眺めるあけみ。



あけみ「
ほんとうにどこにいるのかな寅さん…


あけみちょっと淋しそう。



        


実はこのあけみがつぶやくシーンがこの作品の裏メイン。



第12作「私の寅さん」りつ子のテーマが流れる。

うーん、この作品過去の名曲を使いすぎ。
このあたりの作品群はこのようなちょっと拝借が増える。

普通は気づかないが、気づいてしまうとちょっと淋しい。
メインテーマ以外は
やはり完全オリジナルがいいなあ。。。








浜名湖 館山寺港(かんざんじ港)

浜名湖めぐり一周コース



遊覧船乗り場

遠鉄タクシー


なんとあの真知子さんの教え子たちが働いている。

そこでたまたま啖呵バイをしている寅。

浜名湖での啖呵バイと言えば、第6策「純情編」のラストを思い出す。


寅年なので、張子の虎の人形を売っている寅。
しかし、さぼって寝ている。。。(((^^;)



       



遊覧船案内のハンドマイクで起こされる寅。

ゲン「あれ!!???

寅「!!!!おお!!」と指差し

寅「二十四の瞳!!


        


ゲン「寅さん!!ハハハ!偶然だなあ

とみんなで再会を喜ぶ。

どうやら二人とも真知子さんが結婚することを知っているようだ。
「中年の子連れの冴えない男らしいんですよ」と悔しがっている二人に

寅「いいじゃないか、愛があれば!な

と言い切る。いいねえ〜(^^)

みんなで大笑い。


        


ゲン「今夜一緒にやりませんか、真知子先生に失恋した自棄酒だあ〜!ハハハ

寅「さあて!こちらも一勝負するか!

寅バイネタの場所に戻って


ラストのメインテーマが流れ始める。


寅「さあ、やけのヤンパチ日焼けのナスビ、色が黒くて食いつきたいが
  あたしゃ入れ歯で歯が立たないよときた!!
  どう、もうまけちゃうひとつ400円!はい!
  四谷赤坂麹町チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋なネエチャン立ちションベン!
  さあ!白く咲いたがユリの花、色は白いが水臭いときたもんだ、



        



遊覧船が出発していく。





大草山 頂上


はるか上、大草山の頂上から
名湖パルパルへ下りて来る館山寺(かんざん寺)ロープウェイ。


目の前に360度見渡せるパノラマの雄大な景色が広がっていく。

静かに波打つ浜名湖、と出発したばかりの遊覧船。


メインテーマ大きく高鳴って




         



終わり

次回は第37作「幸福の青い鳥」超簡単ダイジェスト版です。
日本帰国後の4月10日ごろになります。気長にお待ちください。





 










「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索



このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







432

                          

『寅次郎な日々』バックナンバー           






第35作『寅次郎恋愛塾』 超簡単 ダイジェスト版



2010年3月10日 寅次郎な日々 その432



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


生業が忙しく、少しアップが遅れました。

それでは本日は
第35作「寅次郎恋愛塾」の超簡単ダイジェスト版をどうぞお楽しみください。↓






君がため春の野に出でて若菜摘む    最も悲しい生い立ちを持つ若菜さんの幸せ


君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣でに雪は降りつつ

これはあの小倉百人一首にも選ばれている光孝天皇が詠まれた歌だ。
若菜は若く柔らかな草。
その名のとおり、若菜さんはふるえるほど可憐で美しい。


          


しかし、とても人には言えないような悲しい生い立ちを持ってしまったマドンナだ。
冷静に考えれば、このシリーズのあらゆるマドンナの中で最も悲しい生い立ちを持っているのかもしれない。

そんな若菜さんの悲しい顔が明るくなったっていったのは寅と知り合ってからだ。
寅は人を幸せにするためだけにこの世に存在する哀しい運命を背負わされている。

若菜さんに惚れていながらも、一途な法律浪人の民夫との仲立ちをしてやる寅。
今回も車寅次郎の恋のキューピット役は紆余曲折がありながらも見事に成功してゆくのだ。

顔で笑って心で泣いて、男寅次郎の奮闘は続く。



          




ポンシュウはつらいよ

そして、もうひとつ、
この第35作「恋愛塾」は寅のテキヤ仲間ポンシュウ大活躍の物語でもある。

この話はポンシュウが準主役と思えるほど出番が多い。

長崎県、上五島での顛末はこのシリーズでポンシュウがもっとも活躍した話として語り継がれていくだろう。

この物語では老婆を助けてやり、その家で焼酎を一気飲みしたり、タコの料理をしようとしたり、歌を歌い、踊り、
墓を掘り、教会の燭台を盗み、教会で懺悔と奉仕の日々と、もう大活躍。
関敬六さんの軽妙な演技をご堪能ください。



         






それでは、本編 超簡単ダイジェスト版をどうぞ



          





今回も夢から

『姥捨て伝説』の夢

何が哀しくてこんな夢を寅は見るのか(^^;)


長野県上田市野倉地区の映像


今は昔、柴又国の国主は年寄りは捨ててしまうようにとむごい厳命を下す。

みんな最後の夕食を食べている。

さくら一家みんなしくしく泣いている。
なぜかポンシュウも女性役で泣いている。

おいちゃん「これ、泣くでねえ、一番つれえのはわしら連れて行くあんちゃんでねえか、
       そのあんちゃんが耐えているのにおめえらみっともねえぞ


寅「冷てえ風が吹いて雪になりそうだ。遅くならねえうちに出かけるとしようか


         


寅と博がおいちゃんおばちゃんを担ぐ。

博「いやだいやだ!オラ行くのいやだ!

と、嫌がるが、寅は諭して担がせる。

おいちゃん「ナンマンダブ、ナンマンダブ…

おいちゃんは軽いので博はすんなり担ぐ。

おばちゃん「寅吉や、ご苦労かけます
寅「なんのなんの、これからの長い道のり、尻もさぞ痛むだろけど、
  おっ母さんも辛抱してくれや

おばちゃん「あいよ」と深く頷く。


         


寅「さあ、それじゃ行くか
おばちゃん「あい

しかしおばちゃんは重いので寅はひっくり返る。

寅、首絞められて

寅「アイタタ、イタタタ!!イタイイタイ!」とじたばた。


        


みんな助けに来るが

いったん起きて、またひっくり返る。


        


寅「アイタタタタ!!」とじたばた。

みんなも下敷き。

雰囲気ぶち壊し。バカバカしい夢でゴザイマシタ(TT)

下敷きになってるおばちゃん大丈夫かな…(((^^;)



で、夢から覚める。

第5作「望郷編」同様谷よしのさんが寅を起こす。

今回は行商のおばちゃん役。こういう役は天下一品。

菊娘の前掛けをしている。


信州  上田電鉄別所線 舞田駅 ホーム

なかの − やぎさわ

谷さん「ちょっと、これ、あんちゃん
寅「ん?お!
谷さん「電車来るよ

谷さんの荷物にもたれて寝ていた寅だった。

寅「ごめんごめんおばあちゃんの荷物だったのか

谷さんの行商包みの新聞 江川と槙原 ジャイアンツの記事。


谷さんの濃紺の藍染前掛け。
昭和初期『富久娘酒造』の前身『花木本家商店』は昭和26年以前の会社名。
濃紺にレトロな型染め。 .... 昭和レトロ清酒富久娘


         


二両編成の電車が小さなホームへ入ってくる。


         




タイトル イン


はつらいよ 寅次郎恋愛塾


        


口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。


♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


どぶに落ちても根のあるヤツは  いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ
   泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら  こんな苦労も
   こんな苦労も かけまいに かけまいに♪





長野県 上塩尻 千曲川に架かる橋のそばの地蔵尊。



信州海野宿

長野県東御市(旧小県郡東部町)にある北国街道の宿場。

ゆったりと歩いている寅。


        



うだつがある古く味わい深い家々の下を小さな水路が涼やかに流れている。

黒槐(くろえんじゅ)の木

長野県東御市島川原154 諏訪神社近く

旅の僧(梅津栄)と出会う寅。

着物を着た麗しく色っぽい美人女性が近づいてくる。


        


すれ違いざまにお辞儀。

寅も旅の僧も目がハート、じ〜〜〜〜っと彼女を目で追いかける。

寅につつかれて旅の僧、我に帰る。

からかい続ける寅。

第18作「純情詩集」に出てきたこの同じ信州別所温泉警察署の渡辺係長が、
思うことあって発心し、旅の僧となって信州界隈を旅しているのであろう。 ちゃうって…ヾ(^^;)

着物姿の女性は第21作で登場したSKDの大スター藤川洋子さん!


        




音楽終わって ―



柴又中学校正門


満男が下校していく。

なぜか女子が制服で男子が私服??そんな学校ある??
女子が私服だとお金かかるからかなあ…??



       



柴又 とらや 店


満男帰ってくるがちょっと不機嫌。

そのまま朝日印刷に見学に行く。
どうやら学校で何かあったようだ。

さくら「??
おばちゃん「なんだろ返事もしないで
さくら「ねえ




朝日印刷 工場内


珍しく満男が工場に来たので何かあったのだと気づく。


        



とらや 台所


博「満男、f学校で何かあったのか?
満男「父さんは印刷工だろ
博「あ、そうだよ
満男「中学生の頃から印刷工になろうと思ってた?

どうやら先生に何か言われたようだ。

ちなみに博は「弁護士→テストドライバー→オートショップの経営者」という望みが合ったらしい。

満男は『音楽家』になりたいが担任の先生に夢みたいなこと言うなと言われて落ち込んでいるのだ。

博は夢を持つのは素晴らしいことだが、
満男が苦手教科から逃げている気持ちからその夢が来ていると見抜いているようだ。

個性的に育てればいい」とわかったようなことを言うおばちゃんに対して、
好き勝手なことをしていても個性は育たない。むしろ嫌いなこともふくめていろいろなことを克服していく上で
本人の中に個性が育っていくと博は言う。

さくら「そうよ、満男の個性を作り出すのは満男自身だもんね

おばちゃん、それ聞いて

おばちゃん「寅ちゃんもかい?


       


みんな大笑い。

おいちゃん「あれは特別だ

電話が鳴る。



寅から電話。

さくら「あら、お兄ちゃん!今噂していたところなのよ


       


どうやら寅は今長崎にいる。

当分柴又へは帰らないで
天草、五島と、ポンシュウと旅を続けるらしい。


       



満男は言う

満男「伯父さんはいいなあ、個性的で

おいちゃん「バカ、ああいうのは個性的と言わないんだよ、
       あれはおめえ、デタラメって言うんだ


みんな笑う。




五島列島 南松浦郡新上五島町


有川神社


厳密には 旧 祖母君神社

現在は中筋公園


祭りの縁日で易本を売る寅。

ネタをネタ元という問屋に行って一日借りてくることを客にバラしている珍しいシーンだ。

50回に一度はピタッと当たる、と言って客を信じさせている。

「お嬢ちゃん、あなた今恋をしているね」だって((^^;)


       


神社の前にはパチンコ『銀座会館』


船でこのあと上五島に渡っている設定なのに、
さきほどの啖呵バイがすでに上五島でおこなわれている。

この摩訶不思議は、第20作「寅次郎頑張れ!」でも出てくる。

あの時は平戸の浜尾神社でのバイのあと、なぜか、また平戸港に戻り、
このあともう一度連絡線に乗って本土に渡り、
そしてまた平戸に再びやって来ている。
寅は本土の平戸口と平戸を行き来しているのか??
これではじつにややこしい旅をしていることになる。

まあ、しかし、
あの第20作の『浜尾神社』が
長崎本土にある神社の設定(映画のお約束)だと思えば
極めて単純に、
本土でのバイを終って平戸に船で渡ったって
考えることが出来る。
スタッフ的にはそういうお約束ということらしい…。

そして今回「恋愛塾」の上五島も同じ、
違う土地でバイをしたあと上五島に連絡線で上陸するということらしい。


ところで、なぜあの啖呵バイが上五島だとわかったかというと、
寅とポンシュウがその後数日後に泊まる宿が有川にある『有川旅館 西海屋 』。

そのすぐ前が、なんとあの啖呵バイをしていた時に見えていたパチンコの『銀座会館』だったからだ。
建物のあり方、装飾、外壁、等々がピタッと一致する。

つまり寅がバイをしていたのは長崎本土や天草ではなく、
すでに上五島に上陸し、新上五島の有川地区だったのだ。


       


まあ、とにかく、とりあえず映画のお約束として、

本土での啖呵バイのあと上五島へ渡るということで。


       



遠くに見える八王島


郷の首湾に向かう。


新上五島町 太田郷 太田港


島のはずれ、太田漁港でお金がほとんど無くなり途方にくれる寅とポンシュウ


道で転んでしまったおばあちゃんを助けたのが縁でおばあちゃんの家に立ち寄ることに。


            




江上ハマさんの家

おばあちゃんお礼にと冷えた焼酎を出す。
水だと思って一気飲みする寅とポンシュウ。
寅は吐き出すが、ポンシュウは震えながらも飲み込む。

ポンシュウ「もったいないことした、一気飲みしちゃった」こういうギャグいいですね(^^)


       


自分で漬けた自慢のらっきょを出すおばあちゃん。

タコを調理するポンシュウ。


夜になって 宴会をする3人



アルカデルト  「アヴェ・マリア」




若菜さんのおばあちゃんハマさんの家で
あの何とも不思議なポンシュウの歌と踊りが始まるのである。

おばあちゃんにとっては生涯の最後の夜であり最後の宴。

背景にはマリア様と若菜さんの写真。

このポンシュウの踊る影に神様の気配を見たのは私だけではないだろう。


       


ポンシュウ「♪あ、それェ、あ、それェ!

       杯に映る明りを
       飲み干して、
       今宵も歌おうよ 
       我が友よ〜

       楽し さわぐ酒の中から
       浮いてくるくる
       酒の中から 
       どんとどんとどんと!♪



         


このポンシュウの歌と踊りには『白魔術』の気が間違いなく入っていた。
見る者聴く者の心を解きほぐしてくれる力があった。
おばあさんに対しての最後の日のはなむけのために神様がポンシュウの姿を
借りて歌い踊ってくれたのだ。

ポンシュウはあの踊りの時神聖な神様だった。嘘のような本当の話。


        



その深夜 

おばあちゃんは自分の最期を悟り、ポンシュウに神父様を呼んでくれるよう頼むのだった。

残った寅はおばあちゃんの傍らに座る。


       


おばあちゃんは、ロザリオを手に持ち

おばあちゃん「寅さん、じゃったね…

寅「そうだよ

おばあちゃん「あなたにも神様のお恵みがありますように…


       



それからしばらくして おばあさんは寅や神父さんに見取られながら
朝の5時35分夜が明ける頃
ロザリオを握り締め天国に召された。





翌朝 丸尾教会 墓地


クリスチャンだから土葬なんだね。

おばあさんの墓を掘ってやるポンシュウと寅。普通しないよこんな大変なこと、いいとこあるねえ( ̄ー ̄)

ポンシュウはいやいや半泣きで穴を掘っているが、
久しぶりの汗を流した肉体労働のあと、村人に出してもらった
おにぎりと漬物を美味そうに食べる二人。



      



ポンシュウ「うめえなあ!

寅「働いた後だからな。
  労働者ってのは毎日美味い飯食ってるのかもしれねえな


ポンシュウ「そうだな

この寅の言葉はこのシリーズでも非常に重要な意味を持つ言葉。


と、いうかけで、久しぶりに充実した日々を送る寅とポンシュウ。





マドンナ 若菜さんとの出会い


青砂ケ浦 カトリック教会


青砂ケ浦(あおさがうら)天主堂

長崎県南松浦郡新上五島町奈摩郷

 

東京から江上若菜さんが駆けつける。

おばあちゃんに「おばあちゃん…」と語りかけ、涙を流す若菜さん。


      


おなじみ備後屋、装飾 小道具露木幸次(ゆきつぐ)さんが聖歌隊の青年役。
もっとも、ずっと後姿なので顔は見えないが。


       



典礼聖歌82番 『神を敬う人の死は』


教会の一番後ろでいた寅とポンシュウは途中で帰ることに。

ドアの音で振り向く若菜さん。

前の日の事情を聞いた若菜さんが追いかけてくる。


若菜「あのー…

寅、振り向いて若菜さんを見る。

若菜「もう、お帰りですか

寅「ん、まあ、あっしらヤクザ家業の男が長くいるようなところじゃないと思いまして

若菜「私、江上若菜です

若菜「神父様にお聞きしたらおばあちゃんが大変お世話になったとか…、ありがとうございました

寅「ああそうかい、…あんたが…ああ、ばあちゃんの死に目に会えなくて気の毒だったね

頷く若菜さん。

寅、思い出したように

寅「あ、そうだ、ま、気持ちだけど」と香典を渡す。

恐縮する若菜さん。

寅「東京だって?

若菜「はい

寅「だったらまた、いつでも会えら、な、さ、オレたちに構わねえで、行きなよ

頷く若菜さん。


       


寅「じゃ

と、歩いていく。

若菜さん「あ、あの」

寅振り向いて、ちょっと嬉しそうに

寅「

若菜「最期の晩のことお聞きしたいんだけど、またお手紙します

寅「うん

若菜さんの後姿を追っている寅とポンシュウ。

寅、いつまでもポ〜っと若菜さんの後を目で追っているポンシュウを見て

寅「バカ

ポンシュウの急所にカバンを当てて帰ることを催促。

ポンシュウ「おい、バカ、アイタ〜〜〜、何すんだバカ〜〜〜」(^^;)




  新上五島町 有川地区


有川旅館  西海屋

上にも長々と書いたように、ここは寅が啖呵バイをした場所。
向かいでは啖呵バイの時と同じくパチンコ『銀座会館』がネオンを光らせている。


       


パチンコ屋から『片恋酒』が流れている。


片恋酒

三門忠司

好きで呑んでる お酒じゃないわ
ひとりが淋しい 片恋酒よ
遊び上手な あなたでも
噂を聞く度 逢いたくて
つらいのよ つらいのよ
バカな女と 言われても
忘れられない 恋だから
面影グラスに 忍び泣く




宿の女中さんから若菜さんについての悲しい話を聞く寅。

       


寅「あのおばあちゃんのことよく知ってるのか?

女中「知っとお、気の毒な人でねえ…

寅「何かあったのか?


女中「ハマさんには一人娘がいて、綺麗な人だったよ。
   そいが、東京から来た男に騙されてねえ、子供作ったとよ。
   こん宿に泊まっとったて、その男


寅「男は、逃げたか…

頷く女中。

女中「その美人の娘さん、ててなし子を産んだと

寅「

女中「田舎でしょ、みんなに陰口言われて、とうとうその人、
   身投げしてしもたと…、そこの海に


寅「」小さく頷く。


       



寅「それで、あとに残された孫娘をおばあちゃんが一生懸命育てたとこういうわけだ

女中、頷いて

女中「カトリックじゃ自殺は罪でしょう…、
   それをあのおばあちゃん、一生苦にしてねえ。
   気の毒に。明日きっと天国に行けるとよ


寅下を向き頷く。


ポンシュウがノウテンキに振舞って「片恋酒」を歌いながら風呂上りの姿で部屋に入ってくる。


ポンシュウ「しかしいい女だったなあ、あの孫娘。
      喪服着た女ってたまらねえな。なあ寅


寅、ムッとして

寅「オレはおめえと一緒の旅はやめてえな…

ポンシュウ「え?

寅「仮にだ、おまえが死んで葬式の時、
   お前の娘が喪服を着てボロボロ泣いてるのを、
   どっかの助べえ野郎が『いい女だなあ』
   そう言ったら、棺桶の中にいるおめえは腹が
   たたねえのか?


ポンシュウ「へへへ、そんなたまじゃねえや。
      オレが死んだって涙なんか流すもんか
      あのバカ娘は


ポンシュウになんと娘がいたことがわかる!

タオルを投げつける寅

ポンシュウ「な、なにすんだよ!


        


寅「親の死を悲しまねえ娘がどこの世界にいるんだ!
  てめえそんなこと言ってるとバチが当たるぞ!


ポンシュウ「へ、偉そうな口ききやがって、悔しかったら
       娘持ってみろ!なんだい、女房も持てねえくせによ!


寅「それを言っちゃおしめえよ!てめえの面は二度と見ねえ!


と宿を出ていく。

ポンシュウも怒って階段を下りていった寅に

ポンシュウも怒って

廊下の階段の下を覗きながら

ポンシュウ「
このバカヤロウ!上等だよ!やい!てめえ!
      またあの娘に惚れたのか!?
      いい年こきやがって、へッへー!



お金も無いのにこんな夜に寅はどうやって旅を続けるのだろうか…。





柴又 とらや 台所



あけみがまた夫婦の愛情問題で悩みをさくらに打ち明けに来ている。
夫婦の会話がほとんどないそうだ。
タコ社長がやって来たので、逃げていく。



     


おいちゃん、さくらに

おいちゃん「
悩みごとかい、あけみちゃん

さくら「
お兄ちゃんに会いたいって

おいちゃん「
あー、そうだな、くさくさした時にあいつの顔思い出すと、
       なんとなく気が晴れるもんなあ
」わかるわかる(^^)

と言ってると時に寅が帰ってくる。

なかなか入りにくそうなのでおばちゃんたちは知らん顔して台所で待機。

これは第7作や第8作でも使われたギャグ。


      



とらや 店


備後屋通りがかって

備後屋「寅、おい、なんだ帰ってたのか


寅「あ、備後屋さん、あなたにも神のお恵みがありますようにいつから宗旨替えを…ヽ( ̄▽ ̄;)

と、十字をきる。

備後屋「??」

江戸家の女将さんもそれ聞いて、さすがに引いてしまう。



寅、みんなに丁寧な挨拶。

寅「さくら、あのー…要するに電話か、オレに手紙かなんか来てない?

さくら、手紙が来ていたと寅に渡す。

寅「なんだそれ

さくら「柴又商業の同窓会、会費納めてくださいって

寅「卒業もしてないのになんで会費納めなきゃならないんだよ座布団1枚(^^)



さくら「紳士服大バーゲンセール」(^^;)

寅、さくらが差し出すハガキを手ではたいて

寅「いらない!」(▼▼メ)

おいちゃんDMはがきを読みながら

おいちゃん「あなたもリゾートマンションのオーナーになりませんか誰に送ってるんや(^^;)

寅とあまりにも不釣合いでみんなで笑っている。

さくら笑いながらその封筒をわざわざ寅に渡す。要らないってヾ(((^^;)
倍賞さんのこういうミニギャグ大好きです(^^)冴える山田演出


        


寅「要らないよ!なんでそんなもん取っておくんだよ!

隠してるんじゃねえかと勘ぐる寅。

さくら「隠してるわけないでしょ、待ってる手紙があるの?

寅「あるわけねえじゃねえかそんなもん、ただ聞いただけだよ」とブツブツ


実にタイミングよく

郵便配達人「郵便です

寅「ほら来た」と緊張(^^;)

さくら受け取って

さくら「江上若菜さん…うそ( ̄0 ̄;)

寅、手をあげて

寅「はい、それは私です(^^)


      


さくらを警戒しながら、封筒を開けると印刷のお礼状が入っている。

寅「なんだ印刷か…

で、さくらに印刷を読ませている間に、
封筒の中から、もうひとつ手紙が出てきて
ときめいてしまう寅。

さくらに気づかれないように別の手紙読んでいる。


      


『 その節は、ありがとうございました。
 もう東京にお戻りでしょうか。
 お会いできる日を楽しみにしております。
 是非ご連絡ください  若菜
 』


にやけているのをさくらに見つかり、微妙に知らん顔する寅だった。
渥美さんの表情上手すぎ(^^;)

さくら「だあれ?」ねえ(^^;)

寅「ん?この人?あ、ちょっとした知り合いだ。フフ…

寅は機嫌がよくなり

月曜日にもかかわらず「床屋に行く」と偽って
トコトコ出かけていくのだった。

さくらにはバレバレ。






文京区 白山下交差点


    


きつい坂を上がった上に『コーポ富士見』がある。

       



若菜さんのアパート
 コーポ富士見」


東京都文京区白山2丁目5-2


白山閣のすぐ近く。

詳しい住所は寅次郎な日々参照。↓
http://www.yoshikawatakaaki.com/lang-jap/torajironahibi26.html#479





同じアパート1階に法律青年酒田民夫が住んでいる。
若菜さんは2階。全部で8部屋。大家さんは真向かいに別棟。


大家さん(おなじみ杉山とく子さん)
民夫に秋田の父親から味噌をもらったことを報告。

民夫密かに勉強邪魔されていらだっている。

そこへ寅がやって来て顔だけ覗く。

民夫ギョッとビビル。


       


寅、大家さんに若菜さんを呼んでもらう。


若菜さんは2階の部屋


現れる若菜さん。

寅「よお、オレだよ、忘れたかな、ほら、長崎の教会で

若菜さん驚きながら

若菜「あらあ


      


寅、気を使って「また来るよ」と帰ろうとするが
若菜さんは部屋に案内する。

部屋の中でおばあちゃんの話題でゲラゲラ盛り上がる寅と若菜さん。

おばあちゃん自慢のらっきょ:どこまで皮だかわからないからさ。らっきょっぺ

若菜さん、笑いながらも…

若菜「きっとおばあちゃん嬉しかっただろうね…」としんみり泣き出してしまう。


      


寅「ちょっと聞いたよ、話を。
  オヤジとおふくろさんのこと、
  いろいろ苦労してるんだな若菜ちゃんも


若菜「私が選んで生まれてきたわけじゃないんだもん、
   気にしないことにしてるの


寅「そうだな…

寅、机の上の「写植機」見つけて

寅「これなんだい?


若菜さんは印刷工だったのだ。
寅は妹の亭主も印刷工だと言って盛り上がる。

どうやら、いろいろあって、印刷会社を辞めてしまったらしい。

そんな若菜さんを寅は

寅「ま、そう言わねえでさ、ちゃんとした勤め口探せよ、
  え、及ばずながらオレも力なるからさ


若菜「ありがとう

で、帰りぎわに

若菜「車さん

と呼ぶ若菜さんに

寅、照れながら

寅「フフ、やめてくれよ、車さんなんて言われるとさ、
  よそのおじさんみてえだから


若菜さん、笑っている。

寅「オレのこと呼ぶんだったらな、『寅さん』って呼んでくれ

若菜「じゃあ…寅さん

寅「あいよ


       


帰り際に、民夫の部屋を見てからかう寅。

寅「あの男何やってるの?
若菜「あの男って
若菜「秀才よ、法律の勉強してるの
寅「へえー、悪いことでもしようっていうのかいいねえ〜、座布団一枚(^^;)


民夫の本の中にはなんと若菜さんの写真!がはさんである。


       




夜  とらや 茶の間


機嫌よく寅が戻ってくる。

ちょうど社長が来ていたので寅は若菜さんの就職を聞いてみる。

社長「とんでもないオフセットの機械入れたらね、人手が余っちゃってさ、
   首にしたいくらいなんだよ
」と困っているようだ。

寅は今度は博に頼む。

博「年は?
寅「うん、25、6になるかな…


       


博「専門はなんですか?
寅「えーとね、写…写真じゃねえ…
博「写植ですか?
寅「そうそう
社長「写植はうちじゃ『ひろみちゃん』がやってくれてるからなあ

この『ひろみちゃん』とは誰のことだろう。
朝日印刷の女子社員はご存知のとおりマキノさん演ずる『ゆかりちゃん』がいるのだが、
監督は『ゆかりちゃん』のことを『ひろみちゃん』にしたんだろう。
山田監督ってこういう適当なところあり(^^;)


博「しかし、珍しいなあ、男の人が写植をやってるなんて


      



寅「フフ…男…男って言ったかオレとニヤついている。

博「じゃあ、女の人ですか?

みんな興味津々&不安でいっぱい。

寅「バカだねおまえ、男でなかったら女に決まってるじゃないかよ。
 世の中半分は男、残ってるのは全部女じゃねえか、
なあ満男と満男にふる(^^;)
社長「独身かい?
寅「なんだよ、独身じゃなかったらおまえとこは採用しないのか?

寅はなんとかしてやりたいと真剣。

寅「何不自由なく、結婚が目当てのOLなんかじゃないんだから。
  身寄り便りがなく、たった一人でこの世の荒波を渡っていかなきゃならないんだから
  あの
若菜ちゃん

みんな『若菜ちゃん』に過敏に反応(^^;)

ひそひそひそ…(^^;)

博「わかな…無声音(^^;)



寅が出した職場の条件

寅「残業なんか全然ない。早出もない。ね。
 お昼休みなんかたっぷりある。
 環境がいい。
 夏は軽井沢に社員で旅行。
 冬はスキー。
 社長は優しい。同僚は親切。
 あの子に悩み事があると、
 みんな仕事をほっぽらかして相談に乗ってくれる。
 まあ、その程度の職場があったらいいなあ


博「いいですねえ…そういう職場があれば…

寅「探せ探せって…((((((((((^^;)

寅が機嫌よく二階に上がったあとみんなで『若菜さん』について話し合う。

おばちゃん「ねえ、例の手紙の人だろ?

さくら、頷く。

博「どういう字書くんだい

さくら「君がため春の野に出で(て)若菜摘む…の若菜よ」 

小倉百人一首にも登場する光孝天皇の歌


社長「君がため…か

社長帰って行く。

博「25か6で、独身かァ…


満男しゃしゃり出てきて

満男「美人?good job!(^^)


      


おいちゃん「決まってる…

はっと振り向き満男を睨む。

満男ススッと仏間に行き、わざとらしく英語の練習((((^^;)




題経寺 境内

御前様とさくらが寅のことで話す。

御前様「先日挨拶に来たよ。わけあって耶蘇教に宗旨替えをしたいから
    よろしく、などと言っておった



      


耶蘇は、中国語のイエスです(中国語の発音では耶蘇はイエスに近いらしい)
ヤソはその日本語読み。


さくら驚いて大恐縮&大あやまり。

さくら「まあ。。。なんてことを…、申し訳ありません

御前様「いやあ…あれが幸せになるなら何を信じようと構わんが、
     …あの難儀な男を教会が引き受けてくれるかどうか…


さくら「一度相談してみます。失礼します」と返って行く。

御前様「しかし…、キリスト様が見放したら、もうおしまいだな、あの男も

別に寅は人を泣かせるようなことや悲しませることはしていない(^^;)


源ちゃん、廊下の手すりを強く拭きすぎて大ゴケ(^^;)
冴え渡る蛾次郎さんのギャグ!



      蛾次郎さん、後ろで細かい芝居してくれてます。
     





若菜さんの就職活動


若菜さんの自宅近くの白山下から徒歩圏の

文京区水道1丁目付近

文京区 白鳥橋交差点

神田川がそばを流れている。



公和印刷株式会社

採用面接

面接でネチネチいじめられ&セクハラを受ける若菜さん。

面接官たちなんてヤロウだ((▼▼メ))


    


若菜のテーマが流れる。

若菜のテーマは、
第19作「寅次郎と殿様」の鞠子のテーマのアレンジ。
完全オリジナルにして欲しかった。



    



        
現在の白鳥橋交差点付近
    





白山下  富士見コーポ



民夫、全然勉強に身が入らない。
若菜さんのことを想いノートに若菜若菜若菜…と書き記し、
写真を見てため息(^^;)

その時寅が現れる。

若菜さんは留守なのでいきなり民夫の部屋に押しかけて待つ寅。

なにげに若菜さんの写真を隠す民夫。

寅「おまえ、こんなに勉強してなんになるんだ?

民夫「司法試験受けるんです

寅「なんだそれ?

寅は偉く感心して『遠山の金四郎』の話をする。

民夫「遠山さんと言いますと…どこの…?

寅「どこの?おまえ遠山の金四郎知らないの???
  驚いたね驚いたね



       


と言って『遠山の金さん』を詳しく説明してやるのだった。

で、若菜さんの写真を見つけてしまう寅。

寅「お、 お、 はあ〜〜〜〜、こういうもの勉強してますか


       


民夫、あわあわになっている。

寅「おい、おまえ、この子に惚れてんのか?

民夫「惚れてなんかいません

寅「じゃこっちのおばさんか?大家さんと一緒に写っている(^^;)
冴え渡る渥美さん&山田監督ギャグ(^^)

民夫、むきになって

民夫「違います!

バレバレの民夫だった。

寅曰く

寅「お前の顔は恋愛には向かないだそうです(^^;)

ベートーベンも恋愛に向かないそうだ。

寅「で、この物件は当方で受領しておくから、ないきなり難しい言葉知ってるんだね。

そこへ若菜さんが帰ってきて

寅、そそくさと部屋を出て行く。

寅「これにて、一件落着!フッ


秋田の父親が音信不通の民夫に電話。

造り酒屋を営む秋田の父親からの電話で「これにて一件落着」と言ってしまう民夫だった。


        


秋田の父親「勉強しすぎて頭おかしくなったんでねえかな」

この父親は第20作「寅次郎頑張れ!」で見事な味を見せてくれた声楽家の築地文夫さんだ。
このシリーズ2回目の登場。





東京大学 本郷キャンパス


ついに思い余って母校東大の恩師牛山教授に助けを求める。


        


恩師の教授はなんとあの2代目おいちゃんである松村達雄さん。


        


恩師「壁にぶつかってるんだろ、そうだろ。どういう壁か、言ってみなさい」

民夫「きれいな…女の人です…」微笑む。バカ((((^^;)

恩師「き…なに??松村さんの『間』最高(^^)

恩師あきれてしまう。



そんな時、

ちょうど運良く博が若菜さんの就職先を見つけたようだ。


帝釈天参道 とらや前

挨拶もかねて柴又を訪れる若菜さん。


       


まずは満男と一緒に柴又界隈を散歩する


題経寺を見学した時、

満男「お参りしていく?

若菜「ううん、私カトリックだから

この言葉を聞いた御前様、
なぜ寅が宗旨替えをしたいと言い出したかを全て見抜いてしまう。

横にいた源ちゃん、小指を突きたて

源ちゃん「寅の恋人や…、ええ女や」と一緒についていく。

御前様「そういうことか…困ったほんと困ったあ〜〜┐(´-`;)┌



江戸川土手

口笛の音楽

風に吹かれる若菜さん。


       


河川敷で野球をしている博たち朝日印刷。

若菜さんは野球がかなり上手い。

回転が難しいキャッチャーフライを素手でとる若菜さん。
そして見事に博の胸に返球するのだ。
するどい素振り
バッティングも外野を越す大きな当たりを打つ。


       


そのあと矢切りの渡しに乗って野菊の墓まで行って来たらしい。

実は野菊の墓までは歩いてかなり遠いのだけどね。



とらや 茶の間


とらやに戻って、お風呂に入って、
さくらの浴衣に着替える若菜さん。


そういえば第38作「知床慕情」でもりん子さんがラスト付近にもう一度とらやに訪ねて来て
浴衣に着替えましょうって言われてたっけな。



       


縁の不思議を寅と話す若菜さん。

若菜のテーマ(第19作「寅次郎と殿様」の鞠子のテーマのアレンジ)


若菜「五島で、おばあちゃんが道で転んで、
   それを寅さんが偶然に見ていて
   たったそれだけのことが始まりだったんだもん


寅「ほれ…、死んだばあちゃんがよく言ってたじゃないか。
  『神様のお導きですよ』って



       


若菜「寅さんのお導きです


       


オレは導かねえな…」と、照れる寅。

そのあと

みんなで天ぷらとそうめんを食べるとらや&朝日印刷工員一同


       


源ちゃんの食べ方凄い(^^;)



夜 柴又駅 ホーム

ホームのベンチで民夫が若菜さんを好きだとつい気軽にしゃべってしまう寅。

そしてちょっと若菜さんに好意をいだいている民夫をからかうようなことを言う。

さくら、その無神経な発言を聞いてドキッとする。

そして若菜さんからは意外な言葉が


      


若菜「知ってるわよ

寅「え?

若菜「1年も1年半も前からよ


      


寅「

さくら「

若菜「私に会うといつも怖い顔するんです

さくら「

若菜「男の人ってそういう顔することあるでしょう

さくら頷きながら「そうね

さくら「気持ちの中はとっても優しいんだけど、顔に出せないのね

頷く若菜さん。


       


さくら「わかるわ、その気持ち


電車が来て若菜さんが去って行く。



さくらは見送ったあと、先に歩いていく寅に駆け寄って

さくら「どういう事情か知らないけれど、
   真剣に恋をしている人をからかうなんてよくないわよ、
    第一お兄ちゃんらしくないわ


寅は「わかってること言うなよ」と少し後悔気味。


       



ある日


新しい職場で働く若菜さんが映し出される。

写植の機械を動かす若菜さん。


       



小石川3丁目の高台
伝通院(傳通院


       


寅に呼ばれて伝通院に向かう民夫。

まずは写真を返してやる寅。

寅はそこで民夫の気持ちを確かめ若菜さんとの仲を取り持つことを宣言し、
「勝負に出よう!」段取りをしてやるのだった。


      


映画を観る →    お前いきなり手握ったりすんなよ。

レストランで食事 → 間違っても偉そうに法律の話なんかしちゃだめだぞ。
              しゃべりすぎず、黙りすぎず。
              できればあの子にしゃべってもらって、おまえはにこにこして
              その話を聞いている。

公園で散歩  →   あの子の足取りにあわせてできるだけゆっくり歩いてやれよ」


アパートに帰る →  あの子は別れがたい気持ちになる。 
              「どお、よろしかったらちょっと私の部屋に寄らない?」

民夫「いえ、結構です

寅「バカ、そういう時に、そんな返事はしない『ちょっと失礼をします』

民夫真剣にメモをする。


若菜のテーマが流れる。

寅「あの子は紅茶なんかを入れてくれる。
  お湯がジー〜〜〜ンと沸くな。
  時折窓の外を激しく雨が打つ。ザーーッ!!パラパラパラ…



      


寅「もうおまえの言う言葉は一つ『若菜さん、愛しています

民夫「言えるかな僕にそんなこと言えない言えないヾ(^^;)


      


帰っていく民夫に

寅「金四郎!わかってるな、おまえの人生はそこにかかっているんだぞ

民夫「はい、ありがとうございました

一人残った寅はがっくりうつむいてしまう。やっぱりつらいんだね寅(TT)


      




さくらの家

博が寅から若菜さんたちの恋の仲立ちを博に告げる寅。

さくら「でも大丈夫かな、お兄ちゃんが余計なことして、
    かえってだめになるってこともあるわよ


博「兄さんのコーチじゃなあ…

大丈夫、今までのコーチ勝率はかなり高いから。
唯一お千代さんと岡倉先生の時は失敗気味だったが…。



博、思い出し笑いしながら

博「フフフ
さくら「え?
博「もっとも、悪口は言えないよ、オレだって兄さんのコーチ受けたんだから
さくら「フフフ

風呂上りの満男興味を持って

満男「父さん、伯父さんのなんのコーチ受けたの?

博は思い出の「青春時代」を聞かせてやろうとするが、
満男は照れながら「聞きたくねえや」と逃げていく。


      




翌  日曜日 


京成上野駅 出口


あのあたりマイケルと寅が最後別れた場所だね。懐かしい…。


民夫と若菜さんが寅を待っている。

若菜さん喫茶店から寅に電話
まるで待ってたかのように寅がすぐ出て「腹が痛い」と言っている。

どうもおかしいと不思議がる若菜さん。


      


そしてデートは進んでいくのだった。


東京都新宿区新宿 

ジャズ ライブハウス PIT INN (ロケ)

東京都新宿区新宿2-12-4 アコード新宿B1


ソフトサンバ風の曲 を聴く二人。



     



誰もが知る老舗の名門ライブハウス「新宿ピットイン」
音楽とミュージシャン、そして時代時代における文化の発信基地という役割りを果たし、
たくさんの人に影響を与えてきた「ピットイン
は、2006年に開店40周年を迎え、
さらに果敢に音楽の感動を伝えていっている。

この日は、本編オープニングのクレジットにも出てくる
丸山繁雄酔狂座』のステージ。


夜の部 ワンドリンク 3千円 


私の敬愛する超寅マニアの北海道札幌在住の音楽家Oさんによると
この時演奏していた曲は丸山繁雄さんが作られた
「丸山サンバ」こと「
I Sing Samba」だそうだ。
なんとOさんもその昔丸山繁夫さんと一緒に演奏したことがあるそうだ。



    


この曲は、アルバム「A Young Father's Song」(1981年 アケタズ・ディスクAD11)の4番目に入っている。
ギターを弾きながら歌を歌っているのが丸山繁雄さん、当時29歳


当時のレコーディング時のプレイヤー
丸山繁雄(Vo,Comp,Arr,Cond)、大友義雄(As)、沢井原児(As)、
梅津和時(Cl) 、松風鉱一(Ts)、松本治(Tb)、松井洋(G)、遠藤律子(P)、国安くるみ(P) 、
望月英明(B)、是安則克(B)、宮坂高史(Ds)、串馬孝治(Ds)、 アンディー鈴木(Per)、三島一洋(Per)、
Marlene Rosa(Narration) 、黄野裕沢(Chor)、八幡いづみ(Chor)、綿引道子(Chor)、村山美樹(Chor)

       




民夫がPITINN知ってるわけないから
若菜さんの趣味なんだろうねこういうのって(^^)



昨夜緊張して寝ていない民夫はあくびばかり。


そのあと


高層ビルのちょっと雰囲気のいいレストラン

食事をしている二人。すでにデザートが出ている。

ピアノ演奏

第20作「寅次郎頑張れ!」のワット君と幸子ちゃんのデートよりは大人ムード(^^;)



眼下のネオンを見ながら

若菜「海みたい…

なんとも美しい淋しげな若菜さんの表情。


       


若菜「月夜の海ってこんなよ。波がキラキラ光って

民夫「きれいだろうなあ…

若菜「五島でしょ。子供の頃、海を見て育ったの。
   悲しい時はいつも海を眺めてたわ



ところが民夫の少年期の話で民夫は「蜂の子獲り」の思い出話に
盛り上がって席を立ち秋田弁でまくし立てはじめる。


民夫「時々ミツバチに刺されてズラがこんなに腫れあがってしまってね、
   
ションベンひっかけんだ。あれアンモニアでしょ、
   だから沁みるやらひでえやらで



       


若菜さん、大笑い。

周りの客も民夫を一斉に見て笑っている。


民夫我に帰って席に着き、「僕ばかりしゃべって」と謝る。

若菜「どうして、とっても面白い話だったわ

民夫「でも、寅さんに言われたんです。
    レストランではあまりしゃべるなって


若菜「

民夫、しまったと

民夫「あ、こういうことしゃべってしまって…バカだなあ…

民夫水割りを飲みまくっている。





上野忍不池の公園

酔い覚ましに休憩している二人。


この画像を見ていただきたい。
なんとなんとまったく同じ場所で
かつてワット君こと良介と幸子ちゃんがデートしていたのだ!!
ちなみに第13作「恋やつれ」ではこのほとりで寅が啖呵バイをしている。




      



若菜のテーマ アコーディオン

周りは熱々のカップルだらけ((^^;)


       


ちょっと雨が降ってきて…

民夫傘をさし、相合い傘で帰る。


       





とらや 茶の間  雨が降っている。


寅は雨の中アパートに帰る二人をいろいろ想像して落ち込んでいる。

あけみはそんな寅を慰めるため寅と結婚してやろうかと言う。

寅「あけみ。おまえのその優しい気持ちは本当に嬉しいよ。
  だけどな、それはおまえ、できない相談だよ


あけみ「どうして?

寅「だってさ、おまえとオレが一緒になったら、このタコのことを
  お父さんって言わなきゃいけないだろ。オレそれいや…。
  オレそれ死んでもいやそれ



       


あけみ「フフフ

寅とあけみ大笑い。

社長怒り心頭

寅も腹いせに土間に出て相当やる気。

めちゃくちゃにやりあっている。

みんな止められない。


      





富士見コーポ 雨が本降り


富士見コーポに着いた時

若菜さん、ハンカチで民夫のスーツの雨を雨を拭いてあげる。


       


若菜「お茶でも飲んでいかない、私のところで

民夫「じゃ、ちょっとだけ…

二人二階へ上がっていく。


大家さん、ギョッと驚いて向かいの部屋から二人の行方を眺めている。




若菜さんの部屋


若菜のテーマ(第19作「寅次郎と殿様」の鞠子のテーマのアレンジ)

若菜「雨ひどくなったね…

民夫「そうですね


若菜さん紅茶を入れながら

若菜「寅さん、仮病使ったのね…。そうなんでしょう

民夫、眠いのを我慢しながら

民夫「さああ…

若菜「いいのよ、…ほんとはね、いつかはこんな晩が来るんじゃないかな…、
    って思ってたの


もう眠くて眠くて朦朧としている民夫。

若菜「いいわよ、泊まっていっても…


      


がっくんと頭が落ちてほとんど寝てしまっている民夫。

若菜さん気づかず、

若菜「私、初めてじゃないのよ。結婚しようって、
    お互いに約束して、それで裏切られて…自殺しようと思ったこともあったの。

    十九の春…



民夫完全にソファーにもたれてしまう。ああああ、なんてこったあ…(TT)

若菜さんようやく民夫の体たらくに気づいて、ガックリな顔。

露骨に情けない顔して

若菜「民夫さん…


      



民夫ついには頭をソファーにつけて熟睡に入る。

実際には、このような千載一遇の幸運な状況で、こんなバカなヤツはいません(TT)

若菜「民夫さん

民夫の足を手で叩くが、まったく反応なし。

若菜、かなり不満げにテーブルにひじをつき、肘をつく。。

普通こういう場合、男は100%民夫のように勝手に寝ません。
前の日徹夜して意識は朦朧としていてもなんとか起きています。


      





次の日 


とらや 店



民夫が言い訳をしにとらやにやって来る。

ことの全てを寅とさくらに打ち明ける。

さくら「で…若菜さんは?

民夫「たぶん、大家さんの家で寝たんだと思います。
    朝、会っても怖い顔して声もかけてくれないんです


民夫、寅の方に向いて

民夫「どうしたらいいんでしょう、寅さん

寅、ちょっと怒りながら

寅「終わりだよ!


       


寅「おまえが昨夜した行為は、
  若菜ちゃんに対して、おまえは女として全然魅力がないんだぞと言ったのと全く同じなんだ!
  若菜さんがどんなに傷ついたか、おまえにはわからないだろ!!


じゃ…どうすればいいんでしょうか!」とすがる民夫に

寅「死ぬんだよ!オレだったら今すぐ死ぬよ、フン

と寅は捨て台詞を残して二階に上がってしまう。

民夫は絶望し、薄ら笑いを浮かべながら駅のほうへ歩いていく。

さくらは「希望を持って」と慰めるが


       


民夫には全く通じなかった。


その後


恩師に「全てを諦める」と言い残して民夫は故郷秋田で死のうと決意する。

恩師は富士見コーポに民夫を励ましにいくが民夫はすでに家財道具はそのままにして
アパートを出てしまっていた。



白山 富士見コーポ

恩師はあせりながら大家さんに

恩師「失礼だが、まさかあんた…酒田君の恋人じゃないだろうね」 
   おいおいおいおい(((ヾ(^^;)

大家「何言ってんだろこのオヤジ…あたしゃ、亭主持ちだよ!(((((^^;)


      


そこへ若菜さんが帰ってくる。

恩師ようやく理解して

恩師「なーるほど、あんたですね。私は坂田君の教師だが、
   あいつの居場所をしりませんか?
   ほっとくと自殺するかもしれないんですよ。
   思いつめるとなにをするかわからん男ですからね



      


若菜さんあせって、「そうだ寅さんに電話します!」と自分の部屋へ。
恩師「そうだ、それがいい

といっては見たが

恩師「あ、寅さんって誰だっけ?

大家、恩師の腕を掴んで

大家「何があったんだい?

恩師「ばあさんは口利くな!」とあせっている。


     


大家さん、目を見開いて

大家「なんだって、ば、ばあさんとはなんだよ!
    他人つかまえて!くそったれじじい!


恩師「失敬千万な!クソをたれないじじいがいるかね

杉山とく子さんVS松村達雄さん。この二人のコント最高です!


民夫の部屋の壁に民夫の落書き

諸君、喜劇は終わった!


      


若菜さんは電話をしている最中

民夫の置手紙を発見

さようなら、幸せになってください、民夫



3人してすぐに東北新幹線に乗る。


     



盛岡から花輪線に乗り換え



秋田県 鹿角市  陸中花輪駅

柴平 ―  陸中花輪 ―   陸中大里

十和田八幡平四季彩ライン

ホームを降りて鹿角市山岳会のみなさんとすれ違う。

     



北鹿酒類製造株式会社のひとつ『松風』
鹿角の21軒が合同して、北鹿酒類製造株式会

造り酒屋 松風は、なんと民夫の実家


鹿角タクシーが止まり、若菜さんが実家に入っていく。


      


恩師と寅は列車の中で酒飲んだせいで寝ている。


      


父親と民夫の幼馴染が説明。


      


どうやら八幡平(はちまんたい)の麓、水晶山スキー場で今朝民夫を見たらしい。

父親は寅を恩師と間違え謝っている。

ま、とにかく 水晶山スキー場に行くことに。






八幡平水晶山 スキー場近くの森林


ロケ地は八幡平南西部  夜明島渓谷



一方民夫は睡眠薬を大量に取り出し、今まさに沢の水で飲もうとするが、
足を滑らせて流してしまう(^^;)


中ノ沢  曽利の滝


熊沢川



     


 


水晶山スキー場


寅と恩師はまったく歩けそうにもないのでリフトに乗る(^^;)


     



玉川温泉を歩く民夫



民夫はフラフラになり、道に迷いながらも、
奇跡的に水晶山スキー場に戻ってくる。


     


寅と若菜さんリフトに乗っている。

若菜「寅さん、あれ、ひょっとしたら民夫さんじゃない?

寅「あのバカこんなところに!

ものすごい偶然((((^^;)

寅「おーい!金四郎!生きてたのかおまえは!!??


     


まだまだ遠距離でしゃべっている。
声は全てこだましている。

若菜「民夫さーーーん!

民夫「若菜さーーーん!?」もう服ボロボロ。

寅「バカヤロウ!!おまえが死んじゃったんじゃないかと思ってな、
  東京からみんなで来たんだぞ!


若菜「どうして黙って帰っちゃったのよー、バカねー

民夫、若菜さんのほうへヨタヨタ歩いていく。

寅「こら、金四郎よく聞けよ!若菜ちゃんはな!
 おまえのことを愛してるってよ!



若菜さんリフトにつかまりながら下を向く。


      


若菜のテーマが流れる。

民夫驚いて

民夫「ほんとですかー!!


若菜さん、恥ずかしそうに、しかし、きっぱりと頷き、


      



両手をメガホンにして

若菜「ほんとー!!


       


民夫一目散に走りながら

民夫「若菜さん!ほんとうに僕のことを!!


寅は長靴を履いている。

父親は相変わらず寅を先生と思っている。

リフトはくるりと回ってまた下へ

民夫は上へ行ったり下へ行ったり、あたふた。

怒鳴る父親。


       






夏真っ盛り  とらや 茶の間


さくらが民夫からの手紙を読んでいる

 
       
 

さくら「『寅さんもいつかそんなこと言っていましたが、
   いやしくも人の生命と自由と財産を守るべき裁判官や弁護士は
   豊かな教養と伸びやかな精神の持ち主でなければならないのであって、
   僕のようなどこか未発達でアンバランスな人間は資格がないんだと思います』


    どうやら司法試験を諦めて中学校の先生になるらしい。
    まあもっとも、ほんとうに未発達でアンバランスな人間なら、先生やってもらっても困るが(^^;)
    それはもちろん民夫の謙遜が入った言葉なのでこれは良しとしましょう。

若菜さんとはもちろん結婚するらしい。

そこへ…

御前様お盆のお経をあげにやってくる

御前様「お盆は坊主の稼ぎ時でな、フフフ

みんな大笑い。

御前様「寅はどうしてますか?聞くだけ無駄ですか

みんなまたもや大笑い。


       


御前様のこの言葉に寅に対する愛情が溢れていたねえ〜。
このような言葉があるからこの映画は素晴らしい。



サブテーマが流れていく。




上五島町奈摩郷小字青砂ケ浦 青砂ケ浦教会



ラストシーン

五島 青砂ケ浦教会

そして寅はラストで、もう一度懐かしき
上五島町奈摩郷小字青砂ケ浦の小高い丘を切り開き、
奈摩湾に臨んでそそり立つ煉瓦造りの青砂ケ浦教会を訪れる。
ここは若菜さんのおばあさんのお葬式が行われた場所だ。


寅は若菜さんと出合ったこの教会が懐かしく、またもやご機嫌伺いに再来したのだ。


       



神父さん「ポンシュウさあ〜んお迎えが来ましたよ〜!

なぜに神父さんはちょっと訛っているのか??設定日系のアメリカ人??

寅「???


へとへとに労働やつれしたポンシュウがなんと教会にまだいた。

ポンシュウ「寅!寅じゃねえか!

寅「なにやってんだおまえ??ほんと(^^;)

ポンシュウ「聞いてくれよ

ポンシュウ「墓掘ってからよ、全く運が落ちてよ、全然稼ぎにならねえんだ。
     つい、でき心でこの教会忍び込んで銀の燭台盗んで、
     御用なっちまったんだ
おいおいおいおいゞ(−−;)


           



寅「なんてことするんだこのバカ!

ポンシュウ「警察にやってきたあの神父さん、なんて言ったと思う。
       『この燭台はこの人が盗んだものではありません。
       私が差し上げたものです』
       それ聞いてよ、さすがのこのオレも心を入れ替えて
       恩返しでここで働いているんだ。


それってヴィクトルユーゴー作「レ.ミゼラブル(あゞ無常)」の
有名なエピソードのパクリだよ(^^;)
つまりジャン・ヴァルジャンはポンシュウだったのだ!


寅「

寅ポンシュウの耳をひっぱって

寅「こっちこい

ポンシュウ「あたたた  なにすんだい


          



寅「神父様 ありがとうございます。
  どうぞこの男を一生奴隷としてこき使ってやってください



         


ポンシュウ「…!

十字をきる寅

寅「ありがとうございます

ポンシュウ「!!お、おい!それはないよおめえ、
       いままで一生懸命務めてきたんだ。
       このへんで帰してくれるようにおめえからも頼んでくれよ、な



寅、ポンシュウに言う。

寅「ポンシュウさん...、

ポンシュウ「え?


寅「あなたにも神のお恵みがありますように。

   さ や う な ら 
訛ってる(^^;)

と、十字をきる寅


追いすがるポンシュウ。


           



ポンシュウ「冷たいこというなよ寅 頼むよ頼むよ!


         


テーマ曲高鳴って



終わり


         



第34作も第35作も関敬六さんの芝居は実によかった。
若菜さんの可憐な瞳と関敬六さんのコメディこのふたつでOK。





来週は第36作「柴又より愛をこめて」の超簡単ダイジェスト版です。



 










「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索




このページの上に戻る
最新のコラムはこちら









431

                          

『寅次郎な日々』バックナンバー          





 第34作『寅次郎真実一路』 超簡単 ダイジェスト版



2010年2月26日 寅次郎な日々 その431



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


いやあ〜、本編の『ダイジェスト版』は超久しぶりだ。(((((^^;)ヾ

このサイトを作り始めた2004年当初は、マニアックな『本編完全版』と『コラム』だけを閉鎖的に書こうと思っていたのだが、
ここを訪問してくださる方々の中で、作品をまだ全部は知らない寅さんビギナーの方々も結構多いと聞き、
2007年から30分ほどで読める簡単作品紹介の全48作品の『ダイジェスト版(短く要約したもの)』
第1作から始めた。

で、数年前まで『本編完全版』の作業の合間にずっと次々と『ダイジェスト版』を作ってはアップしてきたのだが、
昨年あたりから生業の仕事の多忙が続き、ご存知のとおり、なんとなく『ダイジェスト版』は
第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」まで作って、その後止まってしまっていた。

それぞれの作品の『ダイジェスト版(短く要約したもの)』はこちら



時々、何人かの方に『ダイジェスト版』は第48作まで作らないのですか?とメールで聞かれたのだが、
「そのうちまた再開します」、と言ったまま、今日の今日まで怠けていたのだが、
このままいくと、ずっと第34作以降の『ダイジェスト版』を作らなくなってしまうので、今日からまたとろとろ作っていこうと思う。

とは言っても、このサイトはもちろん『本編完全版』のアップこそがメインなので、その作業の合間に『ダイジェスト版』を作る。
そのスタンスは絶対変わらない。ということで、やはりどうしても時間が足らない。


そこでこれから作る第34作以降の『ダイジェスト版』の妥協案として、

@第33作までの『ダイジェスト版』よりも、物語のあらすじの長さもディテールもかなり短くし、要点だけを紹介しようと思う。
 マニアックな部分は『本編完全版』のみで堪能してもらうことにする。


Aそしてもう一つの妥協はすでに『本編完全版』を作り終えた作品は、あえて『ダイジェスト版』は作らず飛ばしていこうと思う。
 大は小を兼ねる…、ということだ(^^;)ヾ。
 

それゆえ第34作以降の『ダイジェスト版』は『超簡単 ダイジェスト版』というなんともベタな名前でやっていこうと思う。

残る作品は、第34作、第35作、第36作、第37作、第39作、第41作、第42作、第43作、第44作、第46作、第47作、までの11作品だ。

一週間に一度ほどの間隔でアップしていくので6月頃には終わると思うが、生来の怠け者なのでこれまた7月頃まで
かかると思う。コラムもその間に気が向いたら入れていくこともあるかもしれない。

ま、どちらにしても個人の勝手なHPなのでわがままをお許しください。




それでは本日は
第34作「寅次郎真実一路」の超簡単ダイジェスト版をどうぞお楽しみください。↓













第34作「寅次郎 真実一路」超簡単ダイジェスト版


真実一路の旅を行く寅次郎    道ならぬ恋に悩みぬく寅次郎


この作品の大原礼子さんは第22作「噂の寅次郎」よりさらに美しく色っぽい。

魔性の女性大原麗子さんが、その美しさに磨きをかけて再登場したのが第34作「寅次郎真実一路」である。
この時も第22作同様なんと彼女は人妻の役。もちろんこの作品ではさすがに離婚はしない。
しかしまあこんな美しい人妻がいたら寅でなくとも心が騒ぐのが男というもものだろう。


もっとも、離婚はしないが、なんと仕事でノイローゼになった夫が失踪してしまうのである。
ふじ子さんは、夫と縁があった寅を頼って二人で夫を鹿児島まで探しに行くのだが、
夫が失踪して滅入っている彼女を寅がずっと励まし、慰める続ける。

もちろん心の中では人妻のふじ子さんを愛してしまっている自分がいるわけだ。
そして失踪した夫が死ぬことを考えてしまう恐ろしい自分と闘う、というシリアスな物語だ。

山田監督が「馬鹿まるだし」に次いで、「無法末の一生」を強く意識した作品でもある。


              


ただし、ふじ子さんも、夫がいるというのに寅に惚れてしまって…、という
ことではなく、ひたすら寅を夫の友人、自分たちの恩人として考えているところがやはり「寅さん映画」なところ。
そういえば寅は、第6作「純情編」や第42作「ぼくの伯父さん」や第43作「寅次郎の休日」第47作「拝啓車寅次郎様」なども
人妻に密かにではあるが惚れているのである。
しかし、この第34作はそのような『人妻もの』の中では恋心が一番素面で本気になっているところが悲しい。





意味深なことを言ってしまうふじ子さん


恋心を秘めながらふじ子さんの夫を鹿児島で一緒に探す寅が
同じ宿に泊まらない寅を見てふじ子さんは「つまんない寅さん…
」と言うのである。

これはどういう意味だろうか。

愛する夫が失踪し、小学生の息子を家に残して、半泣きで寅と一緒に探し回っている最中なんだから、
ある意味、「つまんない」のは当たり前で、そんなことをわざわざ中年独身男性に言うことは
状況から考えて不可思議だと言わざるを得ない。変な誤解をされる場合もある。

物語を『ちょっと危うい感じにしたい』という演出かもしれないが、これではふじ子さんの人格が
疑われるし、彼女の切実さや悲しみとのバランスも取れない。

大原麗子さんにああいう発言をさせてみたい、という監督の内なる欲求はとても痛いほど分かるが、
ここは、ぐっ〜〜っと、その欲求を堪えて、
「どうして…?そんな遠慮しなくたっていいのに…、でもありがとう、気を使ってくださって…」
くらいのことを美しく演出したほうがよかったのではないだろうか。

とにかくふじ子さんは、それどころじゃないのであるから。


              


ここは、あくまでも寅が一人で惚れてしまって七転八倒悩めばいいわけで、ふじ子さんは
未だ悲しみの中に埋没しているのが自然だなんて思うのは、ちょっと真面目すぎるだろうか。




真実一路の旅をゆく寅次郎



  真実諦めただひとり
  
真実一路の旅をゆく
  
真実一路の旅なれど
  
真実鈴ふり思ひだす


これは富永課長とふじ子さんの家に架かっていた北原白秋の「巡礼」の詩。

作家の山本有三が書いた「真実一路
」にもこの白秋の詩は引用されているので
そちらのほうが一般的には有名かもしれない。

白秋もこの当時、道ならぬ恋で悩んでいたらしいから、この詩は寅のその後を暗示するようで、
とても興味深いものがある。人妻に恋をしてしまう寅は現代の「無法松」だ。「オレは汚ねえヤツです」は、
無法松そのもの。そしてしだいに失踪した亭主が帰ってこないことを密かに考えてしまう恐ろしい寅の心。
膨らんでしまったその闇の心を振り払うように旅に発つ寅。真実一路の旅。

不倫に陥ることなく、正に真実を貫くために熱き気持ちを奥に隠して、潔く孤独を行く寅の姿に、
見る側の私たちはどこかでほっとしたはずだ。これこそが「男はつらいよ」なのだ。
顔で笑って心で泣く車寅次郎だからこそみんなに愛されるのだ。

それにしてもしつこく書くが、この物語の大原礼子さんにはぞっとさえするような大人の色気を感じる。
第22作「噂の寅次郎」ではまだ開花しきっていなかった美しい花がこの「真実一路」では
見事に花開き、私の心をクギ付けにさせてしまった。これは作品のよさとはまた、別の問題ではある(^^;)
あの声、あの瞳、あの立ち振る舞い。ほんと寅が道を踏み外す気持ちが分かる男は巷には大勢いるはずだ。

でも、彼女はもういない。
大原麗子さんは美しい人だった。私は掛け値なしにファンだった。

寅の言葉じゃないけれど

「花にたとえりゃ薄紫のコスモスよ…」


           









それでは超簡単本編ダイジェスト版をどうぞ



          



今回の夢は『怪獣もの』


宇宙怪獣ギララが日本へ上陸。


ちなみに『宇宙大怪獣ギララ』(うちゅうだいかいじゅうギララ)は、
1967年3月25日に公開された松竹が制作した唯一の怪獣特撮映画作品、
その時の映画のフィルムがたくさん使用されている。
この映画、エンディングテーマは賠償千恵子さんが歌っている。

合成技術は適当な感あり。

         




ギララにやられていた戦闘機は航空自衛隊F104J戦闘機。
同じくギララと戦っていた戦車は陸上自衛隊61式戦車。
をモデルに作ったと思われる。形がそっくり。

この時代は東宝のゴジラ、大映のガメラ、などが一世をふうびした。
松竹はさほど流行らなかった気がする。
  

一方こちらは
       
筑波山ろくで隠居している車寅次郎博士。

今回本編のロケ地が茨城県の牛久沼やつくば市がロケ地なので夢も筑波山ろくにしてあるんだね。


         


吉田茂首相にそっくりのタコ社長と軍人あがりの官房長官源ちゃん。
いやあ〜〜〜凄いコンビ、日本もおしまいだァ…(^^;)


ジョアキーノ・ロッシーニ作曲、ウイリアムテルの序曲に乗って

偉大なる預言者車博士の隠居所にギララ退治の妙案を聞きに行くのだった。

柴又にいた頃はお互いに「タコ」「寅」と呼び合った仲だから心配するなと自信満々の首相。


         


しかし、車博士は大学から追放された恨みから助けようとしない。

車博士「そう、もうあなたと私はファーストネームで呼び合う仲とはちがいます」(^^;)

車博士、官房長官の源ちゃん見て「なにこれ?」とクスクス笑い   確かに(((^^;)


         


首相は土下座。
官房長官は『お金』はお金を用意して頼みこむ。

さくら「いつまでも昔の恨みにこだわっている時ではこざいません
博「地球の運命は今博士の肩にかかっているんです」と二人して協力を促す。

さくらの髪型と着物がなかなか素敵だ。


         




チャイコフスキー 「悲愴」 第1楽章



車博士「かわいそうなやつめ…」と怪獣に同情的。

しかし、家のそばまで来てしまったのでついに決断する。

車博士「聞け!怪獣。おまえが憎いわけではない。
    わしが本当に憎むのはおまえをそのようにしてしまった愚かな文明だ


しかし殺すことを決意

車博士「怪獣!覚悟

取り出したお守りから光線が!


        


光線でやられながら

怪獣「トラ〜〜〜〜、トラサァ〜〜〜〜ン」と断末魔の声を出して苦しむ(^^;)


        




パッと現実に戻って


鹿児島県の田舎  薩摩湖湖畔

湖のほとりの「松屋食堂」で居眠りしている寅。

ゴジラのかぶりものをした子供が眠っている寅を驚かせる。


        


寅、驚いて

寅「うわああああ、…びっくりさせるなよ」とびびる。


        



そこへポンシュウがバンでやって来て、バイに連れて行く。

ポンシュウとの絡みはこのOPもラストも
薩摩半島の吹上の周辺で行われた。


鹿児島にある「イケダパン」の看板。

株式会社イケダパンは、鹿児島県南さつま市に本社を置くパン・惣菜などを製造・販売する食品メーカー


        




タイトル イン


はつらいよ 寅次郎真実一路


        


寅が江戸川土手に戻ってくる。

        

口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。



♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪


どぶに落ちても根のあるヤツは  いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ
   泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら  こんな苦労も
   こんな苦労も かけまいに かけまいに♪




今回のコントはアパッチけん。
アパッチさんがバイクでツーリング。
寅にヘルメットの中に『イガ栗』入れられてイタイイタイと
大慌て。


          




柴又 とらや 台所及び店


怒ったあけみがとらやに逃げてくる。
おいかけてくるタコ社長。
どうやらいつものように夫婦喧嘩をしたようだ。

ロールキャベツの中にマッチ棒を差し込んだあけみに
夫が怒り、料理を捨ててしまったそうだ。

     
         
         


そこへ寅が帰ってくる。

助けを求めるあけみ。
抱きとめてかばう寅。

あけみ「私たちの結婚にはね、もともと愛なんてなかったの。
    それなににね、父ちゃんたら無理やり元の鞘に納まれって言うんだよ
」と胸に顔をうずめる。
寅「世間体を気にしてか」と社長を睨む。


        


で、怒った社長はいつものように大喧嘩


        



ここから珍しく参道ロケ。


帝釈天参道

みんなでガヤガヤ喧嘩している。
なかなか見所の多いシーンだ。

社長が寅におもちゃのライフル向けると、
なぜか寅の後ろにいたおいちゃんがビビッて手をあげるのが面白い。


       



源ちゃん御前様に告げ口。
  
御前様「こら!柴又の平和を乱すのはおまえか!困ったもんだ」テレビの見すぎ(^^;)
御前様関係者を寺に引率して、たっぷり説教をすることに。
御前様「関係者はついてきなさい」と扇子を目印にバスガイドさんのようなことをする。
寅もおもちゃのライフル銃を手で上げて
寅「これを見てついてらっしゃい」おまえだろ張本人は(−−;)

みんなでぞろぞろ。

源ちゃんイヒヒ笑い。


       


薩摩琵琶がベンベン鳴る。




夜 とらや 茶の間


おいちゃんもついでに御前様に説教されてしまって機嫌がイマイチ。

そこへ上野で飲んでいる寅からSOSの電話。




上野 居酒屋  まるき  アメ横近く

寅「そんなに怒るなよ、な、恩にきるから…、ん、もうしない二度とこういうこと、な」と弱気。

しかしさくらは
さくら「今まで何べんそういうこと言ったと思うの、もう信用しないから」と強気の姿勢。
で、寅はプッツン切れて早々とあきらめてしまう。


電話を聞いていた富永健吉は興味津々で、これからどうなるんです?と寅に聞く。

寅は平然と、

寅「ねえ、ま、ここのオヤジと相談して最寄の警察へ行きますか。
  そこのま、留置所に楽しく一泊させていただいて、
  明日の朝、早く、今ここで電話しておりました妹があたくしの身柄を引き取りに来ると
  ま、そういったような図式ですね、ええ

居直って、料理と酒を注文する寅。
富永「ハハ、羨ましいなあ〜、オレもそんなふうにやってみたいなあ〜
寅「じゃあ、やればいいじゃん、フフ。あ、九州だ
富永「わかる?
寅「わかるよ、九州のどこ?
富永「鹿児島
寅「あー、いいとこだ、あそこ」と桜島の噴煙のジェスチャー。
富永「桜島、錦江湾、開門岳


        


富永さんはこうして寅と意気投合し、寅の分も払ってやるのだった。

一枚の名刺を渡して去っていく富永さんだった。



翌朝 柴又 さくらの自宅


どうやら、寅はさくらの家に昨夜泊まったようである。
寅がさくらの家に泊まったのはこの長いシリーズの中でこの時だけである。

寅が着ているハンテンはさくらが着ていたこともあるが、
その後、奥尻島ですみれちゃんが着ていたもの(^^;)


        


さくらは、情けなくて泣きながら料理を作っている。

寅はそれに気づき気まずく思ってしまう。
雪駄が家の前に投げ出されているところをみると昨夜はかなり飲んだくれて帰ったようだ。
     




日本橋  スタンダード証券ビル


お礼にバナナを持ってスタンダード証券を訪問する寅だった。

な、なんとここの受付には朝日印刷のユカリちゃんが勤めていた。
タコ社長の目を盗んでこんなところでアルバイトしてるんだろうか((^^;)


       


証券会社の厳しいサラリーマン姿が映し出される。
のんびり訪問しに来た寅とのコントラストが奇妙。
富永課長もこんな忙しい時間帯にやってきた寅にちょっととまどっている。


コントの帝王 津嘉山正種さんは、今回は富永課長の上司役。
かなり厳しい働きぶり。


寅の土産のバナナをみんなでどんどん食べていくのがなんとも面白い。


で、ようやく夜に飲み屋にGO。



上野 飲み屋


富永「枕崎知ってるかな枕崎」枕崎は富永さんの故郷
寅「知ってる、枕探し知ってるぞ」ちゃうちゃうヾ(^^;)

これをエンドレスで繰り返される(TT)

合言葉は「チェスト!行けー」(^^;)


        




常磐線 車内

上野から常磐線に揺られて
富永さんの自宅茨城県牛久沼に一緒に行ってしまう寅だった。



        




【運命のふじ子さんとの出会い】


茨城県 牛久沼のほとり

目の前は東谷田川と呼ばれている、牛久沼の一辺である。 

森の里団地内にある富永課長の自宅前




翌朝、4時間ほどの睡眠のあと自転車で駅まで漕いで行く富永課長。

寅はそれよりずっとあとに起きてここがどこだかわからない。



        


「里の秋」を口ずさんでいるふじ子さん。

???マーク宙に浮かせながら富永課長の奥さんのふじ子さんと挨拶。


        


壁には詩が額に入ってかけられている。


  真実諦めただひとり
  
真実一路の旅をゆく
  
真実一路の旅なれど
  
真実鈴ふり思ひだす



これは富永課長とふじ子さんの家に架かっていた北原白秋の「巡礼」の詩。

作家の山本有三が書いた「真実一路」にもこの白秋の詩は引用されているので
そちらのほうが一般的には有名かもしれない。



        


寅「あの…、大変失礼ですけれども…
  そちらはどこのどなたでしょう??
バカ(^^;)

ふじ子「富永の家内のふじ子ですけど

ふじ子さんからいろいろ説明を受けてようやく事情を把握する寅。


        


どこの誰か素性のわからない寅に対して、
こまめに世話をやいてくれるふじ子さん。

        


ふじ子「コーヒーになさる?それとも紅茶?
寅「は、わたくしいつもコーヒーをだって(^^;)


田舎育ちの富永さんは水や山のあるところが好きな富永さんは、東京から離れているのを承知で
この美しい水や山のある牛久沼の一軒家に引っ越してきたそうだ。

ふじ子さんと二人っきりだと理解した寅は真っ青になりスタコラと逃げ出していくのだった。


お守りを忘れた寅を追いかけて来たふじ子さん。


        


ふじ子「寅さん
寅「


ふじ子のテーマが流れる。


ふじ子「あ…すいません、夕べ主人が寅さん寅さんと呼んでいたものですから、つい
寅「どうぞ、寅と呼んでやってください
ふじ子「そう…、じゃあ、寅さん
寅「はい
ふじ子「奥様にどうぞよろしく

寅、にっこり笑って

寅「そういう面倒なものは持ち合わせておりません

ふじ子「あ…ごめんなさい
寅「それじゃ、ごめんなすって

去っていく寅。

もう一度振り返ってお辞儀。

ふじ子「さよなら


       



夜 とらや 茶の間 お月見の夜

ずっと、美しいふじ子さんのことを考えている寅。

寅「花にたとえりゃ、薄紫のコスモスよ

寅はあんな美しい奥さんとほとんど会う時間が無い富永さんは
可哀想だとつぶやくのだった。


寅は言う

寅「仮にオレがあんなきれいな奥さんをもらったとしたらだな、
  一日中その顔をジーっと見てる


みんなあきれる。

寅「台所で洗い物をしている。そのきれいなうなじをオレは見つめている。
  針仕事をする。白魚のようなきれいな指先をオレはじーっと見惚れる。
  買い物だってついていっちゃうよ。大根をねぎっているその美しい声音(こわね)に
  思わず聞きほれる。
  夜は寝ない。スヤスヤと可愛い寝息をたてるその美しい横顔をじーっと見つめているな。
  オレは寝ない。


        


博「問題があるなあ…その考え方には
おいちゃん「
第一どうやって食っていくんだい」と反論。
寅は「
食わなくたって、腹なんかすかないんだよ」とめちゃくちゃ。


ここで社長がいつものように問題発言。

社長「でもしょうがねえよな、人妻じゃ

寅、ピクッとして

寅「え!今なんていったんだタコ

寅「オレが惚れてるっていったか!それ以外の何ものでもない(−−;)

社長「顔に書いてあるよ


寅、社長に飛びかかろうとするがみんなに止められる。

寅「フ、まあ、いいだろう、てめえみたいなな、スルメみたいなカカア持ってるやつに
  今のオレの話がわかるわけがねえんだい

社長「スルメとはなんだ!!
寅「スルメじゃねえかこのヤロ!、
  ぺっちゃんこで粉ふいて
  焼くとクルクルと丸まってちゃうの

社長「あれでもオレのことをちゃんと愛してるんだよ!
寅「みなさん聞きました。え、スルメがタコを愛してるだと、
  大笑い、ハハハ!

社長「くやしいだろうなあ、女房も持てねえやつにはなあ!

寅切れる。

寅「このヤロ!

おいちゃん「今のはおまえが悪いぞ!」と寅をかばう。


        


社長、怒りながら工場へ逃げていく。

社長「かあちゃーん、あったかいご飯食べよ〜

薩摩琵琶  ベンベン



一方富永さんは

東京 八重洲 呉服橋交差点

通勤途中日本橋のビルの谷間でついにノイローゼになり疾走してしまう。



モーツァルト オーボエ四重奏曲K.370



あてもなくタクシーに乗ってしまう富永さん。

ふじ子のテーマが静かに流れて

枕崎に揺れる薄桃色のコスモスが頭の中に浮かんでいく。


        




とらや 店

ふじ子さんからとらやに電話があるが、寅は『筑波神社』でバイ。


        


おいちゃん曰く

おいちゃん「なんだか色っぽい声だったぞ




筑波神社 秋祭り

筑波神社で健康サンダルのバイをする寅。

このあたりは『ガマの油売り』の啖呵バイが有名。
寅のとなりでも実践していた。

そういえば第3作のオープニングでガマの油売りが出てくる。
第7作でも母親の菊にガマの油売りの口上をじゃべっている。


       





日本橋 スタンダード証券

上司の津嘉山正種さんに相談に行くふじ子さん


       





牛久沼

上にも書いたが目の前は東谷田川と呼ばれている、牛久沼の一辺である。
 

森の里団地


失意のままバスを降りて自宅に戻ってくるふじ子さん。


牛久沼のほとりでふじ子さんを待っている寅。


        


悲しみに暮れる心境を吐露するふじ子さん。


        



富永さんの自宅居間

ふじ子さんは、自宅で寅に思い切った質問をする。

ふじ子「実はね、寅さんに聞きたいことがあるの

寅「…なんでしょうか?

ふじ子「こんなこと、とても恥ずかしくてとてもほかの人にきけないんだけれども…。
    もしかして、主人に女の人が…主人はまじめ一方の人だからそんなこと無いと思うんだけど…でも…


メインテーマがクラリネットでゆっくり流れる。

寅「奥さん、オレは何聞かれてもまともに答えられるような男じゃねえ。
  でも、そのことだけはちゃんと答えられるよ。課長さんはそんな人じゃねえ。


        


  そりゃ、人は見かけによらないと言葉があるけれども、
  課長さんは大丈夫だ。
  奥さん、そのことは安心していいよ



         


ふじ子「そう…

静かに頷く寅。

ふじ子、ほっとして安心する。


でも近所の目を気にしてふじ子を励まし、すぐに家を出る寅だった。



とらや 茶の間

とらやに戻って茶の間でおいちゃんと大喧嘩。

店の売上金を富永課長さんの捜索のために使おうとする寅。

寅「オレが使おうって言うんじゃないんじゃないんだよ、オレは!
  見知らぬ町ですきっ腹抱えてうろうろしてる可哀想な課長さんのために
  使おうと言ってる、それが悪いのか!


おいちゃん「はあー!会ったこともない男のために何でオレが金を出すんだ!そらそうだ(^^;)

すったもんだで金庫のふたを無理やり開ける寅

ドロボー!!」と叫ぶおいちゃん。

ふたが開いて、お金が舞い落ちる。

防犯の音が鳴るジリリリリーン!!


        


泣いてしまうおばちゃん。

呆然と見ているみんな。

金庫の中身があまりにも少ないのでがっくり来る寅。

跡取りのお前がまともな人間だったらだらとワナワナ怒るおいちゃんだった。


小岩の拝みババア」の言うことを聞いて北海道に行こうとする寅を止める博。

博「万一の事態がおきたあとのことを冷静に考えておくのが兄さんの立場じゃありませんかえ??( ̄◇ ̄;)


        


寅「あとのこと?…なんだそれ?

博「夫を亡くした美しい奥さんの悲しみが
  どれほど深いものか、想像してごらんなさい
たぶん死んでないってヾ(^^:)

寅「そうか…

薩摩琵琶

ベンベン!

そそそと茶の間に座り


寅「まず…ムシロをとる。


        



寅「ご主人に間違いありませんか?
  そうですか…。
  まず葬式か…、これは身内だけでいい。
  初七日、四十九日、
  すぐ一年経っちゃう…
凄い想像力((((^^;)

博「兄さん、なにもそこまで考えることは…

寅「そうだな、くよくよしたってしょうがないもんね

みんな頷く。

寅「あんな広いところにいるのは無駄だからさ、
  そうだ、柴又の方へ越してきたらいいんだよ。
  なあ、さくら



さくら「そうね…


        


寅「博、オレこれから、あとーーのことについてゆっくり考えてみるよ

こうして寅は、博の失言によって、ご飯も食べないで
『あとのこと』を二階でじっくり考えると言い出し、

寅「あとのことを考えるって、難しいなあ…」と憑かれたように二階へ上がっていく寅だった。


        


博「まずい言い方しちゃったなあ〜〜〜〜…
気にしない気にしないどっちにしてもいずれ結果は同じ ゞ( ̄∇ ̄;)

みんな博を睨んでいる。

        


下を向く博。

さくら「私知らないわよ、これからどうなんのかしら


2階で寅の声「労働者諸君、田舎のご両親は元気かな?たまには手紙を書けよ


おいちゃん、気分が悪くなってきた。




鹿児島県 坊津市 丸木浜


ふじ子のテーマが静かに流れる


懐かしき海岸線を彷徨う富永課長。


       





一方寅は、悲しみにくれるふじ子さんをなんとか元気づけようと
とらやの食事に誘うことに。




帝釈天参道 とらや前


この時の参道ロケであのお千代さんが経営していたアイリスの屋根
骨だけになっていた。お千代さんは店をたたんだんだろうか…。


ちょうど七五三の日に来てしまったのでみんな店が忙しそう。

寅はせっかくふじ子さんが来ているというのに話がはずまなくてふてくされている。

いつまでもずるずるお茶漬け食ってるおばちゃんに

寅「いつまでもズルズルズルズル茶漬け食ってるんじゃないよ。

  口の中でウンコになりますよ
出た〜〜〜ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ



      


社長がやって来て明るくなると思ったら、

社長涙ぐみながら

諦めちゃいけませんよ!ご主人は生きていらっしゃると思いますΣ(|||▽||| )
と悲しませるようなことを言ってしまう。


      


寅、店がガヤガヤ忙しそうなのでずっと嫌がっている。


ふじ子「いいわね、寅さん
寅「なにが?
ふじ子「いっつもこんなふうに賑やかにごはんがたべられて…
みんな「…」
ふじ子「家族がそろって賑やかに食事するなんて、何でもないことのようだけど
    考えたら…幸せってそんなものなのかもしれないわね

みんな「…」

さくらは、自分たちだっていつもこんなふうに賑やかにご飯食べているわけではないと言うのだった。
寅は同調して、ことさら寂しい老夫婦の食事を強調する。

寅「くら〜い電球の下で二人差し向かい…、煮込みうどんかなんかこれぽっち。
 ね、鼻水といっっしょにズズズ…すすりながら、『あら入れ歯が落こちゃったよ』なんて、
 そりゃあもう惨めなもんですよ



       



さくらの家はここから近いのかとふじ子さんから聞かれて

寅「遠い遠い、何県だあそこ、村か?
さくら笑いながら
さくら「東京よ
寅「だって二時間はかかるだろ
ふじ子さん、真に受けて
ふじ子「あら、電車で?
さくら首をふる。
寅「いいえ、歩いて。
  安月給だから定期なんか買えませんよ。
  靴なんかも買えない。
  裸足でペタペタペタペタ歩いてたんだよ、この前まで。ねえ

さくら含み笑いを浮かべながら頷く。
寅「草鞋についこないだ切り替えたんだよ。
  だからこいつんとこの家族はみな
かかとが丈夫で
一生言ってろよ(-。−;)
ふじ子さん下を向いてクスクス笑っている。
寅「え?なんですか?
ふじ子「だってえ、デタラメ言ってるでしょ寅さん、フフフ本当だったら怖い(((^^;)


一方満男はタカシ君に将棋角落ちで負けてしまう(TT)

寅「お!満男、今日はな、お客様に歌を歌って聴かせろ

文化の日と、いうことで、満男とタカシ君がなにか歌を歌うことに。
タカシ君は音楽の成績が一番いいそうだ。

歌ったのは『里の秋

タカシ君は美しいボーイソプラノ。
満男途中から棄権(^^;)


1静かな静かな 里の秋
 お背戸に木の実の 落ちる夜は
 ああ 母さんとただ二人
 栗の実 煮てます いろり端

しだいに悲しみが噴き出しついには下を向いて涙を流してしまうふじ子さん。


      


この『里の秋』は1945(昭和20)年 敗戦により失った領土からの引揚者への激励のために
NHKの番組で流された歌。

本編では2番3番は歌っていないが実は↓のような内容なのである。
失踪した富永課長を家で待つふじ子さんとタカシ君の歌なのだ。

2明るい明るい 星の空
 鳴き鳴き夜鴨の 渡る夜は
 ああ 父さんのあの笑顔
 栗の実 食べては 思い出す

3 さよならさよなら 椰子の島
 お舟にゆられて 帰られる
 ああ 父さんよ 御無事でと
 今夜も 母さんと 祈ります



ふじ子のテーマも、この『里の秋』のアレンジバージョンだ。



このあたりのシーンで、
決定稿の前の『脚本第2稿』では、本編では使われなかったさくらの興味深いセリフがある。

ふじ子さんがなぜ寅が結婚しなかったのかを聞く場面があるのだ。
それに対してさくらが
さくら「結婚してもいいって人もいなかったわけじゃないわよ
と、興味深いことを言い切っている。




江戸川土手 夕方

帰りに江戸川土手から帰るふじ子さん親子。
ふじ子さんは寅にすっかり頼っている様子。


         



さくらの自宅

見送りに行った満男からふじ子さんが寅に頼っている様子を聞き、
さくらたちは寅の行動がますますエスカレートしていくことが読み取れ、
心配の淵に投げ出される気持ちになっていく。


         



そんなある日


富永さんの自宅

富永課長をなんと故郷鹿児島で目撃したという情報が入り、
ふじ子さんは実家の母親にタケシ君の面倒をみてもらい
一路飛行機で鹿児島へ。

そして寅にもその情報が…。



なんとふじ子さんの母親は、あの京都グランドホテルの従業員だったお澄(おすみ)さんだった!
彼女は確か子供はいなかったはず…、ま、いいか(^^;)


         




とらや 店


さくらが暴走する寅を止めようとして自転車でとらやにかけつけた時にはすでにもう…。


さくら「お兄ちゃんは?
おばちゃん「行っちゃったよ…
さくら「どこへ?
おばちゃん「鹿児島…
さくら「え_!!
おばちゃん「どうしても一緒に行くって

さくら、すぐ追いかけようとするが、もうとっくに走っていってしまったらしい。
さくらは、行かせてしまったおばちゃんを責めるが、

おばちゃん「あの細い目で、じーっと顔見て『オレも一緒に行っていいかな』って
       言うんだもの。『ああいいよ…』って言っちゃったんだよ。反対なんかできやしないよォ…


だそうです(^^;)

          


それもお金なんか持っていないので、社長に5万円借りて(^^;)

社長「こんなこと書かれちゃ、請求もできねえよ


         


さくら、とらやの包装紙の裏に書かれた借用書を見る。


借用書

一金 5万円也

社長様  寅 拇印

御恩は一生忘れません。






TDAで一路鹿児島へ。

機内から桜島が見える。



         



鹿児島 市内


まずは鹿児島市内で市電に乗り、いろいろ聞いて回る寅だった。

とにかく『あご』に特徴があるって聞きまくる(^^;)



        


枕崎駅

まずは実家に行くため、指宿枕崎線に乗り、枕崎駅で降りる。

飲み屋での富永さんの話では枕崎から3つ目の駅と言うことだったが
なぜか枕崎駅で降りる。


        


古い家並み


        


富永さんの義理のお姉さんはなんと津島恵子さん!
あの七人の侍でのうら若き女性だ。

そして富永さんの父親役は新国劇の重鎮である辰巳柳太郎さんだ!


ちょっとボケが入っているので父親は寅と息子の見分けがつかず長刀や刀を
振り回す。

寅「やめはんか!」今回のキーワードです(^^;)

一方薩摩琵琶もじっくり聴かせる文化人の面も。
もちろん寅は聴くふりしながら寝ていた(^^;)


漢詩 『城山』 勝海舟



        



翌朝、いろいろ目撃情報を聞きに行くふじ子さん。


枕崎から結構遠い

鹿児島県南さつま市

加世田武田上鴻巣 付近の 武家屋敷


水路にかかる橋が風情がある。


気の弱い南映タクシーの運転手がお馴染み桜井センリさん。
タクシー代を値切る寅。バカだねえ〜(^^;)


         



鹿児島県南さつま市坊津町 丸木浜

なんの手がかりもないまま、また再び南下して
夫の幼少期の思い出の土地である『丸木浜』に行き、考え込んでしまうふじ子さん。

一週間ほど前に夫がこの浜辺で同じように座っていたことを彼女は知らない。


ふじ子のテーマが流れる。


波を見て

ふじ子「きれい…。子供の頃、こういうところで泳いでたのねあの人…

涙ぐんでるふじ子さんの横顔をそっと見ている寅。


薄紫のコスモスが咲いている。


         



そのあと今度は東へずっと行き、指宿温泉のそば
富永さんが中学生の頃病気を治すために療養しに行ったことがある
「鰻温泉」に行く。

カルデラの鰻池が有名。

鹿児島県指宿市山川成川 鰻温泉

この鰻温泉の「鰻荘」に一週間前に『車寅次郎』の名前で数泊し、鰻池で釣りをしたことがわかる。


        


風力発電


旅館  かどや 室内


明日は霧島に行くことに。


        


ふじ子「あのきれいな海や、静かな温泉を見た時、私、今まで気がつかなかった
    主人の心のうんと奥のほうを覗いたような気がしたの


寅「ほんとに…課長さんはいい人ですから


ふじ子のテーマが流れ

ふじ子「そうね…、いい人だったのね、あの人

寅「

ふじ子「寅さん

寅「はい

ふじ子「私、覚悟してるわ、どんなことがおきても…


ふじ子のテーマが流れる。


寅は「そんなことはねえ、きっと生きてるよ」と励ますが、ふじ子さんは泣いてしまう。

泣き続けるふじ子さんの後姿を見つめ、

そっと肩に手を置く。

寅「奥さん…


        


その時、女中さんの声((((((^^;)

女中の声「ごめんください」

寅、パッと手をのけ

地図を見るふり。

う〜ん惜しい!v(≧∇≦)v

ギクシャクギクシャク((^^;)


        

  
なんと女中さんは谷よしのさんだった!

谷さん「お客さん、タクシーの運転手さんが呼びに来てますけど」

寅「い、今行く今行く

谷さん「悪いとこおじゃましたみたいですね、ごめんなさい」


        


寅はタクシーの運転手の家に泊めてもらうそうだ。

ふじ子さんは「もうひとつ部屋を取ればいいじゃないの」と言うが、
寅はきかない。


テーマ曲が静かに流れ


寅「好きであんなヤツのところに泊まりに行くんじゃありません。
  旅先で妙な噂が立っちゃ課長さんに申し訳ないと思いまして


ふじ子「つまんない、寅さん…

と、下を向く。


        


寅「奥さん、オレはきったねえ男です…


        


寅「ごめんなすって

と、勢いよく背中を向け襖戸を開けたら、そっちは押入れだった(^^;)


        

照れ笑いをする寅。

寅「こっちだった、いけねハハハ


        


襖を閉めたら枕がポトリ。


薩摩琵琶 ベンベン


クスクス笑っているふじ子さんの背中。


        


ふじ子さんは、どうして「つまんない」と言ったのだろうか。
「つまんない」というのは意味深にとれる。
山田監督はちょっと色っぽいセリフを言わせたかったのかもしれないが
神経をすり減らせているふじ子さんは「遠慮しすぎよ」とは言っても
「つまんない」なんていう…、そういう言い方はしない気がする。




鹿児島 名勝 仙巌園(磯庭園)

1658(万治元)年に薩摩藩主島津光久が別邸として造営。
通称磯庭園。鹿児島いちばんの名所で、庭園と桜島の展望がすばらしい。


霧島も空振りに終わり…

桜島を眺めながら

ふじ子「寅さん…
寅「はい
ふじ子「もう帰ろ
寅「そうですね


        


それにしても第25作ではあんなに飛行機怖がっていたのに
この作品では全く平気になったのかな??




数日後



柴又 題経寺 境内

さくらが御前様に寅のことを相談している。

御前様「そうですかァ…己が醜いと寅が言いましたか


       


さくら「はい、ご飯も食べないで横になったまんまそればっかり言ってるんです
御前様大きく何度も頷いて
御前様「己の煩悩に気がつくというのは、一つの進歩ですよ、さくらさん
さくら「そうでしょうか
御前様「寅の苦しみのためにお祈りをしましょう
さくら「ありがとうございます

源ちゃん、掃除さぼって手鏡で、髪の毛をいじっている。

御前様「これ!己の姿を醜いと思わんか!困ったやつだ」と去って行く。無駄無駄ゞ( ̄∇ ̄;)


       


源ちゃん、御前様を指差して、さくらにヒヒヒ笑い



とらや 台所

さくらが店に来ておばちゃんに寅の様子を聞くが

何も食べないでウンウンうなってばかりだそうだ。

あけみもりんごを持って見舞いに来るが、あけみには
人生の機微は理解できない。

あけみ「寅さんは顔は三枚目だけど心は二枚目よ」だって(^^;)


       


で、おばちゃんもおいちゃんも結局なぜそこまで悩んでいるのかがわからない。

博が説明

博「あの奥さんに恋するあまり、蒸発しているご主人が帰ってこないことを
  心のどこかで願っている自分に気づいてぞっとする…ということかなあ


おばちゃん「おそろしい…
  

       


博「だから、自分の中にその恐ろしさを感じて苦しんでいるんだと思いますよ兄さんは

おばちゃん「まあ、可哀想に…


       


おいちゃん、無感動に

おいちゃん「そんなことにいちいち同情してちゃきりがないよ、は、商売商売」と
茶の間から店に下りて行く。


おいちゃんのこの言葉に救われるのは私だけだろうか。
こういうことは、あまり難しく考えずに当事者にまかせるしかないのだから。


社長もやって来て

社長「しかし、いくら惚れても人妻だもんなあ…。
   旦那が死んで未亡人にでもなれば別だけど、そうはうまくはいかねえもんな


おばちゃん「社長!なあんて罰あたりなこと言うんだい。
        かりにも人の命に関わることだよ。ほんとにもう…



      


寅、静かに下りて来て

寅「おばちゃん、オレも罰当たりな男だよ。
  社長を責めていたその言葉はそのまんまオレを叱る言葉だ


みんなで御前様の言葉を聞かせたりして寅を慰めるが、寅は旅に出ようとする。
遠い他故郷であの奥さんの幸せを祈っていくと店を出る。
 

      



とらや 店先


寅「あばよ

店先で人と肩が当たってしまう。

寅「お!ごめんよ
よろける男。
その男の顔を見る寅。

富永「寅さん…。僕です。ほら…『チェスト』

寅「九州の…

寅、少し下を向いて


      


寅「生きてたのか…」寅の本音


      


富永「…はあ…」と下を向く。

寅「…!!」と。。。我に帰って。


寅「奥さん、知ってるんだろな、このことを

富永「なんか、顔あわせるのが具合悪くて…。
   寅さんに会ってからと思いまして


寅「バカヤロウ!何で連絡しねえんだい!


      


富永さんをぐいと掴んで電話口に引っ張っていく寅。

寅「さくら!電話しろ電話!


      


しかし、さくらが電話しても電話には誰も出ない。

じれったく思った寅は直接、牛久沼までタクシーで行くことに。

二人して参道を走っていく。





牛久沼  森の里団地内

タクシーが止まり

戸を開けて

寅息を切らし

寅「奥さん!奥さんいるかい!
奥からふじ子さんの声「はーい」
寅「オレだよ、寅だよ!
ふじ子「寅さん?」と玄関へ
ふじ子「どうしたの?
寅「旦那さん帰ってきたよ!
寅「いますぐ連れてくるからね!


           


寅、玄関を出て富永課長の背中を両手で掴み
寅「さ、行ってやれ
頷く富永さん。
寅「しっかり二人を抱いてやれ!
寅「ほら
と小さくささやいて手を離す。
歩いて行く富永さん。


          


じっと見つめている寅。


          


富永さんを見つめ、呆然と立っているふじ子さん。


          


泣きじゃくり、富永さんの胸を叩き続けるふじ子さん。

そしてしゃがんでしまう。



ふじ子のテーマ大きく流れて


          


富永「すまん…すまん

泣きじゃくるふじ子さん。

タケシ君玄関にやって来て「パパ!
タケシ君、富永さんの肩を揺らして
タケシ君「どこ行ってたんだよ!バカ!ママ泣いてたんだぞ!

ふじ子さんとタケシ君をヒシッと抱く富永さん。


富永さん自宅前 東谷田川土手

寅がゆっくり歩いている。


メインテーマが静かに流れる。


土手にしゃがんで、自分に「これでいいんだ」と言い聞かせている様子。


        




とらや  茶の間

みんな寅を待っている。
おばちゃん「遅いねえ、寅ちゃん
おいちゃん「上がりこんでごちそうになってるんじゃないか
博「いや、兄さんそんなことしないでしょ。きっと玄関で別れてますよ
おいちゃん「だったらとっくにかえって来なきゃおかしいじゃないか

さくら「帰ってこないと思うわ、お兄ちゃん


        


おばちゃん「どうして?

さくら「そのまま、旅に出るのだと思う

みんな「…」

電話が鳴る

リリリリン

さくら「もしもし、あー!お兄ちゃん。心配してたのよー。今どこ?
寅「常磐線の土浦駅だ
さくら「土浦
寅「オレ、このまま旅に出るからな、みんなによろしく言ってくれ
さくら「
寅「あ、課長さんと奥さんがくれぐれもよろしく言ってたよ
さくら「…そう」少し頷く。
寅「もう時間が無いんだ。じゃあ
さくら「もしもし!ちょっと待ってよ

寅「なんだ?

さくら「…よかったねお兄ちゃん

メインテーマがゆっくり流れる。


        


寅「あ、よかったよ」と静かに言う。

さくら「…ほっとした?

寅「…ん…ほっとした

さくら「そう…

        


茨城県 土浦駅前

電話ボックス 黄色電話

寅「それじゃお前元気でな、あばよ


        


強い風の中、襟を立てて駅へ向かう寅。

深い孤独が寅を襲う。


       




とらや 茶の間


博「どんな様子だった?

さくら「うん…晴れ晴れしたような声だしてた


         


博「そうか…

おばちゃん「なんだか可哀想だね」と涙ぐむ。

みんな心が沈んでいくのだった。


         



時は過ぎ…


とらや 台所  正月

あけみがまたもや亭主のことで別れてやるとぐずっている。

社長目の色変えてやって来て
社長「よし別れろ!もう止めないぞ!今すぐ別れちまえ!

あけみびびって
あけみ「いいよ、正月終わってからでェ!


        


ふじ子のテーマが流れる。


年賀状の中にふじ子さんからのハガキがある。

ハガキの差出人に「富永ふじ子」の記述。


        



ふじ子さんのナレーション

森の里団地の南 4km.


あけましておめでとうございます。

不思議なご縁で皆様とお知り合いになれたことを嬉しく存じております。


おかげさまで、主人は会社の特別な計らいで退職を免れ、
12月1日付けで土浦営業所勤務となりました。

仕事の忙しさは相変わらずですが、
以前と比べて主人は、私の身近にいる人のように思えるのです。

私たちは、毎晩と言っていいほど寅さんの噂話をしています。


寅さんは、今どこにいらっしゃるのでしょうか。

私は、寅さんと一緒にした旅を、きっと、一生忘れません。




        



カメラで母息子を撮る富永さん。

目が生き生きしている。

ふじ子さんも嬉しそう。


        






鹿児島



鹿児島県 吹上町 南薩線 伊作駅


        



寅とポンシュウがいつまで待っても汽車が来ない。

寅は待合室で寝転がっている。


ポンシュウはレールが取り外され、枕木だけになっている線路を見て大笑い。

ポンシュウ「なんだこりゃ!ハハハ!
寅「どうした?
ポンシュウ「ククク、ダメだ寅、こりゃいっくら待ったって汽車なんて来ねえよ、ハハハ
寅「そんなこたねえよ。線路はずっと繋がってんだから
ポンシュウ「それがねえんだよ!ハハハハ!見てみろよ


         

見てみる寅。

寅「ん?あーあーあーあー、


         


二人して大笑い。


寅「ダメだダメだこりゃ、いくら待ってもダメだ、ハハハ
寅「ようし、決めた、飛行機に切り替えよ飛行機に、な、ハハハ

ポンシュウ笑い続けている。


         



メインテーマが流れる中


レール無き枕木だけの線路を笑いながら
ヨタヨタ歩くふたりの背中が小さくなっていく。



        


伊作川の鉄橋をこわごわ渡るポンシュウ。寅は平気。

向こうには金峰山の美しい姿


いいねえ〜。


        


このシリーズでも出色のラストシーンだ。


あの風に吹かれていた背中が関敬六さんであり、渥美清さんだ。

彼らは生死の狭間を体験した本物の渡り鳥だった。


今、天国でお二人はどんな話をしているのだろうか。



終わり
       





来週は第35作「寅次郎恋愛塾」の超簡単ダイジェスト版です。



 


 










「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索


このページの上に戻る
最新のコラムはこちら








430

                          

『寅次郎な日々』バックナンバー    
       





430 『お兄ちゃんとの再会 長山藍子さん   


CS衛星劇場 『私の寅さん』その2




2010年2月15日 寅次郎な日々 その430



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


CS衛星劇場『私の寅さん』長山藍子さんインタビューの後編です。

もちろんホスト役は私の寅仲間でもある映画評論家の佐藤利明さん。






【私の寅さん】 






                  





Louis Armstrong が歌う

『 What A Wonderful World 』 が流れる。



               



I see trees of green, red roses too
I see them bloom for me and you
And I think to myself, what a wonderful world


I see skies of blue and clouds of white
The bright blessed day, …




                 

  




      
My memories of torasan



             





長山藍子さん scene.2      (後編)


            






中略





佐藤「長山藍子さんがマドンナという形で望郷編にご出演されるんですね」




           



長山「事務所の者が長山は2週間しかないんですって言ってるんです。
   でも私は、先生がせっかく声をかけてくださったから全部2ヶ月開けたかったんですけど
   2週間しか出れなくて、でも先生は『わかった』っておっしゃってくださって、
   その後、シノップスが送られて来たんですが、それ見て、でんぐり返って笑っちゃって
   『先生素晴らしい!』って思ったんです。
    結局寅さんが、汗と油にまみれて労働する。あの運びが感動的だったです。

   テレビで死んでしまった寅さんでしたが、映画でまた始まった寅さんがほんとにまた
   みなさんに喜ばれて、そして私を呼んでくださって、寅さんがもう一度労働者として働こう!
   っていうようなことをお書きになったと思うと、そういう感動もあって。
   私の中で寅さん像っていうのがパーッと膨らんで凄く幸せだったんです。
   ですから『望郷編』っていうのはパーフェクトな、大好きな映画でした」



           



佐藤「『男はつらいよ』の要素がほんとに凝縮されていて、テレビシリーズで
   培われたものも含めそれからその後に展開される全ての要素がそこに詰まった作品ですよね」



  
中略




佐藤「それで、素晴らしいなと思うのは、そのお豆腐屋さんのお母さんが杉山とく子さん」

長山「そうなんです、おばちゃんですテレビでは」



          



佐藤「で、恋人役で井川比佐志さん」

長山「はい、井川さんはテレビでは博(博士)をやっていらした」



           

  

佐藤「ですから、もう一度ね、テレビのレギュラーメンバーが茶の間で揃う場面を
    山田監督が設定されたんですよね」
   

長山さん、深く感動している表情。

長山「すごいですね。私深く考えてなかったですが、お話伺っていて、
   そうなんですよねえ…」


中略


佐藤「節子さんが始めて登場する時に『寅さん、はいこれ、ハタンキョウ』って言って」

長山「そうなんです、フフフ」



映画の本編の該当場面が流れる。




佐藤「あのシーンが節子さんのキャラクターがスッと出てくるインパクトでした」



         



長山「最初リハーサルした時、『長山さん、これ、口の中に入れていただけませんか、食べましょう』
   っておっしゃって、『は!!』と思ったんだけど、『はい』って言って、フフ、でもおっきいですよね、
   何度もテストしましたから、何度も食べた気がします。大変でしたよ、それでセリフ言って
   大笑いするわけで。健康そのものの節ちゃん、でした」



         





佐藤「オキャンなね、長山藍子さんのさくらさんと、映画版の倍賞千恵子さんのさくらさんが
    そこで対面するわけですよね。」

長山「はい」

佐藤「あの、ファンとしてはね…、フフ、そこで口に含んで、ちょっと恥ずかしそうに
   ポケットに種を入れるという一連の芝居が…」

長山「そうです」



          





佐藤「今までテレビだったのが、今度は松竹大船撮影所に入られた。
   でも杉山さん、森川さん、渥美さん、というお馴染みの人たちでした」

長山「嬉しかったです。ほとんど全然違和感がなかったです」


佐藤「豆腐屋さんのセットで、葦を持って演技する場面があります」

長山「ありますね、あれは…渥美さんと映画でお会いしたのは久しぶりで、
   久しぶりだけど久しぶりの感じがしなくて、で、直しの時間に、ちょうど
   セットの葦かなんかがあったもんですから、渥美さんがこう…取って、
   『藍子なんとかで、こうだろ…』とかしゃべってて、それで私が『んん』とか
   言って、同じ葦でまたそういうことしていった、らしいんですよ。
   私は覚えてなかったんですけど、それを山田先生が後ろからご覧になってて、
   テスト行く時に『ちょっとその葦使ってみましょうか』私はわかりませんから『は?』
   って言ったんです。渥美さんはわかってらっしゃるから『あ、じゃ、これ』って。
   先生は二人が普通の私語をしていた時の様子をやっぱり見てらして、
   見つけられたんですね。さりげなくやっちゃいましたけど二人とも。
   よく見た方に印象的だったって言われますけれど。



           



本編のその場面が流れる。



中略


長山「渥美さんが障子から出てきて『おやすみなさい』って言って、
   また行くところがあるんですけど、そこも私たちは死ぬほど可笑しいのに、
   何度も何度もテストがあるんですよ。そういうのって瞬発力みたいなものが
   必要なんですよね。でも山田先生はどういうところだかわからないけれど
   『もう一回いきましょう』って…。



           



長山「それが見てて毎回可笑しいんです。でも、先生は、また、もう一回とおっしゃるんです。
   そしたら、渥美さんは、毎回ほんの微妙だけど違うふうに…。

   だからたくさん引き出しがあって…、だからその可笑しいっていうのが本当に可笑しくなる。
   毎回凄いテンションでなさってて凄いと思いました」



           





本編のその場面が流れる。   



中略



佐藤「第5作は完成したあと、どこでご覧になられましたか」

長山「渋谷のね、映画館で観たんです。そしたら、一番最初の方で旅館にいる寅さんが
   障子によっかかってこういう格好した時にもうお客さんが笑ったんです。
   コケル前にお客さんがもう笑ったんですね。「男はつらいよ」はテレビでやらせてもらって
   映画になってすっごいテンション上がってるなあって、
   『わあ凄い!寅さんがもうみんなの中にいるんだ!』って思っちゃって、
   この観ているお客さんの中に。
   それが凄い感動しました。もう凄く嬉しくって、凄く誇らしくって、なんか凄い素敵な…、
   なんともいえない…ものを創り出してる人たちの気持ち…、なんかそういうの感動しました。
   映画って言うのはライブなんですね。しみじみライブなんだなって」



           



佐藤「映画そのものも、お客様と一緒に観て笑って泣いて怒ったり、
    いろんなことを共有することで初めて完成するんですね」

長山「そうですね。山田先生も1作目は怖くてお家にいたっておっしゃっていましたけど、
   映画館に行ったら『こうなんだあー』ってやっぱり。それで続いていくっていう…。
   なんか、人の心に入ってくるものは何か、みたいなそんなことを教えてもらいました」



          



長山「…ですから、私は節ちゃんが悪い人…だとか、冷たいとかは、
   全然思っていないんです。
   ひとつの、寅さんっていう人が通っていく人生の、…寅さんを際立たせるための
   凄い素敵なエピソードだって思います。人みな、正直に生きているんだな…って」
   


          



長山「『望郷編』ではそういう全体の流れ、物語の重さみたいなものも凄く感動しましたが、
    やっぱり寅さんが最後に、海辺に行って、フフフ…、登と会って仁義きるっていう、
    やっぱりこれは凄いと思いました。感動しました」



         



佐藤「労働者に一度は目覚めて額に汗して働こうと思ったけれども
   寅さんの居場所というのは、また…ね、という、最後の仁義をきって、
   登がいてくれる世界があって…」

長山「居場所っていうより、『寅さんって人はそういう人なの』っていう…。そういうね、
   『そういう人なんですよ』って、ふっわかる。それでお客さんもそこでまたワー!って
   寅の経験した映画の中で一緒にお客さんもいろいろ経験して、
   そして『やっぱり寅さんだー!』って思って終わるっていうのが凄く感動的でした」



             
  やっぱり寅さんだー!
          



「望郷編」ラストの場面が流れる。






エンデイングの音楽

Louis Armstrong が歌う

『 What A Wonderful World 』 がゆっくり流れ始める。


佐藤「それから…もう、本当に長い時間が経っていますけれど、
    今でもこうしてね、衛星劇場で寅さんは毎月放送されていますし、
    DVDとか、また上映会などで、いろんなお客さんが、その当時生まれていなかった
    人たちまで、こう、夢中にさせてくれるっていうのはとても僕は素晴らしいことだって
    思うんです」

長山「すっごいことですね」


佐藤「今、こう『さくら』さん、『節子』さん、のお気持ちを伺ってまいりましたけれど、
   長山藍子さんにとって『男はつらいよ』っていう作品は、長い女優生活の中で
   どういった作品だと思われますか」



          



長山「そうですね、あの…、光の…、たとえばここに一つの石があったら、
    それは宝石じゃなくていいんです。その光のあり方、放射の仕方ってあると思うんです。
    あの、『男はつらいよ』っていうのは、なんかちょっと…こう…乱反射的な感じがするのに
    一つの凄く鋭い、こう…明るくて深い光をピューって放って私の心の中に残っているような、
    そういう…やっぱり『宝物』…ですね。



         





長山「そんな私は語れるような人じゃないんですけど、
    え…っと…渥美さんがやっぱり最後の48作目まで頑張っていらして、
    私はなんか…お兄ちゃんはずっと、永遠にこう…、

    (涙ぐみながら)



         



    私の中ではずっとテレビの『お兄ちゃん』があるので…、それと『望郷編』だけ
    出させていただいているんで言うんですけど…。

    しょうがないけど…とても体大事にしてらした方だし、
    今も…たとえば、『男はつらいよ』が撮れていなくても、
    こう…ベットでもいいから、
    今でもこれだけみんなに愛されているってことをね、
    見せてあげたいって…思うのと、
    


         
   


長山「ま、『見てるだろうなあ』って思おうと…フフフ…思います」


 
         







            



終わり







インタビューの最後の最後、
長山さんの渥美さんへの想いが溢れるような言葉は内容もさることながら、
あのテレビ版『さくら』さんから繋がっている長山さんならではの
大きな歴史を感じる涙そのものであり、声そのものだった。

倍賞千恵子さんでも三崎千恵子さんでもなく、長山藍子さんしか言えない
言葉というものがあるのだな…と、しみじみ感動した夜だった。




        











「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索




このページの上に戻る
最新のコラムはこちら









429

                          

           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 たぶん…一週間に一度くらいアップかな…





【号外】 ロケ地探訪

ついに発見! 神田神保町『大雅堂』



2010年2月5日 寅次郎な日々 その429



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



昨日、長山藍子さんの後編を書こうと思ったら、思わぬことが起こったので『号外』として
ちょろっと書きます。




第17作「夕焼け小焼け」で印象的なシーンというのは名作ゆえにかなり多いが、
あの海坊主のような親父が生息する神田神保町の『大雅堂』での寅とのやり取りは
抱腹絶倒、大滝秀治さんここにありの名演技だった。



           
この表情が出来る人は大滝さんだけ。

          



で、問題は、『大雅堂』の場所である。

昔、学生の頃、しょっちゅう神田古本屋街をうろついていたのだが、
ああいう店があった気もするが思い出せない。第17作の本編完全版制作時も
調べようとは思っていたが、生来の怠け癖がある私は
結局まじめに調べることもなくうやむやのままに放置し、忘れかけていた。

で、昨日のこと、
月虎さんのSNSの中で、いつもお世話になっている寅仲間のRさんが、
あの店構えは以前現地で見たことがあるとおっしゃったのだ。
私は、ひょっとして今でもあの店構えは残っているかもしれないと思いはじめた。

もちろんインドネシアのバリからロケ地探しができるはずもない。
そこで昨夜、いつものように必殺技、グーグルのストリートビューで現場を
ぐるぐるまわることにした。


当然、まわる前にまずヒントを映画の中から探さねばならない。

本編の中で青観が「神保町交差点の近く」と寅に言っているが、
このあたりの発言はいつものとおりいい加減なので、
あまりあてにしてはいけないことは経験上わかっている。


幸いなことに寅が歩く横の大きな道は間違いなく『靖国通り』だ。

それと寅が歩く後ろに『スルガ台画廊』『○陽堂書店』と『○山書店』の名前が見える。
今でもあるかないかわからないが、それを手がかりにまず探してみる。


       




            





まず、スルガ台画廊は銀座本店は検索で出てくるが、
神保町店はとうの昔に閉店したのか引っかかってこない。残念。

今度は本屋さん。
神保町の古本屋街一覧で『○陽堂書店』を探すと
神保町2丁目の『山陽堂書店』が出てきた。



        



その近くをたどって行くと、
なんとなくショーウインドウが出っ張っている書店が見えてきた。
神田神保町2丁目5番地『古賀書店』だ。


       



↓の映画の大雅堂のショーウインドウと表がよく似ている。


       



隣の大きめの書店の白い外壁もそっくりだ。


       




ちなみに古賀書店は本来は音楽専門書店。戦前から続く老舗書店だ。
建物も同じく戦前から建つレトロなもの。絵にしたくなるくらい重厚で渋い。
この建物には映画本専門店で有名なあの矢口書店も横に入っている。



      




と、いうことは…古くからある文化財的な建物なので簡単にはいじれないはず。

しかし実際は外壁の柱部分が違う。



         




この、外壁柱部分が映画とは違うことがどうも腑に落ちない…。


これは場所が違うな…。長年の勘だ。





もう一度『○陽堂書店』に戻る。

神保町の古書店一覧で再度調べる。

するともうひとつあった!

神保町1丁目の『東陽堂書店』である。




       




ストリートビューで付近をまわると、東陽堂書店のすぐ近くに
『村山書店』という店がある。
上に書いたように、例の『○山書店』のことかもしれない。



           


そう思ってもう一度映画のチャプター静止画を見てみると、確かに
東陽堂書店の何軒か向こうの看板は『村山書店』と読むことができる。

       

       
と、いうことは…と、はしゃぐ心を落ち着かせて、
さらに大雅堂付近と思われるあたりをストリートビューでまわってみると
どこかで見たビルに貼りついた大きなレタリング文字…。八木書店?


       



ひょっとして大雅堂の隣のこのレタリングかも…。
外壁の色は変わっていたが、あの大きな店名の4文字レタリングは同じ。


     



ということは、『大雅堂』はその隣の店!か…。


ストリートビューで移動してみると、ちょっと道が曲がっている。
そういえば…映画もよく見ると曲がっているように見える。

ピンポイントでもっとしっかり見てみる。
うーん店構えがちょっと違って見える。店の前右部分にリニューアル工事がしてあり、
ちょっと店全体の印象が変わったようだ。


しかし、なにかショーウインドウガラス越しに絵が…。


     





ネットでもっと近寄った写真を探してみる。



   




完全に『赤富士』だ!!


映画でショーウインドウに飾ってあった『北斎の赤富士』!
そして映画の時に映ったショーウインドウの障子も健在!
   
 
   




店のショーウインドウの北斎の赤富士は
自然光にやられるのでたぶん複製かも…。


実は、『大雅堂』ロケに使われたこの店は
あの古地図、浮世絵などの古美術で有名な
神保町1丁目1番地の『大屋書房』だった。


    




そして問題となっていた外壁の石も映画当時と一緒!。

         



        
店の中は実はこうなっているので、
映画の店の中のシーンは大屋書房以外の店か大船セットかだろう。


       




と、いうことで、
表右側のあたりがちょっと変わってしまっていたが、Rさんのおっしゃるとおり、
あの赤富士が架かったショーウインドウも中の障子もまだ健在だった。

めでたしめでたし!(^^)


PS:そういえば、先日見たNHKの『ブラタモリ』であの店が紹介されていた。
   まさかあそこが『大雅堂』だったとは夢にも思わなかった。

映画姑獲鳥の夏 (うぶめのなつ)の古書店『京極堂』のモデルにもなったそうだ。




長山さんの衛星劇場「私の寅さん」後編は来週です。お待ちください。






「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索






このページの上に戻る
最新のコラムはこちら






428

                          
『寅次郎な日々』バックナンバー               






もう一人の『さくら』 長山藍子さんの感覚  前編



CS衛星劇場『私の寅さん 長山藍子さん』 ― 兄を恋人と思っていたさくら



2010年2月1日 寅次郎な日々 その428



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


先日、「男はつらいよ」仲間の知人からCS衛星劇場の番組「私の寅さん」での
.『長山藍子さん』の映像をいただいた。

彼はもうそれは本物の寅さん好きで、長山藍子さんの回がとてもよかったのでわざわざ送ってくださったのだ。
こういう時は、持つべきものは仲間だなってやっぱり思う。

早速見てみると、番組中の長山さんのほとんど全ての話がまさに「珠玉」だった。

長山藍子さんしか言えない感覚が、包み隠さずほとばしっていたのがなんとも楽しく嬉しかった。
そしてそれぞれの言葉はもちろん、それと同時に長山さんの表情が豊かで才能に満ち溢れていた。
テレビ番組に感動したのは久しぶりだ。
いつも思うことだが、このCS衛星劇場の『私の寅さん』はほんとうにじっくり作りこんだいい番組だ。


それで今回、久しぶりに番組のエキスを紹介してみようと思う。


本来前編と後編に分かれる長いインタビューなので、
本日の前編はテレビ版、来週の後編は映画版の「男はつらいよ」に関する部分だけに絞って
紹介することをお許し願いたい。


もちろん、聞き手であるホスト役は、お馴染み、寅仲間の映画評論家、佐藤利明さん。


それではCS衛星劇場 「私の寅さん. 長山藍子さん」ダイジェストをお楽しみください。





【私の寅さん】 




       





Louis Armstrong が歌う

『 What A Wonderful World 』 が流れる。






女優 長山藍子




       







佐藤「長山さんと言えば『さくらさん』」

長山「はい」

佐藤「もう一人の『さくらさん』という言い方が正しいと思うんですが」

長山「……は」

佐藤「『男はつらいよ』の原点となったテレビ版でね」

長山「はい」

佐藤「さくらさんを演じてこられた方」

長山「はい」

佐藤「今日はね、たっぷりとその頃のお話も、お伺いできればと思います」

長山「はい、ずいぶん昔のことになりますね。フフフ、よろしくお願いします」



佐藤さんが「もう一人の『さくらさん』と言った方が正しい」と言われた時の、
長山さんの微妙な表情は彼女の複雑な心理状態を表していたように思う。
彼女は『二人のさくら』について色々思うことがあるのかもしれない…。






大きく中略






佐藤「このドラマ、それまでのね、いわゆるホームドラマとは本当に趣が違う…。今我々は
   どういう世界かは知った上で拝見してますけど、当時は視聴者も出演される方も、
   まずあの世界というのはまったく未体験なわけですよね」

長山「そうですねえ…」





        




佐藤「いかがでした、さくらさんを演じるにあたって」


長山「脚本を読ませていただいた時、まるでこう、ひとつの一編の小説を読むように緻密で
   ディテールがちゃんとこう…裏づけされていて、それでいて突拍子もなく面白い寅さんの
   シチュエーションがあって、吸い込まれるように読ませていただきました。はい。
   それでまた出演なさるそれぞれのポジションの方たちが、すごく、ちゃんとした立ち位置で
   いらっしゃるって印象を受けましたね」



        



佐藤「『おいちゃん』とか『おばちゃん』とか『お兄ちゃん』って言うふうな言い回しが…」


長山「最初の山田さんの脚本には『おじさん』で、『お兄さん』だったんです。
   それで書いておありになって、でもなんとなくみんな集まってやってるうちに
   最初のリハーサルで、なんとなく『お兄ちゃんって呼びたい。お兄ちゃんでいいかな』
   って、演出の小林俊一さんに伺ったり、山田さ先生もいらしてたんですけど…、
   そしたら渥美さんが、すぐ、『よお、おいちゃん』にしょうかな。で、おばちゃんになって。
   みんなが『ちゃん』ですっと寄っちゃったんですね。あの、最初にもう。


   それはもう渥美さんの感性がもうほんと凄く大きく、…あのなんていうのかな。
   山田先生の本は丸いんだけれども、ちゃんと四角い囲いがある、みたいなご本なんですね。
   で、渥美さんによって、その四角い囲いを飛び越えて丸さがあって、ちゃんと四角が中にあるって言うような
   そういう感じの作品になっていったのかな、って。




         
その四角い囲いを飛び越えて丸さがあって、ちゃんと四角が中にある

         





この長山さんの作品観は単純で抽象的だが、実に真実を言い切っている言葉だと感じ入った。見事だ。






   あと、小林俊一さんっていう監督、演出家が、あの、プロデュースさんもしていらしたんですけれども、
   凄く…、その世界っていうんですか、それを緻密に作られていかれました。




         




   
映画が一番先に走ってて、テレビは…って言われてたからなおさら逆にテレビドラマをちゃんと作ろう
   見たいな勢いのあった頃でしたので、大変現場は楽しかったです」



佐藤「舞台の脚本のようにしっかりとしたシナリオがあって、キャストが徹底的に本読みをしていく
   リハーサルを重ねていく…。それゆえ人間関係もより濃密に…」



   
長山「そうですね、一回目とか二回目、っていうよりも一回目からあっという間に、その寅さんととらやのみんなの
   濃密な世界ができちゃったっていう感じです。
   まあ26回も続いたわけですから毎週集まってお稽古するわけですから、それはもう深い繋がりみたいなものが
   できていました」

佐藤「やはり、この…渥美清さんを中心に、スタッフ、キャストが一丸となって行くって感じはありましたか?」

長山「一丸でもないですね。あの…、渥美さんって、映画の時もそうだったけれど、どっかいなくなっちゃって、
   『お兄ちゃんは?』って言うと、なんか、外に出て空を見てたり、どっか隅っこの方でしゃがんでたり、
   あの…、テレビの収録の時も、そんな風でしたよ。ただ、間では、凄いエネルギッシュですから、
   冗談言って、うんと笑わして…、芝居以外でもよく笑ってましたあ、もうほんとうに、フフ」




          




佐藤「テレビ版のさくらさんというのは、とてもオキャンというか、明るい…」

長山「ええ、まったく影をしょってない感じ…、ですね。ですから、私の印象としては、…
   あの、…憂いはあるんだけれど、つまりお兄ちゃんに対する心配とか、そういうのはあるんだけれど
   基本的には凄く明るくって、

   で…お兄ちゃんのことは、私自身のさくらは、ん…恋人と思っていました。
   あの…テレビは結婚してないんですよね」


佐藤「ずっと車さくらさんですよね」

長山「だから、こう…、さくらちゃんが、母性、お兄ちゃんにとって母みたいな、お兄ちゃんに母性を感じるような…、
    またそうなんですよ、寅さんが。それとちょっと…愛してるっていう…愛するってことが…母性と兄妹愛と、
    それからちょっと恋人みたいな…。そういうような感覚で…やってたようなそんな感覚がするんです。

   


           
         



この発言はある意味私にとっては意外ではなかった。
テレビ版「男はつらいよ」での長山さんを見ていると、寅を「恋人とも思っていた」ことが
よくわかる微妙な演技だったからだ。

倍賞さんの『さくら』は母性は大いに存在するが、この『恋人』の要素もないわけではない。
しかし、やはり長山さんに比べて薄いようだ。

長山さんは『母性』と『恋人』の天秤のバランスが『恋人』にやや傾き、
倍賞さんは『母性』にやや傾いていった気がする。




佐藤「今は残念なことに第一話と最終回しか残っていないんですけど、
   長山さんが覚えていらっしゃる当時の現場のことなどは?」

長山「そうですねえ…、とにかく仲良かったから、ワーッって言う間にいろんなことが通り過ぎたような気がするんですけど、
   山田先生がよくね、現場にもいらっしてくださって、それからみんなでお寿司食べに行ったり、
   収録以外でもみんなで楽しく過ごしたこととか、

   …あの、森川さんがほんとに…、映画のほうでもおいちゃんやってらして、
   素敵だったんですけど、フフフ…、とらやのお茶の間があって、キャメラがいっぱいスタジオに並んでて、
   ある日突然、すっごく大きな本当に大きな字で、真っ白い紙がスタジオの壁いっぱいに貼られたんです。
   それで、フフフ、『あれ、なあに?』って…、私なんかまだほんとにその経験が薄いですから…。
   そしたら、おいちゃんのセリフが全部書いてあったんですね。ね。それで『見ながらできるのかなァ〜』なんて
   思いますよね。で、やってて『おまえそこ邪魔なんだよ』なんておっしゃりながら、やってんですけれど、フフフ、
   繋がってみると、読んでるなんて思えないような、あれは一つの魔法を見たような感じでした。
   森川さんは全部『おいちゃん』でしかなくて、読んでらっしゃるなんて全然。渥美さんもみんなも笑いながら
   ほんとうに楽しく撮影が進んでいったことを思い出します」

  



           



長山「そうですね…。それで、最終話の26話に近い24話くらいの時に、やっぱり山田先生がいらして、
   あのー…静かに…『寅さんは死にますよ』と、おっしゃったんですね。で『え!!』って言って、
   『なんでー!』とか私言って…、小さい声でおっしゃったんです。
   『奄美大島でハブに噛まれて死ぬんです』っておっしゃって、
   『んんん、何で死ぬんですか!?何で死ななきゃいけないんですか!?』って言って、
   だからその時のお稽古場は最終回でもないのに、もう蛾次郎さんなんか泣いちゃってできなくなっちゃったです」


佐藤「その時の長山さんは、さくらそのものだったんですね、気持ちも」


長山「ん…、さくら…もあるし、私個人としても、こんなにね優しくって、思いやりがあって…、
   そりゃすごいヤクザかもしれないけど、ちょいとヤクザかもしれないけど、こんなに人間らしい人が、
   死んじゃうなんて、って思ったんですよね。お兄ちゃん、寅さんのことをね」


当時のキャストたちがいかに車寅次郎に対して
役者を越えて強い思い入れを持って寄り添っていたかがよくわかるエピソードだ。




佐藤「そのようにいろんなエピソードがあったと思うんですけど、僕が印象的だったと思うのは、
   あの…僕らは数少ない台本を拝見するしかないんですけど、お正月に放送された回(第14話)で、
   あの、散歩先生」

長山「はい」


佐藤「東野栄治郎さん、のお宅にみんなで…」

佐藤、長山「集まって、フフ」

佐藤「レギュラー全員がね、おいちゃん、おばちゃん、冬子さん、佐藤オリエさん、」

長山「オリエちゃん、はい」

佐藤「登君、」

長山「はい」

佐藤「みんながあつまって、こう…幸せについて、恋愛論についてこう…、語り合うという回があったと思うんですが。
   あの回なんかは、山田監督のね、寅さんを見つめる優しさだったり、家族の寅さんに対する愛情、冬子さんの思い、
   などがきちっと描かれています。
   そして、さきほどその台本を読んでいただいたんですけれど」

   

長山「はい。そうですねえ…」

と、再び佐藤さんから14話の台本を渡され、読み始める長山さん。

長山「散歩先生が、『人間誰しも愚かしさを備えとるもんだ。それゆえにまた人間でもある。どこが悪いか』
   寅が、『なるほど、そうかわかった」 散歩先生が、『なんだ』 寅が、『早い話がよ、人間はバカだってこと。
   これが本日の結論。ね、先生』 散歩先生が、『そうそう』 冬子、さくらたち笑い出す。
   この前が面白いんですけどね。フフ 、まあそれで、寅が『さくらだってバカ。そのバカの親分、お兄ちゃんのことも
   バカ』 そう言って、そしたら『竜造がひょいと顔を上げ、よだれをすすりながら、わけがわからない…』
   まあ、寝てたんですよね」

佐藤「おいちゃんですね」

長山「ええ、おいちゃんが『そう、バカヤロウだ」って言ったので、一同どっと笑う。寅、『自分で説明した。
   おばちゃんもバカ。オレや登はもちろんバカ。先生だってバカ。な、ここにいるみーんなバカだって』
   そしたらさくらが、『なにがみんなよ』って言って、『冬子さんはどうなるの?』って言うんですよね、フフフ。
   冬子さんは、寅さんの本当に想い恋焦がれているマドンナですからね。マドンナの始まり。
   で、寅が、しまったっていう顔して、寅、『お嬢さんか…、お嬢さんは…お利巧』(↓ポーズ)
   って言うんでしょうね、フフ、きっとフフフちょっとわかんないけど、フフフ」

   

             
     お嬢さんは…お利巧

        




長山「そしたら、散歩先生が、『バカモノ』って言って、そしてみんなが笑って、そしたら冬子が真剣な顔になってうつむいて。
   で、寅が赤くなって、バレちゃったか、こりゃまずいな。と、いうようなことがあって、ま、逃げ出すっていう…。
   寅さんが全部出てるし、みんなが出てるでしょ、このシーン、抜粋なさってくださったけど、好きですこのシーン」


佐藤「一幕もので、しかも、それが最後にさくらのナレーションで、
   僕はここが一番たまらないんですけど、最後のここです」

と台本の箇所を指差す佐藤さん。

長山さん、微笑みながら

長山「読みましょうか、フフ」

佐藤「この、一行を」



エンディングの音楽
Louis Armstrong 
が歌う
『 What A Wonderful World 』 
が静かに流れ始める。




長山「さくらの声 『あれは兄と過ごした初めての、そしてただ一度きりの正月の夜のことでした』



佐藤「このドラマは必ず『さくらのナレーション』でね、こう、始まって、さくらのナレーションで終わる、という
   45分のドラマですけど、これね、実は寅さん、お正月映画の顔としてこのあと映画がずっと48作まで
   作られていくんですけど」

長山「映画ね、はい」

佐藤「その48作のどの作品でも、寅さんはお正月は柴又にはいないんです」

長山「いないの?」

佐藤「一度もいないんです」

長山「やっぱりいないの」

佐藤「ということは、寅さんと唯一お正月を過ごされたのが」

長山「みんな。テレビのみんな」

佐藤「そうなんです。テレビのみなさんなんです」

長山「うわー…、ん、…凄い。山田先生、もう徹底してらっしゃる」

佐藤「昭和44年の、お正月」

長山さん、感慨深く何度も頷く。

佐藤「の…放送だったんです」


長山「想いがね…」


大きく頷く佐藤さん。


長山「ん…、じゃ幸せだったんだんですね…私…」


佐藤「もちろんその段階では、映画が作られることは誰も想定してませんし、
   山田監督もまだ考えておられなかったかもしれないですが、そのシナリオ、その演出、その演技が
   あるから、視聴者の心を掴んで続いていくわけですね」


長山「そうですね、先生が、寅さんは任侠の世界に生きているから死んだ方がいいんだよっておっしゃった時、
   私にはわからなかったから、…っていうより、悲しくて受け入られなかったのかな…。
   先生のおっしゃることは『そうか』と思ったけど、悲しくて受け入られなかったから、
   映画で寅さんが復活した時はとてもうれしかったですね」






         





前編  終わり





あの、第14話の最後のナレーションを再現される長山藍子さんの声を
私はいつまでも忘れないだろう。

長山さんがいかにこのテレビドラマを愛していらっしゃったかが
強く伝わってくる言葉と表情の数々だった。

「じゃ幸せだったんだんですね…私…」とおっしゃった長山さんに、
私までもなんだかちょっと救われた気持ちになった。






来週は『長山藍子さん』の後編のエキスを紹介しましょう。

後編は映画版「第5作『望郷編』を中心に語られます。





おわび: 1月31日にサーバー障害が起こり、
      24時間このサイトが見れませんでした。申し訳ありませんでした。








「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索





このページの上に戻る
最新のコラムはこちら








427

           
               

『寅次郎な日々』バックナンバー               






なぜか江戸幕末に詳しい寅



2010年1月28日 寅次郎な日々 その427



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


そろそろ、滞在も落ち着いてきたので、絵画制作と染織デザインの合間に
昨日から第24作「春の夢」の本編完全版作業を進めている。

ちょうど寅が紀州から帰ってきて、アメリカ嫌いをおいちゃんたちにぶちまけるシーンを
DVDで見ていたが、意外と寅は江戸幕末のことは物知りなのである。

なぜだかわからないが、日本が鎖国を止め、開国をせざるを得なくなった理由を知っているのである。



 寅「どうして日本とアメリカが仲良くしなきゃいけないんだ!?いいかあ、
 あの黒船が浦賀の沖へ来て、徳川三百年天下太平の夢が破られて以来!日本人は
 ずーっと不幸せなんだぞ!それもこっちが頼み込んだんじゃないんだ。向こうからいきなり
 来たんだ勝手に。大きな大砲で脅かして、無理やり仲良くしようってんだい、そんなバカな話があるか?」


 確かに。あの当時日米和親条約についで結ばれた日米修好通商条約は
 「関税自主権を行使させない」ことや「治外法権などを認めさせる」などの全くの不平等条約だった。

 しかし寅って意外に幕末の歴史把握してるんだね。




                  



 社長「
はあ…、つまりその…寅さんは尊王攘夷のほう…社長言うねえ…なかなか言えないよその言葉(^^;)

 寅「あたりめえだよォ!
 おいちゃん、おろおろしながら
 おいちゃん「いやいや、あのな、たとえそんなことがあったにしても、不幸な過去は水に流してさァ…

 寅「流せない、流せませんよ。いままであいつらに日本人がどれほど酷い目にあったかァ、えー、
 
唐人お吉、ジャがタラお春、蝶々夫人、ほら、枚挙にいとまがない、なァ」



                  



さて、寅はどうしてこんなに江戸幕末の歴史を知っているのか。

少年期に講談を聞いたのか、少年用赤本(講談本)を読んだのか。
紙芝居かなんかで新撰組かなんかがやってたのか。
それとも啖呵バイの中で黒船騒動が出てくるのか。

で、思うに寅はやはり赤本といわれる少年用講談本でチャンバラを好んで読んだのではないだろうか。
寅のチャンバラ好きは第15作「相合い傘」や第17作「夕焼け小焼け」で垣間見ることができる。
その中に『新撰組』とか『鞍馬天狗』とかが登場し、その背景としてメリケン(アメリカ)の黒船が
出てきたりしたのかもしれない。

物語が面白くできているので、そういう歴史的なものも寅少年の記憶にスッと入っていったのかもしれない。


ところで、この江戸幕末当時、列強諸国の餌食になってもおかしくなかった日本がなぜ、
奇跡的に明治維新を独立を保ったまま迎え、進めることができたのか…。
これはいくつもの偶然と必然の条件が重なって成しえたことなのだが、

またそのことは本編完全版で述べてみる。







「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索




このページの上に戻る
最新のコラムはこちら









426

   
                       

『寅次郎な日々』バックナンバー                





長旅から帰って来た人には…。



2010年1月21日 寅次郎な日々 その426



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


バンコクに一週間滞在し、常夏のバリ島に昨日帰ってきた。
厳寒の北陸との気温差は25℃近くにもなる。

それにしても昨年秋から義父の死に直面したこともあっていろいろきつかった。

11月から12月まで一度バリに戻ったが、今度はまさかのアグンライの父親の死の知らせを受けてしまった。

納骨を控えて、少しあわただしくバリ滞在を過ごしていった。
その後年末にもう一度日本に納骨のため一時帰国し…、
ようやく今、じっくり腰を落ち着けて3ヶ月間絵を描き、ものを作ろうと思っている。

精神的にもきつかったこの数ヶ月だったが、
アグンライの家族が、留守宅を毎日しっかり守ってくれていたので助かった。
屋根の修理、門の修理、垣根の修理、草刈、猫のえさなどを全部やってくれていた。

バリに住みはじめて今年で20年目を迎えるが、いろいろな人との人間関係が年月と共に深まってきているので
留守の日々が長くとも自宅も仕事もさほど心配が要らなくなってきている。

特に長旅から戻った当日は心身ともに疲れているので、
しっかり敷地も部屋もきれいにしてスタンバイしてくれていると本当に助かるのだ。




         







第12作「私の寅さん」で留守番をする寅が、九州旅行から帰ってくるさくらたちを心を込めて迎えてやるが、
ああいうやり取りは実に心温まるものだ。

寅は旅人なので、誰よりも旅の心労は骨身にしみているのだ。





寅「あーあ、久しぶりの長旅から帰ってきて家の中が
 カッ散らかってると気分が悪いからなー、なあ、社長」


寅「いずれそのうちにその入り口からおいちゃん、
 おばちゃん、さくらがよ、
 こんな大きな荷物を抱えて、
 あーあー、くたびれたくたびれた、
 家が一番いいよー、
 なんて言って帰ってくるんだよねー」




          



寅「そのときの、この迎える言葉ってのが大切だな。
 『あ、お帰り疲れたろう?さあ、上がって上がって』ねー!

 熱い番茶に、ちょっと厚めに切った羊羹のひとつも添えて出す。

 ホッと一息いれたところで、
 『風呂が沸いてますよ』っと手を差し出す。



          




 長旅の疲れを、すっと落とす。出てくる。

 心のこもった昼飯が待っている。ねー!
 温かいご飯!しゃけの切り身 山盛りのお新香 
 『どうだい、旅は楽しかったかい…?』
 たとえこれがつまらない話でも『面白いねー』って
 聞いてやらなきゃいけない。

 長旅をしてきた人は
 優しくむかえてやらなきゃナー…」



          




なんともいいアリアだね。名場面だ。









「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索



このページの上に戻る
最新のコラムはこちら










425


                        
『寅次郎な日々』バックナンバー                






新年のご挨拶  寅次郎と雪のバス停



2010年1月2日 寅次郎な日々 その425



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


新年 あけましておめでとうございます。

皆様にはお変わりなくお過ごしでしょうか。
旧年中は思い起こせば更新が一昨年同様
遅れ続けることの数々、
今はただ、後悔と反省の日々を過ごしつつ
皆様の幸せをお祈りしております。

義父の納骨があり、喪中であることは承知しておりますが、
みなさまの日ごろのお励ましに感謝いたしまして
あえて新年のご挨拶をいたしましたしだいです。


なお、わたくし事ではありますが、
絵画をはじめ、日記、男はつらいよ覚え書ノートなど、
相変わらず稚拙で、ダラダラした無教養な内容ではありますが、
私のかけがえのない作品でありますれば、今後とも
くれぐれもお引き立ての程、よろしくお願い申し上げます。


雪の剣岳が見える丘にて


2010年 正月

吉川孝昭 拝





寅年だと言うことで、息子がさきほど雪のバス停で転寝する寅『寅次郎と雪のバス停』を描いてくれた。
この寒空のした、彼は今どんな夢を見ているのだろうか…。




    
    RYOTARO 作画  寅次郎と雪のバス停  2010年1月2日

    




寅とさくら 兄妹の青春  イメージボード3枚 


2009年12月28日 寅次郎な日々 その424



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



ようやく市川準監督の『トキワ荘の青春』DVDを手に入れた。

私は市川準監督の作品はほとんど見ているが、その中でもこの「トキワ荘の青春」が一番好きだ。

巷では市川準監督と言えば「BU・SU」「病院で死ぬということ」「東京兄妹」「東京夜曲」などが評価されているようで、
青春の輝きと挫折をひそやかに描いたこの「トキワ荘の青春」は過去も今もほとんど注目されていない。

市川準監督作品の中では埋もれがちなこのはてしなく静かでメリハリのないのっぺりした作品を
VHSでここ十年以上何十回と見てきた。私にとっては何物にも変えがたい物作りの真実がそこにあったからだ。

で、今回ようやくVAPさんからDVDが出たのだ。

おまけに当時の『メイキング映像』もたっぷり見ることができる!


どんな人にも、グループにも黎明期はあり、青春期もある。
みんな生き方が下手でぶざまではあるが、その年齢、その時代でしか感じられない真実を抱えている。
人生の夜明け前とは実に切なく甘く哀しいものである。





        






その昔…、
あの寅とさくらにも、「男はつらいよ」以前の蜜月期や黎明期はもちろん存在したはずだ。

シリーズの本編では黎明期のさくらと寅の再現フィルムは、
第39作「寅次郎物語」での江戸川土手の別れの夢を除いては一切出てこないが、
二人の強い繋がりがうかがえる言葉での回想は何度かある。


今回私が選んだ寅とさくら幼少期の3つの名場面↓。

これを息子に頼んでちょろちょろっと早描きで3枚描いてもらった。
どうぞそれぞれのイメージボードをお楽しみください。




■第1作 さくらの結婚披露宴で御前様が回想する寅とさくらのエピソード。


御前様「兄さんの寅次郎君と違って、さくらさんは
     子供の頃から実におとなしい、心の優しい子供だった。

     兄さんの寅次郎君が父親に叱られて
     外で泣いていると、自分もそばにいって、
     しくしく泣いている。そんな優しい子だった




なにげない小さなエピソードだが、さくらと寅の繋がりをよく表した言葉だと思う。
さすが御前様、見る目が鋭い。





           

              RYOTARO 作画  寅次郎とさくら 幼き日々






■第6作「純情篇」 寅が柴又駅ホームで回想する幼きさくらとの別れも、
  当時の二人の繋がりの深さを鮮やかに浮かび上がらせてくれる。





寅「さくら、…覚えてるかい、
  この駅でよ。

 
オレが16の時に親父と
  喧嘩して家出したら…



さくら「そうね…確かにね、
   なんだかお兄ちゃんと
   別れるのが辛くてどこまでも
   追っかけてったんじゃない?私」


寅「そぉよ、追っ払っても、追っ払ってもよ、
  え、おまえ泣きべそかいてよちよちくっついてくるんだろう、
  オレ困ちゃったよ。
  でも、そこの改札のところまで来たらあきらめてよ、
  これ餞別よってオレに渡しておまえ帰ってったろ。

  電車乗ってそれ開けてみたらよぉ、
  こんな真っ赤なおはじきが入ってやがんのオレ笑っちゃったよ。」



ああ…、なんとかこの幼き日の別離を映画にしてほしい…。





          

           RYOTARO 作画  寅次郎とさくら 別れの赤いおはじき






■第38作「知床慕情」でのオープニングで、
 寅によって家族での花見の回想が語られるが、この回想も映像が浮かび上がる
 これもまた懐かしく美しい二人の思い出である。



 
『毎年春になると両親に連れられ、
 妹さくらの手を引いて、
 花見見物に出かける時の
 あのわくわくする楽しい気持ちを 今でもまざまざと思い出します』



 少年期の寅の生活が偲ばれる貴重な証言だ。
 寅は育ての親であるさくらのお母さんに大切に育てられたのが、この言葉の中からも分かる。
 寅の少年期は私たちが思っているよりも幸せだったのかもしれない。




          

          
RYOTARO 作画  寅次郎とさくら 花吹雪






ああ…、さくらと寅の少年少女時代を少しでいいから垣間見たいと
十年以上前からずっと願っている。

山田監督どうでしょうか?脚本だけでも書いてくださらないでしょうか…。








「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索




このページの一番上に戻る


最初のページに戻る








424

                          
『寅次郎な日々』バックナンバー      
 





寅とさくら 兄妹の青春  イメージボード3枚 


2009年12月28日 寅次郎な日々 その424



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



ようやく市川準監督の『トキワ荘の青春』DVDを手に入れた。

私は市川準監督の作品はほとんど見ているが、その中でもこの「トキワ荘の青春」が一番好きだ。

巷では市川準監督と言えば「BU・SU」「病院で死ぬということ」「東京兄妹」「東京夜曲」などが評価されているようで、
青春の輝きと挫折をひそやかに描いたこの「トキワ荘の青春」は過去も今もほとんど注目されていない。

市川準監督作品の中では埋もれがちなこのはてしなく静かでメリハリのないのっぺりした作品を
VHSでここ十年以上何十回と見てきた。私にとっては何物にも変えがたい物作りの真実がそこにあったからだ。

で、今回ようやくVAPさんからDVDが出たのだ。

おまけに当時の『メイキング映像』もたっぷり見ることができる!


どんな人にも、グループにも黎明期はあり、青春期もある。
みんな生き方が下手でぶざまではあるが、その年齢、その時代でしか感じられない真実を抱えている。
人生の夜明け前とは実に切なく甘く哀しいものである。





        






その昔…、
あの寅とさくらにも、「男はつらいよ」以前の蜜月期や黎明期はもちろん存在したはずだ。

シリーズの本編では黎明期のさくらと寅の再現フィルムは、
第39作「寅次郎物語」での江戸川土手の別れの夢を除いては一切出てこないが、
二人の強い繋がりがうかがえる言葉での回想は何度かある。


今回私が選んだ寅とさくら幼少期の3つの名場面↓。

これを息子に頼んでちょろちょろっと早描きで3枚描いてもらった。
どうぞそれぞれのイメージボードをお楽しみください。




■第1作 さくらの結婚披露宴で御前様が回想する寅とさくらのエピソード。


御前様「兄さんの寅次郎君と違って、さくらさんは
     子供の頃から実におとなしい、心の優しい子供だった。

     兄さんの寅次郎君が父親に叱られて
     外で泣いていると、自分もそばにいって、
     しくしく泣いている。そんな優しい子だった




なにげない小さなエピソードだが、さくらと寅の繋がりをよく表した言葉だと思う。
さすが御前様、見る目が鋭い。





           

              RYOTARO 作画  寅次郎とさくら 幼き日々






■第6作「純情篇」 寅が柴又駅ホームで回想する幼きさくらとの別れも、
  当時の二人の繋がりの深さを鮮やかに浮かび上がらせてくれる。





寅「さくら、…覚えてるかい、
  この駅でよ。

 
オレが16の時に親父と
  喧嘩して家出したら…



さくら「そうね…確かにね、
   なんだかお兄ちゃんと
   別れるのが辛くてどこまでも
   追っかけてったんじゃない?私」


寅「そぉよ、追っ払っても、追っ払ってもよ、
  え、おまえ泣きべそかいてよちよちくっついてくるんだろう、
  オレ困ちゃったよ。
  でも、そこの改札のところまで来たらあきらめてよ、
  これ餞別よってオレに渡しておまえ帰ってったろ。

  電車乗ってそれ開けてみたらよぉ、
  こんな真っ赤なおはじきが入ってやがんのオレ笑っちゃったよ。」



ああ…、なんとかこの幼き日の別離を映画にしてほしい…。





          

           RYOTARO 作画  寅次郎とさくら 別れの赤いおはじき






■第38作「知床慕情」でのオープニングで、
 寅によって家族での花見の回想が語られるが、この回想も映像が浮かび上がる
 これもまた懐かしく美しい二人の思い出である。



 
『毎年春になると両親に連れられ、
 妹さくらの手を引いて、
 花見見物に出かける時の
 あのわくわくする楽しい気持ちを 今でもまざまざと思い出します』



 少年期の寅の生活が偲ばれる貴重な証言だ。
 寅は育ての親であるさくらのお母さんに大切に育てられたのが、この言葉の中からも分かる。
 寅の少年期は私たちが思っているよりも幸せだったのかもしれない。




          

          
RYOTARO 作画  寅次郎とさくら 花吹雪






ああ…、さくらと寅の少年少女時代を少しでいいから垣間見たいと
十年以上前からずっと願っている。

山田監督どうでしょうか?脚本だけでも書いてくださらないでしょうか…。








「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索



このページの上に戻る
最新のコラムはこちら










423

                    
      

『寅次郎な日々』バックナンバー           お気楽コラム   寅次郎な日々  
 





男はつらいよの中の雪景色


2009年12月18日 寅次郎な日々 その423



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



義父の納骨が終わったあとも連れ合いの実家で事務処理のためしばらく寝泊りしている。

富山は昨晩から異常な冷え込みが始まり、寝る前に『雪起こし』の雷が鳴りまくる。
ああ。。。これは来るな…。
と思ったら、朝起きて寝室の二階から窓の外をみるとやはり下の写真のごとく雪景色が広がっていた!
私にとっては15年ぶりの雪景色である。
息子も5歳のころに雪だるまを作ったかすかな思い出が蘇ったようだった。


まさに「枕草子」のとおり、

冬は つとめて。 雪の降りたるはいふべきにもあらず』 だ。




         






亡き義父が育て、秋に干し柿として取った柿の木(左)もすっかり今日で雪化粧(右)。


     
       







雪の中、お昼に用事のため車で神通川付近を通ったその時に、雲がサーッと切れて青空が見えた!
雪と青空との見事なコントラストに、思わずカメラを向けていた。



       






そういえば『男はつらいよ』でも雪景色が何度か出てくる。

ロケで思い出すところでは、第7作「奮闘篇」のオープニング、第18作「純情詩集」のラストなどである。




         





         







しかし正月映画と言えども、そうそう頻繁には雪は出てこない。
あたりまえである。冬作品は放映は正月でもロケ撮影は秋から晩秋なので
当然雪はほとんど間に合わないのである。
それゆえ時々はスタジオでのセット雪景色となる。


とは言え、とらやの雪景色はそれはそれでなかなかの風情なのだ。
スタッフが心を込めて丁寧に作りこんでいるのでなんともいえない趣があり、
いつまでも心に残るシーンとなっている。


セットの雪景色で印象深かったのが第20作「寅次郎頑張れ!」と第24作「寅次郎春の夢」でのとらやの雪景色だ。

なんと言っても私が一番好きなのが第20作「寅次郎頑張れ!」の雪景色。




美しい幸子のテーマ曲がしっとりと流れる中、


寅が去り…

そして正月元旦


さくらが幸子ちゃんからの年賀状を読む。

なんと障子ガラスの向こうは雪景色…
          
     
      
       




米倉さん演じる柴又参道のおまわりさんが故郷長万部から戻って来てみんなと挨拶をしている。


ちょっとしばらくして

庭で満男が雪遊びをしに行く。

おいちゃんの盆栽も雪がかぶって…



しっとりとした幸子のテーマ曲が流れる中、庭で雪を丸めて遊ぶ満男。

窓から見守るさくら。



         






いたずらっ子の満男はさくらに雪を投げつける。

微笑むさくら。


       





そしてその頃寅は…
正月日本晴れの中、
あの懐かしい『坂東鶴八郎一座』とまた巡り逢うのである。


       



今日の富山の雪景色を見て凍えながら息子がしみじみこう言った。

「この雪景色が長く続くから、あの春の桜がきれいに見えるんだねきっと」


かつて、いつも常夏の国から日本の春にやって来て肌寒い思いで桜を見ていた息子が
今回初めて実感した彼なりの新しい感覚だった。


冬の次に春が来る。雪が解けて春になる。


          



追記 12月18日午後は↓のように雪が降り続き、夕方にはかなりの積雪量になって行った。



          











「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索




このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







422

    
                      

『寅次郎な日々』バックナンバー          






義母も使っていた「脳天ファイラー」


2009年12月10日 寅次郎な日々 その422



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。

さきほど、鳩山首相がこのバリ島に到着したらしい。
なにやらアジア諸国の民主主義の推進のための会議だとか…『バリ民主主義フォーラム』と言う。
ユドヨノ大統領と鳩山首相が共同議長を務めるということ。
ユドヨノさんにとっては鳩山さんの多額の円借款もおいしいところなんだろう。

巷では山田監督は、「おとうと」だけでなく、現在、小津監督の「麦秋」を舞台化しようともしている…。
これもちょっと興味あるなあ…。
ちなみに映画「おとうと」は1月30日公開。その頃はバリにいる。ああ残念…。


で、現在の私の方は、ようやくバリ滞在も3週間が経ったと思ったら、日本への一時帰国が迫ってきた。
前にも書いたとおり、義父の四十九日の納骨ために家族で一ヶ月ほど富山に帰るのだ。


それでも、先日、第24作「寅次郎春の夢」の本編完全版をようやくスタートした。

その作業中に思い出したのだが、劇中、マイケルが寅に騙され紀州梅干を3つも口に入れられ
怒り心頭で寅を追いかける時、おばちゃんが寅を指して
「ノーテン.ファイラー ノーテンファイラー」と叫ぶシーンがある。

私は当初、「ファイラー」とは『FAILURE』、つまりFAIL(不足する、衰弱する、なくなる)の名詞形で
「不足、欠乏、不全、衰弱、失敗者」と言う意味だと思っていた。ノーテンはもちろん脳天。
つまり脳天が欠乏…(^^;)…と思っていた。

その後、私の知人の寅さんファンであるSさんがアイデアを下さり、
「ノーテン.ファイヤー(脳天爆発炎上)」のほうがおばちゃんらしくて面白いしと言われた。
確かに「ファイヤー」なら、おばちゃんでも言葉を知ってるだろうし、あのおばちゃんの
手を上げたアクションにぴったりだ。なるほど、さすがSさんだと納得していたら、

今度は、「男はつらいよ」をこよなく愛するNさんが、いやいや、そうではない。

おばちゃんの言った「ノーテン.ファイラー」は、英語ではなく
中国語の
脳天壊了(nao tian huai le)
だと、きっぱりおっしゃった。
「ファイラ」とは中国語で「壊れた」の意味であり「壊了」と書くらしい。
 
私は驚き、ちょっと、いろいろその後調べてみたら、
おっしゃるとおり戦前の大陸に渡った方々や軍隊などで使っていた言葉のようなのだ。
 
当時の大陸での「
兵隊中国語」と、言うそうだ。
 
シナリオでは「ノーテン.ファィラーね、ノーテン.ファィラー」となっているので、それだけではわかりかねるが
おばちゃんの年齢を考えると英語よりも、Nさんの仰るように
中国から来た兵隊言葉としての脳天壊了のほうが説得力があるようだ。

それではなぜ英語しかわからないアメリカ人のマイケルに言っちゃったかが疑問がとても残るところだが、
あわてたおばちゃんがとりあえず「
外国の言葉」として若い頃流行っていた
大陸での兵隊言葉が出ちゃった可能性はある。


そして、そうこうしているうちに月日は流れていった。

で、今年11月、義父の葬式のため、連れ合いの実家に2週間ほど宿泊した際、
なにかの話の際に、なんと義母が「それはノーテン.ファイラーだね」と笑いながら言ったのだ。

私は心の中で「おおお!この言葉だ!」と、思い、さっそくその意味を聞いてみると、
「ちょっと間抜け」「オバカさん」というような時に使うようだ。
彼女が言うぶんには、随分若い時から年上の人たちがすでに使っていたらしい。
そして実際その言葉が何語かも、その由来も、彼女は全く知らないらしい((^^;)
ただ、なんとなく大陸からの言葉だということはみんなわかっていたということ。

まあ、なんにしても、私が思っている以上に戦前もしくは戦中からこの兵隊中国語の類は
日本全国にすでに広がり、大人も子供も頻繁に使っていたことは間違いないようだ。

これでようやくすっきりしました(^^)





          脳天.ファィラー 脳天.ファィラーね

       




数日後に日本に義父の納骨のため一時帰国します。15年ぶりの日本での正月です




追記: 本日12月14日、義父の納骨の儀が行われ、無事お墓に収めることが出来た。

それと、「.ノーテン.ファイラー」に関する新情報を
お仕事で中国河北省秦皇島市4年在住のGさんが教えてくださった。

『ノーテン』は「脳天」でなく
「脳袋」(ナオタイ)だそうです。

脳袋壊了(ナオタイ・ファイラ)



これでようやく完璧だ(^^)/









「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ



サイト内検索




このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







421

   
   
                    

『寅次郎な日々』バックナンバー






新郎の名前を呼び間違えた夏子さん



2009年11月30日 寅次郎な日々 その421



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



先日いつもお世話になっている寅さんファンのT. Sさんから面白いメールを頂いた。
T.Sさんは毎回面白い発見をしてはメールで知らせてくださり、私を唸らせてくれるのだ。

今回の内容は坪内夏子さんとその新郎さんのことだ。

佐藤オリエさん扮する坪内夏子さんは、テレビ版「男はつらいよ」からの寅のマドンナだ。
テレビ版の時も同じく坪内散歩先生のお嬢さんの坪内冬子さん役だった。
で、直後の映画版では第1作に坪内冬子さんの名前が使われてしまったので、
第2作の今度はテレビ版と同じ設定ながら名前が変わって坪内夏子さんとなったわけだ。

ドラマ全26回を通してただ一人の寅の愛しい憧れのマドンナを演じ通した佐藤オリエさんだった。

そして第2作「続男はつらいよ」では胃痙攣で入院した寅の主治医だった藤村(山崎努さん)と恋仲になる。


T.Sさんは、この物語のラストで京都に新婚旅行に出かけた夏子さんが
新郎の藤村さんを「努さん」と亡き父親につぶやくように言っているのを今から数ヶ月前に発見された。

実は…、私は、夏子さんが「努さん」と呼ぶことに違和感を感じていなかった。
なぜならば夏子さんがそう呼ぶくらいだから、新郎の名前は「藤村努」だと勝手に決めつけていたからである。
また山崎努さんが演じていらっしゃったことも「努」に違和感を覚えなかった理由の一つだ。

ところがT.Sさんは当時の松竹の設定が「藤村薫」だということを公式ホームページでご存じだったのだ。
不思議に思われたT.Sさんはなんと松竹にメールでこのことを直接聞かれたのだ。

そして待つこと1ヶ月、松竹さんから遅まきながらT.Sさんに回答のメールがあり、

「当時の台本では設定同様「藤村薫」となっていた」

「ラストのシーンではおそらく佐藤オリエさんがつい「努さん」と言ってしまったのを、
当時のスタッフは誰も気づかず、OKを出してしまったのではないか…」


という内容が送られてきたそうだ。
もちろんこれらはあくまでも推測で、当時のスタッフが残っていないので正確なところはわからない


ということらしい。

これは私にとっては実に面白い推測で、当時の映画作りの在り方からしていかにもありそうなことだ。

T.Sさんのメールに刺激され、私は第2作のラストにある夏子さんのセリフを確かめたくなった。
そこで、私の持っている当時の『キネマ旬報』に載った『脚本第2稿』でさきほど見てみると

夏子「そうなのよお父さん、私今京都にいるの。薫さんと二人でね。」

となっている。

このように脚本でも設定でも「薫」なので、あきらかに現場で名前が変わってしまったのは間違いないだろう。

山崎努さんが演じる藤村薫さんを、つい「努さん」と呼んでしまった佐藤オリエさんって、私は大好きだなあ(^^)。


あ、山田洋次監督にこの真相を聞いても無駄ですよ。
あの方、そういうこと何も覚えてない&興味無いですから(^^;)
「へえ、そうだったっけ〜〜」ですから(((^^;)




もちろん、それらこれらとは関係なく、この時の寅を見つめる佐藤オリエさんのあの瞳こそが
最も『マドンナ』の名に値するものであることは揺るがない。

この長いシリーズのマドンナの中で、
寅に心配してもらい、寅に愛を注いでもらったマドンナはたくさんいるが、
夏子さんだけが唯一、寅を心配し、寅をずっと見守った母なるマドンナなのだ。

あんな深い慈愛の目で寅の背中を見つめた女性はさくらと夏子さん以外誰もいないのである。


         







「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ





このページの上に戻る
最新のコラムはこちら







420

                          
『寅次郎な日々』バックナンバー




『男はつらいよ』と干し柿を作る日々



2009年11月14日 寅次郎な日々 その420



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



日本を出発する日が2日後に近づいている。
今回は一度バリに戻って、仕事の種をまいて、
12月中旬に義父の四十九日のため、また富山に戻り、数週間滞在した後
またバリに帰って、今度は4月末までバリに滞在する予定。
ちょっと忙しいが、これは仕方がないこと。どちらも手を抜くことはできない。



葬儀の後のごたごたしたあらゆる後片付けと諸手続きの合間をぬって山々を淡彩スケッチ。


立冬も過ぎ、霜月半ばの越中富山はかなり寒くなってきた。

もう15年間もこの寒さは体験していないのでそうとうきつい。
しかし、空は高く空気はますます澄んで山はくっきり見えるし、
風が透明で息が白くなんとも気持ちがいい!とも言える。



越中八尾の自宅から義父の家までは車で40分。
諸手続きのため、毎日通っている。
四日前と三日前、息子と二人で義父が残した柿を取った。
取った実はみんな干し柿にする。

今年は沢山柿が実る年に当たっていたので大変だった。
百数十個取った時点で一応止めた。残りは鳥たちにやろう。


義父の供養も込めてたっぷり食べてやろうと思うが、
この量ではさすがに家族だけでは食べきれないからご近所さんに配って…、
それでもちょっと余りそう。





         










もちろんそのまま食べると渋が残る。



         






一昨日と昨日、義母、連れ合い、息子で皮をむき、麻布でひとつひとつくくってベランダに干す。

早くできないかな…。

ま、義父の四十九日にまたバリから富山に一旦数週間ほど帰ってくるので、
その時たっぷり食べれるだろう。



         







ところで

『男はつらいよ』でも寅や満男たちが柿を食べるシーンや柿をむくシーンがある。


とりあえず思い浮かぶシーンは下の↓作品たち。





■第8作「寅次郎恋歌」

ラスト、甲斐の国、甲斐駒ケ岳が美しく見える北杜市の田舎道、
農家でもらった柿を食べながら歩く寅。
そっと道ばたの地蔵さんに柿を置く、その姿がまさに旅人の背中だった。
柿と言えばまずこのシーンが真っ先に思い浮かぶ。
まさに日本映画史上に輝く名シーンだった。


        








■第10作「寅次郎夢枕」

夢から覚めた寅は、信州塩尻の日出塩駅で朝を迎える。

大きく伸びをして目の前にある柿の実をもいで一口かじるが、
なんと渋柿だったのだ。
プハーッ!と吐き出す寅。タイトルイン。


        









■13作「寅次郎恋歌」

これは、柿そのものは出てこないが、余命いくばくもない歌子ちゃんのご主人が、
その人生の最期に、実家の庭にある甘い柿の実が色づいたら一番に歌子ちゃんに食べさせてやりたい
と語りながら死んでいったという歌子ちゃんによる津和野川べりでの話がしんみり切なかった。


        








■第20作「寅次郎頑張れ!」

これは第8作「恋歌」のラストのアレンジヴァージョン。
同じように農家で柿をもらって、道端の石像にお供えする。
第8作と同様、その直後に坂東鶴八郎大空小百合父娘たちと出会うのだ。


        








■第22作「噂の寅次郎」

水野早苗さんが柿をむき、寅が↓のようにその細く美しい手を眺めている(^^;)
この直後、なんと早苗さんは果物ナイフで手を切り、血を出す。
思わず寅は彼女の指を手にとって眺めるのだった。



       








■第25作「寅次郎ハイビスカスの花」

戦後まもなく、お腹を常にすかせていた幼少期のさくらに寅がいろんなものを盗んで
食べさせてやる話が出てくる。

さくら憶えてるわよ、よくお兄ちゃんがさ、柿とかお芋の干したの盗んで来て
    食べさせてくれたわ


短い話だが、なんだかとても印象に残っている。



      







■第28作「寅次郎紙風船」

久留米水天宮でのバイを終え、数日後
寅と愛子は、福岡県 朝倉市 三連水車横のわら束の上に座っている。
寅は光枝さんのことを密かに考えているようだ。

愛子は積みわらの上で柿を食べながらそのことを見抜いている。



     








■第42作「ぼくの伯父さん」

泉ちゃんを励ますためにわざわざ東京から佐賀までバイクでやって来た満男。
二人は泉ママの故郷を訪ねる。
富士町東畑瀬の田舎道で三角飛びをして取った柿を持ちながらおどける二人。
青春の甘い香りが漂うちょっといいシーンだった。


      








■第47作「拝啓車寅次郎様」


菜穂ちゃんといい仲になった満男は渋柿に当たらないように菜穂ちゃんに選んでもらう。
で、食べてみるとやっぱり渋柿だった…。ああ。。。満男(TT)
菜穂ちゃんいい加減…(^^;)



     



チャンチャン(^^)




上にも書きましたように、義父のことに関しての諸々の後片付けと手続きも
ようやく一段落着きましたので、四十九日までの間、バンコクとバリに短い期間ですが旅立ちます。
次回の寅次郎な日々の更新はバリに着いた後の11月25日以降となります。


気長にお待ち下さい。





「寅次郎な日々」全バックナンバーはこちらから          


【 寅次郎な日々 】カテゴリー別バックナンバー
寅次郎 さくら 名脇役たち タコ社長 満男 シリーズの流れ おいちゃん、おばちゃん 源ちゃん
とらや ロケ地探訪 山田洋次 各作品紹介 山田洋次以外の映画 メイキング映像
インタビュー&ポスター
マドンナ






このページの上に戻る
最新のコラムはこちら













男はつらいよのトップへ戻る

一番最初のページ「バリ島.吉川孝昭のギャラリー」へ戻る