第12作「男はつらいよ.私の寅さん」ダイジェスト版
切なく響く『別れの曲』
第12作「私の寅さん」はなんと観客動員数が48作中242万人で最高である。どういう理由でそうなったのだろう?
当時トップ女優でかつフランスに住みモダンな自立する女優だった岸恵子と寅次郎の取り合わせが新鮮だったのだろうか。
第11作「忘れな草」で相当盛り上がっってきたことも弾みになったともいえるだろう。
この作品は前半はマドンナが出てこないが、さくらたちとらや一同の九州旅行(飛行機で!)が盛り込まれていて、そのあたりの寅との絡み
が非常によくできている。この部分だけでも1作品分の見ごたえがあるともいえる。
前半と後半、どちらがメインか分からないほどである。特に旅行から帰ってくるさくらたちを迎えるために料理を作り、ご飯を炊き、風呂を
沸かすこの時の寅の気持ちはなんともいえない温かみがあり、48作中でも忘れがたい場面だ。いつもは旅先から帰ってきた寅をとらやの
人々が温かく迎え入れるが今回は逆の状況が何とも新鮮で、今までと違った寅の一面を見せてもらって楽しかった。それにしても
あの寅がよくも何日もひとりで留守番をしたものだ。留守番中の寅と、さくらやおいちゃんたちの電話のやり取りや源ちゃん、タコ社長たちとの
やり取りが実に愉快で面白い。これぞ喜劇と言う場面だ。
またこの第12作はマドンナが絵描きさんで登場する。私と同じ仕事なので、彼女の言葉の中に随分共感する言葉が多かったが、
なかでも「本当に自分が気に入った作品は売りたくないものなのよ。かといって気に入らない作品っていうのはますます売りたくない
でしょう。と、言っても、売らなきゃ食べていかれないしね」というジレンマは全くその通りだと身に染みた。第17作でさらさらっと落書き
描いて寅に7万円で売らせた池ノ内青観に聞かせてやりたいセリフだった(^^;)
第11作のリリーといい、このりつ子さんといい、そして次の第13作の歌子さんといい、山田監督は『自立する女性』の姿をテーマの中心に
置いて制作している。このシリーズが第11作あたりから新しい風が吹き始めているのが手にとるように分かる。
ラスト近く、寅とりつ子さんの最後の会話の場面で流れるショパンのピアノ曲「別れの曲」は今でも切なく私の胸に残り、忘れることができない。
本編
@【寅の帰郷と九州旅行騒動】
今回も夢の話から
未曾有の大飢饉に苦しんでいた葛飾郡柴又村の民を救った寅次郎の活躍。
さくらたちをいじめる悪徳商人。
寅「待てえ!」の声
悪徳商人「てめえは誰だ!」
寅「この面体よもや見忘れではなかろう」←このセリフだけでもう面白い(^^;)
と布を取って顔を見せる。
悪徳商人「く、車寅次郎…」相変わらず吉田義夫さん(^^)
一同 恐れおののく。
寅「よくも私達一家にむごい仕打ちをしてくれたな。
飢えに苦しむ柴又の民衆に変わって天罰を与える!!」とピストルで悪党たちをやっつける。
寅次郎振り返り
寅「さくらー!」
さくら泣きながら「お兄ちゃん!」
抱き合って「可哀想に…辛かったろうな…」
柴又の村人が「寅次郎様!」「ありがとうございます」と寄ってくる
寅「柴又の皆さん!もう大丈夫です。ここにわが同士は立ち上がった!」
村人達「わー!!!」
川向こうで火が上がり、寅次郎の同志達の怒涛の歓声が聞こえてくる。
寅「見よ!!あのひんがしの空の黎明を!」
BGM大いに盛り上がって
寅「あー!!柴又の村にも遂に平和がやって来たのだ!」と感動のもとに夢は終る。
目を覚ます寅次郎。九州のとある連絡船のなかである。
あわてて降りる寅だったが、自分のカバンと女子高生のカバンを間違え大慌て(^^;)
寅「おーい!おい!ちょっとまってくれよ!止まれ止まれ!ちょっと回って来い!」普通間違わんって(^^;)
タイトル 男(赤文字)はつらいよ(黄色文字)私の寅さん(白文字)
バックはお馴染み江戸川土手
口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
目方で男が売れるなら こんな苦労も
こんな苦労もかけまいに かけまいに♪
子供達がサイクリングしている江戸川土手を寅がまた帰ってきた。
子供達がタモでトンボを捕っているのを寅が手伝うのだが例によってカップルの
女性のあたまにトンボが止まりタモを頭に被せてしまう。というミニコント。
とらや 茶の間
明日からの3泊の九州旅行に備え、三越デパートでどっさり買い物をしてきたさくら。
おばちゃん「そんなこと言ったってお前あたしゃねえ、箱根より西へ行くのは初めてなんだからね」
おばちゃん、第3作で伊勢の湯の山温泉「もみじ荘」に夫婦で行ったこと忘れてるよ!!(^^;)
みんなで、こんな時に寅が帰ってきたら、ぐずり、ごね、悪態をつき倒すだろうと予測し、暗い気持ちになってしまう。
おいちゃんはタコ社長に、もしそうなったら寅の面倒を見て一緒に留守番してやってくれ、と頼むが、社長は嫌がり、
それがきっかけで口げんかになる。
そんな時に、本当に間が悪く帰ってくるのが寅なのだ。みんな、どうも対応がギクシャクしているので、
寅は何か様子がおかしいと、疑いながらも…。
寅ニコニコ笑いながら、
寅「で、なんだい、もめた原因ってのは?」死んでも言えない(^^;)
みんな誰も言えないので、いろいろごまかし言いくるめようとする。
ガイドブックを隠し、買ってきたものをそそくさ片付ける。
微妙〜な緊張感が漂う(^^;)
で、夜になっても結局誰も話せないまま時間だけが過ぎていったが…。
とらや一同この後どうする!?誰が猫の首、いや、寅の首に鈴をつけるのか!?
夜 茶の間
おいちゃん「さくら、なんか話があったんじゃないのか…」と催促。
さくら、ちょっと戸惑っている。
寅、笑いながら「なんだい?おまえアンちゃんになんか話があるの?」
寅「なに?なに?」
さくら「話というよりお願いがあるんだけど…」
寅「金か金はだめだよ、あんちゃんわさび漬けかっちゃったから」
一同 「ハハハハ」
おいちゃんのほうを見ながらなかなか言い出せない。
さくら「実は…あたしたちね…」なかなか言い出せない。
寅「あ、…お前たち夫婦なんかあったのか?性格の不一致か!?」
博「いやいや、さくらといろいろ相談してですね、紙の値上がりで工場も暇だし…ええ…」
寅「あ!!おまえ裏の工場辞めようって言うんだな!それはいけないよ!」
と、話はどんどんそれていく一方。
そして、そんな時、御前様現れる。
御前様「おー、寅 帰って来てたのかぁー」
寅「へい」
御前様「そらーぁ、とらやさんも都合が良かったねぃ」←この「ねぃ」は熊本弁???
御前様「留守番ができて」←出たあ〜!!
おいちゃん「え、ええ…え、まあ、…あの…」
寅、はっとして、おいちゃんをじっと見ている
御前様「明日の朝旅立ちと聞いたのでほんの気持ちだがお弁当代にでも」
一同頭を下げて恐縮する。
寅だけ呆然として目がうつろ
寅の首に鈴をつけたのはなんと御前様でしたー!!!(@@;)/
御前様が帰った後、修羅場のにおいがプンプン。
寅、全てを察して、ブスッ!
味噌汁のお椀をいじりいじりしまくる
おいちゃん「えー…っとまあ、そーいう訳なんだよ…寅」
寅おわんに「はぁー.。」と、お椀に息吹きかけてふきんで拭きながら
寅「どこ行くのぉぉー?」嫌味たっぷり&動揺たっぷり
みんなで一斉に「九州ぅー」←合唱か(^^;)
おばちゃん間髪いれずに「私達1回も行ったことないもんだからね」気使うねェー!おばちゃん。
寅「はあ〜〜〜〜〜…」と、お椀にまた息吹きかけて
寅「 いつ帰ってくんだイィ?」また嫌味たっぷり&動揺たっぷり
さくら「あの…3泊4日の旅行だからすぐ帰るわよ」結構長い(^^;)
寅「ジャ、あした特急で行くンダァ!」またまた嫌味たっぷり&動揺たっぷり
博「いや、汽車じゃないんですよ」
寅「汽車に乗らないのォ?じゃ歩いて行くのかイ九州までぃ…」またまたまた嫌味テンコ盛り(−−;)
博「飛行機なんですがね一応」寅、ショックで茶碗の腹でふきんを「カクッ」っと滑らせる
さくら一瞬それを見て顔真っ青(><;)
さくら「あの…あたし達一度も飛行機に乗ったことがないもんだから、こんな時にでもと思ってね…」
第25作「ハイビスカスの花」でさくらは飛行機に一度も乗ったことないって言ってたがこの九州旅行でみんな乗ってるぞ。
そういえば第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」でもさくらと博と満男は北海道へ飛行機で行った。
寅「わかったよ…。ね、皆さん親切な方々だってことはよーく分かったよ…。
昼間帰ってきた時どーも様子がおかしいと思ったんだ。なるほどねェ〜…」
寅「家族そろってあしたっからから楽しい旅行に出る、その前の日に俺が帰ってきた
『寅ちゃん元気かい』なんて作り笑いなんて浮かべやがってほんとは腹ん中で
『はあーやな時にやなヤツが帰ってきた』とそう思っていたんでしょう」
博「兄さんそりゃ誤解だ」
寅「だったらなんでだったらなんではなっからスッと言わないんだい!それを!」と、怒って暴れまくる寅。
さくら「お兄…!」
おばちゃん「そんな…」エーン、オイオイと、泣く。
どっちみちどう転んでも、なにをやってもこうなることは決まっている。寅ははっきり言われても淋しくて嫌だし、
隠されてもイジイジシしてていやなのだ。
さくら「私がちっちゃいとき両親無くしてもちっとも哀しい思いなんかしないですんだのはこのおいちゃんとおばちゃんの
おかげなのよねえ、それはお兄ちゃんちゃんだって同じ気持ちでしょ。こんどの旅行はね、そのお礼の気持ちなの」
さくらちょっと涙ぐんでいる。
さくら「博さんが気持ちよく賛成してくれたからできたんだけどほんとはね、…ほんとは…私と
お兄ちゃんがしなくちゃいけないことだったのよ。そう思わない?」
さくらのテーマ流れる。
さくら、泣いている。
寅、立ち上がって二階に上がっていく。
さくら「お兄ちゃん」
社長「いいねえ…実の娘じゃあ…ああはいかねえな…」と、しんみりする。
人の世の機微を垣間見た社長の意味ある発言だった。こういうセリフが山田監督の持ち味なんだよね。
社長の娘の声「おとうちゃん!早くお風呂に入ってよ!」←これは「あけみ」でしょうか?
タコ社長には実は娘が2人&息子が2人いる。(第6作)
博たち下りて来る
おいちゃん「どうだった?」
博「なんとか…」
さくら「留守番するって…」おいちゃん、何度も頷いてホッとしている。
翌早朝
寅「あ、あぁ〜あ〜ぁ。よく寝た寝た。はー!おばちゃん!腹空いたい!めしめしー!!おばちゃーん!」
置手紙に気づいて、手にとって
寅「なんでい、行っちまったのか…」←淋しそう
A【みんなを迎えてやる寅の心持ち】
飛行機が大分空港に着陸
全日空ジェット
大分空港のある国東半島から大分駅の近くまで25分でいけるホーバーボート!で行く。
一同高崎山に猿を見に行く。凄い出店と人ごみ
博「ハハハ、よく食うなあいつ」
おばちゃん「ねえ、寅ちゃんちゃんとお昼食べてるかしら」
猿の行動から寅を連想するのが面白い(^^)
おいちゃん「食べなくたって死にやしねえよ!」ごもっとも!
アナウンス「どこの社会にも必ずひとりや二人のけものがいます。」
おいちゃんとさくら顔を見合わせて寅のことを思う。←すぐ反応!
アナウンス「あいつはいつものけものにされているから性格が凶暴です。ああ言う猿には
あまり近づかない方がいいですね。この間も子供さんが引っかかれて大騒ぎしました。」
寅の横顔があののけ者猿とかさなるように映し出される。
→
とらや縁側
「ああ〜〜あっ」とあくびをして縁側にあの猿と同じ顔で、くそ面白くない顔をして座って豆を食べている寅
社長と工員塀の向こうから縁側を覗いて
「いまね、近寄らない方がいいよ。僻みっぽくなってるからね」しつこく高崎山の猿に寅を関連付ける山田監督でした(^^;)
杖立温泉に夕方遅く着く。
さくら「そうだ…私お兄ちゃんに電話しないといけないだった…。8時過ぎた?」
博「とっくだよ」
657−4105です。はい。お願いします。とらやの電話番号でした。
さくら「もしもし!お兄ちゃん!?ア…」
寅「なんだよ!おまえ!今晩電話するってからよ、陽が暮れるまえからずっと電話機の前で座って待ってたんだぞー」
さくら「ごめんごめんなんか変わりない?」
寅「おおありだよ!いっぱいあるよ!泥棒が入ったぞ!有り金残らず持ってかれちゃったからな!
それからな!裏の工場タコんとっから火が出てこのへん丸焼けだあと東京は大震災でもって全滅だよ!!」(^^;)
口先とはいえ大東京全滅まで演出した寅の姿に、待ちわびた膨大な時間が伺える。
このあと、次々に寅に呼ばれて、全員が電話で話す羽目になるとらや御一統さん。
最後に満男まで呼ばれる。
「満男満男、満男出せ満男」←満男君出番です!
満男「お土産買って帰るからねじゃーバイバイおならブーだ」←満男最高!!
さくらたち「あら、あっははは…!」(さくら、そしてしっかりと受話器を置く。)
寅「おならブーか…生意気なこといいやがって…」ズッ(しんみり鼻をすする)満男には弱い寅伯父さんでした。
翌日、阿蘇山
おいちゃんもおばちゃんも寅のことが心配で景色も見ないでうわの空。
さくらも困ってしまっている。
とらや 茶の間 夜
寅、イライラしながら今日も電話のほうを見ている。アレほど昨日言ったのに
今日も連絡が遅れているのだ。そして…ようやく電話がかかってきたが、寅は怒りが収まらない。
おいちゃん「ちきしょうー悔しいな!!この野郎!てめえがそばにいたらぶん殴ってやるよ!」
寅「いいねー、ぶってちょうだい!どこ?どこ?どッから殴るんだい!?
殴ってくれ殴ってくれよ!!」←電話だからね(^^;)
おいちゃん「てめえなんか出て行きやがれ!!ってんだ!」←電話だって(^^;)
寅「いいやがったな この野郎!!」
おいちゃん「えー!!」
寅「てめえ!出てけ!!?それを言ったらおしまいだぞ!」←電話だけどね(-_-;)¶
おいちゃん「あー!おしまいだよ!おめえ!」←電話だよ!(^^;)
さくらたち「いいかげんにしなさい」ととめる
寅「よおし!出てってやるからな!てめえ!あとでもって後悔したってきかねえぞ!今畜生!」←電話…(^^;)
ガチャン!と電話切る
寅「さくら!止めるな!止めるな!さくら!」
と言いつつ外に出て行こうとするが、はっと誰もいないことに気づき、ニ階にトボトボ上がって行く。
社長「哀れで見ちゃいられねえな…」 と、首を振りながら酒を飲む。
寅はやっぱり寂しいのだ。遠く旅先で一人でいるのは当たり前だし、覚悟もある、それにある意味自由な
気楽さもある。しかしわざわざ自分の故郷に帰ってきて、こういう侘しさを味わうのは、実は人は何倍もつらいのである。
熊本城公園で
博「どうですかねえ…せっかくここまで来たんだし、海をわたって雲仙に行って温泉につかって、
そうすればまた、気分も晴れますよ」と説得しているが、老夫婦は気乗りしない様子。
おいちゃんとおばちゃんは予定を切り上げて今日、柴又に帰りたいと言い出したのだ。
おいちゃんもおばちゃんも寅のことが気になるのは、寅が電話でギャ-ギャ-わめく、っていうのもあるが、
やはりせっかく故郷に帰ってきた寅の元へはやく帰ってやりたいっていう優しい気持ちがあるんだよね。
柴又 とらや
その日の午後。寅は今か今かと準備万端で帰ってくるのを待っている。
源ちゃん「兄貴、まだ帰ってきまへんで」
社長、エプロン姿割烹着(後ろで結ばずにずれかかっている)タコ社長はテキパキ用意を手伝っている。
とても料理のリズム感がいい。見事な包丁さばきで漬物の千切りをトントントントンっと切っていく社長!すごい
太宰さん、昔レストランかなにかで修行してたのだろうか?料理が趣味だとか?それともこのためにもう特訓したのか?
寅「長旅から帰ってくるとシャケの切り身かなんかでお茶漬けをさらさらっと食いてえからなあー!」
↑ちゃんとシャケの切り身も焼いてあった。凄い!料理上手の社長が焼いたのかな?
寅「あ!お新香はな、たっぷり出しておいてやってくれよ!!」←いいねえ〜
社長、白菜の漬物をしぼって、切り始める。
寅「旅館の飯ってのは味気なくっていけねえや。長い旅してるとほんとお新香がくいてえーからなー」経験から来る実感。
寅「いずれそのうちにその入り口からおいちゃん、おばちゃん、さくらがよ、こんな大きな荷物を抱えて、
あーあー、くたびれたくたびれた、家が一番いいよー、なんて言って帰ってくるんだよねー」
寅「そのときの、この迎える言葉ってのが大切だな。「あ、お帰り疲れたろう?さあ、上がって上がって」ねー!
熱い番茶に、ちょっと厚めに切った羊羹のひとつも添えて出す。ホッと一息いれたところで、
「風呂が沸いてますよ」っと手を差し出す。長旅の疲れを、すっと落とす。出てくる。
心のこもった昼飯が待っている。ねー!温かいご飯!しゃけの切り身 山盛りのお新香
「どうだい、旅は楽しかったかい…?」たとえこれがつまらない話でも「面白いねー」って聞いてやらなきゃいけない。
長旅をしてきた人は優しくむかえてやらなきゃナー…」
長い寅のアリアでした。
寅はいつもみんなにこのような出迎えをして欲しいんだね。今度は逆の立場なので、ここぞとばかりに
普段の自分のしてほしいことをさくらたちにしてやっている。でも、寅っていつも突然帰ってくるし、
さくらたちの日常生活だって予定というものがあるから状況はかなり違うんだけどね。
源ちゃん「兄貴帰って来た!みな、帰ってきたで!!」
寅、極度に緊張して、湯加減を見に慌てて風呂に駆け込む。
さくら「ただいまー」
おいちゃん「帰ったよー!!」
おばちゃん「あー、やれやれどっこいしょっと、あー、やっぱり家がいちばんいいねー」寅の予想通りの展開!
おいちゃん「おい、寅どおしたんだよ、寅」おいちゃんずっと九州から寅のことばかり考えている。
社長がおいちゃんたちに事の仔細を身振り手振りを交えて説明する
さくら台所まで来て「あら?どーしたのこれ?」っとシャケの切り身の皿とお新香の皿を持つ。
風呂場では寅が下を向いてお湯をかき回している
さくら「お兄ちゃんただいま…」っと寅のそばまで行き背中に手を触れる
寅「うん」
台所で炊飯器の蓋を取ってごはんができてることに気づくおばちゃん
さくら「お風呂も沸かしといてくれてたの」
寅、下を向いてかき混ぜながら「早く入れよ」←照れる寅
さくら、「ねえ」っとみんなを呼ぶ
おいちゃん「寅!いま帰ったよー!」と駆け寄ってくる
おばちゃん「ただいま!たいへんだったね寅ちゃん!」
博「ただいまかえりましたよ!」
社長「寅さーんみんな帰ってきたぞー!!」
寅の服の袖がお湯で濡れているのに気づき袖を捲くってあげようとするさくら。
寅、照れて払いのける
こういうシーンがこのシリーズを支えている。
源ちゃん窓を開けて寅を覗く寅源ちゃんのほうを見ないでお湯を源ちゃんにかける
ギャグをやっぱり入れる山田監督でした(^^;)
さくらにもお湯が少しかかり、さくらちょっとびっくり
満男「ただいま〜寅さん」テレまくって無口にかき混ぜっぱなし
おばちゃん「どうしたの?」っと小声でさくらに言った後さくらはおばちゃんのほうを向き、
おばちゃんは事情がわかって微笑む。おいちゃんも博も寅を見つめている。
いいねーこのときみんなの表情!
さくら少しほほえんだあと、寅の気持ちに胸を打たれ寅を見つめ続ける
このシリーズ屈指の名場面
前の晩の究極の寂しさから一転して最高の至福に変わった寅。こんな寅の至福の顔も、こんな嬉しそうなさくらの
顔もめったに見られない。この場面は地味だが、寅のことをきっかけにとらやの人々の気持ちがひとつになる
なんともいえない優しい空気漂う場面だ。男はつらいよ屈指の名場面だと断言できる。
とらやの茶の間
九州旅行のことでみんなで盛り上がるとらやの茶の間。
寅もすこぶる上機嫌(^^)
遠くで笑い声が茶の間から聞こえてくる。
数日後 題経寺境内
寅と御前様がいる。
どうやら寅が深く反省をし、改悛したようだ。
寅、ほうきを持ち「は、あ、やります」
御前様「竜造さんたちもこれでお喜びだろう」
寅「はい」
御前様「よかった、ほんとうによかった」
御前様は何度裏切られても、そのつど改悛した寅を信じてあげている。ここがこのお方の真に偉いところだ。
穏やかな柴又の夕暮れ景色の中「さくらのバラード」のメロディが流れる。
さくらたちのアパート
さくら「ご近所の評判もいいし、おいちゃんもおばちゃんも幸せだしそれはそれで
結構なことなんだけどね。でもなんだか…」贅沢な悩み(^^)
博「喧嘩もしない恋もしない兄さんなんか兄さんらしくないって言いたくないんだろ」
博「でも、大丈夫だよ。そのうちきっと何か始まるさ」
さくら「それ、慰めてるつもり?」
博「う…ん」
B【文彦との再会とりつ子との軋轢】
江戸川土手
寅の同級生、柳文彦は土手を歩くさくらをじーと見ている。幼馴染なので懐かしいのだが、
さくらのほうは覚えていない。痴漢だと思って逃げてしまうさくら。追いかける文彦。
とらや
おばちゃん「寅ちゃん!さくらちゃんがね!痴漢に襲われちゃったんだよ!」過去形(^^;)
出ました!!またまたおばちゃんの早とちりギャグ!襲われてないよ!
寅「てめえか!このやろう!」っとずんずん前に進み、首を絞める。
文彦「違う違う僕だよ」
寅「僕ってどこの僕だ!日本中に僕はいっぱいいるんだ!このやろう!」
寅「お前デベソか…」
寅「そうかあ、久しぶりに会ったらおまえ立派になったって言いたいけど
なんだい、おまえ今痴漢やってるの?デベソ…おまえ本名なんだっけ?」
文彦「柳、柳文彦だよ」
おばちゃん「えーえーえー、柳病院のおぼっちゃん。まあまあどうも」
文彦「どうもしばらくです。やっぱり僕の記憶に間違いなかったんだな」
寅「そりゃそうだよ、おまえさくらに惚れてたじゃないか」
文彦「そうなんだよ」
おばちゃん「さくらちゃん覚えてないだろうね幼稚園だったから」
さくら、少し赤くなって、下を向く。
しばしのニ階で歓談のあと、江戸川土手を一升瓶担いで妹の家まで歩く二人。
文彦の実家は、今妹さん一人が住んでいるのだ。
りつ子の家(もともとは柳家のお屋敷だった)
留守中の部屋(アトリエ)で昔の小学校の思い出を語リ合う二人。
文彦「あ、そういやいたねー…音楽の先生にキリギリスっての」
寅、ポンと膝たたいて「いたいた女の先生!」
文彦「綺麗な先生だったな〜」
寅「いたいた、キリギリス…」
文彦「おい、おまえ覚えてるか?おまえ音楽の時間にものすごく怒られただろう」
寅「え、どんなことだっけ」
文彦「ほら…♪柱のキズはキリギリ〜ス…」
寅も思い出して一緒に「♪ 五月五日のキリギリス〜ち〜ま〜き〜食べ食べキリギリス〜測ってくれたキリギリス〜」
文彦「はあ〜、あの綺麗な先生が怒ったっけなー」
寅「いやあ、まいっちゃったよ…あん時なァ…立たされちゃってよ!帰っていいとは言ってくれないし、
そのうち日が暮れてだんだん心細くなってくるしさもう面倒くさいから帰っちゃおうかなってそう思った時な、
入り口からス…っとキリギリスが入ってきたんだよ。で、何て言ったと思う?
文彦「もう帰っていいって言ったのか」
寅「いや、オレには何も言わずにピアノの前にスッと座ってな。静かあ〜〜にピアノを弾きながら歌いだしたんだよ」
文彦「何を歌ったんだよ」
寅「♪柱のキズはキリギリ〜ス 五月五日のキリギリス〜ってなあ…」
寅「オレ、なんだか先生の顔見て「ヘヘへ…」って笑ったんだけどね先生は悲しそうな顔して歌ってんだな・・・。
そしたらオレも哀しくなっちゃってよ。もうそんなことしないから歌止めてくれって言おうと思ったんだけれど…
何かこう…声が出なくなっちゃってねえ…、で、しまいには、おいおいおいおい大声を出して泣いちゃったってよー。」
文彦「へ〜、そんなことあったのか。。。」
寅「どうして、あんないい先生にあんなことやったかねー」
寅筆持ってパレットにぐにゅぐにゅいじる。←不吉な予感(^^;)
文彦「それや、やっぱり、惚れてたからだよ」
寅「冗談言っちゃいけないよ。惚れてるなんて!」ッと照れながら
ピョンピョン筆をキャンバスに付ける。←わわわ…
寅「あ!いけない!くっついちゃったよ!」(@@;)/ひえ〜〜〜!!
文彦「あー…まずいなあ〜」
遠くからりつ子さんの声「何してんの!?」
寅「何か拭くもの…」
りつ子愕然として「どうしたの?これ…」
これはタダではすまないぞ。どうするんだ、寅
りつ子さん走り寄って、キャンバスにそっと手を当てて声を震わせ
りつ子「ひどいわ…」←分かる分かる(^^;)
りつ子のテーマが流れる。
りつ子「兄さんここはねわたしの大事な仕事場なのよ。そこにずかずか入り込んできて
大事なカンバスにこんないたずらまでされて、私はね兄さん。魂が汚されたみたいな気持ちになってんのよ。
そんなことそこにいる熊さんなんかに分かりやしないんでしょ」分かる分かるその気持ち(^^;)
寅「熊…?」
文彦「いやこれ熊じゃない寅だよ」
りつ子「そんなことどっちだっていいわよ」どっちでもよくはない(^^;)
寅「熊じゃないって言ったろう!!」
りつ子「じゃあ、カバ!!」←四角い
寅「カバァ!?」
文彦「おいやめろ」
寅「なんでいこのキリギリス野郎」
りつ子「あら?それ悪口のつもり?あのねえ私むかしっからキリギリスで通ってんのよ
それ知らないんでしょカバさん」
遂に寅は頭切れて、
寅「何でぇ畜生!おらァ帰るぞ!止めるな!」←さくらじゃないんだから(^^;)
りつ子「止めやしないわよ」←だから言わんこっちゃない。(~_~;)
寅「憎たらしい女だなあ… ワアアアアァーーー!嫌だ!畜生!」噴火(@@;)
文彦役の前田武彦さん、ちょっと気弱な、でもとても温かいお兄さん役を見事に演じていた。
彼の演技はとても自然体でこの映画全体のイメージを柔らかくしていた。さすがだね。
夜。とらや茶の間
昼の出来事以来ずっと機嫌の悪い寅、何を言われてもブスッとしている。
おいちゃん「おい満男。上野の動物園でなカバの赤ちゃんが生まれたんだってさ」←出た〜〜!!
おいちゃん「カバの赤ちゃんもやっぱり四角い顔してんのかな」←また出た(^^;)
さくら「そりゃそうよ」
おばちゃん「ほら満男蒲焼(カバ)食べないのかい」←しつこい!!(-_-;)
おいちゃん「うん?カバカバってお前今日はカバづくしだな」←駄目押しですねこりゃ(* ̄▽ ̄)
寅「うるせえな!食事時ぐらい静かにできないのかい!朝から晩までペチャクチャペチャクチャよぉくもあんなに
喋ることがあるよまったく」とニ階にあがって寝る。
まあ、とりあえず寝てください ε=( ̄。 ̄;A
りつ子のアトリエ
りつ子のテーマ
ガラス戸の外から夜遅くまで一心に絵を描いてるりつ子が見える。
C【りつ子の訪問と寅の豹変】
翌日昼 とらや
電話でりつ子さんと話しているおばちゃん。
おばちゃん「ちょっとさくらちゃん大変だよ!柳さんの妹さんが見えるってよ」
寅「え?誰か!ちょっと電話して断れよ今ここきてもらっちゃ迷惑だってな!」
おばちゃん「そんな事言ったって今 おておてお寺から…」←おばちゃん大慌て(^^;)
寅「じゃ今こっちへ移動してきてる状態か?」←人間じゃないみたい(^^;)
さくら「なに怒ってんだろうお兄ちゃんどうしたの一体?」
寅「どうしたもこうしたもねえよ。昔っからな女だてらに絵なんか描くやつにろくな女なんかいねえんだい!」
さくら「そんなむちゃくちゃな」
寅「オラァああの女が来たってなオレはこの敷居から一歩だって入れやしねえぞ!
おらあこう言ってやるよ!何がいやだからったってなインテリ女と便所のナメクジくらい
嫌な物はねえんだい!吐き気がすらあ!ここはてめえ見てえな女の来る所じゃねえんだい!
とっとと出てけ!!さくら!塩もってこいって言ったらすっと塩もってこい!味噌なんか持ってくるな!
俺はその塩カッと掴んで野郎の顔めがけてパッ!…ぁ!」
それにしても48作中マドンナに再会するのをこれだけ嫌ったのはこの12作以外にない。
りつ子さんが店先に立っている。
りつ子「あーら!熊さん」
りつ子さんのこの明るい笑顔で寅の怒りは1億光年彼方まで一気に吹き飛ぶ(^。^;)
寅「いえ、寅です..」←もう一瞬の間に機嫌がよくなっている寅でした。
りつ子「えっ!あーごめんまた間違えちゃった寅さん昨日は本当にごめんなさい」
りつ子のテーマ流れる
寅「いえ」
りつ子「私、ちょっと嫌なことがあった後なもんでついあんなひどい事を…ほんとうにごめんなさい」
寅「いえ…ささささどうぞどうぞ入って下さい。おばちゃん!」
一歩も入れないとか、塩撒くとか、どの口で言ってたんでしょう ┐(-。ー;)┌
りつ子「柳りつ子と申します。どうぞよろしく」
とらや 茶の間
一同「ハハハ」
りつ子「そうなの、それがひどいこと言っちゃったの。恥ずかしくて言えないくらいね」
りつ子「ね、寅さん、じゃない、熊さんだ。じゃない!寅さんだ!」
一同「ハハハハ」
寅「そうだったかなあ…オレどうも物覚えが悪いからねー、覚えてね―なー」嘘つけ(−−;)
兄の文彦の話題になって、りつ子は文彦のダメぶりを嘆いている。
寅「あんたも苦労するねーああいう兄貴を持つと。ずっと独りなの?」
さくら「あ、 でもどっか優しそうな感じの方でしたわ」さくらたいへんだねえ(T T;)
りつ子「そうかしらそう言えばそんなところもあるかしらね」
と、寅に振る
寅、さくらに「そうあいつ優しいんだようんあいつ優しいとこあるよな?」
お互い兄妹なので、文彦と自分を自己同一化(^^;)
さくらうなずく。
りつ子「まとまったお金が入ったりすると、一万円札を二、三枚置いていったりするんですよ」
おいちゃん「ほー!一万円をー!」←これ見よがしの声(^^;)
おばちゃん「へっえ〜ぇ」←おばちゃんもこれ見よがし(><;)
おいちゃん「二、三枚も・・・!」←さらに強調(--;)
寅切腹マネ。「あッ〜!ブツッばらばらばら・・・
ぶしゅっ!(首まで刀)」←寅やられました(>◇< ;)
りつ子さん、芋の煮っ転がしが美味しくて
りつ子「あのね寅さん」
寅「うん?」
りつ子「あのね」と耳に口を近づける
寅「トイレでしょ?」
りつ子「違うわよ」とさらに口を近づけるがまた寅が顔をくねらせてよける
この時の渥美さんの表情はコミカルで可愛い!
寅「おか…お金ですか?」
りつ子「やだなアお芋の煮付けが美味しいからおかわりしてもいい?って聞いてるんじゃない」
寅「は!なんだお芋か!」
寅台所へ来て「おいさくら、煮物おかわりだ」
寅「どうだいいい人だろ」
さくら「うん」
寅「当たり前だよお前絵描く人に悪い人なんかいやしねえよ」←よく言うよ真逆だよほんとに。
『昔っからな女だてらにこんな、絵なんか描くやつにろくな女なんかいねえんだい』って言ってた…(−−;)
江戸川土手
夕焼けをバックにりつ子を見送る寅とさくら手を振ってる。
おっと!さっきまでとらやでスカートをはいていたさくらがなぜかこの時はズボンにはきかえている。↓
わずか数時間で!なぜだ!?
洗い物の時に何かをこぼしてしまったのか、
はたまた満男がオイタをして汚れてしまったのか…。
晩秋の夕方は冷えるからズボンにはきかえたのか。
たぶんちょっと肌寒いからはきかえたんだね(^^;)
スカート ズボン
なお、この、さくらのスカートからズボンへの早変わりを発見したのは、私ではなく
こよなく『男はつらいよ』を愛するスーパー寅マニアである私の尊敬する『寅福』さんと言う方である。
このサイトでもリンクを貼ってある月虎さんが運営する「男はつらいよSNS」内で
いつも頻繁にやり取りをさせていただいているのだが、彼には実にさまざまな刺激をもらい、
頷くことしきりである。
深い洞察力をお持ちであるにもかかわらず、とても謙虚な心も同時に持たれている稀有な方だ。
数日後 とらや
二枚目の画商一条がとらやに来てりつ子さんを待っている。
そこへりつ子さんがやって来て、なにやら深刻な話しをしている。
一条は、りつ子さんの絵に大きな投資をしたいと言っている。
りつ子さんは返事できないまま時間が過ぎ去っている。
社長、おいちゃんに「えらいことになったねー」
りつ子が男と話してるともうみんなあきらめはじめるのが面白い。
運悪く帰ってきた寅、すべてを一瞬に悟ってガクットうなだれて、頭が真っ白になり
ふらふらになりながらニ階への階段でガタガタとコケル寅でした。
おいちゃん「あいつきっと旅に出るぞ。でも止めねえほうがいいよ」考えに無駄がないねえ(^^)
店では沈黙が続いている。
たとえりつ子さんがこの画商を嫌っていても、すぐに断ることができないのだ。
霞を食べて生きていくことができない以上、やはり絵を売らなくてはならないことは厳しい現実だ。
一条、しばし考えて、りつ子の肩に手を回して←ほう…そういうことかい(−−;)
一条「じゃあ、こうしましょう。2,3日考えていただいて、それからもう一度ってことで」
りつ子「ええ…」
二人、とらやを出て行く。
一方、寅は案の定旅支度をしてニ階から下りて来る。
寅「さくら、博と仲良くやれよ。アンちゃん旅に出るからよ」
外から帰ってきたさくら「どうして?」
おいちゃん後ろで『りつ子さんに男が現れて、寅がショックで泣いて旅に出る』というパントマイムをする。
松村さんの可笑しさが爆発(^^)/↓
寅「何も聞くな、わけは聞くなよ」←聞かなくても分かるよ(^^;)
寅、振り向いて、おいちゃんのパントマイムの「泣き」部分を見て。
寅「おいちゃんまで泣くこたぁねえよ。なあ…」
ちょうど泣きの部分でよかったねおいちゃん。寅にバレないで(^^;)
写真左から @りつ子さんと男が来て。 A仲良く話してて Bその時に寅がかち合っちゃって C四角い顔がお陀仏で D泣きの涙
寅「考えてみりゃオレも長逗留が過ぎたぜ。ここらあたりが潮時よ」
ところが…りつ子思いっきり走ってすぐにとらやに戻ってきたのだ。
りつ子「あー!行っちゃった、行っちゃった!さくらさーん、見た?あの男!嫌な奴なの!
もォ〜っ、だいっ嫌い!!」
寅、急に『この世の極楽顔』に変化!
さくら、唖然…(この場面、予告編ではさくらもにこっと笑っている)
みんなの予想大外れェ〜!!
寅「おばちゃんよ!は〜!腹すいた!さあ!みんなで仲良くご飯食べよう!!秋は腹がすくなあ〜!」
よくもまあ、これだけ露骨に変われるなあ。まあ、いつものことですが ┐(‐‐;)┌
この寅起死回生のあと腹めちゃ減り飯くれパターンは第6作「純情篇」第8作「恋歌」でも出てくる、めちゃ食いしていた。
りつ子「どうしたの?寅さん、ご飯食べてないの?」まあ、そうとるよね、普通は(^^;)
さくら「いえ…」と少し照れる。さくらもちょっとほっとしている。
おいちゃん、寅の方見て「カア〜〜!!」っと嘆き声。
おばちゃん、うるうる。
D【私のパトロン 私の寅さん MON TORA 】
フランスパン店でバケットを買っているりつ子さん。
寅「寅、絵描くのも大変だね。何かと物入りで」
りつ子「そうなの、キャンバスでも、絵の具でもどんどん値上がりしちゃうんですのもの」
寅「でも、上手く描ければ、さっきの商売人が買ってくれるんだろう」
↑画商のことを商売人という寅っていいセンスしてる。
りつ子「うん。 でもね、ほんとに自分の気に入った作品って売りたくないもんなのよ」これは痛いほど分かる(^^;)
寅「はあ〜〜…」
りつ子「かといって、気に入らない作品ってのはますます売りたくないでしょ」ふむふむ(−−)
寅「じゃあ、全然売れねえじゃないか」
りつ子「といっても、売らなきゃ食べていかれないしね…」←不変の真実(TT)
りつ子「おいくら?」
りつ子「あ、いけない、お財布持ってくんの忘れちゃったかしら?」
寅「ん?あーいーよ!オレが払う。イクラだい?いいんだいいんだ。210円な。はい」少額には強い寅でした(^^;)
りつ子「ごめんなさいねー」
寅「いいんだよ。いいんだよ」
りつ子「今度お会いした時お返しするわ」
寅「いいんだよ。そんなこと心配するよりいい絵を描けよ」
こういうこと言われると絵描きはそれはもうとても嬉しい。
りつ子「ありがとう、とっても嬉しいわ。寅さんは私のパトロンね」
寅「パトロン?」
芸術家に経済的援助する人をパトロンと言う。パトロンpatronは「父」であり、男の人に使う。
語源はラテン語の(父)paterから。
りつ子「そう!パトロォン!フフ…」
寅「ヘヘ」
りつ子「いいわ、もうこのへんで。お家の方によろしく。また遊びに着てね」
そんなこと言っちゃうと寅って毎日でも来るよ。しらね‐よ、オリゃ…(−−;)
りつ子「さよなら」
寅「さよなら!!」
憧れの顔でりつ子の後姿を見つめる寅
りつ子「さよなら、私のパトロン!」
寅「さよなら!」
210円ごときでパトロンと言われた寅。これはラッキーだ!安くついた(^^)/でも、ほんとうのところ、
寅の「そんなことを心配するよりいい絵を描けよ」という言葉が嬉しかったんだね。これは分かる!
E【とらやでの芸術論.人間の生きる証】
とらや 夜
さくら、編物している。博,本を持っている。
寅「財布を忘れたなんて言ってるけれど、本当はあの人はパンを買うお金すら持っていないんだよ。
ニコニコ笑顔を見せて何の苦労も無い顔をしているけれども、実はあの細い体で明日のパンにも、
ことかくような貧しさと闘っているんだなあ…。なにしろ芸術家だからなあ…」
寅違うって、あの日はただ単に財布忘れただけだってヾ(^^;)
おいちゃん「するとなにか、芸術家ってのはみんな貧しいのか…」
寅「決まってるじゃないか!そんなこと〜」
おばちゃん「お金持ちだって中にはいるだろう?」
おばちゃんの言うようになかには「池ノ内青観」や「加納作次郎」のようなお金持ちもいる。
寅「そんなのは芸術家じゃないのォ!」
社長「でもねえ、今時絵なんかずいぶん高いんだよ」
寅「タコは横から口出すなよ!おまえなんかに芸術が分かるか」
寅「いいか、自分の気に入った作品は人に渡したくない。ましてや気に入らない作品を売るわけはない。
だから金が全然入らない」出ました!寅のお得意芸、そのまま受け売り発言。
寅「これが芸術家ですよ。わかるかさくら」
さくら「そうねー.。。私は芸術家じゃないからよくわからないけど…でも…とっても気に入ったスーツ
縫い上げた時なんか、ちょっとお客さんに渡したくないなんて時あるわね」
博「いつかのお千代さんのスーツなんかそうだったなあ。君いつまでもぶら下げて眺めてたじゃないか」
さくら「そうそうあん時そうだったわ」
寅「そう!さくらおまえ芸術家だよ」
さくら笑って「フフフ、どうもありがと」
おいちゃん「しかしオレはわかんねえなー。そりゃ、お釈迦売りたくないってのは分かるよ」
でもまあ、よくできた団子だったら、おおいばりで売るねー」おいちゃんいい感覚だねー!こういう感覚が文化を作る。
寅「だからとらやの団子は芸術じゃねえじゃねえか」
おいちゃん、笑いながら「いやあ、芸術じゃなくて結構だけどなあ〜」芸術じゃない方が美味いよきっと(^^)
社長「じゃあ、寅さん、芸術家ってのはね、何で食ってくの?」←霞(かすみ)
寅「決まってるだろ、お前みたいな金持ちがね、どうぞお使いくださいって、全部差し上げるんだよ」
社長「冗談じゃないよォ、こっちだってね、食うのが精一杯だよ。そんなことしたらね、こっちが食えなくなっちゃうよ」
寅、あきれて、「あ〜〜、いやだね〜〜、なんというかこの貧しい生き方」
おいちゃん「だけどな、寅、え、早い話が人間食うために生きてるんだぜ」
おばちゃん「そうだよ」
寅「とても話し合えないなあ、この連中とは。なあ、博」こういう時は絶対博に振る寅です(^^;)
博「確かに食っていくってことは大変なんですよね、この世の中じゃ…」それも一理ある(−−)
社長大きく頷く←ここぞとばかりに(^^:)
博「でもね、人間が生きるってことはそれだけじゃ決してない・・。
そうですよ、だからこそりつ子さんみたいな人が必要なんですよつまり、芸術家がね」
寅「そうそう」と指す
社長「それどういう事?」
博「ん…だから美しい音楽を聴いたり素晴らしい絵をみて感動するためにだって
僕たちは生きてるんじゃないですか。とにかくもっともっといろんな事に
人間は喜びを感じてるはずですよ。まあ例えばですね…」
さくら「うん、ほらおいちゃんの盆栽だってなそうだわね」パチンコ…ではないな(^^;)
博「うんそうそう」
おばちゃん「こうやってみんなで楽しく話すこともね」
博「そうですよ」
おいちゃん「寅が恋をするのもそうか?」
寅一瞬博と顔を見合せてテレながら「馬鹿野郎!」
博「いや笑い事じゃ無いですよ、その通りですよ。兄さんが美しい人に恋をするこれは兄さんが
人間として生きてる事の証ですよ。そうでしょ兄さん」
寅「いやそりゃそうだそりゃそうだそりゃそうだね・・・なるほどな人間の証ね。
そうかじゃ今夜はこのへんでお開きという事にして博これちょっと貸してくれよな。いい言葉があったら覚えよ」
寅、本なんか読まないだろうが(^^;)ほんと形だけなんだから…
寅階段上がりながら「人間の証ね」
社長「人間の証か…」
列車の汽笛「ぽー」
社長「腹減ったな。茶漬けでも食うか。おやすみ。」
社長「♪なにを〜くよくよォ〜♪」
人間は確かに博の言うようにパンのみで生きているわけではない。しかし、この競争社会、高度消費社会の渦の中で
生きている我々にもう一度自分の人生を冷静にかえりみて、個人的な感覚を大事にしていくことを実践するとすれば、
時として社会の弱者になることにもなる。
F【寅の至福の日々】
江戸川土手
さくらが満男と一緒にりつ子の家に向かっている。
さくら「恥ずかしいなあ…満男の絵なんか見せるの…」
寅「こいつの絵だってちゃんとした専門家に見せれば立派な芸術家になるかもしれねえぞ」
ただりつ子さんに会いたいだけ( ̄▽ ̄;)
このパターン。第8作ではロークにさくらを連れて行く寅。第14作「子守歌」で赤ん坊をダシにマドンナに会いに行く寅がいた。
りつ子のアトリエ
りつ子「そんなこといったって早いわよねー、まだ満男君。今のうちは好きな絵をどんどん描いてればいいのよ〜。」
りつ子「子供の絵ってのはそんなこと何にも考えなくて描くから値打ちがあるのよ」
大人の絵描きも結局は同じ。「あじさいの恋」の加納作次郎はこう言ってます。
「あのな、こんなええもん作りたい、とか、人に褒められたいって考えてるうちは、ろくなもんでけんわ」
さくら「いいわねぇー、絵を描いていらっしゃるなんて羨ましいわ」
りつ子「どうして?」
さくら「だって夢よ。絵描きさんなんて。」←ちょっと少女趣味的発想かな(^^;)
私ね、小さい頃図工が好きで、大きくなったら絵描きさんになろうとなんて。。。」
りつ子「ほんと?」
さくら「でもね、中学に入ったら音楽が好きになってね。今に声楽家になろうかなって。。」さくら、歌上手いもんね。
寅、むこうでスケッチブックに何か落書きしている。
さくら「ふふふそのうちお勤めするようになってしまって、今度は素敵な芸術家と結婚しようかな、なんて思っているうちにね」
寅横やり「貧しい印刷工の妻になっちゃったかぁ!」
さくら「うるさい!ん!」と笑う
りつ子も笑って
りつ子「でもね…私この頃さくらさんみたいな人見てるととても羨ましいなって思うことあるのよ」
↑ま、あるよな、そういうことはあるよ。うん。りつ子さん絵のことで迷いがあると見た。(ーдー)y┛~~~~
さくら「どうして?」
りつ子「昔はこういうことなかったんだけどなあ。。。どうしてかしら?」
寅横やり「年だよ!!」←わ!言っちゃったよ!真実(@@;)
りつ子「寅さん!」
寅「はいはい」←このリアクションは好き!
りつ子「あら、何描いてるの?見せて」
シューベルトの「鱒」がピアノで流れる
寅「はいこれ!」
りつ子「なに、それ?」
寅「キリギリスとラッキョが話してるんだよ!ハハハ」
りつ子「らっきょ!?」とさくらを指差しながら笑う。
さくら笑いながらうなずく
↑ラッキョといえば第10作「夢枕」でもお千代坊とさくらを『さっきょ』扱いしていたなあ。
寅絵を指差して「おいおい、ラッキョラッキョ!ハハハハ!」
寅絵を指差して「キリギリスキリギリス!ハハハハ!」
一同大笑い
江戸川風景
シューベルトの「鱒」
夕方りつ子が土手で江戸川をスケッチしている。
寅と源ちゃんも近くで遊んでいる。
寅後ろからゆっくり近づきちらちらと絵を見る。りつ子も気づき笑う
後ろでにこにこいつまでも見ている寅。
この時の渥美さんの仕草はチャップリンそのものなんともいえない可愛い仕草。
寅、至福の時
G【りつ子の失恋と寅の奮闘】
りつ子の恩師の家
最近近所の自然環境がどんどん変わっていくので怒っている恩師。
奥さん「ほんとどっかへ引っ込みましょうよ。もっと小さいうちでもいいから」
恩師「面倒だよ」
奥さん「無精者だからね」
恩師「そのうち死ぬよ。排気ガスで」河原崎国太郎さん、反骨精神旺盛な恩師を好演。
第5作「望郷篇」に機関士役で出演されていた松山省二(松山政路)さんの実の父親でもある。
りつ子「先生、こないだ私、安藤さんの個展見てまいりました」
恩師「そう、よかっただろう」
りつ子「はい、びっくりしました」
恩師「彼はなかなかいいよ」
りつ子「あたし…時々女ってやっぱりだめなんだな…ってそう思いました」
恩師「女だっていい絵描きはいるよ」
りつ子「ええ…」
りつ子は恩師に自分の現在の苦悩を聞いてもらいに来たのではないだろうか。
恩師「そうだ。三田君、三田良助、」
りつ子うなずく
恩師「あの男近々に結婚するらしいね。」
りつ子「それで…相手の方は…」←気になるのだね
恩師「金持ちの娘らしいよ」
結婚相手のこの部分をいきなり強調する所がこの恩師さん、面白い。ま、すなわち逆玉だね。
これで一生絵が描けるね三田良助さん。うらやましい…(−−;)
りつ子「へぇ〜」←動揺が見え隠れ
恩師「まあ、あの男らしいけどね」
「あじさいの恋」でもかがりさんの恋い慕う陶芸家が土地持ちの女性と結婚する話があったが
[ものつくり]をする人は、しばしばこのような結婚を望む。それほどにも自分の好きな道を歩むということは
経済的にも厳しい道になることが多いのである。
りつ子のテーマゆっくり流れる
雨に濡れたビワの木
孤独と失望にさいなまれながら、家からの長い階段を下っていく
りつ子の複雑な表情をカメラが超望遠で追っていく。
辛そうな背中が長く映される。
このあとりつ子さんは少し寝込んでしまうが、りつ子さんの場合はこの失恋だけが原因ではない。
自分の画業の行き詰まりや年齢のこと、収入のことなどが複雑に絡み合い、自分を支え
きれない状態になってしまった気がする。自分の今までの物語を再構築しないといけない時期に来ているのだろう。
このあたりが正念場だ。雨上がりの階段を下りるりつ子さんの背中の孤独は私には理解できる。「女もつらい」のだ。
とらや
文彦がとらやでさくらたちに相談。
さくら「じゃあ2日間ほとんど何も食べないで」
文彦「なんとなく体がだるくて時々こう…はあ〜、…なんてため息をついてたりなんかしてねー」
このあと実は寅が「恋の病」になってしまうがそのときおばちゃんが電話でさくらに全く同じことを言います。(^^;)
りつ子の家
シューベルトの「鱒」が流れる。
寅、庭に入ってきてりつ子さんを見つけニコッと笑い、手を上げる。お見舞いに来たのだ
寅に気づいて喜ぶりつ子さんガラス戸を開けて迎える。
寅「寝てないの?」
りつ子「うん、今日はね、少し調子がいいの」
寅「ふ〜ん」
りつ子「上がって」
寅「うん。オレ、ここでいいから。あ、こんなもんだけど、フルーツ食うかい?」横文字! Σ(・ロ・)
りつ子「わあ!すごい!わあ!重たい!」と持ってよろける確かに馬鹿でかい(^^;)
りつ子「兄から聞いたの?私が寝込んでるってこと」
寅「ん、そう」
りつ子「なんて言ってた?」
りつ子、ちょっと迷いながら、「寅さんにだけ本当のこと言っちゃおうかしら。。。」
寅「え?」
寅のイチョウの葉っぱ取り上げてりつ子「秘密よ。誰にも言わないでね」
寅「いや、言わないよ」そりつ子「あたしね…失恋しちゃったの…」
↑言っていいのか?そんなこと…
これは寅にとっては本当はショック。つまり、りつ子がこういうことを寅にしゃべるってことは
寅に恋心を持っていないことが分かってしまうわけから。しかしりつ子が「失恋」したということは、
まだ寅の入り込む余地は残されているということでもある。こういうのって複雑〜。
りつ子のテーマゆっくり流れる
寅はっと驚いて、りつ子をじっと見る
りつ子「だけど相手の人が悪いんじゃないのあたしの片想いだったのよ。バカみたいいい年して」
寅、じっと下を向き黙っている←やはり、ちょっとショック
りつ子「キリギリスの片想いなんて可笑しいでしょ?ね、可笑しいでしょ?フフフ」
と、寅の腕を揺らす
寅「え、うん、可笑しい可笑しい、笑っちゃうな…キュウリも食えないで痩せちゃうもんね」
りつ子「そう!ハハハハ」
寅「ハハハ」
りつ子、下を向きながら「フフフ」
表情から伺うにはまだ失恋の傷は癒えていないようである。
寅、元気を出させようと
寅「あ!蝶々」グットタイミング!(*゜▽゜)/
りつ子「え?」と寅を見る
寅「ほらほら、蝶々蝶々」と庭へ歩いていく
りつ子「どこどこ?」
寅「ほら、蝶々…」
あ〜!
椅子に乗って「ほら、あ!」
りつ子「手で採れないわよ寅さん」
りつ子「あっち行っちゃったほら」
寅、右の方を向く
りつ子「あ、ごめんなさい!こっちだ!」
と今度は逆の方を指差す
寅、笑ってりつ子を見る。おどけている表情が実にいい!
↑りつ子、気持ちがちょっと柔らかくなったかな。(゜ー゜*)
渥美さん結構このコント楽しんでいる
こういうときの寅っていつも大活躍。人の心を温かくしてくれるんだよね。
最も印象的に思い出すのは第18作「純情詩集」で不治の病の綾さんを笑わせる寅の姿。
綾さんはあの時幸せそうだった。
H【寅の恋煩いとりつ子の再訪】
とらや
おばちゃんがさくらと電話
おばちゃん「うちに帰ってきたらね、ものも言わずに二階へ上がっちゃってそれっきり寝込んじゃったんだよ」
さくら、電話「あら…どうしちゃったのかしら…。食欲はどうなの?」
おばちゃん「あたしがお粥作ってやったらねひとくちかふたくち…。熱はないんだよ。ただなんとなく
体がだるくてね。時々ね、は〜〜なんて情けないため息ついたりして」
これじゃ文彦がこの前りつ子のことでとらやに来て言ってたことと全く同じだよ。(~-~;)
二階で寝ている寅
題経寺の鐘 ゴ〜ン
寅「はア〜あ〜〜あ〜。。。」←ある意味重症(^^;)
さくらのアパート
博「まず間違いないな。恋の病だよ。医者呼んだって治らないぞ」経験者は語る
第10作「夢枕」では、寅が、岡倉先生の「恋煩い」をピタッと当てていた。
さくら「ねえ、恋をすると本当に病気みたいになっちゃう?」その質問って、自分の…(^^;)
博「そりゃなるさ、ちょうど肺病にでもなった感じだな。。。胸のあたりがこう…、やめた…バカバカしい。フッ…」
↑よっ経験者!でも、さくらの前で言うのはハズカシ!!(´∀`)
さくら、気づき、ちょっと照れて博のほう向いて笑っている。でも兄のことも気になる表情。
数日後 帝釈天参道
りつ子さんがお見舞いにとらやを訪れる。
とらやの二階
さくら「お兄ちゃん、入るわよ」手に花をいけた花瓶を持っている
さくら、りつ子に「どうぞ」
寅向こうを向いて寝ている
さくら「お兄ちゃんお起きて、ねえ」
りつ子「いいの」
寅目を開いて「あ〜。。。!」とりつ子を見て驚く
寅「あ〜あ〜、さくら…」
さくら「え?」
寅「お前の顔までりつ子さんに見えるよ」やばいよ!本人だよ(¬д¬;)
さくら、りつ子を見てドギマギ
寅「この手の病気はこうなると相当重いんだよな..」何回やっても免疫つかない寅でした。
さくら「ちょっとお兄ちゃん」
寅「あ〜あ〜、りつ子さんは今ごろ何してんだろう。。。」全部聞かれてる!もうダメだ ヾ(ーー; )
りつ子下を向いて考え込んで…
りつ子「寅さん…あたしよ…」
寅「あ〜あ、声までりつ子さんによく似てるよ」もうだめだ… (>< ;)
寅「あれ!?」
りつ子「お見舞いに来たの」
寅「何だ〜、りつ子さん来てたのかぁ…、オレさくらの奴だと思ってたよ」
さくら「私もいるわよ」
寅くるっとさくらの方へ首を回して「あ!ビックリした〜〜ん、ふたりもいたのかぁ〜」
まだ意識朦朧、起きろよ!(TT)
寅「何がなんだかわからなくなっちゃったよ…」と目をつぶる
さくら「ね!しっかりしてよお兄ちゃん、いやねえ」
りつ子「あたし、あんまりお邪魔しても悪いから、これで失礼します」そりゃそうだろね…
寅「ん…?」早く気づけよ(−−)
りつ子「寅さんはやくよくなってね、それじゃ、どうも…」
りつ子立ち去って行く
さくら、焦って「ねえ、お花頂いたのよ」
寅「あ。。。え!?…あ!もしもし!」寅、ようやくマジで目が醒めたな…もう遅いよ…( ̄△ ̄;)
二人下りて来る
タコ社長「♪お医者さんでも〜草津の…〜♪大変だねえ!寅さん恋の病で寝込んじゃったって言うじゃねえか」
やはり、この男が駄目押し!これですべては終った…(T T;)/~~~
りつ子下を向いて「ごめんなさい」と足早に走り去ってゆく
その直後、ドドドドと地響きを立て寅が走り下りて来る。社長に人差し指を立て目が完全に戦闘態勢に。
社長「違う違う違う!!」←違わないって(^^;)社長に突進する寅
社長、裏庭まで逃げながら「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
寅「チキショウ!殺してやる!」
社長、振り回されながら「助けて!助けてくれ!!」
りつ子のアトリエ
秋の虫が鳴く
寅が描いたスケッチブックの絵『キリギリスとラッキョ』を見ながら考え込むりつ子。深く静かにため息をつく
悩む寅は慰めに来た文彦とも江戸川土手で喧嘩をしてしまう。
寅「お前さっきから気にらることばっかり言うなあ、慰めるってなんだいお前ここへ何しに来たんだ!」
文彦「決まってんじゃないか・・りつ子のことだよ」
寅「りつ子さんがどうしたんだい。
誰がりつ子さんに惚れてるってんだい冗談言うと承知しねえぞ」
文彦「フ・・自分で言ってやがる」
寅「なに!!」で、喧嘩。
I【寅とりつ子.別れの曲】
りつ子の庭(アトリエが見える)
隣からピアノの音が聞こえる。
りつ子スープとパンを食べてる。質素な食事である。
寅、少し迷いながらも庭に入ってりつ子のアトリエを見る。
りつ子寅に気がつく
りつ子の表情も、寅が見舞いに来てくれた先日よりも当然少しニュアンスが違っている感じ。
りつ子ガラス戸を開けて「こんばんは」
寅「ちょっとその辺まで来たもんだから食事中じゃ悪いねえ・・・また来るよ」
りつ子「ううん、いいのちっとも構わないの、さ上がってちょうだい」とガラス戸をさらに開ける。
寅「本当にいいのかね」
りつ子「大丈夫よ。さあ」
寅「あちょっと、俺ここでいいよすぐ帰るからね」
寅は何を思ってりつ子の家を再度訪ねたのだろうか。
自分の気持ちは、もうりつ子は知ってしまっている。
だから、りつ子の自分への気持ちを確かめに来たのだろうか…。それとも…
隣からショパンの『別れの曲』が流れる
故郷の元恋人コンスタンツィアのことを想い出しながら
書いたというエチュード(練習曲)3番ホ長調(通称別れの曲)
エチュード(練習曲)第3番ホ長調Op.10-3 通称「別れの曲」
ホ長調の甘美な第一主題はあまりにも有名。ショパンはこの旋律について、
フランツ・リストに「これほど美しい旋律を今まで書いたことがない」と言ったといわれている。
その甘美な旋律の印象が先行して、この曲が「練習曲」であることを知らない人も多い。
二人とも黙っている
寅「あの音楽はなんて言う音楽ですか」
りつ子「あれは別れの曲」
寅「別れの曲ね。やっぱり旅人(たびにん)の曲でございましょうかね」
りつ子「そうかもしれないわね」
叙情感あふれるこの場面はこの作品で最も美しいカットである。
これは、テレビ版の最終回で散歩先生の娘さんとの間でのやり取りのアレンジ版。
テレビ版の最終回はレンタルビデオ屋にある。一見の価値あり。
静かだが緊張した場面が続いていく。
りつ子「私…」
寅「え?」
りつ子「とっても困ってるの…」「困る」って言い方ちょっときついな。
寅、小さく頷く
りつ子「私今まで絵のことだけ考えてきたしこれからも…そんなふうにして生きていたいのよ。
だから…おんなとしては中途半端なの。お台所のことも出来ないし…
子供だって満足には育てられないだろうし…」だけど、女だからとっても嬉しいの、寅さんの気持ちは。
私だって寅さんのこと大好きなんだもん。」
寅、目だけちょっと照れる。
りつ子「だけど…やっぱり困るのよ…わたし、寅さんには何もかも包み隠さず話せるいい友達で…
これからもづっと…いてほしいのよ。」
寅「もういいよ。よく分かるよあんたの言うことは。」
りつ子「そうかしらあたし話せば話すほど自分の考えてることとは
違うこと言ってるみたいな気がするんだけど…」
寅「大丈夫だよ、そんなことないと思うよ。だけどあんた誤解しちゃってるよ。
俺は惚れたとかハレタとかそんなふうにあんたのこと考えたことないよ。
今までずーっと友達だったし、これからだってそうだよ。」
寅は、自分の心も落ち着かせ、かつ、りつ子に余計な気苦労をさせないためにあえて「あんた」という言葉を
連発している。この言葉は他人どうしの場合、相手との距離をとって話す時によく使う言葉。優しいがちょっと距離を
おく感じもある。寅はなるべく冷静さを装い、客観性を言葉に持たせようとして、このように言ったのだろう。
寅のりつ子への思いやりがこのような言い回しをさせたのだと思う。
りつ子「本当?」本当のわけないだろ寅の顔見りゃわかるだろそんなこと。
寅「ああ、ほんとだよ。安心しなよ。」と言いつつもちょっと顔に陰が走る。
りつ子もなんだかやはり気まずさが取れない様子
別れの曲が続いている
りつ子ピアノの方を見て…ちょっと間が合って
りつ子「熱い紅茶入れてくる」と笑って台所の方へ
寅、ちょっと頷く
ひとりになった寅の表情は硬く重い。
りつ子の断わりの一番の理由はこれからも自由に絵を描いていきたいからというものだったが、
それではもし三田良介なる人物がりつ子に求愛していたらどういう風な結果になっていたのだろうか。
J【寅の旅立ちとりつ子の旅立ち】
とらや
二階への階段の下に寅の雪駄
外は風が強い
おいちゃんとおばちゃん雪駄を見ている。おばちゃんの顔哀しげ。
寅、ゆっくり階段を下りて来る。
寅「2,3日のつもりがつい長逗留しちまって迷惑かけたね」
おばちゃん「何言ってんだよ」
寅「人間潮時ってものがあらァおいちゃんおばちゃん体大事にしてくれよ」
寅「オレはりつ子さんにすっかり迷惑かけちまったらしいよ。」
さくら「どうして?」
寅「あの人にはなあ、余計な心配とか気苦労なんかさせちゃいけねえんだよ。
そんなこと考えてたら美しい絵なんか描けねえもんな。分かるだろうおめえにも。」
頷きながらさくら「分かる」
寅「それから、これは俺からの頼みなんだけれどもあの人は芸術家だから貧乏なんだよ。」
寅「おめえ時々言ってもしあの人がコーシーにパン浸して食ってるようなことしてたら、
簡単でいいからなんか温かくって栄養になるようなもの作ってやってくんねえか。頼むよ」
寅のこのような温かな気持ちがりつ子をして「私の寅さん」と言わしめるのであろう。
つまりこの言葉は『私の恋人』というような甘ったるいものではなく自分の絵を心底応援してくれる
もっと大きな存在である『パトロン 寅』の意味合いが濃い。しかし皮肉にも寅はおそらくりつ子さんの
絵そのものに興味があるわけではない。そこがちょっと哀しい。
さくら「うん」
男はつらいよのテーマ静かに小さく流れる
寅「お前博と仲良くやれよ な、 じゃ…」
さくら「お兄ちゃん せめてお正月までいられないの?」
寅「フッ、そうもいかねえだろう、正月に向かって俺たちは掻き入れだよ。
いくら寒いからったってコタツにぬくぬくつかってるようじゃお天道様のバチが当たるよ」
入り口のガラス戸まで歩いて、さくらの方を振り返り
寅「そこが渡世人のつれえところよ」
と強い風の中肩を丸めて寂しそうに去っていく。寅の孤独があらわになって痛々しい。
さくら「お兄ちゃん!」
さくらなんとも寂しげな目で寅を見つめている横顔これも名シーンだ。
このシーンは第8作「恋歌」のラストの別れとよく似ている
さくらマフラーに手を当てて下を向いてしまう。
おいちゃんおばちゃんも下を向いてどうすることもできない。
江戸川土手の道
さくらとりつ子が川を見て立っている
鳥が鳴きながら飛んで行く
りつ子「いつまでもいい友達でいたかったのに…」
さくら、りつ子の方をむく
りつ子歩き始めながら「バカね寅さん…」
これはりつ子の寅に対する哀惜の念が滲み出る言葉だった。
さくら、なんて言っていいのか分からない。
満男の手を引いてさくらがりつ子と一緒に歩いていく
正月
空に凧がいっぱい
帝釈天も初詣で賑わっている。
とらや「寅年」の大きな紙を表の戸に貼ってある
そうか!この年(1973年)は寅年だったんだ!そういう縁起を担ぐ意味でも
多くのお客さんがこの作品を観たのかも知れない。
さくら「ちょっとちょっと笑っちゃダメよ笑っちゃッ」
と言いながら自分がもうすでに笑っている。(^^;)
なんとネクタイ姿しかもピンクのカーディガン、しかも紫腹巻丸見え!
源ちゃんニタニタ笑って「あけましておめでとうございます」
さくら笑いを我慢して挨拶「ほめでと」(^^;)
みんな我慢が限界を越え大爆笑!
源ちゃんおいちゃんにそっと「夏物です」
一同さらに大爆笑
さくら、りつ子から来た絵葉書を読み返している。
りつ子の声のナレーション
スペインの古都トレドでこのハガキを書いています。
これが着く頃は日本はもうお正月でしょうね
おめでとう なつかしいとらやのみなさん、
私は元気で絵の勉強を続けていますからご安心ください。
寅さん。
私の寅さんはどうしていますか。
まだ旅先でしょうか。
スペインにて りつ子
りつ子さんはそうとうお金には困っていたはずである。それにもかかわらず、なぜ、日本円がまだまだ国際的には相当安い
1973年にスペインに長期の絵の勉強に行けたのだろう。まとまった絵をあの一条という画商に売ったのだろうか?
りつ子の声にかぶさるように阿蘇山の噴火口の近くで
バイをする寅の声が聞こえ、阿蘇山の煙が見える
K【阿蘇山で啖呵バイ】
阿蘇山火口付近
(倍賞さんたちの九州ロケに渥美さんも一緒に行ったんだね)。
『平和祈願阿蘇不動尊』のはたがひらめく
りつ子が描いた寅の笑い顔のデッサンが映る。
大きく非売品と書いてある。
MON TORA(モン.トラ)『私の寅さん』
RITZU←サインと署名
今回の作品で多くのりつ子さんの絵がスクリーンに出てきたが、この寅の笑い顔のデッサンが一番好き。美術担当さん
頑張って描いたんだね。実際は写真を見て描いているからちょっと薄っぺらいが、実に渥美さんの表情が生きている。
これととても似たものが柴又の「寅さん記念館」に展示しあるが、実は別の作品。作者さんはおそらく同じ人。
第12作本編で使われたこのデッサンの方がいい出来だ。
ところでこのデッサンはいつ描かれたんだろう。寅の生き生きした表情から考えて、寅がお見舞いを持ってりつ子の家を
訪ねた時が一番可能性がある。その次の可能性はその前にさくらと一緒に訪れた時かな…。
啖呵バイ
男はつらいよのテーマ盛り上がっていく
寅「続いた数字が三!三三六ぽで引け目がない
産で死んだが三島のお千、
四谷赤坂麹町チャラチャラ流れる御茶ノ水粋な
姐ちゃんたちしょんべん!」
阿蘇の噴火口が大きく映し出される
終
上映時間 107分
動員数 241万9000人 (48作中一番)
配収 10億4000万円
第12作「私の寅さん」【本編完全版】はこちらです。
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