バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
お気楽コラム
寅次郎な日々
バックナンバー2006年1月分
その49〜その79まで
ほぼ毎日更新
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『おばあちゃん』番外編(2006,1,31)
『おばあちゃん』列伝(2006,1,30)
望郷の念未だ止まず(2006,1,29)
さくらとおいちゃんの紙風船(2006,1,28)
愛子の笑顔と涙(2006,1,27)
ゴージャスなとらやの面々(2006,1,26)
おいちゃんおばちゃんのラブロマンス(2006、1、25)
寅のもうひとつの天職(2006,1,24)
予想を裏切る爽やかなラストシーン(2006、1、23)
風に揺れる洗濯物(2006,1,22)
「山が蒼くなったな…」 『幸福の黄色いハンカチ』のナベさん(2006,1,21)
絶望の淵で未来を照らす船酔い男 『家族』(2006,1,20)
長山藍子さんが語る『お兄ちゃん』(2006,1,19)
終わりなき映画の中で生きる(2006,1,18)
待ち続けたリリー(2006,1,17)
渥美さんと寅次郎(2006、1、16)
忘れ得ぬ『故郷』の松下さん(2006、1、15)
山田監督の感覚と反射神経(2006,1,14)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その9(2006,1,13)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その8(2006、1、12)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その7(2006,1,11)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その6(2006,1,10)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その5(2006,1,9)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その4(2006,1、8)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その3(2006、1、7)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その2(2006、1、6)
幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』 その1(2006、1、5)
幸福な犬『トラ』(2006、1、4)
ああ…さくらの髪型(2006、1、3)
思い出の正月雪景色(2006、1、2)
忘れ得ぬとらやの正月(2006、1、1)
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明日はおいちゃんとおばちゃんのラブロマンスでも書こうかな…(^^;)
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『寅次郎な日々』バックナンバー 風に揺れる洗濯物 1月22日「寅次郎な日々」その70
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『寅次郎な日々』バックナンバー 「山が蒼くなったな…」 『幸福の黄色いハンカチ』のナベさん 1月21日「寅次郎な日々」その69
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『寅次郎な日々』バックナンバー 絶望の淵で未来を照らす船酔い男 『家族』 1月20日「寅次郎な日々」その68 先日、渥美さんのもう一つの側面が現れていた『故郷』の松下さんの話を書いた。 主人公の民子たちの心を優しく見守っている感じが実に良く出ていて見事な冴えだった。 精一と民子と言う名前は1970年制作の『家族』でも使われている。この『家族』という映画も『故郷』と 同じく時代の波に翻弄されながらも、力強く生き抜くある家族の物語である。長崎の仁王島から北海道の 中標津までの3000キロを走ったロードムービーの広がりとドキュメンタリータッチの手法が見事に 成功し、多くの人々の共感を呼んだ映画である。 この映画の中で民子の赤ん坊の早苗が東京で亡くなってしまう、という大きな悲劇が起こってしまい、 一家は茫然自失のまま、魂の抜け殻のような気持ちで青森まで行き、青函連絡船に乗るのである。 その時に、ほんのひと時出くわし、短い会話を交わすのが渥美さん扮する、『船酔い男』である。 彼はちょっととぼけた味でうろうろする。現実に打ちのめされている民子たちや観客を和ませてくれる。 ただいるだけで和むのである。ああいう役をさせると実に渥美さんは天才的に巧い。 このカットから少し民子は明るくなっていく
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『寅次郎な日々』バックナンバー 長山藍子さんが語る『お兄ちゃん』 1月19日「寅次郎な日々」その67 浅丘さんの言葉 「もう私ねえ寅さんを愛してたんですよ、ほんとに。 もう、山田さんに最後の時にお願いしたんです。 結婚させてくださいって、お願いしたんですけど、 …まだ50作品まで御撮りになりたかったのね…。 それでもねえ、寅さんがねえ、渥美さんが、 あの…僕いつどうなるかわからないからリリーさんと 結婚させて欲しいなってお友達におっしゃっていたことが あるんですって…。だからそれ聞いて、 私、凄く嬉しかった…。愛し合っていたの私たち」 渥美さんも、寅とリリーを一緒にさせたいと願っていたなんて、浅丘さんの話を聞いて、初めて知った。 こんな嬉しくて切ない話はない。リリーは本当に寅が好きだったし、寅も、最後はリリーしかいないんだと、 しみじみ思える話だった。 長山藍子さんの思い出 「映画になる前に、テレビでやってたんですね、その時私はさくらをやらしていただいてたんですね。 で、テレビでは、あの、えっと、…たくさんの方が見てくださったみたいなんですけど、 ま、映画で、あの…お兄ちゃんが蘇るってことで、すごく嬉しいなあ〜って思ってたんですね。 そしたら、あの〜第5話ですね、「望郷篇」で、あの、マドンナでお声をかけていただいて、 またあの〜…とらやのみんなと会えるし、お兄ちゃんとも会えるし、あ、すっごく嬉しかったです。はい。 ライティングとかを直してる時間ってありますよね、で、そういう時に、やっぱり前にテレビの 男はつらいよをやってらっしゃる、どうだ?元気でやってる?おいちゃ〜ん!とか言ってね、 う〜んてつってねなんとかかんとか、二人で小さい声であのいろんなお話をしていた私語を。 そん時に渥美さんが、葦をぴゅっと、セットの中の葦を、取ってね、二人でこうやってあの… 川の水をこういう風にしながらお話してたんですよ。普通のお話を…。 そしたらそれを監督が見てらしたんですね。『今みたいにやってェ…』っとおっしゃって、 『え?』『その葦ね、捨てないでそのままやって…』っておっしゃって、それで二人で何か心の 通い合ったよな、通い合わないよな…フフ、とてもね、あの…素敵なシーンになりました。満月…でね。 お兄ちゃんのそばに…今度はちょっとマドンナとしていられたことが嬉しかったです…はい」 この長山さんの言葉にはジーンと来ました。久しぶりにテレビで兄妹を演じた二人が映画で共演し、 心を通わせたなんとも温かい気持ちになれるエピソードだ。 このページの上に戻る 最新のコラムはこちら
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『寅次郎な日々』バックナンバー 終わりなき映画の中で生きる 1月18日「寅次郎な日々」その66 倍賞千恵子さんの感慨 「26年間ずっと、男はつらいよ…という仕事を通じて、来ているんですけれども…。 あのー…、お兄ちゃんの渥美さん、それから…私の夫の博さんの前田吟さん、 それから、おいちゃん、おばちゃん、社長さん、私たち全部が、スタッフも 含めてなんですけど、なんか終わりのない、長い長い1本の映画を撮り続けている っていうか、男はつらいよを通じてその中で生きている…っていう気がしています」 「音楽ダビングが終わって仕上げの一週間を残すのみとなります。 私たちくるまやのレギュラーたちも散っていきます。また来年…。 私たちが会うのは1年に1回。お互いに親しいのですが、普段はあまり会いません。 そのことが毎回の新鮮さと緊張感を保たせているのだと私は思っています」 倍賞さんが語ってくれた、彼らの付き合いの仕方は私にはとても意外だった。 馴れ合いや、倦怠を避けるために年に一度だけお互いが集まる。 とらやの面々の集中力はこういうところからも窺い知ることが出来るのだ。 山田監督が晩年の渥美さんを語る 「まあ一言で言えば天才ですからねえ、あのひとは、僕らの想像を はるかに越えたあの…脳細胞の働きをしている人じゃないのかな、 だから、あの、こんどの映画なんかね、やはり、あの、渥美さんが歳とってくるとね、 少しづつこう本来の渥美さんの賢い表情がチラッチラッっと見えてきちゃうのね。 20年前、あるいはこの映画が始まった26ぐらい年前、の渥美さんてのはね、 若さでもって懸命に本来の頭の良さをその隠してたんだなってことがね、わかるね」 また明日
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『寅次郎な日々』バックナンバー 待ち続けたリリー − 15年という歳月 − 1月17日「寅次郎な日々」その65
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『寅次郎な日々』バックナンバー 渥美さんと寅次郎 1月16日「寅次郎な日々」その64 おいちゃん役を演じている下條正巳さんが、インタビューで渥美さんの 演技を語っていた。 「渥美ちゃんはねえ、どんな長いシーンでも、つまり、セリフをちゃーんと、 渥美ちゃんとしてではなくて、寅次郎としてセリフを入れてきてる。 セリフは寅として入ってるから、どんなアドリブでも役者渥美ちゃんと 出るんじゃなくて、寅としてのアドリブが、パッパッパッとこう、出てくる…つまり、 渥美ちゃんが役者として、こお〜…考えたんじゃなくて、寅として考えてる、 もう寅に、変な言い方だけど、寅になってセットに入ってくる。 これは非常にうらやましいし、そういう役者になりたいなあ…と、思いますねえ」 生涯を役者に賭けた下條さんならではの洞察力だ。言葉に力がある。納得。 一つの映画を作り続けるということ 山田監督へのインタビューから 「映画の歴史が百年でねえ、来年。…で、寅さんの歴史は26年って事は ちょうど映画の歴史の四分の一を、ま、僕達は…一つの映画、を作り続けてきたということになる。 第一作第二作のころを見ると…渥美さんたちも若かったし、僕自身もね、 あ〜、今じゃとてもあんな撮り方できないなあ、と言う若いと撮り方をしてるんだけども。 …こんだけ長い間続けてき…来れた事をね、そのように歳をとってきてしまった事を、 あるいはそう言う様に歳を、俳優さんたちも、こう、年老いて来たことを、むしろ…あの… なんて言うかなあこう、自慢していいんじゃないかと。あのー。思いますねえ…。 思い切ってシチュエーション変えちゃったほうがいいんじゃないかと言うことを随分当時会社で 言われたりしたんだけどもね。 あの…いやこれはあんまり変えないのが特徴なんだと、キャスティングもほとんど変わらない… 葛飾柴又に寅さんの故郷があってそのダンゴ屋に時々フラッって、ふらっと帰ってると言う形とが とんでもない美人に恋をしちゃ、ふられるというパターンはね…あの、変えない方がいい、 その変えないことがこの作品を長続きさせる事なんだろうと、と言うふうに…まあ、決心して、 ずーっと、その形を、まあ追ってきてることがね、今振り返ってみると、あの、良かったんだろうと、 …思います」 「変わらない」、ということへのこだわりを語った、歳月というものを感じさせる重い言葉だった。 『懐かしき町』を作り続けるということ 高羽撮影監督の最後の語り 「いつもできれば同じような懐かしい世界がそこに繰り広げられると、ということを 維持しようと、いうのが大体の大きな作戦と言ってもいいんですね。 現実は.。この25年間と言うのは大変に変化したわけですけど、柴又の帝釈天の 通りなんかはそうは変わらない、昔ながらのいつもの世界で平和な下町、人情の濃い 下町がそこにはあるんだと、いうふうになるべく撮りたい、と思ってやってきたわけです。 で、実際は街灯が新しく出来たり、舗装道路になったり、建物もドンドン新しくなっていく、 そうするとはじまったころの昔ながらの古い下町の風景っていうのはだんだん現実には 減っているわけですけどなるべくそんな風に感じないように撮っていこう。 ありのままに撮るということよりも、だんだん、夢を追ってというか、想像を加えて あるイメージに、みんなの考えるような懐かしい世界に近いような具合に撮っていこうと というふうな選別作業が行われると、そういうことがありますね」
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『寅次郎な日々』バックナンバー 忘れ得ぬ『故郷』の松下さん 1月15日「寅次郎な日々」その63
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『寅次郎な日々』バックナンバー 山田監督の感覚と反射神経 1月14日「寅次郎な日々」その62
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『寅次郎な日々』バックナンバー 幻のメイキングフィルム『フーテンの寅さん誕生』その9 1月13日「寅次郎な日々」その61 今回で 最終回 監督「ロケ先…でいろんな、土地の人に会っていろんな思い出があるんですけども、
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『寅次郎な日々』バックナンバー
昨日の続き、 編集室での、父親の言葉が、実際に映像としてスクリーンに 映し出される。 第1作 男はつらいよ クレジット 博の父 志村 喬 父親「本来なら新郎の親としてのお礼の言葉を申さねば ならんところでございますが、わたしども、そのような資格の ない親でございます。 博、父親を見る。 しかし、こんな親でも、何と言いますか、親の気持ちには 変わりがないのでございまして、 実は今日私は8年ぶりに倅の顔を…、 みなさんの温かい友情とさくらさんの優しい愛情に 包まれた倅の顔を見ながら、親として私は いたたまれないような恥かしさを…。 いったい私は親として倅に何をしてやれたのだろうか。 なんという私は無力な親だったか…。 隣におります、私の家内も同じだったと思います。 この8年間は…私ども2人にとって長い長い冬でした。… そして、今ようやく、みなさまのお陰で春を迎えられます。 みなさん、ありがとうございました。 さくらさん…、博をよろしくお願いいたします」 さくら、顔をあげ、父親を見、そして博を見る。 下を向いて涙を流している博。 さくらさんのお兄さん、 二人のことをよろしくお願いいたします。 ふたり、下がろうとする。 寅「待ってくれぃ!」 立ち上がる瞬間に袖が破れ、それも 構わず、両親に駆け寄る寅。 寅「おとっさん!」と手を握り。 寅「おっかさんよ!」と手を握る。 二人の手を取って 寅「どうもありがとう!」 寅「博の奴もきっと、喜んでますよ!うん…、」 父親の肩を叩いて、もう一度 寅「どうもありがとう!」 寅、さくらのほうを見て 寅「さくら!」 と、駆け寄る寅 さくらのそばまで行って、しゃがみ、 寅「さくら…、よかったな!うう…うううう」 と、テーブルクロスをハンカチ代わりに泣く寅。 寅「な!」 さくら、涙を流しながら、頷く。 テーマ曲、大きく流れていく。 寅「ううう。。。。」 終始咽び泣く博、さくらも泣く。 出席者の冬子が拍手。 みんな拍手。 寅お礼を皆にする。 寅、みんなの方にそれぞれ 頭を下げながら 「ありがとうございます、 ありがとうございます」 と言い続けている。 司会者とも握手。 備中 高梁市 ロケ ナレーション「10月9日博の父親がいる岡山県高梁の町、 ここへ旅がらすフーテンの寅がふらりと現れたシーンです。」 寅と博の父親が買い物をした帰り道の撮影 撮影を見ている人たち 「なんか大勢きたんやなあ、飛行機で」 「うん、きれいやなあ」 「帰ろうや、もう見たからええや、な、もう見た、かえろうや、もう、見たらええ、な、見たかかえろ、はよ」(^^;) 通行人役の女性の声 女性「ただもう通行人として通るぐらいかと思っていったんですがァ、 フフ、そったらちょっと奥さん出てください言うてそいで、ライトが、もうこっちにライトがあるでしょう、 暑いし、大勢のお客で、アハハ…そいで、始めは、あのーあいですがァ、あのー…他の助監督 の方ですかねえ?あの方なんかと練習したんですけど。 女性「最後本番だ言われても…なかなかあのー… 早く合いすぎたとか、あのー…見送り方が時間が短かったとか、フフ、って言ってねえ…何回も、フフフ…」 監督「用意!……」 小さな小川の向こうからキャメラが撮っている。 監督「ハイッ!」 カチンコ カチン! 朝間さんが見物客に手で『静かに』と指図。 メインテーマのメロディが静かに入る。 スタッフ「終わりです、ここは終わりです」 「え〜皆さん、突き当たりの、突き当りを左に曲がりまして、右側の方です、」 引き続き 寅と博の父親が汽車が通り横を歩いていく、あのダイナミックなカットの撮影 監督「今度はあの、どっち行くんですか汽車は、」 スタッフ「あ、右っ側から来ます」 監督「右から?」 スタッフ「はい」 近所の見ている人たち 「(汽車が)来た来た来た…」 汽車 シュゴシュゴシュゴシュゴ…ボォ!ゴトンゴトン… スタッフの露木さん、手を上げている。下げて、 (彼は後に備後屋として活躍) 汽車が豪快に通り過ぎる。 見事なシーンだ。 ナレーション「昼間の撮影はこうして終わりました…でも、夜のシーンは 夜撮影しなければなりません」 夜の備中高梁駅前 スタッフ「あそこにパイプ組めば済むじゃねえか」 駅のスピーカー「高梁―高梁―越中高梁であります。高梁―高梁―越中高梁であります。お忘れ物の 無いよう、ご注意願います。…お疲れ様でした。高梁―高梁―越中高梁であります。お忘れ物の無いよう、 ご注意願います」 スタッフ「で、あと一本〜」 「福岡さんのどの辺まで届くんでしょうかねえ?」 「あ?何が?」 「屋根屋根」 「あー!オーライ!オーライ…オーケーオーケー…」 スタッフ「もうちっとキャメラこっち来るか?」 「え?」 「いいよそんなもんで」 「もうチョィ!はい!オーケー!まだ、まだ?」 「ぐーっとね?」 「うん」 「もうちょっと弱めて、こっちの方に寄ろうか?」 監督、前田さんと倍賞さんにタクシーに乗る時の注意事項を説明。 備北タクシー 山田監督、タクシーに乗るところを撮っている。 ナレーション「一日の撮影が済んでもその日の仕事は終了したわけではありません」 宿泊している高梁の旅館で打ち合わせ 渥美「…!、お兄さん、僕が撮りましょ」 朝間さん「そうですか、すいませんねえ、」 渥美「エ?いいえいいえいいえ…」 朝間さん「わかりますか?ここ押すだけでいいんですから」 渥美「ア、これね、押すだけでいいんすね、あいあい、ハイ、」 朝間さん「ピントも合ってますからね、」 渥美「ハイハイハイ…これでよしと…じゃ、いきますからね…じゃ、みんなこっち向いてェ、 じゃあ、写しますよー」 渥美「 はい、笑って」 監督「ハイ、笑って!」 渥美「ハイ、笑って!」 みんなクスクス笑っている。 倍賞さんも渥美さんの表情見てつい笑ってしまう。 気を取り直して 倍賞「なんてこと言うのよお兄ちゃん!」 渥美「何が?」 梅野泰靖さん、我慢できなくて笑ってしまう。 倍賞「お兄ちゃん、笑ってってことないでしょ!お墓の前で」 渥美さん後ろ振り返って、キョロキョロ(^^;) みんな、噴出してクスクス。 渥美「あ、いけね、 あ、どうもすいませんでした。じゃあ、もういっぺんやらせていただきます」 みんな、クスクス 渥美「あのー、いいすか、写しますよ、ハイ、泣いて」 一同、クスクス 梅野「修!おまえ写せ!」 朝間さん「そんなことがありまして…帰りのタクシーの中で…」 渥美さん、監督に質問 渥美「あの、監督さん」 監督「はい」 渥美「 『今度は泣いて』、 ですか?」 監督「ハイ、ハイ、泣いて!」 倍賞さん笑っている。 渥美「ハイ、笑って!」 監督「同じ調子だよね、そこね」 監督「ハイ、泣いて!」 一同爆笑 朝間さんもひさしぶりに笑っていた(^^) 翌日、高梁のお墓のロケ おばあさんたち、昨晩の駅前の撮影苦労を見ていて、感心したことを 近所の人と話しながらロケを見ている。 近所の人たち 「昨夜は駅前で物凄い人やった8時ごろ… 駅前で、駅から降りて改札から出て行ってハイヤーに乗るところまでを…映してなあ」 葬式にな、娘さんとお婿さんが帰るとこ… 時間かかって映してたなあ…、何べんも、5、6ぺんも…。 さくらと寅の例の「笑って〜」のやり取りが映し出される。 渥美「じゃあ、写しますよ〜!泣いてェ〜!」 近所の婦人会の人たちの感想 私なんか一番最初、撮影ロケを気軽な気持ちでお受けしたわけですね。 昨日もまあ、気軽な気持ちで行きましたけれど、こう一日を通して見てみましてね、 なかなか大勢の方々の大変なご苦労があって1本の映画が出来るんだなあ、と思いまして ね、それにまあ、この草深い高梁というものも、そういう風な作りの中でね、 皆さんの目の中に映っていくんだなあっていう気がしましてね」 出演した近所の世話役の人の感想 「高梁の町でも、こういう風な映画になるところかな、と、自分ながらはじめて知りましたことで、 我々も苦労しました。なるほど、暑いところ立ちっぱなしで苦労しましたが、ああ、これで…どんな映画が 出来てるのか、こういうことを楽しみにしています」 ナレーション「4日間のロケーションが無事終了しました」 ナレーション「しかし、撮影は、まだ、一月の分量が残されています…」 明日に続く
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昨日の続き、 秋の紅葉が美しい 神奈川県大船松竹撮影所が映る スピーカで案内が入る。 『山田組、山田組、撮影開始いたしますから第10ステージにお入りください。』 スタジオのドアに「男はつらいよ」 場面:とらや、山田組 十月六日 照明さんが天井の上で歩いている。 監督「おばちゃん、もうちょっと…」 渥美さんたちののセリフあわせが続いている。 ナレーション「午前9時、50人余りの人々が、お馴染みの とらやのセットで、渥美清の寅が旅先から帰ってくる場面を 撮影中です。 役者さんは役者さんでお互いでセリフあわせをし、スタッフさんは それぞれの担当でどんどん話を詰めている。 それぞれのグループの声が入り乱れて活気がある。 役者さんたちは小声でセリフの稽古を繰り返ししている。 スタッフさんたち、お構い無しでボンボン声掛け合って仕事している。 こういう場面を見ると、スタッフさんもキャストさんもまったく同じ分量で大事な仕事を していることがわかる。全体のバランスの中で、それぞれが上手に役目を果たしているのだ。 寅を気持ちよくとらやに迎えてやろうとして、タコ社長が過剰演出をし、 寅に見破られ結局空振りをする例の名シーンを繰り返し稽古。 森川おいちゃんは稽古中でも独特の雰囲気がある。ちょっとしたセリフがもう決まっている。 世界観があることがよく分かる。 おいちゃん「寅〜!うわあああ!」 倍賞さんたち、思わず大笑い 監督「渥美さん、ちょっと、通してください」 稽古 おいちゃん「え?今行ったの寅じゃないか?」 おばちゃんさくら「え!!?」 監督「ハイ、寅さん」 この時太宰さんが入り方を少しとちって、 みんなで噴出してしまう。 社長「あ、あれえ〜寅さんじゃないか…とうとう帰ってきたかァ〜! これから大変だねえあんたたちも〜!ご愁傷様」 森川さん、団子を詰め込む手の部分が映るかどうか高羽さんに聞く。 森川「この手のところ見えますか?」 高羽「見えません」 森川「そいじゃあ、もうこれでいいですね」 高羽「大丈夫です」 高羽「そこの手のとこだけが、そのへんが入ります」 森川「このへんが…じゃあこんなことやってればわからないですね」 高羽「はい、わかりません」 光の加減をチェックするスタッフ 山田監督、太宰さんに演技指導 監督「あの…もうちょっとふくれっつらで言いますとどうなりますかね。大声で憤慨するんじゃなくて 『何言ってるんだよ…』って」 太宰「なにいってんだよ…」 監督「ぶつぶつぶつぶつ言ってる感じ…」 太宰「なにいってんだよ…そんな縁起でもないことをいうなよ…オレだって経営者の端くれだい! ちゃ、ちゃんと頑張ってるよ、」 渥美「んー、結構だ、経営者が聞いて呆れらあ」 太宰「なんだと…なんだと」 照明全開 監督「用意!」 監督「いきますよ…用意……ハイ!」 ビー! クレジット 社長 太宰久雄 おいちゃん「いやああああ、寅かい、いやああいやああ!おかえり〜!」 おばちゃん「寅さん、おかえり」 ドドドと走ってきて 社長「いやああ!あは!はは!寅さんお帰り、お帰り」 ここで止めて 構図をチェックする監督 沈黙し、待っているする一同 このカットのリハーサルが何回か繰り返される。 太宰さんが突進する場面で、監督たち笑っている。 寅「おいちゃんよ、なんのまねだい?これ」 おいちゃん「なんのまねって、おまえ歓迎してんだよ」 寅「歓迎してんのはわかるけどさ…」 森川さん、セリフが出ない(^^;) 倍賞さん、ぼそっと、森川さんのセリフを言ってあげる 「歓迎しちゃ悪いのか?」 渥美さん、しょうがなく笑いながらもう一度同じセリフ 「歓迎してんのはわかるけどさ…」 倍賞さん、笑いながら森川さんを指差す。 森川さん、セリフ思い出して 「ほえ?歓迎しちゃいけねえの?」 寅「いや、いけなかねえけど…ちょっとおかしいじゃねえか」 おばちゃん「どうしてさ、あんただって歓迎されたいだろ?」 寅「そらあ、歓迎されたい気持ちはあるけどさあ…、おいちゃんよお、 第一オレがそんな歓迎される人物かァ?」 さくら「お兄ちゃんそんな言い方ってないわよ」 寅「さくら…おまえ…は…フフフ…」 と渥美さん笑ってしまい、倍賞さんも噴出す。 監督も笑っている。 寅「企んだろ!?」 さくら「企んだって…」 寅「誰が何もからかってやしないわよ、なにひねくれてんのよ」 社長「まあ、まあ、久しぶりに会ったのに兄弟げんかなんてさ…」 渥美さん太宰さんのヘルメットをポコンと孫の手で叩く。 倍賞さん大笑い。 監督たちも長〜〜く大笑い。 寅「てめえはなんだ、こんなくだらねえ田舎芝居に一役買うってのは よっぽどてめえの工場は暇なんだな、とうとう潰れたか!」 監督また笑う 社長「オレだって経営者のはしくれだい!ちゃんとがんばってるよ!」 寅「ああそうかい、そらァ結構だ笑わせやがらァ!」 監督「それじゃテスト行きます」 監督「用意」 監督「ハイ!」 ビー!! 社長「やああ〜〜〜!!寅さん久しぶり!ハハハ!!いやお帰り」 みんな社長にぶつかって痛がっている。 渥美さん、クスクス笑いながら 寅「なんのまねだい、これ、フフフ」 森川さんも、笑いこらえながら 「何のまねって、おまえ歓迎してんだ」 寅「どうしてオレが歓迎されなくちゃいけねえんだ」 おいちゃん「あれ?歓迎しちゃいけねえの?」 寅「あんまりよかあねえなあ…」 おばちゃん「どうしてよぉ?歓迎した方がいいじゃない」 寅「そらあ、歓迎されたい気持ちはあるよ、」 高羽さん、がキャストを見て、 「あ、目線誰か作って、そっちの方に…、」 スタッフ「ハイハイ、これでよろしいですか?」 高羽「はい」 監督「ハイ、本番行きます」 高羽「ハイ、本番」 監督「用意!」 監督「ハイ!」 ブブー!! 『 2!』 カチン!! 本番! 社長みんなに体当たりして 社長「わああああ!!!寅さん!!お帰りお帰り…ハハ!」 寅「…」 寅「なんのまねだよ」 おいちゃん「な…なんのまねって、おめえを歓迎してんだよ」 寅「どうしてオレのこと歓迎するんだ?」 おいちゃん「え?歓迎しちゃいけねえの?」 寅「あんまりよくねなあ…」 おばちゃん「なんでえ?歓迎された方がいいじゃない?」 寅「そらあ、歓迎されたい気持ちはあるよ、だけどおいちゃんどだい オレはそんな歓迎される人物かい?」 おいちゃん「くううううういいい〜〜〜〜.…」(^^)森川さん最高! 録音の中村寛さんが録音機で森川さんの、あのうめき声をしっかり録っている。 『くううううういいい〜〜〜〜.…』 クレジット 中村 寛 さくら「お兄ちゃんなにもそんな言い方しなくたって…」 キャメラは、編集室へ向かっている。 それにかぶさるようにキャストたちのセリフが遠く流れ続けている。 この演出は上手い! カメラは編集室に入る。 まだセリフは続いている。 寅「さくらおまえ、企んだな?」 社長「まあまあまあまあ、久しぶりに帰ってきたんだから兄妹げんかは…」 寅「うるせえこのタコ!てめえはなんだ」 ここで編集作業がこの寅のセリフのシーンとかぶさるように映されていく。 寅のセリフ 寅「こんな田舎芝居に一役買うようじゃ、よっぽど仕事は払底してるなあ?」 ナレーション「撮影や録音の終わったフィルムやテープは編集室に送られ、 細かく念入りに、整理されていきます」 この間も例のセリフのシーンは小さく流れている。 クレジット 編集 石井 巌 うわあ、このフィルムもったいない…(TT)欲しい… バックに第1作の志村喬さんの披露宴のスピーチが流れてくる。 明日に続く
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