バリ島.吉川孝昭のギャラリー内
お気楽コラム
寅次郎な日々
バックナンバー2005年11月分
その1〜その17まで
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寅次郎のハンテンそのA(2005,11、30)
おしゃれな寅次郎のハンテンその@(2005,11,29)
谷よしのさんを巡る旅そのB(2005,11,28)
谷よしのさんを巡る旅そのA(2005,11,27)
谷よしのさんを巡る旅その@(2005、11、26)
寅とさくらの幼き日々(2005,11,25)
もうひとつのさくら(2005,11,24)
飛行機に10回も乗った寅(2005,11,23)
ああ、「後悔と反省」の日々(2005、11、22)
さくらの可愛い『ヘルメット姿』(2005,11,21)
寅の生涯一度の『花婿姿』(2005、11、20)
寅の啖呵バイ口上 完全版(2005、11、19)
魅惑のお掃除芸(2005、11、18)
大空小百合バンザイ!(2005、11、17)
2人のさくら (2005、11、16)
タコ社長の息子 (2005,11,15)
寅の将来の夢 (2005,11,14)
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『寅次郎な日々』バックナンバー 寅次郎のハンテンそのA 11月30日「寅次郎な日々」その17 寅はああみえても結構おしゃれだ。1作品で2回違う柄を着たりもする。
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寅はああみえても結構おしゃれだ。背広の裏に浮世絵の刺繍がほどこしてあったりする。
第4作「新男はつらいよ」 |
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もうひとつのさくら 11月24日 『寅次郎な日々』その11 女性としてのさくら。つまりさくらの恋の物語は、第1作のみである。 第2作以降は、母として、妻として、妹としてのさくらだけが登場し、第48作まで変わることはなかった。 山田監督はさくらによけいな役割、ややこしいことをこの映画で与えることは一切しなかったともいえる。 しかし、ただ1度だけ例外がある。さくらが博以外の男性から求愛されるのだ。第24作「春の夢」である。 相手はアメリカ人。名前はマイケル.ジョーダン。慣れない日本でのセールスで身も心もボロボロになった時、 とらやの人々に救われ、とりわけ、さくらの優しい心根に故郷アリゾナの母の面影を見、そして自分にとっての 理想の女性をそこに見つけるのだった。 マイケルの心の高ぶりは京都での妄想にも表れる。坂東鶴八郎一座演じるプッチーニの「蝶々夫人」を見ている 最中に愛するさくらを想い妄想を抱く。ピンカートンを自分に見立てて、蝶々夫人をさくらに見立て、再会に感激し、 抱き合うのだ。たとえマイケルの中の夢の妄想シーンといえども山田監督がさくらを博以外の他の男性と女性として 抱擁させたのはこのマイケルだけである。さくらの歌う「ある晴れた日」はおそらく吹き替えなしの彼女の声。 さくらとマイケルが抱き合う蝶々夫人の場面 そしてラスト付近で、ついにマイケルは自分の気持ちをさくらに告白する。 さくらは、その場ですぐに断るが、それでも、戸惑い、困惑し、寅に相談する。 さくらからそのことを伝えられた寅は、 寅「アメリカ人はよ、お互いの気持ちを察するって言うのは苦手なんだ。 ハッキリ口に出して言わなきゃ納得しないんだ。 俺たちみたいに、想いを胸に秘めてスッと立ち去る…。 そんな芸当はとてもできやしないんだ。 …だから、な、勘弁してやれよ。」 と言った後、そっと 寅「バカだな、あいつも…」と独り言のように小さく呟くのである。 まるで寅自身の人生とダブらせるように…。 寅には、マイケルの気持ちが痛いほど分かるのだろう。 この「バカだな、あいつも…」は本当に切ないセリフだ。 さくらとの別れ際、寅はマイケルに、さくらに何か言ってやれ、と勧める。 マイケル「さくらさん、…ほんとにごめんなさい」 さくら「…いいえ」 マイケル「さよなら」 さくら「…さよなら」 と、マイケルはさくらと握手をして立ち去っていく。 あの握手は、もう生涯会うことはないであろうマイケルの万感の思いのこもった握手だった。 …さよなら 事情を知らないおいちゃんおばちゃんは おばちゃん「さくらちゃん、なんかあったのかい?」 おいちゃん「さくら…」 さくらは黙ってマイケルをいつまでも見送る。 その夜、上野の酒場から最後に寅はさくらのアパートに電話し、 さくらに、そっとこうも言い聞かすのだ。 寅「それからな、肝心なことだけど、 これは博には黙ってろよ。な、な!いいな」 さくら「わかった…」 寅「仲良くやるんだぞ!」 少し涙ぐむさくら。 この会話は寅のさくらへの兄妹愛が良く現れている見事な演出だったと思う。 寅のさくらたち夫婦へのこの配慮は人生経験の豊富な彼の面目躍如。 寅からの電話に頷くさくら マイケルがアメリカに旅立つ飛行機の中で遥か下を流れる江戸川を見ている。 プッチーニの「ある晴れた日」が流れる中 さくらは同じ頃、マイケルが乗った飛行機を江戸川土手で座って 遠く見送っているのである。 この江戸川土手のさくらの優しい表情は、爽やかで温かい余韻が残る実にいい顔だ。 マイケルが乗ったであろう飛行機を遠くいつまでも見つめるさくら さくらに、ある意味執拗に聖なるものを求め続けた山田洋次監督が、はじめて さくらが女性として悩み、戸惑う姿を表現した広がりのある異色の作品だ。 これによって、さくらのキャラクターに膨らみが出たと思う。そういう意味でも 私は、この世間の評価はイマイチの第24作「春の夢」に一目置いているのだが、 みなさんはどうですか? |
『寅次郎な日々』バックナンバー 飛行機に10回も乗った寅 11月23日 『寅次郎な日々』その10
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『寅次郎な日々』バックナンバー ああ、「後悔と反省」の日々 11月22日 『寅次郎な日々』その9 寅の人生はある意味「後悔と反省」の日々である。 もちろんマドンナが登場するまでの限定期間のみではある。 思い出すのは第5作「望郷篇」。 北海道で労働の尊さに目覚めた寅は、柴又に戻るなり、「汗と油」を絶対はずせないキーワードに 職探しをするが、反省しながらも本来の気質は全く変わっていないのがやはり寅らしい。結局タコ社長の 工場で働くことを一人で勝手に決めてしまうが、工場も他の店も全て断られてしまい、失望のあげく、浦安に 流れていくのである。そして、浦安の豆腐屋でマドンナに出会い、マドンナに気に入られたい一心で一生懸命 働く。豆腐屋なので、正に文字通り汗と油まみれ。もちろんマドンナに振られたことが分かったら、もう次の 日に出て行ってしまう(^^;)早い早い。 労働のポーズ! それとは全く逆のパターンに第21作「わが道を行く」がある。 九州で反省の日々を送った寅がさくらと一緒に柴又へ帰り、人が変わったようにとらやで真面目に働くのだが、 マドンナの奈々子が現れるやいなや、ほんの数分で元の木阿弥となり、毎日レビュー通いとなっていく。(^^;)早い早い。 いずれにしてもマドンナが関わると瞬時にどんな方向にでも行くカメレオンスタイルが寅の最大の特徴なのだ。 第16作「葛飾立志篇」でも、山形の寒河江で学問の大切さに目覚めた寅が、柴又へ帰った後、マドンナに出会い、彼女が たまたま考古学を学ぶ大学の助手だったばかりにそのまま形だけ「学問」に走っていく。でもやっぱり寅の場合は学問を するんじゃなくて恋愛をすることのほうが何倍も楽しそうだった。 寅の人生はやはり「恋の日々」こそが相応しい。 第15作「相合い傘」で寅がリリーに語ったあの短い言葉が 彼の人生の全てだ。 リリー「あんたあれから何してたのよぉ〜!?」 寅「えー、…俺か?…恋をしていたのよ」 ちゃんちゃん(^^) このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |
『寅次郎な日々』バックナンバー さくらの可愛い『ヘルメット姿』 11月21日 『寅次郎な日々』その8 倍賞千恵子さんは世界一自転車が似合う女優さんだ。 第15作「相合い傘」のオープニングの歌の部分でさくらが自転車で江戸川土手を走っているが、実に絵になっている。 第8作は自転車の色は赤だったように思うが、第10作あたりから黄緑で、ずっとその後は変わらず黄緑だった。 ところが、第26作「かもめ歌」の時に潜水艦のようなアパートから脱出して、建売住宅に引っ越した翌年、 第27作「浪花の恋の寅次郎」では、なんとスズキのスクーターに乗っているのだ。理由は、家が遠くなったからだそうだ。 それも題経寺からとらやまで乗った時はノーヘルメット!(おいおい、青山巡査に見つかるぞ(^^;)) ノーヘルメットのさくら。羨ましがる源ちゃん。 寅が大阪から戻ってきた後にもう一度乗っているが、この時は可愛らしいマスカット色と白の二つの色が入ったヘルメットを 被っていた。それなりによく似合っているのだが、やはり自転車で家からとらやまで通ってこそさくらなのに…、とショックを受けていたら、 その作品だけでスクーターはお仕舞いになってしまった。その後どこにもスクーターは見当たらない。いったいあれは なんだったんだろうか?いくら第27作がスズキがスポンサーだったとは言え、たった1作品で終わってしまったのはどうしたことか? この、さくらのスクーターの行方について、長年の熱烈な「男はつらいよ」のファンであり、このシリーズを熟知されている茨城県のKさんの 推測によると、あの時、題経寺でさくらのスクーターをいろいろいじりまくって尋常でない興味を示し、「ええなあ〜〜」って羨ましがっていた 源ちゃんが怪しいそうだ。ある日、さくらがたまたま江戸川土手にスクーターを止めて、ちょっとその場を離れた隙に、土手で遊んでいた 源ちゃんがちょっとサドルに乗ってみたら、なんとエンジンがかかってそのままヨタヨタ暴走、江戸川に源ちゃんごと突っ込んでスクーターは あえなくお釈迦になってしまったのでは…、ということ。甲斐性のない源ちゃんがしたことなので、さくらは泣き寝入り(TT) このKさんの推測は実に説得力があり、Kさんの「推測」が、現在私の頭の中では、すでに「確信」に移行している。 江戸川に顔から突っ込んで足だけ上に出てジタバタしている源ちゃんと、口に手をあて目が点になって立ちすくんでいるさくらの顔が 目に浮かぶようだ(^^;)。 ちゃんちゃん(^^) さくらの最初で最後のヘルメット姿 可愛い〜♪ このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |
『寅次郎な日々』バックナンバー 寅の生涯一度の『花婿姿』 11月20日 『寅次郎な日々』その7 寅はいつの日も、いつの時も、結婚に憧れ、そして失敗をしていく。 第1作に始まり第48作までの間で、当たり前だが一度も 結婚はおろか、婚約も同棲もしていない。 最も惜しかったのは、皆さんご存知の通り、第15作のリリーと第25作のリリー、そして第48作のリリーである。 ま、要するにリリーだ(^^) リリーとは同棲をしたのではないの?と思われるかもしれないが、これはしていないんだな。 全48作品をしっかり見ていくと寅がそういうことができない男だということが分かる。 おいちゃんの言葉を借りれば、そういう甲斐性がないのである。いざという時にどうしてもふん切れないのである。 だからといって欠陥人間だと思わないで頂きたい。人は人それぞれ、その気質とその信条とその人の分と運命の中で 生きているのである。彼のような生き様があってもそれはそれでいいとも思う。 最初に、はっきり女性から求婚に近いことを言われたのは第10作のお千代さんであろう。 この人はリリー以外では最も寅と結婚する可能性が高かったような気がする。その次に惜しいのは 第32作の朋子さん。雰囲気がお似合いだったし、彼女は実の父親にそのことを打ち明けている。 この3人は最も寅との結婚に近づいた女性たちでり、私の思うお似合いカップルベスト3である。 女性としての魅力的にも私個人にとってとてもとても素敵な3人である。このことはまた後日じっくり書きたい。 この3人以外でも、寅のことをかなり本気で好きだったと思える女性は、第17作のぼたん、第27作のふみさん、 第28作の光枝さん、第29作のかがりさん、第38作のりん子さん、第44作の聖子さん、第45作の蝶子さん、 第46作の葉子さん、とマドンナの人数的にも10人を超える。 この中で寅の方も相当その気になって、結婚後の事を真剣に考えるパターンもあった。第7作の花子ちゃんは ちょっと別枠としても、特に第32作の朋子さんの場合は寅も準備しているし、朋子さんもその事を確かめに わざわざとらやまでやって来るのである。いやもう実に惜しかった。 第28作の光枝さんの時も就職の準備までするくらい熱を入れていたのが…。 そんな、毎回、振られるか敵前逃亡するかのどちらかの寅だが、一度だけ、横に真っ白な角隠しを被った花嫁さんを 連れて紋付はかまで染井吉野桜の舞う海の見える石段を、嬉しそうに歩いているシーンがある。 仲人はタコ社長夫妻である。おまけにお嫁さんの顔も風が吹いた瞬間チラッと映るし声まで聞けるのである。 花嫁の右はタコ社長の奥さんの水木涼子さん 海からの風が吹き顔が一瞬見える 「お姉さま、はじめまして…」 お姉さま、はじめまして… 実はこれは夢のシーン。第13作「恋やつれ」のオープニングである。 「花嫁人形」の曲が流れる中、石段の上を駆け上ったらそこはとらやでさくらが一人座っていて、 おいちゃんとおばちゃんは去年の秋に死んでしまっていたという話。 このお嫁さんを連れてくる夢が、本編への橋渡しとなって、温泉津の絹代さんとの結婚話に繋がっていくのである。 いずれにしてもたとえ夢だけでも、寅が結婚できた一瞬があったことは寅にとっては印象深い夢だったのは間違いない。 あの時の寅は嬉しそうだった。 このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |
『寅次郎な日々』バックナンバー 寅の啖呵バイ口上 完全版 11月19日 『寅次郎な日々』その6 「男はつらいよ」といえば寅の啖呵バイだ。 実に口跡がよく、聴いていて惚れ惚れする。 ただ、一つ一つの作品に出てくる口上は時間の都合や、メリハリの問題で、簡略化されたり、 縮小されたりしている。長くてせいぜい30〜40秒だ。CDやDVDなどに入っているもので、かなり 長めのものがあるが、それでもまだ不完全である。一度、寅の口上の基本全てを網羅したものを聴いてみたいと、 ずっと思っていた。いや、せめてまとまった形で読んでみたいとも。しかし、どの本もどのサイトも長く一つにまとめてくれては いないので、私が勝手にさっきまとめてみた。 寅のバイは大きく分けて『易』のバイ、とそれ以外の品物を売るバイに分かれる。 今日は一般的な品物を売るバイを想定してCDに入っている口上をベースにいろいろな作品の口上を合わせてみた。 口上を選ぶにあたり、普遍的な言い回し、歴史の流れに耐えうるセリフのみ選んだ。その時々のちょっとした 固有名詞などが入ったアドリブやお客さんとの軽妙なやり取りは実はとても面白いものだが今回は涙を呑んで排除した。 そんな普遍的でかつ一般的な、基本の中の基本だけ選び取ってもなんと3分はかかりそうな長いものとなった。 どうぞ。寅の啖呵バイ口上 完全版を堪能してください。 さあ! 角は一流デパート赤木屋、黒木屋、白木屋さんで 紅白粉つけたお姉ちゃんに下さいちょうだいとお願いしますと、 600が700くだらない品物だが 今日はそれだけ下さいとは言いません、 なぜならば、神田は六法堂という大きな本屋が僅か30万円の税金で、 泣きの涙で投げ出した品物だ!どう! 物の始まりが一ならば、国の始まりが大和の国、 島の始まりが淡路島、 パン! 泥棒の始まりが石川五右衛門なら、 博打打ちの始まりが熊坂の長範、 助平の始まりが小平の義雄、 英語のはじまりがABC、 始めばかりでは話にならない、 続いた数字が二。 兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ、 仁吉が通る東海道、 憎まれ小僧が世にハバカル、 日光結構東照宮 仁木の弾正はお芝居の上の憎まれ役、 バン! 続いた数字が三つ、 どう、まかったこの本、ねえ、 三三六方で引け目がない 産(三)で死んだか三島のお仙、 お仙ばかりがおなごじゃないよ、 かの有名な小野小町が京都は極楽寺坂の門前で 三日三晩飲まず食わずにのたれ死んだのが三十三、 とかく三という数字はアヤあり! 続いてまけちゃおう、ぱん! この黒い本!ぱん! 色が黒いか黒い色が 色は黒いが味みておくれ、味は大和のつるし柿、 色が黒くてもらいてなけりゃ、山のカラスは後家ばかり、 タコはイボイボ、にわとりゃハタチ、芋虫や十九で嫁に行くときた! 続いた数字が四つ、 四谷赤坂麹町ちゃらちゃら流れる御茶ノ水、 粋な姐ちゃん立ちションベン! 白く咲いたがゆりの花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い、 一度変われば二度変わる、三度変われば四度変わる、 淀の川瀬の水くるま、たれを待つやらくるとくると、 続いた数字が五つ ごほんごほんと「なみ」さんが磯の浜辺でねえあなた、 昔武士の位を禄という かの後藤又兵衛が槍一本で六万石! ろくでもない子供ができちゃいけないというんで教育指導の 一環としてお父さん、買っていただきましょう、この絵本!どうです、 ねえ、手にとって見てやってちょうだい、真っ赤な表紙、 赤い赤いは何見て渡る赤いものみて迷わぬ物は 木仏、金仏、石仏、千里旅する汽車でさえ、 赤い旗見てちょいと止まるというやつ。 七つ長野の善光寺 八つ谷中の奥寺で、竹の柱に萱の屋根、 手鍋下げてもわしゃいとやせぬ。 鶴は千年亀は万年、 あなた百までわしゃ九十九まで、共にシラミのたかるまで、バン! 三千世界の松の木が枯れてもおまえさんとそわなきゃ娑婆に出た甲斐がない、 信州信濃の新そばよりもあたしゃあんたのそばがいいってね、どう! さあ、これで買い手がなかったら、わたし家業三年の患いと思って諦めます! 浅野内匠頭じゃないが腹切ったつもりでまけちゃおう、ねえ! それでもまだ買い手がなかったら右に行って上野、左に行って御徒町、 西と東の泣き別れというやつ、ねえ! 虎は死して皮を残す人は死して名を残す、 ねえ、買って頂戴よ、お父さん! ただでやっては義理が悪い!ねえ、はい! よし、こうなったらたったの200両だ!これで買い手がなかったらしょうがない! 今日は貧乏人の行列fだ!ほら!もってけコジキヤロウ! えーい、まだ買わない!もうこなったらやけだ! やけのやんぱち日焼けのなすび、色が黒くて喰いつきたいが わたしゃ入れ歯で歯が立たないよときやがった!どう! まだ買わない!結構! 結構毛だらけ猫灰だらけお尻のまわりは糞だらけ! 汚わい屋の火事じゃないがもうヤケクソだ! もってけドロボウ! このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |
『寅次郎な日々』バックナンバー 魅惑のお掃除芸 大杉侃二朗ここにあり! 11月18日 『寅次郎な日々』その5 第18作「純情詩集」でも私のひいきである坂東鶴八郎一座と寅とのふれあいが信州の「別所温泉」で繰り広げられる。 「不如帰」を演じる鶴八郎一座。谷村昌彦さんの過剰に気張った演技が絶品である。実はこの「不如帰」は物語の大きな伏線に なっているのだが、それはまた別の時に書く。その芝居を見に来た寅を座長はスポットライトを当てて客に紹介をする。 そして夜。感激した寅は全くお金もないのに座員を自分の部屋に招待して、飲めや歌えや踊れやの大宴会を催してやるのだ。 この時の宴会は「夕焼け小焼け」のお大名宴会でなく、いかにも寅らしい腹の底から楽しいものだったことがうかがえる場面だった。 その時披露されるのが伝説のお座敷芸である「お掃除芸」だ。演ずるのは「男はつらいよ」シリーズでは欠かすことの出来ない 松竹古参の大杉侃二朗さんだ。大杉さんはみなさんのよく知っているところでは第8作でさくらが「母さんの歌」を歌う時、 谷村昌彦さんと一緒に歌を聞いている寅の昔からのダチ役で出ているあのおじさんである。 柴又の「菊の湯」の親父さんや、金町中央病院の入院患者、函館の屋台のラーメン屋、 などなど数え上げればほんとうにキリがない。この人の話題もまた後日必ず書こうと思う。 とにかくあのお掃除芸には渥美さんもマジで笑っていた。予告編にもしっかり登場するので 大杉さんのある意味あたり役といってもいいかもしれない(^^;) ♪あ、おそうじだ、 あ、おそうじだ、〜 そして翌朝、まだ朝靄がたちこめる別所温泉で寅と別れを告げる座員たち。 「先生、くるま先生」と遠く呼ぶ大空小百合ちゃんのあのイントネーションは いつまでも私の耳に残って離れない。 あ〜、しかし、そのあとさくらがわざわざ別所温泉まで出向いてこれらの後始末を全部する羽目に…(TT) さくらは怒ってましたよ〜。 寅、弱った声で「満男のお母様〜…、諏訪博の奥さん〜」 ほんとにさくらあっての寅、とらやあっての寅なんだねえ。 チャンチャン(^^;) このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |
『寅次郎な日々』バックナンバー 大空小百合バンザイ! 思い出の坂東鶴八郎一座 11月17日 『寅次郎な日々』その4 私がひいきにしている坂東鶴八郎一座は第8作「恋歌」を皮切りに、第18作、第20作、第24作、 (第37作では大空小百合ちゃんだけが出てくる)と出演している。 これらのなかで第8作「恋歌」と第18作「純情詩集」が出色だ。座長の吉田義夫さんが実にいい。あの笑顔!そして我らが 大空小百合ちゃんこと岡本茉利さんが素朴でとても愛らしい。貧しい旅芝居ながらも、芸に打ち込む座長の熱意、そしてとても 活発で明るく稽古熱心な座員のみなさん。 特に第8作「恋歌」のオープニング。あの雨の日の寅とのやり取りは叙情感あふれるシーンで心がしっとりと潤うのだ。 そして物語の最後、あの見事な八ヶ岳をバックに感動的な再会が待っている。 私が第8作をベスト4の中に入れる大きな理由の一つに、 このファーストシーンとラストシーンのなんともいえない繋がりのよさ、そして最後の晴れやかさがある。 特にあの小百合ちゃんと寅の短い会話が絶品なのである。 私はこのシリーズの本編を第17作「夕焼け小焼け」までアップしてきたが、この第8作だけ、一番上表紙の写真が マドンナでなく、あのラストの坂東鶴八郎一座との再会の場面なのである。このことだけでもいかにこの一座が私の お気に入りか分かっていただけると思う。彼らが登場するとスクリーンに向かって御ひねりを投げたくなる。 トラックが止まり、 「先生!私です。いつか四国でお会いした小百合です!」 寅、気づいて 寅「あー!、小百合ちゃん!雨の降った日の!」 小百合満面の笑みで 小百合「はい」 第8作「恋歌」は見所満載でものすごい重量感がある作品なのだが、そのくせとてもさわやかな 後味が残るのは、この最後の再会のシーンがあるからなのだ。 このラストシーンが見たくて、ただそれだけで第8作「恋歌」を何度見たことだろうか。 岡本茉利さんのこの大空小百合役を見ていると、役者さんが「役に出会う」というのは こういうことを言うんだなと思えてくる。まこと水を得た魚のような輝いた演技をしていた。 岡本さんはこのほかにもいろんな役でこのシリーズに登場している。 そのことはまた後日またちょろちょろと書きたいと思う。 それと、実は彼女は同じ山田監督の「同胞」にもなんと準主役で出演するが、この愛子役も、 とてもよかった。 農村に生き抜く女性の力強さと青年会会長の高志(寺尾聡)をひっそりと想う柔らかな気持ちが なんともバランスよく自然に表現されていた。これも彼女は役に出会ってたなあ…う〜ん。 いやいや、それでもやっぱり大空小百合ちゃんのあのインパクトは1番だァ!! チャンチャン。 明日は第18作の坂東鶴八郎一座をまたちょろちょろっと書こうかな…。 このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |
『寅次郎な日々』バックナンバー 2人のさくら 夢の共演 11月16日 『寅次郎な日々』その3 男はつらいよはテレビ版が大人気を博し、その後、山田監督の強い要望と粘り強い説得でこの映画が作られたのはご存知の方も 多いだろう。その際、配役に若干の誤差が出る。おばちゃん役が杉山とく子さんの予定が合わなくて映画版には森川さんとも気心が 知れた三崎千恵子さんが起用された。そして博役には、若さを求め、前田吟さんが起用された。問題はさくらである。映画となると当時松竹の 若きスターである倍賞千恵子さんが起用されるのは仕方がないのだが、テレビ時代からのファンには、やはり寅といえばあの渥美清、 さくらといえばあの長山藍子だったのである。その2人のさくらがなんと第5作「望郷篇」で寅のマドンナ対さくらで共演しているのである。 長い寅さんファンにとってはたまらない魅力があっただろう。マドンナの恋人役はなんとテレビ版で博(博士)役をやった井川比佐志さん なのだ。そしてマドンナの母親にはテレビ版おばちゃん役の杉山とく子さんときたもんだ。この第5作で完結篇にしてもいいと内心決意していた 山田監督のこのシリーズへの全ての想いが込められた心憎い配役だ。 このなかでやはり見ものは2人のさくらの共演だ。待ってました!ご両人!って感じ。 浦安の豆腐屋で繰り広げられるマドンナとさくらの会話は笑いの多い和やかなものではあったが、どこかしらいい意味での緊張感もあったと思う。 2人のさくら、夢の共演 この作品で節子役の長山さんは、寅の心を見抜けず、深く寅を傷つけてしまう展開になっていく。 おそらく長山さんとしては、本当は寅と相思相愛なんだけれども、寅が甲斐性がなく、踏ん切りがつかず、結局上手くはいかなかった…、 なんて方向だったらよかったのにと思ったかもしれない。 私も節子さんが寅のことをどこかで愛しながらも別れていくという設定にしてほしかったなと、つい思ってしまうのである。テレビ版であれだけ 寅と仲のいい兄妹を演じた優しく魅力的な長山さんであるからこそ、たとえ、別人の役であっても寅に対する気持ちを持ち続ける設定にして ほしかったなんて勝手なことを思ってしまう。 もし、仮に、あの永遠のマドンナと言われる倍賞千恵子さんが寅さんシリーズ中に他の映画で、いくら違う作品とはいえ、渥美さんを結果的に 残酷に振ってしまう役を演じていたら…、と考えると…「望郷篇」のあの設定はちょっと複雑な気持ちにもさせられる。なかなか世の中どちらの 都合にもいいようにはいかないものだ。やはりテンポや勢いを大切にすると寅がああいう思い切った振られ方をしたほうが物語が弾けていいとも 言える。ともあれ、下町情緒あふれる浦安の豆腐屋の節ちゃんとして彼女は実に生き生きとスクリーンの中で飛び跳ねていた。 渥美さんとの掛け合いもさすがに絶妙な上手さがあった。 寅にとって至福の夜だったが… そしてなによりも「望郷篇」は純粋に作品としてテンポがいいし、面白いし、力強い。 スタッフもキャストも乗りに乗った、シリーズ中最も勢いのある屈指の名作であることに疑う余地はない。このことは断言できる。 そういう意味では長山さんは実にいい作品に出演したのだと言えるだろう。 よしよし(^^) このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |
『寅次郎な日々』バックナンバー タコ社長の息子 11月15日 『寅次郎な日々』その2 タコ社長の子供といえばなんといっても「あけみ」だ。第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」で衝撃のデビューを飾って以来、 次々に寅やその周辺を賑やかしく駆けずり回っていた。私も彼女のキャラは大好きで、あけみが登場するシーンの多い、 第36作「柴又より愛をこめて」や、第38作「知床慕情」は実に繰り返しよく見る。しかし、実はタコ社長には4人も!子供が いるのでる。 第6作「純情篇」で下の写真のように最初で最後のタコ社長の家の中が映り、子供たちも映る。 狭い部屋の中に4人の子供がゴロゴロいるのである。 この写真で見て分かるとおりなんと2兄弟2姉妹の計4人なのだ。 年の上から順番に↓ ★おとなしくて頭のよさそうな『お兄ちゃん』と呼ばれている長男 ★そうとうおてんばそうな長女。←これが後の「あけみ」(美保純) ★超ヤンチャなチャンバラ好きの次男。 ★『ミー坊』と呼ばれている次女。 奥さんは第1作のさくらの結婚式に仲人役で出てきた水木涼子さんである。 「あけみ」以外の子供達の消息はその後分からない。謎の家族になってしまった。 この謎の4兄弟姉妹なかでも私が印象深かったのは、この中でもっとも将来的に有望そうに見えた長男だ。 タコ社長にうなぎ買って来いと、言ってお使いを頼まれていたし、なんといってもこのあと、江戸川でみんなで 舟遊びをした時に、夕子さんたちと同じ舟に乗って物分りがよさそうにニコニコ笑っていた。 舟の先端部分に座り微笑んでいる長男さん ああ、この少年は、朝日印刷を大きくしていく未来の希望の星なんだ…、と思っていたが、 その後は、うんともすんとも出てこない。唯一第17作「夕焼け小焼け」で寅に2階のジジイ の話題の時に、 「タコッお前人事じゃないぞ。お前だってすぐアーなっちゃうよ。 お前んところのあのできの悪い息子がだ、お前の将来どれだけ優しくしてくれると思ってる。ええ?甘いよ」 なんて言われて、社長も「そう言われりゃそうだな…」なんて神妙にしていた。 そしてそれ以降話題にすら出てこなくなった。あけみが出てきてからは、あけみが一人っ子のようになってしまっていた。 ああ。。。、あの少年はどこへ行ったのであろうか…。 少年が成長して朝日印刷を仕切りだすと、博の存在理由が薄くなるからあれ以降出なくなったのだろうか…。 真相は闇の中だ…。たぶん山田監督も知らないだろう…チャンチャン(^^;) このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |
『寅次郎な日々』バックナンバー 2005年11月14日 ようやく立ち上げました ほぼ毎日アップの予定… 前々から、寅ネタの雑文も読みたい、という要望があちこちからあったのだが(実は数人だけ(^^;)ゞ) つい、生来の怠けものの気質と熱帯ののんびり気質で、今日の今日まで延び延びになっていたが、さすがに、 そろそろつらつらと書こうかなと、決意し、本日第1日目を迎えた。 とはいえ、別になにか中身のあることを書くつもりはなく、徒然なるままにその日思いついた『寅ネタ』をひょろひょろと書くだけなので、 人生で糧になる話やためになる話は何もないだろう。で、まあ、気楽に暇〜な時にでもにでもパラパラとお読みください。 日めくりカレンダー的にほぼ毎日アップしてこうと勤勉な事を今は思っているが、例のごとく、寅と同じ3日坊主でやめるかもしれないし、 10年間ほぼ毎日続くかもしれない。仕事が忙しい時や、旅行中や、日本滞在中は4〜5日に一度ほどになると思うが、これも いつものパターンなので大きなお心で全てお許しください。 寅次郎の将来の夢 11月14日 『寅次郎な日々』その1 私の16歳の息子はイラストやマンガを描いているが、実は私も中学生の時は本気で漫画家になりたかった。漫画を描くことが好きな 連中を集めて「落書きコミック」という肉筆雑誌を月1回発行しては、学年中に回して読んでもらったものだ。あの頃はちばあきお さんが目標でファンレターなどを送ったものだ。まあ、今は売れない絵描きになっているのでそんなにかけ離れたことにもなっていないかも。 寅にも、寅なりに夢はあった。このことは、第21作「寅次郎わが道を行く」で出てくる。 鼻垂れ小僧の時はチンドン屋に憧れ、小学校の時はサーカスに憧れ、中学校ではテキヤに憧れるのである。 結局寅は現在テキヤを生業としているので、マドンナの奈々子同様、ちゃんと夢がかなってるじゃないか、というオチ。 ちなみにさくらは確か第12作「私の寅さん」で小学校の時は絵描きさん。中学校では声楽家。高校では芸術家のお嫁さん。だった。 博は、第35作「恋愛塾」確か弁護士になりたかったり、、テストドライバー、バイク店のオーナーになりたかったりしてた。 第21作では博は学者になりたかったのだとさくらが代弁していた。おいちゃんは満州で馬賊になりたかったし、おばちゃんは日本橋の 大きな呉服問屋のおかみさん。タコ社長は弁護士になりたくて夜学に通っていた。 で、最後においちゃんが「お前の場合、まわりも遊び人にしかならないと思ってたし、そしてそのとおりになちゃった…」と締めくくっていた。 チャンチャン(^^) 明日もたぶん更新します。 このページの上に戻る 最新のコラムはこちら |