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寅次郎な日々

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ご注意) このサイトの文章には物語のネタバレが含まれます。
まだ作品をご覧になっていない方は作品を見終わってからお読みください。



                 

『乙女の祈り』の中のエゾエンゴサク(2008年12月20日)

もうひとつの『寅次郎忘れな草』(2008年12月16日) 

緒形拳さんの肩にとまるトンボ(2008年12月7日)

透明な悲しみを紡ぐ人  山本直純さんよ再び (2008年11月26日)

マドンナの寅への気持ち 整理箱(2008年11月17日)

『男はつらいよ』の中の『落語ネタ』(2008年11月8日)

新幹線に8回乗った寅次郎(2008年11月3日)

第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」  ダイジェスト版(2008年10月27日)

『風のガーデン』の緒形拳さん  緒形拳さんのアリア(2008年10月19日)

『長靴を履いた寅次郎』 寅が思う労働のしるし(2008年10月7日)

なんとか間に合った 『おくりびと』&「ほら、見な、あんな雲になりてえんだよ」(2008年9月14日)

「倅(せがれ)」と「ぼくの伯父さん」(2008年9月8日)

ロケ地めぐり.満男の通う『城東大学キャンパス』(2008年8月30日)

ロケ地めぐり.堤鞠子さんの職場(2008年8月21日)

寅次郎な日々370 ユニークなロケ地巡り.究極のマップ ストリートビュ-(2008年8月10日)

【遠い旅の空から】連載開始(2008年7月31日)

全48作品とらや【お品書き】考察記(2008年7月24日)

ロケ地発見への道 「寅次郎と殿様」   愛媛県 興居島(ごごしま)(2008年7月16日)

即興フラッシュアニメ『駆けて来る寅次郎』(2008年7月14日)

好きだから つよくぶつけた雪合戦(2008年7月3日)




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『乙女の祈り』の中のエゾエンゴサク


2008年12月20日 寅次郎な日々 その385


この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。





『風のガーデン』3回目の日記


このドラマ「風のガーデン」を見ていない人には何のことかまったく分からない書き方をしています。ご了承ください。


『風のガーデン』最終話 ナツユキカズラ  が終わった。



19世紀夭折の女性作曲家テクラ・バダジェフカの名曲『乙女の祈り』は
亡き母がいつも弾き、岳にも教えた曲だ。


あの初夏のある日、

岳はピアノで、そして父と名乗れない貞美はチェロで、
この切なくも美しい曲を早朝のグリーンハウスで共に弾く。
(このピアノはなんと神木隆之介君自身の音)



         



貞美の好きな花は『ユーフォルビア.アムジラッサ』

花言葉は『乙女の祈り』




そしてこの長いドラマのラスト、
そのような多くの思い出が詰まった『乙女の祈り』が流れる中、

あの晩夏に貞美がキャンピングカーの回りに植えた
エゾエンゴサクがこの春に一面に咲いた。

ルイが一番好きな花だ。

そして、貞美はもういない。

岳は貞美がもういないことも、貞美が花を植えたことも知らない。



         



貞美のキャンピングカーの跡が残る四角い土の上に立ち、
朝日の中一面に咲くエゾエンゴサクを不思議そうに見続ける岳。


風の中、花に託して静かに父を想うルイ。



          



『乙女の祈り』が流れ続ける中

この美しく切ない物語は
こうして静かにひそやかに閉じられていった。





ゆっくりとていねいにエンドロール



貞美と岳との別れのシーンが映し出される。


そして貞三の数々の表情…。


往診で村々を往く不屈の貞三の姿。



        



今想うと…

この全11話の長いドラマには
3つのカタルシスを含む美しいクライマックスがあった。



父貞三と貞美の再会と和解


        




岳と貞美の最後の別れ


            




そしてラストの『乙女の祈り』の中の一面のエゾエンゴサク


        



見事な3つの映像。



倉本聰さん渾身の脚本。
良くも、悪くも倉本さんの感覚の全てが出た突出した作品だった。
こんな品格のあるテレビドラマはもう今の日本にはどこをさがしてもない。


宮本理江子さんの粘り強く、しかもさりげない演出は本当にすばらしかった。
彼女は11話全作品を誰とも代わらず一人で監督しきった。
私は、粘り抜きながらも透明感のある柔らかな彼女の演出を見ながら、
父親である山田太一さんの
あの粘りのある強くしなやかな筆圧を思い出していた。
本当の「力強さ」とはこういうしなやかさを言うのだ。


中井貴一さんは見事な演技。
死の直前の貞三に対しての長ゼリフはいつまでも忘れないだろう。
あのカットがクランクアップのカットだった…。

彼は生涯の代表作を今まさに得たのだ。



          


伊藤蘭さんの抑えた演技にはびっくりした。
いつの間にあんなに自然な演技が出来るようになっていたのか…。
歳月は人を育むのだと実感させられた。

あの若い備中高梁の一道が、
奥尻のあのすみれちゃんが…、
二人ともなんとも素敵な役者になった。



そしてなにより

最期の緒形拳さんの
あの瞳、あの姿、あの声。


『破獄』『帽子』『風のガーデン』…

テレビドラマは決して捨てたモンじゃない。




緒形拳さんほんとうにありがとうございました。



        






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もうひとつの『寅次郎忘れな草』  プレスシート


2008年12月16日 寅次郎な日々 その384



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。





このサイトで私は時々『本編』と『脚本第2稿』を比較して考察したり楽しんだりしているが、
このような『決定稿』『第2稿』よりもっと前の段階の資料に『準備稿』や『プレスシート』などがある。

プレスシートとは簡単に言うと、マスコミ向けの宣伝用配布の非売品パンフレットだ。
ごく初期のころのシナリオをもとに作成されるので、貴重な資料的な意味合いを持つことがある。

時々、本編はおろか、第2稿ともかなり違うストーリーがそこに書かれているのだ。
初期の構想はそうだったのか…、と深い感慨が沸き起こることもままある。

ネットのgoo映画の解説やレンタルビデオの裏解説に、時折本編とは若干ずれるストーリーが
書かれてあったりするが、あれらはそのような資料を使ってしまったゆえに起こる珍現象なのだろう。



で、今回はリリーシリーズの中の
第11作「わすれな草」の『プレスシート』に書かれてた物語を↓にそのまま紹介しよう。
本編とは微妙に違う内容なのでなんだか得をした気分になれるのだ。


ではどうぞ。



第11作「寅次郎忘れな草」 プレスシート 原文のまま↓

(画像は勝手に私がメリハリの意味で3枚だけ入れました)


■ものがたり

テキヤ家業の寅さん(渥美清)にとって、何といっても気ままで心が晴ればれするのは
旅の空にある時です。

スズラン咲く初夏の北海道を旅する寅さんは、「花咲」というところで、ふとしたことから
リリー松岡(浅丘ルリ子)というドサ回りの歌手と知り合いになりました。

この女は昼から酒を飲んで寅さんをヤリこめたりする勝ち気なところのある反面、妙に寅さんの胸に
グッとくるやさしい言葉をかけたりする不思議な女でありました。




              



その女と別れて、道東をウロウロしているうちに寅さんは急病にとりつかれ、せっぱつまって
東京葛飾柴又に住むさくら(倍賞千恵子)に助けを求めるはめとなってしまいます。

故郷のとらやに帰った寅さんのもとに、ある日リリーがひょっこり訪ねて来ました。

喜んだ寅さんはテキパキとおばちゃん(三崎千恵子)やさくらに指図して彼女に最大級の
もてなしをしてやります。

リリーは「とらや」の人々の心のこもったもてなしに触れ、胸を熱くします。
彼女は不幸な生まれで、親兄弟の愛を知らず育ったため、こんな「家庭の味」に
たまらなく飢えていたのです。




              

               



身の上ばなしを聞くうちに寅さんは、リリーがとても可哀想になり、なんとか力になってやらねば、
と、思うようになります。
そして池袋でくらしているというリリーの母親を探し出し、親子の対面をさせたのでした。
場末の裏道で安飲み屋の女将をしているリリーの母親のもとへ、勇んで彼女を引っ張って行ったものの
二人はしらけきって何の感激も示さず、寅さんは却って彼女にさみしい思いをさせてしまうのでした。

このことがあってから寅さんは、なおさら彼女がいじらしく哀れでならなくなり、
想いは昂じていつもの恋の病に取り付かれ、おいちゃん(松村達雄)たちをはらはらさせるように
なってしまうのでした。

いつものことでありますが、やはり今度も彼女を愛する男が現れたのです。
彼はまじめなすし屋の職人で、ずっと昔からリリーに惚れぬいて来たというのです。
〈この男ならリリーは幸せになれる〉
そう思った寅さんは辛い気持ちをグッとこらえて、二人を応援してやろうと心に誓います。

ところがある晩したたかに酔ったリリーがとらやに現れ、自分のような女は到底堅気の女房などに
なれないからあの男と別れてきたという。
これを聞いて怒った寅さん、リリーに平手打ちをくらわして叱りつけました。
「あんな男には一生に一度しか逢えないんだぞ」

こうして寅さんは好きな女を忘れるために、またも一人旅に出たのでした。

しばらくして寅さんは、リリーがあの男と結婚し、働き者のすし屋のカミさんになったとの
風の便りを耳にしたのです。



              





以上。プレスシートの原文でした。


それぞれの展開が微妙に違うのがなんとも興味が尽きない。

特に寅がリリーと母親の再会に一枚かんでいるなんて、まるで第2作のお菊さんを
ほうふつさせる展開である。

そしてまた、寅お得意の恋のキューピット役をこの作品でもはたしていたとは!


まだ構想が醗酵されていないせいもあって、若干構成が甘いというか洗練されていない感じもするが、
本編とは違う最初のおおまかな構想を垣間見れるようでなかなか新鮮なのだ。








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緒形拳さんの肩にとまるトンボ



2008年12月7日 寅次郎な日々 その383



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



10月の『寅次郎な日々377』にも書いたがこの緒形拳さんの遺作である「風のガーデンは」
死を目前にした麻酔科医が絶縁していた家族のもとへ戻っていく物語を通して
人が死にゆくさまと生き抜くさまを描いていくシビアなドラマだ。


緒形さん演じる富良野で終末期自宅医療も含めた在宅医療に打ち込む老医白鳥貞三は、
かつて、自分の息子の貞美が妻がいるのもかかわらず不倫を犯し、家族を省みなかったこと、
そしてその後の貞美の妻の自殺に大きなショックを受け、激怒し、貞美と十数年前に絶縁をした。
それ以来ほとんど会っていないし、寄せつけてもいない。

しかし、貞美は45歳の若さで末期のすい臓がんに侵され、活躍していた東京の大学病院を辞め、
家族に会うため富良野にひそかに戻ってきたのだ。


ご存知のとおり、緒形さんは完成の直後にお亡くなりになった。



私は毎回放送のたびに緒形さんのお姿を眼に焼き付けようと集中している。


(なお、平原綾香さんの歌声が毎回最後にドラマを引き締めてくれているが、
この美しい旋律はショパンのあの『ノクターン第20番 嬰ハ短調「遺作」』のアレンジ)









今回の第9話は、第2話同様心を震わせてしまう美しいシーンがあった。



ついに貞三と貞美が再会するシーンがおとずれたのだ。






第9話 ラムズイヤー






ゆっくり木漏れ日の中を歩いてくる貞三




貞三を見て立ち尽くす貞美




         





貞美「
 よっ 



         




貞美、深々とお辞儀をし



貞美「
ご無沙汰しています




貞三、わずかに頷きながら微笑む。



下を向き、眼をあわせられない貞美。





少し時間が過ぎ…





貞三は椅子に腰掛けている。


貞美はミネラルウォーターを車から取り出し差し出す。


貞美は草むらへ座る。




トンボが飛んでいる



貞三「
なにか作業をしてたのかね


貞美「
はい…ちょっと球根を植えてました


貞三「




岳に植え方を教わってエゾエンゴサクを植えていたのだ。
貞美は自分が来年の春まで生きれないであろうことを知りつつ、
来年の春に咲く長女のルイが一番好きなエゾエンゴサクの球根を
何個も何個も植えていたのだった。



貞三は、貞美が余命いくばくもないことを自分はすでに知っていると貞美に伝える。




貞三「
家へ…、家へ帰ってこないか


貞美「




貞三「
私は…、おまえに謝らなきゃならん




          



貞三「
おまえにも、…ルイにも、…岳にもだ



貞美「




貞三「
一時の感情をいつまでも引きずって、
   君ら親子のことを真剣に考えていなかった。
   医師としてまったく恥ずべき話だ。

   申し訳なかった




と頭を下げる。





貞美「
恥ずべきなのは自分のほうです



貞三は涙を浮かべながら貞実を見る。




貞美「
父さん、ほんとに…」
   赦してください…。




と深々と頭を下げ、ついに泣いてしまう貞美だった。




貞美「
僕は自分が情けないです




貞三は涙を浮かべ微笑みながら



貞三「
家へ…帰ってこいよ



貞三「
オレは今在宅の訪問医をやってて、
   ターミナルケアをいくつも扱っている。

   こういうことを君に言うのはつらいが…
   少しは…君の……役に立てる






貞美泣いている。







貞三「
君が、今一番したいことはなんなんだろう…





貞美 大きな嗚咽に変わっていく。





貞三「
生きてる間にやっておきたかったことはないかね




泣き続ける貞美





柔らかい表情で貞美を見ている貞三。






そして、ささやかな花言葉の会話をする二人、




静かな時間が流れていく。





ふと気づくと晩夏の木漏れ日の中、


緒形さんの右肩になにかがとまり、たたずんでいる。


中井さんに静かに笑いかける緒形さん。


その肩にとまっていたのはトンボだった。




私はこの映像を生涯忘れないだろう。





   














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透明な悲しみを紡ぐ人  山本直純さんよ再び 

「男はつらいよ.寅次郎音楽旅」 寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”


2008年11月26日 寅次郎な日々 その382



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


フランス、パリ、セーヌ川沿いのチュイルリー公園内の一画にある『オランジェリー美術館』には、
画家クロード.モネのために作られた「睡蓮の間」という円形の部屋がある。
360度モネの絵が飾られているのだ。
その中に立つとモネの絵の前にいるのではなく
モネの絵の中にいると言う感覚にとらわれる。

モネはこのオランジェリーの円形の部屋を意識して
巨大な絵を何枚も描きあげている。

まさしくモネの絵の前でなくモネの絵の中にいるのだ。
モネの世界が自分の体内に広がり、
絵を見ているのでなく絵の中に入り込んだ、
不思議な、そして何とも安らかな感覚にとらわれたのである。
当時25歳の私はあの世界の中で湧き上がってくる高揚感を押さえることができなかった。


そのような「イメージの中に自分がいる」という感覚に今日再び見舞われた。

今度は「造形」ではなく「音」だ。


いろいろ縁あって今日国際宅配便で、あるミュージック2枚組CDを手に入れたのだ。
インドネシアはなぜか通販などでよく使う国際郵便が着かないことがあるので心配したが、
本日発売前日に届いたから、インドネシアの郵便も捨てたもんじゃないと、見直した次第である。

聴いてみると、この音楽は映画「男はつらいよ」の世界の真っ只中を縦横無尽に旅するごとく
そのイメージの海の内部に誘ってくれる世界を持っていた。

2枚組100トラックが入ったこのCDの名前は、
「男はつらいよ」40周年を記念してユニバーサルミュージックより発売された

「男はつらいよ.寅次郎音楽旅」寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”

男はつらいよ全48作品のサウンドトラックだ。


山本直純さんの音楽は優しくてそれでいて品格があって透明な音だ。
私は昔からこのシリーズに使われた山本さんの音が大好きで、
かつてVAP社が制作した「男はつらいよ.サウンドトラックヒストリー」「メモリアルサウンド」を
いつも繰り返し聴いていた。それこそ家でも車でもどこでも聴いたものだ。

あの高島幹雄さんたちによって制作されたこのVAP社のCDはまず、マドンナのテーマを中心に
まず第1作から第47作まで4枚のCDに収めたものだった。
それもオリジナル版からの採用にこだわり、
時には啖呵バイや名セリフなども取り入れられた珠玉の作品集である。
そして最後の第48作は特別枠で「リリー4部作」だけの特集を組み「リリーと寅次郎 紅の花」
として1枚のCDとしたものである。このメモリアルCDはまさしく名盤だ。
それ以外にも「歴代マドンナ名曲集」「寅さん発言集」などなど、豊富に作られている。

これらのCDは、 リリーの歌声や倍賞さんが歌う『さくらのバラード』なども入った
思い入れたっぷりの力作だった。
それゆえ、山本直純ファンや、コアな寅さんファンに長らく愛されてきたのだ。


しかし、パイオニア的CDであったゆえに、まず、作品ごとの全テーマ曲の紹介に忠実にならざるを得なかった。
それゆえに、名盤「リリーと寅次郎 紅の花」などの一部を除いては、残念ながら
『世界観の構築』『全体としてのイメージの構築』と、それに伴う『小さな音楽の掬い上げ』というコンセプトには
さほど言及してこなかった。

VAPのこれらの名盤が残したこの課題を、
ユニバーサルミュージックから出されたこの新しい2枚のCDは見事カバーしてくれたのだ。


企画、制作を担当したのは映画評論家であり音楽プロデューサーでもある佐藤利明さんである。
CSの『衛星劇場』の番組「私の寅さん」でのホスト役としても毎回活躍されている方だ。

彼にはこのCDを制作する上で大きなアドバンテージがあった。
それは、日本の音楽プロデューサーの中で、おそらく最もこの「男はつらいよ」シリーズを深く愛し、
大人になるもっと以前、なんと幼少期からすでにこの映画を映画館で観続け、
今も日々、DVDで作品たちを繰り返し観ている『つわもののファン』だということだ。
それゆえ十年来彼が大事に温めて来たライフワーク的な企画だったのである。

また、彼は、もう一つの顔である映画評論家として、
本、雑誌、寅さん本、テレビ番組等で、この「男はつらいよ」という映画を昔から繰り返し取り上げ、
公の場で掘り下げてきた。これもまた強みだろう。
懐の深さは必ずCDに反映されるからである。


この2枚組みCDに入っているライナーノーツにはこのようなサブタイトルがつけられている。


“劇伴”『男はつらいよ』の創作


今回佐藤さんは、山本直純さんの数々の小さな音も含めた劇中音楽『劇伴』を、縦横無尽に使って、
もう一度大きなイメージによる起承転結の『男はつらいよ』物語を
新たに作り上げようとされているのだろう。

制作者の理解の底が浅く未発酵の場合は、立体的な構成を志して行動にうつしても、
構成が陳腐なものとなってしまうこともままある。
制作の当事者だけが独りよがりに満足してしまい、
かえって第三者が聴いた場合イメージが掴めない危険性を多分にはらんでいるのだ。
ましてやこのシリーズは48作品もあるのだ。その内容は膨大である。

それゆえ、こんな厄介な構想は、佐藤さんしか出来ないアクロバテックな危うい力技だったのかもしれないと
今、音を聴きながらそんな感慨が沸き起こってきた。






            







またそれ以外で、今回聴いてみて、私が嬉しかったこと。

それは、下世話かもしれないが、
この「寅次郎音楽旅」の100トラックと、↑で紹介したVAPの名盤CDで使われた数々のバージョン、アレンジとは
一部を除いてほとんど重なっていないことだ。

同じテーマ曲でも演奏が違うものレアなものをあえて多く選んでいる。

これもまた、オーソドックスが感じられない危険性にも繋がるので、
ある意味勇気がいる行為だ。しかし結果的には、それぞれのテーマを時間をかけて吟味し、
とても味のある隠れた名演奏をしっかり選ばれている。

このようにして今回の音はVAPのCDの『補完』の役割も果たしているのだ。
ここはVAP盤をすでに持っている長年のファンにとっては正直美味しいところである。
これらすべてを所有することによって、より完璧な山本直純さんの世界に近づいていくからである。
今回の制作者たちはこのことをもちろん十分に意識している。

また、『寅次郎のマーチ』『寅次郎のバロック』などの
「こんな曲も作っていたのか!」と唸ってしまう、まったく聴いたことのない曲も
サプライズとして出てくるからなおうれしい。

上でも触れたように、随所に「聴きたかったあの曲、あのBGM」が、多く入っていて、
うんうんと頷いてしまうのである。
特に旅先で流れる数々の小さな名曲の掬い上げの感性は見事である。このあたりが核の核。

また、『本編未使用』の曲も10曲以上あり、それらは珍しい貴重なアレンジも多い。
これまたファンにはたまらない魅力なのである。

さらにもうひとつ、このシリーズは有名なクラシック音楽も採用されているが、
このCDでも「あの場面のあの名曲」が時々登場する。

「トロイメライ」「ます 第4楽章」「シェエラザード 第3楽章」「四季 秋 」「春の声」などなどである。





一方、音以外の工夫としては、
佐藤さん自身が考えられ、それぞれの曲につけた「タイトル」がなかなか味わい深い。
たとえば…ランダムに書いてみるが、


ふるさとの川江戸川

寅が故郷を想わざる

旅をして来た人には優しくしなくっちゃなぁ

りんどうの花 寅と貴子

浴衣、きれいだね

寅とリリー、二人の渡り鳥

寅と綾 人間はなぜ死ぬのでしょうね

坂東鶴八郎一座との再会 やっぱり日本晴れ!

寅の旅〜 播州平野を歩く

寅とかがリ 伊根の夜

琴島の寅と葉子  瀬戸内の波光

柴又のあにいもうと  さくら、故郷ってやつはよ


などなど、もうこれだけで寅さんファンなら聴きたくなるはずである。
こんな短いタイトルにも、ただ単に知識だけでなく
制作者側の深い愛情と造詣が感じられるから面白い。

そしてライナーノーツのデザインがいい。
モノクロでまとめ、おしゃれでスマートだ。
ちょっとしたレイアウトも余白も、デザイナーが集中力を持続させて取り組んでいるのがわかる。

なによりも3人の写真がすばらしい。

2枚の山本直純さんの笑顔がなんともお人柄が出ていて最高にいい。
渥美さんも見開きいっぱいで背広をさっそうと肩に翻す寅として大きく載っている。
山田洋次監督も実に深いいい目をされている。
題経寺の屋根、海辺のかばんと帽子、江戸川土手の草むら、…これらの写真のあり方が絶妙。
この仕事は従来の「男はつらいよ」関係物に一貫してありがちだった執拗なまでの『ベタな良さ』の追求を
今回思い切って捨て、一気に脱皮している。これはデザインのありかたとして大きな前進だ。


また、それぞれの解説文字は1万文字にも及ぶ。
それらひとつひとつが無駄がなく、わかりやすく、本質的な深みも持っている。
曲の説明でこの文字数は異例だ。
VAP盤同様今回も制作時のM(ミュージック)ナンバーは全ての曲に記されている。
このようなそれぞれの音に対する細かく親切でなにより美しい解説と補助は、
ともすれば混乱しがちになる今回のような縦横無尽の感覚的な音の構成を、
きちんと整理させてくれる優れた「羅針盤」にもなるはずだ。

ここの「丁寧でわかりやすい解説」の部分は、背後で監修をつとめた山田洋次監督も、
佐藤さんにぜひそうしてほしいと助言されたらしい。

こうしてこのCDで一番危惧されるであろう
「この映画を最近見始めた人にとっての構成のわかりづらさ」は、
これらの1万文字によってカバーされるのである。


書き忘れていたが、
肝心の「音」の源は、もちろん、マスターフィルムから
音源を抜き取った完全なオリジナル版を使っている。
この「ありのまま」の音だけが伝えてくれる感動は、映画を愛するファンにとっては
何ものにも代えがたい『劇伴』の絶対条件だ。

それにしても四十年以上も前の「男はつらいよ」シリーズの音源を
あらためて一曲一曲調べつくし、聴きつくしていくのである。
6ミリの音楽テープをデジタル化する作業は、よほどこだわりがないとできない気の遠くなる作業だ。
この精査は、間違っても1ヶ月やそこらで終わる作業ではない。

それもこれだけの分量にしてそれらの曲ほとんどが珠玉のクオリティなのだから
これは聴いていくほうとしてもたまらなく重労働なのである。
しかし、ある意味なんと楽しくうれしい作業だろうか。
私には佐藤さんをはじめスタッフたちがこの気の遠くなる作業を
日々驚きながら、頷きながら、そしてなによりも楽しみながら
行っていたことが想像できる。

そのようなことをイメージできるCDの「音たち」だった。



これらの音を、故郷、旅、恋…と「テーマ」に沿って何度も聴いていくうちに
私たちはこの大きな宇宙のように果てしない全48作品を自由に旅をする旅人になるのである。

時には柴又のとらやにじっくりと滞在し、さくらやおいちゃんおばちゃんとの物語を味わい、
時にはあてもない旅に出て全国津々浦々の田舎道を歩き、古い宿場町に滞在し、
神社の祭りのざわめきを聞き、なにげない人々やささやかな風物に出会い、
道端の草花を愛で、…そして風に吹かれる。
それと同時にさみしくつらい旅先の孤独や悲哀も切実に思い出す。

そんな中、数々のマドンナとの出会いと数々のせつない恋を巡っても行けるのである。

そして最後はきっと日本晴れの大団円が待っているのだ。

今もこうして聴いていると、個々のイメージが走馬灯のようにぐるぐるまわり、
時として統一され、立体的なふくらみを持ち、高揚感とともに大きな物語となり結晶となる…。





              




そして、毎年必ず聴きなおしてほしい。
徐々に映画に対する理解が深まれば深まるほど、
このCDの放つイメージの海はより膨らんでいくことは間違いない。

まさに “劇伴”『男はつらいよ』の創作 なのである。

また、言い換えれば、それほどにもこの本家本元の「男はつらいよ」48作品は膨大で、奥が深いのである。

とにかく、長年の熱烈な寅さんファンである佐藤さんがリスナーとして聴いたらとても喜ぶように、
もう一人の制作者の佐藤さんが作った珠玉のCDなのだろう。




           




しかし、本音を言うと…、
VAPの数々のCDやこのユニバーサルミュージックのCDを全て聴いてもまだ、
この48作品には採用されていないぜひ聴きたい「あの曲」「この曲」がたくさんある。
まったく「男はつらいよ」の『劇伴』の世界は果てしない大海原なのだ。

当の佐藤さんも同じようにまだまだこの仕事はほんの入り口だと思っていらっしゃると思う。

と、いうわけで『続.寅次郎音楽旅』そして『新.寅次郎音楽旅』がいつの日か
作られる気がするのだがどうだろう。(^^)





最後にもうひとつ今回の目玉を紹介。

このライナーノーツには山本直純さんの息子さんである作曲家の山本純ノ介さんと
山田洋次監督が文章を寄稿されている。

山本純ノ介さんは父親と一緒にこの仕事をした懐かしい思い出を、誇りを持って
せつせつと臨場感を醸し出しながら綴られていた。
「寅さん楽団」での思い出に残る演奏者のお一人お一人の名前を文章の中で読んでいくにつれ、
なんだか胸が熱くなるような一文字一文字だった。
紛れもなく山本さんの青春がそこにあったのだ。
ほんとうにいい文章だった。



また、山田洋次監督も「天才を惜しむ」という、なんとも美しい文章を寄稿されていた。

その文章の中にこういう箇所がある。

寅さんはつねに失恋する、だから「男はつらいよ.シリーズ」は悲劇なのである。
 失恋することがわかっていながら美女に恋する滑稽な寅さんに
 そっとよりそう音楽は悲しくなければならない。

 その表現が山本さんは素晴らしかった。

 決してセンチメンタルにならずに、悲しみが透明で、
 初夏の青空のようにからっとしているのだ。
 凡庸な作曲家には決して浮かばないだろう見事な発想に僕はいつも唸らされるのだった。

 まるで鼻歌でも歌うかのようにさらさらと数々の名曲を書いた直純さんはまさに天才だった。
 そしてその才能と健康を乱暴に浪費して短い人生を終わってしまった。惜しむべきかな、である




今日深夜までこうして、さまざまな音を聴いていくにつれ、
山本直純さんの才能がいかに豊穣で、また、その感覚がいかに鋭敏であったかあらためて再認識させられた。
いやあ、直純さんはつくづく凄い。まったくその才能は無尽蔵だ。

まさしく山田監督がおっしゃるように『悲しみが透明』なこれらの曲は、「男はつらいよ」そのものであり、
もし山本直純さんが作曲を担当していなかったら、
この映画の懐は半分くらいに浅くなったかもしれないと思うし、
私の人生も今よりもつまらないものになっていたかもしれないな、と思ってしまうのである。

これはもう感謝以外の何ものでもない。








【番外編】

これ以下↓は特に印象深かった個々の曲たちに対する勝手な『独り言』

最初聴きながらパソコンにメモ代わりに書いていったので、
ごちゃごちゃ意味不明で何書いているかわからないと思う。
気にしないで適当に読み流していただければ幸いです。
エキスだけ汲み取っていただければ…(^^;)ゞ

(メモ代わりに書いたので、全部の曲は書いていません)






DISC 1


■01 やっぱりオープニングはこの曲だ。

  全ての始まりはここからだ。

 このオープニングのBGMが
 07 のさくらと寅の再会でもう一度聴けるからたまらない。



■04 主題歌では男はつらいよの三番(17作バージョン)がいい!

  『男の人生ひとり旅泣くな嘆くな 泣くな嘆くな影法師影法師』

  あの歌詞は最高!

  良くぞ選んでくれました。



★このDISC1の前半あたりはすべて故郷「柴又」「とらや」でのイメージで構成されている。
  ふるさとでの名曲が目白押し。



■05 出ました〜!『ふるさとの川江戸川のテーマ曲』これはもうたまらない(TT)
    よくぞ掬い上げてくれました。こうでなくっちゃ!


■06 なんといっても『寅が故郷を想わざる』。
    あの第6作のテーマ曲はまさに珠玉!!
    第6作の柴又駅での別れをも思い出す。

    旅人は故郷を想い、定住者は旅に憧れる。
    両者の哀しくも切ない相互憧憬が心に残る…、
    そんなイメージを呼び起こさせてくれる曲だった。

   2枚目のディスクでもまた2テイクも紹介してくれている!
   両方に入れてあるのでイメージがより膨らむのだ(^^)

   それにしてもこのタイトル!上手い!


■08.さくらとの別れのシーンにも使われたこの旋律は
    私の初期の作品群のメインテーマ曲のひとつ。

   「さくら」や「故郷」をイメージさせる美しい曲。
   私は仲間内で「さくらのテーマ」と言っている。
   「男はつらいよ」での重要な位置を占める名曲。


■11 あの美しい「冬子のテーマ」の旋律。
    全てを洗い流すような音楽性の高い曲。
   これも「男はつらいよ」では重要なテーマ曲。


■12 出た〜、工場の工員がよくハーモニカで吹いている「故郷の空」
    選んでいただいてうれしい〜!


■13 旅人を待つ寅の気持ちがよく出ていた演奏だった


■14 これはいい曲。(M−9)の花摘むさくらはマイケルのさくらへの
   告白のシーンで出てくる。優しいいい曲だ。
   よくぞ拾ってくれました。こういうのがたまらなくうれしい(TT)


■18 『埴生の宿』は第9作以外でも第26作で寅がさくらの家を見て、
     寅の部屋を見つけるときにも使われる。この曲は大好き。


■20 お菊さんとの悲しい再会を思い出させる切ない音楽。
    これもよく拾ってくれました。


■22 これはかなり好き!22(M−25)
    ウナギが釣れたと走っていく3人のバックに流れるドラムがリズミカルでたまらない。


■23 メインテーマから夕子のテーマへ、そしてまたメインテーマへ…、
    あの江戸川での夕子さんの優れた感性が思い出される。


■24 『故郷の廃家』のハーモニカの音色も気持ちが洗われるようだ。
    江戸川土手での花子ちゃんを思い出す
    でも
なんと第11作の網走の橋のたもとでも!使おうとしていたなんて驚木桃の木山椒の木だ。

■25 そのあと続いていくこの花子の可愛いテーマも優しくて大好き(^^)。


■26 初期作品群のメインテーマは『りんどうの花』26M-10
    あの曲は、貴子さんとの間でも、そして寅が柴又を淋しく去るあの風の強い深夜にも
    流れていた。あれこそが寅の孤独だ。


■28. 29  「りつ子のテーマ」も名曲だ。そしてりつ子さんと言えばシューベルトの「ます」!


■31 32 ゆったりとした演奏の「歌子のテーマ」こういうのもいいね〜。やっぱり名曲だなあ。
       そして北陸の旅「バタ〜〜!!」これは「春の声」!


■34 歌子ちゃんとのクライマックス「浴衣…きれいだね」最高です(TT)



★このあたり、少し旅にまつわる曲が登場し始める。


■36 この曲は美しい。叙情感あふれる名曲。瀬戸内海の海が蘇る。
    よくぞ選んでくれました(TT)

■37 伊予大洲の朝… これも美しい曲 いやあ、いいですねえ。



■38  なんとも静かな千代のテーマ(これがなんと未使用版!)、
     う〜〜〜〜ん、いいですね…やはり千代のテーマは最高の名曲…。


■39  シェエラザードの「若い王子と王女」はこのシリーズには必須。
     あの雄大な自然と寅の孤独のコントラスト!
     佐藤さん、よくぞよくぞよくぞ入れてくれました(TT)


■40. 41  リリーのテーマはやはりどこまでも哀しい。
     このハーモニカバージョンはさらに哀しい…。

   でも、リリーのテーマ 『馬の蹄バージョン』未使用版!これはいい!
   当たり前だがこれは新鮮でした。いやあおもしろい。最高!



★再び柴又でのマドンナとのクライマックスがある。


■42 ボタンのテーマが流れるぼたんの涙のシーン、思い出すなあ…(TT)、
     美しい涙だった。このシーンの演奏は静かないい感じだった。


■43 「人間はなぜ死ぬんでしょうね」あの曲はあまりにも悲しい…。そして名曲。
   綾さんのことを思い出し、ほんと悲しくちょっと沈んでしまう。
   山田監督一世一代の禁じ手。


■44 これもまた名曲「鞠子のテーマ」
    なんとも品格があります。
    鞠子さんがついに見つかったー!!あの盛り上がりよう(^^)


■45 ★★世界初登場!
    『寅次郎のマーチ!』最高。いいなあ口笛のマーチ。

  DISC1の見事な『隠し玉』!!

  聴けてよかったァ〜〜寅次郎のマーチ!(TT)

  しかし、「夢枕」のどのシーンで使おうとしたのかな?
  ちょっと知りたい気もする。

  私的には…、甲州の明野村で登と旅をするあのあたりかな…。
  結局あそこでは「四季 秋」になった。あのあたり本当は…。




★そしてまた旅に出る寅次郎だった…。


■48 クライマックスは坂東鶴八郎一座との再会!!日本晴れ!

  いやあ音楽聴いただけで涙が潤みそうになる。
  ちょっと哀しくて清らかで透明感のある名曲。

  よくぞ拾ってくれました。あの再会の曲。



小百合「先生ー!!」

トラック停車。

小百合「先生!私です。
    いつか四国でお会いした小百合です!」

寅「あー!、小百合ちゃん!
   雨の降った日の!」

小百合満面の笑みで「はい」


このクライマックスは初期の作品群のクライマックスでもある。

ラストは特に素晴らしい選曲。

佐藤さんの真骨頂。

間違いなくいなくこのCDの白眉。








DISC 2



オープニング曲特集から始まる。


■01 松竹富士山 本編未使用テイク!


■02 あの夢か…、切ない夢だったな。しっとりと悲しい曲。


■03 「桜咲く国」!!第21作「わが道を行く」第30作「花も嵐も〜」で
    やってましたねえ!SKDのみなみなさん。この音楽も必須!(^^)


■04 あの美作滝尾駅が映るオープニングはとても思い出深い。
    あれで最後なんだという想いがわいてくるあの音楽だった。


■05  「大道三軒軒下三寸借り受けましての渡世、私野中の一本杉でござんす」

    最高です。良くぞ入れてくれました。


■06  「あじさいの恋」のオープニングメインテーマの『間奏』、あのメロディを拾うなんて
     もう超マニアしか喜びません。でも最高に好き!
     これを選んでくれてありがとう(TT)


■07 また来ました「口笛のテーマ」!何度聴いてもさわやか。
    江戸川土手の風に吹かれているよう。
    私にとってあの口笛もまたこのシリーズのイメージ。
    07 と 19 と 39 それぞれいいですねえ!


DISC2は旅から旅が長く続いて行く。名曲ぞろい。


■08.09.10.11.12.13.14.15.16.

この見事な旅から旅の情景、映像が浮かび上がってくる。
これぞ山本直純さんの世界!
それにしても旅の先々での短い音楽がなんともいい…、

この2枚組みCDの中で最もイメージが広がるのがこれら旅先での短い音楽群。
このイメージ作りは大成功。
大きく見るとこれら旅の曲の一連の構成がこのCDのメインとも言える。


馬の蹄の聴こえる旅の音楽のあとで
播州龍野でのあの美しい音楽も二つとも入ってきてしみじみ。
その後すぐにあの塩田平の風景を思い起こさせる18作の音楽に入る
あの構成はまこと秀逸。素晴らしい運動神経、見事。

第24作のオカリナが入り

蓬莱橋のあの広がりのある淋しい音楽

そして明るいバロック調の広がりのある木曽路旅、そしてしだいにしっとりと緩やかに…。

う〜〜んこのあたりの構成は実に心憎い。




■17 「早苗のテーマ」可憐で哀しい人でした…。名曲だ。


■20 未使用版登場!メインテーマ!理屈ぬきでうれしい(^^)


■21. 22. 23.そしてまたここから旅が始まる

  紀州路、湯平温泉、京都鴨川…どれもこれもしっとりとした実にいい曲。

  特に三郎青年に縁のある湯平温泉での音楽は美しく印象的だった。


■24 「圭子のテーマ」これは地味だがいい曲だ。拾ってくれてうれしい…。


■25 25作の寅の飛行機を降りてバスに乗るまでのあの愉快極まりない名曲を
    載せて頂いて最高に幸せ。
    あれはいい!あれこそ寅。さすがに目が高い。


■26 来ました!そして未使用版!ウクレレによる新「リリーのテーマ」!、
    明るい曲なのになぜか胸が締め付けられます。
    ファンにとってこれはこたえられません(TT)
    ここで何度も繰り返し聴いてしまった。


■27 瀬戸内の海の静かな曲。そして…
    ふみさんとの瀬戸内での最初の出会いのちょっと物悲しい曲は
    彼女の素のさみしさが出ていて大好き。マンドリンか。
    そして次には今度はあの名曲「ふみのテーマ」!宝山寺の楽しい思い出が蘇る。


■30.31.32 

   実は私は第28作の愛子の優しいテーマと深みのある光枝さんのテーマは
   両方とも近年大好きになって来た。
   特に32(M-10)の光枝のテーマはまさに彼女にぴったり。
   まさしく名曲。何度聴いてもいい。あの秋月の夕暮れを思い出す。


■33  未使用版「寅次郎のバロック」!なんとこういうものもあったんだ!
     これもいい!
     「寅次郎のマーチ」と並んでサプライズだ。で、一応メインテーマ(^^;)


■34.35 「かがりのテーマ」はどこまでも哀しい。

       そしてあの「伊根の夜」…このあたりは静かに一人で聴きたい曲…。


■36(M-5) の寅の墓参りのシーン、これ実は大好きだ。
 何度も何度もあのシーンは繰り返して見てしまう。
 なぜか胸が熱くなる。
 あそこでひょう一郎さんに語りかける渥美さんの芝居は絶品。
 で、あのシーンで流れる音楽を聴くとあのシーンを思い浮かべるわけだ。
 

■39の それにしても口笛は上手い!


■40 私はは朋子さんが好きなので、M-21の「朋子のテーマ」を聴くと
    なんともせつないくやるせないのだ…(TT)


■41 出ました再度「千代のテーマ」(M-9)!しかもまたもや未使用版!
    2つのCDとも「千代のテーマ」が入っていて最高。
    もう名曲ですので2つとも入れなくてはなりません(^^;)
    両方入れていただいてよかった…。

    それにしてもこの41の千代のテーマが当初「甲州路」を孤独に旅する寅のBGMだったなんて
    びっくりだ。

   で結局は↓の42の「四季 秋」に落ち着いたというわけだろう。

   いろいろな試行錯誤があるものだ。


■42 「四季 秋 」 は哀しく印象的だった。第10作のメインテーマのひとつ。


■43 隆子さんのテーマも優しく穏やかな名曲。秀吉との短い出会いと別れ。

■42 久美子さんの異郷での悲しみと孤独をしっとりと表現。


■44 この「メインテーマ」(M−27)は大きな広がりがあり印象深い。いいですね…。


■46(M_14T2) スローテンポでゆったりとした瀬戸内の光が感じられる「葉子のテーマ」。
   こういうなにげないんだけど、実は名曲、って山本直純さんにはそれはもう多い。



この『寅次郎旅』もいよいよ大詰め、普遍的な曲が続き、

 ゆっくりと大団円と盛り上がっていく。




■47.48 「紅の花」で使われた全ての曲は寅さんのファンたちにとって特別な曲。

  このシリーズの終わり、リリーとの恋の結実、泉ちゃんと満男の恋の結実、
  そして渥美さんの最後の姿…、すべてが懐かしく、愛しく、哀しいです。
  第48作のこれらの曲はもう客観的には聴けません(TT)


■49 DISC1にも出てくるさくらをイメージさせる名曲。
   何百年先にもこの曲は残っているんだろうな…。


■50.51 そしてまた来ましたあの純情編のテーマ曲、
    それも2テイク!一つは未使用版。
    贅沢ですね、ほんと贅沢!。
    この曲は寅とさくらのメインテーマのようなもの。
    永遠のテーマ曲。


■52.53.54

 そしてラストはぼたんと寅と青観と!
 夏真っ盛りの播州龍野。
 広がりのある素晴らしいラストだ!!


DISC1同様、ハッピーエンドの名作名シーンで〆。



以上




最初聴いていった時に印象的だった曲を独り言のように書きなぐったメモだったのだが、
臨場感があるので、それらをほぼそのまま載せました。
あくまでも独り言ですので、意味不明&説明不足の部分はおき楽に読み流してください(^^;)

チャンチャン(^^)








【遠い旅の空から掲載記事画像


記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231217264378697_02/news/20080729-OYT8T00155.htm




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381

                                  







マドンナの寅への気持ち 整理箱


苦労人が惚れる寅次郎   
モテ率 3割4分1厘の男


2008年11月17日 寅次郎な日々 その381



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


いよ!待ってました『後家殺し!』

寅の夢で寅は時として大活躍するヒーローとなる。
特に時代劇の夢では最後に見栄を切った時に
「日本一!」「大統領!」「後家殺し!」と掛け声が入る。

この最後の『後家殺し!』は何度聞いても大笑いしてしまう。

後家さんとは、夫に死なれ、再婚をせずに独身でいる女性のこと。



その掛け声通り、実は寅は、このシリーズで、
夫に先立たれた6人の女性に惚れられるのである。
ちょっとそれぞれの作品を考察してみよう。




■夫に先立たれたマドンナで寅を好きになったひとたち




作品順に見ていくと




 第8作「寅次郎恋歌」でロークの「貴子さん」に心を寄り添われ、
  思慕の情があらわれ始めるのである。

 (貴子さんの夫は病気で亡くなっている)


寅への気持ちは
『恩人であり知人』だと思っているが、男性としても意識し始めている。



夫に死に別れ、息子を一人で育てている貴子さん、
慣れない土地で、懸命に喫茶店を始めるが、
金銭のトラブルなどがあり、
張りつめていた糸が切れそうになることも…、
寅の深い優しさにふと気持ちをゆだねてみたくなる、
そんな一瞬も確かにあの夜はあったのだ。


貴子「
ああ…いいなぁ旅って、私も今すぐにでも
   行っちゃいたいわ。こんなお店も何も
   かも捨てちゃって。ねぇ、寅さん。



寅「
…え…そうですね


                
   

貴子「寅さん、またいつか旅に行くの?

寅「
ええ、そりゃ、そうですね

貴子「
そう…、いつごろ?

寅「
いつごろでしょうか…。
 風に誘われる、とでも申しましょうか。
 ある日ふらっと出て行くんです



貴子「
羨ましいわ…、私も一緒について行きたいなぁ…


寅「
そうですかねぇ…、
 そんな羨ましがられるもんじゃねえんですけどね…









 第28作「紙風船」で、
  カラスの常のおかみさんの「光枝さん」にも心を寄り添われ、
  別れ際で、遂には微妙な言葉を投げかけられたのである。


(カラスのツネは病気で亡くなってしまった)



散々苦労をかけられた夫に死に別れ、
苦労しながらも東京で働くことにした光枝さんは、
夫が自分に残した奇妙な遺言に呆れ、憤慨しながらも、
どこかでその言葉を心のよりどころにもしていた。

そんな彼女の、隠された想いがにじみ出る
柴又駅での最後の別れだった。


寅への気持ちは
『恩人であり知人』だと自分では思っているが、男性としても意識し始めている。





柴又駅前


光枝さん、ちょっとためらいながら

光枝「…ねえ

寅「なんだい

光枝「寅さんが、見舞いに来てくれた時…、
    ウチの亭主変なこと言わなかった?


寅「…!ええ、え、え、なんだっけ?」とドギマギしてしまう寅。


光枝「息を引き取る三日か四日前なんだけどね、私にこんなこと言うんだよ。
  『もしオレが死んだら、寅の女房になれ』って…、
  寅さんにもそう話してあるからって…



                   


寅「ああ…あのことか…

光枝「

寅「

光枝さん「寅さん、約束したの?本気で


寅「ん…ほら、病人の言うことだからよォ…、
 ま、適当に相槌打ってたのよ


光枝「ほんとう?

寅「ああ…、ほんとだよ

光枝さん、小さく頷いて、



光枝「じゃあよかった…。寅さんが本気でそんなこと約束するはずないわね。
    ごめんね、失礼なこと言っちゃって。
    …私も腹が立ったけどね。
    まるで…犬か猫でも人にくれてやるような口きいちゃってさ…



寅「そりゃそうだよな…

光枝「ほんとに、最後までバカだったね、あの男…と淋しそうに下を向いて言う。

寅「ほんとうにバカだよなあ…と自分に言い聞かすように強調する寅だった。


光枝さん、ちょっと躊躇しながら下を向いたままで


光枝「安心した。寅さんの気持ち聞いて


                   



寅「オレは…別にそんなこと気にしちゃいねえから


光枝さん、どこか淋しげに小さく頷く。


                   


寅の方を見て、微笑み


光枝「じゃ、さよなら


                   


寅「うん、気をつけてな

光枝「うん


大人の秘めた想いが伝わるデリケートな会話と表情だった。










 第29作「あじさいの恋」で
  「かがりさん」に迫られ、別れに涙を見せ、
  そのあともどこまでも追いかけられる究極の設定となるのだ。

(かがりさんの夫は病気で亡くなっている)


 寅への気持ちは、『寅のことを男性としてしっかり好き』






丹後 伊根 船着場

かがりさんの横顔をシリアスに見つめる寅。
下を向いて何かを思っているかがりさん。

別れに際して、マドンナに対してのこういうシリアスな寅の顔は
他の物語では記憶にない。



出航の合図

かがり「寅さん…

寅「え…?

寅、戻ってかがりの元に近寄る。

かがりさん、寅をすがるように見つめて


かがり「もう、会えないのね…


寅、彼女の目の強さに圧倒されながら、


寅「いや…、ほら…風がな…、風がまた丹後の
 方に吹いてくることもあらあな…



            


かがりさん、うつろな目で首を振る。



            



じっとかがりを見つめる寅。


汽笛の音  プゥー!
動き出す船からかがりを見る寅。

寅を見つめ、そして下を向いてしまうかがりさん。


寅「元気でな!


汽笛 プゥーー!!


遠ざかる船から寅を見ているかがりさんが小さく見える。



真面目な顔で手を振る寅。
遠く小さくなってしまったかがりさんを見つめる寅。


              



いつまでも寅を見続けるかがりさんだった。












 第40作「サラダ記念日」で、
  小諸の「真知子さん」に胸の中で泣きつかれる。

(真知子さんの夫はなんと山で遭難して亡くなっている)


 寅への気持ちは、『寅のことを男性として好きになりはじめている』




終末期医療の問題、子育ての悩み、一人の女性としての悩み、
それらが、おばあちゃんの死によって堰を切ったように
真知子さんの上に覆いかぶさってきたその瞬間、
自分を大事に思ってくれる目の前の寅の胸に
つい、そっと顔をうずめて泣いてしまうのだった。





寅「疲れてるんだよ、ね、
  少し休んだらいいや、少し横になって



真知子「ありがとう



           


と、寅の胸に顔を埋め泣いてしまう真知子さん。


           


寅「…!!!


寅、どうしていいか分からず、
彼女の肩に手をやりそうになりながらも
ぎこちない動きになって帽子に手をやってしまう。


       



「旅立っていくのはいつも男にてかっこよすぎる背中見ている」









 第44作「寅次郎の告白」で、
  鳥取の「聖子さん」に、深夜密室で、甘〜く寄りかかられるのである。



 寅との結婚願望やや有り




聖子さんは、その昔、二人の男に同時に惹かれ、
風来坊の寅でなく、板前さんの方を選んで、
人生を失敗してしまったのだ。実はその板前さんは大変な女道楽で、
いつも泣かされていたと言う。
そんな彼も釣りに行った先の不慮の事故で亡くなってしまう。

そして一年…。

ひょっこり寅が現れる。



             




聖子さんは、昔の自分を思い出し、
今度こそ寅に寄り添おうと、決意するのだ。

そして、従業員をすべて帰し、満男たちを2階で寝かせ、
自分は、寅と一夜を共有しようと
お膳立てをした。この辺はさすがに老獪。
そんじょそこらのマドンナではない(^^;)
深夜、部屋を暗くして寅にべったり寄り添う聖子さん。
寅はタジタジだが必死で逃げようとはしていない。



聖子さんはこの長いシリーズのマドンナの中で
最も積極的に寅に迫った女性である。


これは珍しい展開になると思いきや…、
覗き見の満男が階段を踏み外して…(ーー;)

もし、あの時満男が、階段で覗き見していなければ、
あの二人はどうなったであろうか…。
それでも寅はジリジリと逃げたか?
それとも積極的な聖子さんに遂に身と運命を任せたか。

まあ、寅のことだから、やっぱりトホホな結末なのだろう。





               










 第48作「紅の花」の「リリー」。
 
 何度目かの結婚で夫に死なれ、
  またもや独りになったリリーの元を寅は訪れ、
  なんとなんと奄美で遂に暮らすのだ。


寅との結婚願望有り


最初は3ヶ月一緒に暮らし、
満男と泉ちゃんを東京に送った後もまた二人して奄美に戻り、
1ヶ月ほど暮らす。

もちろん、ちょっとまた喧嘩して、寅は旅立ってしまうが、
寅はまたしばらくするとリリーの元に帰ってくるだろう。

寅は長い人生の紆余曲折の末、
ようやく柴又へのとらうまを乗り越えて、
自分だけの心の置き場を見つけたようである。



               






帝釈天参道



リリー、寅を見つめる。


寅は、黙って立っている。





              



リリー「それじゃ、さよなら寅さん…


寅「……


リリー「元気でね


タクシーのドアが閉まり、エンジンがかかる。


沈んでいるリリー。



その時である。



反対側の後部座席ドアが開き、
なんと寅が乗り込んで来るではないか。


         


寅は、リリーの隣に座って腕を組む。



             




リリー、驚きながらも



             



リリー「あらあ?寅さんも乗るの?



寅、正面を向いたまま



寅「か弱い女を一人淋しく、
 旅立たせるわけにもいかないだろ




リリー目が輝いて



リリー「あらあ!嬉しい!と拍手する。



             



走り始めたいるタクシーの中で、
リリーは、静かに寅に尋ねる。






リリー「ねえ、寅さん、
 
  どこまで送っていただけるんですか?





             




寅「男が女を送るって場合にはな、

 その女の玄関まで送るってことよ






               



リリーは、信じられない寅の告白にも似た言葉に
心が打ち震えるのだった。

この言葉が車寅次郎が、その生涯で初めて口に出すことが出来た
愛の告白だったのである。

なんとも不器用な愛の告白だが、寅の万感の想いが詰まった
ある意味力強さすら感じれる言葉だった。




              



リリー「……!!



              





              



リリー「ほんと?

  あたしのウチまで来てくれるの?






              



リリー「……



              





寅、前を向いたまま座っている。





リリー「運転手さん、



         



 金町じゃなくて、


         





私のウチまで行って



             





そう言って、寅の肩に静かに顔を埋めるリリー。



幸せそうな表情。




寅は反応せず、ひたすら前を向いている。

これが、
生まれて初めて、最も愛する人に
告白をした男の素面の表情だ。





          



運転手「私の家じゃ分かんないよ



リリー「
私のウチはね


           



   加計呂麻島…



           





長い長い恋が成就したリリーの至福の表情で
この二人の静かなラブシーンは閉じられていく。







以上『後家殺し』の考察でした。


こうやって、たどっていくとやっぱり寅は苦労人にもてる。
みんなギリギリの大人ならではの会話や行動で見ごたえたっぷりの
カップル達である。
あの掛け声どおり寅は正真正銘の「後家殺し」だ(^^;)







さて実はここからが今回の本番。


ここで一気に全マドンナの寅への気持ちを考察してみよう。


上では『夫に先立たれたマドンナ』を見てきたが、
他にもまだ「後家さん」はいるのである。




ちなみに、「夫に先立たれたマドンナ」で
 寅に男性として惚れなかった人たちは以下の通り。



第3作「フーテンの寅」の志津さん、寅への気持ちは『よく働いてくれる番頭さん』


第13作「恋やつれ」の歌子ちゃん、寅への気持ちは『心優しい恩人でありとても大事な友人』


第19作「寅次郎と殿様」の鞠子さん、寅への気持ちは『心優しい恩人』


第24作「春の夢」の圭子さん、寅への気持ちは『心優しい知人』









■それ以外でもマドンナで「離婚している人」も結構いる。


第10作「夢枕」の千代さん、
 寅との結婚願望有り

第15作「相合い傘」のリリー、
寅との結婚願望有り

第18作「純情詩集」の綾さん、寅への気持ちは大切な友人だが、寅が自分を好きなことを察している

第20作「寅次郎頑張れ!」の藤子さん、寅への気持ちは『心優しい恩人』 神様のお導き

第22作「噂の寅次郎」の早苗さん、
寅のことを男性としても好きになり始めている

第25作「ハイビスカスの花」のリリー 
寅との結婚願望有り

第32作「口笛を吹く寅次郎」の朋子さん 寅との結婚願望有り

第38作「知床慕情」のりん子さん、
寅のことを男性としてしっかり好き

第43作「寅次郎の休日」の泉ちゃんのママの礼子さん、(事実上の離婚)寅への気持ちは『心優しい恩人』





■夫婦仲がギクシャクまたはこじれている人もいる。



第6作「純情編」の夕子さん、寅への気持ちは『心優しい知人』 寅に惚れられていることを知っている

第34作「真実一路」のふじ子さん 寅への気持ちは『心優しい恩人』

第42作「ぼくの伯父さん」の寿子(ひさこ)さん 
寅への気持ちは『心優しい知人』

第47作「拝啓車寅次郎様」の典子さん、寅への気持ちは『心優しい恩人』





■未婚だが幼少期から苦労してきている女性もいる。


第4作「新.男はつらいよ」の春子さん 寅への気持ちは『心優しい知人』

第7作「奮闘篇」の花子ちゃん 寅への気持ちは『心優しい恩人であり父親(お兄さん)のような存在』

第11作「忘れな草」当時のリリー 
寅のことを男性としてしっかり好き 

第17作「夕焼け小焼け」のぼたん 寅のことを男性としてしっかり好き

第26作「かもめ歌」のすみれちゃん 寅への気持ちは『心優しい恩人であり父親のような存在』

第27作「浪花の恋の寅次郎」のふみさん 寅のことを男性としてしっかり好き

第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」の風子 寅への気持ちは『心優しい恩人であり友人』

第37作「幸福の青い鳥」の美保さん 寅への気持ちは『心優しい恩人』

第46作「寅次郎の縁談」の葉子さん 寅のことを男性としてしっかり好きだが、大人としてわりきってもいる 








■それ以外の未婚の女性


第1作「男はつらいよ」の冬子さん 寅への気持ちは『心優しい年の少し離れた幼な友達

第2作「続.男はつらいよ」の夏子さん 寅への気持ちは『心優しい年の少し離れた幼な友達』母のような深い愛情を持っている

第5作「望郷篇」の節子さん 寅への気持ちは『心優しい友人であり従業員』

第9作「柴又慕情」の時の歌子ちゃん 寅への気持ちは『心優しい恩人であり大事な友人』

第12作「私の寅さん」のりつ子さん 寅への気持ちは『心優しい恩人であり友人でありパトロン』

第14作「子守唄」の京子さん  寅への気持ちは『心優しい知人』

第16作「葛飾立志編」の礼子さん 寅への気持ちは『心優しい知人』

第21作「わが道をゆく」の奈々子  寅への気持ちは『心優しいさくらのお兄さん』

第23作「翔んでる寅次郎」のひとみさん  寅への気持ちは『心優しい恩人であり大事な仲人』

第30作「花も嵐も寅次郎」の蛍子さん   寅への気持ちは『心優しい友人であり恩人』

第31作「旅と女と寅次郎」の京はるみさん  寅への気持ちは『心優しい友人であり恩人』

第35作「恋愛塾」の若菜さん  寅への気持ちは『心優しい恩人であり友人』

第36作「柴又より愛をこめて」の真知子さん  寅への気持ちは『心優しい知人』

第39作「寅次郎物語」の隆子さん  寅のことを男性としても好きになり始めている

第41作「心の旅路」の久美子さん 寅への気持ちは『心優しい友人』

第45作「寅次郎の青春」の蝶子さん
 寅のことを男性としてしっかり好き 





【超番外編】

スクリーンには登場しないが寅にとってあきらかにマドンナであり、
寅の初恋の人と思われる女性

第13作「恋やつれ」の温泉津の「絹代さん」寅への気持ちは『心優しい恩人であり知人』

第16作「葛飾立志編」で語られる山県県寒河江の「雪さん」
 寅への気持ちは『心優しい知人』







【マドンナの寅への気持ち 整理箱】


【作品順に並べると】  


第1作「男はつらいよ」の冬子さん 寅への気持ちは『心優しい年の少し離れた幼な友達

第2作「続.男はつらいよ」の夏子さん 寅への気持ちは『心優しい年の少し離れた幼な友達』
母なる愛を持っている

第3作「フーテンの寅」の志津さん、寅への気持ちは『よく働いてくれる親切な番頭さん』

第4作「新.男はつらいよ」の春子さん 寅への気持ちは『心優しい知人』

第5作「望郷篇」の節子さん 寅への気持ちは『心優しい大事な友人であり従業員』

第6作「純情編」の夕子さん、寅への気持ちは『心優しい知人、自分を好いてくれている人』

第7作「奮闘篇」の花子ちゃん 寅への気持ちは『心優しい恩人であり父親(お兄さん)のような存在』

第8作「寅次郎恋歌」の貴子さん 寅のことは恩人だが、男性としても若干意識し始めている

第9作「柴又慕情」の時の歌子ちゃん 寅への気持ちは『心優しい恩人であり大事な友人』

第10作「夢枕」の千代さん、 
寅と
のはっきりとした結婚願望有り

第11作「忘れな草」当時のリリー 寅のことを男性としてしっかり好き 

第12作「私の寅さん」のりつ子さん 
寅への気持ちは『心優しい恩人であり大事な友人でありパトロン』

第13作「恋やつれ」の歌子ちゃん、寅への気持ちは『心優しい大恩人でありとても大事な友人』

第14作「子守唄」の京子さん  
寅への気持ちは『心優しい知人』

第15作「相合い傘」のリリー、寅とのはっきりとした結婚願望有り

第16作「葛飾立志編」の礼子さん 
寅への気持ちは『心優しい知人』

第17作「夕焼け小焼け」のぼたん 寅のことを男性としてしっかり好き

第18作「純情詩集」の綾さん、
寅のことは『親しい友人』だが、寅が自分を好きなのを意識し始めている

第19作「寅次郎と殿様」の鞠子さん、寅への気持ちは『心優しい恩人』

第20作「寅次郎頑張れ!」の藤子さん、
寅への気持ちは『心優しい恩人』 神様のお導き

第21作「わが道をゆく」の奈々子  
寅への気持ちは『心優しい友人 さくらの兄』

第22作「噂の寅次郎」の早苗さん、
寅のことを男性としてもちょっと好きになり始めている

第23作「翔んでる寅次郎」のひとみさん 
 寅への気持ちは『心優しい恩人であり大事な仲人』

第24作「春の夢」の圭子さん、
寅への気持ちは『心優しい知人』

第25作「ハイビスカスの花」のリリー 寅とのはっきりとした結婚願望有り

第26作「かもめ歌」のすみれちゃん 寅への気持ちは『心優しい恩人であり父親のような存在』

第27作「浪花の恋の寅次郎」のふみさん 
寅のことを男性としてしっかり好き


第28作「紙風船」の光枝さん  寅への気持ちは『恩人であり知人』だが、男性としても意識の奥で感じ始めている。

第29作「あじさいの恋」のかがり 
『寅のことを男性としてしっかり好き』

第30作「花も嵐も寅次郎」の蛍子さん  寅への気持ちは『心優しい友人であり恩人』

第31作「旅と女と寅次郎」の京はるみさん 寅への気持ちは『心優しい友人であり恩人』

第32作「口笛を吹く寅次郎」の朋子さん 寅とのほのかな結婚願望有り

第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」の風子 寅への気持ちは『心優しい恩人であり大事な友人』

第34作「真実一路」のふじ子さん 
寅への気持ちは『心優しい恩人であり大切な人』

第35作「恋愛塾」の若菜さん  寅への気持ちは『心優しい恩人であり友人』

第36作「柴又より愛をこめて」の真知子さん  寅への気持ちは『心優しい知人』

第37作「幸福の青い鳥」の美保さん 寅への気持ちは『古くからの心優しい恩人』

第38作「知床慕情」のりん子さん、寅のことを男性としてかなり好きになり始めている

第39作「寅次郎物語」の隆子さん  寅のことを男性として好きになり始めている

第40作「サラダ記念日」の真知子さん 
寅のことを男性として好きになりはじめている

第41作「心の旅路」の久美子さん 寅への気持ちは『心優しい友人』

第42作「ぼくの伯父さん」の寿子(ひさこ)さん 寅への気持ちは『心優しい知人』

第43作「寅次郎の休日」の泉ちゃんのママの礼子さん 寅への気持ちは『心優しい恩人』

第44作「寅次郎の告白」の聖子さん 
昔恋心があった人、寅との結婚願望無きにしもあらず

第45作「寅次郎の青春」の蝶子さん
 寅のことを男性としてしっかり好き 

第46作「寅次郎の縁談」の葉子さん 
寅のことを男性として好きだが大人の割り切りもある 

第47作「拝啓車寅次郎様」の典子さん、
寅への気持ちは『心優しい恩人』


第48作「紅の花」のリリー
 寅とのはっきりとした結婚願望有り




以上からカウントすると



マドンナが寅に恋愛感情を持ったかどうか

48作品中 18勝 30敗  

勝率 3割7分5厘





ただし、リリー(4作品)と歌子ちゃん(2作品)が
それぞれ同一人物でダブっているので



全マドンナ44人であえてカウントすると

44人中 15勝29敗  

勝率 3割4分1厘




この中に
温泉津の絹代さんも入れるないといけないと思う方は

総マドンナ数が一人増えて、負けが一つ増える。

45人中  15勝30敗となる。




もちろん、これらの考察と結果はすべて全て私吉川孝昭の個人的な見解であることは言うまでもありません(^^)




このように、寅は大きく負け越しているが、上の事実をよく見てみると

寅を好きになったマドンナはなんと全員が
一度結婚したことがある人や
未婚だがとても悩み苦労してきた人たちだ。


やはり酸いも甘いも味わってきた苦労している女性が
同じく幼少期から人生の辛酸を舐めてきた苦労人でかつ、
人の哀しみがわかり深い愛情をかけることができる寅に、
男性として惹かれるのは当たり前のことなのだ。

やっぱり寅は大人の恋が似合う。渋い!










寅とマドンナ一覧表


【寅とマドンナの関係  一覧表 】 



もっと簡単に一気に見たい方のために一覧表にしてみました。↓

青い色は低い度数、赤くなっていくにつれ度数は高くなっていく。

マドンナがどんなに寅と親しくても男性として惚れているかどうかを基準として考えました。
たとえば、歌子ちゃんは寅を誰よりも大切に思っていますが、男性としてではなく、あくまでも親しい友人としてなので度数は低くなります。


作品名 マドンナ名 マドンナの寅へのホレ度 寅のマドンナへのホレ度  相性 総合点数 寅の痛手度
第1作「男はつらいよ」 冬子さん  ● 30   80  ● 50 160  キツイ
第2作「続.男はつらいよ」 夏子さん  ● 40   80   60 180  キツイ
第3作「フーテンの寅」 志津さん   10   70  ● 30 110  キツイが立ち直りも早い
第4作「新.男はつらいよ」 春子さん  ● 30   70   30 130  ヤヤキツイ
第5作「望郷篇」 節子さん   30   80   70 180  かなりキツイ
第6作「純情編」 夕子さん   20   70   40 130  ヤヤキツイ
第7作「奮闘編」 花子ちゃん   60   70   60 190  キツイ
第8作「寅次郎恋歌」 貴子さん   60   70   40 170  敵前逃亡ゆえのつらさ
第9作「柴又慕情」 歌子ちゃん   40   80   70 190  キツイ
第10作「寅次郎夢枕」 千代さん   90   80   90 260  敵前逃亡ゆえのつらさ
第11作「寅次郎忘れな草」 リリー   80   70   90 240  追い出してしまったつらさ
第12作「私の寅さん」 りつ子さん   40   80   60 180  キツイ
第13作「寅次郎恋やつれ」 歌子ちゃん  ● 50   80   80 210  せつなくヤヤキツイ
第14作「寅次郎子守唄」 京子さん   30   70   40 140  ヤヤキツイ
第15作「寅次郎相合い傘」 リリー  ● 90   80   100 270  敵前逃亡ゆえのつらさ
第16作「葛飾立志編」 礼子さん   30   70   40 140  ヤヤキツイ
第17作「寅次郎夕焼け小焼け」 ぼたん   80   70  ● 80 230  せつない&うれしい
第18作「寅次郎純情詩集」 綾さん   60   70   70 200  あまりにもつらく悲しい
第19作「寅次郎と殿様」 鞠子さん   30   70   40 140  キツイ
第20作「寅次郎頑張れ!」 藤子さん  ● 50   70   60 180  ヤヤキツイ
第21作「寅次郎わが道をゆく」 奈々子   40   70  ● 50 160  キツイ
第22作「噂の寅次郎」 早苗さん   60   70   60 190  ヤヤキツイ
第23作「翔んでる寅次郎」 ひとみさん   30  ● 50   40 120  ヤヤキツイが仲人もする
第24作「寅次郎春の夢」 圭子さん   20   70   40 130  ヤヤキツイ
第25作「寅次郎ハイビスカスの花」 リリー  ● 100  ● 90   100 290  せつない&至福のラスト
第26作「寅次郎かもめ歌」 すみれ   30  ● 50   40 120  ちょっとだけキツイ
第27作「浪花の恋の寅次郎」 ふみさん   80   80   80 240  キツイがラストで再会
第28作「寅次郎紙風船」 光枝さん   60   70   80 210  キツイ
第29作「寅次郎あじさいの恋」 かがりさん  ● 90   80   70 240  敵前逃亡に近いゆえのつらさ
第30作「花も嵐も寅次郎」 蛍子さん   30   60   40 130  ちょっとだけキツイ
第31作「旅と女と寅次郎」 はるみさん   20   60   30 110  ややキツイ
第32作「口笛を吹く寅次郎」 朋子さん  ● 90  ● 90   80 260  敵前逃亡ゆえのつらさ
第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」 風子  ● 50  ● 50   60 160  別れは後味が悪いがあとで祝福
第34作「寅次郎真実一郎」 ふじ子さん   40   60   40 140  ややキツイがほっともしている
第35作「寅次郎恋愛塾」 若菜さん   30   60   40 130  ちょっとだけキツイ
第36作「柴又より愛をこめて」 真知子さん   40   70   40 150  キツイ
第37作「幸福の青い鳥」 美保さん   30  ● 50   40 120  ちょっとだけキツイ
第38作「知床慕情」 りん子さん   70   70   70 210  敵前逃亡ゆえのつらさ
第39作「寅次郎物語」 隆子さん   60   60   60 180  ちょっとだけキツイ
第40作「寅次郎サラダ記念日」 真知子さん   60   70   60 190  敵前逃亡ゆえのつらさ
第41作「寅次郎心の旅路」 久美子さん   30   60  ● 50 140  ややキツイ
第42作「ぼくの伯父さん」 寿子さん   20  ● 50   40 110  ちょっとせつない
第43作「寅次郎心の休日」 礼子さん   30   60   30 120  ちょっと同情
第44作「寅次郎心の告白」 聖子さん   70   60   70 200  敵前逃亡ゆえのせつなさ
第45作「寅次郎心の青春」 蝶子さん   70   70   70 210  敵前逃亡ゆえのせつなさ
第46作「寅次郎の縁談」 葉子さん   70   70   70 210  敵前逃亡ゆえのせつなさ
第47作「拝啓車寅次郎様」 典子さん   30   60  ● 50 140  人妻ゆえに身を引く
第48作「寅次郎紅の花」 リリー  ● 90   80  ● 100 270 ● 恋の成就と心の置き場誕生
    
番外編(第16作葛飾立志編その2) 絹代さん   20   70  ● 50 140  キツイ
     


以上、もちろんこれは私、吉川孝昭の個人的な見解ですのであくまでもシャレで見てください(^^)









【遠い旅の空から掲載記事画像


なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231217264378697_02/news/20080729-OYT8T00155.htm




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『男はつらいよ』の中の『落語ネタ』



2008年11月8日 寅次郎な日々 その380



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


先日、落語の『牛ほめ』を聞いていたら、
『飴ふって痔固まる』というセリフが与太郎の口から出てきた。

私は、おお!なんと第14作「寅次郎子守唄」の京子さんがとらやで
言っていた駄ジャレではないか、と思い、なるほど
落語のネタから取ったものだったのかと、感慨を新たにしたわけだが、




                





そういえば内気な山田監督の幼少期はラジオで落語を聞いたり、
父親から買ってもらった落語の全集を読みふける毎日だったと聞く。

実際、後に好きが高じて山田監督は,創作落語
『真二つ(まっぷたつ)』「頓馬の使者」「目玉」「まむし」「雉子」を作っている。





もちろんこの「男はつらいよ」シリーズの数々の物語もよく見れば落語のネタで溢れている。
これはもうみんなが知っている当たり前の有名な話。

そもそも寅次郎のキャラがすでに落語の熊さん、八っつぁん、与太郎、若旦那…、そのものなのである。
人間のあらゆる業、生臭さ、弱さ、楽天性、を体現する寅は『落語』それ自体と言っても過言では無い。
そして山田監督はそれら全部を映画の中で肯定しているのだ。


実は私も結構落語が好きで、テレビはもちろんDVDやCDやインターネットでよく聞いている。

それでそのたびに「あ、これも男はつらいよ」に出てくるネタだ、とか、
逆に映画を見て「あ、これは落語のネタだ」と気づいてはニヤニヤ喜んでいるのだ。



そこで、今日は、私なりにこのシリーズの中の話で思いつく落語の噺やネタを
ちょっとつらつら書き綴ってみよう。


落語の噺をうろ覚えだったものは、一応落語の本やサイトなどでその内容を確認したので、
まあ、そんなに間違ってはいないと思うが、

いろいろ忘れているものもあるし、怠け者なので全てを考察したわけではない。
そこのところは暇つぶしでやっている遊びのサイトだということでご容赦願いたい(^^)



思い出すまま順不同で紹介します。



■まずなんと言ってもセリフがほぼそのまんまでてくるのが、


 第18作「純情詩集」

 落語たらちねからの新婚さんの旦那のセリフ。

 袴かなんか履いててね。小さい口でサクサクッと掻き込むね。
 焼き物がいいからチンチロリンってぇ、いい音がするよ。
 沢庵だって恥ずかしそうに前歯でもってポリポリッと齧りやがるねぇ
 ...サークサクの、ポーリポリのチンチロリンてぇやつだ


 ザークザクのバーリバリのガンガラガン

 サークサクの、ポーリポリのチンチロリン

 ザークザクのバーリバリのガンガラガン



 この落語の噺が柳生綾さんのお宅での食事風景にそのまま繋がっていく。


 寅「いやだったってこの箸がここにポンとあたるでしょう、

  チンチロリ〜ン

  おちょぼ口のを前歯で
  たくあんをポリポリポリポリ…

  チンチロリ〜〜ン

  ポリポリポリポリ…

  秋の虫が泣くようだもの…う〜〜〜ん」





                    秋の虫が鳴くようだもの
                





■上記の第18作「純情詩集」といえば、
 信州別所温泉での寅と坂東鶴八郎一座とのふれあいが印象的だが、

 この宴会費が払えなくて無銭飲食で居残ってしまう(この場合は警察署に入れられる)のは

 落語居残り佐平次(いのこりさへいじ)のアレンジ版だ。 
 みんなでわあわあ遊んだ後確信犯でお金が無いと居直り、宿で働くのである。

 この落語は、もっと昔、映画「幕末太陽傳」の原作でもあることは有名。



                



■同じように、第3作「フーテンの寅」での 湯の山温泉 もみじ荘の寅もまた結局、
この
居残り佐平次(いのこりさへいじ)のアレンジ版だ。 


                


ひょっとして、あの、第13作「恋やつれ」で、寅が温泉津で番頭さんやっていたのも、もとは
無銭飲食から始まった『居残り』だったのかもしれない…、なんて思うのである。





■寅のお得意芸「知ったかぶり&受け売り」もこれまた落語のネタそのものである。

第8作「恋歌」の「りんどうの花」「人間の暮らし」
第16作「葛飾立志編」の「己を知る」「子曰く…」、
第22作「噂の寅次郎」の「今昔物語」 に
代表されるような寅の「受け売り話」は、落語のスタンダードであり、話も数限りなくある。
ちょっと思いつくだけでも…

『道灌』 『青菜』『鶴』 『ちはやふる』『子ほめ』『天災』などなど。

中身をほとんど理解しないで上っ面を真似をするので
本家本元とちょっとずれたことを次々に言い、収拾がつかなくなり笑いを取るパターンだ。




                 





                 





■その次にすぐ浮かぶのが寅のいつもの「恋わずらい」。

寝ても覚めても好きなマドンナの顔が浮かぶというのは
このシリーズでよくある症状、


第6作「純情編」、第12作「私の寅さん」、などはその代表例、
また、
第10作「夢枕」の岡倉先生なども同じ症状。


このパターンは、落語ではいくつかこの手の有名な噺がある。

落語紺屋高尾(こんやたかお)』『崇徳院などがその代表例。

一目ぼれで、なにを見ても聞いてもその女性の顔に見え、寝込んでしまい、
まわりがおろおろしてしまうっていう噺だ。
まさにりつ子さんを思う寅であり、千代さんを思う岡倉先生である。




                




                





■またその崇徳院では、わずかなヒントを手がかりにその思い募ったマドンナを探すため、
 周りの者達がてんやわんやの大騒ぎになるが

 これは第19作「寅次郎と殿様」で鞠子さんを探す寅の姿でもある。
 不精な探し方も似ている。



                





■また落語の代表的な笑いとして「葬式」を茶化す噺が結構あるが、
 これも葬式大好きの寅としてこのシリーズに何作品も反映されている。



第5作「望郷篇」で、
寅は、おいちゃんが死んだと聞かされて、葬式の準備を万端にして
家に帰ると、おいちゃんはピンピンしている。
死んだと勘違いして次々に人がやって来る。

これは落語の近日息子そのものである。



                




おなじみ落語粗忽長屋で、
死んでもいないのに、みんなに言われて自分が死んだと勘違いする熊さんは、

第11作「忘れな草」冒頭、父親の法事の際の寅そのもの。




第14作「子守唄」で、
とらやの茶の間で自分の葬式を派手に演出し、身内から顰蹙を買う寅は

落語片棒に出てくる親父の葬式を派手に演出しようとし、父親から顰蹙を買う息子そのもの。



               




話し変わって、


第17作「夕焼け小焼け」で池ノ内青観をただのじじいと見て
みんなでいやがるが、後に高名な日本画家だとわかる、あの落差は


落語でも有名な噺三井の大黒で、
名工左甚五郎をそうとはしらず、好きなことをずけずけ言う生意気なヤツとみんなでバカにし、
後でその鋸の切れ味から名工だとわかり、驚き、尊敬する噺と似ている。

それより前の、江戸への道中の二階に逗留する酒飲み甚五郎の活躍を描いた話、『竹の水仙』なども青観そのもの。



                 




人まちがいのおかしさでいうと、

第25作『ハイビスカスの花』で沖縄で入院するリリーの元に駆けつけた寅が
 リリーと地元のしわくちゃおばあさんを間違えて慰めの言葉を投げかけるが、

 あれは子供と禿げじじいを間違うご存じ落語の『子ほめ』だ。



                 





変身して大騒動って言うパターンは、


第32作「口笛を吹く寅次郎」で寅が備中高梁の寺で泊めてもらったのを
 きっかけに坊主に急遽変身し、大活躍するが、あれも落語では有名な話。


 江戸っ子の二人連れが旅先で旅費が底をつき、寺へ泊めてもらうのをきっかけに坊主になる。
 しかし根がなまけもので、知識がないときているからみんなを煙に巻くことばかり。

 という落語の万金丹から来ているのだ。



                



同じく第32作でもう一つ、


第32作「口笛を吹く寅次郎」で、
 昔のおいちゃんとおばちゃんの
恋のなれ初めの話が寅の演出で語られるが、

 デートで雨に濡れた二人は駒形橋の叔父さんの家の二階で雨宿り、気を利かせた
 伯父さん夫婦のおかげで、
雷がなって抱きつく二人、それがきっかけで抱き合い、
 結ばれるという話。

 これは艶っぽい落語の宮戸川(みやとがわ)そのものだ。ほとんど筋が同じ。
 そういえばあの作品では現代版『宮戸川』を一道とひろみちゃんがとらやの二階で熱演していた。
 また、おいちゃんとおばちゃんも若き日の雷、キャー、を一階で再現していた((((^^;)




             




第5作も落語の話がたっぷりある。



■寅は第5作「望郷篇」などで、おばちゃんに、食事のことで「なんでもいいよ」と言いながらも
 おばちゃんにいろいろ細かい指示を出しながら結局はおかずを何品もねだるギャグがあるが、

 これなんかも落語の味噌蔵で、何もいらないと言いながらも番頭さんに
 細かいおかずの要求を出して呆れられる丁稚のアレンジバージョンだ。





■同じく第5作「望郷篇」で心を入れ替えて地道に働こうとする寅だが、
 お風呂屋さんはダメだという。
 それはサンスケになって美人の芸者の背中を流すこともこともあるからだと、
 勝手な妄想をどんどん描いていくが、


 これは落語湯屋番で風呂屋に勤めると、美人の芸者の客といい関係になると、
 自分の中で妄想を抱く若旦那と同じパターン。


  

                 



■また寅はこの時、さくらたちの就職の提案をことごとくいちゃもんをつけて
 断るが、こういう、なんでも自分勝手な理由をつけて断っていくのも

 落語小言幸兵衛の幸兵衛さんそのもの。
 誰が頼みに来てもなんだかんだと自分勝手な難癖をつけて店を貸そうとしないのだ。






もうひとつ面白いアレンジがあるのは、



第13作「恋やつれ」で寅が温泉津での顛末をとらやで語っていると
 タコ社長が温泉津ってどこだってきくので、
 おいちゃんが「島根県」
 社長「島根県っていうと…」
 寅「鳥取の向こうだ」
 社長「鳥取というと…」
 おいちゃん「島根のこっちだ…」




                 



 これは落語浮世根問(うきよねどい)の中で
 『地獄はどこにあるんですか』
 『極楽の隣だ』
 『極楽はどこに?』
 『地獄の隣だ』

 のアレンジ版。






最後に、



第29作「あじさいの恋」の夢で
 絵描きが襖に絵を描き、その絵のすずめが飛んだり戻ったりする話は

 落語『抜け雀』そのものだ。



                  



以上つらつらと書いてきたが、結構あるものだ。っていうか…
いやいや、まだまだこの手のものはあと十話くらいはあるはずだ。
もしありましたらメールをいただければ幸いです。








【遠い旅の空から掲載記事画像


なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231217264378697_02/news/20080729-OYT8T00155.htm







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379

                          
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新幹線に8回乗った寅次郎



2008年11月3日 寅次郎な日々 その379



この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。




久しぶりにテレビ版「男はつらいよ」を見たが、
そのファーストシーンを観てあらためてある感慨があった。

それはしょっぱなから寅が新幹線に乗って東京に戻ってきたことが
暗示されているからである。

降りてきた人の足は寅ではない。

しかし、あきらかに寅も乗っていたことを暗示しているカットなのである。




                   





これは山田監督の脚本なので、山田監督も承知の上だったのであろう。

寅は一般的なイメージとして早い乗り物には乗らない。
だから新幹線も飛行機も苦手なのだ。
山田監督自身も、「
寅は新幹線には乗らない」と言っていたインタビューを私は覚えている。


第46作「寅次郎の縁談」で博に言わせているように
「スピードが速すぎて目が回るからだ」


そう言えば博の父親のひょう一郎さんも第22作で新幹線を嫌がっていた。

博「
明日の汽車で、まっすぐ岡山に帰ります?じゃ、新幹線の切符僕が買います

ひょう一郎「いや、いい。歳をとるとな、速い乗り物に乗ってもしかたないんだ。別に用があるわけじゃないし

味わい深い言葉だ。この人の言葉はどれも生きている(−−)



              





ところで寅だが、このシリーズで
確実に新幹線に乗ったことがわかる作品が
2つある。



まずは、
第35作「寅次郎恋愛塾」の東北新幹線。

失踪した民夫を探しに若菜さんと寅と恩師の教授が東北新幹線に乗るのである。
寅が乗っている映像は無いが、
新幹線が走っている映像をわざわざしっかり入れているので確実。



              





2回目は
第46作「寅次郎の縁談」

就職活動をほっぽらかして瀬戸内にいる満男を連れ戻しにいく寅を
東京駅まで送ってとらやに戻ってきた博の証言から新幹線に乗ったことがわかる。

ホームで寅が新幹線は「
スピードが速すぎて目が回る」と急に嫌がりだし、
博と口げんかになったそうだ。

でも結局、「
岡山行きのひかり」に乗ったと博は言っていた。

寅がたった一人きりで新幹線に乗ったのはこの時だけ。




              



確実なのは上記2作品。





しかし実は…それ以外に新幹線に乗ったであろうことが
想像できる作品がたくさんあるのだ。





制作順に


第1作「男はつらいよ」

御前様と冬子さんが奈良から東京に戻る時に寅も一緒に帰ってくる。
病弱の冬子さんや御歳を召された御前様のことを考えれば
京都に出てから乗り継ぎ無しでしかも一番早く着く新幹線を使うだろうと思われる。



              





第2作「続.男はつらいよ」

今度は恩師の散歩先生と夏子さんが京都から東京に戻る時にも
散歩先生のためだけでなく
彼らは一緒に戻る傷心の寅のために乗り換え無しで早く着く新幹線を使ったのではないだろうか。



              




第13作「寅次郎恋やつれ」

寅が絹代さんとの結婚話で、さくらとタコ社長を連れて島根県の温泉津まで行った時、
京都からは、本編でも出てきたように山陰本線だが、
最初の東京から京都までは社長やさくらのことを考えると新幹線を使った可能性は高い。
実際、島根の温泉津に午後には着いている。あれだけはやく移動するためには
やはり京都までは新幹線しかないだろう。



            






第17作「寅次郎夕焼け小焼け」

龍野から東京に戻る時、寅は青観と一緒だった。
公費で来ている青観は新幹線を使った可能性がかなり強い。
それゆえ寅も同じということが考えられる。

ただ、この場合は青観は寅の身内ではないので、一緒に二人して東京に戻らなくてもいい。
寅だけのんびり在来線で日数をかけて戻った可能性も捨てきれない…。

でもまあ、面倒くさいし、運賃も向こう持ちなので、姫路から一緒に東京まで新幹線で帰った可能性はある。
青観も寅が気に入っているし、車内での話し相手が欲しいので寅に一緒に乗るように勧めた気がする。



             



と、まあこんな感じである。


このように旅の相手が老人の場合や病弱の場合
やはり寅も一緒に新幹線を使ったと考える方が自然だろう。





乗ったか乗らなかったか微妙な、ボーダーラインの作品としては



第43作「寅次郎の休日」

泉ちゃん親子とは別に、日田、天瀬温泉から満男と二人で東京に戻ってきた時に、
博多から東京駅まで新幹線を使ったのか、それとも寅の流儀に満男も付き合い、
のんびり急行あたりを乗り継いで戻ったのかはわからない。

ただ夜遅く帰って来たということは事実。

泉ちゃん親子と日田の天ヶ瀬で別れてから、
朝、日田を発ち、博多から新幹線を使って東京まで戻れば夜には柴又に着くのだ。
満男はすぐにも学校があるので二人して新幹線を使った可能性は大である。

実際に寅は着いたその夜に「
明日からきちんと学校へ行け」と説教をしていた
とさくらが御前様に証言しているので、やはり満男のために一番早く着く新幹線を使ったと思われる。
お金もこの場合は事前にさくらたちから貰っているはずだ。



             



そうなると今までだけで
すでに合計は7作品7回新幹線に乗っていることになる。




一人旅の時や、ポンシュウなどのテキヤ仲間と旅から旅の時は、
間違っても新幹線や飛行機など使うわけが無いが、
堅気の忙しい人や老人と一緒の場合は
寅は平気で彼らに合わせるのである。




しかし、体力の無い子供と旅をしているにもかかわらず
ひょっとして新幹線を使っていない可能性が捨てきれない作品が実は2つある。


第14作「寅次郎子守唄」
の時の赤ん坊を背負った寅。
赤ん坊がいるので、柴又のとらやまで佐賀県から直行したと思われる発言がある↓。

九州から上野の駅までずっと泣きっ通しでよ。ちょっと肩凝っちゃった。
下ろしてくれ、下ろしてくれよ


これだけ聞くと、博多から新幹線に乗ってダイレクトに東京まで行き、そこから上野まで行ったと、とれる。

しかし…宿では伸びていなかった無精髭がそうとうに伸びている。体もバテバテだ。


              




これらから判断して、寅は博多から東京駅にダイレクトに着く新幹線ではなく、
在来線を使って時間をかけてやって来た可能性がどうしても否定しきれない。
新幹線に乗るお金もこの時は無いのかもしれない…。これは微妙である。

この時は、やはり寅の疲れ果てた視覚的な印象や無精髭がどうも気になる。
いつもの金欠ゆえ、新幹線には乗っていない気がする…。



              




もうひとつは、
第39作「寅次郎物語」

この作品では、みんなに沢山餞別をもらって、秀吉と一緒におふでさんを探すべくまずは和歌山に向かっている。
当然最初は餞別のお金もあるし、子供連れなので東京駅から大阪までは新幹線を利用したと思われるが、
ちょっと気になるのは、柴又を出でたのがあきらかに午前中なのに、
環状線を乗り継いで大阪の天王寺に着いたのが夕方遅くなのである。
これはどういうことか…。新幹線ですんなり行けばどんなに遅くとも午後2時〜3時ごろには大阪に着いているはず。
どうしてあんな夕方遅くになってしまったんだろう…。
ひょっとして、東海道をいつものように在来線を乗り継いで大阪まで行ったのだろうか…。

これは微妙…である。

それでもこちらのほうは、餞別のお金をかなり持っていることや、
彼らの見た目や、急がなければならない事情を考えると

新幹線の確立が高い
と思われる。

まあ大阪でうろうろしていたのと
派出所で長時間質問攻めにあっていたのだろう(^^;)

そうなるとこれまでの考察では
合計8作品8回新幹線に乗ったことになる。

もし、乗ったかどうかが微妙な↑の第14作も入れると9作品9回になる。



               この日差しはあきらかに午前中の日差し
               



それ以外に、もうひとつ、

可能性は低いが、
第41作「寅次郎心の旅路」で、春ごろに坂口兵馬を助けた寅は、兵馬に腰ぎんちゃくのように
付きまとわれるが、ひょっとしてあのあと兵間は寅にくっつくようにして、
二人は新幹線で東京に帰ったかもしれない…。
もっとも寅がとらやに帰ってくるのはそれからずいぶん日にちが経った初夏だったので、
寅だけ新幹線に乗らずに東北のどこかでとりあえず一旦別れた可能性も高い。

などなど…まだまだ探せばあるのだ。




まだ新幹線に乗ってそうな作品がありましたらぜひメールを下さい!
お願いいたします(^^)




それに対して同じように遠くから人を連れて東京に戻ってきても
第26作「かもめ歌」のように元気そうな田舎娘のすみれちゃんだと
特急を使わず、おそらく、夜行の急行あたりにつき合わせていそうである。
もっとも東北新幹線は1982年にようやく盛岡まで開通なので、すみれちゃんのころは
まだないのであるが(^^;)








【おまけ】


ちなみに寅は早い乗り物が嫌いなわりに
『飛行機』には新幹線以上に何度も乗っているのだ。

なんと
10回も乗っているのだ!

これは以前、
寅次郎な日々その10(2005年11月末)にもしっかり長く書いた。

簡単に再現すると↓


@ 第25作「ハイビスカスの花」の『羽田発那覇行き』片道1回
  (これは誰でも知っている)



A 第34作「真実一路」の「羽田発鹿児島行き」でまず1回。 ふじ子さんが飛行機のチケットのことを、
  電話で言っていた。鹿児島空港に飛行機が着くシーンもあり。帰りもふじ子さんが疲れているので
   当然飛行機だと思われるので 『鹿児島発羽田行き』も乗って往復で合計2回
  (実はこの作品が結構忘れがちなんだよね)



B 第41作「心の旅路」ではKLMで、北極圏回りオランダ経由ウィーン行き『成田発スキポール空港行き』1回、
  ここでオランダのスキポール空港で乗り換えて 『スキポール空港発ウイーン行き』1回、
  (寅はスキポール空港内で乗り換え時の待ち時間にさくらに国際電話している)

  帰りの便は同じく『ウイーン発スキポール空港経由』1回 同じく乗り換えて
  『スキポール空港発成田行き』1回  で、往復&乗り換えで合計4回
 
  (注意 )私の経験上、飛行機会社がオランダのKLMなので必ず往復とも自分の国の空港には寄る。
  (この時のそれぞれの乗換え、特に帰りの時が忘れがちなんだな。)



B 第45作 蝶子さんが「飛行場まで送る」と言っている「寅次郎の青春」の『宮崎発羽田行き』の片道1回
  (これも忘れがち)


C 第48作「紅の花」の『奄美発羽田行き』と『羽田発奄美行き』の往復で合計2回
 (結構これは覚えている人が多い)

 (注意)奄美と羽田は直行便があるので乗り換えはなし。



これで第25作は1回。 第34作は2回。 第41作は4回。 第45作は1回。
第48作は2回。これで計10回となる(^^;)ゝ


「真実一路」「寅次郎の青春」が飛行機に乗っていることをみんな忘れがちなのと。
それと「心の旅路」での往復のスキポール空港での乗り換えのことあたりが忘れがち。



              
 ウイーン行きではしゃあしゃあと乗り換えもしていた。
              





まあ、ということで、寅は意外にも第25作で乗ってからは飛行機にはそんなにアレルギーがなくなったようである。
だいたい、第4作「新.男はつらいよ」でハワイに平気で飛行機に乗って行こうとしていたではないか。

また、その後もハワイへは第41作で万車券を取った時にパスポートを用意してマジで行こうとしていたらしい。
イッセー尾形さん扮する旅行代理店の男がそう言っていた。

ちなみにレギュラーでは社長の娘あけみが唯一ハワイに行った(新婚旅行)。



で、結論は、
第25作がどちらかというと例外で、
他の作品では寅は飛行機などなにも嫌がっていなかったということになる(^^)


このように10回も飛行機に乗っているとは普通は誰も気づかないのである。
新幹線を上回る回数だ。


ちなみに寅の『夢』のシーンもあわせると寅が乗った『空を飛ぶ乗り物』は、
あと2つ増えるのだがお分かりになりますか?皆さん。

あ、そんなの簡単ですか。失礼しました〜〜〜(((^^;)








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なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231217264378697_02/news/20080729-OYT8T00155.htm







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第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」  ダイジェスト版


2008年10月27日 寅次郎な日々 その378


この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


久しぶりに、ダイジェスト版をアップします。

第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」です。





     



第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」  ダイジェスト版


哀しい恋に生きる風子の気概    
霧の中に繰り広げられる淋しい北国の物語  


この第33作『夜霧にむせぶ寅次郎』は、全体を夜霧が漂っているようにどんよりと薄暗い。

物語がいつまでたってもなかなか弾まないのだ。


でも、なんか私にとってはどうにも捨てがたい魅力があるから不思議だ。

最果ての大地、薄暗い霧の中でうごめく人々の孤独と哀しみが
見え隠れして、独特な趣がある。
山田監督の違った側面を垣間見る思いがする。



             




この作品では、佐藤B作さん、美保純さんが絶品だ。
この二人のコントラストがすばらしく、この薄暗いグレーな物語に見事なアクセントをつけている。
この後あけみは第39作まで出演し、この映画に涼やかな風を送り続けることになる。



             



ただこの作品、惜しむらくは、あのラストの着地。

予定調和もあそこまで簡単にというか、説明的に済まされると、
私にはきつい。

シリーズ後期の作品になってくると、このような説明的な描写が若干増えてくる。


風子にはあのまま「不幸になってしまう哀しい恋」を貫いて欲しかったなんて思ってしまう。
そういう行き場の無いものに殉じてしまう生き様がこのシリーズにあっていいとも思う。

それはそれで、そのような一途な生き様は私の人生に大きな影響を与えてくれたに違いないのだ。



             




とはいえ、第33作の全体に流れているあの淋しい空気はやっぱり嫌いじゃない。
なんだか変に居心地がいいのだ。

私もやはり風子や寅と同じ流れ者ゆえ、あの淋しい世界に棲む者としての共感があるのだろう。




それでは本編 ダイジェスト版をどうぞ



@満男への入学祝と登との再会



今回も夢から。


               



濃い夜霧の中、寅がトレントコートを着て波止場に立っている。



『第三の男』の音楽が流れる。

『第三の男』ではアントン・カラスがツィターを弾いていた。


               


この夢にはナレーションにもあるように、
さくらをはじめとらやの人達はみんな自ら命を絶ってしまって、
それゆえ出演していないという珍しくも凄まじく暗い設定だ。

第17作でもこのような恐い夢があったが、こちらのほうがより一層暗い。

この映画を象徴するような暗さ。




その元凶であるボスに復讐をする寅次郎だった。


ナレーション「男は復讐を決意した

汽笛 ブォ〜〜

今回はマドンナが夢に出ている。

マドンナが夢に出てくるのは、第27作「浪花の恋の〜」第28作「紙風船」とこの第33作だ。
ただし、夢にマドンナの写真だけが出てくるのも入れると第32作「口笛を〜」もだ。

酒場でマリー(風子)が自分の持ち歌「
千年接吻」を歌っている。

マリー「
♪お祭り〜、気分で女にされたい、ああ、素肌のムードで女にされたら、
    ああ、お祭り〜気分で、男にして、あ、げ、る!♪


ライトを当てる工場の中村君(^^;)この中村君、この作品では『松田』君になっている。
再婚して婿養子になったのかな(^^;)



               


タコ社長も源ちゃんもボスに気を使って怯えている。


歌を歌い終えてボスが座っている席へ戻っていく風子。
ボスはトニー役の『渡瀬恒彦さん』


ボスの横には工場のゆかりちゃん。

ゆかりちゃんは、第25作「ハイビスカスの花」で
リリーがラストで着ていた黄色いドレスを着ている。



               


そこへ復讐を遂げるため寅が入ってくる。


汽笛 ブォ〜〜〜

酒場の空気が一変し、静まりかえる。


第三の男のテーマ



風子、寅に気づき、真っ青になる。

寅、カウンターにやって来る。

タコ社長「寅さん、許してくれ、オレには女房こどもがいるんだ」と震えている。


風子ボスが止めるのを振り切って寅の元に走ってくる。

風子「あんた!生きてたの!殺されたんじゃなかったの!?


               


寅、ボスに向かって

寅「兄さん、へまな殺し屋よこしてくれたな



ここからはちょっとした日活アクション映画(^^;)

追い詰められたボスは手下どもを使って寅をこの場で消そうとするが、
寅は強い強い、ピストルも使わずに次々にかかってくる手下どもを次々に倒していき、
あっというまにボス以外の全てをやっつけてしまう。


               


店内が静まりかえる。


隠れていたボスは2階の階段からピストルで寅を狙う。

気づいたマリー(風子)は

風子「危ない!!」と寅に抱きつく。

ピストルの音がしてマリー(風子)は寅の身代わりに撃たれてしまう。

マリー「ああ!
寅「あ!!


               


タコ社長すかさず源ちゃんから預かったピストルをカウンターに置き、寅に渡す。

寅、ピストルをボスに向け撃つ。

ボス「うわ!!」

階段を転げて下に落ちるボス。



シリアスな重苦しい曲が流れて



ベートーヴェン 「英雄」 第2楽章




寅は「マリー!

と呼びかけながらマリーを抱き起こす。

寅「マリィー

マリー、虫の息で

マリー「わたしのこと…赦してくれる?…

静かに頷く寅。

マリー、最後に微笑みながら

マリー「うれしい…」と目をつぶって死んでいく。


               


寅「マリィー

寅「

寅「思えば、哀れな女であった…

寅はマリーを抱いて濃い霧の中に消えていく。

ナレーション
復讐を終えた男の心に残ったものは、むなしさだけだあった。
男にとって復讐とはなんだったのか、
その悲しみは濃い霧のように男の心をつつむのであった




霧にむせている寅。

夢の『霧』から現実の『煙』に変わっていく。


寅「コホ コホ


               



岩手県 紫波郡紫波町

願圓寺

鐘撞堂で寝ている寅。




この寺の名前と場所は、いつもお世話になっている映画評論家のS氏より、
メールをいただきわかりました。

彼もこの場所がわからず、なんとなんと、あの松竹の元助監督さんであった五十嵐敬司さんに
直接電話で聞かれたのだ!なんとも凄い情熱だ!お仕事ならではの繋がりであろう。

五十嵐さんはロケハンのチーフなのでさすがに覚えていらっしゃるのだ。
これはまこと強い味方である。

S氏は、五十嵐さんからの情報を元に現地に電話をされ、ピンポイントのお寺の名前までたどり着かれたのだ。

下に記してある「新山神社」は、名前は私もわかっていたが、場所が最後の決め手に欠ける感じで、
記述できないままになっていたが、この住所も同じような方法でピンポイントで探し出されたのだった。





近くのおばあちゃんの焚く焚き火の煙でむせて夢から起きる寅。

寅、起き上がって、文句を言いながら、

寅「タヌキだったらケツから尻尾が出ちゃうとこだよ、こりゃ

おばあちゃん、大笑い。

寅「あ〜あ」と立ち上がり

寅「コホコホ…むせちゃったよ」と、目をぱちくり。


タイトル

はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎


               


バックに南部富士で有名な岩手山を望む、高台。


ゆったりと流れる北上川


               



口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
   帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
   人呼んでフーテンの寅と発します。


岩手山が見える田舎道を歩いている寅。


小さな踏切空眺める堂々たる岩手山。
現在のJR花輪線の大更-東大更間から見える風景。

住所としては岩手県八幡平市大更



テーラーを運転するおばさんに挨拶し、歩いていく寅。


   ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
   いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
   奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
   今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪






岩手県 紫波郡紫波町

新山神社・里宮


おじいさんのハッピに『新山神社』の文字。



北上鬼剣舞を踊る地元の人たち。

                                              現在の新山神社里宮

                     




   どぶに落ちても根のあるヤツは  いつかは蓮の花と咲く
   意地は張っても心の中じゃ
   泣いているんだ兄さんは
   目方で男が売れるなら  こんな苦労も
   こんな苦労も かけまいに かけまいに♪




その近くで子供たちが野球をしている。
やってきた寅は、鬼剣舞のお面を無断で取り、
アンパイヤのマスクにしてしまう。というギャグ。


みんなに気づかれ大騒ぎ。


               




柴又  帝釈天 二天門前 


さくらが自転車で題経寺の二天門にやってくる。


さくら「先日は満男に入学祝をどうもありがとうございました


               


どうやらブラバンに入って練習ばかりしているらしい。

満男もようやく中学校に入ったんだね。
彼は何の因果か小学校を8年もやってしまっている(TT)
(実は中村はやと君との年齢差のためにこうなってしまったのだ)



御前様「子供の成長は早いもんだね

さくらが行ってしまったあと、

独り言のように

御前様「もっとも、いつまでもたっても成長しないのが一人おるが…

と寅を思い出す。

後ろで源ちゃんが「ヒヒヒ」笑い。

御前様怒って

御前様「お前もだ!他人事だと思うな!

源ちゃん、ふてくされて御前様の後ろから、後頭部にチョビッと水をかける。


               


御前様、後頭部に手を当てて「??」

笠さんと蛾次郎さんのミニコントでした(^^)





とらや  店


さくらが帰ってくると、フルートの音色。

微妙に口紅が濃いさくらだった(^^;)

台所で満男がフルートを吹いている。

聞いてみると、どうやら友人のまっちゃんのお兄さんから
1万円&月賦で買ったらしいのだ。


               


さくらは半分あきれ返っている。

まあ満男もそういうことを自分で考えて、判断し、行動に移す年頃になったというわけだ。


参道をフルートを吹きながら歩く満男。 

源ちゃんそれを見ながら巻き紙のおもちゃで『ぴゅるるるる』と遊んでいる。
この対比は笑えます(^^;)



               


どうやら満男の中学校は『私服OK』らしい。東京23区の公立では珍しい。





とらや 台所

一方、タコ社長がやってきて娘のあけみの『結納』がさっき終ったばかりだと報告に来たのだ。

あけみは第6作「純情編」の時の映像を見てわかるように4人兄弟の2番目。
末っ子も女の子だが、性格からしてなんとなく長女さんのような気がする。



             





そしてやって来ましたあけみ!本編初登場!

いきなりヤンチャな感じで濃ゆいキャラを演じきる美保純さんは見事(^^)

タコ社長「ほんとうに『ふつつか』だもんな、おまえは

あけみ「どういう意味?『ふつつか』って?

                                            昔のあけみちゃん。
                    


みんな「ハハハ

さくら「謙遜してるのよ、娘のこと

あけみ「『謙遜』って?
   
みんな大笑い「ハハハ!

あけみいきなりの2連発ボケでした(((^^;)

タコ社長、あけみが行ってしまったあとで

社長「正直言ってね、あんなの貰うやつの気が知れねえよ、ハハハ
おばちゃん「ひどい親父さんだねえ
社長「しかし、これで、この界隈の独り者はたいがい片付いたんじゃないのか
おいちゃん「ああ
ええ

おいちゃん、はっと寅を思い出す。
博もさくらも、寅を思い出す。

社長「どうした?
博「兄さんがいますよ
社長嬉しそうに
社長「そうか、寅さんがいたか、いけねえ、忘れてたよ、ハハハ

店でおばちゃんの声

寅ちゃんだ!

みんな、「え!?」と、店を見る。

なんのことはない、
寅ではなく寅からの小包が届いていたのだ。


中を開けてみると…

さくら「あら!地球儀!

中身は、なんと満男の中学校入学祝のミニ地球儀!


               


おばちゃんたち、寅が満男のこと覚えていてくれて、大喜び。

おばちゃん笑いながら「なんだかおもちゃみたいだねえ

博「いや、兄さんなりに、ちゃんと考えたんでしょう。
 つまり世界的な視野を持った人間になれと…


みんな「なるほど…

寅は、な〜〜〜んにも考えてませんよ、たぶん。
どーせ、バイネタの残りだろ、いつものように。


さくら「岩手県、盛岡にて…、盛岡にいるんだわ

ミニ地球儀で盛岡を探す博、

コトンと外れて上がり口の床に落っこちる『地球』

おばちゃん「あら、地球が落っこちちゃった、ハハハ

みんな大笑い。





東北 岩手県  盛岡城址近く


盛岡  さくら祭り


郷土芸能鹿踊り(ししおどり)が映る。


               


娘を肩車で肩に乗せて、見物しているのはなんと舎弟の登!
なんと第10作「夢枕」以来の登場!超久しぶり!



寅の啖呵売の声に気づく登。

びっくりして近寄ってくる。

寅の声「色が黒くて食いつきたいが
   あたしゃ入れ歯で歯がたたないよときた!へへへ、
   さあ!今日は盛岡のお祭りだ!ね!
   もうけなんかいらない!1000円でどうだ!


と、啖呵売。

小さな子供が買う。


登、寅の前にたつ。

寅「はい、お父さん、お嬢ちゃんにどれ?大きいのにするか?え!

寅「…!!

登、懐かしさいっぱい。
万感の想いをこめて寅を見つめている。


               


寅、そっと

寅「登…

寅、指を指して、

寅「登じゃねえか!!


               


登、声を震わせ

登「兄貴…


二人で手を取りあって「懐かしいなあ…」と懐かしむ。


遠くで岩手民謡『南部牛追い唄』が流れている。


本当は、登は、第1作では青森の八戸出身ということになっていた。


登「まだやってんのかい、こんなことと、地球儀を寅の胸に当てる。

寅「やってるよ、ハハハ

登「ハハハ!

、地球儀を持って

寅「
こんなの売ってんだ!ハハハ


               


寅、娘さんを見て

寅「これ、おまえの娘かい

頷く登。


寅「
へえ、お前も地道に暮らしてるんだなあ…と感慨深かげ。




盛岡  上の橋 


バイが終ったあと中津川が流れる『上の橋』のほとりにある
登の食堂兼今川焼き屋さんに案内される寅。

奥さんが店をきりもりしている。


第5作「望郷編
の話題で出てくる「親父さん」も一緒に住んでいる。


                 


登は奥さんに寅を紹介し、店を閉めさせ、御馳走や酒を買いに行かせようとするが、
寅は、奥さんを制し、そんな必要は無いと言う。



寅「おかみさん、そんなことしちゃいけねえ。オレはごちそう食いにきたんじゃねえんだ

そして登をちょっと呼び寄せて

寅「オレとおまえが兄弟分だったことは昔のことだ。


静かに尺八でメインテーマが流れる。


寅「
今はお前は堅気の商人だぞ。オレは股旅烏の渡世人だ。
 オレがオレの家に訪ねて来ても、私は今堅気の身分です。
 あんたとは口もききたくありませんから帰ってください。
 お前にそう言われてもオレは『そうですか、すいませんでした』
 そう言って引き取らなきゃならねえんだぞ。

 それをなんだおめえ、
 酒を買えの、魚を買えの、店を閉めろの、
 そんな気持ちを持ってこれから長い間、堅気の商売ができるか


女子高生のグループが入ってくる。

寅「ほら、お客さんだ
寅「顔観たから、オレはもう用はすんだ。先に帰ら。な

と、登の腕をポンと叩いて店を出て行く。


               


食堂の向こうに「釣具店」これは上野釣具店さんで、2008年の今も残っている。


忘れ物を持って追いかけてくる奥さん。

かつての松竹売り出し女優さんである 
中川加奈さん!




でっかいでっかい野郎」では
なんと準主役で渥美さんがあこがれるマドンナだった。↓









寅は、それは手みやげ物だと言ってあらためて奥さんに渡す。

寅「おかみさん、登のことよろしくお願いします

いいセリフだね、寅の登に対する想いが心に染み透るよ。



               


歩いて去っていく寅の背中に向かってお辞儀をする奥さん。


奥さん「道中ご無事に、親分さん


はっと立ち止まり、

ちょっとはにかみながら


寅「親分だなんて、…そんな立派なもんじゃ、
 ま、ごめんなすって
とお辞儀。


               


粋に背広をひっかけて歩いていく。




この第33作で最も美しく心が震えるシーンだった。






とらや 店


電話口でしゃべっているおばちゃん。

おばちゃんおどろいて

おばちゃん「寅ちゃん!?まあ、あんたどこにいるの?八戸
     で、いつ帰ってくんだい?
     北海道?これから?
     まあ…たいへんだねえ
     うん、変わりはないよ。
     あ、そうだ、社長さんとこのあけみちゃんがね、
     縁談がまとまったんだよ。


と言いながら早く帰って来いと催促するおばちゃんだった。


               


一方、社長は縁談が決まったのに、結婚式の費用のことで頭を痛めて
首くくって死にたいと嘆いているのだった。




               






A釧路、フーテンの風子との出会い



北海道  釧路


国鉄釧路駅



               



コインロッカーに服やカバンを入れて仕事を探す風子がいた。


               




街中の散髪屋  ヒロシマ


寅が髪の毛を切ってもらっている。

人見明さん扮する床屋の主人に向かって風子は自分を雇って欲しいと頼むが…、


               


店の主人は、組合を通さないととか、保証人がいないと、などと言って
体よく断る。


風子しかたなく店を出て行く。


寅「時々来るのかい?ああいうのふらっと

主人「うん、たまにはね、フフ。大体が問題がある子だ

寅「なかなかきれいな娘だったじゃないか…。
  若い男の客が増えるだろ、ああいう娘置いとくと


主人「あの手の子はね、客とトラブル起こすんだよ

寅「あ、そうかねえ

主人「うん、それに、ウチの母ちゃんやきもち妬くんだよ、
   ヒヒヒヒあれで、ウハハハハ、妬く妬く、ウハハハ


人見さん悪乗り((^^;)

寅、気味悪がって、たじたじ(^^;)

奥さんはたぶん第37作「幸福の青い鳥」での上海軒のおかみさん。


               


人見さんと渥美さんのミニコントでした。

人見さんは、こういうふにゃふにゃ役をやらせると右に出る人はいない。







幣舞橋 ほとり    ぬさまい河畔公園



橋の下の公園ベンチでどうしたものかと考えている風子を
橋から見つけ、近づいてくる寅。



寅「何見てんだ?

風子「…、空見てんの


寅「あ、いい天気だもんな


寅、ゆっくり横に座る。


風子「フフ」と、ちょっと笑う」

風子「景気悪いね、どこ行っても

寅「まったくだなあ!渥美さん、このセリフのタイミングが実に上手い!



タバコを下に捨てる風子 だめだよ、そんなところに捨てちゃ(−−;)
第6作の夕子さんの旦那みたいだ。



寅「北海道育ちか

風子「そうよ

頷く寅。

寅「名前なんてんだ?

風子「風の子って書いて風子、
  人呼んでフーテンの風子、フフフ


寅、はっと風子を見て

寅「ほーう、そうかい!

頷く風子。

寅「いや、オレも人にフーテンの寅って言われてんだよ

風子「あれ、ほんとォ

おーと頷く寅。


               



風子のテーマが流れる。


風子「商売なに?

寅、照れながら、

寅「オレ?フフフ、たいしたことやってないよ




実は、これらの一連の会話は第11作「忘れな草」のアレンジ。
場所も網走と釧路で両方とも北海道の最果て。

ちょっと再現してみよう。


リリー「さっぱり売れないじゃないか
寅、ふと声のほうを見る。
リリーが橋にもたれて赤い包みをいじりながら人懐っこく寅の方を見て微笑んでいる。


                


寅「フッ。…不景気だからな…お互い様じゃねえか?」と微笑む。
リリー「フフフ」と笑ってレコードを見に来る。
寅「何の商売してんだい?
リリー「私?歌うたってんの
寅「ふうーん


                


リリー、レコードを探しながら「私もレコード出したことあるんだけどね、ここにあるかな?
…あるわけないね

寅「え?ハハハ!
リリー「フフフ

船着き場付近を歩いていくリリーと寅。
リリーがちょっとよろけそうになるのを寅が支えてやる。←ちょっとした仕草ややり取りがとてもいい感じ。

寅、歩きながら「故郷(くに)はどこなんだい?
リリー「くに?そうねえ…ないね、私…
寅「へえー…
リリー「生まれたのは東京らしいけどね、中学生の頃からホラ、家飛び出しちゃって、
    フーテンみたいになってたから…

寅、「へへーッ、ちょっとしたオレだね。流れ流れの渡り鳥か


いかに、この第33作が第11作の影響を受けているかよくわかる。




本編に戻ろう。




寅「それよりもお姉ちゃんの商売当ててみようか、え」 さっき見てたってば ヾ(^^;)

風子笑いながら

風子「うん

寅「ちょっと手、みしてみろ

風子「手?…はい

寅「ごめんよ」と言いながら、ちょいと指を持って


               


知らん顔で

寅「床屋だ。ずばり当たったろ」 よく言うよ見てただけのくせに ヾ(^^;)


風子大笑い。

寅ニヤついて


寅「
ん?どうした?

風子「さっきあの店で椅子に座っていたくせにィ〜、フフフ

寅「知ってたのか!

風子「うん

二人で大笑い。

転げ落ちそうになる寅。

おっと渥美さんの足に黒足袋が!


               





レストラン



風子はステーキを食べながら、長続きしない仕事の愚痴を寅にしゃべる。

寅「でもそりゃ、お姉ちゃんのほうにも罪があるんじゃねえのかな

風子「どうして?

寅「美人だものお姉ちゃん、周りがやきもちを焼くんだよ

風子照れて、寅の袖を引っ張りながら

風子「いやーだァ、なんだか寅さんと話してるといい気持ちにさせられるちゃうな、フフフ

寅、袖を引っぱられてふにゃふになりながら

寅「そうかい?


               


風子「あーおいしかった、ステーキぜーんぶ食べちゃった
寅「元気でたか?
風子「うん
寅「そりゃよかった

で、毎度の支払いギャグがここで来る。


寅はいつものようにいい格好をしておごってやろうとするが4200円は
財布にはもちろん無い。


寅、財布の中をかきまわすが、無いものは無い(^^;)


寅「よんせんにひゃくえん…

寅、ちらっと風子を見る。


               


風子もバツが悪そう。

寅「あ、は、さっきのあの床屋でチップ払いすぎちゃったかなァ…、へへ

寅、ウエイトレスさんに

寅「このあたりに銀行ないかな…

ウエイトレス「何銀行ですか?

寅「なんでもいいんだけども…

中原理恵さんすでに笑っています。

寅「あの…しばまた銀行ないないない ヾ(^^;)


               



ウエイトレス「???

寅「しらない?」 知ってたら恐い((((^^;)






Bネクラの栄作が絡んでの哀しい旅路



釧路  安宿  


二人でさきほどのことで大笑いしている。

宿代は風子に奢ってもらったようだ。



               


風子「寅さん、明日根室へ行くんだよね

寅「あ、そうだよ汽車賃あるのかい??(^^;)

風子「私も一緒に行こうかな…

どうやら叔母さんが住んでいるらしい。




谷よしのさん登場

谷さん「ごめんください
寅「あいよ
谷さん「すいませんけど、相部屋お願いできねえかな


               


寅「相部屋?
谷さん「あいにく今夜は満員でなあ…、お客さんがあの女の人と一緒になれば
    一番いいんだけども…

寅「そりゃまずいよ、あの娘とオレは赤の他人だものォ
谷さん「じゃあお願いします、料金半分にすっから


と、いうことで、やってきたのがネクラの男『福田栄作』
役者さんは『佐藤B作』さん。



もうかなり落ち込んでいて下を向いてしまう。


               



寅いや〜〜な顔をする。


               



あん〜〜まり暗いんで寅が事情を聞くと、

住んでいるのは茨城の牛久沼
(この次の作品第34作「真実一路」でも富永課長が牛久沼に家を買っていた)


住宅ローンが苦しくて女房がパートに出たのだが、3週間で男を作って、
子供を置き去りにして逃げてしまったらしい。
で、連れ戻しに霧多布に行くのだそうだ。


身の上話をしながらも嗚咽して悔しがっている栄作に寅は辟易。

東京に残してきた娘の『百恵(桃枝?)』ちゃんに電話で泣きながら話をしている栄作

もし漢字が桃枝なら、江戸家のやんちゃ娘と同じ。


               



壮絶なまでの彼の絶品な暗さに風子も寅ももてあましぎみ。





翌朝 再び 幣舞橋


栄作「ねえ、寅さん」とうじうじ、ぐずぐず…。


               


寅「なんだよ

栄作「どうでしょうかね、知らない男と暮らしている女房に
   今さら会っても無駄じゃないですかね


と、ぐじぐじくじくじ迷っている。


でも結局は一緒に行くことに。






霧多布  茶内駅



淋しい駅前で呆然と立ち尽くす栄作。



               


栄作「こんな淋しいところに…

あくびをしながら駅から出てくる寅。

栄作「佳代子は賑やかなところが好きな女なんですけどねえ…


寅「いや、どこにいたって愛がありゃ天国なんじゃないの?
 そういうもんだよ


暗く下を向き、すごすご駅に戻っていく栄作。

寅「どこいくの?

栄作「帰ります

寅「また

栄作の顔を手のひらで元に連れ戻し

寅「冗談だよ、冗談だって言ってるでしょ、すぐ気にするんだからバカァ



風子駅から出てきて

風子「タクシーで15分くらいだって、
  周りに家がなんにもなくて、屋根に『
ヤンマー』って
  字が書いてあるからすぐわかるって


寅小声で

寅「ヤンマー、だよほら

栄作「ヤンマー


風子タクシーの運転手さんに

風子「お願いします。霧多布に行く途中に汐見橋ってあるでしょ

タクシーに乗りながら


風子のテーマが流れる


タクシー汐見橋の上で止まって

風子「ほら、あれ、屋根に字が書いてある」 ヤンマー




吹きすさぶ風。


ほんの数件の酪農農家の村



タクシーを降りて


栄作「本当に住んでんでしょうか?こんなとこに…

寅は励ましのつもりで

寅「ひょっとしたら、かみさん苦労してるかもしれねえぞー

栄作もちょっと明るくなって

栄作「僕が迎えに来るのを待ってるかもしれませんね

風子も寅も頷く。

と半信半疑で歩いていくと

奥さんは背中に赤ん坊を背負って洗濯物を干しているところだった。


               



遠くからその様子を見て諦める栄作。


               



栄作「ダメだ…。ガキができてる…

寅もその様子を見て

寅「あ、ダァァ〜メだ…


赤ん坊を「マリちゃん」とあやす父親。


              



悲しく風子のテーマがマンドリンで流れる。


しゃがんで号泣する栄作。







茶内駅  ホーム

栄作が汽車に乗って釧路へ帰っていく

見送る寅。

寅「希望持って生きろよ!

窓から手を振る栄作。

栄作「はい!ありがとうございました!



               




寅は風子に

寅「無駄足しちゃったよ」と照れ笑い。

風子、寅の腕を持ちながら

風子「だから言ったじゃない、連れて行っても無駄だって


寅「フ、♪連れてェ〜逃げてよォ〜、かあ」 矢切の渡

風子「♪ついておいでよ〜、か、フフフ

寅「フフフ


                
               


こうして寅と風子の旅はもう少し続くのでした。






Cいつまでも一緒にいたい風子と人生を諭す寅


根室   ねむろ新緑祭り 会場


               




ゆっくり会場に足を踏み入れる寅。

テキヤ仲間がすでに準備している。

ポンシュウ「なんだい今時分、『地割り』はもう済んじゃったぞ

寅「それが親分大笑いよ

と、みんなの前で、先ほどの栄作の顛末を聞かせる寅だった。

寅「とんだ人助け、フフフ


寅の言葉聞いてみんな大笑い。


               


一方その向こうでは…

トニーがオートバイサーカスのテントを仲間と張って笑いあっている。






根室  漁港

卸売市場近く



網の後片付けの仕事をする叔母さん所へ訪ねてきた風子


叔母さんは元住んでいた標津(しべつ)の親戚が心配していたと知らせ、
身内に葉書の一枚くらい出さないとだめだと静かに説く。
風子のそういうところは死んだ母親そっくりだと泣く。

風子謝りながら、反省している。



               







翌日  


ねむろ新緑祭り 会場


舶来品 最高級 オルゴール 

オルゴールのバイの準備をする寅。


風子の声「寅さーん

寅「えー?…よう!
   
風子の就職はおばさんのお陰で家の近所の理髪店になんとか決まりそうらしい。


寅「東京は一流デパート赤木屋黒木屋白木屋さんで、
 紅白粉つけたお姉ちゃんからください、ちょうだいで、
 これ、千円や二千円はくだらない品物、今日はそれだけくださいと言わない!
 よしぐっと負けて1300、1300だよこれが!よーし、ヤケのヤンパチ日焼けのナスビだ!
 腹切ったつもり千円でどう!千円


風子の声「おじさん、買った!」 サクラ ヾ(^^;)


               



寅「おう!お姉ちゃん、はい、お嬢さん、いい買い物をしました。ねえ、
 恋人の誕生日のプレゼントに、これがわずかの千円です


寅「もうあとは、こんな安い値段で売らないよなかなかうまい言い方だ(^^)


ポンシュウお面を売っている。

ポンシュウ「レインボーマン、お面を外せばいい男だ、フフフ」



風子階段に座り、さっき買ったオルゴールを鳴らす。

ハッピバースデーの音色が聴こえて来る。



トニーが静かに背後に来て

トニー「♪ハッピバースデー.ツゥー.ュ…


               


トニー「見に来るかい?つおいておいで

と言って、バイクの曲芸を見せようとする。




キグレ オートバイサーカス  テント



テントにタダで入らせてもらった風子は、アクロバティックな曲乗りを見る。

客寄せの呼び声

いかに冒険的でありましょう  いかに男性的でございましょう

思わず手に汗握る、オートバイの曲乗り、場内、連続の公開であります!
 』


               





翌日 雨が降る 祭り会場




風子のテーマが静かに流れる。




きたみ館


風子が寅が逗留しているきたみ館へやって来る。


               


差し入れを持ってくる風子。

あのオルゴールを買った日は本当の誕生日だったそうだ。



そして夜


風子が遊びに来ている。


窓にすわり、一人霧笛を聞いている風子。



               





寅、酒を持って調理場から戻ってくる。

寅「なにやってんだよ

風子「霧笛を聞いてんの

寅「あー、オレあれきらいだよ。あれ聞くと気が滅入っちゃう、フフフ

風子「私子供のころ思い出すの

母親が家出して、いつも一人で寝ていた少女時代が、風子にはあったのだ。

風子「夜中目を覚ますと、遠くからチャルメラが聞こえて来るのよ…、
  もう淋しくって淋しくって、涙がぽろぽろ出てきちゃうの…


そんな風子を寅は笑わせてはしゃぐのだった。


               




風子「お祭りが終ったらどうすんの?寅さんは

寅「そうだな、まあ、東の果てまで来ちまったし、これからは
 釧路、札幌、函館と、ま、だんだんだんだん東京に近くなっていくかな


風子「フフフ、ねえ…

寅「ええ?

風子「私も一緒に行っちゃあだめ?

寅「え?オレと一緒にか

風子「うん

寅「へえ…、どうした、店のほう上手く行かないのか

風子「ううん

寅「おばさんの家ってのは居辛いのか?

風子「そうじゃないのよ…、私寅さんと一緒にいたいの。
  寅さんと一緒に勝手気ままな旅をしてみたいの


寅「



               



風子「少しなら貯金があるし、お金がなくなったら働けばいいでしょ。
  いよいよとなったら、バーにでも勤めるわよ


寅、シリアスな顔であることを考えている。

風子「ねえ、いいでしょ

ポンシュウたちがわいわい騒ぎながら帰ってくる。

寅、襖を閉める。


インテーマが静かに流れる。


寅「オレには七つ八つ年下の妹がいてな…、
 さくらって言うんだけどな


風子「うん

寅「今から10年…15年前か…、そいつには随分意見されたよ。
 こんな暮らしを続けていたらそのうちお兄ちゃんきっと後悔するわよ、って




               



第5作「望郷編」だね。

風子「

寅「フフ、なにしろこっちは若いからね、
 真面目に働いているヤツは全部バカに見えてしょうがないんだ。
 『大きなお世話よおめえ、こちとら太く短くいきるんだい』
 相手にもしなかったけどな、
 ふと気づいてみると、気のきいた仲間はみんな足洗って、
 ほどほどの女と所帯を持って堅気の暮らし…。
 フ!いい年こいて渡世人家業やってんのは、オレみてえなバカばっかりだ


風子「でも、私はまだ若いんだからいろんなこと経験したっていいじゃない

寅「こんなつまんないことを経験してなんになるんだよ。えー、
 ましておめえは女じゃねえか、そうだろ



風子、複雑な顔で下を向く。


寅「風子ちゃんよ、悪いことは言わねえ、おまえこの町で一生懸命働いてな、
 真面目で正直な男捕まえて所帯持て



風子「


寅「そら、長い間には多少退屈なこともあるだろう。でもな、5年10年経って
 『あー、あんとき寅さんの言ってたことはほんとだったんだな、って
 きっと思い当たる時があるよ。な



               


部屋の片隅にダンボールが3箱、バイネタのオルゴールが入っているらしい。



風子「

霧笛が鳴る。


風子「案外、薄情なんだね…


              


寅、何か言おうとする。

隣の部屋からポンシュウの誘いの声。


風子は怒って帰ってしまう。

送ろうかという寅に

風子、キッと睨んで

風子「大丈夫、子供じゃないんだから


立ち尽くす寅。



風子のテーマが短く流れる。


夜霧の中、心細く歩く風子


               



トニーのバイクが近づいてくる。

エンジンを吹かせて付きまとうトニー。

風子、キッとなって


風子「何か勘違いしてんじゃないの?私のこと


               


トニー「ちょっと笑って遠く去っていく。


トニーが去っていったその姿を追っている風子。


トニーってなんだかキザだねえ〜(−−)




数日後…



風子の勤める理髪店


寅が窓の外から風子に合図。


風子外に出てくる。


寅「じゃあ、オレ行くから

風子「うん

寅「辛いこともあるだろうけど、我慢して働けよ、うん?

風子「


               


寅「まあ、そんなことはねえと思うけど、もし困ったことがあって、
 オレのような男でも役に立つと思ったら、
 ほら、この前話した、帝釈天の参道のとらやに電話しな、えー。
 オレも時々連絡するからよ


風子、小さく頷く。

腕を組んで歩く風子。

風子「寅さん、行っちゃうんだね…

寅「ああ、行っちゃうよ

風子「うん。まあ、お前も元気でな。え

風子、寅を見つめている。

寅「じゃ、あばよ

歩いていく寅。



意を決したように風子は

風子「寅さん

寅「なんだ?


風子、寅に駆け寄り、

風子「寅さんがもう少し若かったら…、

寅「え?

風子「私、寅さんと結婚するのに…

寅、唖然とし、


               


そのあとに、フッと笑って

寅「お、大人のことからかっちゃいけねえよ、ヘヘヘ

と、歩いていく。


               




風子のテーマがゆっくり流れる。



目を潤ませて立ちつくしている風子。



               



風子は人として淋しいんだね…。
でもそれは女性としての愛ではないのだよ。

だいたい年齢で人は結婚するわけではないので
年が離れていても好きな人は好きなのだ。

たぶん人恋しいという気持ちに近いんだろうな。


それにしても、このシーンの山田監督の演出には若干の疑問が残る。
風子にこのような説明的な言葉を投げかけさせてしまうのは
集中力の低下というか、想像力の欠如としか思えない。

「結婚したい」とか「好き」という感情をその言葉を使わずに
糸を紡ぐようにじっくり表現してきたのが山田洋次演出だったのではないか…。
この作品のラストの展開にも同様の疑問が生じる。

シリーズ後期に入ると、このように人の感情や気持ちを、
てっとりばやく言葉で説明してしまうシーンが増える。

これは物語を紡ぐ者としては、機で模様を紡いでいるのではなく
直接模様を描いてしまっているので膨らみが出にくいと思うのだがどうだろう…。

物語を描くのでなく、紡ぐのが映画の醍醐味だと思う。




根室本線

根室からディーゼルの汽車に乗る寅。



風子が言った言葉を今も考えている表情。


               



風子のテーマが流れ続けている。




風子の働く理髪店


またもやトニーがバイクに乗ってやって来る。

なんと店に入り、風子を見て椅子に自分で座る。

内心驚く風子。


風子「いらっしゃいませ

トニー「ヒゲ剃ってくれ


               


風子「はい




寅を乗せた根室本線の汽車

海岸沿いをゆっくり走っていく。



               





Dあけみの登場と花嫁の父


柴又 題経寺  二天門


結婚式があるので水をまいている源ちゃん。

御前様が立っている。


さくら、歩いてやって来て

さくら「御前様、今日はどうもご苦労様です」とお辞儀。

御前様「あー、さくらさん。
   早いもんだねえ、
社長の娘さんがもうお嫁に行くんだから

さくら「そうですねえ


               


と感慨深げな二人。

どうやらさくらは出席せずにお店の留守番のようだ。

さくら「でも、仏式の結婚しきっていいもんでしょうね。
   私も出たかったわ


御前様「私も葬式より結婚式の方がありがたいなうまいうまい(^^)
さくら「まあ
御前様「めでたくていいなあ〜この感覚(^^)
さくら「フフフ

いつもの御前様笑い

御前様「ハアー、ハアー、ハアー

水巻きをしている源ちゃんに向かって

御前様「おまえにも、そろそろを持たせんといかんな

どえらい発言をして境内の中にそそと入っていく。

源ちゃん、嬉しくてスーパーショック。
ホースの水出しっぱなしで呆然と立ち尽くす。



               


ポヨ〜〜〜ン(^^;)







とらや 茶の間



数あわせで博も式に出ることに。



仏間


美容師さんやおばちゃんが、あけみの角隠し白無垢の着物を調えている。

なぜタコ社長の家で花嫁衣裳を着ないのか?
いくらなんでもこの設定はあんまりだ。
それのほうが映画が盛り上がるんだろうが、やはりここは社長の家でやって欲しかった。



照れているあけみ。

さくら「素敵よ、あけみちゃん

あけみ「なは!と、お大口をあける。

さくら大笑い。



                   




おばちゃん「口さへきかなきゃ綺麗なお嫁さんなのにねえ〜

あけみおどけて

あけみ「歯黄色く見える。とうもろこしみたいだ、ほら

とみんなを笑わせる。

3万五千円の貸衣装の燕尾服を借りてきた社長がやって来た。

社長「竜造さん、ほんとうに申し訳ないなあ。
  てめえの娘を嫁に出すのにお宅の座敷なんか借りちゃって
  なにしろ家は狭いもんだから


ありえないよ社長さん。

おいちゃん「いいんだよ、めでたいことで借りてもらうんだから

社長恐縮している。

おいちゃん「それにしても変な格好だなおまえ

おいちゃんは「旅回りの手品師だな」と見事に的確な表現。

第19作「寅次郎と殿様」ではおばちゃんが殿様の格好を「手品使い」と評していた。


そしていよいよ襖が開いてお披露目。



               



あけみはおばちゃんに言われて社長に挨拶をする。


この大事な挨拶の場面で社長の奥さん、
つまりあけみのお母さんに挨拶しないのは
極めて不自然だ。水木涼子さん可哀相…(TT)


おいちゃん「花嫁の父か…




あけみ、手を畳につけて


あけみ「父ちゃん、どうもありがとう…


社長「え…ど…ど

あけみ「工場の経営が苦しいのに、たくさんお金使わせちゃって…ごめんね。
   私…幸せになるからね



               



第1作の冬子のテーマが涼やかに流れる。



               


社長「

感無量になり、言葉が出てこなくて下を向く社長。

さくら、あけみを見、おばちゃんを見て静かに頷く。

おばちゃんもさくらと顔を見合わせて微笑みあう。



社長鼻水をススって


               


社長「いいんだよ、おまえが幸せになってくれるんなら、
  父ちゃん金なんかちっとも惜しくないよ、ううう…


と泣いてしまう。

あけみも遂には涙を流してしまうのだった。


               


おばちゃん「よかったね、ちゃんと御挨拶が出来て

さくら「ねえ


               


おいちゃんも台所の方を向いてもらい泣き。


               


あけみ、たのむからお母さん(水木涼子さん)にも挨拶してくれよ(ーー)





帝釈天参道


花嫁行列


帝釈天参道の立花屋さんの前を歩いていくあけみや社長達。



               





仲人の男の人はご近所さんでよく出てくる背の高いあの方。
江戸家のご主人をしたこともある。

映画評論家のS氏がメールでさきほど彼のお名前を教えてくださった。
彼は松竹のベテラン
高木信夫さん



               



         この背の高い男性が後のあけみの仲人高木信夫さん
               



備後屋の露木さんがあけみを冷やかす。

備後屋「あけみさん、今日はきれいだよォ〜〜

舌をだして対抗するあけみ。 あああ…(−−;)

備後屋も「べえ〜〜」rと、舌を出して応戦。

備後屋「ハハハ、冗談だよ


               


あけみ「覚えてろ〜あああ…(−−;)

社長「下を向いてろ

あけみ「父ちゃん…、おしっこしたくなっちゃった((((((^^;)

社長「バカ!お色直しまで我慢しろ!そら無理だってヾ(^^;)

奥さん「そんな大きな声で!
ようやくまともなセリフがもらえた水木涼子さんだった(TT)



社長「さっきしたんだろ

博「気を落ち着けて

社長あたふた。


あれ?、この花嫁行列にあけみの兄弟妹がいない…。
これはいったいどうしたことか?

ひょっとして、この作品から社長の子供は、設定上
あけみ一人ということになってしまったのかもしれない。





題経寺  境内  



題経寺の本堂廊下からあけみたちが入ってくるのを笑顔で迎える御前様。


あいさつする社長。


応える御前様。


眺めている源ちゃん。



               







E風子を心配する寅の心



一方  こちら


江戸川河川敷


葛飾中学校 ブラスバンド部がドイツのマーチ『旧友』を練習をしている。

もちろん満男も。



               



マーチを100曲以上作ったドイツのカール.タイケが作曲
旧友 Alte Kameraden』と名づけられたこの曲は
彼が25歳の時、1889年の楽曲。

行進曲《旧友》は、タイケの代表作であるだけでなく、
世界的に最も有名なドイツの軍隊行進曲だ。
日本でも野球中継や、パレード、コンクールなどで頻繁に使用される。

第13作「恋やつれ」や第38作「知床慕情
」にもこの『旧友』は使われている。


江戸川土手でかばんに座って考えごとをしている寅。



               







とらや 店


さくらが留守番をしている。

500円 800円 1000円 のお団子折り詰めがあることがさくらの発言でわかる。


なんとあの福田栄作が訪ねてくる。

そこへ寅も帰ってきて、大驚き。

寅「おおお!北海道のネクラ
栄作「その節はお世話になりました
寅「はは!生きてたか、陰気
栄作「はい、おかげさまでなんとか頑張っております
寅「うん、ハハハ


               


さくらに挨拶する栄作。

寅「おい、ネクラ、ネクラじゃない、さくら、
  あの、ネクラに団子だしてやってくれ


でました森川おいちゃんのギャグ「まくら、さくら出してくれ」のアレンジ!


栄作は風子に会ったことを話し出す。

風子から借金の申し出があったのだが、保証人がいないので断ったらしい。



それを聞いた寅は突然烈火のごとく「このヤロウ!!」と怒り出して、
栄作を押し倒し説教するのだった。



               


寅「いいかア!田舎出の小娘が金に困って心細い思いをしてるんだぞ!
 どうしておまえ、スーっとだしてやらなかったんだ!
 せめて財布の中にある有り金全部引っ張り出してだな、
 『とりあえず、これだけ持って行きな』と、
 どうして渡してやることができねえんだ!



下を向いてしょぼんと立ち上がる栄作。


寅「そんなしみったれた根性だからだな、カカアにだって逃げられるんだよ!
このネクラ!もういいから帰れ!



               


栄作「僕だってそうしたかったんですよ…。
  だけどポケットには300円しかなかったんです。
  なにも…、逃げた女房のこと、
  引き合いに出すことないでしょう、ううううう


と、泣きながら出て行ってしまう。




とらや 茶の間  夜


おばちゃんは栄作のことを聞いて、寅の恋敵だと勘違い。

おばちゃん「じゃあ、二枚目かい?
さくら「誰が?
おばちゃん「だから夕方店に来た男

さくら「ううん、全然うわ!さくらって結構キツイ(TT)

みんなでおばちゃんを黙らせて。。。


博がまとめている。

寅は風子と言う名前だけで、姓を知らないから、寅が悩んで困っているという話。

なんだか、第19作の鞠子さん探しを思い出すよ。



電話が鳴った。

とたんに寅が二階から飛んで来て、風子かもしれないと大騒ぎ。
このようにとても機嫌が悪い。



               


あけみたち夫婦をハワイへ見送った後、
上機嫌で一杯飲んでよくやってきた社長には


寅「労働者を搾取したそのお金でハワイへ新婚旅行へいく娘さんもあれば、
 ネグラのない小鳥のように夜露に打たれてないている娘もある。
 世の中…さまざまだなあ…


と、皮肉たっ〜〜ぷりなことを言って2階へ上がって行く寅だった。


社長も怒ってしまって

社長「てめえが結婚できないからといって
  他人の結婚式までケチつけることねえだろ!
」とキツイこと言って帰っていく。


おいちゃん、カチンときて


               


おいちゃん「おい!ちょっと待てタコ!そんな言い方はねえだろ!

と、追いかけていく。

言い争いの中、社長の泣き声が聞こえてくる。






雨の江戸川


風このテーマが哀しく流れる。





さくらの家


満男が社長からもらったパソコンで遊んでいる。第32作のラスト参照


               


寅は、雨の日もずっと風子を探して歩いているらしい。

新聞広告の尋ね人の欄にも密かにメッセージを出している寅。

『風子 帰ってきな。オレは心配で夜も眠れないんだ 寅』

それにしてもよく新聞広告の頼み方わかったな…。誰に聞いたんだ?
そんな金、寅のどこにあるんだ?






Fトニーと寅、緊張のかけ引き


数日後…


題経寺 境内


なんと、トニーがやって来る。


キャビンの空タバコを源ちゃんが置いているちりとりに投げ入れ、
とらやの場所とタバコ屋を聞く。

どうも雰囲気がまともじゃないね…。



               





とらや  店


トニーが入ってきて、寅に会いたいと言う。

おばちゃんもさくらも堅気じゃないトニーのオーラを感じて不安そう…。
         


トニー「風子って女が寅次郎さんに会いたいって、そう言ってるんですよ


               


どうやら今風子は今トニーのところにいて、病気らしいのだ。

さくら「あの、お名前は

トニー「トニーって言います。オートバイサーカスのトニー。そう言ってください

おばちゃん「サーカス…


寅を待ってる間、キャビンを源ちゃんに買わせて、一箱やり、釣りもやる。

源ちゃん、ついつい受け取ってしまう。

源ちゃん、子供の駄賃じゃないんだから、
いい大人がお釣り受け取ったらだめだよ。
がまんして遠慮しなくちゃ…。



               




とらや 二階


寅「トニー…

さくら「ちょっとくずれた感じの人。知ってるんでしょ?

寅「風子が…あいつのとこにいるっていったのか

頷くさくら。

寅「なんであんなやつの所へ、風子が…


淋しいんだよ、風子は…。他に誰もいないんだよ。
寅、わかってやれよ。



               ]]




寅は、さくらに金を借りて、下へ下りて行く。


寅台所の暖簾をくぐって店に現れ


寅「挨拶は抜きだ

店を出ながら

寅「とにかく行こう。話しは道々だ

トニーに対してかなり寅は緊張して
にらみを利かせている感じだ。


トニー「へェ

トニーお辞儀をして、寅の後を歩いていく。


               

一方

源ちゃん、トニーからもらったタバコプカプカ吸っている。


おばちゃん、源ちゃんに詰め寄って

おばちゃん「源ちゃん!さっさとお寺帰って仕事しな!!
     なんだい知らない人にチップなんか貰って!
     御前様にいいつけちゃうよ!!



うっぷんを源ちゃんにとりあえずぶつけるおばちゃんでした(^^;)


               






品川駅東口から徒歩圏  海岸付近 

品川浦



北品川橋(品川区北品川1−21付近)近く



うら寂れた、東京の海に近い品川駅近く海岸付近
立て込んだ家の一角にトニーの住処があった。
かつて屋形船を経営されていたOさんのご自宅がトニーの下宿先。
あの周辺がロケ地だった。





2011年5月20日

おなじみ、寅仲間の「ちびとらさん」がちびとらちゃんとのいつもの父子コンビで
品川駅東側、
北品川橋(品川区北品川1−21付近)近くのロケ地だということを
発見された!
ご自宅からさほど遠くないせいもあって、土地勘をフルに生かされた
ということだ。
っていうか、ちびとらさんのロケ地に対する集中力はやっぱり凄い。



2011年晩秋 私も一緒に再度取材してOさんのご自宅を突撃取材。
いろいろ詳しいお話を聞けました。
このことはまた後日アップします。




        
    ストリートビューで映画と同じアングルで観てみた。

     










トニーの住処








この写真が寅たちが歩いていた路地から見た現在の風景↓

寅の背中に見えた、銅で作った家は今もあるが、そこのご主人にお聞きするとずいぶん前に
あの銅板は取り外してしまったそうだ。










トニー、ガラッと戸を開けて、風子に…


トニー「連れてきたよ、寅さん…


風子がやつれた顔で寝ている。


下に下りていくトニー。


風子のテーマが静かに流れる。


何もかも察知した寅は静かに風子の手を握る。

寅を見つめる風子。



               


風子「ごめんね、寅さん…どうして会いたかったの…

と、泣き顔になる。

寅「なんにも言わなくていいよ

寅小さく頷いて

寅「心細かったんだろ…

風子「うん…」と泣いてしまう。

風子のおでこに手を当てる寅。

寅「その玄関のあたりまで歩いていけるか?

風子、泣きながら頷く風子。

寅「よし、じゃ、ちょっと待ってろ」と、

握っていた風子の手を毛布の中に入れてやる。


窓から下のトニーを見る寅。


下の階のピンクの公衆電話からとらやにかける寅。


寅「あ、もしもし、あ、さくらか、オレだ、うん、
 すまねえがな、博の所行って工場の車運転して、
 品川の東口まで来てくれねえかって
 頼んでくれねえかな。うん。
 あ、毛布と布団積んでさ、で、お前も一緒に来てくんねえか。
 …いや、わけは今聞かないでくれよ。うん、うん、じゃ、頼む、な



               




現在の同じ場所↓ ここに住む0さんのご厚意で撮影させていただきました。
川」向こうのマンション前の小さな公園は今も少し残っている。ブランコはもうないそうだ。

   







電話を切って、二階を見上げる寅。


連れ出したら、さすがにトニーに絶対見つかるって。

トニーが、寅が風子を連れて行くことをうすうす許したのは
風子の病気をトニーももてあましていたからかもしれない。

風子は、栄作に、返せそうもない金を借りようとしたり、
トニーと一緒に同棲しながらも、その部屋から寅を呼んでしまったり、
どうも納得できない行動ばかりだ。
淋しく心細いのはわかるが…。




Gとらやで羽を休める風子の日々



夜  とらや  二階 寅の部屋


二階なのに外からカメラが撮っている珍しいパターン。



               



おばちゃんが様子を見に来ている。

疲れてぐっすり寝てしまっている風子。

医者の処方箋がある。医者に診せたんだね。

熱があるのだろう。


電気を消して、洗面器の水を取替えにそっと下に下りていくおばちゃん。






とらや 茶の間


おばちゃん「本当に大変な騒ぎだったね、今日は

さくら「こんなこと初めてだもんね

おいちゃん、博に

おいちゃん「ようするにあの子とサーカスの男はあれだったんだろ?
と指をかき回すしぐさ  おいちゃんてば…ヾ(^^;)



               


満男横から

満男「あれって?」  おいおいおいヾ(^^;)

おいちゃんすかさず

おいちゃん「勉強してなさい!((^^;)

おいちゃん「寅とあの子の関係はどういうことになってるんだ

さくら「だから…、初めはお兄ちゃんと仲がよかったんだけれど、
  後になって現れたんじゃないの、あのサーカスの人が


おいちゃん「じゃ、とられちゃったのか」 最初から寅もとってませんがヾ(^^;)

おばちゃん「なんでー、あんな男のどこがいいんだいと、さくらに怒る((^^;)

おいちゃん「真っ白な背広なんか着やがって見た目でかなり嫌がっている((^^;)

おばちゃん「うん!

さくら「私に怒ったってしょうがないじゃないのんだ(^^;)

博「情熱の問題ですからね、こればっかりは理屈じゃあ…

さくら「

博「どんな暮らしがあったかわからないけど、
 あの子は身も心もボロボロになって
 兄さんに助けを求めたってことなんでしょ



とは言うものの、男と同棲していて、その部屋にいるまま、
違う男を呼ばせるのはちょっと普通じゃないけどね…。



興味津々の満男の顔を横に向けさせる博。 見事な演出(^^;)


               


おばちゃん「それじゃあ、あんまり可哀相じゃない、寅ちゃんの立場は

さくら「だから、辛かったんじゃないの、今日は

おいちゃん「酒飲みに行くって出てったのはそのせいか…

さくら「そうね…」と考えている。


ほんとうは事情がちょっと違う。
寅は風子が一緒にいたいと言ったのに断ったのだ。
断られた風子の淋しい心に入り込んだ間男的存在がトニー。

だから本当寅はふられていたわけでもなく、
可哀相な立場でもないのだ。

ただ、寅を呼んだ風子がちょっと非常識な感覚だっただけ。






数日後


江戸川土手



元気になった風子が風に吹かれている。

向こうではいつものように満男のブラスバンドが練習をしている。



タイケ作曲 『旧友』 

スーザ作曲 『士官候補生』 





そこへさくらが自転車でやって来て、二人でこれからのことを話す。



風子「いまさら根室帰ってもしかたないから、どっか東京で仕事探そうかと思って

さくら「それだったら…、しばらく家で暮らしてみたら?ああ…観音様(TT)

風子「え?信じられないって言う顔。


どうやら、おいちゃんが近所で理容師の仕事探してくれたらしいのだ。
さくらは、そうしろと強く勧める。



明るいテーマ曲が流れる。


風子、感激して

風子「北海道で寅さんに、堅気の暮らししなきゃだめだって、よく説教されたんだけど…

さくら「うん

風子「私、さくらさんたちに会ってようやくその意味が分かってきた気がするの


風子「だって…私ひどい女なのよ…

寅と恋人だったわけでもなんでもないので、
ひどいって言うより、非常識なだけ…(−−)



微笑んでいるさくら。

風子「もっと早くさくらさんたちに会えればよかったなあ…

さくら「

さくら「今からでも遅くないわよ風子ちゃん


               


全然遅くない。っていうか、なにが遅いと思わせているのかわからんよ(−−)


静かに頷く風子。



満男が近くまでやって来て、さくらにあっち行けと忠告し、そのあとこけるミニギャグが入る。

中学生みんな大笑い。


               




Hかみ合わない会話 トニーと寅



品川駅近く トニーの宿


トニーが寅に呼び出されて外に出てくる。

仕事のオートサーカスショーで腕を怪我したらしい。手をつっている。


寅はいきなり風子のことを切り出す。

寅「ずばり言わせてもらうぜ、
 手ひいてもらいてえんだ



               


トニー、ムカッと来て

トニー「女のことで人に指図なんかされたかねえな


               


寅「


寅「お互いに渡世人通しじゃねえか、
  こっちの気持ちもわかるだろ


トニー「


寅「あの子は苦労して育ったからな。
  どこか無理しているところがある。
  ヤクザな女に見えるけども、本当はそうじゃねえ…。
  まともな娘だ。
  所帯を持って子供を産んで幸せになれる娘だ


トニー「

寅「そう思わねえかい…?

トニー「二十歳の若造じゃありませんからね、
   それくらいのことはわかってますよ


寅「

トニー「だけどね、東京について来るっていったのは、あの子のほうなんですよ

寅「だから、こうして頭を下げて頼んでるじゃねえか。
 頼む。この通りだ


と、頭を静かに下げる。



トニー、ちょっと笑って

トニー「あにさん

寅「なんだ

トニー「見かけによらず純情ですね

寅「


               


トニー「じゃあ、ごめんなさい

と去っていく。


微妙なことになって、立ち尽くしている寅。










羽田空港の飛行機の騒音。


このトニーの顔つきじゃ、自分からは風子に対して
積極的な行動には出ないが
風子が自分に戻ってきたら、風子にまかせるって感じだね。
このあたりは曖昧なまま。
寅の説得は、決して成功したとは思えない。






柴又  夕暮れ時


朝日印刷の工場


月給日。


給料を一人一人に渡すゆかりちゃん。


ゆかり「島本さん、お疲れさまでした

この島本トシオ君は、
ゆかりちゃんに恋をしていたことが第37作でわかるのだが。



次に中村君がもらう。

ゆかり「はい、松田さん、お疲れ様でした」

おいおいおい彼は「中村」だぞ。
第23作「翔んでいる寅次郎」見ろよ。
いつから松田になったんだ?
前のお嫁さんと早くも離婚したのか?
そして婿養子になって松田になったのか…。


オフセット室から出てきた博ももらう。




Iトニーを思う風子、そして、寅とのすれ違い



とらや  二階


さくらが、風子の洗濯物を持って来たのだ。

風子は荷物をまとめていた。

驚くさくら、

さくら「あら、出かけるの?

風子「私、どうしても今日中に行かなくちゃならないところが…


どうやらトニーのところへ会いに行くらしい。
けじめをつける意味でもちゃんと話しておきたいそうだ。



               


さくら「きちんと話し合える自信あるのね

頷く風子。

さくら「じゃあそうしなさい」と微笑む。

しかし、それならばなぜ荷物を全部片付けている?
これは、風子はもうとらやに戻らないかもしれないって意味だよ。
さくら、それでいいのかい。



風子「
寅さんに断らずに行っていいかしら…

さくら「大丈夫よ、帰ってきたら話せばいいのよ帰ってこないよ(−−)



オルゴールを静かに回すさくら。

このさくらへの演出は秀逸でした。


               


そうこうしている間に寅が早くも帰ってきてしまった。

複雑な表情の風子とさくら。


どうやら、おいちゃんが駅の近くの理容店で風子の職を決めてきたらしい。

それで寅もみんなも機嫌がいい。


微妙な顔をして下りて来るさくら。


博「はい月給と月給袋をさくらに手渡しする博。

さくら「あー、ご苦労様


               


寅「亭主が女房に月給袋を渡す。いいねえ!

寅「風子にもそんな暮らしがさせてやりてえなあ…

さくら、複雑な顔で二階をちらっと見上げる。




寅、突然

寅「そうだ!風子の亭主にはよ、床屋の職人なんかどうだい


               


みんな「ああ」と納得。


寅「これも女たらしいのっぺりした男じゃねえんだ。
  ね、仕事一途な真面目な男よ


おばちゃん「同じ仕事なら気持ちも分かりあえるしねえ

寅「二人で一生懸命働いて、お金を貯めて、いつか自分達の店を持つんだよ

おいちゃん「なるほど

寅「ちっちゃくていいから、小奇麗な店がいいな。うん

 で、壁にさ、西洋の絵がバーッと置いてあってな

 で、窓際には熱帯魚がチュルチュルチュルチュル泳いでんだよ、ね

 プーンといい香水の匂いがするんだ、うん


               


おばちゃん横に座る。


寅「いつも音楽が流れている

おいちゃん「へーえ、目に浮かぶようだ


さくら、複雑な気持ちでいる。


寅「オレが旅先から帰ってくる。
 真っ先に床屋の店行くな。うん


 『いらっしゃい』サーっと刈り上げした亭主がオレの気持ちをくんでね、
 『風子、寅さんが見えたよ』


               


 奥のほうから、バタバタバタバタ、白い上っ張りを着た風子が出てくる



さくら、微笑みながらも、やはり複雑な顔。


                


寅「『あーら寅さんお帰りなさい。今度の旅は長かったのね』
 オレの顔にシャボンかなんか塗りながらさ、
 耳元で亭主の悪口を言うな。


               


『ウチの亭主ったらつまんないのよォ、
面白いシャレ言ったってぜんぜん分からないの』

そこでオレはピシッと言ってやるな。ん。

『男はシャレなんかわからなくたっていい!』なあ。
『さくらの亭主の博を見ろってんだ。
こりゃつまんないよー、面白くもないよひとつもー。
だけどこの二人は仲良く長い間暮らしてます』


博「ひどいな〜フフフ
おばちゃん「フフフ
おいちゃん「そのとおり、フフフ




風子がそろりと階段を下りてくる。


雷が遠くで鳴り始める。


不穏な空気。


風子大きなカバンは今は持たずに、二階に置いて、
小さなハンドバッグを持っている。

 

風子「おかえりなさい

寅「おう、…なんだい、どっかでかけんのか?


               



さくら「あのね、風子ちゃん今日中にどうしても行かなくちゃいけないところが
   あるんだって


おばちゃん「だって、もうご飯だよ

寅「…どこ行くんだ?

寅は、こういうことは敏感。すでに感じ取っている様子。


風子「ちょっと…、知り合いのところへ


寅、あえて聞く。

寅「知り合いって誰だ?


               


風子「お願い寅さん黙って行かせて…


               



寅「オレに言えねえようなところか?

さくら「風子ちゃん、なにも悪いことしにいくんじゃないから、
   ちゃんと話したほうがいいわよ


寅、さくらを見る。

さくら「あのね、風子ちゃん、トニーさんって言う人と
  ちゃんと話しあっておきたいんだって


寅「

おばちゃん「こんな時間にかい?

さくら「今日中に行かないとしばらく会えないんだって、サーカスの巡業で」とおばちゃんに言っている。

寅、風子を見る。

風子「寅さん、行って来ます

と、店のほうへ出て行く。


寅「あー、ちょ、ちょっと待ちな

暖簾の下から、

寅「あいつのとこなら行くことないよ


               



さくら「どうして?

寅「オレが話つけた

さくら「ええ!!?


雷が鳴る

風子、びっくりして立ち止まる。

風子「


               



博「まさか乱暴なことしたんじゃないでしょうね、兄さん
寅「バカな事するかよおまえ
さくら「じゃあ、どんな話したの?

寅「え?風子から手を引けって言ったんだよ


寅を見る風子。

寅「渡世人同士だから話ははええよ、うん。
 風子、アイツのとこなんか行くことねえぞ。え、
 こっち来てほら、みんなで一緒に飯食おう、な。
 オレ、着替えるから


トニーは寅のようには思っていないぞきっと。
あの時の会話は微妙で、決して寅の思うままに運んだようには
見えなかったね。



と、二階ヘ上がろうとする。


風子、プツンと切れて

風子「寅さん、どうしてそんな頼まれもしないことをするの


               


寅「なんだい、オレが会っちゃ具合悪いのか?


緊張が高まる。

さくら「


               


風子「だって私とトニーの間のことでしょ、
  寅さんとは関係ないのよ



               


寅、目が恐くなって

寅「関係ない…?


               



もしほんとうに関係ないと思うなら、熱出たくらいで寅を呼ぶなよ、
ましてやとらやで寝泊りしちゃいけないよ風子ちゃん(−−)



さくら「お願い、お兄ちゃんわかってあげて

寅風子を見たまま、さくらに

寅「おまえは黙ってろ


               


おばちゃん、台所から出てきて

おばちゃん「あのね、寅ちゃんあんなに心配してたんだよ、
      風子ちゃんのこと


おいちゃん「そうだよ、関係ないは酷いよおいちゃんもたまりかねて口を挟む。


風子「じゃあ…、私とトニーは会っちゃいけないんですか。
  二人の間のことを話し合っちゃいけないんですか


寅「話しあたってしょうがないじゃないか、あんな遊び人と

風子「遊び人だったら寅さんだってそうでしょう言うなあ風子も(−−)


               


寅、信じられないような気持ちで

寅「…なにい?


               


風子「渡世人同士だって今自分で言ったじゃないか!


               


寅、半歩進んで

絞るような暗い声で


寅「なんて口きくんだお前は…


               



風子「」下を向いてしまう。

さくら「お兄ちゃんはトニーっていう人のことがよく分かるからこそ
  ああ言ってるんだから。怒らないでね、ね
その通り(−−)

と間近まで近づき風子を見る。


               


風子背中を見せながら。

風子「それはね、トニーはだらしなくて、甘えん坊で、破れかぶれよ、
  そんなこと分かってるわよ


それだけじゃないんだよ風子ちゃん。気持ちの入れ替えの問題じゃないんだ。
人生そのものの問題。やっぱり彼は堅気じゃないんだ。それは寅も同じ。
棲む世界が違うってことに気づかないといけない。


頷くさくら。

風子、寅の方を見て


風子「でも、私さえちゃんとしてれば、いつかきっと変わってくれる…。
  そう思って付き合ってたんだよ


甘すぎ…(−−;)


寅、緊張の糸が切れて


寅「ああ、そうかいそうかい、
 会いたいんだったら行ったらいいじゃないかおまえ
と、投げやりに横を向いてしまう。


               



風子「そんな…

風子半泣きで

風子「そんな言い方ってないよ、寅さん

風子「寅さんならなんでもわかってくれると思ってたのよ。
  だから私寅さんに助けてもらったんじゃないか



               



寅「だから好きなようにしろって言っただろ…

今回の寅は、随分投げやり…(−−)


               


博駆け寄って

博「兄さんダメだそんな言い方しちゃ、彼女可哀相ですよ


風子泣きながら

さくら「ちょっと待って!

風子「さようなら、お世話になりました


               


と、泣きながら走っていく。

風子ちゃん、大きなかばんはどうするんだい?


さくら、寅を見て、風子を見て

さくら「風子ちゃん!」と追いかけていく。


みんなどうしていいか分からないで呆然。


寅、二階へ上がって行く。


風子の言動は自分のことばかり。。。、
病気したら寅を呼んで、とらやで寝て、看病してもらって…、
治ったらまたトニーのもとへ戻るんじゃ、
ちょっと、調子よすぎるんじゃないかい。

寅を本気で信頼してるのなら
寅の言うことにも、真面目に耳を傾けろよ風子ちゃん

会えば、また別れられなくなるってこともあるんだぜ (ーー)





おいちゃんおばちゃん寅が上がった二階を見ながら、

おばちゃん「私、余計な口はさんじゃったのかねえ

おいちゃん「黙ってリャよかったなァ…オレたちゃ」と後悔している。


同じ同じ、どっちにしても、風子は出ていたって(−−)


               


さくら、雨に濡れながら戻ってきて…

博「どうだった?

さくら「行っちゃった



さくら「お兄ちゃんは?

ニ階を指差す博。

さくらに手ぬぐいを渡すおばちゃん。

博「こんな悲しい結末になるなんてな…



さくら、二階に上がっていく。




とらや 二階 荷物部屋


メインテーマがゆっくり流れる。



寅「オレはきつい言い方をしたか…?

さくら「
ううん、大丈夫、お兄ちゃんの気持ちはわかってるわよ

寅「

さくら「
別れ際に言ってたわ、
  『ごめんなさい、って言っといて』って…



               


寅「…へえー…、そんなこと言ってたのか、あの子は…


               


さくら「幸せな恋もあれば、
   不幸せになる恋だってあるわけでしょ…。

   不幸せになることがわかっていながら
   どうしょうもなかったのね、風子さんは…。

   でも大丈夫よ、きっと立ち直るわよあの子は



寅「





風子とトニーは、実は、人生の根っこの部分で
分かり合える何かをお互い持っているのだろう。

おそらく淋しく満たされない青春期を
お互い送ってきたのかもしれない。
傷が同じなのだ。

ただ、その哀しみの根っこを
その先どう昇華し、プラスに変えてゆくかが
人生の分かれるところだとは思う。





J風子からの手紙と風子の結婚



夏  入道雲  


さくらの家



風子からの手紙が届く。



               



風子の文字

さくらさん、ごめんなさい。
皆さんが心配してくださっているのを知りながら、
恥ずかしさが先にたって、今までお便りできなかったことを
お詫びします。

あれから、すぐに北海道に戻り、伯母の家でしばらくぼんやりと過ごしておりました。
毎日思い出すのは、寅さんや、さくらさんたちのことばかりでした。

ほんとうにみなさんの思い出がどんなになぐさめだったかわかりません



なんとかギリギリで踏みとどまったんだね、風子は。




江戸川土手



自転車でとらやに向かうさくら。


               


風子の文字

道東にも遅い夏がようやく訪れた頃、
 前に一緒のお店で働いていた男性と会う機会があり、
 この人を伯母がひどく気に入って、
 あれよあれよという間に結婚することになりました



ありゃりゃりゃ…、展開早すぎだよ風子ちゃん。





とらや  店


満男や友達がカキ氷を食べている。


さくら、入ってきて


さくら「おばちゃん、大変

おばちゃん「なんだい、どうしたんだい?

さくら「風子ちゃんが結婚するんだって、北海道の人と


               


みんな驚く。

さくらは寅にも聞かせてあげたいと大喜び。急いで博にも報告。


おいちゃんは自殺でもしてるんじゃないかと心配してたのだ。


風子の文字

彼はまじめだけが取り得の人ですが、
 きっと寅さんはきっと気に入ってもらえると思います




手紙によると、風子ちゃんはさくらたちに結婚式に出て欲しいようである。


満男は北海道行きたがる。

おばちゃんたちは満男を連れて北海道を見せてやれと大賛成。

ああ、博、また出費がかさむねえ…。


               


風子ちゃん、気軽に出席して欲しいなんて言っちゃいけないよ。
東京から中標津なんて旅費と食費だけでも物凄い出費なんだよ。
そういう時は人数分の飛行機の往復チケットも同封するもんだよ。
親戚でも無い、同僚でもない、気楽な友人でもない、彼らはあなたの恩人だ。
ましてや遥か遠くから来るのだから、呼んだ限りは自腹を切らせてはいけない。

第45作「寅次郎の青春」の泉ちゃんの親友のしのぶちゃんを見習って欲しい。
しのぶちゃんは泉ちゃんに式に出て欲しいって、東京から宮崎までの飛行機の
往復キップを送ってきたのだから。

結婚式の後、きちんと旅費を封筒に入れて渡すんだぞ。




8月23日 釧路空港 (中標津空港ではない)


TDA 東亞国内航空が釧路津空港に着陸する。


               




2015年8月末 

越後の寅友であり、いつもお世話になっている滝沢さんから
中標津空港ではなく釧路空港であることが判明したとのメールがありました。
航空写真で検証し、当時の釧路空港だと決定しました。






標津線で計根別駅

汽車から降り立つ 博、さくら、満男



そこで渥美さんの盟友『谷幹一さん』らに迎えに来てもらい、
一路バンで養老牛温泉へ。

谷幹一さんは、このシリーズでこの第33作のみに出演。
同じ『スリーポケッツ』の仲間の
関敬六さんが、相当数の作品に出演したのとは対照的。



谷幹さん、さすがに何度もギャグを飛ばす。

ギャグ@プラカード持って「諏訪さんですか〜」とホームを走る。

歓迎 諏訪博様 さくら様 満男様 御一行様



               



ギャグA一緒に迎えに来た男とぶつかる。


ギャグB自分が乗るの忘れて、車を追いかける。

これは第17作「夕焼け小焼け」の桜井センリさんと同じギャグ。


               



谷幹さんの話によると
寅もなんと、この近くまで来ているが、弟子屈(てしかが)から来るのだという。



弟子屈は摩周湖の西に位置する町で、
摩周湖の東そのまた山越えの先にある養老牛温泉へは道は険しい。


谷幹さん「
いっそのこと山越えしたら近いんだけど、
    近頃はまず
でてなあ


               


さくら「!!熊

博「熊が出るんですか

牛4頭食うヒグマらしい…(((^^;)



バンはようやく養老牛温泉の『藤や』へ到着。




養老牛温泉の『藤や』


みんな大歓迎。


風子も出てきて、大喜び。


加藤武さん統一劇場の方々も参加。



               



新郎はいかにも『真面目がとりえ』という男(^^;)


               






で、式がが始まりワーグナーの『結婚行進曲』が流れる


結婚行進曲(婚礼の合唱)』は、リヒャルト・ワーグナー作曲の歌劇『ローエングリン(Lohengrin)』の劇中歌。
メンデルスゾーン『結婚行進曲』と並び、結婚式をイメージさせる場面でのBGMとして定番となっている。


その時、村のスピーカーで『熊が出た』と警戒を呼びかける。

猟友会のメンバーが『藤や』前に熊撃ちに集まる。

谷幹さんまたもや何度もぶつかりギャグ。


               


なんと寅が熊に追いかけられている!!

かなりの至近距離




交響曲第5番 『運命』 が流れる。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン 



満男、寅を遠くから発見して

満男さくらたちに走って知らせる。

満男「大変だ!伯父さんが熊に食われそうだよ!!

満男「寅伯父さんだよ!!

博「お兄ちゃんがあ!!



よろよろ走ってくる寅

追いかける着ぐるみ熊




               



加藤武さん「おーい!死んだまねしろ!死んだまね!

博「死んだマネをするんだ!

満男「伯父さん倒れろー!!

谷幹さん「シネー!!((^^;)


寅、バタっと倒れる。


風子「寅さーーん!!

さくら「…!!!!


               



熊は横にそれて遠ざかっていく。



第5番『運命』が鳴り響く。


追いかける猟友会のメンバー



ちなみに、熊と出合った時、絶対してはいけないことは

@死んだフリ
A背中を向けて逃げる



したほうがいいことは

@熊の顔から目を離さずにゆっくり後ずさりしていく。




風子、寅のかたわらに駆け寄る。

風子「寅さん…

目をつぶったままビビル寅。

風子「もう大丈夫よ

そろりと片目を開ける寅。


               


風子「私よ、風子

               



風子のテーマが静かに流れる。


寅「はあー…」と安堵のため息。

寅「風子ちゃん、よかったなあ…、
 結婚するんだってなあ、真面目な男と…。ふー…


と、また目をつぶる。

風子「ありがとう、わざわざ来てくれたのね、山越えして

寅「そうなんだよ、そうしたら熊に会っちゃった、ふーと目がペケ(^^;)

さくら駆け寄って

さくら「ねえ、怪我なかった!?

寅、さくらと気づかずに

寅「はあ、ありがとう奥さま、急に黒いものが出てきて、
 誰かなあと思ったら、さくらじゃないか。!!なんださくら!


このセリフは上手い演出!


               



寅は自分の足が熊にガブッとやられたような気がすると言う。


さくら「大丈夫ちゃんとついてるわよ

博「ちょっと血が出てるだけですよ


               


さくら「ええ!!

間一髪だったようだ((((^^;)

満男、寅の真っ二つに食いちぎられた雪駄持ってきて

満男「伯父さんの草履が!ほら!

さくらと風子、雪駄を見て唖然としている。


寅その食いちぎられた雪駄を見て


               




また気を失う。

ビヨヨ〜〜ン…。



               


博、雪駄を見て口ぱっくり。



               




風子とさくら、寅を起こす。

さくら「お兄ちゃんしっかりして!


カメラはセスナからの俯瞰構図となっていく。


メインテーマが流れていく。




               



みんな近づいてきて気絶した寅を担いで
小走りで『藤や』のほうへ走っていく。

養老牛温泉の上空からセスナでの映像



               




メインテーマが高まって。
遠く中標津の自然が映されていく。







               



とらやで別れてから数ヵ月後に、
いきなり、風子が真面目な男と結婚するなんて、
ちょっと話が安直&説明的かな。
トニーとはどうなったんだいったい…。
予定調和も良し悪しだね。

まあ、谷幹さんの熱演に免じてOKとしましょう。












【遠い旅の空から掲載記事画像


なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231217264378697_02/news/20080729-OYT8T00155.htm







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『風のガーデン』の緒形拳さん  緒形拳さんのアリア


2008年10月19日 寅次郎な日々 その377


この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。



緒形拳さんといえば僕にとってはあの『砂の器』に登場する島根県亀岳の三木謙一巡査だ。
あの純粋で人が良く、なによりも高潔な人格は緒形さんそのものだった。

テレビドラマは、1985年NHKドラマ『破獄』の緒形さんがとびぬけていい。


そして今、緒形さんの遺作となったテレビドラマ『風のガーデン』を襟を正して毎週この目に焼き付けている。
遠くバリ島にいてもあのドラマを見る手立ては実はなんとかあるのだ。あれだけはなんとしても見ようと思った。



緒形さんの言葉ひとつひとつが胸に染みわたる。

彼が演ずるのは主人公白鳥貞美の父親白鳥貞三。



第1話と第2話を見た限りでは、中井貴一さんと緒形拳さんが絶品である。


第1回 『スノードロップ』 花言葉は『去年の恋の名残の涙』

第2回 『エゾエンゴサク』 花言葉は『妖精たちの秘密の舞踏会』



全体としての物語は、絶縁関係にあった医師である息子が
不治の病に侵されたことをきっかけに故郷に帰り、
彼の父親や子供たちと最後の日々を過ごし、失ってしまった『家族』を人生の最後に取り戻していく物語だ。



そして、数日前の第2話で『緒形さんのアリア』を見ることができた。


第2話の後半、

祖父の貞三(緒形拳さん)が富良野の自宅へ戻ると老犬・蛍がいなくなったと弟の岳が泣いている。
貞三と一緒にガーデンへ探しに行ったルイと岳は、4kmも離れたグリーンハウスで倒れている蛍を見つける。
蛍はすでに息を引き取っていた。

蛍の遺体を泣きながら抱きしめる岳に貞三は静かにぽつりぽつり語りかける。




悲しむって言葉はね、
つらいって気持ちももちろんありますが
もともと愛しい(いとしい)って意味なんです。

愛しい、愛する、…大好きな言葉。 みんな同じ言葉の意味です。
愛しいから悲しい、もう会えないからつらい。
だから泣くのは全然かまいません。



             




おばあちゃんやお母さんが死んじゃった時、
おじいちゃんもルイさんもいっぱい泣きました。
覚えてるでしょう。

あの頃君はまだ小ちゃかったから、
不思議そうな顔をして、きょとんと見てた。

でも、今はもう君は大人になった。
大人になったから涙が出るんです。


でもねえ岳君。

生きてるものは必ず死にます。

おじいちゃんもいずれ死ぬ。

君だってルイさんだっていつか死ぬ。


死ぬ…ってことはね、

生きてるものの必ず通る道です。


君は犬の死に今泣いてる。

だけど、花が命を終え、枯れて死ぬ時は
いちいち涙流さないでしょう。

動物と植物違いはあってもどっちも同じ命なんです。

でも花は死ぬ時血を流さない、
だから人間はそれほど同情しない。
でも、おんなじ命なんですよ。



              



蛍がわざわざここへ来て死んだのは、
おばあちゃんやお母さんに早く飛びついて、
一刻も早く遊んで欲しかったからです。
今もうきっと二人に会えて嬉しくてキャッキャと遊んでます。

君とかルイさんとかおじいちゃんのことはたぶんもうすっかり忘れてるでしょう。

死ぬっていうことはそういうことなんです。

おそろしいことじゃ決してありません。


明日、裏山に埋めてあげましょう。




紅茶がさめますよ…。

熱いうちに、飲みなさい…。




                   






緒形さんありがとうございます。 




合掌













【遠い旅の空から掲載記事画像


なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231217264378697_02/news/20080729-OYT8T00155.htm







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『長靴を履いた寅次郎』 寅が思う労働のしるし


2008年10月7日 寅次郎な日々 その376


この文書には本編のネタバレが含まれます。お気をつけ下さい。


その昔、童話からヒントを得た東映のアニメで、宮崎駿さん達が作った『長靴をはいた猫』っていう物語があったが、
今回の話題は『長靴を履いた寅』



先日、第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」のダイジェスト版の作業をしていたら、
釧路の幣舞橋(ぬさまいばし)の下にある広場で風子と初めて話し、すぐに打ち解け、
大いにはしゃぐが、その時足が映り、なんと黒足袋を履いていたのだ!

さすが北海道の端、新緑の季節と言ってもやはりまだまだ冷えるのであろう。
渥美さんは冷えには弱いのでスタンバイ時にはよく足袋を履いているのだ。

山田監督も、高羽さんも、まさかカメラの端に映っているとは思わないで、OKを出したのであろう。
まあ、もっとも、ほんの一瞬であったから、観客は誰も気づいていないことは確かだ。
私が日本で最初に気づいたのかもしれない。



                   




実は、以前にもこういうことはあったのだ。

時々このサイトにもお名前を書かせていただいている敬愛する『寅福』さんが、第6作「純情編」の中で
寅の黒足袋姿を以前発見されていたのだ。

物語の後半、江戸川の河原で夕子さんが寅と話をするシーンで、最初は素足に雪駄だったのだが、
話し終わって寅が一人スタスタ歩いていくシーンでなんと黒足袋なのである。


 
                   



寅といえば、一年中素足に雪駄だと固定観念があるものだから、ちょっと驚いてしまうだけのことで、
まあそんなものかなと思えばそんなものなのである。

ただ、その直前までが素足なのでやはり、ちょっと不具合かななんて思ってもいる。

寅は粋な男だから、まあよっぽどのことがない限り頑固に素足に雪駄だ。
御前様に「いい年をして草履履きでは」なんて言われてもひたすら粋を通し続ける。



しかし、このシリーズをよくよく見ていくと実は結構いろんな履物を履いているから面白い。
意外なのは『長靴』をなんと7作品で履いていることだ。

あえて数えてみて思っていたより多いのでびっくりしたものだ。

夢のシーンは置いておくとしても、現実の『本編』の中でも

長靴以外で、ゴルフ靴、革靴、白いスニーカー、草履、なども履いている。





★まず第1作で江戸川土手で風に吹かれている寅はなんと
白黒のゴルフ靴を履いているのだ。
 これはテレビ版男はつらいよで、柴又に戻ってきた寅が最初に履いていたあの靴なのだ。
 こういう細かいところでもテレビ版からのファンの心を掴もうとしているのがわかる。



                 テレビ版の第1話オープニング          
                        





                第1作でも同じようなゴルフ靴を履いている。
                  



寅は、この第1作では、さくらの見合いでも
黒の革靴を履いている。


雪駄履き一筋になるのはこの見合い騒動のあとからである。



                  





★第5作「望郷篇」で、北海道で労働に目覚めた寅が、ふたたび帰郷した跡で朝日印刷に押しかけ、
 労働を開始する時に履いていたのがなんと
白いスニーカーなのだ。
 労働の夢破れて小舟で江戸川を流れていく時もまだ履いていた。

        

                  





さて、長靴である。

シリーズの作品をよくよく見ないとわからないよ。と仰る方々も多いと思うが、そうでもないのである。
寅が雪駄を履いていないとやはりバランスが悪いので違和感を生じてしまうせいか、そのシーンは
ヘンに印象に残ってしまうのである。


順番に紹介していこう。





★まず第5作「望郷篇」、節子さんの住む、浦安の豆腐屋さん『三十七屋』で働く寅の定番が長靴姿。
 全シリーズで最も長靴が目立ち、たくさん映った作品。額に汗して働く時、寅は気合を入れる意味も込めて長靴を履く。
 『自転車に長靴』はよく似合うのだ。



                  








★次に、寅が、あぶくのような人生を脱却するべく、しっかり労働を考えた第11作「忘れな草」で、
 網走の牧場で牧童として働く時に長靴を履いていた。
 これは当たり前といえば当たり前。牧場の労働で長靴をはかない人はいないだろう。
 しかし、これは、気合を入れた寅のその格好とその実力が見事に反比例した顛末だった。



                  








★次は第18作「純情詩集」でのラスト、新潟の六日町の小学校に雅子先生を訪ねる寅。
 さすがにこれだけ山深く、そして雪が降り積もっていると長靴を履くね。そしてやっぱり長靴を履いても転んでいた。



                  








★次は、第20作「寅次郎頑張れ!」で、平戸の藤子さんのお土産屋さんで働く寅。
 朝一番の仕入れは、やはり長靴だ。これはほとんどの人が覚えていないかもしれないが、
 よくよく考えると、汗をかいて労働している時の寅はやはり長靴を履く。
 この時はマドンナパワーでなんと朝5時に起きていた。



                  






★次もほとんどの人が気づかないかもしれないが、第35作「恋愛塾」で、
 鹿角市(かづのし)尾去沢(おさりざわ)にある水晶山スキー場のリフトに乗る寅だが、
 乗る前は雪駄履きなのだが、乗ったらいきなり長靴履いていた。
 このシーンは結構長く映るので、気づいた人もチラホラいそうな気もする。



                  






★次は第37作「幸福の青い鳥」で、美保さんが勤めた上海軒の出前をしゃあしゃあとする寅。
 とらやの前をのっしのっしと歩いていた時、長靴を履いていた。
 上にも書いたように、寅は汗を流す労働をする時、長靴を履くのだ。
 このシーンの長靴に気づいていた人はかなりのマニアだろう。


                  







★最後は第38作「知床慕情」、知床で順吉の仕事である牛のお産を白衣を一応着て手伝う寅。
 これはいかにも長靴を履いていないと出来ない仕事なので気づいた人も多いとは思う。
 これもやはりしっかり汗をかく労働。もっとも寅はあまり役立っていなかった気がするが(^^;)


                  






と、いうことで、寅は結構汗をかく労働をしているのである。

雪駄はいてテキヤばかりしているわけではないのだね(^^;)



あ…、それと、
ひょっとしてまだ『長靴』を履いているシーンがこの7作品以外にもあるかもしれない…。

もしまだあることに気づいた方がいらっしゃったらぜひメールお願いいたします(^^)









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なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

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追伸
: 臨時増刊号


なんとか間に合った 『おくりびと』


2008年9月14日 寅次郎な日々 その375


もう明後日9月16日に日本を出発するのであるが、予定を無理やりこじ開けて3時間だけ時間を作り、
動物的勘で昨日公開初日の『おくりびと』を走って午後に映画館に観に行った。
私が公開初日に映画を見に行くことなんて「男はつらいよ」以外ないことだ。

なんだかどうしても見なくてはならない映画だと強烈な『胸騒ぎ』がしたのである。
これを観ずしてバリには行けない気がしたのである。

公開初日ということや、滝田監督をはじめ、富山出身の関係者がスタッフキャストに多いこともあって
全席指定のその映画館は完全満員だった。この手のテーマでこんなことは超久しぶり。



なんとも清溢(せいいつ)な映画だった。
静謐(せいひつ)ささえ感じられる映画だった。
そしてなんとも淡々とした映画だった。

凛とした空気に満ちていた。

観てよかった。心からそう思える数少ない映画だった。



         




この1年で観たDVDも含む全ての新作日本映画の中でもっとも私の心を打った映画だった。



誰にでも必ず訪れる死。
愛する人との永久の別れ。

そして、死びとを愛を込めて送り出し、棺に収める 納棺師。

病院での始末とは根本的に違う『古式納棺の儀』

厳かで厳粛な所作、

そしてそれらを包み込む透明な空気の中の山形庄内の四季、月光川、鳥海山、

人々の無理解や差別感の中で、それでも自分の新しい道を今徐々に信じつつ歩み続ける大吾。

ラストでの父の気持ちを想う大吾の果てしなき涙。



                     




哀しくどこまでも白い空に響くチェロ。
久石譲さん作曲の「おくりびと」のメインテーマだ。
この曲は果てしなくいい。
ナウシカのメインテーマも美しいが、この『おくりびと』のメインテーマの澄んだ音色は絶品だった。
彼は遂にやったのだ。



         



なによりも小山薫童さんの見事なオリジナル脚本。つまり『本』がすばらしい。
これは「博士の愛した数式」の時と同じだ。
本がよければ7割がたは成功したといえるのだ。
そしてすぐれたバランス感覚の滝田洋二郎さんの演出。

慧眼としかいいようのない原案の映画化を推した本木雅弘さんのその感覚、
そして役者としての彼のたたずまいがそれ以上にすばらしい。
彼の納棺師の『所作』がお能のように美しいのは観ればすぐ分かる。

その傍らで、山崎努さんの人生をかけたニュアンスと存在感も渋く大きく光る。
彼の芝居ほど説明の不要な芝居もないだろう。もう彼の真似は現存する役者では誰も出来ない。


笹野高史さんのいぶし銀の名演技、とラスト近くでの彼への私たちの大きな驚き。
今回も実にいい役もらってました。そしてそれに見事に応える役者魂。
凄すぎます笹野さん。

そして何よりも忘れちゃならないのが、今回、地味だが、山田辰夫さん。
出番は少ないが彼がほんとよかった。この映画は彼が役に出会った映画でもある。
私は彼の芝居にも泣きました。研ぎ澄まされたビビッドな感覚だった。



         



ぶっちぎりの本木さん、山崎さん、笹野さん、そして山田辰夫さん、

そして…吉行和子さんの合わせた手の指。

最後に…本木さんの頬を伝うあの涙。


しかしそれだけではない。

重く狭くメッセージ中心になりがちなこの特異なテーマを
映画の随所に小さな笑いを施すことによって、この映画がそれらの笑いによって
上質のふくよかさをかもし出しているから、う〜んこれはほんとたまらない。
「映画」として見事に成功している。



この近年まれに見る美しい映画の感想はバリに戻ってから、襟を正して腰をすえてもう少し書こうと思う。
たいして書けないかもしれないがそれでももうちょっと具体的に感想を書きたい。

映画館で金を出して観て、観終わった直後に、
またもう一度金を払って二度観たいと思った映画なんてそうそうはない。

第21作「寅次郎わが道をゆく」で留吉がレビューを見た直後に「男子一枚」といきまいて
またチケットを買って観に入るが、まさにあの気分だ。


日本映画は今大きな財産を得た。


そしてこの奥ゆかしき厳粛な日本文化を、その生死感を、父と子の絆を、
外国人よりも何よりもまず私たち現在の日本人が見るべきなのだ。



2008年9月14日 臨時増刊号でした。











とら2


「ほら、見な、あんな雲になりてえんだよ」


2008年9月13日 寅次郎な日々 その374


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。
   



いやはや、あと数日で日本出発である。
9月16日に大阪に行き、関西空港からバンコクへ旅に出る。

で、最後の展覧会も大詰めなのと家の後片付けにも時間をとられ
この10日間ほとんどパソコンをいじれていない。っていうか睡眠時間も削っている…(TT)

そういえば、
第19作「寅次郎と殿様」の中で、寅が『マリ子』さんを探すために、柴又中を
駆けずり回って夕方へとへとになって戻ってくる哀れな姿があった。





寅、源ちゃんに担がれてとらやに戻ってくる。
目がペケになり、よろけながらながら、



寅「
最初の50軒目までは何とか数えてたけれど、
 それから先はもう…、
 目は霞むし、もうふらふらだよ…



おばちゃん「
おふ、お風呂が沸いてるからお入り

寅、よろけてこけそうになる。

おばちゃん「
あら、大丈夫かい

寅、階段に倒れて手すりにつかまりながら

寅「
いや…それより先に、ちょっとでもいいから寝かせてくれよ

おばちゃん「


這いずるように階段を上がりながら

寅「
あれだね、おばちゃん

おばちゃん「
ん?

寅「
東京中探すのには…4日や5日じゃ、無理だねえ…

這うように階段を上がって、エネルギーがゼロになり、
ついにガタガタガタずり落ちてしまう寅。




                 


おばちゃん「
あああああ…

源ちゃん「
大丈夫ですか」源ちゃん寅を起こそうとするが

寅「
ここで寝るここで寝る…ここで寝るよ、おーいここで寝る」と、弛緩している。

寅、ヘロヘロ

みんな困った顔

             




ここ10日間の私はあの寅ように↑ヘロヘロのヘトヘトのガタガタなのだ。



それゆえに第19作「寅次郎と殿様」本編完全版完結編があと少しのところで
止まったままになってしまった。あ〜〜〜〜!もう数日だけあればアップできたのだが、残念!

で、完結編のアップはバンコクに10日間滞在したあと、バリに戻り、
ADSLの契約を再開したあとの9月30日ごろだと思う。

完結編を待ちわびておられたほんの一部の皆々様(^^;)
どうかもうしばらくお待ちください。
バンコクを10日間旅してバリに戻った後、また作業を開始し、9月30日にはなんとかアップします!



しかし、これは毎回書いているように、
日本滞在というのは、私にとって『稼ぎ(生業)』の日々と同時に『充電』の日々でもあることを
ご理解いただければと思う。
どうしても、少しでも空いた時間は「自分から吐き出す」よりも「自分の中へ取り入れる」ほうに
行ってしまうのである。そうでないとそのあとに「吐き出し」ができない。

で、バリに戻った9月末以降はまじめに本編もダイジェスト版も日記も制作していくつもり。


それではみなさん、
数日後の9月16日からふらふらと旅に行ってまいります。

それゆえ明日からバリに戻るまでの2週間ほどはサイトの更新作業ができません。
9月末まで気長にお待ちください。


ああ…、もうこの放浪癖は生涯消えそうにもない。
私が寅に惹かれるのもここのところ。
寅と私は同じ渡り鳥の業を背負っているのだ。


第9作「柴又慕情」で、
さくらが「どうしてまた旅に行っちゃうの?」
って聞いた時、江戸川土手にねっころがりながら寅が空を指差し言うセリフ、

ほら、見な、あんな雲になりてえんだよ… 

結局は、私の人生もこの言葉に尽きるのだ。


             





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「倅(せがれ)」と「ぼくの伯父さん」


2008年9月8日 寅次郎な日々 その373


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
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先日TBS東芝日曜劇場傑作選の中から1979年放送、
山田洋次さん高橋正圀 さん原作の『倅(せがれ)』というテレビドラマを見た。

渥美さんが主演で出ているからだ。

演出は宮武昭夫さん。



で、ドラマを見ていくうちにどうもどこかで見たことのある展開だなと思ったら、なんのことはない、
それから10年後の1989年に作られた第42作「ぼくの伯父さん」とかなり似ているのである。


青年期を迎えた一人息子勝利が密かに自転車で信州美ヶ原方面へ旅に出る。
往復200キロの道のりである。

知らない間に息子に自転車旅行をされてしまった親父(渥美さん)は怒っている。
親父の名前は金之介。自転車屋を営んでいる。
もちろん親父はそれ以上におろおろ心配している。

店の名前はなんと「
タイガー自転車」! それじゃ寅だよ ヾ(^^;)

向かいの喫茶店「バンビ」の親しい女性(音羽信子さん)の名前はなんと
お千代さん
お千代さんの娘さんの恵ちゃんは勝利の幼馴染。これはあの大竹しのぶさんの実の妹さん。


         






テレビドラマの「倅」のほうは高野浩幸(旧高野浩之)さん。上に書いたように自転車で旅をする。
10年後の満男はご存知のようにバイクで名古屋、そして佐賀県へ。
旅をする道々の雰囲気が二人ともそっくり。



      
   







まあいろいろあって、無事帰ってくることが分かった後も、父親は息子が帰ってきた時のシュミレーションを入念にしている。
で、いざ帰ってきたら
意固地に新聞を読むふりをしながらなんとか息子に謝らそうとする。
このあたりはもう後の「ぼくの伯父さん」における博そっくりである。



      
  




お千代さんは勝利のために
ご馳走を作ってあげる
「ぼくの伯父さん」でもおばちゃんや工場のゆかりちゃんが満男の好物を作っている。

そして青年が家に帰還した時に
町の人々は拍手で迎えてやるところもまったく同じ。



      
   





偉そうに「怒る準備」をしている金之介にお千代さん(音羽信子さん)は
金之介(渥美さん)の若い頃に父親にどれだけ迷惑をかけていたかと勝利をかばう。

「ぼくの伯父さん」ではタコ社長やおばちゃんは寅を引き合いに出して寅よりましだと満男をかばう。


まあいずれにしても二つの作品とも主題は「
親の心、子知らず







それでも帰ってきた青年たちは勝利も満男も二人とも父親に厳粛な気持ちで謝るのだった。


       
   





で、ここで両方に同じ一発ギャグが登場!


「倅」では、金之介が息子の勝利を見て、

金之介「
あれ?このやろうしばらく見ない間にずいぶんでかくなったね、
     俺がこうやって見上げなけりゃ見えないもんな!


お千代さん「
バカだねえ、あんた座ってるからだよ、フフフ



10年後の「ぼくの伯父さん」では、

おばちゃん「
背なんかこんなに高くなっちゃって見上げるようだよ

さくら「
それはおばちゃんが座ってるからでしょ、フフフ


こんなにも同じとはお釈迦様でも知らぬめえ(^^;)
山田監督は実にこういう再利用を頻繁にされる。



       
    





さらに、「倅」の中ではもう一つこういうギャグもある。

十円玉がもう無いと言う信州からの勝利の電話の言葉を勘違いして、
金之介は大騒ぎしながら自分側の電話に十円玉を入れ始める。

これは「倅」から遡ること4年前、1975年封切りの、
第15作「相合い傘」で、
十円玉を、電話を受けているさくらに渡そうとするおいちゃんとおばちゃんそっくりである。



  
     






また、「倅」では、「男はつらいよ」でおなじみの太宰さんや三崎さんも、ご近所さんやおふくろさんで出演。


     




そしてラスト。
この日曜劇場のお決まりであるところのさりげなさがなかなかいい。

つまり、金之介が疲れすぎてついうとうとと寝ているところでスッと終わるのである。
無理にまとめないで、スッと終わる、この日曜劇場のお決まりごとが、
青春期の私には心細くもあり、渋くもあったことを覚えている。
何かシビアな大人の現実世界を見るようだった。

そういえば同じ山田洋次さん原作の日曜劇場「あにいもうと」のラストも倍賞さんが疲れ果てて寝ているところで
終わっていたことを今思い出した。

金之介の勝利を思う親心が渥美さんの名人芸によってたっぷり表現されていて、渥美清ファンには
たまらないドラマだと思った。



             





ちなみに息子役の高野浩幸(旧高野浩之)さんは、この1年後に、なんと
第26作「かもめ歌」で、
葛飾高校の定時制クラスの生徒さんとして、ちょい役の田中美佐子さんらといっしょに出演している。
ちょうど「倅」が作られた翌年の1980年だった。

だから、なんとあの二人は親子を前年に演じていたのであった!知らなかった〜。

どおりで、親しげに寅に話すと思ったよ。



             







日本滞在最後の展覧会で多忙がピークを迎え、手がまったく空きません。
第19作「寅次郎と殿様」完結編は9月14日ごろになると思います。





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ロケ地めぐり.満男の通う『城東大学キャンパス』


2008年8月30日 寅次郎な日々 その372


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
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いやあ、ここ二週間は殺人的な忙しさで、なかなかサイトの更新ができないでいるが、
どうやらこのままバリへ発つ直前までこの忙しさは続きそうだ。

とはいっても展覧会というのは、ひたすらお客さんを待っている時間も多いのだ。
だから忙しいといえば忙しいのだが、短い空き時間が手に入ることも多い。


先日も、そういう時間を利用して、満男と泉ちゃんの恋の顛末をメモ帳に考察し直していた。
あの東京駅での別れのシーンなどを思い浮かべていたのだ。

あの頃はまだ携帯電話が普及していないので、さくらは満男が通う八王子の『城東大学』の学生課に電話をし、
校内放送で呼び出してもらっていた。そういう時代だったのだ。

それで、満男はキャンパス内を走り、京王バスに飛び乗るのだ。そしてその直後に閉まり出発するバス。
バスの待ち時間ゼロ秒!ここが効率がよかった。




             




あのバスに乗り遅れたら、泉ちゃんとのファーストキスは実現できなかったのである。



で、今回は「満男の大学」である。

満男は『城東大学経済学部経営学科』に在籍していた。

設定では八王子にあることになっているが、八王子付近にもちろん「城東大学」はない。

私は第45作「寅次郎の青春」本編完全版制作時にちょっとロケ地を調べてみたのだが、
見当がつかなくて、諦めてしまった。

しかし、満男が飛び乗った京王バスがきちんと大学の前で止まってくれる由緒正しい?大学を
このまま知らぬ存ぜぬでいいものであろうか…、と気にはなっていた。


満男のキャンバスはそれなりにしっかり映るのだが、俯瞰映像や屋上からの映像など、全貌は映らない。

そこで今回も「必殺ストリートビュー」登場である。
しかしとりえず。航空写真でざっと見ても、どの大学も丘陵地や森林中にあることが多い。
実際何校か試してみたがなかなかストリートビューではキャンパスがしっかり見えないのである。
これではらちがあかない。

それにしても、あの『京王バスの停留所』以外になんの手がかりも無いのだ。

上で書いたように校舎は映るが、八王子付近には膨大な大学の数があるので、
ひとつひとつローラー作戦で確認していくと半日以上かかってしまう。
だからそういう野暮なことをなるべくせずに頭を使いたいところである。


ちなみにおおよそロケに使われそうな八王子駅周辺の大学及び施設候補は以下のとおりである。
もちろん小奇麗な女子大を使った可能性も十分考えられる。
もうこれだけで30校近くもある…とにかく膨大な数なのだ。トホホ…。





中央大学
八王子市東中野742ー1
0426-74-2144 多摩モノレール中央大学・明星大学駅から徒歩1分。京王線多摩動物公園
からは徒歩10分、京王線橋本駅や聖蹟桜ヶ丘駅、JR豊田駅からのバス便



拓殖大学
八王子市館町815−1
0426-65-1441 最寄駅は京王高尾線高尾駅ロータリーよりバス有り5分。広大なキャンパス、
高尾山も近く環境抜群。めじろ台周辺西八王子周辺・八王子駅周辺・北野駅周辺が人気地域。
3年次より文京区へ校舎が変わる学部有り。


法政大学
町田市相原町4342
0427-83-2060八王子市と町田市の境界線の所に位置する。アクセスは京王高尾線めじろ台・
中央線西八王子及び八王子駅よりバス便。その他横浜線相原駅よりバス便有り、めじろ台が一番
便利で、バス10分。


  
創価大学
八王子市丹木町1−236
0426-91-4617最寄り駅は中央線八王子駅北口よりバス20分中央高速インターチェンジより
車で5分。大学の前には富士美術館があり、女子短大も同じ敷地内にある。



杏林大学
八王子市宮下町476
0426-91-0011 最寄り駅は中央線八王子駅北口よりバス40分中央高速インターチェンジより車
で20分。緑に囲まれた静かな環境



工学院大学
八王子市中野町2665−1
0426-91-0011最寄り駅は中央線八王子駅北口よりバス20分中央高速インターチェンジより車で5分。
本校は新宿西口なのだが、1〜2年は八王子校舎で学ぶ。



東京純心女子大学
八王子市滝山町2−600
0426-92-0326最寄り駅は中央線八王子駅北口よりバス25分中央高速インターチェンジより車で8分。
バス通りから正面の小高い丘にそびえる校舎


共立女子大学
八王子市元八王子町1-710
0426-61-9802 最寄り駅は中央線高尾駅・京王高尾線高尾駅。
JR中央線高尾駅近くよりスクールバスがある。八王子キャンパスは国際文化学部は4年まで、家政
・文芸学部は1〜2年次まで、その後は千代田区神田の本部校舎へ。



帝京大学
八王子市大塚359
八王子キャンパスは経済・法・文学部0426-76-8211最寄り駅は京王線聖蹟桜ヶ丘バス10分。
多摩都市モノレール・大塚 帝京大学駅から徒歩約13分 



明星大学
日野市程久保2−1−1
0425-91-5793 日野キャンパス:最寄駅は多摩都市モノレール中央大学・明星大学から通学専用
エスカレーターで5分。八王子市と日野市の境界の所に位置



東京都立大学
八王子市南大沢1−1
0426-77-1111最寄り駅は京王相模線南大沢徒歩3分



東京都立科学技術大学
日野市旭が丘6−6
0425-83-5111最寄り駅は中央線豊田駅徒歩20分八王子からのアクセスも便利。



多摩美術大学
八王子市鑓水2−1723
0426-76-8611最寄り駅は中央線八王子駅南口よりスクールバスあり。
横浜線橋本駅からもスクールバス有り。八王子ー橋本間の路線バスもある



東京造形大学
八王子市宇津貫町1556
0426-37-8611最寄り駅は横浜線相原駅より、徒歩でも15分。



東京工科大学
八王子市片倉町1401−1
0426-37-2111 最寄り駅は横浜線八王子みなみ野駅(新駅)より スクールバス約5分。



東京薬科大学
八王子市堀之内1432−1
0426-76-5111 最寄駅は京王線平山城址公園駅よりスクールバス5分。
24万平方メートルという広大なキャンパスは、豊かな緑に恵まれている。



東京家政学院大学
町田市相原町2600
0427-82-9411八王子市と町田市の境界線の所に位置する。アクセスは京王高尾線めじろ台・中央
線八王子駅よりバス便有り。その他横浜線相原駅よりバス便有り、めじろ台が一番便利で、バス10分。



戸板女子短期大学
八王子市犬目町139
0426-23-5225最寄り駅は中央線八王子駅北口よりバス25分中央高速インターチェンジより車で
10分工学院大学八王子校舎の近く。



創価女子短期大学
八王子市丹木町1−236
0426-91-2201最寄り駅は中央線八王子駅北口よりバス20分中央高速インターチェンジより
車で5分。短大の前には富士美術館があり、創価大学も同じ敷地内にある。



山野美容芸術短期大学
八王子市鑓水530
0426-77-0111最寄り駅は横浜線みなみ野駅(新駅)よりスクールバス有り。



日本文化大学
八王子市片倉977
0426-36-5211最寄り駅は横浜線片倉駅 徒歩5分。
法学部のみこじんまりとした大学だがアクセスは便利。



大妻女子大
多摩 多摩市唐木田2-7-1
最寄り駅は小田急多摩線唐木田駅徒歩5分。




実践女子学園
日野市大坂上4-1-1
大学(TEL042-585-0311)短大(TEL042-584-5000)の最寄り駅はJR中央線日野駅徒歩15分
実践女子短期大学は日野市役所の東隣り大学は市役所の西へ200m高台の場所にある。



帝京科学大
山梨県上野原市八ツ沢2525
TEL0554-63-4411最寄り駅はJR中央線上野原駅よりバス8分、新宿から1時間15分。



帝京大学薬学部
神奈川県津久井郡相模湖町寸沢嵐1091-1
TEL0426−85−1121
帝京大学経由三ヶ木行13分「帝京大学」下車徒歩3分又は三ヶ木行「寸沢嵐」下車徒歩10分。


国立東京工業高等専門学校
八王子市椚田町1220-2
TEL 0426(68)5126・5127


日本自動車整備専門学校
八王子市館町2193
TEL:0426-63-3211設置学科:



それで、今回は『
京王バスの乗り場がキャンバスの目の前』ということを重要視してみた。
こういう場合『
バス停の名前に必ず大学名が入る』のである。これはおそらくほぼ確実。


JR八王子駅を出発として、南の丘陵に大きく広がるたくさんの大学群に焦点を絞り、かつ、
『京王バスで停留所の名前に大学名がついているもの』を、調べ、大学のHPで
建物をチェックしていった。

まず目立つものでは、

東京家政学院大学、法政大学、拓殖大学、東京工科大学、多摩美術大学、東京薬科大学。

このあたりが、まあまあ駅から近距離で京王バスの停留所にその大学名がある。


それで順番にそれぞれの大学のHP及びその関係サイトで調べていくと、…。

ありました!!

6番目の『東京薬科大』が写真そっくり。

ちょっと見比べてください↓





            






      




        煉瓦色と白のコントラストが基調の校舎。
赤丸で囲んだところが映画↑の2つの校舎

       





この渡り廊下↓は、上の航空写真でも左奥に見ることが出来る。




       



        




満男が走っていた校内の道もありました。


     




と、いうことで、満男の通っている『城東大学』のロケは
八王子市堀之内1432−1に位置し、
明治時代にすでにその前身がある超伝統校であり、
最寄駅は京王線平山城址公園駅よりスクールバス5分。
24万平方メートルという広大なキャンパスは、豊かな緑に恵まれていて…。
…という
『東京薬科大』でしたあ〜〜〜!!


やったー、1時間半で見つけたぞ!今回は早かった。










【遠い旅の空から掲載記事画像


なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231217264378697_02/news/20080729-OYT8T00155.htm







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ロケ地めぐり.堤鞠子さんの職場


2008年8月21日 寅次郎な日々 その371


ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。
   



ここのところ生業が忙しくてほとんど本編の更新作業が進んでいない。
このぶんだと第19作「寅次郎と殿様」完結編は8月末になりそうだ


そこで今日はこの第19作のロケ地巡りをチラッと紹介しよう。
もちろん、実際に現地に行くお金も時間も無いので「ストリートビュー」で巡ったものだ。

しかし、この「ストリートビュー」は前回も書いたがなかなか優れものだ。
東京であればたいていのところは巡れる。

で、今回はほとんどの人がまだ探し当てていない場所に挑戦してみた。

鞠子さんの職場である。



彼女は住まいは青戸団地だが、仕事はそこから結構離れている。

映画で見る限りは『東京港』のどこか…、ということは分かる。
しかし、映画では地名が見当たらない。

唯一さくらの乗ったバスが止まった場所に
「オロナミンC」「ボンカレー」のCMが書かれた倉庫が見えるだけだ。
しかしこれは数少ないとっかかりだ。
おそらく「大塚製薬」の倉庫だと思われる。


これだけではさすがにお手上げ…。

しょうがないので
『脚本』を見てみる。


脚本には「晴海」と書いてあった。

これでいきなり見つかる可能性がぐんと出てきた。

まず、手始めに
『大塚製薬のサイト』に行くと案の定晴海に支社がある。


東京支店: 東京都中央区晴海4-7-4

これを「ストリートビュー」で見てみるとこうなった。↓


赤い縦長の看板にはかろうじて
「大塚製薬株式会社」と書いてある。
第19作の頃は高くない倉庫だったが、この写真によると建て替えてちょっと高層になっていた。

        




で、今度は航空写真で見てみる。

おお!なんとこの写真の倉庫は
「大塚倉庫」と書いてあるではないか!
これでまず60パーセント決まり。

あとは、「ストリートビュー」でそれ以外の同じ建物をしっかり探すだけだ。





第19作当時は、「大塚倉庫」は、かなり低い倉庫。
オロナミンCやボンカレーのCMがペンキで
書かれていた。すぐ向こうにグレーの倉庫が見える。


        




ちなみに、ちょっと調べてみると、今よりもう少し昔は、すでに高層になってはいるが
あの壁に↓の様にオロナミンCなどのCMがペンキで書かれてもいた。
そして向こう側にやはり同じグレーのビルが見える。

        




それでその大塚倉庫の裏の「グレーの建物」を特定するべく航空写真に戻る。
そして見つけたのが
「東洋埠頭」という名前の倉庫。



      


仕上げは「ストリートビュー」でそのグレーのビルと同じ形を探す。

すぐに見つかる。

さくらのバスが止まった場所から見えるあのグレーの建物は30年後の今も健在だった!



「東洋埠頭」の倉庫

左の写真が映画の中の東洋埠頭。  右が現在の東洋埠頭

      



これで80パーセント把握!

こうなるとあとは楽。



引き続き「ストリートビュー」で探す。

さくらが降りたあのバス停もすぐ見つかった。


バス停の名前は『晴海埠頭』


               さくらが降りたバス停「晴海埠頭」向こうに見えるのは現在の「大塚倉庫」↓

          



↑の航空写真で、黄色い人が立っている場所が、さくらがバスを降りた所。




さくらを乗せたバスが曲がっていった交差点も発見。
「晴海5丁目」の交差点だと分かる。

一番左隅の建物は「公社晴海3丁目住宅」その向こうに「東京晴海海員会館」や「区立晴海住宅」も見える。


         



今回の「ストリートビュー」には運よく「現在の路線バス」も画像に映っていた。
これでさくらが乗っていた1977年のバスと、それから30年後の現在のバスが
見事に比較できるのである。う〜ん恐るべし「ストリートビュー」


     




下の地図で黄色い人間が立っているところが上のバスが曲がろうとしている晴海5丁目の交差点。

    


そして鞠子さんが勤めている会社の目の前に広がる運河は
晴海運河であることも地図から分かった。
(脚本でも運河のそば、というような表現があった)



ただ、
鞠子さんの会社の場所を十メートルほどのピンポイントでこれ以上探し当てることは
かなり当時と様子が変わってしまっているゆえにちょっと無理だった。


まあ、「東洋埠頭」の倉庫から晴海運河までのどこかだ。
バス停から徒歩3〜5分の範囲ではある。



映画では運河が目の前で、船も間近に見えたので
おそらく、
航空写真で見る限りは、鞠子さんが勤める会社は晴海4丁目の晴海運河沿い、
現在の「東洋埠頭の倉庫」の隣の「楠原輸送」付近かもしれない。


             




これ以上のピンポイント探索は、
私が敬愛する「風工房さん」や「小寅さん」に現地に出向いていただいてしっかりおまかせしよう。






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寅次郎な日々370 ユニークなロケ地巡り.究極のマップ ストリートビュー



2008年8月10日 寅次郎な日々 その370





ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。



Googleは、ついにやってはいけない…かもしれない、究極のマップを作り出した。
アメリカでは昨年から登場していたらしいが、日本では先日からだ。

名づけて『
ストリートビュー

地図上の人物をクリックすると、その道路からの景色が10メートルおきくらいに映し出されるのだ。
そしてその映し出された映像の矢印をクリックすると、映像を見ながら移動できる。
人物をドラック移動することも出来、回転マークで画像を上下左右斜めにぐるりと360度回せる!。
その画像を拡大することも出来る(画像は荒くはなる)。

もちろん車が入りにくい路地などはカバーされていないし、時刻も季節もまちまちだ。

試してみてすぐに思ったのは、こんなことが許されていいはずがないだろう…、ということだった。
個人の家や間取り、車の車種、歩いている人などが、若干ぼかされているとはいえ、
危ない状態でそのまま映っている。

悪く言うと「覗き見」を公然と出来る状態が何パーセントかの要素で確実に存在しているのである。
人間と言うのは弱いもので、だれも見ていなければ、やっぱり下世話な気持ちでいろいろ見てしまうものなのだ。
たとえば関心のある誰かの詳しい住所まで知っているとすれば、とりあえず、それなりに大きな道に面していれば
おおよその特定が可能になるのだ。これはある意味怖いことでもある。


そうは言っても私も試してみたくなった。
まず、自分の大阪市の実家、自分の昔すんでいた東京豊島区の家、東村山の多摩湖町の家、
教師時代の豊島区の中学校などをすぐに見て回った。
下世話だがこういうものは面白いのだ。家に居ながらにして町を巡れるのだから。


Googleが言うぶんには、1都市をカバーするには3〜4カ月を要するらしい。
相当の台数の撮影車を稼働しまくって、今後もカバーエリアを順次拡大していく予定だそうだ。

まあ、時間の問題であらゆるクレームが噴出してくるのは間違いない。
Googleもそんなことは承知で、それらのクレームに対応しながらこのサービスを綱渡り的に拡大させていこうとしているのだろう。


で、私のほうだが、私は他人の家をピンポイントで覗く趣味はない。そういうのは気持ち悪いものだ。

だからもっぱら【ロケ地めぐり】のみに使っている。

まだまだそんなに多くの都市で見れるわけではない。
今のところ東京都とその近隣県の一部、大阪京都奈良神戸、淡路島 、仙台、函館、小樽、札幌などだ。

それでも結構なロケ地めぐりができる。

ちょいと試しに3時間ほどかけてめぐってみたロケ地をさらりと紹介しましょう。








東京



あの第1作のオープニング、モノクロの映像が実に印象深かった。
あのシーン、満開のさくらの花びらのバックに
水元公園の池と橋が見える。

「ストリートビュー」の方は冬の水元公園。


 
            





第14作「寅次郎子守唄」では京成電鉄の沿線が舞台になっている。

博がお世話になり、赤ん坊が御世話になり、おいちゃんまでが入院した
吉田病院。そしてその横の線路高架下
当時と雰囲気はあまり変わっていない。映画の中ではこの吉田病院は柴又にあることになっているが、
実はこの病院は「京成関屋駅」や
東武伊勢崎線「牛田駅」のすぐ北、徒歩3分場所にある。
左は病院側、右の本編は病院の向こう側。



              





下の写真も第14作「寅次郎子守唄」でのロケ地。マドンナの京子さんの最寄り駅である
京成電鉄の「江戸川駅」すっかり新しくなっていた。




 →    





下の写真も第14作「寅次郎子守唄」でのロケ地。あの大川弥太郎たちが毎週合唱の練習をする
京成関屋駅から
徒歩10分の『聖和幼稚園』
横の路地。幼稚園は新しい建物になっていた。



              









小樽



小樽と言えばまずは第15作「寅次郎相合い傘」だ。

あの放浪の旅の最中お金が無くなった、寅、リリー、パパは駅の待合室で野宿をするが、
この駅が函館本線  『塩谷駅』であるとこをつきとめたときの感動は今でも忘れられない。

(このあと5年も後に、実は隣の駅である『蘭島駅』だとわかるのだが…)



駅の遥か向こうに見える海岸線や山々の地形だけが頼りだった。、結局なんとか探し当てたのだが
後にも先にもあんな難しい作業は無かった。

で、今回「ストリートビュー」で訪ねてみると、駅が変わり果てているのはともかく、駅前の地形が
変わるほどの道路工事が行われていたのだ。駅前に道路が出来、近場を見る限りは
もうロケのころの面影は無いもなかった。



わずかに見える海と山々の形だけが頼りだった。





★このメールに添付しました『相合い傘での駅舎全ぼう』が映っている静止画像の
一番左上の2つの小さな黒く細いものは船だと思われる。

もしそうだとしたらあの左上は海!ということになり、
同じく添付しました近年写された『駅裏の丘からの眺望風景』と
中景の丘陵や遠くの山の形、海の見え方も同じ。水平線が似てくる。塩屋駅の確率が高くなった。


 →   





現在の塩屋駅裏の丘から海を撮影した画像↓映画の上の拡大図と似ている。
■(
今から思うと『蘭島駅』からの眺めもほぼ一緒だからややこしかったようだ)            

 





遠景右の山々が同じ形


    
   






実は途中、一度立て替えられてこのようになっていた。↓






そして現在三度び立て替えられておもちゃのような小さな駅になっている。







★向かいのホームへの階段、高架連絡橋は今でもまったく同じかもしれない。

      


この函館本線『塩谷駅』は5年後の2010年9月末に、隣の駅『蘭島駅』だったことが判明した。
駅や裏山から見える風景は隣の駅ゆえにほぼ一緒だったことがややこしくした原因だった。
さらに駅舎にしても高架連絡橋にしてもこの二つの駅はとても似ていた。これは間違えますよ。(((^^;)






小樽に入ってからパパは初恋の恋人探しを敢行する。

小樽市東雲町付近。水天宮に至る急な石段を上っている3人。


彼らの右下に『小樽聖公会』の赤い屋根が見える。

現在は周りの風景や階段周辺はちょっと変わったが『小樽聖公会』の屋根の雰囲気は同じ。




          




同じく兵頭パパが初恋の人に会いに行った喫茶店ポケット
場所は小樽市緑町1丁目あたり

原田歯科医院の真横に喫茶店ポケットはあった。


現在原田医院はビルになり、その横にあったポケットは無くなり、どこかの事務所前の駐車場人っている。
その横は今は「緑町郵便局」。


                                            
原田歯科医院の看板が見える。
     


駐車場になっているところがちょうどポケットがあったところ
     


    





そして次はあの有名な『
小樽運河』に行こう。

こいつはなかなか特定が厄介だった。

小樽運河でロケしたのは当たり前なのだが、この運河、結構橋が多いのだ。
運河南から「浅草橋」、「中央橋」、「竜宮橋」、「北浜橋」である。

それでもこの作品ではあのロケ地で
運河の端が映ることから、全長1200メートルほどの運河の
どちらかの端っこでロケしたであろうことが推測できる。


ちなみに、
数年前に出版された「寅さん完全最終本」なる本にはこのロケ地が「竜宮橋」と書かれてあって、
いろいろ紹介されているが竜宮橋は実は運河の一番端の橋ではない。基本的なミスだと思われる。



         
運河が向こうで終わっているのでロケは一番端にある橋である。
        



この時点で二つに絞られる。端が見えると言うことは…、


つまり南の端の「浅草橋」でロケた」したのか、
それとも北の端の「北浜橋」でロケしたのかだ。




しかし、南の「浅草橋」から見た風景だとすると、余市方面にあの有名な
レンガ倉庫群が間近に見えるはずである。
もちろん1975年当時よりずっと前からあの倉庫群はあったのだから。
(もっとも今はみんな中だけリニューアルされて飲食店に変わってしまったが。)


ちなみに
第22作「噂の寅次郎」のラストでは早苗さんが故郷の小樽へ帰ったということで、
観光スポットとして有名な南側の「
浅草橋」からの冬ロケが行われた。(もちろん風景だけ)



  第22作「噂の寅次郎」での「浅草橋」ロケ 余市方面を望む                    現在、観光名所になった「浅草橋」より余市方面を望む。                          →         
                               


                                       
これでまず、第15作は一番北の「北浜橋」でロケしたことが推測された。


そいかし、物的証拠がないと、ギリギリではこれも「推測」でしかないのだ。

そこで「
ストリートビュー」に登場してもらった。

そうすると証拠が出てくる出てくる。当時と激変していると思われた運河北側(北運河)でも、
まだまだ同じ建造物は結構あったのだ。

ここにその一部を紹介しよう。


「北浜橋」から見た北側が特に見た目はもう違う街かと思うくらい激変していた。特にあの巨大な工場(缶詰工場)はなんだ…。


     


しかし上の巨大な工場の後ろに赤レンガの倉庫が見える。あの煉瓦は当時もあった。あのまま。
後で調べると硝子工芸のギャラリーのようなものになっていた。
赤丸参照








一方、橋から眺めた南側もかなり雰囲気が変わっていたが、
左岸に見える
缶詰工場本社のあり方が当時のままの部分が見受けられた。
特に一、二階部分や、煙突など…

兵頭パパの背中向こうに当時のビルの一部が見える。




        
    


それと、橋の欄干の質感や形が同じ。

それと、当時から橋の
欄干の真ん中が凸字型になっていて、河を眺めることが出来ていたところも、今も同じ。



   橋の真ん中が凸型になっているのがわかる↓。                     よく見れば橋の欄干の形が当時と一緒。

       






そしてダメ押しは寅たちの背中向う岸に見える何軒かのトタン屋根煉瓦倉庫が今も保存されていることだ。
現在は、なにやらいろんな店に改装されているようだった。



  


これで決定だ。

この第15作「寅次郎相合い傘」でのロケは
小樽運河の一番北にある「北浜橋」の
中央付近でロケされたものだったのだ。




それにしても山田監督はこのしっとりとした古い町が好きなのだ。
テレビドラマ「遥かなるわが町」も小樽が舞台だし、博のお父さんも小樽の大学で勤めていたことがある。


ちなみに、第15作「寅次郎相合い傘」が制作された1975年はちょうど、小樽市と運河保存運動の市民グループが
もめていたころだった。

小樽市は、当時、無用の長物と化していた小樽運河を埋め立て、道路として整備する方針を打ち出したが、
これに対し運河の保存運動が全国規模で高まっていったのである。

1973年(昭和48年)に「小樽運河を守る会」が発足され、
この映画が封切られた2年後の1977年(昭和52年)に「小樽臨港線整備促進期成会」がそれぞれ発足され、
運河埋め立てに対する関心が高まり、全国規模で署名運動が行われた。

それで小樽市も1979年(昭和54年)に運河の全面埋め立ての計画を撤回し、
運河の水面幅を40mの半分である20mを残すという妥協案を提案し、
1983年(昭和58年)に着工してしまったのだった。

工事開始してから3年後の1986年(昭和61年)に現在の小樽運河が完成し、
運河に沿ってガス灯や遊歩道が整備された。運河の全長は1140m。

小樽運河北側の整備が始まったのは1989年(平成元年)で、水面幅をかつての運河と同じ40mとされ、
全長は470mの整備が行われ、翌年の1990年(平成2年)に完成した。
だから、あのロケが行われた「北浜橋」のあたりは「北運河」にあたるので、川幅はロケ当時と同じくらい広い。









大阪


大阪と言えば何と言っても「浪花の恋の寅次郎」だ。

この時、私はかなりこの大阪のロケ地を詳細に検証したのだ。

それゆえ、今回の『ストリートビュー」での調査もあっさりと見つけることが出来た。


ここではふみさんの弟の英夫君の仕事場とアパートを「ストリートビュー」で紹介してみよう。





              
英男君の町、オリジナルマップ

              






山下運輸のトラック車庫

港区波除6丁目

大村昆さんが、トイレから出てきたところ。
あのトイレは古くはなっていたが今も健在だった。


 
   




英夫君が住んでいた松風荘

これは当時、道路の位置、大きな発電所の煙突の見え方、などから判断して
場所を推測したのだ。これも当時は時間がかかった。
現在は違う家が建てられ、道路との間に塀が作られている。



     




ふみさんが、「新世界ホテル」で深夜寝てしまい、
朝方複雑な気持ちでタクシーを拾う
天王寺動物園前

これも道路と高架の柱との関係でクリア。
手前の店は今も健在。


    







京都


京都と言えば第29作「寅次郎あじさいの恋」だ。

この作品も、京都市内のロケ探しはだいたいは簡単なのだが、
細い路地は「ストリートビュー」では巡れなかった。



ここでは北区上賀茂御薗口町4

焼餅(やきもち)の店『神馬堂を紹介しよう。 

やきもちは葵餅とも言う。




  
     









神戸


神戸と言えば、第48作「寅次郎紅の花」のラストが蘇る。


長田区菅原通4丁目


あの渥美さんが「聖地」と呼んだ、長田区菅原市場はどうなっているのだろうか。
これも簡単に見つかった。


向こうのほうに「新春」と見えるのが「菅原市場」   現在は同じ場所で「
味彩館 Sugahara」として人気を集めている。


 
   






以上だ。




まあ、このように面白いように「ストリートビュー」を使えば
ロケめぐりがどんどん出来るのだが、欠点はやはりギリギリではピンポイントでは見つけられないことだろう。
また、ピンポイントで巡れるようなら、逆にそれは社会的に非常に危ないマップだとも言える。

まあ、このいろいろプライバシーの問題が山済みの「ストリートビュー」ではあるが、
これを使ってとりあえず簡単なロケめぐりが出来るなんて遠くバリ島に暮らす私にとってはちょっとした慰めにはなるのだ。







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なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
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【遠い旅の空から】連載開始



2008年7月31日 寅次郎な日々 その369

ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。



先日7月29日(火)より読売新聞朝刊「東京版」にて
『男はつらいよ40周年』にちなんで、
『寅さんに影響を受けた人たち』というテーマで連載が行われている。

タイトルは【遠い旅の空から】

この「男はつらいよ」という映画に人生で大きく影響を受けたいろいろな人たちを毎回一人ずつ紹介し、
映画と関連付けてその人たちの人生をも紹介するという企画だそうだ。

毎日連載で9回ほどに渡って、毎回100行〜120行ほどの長さで五段抜きで連載している。
読売新聞朝刊の中でもかなり大きな連載記事だ。

上にも書いたように東京版なので東京以外の道府県にお住まいの人は残念ながら読めない。
それと多摩地区の方々も読めない。

ただし、読売新聞本社内の『
ヨミプラザ』(03−3217−8399)に電話連絡すれば
全国どこからでも過去2ヶ月以内の読売新聞「東京版」は2ヶ月以内なら何日のものでも、
何部でも、通販で買えるから、ぜひとも読みたい人は送料(100円ほど)さえ足せば
2日ほどで手元に届いて読める仕組みになっている。


もうひとつ、読売新聞のWEBサイトである、「YOMIURI ONLINE』の中でも
同じ文章と写真が掲載されている。これなら日本全国はもちろん全世界の日本人が見れるわけだ

 
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もしくは下↓のURLでいきなり見れる。
 
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普段世間の企画ものに対して不精な私がどうして珍しくこのような公的なお知らせを
細々と、個人的な『日記』などに書くかと言うと、
実は私も4週間ほど前に取材を申し込まれたからだ。

私などは関係者でもないし、映画人でもないし、有名な文化人でもないし、芸能人でもないし、
仕事自体もちっとも有名な画伯でもないし…、つまり地位も名誉もついでにお金もない男だ。

場違いもいいとこじゃないかってお断りしようと思ったのだが、
私のささやかなサイト「男はつらいよ覚え書ノート」を見て感動してくれたその記者さんは
とても熱心な方で、ぜひ直接越中八尾の自宅へ行って話を聞きたいと仰る。

ずいぶん迷ったが、これによって少しでもこの映画が見直されればと、
結局僭越ながら己を無にして直接取材を受けることにした。


『国民映画』『寅さん』などとマスコミにさんざん表面的には持ち上げられながら、
一方でこの映画を評価しないことをまるで文化人、知識人のステイタスのように考えている輩が大勢いるこの国で、
この映画に人生を救われた人間がまさにここにいるのだと伝えたいと思ったからだ。
人の人生を変えてしまえる映画なんてそうあるものではない。




7月初旬の大雨の翌日、
読売新聞東京本社からわざわざ汽車を乗り継いで山を越え5時間以上かけて
山深い越中八尾に来てくださった記者さんは
私の自宅1階板間のアトリエで3時間にもわたる熱心な取材をされた。



地元の北日本新聞、富山新聞やテレビには時々仕事の展覧会に取材していただいて
小さな記事を載せていただいているが、
今回は仕事の展覧会でなく「寅さん」。

しかし記者さんの仰るには「寅さん」の詳しい話だけでなく、
その映画に影響を受けた人間そのものを実は取材したい、ということだった。

この映画のことだけでなく、バリのこと、絵のことなどを全部一つに関連付けての総合的な取材。

それゆえ私の心の底の隠したい部分や苦悩の人生の影の部分を
あえて探るような緊張感のある深い取材だった。

新聞記者さんのプロ意識というのはたいへんなものだなとつくづく感じた一日だった。


実は…、
あの徹底した取材を受けて私はもう一度自分が解体された。
そして、あらためて自分の裏表を総合的に見つめることが出来たのだ。
だからあの取材は違った意味でもとても私にとって意味のあるできごとになった。


取材の後、せっかくはるばる越中八尾まで来られたのだからと、
夕方の淡い光の中、自分の住む多くの絵のモチーフにもしている八尾の町を
ゆっくり1時間ほど歩いて案内させていただいた。これも大事な取材の一環だ。
こういうことはとても大事。その土地を知らないとその人は分からないものだ。
記者さんはとても町並みがしっとりしていると気に入ってくださった。

で、帰り際に「7月末頃からおそらく連載が始まります」と言われていた。

そのあとも時々メールを通して本質的なこと、精神的なことを何度か聞かれ、
それに自分なりに誠実に答えることによって自分がもっと見えてきたから面白い。



そうこうしているうちに先日連載が始まったが、

なんとその前日に「連載第1回目は吉川さんです」と、言われた。つまり私だった。

第1回目というのは「つかみ」なので本来とても重要なのだ。
第1回、2回、3回あたりが悪ければ後はこけるとも一般には言われる。

しかしこの場合、厳密に言えば私は『モチーフ』にしか過ぎず、
ポイントは記者さんの優れた筆力の方。
だから私は記者さんを信じるほかなかった。


それで掲載された翌日送られてきた記事を読ませていただくと、

自分の人生を変えた第15作「寅次郎相合い傘」での寅のアリアを文章の核として、
私の人生の明暗がドラマチックに浮かび上がる構成になっていた。

特に最終章は私の気持ちを代弁してくれるような鮮やかで無駄のない、それでいて温かいタッチで
締めくくられていたのはさすがの一言だった。

思っていたよりずっと大きな記事で120行くらいはあると思われた。


世間受けを狙った寅さん寅さんした面白おかしい記事では全くなく、
逆にその影響を受けた人間そのものにじっくりとシリアスにスポットが当てられている
優れた本物の企画だったと思う。取材されたから言うわけではない。
こうして送られてきた新聞記事を眺めながら今しみじみそう感じているのだ。



それでは記事をご覧ください↓。面白いと思った方は『ヨミプラザ』で買ってください(^^)


遠い旅の空から掲載記事画像


なお、上にも書いたが、記事は新聞だけでなく読売新聞社のwebサイトである『YOMIURI ONLINE』
の中の ホーム→地域→東京23区→企画連載のページに全文掲載もされている。↓

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231217264378697_02/news/20080729-OYT8T00155.htm







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368

                          
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全48作品とらや【お品書き】考察記 



2008年7月23日 寅次郎な日々 その368

ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。




この映画の舞台である『とらや(くるまや)』は、食べ物屋さんなので
当然店に【お品書き】が貼ってある、もしくは掛かっている。
お客さんはそれを見ていろいろ注文するのだが、作品によって、そのメニューの種類は実にいろいろである。
値段も、もちろん時代とともに上がっていく。しかし時には値下がることもあるのだ。

前々から私はこの全48作品「お品書き」を、書きつくし、それをもとにあらゆる角度から分析し、
じっくり腰をすえて考察したかったのだが、なかなかそのタイミングが掴めないまま、
それぞれのデータは宙ぶらりんになっていた。

そこで今回は「夏休み記念大特集!」として、  
おいおいヾ(^^;)

とらやお品書き大全』を書いてみようと思う。   おおげさおおげさ ヾ(^^;)

あ、それと、ついでにとらやの
「冷蔵庫」の名前も全48作品まとめてみた。

ちょっと長くなるし、こんなものを読んでも、物語の本流とは何の関係もないが、
この本流と何の関係もないことをくどくどと調べて考察していく楽しさは何ものにも代えがたいものだ。

「お品書き」を48作品まとめて調べてみると結構意外な事実がたくさん見えてきたので
面白くなり結局その間絵を描かずに3日もこのアップに費やしてしまった。

まあ、それゆえに今年の「寅次郎な日々」の中では珍しく勤勉な考察記になったと思う。

お暇な方はどうぞお読みください。

ただし長いですよ〜〜(((((^^;)



(注意)個々の作品のお品書きでどうしても読み取れない商品名や価格は
    不明のままということでこのページには書いていませんのでご了承ください。





第1作「男はつらいよ」

冷蔵庫 森永  マミー  乳酸菌飲料

ペプシ



第1作にはほんとうにやられた。だってお品書きがまったく読み取れないのだから。
ほとんどなんにもわからない状態。

本格的なお品書きは第2作からと言うことになる。




          






第2作「続男はつらいよ」

冷蔵庫は第1作同様「森永」


第1作と違い、今度は「値段」がはっきりスクリーンで読み取れる。


クリームあんみつ、クリームソーダなどが珍しい!



かき氷

レモン50
イチゴ50
.メロン50
あんみつ70.(第13作では第15作と同じ150円)
クリームソーダ70.
ソーダー水50.
アイスクリーム30
サイダー50
クリームあんみつ80.

おでん 100


サイダーやソーダー水などが50円と、当時の普通の値段なのに比べて、
かき氷やあんみつが安め。
特にクリームあんみつは80円と凄いお得!これじゃあんまり儲けがないぞ。
当時1969年といえども、もしサイダーが50円だとするならば、甘いものの王者
クリームあんみつは下町の安い店でも120円くらいはしたと思う。
(わたしは当時まだ小学校低学年なので想像)

第13作「恋やつれ」ではあんみつは150円





          



          







■第3作「フーテンの寅」

冷蔵庫は森永  マミー


社長「おばちゃん、客が来るんだ。団子十箱ばかり作っといてくれよ、200円の」

一折小が200円、大が300円。

おでん70円に値下がり。


三ツ矢サイダー

ソーダー水50
ところ天 50
ジュース50
アイスクリーム70
サイダ−50
黄金餅 50
ぜんざい 60
おでん 70

50から70円の間多し達筆で読めない文字多し。




          






■第4作「新男はつらいよ」

冷蔵庫は森永  マミー

3作と同じ場所に同じお品書き
やはり達筆で全部は読めず


ソーダー水50

ジュース50
アイスクリーム70
サイダ−50
ところ天 50
黄金餅 50
ぜんざい 60
おでん 70

大が500円?





          







■第5作「望郷篇」

冷蔵庫は雪印 雪印牛乳


この作品ではたくさんのお品書きがぶら下がっているにもかかわらず
カメラが上に向かないため。結局下のほうしか読み取れない。

まあどれもこれも50円〜80円

一折三百円

サイダー…50
アイスクリーム70

おでん80





         







■第6作「純情篇」

冷蔵庫は、今回は『森永』 マミー


ジュース…50
サイダー…50
コーラ…60
団子一折…300
(団子はシリーズの後半の方は1000円になっていく。)





          







■第7作「奮闘編」

今回も第6作に続いて冷蔵庫は森永。 マミー

焼きだんごは60円

第7作で焼きだんごは上記のように60円に値上がりしたが、
第9作で、なぜかまた50円になった。



団子一折500(違う柱には300円)
ジュース50
コーラ60
サイダー50
焼き団子60




          







■第8作「寅次郎恋歌」

冷蔵庫は雪印

サイダーは第8作の方が第10作より高い。

コーラ60
サイダー60
ジュース50


珍しくかき氷のお品書き

氷あづき 50
氷いちご40
氷レモン40
氷メロン40
氷ミルク50
コーラ60
サイダー60
ジュース50




          







■第9作「柴又慕情」

今回は『ペプシ』の巨大な冷蔵庫←黄色がやたら目立つ。

団子系10円値下げ。


磯乙女50
茶飯100
焼き団子50
ところ天 70 
アイスクリーム50
赤飯100
黄金餅50
あんみつ100

(ラストでもペプシの車に登と一緒に乗る)




          







■第10作 「寅次郎夢枕」

冷蔵庫は森永に戻る(ただし半分テープで隠されている)

隠しても明らかに森永と分かるのでここは「森永」とさせていただく。


 茶めしは第38作と比べて半額。
 
 コーラ 60
 サイダー 50  
 ジュース 50
 団子一折 300
 おでん100
 茶めし100
 焼き団子60

 草団子200(一折)?



          








■第11作「寅次郎忘れな草」

冷蔵庫は「雪印」

ここから雪印独占状態がしばらく続く。



茶めし 100
おでん 100
コーラ 60
ジュース 50
サイダー 50
一折 300
焼き団子60




          







■第12作「私の寅さん」

冷蔵庫も第11作同様 雪印

この作品でも値上がり


草団子がなんと2倍! 60円から120円に!
オイルショックで異常な物価高に。


草団子  120
茶めし   120
おでん  150
焼き団子 80
くず餅   100
こがね餅  80
ところ天  100
磯乙女   80
あんみつ 120
みつ豆   120
コーラ  60
ジュース 60
ソーダ水 50




          


この第12作「私の寅さん」では草団子は120円に値上がりしている。
第13作「恋やつれ」以降では草団子は今度は値下げして100円になり、それをしばらくはキープしていた。








■第13作「恋やつれ」

冷蔵庫は今回も 雪印


お客さんからの猛反発を食らったのか
草だんご100円に値下がり(^^;)


他のものでは値上がりも。

赤飯    150
茶飯    150
草団子  100
磯乙女   100
おでん   150
くずもち  100
ところ天 100
あんみつ 150
みつまめ 150




          







■第14作「寅次郎子守唄」

冷蔵庫 今回も 雪印

おでん   150
茶めし   150
赤飯    150
みつまめ  150
あんみつ  150
ところ天  100
磯おとめ  100
草団子   100
くず餅    100
焼き団子  100




             







■第15作「相合い傘」

今回も冷蔵庫は 雪印

こがね餅70円に値下がり。



茶めし    150
おでん     150
赤飯     150
あんみつ   150
磯おとめ   100
草だんご   100
くず餅     100
こがね餅    70
焼きだんご  100




          









■16作「葛飾立志編」

今回も冷蔵庫は 雪印


とらやのお品書きは
「相合い傘」の時と全く同じものを使用。


茶めし    150
おでん    150
赤飯     150
あんみつ   150
磯おとめ   100
草だんご   100
くず餅     100
こがね餅    70
焼きだんご  100



今回のスポンサーである
『ブルドッグソース』は、いたる場面で出まくり!(^^;)




          







■17作「寅次郎夕焼け小焼け」

冷蔵庫は今回も 雪印

あんみつミツマメが値上がり


草団子    100
焼き団子   100
こがねもち  100
おでん     200
ところてん  150
みつまめ   200
あんみつ   200

サイダー   100
ラムネ     100
ジュース    100




イチゴ     150
メロン     150

氷も第2作では50円だった。




雪印 牛乳 コーヒー味 いちご味 
缶ジュース メロン味 グレープ味
ピーチゼリー オレンジゼリー プリン コーヒーゼリー
紙パックのりんご牛乳 イチゴ牛乳 小パック
牛乳パック 500mlパック 1リットルパック




          








■第18作「寅次郎純情詩集」

冷蔵庫 雪印風だが一応
名前なし
スポンサーなし

 草団子    100    
 焼き団子   100
 こがねもち  100
 おでん     200
 ところてん  150
 みつまめ   200
 あんみつ   200

 サイダー   100
 ラムネ     100
 ジュース    100




          








■第19作「寅次郎と殿様」

冷蔵庫は今回も 雪印

だんご系や黄金餅が値上がり。
特に黄金餅は短い間に浮き沈みが激しい。80円−70円−100円−150円 どうした黄金餅(^^;)

飲み物のソーダ水、サイダー、ラムネって、みんな一緒っぽいね(^^;)


茶めし150
ところてん150
おでん250
草だんご150
焼きだんご150
こがね餅150
磯乙女150
くずもち150!
あんみつ200
みつ豆 200

ソーダー水100
サイダー100
ラムネ100




          








■第20作「寅次郎頑張れ!」

下克上がおこり、冷蔵庫は今回からは サッポロビール



この作品では仁義なき値上げ決行!

あんみつ仁義なき値上げ
くずもちも仁義なき値上げ

とらやのあんみつは第2作と比べて4倍に値上がりしている。

ただし、この極道値上げのせいで、あと長い年月値上げは控えることになる。
お品書きの紙も同じものが長年使われていく。


豆大福登場

浮き沈みが激しかった黄金餅はこの後長い間、スターティングメンバーからはずされる(TT)






三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅  250
磯乙女 200
ジュース200
ラムネ150
ミルクコーヒー200

あんみつ280
お赤飯 200
豆大福 150
ところてん150


ミルクコーヒーが遂に始まる。




          








■第21作「わが道をゆく」

冷蔵庫は今回も サッポロビール


ジュース200
ラムネ150
ミルクコーヒー200
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅  250
磯乙女  200
 
あんみつ   280
お赤飯 200
豆大福 150
ところてん150


草だんご一折
小300
中500
大800




          






■第22作「噂の寅次郎」

冷蔵庫は今回も サッポロビール


お赤飯 200
豆大福 150
ところてん150
あんみつ280

三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅  250
磯乙女  200
ジュース200
ラムネ150
ミルクコーヒー200


草団子一折
     300
     500
     800




           








■第23作 「飛翔んでる寅次郎」

冷蔵庫は今回も サッポロビール
リボンシュトロン

お赤飯 200
豆大福 150
大福餅 150
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅  250
磯乙女  200
ジュース200
ラムネ150
ミルクコーヒー200




          








■第24作「寅次郎春の夢」

冷蔵庫は今回も サッポロビール

リボンシュトロンジュース

お赤飯 200
豆大福 150
大福餅 150
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅  250
磯乙女  200
ジュース200
ラムネ150
ミルクコーヒー200





         








■第25作 「ハイビスカスの花」

冷蔵庫は今回も サッポロビール」


お赤飯 200
豆大福 150
大福餅 150
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅  250
磯乙女  200
ジュース200
ラムネ150
ミルクコーヒー200





          







■第26作「寅次郎かもめ歌」

冷蔵庫は今回も サッポロビール



草だんご一折

300
500
800



ジュース200
 ラムネ150
 ミルクコーヒー200

ところてん150
あんみつ280
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅250
磯乙女200
お赤飯 200
豆大福150
大福餅150



ジュース150
ラムネ150
ミルクコーヒー200




          







■第27作「浪花の恋の寅次郎」

冷蔵庫は今回も サッポロビール


お赤飯 200
豆大福150
大福餅150
ところてん150
あんみつ280
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅250
磯乙女200

ジュース150
ラムネ150
ミルクコーヒー200


冷蔵庫は『とらや』の文字。
『冷たいビールジュースラムネ』の貼り紙




          








■第28作「寅次郎紙風船」

冷蔵庫はスポンサーなし  とらやの文字

冷蔵庫はこの作品から長い暗黒の時代に突入
スポンサーなしが続いていく。

第27作と同じ


お赤飯 200
豆大福150
大福餅150
ところてん150
あんみつ280
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅250
磯乙女200





         








■第29作「寅次郎あじさいの恋」

冷蔵庫はスポンサーなし


冷蔵庫 とらや
スポンサーなし


草団子   150
大福餅   150
焼き団子  150
豆大福   150
三色団子  200
ところてん 150
磯乙女   200
お赤飯   200
くず餅    250
あんみつ  280

第2作ではあんみつ70円だった…。





          








■第30作「花も嵐も寅次郎」

冷蔵庫はスポンサーなし とらやも文字

作品後半に冷蔵庫が消えて!
おでんの台が代わりにある。


あんみつ280
お赤飯200
大福餅150
ところてん150
豆大福150
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅250
磯乙女200





          








■第31作 「旅と女と寅次郎」


冷蔵庫はスポンサーなし とらやの文字



第30作と同じ

あんみつ280
お赤飯200
大福餅150
ところてん150
豆大福150
三色だんご200
焼きだんご150
草だんご150
くず餅250
磯乙女200





          








■第32作 「口笛を吹く寅次郎」

冷蔵庫はスポンサーなし

おでん台


ところてんは第38作と比べて半額

大福餅 150
豆大福 150
お赤飯  200
ところてん150
あんみつ 280
くず餅   250
草だんご 150
焼きだんご150
磯乙女   200
三色だんご200





          




          








■第33作 「夜霧にむせぶ寅次郎」

冷蔵庫はなし。スポンサーなし

おでんの台


大福餅   150
豆大福   150
お赤飯   200
ところてん 150
あんみつ  280
くず餅    250
草だんご  150
焼きだんご 150
磯乙女    200
三色だんご 200


冷蔵庫はスポンサーなし




          








■第34作「寅次郎真実一路」


冷蔵庫はなし。スポンサーなし

冷蔵庫なしおでんの台


草だんご150
くず餅250
あんみつ280
大福餅150
豆大福 150
ところてん 150
お赤飯 200




          








■第35作「寅次郎恋愛塾」

今回から冷蔵庫は サントリー
このあとしばらくサントリー時代が始まる。


三色だんご焼きだんごなどのだんご系仁義なき値上げ

お赤飯200
豆大福150
ところてん150
あんみつ280
三色だんごだんご250
焼きだんご250
磯乙女200




          







■第36作「柴又より愛をこめて」

冷蔵庫は サントリー サントリービール

三色だんご250
焼だんご250
磯乙女200
茶めし200
 

大福餅150
豆大福150
あんみつ280
お赤飯200
ところてん150
 




          







■第37作「幸福の青い鳥」

意外にもスポンサーなし

おでんの台


ところてん仁義なき超値上げ 倍
草だんご焼きだんごなどのだんご系またもや値上げ
くずもちも値上げ

黄金餅スターティングメンバーに復活&いきなり値上げ。

すべて仁義なき極道値上げ。

ただし、黄金餅はなぜか値下げ。
黄金もちに何が起こったのか!?



お品書きにビール登場!


おでん400
こがね餅200
草だんご300
焼だんご300
磯乙女300
くず餅300
茶めし200
お赤飯200

ジュース200
ラムネ150
ビール300
あんみつ300

ところてん300




          








■第38作「知床慕情」


冷蔵庫は復活!  新しく サントリー   サントリービール


草だんご300
焼だんご300
磯乙女300
茶めし200
お赤飯200
こがね餅200
おでん 400
くず餅300
あんみつ300
ところてん300
ジュース200
ビール300





          










■第39作「寅次郎物語」

冷蔵庫は今回もサントリー   サントリービール


三色(草)だんご300
焼だんご300
磯乙女300
茶めし200
お赤飯200
こがね餅200
おでん 400
あんみつ300
ところてん300
ジュース200
ラムネ150
ビール300





          








■第40作「サラダ記念日」

冷蔵庫は今回も サントリー


草だんご300
 焼だんご300
 磯乙女300
 茶めし200
 お赤飯200
 こがね餅200
 おでん 400
 くず餅300
 あんみつ300
 ところてん300
 ジュース200
 ラムネ150
 ビール300





          








■第41作「寅次郎心の旅路」

冷蔵庫は今回も  サントリー


この作品では結構なんでも値上げ。

草だんご焼きだんごなどのだんご系またもや値上げ

草だんご一折1000円に突入


ラムネ200
ジュース200
ビール300
あんみつ350
ところてん350
おでん450
草だんご350
焼だんご350
磯乙女300
茶めし250
お赤飯200
こがね餅250




ガラス戸に

草だんご一折

1000
800
600





          







■第42作「ぼくの伯父さん」

冷蔵庫は今回も サントリー  サントリービール


ラムネ200
ジュース200
ビール300

草だんご350
あんみつ350
ところてん350
おでん450
草だんご350
焼だんご350
磯乙女350
茶めし250
赤飯200
くず餅350




           








■43作「寅次郎の休日」

冷蔵庫は今回からは下克上で キリン


第42作と同じ


ラムネ200
ジュース200
ところてん350
あんみつ350
おでん450
茶めし250
お赤飯200
こがね餅250
磯乙女350
くず餅350
草だんご350
焼だんご350





            







■第44作「寅次郎の告白」

冷蔵庫は43作同様 キリン


第43作と同じ

ラムネ200
ジュース200
ビール300
ところてん350
くず餅350
磯乙女350
草だんご350
 焼だんご350
おでん450
茶めし250
お赤飯200
こがね餅250




           







■45作「寅次郎の青春」

冷蔵庫は今回も キリン


ラムネ200
ジュース200
ビール300
ところてん350
くず餅350
磯乙女350
草だんご350
焼だんご350
あんみつ350
おでん400
茶めし250
お赤飯200
こがね餅250

おでん一皿 400円 50円安くなった?


草だんご

小6〇〇円
中8〇〇円 
大1〇〇〇円

各種詰合わせいたします。




          








■第46作「寅次郎の縁談」

冷蔵庫は キリン

なんでも値上げ

だんご系ついに400円に!
おでん遂に500円時代




おでん一皿500円

冷蔵庫に貼ってある

だんご製造室との間に
大きく穴が開いている

品書きが上にかかっている


ところてん400
茶めし300
お赤飯300
草だんご400
焼きだんご400
こがね餅300
磯乙女 400
おでん500

一折1000円




          








■47作「拝啓車寅次郎様」

冷蔵庫は今回も キリン

おでん一皿500円

第46作と同じ




だんご系すべて 400
おでん500
磯乙女 400
あんみつ400
おでん500
あんみつ400
ところてん400
こがね餅 300
赤飯300
茶めし300
ビール300
ジュース200
ラムネ150




          







■第48作「寅次郎紅の花」

冷蔵庫のスポンサーは最後も キリン


第47作と同じ

だんご系すべて 400
おでん500
磯乙女 400
あんみつ400
おでん500
あんみつ400
ところてん400
こがね餅 300
赤飯300
茶めし300
ビール300
ジュース200
ラムネ150



          




以上前48作品お品書きでした。








■ とらや(くるまや)価格値上げ時期を下の表にまとめてみました。


どの作品で価格を値上げして行ったか。↓ 


青文字は値下げ

赤文字は80円以上の急激な値上げ。




値上げ(値下げ)した瞬間の作品とその時の価格のみを記入しました。空白欄は前回の作品と同じ価格だと思ってください。

品目/作品 2作 3作 6作 7作 9作 10作 12作 13作 15作 17作 19作 20〜34作 35作 37〜40作 41作 42作 45作 46〜48作
(草)だんご系 60 50 60 120 100 150 250 300 350 400
一折(小) 200 300 600 1000
磯乙女 50 80 100 150 200 300 350 400
おでん 100 70 100 150 200 250 400 450 400 500
あんみつ 70 100 120 150 200 280 300 350 400
ところてん 50 70 100 150 300 350 400
赤飯 100 150 200 300
茶めし 100 120 150 250 200 250 300
くず餅 100 250 300 350
こがね餅 50 80 70 100 150 200 250 300
ビール 300
ジュース 50 60 100 200





参考資料消費者物価指数












■【とらや(くるまや)値上げについての簡単な考察】



★これを見ると分かるように第9作「柴又慕情」、第12作「私の寅さん」、第13作「恋やつれ」第17作「夕焼け小焼け」、
 第19作「殿様」と小刻みに中規模値上げをしていった。

 ちょうど上の↑の物価指数のグラフを見ても分かるが
 オイルショックの起きた1973年は土地の値上がりと共に物価も上昇していたのだだからその年公開の
 第12作でいろいろ価格を値上げをしたのは仕方がないのかもしれない。



★全体に団子系の価格設定に迷いがあるようだ。上がったり下がったり、急激に上げてみたり、
すぐ下げたり…。一折も同じ作品で(小)が200円だったり300円だったり、なんだか落ち着かないのだ。


★第20作「頑張れ!」でかなり思い切った
仁義なき値上げに踏み切っている。


★その反動か、お客さんから大きな反発を買ったのか、
 
この第20作のあと、なんと第34作「真実一路」までまったく値上げをしないまま頑張った。


★しかし、その後第37作「青い鳥」で2回目の
仁義なき値上げ決行してしまう。


★そしてその後も第41作「心の旅路」で中規模の値上げをし、
 第46作「縁談」ではまたもや3回目の
仁義なき値上げに踏み切ったのである。


★これも前回の値上げ同様、見て分かるように、
大きな値上げの後は、客離れを防ぐために数年はそのままの価格で据え置きしているようである。


★茶飯と赤飯はご飯もののせいか、さほど団子やおでんのようには値上げはしなかったようだ。
 初期と比べて3倍の値上がりで止まった。


★最も値上げ率の高かったものは
「団子」一般であり、初期と比べて約8倍に値上がりしている。
同じく
ところてん8倍


★コーラは主に初期の作品のい多く、第13作からは見られなくなった。

★ビールは勝手に値上げできないのか第37作「青い鳥」で登場してから最後まで300円のまま。


★団子一折は初期の頃は、(小)が200円で(大)が300円だったが、すぐに(小)が300円になり、
第21作「わが道をゆく」では(小)300、(中)500、(大)800に落ち着き、
その時期が続いたが、第37作の第2次仁義なき値上げ以降いきなり(小)600円、(中)800円、(大)1000円になってしまった。


★中期の作品では「ミルクコーヒー」が長く登場するが、第28作以降、客が飽きたのか無くなってしまった。


★下町の店屋につきものの「ラムネ」は意外にも第17作「夕焼け小焼け」から始まった。
  おそらく初期の頃は「サイダー」があったせいだろう。
  第19作の 飲み物のソーダ水、サイダー、ラムネはそれぞれ似すぎだ(^^;)



★第2作ではクリームを使ったメニューが多い。そしてこのころはかなり安い。
 クリームを使ったメニューは第10作「夢枕」以降見られなくなっていった。


★大福餅や豆大福は、いかにもとらやにいつもありそうだが、実は中期の作品群に限られる。


★あんみつはほとんどの作品であるが、みつまめは十作台の中の数作品のみ。


★「カキ氷」の値段は意外にもめったに出てこないが、
 第2作で50円だったものが第17作「夕焼け小焼け」では150円になっている。


★初期の第8作あたりまでは幅の大きな紙にお品書きが書いてある。第11作、第12作も幅の大きな紙
 第3作第4作は渋く木の札に書かれてある。
 第9作は細い紙。第13作から第19作までは全て細い紙。
 第20作から第36作までは、中庸な大きさで安定感のある読みやすいほぼ同じようなお品書き。
 第37作から第45作までも同じようなお品書きが続く。
 第46作から第48作までも同じようなお品書き。
 ほぼ、価格の変動にあわせてお品書きの姿かたちも変わっていく。





値上げと言えば、瞬間的にギネス並みの値上げをしたこともあった。

それは、第17作「夕焼け小焼け」で、
お金が必要な寅がお客さんの谷よしのさんに発作的に「200万円」の団子代を請求したことがあった。
ちなみにおばちゃんは即座にその金額を訂正し「500万円」と言い切っていた。
しかしさすがに払ってくれるはずもなく数秒後には正当な「500円」に落ち着いていた。











■とらや(くるまや)【冷蔵庫】についての簡単な整理

ただし、あくまでもとらや(くるまや)の店の冷蔵庫のマークのみ対象です。






【森永】

第1作〜第4作
第6作〜第7作まで。
第10作

合計7作品





【ペプシ】

第9作

合計1作品




【雪印】

第5作
第8作
第11作〜第17作まで。
第19作

合計10作品




【サッポロ】

第20作から第26作まで

合計7作品




【スポンサー無し】

第18作。
第27作〜第34作まで。
第37作。

合計10作品




【サントリー】

第35作〜第36作まで。
第38作〜第42作まで。

合計7作品




【キリン】

第43作〜第48作まで。

合計6作品






多い順番で書くと

1位 スポンサーなし 10 作品
1位 雪印 10 作品
3位 森永 . 作品
4位 サントリー . 作品
4位 サッポロ . 作品
6位 キリン . 作品
7位 ペプシ . 作品





★意外にもトップの雪印と並んでスポンサーなしの作品も10作品と多かった。
 どのスポンサーもある時期に集中してるんだね。

★あのままシリーズが続いていると間違いなく次は
「アサヒ」 アサヒビール
  が6〜7作品連続でスポンサーになっていたことは想像に難くない。



以上で全ての考察を終わらせていただきます。
あ〜〜〜長かった(^^;)






このようなでかいアップをいたしました関係で、寅次郎と殿様完結編は
8月10日ごろになる予定です。気長にお待ちください。










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367

                          
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ロケ地発見への道 「寅次郎と殿様」   
愛媛県 興居島(ごごしま)  



2008年7月16日 寅次郎な日々 その367

ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。


先日アップした第19作「寅次郎と殿様」で、寅がおそらく愛媛県と思われる瀬戸内の神社で長靴の啖呵バイをするが
そこがどこなのか、どう調べてもイマイチはっきりとは分からないまま、私は遂に諦めてしまったのだ。
どの本にもどのサイトにも詳しいことは書いていない。

しょうがないのでそのまま本編をアップした。

アップして3日後、大の寅さんファンであり、常々私に多くの示唆を与えてくださっている三重県在住のk.Nさんから
メールがあった。彼とはもう4年来のお付き合いで頻繁に親交を深めさせていただいている。
あの愛媛県での啖呵バイの場所と名前がなんと分かったと仰るのだ。


K.Nさんには、以前私がどうしてもロケ地が不明な時に、助けていただいたことが何度かある。
彼は青年の時より写真撮影を生涯のライフワークにされており、もう何十年も北海道から九州まで細かに旅行されている。
それゆえに全国的に土地勘を持っていらっしゃる稀有の人だ。
私のサイトにリンクを貼らせていただいている「風工房さん」や「小寅さん」と同じく「旅を人生とされている方」なのだ。

それで今回のこの作品のロケ地である愛媛県も、松山を中心に15年ほど前に巡られたことがあると仰る。



実は…、この啖呵バイの場所は、私も皆目分からなかったわけではない。
少しはヒントを見つけてはいた。

まず大きな着目点としてはあの神社の石段に彫ってある名前だ。

巌島神社となんとか読める。




                
厳島神社と何とか読める
              




私はこの時点で神社の名前が分かったのだから、すぐに見つかるだろうと甘く考えていた。
今までの前例ではそうだったから。

しかし、「厳島神社」でいろいろ調べてみると大変なことが分かったのだ。
「厳島神社」といえばまずはあの有名な世界遺産の安芸の宮島の厳島神社であるが
それ以外になんと500もの「厳島神社」が実は日本全国に存在しているのだ!。


愛媛県だけでも私の調べた限りでは↓

愛媛県松山市神田町1-7

愛媛県西条市丹原町長野1205

愛媛県四国中央市豊岡町大町3

愛媛県今治市菊間

愛媛県今治市波止浜1丁目2-13


「厳島神社」が5社もあり、それ以外でも知られざる「厳島神社」が愛媛県にはまだありそうだ。


私は、まず、寅は山陽から島伝いに瀬戸内海を渡り、今治市の波止浜1丁目か菊間にある「厳島神社」で、
啖呵バイをしているのかもしれないと適当〜に根拠なく思っていた。もちろんまったくなんの自信もなかった。
だから、バイをしている向こうに見る島は「大島」ということになる。

しかし、今治市の割には地形や近隣の風景がちょっと田舎過ぎないか…、とも思っていた。

大洲市に比較的近い松山市にも神田町という場所に「厳島神社」はあるが、どうも地形が合わない…。
写真も違う。

もちろん、愛媛県の「厳島神社」で画像を徹底的に調べていってもまったくあの神社は出てこない…。
おそらく小さな村の「厳島神社」なのであろう。

推測もここまでで、画像がないので私はもうお手上げ状態だった。




一方、K. Nさんは、
映画の中で寅が連絡船で四国へ渡るわずかなシーンを見て、松山観光港、松山港、堀江港がまず頭に浮かばれたそうだ。
三港とも目の前に興居島(
ごごしま)という島が大きく見えるとのこと。



          




最初、彼は私同様、寅は島伝いに連絡船を使い、本州から今まさにこちら側の四国本土に上陸したと
思われていたのだ。それは当然である。なぜなら、あの啖呵バイの後すぐに伊予大洲が映るのだから。

つまり、スクリーンに映る向こうの海岸は当然本土近くの大きな島だと思い、
あの島が見える本土の小高い丘の上に神社があるか確かめられたのだが
松山市高浜4丁目にある金毘羅神社が唯一地形的にもそれらしかったが「厳島神社」と言う名前の神社は
地図上では丘の上にはなかったとのこと。

ちなみに、K.Nさんも私同様、愛媛県松山市神田町1-7の「厳島神社」を探られるがやはり地形的にハズレ。
神田町はこのような海にかなり近い田舎の急な高台ではない。


それで、K.Nさんも私同様ややお手上げになり、諦めかけたそうだが、

ここでハッと発想の転換をされたのが私との大きな違い。


ひょっとして…寅のバイをしていた神社から見えるのは、
あれは島ではなく逆に四国本土なのではないか。

つまり、水路を隔てて島が見えるが、島の方から本土を見ても
あのように見えるのではないかと思われたのだ。
つまり、寅は今、島にいるのだと。

そして、今度は逆に彼は興居島(ごごしま)のほうをいろいろ調べはじめられた。
なんと、島の泊町厳島神社というのがあったのだ!

」という文字が倉庫らしき建物に書かれてあったこと↓も彼は覚えていて、焦点が合い始めるのである。




                 
泊という文字が見える
         




また、彼はその倉庫に書かれた文字は「
櫻井」ではなく、そのまま左から読んで
農協の「
共同撰果所」を意味する「共撰」だと認識されたのだ。
つまり興居島特産のイヨカンなどの
柑橘類を撰果する倉庫だったのである。

よくよく見てみれば櫻ではなく「撰」だし、「井」にも見えるがやはり「共」だ。↓

うーん!なるほどである。





         








        



        






しかし、そうは言ってもここまでは全て推測で、興居島の「厳島神社」の写真(画像)が
見つからない限り、確信は持てないのだ。そして、やはり写真(画像)はなかった。


私ならいくらなんでもここで諦める。


しかし、K.Nさんはなんとなんと三重県の自宅から
愛媛県の興居島(ごごしま)の役場に確認の電話をかけられたのだ!


そしてその時、電話の向こうで奇跡的にこの映画のロケのことを覚えていた人が何人か電話の近くにおられたのだ!
その島の元理髪師のおじいさんなどが覚えておられて、仕事の合間にロケを覗きに行ったらしい。

当時、渥美清さんが神社で何か物を売るシーンを撮影していたということだった。

神社はもちろん高台にあり、海も本土も間近に見えるということで、
この興居島の厳島神社の可能性は果てしなく100パーセントに近づいたのだった。

私ならもう満足し、ここで結論付けてしまうが、K.Nさんは、最後にもう一軒、
なんとその「厳島神社」へも直接電話されたのだ。

年配の宮司さんが電話にお出になって、確かに30年ほど前にここで「男はつらいよ」のロケ
があったと仰られたのだ!
本当の祭礼は終わったあとだったので、神事のシーンなどは無しとし、幕や幟旗などを上げ、
人手も地元の人々を集めてもらっていかにも縁日のそれらしくし撮影した、ということらしい。

そして神社にはそのときのビデオが今も残っているとのこと。



完璧である。


愛媛県松山市興居島の厳島神社だったのだ。

私はK.Nさんの洞察力と行動力に感服すると同時にこんなことに大事なお時間とお金を使っていただいて
申し訳ないような気になり、深く深く感謝の気持ちを述べた。まったく凄い人が世の中におられるものだ。






− エピローグ −


そして私自身も、K.Nさんから興居島(ごごしま)の厳島神社だった、とメールをいただいた時に
実は、あるひとつのひっかかっていた謎がさーっと解けたのだ。


それはあの寅が歩く向こうに停泊していたフェリーに書いてあった文字だ。


ここしま」とひらがなで書いてあると思っていたのが
あれは実は「
ごごしま」と書いてあったのだ!あああ!

もちろんこの画像を見ていただくと↓わかるが、
どう読んでも、どうアップにしても、シャープをかけても
「ここしま」としか読めない。

DVDの限界なのだろう。ブルーレイだと読めたかもしれない。





              
       「ここしま」としか読めない…。
         




 
どうりで、最初、「
愛媛 ここしま」でいくら検索しても何もヒントが出てこなかったはずだ。

さっき、試しに「
愛媛 ごごしま」で検索すると「もしかして: 愛媛 興居島  」って一番上に出てきた。

あー残念!(TT)
 

あのフェリーの文字の濁点もっと大きく書いて欲しかった。  おいおいゞ(^^;)
 



追伸(2008年7月23日)

なお、さきほど関係者の方からメール連絡がありまして
このKNさんの発見されたロケ地名は
男はつらいよ40周年の『松竹公式サイト』の第19作ロケ地欄にも今後追加記載してくださるそうです。
いろいろ使っていただいて嬉しいですね(^^)








− 付録  −



興居島(ごごしま)




            







四十島瀬戸をはさんで、瀬戸内海に浮かぶ周囲30kmの島(松山市に属する)
同島は松山市陸地部からわずか2km海を隔てた距離にあるため、離島と言ったイメージはない。

その昔、和気姫がこの地で三つ児を授かり、その子供の末娘が「母のいる島」と言ったことから
「母居島(もいじま)」と呼ばれ、後にそれが現在の「興居島(ごごしま)」と言われるようになったらしい。

高浜の向こうに見える小さな島は「四十島」と言って「坊ちゃん」に出てくるあの「ターナー島」だ。



興居島(ごごしま)は
和氣比売神社の「船踊り」で有名な島。

伊予水軍が盛んだったころ、海賊を退治し、島に凱旋した戦士を、島民たちが歓迎するのに応えて、船上で戦士たちが、
戦いの様子を身振りで伝えたのが起源だとされ、船越の和気比売神社の秋祭りに催される。

漁船にしつらえた船舞台の上で、歌舞伎からとり入れた「忠臣蔵」「曽我兄弟」などが演じられるが、
すべて黙劇で行なわれるのが特徴。昭和51年には国の無形民俗文化財指定。
それ以外に「島四国八十八箇所」などもある。


また、島にある
にある小高い山伊予小富士(いよこふじ)は住民に親しまれ(282メートル)、
「富士」の名が付けられている。地元では小富士山(こふじさん)と呼ばれることが多い。


松山出身の歌人正岡子規も

雛なくや 小富士の麓 桃の花』と詠んでいる。


果物の島と呼ばれており、
季節には島中ミカンの花でいっぱいになるほど柑橘類の栽培が盛んな島で、
興居島のイヨカンは全国的にかなり有名。


2006年12月1日現在
人 口 ・2,279人



参考動画↓

船から見た興居島と伊予小富士そして泊の港
http://jp.youtube.com/watch?v=wiYENPUeHTk&feature=related


興居島の「船踊り」
http://jp.youtube.com/watch?v=Ja0PPKiyc5w&feature=related








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366

                          
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即興フラッシュアニメ『駆けて来る寅次郎』


絵は運動神経を使って描かねばならない


2008年7月14日 寅次郎な日々 その366

ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。


最近息子はかなり熱を入れて漫画やフラッシュアニメを作るようになったが、
その分以前より欲が出てきたのかいわゆる完成度を高くしようという傾向にある。

これは絵描きにも言えることだが、前作より、いっそうしっかり作ろうとし始めるわけだ。
一見とても前向きで向上心があっていいように見えるが、あまりそれが高じると時には線が硬くなったり、
小奇麗になりすぎたり、うまげだが変にまとまったりしてどこか商品ぽくなるのだ。
そう言うスケベ根性からは時代を超えるものは出てこない。

まあ、彼も18歳なのでいろいろプロっぽいものを作りたいと思うのだろうが、まとめてはいけない。
想像と破壊の連続の狭間にしか感覚的なものは決して生まれないのだ。

普段は彼に何の助言もしない私だが、もっと生意気に運動神経で絵を描くようにちょっと助言した。
絵は油彩であろうが、漫画であろうが、アニメであろうが右脳をフルに使って感覚的に描かないと
ギリギリではどこかで見たような、どうでもいいようなものが出来てしまうから怖い。

で、まあ、本人なりにちょっと納得したのか、そのあと2時間ほどで即興アニメを作ったらしい。
見せてもらうと、
寅次郎が草原で「さくらー」って叫び、途中でこけそうになりながらこちらに走ってくるのだ。

確かに破綻だらけで何が何か分からないが、とにかく上手くまとめようとしていない絵ではあった。
それと全体的に運動神経で描いている線だったので、これに関しては文句は言わなかった。
まあ、あえて気に入ったところをあげるとすれば
「カチンコ」に描かれている絵と文字がちょっと感覚的で良かったかな。

で、助言をした手前、この日記に載せてやることにした。


タイトルは
「駆けて来る寅次郎」

何だか全体によく分からないが、退屈な絵ではないのが救い。



          






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365

                          
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好きだから つよくぶつけた雪合戦



2008年7月3日 寅次郎な日々 その365

ご注意) 下の文章をはじめ、私のサイトには物語のネタバレが多く含まれます。
まだ映画作品を一度もご覧になっていない方は必ず作品を見終わってからお読みください。



ようやく森英介さん著 「風天 渥美清のうた」を読み終えた。

一つ一つ渥美さんの句をかみしめるようにめるように読んでいった数日だった。

私が新たに気に入ったのは、以下のとおり。



好きだからつよくぶつけた雪合戦

蓋開けたような天で九月かな

ただひとり風の音聞く大晦日

夢で会うふるさとの人みな若く

少年の日に帰りたき初蛍

子に先立たれカンナ咲く

肌寒く母帰らぬろ地に立つ

そばあっけなく食って扇風機



そして亡くなる少し前に作った句の中で特に好きなものがこの二つ。


花道に降る春雨や音もなく

ポトリと言った気がする毛虫かな




4月28日にこの「寅次郎な日々」でも「バリ日記」でも、
私の留守の家に健気に咲く赤いチューリップの話を書いたばかりだが、
なんと渥美さんも同じことを俳句で表現していたのだ。これにはびっくりした。

 チューリップ 風に震えて 家は留守 」     


                   





さて、ここで、この本で興味深かった話をちらっと紹介しよう。
本の中で山田監督が森さんのインタビューに答えているのだが、
実はその昔、このシリーズで俳句を題材にしたある一つの作品が、渥美さんとの雑談の中で
生まれつつあったことを懐かしく語られていたのだ。

かいつまんで言うと話はこうである。

ある時、寅が旅先で山頭火みたいな放浪の坊さんと一緒になった…。

寅はその乞食坊主を哀れがってなけなしの金をはたいてご馳走したりする。

旅を続けるうちに坊主が俳句を好きだということが分かって寅はその作品を見るんだけれど、
「こんなのダメだ」って生意気にもけなしてしまう。
坊主が「じゃあどんなのがいいんだ」と言うと、

寅はちょっと間があって、

「こんなのどうだい、五七五にはうまくはまらねえけれど」

と、その場の思いつきの句をひょろっと口にしてみる。

坊主はそれ聞いてひどくびっくりして

「それいい句だよ。あんた俳人になれるよ」

と、感動したと言う話。

寅が友達になったその人は、乞食坊主のような格好をしているが実は有名な俳人で、
あとになってその人が句集を出す。

ある時俳句をはじめた博が句集を見ながら

「兄さんこの俳句いいでしょう」

と言うので見てみたら、

「あっ、それはオレが作った俳句だ」って寅が言う。


それで、いろいろ事の顛末をみんなに話してやる寅だったが、

「兄さん、この人は有名な俳人ですよ」って博が教えると

寅はそれに対してにこう言うのだ

「オレのを盗むくらいだから大したことはねえな」


チャンチャン(^^)




これは観たい。なんとしても映画を観たかった。



第17作「夕焼け小焼け」の池ノ内青観や第29作「あじさいの恋」の加納作次郎との一期一会と
一見よく似ているが実は大事なところが違う。

決定的に違うのは、寅が実際にひょいと見事な俳句をリアルに作ってしまうところである。

そうなのだ。寅は人生の達人であり、詩人なのだ。

絵画や焼き物のような「物」と違って寅はすでに人生の機微を熟知するゆえに「言葉」というものをよく知っている。
もちろん知識という意味ではない。難しい熟語や季語などは知るはずもないが、見事にその情景に的を得た日本語が
スッと出てくるのである。時々目の覚めるような鋭敏な言葉使いをする時もある。

言葉は技術でもなく説明でもなく飾りでもなく、その人の感覚であり、その人の生きてきた道のりの証である。
学問や知識は常に二次的なものであって、手助けにしか過ぎない。いや、かえってその知識が邪魔になるときすらある。
そんなもの最後はどうでもいいのだ。生きて行く上で大切なものは「感覚」である。

だからこそ寅はあんなに切なくて優しいアリアを語ることができるのだろう。



ところで寅はその脚本ではどんな俳句を作ったのだろうか。


赤とんぼじっとしたまま明日どうする

って感じかな…。



それとも

さくら幸せにナッテオクレヨ寅次郎

かな…。



それとも冗談ぽく

立ちションベンする気も失せる冬木立

かな…(^^;)



寅の言葉と言えば、私は一連のアリア以外では、あの第14作「寅次郎子守唄」の呼子港での踊り子との
やりとりを思い出す。あれは私にとってまさにこの第14作の白眉だった。あそこにクライマックスがあったのだ。



「ここで踊ってんのかい?」

「こんな景色のいいとこまで来て、暗かところで女の裸観てどこがよかすかねェ」

「フフ…別に裸を観るわけじゃねえよ。姐さんの芸を観に来たと思えば腹もたたねえだろう」

「フフ…兄さん、よかこと言ってくれるね」

「そうか」


これこそが車寅次郎の言葉である。

もちろんこれは短歌でも俳句でも自由律詩でもない、ただの会話、ただの言葉である。
しかし、この研ぎ澄まされた無駄のない寅の言葉が琴線に触れ、詩を感じ、余韻を感じ、人生を感じ、
人の世の情けを感じるのは私だけではないだろう。

技術や伝統や形式はすべて目的の下にしかないのだから。



              




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