ヤンチャな寅が帰ってきた 物語の復活
第18作「寅次郎純情詩集」を最後に、山田監督はアイデアを出し切り、作品作りに悩み始める。
その後もさすがに地力があるので、「佳作」までは必ずこぎつけるのだが、臨場感の弱い場面や過去の作品の
二番煎じ的なシーンが時として若干目に付くようになってくる。二番煎じは必ず一番煎じに劣る。半年に一度の
制作の連続はやはりなかなかアイデアが醗酵しないのだ。半年に一度というのはやはり厳しいサイクルである。
落語なら繰り返し演じることで深みや味や艶がでてくるが、映画の場合は新鮮味が失われ、劣化していく危険性がある。
(もちろん、これは非常に高いレベルでの作品批評、ないものねだり、であって、第19作以降の作品もほとんどが
すばらしい良さをたっぷり含んだ、品格のある作品たちであることは疑いのないことではある。)
しかし、そんな時、第8作で登場した印象深い備中高梁を再び舞台にすることを思いついたことでインスピレーションが
もう一度こんこんと湧き始めたのである。これは博の父親の故郷であり、博たちの故郷でもある高梁ならではの効果だ。
山田監督自身にとっても、この落ち着いた高梁の町は第8作ロケの時もとても印象深いものがあったらしい。
そして、口の上手い寅が、坊主になり、高梁に滞在する。これはもう面白くならないわけがない。
そして当然ながら高梁に滞在しているので博やさくらと自動的に深い縁もできていくのである。
この絶妙の設定がまず成功のポイント。
第15作「相合い傘」が第11作「忘れな草」の助走を経て、大きく花開いたように、この「口笛を吹く寅次郎」は第8作「恋歌」の
懐かしい思い出をベースに、第22作「噂の寅次郎」でのイメージも手伝って、見事に物語の中身もスケールも広がり、
往年の「相合い傘」や「夕焼け小焼け」のごとく躍動感に溢れ弾んでいくのである。
こうして、第32作「口笛を吹く寅次郎」は山田監督にとって、長いトンネルの後青空がスカッと見えるように
起死回生の傑作となった。
ベストカップル 朋子さんと寅
「なんと言いますか…、美しさの中に知性を秘めたと言いますか」
これは、朋子さんに遭った後、博がとらやで呟くセリフ。
寅の人生なのかでもなかなかあれだけ華を持った女性はいない。
幼馴染の可憐な千代さん。最愛の人であり旅人であるリリー。
青白き月光の輝きかがりさん。
彼女たちに勝るとも劣らない美しい朋子さん。家族想いで、温かな心が見ている私たちの気持ちを
和らげてくれるようだった。
この「男はつらいよ」の中で、真剣に寅に対する自分の愛情を何らかの形で寅にはっきり伝えたのは、
千代さん、リリー、そしてこの朋子さんだけである。
柴又駅ホームで、悲しみで潤んだ目をした朋子さんが首を横に振った時、寅の決意と覚悟しだいでは
恋が成就する正にその時だったのだが、寅がとった行動は……。
今回のマドンナとの相思相愛の別れは私にとってこのシリーズでもリリーとの別れ同様、最も悲しく、
後にまで想いが残ってしまうものだった。それほどまでにこの二人には「物語」が存在したのだ。
あらゆるマドンナの中で渥美さんとの相性が浅丘さんに匹敵すると言われる竹下景子さん。
渥美さんは、競演中、ずっと竹下さんのことを「お嬢さん」と呼び、実に仲がよかったそうだ。
実際スクリーンを見ても、竹下さんと渥美さんは最初から最後まで見事に息がピタッ!と合っている。
山田監督もそのことを感じたからこそ、後に竹下さんをもうあと二度もマドンナに起用するのである。
浅丘さんを除いて、三度出演したマドンナはもちろん竹下さんだけである。
イラストレーション 龍太郎
本編 ダイジェスト
@ 墓参りをする寅と朋子さんとの運命の出会い
松竹富士山
今回はいつもと違い、シリアスな音楽。
今回も夢から
夕焼け空の中 寅が故郷柴又を想い浮かべている。
故郷柴又を懐かしく思い帰ってみると、そこには偽者の寅次郎が
すでに存在しており寅がいくらオレはここにいると言っても金縛りにあったように
身体は動かず、苦しみまくるという夢。
とらや 青色の世界
台所
夢なので若干台所の様子が違う。
さくら「おばちゃん、お兄ちゃんまだ帰ってこない?」
おばちゃん「どうしてんだろうねえ〜、
私たちがこうして陰膳据えて待ってるっていうのにィ」
寅、陰で、その姿を見ている。
おいちゃん「早くあいつに知らせてやりてえよお〜」
おばちゃん「喜ぶよ、きっと、小さな目を糸のように細くしてさ」
と、目が糸になるポーズ。おばちゃん相変わらずお茶目(^^)
どうやら、寅の婚礼が決まったようなのである。
タコ社長やって来て
社長「さくらさん!日取りが決まったよ!」と意気揚々。
みんな見合い写真を見ながら、この人だったら寅はきっと喜ぶと
超乗り気になっている。
寅も背後に回ってニコニコで写真を覗く。
写真はよくよく見るとな、なんと今回のマドンナ!竹下景子さん!
夢でマドンナが出てくる作品は
意外に少ないが、この第32作も写真だけとは言え、
マドンナが夢に出ているんだねえ〜。
マドンナが夢で出て来るのは第27作「浪花の恋の寅次郎」
第28作「紙風船」第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」
そこへ現れる偽者の寅。
さくら「お兄ちゃんおかえりなさい!」
なんとこれまた本編で登場するレオナルド熊さん!
偽寅「さくら元気だったかい。社長景気はどうだい?」
寅、自分じゃない男が寅になっているのを見て
怒りが湧いてくる。
さくら「お兄ちゃん、お嫁さんが決まったのよ」
ととらや一同で結婚式の衣装や新婚旅行、ご祝儀の話もして
偽寅を囲んでみんなで盛り上がってしまう。
夢とはいえ、メッチャクチャ段取りがいいね(^^;)
結婚を祝う音楽でお馴染み 『結婚行進曲』が流れる。
メンデルスゾーン作曲 『結婚行進曲』1842年作曲
そして花嫁とその父らしき人までがいきなり現れ、とらやの店先に。
いきなりやなあ。夢だから何でもあり(^^;)
おばちゃん「まあ、お綺麗な…」
博「兄さん!あの人がお嫁さんです!」
偽寅「やったー社長!」と飛び跳ねて喜ぶ。
偽寅も社長も「ウハハハハ〜!!」
写真の方と実物と違いますね〜。
これも夢だからOK??
寅、台所から怒って出てくる。
寅「チクショウ!」
しかし、金縛りに会い、動きが止まってしまって。
寅「おい!!」
急に声がゆっくりしか出なくなってしまう。
寅、懸命にそれでも訴える。
寅「おい!おおおい、
ちがう、ちがううう、
だまされてるよおお、
オレが寅、とらじろううだあああ…」
いやあ、あるあるそういう金縛りの夢 ヾ( ̄∇ ̄;)
岡山付近を走る吉備線
電車の中
寅、長いすに寝ながらうなされている。
寅「あー、あー…」
労働者風の男が寅を起こしている。
なんと夢の中の偽寅のレオナルド熊さん!
熊さん「大将、大将…」
寅、はっと目を覚まして
寅「えっ、ふあー!」と熊さんを見て、驚き、起き上がる。
そりゃ驚くよ。夢の中で見た偽寅だもんなあ(^^;)
熊さん「うなされてたようだなあ…
悪い夢でも見たんかい?」みたみた(^^;)
寅、我に帰って
寅「ありがとう…」と、言いながらほっとする。
熊さん、自分の座席に戻りながら、自分のおかれている状況を嘆く。
弁当を持ち、大事な一人娘に語りかける。
どうやらいろいろ苦労が重なっているようである。
寅、しみじみ二人をいい顔で見て、頷いている。
寅「娘さんかい?」
娘さん歌を歌いながらイスの上で可愛く踊っている。
熊さん、照れながら
熊さん「ああ、はは、これは、オレの命よ」いいねえ〜( ̄ー ̄)
どうやら奥さんに逃げられてしまったようである。
嘆く熊さん。同情する寅。
娘「フフフ」
寅「あー、可愛い子だ可愛い子だ」
寅、娘さんをあやす
オレンジ色の国鉄吉備線が
秋の吉備路を走っていく。
タイトル
男(赤)はつらいよ(黄) (白)口笛を吹く寅次郎 (白)映倫
今回の口上は、この作品以外使われていない。後にも先にもこの作品だけ。
口上『大道三間 軒下三寸
借り受けましての渡世、
わたくし、野中の一本杉でござんす』
啖呵バイのことだね。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
目方で男が売れるなら こんな苦労も
こんな苦労もかけまいに かけまいに♪
備中国分寺跡の梅林
総社市上林
今回の歌の間のミニコントは備中国分寺跡
備中国分寺跡の梅林で熊さん父娘とおやつを
食べてピクニックをしている寅。
隣の家族のカメラを借りて寅が父娘写真を撮っては
見たものの、映っている様子を見たくて、
熊さんがついついフィルムをビヨーンと引き出して
しまい、 おいおい ゞ( ̄∇ ̄;)
全てがパーになって隣の家族の父親と
熊さんが大喧嘩というナンセンスギャグ。
このフィルム引き出し台無しギャグは第19作でも使われた
古典ギャグ。第19作のミニコントの時は津嘉山正種さんが主役。
父娘たちと本村のバス停で別れ、
高梁に向かう寅。
高梁川の渡しを使い、懐かしい高梁の町に入っていく寅。
柴又 帝釈天 二天門前
源ちゃんが日蓮宗の寺男のくせに般若心経を唱えている。
自転車で通りかかったさくら、感心して
さくら「あら、源ちゃん。
門前の小僧、習わぬ経を読む」
源ちゃん、さくらにかまわれて嬉しそう。
とらや 店
台所で、博とおいちゃん、おばちゃんが暗い顔。
おばちゃん「さくらちゃん、博さんと社長喧嘩したらしいんだよ」
さくら「えー?」
博の言うぶんには、社長は古いお得意さんにしがみついている
だけで、足元を見られて赤字の仕事を引き受けているということ。
タコ社長、愛想笑いしながらやってくる。
タコ社長は、博に、なんとかこの仕事だけはやってくれと、頭を下げるが…
博「今まで何べん言われたかなそういう無茶を。
段取りがみんな無駄だ。
長期的な展望というものが全く無いんですからねェ」
タコ社長は、涙目になりながら、
社長「わかったよ。へッ、どうせオレは無能な経営者だよ。
止めますよ、止めりゃいいんだろお!
なにもやりたくてあんな工場やってるんじゃないんだよ、
みんな叩き売って、借金払った残りは
退職金としてくれてやるよ!」
と仰々しいジェスチャーで泣きながら威嚇。
社長「オレは一文無しになって、ウエエ…、カバン提げて
寅さんみたいに、フーテンして歩くんだよ、ウエエエエン」
と、泣きながら工場に戻っていく。
一同シーン
おいちゃん「思い出しちゃった、寅のこと…」
さくら、下を向きながら微笑む。
そこへ、いつものパターンで寅から電話。
電話 リーン
おばちゃん「はいはい、とらやです。あら!寅ちゃんなの!?」
おいちゃん、ステン!と転ぶ。
久しぶりに出ました、おいちゃんのステン転びギャグ。
第14作「子守唄」第17作「夕焼け小焼け」などでステンと思いっきり転んでいました。
備中高梁
紺屋川のほとり 紺屋町美観地区
日本の道百選の通り。
第8作にも出てきた白神食料品店の斜め向こうにある黄色い公衆電話
なんとプッシュホン!寅にしては珍しい。
寅「おう、さくらか、ん?みんな元気でやってるか?
そうか、うん。
オレ?オレはあれだよ。あのー、
備中高梁ってところにいるんだよ。そうよ、博の
おとっつぁんの故郷だよ。」
諏訪一郎(ひょういちろう)さんと寅は第8作「恋歌」で、
この高梁の実家で数々の思い出を作った仲なのだ。
「りんどうの花」の話はあまりにも有名。↓
第8作のリンドウの花のシーン
寅は、備中高梁までやってきたので博のお父さんの墓参りをしようと
思い立ったのだ。
それで今墓の名前をさくらに聞いているというわけだ。
この先縁ができる白神食品のひろみちゃんが10円玉を笑いながら入れてやる。
そんなこと、このときは二人とも知る由もない。
さくら「もしもし、蓮台寺だって」
寅「あー、そうそう、思い出した思い出した。
えー?、いつ帰るかって?
そうよなあ〜、
まあ、これから、出雲の方へ出て、米子、鳥取と、
フラフラと秋の風に吹かれて歩いてるうちにゃ、
いずれ柴又へ着くでしょう、エヘヘヘへ」
さくらが電話を切った後、ちょっと気分が良くなる博だった。
お父さんのことを寅が今でも気にかけてくれたのが嬉しいんだね。
気分一新、
博は工場へ戻って、仕方なく社長の赤字仕事を
開始する。
感謝で一杯、またもや涙でうるうるのの社長。
高梁 蓮台寺(本当は薬師院) 墓地
ゆったりとした音楽が流れる。
諏訪家の墓に参っている寅。
寅「はあー…、
先生、
しばらくだなあ。
オレだよ、
寅だ。
覚えてるか?」
水をかけ、ウイスキーをかけ、線香を焚く。
寅「葬式には来れなかったんで、
今頃やって来た」
寅も、ウイスキーをかざし、そして飲む。
寅「オレは元気だよ。
相変わらずのフーテン暮らしで、
嫁さんももらえねえけどな。
これは持って生まれた性分でしょうがねえや
ヘヘヘ。
博はちゃんとやってるからな」
寅、枯葉を取り除きながら
寅「さくらとも仲良くやってるし、
なんの心配もいらねえよ」
しゃがんで手を合わせ拝む寅。
この静かな墓参りのシーンは
なんとも味わいがあった。
何度見てもいい場面だ。
寅、お寺の水桶の場所に戻って
汽車の音
寅「さあ…って、柴又へでも帰るか…」
おいおいおい、さっき電話で、
出雲に出て、米子、鳥取と行く
ってさくらに言ってたんじゃなかったのかい ┐(´-`)┌
はるか下から和尚さんが
ふらふらよろけながら上がってくる。
それを眺めている寅。
法事で飲みすぎてしまったらしい。
朋子「お父さん、大丈夫?」
和尚さんは2代目おいちゃんの松村さん!
朋子「ありゃりゃ!あ!やっぱり酔うとる。はい」
と、腕を抱えて上がっていく。
朋子さんの「ありゃ」はこの物語での口癖。
何度も出てくる。柔らかくてとてもいい響きだ(^^)
ヨタヨタ抱えられながらゆっくり上がっていく。
寅、朋子さんを見て、
すぐ眼からハートマークが飛び出した。
(o ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄o)
朋子のテーマが流れる。
風呂敷包みを落としてしまう和尚さん。
朋子、風呂敷包みに気付いて
朋子「あ、どうしよ」
寅拾う。
朋子「あ、ど、どうも」
と朋子さん手を出すが、
寅はなんと風呂敷包みを渡さないで抱え込む!
朋子「…?」だよね(^^;)
寅「わたくし持ちます」 いきなりかよ ゞ( ̄∇ ̄;)
和尚さん、手すりでゼイゼイになりながら
和尚「お参りかな?」
寅「はい、諏訪先生のお墓へ」
和尚「おー、諏訪先生のお知りあいかの」
朋子「そいじゃあ、遠方から?」
竹下景子さん、当時高熱下がったばかりでがんばってらっしゃいます!
寅、目からハート乱射(^^;)
寅「はい、…東京から」
朋子「あら」と、和尚さんを見る。
和尚「おー、そりゃまた遠くから。
ちょっと、寄っていきんさい、ヘヘヘ」ラッキー!
と、手招きし、上がっていく。
ちなみに諏訪一郎(ひょういちろう)さんの知り合いは
北海道にもたくさんいるだろうね。
和尚「ヘヘヘ」と上がっていく。
朋子、笑いながら
朋子「どうぞ」
寅「は…、でもやっぱり私、急ぎますから…」
と、いいつつ目は「おじゃまします!」と言っているぞ ヾ( ̄∇ ̄ ;)
朋子「それでもお茶のいっぱいくらい」
寅、一歩下がって
寅「でも…ご迷惑だから」
寅、それなら風呂敷渡せよな(−−)
朋子「父もそう言うとります、ね、どうぞ」
寅、ニコーっと笑って
寅「そうですか!」
朋子「ええ、どうぞ」
と上がっていく。
寅、俄然元気に溌剌と、
階段を意気揚々と上がりながら
寅「それじゃ、ほんとうに一杯だけ
いただいて、すぐ失礼しますから」無理無理(^^;)
と、すぐ朋子さんを追い越し、上がっていく。
寅、小声で、振り向きながら
寅「それだけですから、どっちですか?
いきましょ!はい」とニッコニコ(^^)
スタスタ上がっていく。
たまらんなあ〜、この露骨な態度。
なんの節操もない。
瞬殺的に決まっちゃったんだね。┐(-。ー;)┌
夕闇迫る美しい高梁川
母屋の居間
和尚と寅の笑い声
もう、相当二人とも出来上がっている。
サッポロビール、日本酒がいっぱい。
寅はレントゲンギャグで和尚と朋子さんを笑わせる。
寅「医者が言ったねえ。
『きみい、レントゲン撮る時は、
笑う必要ない』って
ハハハハハハ!」
和尚「ハハハハ!」
寅「いやだけどね、レントゲンだって、
あれ、にっこり笑って写した方がいいと思うの。
だって明るく撮れるもの、そのほうが」
和尚「そりゃそうじゃあ、ハハハ」 おいおいゞ( ̄∇ ̄;)
朋子「ハハハ、そんな…フフ」
寅、箸振り回しながらこのあと、第8作「恋歌」での「泣いて〜!」を
思い出し、またもや二人を笑わせるのだった。
寅「黒いの着て。その時、私がねえ、
写真撮る役になっちゃったの。
で、キャメラ持ってジーッと見た時、
ついうっかりさ、『はい!笑って』と
こう言っちゃったんだ」
和尚「うわハハハハ!」
朋子「フフフ」と我慢し切れなくて笑っている。
この第8作「恋歌」
博の母親の葬式でのエピソードは、
第13作「恋やつれ」で、歌子ちゃんとらや
訪問の時も、茶の間でなんと博がしゃべっていた。
第8作の記念撮影のシーン 笑って〜!
和尚「坊主も笑うたんじゃろその時」
寅「これがね、糞食ったような坊主だけどさ、
ニコーっと笑ったね、金歯出して、ハハハ!!」
相変わらず凄い表現(^^;)
でも、ちょっと待てよ…その時の坊主って、
この蓮台寺の和尚さんのことじゃないの?
和尚さんも爆笑してるけど
ひょっとして自分のことだったりして。あちゃ…( ̄∇ ̄;)
車の音
息子の一道が、帰ってきたのだ。
この一道君は、写真をやりたいのだが、父親は当然寺のあとを継いで欲しいと思っている。
かなり、この親子は険悪な関係に陥っているのだった。
寅、そっと朋子さんの近くに顔を近づけて
寅「親子関係うまくいってないの?」
朋子「そうなの」と少し呆れている。
和尚情けない顔をして
和尚「んんん、情けない話しじゃのう、
あんた。偉そうに仏の道など説いてまわっとるが、実は、ふ…、
たった一人の…息子すら、よう育てんのじゃ、このわしゃあ、うううう」
と情けない顔で泣き、そのあとひっくり返って寝てしまう和尚(^^;)
柱時計が時刻を打つ。10回 (10:00pm)
寅「あー、こりゃどうも、なんだかバカっぱなしをしているうちに、
すっかり長居しちゃって」
と、帽子を手で持ち、おいとまのフリをする(^^;)
朋子「あの、よろしかったら、今夜は家にお泊りになりませんか?」
寅「いえいえ、これ以上ご迷惑をおかけするなんて、とても」
朋子「そのつもりで、もう床も敷いてありますから」よっしゃああ!(^^)/
と、ガウンをかけなおしてやる。
寅「え?」 まんまとやったね寅 v( ̄ー ̄)ノ
寅おどおど。
朋子「広いだけが取り得の家ですけん。どうぞ」
と、お銚子を持って台所へ。
寅、かしこまって正座して
寅(無声音)「はあー、…」
と、腕時計を見るふり見るふり(^^;)
朋子、振り向いて
朋子「今、熱いのつけますから」
あああ、寅いい気になっちゃうよ( ̄∇ ̄;)
寅、幸せ一杯の顔をして、
帽子を手遊びしながら
寅「それじゃ、ほんとに一晩だけ」
と、至福の声。ニッコニコ(^^)
A居座り続ける納所坊主寅の活躍
翌朝 早朝
朝霧が立ち込める高梁川の川辺で
撮影をする一道たち。
シューベルトの「鱒」
この曲は第12作「私の寅さん」でも使われていたね。
高梁の町
蓮台寺 母屋
寅が上がり口に、旅支度を整えて座っている。
朋子、気づく。
朋子「ありゃ、どうしたんです?、こげえなところで」
寅、すっと立ち上がって
寅「ゆうべはどうも、遅くまですいませんでした…」
朋子「もう帰られるん?」
と、少し淋しそう。
寅「は、お茶一杯のつもりが、泊めてまでいただいて」
朋子「あ、ええのよ、そんな遠慮」
と、家に上がって、
朋子「今すぐ朝ごはんの支度しますけ、
せめてごはんだけでも」
と、上がり口に朋子さんが座る。 うーん、これが日本文化なのでしょう。
お客さんをもてなす時の作法でしょうか。
寅「はい、そのお気持ちはありがとうございます。
が、キリがありませんから」
朋子「どうしてぇ?」
寅「はい、朝ごはんをいただいた後に、
食後のお茶を飲みながら、バカっぱなしを
しているうちに、すぐお昼です」
朋子「ええ…」と小さく頷く。
寅「『おそばにしますか?おうどんにしますか?
『そうですねえ、おそばでもいただきましょうか』
そんなことしているうちに、三時のおやつですから。
薄切りの羊羹にお薄をいただいているうちに、今度は夜です。
『もう一杯どうですか?』『いえいえ』、
二杯が三杯、四杯、またこちらへ泊まるようなことになります。
それじゃキリがありませんから」
朋子「そこまで考えることはない思いますけど…」ないない(^^;)
寅「いや、考えちゃうんですね、性分として」だね(^^;)
朋子「へえ……」
この長いギャグは第2作「続男はつらいよ」で
使ったギャグのアレンジ版。
↓
寅「それがいけねえんだよ。
一杯が二杯になり三杯になる。
団子が出るか、また茶を飲むか、
そのうち酒になるじゃねえか。
オレは一杯や二杯じゃすまねえぜ、
気がついた頃にゃ、
お銚子がずらっと並ぶ。
さあ、もう腰がたたねえねえ。
いっそのこと、泊まっていくか、
(寅、大きく手を上げ、)
カラスカーァと鳴いて朝になる。
おはよう!
『またお茶をください!』
二杯になる三杯になる。
団子が出るか、酒を頼むよ、どうする?
オレは旅に出れなくなっちまうじゃねえか」
おいちゃん「何もそこまで考えなくていいじゃねえかよ」
以上第2作「続男はつらいよ」のシーンでした。
寅「それじゃ、失礼します」
朋子「名残り惜しいわ、なんやら…」
寅、振り向いて
寅、ちょっと、もじもじして、
寅「とうとうお会いできませんでしたけれど、
ご主人にもよろしくどうぞ」
出た!寅のさぐり( ̄∇ ̄;)
必ず既婚か未婚か確かめるんだよな。
第8作「恋歌」でこのパターンが
最初に使われていた。
朋子「ありゃぁ〜…」
寅「はい?」
朋子のテーマが流れる。
朋子「私…出戻りなんです…」と恥ずかしそうに下を向く。
寅、センサー全快!!眉がピクッっと動く ( ̄▽ ̄)
微妙〜〜に喜んでいる。
寅「え?」
!!!!!
朋子「いっぺん結婚したんですけど、
事情がありまして…」
ともじもじしている。
表からタクシーの運転手さん、やってくる。
関敬六さん、今回はポンシュウではなく、
タクシーの運転手さん。
ハンコ屋さんの法事に出れないでゲーゲーゲロを吐いている和尚さん。
朋子さんは困ってしまっておろおろ。
朋子「えええー!今頃そげいなこと、
あああ、えらいことやなああー」あたふた。
和尚「えらいこっちゃ〜〜」 確かに┐(~ー~;)┌
朋子、顔に手をあて、お手上げ状態。
和尚もゲロ吐いてお手上げ状態(^^;)
寅「お嬢さん」
朋子、寅を見る。
寅「私が代わって参りましょう」おいおい(^^;)
朋子「…あ、あなたがぁ?」
寅「はい。私にも責任があります。
門前の小僧習わぬ経を読む。
私、お寺の前で育った男ですから。」
お寺の前でって…それだけでできるのか?(^^;)
朋子「はあ…」
寅「法事の真似事くらいなんとかなります。
余ってる衣ありませんか」ほんまかいなゞ( ̄∇ ̄;)
朋子「あ…はあ…」おいおいそんなことさせるなよ ヾ(^^;)
と、言うわけであっという間に『偽坊主』の出来上がり(^^)
メインテーマがテンポよく流れて
タクシーが高梁の町を走っていく。
後部座席で寅がそれらしく座っている。
すでに坊さん気取り。
寅「あ、運転手さん」
運転手「へい」
寅「仏様はいくつでなくなられたかな?」
すでに完全に役になりきってる。すご…( ̄、 ̄;)
運転手「九十二です」
寅「ほおおー」
紺屋町美観地区の中に入って、昨日寅が電話をかけていた
白神食料品店の前を通って行く。
堤章玉堂印鑑に停まる。
寅、降りてきて
寅「あ、は、代理を務めます納所坊主でございます」
ちなみに「納所坊主」とは、寺務所会計・庶務係として
下働きしている僧や見習のお坊さんのこと
ハンコ屋「おお」
寅「不慣れな点は、どうぞご容赦願います」
ハンコ屋「そんな、かまやせんが、
ありがてえところをちょろっと
やってくれりゃあそれでええのじゃ。
上がってちょうでい」
第11作「忘れな草」のラストでもおいちゃんが「ありがたいところだけ」
と言っていた。
ハンコ屋「おーい!納所さんみえられたで」
蓮台寺 居間
寅のカバンと帽子が映る。
一道「大丈夫かな?あげな人父さんの
代わりにやってェ。寺で修行したこと
なんかないんじゃろ?」
朋子「だいたいあんたが行かないけんとこよおー。
なによ、偉そうに文句なんか言うてえ!
『すいません、僕がお寺を継げばこげな迷惑
かけずにすんだのに』って、それぐらいのこと言うたらどう?」
一道「オレに当たらんでもええがな…」
と、言いながら、自分は大学をサボってカメラ旅行の準備をしている。
お金がなくなるまで伯耆大山の紅葉を撮影したいそうだ。
朋子呆れながらも、箪笥の中からサイフを取り出す。
朋子2万円置いて 甘いよ朋子さん…(TT)
朋子「そげいなことばっかりしよって、
学校のほうはどうするの?
朋子「授業はとうにはじまっとるんじゃろ?」
一道「…」
朋子「お寺を継ぐか継がんかいう問題はお父さんと
あんたの問題じゃけん。二人できちんと話しんさい」
一道、頷いて、2万円持っていく。
朋子「お互いに口を利かんでなんでも私に言わせて。
そういうの卑怯よ」
一道「わかっとる」
お勝手の戸が開く。
白神食品店のひろみが入ってくる。
ひろみ「お早うございます」と、ビール持ってくる。
一道「うっす!」
一道、依然撮ったひろみの写真を見せる。
一道「これ、できたで」
ひろみ「わー、恥ずかしい!こげに大きい写って」と、写真を見ていく。
一道「ニキビ修正しといたほうがよかったかな」
山田監督って意地悪(TT)
でも、この二人なんだかしっかり仲がよさそう(^^)
出発直前にひろみちゃんんぽ水着姿の写真見せて
面白がるやんちゃな一道でした。
一道、ひろみのほうに
水着姿のひろみの写真を見せる。
一道って…( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)
シューベルト「鱒」が流れる。
ひろみ、振り向いて、ちらっとその写真見て
ひろみ「あ、私だ!」そらそうだ(^^;)
いったいあの写真いつ撮ったんだ??(^^;)
と写真を奪おうとするが、一道は運転席の前においてアクセルを踏む。
ひろみ「ちょっと、一道さん、やだ、やだ、いけんよー!
ねえ、返して、ねえ!」
と言いつつちょっと嬉しそう(^^)
ひろみ「ねえ!いじわるう!」
と走り去るワゴン車をの窓をたたく。
ひろみ「えっちいー!!」まあまあ(^^;)
ひろみ実に嬉しそう。一道の気持ちを確信したようなもんだものね(^^)
紺屋町(美観地区)
その後自宅の白神食品店て元気に手伝いをするひろみちゃんだった。
寅が法事をしているハンコ屋さんはすぐ橋向こう。
なんと、第8作「恋歌」でも同じアングルから撮影がされている。
白神食品店もその近くの店も12年の年月を経て模様替えをしていた。
右端にハンコの堤章玉堂が見える。
↓
第8作「恋歌」
ハンコ屋の中から
「南無大師遍照金剛。。。」の声
蓮台寺は真言宗だからね。
一同 「南無大師遍照金剛、 南無大師遍照金剛」
寅よくお経が読めたなあ…、っていうか
よくばれなかったなあ…。
だいたい柴又題経寺はご存知日蓮宗、
ここは当然真言宗(^^;)
普通読めんよ。困った〜…。
ま、とにかくお経終わって
寅「よし!」
寅、お経の後、座りなおして、手を合わせる。
一同「ありがとうございます」と、お礼
大杉侃二朗さんと谷よしのさんの姿が見える。
今回は大部屋のみなさん備中高梁の町の方に扮しています。
寅「えー、おばあちゃんは九十二歳の天寿をまっとうしたと
伺っております。
本日この七回目の法要に、かくも大勢の関係者が
集まられるということで、個人の人柄が偲ばれます。」
一同、お辞儀
寅「人間この世に生まれて来る時もたっった独り。
そして、死んでいく時もたっった独りでございます。
なんと寂しいことではございませんか」
急に目を見開いて、手を上げて、
寅「天に軌道があるごとく、
人それぞれに運命の星というもを持っております。
とかく子の干支ォのかたは
終わり晩年が色情的関係においてよくない!
一同ぎょっとする。
未(ひつじ)の女は門にも立たすな。蛇の女は執念深い。
それってバイの口上だよ ヾ(^^;)
一同ポカ〜〜〜ン だよな(^^;)
奥様、失礼じゃが、あなた眉と眉の間、
すなわちこの印堂に陰りがある」そのネタもいつものパターン(^^;)
周りの人たち、彼女の顔をシゲシゲと眺める。
寅「ということは、ご主人の浮気で
泣かされている相であります」
全くいつもの啖呵バイの易者バージョンそのまんま(^^;)
ハンコ屋のオヤジ、呆然
奥さん、口あんぐり。
寅「ご主人、なかなかの二枚目でございますな」
ハンコ屋「は???」
寅「あなた」と指をさす。
後の男性客「ズボシやズボシ」
一同大笑い。
谷よしのさん笑い爆発。
ハンコ屋のオヤジ、タジタジして、きょろきょろ
奥さん「和尚さん、お見通しじゃあなあ」
一同再度大爆笑。
ハンコ屋「あほ!わしゃ遊びはもうやめとるよ」
奥さん「うそ!うそ言いんさい!」
寅「あなたがやめてもおなごがほっとかんでしょう」
上手いねえ〜(^^)
一同さらにさらに大爆笑
ハンコ屋「無茶言うて…!」
こうして、寅は法事の来客を笑わせ煙にまいて、
まんまと成功するのだった。
こうなったら完全に寅のペース(^^;)
しかし、この笑い話の前に、ちょこっと真っ当な
しみじみした話をさわりとして入れるところが
寅が素人じゃないところ。
面白い爆笑ネタを言うだけではないのだ。
蓮台寺
蓮台寺の石段で箒で掃除をしている朋子
タクシーが停まってハンコ屋と寅が出てくる。
ハンコ屋「いやいやいや楽しかったなあ」
運転手も笑って出てきた。
寅「お父さん、また頼むよ、ハハハ」
二人とも笑って盛り上がっている。上機嫌で帰っていくハンコ屋さん。
それにしても長門勇さんは岡山県出身の俳優さんなので
実にネイティブ!(当たり前)(^^;)
ハンコ屋「いやいや、おかげさんで、ええ法事させてもろたわ。
この納所さんの法話のありがたいこと、ヘヘヘ」
朋子「あーよかったぁー、うまいこといったんじゃねえ〜」と安心顔
寅「ええ、まあなんとか」
朋子のテーマ
と、二人石段を上がっていく。
朋子上がりながら
朋子「ねえ」
寅「え」
朋子「どないな話しをされたん?」
寅「いやあ、口からでまかせですよ」確かに(^^;)
朋子「なんか…フフフ、面白そう、ハハハ」
寅「ハハハ」
朋子「ハハハ」と無邪気に笑う。
その朋子の横顔をまぶしく見ている寅。
この瞬間から寅は一目惚れから、
本惚れに移行していったねこりゃ。
B法事で寅と遭遇し苦悩し続けるさくら
柴又参道
川千家の前をさくらと満男が早歩きでとらやに向かっている。
なんと、偶然にも、博のお父さんの法事が備中高梁であるのだ。
今回は大きくなった満男も両親に同行。
とらや 店
さくら「あー、遅くなっちゃって、…!あら」
御前様が源ちゃんを連れて見送りに来ている。
おばちゃん「御前様がわざわざお見送りに来て
くださったんだよ」
さくら「まあ、おそれいります」とお辞儀。
おいちゃん「はやいもんだねえ、もう3回忌かあ、ねえ」
さくら「うん」
おいちゃん「博さん、お兄さんやお姉さんによろしく」
お姉さん????
おいおい、博にお姉さんなんか
第8作の母親の葬式の時はいなかったぞ(@@;)
おばちゃん「さくらちゃんも大変だね、末っ子のお嫁さんだから」おばちゃん年の功(^^;)
一同 笑いながら納得
と言うことで出発する諏訪家の3人でした。
店先まで出て、見送る一同
おいちゃん「いい天気だ」
社長「楽しい旅だといいねえ」
御前様「ぱったり、寅と会うたりしてえ…」
う〜ん鋭い!
おいちゃん「は…」
御前様「いや、冗談冗談、ハアア!ハアア!ハアア!」
といつもの御前様笑い(^^;)
源ちゃんもいつもの指差しヒヒヒ笑いで去っていく。
おばちゃん「まああ、お人が悪い、フフ」
おいちゃん「悪い冗談を、フフ…どうも、フフ」
社長、大笑い。
御前様のお告げでした(^^;)
高梁 蓮台寺
寅が納所坊主の格好で鼻歌を歌いながら
境内の砂に線模様を描いている。
寅「♪ラララララララッタンタンタンタン、
ズンチャカチャ、ズンチャ、チャチャ、
花摘むうう野辺に
陽はあああ落おおちいいて、
ペロペロペロぺ、ポンポンポン♪」
「誰か故郷を思わざる」
昭和15年(1940年)作詩西條八十、作曲古賀政男
霧島昇の歌でレコード化され、大ヒットした。
高梁と言えばあの「誰か故郷を思わざる」だよね。
第8作「恋歌」の博の父親 諏訪一郎(ひょういちろう)
と寅のやり取りの名シーンだ。
今回もやはり寅は同じ歌を口ずさんでいる。
高梁 武家屋敷通り
博の父親の実家の前
父親の実家の門を眺めている長男の毅
向こうの方に特急「やくも」が走っていくのが見える。
第8作「恋歌」では、同じ線路を蒸気機関車が煙を立てながら
力強く走っていたことを思い出す。
↓
第8作で寅たちの横を走るSL
岡村邸(博の父親の実家に使われた)
ゆったりと音楽が流れる。
毅、門を開けて、痛んだ扉を触っている。
この博の父親の実家は、第8作で博の母親が亡くなった時に
長い時間ロケされていた。岡村邸は広いの敷地面積を持っているので
維持が大変そうである。第32作では土壁などが修復されていた感じ。
第8作で岡村邸の門の中に入っていくさくら 第8作で酒を買うために外に行く寅
父親の世話をしていたと思われる
近所のおばあちゃん道から覗いて
おばあちゃん「ありゃあ、まあ」
毅「あ、おばさん、ご無沙汰しております」と道に出て行く。
おばあちゃん「まああまあ、毅さんじゃったあ」
と、二人は挨拶を交わしている。
このおばあさんは岡嶋艶子(おかじまつやこ)さん。
彼女は、第29作「あじさいの恋」で加納作次郎の家で
かがりさんと一緒に女中をしていたあのおばあちゃん。
油屋旅館
油屋旅館の前身は江戸期の旅籠から始まる。
現在の館は明治期に建築された木造三階建て。
博の兄弟みんなロビーに集まっている。
さくら「満男のがおっきいじゃない」
と、いとこ通しで靴の大きさを比べている。
衿子「膝からしたは私のが長いもん」
一同 ハハハ
さくら、満男にちょうどのサイズ買ってやれよ(TT)
毅「おー、満男君だったな。よく来たねー」
信子「フフ、博ちゃんの小さい時そっくりよ」
おおおお!これが幻の博のお姉さん(信子さん)か!
よく見れば第47作の長浜に住む菜穂ちゃんの
お母さん(八木昌子さん)じゃないか(^^;)しかし
なんのために今更お姉さんを増やしたのか?
毅「信子はさくらさんと初めて
じゃなかったのか?」初めて初めて(^^;)
信子「んー、お母様のお葬式の時会ってるわよォ」会ってない会ってない ゞ( ̄∇ ̄;)
毅「ほー…」知らないよネエ〜(^^;)
信子「二人ともまだ若かったから、フフフ」
毅「衿子は?…」
毅の奥さん「あ、この子は始めてよ」
衿子「あ、でも私さくらおばさんとは電話で一度…」
さくら「あ、またおばさんって言った」
とお茶目に衿子を叩こうとする。
衿子役は、若き日の森口瑤子さん、今とかなり違う雰囲気だね。
確かこれがデビュー作だよね。
さくらって「おばさん」という言葉嫌がるんだよね。
第10作「夢枕」でも岡倉先生の教え子たちにおばさんって
言われて怒ってた(^^;)
ちなみに、第8作「恋歌」では、毅の長男さんである
『友泰(ともやす)』君が来ていた。
つまり彼は衿子さんのお兄さんかな。
毅「おばさんは悪いぞ、ハハ」そう言う意味のおばさんじゃないんだってばヾ(^^;)
でも『叔母』なんだからそれ以外に呼びようはないよな。
いくらなんでも「さくらお姉さん」とは呼べないし(^^;)
「さくらさん」じゃ姪としては若干生意気だし…、
でも「さくらおばさん」とは二度と呼べない雰囲気なので
がんばって「さくらさん」ということになるのでしょうか…。
大変だねえ衿子ちゃん。
今回は修の奥さんもお子さんも来ていないなあ。
第8作の時には一家総出で来てたのに。
みんなで食事が終わって
池の写真を撮る満男
今回は満男は一道と同じくらい写真取りまくり。
長男の毅は、父親の家が懐かしいようである。
毅「僕には懐かしい土地だなあ。
暑い夏降るような蝉時雨の中をジンベェを
着たおじいちゃんに連れられて高梁川に
泳ぎに行くのがもう嬉しっくって嬉しっくて」
信子「さくらさんお生まれは?」
さくら「柴又です」
信子「じゃあ生まれ故郷にずっとそのまんま?」
そのまんまって、そういう人多いってば(^^;)
さくら「ええ、なんだか恥ずかしいみたいフフッ」
毅「いやあ、羨ましいですよ、
僕たち兄弟はみんな故郷が
ないわけだから」ほんとほんと( ̄ー ̄)
毅「なあ修、…さっき親父の生まれた
家見に行ってきたんだけど」」
あの家処分するのもったいないと思わないか?
いやあ、オレ、定年になったらここに
ひっこもうかな〜と思うことがあるんだ。
どうやら毅さんはここに後に住みたいようである。
他の兄妹の相続の権利の問題が浮き彫りになる。
一同に緊張が走る。
修「…ようするに判を押せって
事なんだね、権利放棄の」
毅「いやァ、そこまでは…」
修「結局はそこに行きつくよ
この問題 なあ姉さん?」信子さんは修さんより年上なんだね。
信子「パパに相談しないと分からないけど、
ウチはそのお金あてにして増築始めちゃったのよ」早すぎるって ヾ(^^;)
修「いいよ、判をついても。ただし…
オレの相続分買い取ることが条件だ」
毅「そんなことができるなら相談などするか!」
と泥沼的に大もめになってしまう。が、結局長男の毅さんの意見は
消えて、兄妹みんなで均等に分けることに。
毅、観念した様子で、憮然と
毅「わ、分かった!処分するよ…!
きれ〜に四等分にして分ける。
そ、そうすれば文句が無いんだ!!(バン!)」
怒って部屋を出て行く。
しかしいつもながら博の兄姉って、言ってることは正しいけど、 なにげに冷たい性格が滲み出ちゃってるね。
毅の気持ちは分からないでもないが、兄弟が多いとそういうことは
難しいかもしれないね。世知辛い世の中だからねえ。
小津安二郎監督の「東京物語」でもちょっとこれに似た世知辛さを
感じてしまう場面があった。
しかし、みんなそれぞれに世帯を持って必死で暮らしていて、その
遺産も人生設計の中に組み込まれていて密かにあてにいるのが
実は本音だと思う。だからここは割り切ってきちんと等分に分けるか、
そうでないのなら毅が分割でもいいから弟妹たちの取り分のお金を
工面し、支払ってやるしか方法はないとも思える。
一同、重苦しい空気のにいる。
電話 チリリリーン!チリリリーン!
博、電話に出る。
博「はい。あ、この度はお世話になります。」
坊主に扮した寅が、博だと知りながらいたずらをしている。
蓮台寺 居間
寅が受話器を持っている。
寅「あ〜あ、左様でございますか。」
博の声「はい」
寅「大変失礼でございますけど、貴方様のお名前は?」
博「あの、僕は三男の博ですが」
寅「三男の博さん。あ、奥様もご一緒に参ります?」
博の声「あ、はい、一緒です」
寅「あ、そうですか、 いえいえ、はい、
よろしくどうぞ(チン・・・)」
寅「ヒヒ、奥様はさくらさん。お待ちしております」
と、愉快でしょうがない様子で目が三日月。
この性格たまらんなあ…さくら泣くよ… ┐(-。ー;)┌
ヒヒヒ、
鳥取県江府町御机
雄大な伯耆大山南壁と紅葉(こうよう)が見える
シューベルトの鱒が流れる
写真を撮る一道
鳥取県江府町御机
高梁 蓮台寺
満男が高梁の風景写真を撮っている
本堂の中
満男を呼んで
さくら「少しじっとしてられないの?」
博「お前、落ち着きが無いぞ、近頃」
博、満男の足を叩く。
修「お待たせいたしました。院家様がお見えです」
和尚さん、そして後ろに寅がついている。
満男、寅を見る。
満男「…!!!!!!」 そりゃそうだ(^^;)
さくら、後ろに座っているおばあちゃんに気がついて、
後を向いてしまう。
満男呆然…(^^;)
博もさくらも寅に気づかない。
結局、前を見ていた満男だけが寅を見てしまう。
お経の前にたどたどしく2度鐘を撞く寅。
いかにも不慣れという感じ。
般若理趣経が読経される。
満男つい寅を再度確かめようとして
前につんのめる。
さくら満男を叩いて
さくら「ちゃんと頭下げてなさい」
満男、さくらの耳元で
満男「母さん、あの人」
さくら「どうしたの?」
満男「寅伯父さんだよ」ピンポン♪(^^)
さくら振り向いて
さくら「何言ってんのバカな子ね、和尚さんでしょ」
信子、落ち着きがない満男をいやがっている。
さくら、一応念のために前のお坊さんを観察。
寅、お経の本をこねくり回している。
博「どうしたんだ?」
さくら、お坊さんをまだ観察。
博もつられて見る。
寅、経文の紙をパラパラと落としてしまう。
慌てて、つい後を振り向き、さくらと顔を合ってしまう寅。
あ…
さくら、ガアアアアアーーーン!!!
Σ(|||▽||| )
わが目を疑うさくら
この世の悪夢をいっぺんに見た顔。
博、口半開きで呆然。
蓮台寺 墓
墓の前でみんな拝んでいる。
満男「どうしておじさんがお坊さんに
なんかなっちゃったの?」真っ当な質問(^^;)
満男君それはね、マドンナがとびっきり綺麗だからだよ
ただそれ一点だけ(^^)
博「父さんも今それを考えてんだよ」
そして母さんもね(^^;)
寅、遠くから
さくらになんとウインクσ( ^ー゜)
さくら、怒っている。
なぜか前にいた信子
急にドキッとして(^^;)
信子、さくらに、
信子「ねえねえねえ、あのお坊さん、
私にウインクしたわよ、いやらしいわねえ」山田演出に座布団一枚。
と、言いつつちょっと嬉しそう((((^^;)
さくら「すいません」とついつい頭を下げる(^^;) 山田演出に座布団もう一枚。
信子「あなたがあやまることないでしょう?」そりゃそーだ(^^;)
博、さくらに合図、 さくら、気づいて
さくら「あ、そうですね」
信子「変な人ね、フフフ」
まさか山田監督、このギャグのために
わざわざ博のお姉さんを急遽作ったんじゃ
ないだろうな。ありえるぞこりゃ…。
博、さくらを見て、
博「顔色が悪いぞ、大丈夫か?」
さくら「ええ、お兄ちゃん何か悪いことでも
してるんじゃないかしら、あんな格好して…」
博「いやそんなことないだろう。
とにかくここに墓参りに来たんだよ。
それははっきりしている」
さくら、ふらふらになりながら
さくら「そうねえ…」
博「問題はあとで何があったかだなあ…」
女性問題女性問題、思い出せよ過去のデータを(^^;)
石段の上から女性の声
朋子「寅さぁん!」
さくらと博驚いて上を見る。
さくら&博 「!!!」
!!!!!
寅「あ、はいはい」
と鉄のポールをまたぐ寅(^^;)
朋子「あの、ちょっと、フフフ…」
寅「はい」と軽快に駆け上がっていく。
朋子笑いながら寅と法事の打ち合わせをして
寅の後を駆けていく。
さくら、下からそれを見て、フラフラと倒れそうになる
博、慌ててさくらをサポートし、
博「しっかりしろ」
さくら「はあ……」と目が虚ろ。
さくらこのシリーズ最大のピンチ!
おそらくさくらの中で数々の妄想が
渦巻いているのかもしれない(^^;)
寺の中 座敷
みんなで食事をしている。
毅、和尚さんのところに挨拶にやってくる。
寅、手を合わせる。
毅「お世話になりました」
お銚子を持って
毅「ま、おひとつどうぞ」
やっぱり、毅さん、第8作でお母さんの葬式に来た時の
寅の顔を思い出さないんだね。「笑ってェ〜!」事件まで
あったのになあ…。思い出さないんだね。
毅さん、自分の兄妹たちを次々と寅に紹介していく。
第8作ではこの毅の奥さんの名前は「咲江」さんだった。
改名したのか?それとも同じ顔の双子のもう一人と
再婚したのか?んなわけないか(^^;)
寅、手を合わせてお辞儀。
毅「長女の信子といいます」
信子、お辞儀。
寅「は、お美しい方でございますな」
そんな発言したら、さっきのウインク勘違いされるぞ ヾ(^^;)
毅「次男の修です」
修「あ、修です」
寅、お辞儀
毅「末っ子の博です」
寅「博さんとおっしゃる、
おほー!これはこれは」
なんだかよく分からないリアクション(^^;)
博、顔をこわばらせながら、お辞儀。
満男ポカーン
さくら、下を向きっぱなし、失神寸前…(TT)
毅「そのとなりが妻のさくらです」
寅「さ、さくらさん?」いちいち反応するなって ヾ(^^;)
寅「おー、ホホホ、遠いところを
ご苦労さまでございます」
おいおい、どうして遠いこと分かるんだよ ヾ(^^;)
さくら、額に冷やせをかきながら、かろうじてお辞儀。
さくら、またもや目がくらくらして
さくら「私どうにかなっちゃいそう」
さくらがこんな言葉を…(TT)
と、博の方にふらついてしまう。
限界が遂に来たさくらでした(TT)
満男、心配そう。
博「ちょ、ちょっと表出よ」
博、身を乗り出して毅に、
博「兄さん」
毅「あ?」
それと同時に寅も反応してしまう。
寅「えー?なんだ?」
おいおいおい( ̄□ ̄;)
毅きょろきょろしてしまう。だよね(^^;)
一瞬みんなシーン。
寅「え?????」
博、どうしていいか分からなくなって下を向いて
さくらもどうしていいか頭真っちろけ(TT)
博「……」
さくら「……」
寅、はっと気づいて、毅と顔を見合わせてしまう。
寅「…!!」
毅「…?????」(゜o゜;)
山田演出に座布団2枚(^^)
寅、いきなりニカーッと笑って
無理やり話題をそらす。
寅「ハハ、しかしあれでございますねえ、
何回見ても結構なお庭でございますね。」
無理あるなあ〜(^^;)
そのあと、寅笑いながら、さくらの後を追い、廊下の陰でさくらに追いつく。
さくら、泣きそうな顔で寅のところへやってくる。
全く理解不可能で脳みそショートして頭からバネが
たくさん飛び出して限界を超えている感じ。
寅「ヒヒヒヒヒ!!ヒヒヒヒ!ヒヒヒ、
おまえたちのことをよ、
たっぷり驚かしてやろうと思ったけど
返事したのまずかったな。」
さくら、後で誰か聞いていないか心配そう。
寅「途中までうまくいったでしょう?
うまいねと思ったでしょう、
フフフ、ね、ね、フフ…」
あんただけだよ面白がってるの ヾ(-_-;)
さくら、寅を睨んでいる。
寅「怒んなよおまえ〜、んな〜」
さくら「さっきから私がどんな気持ちで
いたかわかんないでしょう」
さくらメソメソ(TT)
寅「からかっただけじゃねえかさ〜」
さくらメソメソ(TT)
寅「泣くなっての」
さくら、真剣な顔で
さくら「ねえお兄ちゃん、正直の答えて頂戴、
ここのうちの人騙して、なにか悪いこと
でもしてんじゃないでしょうね」
寅にそんな甲斐性はないよさくら ヾ(^^)
寅はバカな男だけれども嘘はつかないから。
寅「ばかやろう、オレはそんなことするわけねえじゃねえか。
これにはいろいろと深い事情があるんだよォ〜、
な、あとで話するから」
谷よしのさん、法事の手伝いの人役で廊下に出てくる。
これは、あのハンコ屋の法事の時の谷よしのさんなのか
それとも別人役なのか?一人二役か??
この辺の解釈は難しいところ。
谷よしのさん「納所さん、お嬢さんが呼んどられるでな」
寅「はい!、ただいま」
さくらハンカチで涙を拭き、
ため息をつき、席へ戻っていく。
さくらは寅からまだ何も聞いていないので理解不可能。
しかし、お寺の娘さんの存在が実は関係していることだけは
たぶん今までのデータからはじき出せたはず。
備中高梁駅
博とさくら沈んでいる。 さくらは長いすに座っている。 満男相変わらず写真取りまくり。
博「ほんとにいいのか?このまま帰ってしまって」
さくら「だって無理やり連れて帰る
わけにはいかないでしょ」
まだふられてないから帰らない帰らない(^^;)
博「でもなんだかオレたちまでグルに
なって騙したみたいじゃないかァ」
さくら「じゃあどうすればよかったって言うのぉ?」
と不満げ。
満男近づいて
満男「こんなとこで喧嘩すんなよー」
博「…」
満男には悪いが、私はこのシリーズで
さくらと博が喧嘩しているシーンがとても好き。
満男のこと、寅のこと、博の独立のことなどなど、
数々の名シーンがある。
遠くから朋子の声
朋子「あ、寅さん、そこ」
階段を下りてくる朋子と寅。
朋子「ま、どうも失礼しました」
さくらお辞儀。
朋子「妹さんだそうですね」
朋子「もう、びっくりしてしもうて、
どうしてはよー言うてくださらなんだ
言うて寅さんに怒ったんですよ」
朋子と寅顔を見合いってフフフ笑い。
さくら「申し訳ありません」
さくら「あの、ちゃんとご挨拶しなくちゃ
いけないと思っていたんですけど、
なんだかガタガタしてて、時間がなくて」
頭がまっちろけで、気力がなくなって…が本音(^^;)
博「ええ…」
朋子「こちらこそ、もうお兄様にえろうお世話になりまして。ねえ」
と、と寅の方を向いて笑う。とても仲がよさそう。
さくら、お辞儀。
お土産にマツタケを貰う。
さくら「兄がさぞご迷惑かけてるんでしょうね。
なにしろ、変わりもんですから」
朋子「とんでもない、寅さんのお陰で父がどねえ助かっとるか。フフ。
檀家の方たちがね、寅さんの法話のほうがよっぽどありがたい言うて、
フフフ、大変な人気なんですよ」
博「法話なんかするんですか?兄さん」
寅「え?法話なんてもんじゃないよ。
口からでまかせ、ね!」
そうそう啖呵バイの口上しゃべってます(^^;)
朋子、微笑んでいる。
汽車がホームに入ってくる。
特急「やくも」
381系国鉄特急
C寅を思い始める朋子さんと、和尚さんの大失敗
柴又 とらや
柱時計が8:00PMを打つ。
さくら「汽車の窓から見てたらね二人仲良く並んでいつまでも
手をふってんの。私涙が出てきちゃった」
おばちゃん「わかるよぉ」
おいちゃん「はあ」
満男「母さん法事の間中真っ青。
帰りの新幹線なんか放〜心状態、ねえ」
博「うん、」
さくら「行かなきゃ良かったわ、
高梁なんて高いお金かけて」
しかしまあ、煩悩の塊のフーテンの寅がお坊さんの真似事を
しているということ自体確かにかなり怖いよね(^^;)
おいちゃん「で、独身なのか?そのお寺の娘さんは?」
おっと、まんまの質問(^^;)
博「一度結婚したけど今は別れたたとか」
おばちゃん「きれいな人なのかい?」
おっと、これまたかなり鋭い質問。
そこが全てのポイント(^^;)
博、少しあらたまって…
博「何といいますか、
美しさの中に知性を秘めた
とでも言いますか…」
なるほど……博も好みか…( ̄- ̄)
おいちゃん「あ〜あああ、だめだそりゃ」だね(^^;)
さくら「法事とか、いろんな寄り合いとか
その段取りをね、全部お兄ちゃんがやるんですって」
おいちゃん「そんな馬鹿な、あの役立たずが評判がいいだなんて」
博「いや、その事なんですけどね、
僕たちは兄さんの事を頭からダメな
人間だと決めつけてしまってるんじゃないでしょうか
可能性を見つけてやると言うのが本当の愛情なんですよ」
「見つけてやる」って、中学生の不良を持つ親や先生
みたいなこと言ってるね(^^)
社長「そのとおりだよ」
おばちゃん「私たちは寅ちゃんの教育に失敗したのかねえ」
おいおい、おばちゃんおばちゃん ゞ( ̄∇ ̄;)
一同「クフフフ」
おいちゃん「遅いよ今頃後悔したって」
おいちゃんとおばちゃんは実は寅の青年期(15才まで)の
人間形成にはさほど関与していない。20年ぶりの帰郷以降も
ほとんどとらやにいないので教育する暇がない(^^;)
だいたいが大人になってからの寅は人のことに耳を傾けるタマではない。
ちなみに寅はマドンナがらみの仕事の手伝いは
神がかり的な力を発揮するのだ。
第5作の浦安の豆腐屋、第20作の平戸のお土産屋などなど。
それはそうと、社長は今回こそは、倒産かもしれないと気持ちが
沈んでいるのである。元気がない。
おいちゃん「だいぶまいってるなあ」
博「今が一番苦しい時期ですからねえ」
いつもいつも一番苦しい感じだけどなあ…(^^;)
高梁 蓮台寺
蓮台寺 居間
授業料未払いの通知の紙を一道に見せる朋子。
どうやら一道は、大学の授業料を自分のカメラに全部使ってしまったようだった(TT)
朋子「春休みに渡したはずでぇ、今年の授業料。
なんで払わんの?何かにつこうたん?」
普通は授業料は保護者が銀行振り込みするだろが。
学生に手渡しなんかしないよそんな大金絶対に。
一道「…」
朋子「あんたの事じゃけえ、悪いことに
お金を使うたとは思わんよ。
何か必要なもんがあったんじゃろ?言うてみんさい」
一道「キャメラ買うたんや」
あちょー!!ごくつぶし〜!
Σ(ノ▼ο▼)ノ ~┻━┻ (/o\)
和尚「今何ちゅうた!?」だよな(^^;)
朋子「お父さんお願い!一道!謝んなさい!ねッ!」
謝っても済まんよ(TT)
で大喧嘩の挙句、一道は大学を辞めて、東京にカメラの修行に
出て行くことに。
朋子「いけん!そげな事いけん!」
和尚「朋子は黙ってろ!
ええか、一道ィ。
二度とこの家の敷居をまたぐなえッ!」
一道、涙を流しながら
一道「ほんなら姉さん…オレ、この家出るけん…」
自分の部屋へ走っていく。
なんとか一道を許してやってくれと泣きつく朋子に
和尚さんは…
和尚「ええか、いっつでもこう言う時はお前が
間に入って、それが結局一道を
甘やかす事になってしまうんじゃ
それじゃいつまでたってもあいつは
一人前になれんのじゃ!」
和尚さんの言う通りだよ、朋子さん(ーー)
それにしても、一道、一年分の授業料を
カメラ代に全部使うとはたいした度胸だ。
ちょっとあんまりだとも思うが、それほどにも
写真が好きなんだね。さすがにあとで稼いで返せよ。
紺屋町
白神食品店
電話が鳴っている。
電話をとるひろみ
ひろみ「もしもし、あ、あたし。こんにちは、
ちょうど良かった今配達から
帰ってきたとこじゃ。フフ、今どこ?
近くにおるん?駅ィ?
なあんで駅なんかに。
ああ?東京!?
今から東京へ?
なんでえ〜?」だよなあ(TT)
高梁駅改札前の公衆電話
高梁市周辺観光地案内地図
事情を簡単に説明する一道。
いきなりで動揺するひろみちゃん。
一道「あ、そうだ、なんか困った事があったら、
うちの姉さんか寅さんに相談
すりゃあええけん、もうゥ、列車が
入って来た、俺いかにゃいけん、」
列車の汽笛 プォ〜ン…
白神食品店
一道の声「もしもし、ひろみ」
ひろみ「はい…」
一道の声「元気でな、 俺いつか絶対に
迎えに来るけん さいなら」
ひろみ「嫌!!あたしイヤ!行かないで!」
電話の受話器から「 もしもし!もしもし!」という
ひろみの叫び声が聞こえるが電車が来たので、
切ってしまう一道。
(ガチャッ)
改札を急いでくぐっていく一道。
白神食品店前
自宅を出て、泣きながら
走って走って走り続けるひろみ。
悲しく、ひろみのテーマが流れる。
佐々木食料品店の近くの
踏切までやって来て電車を見上げ、
必死の思いで一道を目で探すひろみ。
一道が窓から顔を出している。
ひろみ「一道さん!!」
一道も同時に気づいて
一道「ひろみいいいいー!」
ひろみ「行ったらいけん!行ったらいけん!
ウウアァ〜〜…!」
と泣き崩れ、しゃがみこんでしまうひろみ。
なんか、歌手の太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」と
いう歌を思い出したよ。こういう別れは、地方都市では
たくさんあるんだろうなあ…。ひろみちゃん諦めるな!
杉田かおるさん熱演だね。あの方本当に生真面目だ。
蓮台寺 居間
和尚さん夜の御勤め
般若心経(仏説摩訶般若波羅蜜多心経)
寅が今日の騒動のことを朋子から聞いている。
寅「へえーあの青年が朋子さんの
止めるのも聞かずに」
朋子、夕食を作りながら
朋子「二人とも興奮して、
私の言うことなんか耳にはいりゃへんの」
朋子、食事を運びながら
朋子「こげえな時、寅さんがおってくれたらと思ったけど
寅さんは法事に出てておられんでしょう」
もう完全に寅に法事は寅にまかせっきりの朋子さん一家でした(^^;)
寅「とうとうやりましたか、あの青年は」
朋子「どうなるんじゃろね、この先…」
寅「大丈夫、そんな心配するこたあ、
ありませんよ。男の子はね、
おやじと喧嘩して家を出るくらいでなきゃ、
一人前とは言えません」
自己弁護(^^;)
朋子「そういうもの?」
寅「そういうものです。この私がいい例ですよ」
いい例ではないだろう。悪い例だろ(^^)
朋子「寅さんも家出をしたことがあるの?」
あるの?なんてもんじゃないです(^^)
寅「はい。恥ずかしながら中学2年の時でした」
その原因が恥ずかしい…(^^;)
朋子「やっぱりィ…、生き方の上でお父さんと意見が対立したん?」
生き方って…ちゃうちゃう (-_-;)(;-_-)
寅「生き方…。フフ、そんな面倒なこと
じゃありませんよ。えー、私が不良仲間とね、
ヤツデの植え込みの陰でもって、
エンタを吹かして、
あ、失礼、モクを吹かしていたわけです」
指でタバコを吸うふり、
『スパッ、スィー、フー!』
とタバコを吸うマネ。上手いね〜。
朋子「ま…フフフ」
このシリーズで寅はタバコは吸っていない。
タバコを吹かすマネをするのも唯一このシーンだけ。
テレビ版男はつらいよではかなり吸っている。
朋子さん、笑いをこらえている。
寅「ちょうど風向きが悪かったんですなあ」
寅、おやじのしゃがみポーズを真似て
寅「便所の中でこうやって糞をしていたオヤジの小窓の
ところに煙がスーッと入ってきましてね。
朋子「えー?」
寅「オヤジがそれ見て、パーッと飛び出してきました。」
朋子「まあ」
寅「まあ、怒って、いきなりそばにあった
薪ざっぱで私の頭を
ポカーーーン!!」
寅、朋子さんに殴るマネ
朋子「キャ!ハハハ」(*/∇\*)と手で頭を覆ってすくむ。
寅「えー」
朋子「えー」 いい合いの手(^^)
寅「頭がパカーッと割れてね」おいおいゞ( ̄∇ ̄;)
朋子(無声音)「あらあ…」うそうそ(^^;)
寅「血がピューーーっっと吹き出て」
おいおいおいゞ( ̄∇ ̄;)
朋子「うわーっ」この合いの手いいねえ(^^)
寅「脳みそがどろどろどろと出ちゃった。」
ホラーだよそれじゃ ヾ(- -;)
朋子「そ、やだー、フフフ」
さすがに朋子嘘だと気づいて
朋子「ハハハハハ」
寅「いくら、オヤジだって子供の脳みそ
出すって言うのはあんまりだよ!!」
脳みそ出すって…死にますよそれじゃ(^^;)
朋子「そんな…フフフフフ!」と手で顔を隠して笑いが止まらない。
朋子さん、首を振りながら大笑い。
寅「この野郎と思ってね、オヤジの
一番大事にしていた『オモト』を」
朋子「ええ」
寅「ね、その植木鉢をオヤジに
向かってバカーーーッ!!!」
とまたまた朋子の方へ投げつける真似。
朋子「キャ!!」 またまた(*/∇\*)
寅「って投げつけたね!オヤジは怒りやがってね」
朋子「ハハハ」
寅「出てけえええーー!!」
朋子「フフフ」
寅「上等だ、それを言っちゃあおしまいよォ!!、
ガラッ!!と開けてサァーー!!」
朋子「はっ、ハ!」
寅「家を飛び出して、それっきりですよ」
朋子、笑いをこらえながら、
朋子「そいで、フフフ、そいで、フフ、
そいで寅さんは一人前になったわけ?」
寅、手を合わせながら、
寅「そうです。それで男になりましたァー」
と、にっこり。
朋子、笑いと涙が止まらない。
朋子「フフフ、ハハハ、そお、フフフ」
救われたね、朋子さん。
寅は白魔術をかけてくれたんだよ(^^)
和尚さん、寅たちのほうにやって来て、
和尚「コホッ、ンン」
寅「あ、きたきたきたきた、
夜のお勤めはもう終わりましたか?」
和尚「何をわろうとる?」
寅「フフフ……なんか用?」
和尚「……」
寅「…あ、…一杯やりたいのか?
いいよ、付き合うよ。」
和尚「お染はいけんぞ、お前ばかりもてるからのお」
この発言で、寅が和尚とよく出歩いていることや
この町ですでに人気者なことが分かる。
寅「分かった分かった、じゃあ、小春にしよう、ね、」
寅「和尚さん、小春のママね、和尚さんに惚れてるよ。」
和尚「つべこべ言わずにはよ来い!」
寅「嬉しいくせに、本当なんだから」
朋子「お父さん、あんまりおそうなったらいけんよォ」
和尚「うるさい」
寅「今晩はちょっと荒れますよ」
朋子「ごめんなさいね」
寅「いえ」
もうすっかり高梁の町の住人になっている寅でした。
外に出た寅を呼び止める朋子。
朋子「寅さぁん…」
朋子のテーマが静かに流れる。
寅「はいっ、何か?」
朋子「こんな時寅さんがおってくれて、
どんなに助かったか分からない」
寅「そうすか、そら、よろしゅうございました」
と、しみじみ嬉しそうな寅。
和尚「おいっ、はよこい!」
寅「はい!はいはい それじゃ、」
朋子「フフ」
寅との楽しい会話を思い出し笑みを浮かべながら、そっと戸を閉める朋子。
自分たちが精神的に最も苦しい時に、
そばに寄り添ってくれて、大丈夫だと励まし、いたわり、
笑わせてくれる寅の底抜けの優しさに心を癒されると同時に、
寅の精神のたくましさ、懐の深さを、心底頼もしく思い、
自分の中に男性として寅を思う気持ちが密かに朋子さんに
芽生え始めたような気がする。
彼女のあの目を見て私はそう思った。
高梁川近くの方谷林公園。
シューベルト 「鱒」が流れる。
この曲、もうすっかりこの若いカップルのテーマ曲になちゃいました。
ひろみが泣いている。
寅「そんなに悲しむこたあねえじゃねえか。
なにもお前のこと捨てていっちまったわけじゃねえんだからさ」
と、いろいろ励ます寅だった。
ひろみ、はっと気づいて
ひろみ「は、寅さん」
寅「なんだ姉ちゃん」
ひろみ「東京には綺麗な女の人がいっぱいおるんじゃろ」
寅「…、さあ、どーかなあ…。スー…、 女の方にあんまり
関心がないからオレは…」
よくしゃあしゃあと言うよ、まったく ┐(-。ー;)┌
ひろみ「おるわきっと…、そげんな所行ったら、
きっと一道さん、私のことなんか忘れてしまう。
…だってあの人、モテルんじゃもん」とまた半泣き(^^;)
ひろみちゃんも一道を追いかけていけばいいなんて、勝手なことを
助言したりもしている。
しかし、ひろみちゃんの家庭はお父さんが病気がちなのだ。
寅「ん、姉ちゃんが幸せになることだったらさあ、
父ちゃんだって母ちゃんだって考えてくれるんじゃねえか、
あとのことはァ…。
ほら、一道だって、寺の跡継ぎ放り出して
東京に行っちまったじゃねえか」
ひろみ「せえでも…、寅さんは朋子さんと
結婚して跡を継ぐんでしょう?」
おおっとお!話はもうそんなところまで!(^^;)
寅「…、え?」
ひろみ「私はひとり娘じゃもん」
朋子のテーマ流れる。
寅「そういうことはまだ…、
だ、誰が言ったの?」ハンコ屋ハンコ屋(^^;)
寅、明らかに嬉しそう。
ひろみ「みんなそう言うとるけど、違うん?」
みんなって…(−−;)
寅「え?…いやあ、そういうことは…
あんまり大きな声で
言わない方がいいんじゃないの」
たじたじ、そわそわ、うきうき。
ひろみ恐縮して
ひろみ「はい」
寅「ね、まだ、確定的なことじゃないから、フフ、はあ〜」
確定的って…(^^;)
ひろみ「はい」
寅、ニッコニコ顔で
寅「なんか美味しいもの食べに行こう、ね。
なんでも御馳走するから。行きましょ」
もう平常心を完全に失っています。
高梁川 川べり
釣りをするハンコ屋とタクシー運転手
ハンコ屋「まあ、倅を追い出して、自分は養子に入る。
どうやら寅さんの思い通りにいっとるようじゃの」
そんな計画的みたいに…。凄い方向に話が進んでいます。
やっぱ、この二人が高梁中に撒き散らしてるんだね(^^;)
タクシー運転手「いや、養子になるちゅうても、寅さん
ほんもんの坊さんじゃないじゃろが」
ハンコ屋「はー、せーじゃが。せーが朋子さんの悩みじゃ、ちゅ話じゃ」
悩みって…、朋子さんのことまで自分で
脚色をしてるんだねハンコ屋さん…(^^;)
何度聞いても長門勇さんの岡山弁はいいねえ〜。地元だからね。
蓮台寺
風呂場。
和尚が湯船に入っている。 まだ少々ぬるいらしく、
朋子さんが風呂に追加の薪を入れている。
朋子「ひやっ、あちち…」
朋子さんフーフー息を吹いている。
和尚湯船に浸かりながら鼻歌
和尚「♪はああなつう〜むうう〜、のお〜べ〜にィ…、
日はあああ〜、おちいいい〜てええええ。え、」
この鼻歌、ちょっと聴いただけでは分からないが、
よおおく聴くと「誰か故郷を思わざる」だ(^^;)
寅、笑いながらひょこひょこやって来る。
朋子と目が合う、
朋子「ありゃ」ちょっと華やぐ朋子。
和尚の入っている湯船を指差し「フフフ」と笑い
寅「しー」と口に人指し指をあて
クスクス笑いながら手を火にかざして
朋子の隣にしゃがむ。
朋子無声音で
朋子「お帰りなさい」とニッコニコ。
このちょっとした二人のしぐさで、
もう相当仲がいいことが見て取れる。
こんなにお互いの心がピッタリ寄り添う
カップルはこのシリーズの中でも珍しい。
二人の背中が彼らの相性を物語っているのだ。
寅薪を持って、笑いながら
寅「だいぶ御酩酊ですね」
寅「ああ…、お父さんも辛いんでしょう」
朋子「ん」
朋子、寅と顔を見合わせ微笑む。
和尚「おい!朋子!」
朋子「なあにい?」
和尚「お前な、そろそろどこぞへ嫁に
いったらどおない?」
手ぬぐいがポチャ〜ンと湯船に落ちる。
和尚「う〜ん」
朋子ビックリし、思わず寅の方を見てしまう。
そして、すぐ下を向く。
朋子「ハ、お父さんこそどうするん?
私が居らんようになったら」
和尚「わしは寅さんと二人でのんびりやっていくわい」
朋子、寅を見て、照れながら、微笑み、
また下を向く。
和尚さん、寅といつまでも暮らす気なんだね。
寅のことよっぽど気に入ったんだなあ。
寅「ヘヘへ」
朋子「ハ…」
寅、ニコニコ笑っている。
和尚「それともお前、寅さんを婿養子
にでももらうかい?お〜?」
朋子、寅をパッと見て、
どぎまぎして目がおろおろ動き、動揺する。
朋子「あっ…」
カシャーン
と薪をくべる時に使う金属棒を下に落とす朋子。
朋子「お父さんそげなこと、…」
寅、まったく動じず、のように見えるが、
微妙に顔がどぎまぎしている。
石になっているのかも(^^;)
和尚「いつかお前言うとったろ、
今度結婚するなら
もうインテリはこりごりじゃい、言うて、
いっそ、寅さんみたいな人がええ言うて」
朋子、緊張しながら、ちらっと寅を見る。
和尚「 なァ!そげー言うたじゃろ」
朋子、居たたまれなくなり、思わず立ち上がる。
ほぼ同時に寅もつられるように立ち上がる。
朋子、下を向き、緊張し…、
思い切ってこわごわ寅を見る。
朋子のテーマがゆったりと流れる。
朋子、寅と目をしっかり合わせ、
朋子「ハハ は…」と照れ笑い。
寅のほうは頭まっちろけで、目をパチクリ。
どう対処していいかわからない。
朋子、寅の緊張した目に耐えれなくなり、
逃げるように目を伏せ、
寅の横をすり抜け、母屋へ走っていく。
サンダルを、母屋に入る手前で脱いでしまい、
靴下で土間を歩き、急いで居間に上がってしまう。
寅が慌てないのは、たぶん今何が起こったのか
頭の中で整理されていないから。
依然として思考停止。
まっちろけっけ(^^;)
ああ、それにしてもこの夜の朋子さんは
いつにも増して美しい…。
和尚、何も知らず
和尚「おい、朋子?」
寅、我に帰り、
あわててしゃがみ、せっせと薪をくべる。
和尚「居らんのか?」
寅「え?」と言って、母屋を振り返り、きょろきょろ。
寅「イエ、オリマセンノォ」と、朋子さんの真似。
笑いました、これは。渥美さん上手すぎ(^^;)
朋子さんがそこにいたら「オリマセンノォ」って言うわけ
ないよな(^^)
イエ、オリマセンノォ…(^^;)
和尚「?!!」ちょっとビビって、
「まさか」と思い、
和尚、ガタッとガラス戸を開け、寅を見て、
寅「あ」
和尚「あ」
もう一度
寅「あ」
和尚「あ」
2度づつ「あ」を言い合うところが
二人とも実に上手いねえ!この二つの「あ」は
渥美さんと松村さんの歴史を感じさせるね。
この二人のかけ引きはただもんじゃないね。
あ
寅「お背中でもお流ししましょうか?」
和尚「あ…、〜いや、結構でございます・・」笑いました(^^)
と極めてバツが悪そう(^^;)
寅「あ、そうですか。はい」
と小声でぼそぼそつぶやき、立ち去る。
和尚、寅の行くえを恐々見ている。
ようやく、嬉しさを実感してきた寅、
目が宙を舞って、足も宙に浮き、
恍惚とした顔でひらふら去って行く。
寅、平衡感覚を失ってしまって、柱にぶつかり、
そのあと、足を滑らしそうにもなりながら歩き、 朋子さんが入っていった台所を外から覗いて…、
彼女を見たのか、とっさに顔を下げ、
背広の裾を持ってふわふわ歩いていく。
文字通り夢心地 〜〜〜〜(  ̄ー ̄)♪
寅はこういう時が一番幸せなんだろうね。
恋愛成就一歩手前って位置がいつも
好きなんだよなこの男は。
いつもそこどまり。
でも、それじゃ、相手が可哀想なんだよな…(ーー;)
遠く、第1作「男はつらいよ」で、夜の帝釈天参道を
「喧嘩辰」を口ずさみながら踊っていた寅を思い出した。
ともあれ、この夜の寅は、人生最高のひと時だったのかも。
翌朝 蓮台寺境内
居間
居間で和尚さんが寅の置手紙を読んでいる。
朋子さんは台所仕事している。
『私、思[う]ことありまして
故郷にもどります。
今後の身のふりかたにについては、
肉親とそうだんいたします。
どうぞお体を大切(つ)に。
寅次郎』
和尚「そらあ、おられまいなあ…、
あげなことあっちゃ…」
朋子、何かを考えている。
朋子、庭に出てほうきとちりとりを持ってとぼとぼ歩く。
居間では和尚が反省している。
和尚「まずい事をしたなあ・・・」と指についたご飯をなめる。
境内から町を眺め、
昨晩の失敗を悲しみ、
遠く寅に想いを馳せる朋子。
なんでまあこうなるのかねえ…。
やっぱり寅って臆病なんだねえ。
普通なら、あのあと二人の仲は進展するはずなのに、
緊張感に耐えられず、寅は今回も逃げてしまったのだ。
寅はいつもあそこまでだ。
相思相愛の緊張感と、待っているであろうリアルで責任の
伴う未来に耐えられないのだ。
しかし、ちょっと待てよ。あの置手紙…。
「今後の身のふりかた」「肉親と相談…」って書いてあったな。
ってことは、朋子さんとの結婚を真剣に身内と相談し、考え、
決意するためにいったん故郷に帰るってこと??
もしそうだとしたら、朋子さんはあの文章の真意は分かって
ないな。
D出家の決意を発表する寅と三日坊主
京成柴又駅
寅が駅から出てくる。無賃乗車なので駅員さんに追いかけられるが、
寅は頭が朋子さんのことでいっぱいで上の空(^^;)
駅員「きっぷきっぷきっぷ」人見明さん、ご苦労様です(^^;)
寅「いらない、いらない」要るよ(^^;)
駅員「いや、あの、こっちがいるんですよ」
寅「いらないいらない」あんたは要らないんだろうけど(^^;)
ようやく寅からキップを受け取った駅員さん、
切符を見て
駅員「…! 岡山ァ?!」
とらや 店
寅の声「ハハハ!すっかりご無沙汰しちゃって、ね!え!
おばちゃん「あ…寅ちゃん」と、いきなり現れた寅にポカン。
寅さくらの方に手を上げて
寅「よ!さくら!あの時はちょっとおまえのこと
驚かして悪かったな。え」
さくらポカン。
寅「おいちゃん、年とったよ年を。
フフフ。元気だよ、元気オレは!
ハハハ!ハハァ!」
と、異様なハイテンションで、
両手で元気印をポーズ!
さくら、かろうじて一緒に微笑む。
寅「あーあ!は!あ〜、
パチ!(両手を叩いて)
とらやか!んー!しばらくだ!
懐かしいな、何年ぶりだ!?えー!」
もう完全に躁状態。目が宙に飛んでいる。
気が違っている。笑いっぱなし。
完全にあの夜の朋子さんとのことを引きずり、
未来を想像し、舞い上がっている(^^;)
これは何かを決意してるんだね。
さくら「何言ってんの、七月に帰ってきたでしょう?」
寅「フハハハ!そうそう、
あれからもういろんなことが
あったからねえ。5年も10年も
たったような気がしちゃったよ。うん、フフフ!」
完全に常軌を逸しているね(^^;)
さくら「それで高梁のお寺の仕事はもう済んだの?」
寅「ん、うん、一応済んだ済んだ。…え?」
さくら「…?」
寅「なんでおまえ高梁のお寺のこと知ってんの?」
おいおいおい、さっき『あの時は驚かして悪かった』って
さくらに謝ってたばかりじゃないか、頭大丈夫か? ゞ( ̄∇ ̄;)
さくら「あ、私、行ったでしょ、法事の時」
寅「あ、はははは、あ、そんなこともあったな」
もうすべて心ここにあらず。何を聞いてもうわの空。
反応するだけ無駄無駄 ヾ(-д-;)
おいちゃん「????」だよね(^^;)
おばちゃん「さくらちゃんにいろいろ聞いて、
心配してたんだよ」
寅「どうもありがとう。…
実はね…、そのことでもってみんなにぃ…、
聞いてもらいたいな、と思って帰って
来たんだけどね、うん、
スーッ…、えーっと…」
自分の世界に入り込んでいる寅。
とりあえず二階に上がって心と身体を休ませることに。
おいちゃん「やっぱりふられたんだな…」そうくるか(^^;)
さくら「そうかしらぁ…」
おいちゃん「心配かけまいと思って、無理に明るく
ふるまってんだろう。バッカだなあ…」
さくら「…」
さすがのおいちゃんも今回ばかりは見切れてない。
帝釈天 夜
鐘の音ゴ〜〜〜ン
とらや茶の間
タコ社長が台所に入ってくる。
社長「オレに用事だって?」
さくら「相談事があるからね、社長さんにも聞いて欲しいって
いうのよ。すいませんね、忙しい時に」
社長「は、とんでもない。オレのような男でも、役にたつことがあれば嬉しいよ」
第28作「紙風船」の時、寅は、
「大事な話があるから身内だけで面合わせたい」
って言って、やって来た社長をわざわざ追い出して、
話を進めたくせに(^^;)
鐘の音 ゴ〜〜〜ン
寅、腕を組んで考えている。
博「じゃ、兄さん、みんな揃いましたから」
寅「うん」と何度も小刻みに頷く。
寅、下を向いて
寅「スィーーー…」と決意をし、
寅「実はオレ…、
余生を仏に仕えて過ごしたいと、
こう考えているんだが…」出たァ〜!(^^)
一同当然意味がよく分からないで寅を見る
寅「みんなはどう思う?」
さくら「仏に仕えるというと?」
寅「仏前に明かりをともして、朝な夕な、
お経を唱えて過ごそうというんだ」
社長「誰が?」
寅「わたくし」
社長「あ、ハハハ」と指をさす。わかるわかる(^^;)
寅に真剣に見つめられて、下を向く社長。
さくら「お兄ちゃん、それ本気で考えてんの?」
寅「冗談でそんなことが言えますか」
博「早い話が、出家をするってことですか?兄さんが」
寅「そう」と深く頷く。
おばちゃん、台所でメソメソ。
おばちゃん「いくら失恋したからって、
なにも坊さんにまでなることないじゃないか」
博「そりゃあ、普通の人と違って兄さんは
20ぺんも30ぺんも失恋したんだから、
世をはかなむ気持ちにもなるんでしょうけど、
しかし、出家するなんていくらなんでも
飛躍しすぎですよ」露骨(^^;)
社長「そう、まだまだ可能性はあるよ。元気出せよ」
博「まだ若いんですから」
おいちゃん、寅を指差して
おいちゃん「おまえさえその気なら見合いの口はいろいろ
あるんだぞお」
第3作「フーテンの寅」 まれに見つかる(^^;)
第10作「夢枕」参照→見合い相手ほとんど全滅状態(^^;)
第21作「わが道を行く」参照→極まれにはいる(^^;)
おばちゃん「そうだよ、諦めんのはまだは早いよお」と、メソメソ。
寅、微かに苦笑いしながら
寅「みなさん、なんか誤解なすってらっしゃるんじゃないですか?
私はべつに結婚することを諦めたりしちゃあいませんよおぉ」
さくら「…、じゃあ出家なんかすることないじゃないのお〜」
寅「だから、諦めちゃいないから、
…出家をしたいと言ってるんですよ」
一同「…????」だよなあ(^^)
社長、首をかしげながら
社長「分かるかい?」
おいちゃん「ぜんぜん分かんねえ…」
社長「だってえ、嫁さんもらうことと、坊さんになることは、
全く反対のことだもんな」
さくら「そうね」
博「例えばですね、兄さん、
相手がお寺の一人娘で、
兄さんがそこに婿養子になる。
そんなことならともかく…。
あ…!!!!!」Σ(|||▽||| )
さくら「…!!!!」
さくらのほうが博より気づくのが早かった。
寅、ニヤリ
寅、うっすら笑って
寅「えー、どうかしたかあ?」よく言うよ(~_~;)
博、顔真っ青、「しっまた!」という表情。遅いよ(−−;)
さくら「あ、あ、あのねお兄ちゃん。お坊さんなんて
そんな簡単になれるもんじゃないのよ」
博、しきりに頷く。(^^;)
寅も頷いて
寅「うん、そうだよ、だからさ、こうやって
みんなに相談してるんじゃねえか。
え?なんかいい手ない?」
博、呆れている。
寅「うまく坊さんになるような手がさ。
社長、おまえ顔広いんだから、
なんかそういうのないかい?
いいのがぁ」
なあぁ〜るほどね。
社長を呼んだ意味がよぉーく分かったよ(−−;)
社長「坊さんねえ…。医者になるんなら裏口入学ってのが
あるらしいんだけどな」
寅「んー、医者になるよりは
少し楽なんじゃねえか。
もう相手死んじゃってんだから」寅上手い!ざぶとん1枚(^^;)
もう相手は死んじゃってんだから
博「兄さん、坊さんは葬式を出すために
いるんじゃないんですよ」そりゃそうだ(^^;)ゞ
寅「そうかい?」
さくら「お経読むだけじゃなくてね、宗教についての深あ〜い
学問修めなきゃいけないのよ」
おいちゃん「第一おめえ、修行しなきゃいけねえんだぞ。
火の中へ入ったり、
ちゃあああー!っと滝に打たれたり」 ヾ(^^;)
ちゃあああーっと…
と身振り手振り。
おばちゃん「1ヶ月も断食したり、
できんのかい?そんなことがあ」
1ヶ月って…。それじゃあ死んじゃうよ(^^;)
寅「そらあ、オレだって多少のことは
覚悟してるけどさあ、
あんまり日にちがかかるってのは
辛いよお…ねえ、何日くらい
かかるんだろ、この、ひっくるめて」
ひっくるめてって…(^^;)
社長「運転免許だってェ、
2ヶ月やそこらかかるからなあ」意味無いよそのたとえ(^^;)
と、ハンドル握るまね。
おばちゃん「お花やお茶のお免状だって3年ぐらいかかるよぉ」
寅「ちぇ、そこをさあ、
なんかこうもっとてっとり早くできねえかねえ
例えば、偉い坊さんに袖の下を使うとかなんとか…」
出たよ出たよ。結局はこういう方法しか
思いつかないんだよな寅って。
不精っていうか、怠け者っていうか┐(-。ー;)┌
そういえば、寅は第26作「かもめ歌」で、すみれちゃんの入試の
時も袖の下でなんとかしようとしてたなあ(^^;)その時の試験監督の
先生は今回の和尚さん役の松村達雄さん。
さくら「バァカなこと言うもんじゃないわよォ!
お坊さんになるということはね、
運転免許とるなんてこととわけが
違うのよォ!、ねえ博さん」と、博にバトンタッチ(^^;)
博「つまり、修行ということは精神的な修養を
積むということですからねェ。
2年や3年じゃできませんよ」
博、なんとかやめさせたい(^^;)
さくら「そうよォ」さくらも必死(^^;)
博、達磨をテレビの上から持ち出して
博「例えば、この達磨禅師は『面壁九年』といって
9年間考え続けてようやく悟りを開いたんですよ」
おいちゃん「これずーっと座りっぱなしだから、
手足が無くなっちゃったってんだろう」
っと、手が縮むポーズ(^^;)
寅「いやだいやだ」と小声でビビる。
そういえば、第16作「葛飾立志篇」でも御前様が
寅に達磨禅師のことを語っていた。
博「それから道元禅師という人にいたっては
悟りを開くまでに30何年かかった
と、言われています」
さくら「へえー」
おばちゃん「へえーえ、そんな偉い人が30年も
かかったんなら寅ちゃんみたいな
頭の悪い人は50年も100年も
かかるんじゃないのォ?」
博、微妙ぉ〜に笑っている。(^^;)
さくら心底困った顔。
寅「チッ!話になんないよまったく」
それはあんたのほうだよ(−−)
さくら、微妙にむっとする。
寅「そんなこと言ってたら
あの人ババアに
なっちゃうじゃないか」
おいちゃんたちその言葉にはっとする。
この瞬間、カメラは寅とおいちゃんだけを映し、
さくらや博を映さない。そのことによって、
かえって静かな緊張感を醸し出させていた。
ここの演出はなかなか巧い!
寅「ったくなあ!ちッ、ま、こういう素人に
相談したのがいけなかったんだ。
よし!明日御前様に聞いてみよう。
じゃあ、今晩はこれでお開きということにして、ん!」
と、すくっと立ち上がり2階へ行こうとする。
寅「明日の朝5時におきるからね」
おばちゃん「5時ぃ?」
一同驚き、呆れる。
寅「あ、そうだ、おばちゃん、明日の朝飯な、」
おばちゃん「うん」
寅「精進にしてくれ、精進に」
おばちゃん「え?」
寅「肉魚いっさい抜き、簡単でいいだろ、な、
味噌汁の身はね、豆腐とワカメ、それから
おからの煮付け、それから納豆、
それからまあ、一夜づけのぉ、お新香に
パリパリの味付け海苔
そんなもんでいいかな」
そんなもんって…(^^;)
★ この食事おねだりパターンは第5作「望郷篇」のアレンジ版。
★ 第29作「あじさいの恋」、第42作「ぼくの伯父さん」でもこのアレンジ版がでてくる。
★ 第12作「私の寅さん」では逆に寅が九州から長旅で疲れて帰ってくる
さくらたちに昼ごはんを作ってやる。
おばちゃん「それだけ全部朝の5時までにつくんのかい?」
いいねえ、このリアクション(^^)
寅「そうだよ、そらまあ、できればねえ、
たらこの一腹ぐらい欲しいなあ、と思うけども、
そうはいかない、オレは出家する身だったから、
ふむ、じゃ、お休みなさい。
ななむみょうほうれんげきょう…、
なむみょうほうれんげきょう・・・・」
寅の唱えているのは「法華経」
高梁の蓮台寺とは宗派が違うんだけどなあ(^^;)
寅が二階へ上がった後、
おいちゃん「そうか、まだふられてなかったのか・・・」
まだって…(^^;)
博「それどころか、ますますエスカレートして
行ってるって感じだ、な、さくら」
さくら頷く。
社長「どうにかなるなら何とかしてやりたいねえ、
それで寅さんが幸せになれるんならさあ、
ま、無理だろうけどね」
みんな見切ってるねえ。
確かに実を結ぶのは無理かもしれないが、
それは相手に寅がふられるからじゃないんだよ。
寅が逃げてるんだよ、そのへん分かってる?
社長さん、おいちゃん(−−)
ただ、今回は、一旦は彼女の元を離れたものの、
まだ逃げてないのかもね…。
さくら「どうなるのかしらねえ…」
E一道とひろみの恋の行方 東京編
東京 渋谷駅近く ハチ公前
またまたシューベルトの「鱒」が流れる。
ひろみ、東京の渋谷ハチ公前で、きょろきょろ
おろおろあたふたしたり、ため息をついたりしている。
ひろみちゃんの爆発化粧&ファッションある意味目立ってるね(^^;)
ハチ公前は古典的な待ち合わせ場所だね。
でも分かりやすくていいや(^^)
ある意味渋谷で目立っているひろみちゃん(^^;)
ひろみちゃん、火薬が爆発したような
ヘアーと化粧しているが、彼女なりに
一生懸命工夫したのだろう(^^;)健気だね。
カメラスタジオ
写真家の森山徹さんがモデルを相手に撮影している。
係りの人「石橋一道さんって人いますか〜?」
って言うことは朋子さんは
『石橋朋子』さんだね。フルネーム決まり!(^^)
電話口で、
一道「もしもし。ひろみ?ごめんー、今どこなん?
ああ、そうか、悪かったなあ・・・。
いや、昼間までに撮影を終える予定
じゃたんだけど、別の仕事が入ってしもうてなあ。
オレ抜けられんのじゃ。
は、こっちから連絡つけられんし
・・・さっきからどうしようか思うて
ひろみ「いいの、そんな心配せんで私も
悪かったんじゃ急に出てきたりして・・・。
ん?私?
そうねえ、これから柴又へ行って寅さんの家に
行ってそいで帰る。また出てくることもあるけん」
ひろみちゃん可哀想…(TT)
柴又駅 夜
一道、柴又駅につく。
源ちゃんと友人がネクタイをして
DAIDOの自動販売機を叩いてる。
源ちゃんがネクタイをしているのは珍しい。
第13作「恋やつれ」第20作「寅次郎頑張れ」
第23作「翔んでる寅次郎」でも派手なネクタイ姿を披露。
ちなみに第32作での源ちゃんのスーツは、第23作で
ひとみちゃんの披露宴で着ていたものと同じ。
話は戻って…
一道「すみませんあの、
とらやさんゆうだんご屋さん
どこでしょうか?」
源ちゃん「参道真っ直ぐ行って右側、古臭い店や」
源ちゃん、意地悪(^^;)
一道「は、どうも」
友達「汚ねえ店だからよ」ひでええ(TT)
源ちゃん「へへへへ」
バンバンと自動販売機を叩く。
とらや 台所
さくらが、階段下で、ひろみの
赤い靴を拭いてあげてる。
博が店を出ようとすると、いきなり一道が出て来て、
ぶつかりそうになる。
一道「僕、高梁でお世話になった一道と言います」
初対面の大人には「石橋一道」って言うんだよ(^^;)
さくら「あらあ」
博「ああ、蓮台寺の」
さくら「はあ」
一道「はい」とハンカチを取り出す。
一道「こんな時間にお邪魔してすみません」
さくら「は」
一道「あ、あのー・・・僕の友達のひろみが
今日こちらにお邪魔しなかったでしょうか?」
さくら「みえたわよ」
早く「家にいる」って言ってやれよ、さくら。
一道「は、は、そうですか」
一道「夕方までには必ず迎えに
来る言うて約束したんじゃけど、
どーしても仕事が終わらんもんで、
すっかりおそうなってしもうて、
電話しとうても電話番号わからんし、
おまけに電車まちごうて
松戸の方に行ってしもうたりして…、
とうとう、こんな時間になってしもうたんです」
だから、NTTの電話番号案内で聞けってば、
「柴又 とらや」ですぐ分かるって(^^)
一道「それで、ひろみは、何時ごろ帰りましたか?」
さくら「家にいるわよ」
一道「へェ?」
さくら、なんだかじらすねえ(^^;)
さくら「フ・・・どうしても帰るっておっしゃったんだけど、
とっても疲れてるようだったんで、泊まってらっしゃいって
無理におすすめしてね、
お母さんにも電話して今さっきお風呂に入って、
もう床に入ってるころじゃないかしら」
ほんと、とらやのみんなって優しいねえ…。
よかったねひろみちゃん。
一道「そうですかぁ!」
強引にさくらたちは一道をひろみちゃんが寝ている二階へ
上がるように仕向ける。
さくら「後でみんなで一緒にお茶でも飲みましょ。
あの、その左側のお部屋、さ」
と、さくら、一道の雑誌を持ってやる。
一道「失礼します」
一道2階へ上がっていく。
おばちゃん「いい男だねえェ〜あれじゃあ、
岡山からだって会いに来るよ」
来たよ来たよ来たよ、おばちゃん、露骨だねェ… ゞ( ̄∇ ̄;)
いい男だねえ…
さくら「ばぁかねえ、おばちゃん」
おいちゃん「どうする寅おこすか?」
さくら「いいのよ」
さくら、一道の持っていた雑誌をペラペラめくる。
おばちゃん「そうだよ、あんな無粋な男が
出てきたらぶち壊しだよ、
これから甘あ〜いラブシーンが
始まるって言うのに」
おいおいおい、おばちゃん、おばちゃん、
だんだんエスカレートしてるなあ… ゞ( ̄∇ ̄;)
博「ハハハハ言うなあおばさんも」
おいちゃん呆れてる。
おばちゃん「ははは」
おっと、さくら、なぜか一道の雑誌を、
なんと自分の白い買い物カバンに入れた!博も何も疑問に
思わないでカバンを受け取っている。
なぜ?それって一道の雑誌だぞ。
預かっているだけだとしたら
カバンの横にでも置いてあげればいいのに…。
あ、でも、もし、一道の持っていた雑誌が「写真の雑誌」だった場合、
芸術としてのヌードや水着などが載っているかもしれない。
一道にとっては芸術でも満男や老夫婦にとっては刺激が強い。
そこで、さくらが、何度かペラペラめくってチェックして、
自分のカバンに入れ、博にさっとカバンごと渡した。
と、なんていうことは十分に考えられるな。う〜んさくらの行動は深い(^^)
満男、台所に来て、
満男「ねえねえ、恋人?」と指を刺す。
さくら「そ、」
満男「エッ!」(* ̄∇ ̄*)
と、超ニヤつきながら、石になって固まる(^^;)
エッ!
満男、満男、おいおい、
目が三日月になってるぞ ゞ( ̄∇ ̄;)
博、満男を見てちょっと笑っている。
吉岡君の、このリアクションは巧かった〜!
さすが笑いの壷を心得てるね。
ニ階の部屋
雨の音。
ひろみが寝ている。
一道、ひろみを見ている。
そして、ひろみの顔にそっと手を当てようとする。
その気配に気づき、ひろみ目が覚める。
ひろみのテーマが流れる。
ひろみの顔が華やぐ。
ひろみ「は・・・」
見つめる一道。
ひろみ「もう、フ…来ないか思うた」
この言葉、切ないね…(TT)
一道、小さく何度も頷き、
ひろみの手をとる。
雷が鳴る。
ゴロゴロゴロオオ・・・
おばちゃん、お茶菓子の作業うわの空で、ニ階を見ている。
おばちゃん「あ、あら」とティーバックの箱を手から落とす。
さくら「何そわそわしてんのよ、」
おばちゃん「え?あ、いや、何だか落ち着かないんだよ、
二階に新婚夫婦がいるみたいでさ、
ねえ、あんたぁ〜?」
と、おいちゃんに甘ぁく同意を求めるおばちゃん。
この前の寅と一緒だよこれじゃ。完璧に舞い上がり、
調子が変なおばちゃん(ーー;)
大きな雷が落ちる。
ゴギュヴガアアン!!
おばちゃん「キャアアアアーーー!!!」
と、おいちゃんの首に飛びつく。
Σ(|||▽||| )
おいちゃん、
当然思いっきりひっくり返る(TT)
(||| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄0 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)
出た!おばちゃんの得意技、
体重を利用した必殺首絞め
『魔性のスリーパー.ホールド!』
またの名を『おばちゃんスペシャル!』
おいちゃん「離せッ、離せッ、気持ち悪いじゃないかっ」
ギブアップ負け (_ _,)/~~
気持ち悪いって…、一応夫婦だよ (T▽T)
博たち「ハハハハ!!」
おいちゃん、ぜいぜい息をして目がペケ。
博「アハハハハ!!」とまだ笑っている(^^)
さくら「停電!」
と、呆れておばちゃんを見ながら、ぜいぜい…(^^;)
おばちゃん、さすがに、
自分のやったことに、自分で大笑い。
三崎さん、マジで笑ってました。
そうだろうねえ〜。
あの二人、NG何回やったのかなあ…(^^;)
しかし、このシリーズの中で、柴又とらや付近って
しょっちゅう雷が落ちるなあ…、
ひょっとして日本で最も雷の落ちる地域なのでは?(^^;)
日本版ゴールデントライアングルか。
いつかみんな戦国時代にタイムスリップするぞ。
おおこわ…(^^;)
とらや ニ階
ひろみのテーマが流れる。
雷の直後なので
ひろみが起き上がって
一道の胸にうずくまっている。
雷 グガァ〜ン、
ひろみ「きゃ、怖い・・・」
一道、しっかりと抱いてやる。
一道、ひろみの顔を両手でそっと持ち、
キスをする。
窓をぬらして降り続ける雨。
うーん、青春だね ( ̄ー ̄)
よかったねひろみちゃん。
一道を死んでも離すんじゃないぞ。
雷の恐怖のリアクションで
おばちゃんとひろみちゃんは同じことをパートナーに
しているのだが、結果がこんなにも違うとは…。
ああ…、おばちゃんの十九の青春は
どこへ行ったんだろう…(TT)
チャンチャン(^^)
F朋子さんのとらや訪問と運命の柴又駅ホーム
江戸川 土手
軽快な音楽
源ちゃんと寅が土手をぶらぶら歩いてる。
とらや店先
いつになく御前様が怒って説教をしている。
久しぶりに真顔で怒る御前様
御前様「ん〜、仏教における修行とは、煩悩を断ち切るための
命がけの闘いですッ。
寅のごとき煩悩が背広を着て
歩いているような男がどうして修行ができますか!」
御前様巧い!座布団1枚(^^)
おいちゃん「ごもっともでございます」
御前様「本人のたっての願いゆえ、修行の真似ごとをさせては
みましたが、三日で音を上げる始末!」
さくら「申し訳ございません」と深々とお辞儀。
おいちゃん「グフッ!三日坊主とは
この事でございますねえ」
おばちゃん「ヘヘへヘ」
二人とも一生言ってろよ(−−)
さすがにさくらはギャグに参加せず。
おいちゃんって…(−−;)
御前様「冗談を言ってる場合ですか!」
おいちゃんたちビクッ!!
おいちゃん、全部座布団とりあげ(TT)
おいちゃん「ハヒ!ハハーー・・・」
御前様「困った人たちだ!」
おばちゃん「すみません」
御前様「当分寺への出入りを差し止める。
左様申し伝えなさい!」
悪さしたわけではないいのに厳しいね。
お坊さんのことは御前様も譲れない分野なんだろうね。
御前様とらやを出て、駅のほうへ歩く。
帝釈天参道
御前様「困った奴・・!」と、まだぶつぶつ(^^;)
朋子、駅のほうから歩いてくる。
御前様、そんな事を言いつつも、
前を歩く朋子に目線が吸い込まれて行く。
朋子、立ち止まり、御前様と静かに挨拶をかわす。
御前様、ホワァ〜〜**
御前様、朋子さんの美しさに瞬殺される。
デヘデヘニタ〜。わかるわかる。煩悩が袈裟を着て歩いてるぞ ヾ(^^;)
ニタ〜〜
ハッとし、
御前様「いかん!
修行が足りん!ン〜ンン!!」
と、頭を手で撫でる。
しかし、あの美しい朋子さんに心を揺り動かされない
お坊さんがいたとしたら、人間味が無さすぎだ。
御前様の感受性の豊かさは私は大好き。
江戸川土手
軽快な音楽 (口笛)
源ちゃん、写真を見て、
源ちゃん「美人やなァ〜!」
寅、どうやってその写真を手に入れたんだ??
今時、モノクロ写真ってことは、一道にもらったのか?
寅「ン〜」
源ちゃん「この人が兄貴に惚れてるんでっか?」
寅「まあな」
寅ってこういうこと言うんだよね。
ったく、どうしょうもない軽薄さ┐(-。ー;)┌
第10作「夢枕」のラストでも寅は登に、千代さんが
自分に好意を持って、告白までしたことを吹聴していた。
このへんの演出は寅のダメキャラが如実に
出ていて変にリアル。
源ちゃん「ほな、結婚するんでっか!?」
寅「そうはいかない。その人と一緒になるためには
どうしても坊主になる資格を取らなければいけない。
それは簡単にはできない」
源ちゃん「でも兄貴、愛があれば何とかなるんやないか?」
源ちゃんどこで覚えてきたんだ、それ(^^;)
寅「それは若者の考えることだ。
オレぐらいに分別が分かるようになると
そうは簡単にはいかない。
お前たち若者が羨ましいよ、うん…」
よく言うよ、まったく ┐(-。ー;)┌
源ちゃん、そっと密かに写真を
自分の腹巻に入れようとする。
おいおい源ちゃん源ちゃん ヽ(´o`;)
寅気づいて、
寅「なん、ちっ」
源ちゃん「え?」 ばれるって ヽ(^^;)
寅「なんだよ」
と、写真を、自分の腹巻に戻す。
さくら自転車でやって来る。
さくら「お兄ちゃん!!お兄ちゃん、こんな所にいたのォ?」
寅「いい年して大きな声出すんじゃないみっともない」
さくら「朋子さんが見えたのよ! 朋子さんが見えたのよ突然に」
寅「え?どこに?」
さくら「とらやによ、ほら、いつかの弟さんの事が
心配になって出てきたんですって。
今日中に岡山に帰らなきゃいけないって言うから、
早くお兄ちゃん見つけないといけないと思って」
寅「どけッ、どけッ!」
さくら「??」
寅「どけッ!」
自転車に乗って飛んでいく。
途中子供をひきそうになる。
結構危ない演出だ〜(^^;)
さくら、足で走って追いかける。
可哀想…うううう…ここからじゃ遠いよさくら…(TT)
第27作「浪花の恋の寅次郎」のふみさん訪問の時は
寅が江戸川土手にいるのにもかかわらず、
江戸川土手を探さなかったさくら。
今回は朋子さんが時間が無いので江戸川土手を
探しに来たんだね。
しかしまあ、ふみさんも事前のアポ無し、朋子さんもアポ無し、
朋子さんの性格的には絶対にありえないね。
とらや 店
石倉三郎扮する、そば屋、が歌を歌いながら
そばを配達している。
「♪夕暮れの雨が降るゥ〜、
矢切のォ〜わたあしい〜…あ!ああああ!」
ガガ!ガッチャン!!
通行人女性たちの悲鳴
女性「キャ!」
女性「キャーア!!」
ザルそばがとらやの前をコロコロ転がってくる。
そば屋の声「あーあ、このそば!高いそばバカ野郎!」
寅が飛び込んでくる。
おばちゃん「ありゃ、やだ、なになになに、こっち…」
このリズム感、上手いねえ三崎さん!
ありゃ、やだ、なになになに、こっち…
朋子、寅にピントが合って目を見張る。
寅「はあ!!…朋子さん!」
と寅にしては珍しく感極まった無声音。
朋子も感極まり、目を輝かせ、そして潤ませながら、
朋子「寅さん」
寅「よく来たなあ!」
朋子「あは!」
寅「うん!」
あの再会時に朋子さんの寅を見る眼は
愛する男性に会いに来ただけの目ではなかった。
あの目は離れて暮らしていたかけがえのない『家族』に
再会した目でもあるのだ。朋子さんにとって寅は、
自分たちが苦しい時、淋しい時共に励ましあった
家族である寅さんなのだ。
だからこの作品はマドンナがすでに寅の運命共同体に
近い存在になっている稀有の物語である。
そこに他の作品にはないこの作品独自の深みと愛着、
そしてその後の深い悲しみがあるのだ。
それにしても、寅、帽子から垂れてるその『そば』、
なんとかしろよ ヾ(−−;)
そば屋、頭にそばをかぶりながら、とらやに走ってきて
怒り心頭で、寅の腕を叩く。
ま、このあと蕎麦屋と取っ組み合いの大喧嘩です(−−;)
寅、蕎麦屋の首を絞め続ける。(^^;)
朋子「あ!寅さん!いけない!」
寅、笑いながら
寅「こりゃね、子供のころから慣れてますから、へへ」
工場のトシオ君やおまわりさんやって来て、
みんなで必死で止める。
とらや 茶の間
朋子さんが笑っている。
朋子「フフフ」
さくら、笑いながらあの雨の日、おいちゃんは
若い二人にけじめをつけさせるために別々の部屋に
寝させたことを回想しているのだった。
さくら「『同じ部屋に泊めるなんてとんでもない!
そんなふしだらなこと、オレは絶対許さん!』
って、フフフ」
朋子「フフフ」
おばちゃん「えらそうにねー」
さくら「ねー」
おいちゃん「もうやめろよ、その話は」と照れている。
一同「フフフ」
朋子「でも、おじさんの時代はそうだったんでしょ?」
寅、そっと
寅「それが違う…」
朋子「どうして?」と微笑んでいる。
寅「この二人はもうできてた」
できてたって…(^^;)
一同「えー!?」
おいちゃん「バカ!つまんないこと言うんじゃないよ!もう」
と、そそくさ、店の方へ行く。
朋子「フフ」
寅「へへへ」
寅「二人でね、浅草で、デートしたんだってさ」
朋子「ふうーん」
寅「帰り道に雨が降ってきちゃった」
朋子「あらあ」相変わらずいい合いの手(^^)
寅「駒形橋の袂に親戚のおじさんがあるんです」
朋子「うん」
おばちゃん、朋子さんにお茶を置く。
寅「そこでまあ、雨宿りをしたわけだね。
いつまでたっても雨が止まない」
おばちゃん「ちょ…、およしよォ〜」と、手をふる。
さくら「フフ」
寅「『もう、しょうがないからおまえたち
ここへ泊まっていきなよ』
『いえ、私たちまだ結婚前だから』
なんちゃって!フフフ」
なんちゃって!
朋子、さくら「フフフ」
おばちゃん「もう、寅ちゃんたらよしなよ、もう!」
寅「笑っちゃう!」
おばちゃん恥ずかしがってそそくさ台所へ。
朋子「ねえ、それでどうなった?」
朋子さんも好きだねえ〜(^^;)
寅「え、粋なおじさんの計らいでね、若い二人は二階の
座敷で二人っきりだ。
雨がザーッっと降って、
突然ピカピカピカ!ゴロゴロゴロ!
あのおばちゃん、『キャー怖い!!』」
と、抱きつくポーズ(^^;)
朋子「あ、フフフ!」
さくら、ニコニコ笑っている。
寅「あの太った体でもってさ、
カマキリみたいなおじちゃんに、へあああ!!」
朋子「キャア」
寅「って抱きついちゃったんだよこれがァ」
朋子、さくら「ハハハ!フフフ!」
朋子、ゲラゲラ笑っている。
見てきたようなことを言う寅でした(^^;)
さくら、台所を振り返って
さくら「おばちゃん、素敵なロマンスね、
ほんとにその通りなの?」
おばちゃん「口から出まかせだよお!ほんとに
おしゃべりな男だよ」
朋子「フフ、ちょっと聞きにくいことじゃけど、」
さくら「なあに?」
朋子「結局その晩、弟はどの部屋に
泊めていただいたんですか?」
おばちゃん「あたしゃねえ、一緒に寝かせてあげなさい、
って言ったんですよ。だけどさ、
あの頑固親父がダメだダメだ
って言うでしょう、だからね…」
で、結局一道は、その夜寅の寝ている物置部屋に一緒に寝かされたのだった。
とらやのみんなが一道のことを思ってくれていることがうれしくて頼もしくて…、
朋子しんみりして…
朋子「は…、そんなふうに、弟のことを思うてくれる人が
東京にいるいうだけで、私…、安心です。
よろしゅうお願いします」
さくら「そんなあらたまってェ」
その後、タイミングが合って、
茶の間は朋子と寅だけになる。
朋子「あー、寅さんがウチにおってくれた時には、
ウチの中どんなに明るかったか知れない」
寅「あー、和尚さんそんなに機嫌悪いの?」
朋子「うん、一日中いっぺんも口をきかない日だって
あるんよ。寅さんがウチにおらんようになってから…」
寅「ん…、まあ大変なんだな、朋子さんもなあ…」
朋子「……」
沈黙が続く。
朋子、意を決したように、
朋子「…あのねえ」
朋子「…」
寅「はあー、そうだ、工場行って博呼んでこよう…」
このような緊張した空気に耐えられない寅。
朋子、寅のハンテンの袖を掴んで、
朋子「寅さん」
袖を掴む朋子さん
寅、掴まれた袖見て
寅「へ?」
ゆっくり朋子を見つめる。
掴まれた自分の袖を見る
朋子「私そろそろ帰らんと…」
寅「も、もうそんな時間?」
朋子、時計を見て
朋子「5時の新幹線乗らんと今日中に帰れんの。もう4時でしょう」
朋子さん、帰るの早すぎ。
せめて今夜遅くまで寅と話して
夜は宿に(もしくはとらやに)泊まる気持ちで、
腰を落ち着けて欲しいな。
寅「まだなんにも話しちゃいないような気がするけども」
あんたおいちゃんとおばちゃんの
ラブロマンスの話しかしてないよ ヾ(^^;)
朋子「私もそうなの」と寅にだけ聞こえるように言う。
寅「……」緊迫した顔で下を向く。
朋子「ね、…柴又の駅まで送って来て」
と早口の無声音で言う。
寅「……」黙って小さく頷く。
張り詰めた緊張が漂う。
マドンナとの間に素面でこのような空気があるのはこのシリーズで朋子さんだけ。
このような空気は相当お互いに男女として仲良くないと出てこない。
リリーではこのような空気にはならない。
柴又駅 ホーム
さくらと朋子が歩いている。
さくら振り向きながら
さくら「遅いわねお兄ちゃん、
どこのお店までいったのかしら?」
今寅がいないのは、はしゃいでいるというより、
怖気づき、逃げているんだけどなあ…。
さくら、改札の方向を探しながら、
さくら「それにしても…。…あ、来た来た!」
寅「あ、間に合った!」と走ってくる。
間に合ったはないだろ寅。
朋子さんは駅まで送ってと行ったはずだ。
なに、怖気づいてんだよ、あああ最悪(TT)
さくら「どこまで行ってたのよ」
寅走ってきて
寅「和尚さんに食わしてやりたいと
思って、美味いからさ」
朋子「あ」
寅「これお土産」
朋子「ありがとう」
さくら、後を向いている。
寅「はい、ん…なんだい、
もうちょっとゆっくりできるんのか
と、思ったんだオレ。なあ、さくら」と呼びかける。
さくら「そうねえ、
せっかく東京までいらしたんだから」
寅「んん…、見物するとこいっぱいあるんだよねー、
浅草の観音さまとか、向島の遊園地とか…」
意味ねえ〜、そういうことじゃないだろ寅!(TT)
寅「なあ、さくら」
さくら「…うん」
朋子下を向いて何かを考えている。
朋子「……」
遠くで電車の警笛
プウー、プウー
朋子、緊迫感を増し、寅に近づき
朋子、寅の袖を掴む。
(とらやの茶の間に続き二回目のアプローチ)。
朋子のテーマが静かに流れる。
寅を見て、何かを話そうとする。
寅もとっさに朋子を見る
朋子、袖を掴んだまま
朋子「ねえ、寅さん…」
と少しさくらから離れて話そうとする。
朋子のテーマ
さくら、気を利かせて、自分から離れて、向こうを向く。
寅、緊張しながらさくらの方を向く。
朋子寅に、そっと
朋子「ごめんなさい…」
寅「え、…なに、なにが?」
朋子「いつかの晩のお風呂場のこと…」
寅「な、なんだっけなあ…」
朋子「ほらあ」
寅「あ!あああ!ああ!あのことか」
と、わざとらしく今思い出して気づいたふり。
朋子「あの三日ほど前の晩に父がね、
突然、今度結婚するんやったら
どげな人がええかって聞いたの」
寅、真剣な目で朋子を見ている。
朋子「それでね…、フフ…」
と下を向いて戸惑いながら
はにかんでいる。
朋子「それで…」
しだいに朋子の顔は悲痛な色を帯びていく。
寅、朋子を真剣に見ている。
朋子「私……」
と、胸が張り裂けそうな声になっている。
寅、その緊張に耐え切れず、子供のような声で
寅「寅ちゃんみたいな人がいいって
言っちゃったんでしょ」
朋子驚き、
半ば放心の顔で、
寅を見つめ…、
朋子、コックリ頷く。
寅「和尚さん、笑ってたろう、フフ」
朋子、悲しみの目。
寅「オレだって笑っちゃうよハハハ」
と顔は笑っている。
緊張感に耐えられない寅は、
とにかくあの日の出来事を、
冗談の方に持っていこうとしている。
寅「なあ、さくら、フフフ」
と柱によりかかろうとしてよろける。
さくら、さすがにカンがいいので、
彼らの方を向かないで、下を向いている。
寅、もう一度さくらに笑いかけながら
寅「なあ、フフ」
さくら、知らない顔をしながらも緊張している。
朋子、悲しげな顔で
朋子「ねえ、寅さん…」
寅「え」
踏み切りが鳴り始める。
カンカンカン
朋子「私、…」
寅振り向く。
朋子「あの晩父さんの言うたことが、寅さんの
負担になって、それでいなくなって
しもうたんじゃないか思うて、
そのことをお詫びしに来たの」
寅「オレがそんなこと
本気にするわけねえじゃねえか、フフ」
朋子、悲しい目をする。
朋子「……」
寅、微笑みながら何度も小さく頷く。
朋子、消え入りそうな声で
朋子「そう……」
朋子「じゃあ、…私の錯覚……」
と寅を見つめる。
寅、無理やり微笑んで、
寅「安心したか。ん、フフフ」
朋子、悲しみに満ちた潤んだ目で寅を見、
首をそっと横に振り
そのまま寅を見つめる。
笑っていた寅だったが…
寅、朋子の悲しい目を見て
やがて真剣な顔になっていく。
寅の言葉に打ちひしがれ…
朋子ゆっくり視線を下げ、
遂に目を伏せ、絶望の色に変わっていく。
ギリギリで「覚悟」をすることのできない寅は
朋子を受け入れることができず、
朋子をひたすら見つめるしかなかった。
電車がホームに入ってくる。
二人の様子がシリアスなので、
さくらは、あせり、
さくら、あわてて寅に近づき
さくら「お兄ちゃん
東京駅まで送ってあげたら?」
と、思い切って寅に言う。
寅も、その言葉に頷き、
寅「うん、あの…」
朋子「もういいの」
寅「……」
朋子「話は済んだし…」
無理やり笑顔を作って…
朋子「さくらさん、ありがとうございました」
さくら、少し微笑む。
電車が止まる。
朋子、ドアのところまで行く。
さくら、朋子が乗る直前にお土産を渡して、
さくら「はい、これ。じゃあ、気をつけて」
寅「和尚さんによろしくな」
笛の音 ピー
朋子、何度も小さく頷いて
朋子「はい」
これが朋子の最後の言葉。
ドアが閉まり朋子さくらにお辞儀
さくらもお辞儀
朋子、寅に微笑む。
寅「旅の途中でまた寄るからよ
もう寄れないよ……。
朋子ガラス越しに寅の声を聞き、
精一杯頷き、微笑む。
寅、動き出した電車に小さく手を上げる。
朋子、小さく挨拶。
ドア越しの朋子の姿が見えなくなる。
電車はスピードをまして、
そして遠くに過ぎ去ってゆく。
見送る寅。
背中が淋しい。
電車が通った後、また夕日がホームに射し、
さくらの顔を明るく照らす。
しばらく電車を目で追い、やがて下を向き、
一変して絶望の顔になる寅。
メインテーマが静かに流れる。
寅、さくらのところまで歩いてきて
止まり、乾いた照れ笑いをしながら
寅「ヘヘヘ、というお粗末さ…」
さくら「……」
寅、空を見ながら
寅「さて、…商売の旅に出るかァ…」
とホームを歩いていく。
さくら追いかけながら、寅の肩を持って
振り向かせ、
さくら「ねえ、お兄ちゃん」
寅「ええ?」
さくら「お兄ちゃんと朋子さんの間に
一体何があったの?教えて」
寅「そんなことおまえに教えられるかい。
それは大人の男と女の秘密ですよ」
と歩いていく。
さくら、そんな寅を見ている。
さくら、寅に追いつくべく
ホームを小走りで駆けて行く。
結局、
覚悟も決意もできない寅は朋子さんをただ、
見つめるしかなかった。これが寅の限界だった。
朋子さんは、寅がいつまで話しても自分の気持ちを
受け入れてくれないことに気づいたのであろう。
だからこそ、東京駅でなく柴又駅で別れたのだ。
とにかく、大事な別れ際にその緊張に耐え切れず、
佃煮を買いに行く男だ。もう、どうしょうもない。
僧侶の修行がどうのこうのというのは実は関係なく、
寅には、結婚生活は無理なのだ。
結婚に憧れ、結婚をすることのシュミレーションは大好き。
見合いも大好き。身近な周りの人間にも本気で吹聴する。
しかし、ギリギリで女性とのリアルな結婚はできない。
女性と二人っきりで一つの屋根に住めないのも同じ理由だ。
ドロドロの艶かしいリアリティが苦手なのだ。
このことでその昔リリーはどれだけ傷ついたか…。
どんなに好きになった女性に対しても、その人のために、
自分の人生を変えられない男、それが車寅次郎なのである。
相手に恋をし、相手も自分を好きになって、ここから先は
責任と覚悟と決意が必要だという決定的な「得恋の瞬間」に、
ようやく、自分の幻想の中でそこまでの過程を楽しんでいた
だけなことに気づき、リアルな未来が見えて怖気づき、
逃げ出すのでる。
それゆえ、寅を愛した女性にはその先に必然としての
失恋という過酷な運命が待ち構えている。
このような、花が開きそうな恋のつぼみを自分の手で
摘み取ってしまう行為を、寅は何度も何度も繰り返し、
寅を好きになった女性を結果的に傷つけてしまっている。
そのことに関して、寅自身が罪悪感に打ちひしがれ、
このような不可思議な恋をその先もう止める、というような
決意を寅は決してしないのだ。その先も相変わらず、
やっぱりこの手の行為を繰り返し続けている。
ここがこの男の最大の美点であり、盲点でもある。
この種の行動を果てしなく繰り返しているという意味では、
寅は、女性に対してある種の病理的な「神経症」を
おそらく持っている。
神経症ゆえ、この欠点は自分だけでは治ることなく、
永遠に繰り返されることとなる。
出口の無い、実ることの無い、堂々巡りの恋を死ぬまで
繰り返してしまうのだ。
しかし、本人はそれを背負って墓場まで持っていく気でいるし、
毎回、やや早めに逃げるせいか、寅に恋をした相手が極端に
人生を誤ってしまうこともなさそうだ。たまに相手が寅に恋心を
抱いていない場合などは、ただ深く寅にお世話になったことを
感謝することも多い。歌子ちゃんなどはその代表例である。
それゆえ、社会的に、寅はこのやっかいな神経症を抱えたまま
生活していっても別段差し支えないとも思われる。
人は誰しも、どこかの分野で多かれ少なかれやっかいな
神経症を持っている。そのために他人や家族や仕事仲間が
迷惑をかけられたり、結構傷ついたりしているのだ。
私に言わせれば、寅の神経症は、巷の人々によく見られる
ようなとてつもないドロドロした大掛かりなものではなく、
ささやかなものである。
だから私は常々寅のこの手の神経症を大いに認めようと
思っている。
とは言っても、さすがに今回の朋子さんは、このシリーズの
中で、最もこの寅の神経症の大きな犠牲になり、
最も深く傷を負った女性になってしまったと言えるだろう。
悲しみの深みに入ってしまったという意味ではリリー以上である。
なぜなら、彼女には寅は最愛の恋人であると同時に、
なによりもすでに彼女のかけがえのない家族でもあったのだから。
恋人としての別れ。
そして家族としての別れ。
彼女の傷はやはり深い。
この長いシリーズの中で、リリーは別枠として、
私が、『寅となんとしても別れてはならない運命的な
出会いをした女性』という感覚を持ったただひとりの人。
それがこの朋子さんだった。
このシリーズがここで止まろうが、完結しようが、
それによって観客が怒ろうが、断じて寅と朋子さんは
あのように別れてはならなかった。
私は、今でもそう思っている。
あの二人の相性はただものではないからだ。
ただひとつの救いは、第48作「紅の花」で満男が
朋子さんのことを奇しくも話題に出した時、
「再婚したよ、とっくの昔に」と、寅が言っていたことだ。
その後、朋子さんが手紙を出したのか、さくらたちが
父親の法事の時に再婚のことを聞いたのかは
わからないが、長い歳月のあと、寅のことは懐かしい
思い出に変わり、今はもう新しい幸せの中にいるのかも
しれない。
でも…、はたしてそうだろうか…。
G瀬戸内での再会と風に揺れる洗濯物
正月 江戸川土手
リコー(RICOH)の営業車がさくらの家を出て行く。
さくら家に入っていく。
近所の人「おめでとうございます」
さくら「あ、おめでとうー」
満男、パソコンの『RICOH SP200』を
操作している。
『SP200』はリコー初のパソコン。(製作は日立製作所)
当時だいたい20万円半ばくらいかな。
おそらくタコ社長は高価なリコーの『オフセット輪転印刷機』を
購入した時、おそらくこのパソコンSP200も
かなり安くでつけてもらったのだろう。
ちなみに『RICOH SP200』は
CPUは8MHzくらい。
メモリーは384KBしかない。
画面の流れ続けていた文字列が止まる。
博「F2だな、」F2は『スタート』だね。
満男「F2」
画面が切り替わる。
博「うん、」
満男「モグタコたたき・・・あ〜でたでた、出たァ〜」
この名前笑った(^^)
ようやくゲームソフトが動く。
さらに博がキーボードを指す。
当時はマウスがないんだね(^^)
さくら「へえ〜これがパソコンなの〜テレビみたいね」
テレビって…(^^;)モニターがあると
なんでもテレビに見えるんだね。わかるわかる(^^;)
博「有難うございました、
こんなものいただいてしまって」
社長「あ、いやいや、ほんのお礼心だよ」
満男「これウチでもらったの?
工場のもんじゃないの?」
さくら「社長さんのプレゼントなの」
満男「へえー、どうして?」
社長「あのね、満男君、博さんが、
大事なお父さんの遺産を、みんな投資してくれて、
おかげでおじさんの工場はオフセットを買えたんだよ。
だからァ、パソコンの一台くらい、安いもんなんだよ。
↓
第33作では「オフセット室」登場
社長「だってそうだろ。
その金が無きゃさ、オレは首くくって
死んでたかもしれないんだよ。
今じゃさ、笑い話になるけどさ、
去年の10月の給料日、
ウ…、オ、オレ、あん時…クク」
と、泣きじゃくる社長。
社長、その気持ちがあるなら
投資した博にちゃんと配当支払えよ。(−−)
博凄い勇気だね(^^;)、自分の勤めている会社に
賭けているんだねやっぱり。さくらもよくOK出したな。
遺産を自分たち個人の贅沢に使わないところが
いいねえ〜。それにしても即効で売れたんだね父親の
土地と家屋。
そういえば、この博という人は、第26作で自分が家を
買った時に、貴重な2階の一部屋を快く寅のために
提供した人なのだ。それゆえ、寅がいつ帰ってきても
いいようになっている。博は本当に凄い人だ。
しかし、よくよく考えてみたら、このあとの作品でも、
時々社長は工場の経営が苦しいっていつも嘆いていたので、
博にとってこの投資は、はたして成功だったのだろうか?
下手したら、配当どころか最後まで投資した額すら戻って
こなかったりして…。
たとえ、ある年に利益が上がっても工場が成長を
続けていくためにそのお金をさらに投資せざるを得ない
なんてことも…。だから、いつまでたっても配当に回す余裕は
あまりないかもね。博も朝日印刷には投資による儲けは
期待していないともいえる。半分ボランティアで、無利子で
お金を貸しただけなのかも(^^;)
このあと、社長はオフセットを入れたことによって人手が急に
余ることになってしまう。それゆえ第35作「恋愛塾」では
あの美しく可憐で、なんと写植ができる江上若菜さんを
雇わなかった。あ〜もったいない(^^;)
博「社長、泣くのやめましょうよ」
さくら「そうよぉ、まだ松の内なのよ」
満男「正月くらい笑ったほうがいいよ」
言うねえ満男も(^^;)
社長「わかってるわかってる」
ちなみに、あのパソコンは第33作でも登場するが、
やがて出てこなくなり、後に博は新しいタイプの
2代目パソコンを買っている。↓
第33作でも同じパソコンを使ってグラフを作る満男
その後何年かして博は新しい2代目パソコンを買った。
博、ビー
ルの入ったコップを社長の前に置く。
朝日印刷の従業員がやってくる。
中村君、トシオ君、ゆかりちゃん。
中村「おめでとうございます!フフフ」
さくら「あ、来た来た」
博「さあ、朝日印刷の全従業員が集まったぞ!
今日は盛大にやるか!」
社長「やろう!徹底的にやろう!」
中村「やりましょやりましょ、おめでとうございます」
テーブルには年賀状
寅からの年賀状。
さくらたちへあてたもの。
寅から諏訪家への年賀状は珍しい。
普通はとらや宛に送ることが多い。
寅の声「新年おめでとう。
博君、さくらさん、
夫婦仲良く暮らしてください。
満男君、しっかり勉強して、
立派な人間になってください。
私もひたすら反省して、
人に尊敬される人間になろうと思います。
瀬戸内海にて 車寅次郎」
安芸 因島大橋近く。 尾道市
因島大橋(いんのしまおおはし)は、この映画が作られた1983年に完成。
一福屋食堂
酒とおでん
独りテーブルに座って、
何か考え事をしている寅。
朋子さんのことを思い出しているのだろう。
今回は切ない恋だったからねえ。
連絡船の汽笛
ボォ〜〜
汽笛で、ふと我に帰る寅。
寅「ああ、船が来たねえ…」 おばさん「ああ、そうですねえ」
現地の本物の店のおばちゃん。
寅「ここの島に橋が架かるとすると、
連絡船はどうなっちゃうんだい?」
おばさん「もう無いようなってしまうんですが」
寅「じゃあ、ますますこの店は寂れちまうなあ・・・」
おばさん「そうじゃねえ、寂れてしまうですわねえ」
寅、ふと前を見ると
あの備中国分寺の梅林で一緒に遊んだ
熊さんとお嬢ちゃんと、見知らぬ中年の女性が
前の道を連絡船の方へ歩いている。
寅、彼らに気づいて、顔が華やぐ。
寅「かあさん、どうもごちそうさま、うん」
おばさん「はい、どうも有難うございました」
笑いながら勢いよく店を駆け出していく寅。
寅、走りながら熊さんに呼びかける。
寅「よお!」
ボォ〜・・
立て看板
祝完成 本四築橋 因島大橋
ボォ〜・・
寅「やっぱりいつかの!」
熊さん「大将〜いや〜その節はお世話になりました、
いやだ、こんなところで
お目にかかれるなんてエ〜」
寅「うん、ここで働いてんのかい?」
熊さん「うん、その橋の工事現場でね〜」
寅「あ〜、そうかい、うーん、」
寅「それで・・」
熊さん「え?アハハハハ・・ひゃ、
飯場の、炊事場にいた女なんだけどね、
気が合うっちゅうか、なんちゅうか、おい、挨拶しろ」
あきさん「え?」
あき竹城さん、恥ずかしそうに、
目をあまり合わさずペコっとお辞儀。
彼女のこの素朴さがなんともいいねえ。
寅「そうかい、そう言うことだったのかい、
お姉ちゃん、よかったな、
きれいなお母ちゃんができて、ねえ」
あきさん大いに照れる。
熊さん「きれえなんて、そんな・・・」
と一緒にてれてる。
ボォ〜・・
寅「お、船呼んでる、船」
熊さん「あ、そうだ・・あんたも一緒?」
寅「そうそうそう」」
あきさん「あれえ〜〜!!」
熊さん「あ?何?どうした?」
あきさん「洗濯もん取り込むの忘れたよ」
この言葉に彼女の正直さと素朴さが滲み出ている。
熊さん「何言ってんだ、そんな事ででかい声出すなよ」
寅「アハハハ」
熊さんたちの家の庭先
真っ青な空に
子供や熊さんたちの洗濯物が
爽やかにひるがえっている。
ボォ〜・・
因島大橋の下を連絡船が通っていく
因島大橋が映って
なにか事件や出来事がおこるわけでもなく
全く平凡な日常。昨日と同じ今日がある。
風にゆれる洗濯物。
そこに確かに家族が暮らしている。
そのこと以外に人間の幸福があるはずもない。
この映画は、家族がただ平凡に暮らし、
ご飯を食べ、洗濯をし、子供を育て、
寝かしつけ、洗濯物を干す…。
そのような日常をさりげなく、
そして丁寧に描いている。
いつの日か、子供が家族のもとを離れ、
それぞれの人生を旅するときがきても、
幼き日の、風にゆれる洗濯物の原風景を
心の奥にいだき続けていくのだろう。
終
いつもよりちょっと長めの第32作「口笛を吹く寅次郎」ダイジェスト版でした。
公開日 1983年(昭和58年)12月28日
上映時間 105分
動員数 148万9000人
配収 10億8000万円
第32作「口笛を吹く寅次郎」本編完全版はこちらです。
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