初めての本格的『恋のコーチ』バージョン とらや二階大爆発の巻
この第20作「寅次郎頑張れ!」は、若い男女の恋を寅が取り持つ「応援歌」を物語の中心に据えた最初の作品である。
しかし渥美さんもまだまだ若く溌剌としている。この作品の場合寅は大竹しのぶ扮する福村幸子に恋愛感情が全く無い。
純粋に応援するのである。中村雅俊扮するこの2階に下宿する若者『ワット君』こと島田良介のキャラがとにかく面白い。
あまりユニークでとらやの2階を爆発させてふっ飛ばしてしまうくらいだ。全くすごいことをやらかす下宿人。よっぽど受けたのか、
このエピソードは第40作「寅次郎サラダ記念日」でも出てくる。第10作「寅次郎夢枕」の岡倉先生やの第24作「春の夢」のマイケルと
いい勝負の変わり者下宿人。もちろん恋も寅以上に苦手。そこで寅が指南(コーチ)するってことになる。まあもっとも、すぐにコーチから
現役復帰に転換してしまうところがいかにも寅らしい。
このように、この第20作「寅次郎頑張れ!」は幸子と良介という若い二人の溌剌としたパワーと寅のワイルドなパワーがぶつかる
動きのある物語だ。
上にも書いたがなんと言っても渥美さんがしっかり動いてくれるので実にテンポが良い。
特に、平戸でワット君のお姉さんである藤子さんに惚れた寅が、彼女の経営する雑貨土産物屋の仕入れから早朝帰って来る場面で
港の幸橋近くを自転車に乗る姿が映し出されるのだが、その時の渥美さんの自転車の乗り方とその表情、そして歌う「憧れのハワイ航路」
がなんとも爽やかで、格好いいのだ。ハンドルを一切持たないで細いブレーキの部分だけ持って威勢良く歌を歌いながら漕ぐ渥美さん。
もう惚れ惚れする!第5作「望郷篇」にも「月の法善寺横町」を自転車に乗りながら歌う渥美さんがいたが、今回も実に爽快な映像である。
もうこの短い映像と渥美さんの歌声だけでも本編を見る価値がある。
また平戸での船長と神父役を演じた石井均さんと桜井センリさんは見事な掛け合いと確かな演技で、平戸の人情を表現していた。
そして、この作品では第16作「葛飾立志編」でいい味を醸し出していた米倉斉加年さん扮する長万部出身の轟巡査(青山巡査)が再出演、
パトカーを伴っての久しぶりのとらや入り。全力疾走とハイテンポは見もの!凄いの一言!、源ちゃんと一緒にサル捕獲作戦ギャグなども
入って、大笑い。そして最後に雪の日の真面目で純朴な轟巡査さんにちょっと感動もするのである。そしてあの幸子のテーマ曲のなんと
美しいこと。
そう、この作品は最後にとらやに深々と雪が降る味わい深い情景が見られるのがなんとも嬉しい。
おまけでラストに坂東鶴八郎一座と再会し、車の荷台に乗って颯爽と正月の空の下町に向かっていくところで終わるのである。
これは第8作「寅次郎恋歌」のラストのアレンジ版であることは言うまでもない。
@寅とワット君、いきなりの喧嘩とおかしな友情
今回も夢から
成金の夢
ある日寅が目を覚ますと、豪華なベッドで寝ていた。そして優しい声でお手伝いさんが起こすのである。
岡本茉利さんがお手伝いさん役
執事は吉田義夫さん。
目が覚めた寅の元にさくらがやって来る。
寅「さくら、この部屋はいったい…」
さくら「お兄ちゃんの部屋よ」
寅「…!!」
タコ社長は大会社の社長
博は副社長
おいちゃんおばちゃんもろ成金ガウンに装飾品。ある意味凄い格好(^^;)
さくら「長い間の苦労が実って私たち、今はお金持ちなのよ」そのまんまの表現(^^;)
寅「…!!」
寅「え!とらやの家はどうなったんだ?」と聞くと、
みんな大笑いしながら
おいちゃん「あんな汚い家はとっくの昔にぶち壊してしまったよ」
寅「え?オレあの家が好きだったんだ」
さくら「そんな古いこと言ってお兄ちゃん、フフ」さくらまで…(TT)
みんな「ハハハ」
執事とお手伝いさんが寝室のドアを開けるとその向こうで弦楽奏が奏でられている。
おばちゃん「寅ちゃんの大好きなお芋の煮っ転がしは作りましたか?」
おばちゃんが作らないと美味しくないよ(TT)
お手伝いさん「はい、がんもどきの煮たのも」
寅の好きなお芋の煮っ転がしとがんもどきの煮たのを用意させてあるらしい。
博たちは、寅の服や帽子、かばんが汚いといって新しいものに取り替えようとするが、
寅は、持っていかれちゃ困るといって嫌がる。しかし執事は無理やり持っていってしまう。
みんな高笑いを浮かべながらロビーのほうへ去っていく。
さくらだけ若干寅に同情している表情…。この辺の微妙な演出が憎い(^^)
寅はかばんを持っていかれたので、
寅「待ってくれよ!、おい!待ってくれ!おい!」
しかしカーテンがからまって前が見えない。
とある田舎道
うなされている寅。
寝言で
寅「待って…」と言ってガバっと起きる。
田舎の地蔵の横の積み藁でうたた寝していたのだ。
寅「あ…夢か…」
ところが、帽子とカバンをどろぼうに取られてしまったことに気づく寅。
必死で泥棒を追いかけていく。
寅「こら!待て!誰か捕まえてくれ!泥棒ー!」
タイトル 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!
口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴
わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような
偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
お馴染みコントの津嘉山正種さんが土手でサックスを吹いているが、誤って寅がみかんをサックスの口に入れてしまい、
いくら吹いても音が出ないで、やじ馬たちや子供たちが大笑い。というコント。津嘉山ワールドが今回も炸裂(^^)
帝釈天 参道
島田良介(ワット君)が高木屋さんの横で飼われているサルにちょっかいだしている。
彼はとらやに下宿している電気工事技師なのだ。いいアパートが見つかるまでしばらくの間だけ
二回に下宿することになったのだ。パチンコはかなり上手らしい。さくらたちにも人気がある。
洗濯してあげたり、掃除してあげたり可愛がっている。
とらや 店
たまたま『押し売りお断り』の札を店の前に貼っている時に、寅が同じくたまたま帰ってくる。
良介は寅を不振がり、店から出そうとする。
良介「何ですかあんた」
寅「なに?」
良介「歯ブラシとかね、ゴムひもとか、そんなものウチ間に合っていますからね、出てってくださいよ」
寅「…!おい、おまえなんだ!?」
良介「オレはここのウチのもんですよ」
寅「冗談言うなこのヤロウ!このウチにてめえなんかいるかい!オレは見たことねえよ!」
良介「オレだって見たことないな、あんたなんか」
寅「チキショウこのヤロ!おい!誰かウチのものいねえのか!」
すぐさま良介は110番し、警察を呼び押し売りが来ていると言ってしまう。
みんな出てきて寅のことを良介に説明している時に、通報された参道名物の『轟巡査』がパトカーを誘導してとらやにやって来る。
寅は大喧嘩。止めに入ったタコ社長も寅にやられてしまう。大慌て。
夜になって寅はせっかく懐かしい故郷に帰ってきたのに押し売りに間違えられたのは許せない。
と、良介を追い出してほしいとぐずる寅。
寅「どうなんだよ! えぇっ! あのヤロウが出て行くのか、それともオレが出て行くのかよ!どっちかハッキリしろよ!」
さくら「お兄ちゃんわかってよ」
寅 「わかってない!」
博「さくらからも聞いたでしょ?」
寅 「聞いてない!」
さくら 「さっき言ったでしょ?」
寅 「言ってない!」
駄々っ子かあんたは ヾ(^^;)
このあとおいちゃんのきつーい一言。
おいちゃん「押し売りに間違われるような甥っ子を持ったこっちの気持ちだって少しは察してくれよ」
さくら、ちょっと驚く。
寅、怒ってバン!とお膳を叩き
寅「オレは出て行く!そういう言葉が出たらもうおしまいだ!チキショウ!」
と、立ち上がって出て行こうとするが、それより早く良介が2階から降りてきて、
良介「さきほどはすいませんでした。反省してます」とリュックと家財道具担いでお辞儀。
さくら「ねえ、どこ行くの?」
良介「お兄さん帰ってきちゃったから、出て行きます。長い間お世話になりました。
これ今月の部屋代です。ここに置いておきます」
満男も顔を触って
良介「よお、さよなら」
と、出て行く。
満男「どこ行くのー?」
さくら「でったわよ。これで満足なの?」
タコ社長、やってきて
社長「寅さん、フフフ!おかしかったねえ〜!税務署行っておまえが押し売りに間違われた話したらさ、
受けちゃってさー!みんな大笑いよ!おかげで税金負けてもらったよ、ハハハ!」普通負けるか税金??
プッツン切れた寅はタコ社長を物干しに宙ぶらりんに吊るして出て行く(TT)
パチンコ屋で良助と再会。
流れる音楽は『憧れのハワイ航路」
良介は寅のパチンコを手伝う。さすがにパチンコ好きだけあってどんどん玉が出る。
二人とも大喜び、そのあと飲んで
『憧れのハワイ航路』を歌いながら二人して酔っ払ってとらやに帰ってくる。
上機嫌の寅は良介を下宿することを賛成する。
こうして二人ともとらやの二階に住むことになったのだ。
翌朝 題経寺 山門
御前様はさくらにその騒動のことをこう言っていた。
御前様「しかし、その青年を責めるわけにはいかんよ。なにしろあの男を見て、押し売りだと思うのは
むしろ正常な感覚だろうからな」
さくら「ええ…、私たちもそう言ってるんですよ」
御前様「いずれそのうち一騒ぎおこさずにはすまんじゃろ、そのぶんじゃあ…」
さくら「いやですわ、御前様、フフ」
御前様「ハアア、ハアア、ハアア…」と例の御前様笑い。
満男がその横で源ちゃんをサルの物まねをさせて遊んでいる。
さくら「こら!」っと、叱って源ちゃんの紐を解く。
源ちゃんサルになりきっているので、しつこくさくらの前でもまだ続けている。
御前様に怒られて、掃除するふり。いい演出だねえ(^^)
Aワット君の恋を目撃し、応援する寅
とらや 茶の間
ようやく昼近くになって起きて来た寅。
おばちゃんは堅気の良介と比べてその生活態度を叱る。
寅は機嫌が悪くなって、御飯も食べずに、
寅「可愛い娘さんにいる雰囲気のいい店で食事してきます!はい!」と言って外へ出て行く。
そしてなにげに入ったのが柴又7丁目の「ふるさと亭」 秋田県人会柴又支部(細かい…(^^))
そこは、実は良介が密かに惚れている幸子が勤める店だったのである。
「ふるさと亭」
寅「いい娘だな、青年」
良介「ああ、そうですか…」
寅「生まれは信州あたりかね?」
良介「いえ、秋田です」
寅「秋田…ほぉ〜…」
寅「年は十八九か…」
良介「いえ、もう二十歳です…」
寅「ほお…」
このシリーズでは珍しく渥美さんが次々に食べ物を口に運んでいる。
幸子のテーマが静かに流れる。
良介「小ちゃい時にお父さんが亡くなりましてね。お母さんと弟が田舎にいるんです。
その弟に学費を送りながら、自分は速記の学校に通って夜遅くまで勉強しているんです」
寅「…」
良介「名前を幸子って言いましてね。さいわいってういう字なんですよ」と手のひらに指で書く。
寅、全てを察知してニヤついている。
良介「いや、あの…、ちょっと聞いたんです」
寅、ニヤニヤしながら
寅「このヤロウ!惚れてるな」
良介、タジタジして
良介「え、違いますよ」
とやみくもに御飯をネコまんまにしてかき込む。
その日以来、寅は良介の恋の成就を手伝うことを決意。
雨の日の『ふるさと亭』
も良介はいつものカツ丼と冷奴を『ふるさと亭』で食べる良介。
幸子カツ丼を運んできて
幸子「あー…いっぱい降ってきた」
幸子「お客さん傘持ってるの?」
良介「いや」
幸子「じゃあ、私の貸したげる。二つ持ってるから。
かまわねえ?、女もんでも」
良介「ああ…」
翌日
帝釈天参道
なんと源ちゃんがネクタイを締めて彼女と腕を組んで歩いているではないか!
前代未聞、天変地異、これはぶったまげ。↓
とらや 二階
良介が幸子ちゃんに思い焦がれて、ため息をついている。
満男が『電線音頭』を歌いながら遊びに上がってきて、便箋の文字を見ながら
満男「サチコサチコサチコ…サチコってだあれ??」ねえ(^^;)
良介焦って紙を取り上げる。
とらや 店
さくらと博は久しぶりに映画に出かけようとしている。
店先に幸子が立っている。
寅、幸子をさくらたちに紹介。
博「ワット君!ちょっと降りてこいよ!」
良介「降りてきて、びっくり」
寅「なんか口きけよおまえ!」
良介、幸子に「オスッ」
座っても黙っている良介に
寅「おい、はやくなんかしゃべれよ、楽しい会話しろ、会話」
良介「いや。。。会話って…」
寅「あるだろう、趣味はなんですかとか、お好きな食べ物はとか、そういう…」
良介「いや、趣味ったってオレパチンコするくらいしか…」
寅、良介の口真似しながら
寅「オレに言ったってしょうがねえじゃねえか、バカヤロウ〜」
幸子、ちょっとテレながら、
幸子「食べ物はカツ丼が好きだねえ…」
良介「うん、んとそれから…冷奴とか…」
寅、そっくりかえって
寅「んなあ…、ショボタレタ会話だなあ、会話はダメかァ?
よし、じゃあ、若い者通しだ、帝釈天の方ちょっと散歩して来い、ちょっと」
幸子、ぱっと表情が華やいで
幸子「私、今行こうと思ってたんです!」
寅「思ってたか!うん」
寅「よし、青年、おまえちょっと送ってけ、な」
良介、傘を返してなかったことを思い出し、バタバタ二階へ上がっていく。
思いっきり階段で滑って落ちてくる(^^;)
幸子「じゃあ、行ってきます」
良介「じゃあ、行ってきます」
足を引きずりながら歩いていく良介。
寅、見送りながらニヤついて妙に目を輝かせながら
寅「これから世話が焼けるぞあの二人は」
Bワット君の初デートを指南する『迷コーチ』寅
とらや 夜 茶の間
映画から帰ったさくらが『ジョーズ』か何かの再現を社長にしている。
夜にとらやに戻った良介は上機嫌で今度の日曜にデートの約束をしたとみんなに報告。
もうニッコニコである。
しかし喫茶店以外のことは何も考えてない良介に寅は『デートの指南』を施す。
寅「テーブルの上にコーヒーがある…。静かな音楽。
黙って聴く。彼女は言うな…。おいくつ?
そしたらおまえなんて答える?」
良介「二十五」
寅「バカ!砂糖の数だよ!」
第18作「純情詩集」では寅が綾さんの質問に対して同じように答えていた(^^;)
みんなクスクス
良介「あ、そうか、じゃあ.二つ」
寅「いや、それが違う。僕…いいです。甘いの嫌いだから。こういう言葉に女は弱いんだよ。
なあ、甘いもんなんかドンドン食う奴は体に締りが亡くなっちゃうんだよ。見てみろ、おい、
社長やおばちゃんがいい見本!」
おばちゃんたちブスウ
おばちゃん「大きなお世話だよ」
社長「おれだって若いころは締まってたんだよ」
良介「その先はどうするんすか?」
寅「決まってるじゃないか映画を観るんだよ。ただし、洋画はダメだぞ。考えてももろおまえ、カッコのいい男がスーッとした
足して次から次へ出てくるんだよ。そうだろ、終わって電気がパッとつく。カァ〜…ひどい顔してるなあ…」
良介、すねながら
良介「じゃあ、日本の映画を観ますよ」
寅は、やくざ映画、ギャング映画、悲恋もの、は寒々しい気持ち、悲しい気持ちになって
早く家に帰っちゃおうって気持ちになっちゃう」
結論
寅「決まってるじゃねえか、可笑しい映画!フフ、二人でさ、腹抱えて転げまわって笑ってさ、
『あー…可笑しかった。あんまり笑ったんで私おなかすいちゃったわ』
食事はレストランがいいなあ。ケチケチしないでデザートも取ってやれよ。
今の若い子はよく食うからねえ〜!
あの、ガラスの器に入った、ほれ、あれ、何って言ったい?」
さくら「え?」
寅「え、アイスクリームをねじりウンコみたいに山盛りにして…」
ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ出たアア…。
さくら「きたないわねえ!いやねえ、もう〜」
みんな嫌がるわ、そっぽをむくわ。
寅「あれなんか、一口でぺロッと食べちゃってさ」
そのあと公園に行く。
寅「『あ、…あんなところに花が…』『え?どこに…』『ほら、ほら、そこに』」
良介は指差した方をきょろきょろ。
寅「おい!こら!ここが大事なんだよ。差出したおまえの手に娘の頬が触れる。娘が振り返る。
いいか。ここで目をそらしちゃいけないぞ。ジーッと娘の目を見る。
おまえが好きなんだよという思いを込めて娘の目を見る。そこでおまえの気持ちが通じる。
そこだよ!そこで最後のセリフ。『アイ ラブ ユウ』できるか、青年!」
おまえこそ、できたためしがあるのか寅(−−;)
良介「あ。。。できるかな、そんなこと」
寅「そのあと、結婚式、結納は一切オレが引き受ける」早い早い ヾ(^^;)
タコ社長は「さすが寅さんだよ、名コーチだよ」と褒める。
おいちゃん「経験豊富だからな」
寅は「日曜日が楽しみだなあ…フフフ」楽しんでますねえ〜(^^;)
そして日曜日
電車に乗る良介と幸子ちゃん。
一方とらやでは
とらや 店
朝日印刷の草野球の後、とらやでくつろいでいる。
タコ社長「寅が現役を引退してコーチに就任した」
博「現役の時はダメでも、コーチになったら
よくなったってこともありますからねえ」
と寅ネタを酒の肴にして大賑わい。
映画館
山田監督演出のオリジナルホラー映画を観ている おいおい、なぜそんなものを…(^^;)
山田監督上手いなあホラー映画作るの。こういうところに凝るんだよね監督さん。
う〜ん、なかなかハイレベル。あの方はなにをやらせても平均以上行くんだねやっぱり。
そのあと、レストランに行かず、混んでいる食堂でラーメン。胡椒出まくり(^^;)
まあ、それでもなんとか、ようやくなんとか寅が指南した最終目的地である公園にたどり着く。
幸子ちゃんは幼いころの好きだったお父さんとの悲しい死に別れの話をする。そして慰めてくれたおばあちゃんの話も…。
幸子はいつでも笑っている人になってほしいと願っていたおばあちゃんの思い出を話すのだった。
しかし、その最後に、良介は告白どころか散々じらしたあげく、
「アイ ラブ ユウ」ではなく「帰りの電車賃貸してくれるか」と言ってしまう(TT)
夜 とらや 茶の間
沈んだ気持ちで戻ってきた良介。
良介「だめでした…」
寅、いろいろ聞くが…、結局告白はできなかったらしいのだ。
寅「はーあ、ダメな男だな…」
良介は二階に上がって落ち込みまくり、そのまま何日も寝込んでしまう。
寅は参道のサルの貼り紙「このサルは腹をこわしてますからエサをやらないでください」を意識してギャグで
『この男は失恋中につきみだりに声をかけないでください。寅』と、良助の寝ている二階の窓の手すりにに貼り付けて遊ぶ始末。
工員たちが向こうからそれを見てクスクス笑っている。
不審に思ったさくらが発見してすぐにそっと剥ぎ取る。
Cああ…傷心のワット君、そしてとらや二階大爆発
ふるさと亭 夜
身内から電話があり、幸子のお母さんが胃潰瘍で倒れて緊急入院することになったのだ。
今夜中に急いで帰郷することになった幸子は心が動転していた。
そうとは知らずに、落ち込んだ挙句、起死回生を狙って、必死の覚悟で『告白』にやってきた良介。
間が極端に悪い男である。
ふるさと亭に入るなり
良介「幸ちゃん、オレ…、ケッ…、オレと結婚してくれ!」
幸子頭が真っ白になり、ワナワナ震えながら
幸子「こ、こいたな時になしてしたなこと言うの!ううう…バカ!」と、泣きながら奥に引っ込んでしまう。
良介、必死で奥に追いかけようとするが、
幸子ちゃんの叔父さんが阻む。
叔父さん「やめろ!やめろ!やめろ!」
跳ね飛ばされる良介。
叔父さん「頭大丈夫かおめえ?」
叔父さん「幸子!幸子、はやく支度して」
良介は幸子のこの時の苦境を知らないので、自分がふられたと思ってしまう。
そして絶望感に襲われる良介。
とらや 二階
障子や襖の全ての隙間にテープを張って、ガスの栓を開ける良介。
便箋に遺書を書く。
『長い間お世話になりました。今度生まれるときは…』
ここでタバコを一服 オイオイオイオイオイ((((((−−;)
ドカーーーン!!!
二階が一瞬で炎と煙に包まれ全てが外に吹っ飛ぶ。
((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((|||▽|||
)
びえええええええ!!
きゃあああああああ!!
なんだどうしたんだ!!??
わあああああああ!!
二階から良介がドッドドッドドドと落ちてくる。顔は真っ黒。
あんたっていったい…( ̄ー ̄;)
良介「参ったなあ…」とりあえず生きててよかったね。
博「ワット君!奥に逃げて!」
タコ社長、手提げ金庫を持ちながらパンツ姿でわめき散らしている。それってあまりにも…ヾ(ーー ;)
社長「どうした!え?爆弾でも落ちたか!!??」わけわからんよな確かに…(^^;)
で、またもやサイレン鳴らしてパトカーがとらやに。今回2回目の参上。
この騒動の後良介はいたたまれなくなり、結局故郷の平戸に帰ってしまった。
一方、煽っていた寅も後を追うようにして逃げて行ったのだった。
このあと青山巡査と源ちゃんのサル生け捕りコントで大笑い。
高木屋さんの横(御前様によると鶴屋さんちのサルらしい)
貼り紙「サルが逃げました。見つけた方は御一報ください。薄謝を呈します」
良介や寅とこのサルをかけているのが面白い。
この手の貼り紙は第19作「寅次郎と殿様」の鞠子さん探しの時も山門で使われていた。
D平戸でコーチから現役に完全復帰した寅
長崎 平戸島
平戸大橋が完成したてだが、やはり連絡船に乗っている寅。
あんな状態で逃げ帰った良介のことが気になって訪ねてきたのだ。
平戸の浜尾神社でバイをしながら金を稼いで良介の元を訪ねる寅。
良介をよく知る船長に教えられて良介に呼びかける寅。
良介「ゆっくりしてってくださいよ。せっかく来たんだから」
寅「いやあもう帰る。おまえの元気な姿を見リャもう用事すんだようなもんだ」
ところが良介の姉さんが独身だと分かったとたん、いつものように急に態度が激変。┐('〜`;)┌
寅「なんだか喉が渇いたてきたな…んん」
なんて言って、しゃあしゃあとお茶を飲みにぴったりくっついて行く寅だった。このへんのチェックはいつもながら
厳しい寅だった。
松浦史料博物館石段の前にある藤子さんの経営するお土産屋兼貸し自転車屋さん
良介「ほら、前に話しちゃろが、柴又の寅さん」
藤子「あの方が…」と会釈。
良介「うん」
寅も軽く会釈。
寅、もう『できあがった目』でふらああと近づいていくのでした ロックオンゞ( ̄∇ ̄;)
柴又 とらや 庭
大工さんが二人ほどでとらやの二階を直している。
火災保険もボヤ扱いなのでほとんど下りない様だ。自腹を切る覚悟のおいちゃん。
良介や向こうの家族に請求しないところがさすがだねえ。
社長「ついでにおれの工場もぶっ飛ばしてくれればよかったのになあ!」なんて凄いこと言っている。
幸子ちゃんがとらやにやって来る。
秋田から戻ったばかりだと言う。お母さんの病状はとてもいいようだった。
幸子ちゃんは良介が平戸に帰ったことを未だ知らないようだった。
幸子「…どうしてですか?」
さくらはそのわけを言う。
さくら「あの…実はねえ…、私たち、良介さんとあなたとの間に何かあったんじゃないかって
思っていたのだけれど…、違うの?」
幸子「…」あの日の良介の告白を思い出す幸子。
さくら、何かを察知して
さくら「とにかくおかけなさい。何か思い当たることある…?」
幸子涙をこぼしながら大きく頷く。
幸子「でも…、うう…あん時は私…、あん時は…うう…あん時は私…」
涙で言葉にならない幸子ちゃんだった。
お母さんの急病のことで気が動転していたことを、不器用ゆえにさくらにすぐに伝えられなくて
泣いてしまう幸子ちゃんに素朴で温かな人の心を感じた。
幸子ちゃんの一番きれいな心がにじみ出た清らかなシーンだった。私はこのシーンがとても好き。
さくらたちは幸子ちゃんの気持ちを聞いて、安心する。
さくらのアパート
夜、アパートから早速平戸の良介に電話してやるが、
なんとその電話に出たのは寅だった。
これは第8作「寅次郎恋歌」のバリエーション。
さくら「私…東京の葛飾の諏訪と申しますが…」柴又という地名じゃローカルすぎるんだね。
寅「ハハ、さくら、おまえか」
さくら「え?お兄ちゃんなの!?」
博「ええ!!」びっくり仰天ずっこける(^^;)
良介のお姉さんと話をしてつい電話を切ってしまうさくら。
オイオイ良介が失恋してないこと伝えてねえぞ(^^;)
平戸港 幸橋近く 早朝
自転車をこいで食品の買い付けに行っている寅
寅「♪別ァ〜れテープを〜、笑顔で切れば〜、とくらああ〜、
夢もぉ〜なつかあしい〜、
あのアロハオエ〜、
ああああ〜憧れぇ〜の、ハワイ〜、航路ぉ〜」
ハンドルを持たないで、ブレーキ部分を持つ、粋な寅。
朝早くから別人のように懸命に働く寅、お姉さんに気に入られたくて一生懸命なのだ。
船長、その姿を冷静に観察。
一方よく通ってくる神父さんもお姉さんに気があるようだ。
いやに張り切る寅を見て、神父さん気になり船長に尋ねる。
神父「誰ですか?」
船長「惚れとるバイね」
神父「は?」
船長「お藤さんに惚れとるとぉ」
神父「あたくしがァ…?」
船長「…?」
神父「とんでもない、なんてことを!」
船長「ちょ、ちょ、ちょっと、神父さん!あんたも惚れとっと?」
神父、恥ずかしがって逃げていく。
船長「うわあああ!ハハハ」とついていく。
船長「ちょっと、あんた!」
十字路で、二人同時に右見て左見て、渡っていく。 上手い!ご両人!
船長「うわ、うわ」と、大喜び(^^;)
とらや 茶の間
さくら、あれからも何度も良介に知らせてやろうと電話するのだが、寅がいつも電話に出ては怒ってすぐ切ってしまう。
社長「なるほど、寅さんは再び現役復帰か!こうこなくっちゃな!ああ面白くなってきたぞ!」
みんな呆れる。
平戸 日曜日のミサ
平戸カトリック教会からの帰り道
藤子さんは寅が一生懸命手伝ってくれ、良介のケアもしてくれてとても助かるようだった。
藤子「私はね、寅さん、口下手で…思うとることが上手く伝えられんばってん…、どんなに寅さんが
来てくれたことがどんなに感謝しているか…。これも神様のお引き合わせよ、きっと…」
寅「わたくしもなんだかそんなような気が…」と舞い上がる寅だった。
良介、飛ぶように走ってきて
良介「今、さくらさんから電話があってね!オレ、失恋してなかったんだ」
寅「ほんとか…」
良介「だからオレ明日の朝東京行く。お姉ちゃんよか!?」
藤子「よかよ」
良介「寅さん、お姉ちゃんと二人で留守番頼む!よか?」
寅「よか」(^^;)
藤子さんのみやげ物店 居間
寅は明日から藤子さんと二人っきりだと思っているので嬉しくてしょうがない。
寅「なんだか参ったなあ〜、フフフ。
差し向かいで御飯を食べる。お互いに意識しているから言葉は少ない。
『静かな夜ですね』『そうですわね』また沈黙が流れる。たまりかねて姉さんが
『あの…私休ませていただきます』『あ、どうぞ』『おやすみなさい』
丁寧に挨拶してそこを出て行く。ひたひたひたひたひた…、廊下を歩く足音、
お姉さんは風邪をひいているから軽く咳をしている。コホンコホンコホン。
オレは横になって、ここで静かにそれを聞いている」
寅、ふと、我に帰って…
寅「まずいな…、いくら広い屋敷とはいえ、同じ屋根の下世間が黙っているわけがない。
まして、こんなちっちゃな島だ。噂は島中にパッと広がる。
『おい、聞いたかい?寅のやつがお藤さんと怪しいらしいぜ』『へえ〜…』
こんな噂を聞いてオレは黙ってここにいられない。『お姉さん、長い間お世話様になりました
あっしはこれで失礼いたします。』『あら、寅さんも行っちゃうの?』『はい』
『あなた、世間の噂に負けたのね…、私は平気なのに』フフフ、そんなこと言われたらオレ、
(タオルをバシッ!!)たまんねえなあ!!フフフ!」
もう行きつくところまで行っている寅の妄想でした。┐(~ー~;)┌
良介がじっとその姿を土間から見ている。
寅、顔が豹変して
寅「なんだ、おまえそこにいたのか?」
良介「ええ、今帰ってきたんです」
寅「あのな、オレいろいろ考えたんだけどよ、明日っからこの近くの宿屋に泊まるよ」
良介「どうしてですか?」
寅「いい年した男と女が一つ家でもって寝起きしててみなよ、世間が黙っていると思うかい」
良介「ああ、その心配だったら要りませんよ。お姉さんオレと一緒に東京行くことになったんだ」
寅「え?」
良介「寅さん、すまんけどしばらく留守番してくれますか?」
寅「おい!」
良介「え?」
寅「恩を仇で返すってことあるけどもな、こんな寂しい無人島にたった一人オレを残しておまえ平気なのか?」
そこへ藤子さんが帰ってきて、幸子ちゃんに会いに行くのとやとらやのみなさんにお詫びをする意味で東京について行く
ので、改めて直々に寅に留守番をお願いするのだった。寅は、またもやさっきと態度を豹変し、ニッコニコで、
寅「え、いってらっしゃい、平気ですよ、留守番はわたくしが引き受けますから、心配なく」と、言ってしまう。
あきれ返った良介、二階に上がりながら寅を見てつぶやくように、
良介「惚れとるばい…」(^^;)
翌朝 平戸港
二人が出て行く船を淋しく見送る寅。
神父さんは、船を見送った後の寅が機嫌が悪いのを察知して、向こうへ遠ざかりながら…
神父「惚れとるばい…」(^^;)
E幸せな若いカップルと帰ってきた寅
柴又 ふるさと亭
閉店間際時間
叔父さん言いわれ、暖簾をしまおうとする幸子。
ガラスの向こうに良介がいる。
幸子のテーマが流れる。
驚く幸子。動けないでずっと良介を見ている。
良介、戸を開けて入ってくる。
そしていつもの席に座る。
幸子、表情が柔らかくなり、笑って
幸子「びっくりした」
良介「明日からまた、ここで飯食うからな」
幸子「…うん」
良介「…カツ丼」
幸子「卵のかかったのね」
良介「それに…」
幸子「冷奴?」
良介「そう」
幸子、幸せそうに笑う。
とらや 茶の間
大きなまだ生きている伊勢エビをお土産にもらっておおはしゃぎのみんな。
お姉さんそれよりも二階の修理費全額出してやってください。保険が下りないみたいです(TT)
満男「ザリガニ」
さくら「いやあねぇ、伊勢エビよぉ!フフ」
藤子「5時半に起きて寅さんが魚市場で買うてきてくださったとです」
おばちゃん「5時半!!?」
おいちゃん「寅が…?」
おばちゃん「あ、朝のですか?」上手い!座布団一枚(^^;)
藤子「ええ。寅さんはいつも6時には起きて、お店ば掃除して、ついでに表の道まできれいにして、
もう、ほんとによう働いてくださるとですよぉ」
おいちゃん「へえ…寅がねえ」
第5作「望郷編」の豆腐屋さんを思い出すよ、このパターンって。
藤子「あのぉ〜、小学校から大学を出るまでずっと新聞配達ば、しとんなさったとですねえ〜。
そいで、早起きの習慣がついたとか」信じるかァ〜?、それゞ( ̄∇ ̄;)
このパターンの寅の法螺は、第18作「寅次郎純情詩集」でも綾さんが信じていた。
とらや一同、うそうそと、大笑い。
博もやって来て、伊勢エビを見て
博「うわああ!びっくりしたあ、なんだザリガニじゃないかあ!」さすが血続きの父と息子(^^;)
さくら「ハハハ、バカねえ、親子そろって何言ってんのぉ〜」
みんなまたまた大笑い。
江戸川土手
数日後、さくらと藤子さんが江戸川土手で散歩
藤子さん、ホームシックにかかっている。
藤子「寅さん、どうしとんなさるかしら…、私帰らんばいけん…。
寅さんに叱られてしまうけん、いつまでも一人で留守番ばさせとったら…」
さくら「…」
さくら、土手の遠くを見て
さくら「???…あら…」
さくら「ああああ!!お兄ちゃんだわ!!」Σ(|||▽||| )
テーマ曲盛り上がって
なんと杖を突いてふらふらになって歩いてきた寅がそこにいた。
藤子「寅さーん!!」と走り寄る。
寅「お姉さァーん」と言って倒れてしまう。
なんと、昨日の朝平戸を出てからずーっと飲まず食わずで上野まで来て、あとはお金がないから
歩いてきたのだった。上野から柴又は歩いたら遠いぞぉ〜。
とはいえ、夜、みんなでいろんな意味を込めてパーティを始めたとらやさんだった。
幸子ちゃんや叔父さんも参加して賑やかな乾杯。
そして良介は明日から電気工事の仕事を再開することになった。
良介「あ、姉ちゃん、一人で平戸に帰れっと?」
藤子「うん、それがねえ…、寅さんが一緒に帰ってくださるって言うとよぉ」
寅「フフフ」と照れ笑い。
良介「ええ??」
藤子「なんか申し訳のうして…」
寅「いや、いいんですよ。オレははじめっからそのつもりだったしね、それから、神父さんや船長さんにも
買い物頼まれてるから、え」
良介「いや、寅さん、それじゃああんまり」
寅「いいんだいいんだ」
お姉さん、なぜいい年をした中年独身男の寅がそんな尋常じゃない親切をするか考えてください。
もう答えは一つしかありませんよ(TT) 一度離婚経験もある藤子さんが、そういう機微を分からない
わけないと思うのだがどうだろうか…。
みんなで乾杯。
みんなで大騒ぎ。
良介「お姉ちゃん、話があるとばい」
藤子「なんね…?」
二人して二階に上がって行く。
寅は長旅で疲れて転寝している。
F藤子さんの目を覚まさせたワット君の真実の言葉
とらや ニ階
さくらが布団を敷いている。
遠慮して下りようとしたさくらに良介はいてほしいと言う。
藤子「なんの話ね、はよう言わんね」
良介「お姉ちゃん、寅さんと結婚する気があっとね?」
藤子「…!!」
さくら「…!!!」さくらの怯えた表情。
藤子「な、なんば言うとね…あんた」愕然とする藤子さん。
さくら、どうしていいか分からないで、顔が青くなっている。
藤子「な、なんば言うとね…」
良介「もし、お姉ちゃんにその気の無かなら、寅さん平戸に来るの、断らないけん」正しい(−−)
藤子「あんたの言うとること、さっぱりわからんけど…」鈍感すぎ(−−;)
さくら、後ろで下を向いて、怯えている。
良介「なんでそげんこつ分からんかのぉ」
藤子「…」
良介「ええか、お姉ちゃん、寅さんお姉ちゃんに惚れとるばい」
あの態度見リャ誰でもわかるよね(−−)
さくら、どうしていいか分からなくて目をつぶっている。
下では宴会で盛り上がっている中、転寝している寅が映る。
幸子ちゃんの叔父さん十八番のシューベルトの「冬の旅」から菩提樹を歌う。実に上手い!
実はこの方、役者ではなく本物の声楽家の『築地文夫さん』(洗足学園大学名誉教授)なのだ。
それがご縁があって山田組と仲良くなり幸子ちゃんのおじさん役をお願いしたのだ。
ど〜おりで歌が上手いはずだ。ど〜おりで演技の『気』が他の人と違うはずだ。
でも役者さんじゃないから、これ1回特別出演しただけで終わりなんだな、と思っていたら、
なんと第35作「寅次郎恋愛塾」でも出演されているではないか!
やっぱり第20作と同じ秋田県人。民夫のお父さん役だ。ここでも寅を民夫の先生と
間違えたりいい味を出していた。この作品では歌は歌ってくれなかった。残念…。
タコ社長「ステレオだよ、ステレオ!」意味不明〜(^^;)
寅、起きて
寅「藤子さんどこいったんだよ?」
おばちゃん「あ、良介さんと二階行ったよ」
寅「え?これからだってのにちょっとオレ呼んでくっか」
寅、そっと二階へ上がっていく。
良助のシリアスな声が聞こえてきて、寅は歩みを止め、聞き耳を立てる。
良介「オレが寅さんやったらな!オレが寅さんやったら、絶対お姉ちゃんを許さん。
好きでもなかとに好いとる顔されて、うまく利用されとるじゃなかか」
藤子「やめんね!そげん乱暴か口ばきいて…、寅さんはね…、
あんたの考えてるよりもっともっと心のきれいか人よ。」
人を好きになることは心がきれいだからだよ藤子さん。
そして、だからこそ丁寧にお礼を言って、感謝して、そして断らないといけないのでは…(−−)
良介「いくらきれいかてん、寅さん男たい」うん(−−)
藤子「あんた、…さくらさんの前で…そげん…そげん口ばきいて…」と泣いてしまう。
さくら「ごめんなさいね、いやな思いさせちゃって」なんで謝るの?
良介「オレは寅さんが悪いとは言ってませんよ」
さくら「迷惑をかけたのは兄ですもの」どこが…。
さくら、今回寅は、迷惑どころか良介に対しても藤子さんに対しても大いに役立ち、心から感謝されてましたよ。
あなたは平戸での活躍を見てないでしょ。
藤子さん泣き続けてる。
さくら「藤子さん、何も気になさることないのよ」優しいね、さくら。そう言うしかないよね…。
さくら、冷静になって
さくら「仮に…私の兄がお姉さんを好きだとしても、今のような気持ちを知ったら、
兄ってそういう人間なんですよ…」藤子さん救われたね…。
さくらの言ったとおり、寅はそういう気持ちに救われるところがあるが、やはりマドンナが自分のことを
好きになってほしいのはあたりまえ。さくらがそれを一番知っているのだ。
さくら、人の気配と音がして階段から覗くと
寅がゆっくり下りていくのが見える。
寅、庭に出て一人考え込んでいる。
さくらも下りてきて、そっと兄の背中を見ながら、その悲しみを思っている。
そして、やがて妹も悲しみの中に沈んでいくのだった。
この長いシリーズの中で良介のような冷静かつ相対的な発言があったことは、私には救いだった。
第5作の節子さんをはじめ、寅の気持ちを知らず知らずのうちにマドンナが利用してしまいがちになるパターンは
いろいろな作品で多く登場するのだが、やはり、「知らなかったわ…」では済まないことも世の中にはあると思う。
この良介の思い切った発言はこのシリーズを見続ける上で私には絶対に必要だった。そういう意味ではこのシーンを
見てから先、私はとても心が安定したことを今でも覚えている。
G寅の旅立ち
翌早朝 さくらのアパート
第5作「望郷編」では『コーポ江戸川』だったのに、今回は『こいわ荘』
さくら、寅に封筒に入ったお金を渡す。
平戸からの旅費で全て使い果たしてスッカラカンなのだ。
京成の線路脇で待っている寅。
寅「こんなに要らねえよ」
さくら「いいのよ、ボーナスもらったばっかりだから」
寅「へえー、裏の社長そんなもん出したのか?」
さくら「フフ。。」
寅「すぐ返すからな」返したことあんのかい(^^;)
寅「んーん、なんだかめっきり冷えてきやがったな」
さくら「もうすぐお正月よ」
寅「うん…」
この渥美さんの「うん…」には心底しびれました。かっこいいです。
さくら「ねえ、たまにはウチにいない?みんなで集まってお雑煮食べて…、ね」
寅「冗談言っちゃいけねえよ。正月はこっちの稼ぎ時だい。
オレなあ、今年は新潟の弥彦に言ってみようと思うんだ」
さくら「うん」
メインテーマがクラリネットで静かに流れる。
寅「人が出るぞぉ〜!金なんかじゃんじゃんじゃんじゃん儲かっちゃってよ、
腹巻なんか、こんなになっちゃうよ。ハハハ」
さくら「フフフ」
寅「今年は不景気だから、とりわけ人が出らァ」
寅「じゃあ行くぜ、あ、藤子さんによろしく言ってくれよ。なんだか寝てるようだったから
挨拶しねえで来ちゃった。な」
と、背中を見せて去っていく。
さくら、ちょっと追いかけて
さくら「なんて言えばいいの?藤子さんに」
寅「…、ん…、まあ、なんか適当に言っといてくれよ、な
メインテーマがゆっくり大きくスクリーンに広がっていく。
線路沿いをゆっくり去っていく寅。
いつまでも見送るさくら。
この別れのシーンもさりげないけどじみじみいいねえ…。名作の一つだね、やっぱり。
Hそれぞれの正月風景
正月 平戸
藤子さんが走って港に行く。
なんと良助が幸子さんを連れて平戸に正月なので帰省するのだ。
神父さんも興味津々でついて行く。
神父さん子供たちに年賀の挨拶をされるが、急ぎながらもきちんと一人一人に
立ち止まって「おめでとう」と言っていた。こういう演出が好きなのだ。
船長さんの船
大漁旗がひらめいている。
遠く平戸城が見える。
幸子「あの天守閣に登れるの?」
良介「ああ!あそこから見る景色は最高だよ、玄界灘から東シナ海までずーっと見えるんだ」
いい映像だねえ〜(^^)
良介双眼鏡を船長から借りて
良介「あ、いたいた!」
幸子「誰が?」
良介「お姉ちゃん、あ、神父さんも来とる、あ、二人とも手を振っとるわ!」と、手を振る。
幸子「あ、貸して貸して」と双眼鏡を覗く。
船長「こら、よか、おなごば見つけたばいねぇ」
良介「え??なんて」エンジン音で聞こえにくい。
船長「よかおなごば見つけたばい、おまえにしちゃ上出来!ハハハ!」
幸子ちゃんの年賀状のナレーション
幸子のテーマが流れる。
平戸城の天守閣から船を望む。
幸子の声「あけましておめでとうございます。
生まれて初めて九州に来ました。
お正月だというのにまるで春のような暖かさで、秋田生まれの私はびっくりしています」
柴又 とらや 茶の間
さくらが幸子ちゃんのハガキを読んでいる。
幸子の声「船長さんとか、神父さんとかとても面白い人たちに囲まれて毎日を楽しく過ごしております。。」
障子の向こうは雪景色。
長万部に帰省していた青山(轟)巡査が柴又に戻ってきてみんなに挨拶。
これもさりげなくいいシーンだ。
幸子の声「ところで寅さんはどうしていますか?みんなで噂しています。
今ここに寅さんがいたらどんなに楽しいでしょうね」
さくらが障子を開けて庭の雪景色を眺めている。
庭で雪いじりをして遊んでいる満男。。
満男、さくらに雪をぶつける。
さくら、コラッて言いながらも笑っている。
このとらやの庭の雪景色はシリーズ全体でもとても印象深く、
切ない幸子のテーマと相まっていつまでも脳裏に焼きついている。
I懐かしい一座との再会と正月晴れ
寅、田舎の農家の片隅を借りて昼食をとった後外に出る。
田舎道を柿を2つ持ちながら歩いている寅。
子育て地蔵様の頭の上にその柿を乗せる。
第8作「寅次郎恋歌」のラストの演出と全く一緒。
向こうから軽四トラックの宣伝カーの大きな声が聞こえてくる。
音楽はジョルジュ・ビゼー作曲『カルメンCarmen』の中の『闘牛士の歌』
スピーカー「皆様 毎度ごひいきにあずかっております。坂東鶴八郎一座が新春公演にやって参りました。
座員一同初春の装いも新たに、外題も改めまして、ビクトール.ユーゴー原作、『ああ無情』、『ああ無情』
三幕八場、その他歌謡ショー、お色気コント等、合い揃えまして…」
なんだ演目は『カルメン』ではないのか(^^;)
それにしても小百合ちゃん『お色気コント』は辛かろうに…。
荷台に乗っている大空小百合ちゃんが寅を見てすぐに
小百合「まあ!先生!車先生!」
車が止まる。
このように走っている車の中からも、すぐに寅のことを思い出し「車先生!」と叫ぶ小百合ちゃん。
第37作「幸福の青い鳥」では彼女は寅のことをなかなか思い出せなかったが、あれはあり得ませんよ、監督さん。
どんな時でも小百合ちゃんの記憶力は抜群で、そしてなにより恩を忘れない人なのだから。
寅「よお!あんたたちかあ!ハハハ!」
座長「やあやあ車先生!これは異な所で」
寅「座長さん、その後みんな達者だったかね」
座長「はい、いつぞやの教えをかたく守りまして、日夜芸道に精進いたしております」
小百合「先生、これからどちらへ?」
メインテーマが流れ始める
寅「うん、町まで…、あ、そうかこれに乗せてってもらおうか」
小百合「どうぞぉ!」
座員「はい、お荷物を」
寅「ありがとう」
座員「先生、今夜お暇でしたら、私たちのお芝居を」
寅「そうよなあ、他にすることもないし、じゃあ、今夜芝居でも楽しませてもらうか!」
小百合「わあー!嬉しい」
座長頭を下げる。
座長「娘、今夜は気の抜けない舞台だぞ」
小百合「分かってるわ、おとっつあん」
寅「まあ、硬いこと言わないで、軽く行こう軽く」
一同ハハハ
寅たちを乗せた軽四トラックは正月の青空の下、田舎道を遠ざかっていく。
終
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