我が心の『寅次郎夕焼け小焼け』 ― 私の人生を支えたもの ―
スマートで弾けた脚本と演出、安定感抜群の109分。これぞエンターテイメント!
「夕焼け小焼け」は、今までに私がこのシリーズで最もたくさんの回数を見た映画である。そのほんとうの理由は自分でも
よく分からないのだが映画というものが持っている全ての面白みが偏ることなく絶妙のバランスで詰め込まれているからかもしれない。
私にとっての作品としての評価という意味では、第1作や第8作、第15作のほうが高いのだがこの第17作はなぜか見た後に満腹感を
感じられるのだ。物語の振幅が大きいからかもかもしれない。また、この頃になると、脚本や演出がこなれてきてスマートでギクシャク
しないものになっているので、そのような、ゆったりとした安定感が心地よいのかもしれない。総合的な完成度が高い気品のある作品と
言ってもよいと思う。
とにかく実に「見易い映画」「楽しめる映画」なのである。第1作「男はつらいよ」を見ていると、楽しめるというよりは、あまりにも懐かしく、
美しく、そして初々しい荒削りな魅力に溢れている。第8作「寅次郎恋歌」も楽しめると言う言葉は似合わない。人生の奥深さと、
人間の世の哀しさ、旅の孤独、が見事に描かれた長編大作だ。それゆえに立て続けに見るときついものがある。
第15作「寅次郎相合い傘」は美しく切ない、ふたりの恋の物語で、心が震える最高傑作だ。楽しい場面もたくさんあるし、
「放浪者の栄光」の物語でもあるが、やはり「切ない恋の物語」でもある。それに対して、この第17作「夕焼け小焼け」はとにかくすんなり
安心して楽しめるのだ。つぎつぎに物語が展開していってあれよあれよという間にクライマックスへ。そして最後に感動が待っている。
落ち込んだ時、この作品を見たら元気が出る。悲しくて仕方がない時この作品を見ると、明日も生きていこうと、そう思えるのである。
とにかく笑える。とにかくはなやぐ。それでいてなんともいえない気品と重みがある。そしてなんといっても最後に感動する。起承転結。
絶妙の安定感がそこにある。「物語」がそこにしっかり存在するのだ。
この「夕焼け小焼け」を見るたびに思うことは、ここにいたって本当にこのシリーズは熟してきたな。ということである。泥臭さがもうかなり
消え、スマートになってきている。だから安心して違和感なく見ることができるのである。気持ちが苦しい時はあまり泥臭いパワフルな
ものもダメだし、あまり軽く予定調和的に作ったものもダメなのだ。「若々しく輝きながらもスマートな成熟がもう始まっている」という
なんともいえない頼り甲斐のある気持ちよさと壮年前期の品格が「夕焼け小焼け」にはあるのだ。
岡田嘉子さんと宇野重吉さん
この映画には宇野重吉さんの初恋の人、志乃役で往年のスター、岡田嘉子さんが出演している。彼女の体から出るあのオーラは
いったいなんだろう。人の歩めない道をあえて歩んで来たものだけが持ちうる優しくも強い眼光。凛とした姿かたち。今日の今日まで
いろんな役者さんの演技を見てきたがあのようなオーラは、あとにも先にもあの龍野での岡田嘉子さんだけだった。青観役をみごとに
演じきった宇野さんとともに心底感服した。そして、その宇野さん扮する青観がラスト付近で目を細めてふと呟くあの言葉
「そう…寅次郎君は旅か…」も忘れられないセリフだ。この一言でこのシリーズのイメージをすべて言い表していた。見事な姿かたちだった。
また、龍野での寺尾聡さんとの親子共演も印象深い。
いずれにしても宇野重吉と岡田嘉子というふたりの優れた感覚の人間によって演じられた龍野のあの静かな夜の会話は、この作品に
最高の気品を与えているばかりでなく、あのシーンの存在が、この長いシリーズ全体のイメージをも高めているほどの強烈なインパクトを
持っていた。「夕焼け小焼け」の奥深い懐がここにあるのだ。
突きつけられる庶民の無力さと切なさ、…そして優しさ ― 救われるということ ―
この長いシリーズではいわゆる「悪者」というような人物はほとんど出てこない。みんなどこかしら人間臭さを残した憎めない連中ばかりだ。
しかしこの第17作にはこのシリーズで唯一といっていい「悪い奴」が登場する。
ぼたんの虎の子の200万円を騙し取った鬼頭という男だ。そのことでとらやの面々はずいぶん親身になって手伝おうとするが、
すったもんだの果て、結局泣き寝入りという厳しい結末が待っている。どんなにさくらたちの心が清らかでも、どんなにタコ社長が
奮闘しても、寅が怒って怒鳴り込もうとしても、どうすることもできない厳しい現実がそこにはあったのだ。この金銭的損害と悪者征伐に
関してはこの作品は容赦なく救いを遮断させている。現実の社会はこのような不条理な出来事や悪意に満ちた事件で溢れているからだ。
この時の寅は本当に心底怒る。マドンナのためにこんなに本気になって怒った寅はこの17作をおいて他に無い。その心にぼたんは救われ
号泣するのである。人は、最後の最後はお金でなく人の心に救われる。綺麗ごとでなくほんとうにそうなのだ。人生で涙が枯れ尽くすまで、
とことんまで辛酸をなめた人ならそれはみんな実感として知っていることだ。
この作品はほんとうに無力で惨めながらも励まし合いながら寄り添いながら生きていく人の世の切なさと温もり、そして気高さをラストで
謳いあげて終わっていく。こんな美しく、ほろ苦く、そしてリアルな感動に打ち震えるラストはこのシリーズでもめったにない。
第2作「続男はつらいよ」のラスト、第8作「寅次郎恋歌」のラスト。第25作「寅次郎ハイビスカスの花」のラスト。そしてこの第17作「寅次郎
夕焼け小焼け」のラストが全48作の中で私の選ぶ感動のラストシーンベスト4だ。
この作品の翌年にいよいよ「幸福の黄色いハンカチ」が完成する。
@【寅の帰郷と入学式騒動】
今回も夢から
『白鯨』と『ジョーズ』とをかけあわせもじっている夢。
どんよりとした深い海
不気味なBGM寅のナレーション
寅「この広い海のどこかにあいつがいる。平和な海水浴場を一瞬にして地獄へと化した
あの憎い…人食いザメが!どこかにいる。港を出てすでに1週間。車船長の顔にあせりの色も深い。」
寅「憎い人食いザメ。」
なぜかボートのポールになぜか『とらやの店の旗』(^^;)
「おいちゃん、おばちゃん、そしてさくらの息子満男を飲みこみ、さらには三日前、かの原公の下半身(しもはんしん)を
食いちぎった悪魔のような奴。うわわっ、山田監督の演出とは思えない〜(><;)蛾次郎さん、ごくろうさんです(^^)
タコ社長と博は同船しなかったようだな。助かったな…(^^)
さくら、嗚咽
寅「さあ、出て来い人食いザメ!このオレと一騎討ちだ。どこにいるんだ人食いザメ!」
そんな時またもや悲劇が、たった一人生き残ったさくらもサメに食い殺されてしまうのだ(TT)
さくら「アアーア!!」
寅「さくら!」
さくらの足だけ寅の手に残る。
うわわわー!山田監督ゥ〜っ!ΣΣ(|||▽||| ) )))山田監督に一体何が…何を思ってここまで…(^^;)
その時、竿がきしむ「ギギギ…」サメが針にかかる。リールがどんどん引きずり込まれる。
寅「だはっ!ぐ…くっチッ…グ、グゥ!ちきしょう!出て来い人食いザメ!フゥ!!!」
サメ「ガォー!!!」と大口を開けて襲ってくる。おいおい、猛獣じゃないんだから、サメはそんな声出さないよ ヾ(^^;)
寅「ウワァー!!ワァ!!ウワァ!!アァー…!」お陀仏(TT)
とある田舎の漁港
夢を見てうなされている寅。釣りをしているらしい。
寅、ちょっと目がさめる。
子供A「おっちゃん!ひいとるで」関西地方かな?
寅「おっ」とようやく起きて、「よしよしよし」と竿を上げる寅。
子供B「や、ちっちゃいな」
寅「あーこんな小ちゃいの」と、あくびをしながら針からはずそうとする寅
寅「はわわ…あたたたっ!噛みつきやがった」
寅「ちょっと!これっ。気をつけろ!」夢との落差で大笑い(^^)
タイトル
男(赤)はつらいよ(黄)寅次郎夕焼小焼け(白)映倫18752
バックの映像はお馴染み江戸川土手、そして一面の白つめ草。
口上「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。
今作品はいつもの歌の2番の代わりに、歌の3番が挿入されている。私はこの3番の歌詞が大好きだ。
♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる♪
♪あても無いのにあるよな素振り それじゃあ行くぜと風の中
止めに来るかとあと振り返りゃ 誰も来ないで汽車が来る
男の人生一人旅 泣くな嘆くな
泣くな嘆くな影法師 影法師♪
江戸川土手
寅が子供たちのチャンバラに入りこみ、勢い余って一方的に勝つ。それに怒った大人が文句を言い、あげくの果てに大喧嘩。
寅はチャンバラが大好き第15作「相合い傘」でも題経寺の境内で大暴れ。
近くにいた統一劇場の人たちが気づいて止めに入るが、巻き込まれて、大乱闘。警察官も巻き込んでめちゃくちゃ。
とらや
テーブルに尾頭付きのタイや赤飯などが炊いてある。
紙に『入学 おめでとう、 満男くん』なんと今日は満男の入学式!
みんなで年月の経つのは早いものだねえ、としみじみしている。
そんな時、寅が帰ってくる。
入学式帰りの母子たちを見て寅が店先の参道で
指折り勘定して、…パン!と膝を叩いて店に入ってくる。
寅「あ!」とおばちゃんを指差して、渥美さんのこの一連のリズムいいねえ〜!上手い!
寅「あのー、ひょっとしたら満男は小学校…じゃねえのか?」
おばちゃん「うん、そうだよ」
寅「そうか…やっぱり満男はもう小学生か月日がたつのは早いもんだなァ…」
満男に祝い金を差し出そうと祝儀袋に名前を書く寅。
おいちゃん、サ―ッと満面の笑顔に変化(^^)
タコ社長も感激。
おばちゃん「とらちゃんどうもありがとう。ちゃんと覚えてくれてたんだねえ、さくらちゃんが聞いたらどんなに喜ぶか」うるうる。
社長「あっ!あ、帰ってきた」
さくら「ただいま」
はっと寅に気づいて
さくら「お兄ちゃん!」
しかし、さくらが元気が無い。寅が事情を聞いてみると、満男が先生に寅の甥っ子だということで
みんなの前で紹介された時に、子供も親も笑っていたのがショックだったらしいのだ。
さくら「入学式が終わって教室に入ってそれぞれの席に着いてね先生が一人一人の名前呼び上げるでしょう」
さくら「そいで満男の所にきたらね、先生が『諏訪満男君』って言って、満男の顔ちょっと見て、
『あら、君、寅さんの甥御さんね』ってそう言ったら、みんながドーッと笑ったの」
社長「カハハハハハ!」こういうところが微妙に身内じゃないんだよなあ…社長って(−−)
寅「その受持ちはなんて名前なんだ」
さくら「名前…聞いてどうするの?」
寅「校長の所行って掛け合ってやるんだ!受け持ちかえろって!冗談じゃねえ、そんな教師がいるから
ロクな日本人ができねえんだ!ふざけやがって!名前言え!はやく!
さくら「先生はちっとも悪くないわよ。ただ『寅さんの甥御さん?』って聞いただけなんだもん」
それは違うぞさくら。まず、軽率な先生が悪い。
おばちゃん「そうだよ!笑ったほうが悪いんだよ」違うおばちゃん、先生の配慮が足らない。
寅「笑ったのはガキどもか!親か!」
さくら「両方よみんなであたしの方見て笑ったわ」
怒った寅は、そんな学校転向させろと息巻くが、さくらは…
さくら「お兄ちゃん、みんなだって悪気が合って笑ったんじゃないのよ」
寅「バカヤロウ!悪気があるからみんな笑うんじゃないか!」
ある意味寅の感覚も分かる。先生もなぜわざわざ満男の時に限って自分が直接面識も無いし、実は噂でしか知らない、
偉人でもなんでもない寅の名前を出したのか。その先生の深層心理を考えると、いろいろ問題点が出てくる。
社長、ニヤニヤ笑いつづけている。
社長「でもさ、例えば先生が『諏訪満男さん、あら総理大臣の甥御さん?』こう言って誰かが笑うか?笑わねえだろ?ところが、
『あら、あなた寅さんの甥御さん?』こう言うとさ、みんなつい、笑っちゃうんだよ!カハハハハ!!」
社長「いや、笑われる方が悪いよな」
寅「そうそう、悪い悪いこの野郎!」と社長に墨を塗りたくる。あちゃ〜太宰さん今回も…(ノ_< ;)
もうメチャクチャな大喧嘩(TT)
おばちゃん「もう!今日は満男の入学式なのよ!バカ!ウエエエエー…ゥェー…クゥ〜ズズッ」と
おばちゃん必殺チャルメラ泣き
寅、少し我に帰る。
寅「おいちゃん!おめえも悔しかねえか!」
おいちゃん「悔しいよ!、そりゃオレだって悔しいよ!しかしな、寅、落ちついて考えてみろ、
みんなが笑うってことはだよ、今までお前が笑われるようなことをしてきたからなんだ。
だから悪いのはお前だ。そこんとこをよーく考えて」
寅「オレがなにしたってんだよ!オレ今帰ってきたばっかりじゃねえか!そうだろおばちゃん、えっ?
そしたら満男の入学式だって言うからさ、せめて伯父貴の真似事でもしてみてえって思って
祝儀袋もらって中に金入れて渡そうと思って待ってたんじゃねえか!
それがどうしてこういう事になっちゃうんだよ!え!一体オレが何悪い事したって言うんだよ!」
寅はいつも体裁が悪い事はよくしてきたが、悪いことはしていない。昔も今も。
寅「タァーッ!ったく、くそ面白くも何ともねえや!まったく!!おりゃあ、どっか行って飲んでやらあ!」と飛び出していく。、
やっぱり今回もおいちゃんついつい寅に愚痴ってしまった。何かあるたびに寅はおいちゃんに説教される。
これは寅にとってはつらいことだ。無条件で寅を迎い入れることの難しさを感じざるを得ない。
テーマ曲が悲しげに流れる。
満男、冷静に祝儀袋の中身を偵察!さすが(^^)
寅が書いた「祝 寅」の文字が悲しい…
源ちゃん題経寺の鐘を打つ。ゴォ〜ゥン…
夜 とらや 茶の間
とらやのみんなは昼間、寅につらく当たったことを反省し合っている。
電話 リリリーン リリリーン!
上野の飲み屋の赤電話で寅が電話をしている。
さくらは、昼間のことはみんな言いすぎたと反省している事を寅に告げる。
さくら「博さんもね、今ここにいるんだけど、…言ってたわよ。『総理大臣がえらくてお兄ちゃんがえらくない
なんて誰が決めたんだって同じ人間じゃないか』って、だからお願い、ねっ帰ってきて」
さくら「おばちゃんが今言ってるわ。おいしいお芋の煮っころがしと何?がんもどきの煮たの作っておくからって。
だからお願い帰ってきてお兄ちゃん」出ました寅の2大好物が揃い踏み!!
だから…て、食いもんで釣ってどうするさくら。寅はガキか(^^;)
で、結局寅はみんなに心配されて上機嫌になる。やっぱり、なんだかんだ言っても、みんなの待つとらやに帰りたいものね。
電話の後、引き続き、気分よく酒を飲む寅。その店で画家の池ノ内青観と出会うのだ。飲み食いの支払いができない青観を、
見かねて助けてやる寅だったが、助けついでになんととらやまで深夜連れてきてしまうのだった。
A【我がまま放題のニ階のジジイ】
出ました寅の2大好物が揃い踏み!!
深夜 とらや ドンドンドン!
おばちゃん「おそかったねえあんた、さんざん待ってたんだよ」
寅「ああ、そう、とっつあん!さんざん待ったってよ!待ってたってよ! エンコラショと!ああ、アハハハハ!
あ〜あ、おう、おばちゃんこの爺ィ無一文で泊まるところないからね。今晩家にとめてやってくれやナッ!」
おいちゃん「どうなってんだこらあ!」
おばちゃん「ちょっと寅ちゃん」
で、怒りながらも、しかたなく泊めてやる優しいおいちゃんでした。
翌日 昼 とらや
とらや二階
工場の音がうるさいと文句を言う青観
おばちゃん「贅沢言うんじゃないよ!よそのうちへ来て。お風呂場で顔洗いな。その間にね、朝のご飯作っといてあげるから」
青観「その前に茶をもらいたい梅干を添えてな」
おばちゃん「ええっ?」
青観「あ、それから風呂だ、うんううん、風呂は沸いとるか」
おばちゃん「まあまったく!」
一階に下りて来るおばちゃん。
おばちゃん「あのクソジジイ!」糞をしない爺はいない(^^)
おいちゃん「何だい、どうした」
おばちゃん「お腹すかして帰すのも可哀想だと思ってね、朝ご飯の支度してやるって言ったらね、その前に風呂に入りたいだって!」
おいちゃん「風呂!」
おばちゃん「どうする!?」一応迷うところがおばちゃんお人好し(^^)
おいちゃん「どうするったってお前そんなもん沸かすことなんかねえ!」
社長「よしッ!オレが言ってやるよ!なんだふざけやがって
とらや二階
社長二階に上がってきて
社長「あのね!言いたくもないけどね…!!」
青観「プ〜ゥゥゥゥ〜〜!プゥン!」くっさい屁(^^;)
うわわっ (**;)=))))))))
宇野さん、最後の「プウン!」でお尻をプルルンと震わせるところが名人芸。奥が深い(^^;)。
青観一階へ下りてきて茶の間に上がり。
青観「風呂は沸いたか?」
おばちゃん「今言って今沸くわけないでしょ!」
新聞逆さまだぞ(^^;)
青観「じゃ、急いで沸かせ」偉そうだな(−−)
おばちゃん「分かったよ、沸かすよ!」おばちゃん優しい(^^)
おいちゃん、怒って新聞読むフリして知らん顔。
新聞が逆さまだよ、おいちゃんヾ(^^;)
青観「は、おはよ。」
おいちゃん「!」怒り心頭!店のほうへ下りる。(▼▼メ)
おいちゃん「ドタタッ!」と転ぶおいちゃん(^^;)
青観「危ないよ」
出た!第14作に次ぐ、久しぶりの下條おいちゃんの転びギャグ!
起き上がって、怒りながら店ではたきを使ってほこりをはらってる。
パタパタパパッタ
やって来たさくら、おいちゃんのはたき姿を見て、
さくら「あら、どうしたの珍しく働いてんのね」1本〜!技あり(^^)
茶の間でドデェっとしている青観を見て、さくらも博も????
可哀想に結局風呂を沸かすはめになるおばちゃん(TT)
お大師さんの縁日
源ちゃん「兄貴、寝てばっかりやったら商売なりまへんがな」
寅「フッ!ハーッ〜フエイ…。二日酔いは頭痛ェや、なあ…、大師の縁日だからって無理に来ることはなかったよ。」
夕闇迫る 柴又 とらや
寅が帰ってきている。
博「あの目つきは普通じゃないな。妙に鋭いと言うか…」
社長「そうそう」
おいちゃん「犯人の目だなありゃあ」犯人って…(^^;)
おばちゃん「ひょっとしたらスリかなんかの親分じゃないかい全国指名手配で逃げ回ってんだよきっと」
寅「ま、いいからいいからさ、それでどうしたい」
さくら「あたしが買い物から帰ってきたらね、『君枕出してくれないか』ってそう言ってね、座敷で寝てグーグー寝ちゃったの」
寅「ほほほほほー!やるねえジイさん、ええ、それでどうした」
さくら「5時ごろだったかしらノコノコ起きてきて、またあたし捕まえて『君、ここは一体どこだい』…こうよ」
倍賞さん、青観の口真似笑える(^^)渥美さんも笑っている(〜〜)
寅「てめえのいる所もわかんないの」
さくら「ちょっとおかしいんじゃない」(^^;)
おばちゃん手でクルクルパーする(^^;)
博「で、何て答えたんだい」
さくら「うん、『葛飾柴又の帝釈天の参道ですよ』ってそう言ったら
『ほお。じゃあうなぎが美味いところだ夕食はうなぎいいな』だって」
社長「カハーッ!ひどいもんだねえ!」唾が博まで届く(^^;)
さくら「おいちゃんに叱られちゃったの。ねっ」
― おいちゃんのアリア ―
おいちゃん「だから言ってやったんだよ。うなぎなんてモンはな、我々額に汗して働いてる人間たちが
月に一度か二月に一度、なんかこう…おめでたいことでもあった時に
『さっ、今日は一つうなぎでも食べようか』って大騒ぎして食うモンなんだ
『お前さんみたいに一日中何んにもしねえで
ゴロゴロゴロゴロしてる人間がうなぎなんか食ったらバチがあたるぞっ!』
そう言ったらな、あのオヤジ、
『オ、それもそうだな』立ち上がってプゥ〜っと出てっちまった。ンッ!それっきりだい…」
下條おいちゃんの見事な『アリア』でした。
さくら「お礼も言わないのよ」
博「お世話になりましたとか、ありがとうございましたとか…」
さくら「ううん」
おばちゃん「なんにもただプイっと出ていっただけ」
社長「泥棒だよ泥棒!」とみんなで怒りでプンプン。
しかし、寅は、どおせ家では若夫婦に除け者扱いの身分だろうからそれはそれでいい功徳をしてやったのだと言うのだった。
寅「夜中にふと目がさめる。隣で持ってせがれ夫婦の寝物語。そりゃ聞きたくなくたって聞こえてきちゃうもの、ええっ」
『ねえパパ、あたし今日友達と会ったの。うらやましかったわあ!お舅さん死んだんだって』」
おいちゃんドキ!
『うちのおじいちゃんいつまで生きてんのかしら嫌になっちゃう!』
『でもなあママそんな事言ったってお前脳溢血かになってヨイヨイなって
おしめか何かあてがっていつまでも垂れ流しになってたらかえって困っちゃうじゃないか』」
『そりゃそうねえ、うちのおじいちゃんもポックリ行くとは限らないし』
『アーア…、パパ、寝ましょうか』『うん、そうしよう』『スタンド消して』『うん、プチュ』(^^;)
これは地獄ですよ!年寄りにとって!
ええ?せめて一日このうちから逃げ出して意地悪な嫁のいないところでぐっっすり寝てみたい。
この気持ちはよぉーく分かるなあ。
タコッお前人事じゃないぞ。お前だってすぐアーなっちゃうよ。お前んところのあのできの悪い息子がだ、
お前の将来どれだけ優しくしてくれると思ってる。ええ?甘いよ」
第6作「純情篇」を見ているかぎりは長男、長女、次男、次女の計4人の子供がいる。
シリーズ後半で出てきたのは長女の「あけみ」のみ。あとの3人は話題にすら出てこない。
一同、納得している。
柱時計が7時の時報を打つ
青観、酔って、歌いながら店先から入ってくる。
青観「♪幼い〜わたしが〜、ときたあ!むーねこーがあ〜し〜、てかあ」
青観「酒飲んだら家かえるのが面倒になって。また世話になるからな
タコ社長の頭を手の平で触ってグリグリ(^^;)
青観「おかみさん夕飯はいらんよ。うなぎ食ってきたからガハハハーッ!!」
青観「♪しぇんしぇーい、しぇんしぇーい、オレは待ってるぜー、だ」と這うように階段を上がっていく青観
一同 ポカァーン(^^;)
寅だけ、面白がってニヤニヤ笑っている。
寅「あ、誰か来た、はいはいなんでしょう、はいはいなんでしょう?」
魚甚「あの魚甚ですが今のオジさんの勘定お願いしたいんですが請求書をおばちゃんさくらに渡す。
さくら、金額見て、ちょっとびっくり。
おいちゃん「畜生!もう我慢できねえ」と立ち上がろうとする。
寅「、いいからやー、おいちゃん今日のとこはオレが代わって払っておくからさ、ね」
おばちゃん「だってあんた」
寅「いいよ明日オレからよく言っとくから、兄さん、どうもご苦労さん。ちょっとかしてみな…、
えっなん…おほほ、うなぎと酒でもって600円か勉強したな」
さくら「6千円よ…」
寅「そうだよ…!…??」
さくら「6千円」
寅「ウソだいお前・・・・」請求書もう一度見て、焦って百円下に落としてコロコロ…コインを目で追う寅。とほほだね寅(^^;)
B【チョロチョロっと描いて7万円騒動と寅の旅立ち】
翌日 とらや二階
寅「別にここを出て行けって言ってるんじゃないんだよお前が一文無しの年寄りだってことはみんな承知してるんだから、
いや、今までどおり泊めてもやるし、飯も食わしてやるけどもさよその店いってこうやってうなぎなんか食ってきてね、
その勘定をこの家の者に払わしたりしちゃいけないんだよ。遠慮ってもんがあるだろう。宿屋じゃないんだから」
青観「!!…宿屋じゃない?なんだここ宿屋じゃないのか」
見りゃ分かりそうなもんだ。草団子って旗に書いてあるのになあ。(^^;)
寅あきれ返る。こんな汚い家が宿屋のわけが無いだろと笑っている。
青観「そうか…、宿屋じゃなかったのか」とモンペを穿く青観。
とらや 二階
なんとか、お礼をすぐに払おうと、苦肉の策を考え出す青観。満男のらくがき帳に真剣な表情で、神経を集中させ、
『宝珠』を描き、サインを入れる。それを寅に渡す。
寅「なんだいこれ?玉ねぎか?」
青観「いや、玉ねぎじゃない。これは宝珠と言ってな、縁起物だ」
寅「ふーん!」
これを神田の大雅堂に持っていってくれと頼む青観。
青観「いや、決してこれはそう言う性質のものじゃないんだから、無駄足はさせない。たのむよ…なっ、このとおり」
青観さん、すでに売れることを確信してしまっている。これって自分の名前(名声)で、人が買うことを想定しているってことだ。
つまりよく言われる耳(名前、肩書き)で買うパターン。それは絵を描く人としては退廃だ。絵というものを愛していない行為。
かりにも日本画の最高峰と言われるような本物の画人なのであるならば、自分の名声を利用して、耳で買わせるようなことを
せず、こういう場合は、絵とは関係無しに、足を使って、一般の方々と同じように、自分が自宅に帰って、かかった費用を多くもなく
少なくもなく封筒に入れて礼状と粗品と一緒にとらやに届けさせるのが筋だと思う。まあ、映画だから面白くするためには
水戸黄門的ギャップが必要なのでしょう。
神田 神保町
大雅堂
寅、店内に入ってからも恥ずかしがって見せるかどうかオドオド迷っている様子。
店主、ちょっと気になって寅に訳を聞く。それでとりあえず見せろとせがみ、見てみる店主。
店主「フフフフフ…青観…。人もあろうに青観の名を騙るとは。いいかね、青観とは日本画の最高峰だよ。
それも色紙の類を一切描かないので有名な先生だ!贋物を描くならあんた…フフフ、それくらいのことを知ってないと…」
店主「…待てよ…おかしいな…これは…、…あんた、これどどどこで?」上手い!
この表情が出来る人は大滝さんだけ。
寅、恥ずかしがって絵を店主から奪い返そうとする。
店主、寅の手をスッとかわして、絵を持ったまますっと奥に。
店主「吉田、ちょっと」
吉田さん、青観のサインを確認。真筆と断定。
この店はこの目の利く吉田さんで持ってるなこりゃ。こういう人って意外に少ない。この点も彼を雇っている店主は商売上手。
店主「あんたこれ売るんだね?いくら?え?いくら?」
おいおい、そんな焦っちゃって、買いたがってるのバレてるぞ、ご主人さん ヾ( ̄o ̄;)
寅「そうねえ、いくらって…」寅はあくまでも無欲。
店主「断っておくけどそんな高い金は出せないよ、落書きのようなもんなんだから。いくら?早く言いなさい」
『早く言いなさいって』、いよいよバレてるよ ヾ(^^;)
寅「それじゃあ電車賃使ってきたことだし…」と指を一本。(もちろん千円)
店主「そりゃ高い。いくらなんでもそんな高い金出せないよ」
寅「負けるよオ、オレもちょっと高いんじゃなえかなと思ったんだ」
店主「これでどうだ?これなら買う」と手をパーで5本。
寅「半分か…?」(五百円)
店主「じゃ、もう一本色つけようこれだな、これ、これで決まったな、いういだろう」ともう一本!
寅「まー、まーしょうがねえな」(六百円)
六百円で手を打つ寅の感覚もある意味、世俗を超越していて凄い(^^;)
店主「吉田、6万円の領収書いて!」店主さんいやに必死だね ( ̄  ̄ )
寅「おじさん、今何て言った?6万円!?」と、目を白黒
6万円!?
店主「気に入らないか?えっ?よし、じゃあもう一本色つけよう、」
あ、寅ラッキー、店主の妙な早とちりで1万円得しちゃったよ(^^)手で7本の指立てて
店主「これで決まり、吉田7万円だ、7万円!」
この店主の焦りようから考えて10万円でも買ったね。寅は相場がよく分からないのでこうなってしまったが…。
粘りまくれば15万円でも買ったかもしれない。
画用紙に落書き程度だとしても、色紙の類を一切書かない日本画の巨匠、青観の絵は熱烈なコレクターの中では
名声と希少価値のダブルで、高値がつく。ましてや、落書きのわりには『サイン』がしてあるので、信用度は高い。
このサインの有無が大事。青観もそこのところはしっかり押さえてサインしていた。それゆえ耳で買う人もいるだろう。
そうなると当時の物価でさえ市場で競り合うと末端価格は最低30万円以上はするだろう。このオヤジはかなり儲けたね。
柴又参道を走る寅
とらや 店
寅「さくらッ!さくらっ!ちょっとこいさくら、お前驚くなよ。」
驚いてるのはあんただよ(−−;)
とピラピラピラっと札束を目の前でちらつかせる。それじゃ犯罪者の行為だよ(^^;)。
さくら「お兄ちゃん、すぐ返してらっしゃい!だめよそんな何してもいいけど悪い事だけはしないで!」
悪いことだけはしないで、ってさくらァ〜(^^;)
でも、そうなるよな。寅のこの超妖しい行動見たら誰だってね…。とは言うものの、
さくらの先入観も相当のもの。盗んだって決め付けてるもんなあ(ーー;)
寅「バカ野郎!オレの話をしまいまで聞けって言うんだよ、いいか、この金はな2階のじいさんが
あのちょろちょろって描いた絵あるだろあれもってったら7万円で売れちゃったんだよ、お前」
さくら「嘘よ!」信じないだろうね(^^;)
寅「お前は信じないだろうけど落ち着けって。いいか、あのじいさんはな日本でも有名な絵描きなんだってんだよ、
名前はね……あれ?堀の内じゃねえやい…池ノ内」
さくら「青観?」
寅「そうそうそう!その青観だよ!」
さくら「あらー、どっかでみた顔だと思ったら…、そうよ、池ノ内青観よ」
寅「なんだ、おまえ知ってんの!?」
さくら「うん、写真でよく見るわよ。あらぁ…、あの人…」
寅「さくらぁ!、おまえ、もう暮らしの心配なんかするこたあないよ、え!博のヤツは裏の工場辞めさせちまえ!
おいちゃん、おまえも団子なんか作るの止めろ!明日からな、面白楽しくホカホカホカホカ暮らすんだよ。え!
蒲焼だろうとてんぷらだろうと食いたいもんどんどん食っちゃうだ!」そこで食い気にいくか(^^;)
それでもし金が無くなったら、2階のジジイの尻引っ叩いて、ね、ちょろちょろと描かせりゃ7万円だよ、フヘヘヘ!ヒヒヒ!」
と飛び跳ねて喜んでいる。凄い発想だね〜、それじゃ爺さん猿回しの猿だよ。┐(-。ー;)┌
青観がつい、やってしまった軽率な行為が、このように、ただでさえ低い寅の労働意欲をますます低下させるのだ。
しかし時すでに遅く、青観は2時間も前に帰ってしまっていた。
寅「バカやロー!!何で帰したんだよー!!」
表に飛び出て
寅「7万円!」露骨…。金額言いながら走っていくなよな(^^;)
あっち向いて、向こう向いて、
寅「おい!おい!」と、走っていく。
さくら「池ノ内青観…」 さくら呆然
夜 青観の屋敷
表札 池ノ内 寓 『寓』とは昔の風流な家などで使われた言い方。隠遁して暮らす家とでも言うような意味。
引き戸を開けて青観が戻ってくる
今作品も、岡本茉利さんがお手伝いさん役で登場!!
青観「二晩も家を空けて、大変失礼しました」と二階へ上がっていく
妻「うーん、またそんな格好でぇ。何処行ってらっしたの?」
黙って上がっていく
青観さん、家ではかなり居心地悪そう…
われらのアイドル岡本茉利さん、このシリーズ登場作品一覧!
寅次郎恋歌………鮮烈なデビュー!大空小百合
葛飾立志篇………ラストでの西伊豆の連絡船ガイドさん
寅次郎夕焼け小焼け……… 池ノ内青観家のお手伝いさん
寅次郎純情詩集………夢の中でカスバの女性&大空小百合
寅次郎と殿様………大洲での料理屋の店員(出前)ほんの一瞬だけ
寅次郎頑張れ!………夢でとらやのお手伝いさん&大空小百合
寅次郎わが道をゆく………留吉の元彼女(春子)「あんた何くれた!?」
翔んでる寅次郎………寅に便秘薬を渡した看護婦さん
寅次郎春の夢 ………大空小百合 「ミーバタフライ!ミーバタフライ!」
とらや
雑誌のグラビアを見ているさくらたち 青観の特集 『日本画壇の孤高 池ノ内青観 』
さくら「どうしてウチなんかに泊まったんだろう?そんな偉い芸術家が…」
みんな、ああいう人はいろいろ人には言えない事情があるのだろうと推測している。
おばちゃん「そんな偉い人に、私もなんて口きいちゃったんだろうねえー、今思い出しても顔から火が出るよ…」
みんな口々に酷いことを言ってしまったとか、子守させちゃったとか反省の気持ちを言い合う。
絵が上手に描けるというだけで別に人間的に偉いわけではないんだが…。『そんな偉い人でも、
あんなふうに人に迷惑を平気でかけるんだねえ』って言うふうに考えられないのが悲しいところ。
寅「おばちゃんいけないんだよ!あのじいさんをもっと親切に扱ってやったらこの家が気に入って
一生ここにいようって言ったかもしれないんだよそしたら一枚ちょろちょろって描いて7万円じゃないかよ」
もう寅って、そればっか(^^;)
社長「はあ……俺も働くのやになっちゃった、そうだろう?あのじいさんちょこちょこっと描いて七万円。
そんだけの金を稼ぐにはオレたちはどんだけ働かなきゃなんねえか」
分かる分かる社長の気持ち(- -)しかし、指で丸作るのちょっと下品…。
おいちゃん「しょうがねえやそりゃ生まれた星が違うんだから」なるほどね。おいちゃん年の功だね。
社長「そうかねえ」社長、なんだか悔しそう…。
満男「お母さん、描いてもらったの」
さくら「あ!上手な絵ね、誰に描いてもらったの?」 気づけよな、さくらヽ( ̄▽ ̄;)
満男「おじいちゃん」
さくら「えっ?2階に居たおじいちゃん!」
満男「うん」
社長「ちょ、ちょっと見せて」
寅「おっ!なにすんだよ」と社長の絵を取り上げる。
社長「見たっていいだろう」と寅がもっている絵を取り返そうとする。
社長「あっ」と絵が真っ二つ!(><;)
さくら「あらっ」
寅「お前がやったんだぞ」
これでいつものように二人は大喧嘩。
社長「わかったよ弁償すりゃいいんだろう」
寅「ケーッ!よく言うよ、お前これいくらだと思ってんだい?7万円だぞ!お前弁償出来んのか!」
社長「馬鹿にしやがって工場を売ってでも払ってやるよ!」オーバーやの〜(^^;)
寅「工場?どこにあんだい?あれが工場か?よく見ろお前、あれが七万円で売れるのか!
ただでもらったっていらねえやい!!この野郎!」
と社長の首を無理やり手で工場に向けるあんまりだよ、その言い方は (-_-;)
さくら「お兄ちゃん謝んなさい、謝んなさいってば」
社長「コンチキショウ!コンチキショウ・・コンチキショウ!!」と泣きながら絵をちぎってバラバラに破いてる。
社長にしてみたら真面目にコツコツ働いて7万円稼いでいるのに、こんな紙に落書きしただけで7万円もらえることが、
人を小馬鹿にしているようで許せないんだろう。ああいう絵の売り方は絶対しちゃいけませんよ、青観さん(−−)
寅、帽子を被り、カバンを持って土間に出る
さくら「何処へ行くの?ねえ」
寅「この家で揉め事があるときは いつも悪いのはこのオレだよ。でもなあ、さくら、オレはいつもこう思って帰って来るんだ。
今度帰ったら、今度帰ったらきっとみんなと仲良くらそうって、あんちゃんいつもそう思って…」表に出て行ってしまう。
さくら「お兄ちゃん…」
さくら、表に出て、
さくら「お兄ちゃーん」
いつまでも寅の背中を追っている。
ちなみに、あの絵は破いていなくてもこの前のようには7万円ですぐに売れないと思う。
なぜならば青観のサインがしていないからだ。絵を売る場合サインは大事。
C【播州龍野での再会とぼたんとの出会い】
青観の屋敷 玄関
さくらが青観の絵を売って手に入れた7万円を返しにわざわざ家までやって来て、奥さんに渡す。
青観はどうやら播州龍野に仕事で出かけているらしい。
こういうところが、さくらは実にきちんとしている。全額すぐに返すなんてなかなかできないよ。
人はお金にはギリギリでは弱いからね。
播州 龍野
しっとりとした昔ながらの情緒が残る町。その田舎道を旅を歩いている寅。なんと青観を乗せた車が偶然、やって来る。
相変わらず天文学的確立の偶然、ありえねえ〜(^^;)
寅「おじさん…あっ、おじさんなんて言っちゃいけなえんだ、あんた有名な人なんだってね、日本でも」
青観「へへ、その節は世話になったね」
寅を乗せた車は出発するが、なんと課長を置き忘れていた。
課長、置いてけぼりをくらって、後ろから寅のカバン持ちながら走って追いかけてくる。(><;)
桜井センリさんって、こういう役って実に似合う!いつもは柴又参道の麒麟堂の主人なんかやってる。
桜井さんのはまり役はこの課長役と第20作の神父さん役!
前の座席に寺尾聡さん、後ろの座席に宇野重吉さん。実現した親子共演。
龍野市役所
龍野市役所の市長室 応接間
どうやら青観は事前に龍野市から絵を描くことをお願いされているらしい。
市長「龍野の市長でございます、ご苦労様でございます。」
寅「あ、こりゃ市長さん、ご丁寧なご挨拶どうもうちの年寄りがお世話様になりまして」
おいおい、いつから青観の身内になったんだ。お陰で市長たちはすっかり誤解しました(^^;)
市長「…!い、いや、とんでもない」
寅「なにしろ頑固もんですからね。どちらに行きましてもご迷惑ばかりおかけいたしましてへへへ」適当〜 ┐(~ー~;)┌
梅玉旅館 立派な伝統のある店構え
宴会の準備が出来、芸者さんたちも集まっている。
最初に龍野市長が長々と演説をしている。
寅、あくび。青観も嫌がっている。青観は先に失礼するから寅に後は任せるって言ってしまう。
寅「ち、こんなとこ来るんじゃなかったなあ…オレ」
市長まだ長々としゃべっている。
超暇そうに料理をもて遊んでいる寅
寅、サトイモを畳に転がらせてしまう。
コロコロ… あちょ(( ̄ ̄0 ̄ ̄;))
芸者のぼたん気づいて笑っている。
寅も、ぼたんに気づいて「二カッ!」と照れ笑い。箸でサトイモを刺そうとするが、失敗して
コロコロ…(|||_|||)ガビ〜〜ン
座敷の真ん中まで転がる。寅、そ〜っと真ん中まで歩いてサトイモを追いかける。((((((((((; ̄ー ̄)_/…。。。。
市長、それ見て、プレッシャーを感じてる。
みんな、市長の演説聞かないでサトイモの行方をひたすら注目。( ;→_→)
追いかけまくりようやく箸で刺す寅。
ジィ――…
市長、寅に翻弄されて、タジタジ…、言葉が出てこない。(^^;)
照れながら戻り、笑いながらぼたんに見せる寅。
それでもまだ続く市長の演説(__;)
寅、ぼたんに三味線を弾く真似。あくび。眠くてヨダレを出す真似。
寅、遂に市長を見て怒って手でぺケ。
ぼたん声を出さずに大笑い。
宴会 三味線と太鼓と踊りで大いに盛り上がっている。
一段落して 深夜 ほとんどの客が帰って寅とぼたんと係長と課長とが残っている。
桜井センリさん扮する課長は昔先祖が足軽。係りの脇田が殿様だったらしい(^^;)
ぼたん「♪とけて流れりゃ」
寅「♪みーなおーなじ!パン!パカパパンパ」
二人で「♪ン、パン!パカパパンパ」
ぼたん「キャハハ」
寅、課長に歌をしつこく要求。
寅「ちょ、ちょっと、ちょっと歌って…なっちょ、ちょっと」
課長、遂に観念して。手拍子を自分でとりながら
課長「オホン…♪とぉけてなあがれりゃみぃぃなお〜〜なじぃ〜……?」朗々と歌う(^^;)
一瞬の空白ヽ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)ノ
ぼたん「プー!!キャハハハ、アハハハハ!ヒー!ハハハハ!」
寅もぼたんの方向いて笑っている。
係の脇田、ふき出して転げ廻る
脇田「プー!!カハッ!カハハ!ガハッ!ゴホン、ゴホホ…」
課長いい味出してるね〜(^^)明日からどうなることやら…。
梅玉旅館
自室で眠りこけている寅だが、青観が市内見物をさぼったので、寅にその役が回ってきてしまったのだ。
車は山崎街道や揖保川の向こうに見える鶏籠山の近くを通り走っている。
寅、無理やり車に乗せられっため、ほとんど眠っている状態(^^;)
課長「私どもとしてはですね、この鶏籠山をぜひ、青観先生に描いていただきたいと希望しておりますが、」
結局車が龍野公園に止まった時は、3人とも完全に居眠り(^^;)昨晩あれだけ騒げばそうなるよね。
蕎麦屋(揖保そうめん屋)
3人でそうめんを食べている。
おそらく龍野名産の『揖保そうめん』だ。
私の親も大阪なので揖保そうめんは、しょっちゅう食べた記憶がある。
課長「こんなとこで何でございますが、他でもございません。大先生に描いていただく絵のお礼ちゅうか、
お値段ちゅうか、どれくらいの予算を見とけばよろしいのでしょうか。財政部長もえろう心配しておりますさかいに」
寅は正直に落書きでさえ7万円だと言うと、ビックリしてしまう課長さん。
課長さん、追い討ちをかけるようだけど、寅が言った7万円は絵を中間業者に売る時の裏の値段。末端価格は簡単な
落書きでさえ20〜30万円ほどになるだろう。
課長「ご存知のように地方財政はきわめて困窮しておりまして…もちろん…市といたしましても…」
寅、ぼたんに気づいて
寅「おほい、ぼたん!」
ぼたん「いやー、寅さん!今ごはん?」
三味線で『ぼたんのテーマ』が流れる。
寅「うん、来い来い、こっち来て食え、こっち来て食え、え、おいおい」
ぼたん、課長に、「どーも」と笑顔
寅とぼたん、顔を見合わせて、同時にカハハハ!と大笑い。
昨日の宴会を思い出したんだろう。おそらく課長のあの歌(^^;)
ぼたん「もういや!アハハハハ!ねー、ハハハ!」と笑い転げている。
寅「ハハハ」とぼたんを見て笑い、脇田を見て笑う。
課長、下見てシュン…。
D【志乃さんと青観運命の再会。そして人生の二つの後悔】
龍野の古い家並みが続く道
青観が歩いている。自分の母校の小学校を見ている。
藩主脇坂公の屋敷がそのままカトリック教会になっている。
志乃の自宅
古い趣のある屋敷の中を覗きこんで、玄関に入っていく青観。
青観「ごめんください」
お手伝いさん(弟子)「はーい」
お手伝いさん玄関に座ってお辞儀
な、なんと彼女は、第7作のマドンナ、花子ちゃんを演じた榊原るみさん!!ノンクレジットで友情出演!!
青観「お志乃さん、ご在宅ですか」
お手伝いさん「はい」
青観「池ノ内と申しますが」
お手伝いさん「はい」
お手伝いさん「先生、池ノ内様とおっしゃる方がみえてますけど」。
志乃「はい」
この、戸惑いのない「はい」は、まるで青観が訪ねて来ることがうすうす予感できていたようだった。
この志乃さんは何十年も青観に会っていないにもかかわらず、青観の気持ちが見えているのかもしれない。
私は、この「はい」に青観と志乃さんの運命的な繋がりの深さを感じ、彼女の隠された情念をも感じてしまった。
しばらくして、志乃さんが現れる。
顔が華やいで、懐かしさを隠しきれない志乃。
志乃、上がり口に座る。
青観「わかりますか…」
志乃「和夫さんでしょう?」
青観「ええ」
青観の本名は「和夫」なんだ…。
志乃「お見えになっとることは聞いとりました。どうぞ」
青観「あ、じゃ…」
なるほど…、青観がなぜ今更故郷龍野にやって来たのか、本当の訳がわかった気がする。
やがて時間が経ち…
夕陽に照らされて美しく流れる揖保川と鶏籠山 赤とんぼのメロディがゆったりと流れる。
しっとりと落ち着いた龍野の夕暮れ時、芸者さんが古い町並の中をお座敷に急いでいく。
一方こちらは
梅玉旅館 座敷
寅「ハハハ!」
芸者たち、課長を囃したてている。宴会芸をいやがる課長。この課長には実は十八番の芸がある。
ぼたん「あかんあかん、課長さん踊らなあかん」
課長「ぼたん、笑うな今日は」と用意をしに隣の部屋へ。
おいおい、宴会芸なんだから、笑わせてなんぼだよ。課長さん ヽ(´〜`;
ぼたん、芸者さんたちが戻ってきたのに気づいて、
ぼたん「あ!待ってました色男!」
寅「よお、待ってました!」
拍手
三味線が入る。
課長「♪あたしぃの〜ラバさ〜ん〜両手の人差し指を頬に…
びょえ〜〜〜〜!!!\((( ̄( ̄( ̄▽ ̄;) ̄) ̄)))
♪酋長の娘ェー
寅もゲラゲラ笑っている。
♪色は黒いがァ…」
顔を前後にカクカク桜井センリさんていったい…ヽ((T▽T;)
脇田、後ろ振り向いて噴出す。
ぼたん「アハハハ!!」
寅「歌えっ!もう一回やれよ!歌おう歌おう」
一同「♪あたしのラバさん〜酋長の娘ェー色は黒いがァ…」みんな大笑い
志乃の自宅
あれから、随分長い時間が経っていた。
お茶の用意をしている志乃。
青観「僕の絵をたまには見ますか」
志乃「へえ、去年京都で個展をなさいました時、観に行きました」
お茶を出す。
青観「…そうですか」
青観「確かあの中にも、あなたを描いた絵があったはずだが…」
志乃「へえ、気がついておりました」下を向いて、少し頬を赤らめ照れる。
青観「……」
青観は、志乃さんを想いながら1枚の絵を描いたのだ。もう何十年も会っていなくても、その想いは絵に託されている。
これ以上の愛の告白はあるだろうか。その絵を見れば、絵描きがどのような思いで、その絵を描いたかが分かる。
志乃さんは、その絵を京都で見た時、きっと救われた思いがしたのではないだろうか。
どこからか、琴の音が聴こえてくる。
庭を眺めながら…
青観「…静かだな」
志乃「でもねえ、あんまり静かなんも、一人暮らしには寂しゅうて、フフ…」志乃さんは独りを通してきたんだ…
青観「お志乃さん」と志乃の方へ座りなおす。
志乃「へ?」
青観「申し訳ない…」と、頭を下げる。
志乃「どないして?」
青観「僕は、あなたの人生に責任がある」
志乃、少し微笑んで
志乃「和夫さん、昔とちっとも変わらしまへんな、その言い方」
青観「いや、しかし…僕は後悔してるんだ」
その言葉に対し、僅かに志乃の目の力がきつくなる。
志乃「…じゃあ、仮にですよ、あなたがもう一つの生き方をなすっとったら、
ちっとも後悔しなかったと言きれますか?」
青観「……」
志乃「私、このごろよく思うの、人生には後悔はつきものなんじゃなかしらって、
あーすりゃよかったなあ、という後悔と、
もう一つは…、…どうしてあんなことしてしまったんだろう…、という後悔…」
青観を静かに見つめる志乃
青観「……」
下を向いて、涙を潤ませている青観。
ふたり、だまって庭を見る。
志乃、もう一度青観をそっと見つめ、場をずらし、横でお茶の用意をする。
青観は黙って庭を見ている。
静かに流れていく時間
ふたりには、いったいどのような青春の物語があったのだろうか、青観の一元的な人生の考え方を瞬時に見抜き、
相対的に言い換えて彼の迷いを救った志乃。しかし、それは青観の人生の業をも同時に言い当ててしまう、諸刃の剣でもあった。
ある意味優しさと厳しさが同居した、彼女の人生を全て統合したエネルギーの強い言葉だった。彼女は結婚をせず、静かに故郷で
暮らしている…。彼女は自分の人生に腹をくくっている。背筋がピンと伸びているのだ。青観は彼女のその生きざまに、
心底救われた夜だったのかもしれない。しかし…、彼女はほんとうに自分の人生に迷いがないのだろうか…。
ともあれ、私は、第17作のこの志乃さんの言葉によって蘇生し、この十数年間を生き延びてきた気がする。
役者はその演技に生き様が出る。これは私の確信だが、そのことを見事に私の目の前に突きつけてくれたのが
第15作「相合い傘」の時の寅のアリアを語る渥美さんの姿かたちであり、そしてこの第17作「夕焼け小焼け」で人生の
二つの後悔を語る岡田さんのあのお姿だ。
役者とは、この世界の成り立ちをその姿そのもので語ることが出来る芸術家なのだといまさらながらに思い知らされた。
E【青観を見送る志乃さんの後姿】
翌朝、梅玉旅館前
課長「すんません急いでください、あまり時間がないさかいに」
ぼたん「寅さぁーーぁ〜〜〜あん!!」走ってお土産を渡しに来るくるぼたん。凄い服(^^;)
三味線 ぺぺぺぺぺぺ、ペポペポペポ
車に乗った寅。
寅、ぼたんを眩しく見つめ…。
寅「おう、ぼたん」
ぼたん「うん!?」
寅「いずれそのうち所帯持とうな」よく言うよ(^^;)
ぼたん「ぷふふっ!ほんま?」
寅「おお」
ぼたん「嘘でも嬉しいわァ!」
寅「そうかい、エヘヘヘ…」
ぼたん「フフ!ウフフフフ、あてにせんと待っとっからねー」と、豪快に車を追いかけ両手を降り続ける。
寅「あ!あばよ―ッ!」
車が道を曲がる。
寅「なかなかキップのいい子だねえ、え?課長さん」
課長「はいー、あれが龍野芸者の代表です」課長さんいいこと言うねえ(^^)
寅「はあ〜なるほどねえ」
車はスピードを出して走っていく。
青観、前方を見て顔色が変わる。
志乃さんが見送りに道に出ている。
志乃さんは車が通り過ぎる瞬間に後部座席の青観を見る。
志乃さんを見つめたまま小さく頭をさげる。
なんとも穏やかないい顔。
志乃さんはひたすら青観を見つめながら頭を下げる。
見る見る志乃の姿が遠ざかっていく。
もう見えなくなるその刹那 志乃さんは、手をそっと上げ、小さくふる。
まるで青春の日の少女のように…
スピードを出して走る車の窓から小さくなっていく志乃さんの姿をいつまでも見つめ続ける青観。
遠く離れて行く車をいつまでも背伸びをして見送る志乃さん。
志乃さんはいったい何時間あの場所で青観を待っていたのであろうか…。
こんなひそやかで美しく昇華された愛の交流のシーンはこのシリーズで、この場面を置いて他にない。
昨晩、あんなに気丈夫に青観に自分の人生観を語った志乃さん。
しかし、それでも、もう一目、もう一目でいいから彼のあの姿を、彼のあの表情を、あの目を、
胸に焼き付けたかったのであろう。もう2度と会うことはない二人なのかもしれない。
青春の哀しい思い出が長い歳月を経た後にほんの一瞬彼女の前に蘇り、初夏の風とともに過ぎ去っていった。
志乃さんにとって、昨日と今朝の出来事は一生の出来事だったのかもしれない。
彼女の人生もいつの日か終わり、青観の人生も終わりを告げる。
それでも彼が渾身の想いで彼女を描いた絵は残る。
青春の想いの全てを込めて描いたその絵は何百年も残っていくのだ。
このことにこのふたりの救いがあると思いたい。
そのことは、人生の全てを絵に賭けてしまった孤独な青観の生きた確かな証であり、
そこに絵を描く業を持った人間としての冥利がある。
F【ぼたんのとらや訪問と賑やかな夜】
柴又 題経寺
龍野から帰った寅は、龍野の栄光の日々を回想してはぼんやり過ごしているようだった。
とらやのみんなはそんな寅の扱いに戸惑っているようだった。
さくら「一日中ボンン〜ヤリしてるんです。帰ってきて2、3日は旅の疲れでも
出たんだろうって大して気にもしていなかったんですけど、
来る日もくる日もそうなんですよォ」グチグチグチ(^^;)
御前様「いかん、いかん」
御前様十八番のセリフは「いかん」と「こまった〜」
さくら「あたしが心配しているのはひょっとしたらその芸者さんの誰かを好きになったんじゃないかって…」
御前様「芸者かぁ…いかん」
とらや 茶の間
おばちゃん「寅ちゃん、寅ちゃん、ご飯だよ」
おいちゃん「へえ、へ、また龍野の話聞かされんのか」
社長「よっぽどいい思いしたんだろうな龍野じゃ …あーできたできた」とカップめんを食う。
龍野との対比に見事に一役買っているタコ社長でした(^^;)
寅「あ、あーあ、ん…」
おばちゃん「とらちゃん、おからが美味しく出来たからね、たくさん食べておくれ」
寅「へえ、え、おからってのはウサギの餌じゃなかったの?」(ノ_< ;)うわっ、寅、凄いこと言うね、そりゃないよ。
おばちゃん「まあ、ひどい!あんたが好きだと思って一生懸命」(▼ ▼メ)
寅はおからが好きだということを発見!
寅「へへへへ…ごめん、ごめん!あー知らない間に贅沢が身に着いちゃって、そうここは龍野じゃなかったっけ」
寅、ちょっと頬杖を付いて…遠くを見つめて思い出すように、
寅「あーあ…、しかし龍野じゃなあ…」
寅のアリア
三味線 ペンペンペン…と鳴り始める。
寅「夕飯前にひとっぷろ浴びる.糊のきいた浴衣姿で座敷に戻る。
食膳には瀬戸内海の新鮮な魚の生き作りだよ。ねえ。小鉢に向こう付け、蓋のものに椀のもの。
このへんに茶碗蒸が出てたり出なかったり。酒は灘の生一本だよ。
品のいい中年の女性が、『先生、今晩どないしはります?』
『うーんん…、もうバカ騒ぎは飽きたねえ…2、3人呼んでもらおうか』
『はい、承知しました。』パンパン…(手を打つ)
これからどうする?社長」
社長「知らねえよ…」冷たくカップめんをズズーッ。この対比なあ…(^^;)
寅「バカ野郎!ちゃんと人の言うこと聞けよおまえ、こっちは一生懸命話てんのに。いいか
じゃあ、もういっぺん話してやらァ。」聞きたくないって ヾ(^^;)
姐さんがポンポーンと手を打つ。
襖がスッと開いて年のころなら二十七、八。綺麗えぇーな芸者。
三つ指を突いて、ちょっとしゃがれっ声でね」
ぼたん「こんにちは」と、なんと店先でぼたんの声
寅「よお、ぼたん、お前なんかあったね。めっぽう綺麗…??」
三味線 ペンペンペンペンペンペンペンペン!!!
天井をキョロキョロ見渡す。そんなとこにいないよ(^^;)
これまたもの凄い天文学的偶然(^^;)
寅「いま、誰かがなんか言ったか?」
ぼたん「寅さん!!」
とらや御一同さん、店に来たぼたんを見る。
寅「……!!はあっ!」
寅「はああっ!」
寅「あははは!はッ!!ぼたァ〜ん!」
と、店の方へ走っていく寅。
スクリーン左から右へ走り抜ける寅が面白い。
おいちゃんたちポカンと店の方を見ている。
三味線軽快に ぼたんのテーマ
ぼたん「あーよかった!」
寅「うん!」とぼたんの肩をしっかり掴む。((゜O゜;)オオ!
ぼたん「せっかく来ておらへんかったらどないしようかと思ってたんよ」
電話でアポ取れよなアポ。事前によ(^^;)
寅「オラァちゃんといるよ、おまえ、へへへ…。そうか、 ところでなんだ今日は」
ぼたん「あ、ご挨拶ややわあ、私と所帯持つって約束したやないの」
寅「あ!、そうか、オレそのこところっと忘れてたよ」頭カキカキ (;⌒▽⌒)ゞ
ぼたん「他に好きな人でも出来たんやろう!この薄情モン!!」
ぼたんも堅気の店でよく言うよほんと。みんな本気にするぞ(^^;)
寅の袖をツネるぼたん
寅「いていていていて…痛いなぁ〜もお、ヘヘヘ」
寅は、リリーともよくこの手の駆け引きをする。玄人には通用しても堅気にはちょっとドギマギする会話。
社長「てえへんだ!」
完全に真に受けて工場へ知らせに行く。こりゃ社長忙しくなるぞ〜(−−;)
ビビッてまごまごしているおいちゃん、おばちゃんたちに向かって
寅「おい、なにそんな所でぼけっと見てんだよ!え?こっちきてあいさつしねえかい、えっ?
オレが深く言い交わした仲のぼたんだよ」よおおく言うよ〜(^^;)
ぼたん「あ、フフフ。おじゃまします、ぼたんです、どうぞよろしゅう」
おいちゃん「こちらこそ」ペコドギドキ(^^;)
おばちゃん「あ、は、はじめまして」ペコドギマギ(^^;)
寅「なにをフガフガフガフガ言ってんだよ、まったくぅ」
さくら、満男と一緒に帰ってくる。
寅「おっ、さくら、帰ってきたか、いつかオレ話したろ、ぼたんだよ」
さくら「え〜〜!?」
ぼたん「いややわあ、寅さん、」と寅を手で押して
ぼたん「独りもんなんてうそばっかし言うて、こんなかわいらしい奥さんがいてはるやないの」
見りゃ分かるだろうに、普通間違わんってヾ(^^;
さくら、驚いてお口ポカン (゜〇゜;)
博や工員たちドドッと店にやってきて、
博「兄さん…まさか…冗談じゃないでしょうね」博やの〜〜〜(^^;)
満男、ニコニコ笑ってる。
寅「何が?」
博「この方と所帯を持つっていうこと」あちゃ(ノ_< ;)
ぼたん「嘘嘘!そんなこと言うたら奥さんに申し訳ございません」空気読めよ、ぼたんヾ(^^;)
寅「奥さんじゃないって!!こいつはね、こいつの…」
さくら小声でぼたんに
さくら「あの、私の兄なんです…」
工員たち入ってきて「寅さん!!おめでとうございます!早く赤ちゃん産んでください!」
寅、切れて
寅「うるせえ!!テメエらとっとと工場行って働け職工!!」
出た〜〜〜!!決めセリフ\(( ̄▽ ̄;))/
それにしても、ぼたんはなぜ訪ねてきたのか?こりゃ、なんだかひと騒動ありそうだ。
とらや 茶の間
一同大笑い
ぼたん「ごめんなさい、私があかんの、変な冗談言うたりして」
寅「いや、謝ることなんかないんだよォ〜、この洒落の通じない連中とさ、明け暮れ一緒にいるオレの気苦労も分かるだろう」
さくら「洒落だなんて〜」くそまじめ(^^;)
博、笑いながらも
博「兄さん、言っていい冗談と、悪い冗談があるんですよ」超くそまじめ(^^;)
さくら「ねえ」
ぼたん、下を向いて笑っている。
寅「博、おまえもクソ真面目な顔してそういうこと言うんじゃないよォ、何が楽しくて生きてんだい、えー、」
ぼたん、ニコニコ
寅「この二人は夫婦だからね、夜なんかどんな話してんの?退屈じゃないかおまえ」
ぼたん「悪いわ、こんなえー旦那さんつかまえて」と寅を押す。
ぼたん「ね、さくらさん、お幸せやろ」
さくら、笑いながら博を見る。
寅「何だおまえ、こんな男好きなの?」と、ぼたんに。
博「いやあ〜…」とさくらの顔色を伺って苦笑い(^^;)
ぼたん「ステキやわあ、誠実で思いやりがあって」
博「そ、そんなことありませんよ…」照れ照れ(^^;)
寅、目を細めて、しげしげと博を眺めている。(^^;)
博、照れ続けている。
さくら、クスクス笑っている。
ぼたん「さ、おひとついかが?」と、博に酒をお酌するぼたん。
博「はあ…」
と言いながらチラッとさくらを見る(^^;)
寅、博を見て、ニヤついて
寅「赤くなってる…」
博、一層緊張する。
一同「ハハハ」
ぼたん「ウチの妹にもこないな人と一緒にさせてあげたいわァー」
さくら、博をからかうような目で見ながら笑っている。
おいちゃん「妹さんがいらっしゃるんですかー」とぼたんに酒を注ぐ。
ぼたん「へえ、大学に通ってる弟と3人で暮らしてます」
さくら「ご両親は?」
ぼたん「私が中学の時死にましてん」とお酒を飲む。
一同ハッとする。
ぼたん「それで、芸者になってしもたん、フフフ」
一同、頷く
ぼたん、博を見ながら
ぼたん「そやなかったら、私かて、こないな真面目な人と今ごろは幸せになっとーわよォー」とそのあと寅を見る。
↓ さくらの表情に注目!
寅「おまえだったら3日で飽きちゃうよ。こりゃ、退屈な男だからねえ〜」
博「そんなことありませんよ」
一同 シ〜〜〜ン
寅「!…」寅、唖然…(- -;)
ぼたん「…」
博、また気を使ってさくらをチラッと見てしまう。
さくら、博の発言に敏感に反応して
さくら「あら、それどういう意味〜!?」と笑う。
48作中さくらが、博に、冗談ぽく、ちょっとだけやきもちを焼くシーンがここ。
もっとも第14作の時も綺麗な看護婦さんに会えなくなると、寂しがっていた博の背中を、手でバシッと叩く場面はあった。
一同 大爆笑
博、タジタジ
博「そう言う意味じゃないんですよ」
社長、満男と一緒にやって来て、
社長「ぼたんちゃんいる?」
寅「何だ?タコ」
社長「いや〜今ね、工員たちと宴会やってんだけどさ、え、ちょっと、顔出してくんねえかな」
で、気のいいぼたんはokを出し、寅とぼたんで工場の寮にワイワイ遊びに行く。
この日は何の問題も無い賑やかな夜だったのだが…。
G【ぼたんの貸した200万円の顛末】
翌日 上野二丁目界隈
ぼたんが鬼頭の店を探してあちこち歓楽街を歩いてる
寅のバイ
なんと最初で最後の柴又駅前でのバイ!近すぎ〜!
おもちゃのバイ。
駅前の『コサカ・フルーツ』が映った!
一方、上野の喫茶店でのぼたん。
ぼたん、疲れた表情で、座ってメニューを
虚ろに眺めてタバコを吸っている。タバコを吸うんだねぼたんは。
タバコを吸うシーンがあるマドンナは、リリー、光枝さん、風子、泉ちゃんのママである礼子さん、そしてこのぼたん。
夕闇迫る柴又 帝釈天参道
高木屋の前を疲れた表情でぼたんが通っていく。
とらや 茶の間
ぼたんが帰ってきたようである。疲れた表情のぼたんに寅が尋ねる。
寅「なんだ、あっちゃこっちゃってどこ行ってたの?」
ぼたん「え、…お金のこと」
寅「なーんだ、んな、困ってんだったら早く言えよ」と腹巻からサイフを出す。
露骨やの〜。(^^;)
寅「いくらだ?」と指を舌で濡らして数えようとする
ぼたん「二百万円…」
一同シーン
寅「????」
寅、首をかしげてサイフの中をもう一度確認
わかんないだねえ寅には、二百万円という金額のイメージが…(^^;)
第4作で取ったワゴンタイガーの万馬券100万円を思い出せよ寅。あの2倍だよ(^^)
ちょっと考えて、下を向いてしまう。
さくら「そんなに借りてどうするの?」
ぼたん「借りるんやないの、人に貸したん…」
ぴょえ〜〜〜〜!!!( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;)
社長「ほー」とつい声を出してしまう。社長は銭金の事は異常に敏感だもんなあ(^^;)
一同、ぼたんをまじまじと見てしまう。
ぼたん「2年程前にな、ええ儲け話がある言うて、お客さんに言われて、つい、貸してしもたら、それっきりになってしもて…」
社長、すぐにわかった様子で、下を向く。
ぼたんも最初、甘いお金儲け話に判断力が鈍ってしまってちょっと軽率だったんだね。このへんが、ちょっと哀しいところ。
その後、鬼頭に電話するためとらやの電話を借りるぼたん。
茶の間の方で、小声で
寅「おい、さくら、おまえ、二百万円って見たことあるか?」
さくら、苦笑いしながら
さくら「あるわけないでしょ」
寅「二百万円って言うとさ、下から積んだら富士山の高さくらいまでいっちゃうのかな、高さ、」
だからワゴンタイガーの時100万円が自分の腹巻の札入れに入っていただろが。思い出せよ。
博「1万円札200枚だから、こんなもんでしょ…」指で数センチ(^^;)
寅「こんなもん?お前見たことあんの?」
そういう問題か?
博「ありませんけど」
寅「ないのに何で分かるんだよお前」子供かあんたは(^^;)
と博を小突く。
さくら「シーッ」
鬼頭に食い下がるように話しをしているぼたんだったが…、遂に気持ちが切れてしまう。
ぼたん「嘘や!嘘!あんた嘘言うて私を騙して!
一文無しが、なんでゴルフなんかできるんですか!!もしもし…もしもし!!」
重苦しい空気が流れる。
一同、下を向いて黙っている
静かに流れるぼたんのテーマ
電話を切ったぼたん、
無理に笑い顔をしてテーブルにつく。
ぼたん「ごめんなさい、おっきい声だしてしもて」
さくら「悪い人なの?」さくら、そのまんまな発言(^^;)。
ぼたん「フフ…私みたいな目におうた人たくさんおるんや、フ…」
さくら、頷く
ぼたん「幽霊会社作って、大勢の人からお金集めて、その会社倒産させて…、フフ、ドロンしたわけ。
今日行ったとこかて上野の大きいキャバレーやし、その他にもバーとか中華料理店持ってて、
そいでいて会社が潰れたから一文無しや言うの。フフ…そんなあほな話ってある!? 」
寅「……」
みんな、どう言っていいか分からなくて下を向くばかり
寅、ずっと恐い顔で下を向いている。
ぼたん「はあー、ごめんなさい!お食事んとこ…。は、寅さん!気分変えてパッと飲もか!」と無理やり笑う。
寅「うん、」と小さく頷く
ぼたん「フフ、私ちょっと着替えてくるわ」と立ち上がって2階へ上がって行く。
さくら、寅の顔を見て、どうしていいか分からなくて沈んでいる。
おばちゃん「世の中には酷い男がいるもんだねえ」
おいちゃん「わけありだと思ってたよ…」
社長「今、思い出したんだけどね、オレの友達にね、そういうのにひっかかったヤツがいるよ」
寅、ドン!と机を叩いて、立ち上がり、
寅「オレ行ってくる!」
さくら「どこへ?…」
寅「決まってるじゃねえか、そいつのとこよ!」
博「ちょ、ちょっと待ってください」
と、止めて
博「行ってどうするんですか!?」
寅「簡単だよ!横っ面ふたつみっつぶっ飛ばしてやら!チクショウ」
社長「そりゃいかん、そんなことしちゃいかん」
博「いいですか、いいですか、敵はそうとうしたたかですよ。引っ叩いたりしたら、相手の思うツボですよ」
寅「じゃ!警察へ突き出そうじゃねえか!え!出るとこ出て、法の裁きで裁いてもらうんだよ!!」
さくら「お兄ちゃん…」
寅「そうすりゃ、200万円。ぼたんのとこポーンと帰ってくらあ!」
おいちゃんもいきり立って、
おいちゃん「そ、そ、警察がいい!警察!」
おばちゃん「警察に電話しよう!110番!」
博「ちょっと待ってくださいよ〜!!…そう簡単にはいかないんですよ」と寅に静かに話す。
寅「どうして簡単にいかねえんだ!!?」
さくら「…」
寅「いいかあ!若い芸者が血の滲むような思いで騙し取りやがって、てめえはでかい家に住んでだ、
ゴルフかなんかやりやがって!それでも金は返さない、こんな筋が通らない話ってあるか!
法律ってもんがあるだろう法律ってもんが!!」
社長「いや、その法律ってヤツがクセモンなんでね、寅さんは素人で何にもわかんないだろうけどさ」
おいちゃん「な、寅、お前の気持ちはよ〜く分かるけどさ、しかしなあ、こりゃあ、銭金のことだ、な、
ここは一つそう言う事によくなれてる誰かに頼んで…そうだ、社長がいい、社長に頼もう、さくら」
さくら「ああ、そうねえ、お兄ちゃん、そうして、それが一番いいわ」
博「事は複雑だからなあ兄さんのように純粋で気持ちがまっすぐな人にはちょっと…」
寅「分かってるよ!早い話がバカで手が早いって言いてえんだろ!」
博「いえいえいえ、そんな…」図星 ヾ(^^;)
おいちゃんも、必死で手で否定のポーズ(^^;)
社長「寅さん、できるだけやってみるから、なっ」偉いね社長、すぐさま引き受けるなんて。
さくら「お願いします」
おいちゃん「それでな、社長じゃどうにもならなくなった時に、いよいよお前が出て行くと、なっ寅、これでどうだい?」
おいちゃんも気使うね(^^;)
寅「よしっ社長、お前、明日の晩方までにな、200万円耳そろえてもってこいよ!
もし持ってこなかったら、タダじゃすまさねえねえぞ!」
社長「わかったよ…」社長、凄い役仰せつかったねえ。こりゃたいへんだぞ ヾ(- -;)
ぼたんが下りて来て、心機一転気分を変えて、みんなで盛り上がっている。
社長、工場へ戻りながら
社長「えらい役引き受けちゃったなあこりゃあ」
分かる分かる、社長。おいちゃんや寅は理解できないかもしれないけど
がんばればできることと、できないことがこの世にはあるんだよね…。
翌日 赤坂
坂の上の住宅街
ぼたんと社長の前を外車が横切る。『新坂』を上っていくぼたんと社長。
高級マンション前
社長「は〜、本当にこんなところに住んでるのかい?」
しかし、ぼたんが『藤村』と名前を名乗ると、マンションの受付で面会を断られてしまう。敵は相当したたか。
江戸川土手
ぼたんのことが気がかりで焦っている寅
源ちゃん「兄貴〜!おみくじ引いてきましたで」
寅「よし!」
寅「凶!?なんだいこりゃあ!金運なし貸した金は返らず…バカヤロウ!よりによってどうしてこんなもん引いてくんだよ」
あちゃ〜〜〜!!! (((><;)
源ちゃん「わい正直に引いてきたんやけど」んだんだ。不精だね、寅も。自分で引けよなおみくじくらい(^^;)
寅「だから手前は気がきかねえってんだよ!お前の頭にこれ、結んでやるからなァこの野郎!」と髪の毛におみくじをくくりつける。
松の枝か源ちゃんは ヾ(-_-;)
源ちゃん「あっいたた!イッテー」
蛾次郎さん、このあと題経寺でさらに水難の試練が待ってます…(^^;)
とらやのみんなもぼたんのことが気になってしょうがない様子。
蛾次郎さん…(TT)
赤坂 繁華街
中華レストラン「天津飯店」
へとへとになって歩きつかれた二人の前にようやく現れる鬼頭。
鬼頭「で、ご用件は?」何がご用件はだ!(▼▼メ)
ぼたん「・・・!!!」
社長が持っている封筒から「債券」を取り出し、鬼頭の前に突きつける。
ぼたん「ちょっと…これ返してください!」
鬼頭「この会社つぶれたんだよ、だから私は一文無しだ、うそじゃない、調べてもらっていいよ」
ぼたん「そうかてあんた!こんな大きい店持って、大きいマンションにすんでんやないのッ!」
鬼頭「店は弟のだし、家は家内の物だよ、私の物なんかなんにもない。まあ会社がつぶれてあんたには
気の毒な事をしたがねえ。私だって被害者なんだよ。電話でも言ったようにね、あんたが私を
信用して金を出した。…それが間違いだとしか言いようがないねえ…」(▼▼メ)このヤロよくもしゃあしゃあと!!
ぼたん「ー!!くっ」と口を鬼頭を睨み、口をかみしめる。鬼頭、ぼたんを冷ややかに見ている。
ライターでタバコに火を点けながら、
鬼頭「ふー…、社長さん、どうでしょうなあ、事情はそういうことですがねえ」
社長「私も経営者の端くれですから大体事情は飲み込めます。
しかしねえ、ぼたんさんが二百万の金をどんな思いをして貯めたか。それをなくしたことがどんなにつらい事か。
そこんところを一つ十分考えてやってくれませんか。あなたには財産はない。百歩譲ってそれは認めましょう!
しかし、貴方の奥さんはかなりの財産をお持ちでしょう?百万や二百万のお金を融通する事が今のあなたには
全く出来ないとはどーしても思えないないんです。」
鬼頭「女房や弟がいくら財産を持とうとあなた方には関係ないでしょう」
▼▼メ)このヤロどこまでシラを切るんだ!!
ぼたん「…私、裁判所に訴えたる!」
鬼頭「あーどうぞどうぞ」
ぼたん「…!!」
鬼頭「私もねこんな所でごちゃごちゃ話されるよりそのほうがよっぽどいいんだ」(▼▼メ)この〜〜!!
客や従業員がこちらを向く。
ぼたん「…」あまりの悔しさに呆然と鬼頭を見ているぼたん。
とらや
待ちきれなくてイライラしている寅。待つように諭すさくら。
寅「ったくタコの野郎どこウロウロしてやがんだ、この野郎」
客「お団子おいくら」 谷よしのさん登場!
寅「二百万円!」世界一高い団子だよそれじゃ(^^;)
客「……!????」
客「おいくらですか?」
おばちゃん「五百万円です」Σ(|||▽||| )がぴょ〜ん!!
寅が出した団子一皿世界一の記録(二百万円)を、たった5秒で塗り替えたおばちゃん(^^;)最高!
さくら「!!!」 ( ̄◇ ̄;)と目を白黒
おばちゃん「あ!いえッ!あの、五百円です。」
谷よしのさん、団子一皿で破産するとこだったね。暴力バー、ならぬ暴力団子屋だと思ったんでは??(^^)
題経寺
山門の下を歩いてる寅。
寅が門を抜けたとたんに御前様が撒いている水がかかってくる!
寅「御前様だって勘弁できねえよ、二百万円だ、弁償二百万円」それじゃチンピラのカツアゲだよ寅 ヾ(-_-;)
御前様「え?」
寅「二百万円」もう何が何でも二百万円(^^;)
源ちゃん、参道から走ってきて
源ちゃん「兄貴ー!!」と参道を走ってくる。
寅、はっと見る。
源ちゃん「タコと芸者帰ってきたで」ビニールのジュースを飲んでいる。他に言いようないのか源ちゃん(^^;)
寅「!!」
寅「どうだった?」
源ちゃん「パーとちゃうか、タコと芸者泣いてたさかい」
寅、顔色が変わり
寅「どけっ!」と走っていく。
源ちゃんよろける。
源ちゃん「ああ!」
といいながら思いっきり御前様のホースの水にかかる。
御前様、ホースをどけようとしない!
またもや蛾次郎さんって…(TT)
NGを出すと蛾次郎さんが何度もぬれて可哀想なので、笠さん、必死で狙いをつけてました(^^)
H【寅の怒りとぼたんの号泣】
とらや
寅が走って帰ってくる。
社長「寅さん!」
そのまま土間から茶の間に押しかける
社長「申し訳ない!!この通りだ!」頭を下げる。
寅「だから言ったじゃないかよッ!この野郎!どうせこういうことになると思ったんだい!畜生!」
と、社長に掴みかかる寅。さくら、引き離して
さくら「お兄ちゃん!やめなさい!社長さんだって一生懸命やってくれたんだから」
社長「寅さん、殴れよ、俺を殴って気がすむなら殴れよ」
寅「よおし、てめえ殴ってやろうじゃねえか!」
ぼたん「ちょっと寅さんお願い!ねっ!やめて、ねっ!寅さんお願い!」と必死で止める。
寅、さくらに向かって
寅「大体お前がな!あんちゃんのこと、行くななんて止めるからこういう事になるんだい!なんでこんな役立たずやったんだ」
さくら「じゃあ、お兄ちゃん、自分が行ったら何とかなったって言うの?
お兄ちゃん、本気で社長さんより役の立つ人間と思ってるの?」
さくらしか言えない言葉だねえ……。社長は親身になって、一生懸命やってくれてたぞ寅
全部法律の網の目をくぐってやっていることなので裁判でもボタンは勝てない可能性が高いことを説明。
社長「法律じゃそういうことになってるんだよ」
ぼたん「そやから、出るところに出よの一点張りよ。裁判に持ち込んでも絶対負けんこと知っとんのね」
社長「知ってる 知ってる」
さくら「だってあなたが一生懸命ためたお金じゃないの」 さくら…悔しいけどそういう次元じゃないんだよ(ーー;)
ぼたん、首を振る。
ぼたん「そんなこと通用する相手やないの。 …鬼や」
おばちゃん「まあ……なんてひどい」
おいちゃん「そいつだけじゃねえ、そう言うのはいっぱいいるんだよ。頭のいいやつはな、
そうやって、貧乏人を足蹴にやって、法律の網の目をくぐって手前だけ上手い汁吸ってやがんだ!なあ社長」
ほんとほんと(−−)
思いつめた目で何かを考えている寅
社長「俺もそれを言いてえんだよ」
寅、スクッと立つ。
おいちゃん「どうした?」
寅、階段を駆け上がって行く。
さくら「どうしたのお兄ちゃん」
寅、下りてきて
寅「いいか、さくら、明日の朝、車寅次郎はあんたの兄さんかと訪ねるかも知れねえ。そしたらおまえは、
確かにそういう兄はおりましたが8年前にきっぱり縁を切りました。今は兄でもなけりゃ妹でもありません。
そう言うんだぞ。そうしねえと、満男が犯罪人の甥になっちまうからなあ…いいな!」
さくら「お兄ちゃん、何のことだかさっぱりわかんないわ」
寅「おいちゃん、おばちゃん、長い間世話になったなあ。オレは行くぜ」
おいちゃん「ど、どこへ行くんだ!?」
寅「決まってるじゃないか!ぼたんをひどい目にあわした男の所だ!ヤロウ、二度と表歩けねえようにしてやる!
裁判所が向こうの肩持つんだったら、オレが代わりにやっつけてやる!
言っていることとやろうとしていることは、社会的にはメチャクチャかもしれないが、私には筋が通っていると思えた。
最後はぼたんの気持ちにどう答えてやるかだ。どう人の気持ちに寄り添えるかだ。
結果や冷静な分析の問題でなく、人としての気持ちの問題だ。そこに最後人は救われるのだ。
寅、ふと、優しい顔になってぼたんを見つめ
寅「ぼたん、きっと仇はとってやるからな。あばよ!」と出て行く。
さくら「お兄ちゃん」
おばちゃん「どうする!?ねえ」
さくら「だって、行く先も聞かないでどこ行くつもりだろう」あちゃ(><;)
おばちゃん「あら、本当だ、バカだねえ」 ほんとに…┐(-。ー;)┌
帝釈天参道
寅スッタスッタと行くが、途中で行く先を聞かなかった事に気がつき、ツッと止まる。
寅、『しまった』という表情でとらやの方を振り返る。
とらや
おいちゃん「ほっとけよ、また戻ってくるさ。…」
おいちゃん、ぼたんを見てはっとする。
泣いているぼたん
さくらも気がつく。
さくら「ごめんなさいね、騒々しくって」
ぼたん、首を振る。
おいちゃん「バカな男でねえ…」
ぼたん、もう一度首を強く振る。
ぼたんのテーマが静かにゆっくりと流れる
ぼたん「さくらさん」
さくら「ん…」
ぼたん「私…幸せや…。とっても幸せ…。
もう二百万円なんかいらん…。はう…うう…ううう
私……、生まれてはじめてや…、男の人のあんな気持ち知ったん。
さくらさん、…
うっ……
…私、嬉しい!
うっ、ううう…ぐううう…」
寅の気持ちに打たれ泣きじゃくるぼたん。
ぼたんの号泣に圧倒され、どうしていいかわからないさくら。そして、また深く考え込んでしまう。
おいちゃんもまた、泣きじゃくるぼたんを呆然と見ながら
どうすることもできず辛い気持ちに沈んでいくのだった…。
号泣するぼたんのまわりで、なすすべもなくただただ考え込むさくらたち。
一緒に涙を流す社長。
人は結局、最後の最後はお金ではなく、人の心に救われる。ぼたんは二百万円を失ったが、社長の深い情けを感じ、
寅の強い気持ちに打たれ、人の世の機微の深さを垣間見る事が出来たのだろう。
こんなちっぽけな自分のために体を張って闘おうとしてくれる男がここにいる。そのことにぼたんは心底救われ、
至福の涙を流すのだった。
ぼたんの騙されたお金は戻らないし、悪者も法的に処罰されないことは見ていてとても悔しく辛いが、
一緒に、汗を流してくれた社長、共に悩み考えてくれたとらやの人々、そしてなによりも、一歩踏み込んで、体を張って闘おうと
してくれた寅の心によってぼたんの辛く悔しい心は感動へと昇華されていったのだろう。
この一連の場面は無力な庶民の姿を赤裸々に浮き彫りにすると同時に、それでもいたわりあい、寄り添い、励ましあって
生きていく人の世の温もりと気高さを見事に謳いあげている出色の名場面だ。
私はこのぼたんの涙を忘れない。
帝釈天参道
寅を追いかけ走って参道を追いかけるさくら。
さくら「源ちゃん、お兄ちゃん見なかった?」
源ちゃん「今のバス乗って行きました」
さくら「どこへ?」
源ちゃん「さあ…」
さくら「バカねえ、どこへ行く気なんだろう?」
I【青観への依頼と寅の再びの旅立ち】
池内青観邸
青観玄関に出てきて
青観「いやあ、ハハッしばらくだなあ、上がれよ」
寅「おりゃあ、ここでいいや」
青観「ええ」
寅「あのー先生にちょっと頼みがあってきたんだけども聞いてくれるかなあ」
青観「何だい?」
寅「絵を描いてくんねえかなあ絵!それもあの、こないだんみたいんじゃなくてねえ、こういう、
でっかい紙に、あのいや、色使ったりしたりしてさ、あの丁寧に描いたやつを。
あ、あ…つうことはさあ、こないだ龍野行った時に、あの、ぼたんって芸者がいたろ?先生忘れちゃったかなあ、
こいつがね、大事に貯めた金をさ、悪い奴に騙し取られちゃったんだよお
困っちゃってなあ、なんとか助けてやろうと思ったけどさあ、俺には何んにもしてやれねえもんなあ
青観、頷いている
寅「それでね、先生に一発絵を描いてもらって、これ叩き売っちゃう!」
青観「うん?」
寅「この前チョロチョロっと描いたやつだって7万円だからな、こんなでっかい絵でもってよお丁寧に
描くんだから、これ高く売れるよ、オレそれぼたんに持たして帰してやりてえんだ、な、
先生チョロチョロっと描いてきてくれ、なっ、オレここでちょっと待ってるから」
青観「いやあ」
寅「ここで待ってる。」
青観「そいつは出来ないよ、気の毒だが」
寅「そんな事言うなよ先生、なっ?」
青観「僕が絵を描くという事は、こりゃね、こりゃ僕の仕事なんだ、金を稼ぐためのもんじゃない、うん」
寅「そんな固いこと言わないでさあ」
青観「金が要るんだったらはっきり言いなさい、少しなら何とかするよ」
寅「いや、そう言う分けにはいかねえよ」
青観「うん?」
寅「だって俺はゆすりたかりじゃねえんだからさ。現金で受け取るっててわけには行かないでしょう、ねえ頼むよ、ねっ、
チョロチョロっと描いてよ、チョロチョロっとさ」
青観「う〜ん、君ねえ、絵描きが絵を描くってことは真剣勝負なんだよ、チョロチョロっとかけるか」
寅「何言ってるんだい家きた時チョロチョロっと描いたじゃないか!」
青観「いや、あれは…」
寅「右から左に七万円だよいい商売だなあと思ったよ、絵を描いて金稼いで何が悪いんだ?
高い金でもってうっぱらうからこういうどでかい屋敷に住んでんだろう!?」
青観「うっぱらうとは何だ?僕はいっぺんだって今まで自分の絵をうっぱらったことはないよ」結果的にはあるだろが(−−)
青観「いいか、え?僕の絵が売れるという事は…」
寅「描かないのか!!」
青観「…断る」
寅「結構だよ!結構けだらけ猫灰だらけだい!チキショウ!これだけ言っておくけどな初めて上野の焼き鳥屋で
会った時にこんな大金持ちだとは思わなかったよ!
ヘン!いずれ身寄り便りのねえ宿無しの爺さんだと思って可哀想だと思って
一晩泊めてやろうと思ってオレのうちに連れて行ったんじゃなか!
もしあのままずっといてえって言うんだったら、多少迷惑を辛抱しても1ヶ月でも2ヶ月でも泊めてやってもいいと
オレャ思ったんだ!…本当にそう思ったんだい!」
寅「それをなんだよ!働き者の芸者が、大事に貯めた金騙し取られて、悲しい思いしているって言うのにてめえ
これっポッチも同情してねえじゃねえか!てめえみたいな奴こっちから付き合い断らい!二度と手前の面なんざ
見たかねえよ!」邪魔したな!この野郎!」
寅が去った後も動かず何かを思っている青観
奥さん「だあれ?おおきな声出して、やあね」
しょぼしょぼと2階へ上がっていく青観
結局寅はとらやで啖呵を切ったものの、場所も知らなかったせいもあって鬼頭の家に怒鳴り込みに行く方向にはいかず、
青観に絵を頼みに行ってしまった。悪く言うと、「チョロチョロっと色を付けた絵を描いてもらってぼたんに持たせたい」と
いう安易な発想は結果オーライの逃げのやり方といえなくもない。こういうやり方は本来の寅の気質どおり、
実に彼らしい行動だが、さっきぼたんに言ったカッコいい発言の流れからするとお粗末だとも言えなくもない。
そして、それほどまでにぼたんのことをなんとかしてやりたかったのだろう。
しかし、それとは別に寅の最後の青観に対する啖呵は、めちゃくちゃな理屈とは言え、よくよく考えると、
青観が分かっていても見て見ぬふりをしてきた画壇世界の裏の仕組みとからくりを寅が、暴いてしまったともいえる。
実際、純粋に絵一筋に歩む絵馬鹿ではあのような高級住宅街の邸宅には住めないし、日本最高峰なんていう権威も
備わらないものである。これは、絵だけに限らずどの分野でも同じだとは思う。
寅はあの上野の焼き鳥屋の夜。青観の心に寄り添い、人として面倒をみたのだ。この夜、青観は寅に寄り添う前に
自分の絵のことだけを思ってしまった。絵を生涯の仕事とした人間としては当然のことだが寅にはそれは関係ない。
寅の人生は人と共に歩む人生なのだ。
とらや
龍野に帰ろうとしてタクシーを呼んだぼたん。みんなにお世話になったお礼の挨拶する。
ぼたん「いろいろありがとうございました、このご恩は一生忘れません」
おばちゃん「まあ、なにをそんなあ」
ぼたん「寅さんに会えんで本当に残念やけど」
おいちゃん「どこいったんだいあのバカ本当に」
ぼたん「さくらさん」
さくら「何?」
ぼたん「あのなあ、寅さん好きな人おるん?」
さくら「…あ、いや」
ぼたん「おるんやろ」
さくら「…」
ぼたん「フッ、その人に私からよろしゅう言うといて、フッ、ク〜!」
さくら「あの…」
ぼたん「ほな、さいなら」
とタクシーに乗り込み帰っていくぼたん。
電話が鳴る
おばちゃん「はいはい、とらやです。ええッ!寅ちゃんかい!?ちょっと!さくらちゃん!」
さくら「さようなら〜…え?」
おばちゃん「ちょ、リボンちゃん!ぼたんちゃん呼んで!」でた〜〜!!(^^)/
リリーの時もメリーさん、ジュリーさんって言ってたぞ 横文字カタカナに弱いおばちゃんでした。
おばちゃん「寅ちゃんからよ!」
さくら「もう間に合わないわよ!」
おいちゃん「運転手さん!運転手さん!」
おばちゃん「ぼたんさーん!」
寅、受話器から声「もしもし!おばちゃん!もしもしーっ!」
上野駅 広小路口
さくらと源ちゃん寅の待つ食堂を探している
上野駅構内 食堂
ひとり、ラーメンをすすっている寅
さくら食堂に入ってくる。
さくら「お兄ちゃん」
寅「おう、さくらこんな遅く悪かったな、あ、源公一緒に来てくれたのかそりゃよかった」
さくら「ぼたんさんくれぐれもよろしく言ってたわよ」
寅「うん、今ごろは汽車の中かか…」
さくら「泊まってくようにさんざん勧めたんだけどね、どうしても今日中に帰るって明日からまた、仕事なんだって…」
寅「ん…芸者家業も楽じゃないよな」
さくら「ねえ、いったいどこいってたの?」
寅「どこ行ってたっていいじゃねえかよ。どーせ、ろくなとこじゃねえや」
しかも当たり前ながら青観に断られてしまい、どうしょうもない絶望感が今寅の心を支配している。
寅「さ、汽車の時間だ。うちのもんによろしく言ってくれよ、な。
満男にな、先生の言う事よく聞いて、勉強しろって言うんだぞ、ん」
さくら「今度いつ帰るの?」
寅「うん…そうだな、まあ、お天道様にでも聞いてくれよ」
さくら、立って
さくら「お兄ちゃん」
寅「ええ。。。」
さくら「ぼたんさんね…」
寅「ぼたんがどうしたの…?」
さくら「好きなんじゃないかしら、お兄ちゃんのこと…」
寅、ちょっと下を向き、何かを考える。
しかし、パッと元の表情に戻り
寅「おまえな,そんな顔して冗談言うもんじゃないぞ…」
さくら「でもね、お兄ちゃん…」
寅、背中を見せて歩いていく。
源ちゃんからサイフを受け取り、何か一言告げて出て行く
さくら、目で寅の後姿を追い、そして、やるせない思いで…やがて下を向く。
J【遠く寅の旅の空を想い憧れる青観】
入道雲 蝉しぐれ 夏真っ盛り
とらや
お馴染みおばちゃんのカキ氷姿!シャカシャカシャカシャカ
おいちゃん、さくらに背中にお灸をしてもらっている。
青観が店先に立っている。
さくら、青観を見て、びっくりする。
さくら「おいちゃん…」
おいちゃん「え?」
さくら「あ…」
おばちゃん「あのー…」
青観「青観です」
おばちゃん「あ、そうそう、青観先生…。あら、どうしましょ」
おいちゃん「これはこれは、」
さくら「どうも、その節は大変失礼いたしました」とお辞儀。
おいちゃん「ちっとも存じませんでしたもんですから」と深々とお辞儀。
おばちゃん「お許しくださいまし」と3人とも深々とお辞儀(^^;)
どちらかというと恐縮し、礼をしなくてはならないのは青観のほうなんだけどなあ…。分かってますか青観さん(^^;)
青観「いやいや…」
青観「あの、寅次郎君いますか…」
おいちゃん「あのバカがまた失礼なことでも…?」
さくらも心配そうな顔
おばちゃん「ろくな教育も受けておりませんのでどうぞお許しくださいまし」おばちゃん、なにもそこまで…ヾ(-_-;)
また3人で深々とお辞儀(^^;)それじゃ、水戸黄門だって…。ヾ(^o^;)
青観「いや、そんなこっちゃないんだが…」
青観「留守ですか…?」
おいちゃん「へえ」
さくら「実は先月末旅にでまして、それっきり…」
遠くを見るような目で
青観「そうか…」
青観「寅次郎君は旅か…」
羨ましいような懐かしいような青観の表情。
そして、少し寂しくもある…。
青観「じゃ、失礼。」と店を出て行く
柴又参道
さくら、青観を追う。
セット撮影では2メートルの距離だったはずが、参道ロケに切り替わった時点で10メートルに!
さくら追いつくのに大変。
さくら「先生」
さくら「龍野では兄が大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
青観「えー、いやいや、かえって助かりましたよ」
さくら「そんな」
青観「フフ…」
青観「あなたでしたか、いつぞや金を返しにみえたのは」
さくら「はい、その節はほんとに失礼致しました」
青観、感慨深げに笑っている。
さくらのあのお金を返しに行った行為は立派だった。当たり前のことを当たり前のように粛々と行うことの
なんと難しい事か。青観の奥さん、ちょっとはさくらを見習えよな(^^;)
さくら「あの…、わざわざお越しいただいて…どんなご用だったんでしょうか」
青観「…んん…、ま、歩きながら話しましょ…」
青観「江戸川はどっちかな…?」と質問。
さくら、題経寺の方を手で指して
さくら「こっちです」
青観「あ…」
青観、右の方を指差して
青観「こっちが東か…」青観さんそっちは厳密に言うと南東ですよ。
さくら「いえ、こっちです。」と、左を指す。さくらそっちは厳密に言うと北北西だぞ。どっちかと言うと逆だよ。ヾ(^^;)
さくら「ですから東京はこっちです」と、後ろを指差す。それは大体合っている。
ちなみに、この面白いやり取りは、その昔、小津安二郎監督が映画「晩春」の中で演出したパターンだ。
山田監督は覚えていたんだね。
青観が呟いた「そう…寅次郎君は旅か…」はこのシリーズの全てを一言で言いあらわした見事な言葉だった。
宇野重吉さんのなんともいえない、あの遠くを見つめる目は、この映画を見ている私たちの目でもある。
定住者は放浪者に憧れ、放浪者は定住者に憧れる。しかし、定住者は放浪者の孤独を知らないし、
放浪者は定住者の倦怠を知らない。両者は永遠に交わることはないのである。
青観は江戸川はどっちだとさくらに聞いた。このことはラストでの寅の発言に絡む実に上手い伏線になっている。
K【龍野への再訪と青観の心持に打たれる寅】
播州 龍野
あのしっとりとした龍野のテーマ曲が流れている。
揖保川で遊ぶ子供たち 後ろに鶏籠山が見える。
揖保川に架かる大橋を寅が暑そうに歩いていく。
橋でアイスキャンディー屋
寅、ちょっと戻って
寅「1本くんねえかい」
キャンデー屋、チョコレート味のアイスキャンディーを渡す。
寅、耳の裏と帽子の間に挟んだ100円玉を取り出し、スッと渡して、キャンディーを受け取り、釣りは要らないっていう仕草
寅「美味い」って呟いてさっとカバンを持ち歩いていく。
こういう時の寅って、実にカッコいい。さりげない仕草が堂に入っている。渥美さんしかできない見事な立ち振る舞いだった。
ぼたんの家の路地
ひぐらしがカナカナと鳴いているなか、ぼたんの家の路地にたどり着く寅。
ちょうど、折りしも、ぼたんが下駄を川の水で洗いに外に出たところに出くわす。
そっと忍び寄り、後からぼたんの背中を指で軽く突付く。
振り返るぼたん
ぼたん「……」
遠くで『金魚〜え〜、金魚〜』
寅、あらぬほうを見て、知らん顔。そのあと、ぼたんを見て、手で敬礼
寅「オス!」
ぼたん「いや〜…、寅さんやないの…」
寅「ニカッ」と笑う
三味線が ペンペンペンペンペンペンペンペン
ぼたん、上から下まで見て、
ぼたん「なんでえ…?」と感動している。
寅「決まってるじゃねえかよ。おまえさんと所帯を持とうと思ってやって来たんだよ。イッヒヒヒ」
ぼたん、大きく表情が動き
ぼたん「ちょっと!ちょっと入って!」
寅「…!!なんだよ、なん…」
ぼたん「いいから、ちょっと、はよ!!」 と、手をひぱって家の中へ連れて行く。
ぼたんの家の中
寅「なんだ、あいた!」
ダダダダ!っと廊下を走って部屋に入る。
寅「なんだよおい、え?」
ぼたん「…!!見て!!分かる!?」
ぼたんのテーマが流れて
ぼたん「青観先生の絵や!」
壁に掛かった額装された真っ赤なぼたんの花の本画
寅「……!!」
ぼたん「ついこないだ送ってくれたんよ」
ぼたん「私、びっくりしてしもうて、添えてあった手紙にはな…、
龍野でいろいろお世話になったから、君に上げると、それしか書いてへんのんよ」
釘付けになってじっと絵を見ている寅。
ぼたん「でね、私市長にこの絵を見せたん、そしたら市長さんもびっくりしはって、
200万円だすからこの絵を譲ってくれ言わはったん。
けど私譲らへん!絶対譲らへん!1000万円積まれても譲らへん!一生宝もんにするんや!けどなんで…??」
寅「ぼたん!」
ぼたん、振り返って「??」
寅「ちょっと来い!」と家を飛び出す。
細い路地をめちゃくちゃに走る寅
寅「ぼたん!ぼたんよお!!」
ぼたん「なんや、どないしたん!?」
ようやくぼたん追いついて
寅「おい!東京どっちだ!東京ォ!」
ぼたん「えー、こっちやろか?」
寅「こっち、こっちか?」
ぼたん「あ、ちょっと待って…こっちや、」
寅「え、なんだ」
ぼたん「あ、ちゃうちゃう、え〜〜っと、やっぱりこっちや!」と手をパン!と打つ。
寅「こっちか」と静かに頭を下げる。
ぼたん、寅の前を歩いて、
ぼたん「寅さんどないしたん???」
寅「人の前に立つなよ!」とぼたんを払いのける。
ぼたんよろけて 「ァ…、ほんまにもう…」
寅、醤油の樽に上り、
パンパン!と、かしわ手を打って、両手を合わせ「ハイ…」と目をつぶる。
カナカナカナカナカナカナ…
寅「先生…、勘弁してくれよ。オレがいつか言ったことは悪かった…、
水に流してくれ…、この通りだ…」
と頭をもう一度下げて両手を合わせる。
テーマ曲ゆっくり盛り上がっていく。
寅「先生、ありがとう。ほんとうにありがとう」
ぼたん「ちょっとちょっと、東京はこっちやったね」と指差す。
従業員役でスタッフの露木さんが出演(後の備後屋)
従業員A「東京?こっちやろ?」と逆の方向を指差す。(^^;)
ぼたん「え!?」
従業員A「なあ、東京こっちやな」
従業員B「そや、こっちや」
カメラ、道とそのまわりの町をゆっくり俯瞰していく。
ぼたん「寅さん寅さん!東京こっちやて!」
寅「おめえ、こっちだって…」
従業員C「おい、東京はこっちやで」とまた、今度は逆の方角を指差す。
寅「おめえたちからかってるんじゃねえのか!!え!」と駆け寄る。
寅と従業員たちのドタバタが俯瞰映像でどんどん小さくなっていく
カメラ、古い蔵のある町並全体と揖保川を写していく
今、龍野は夏真盛りである。
音楽最高潮に達し、『終』の字幕
青観は絵を描いた。
絵描きにとって絵を描くことは仕事だと言って、寅の頼みをにべもなく断った青観。
絵を描くというのはある意味とてもエゴイスティックな行為だ。寅は、そのことを瞬時に見破り、啖呵を切る。
やがて、時が流れ、青観は寅のその言葉を心で受け止め、「絵描き」としてでなく「人間」として寅に答えたのであろう。
絵を描くなんて行為は最後のギリギリでは人にとって2次的な行為である。最後は人は人に寄り添い、
人と共に歩むのである。青観は最後の最後に寅の気持ちを新たな気持ちで受け止めたのであろう。そしてその
気持ちを知った寅もまた、新たな気持ちで東京に向かって手を合わせ、青観の心意気に感謝したのだった。
寅が龍野で遠く東京を想って祈っている正にその時、青観はさくらと共に江戸川の風に吹かれ、遠く寅次郎を
想っていたのではないだろうか。なんだかふとそんな気がするのである。
終
第17作「寅次郎夕焼け小焼け」【本編完全版】はこちら
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